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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】車載電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20230519BHJP
【FI】
H02M3/00 C
H02M3/00 W
H02M3/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019106607
(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公開番号】P2020202627
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】小野 祥太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊東 則幸
(72)【発明者】
【氏名】菅野 浩元
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-196626(JP,A)
【文献】特開2010-124587(JP,A)
【文献】特開2015-201907(JP,A)
【文献】特開2018-085882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部と、出力部と、
前記入力部と前記出力部との間に並列に接続されて通常動作時に均等に出力電力を分担する第1コンバータと第2コンバータと、
外部信号入力部と、
前記出力部の電圧と、前記第1コンバータの温度と前記第2コンバータとの温度と、前記外部信号入力部の信号を検出し、前記第1コンバータと前記第2コンバータとの動作を制御する、制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記外部信号入力部から信号を受信すると、前記第1コンバータと前記第2コンバータとを起動させて前記出力部へ所定電圧を第1期間にわたって出力させ、
前記第1期間の完了後に、前記第1コンバータと前記第2コンバータとの温度差に基づいて前記第1コンバータもしくは前記第2コンバータに対する故障判定を行う、
車載電源システム。
【請求項2】
さらに、前記第1コンバータおよび前記第2コンバータを格納する筐体を備え、
前記制御部は、前記筐体内の雰囲気温度、前記第1コンバータの温度と前記第2コンバータとの温度として検出する、
請求項1に記載の車載電源システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1期間の完了後第2期間が経過した後で前記第1コンバータおよび前記第2コンバータとの温度を検出し、
前記第1コンバータと前記第2コンバータとの温度差に基づいて前記第1コンバータもしくは前記第2コンバータに対する故障判定を行う、
請求項1に記載の車載電源システム。
【請求項4】
前記第1コンバータと前記第2コンバータとは同一の特性を有する、
請求項1に記載の車載電源システム。
【請求項5】
前記第1コンバータおよび前記第2コンバータはそれぞれ、
第1温度検出部および第2温度検出部を有する、
請求項1に記載の車載電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種車両に使用される車載電源システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の車載電源について図面を用いて説明する。図4は従来の車載電源装置の構成を示した回路ブロック図であり、冗長動作が可能な車載電源装置1は並列に配置されたDCDCコンバータ2、3を有している。DCDCコンバータ2、3はそれぞれがバッテリー4および負荷5に接続されていて、車載電源装置1は負荷5で必要とされている電力に応じてバッテリー4の電力を変換し、負荷5へ電力を供給している。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-124587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の車載電源装置1では、制御部6がDCDCコンバータ2、3それぞれの温度を検出し、検出温度と基準温度との温度差が所定値を超越すると、制御部6は温度検出対象のDCDCコンバータ2、3に異常が発生したと判断することで故障検出を行っていた。
【0006】
しかしながら、DCDCコンバータ2、3それぞれの温度は、車両の外部環境によって変動することもあるため、検出温度の精度もまた車両の外部環境によって変動するおそれがあるという課題を有するものであった。
【0007】
そこで本発明は、故障検出の精度を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために本発明は、
入力部と、出力部と、
前記入力部と前記出力部との間に並列に接続されて通常動作時に均等に出力電力を分担する第1コンバータと第2コンバータと、
