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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】自律移動装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20230519BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G05D1/02 T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019106223
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020201570
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 元紀
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-129909(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0089563(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
追従対象と併走した状態で、前記追従対象に追従して移動する自律移動装置であって、
前記追従対象が進路を変更しようとする予兆を検知した場合に、前記追従対象の変更後の進路である第1進路を推定する追従対象進路推定部と、
前記第1進路に沿って前記追従対象が移動すると仮定した場合に、前記追従対象と併走した状態で移動させるための前記自律移動装置の第2進路を決定する進路決定部と、
前記予兆を検知した時点での前記自律移動装置の位置および前記第1進路に基づいて、前記追従対象が変更後の進路に沿って移動を開始するまで前記自律移動装置を前記位置で停止させるか否かを決定する動作決定部と、
を有し、
前記動作決定部は、前記位置と前記第1進路との距離の最小値が第1距離以上である場合に、前記追従対象が変更後の進路に沿って移動を開始するまで前記自律移動装置を前記位置で停止させるように決定する、
自律移動装置。
【請求項2】
追従対象と併走した状態で、前記追従対象に追従して移動する自律移動装置であって、
前記追従対象が進路を変更しようとする予兆を検知した場合に、前記追従対象の変更後の進路である第1進路を推定する追従対象進路推定部と、
前記第1進路に沿って前記追従対象が移動すると仮定した場合に、前記追従対象と併走した状態で移動させるための前記自律移動装置の第2進路を決定する進路決定部と、
前記予兆を検知した時点での前記自律移動装置の位置および前記第1進路に基づいて、前記追従対象が変更後の進路に沿って移動を開始するまで前記自律移動装置を前記位置で停止させるか否かを決定する動作決定部と、
を有し、
前記動作決定部は、前記位置と前記第1進路との距離の最小値が第1距離未満である場合に、前記自律移動装置を、前記予兆を検知する前の前記自律移動装置の進路と前記第2進路との交点まで移動させるように決定する、
律移動装置。
【請求項3】
追従対象と併走した状態で、前記追従対象に追従して移動する自律移動装置であって、
前記追従対象が進路を変更しようとする予兆を検知した場合に、前記追従対象の変更後の進路である第1進路を推定する追従対象進路推定部と、
前記第1進路に沿って前記追従対象が移動すると仮定した場合に、前記追従対象と併走した状態で移動させるための前記自律移動装置の第2進路を決定する進路決定部と、
前記自律移動装置が前記第2進路に沿って移動すると仮定した場合に移動の妨げとなる障害物が存在するか否かを判定する障害物検知部と、
前記予兆を検知した時点での前記自律移動装置の位置および前記第1進路に基づいて、前記追従対象が変更後の進路に沿って移動を開始するまで前記自律移動装置を前記位置で停止させるか否かを決定する動作決定部と、
を有し、
前記進路決定部は、前記障害物が存在すると判定した場合に、前記障害物が移動の妨げとならないように前記第2進路を修正した修正第2進路を決定し、
前記動作決定部は、前記自律移動装置を、前記予兆を検知する前の前記自律移動装置の進路と前記修正第2進路との交点まで移動させるように決定する、
律移動装置。
【請求項4】
追従対象と併走した状態で、前記追従対象に追従して移動する自律移動装置の制御方法であって、
前記追従対象が進路を変更しようとする予兆を検知した場合に、前記追従対象の変更後の進路である第1進路を推定し、
前記第1進路に沿って前記追従対象が移動すると仮定した場合に、前記追従対象と併走した状態で移動させるための前記自律移動装置の第2進路を決定し、
前記予兆を検知した時点での前記自律移動装置の位置および前記第1進路に基づいて、前記追従対象が変更後の進路に沿って移動を開始するまで前記自律移動装置を前記位置で停止させるか否かを決定し、