外部信号入力部と、
前記出力部の電圧と、前記第1コンバータの温度と前記第2コンバータとの温度と、前記外部信号入力部の信号を検出し、前記第1コンバータと前記第2コンバータとの動作を制御する、制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記外部信号入力部から信号を受信すると、前記第1コンバータと前記第2コンバータとを起動させて前記出力部へ所定電圧を第1期間にわたって出力させ、
前記第1期間の完了後に、前記第1コンバータと前記第2コンバータとの温度差に基づいて前記第1コンバータもしくは前記第2コンバータに対する故障判定を行う、
ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、いずれかのコンバータが故障していると、他方のコンバータに電力出
力の負荷が集中して温度上昇の偏りが発生していることが外部環境に関係なく双方のコンバータの温度差に基づいて容易に検出できる。この結果、コンバータに対する故障検出の精度は向上する。
【0010】
特に本発明は、双方のコンバータが出力を終了した後で温度が安定しやすい状態のときに、温度の検出が実施されるので、コンバータに対する故障検出の精度をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態における車載電源システムの構成を示す回路ブロック図
図2】本発明の実施の形態における車載電源システムを搭載した車両の構成を示すブロック図
図3】車載電源システムを搭載した車両の動作タイミングチャート
図4】従来の車載電源装置の構成を示した回路ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0013】
(実施の形態)
図1は本発明の実施の形態における車載電源システムの構成を示す回路ブロック図である。車載電源システム11は、入力部12と出力部13と第1コンバータ14と第2コンバータ15と外部信号入力部16と制御部17とを含む。
【0014】
第1コンバータ14と第2コンバータ15とは、入力部12と出力部13との間に並列に接続されている。また、第1コンバータ14と第2コンバータ15とは、通常動作時に均等に出力電力を分担する。
【0015】
制御部17は、出力部13の電圧と、第1コンバータ14の温度と、第2コンバータ15の温度と、外部信号入力部16からの信号を検出する。また、制御部17は、第1コンバータ14および第2コンバータ15の双方の電力変換動作を制御する。
【0016】
そして制御部17は、外部信号入力部16を通じて信号SG1を受信すると、第1コンバータ14と第2コンバータ15とを起動させて出力部13へ所定電圧V1を第1期間P1にわたって出力させる。さらに、制御部17は、第1期間P1の完了後に、第1コンバータ14と第2コンバータ15との温度差Tempdに基づいて、第1コンバータ14もしくは第2コンバータ15に対する故障判定を行う。
【0017】
以上の構成および動作により、第1コンバータ14もしくは第2コンバータ15のいずれか一方が故障していると、他方のコンバータに電力出力の負荷が集中する。そして負荷の集中により温度上昇の偏りが発生していることが、外部環境に関係なく双方のコンバータの温度差Tdに基づいて容易に制御部17は検出することができる。この結果、第1コンバータ14および第2コンバータ15に対する故障検出の精度は向上する。
【0018】
特に、双方の第1コンバータ14および第2コンバータ15が出力を終了した後で温度が安定しやすい状態のときに、温度の検出が実施されるので、第1コンバータ14および第2コンバータ15に対する故障検出の精度はさらに向上する。
【0019】
以下で、図2の本発明の実施の形態における車載電源システムを搭載した車両の構成を示すブロック図、および図3の車載電源システムを搭載した車両の動作タイミングチャートを用いて詳細を説明する。車載電源システム11は車両18の車体19に搭載されてい
る。
【0020】
車載電源システム11の入力部12は車両バッテリー20に、出力部13は車両負荷21にそれぞれ接続されている。また、車両バッテリー20と車両負荷21との間には、車載電源システム11とは並列に、駆動スイッチ22と整流部23とが接続されている。また、外部信号入力部16には、車両制御ユニット24が接続されている。
【0021】
整流部23は、車両バッテリー20から車両負荷21への電力供給の冗長対応のために設けられている。あるいは整流部23は、車両18のアクセサリースイッチ(図示せず)などがオン状態となったときに車両負荷21の動作を可能とするために設けられている。
【0022】
車両18が搭乗者によってT0の時点で起動されると、車両制御ユニット24は信号SG1を制御部17へ発信し、駆動スイッチ22がそれまでの遮断状態から接続状態へと駆動スイッチ22を切り替える。このとき、第1コンバータ14および第2コンバータ15は双方共に休止状態となっていて、出力部13へ電圧を印加していない。
【0023】