前記自律移動装置を前記位置で停止させるか否かを決定する際に、前記位置と前記第1進路との距離の最小値が第1距離以上である場合に、前記追従対象が変更後の進路に沿って移動を開始するまで前記自律移動装置を前記位置で停止させるように決定する、
制御方法。
【請求項5】
追従対象と併走した状態で、前記追従対象に追従して移動する自律移動装置の制御方法であって、
前記追従対象が進路を変更しようとする予兆を検知した場合に、前記追従対象の変更後の進路である第1進路を推定し、
前記第1進路に沿って前記追従対象が移動すると仮定した場合に、前記追従対象と併走した状態で移動させるための前記自律移動装置の第2進路を決定し、
前記予兆を検知した時点での前記自律移動装置の位置および前記第1進路に基づいて、前記追従対象が変更後の進路に沿って移動を開始するまで前記自律移動装置を前記位置で停止させるか否かを決定し、
前記自律移動装置を前記位置で停止させるか否かを決定する際に、前記位置と前記第1進路との距離の最小値が第1距離未満である場合に、前記自律移動装置を、前記予兆を検知する前の前記自律移動装置の進路と前記第2進路との交点まで移動させるように決定する、
制御方法。
【請求項6】
追従対象と併走した状態で、前記追従対象に追従して移動する自律移動装置の制御方法であって、
前記追従対象が進路を変更しようとする予兆を検知した場合に、前記追従対象の変更後の進路である第1進路を推定し、
前記第1進路に沿って前記追従対象が移動すると仮定した場合に、前記追従対象と併走した状態で移動させるための前記自律移動装置の第2進路を決定し、
前記自律移動装置が前記第2進路に沿って移動すると仮定した場合に移動の妨げとなる障害物が存在するか否かを判定し、
前記予兆を検知した時点での前記自律移動装置の位置および前記第1進路に基づいて、前記追従対象が変更後の進路に沿って移動を開始するまで前記自律移動装置を前記位置で停止させるか否かを決定し、
前記障害物が存在するか否かを判定する際に、前記障害物が存在すると判定した場合に、前記障害物が移動の妨げとならないように前記第2進路を修正した修正第2進路を決定し、
前記自律移動装置を前記位置で停止させるか否かを決定する際に、前記自律移動装置を、前記予兆を検知する前の前記自律移動装置の進路と前記修正第2進路との交点まで移動させるように決定する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、追従対象と併走した状態で、追従対象に追従して移動する自律移動装置およびその追従方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測域センサもしくはカメラ等の撮影素子などを用いて追従対象を検出し、追従対象の後方を追従して自律的に移動する自律移動装置の制御技術が一般的に知られている。このような自律移動装置に利用者を搭乗させた状態で、追従対象が目的地まで移動することで、利用者を歩かせることなく、目的地まで移動させることができる。
【0003】
しかしながら、このような技術では、自律移動装置の利用者と追従対象の先導者とが移動中にコミュニケーションを取るためには、追従対象が後を向く必要が生じる。このため、安全性の面で課題があった。
【0004】
このような課題を解決する技術として、追従対象と併走するように自律移動装置を追従制御する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1には、カメラや通信機などによって認識された周囲環境に基づいて、追従対象と移動装置との位置関係を決定して、併走モードを含む複数の追従モードの中からいずれかを選択して追従制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-316924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された技術では、自律移動装置が併走モードで追従制御している際に、追従対象が自律移動装置側に進路を変えようとした場合、追従対象の進路が自律移動装置によって阻害されることがある。このような場合、追従対象がスムーズに進路を変えることが困難となる。また、追従対象が障害物の横を通過するようなルートで移動する場合、自律移動装置の進路が障害物に阻害され、追従制御の継続が困難となることがあった。
【0008】
本開示は、追従対象と併走した状態で、追従対象に追従して移動する自律移動装置において、追従対象の進路変更にスムーズに対応できる自律移動装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の自律移動装置は、追従対象と併走した状態で、前記追従対象に追従して移動する自律移動装置であって、前記追従対象が進路を変更しようとする予兆を検知した場合に、前記追従対象の変更後の進路である第1進路を推定する追従対象進路推定部と、前記第1進路に沿って前記追従対象が移動すると仮定した場合に、前記追従対象と併走した状態で移動させるための前記自律移動装置の第2進路を決定する進路決定部と、前記予兆を検知した時点での前記自律移動装置の位置および前記第1進路に基づいて、前記追従対象が変更後の進路に沿って移動を開始するまで前記自律移動装置を前記位置で停止させるか否かを決定する動作決定部と、を有し、前記動作決定部は、前記位置と前記第1進路との距離の最小値が第1距離以上である場合に、前記追従対象が変更後の進路に沿って移動を開始するまで前記自律移動装置を前記位置で停止させるように決定する