そして、この状態は車両18が走行中から停止状態などとなり、車体19に搭載されたエンジンなどが停止した状態であるアイドリングストップ状態となっても継続される。上記の状態が継続される期間はT0の時点からT1の時点までに相当する。
【0024】
次に、例えば停車中の車両18におけるアイドリングストップ状態などで、搭乗者がブレーキペダル(図示せず)などから足を離したタイミングをT1とする。T1の時点で駆動スイッチ22は接続状態から遮断状態へと切り替えられる。車載電源システム11の単独での動作を考慮すると、搭乗者の操作や、搭乗者の操作に対応して車両制御ユニット24から発せられ、T1の時点で制御部17が受信する信号が、車載電源システム11の起動信号に相当する。
【0025】
T1の時点では、駆動スイッチ22が遮断状態となり、車両負荷21へは車両バッテリー20の電圧が、冗長経路である整流部23を通じて供給されている状態である。このため、T1の時点から、少なくとも第1コンバータ14と第2コンバータ15とが昇圧動作を始めて出力部13へ電圧を印加し始めるT2の時点までの間も、整流部23の順方向電圧相当の電圧降下は生じるものの、車両バッテリー20は車両負荷21へ電力を供給している。
【0026】
次にT2の時点で、上記のように第1コンバータ14および第2コンバータ15は昇圧動作を始めて出力部13へ電圧を印加し始める。第1コンバータ14および第2コンバータ15の出力電圧は、車両バッテリー20の通常時の出力電圧(例えば12V)よりも高い電圧としてもよい。第1コンバータ14および第2コンバータ15の出力電圧は、車両バッテリー20の通常時の出力電圧(12V)よりも高い電圧としていても、整流部23のカソードが出力部13に接続されているので、入力部12への逆流は生じない。
【0027】
T2の時点で第1コンバータ14および第2コンバータ15における昇圧に関する動作が始まる。あるいはT2の時点で第1コンバータ14と第2コンバータ15とが昇圧した電圧の出力を始める。このため、T2の時点で第1コンバータ14および第2コンバータ15における温度上昇が始まる。タイミングチャートでは簡略化のために、温度上昇が生じることとなる電力が出力され始めるT2の時点を起点として温度上昇が始まる曲線で、温度上昇時には直線状に上昇する形態を一例として示している。しかしながら、温度上昇は直線状に生じる必要はない。
【0028】
次にT3の時点で車両バッテリー20の電圧が低下しているが、これは車体19に搭載
されたエンジン(図示せず)が再起動するときに点火のために費やされる電力に伴って生じる電圧低下である。そして、エンジン(図示せず)の再起動が完了するT4の時点で、車両バッテリー20の電圧はT3の時点よりも以前の水準へと戻る。
【0029】
そして、T4の時点でエンジン(図示せず)の再起動が完了したことが検出されると、T4の時点の後のT5の時点で、第1コンバータ14と第2コンバータ15とが昇圧動作を終える。あるいは、第1コンバータ14と第2コンバータ15とが昇圧した電圧の出力を停止する。T5の時点のさらにその後の、T6の時点で駆動スイッチ22が遮断状態から接続状態へと切り替えられる。
【0030】
T5の時点で車載電源システム11の、特に第1コンバータ14と第2コンバータ15とは先に述べたように昇圧動作を終える。あるいは、第1コンバータ14と第2コンバータ15とが昇圧した電圧の出力を停止する。いいかえると、T5の時点で第1コンバータ14および第2コンバータ15に備えられたスイッチング動作のための半導体素子(図示せず)などによる発熱は終了する。
【0031】
上記のように第1コンバータ14および第2コンバータ15が有する半導体素子による発熱もT5の時点で終了する。しかしながら、第1コンバータ14および第2コンバータ15は半導体素子のみならず、図示していないが、半導体素子が実装される基板や放熱体などの熱容量が大きな部材を同時に備えている。このため、第1コンバータ14および第2コンバータ15の温度変化は半導体素子の動作状態の変化に対して時間差を有する。したがって、第1コンバータ14および第2コンバータ15はT5の時点の後のT7の時点までにわたって温度上昇を続けることとなる。
【0032】
ここで、タイミングチャートで温度の変化は、T2の時点からT7の時点までにおいても直線状に温度が上昇する形で示されている。しかしながら実際には、T2の時点からT5の時点にかけての第1コンバータ14および第2コンバータ15の動作期間の温度上昇の傾きは、T5の時点からT7の時点にかけての第1コンバータ14および第2コンバータ15の動作停止後の温度上昇の傾きよりも大きくなっている。
【0033】
そして、車両制御ユニット24や制御部17は、上記のように第1コンバータ14および第2コンバータ15、そして駆動スイッチ22の動作を制御する。そして制御部17は車両制御ユニット24で発せられた信号SG1を、外部信号入力部16を通じて検出する。そして、制御部17は、第1コンバータ14および第2コンバータ15の双方の電力変換動作を制御する。
【0034】
ここで制御部17は、先にも述べたように外部信号入力部16を通じて第1コンバータ14と第2コンバータ15とを起動するための信号SG1を受信すると、第1コンバータ14と第2コンバータ15とを起動させて出力部13へ所定電圧V1を、T2の時点からT5の時点に相当する第1期間P1にわたって出力させる。さらに、制御部17は、第1期間P1の完了後であるT5の時点からT7の時点の間であるTmの時点で、第1コンバータ14と第2コンバータ15とのそれぞれの温度を同時に検出する。そして、第1コンバータ14と第2コンバータ15とで検出した温度の温度差Tempdに基づいて、第1コンバータ14もしくは第2コンバータ15に対する故障判定を行う。
【0035】
ここで、T5の時点からTmの時点までは第2期間P2とすればよい。また、第2期間P2は所定の値として予め設定されていてもよい。あるいは、第1コンバータ14と第2コンバータ15との出力電力の値に応じて変化させられてもよい。たとえば、第1コンバータ14と第2コンバータ15との出力電力の値が小さくなれば第2期間P2を短くし、第1コンバータ14と第2コンバータ15との出力電力の値が大きくなれば第2期間P2
を長くすればよい。さらに、第1コンバータ14と第2コンバータ15との出力電力の値が基準電力よりも大きくなれば、第2期間P2を基準期間よりも長くすればよい。同様に、第1コンバータ14と第2コンバータ15との出力電力の値が基準電力よりも小さくなれば、第2期間P2を基準期間よりも短くすればよい。
【0036】
また、Tmの時点は、第1コンバータ14と第2コンバータ15との何れか一方の温度がピークとなる以前に検出されることが望ましい。温度検出がピークを経過した場合、温度の低下は急激となり、検出の精度が低下するおそれがあるため、第1コンバータ14と第2コンバータ15との何れか一方の温度がピークとなる以前に検出されるとよい。
【0037】
ここでT6の時点からT7の時点を経て、ピーク温度を過ぎたT8の時点まで、所定間隔のタイミングで、制御部17は第1コンバータ14と第2コンバータ15との温度を検出する。そして、検出温度が前回の検出タイミングよりも低下した時点で温度検出を停止する。そして制御部17は検出温度が低下する直前のタイミングを上記のTmとして決定してもよい。
【0038】
またここで、温度の検出に正確な値が反映されるように、第1コンバータ14と第2コンバータ15とのそれぞれに、温度検出部14b、15bが複数で設けられ、複数の温度検出部14bにおける平均値が検出温度として用いられてよい。複数の温度検出部15bについても同様である。
【0039】
ここで、第1コンバータ14と第2コンバータ15とは実質的に同じ特性のコンバータとして構成され、車両負荷21へ供給する電力を均等に負担するように制御されている。このため、第1コンバータ14と第2コンバータ15との双方が共に、正常な状態で正常に制御されている場合、図3のタイミングチャートにおけるコンバータ温度1の曲線に示すように第1コンバータ14の温度と第2コンバータ15の温度は概ね一致した軌跡の曲線となる。したがって、T5の時点からT7の時点の間の任意の時点Tmで検出される第1コンバータ14の温度と第2コンバータ15の温度は当然ながら近似した値となり、双方の温度差の絶対値であるTempdの値は非常に小さな値となる。第1コンバータ14の温度と第2コンバータ15の温度との温度差は正の値であっても負の値であってもよく、言い換えれば第1コンバータ14の温度と第2コンバータ15の温度とは何れの方が高い、あるいは、何れの方が低いことは大きく関係はせず、第1コンバータ14の温度と第2コンバータ15の温度との温度差の絶対値が重要となる。
【0040】
例えば第1コンバータ14と第2コンバータ15との動作状態が近似している場合に生じうる温度差を基準温度差Trefとして設定し、基準温度差Trefよりも温度差の絶対値であるTempdの値が小さい場合に、第1コンバータ14と第2コンバータ15とが共に正常な動作が行われている、として判断すればよい。当然ながら基準温度差Trefの値は正負の符号を有さない値として設定される。
【0041】
一方で、出力部13では正常な電圧が出力されているものの、第1コンバータ14と第2コンバータ15とのいずれか一方が、異常な状態である場合や異常に制御されている場合、図3のタイミングチャートにおけるコンバータ温度2の曲線に示すように第1コンバータ14の温度と第2コンバータ15の温度は大きく異なった軌跡の曲線となる。したがって、T5の時点からT7の時点の間の任意の時点Tmで検出される第1コンバータ14の温度と第2コンバータ15の温度は当然ながら大きく異なる値となり、双方の温度差の絶対値であるTempdの値は非常に大きな値となる。図3のタイミングチャートにおけるコンバータ温度2の曲線では一例として、第2コンバータ15の温度がT2の時点以降でほとんど上昇していない状態で、第2コンバータ15が動作していないと推測される状態である。
【0042】
ここで、上記の基準温度差Trefを用い、基準温度差TrefよりもTempdの値が大きい場合に、第1コンバータ14と第2コンバータ15とのいずれかで異常が発生している、として判断すればよい。基準温度差Trefは予め制御部17に記憶されているとよい。例えば、先に述べた第2期間P2を所定の値とし、出力電力、電圧、電流と第2期間P2とに対応する基準温度や、出力電力、電圧、電流と第2期間P2とに対応する基準温度の予測変動幅を制御部17は予めデータとして記憶する。そして、基準温度の予測変動幅が基準温度差Trefとして用いられてよい。また、複数の第2期間P2に対応して、出力電力、電圧、電流と第2期間P2対応する基準温度の予測変動幅が重層的に記憶されていてもよい。