本発明の一態様の自律移動装置は、追従対象と併走した状態で、前記追従対象に追従して移動する自律移動装置であって、前記追従対象が進路を変更しようとする予兆を検知した場合に、前記追従対象の変更後の進路である第1進路を推定する追従対象進路推定部と、前記第1進路に沿って前記追従対象が移動すると仮定した場合に、前記追従対象と併走した状態で移動させるための前記自律移動装置の第2進路を決定する進路決定部と、前記予兆を検知した時点での前記自律移動装置の位置および前記第1進路に基づいて、前記追従対象が変更後の進路に沿って移動を開始するまで前記自律移動装置を前記位置で停止させるか否かを決定する動作決定部と、を有し、前記動作決定部は、前記位置と前記第1進路との距離の最小値が第1距離未満である場合に、前記自律移動装置を、前記予兆を検知する前の前記自律移動装置の進路と前記第2進路との交点まで移動させるように決定する。
本発明の一態様の自律移動装置は、追従対象と併走した状態で、前記追従対象に追従して移動する自律移動装置であって、前記追従対象が進路を変更しようとする予兆を検知した場合に、前記追従対象の変更後の進路である第1進路を推定する追従対象進路推定部と、前記第1進路に沿って前記追従対象が移動すると仮定した場合に、前記追従対象と併走した状態で移動させるための前記自律移動装置の第2進路を決定する進路決定部と、前記自律移動装置が前記第2進路に沿って移動すると仮定した場合に移動の妨げとなる障害物が存在するか否かを判定する障害物検知部と、前記予兆を検知した時点での前記自律移動装置の位置および前記第1進路に基づいて、前記追従対象が変更後の進路に沿って移動を開始するまで前記自律移動装置を前記位置で停止させるか否かを決定する動作決定部と、を有し、前記進路決定部は、前記障害物が存在すると判定した場合に、前記障害物が移動の妨げとならないように前記第2進路を修正した修正第2進路を決定し、前記動作決定部は、前記自律移動装置を、前記予兆を検知する前の前記自律移動装置の進路と前記修正第2進路との交点まで移動させるように決定する。
【0010】
本発明の一態様の自律移動装置の制御方法は、追従対象と併走した状態で、前記追従対象に追従して移動する自律移動装置の制御方法であって、前記追従対象が進路を変更しようとする予兆を検知した場合に、前記追従対象の変更後の進路である第1進路を推定し、前記第1進路に沿って前記追従対象が移動すると仮定した場合に、前記追従対象と併走した状態で移動させるための前記自律移動装置の第2進路を決定し、前記予兆を検知した時点での前記自律移動装置の位置および前記第1進路に基づいて、前記追従対象が変更後の進路に沿って移動を開始するまで前記自律移動装置を前記位置で停止させるか否かを決定し、前記自律移動装置を前記位置で停止させるか否かを決定する際に、前記位置と前記第1進路との距離の最小値が第1距離以上である場合に、前記追従対象が変更後の進路に沿って移動を開始するまで前記自律移動装置を前記位置で停止させるように決定する
本発明の一態様の自律移動装置の制御方法は、追従対象と併走した状態で、前記追従対象に追従して移動する自律移動装置の制御方法であって、前記追従対象が進路を変更しようとする予兆を検知した場合に、前記追従対象の変更後の進路である第1進路を推定し、前記第1進路に沿って前記追従対象が移動すると仮定した場合に、前記追従対象と併走した状態で移動させるための前記自律移動装置の第2進路を決定し、前記予兆を検知した時点での前記自律移動装置の位置および前記第1進路に基づいて、前記追従対象が変更後の進路に沿って移動を開始するまで前記自律移動装置を前記位置で停止させるか否かを決定し、前記自律移動装置を前記位置で停止させるか否かを決定する際に、前記位置と前記第1進路との距離の最小値が第1距離未満である場合に、前記自律移動装置を、前記予兆を検知する前の前記自律移動装置の進路と前記第2進路との交点まで移動させるように決定する。