【0043】
本実施例では、T5の時点からT7の時点の間の任意あるいは所定の時点Tmで検出される第1コンバータ14の温度と第2コンバータ15の温度は、第1コンバータ14と第2コンバータ15とが昇圧動作を終えてはいるものの、温度の値が最も高くなる期間の一部に相当する。そのため特に一方のコンバータに異常がある際には、双方のコンバータの温度差であるTempdの値が非常に大きな値となりやすく、温度差の検出が容易となる。この結果として、故障や異常の判定に対する精度が向上する。
【0044】
第1コンバータ14と第2コンバータ15との温度を検出する温度検出部14b、15bは第1コンバータ14と第2コンバータ15とを格納する筐体25の内部に設けられるとよい。そして、実質的に第1コンバータ14の温度および第2コンバータ15の温度は、筐体25の内部の雰囲気温度であってよい。筐体25の内部の雰囲気温度は、第1コンバータ14および第2コンバータ15に設けられたダイオードやスイッチ素子などの半導体素子(図示せず)とは非接触状態で検出される。第1コンバータ14の温度を検出する温度検出部14bは、第2コンバータ15よりも第1コンバータ14に近い位置に配置されているとよい。さらには、第1コンバータ14の温度を検出する温度検出部14bは、発熱源である第2コンバータ15に設けられたダイオードやスイッチ素子などの半導体素子(図示せず)よりも、第1コンバータ14に設けられたダイオードやスイッチ素子などの半導体素子(図示せず)に近い位置に配置されているとよい。これにより検出温度の信頼性は向上する。第1コンバータ14の温度を検出するための雰囲気と、第2コンバータ15の温度を検出するための雰囲気とが混合し難い位置関係や構造であることが望ましい。
【0045】
また、第1コンバータ14の温度は、第1コンバータ14が格納された第1筐体14a内の雰囲気温度で、第2コンバータ15の温度は第2コンバータ15が格納された第2筐体15a内の雰囲気温度であってもよい。言い換えると、第1コンバータ14の温度は第1コンバータ14が格納された第1筐体14aの内部において非接触で検出され、第2コンバータ15の温度は第2コンバータ15が格納された第2筐体15aの内部における非接触で個別に検出されてもよい。さらに言い換えると、第1コンバータ14の温度は第1コンバータ14が格納された第1筐体14aの内部において非接触で推定され、第2コンバータ15の温度は第2コンバータ15が格納された第2筐体15aの内部において非接触で推定されてもよい。
【0046】
上記のように、第1コンバータ14の温度と第2コンバータ15の温度が雰囲気温度に代用されて検出される場合、先に述べた第1コンバータ14および第2コンバータ15の温度変化が半導体素子の動作状態の変化に対して有する時間差が一層顕著となる。したがって、T5の時点からT7の時点の間の任意の時点Tmで検出される第1コンバータ14の温度と第2コンバータ15の温度は、第1コンバータ14と第2コンバータ15とが昇圧動作を終えてはいるものの、温度の値が最も高い期間に一層顕著に相当することとなる。そのため、双方の温度差であるTempdの値は非常に大きな値となり、温度差の検出
が容易となる。この結果として故障や異常の判定に対する精度が向上する。
【0047】
ここで説明した温度検出は、ここでは図示していないが制御部17に接続された温度検出器が検出すればよい。言い換えると、温度検出や温度検出に関係する演算や判定は制御部17が実行すればよい。
【0048】
またここでは制御部17は車載電源システム11の単一のユニット内に配置されている形態で示されている。しかしながら、例えば制御部17は車体19に設けられた車両制御ユニット24の一部として含まれていてもよい。
【0049】
以上の実施例では、車載電源システム11がアイドリングストップ機能を搭載した車両がアイドリングストップ状態から再起動する場合の動作を一例として説明したが、車載電源システム11は、例えば24Vバッテリーから12Vへの降圧動作を行う降圧コンバータや、高電圧の電気駆動用バッテリーからインバータ駆動用の電圧へ降圧動作を行う降圧コンバータに用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の車載電源システムは、コンバータに対する故障検出の精度を向上させることができるという効果を有し、各種車両において有用である。
【符号の説明】
【0051】
11 車載電源システム
12 入力部
13 出力部
14 第1コンバータ
14a 第1筐体
14b 温度検出部
15 第2コンバータ
15a 第2筐体
15b 温度検出部
16 外部信号入力部
17 制御部
18 車両
19 車体
20 車両バッテリー
21 車両負荷
22 駆動スイッチ
23 整流部
24 車両制御ユニット
25 筐体
図1
図2
図3
図4