本発明の一態様の自律移動装置の制御方法は、追従対象と併走した状態で、前記追従対象に追従して移動する自律移動装置の制御方法であって、前記追従対象が進路を変更しようとする予兆を検知した場合に、前記追従対象の変更後の進路である第1進路を推定し、前記第1進路に沿って前記追従対象が移動すると仮定した場合に、前記追従対象と併走した状態で移動させるための前記自律移動装置の第2進路を決定し、前記自律移動装置が前記第2進路に沿って移動すると仮定した場合に移動の妨げとなる障害物が存在するか否かを判定し、前記予兆を検知した時点での前記自律移動装置の位置および前記第1進路に基づいて、前記追従対象が変更後の進路に沿って移動を開始するまで前記自律移動装置を前記位置で停止させるか否かを決定し、前記障害物が存在するか否かを判定する際に、前記障害物が存在すると判定した場合に、前記障害物が移動の妨げとならないように前記第2進路を修正した修正第2進路を決定し、前記自律移動装置を前記位置で停止させるか否かを決定する際に、前記自律移動装置を、前記予兆を検知する前の前記自律移動装置の進路と前記修正第2進路との交点まで移動させるように決定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、追従対象と併走した状態で、追従対象に追従して移動する自律移動装置において、追従対象の進路変更にスムーズに対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】自律移動装置について説明するための図
図2】情報処理部の機能構成について説明するためのブロック図
図3】制御部の機能構成について説明するためのブロック図
図4】自律移動装置の制御方法を示すフローチャート
図5A】仮進路上に障害物がなく、かつ、最近傍距離Dminが閾値距離D3未満である場合に実行される第1動作について説明するための図
図5B】仮進路上に障害物がなく、かつ、最近傍距離Dminが閾値距離D3未満である場合に実行される第1動作について説明するための図
図5C】仮進路上に障害物がなく、かつ、最近傍距離Dminが閾値距離D3未満である場合に実行される第1動作について説明するための図
図5D】仮進路上に障害物がなく、かつ、最近傍距離Dminが閾値距離D3未満である場合に実行される第1動作について説明するための図
図6A】仮進路上に障害物がなく、かつ、最近傍距離Dminが閾値距離D3以上である場合に行われる第2動作について説明するための図
図6B】仮進路上に障害物がなく、かつ、最近傍距離Dminが閾値距離D3以上である場合に行われる第2動作について説明するための図
図6C】仮進路上に障害物がなく、かつ、最近傍距離Dminが閾値距離D3以上である場合に行われる第2動作について説明するための図
図6D】仮進路上に障害物がなく、かつ、最近傍距離Dminが閾値距離D3以上である場合に行われる第2動作について説明するための図
図7A】仮進路上に障害物が存在する場合に行われる第3動作について説明するための図
図7B】仮進路上に障害物が存在する場合に行われる第3動作について説明するための図
図7C】仮進路上に障害物が存在する場合に行われる第3動作について説明するための図
図7D】仮進路上に障害物が存在する場合に行われる第3動作について説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、異なる図面において、同じ構成要素には同じ符号を付している。また、各図面は理解しやすくするためにそれぞれの構成要素を主体として、模式的に示している。
【0014】
<自律移動装置100>
最初に、本開示の実施形態1にかかる自律移動装置100の構成について説明する。図1は、自律移動装置100について説明するための図である。
【0015】
自律移動装置100は、移動体である追従対象200に追従するように自律的に移動する装置である。図1では、自律移動装置100および追従対象200がともに紙面上方向に向かって移動している様子が示されている(図1に示す破線は自律移動装置100および追従対象200の進路を示している)。自律移動装置100の具体例は、例えば自律走行可能な車椅子であり、利用者が搭乗することが想定されている。追従対象200の具体例は、例えば上記利用者とは異なる人、または自律移動装置100とは異なる移動体(車両など)である。
【0016】
本実施の形態では、図1に示すように、自律移動装置100が追従対象200の左側を併走して追従するものとして説明を行う。しかしながら、本発明はこれに限定されず、自律移動装置100は追従対象200の右側を併走してもよい。また、自律移動装置100は、追従対象200の左側または右側を併走して追従する併走追従モードの他、例えば追従対象200の後を追従する追従モードを有していてもよい。
【0017】
本発明における併走とは、自律移動装置100の進路と追従対象200の進路とが平行であって、かつ追従対象200の進行方向に対して垂直な方向における自律移動装置100の進路と追従対象200の進路との距離が所定の距離Dsetに維持された状態で、自律移動装置100が追従対象200とともに移動することを意味する。すなわち、本発明における併走は、自律移動装置100が追従対象200の左右の真横に位置した状態を維持することに限定されず、追従対象200の真横から進行方向の前後にずれた位置を維持することを含む。
【0018】
所定の距離Dsetは、例えば互いに手が届く距離より近い距離、もしくは互いに声が届く距離より近い距離、かつ互いが移動の妨げとならない距離より遠い距離に設定されればよい。
【0019】
図1の説明に戻る。図1に示すように、自律移動装置100は、本体1と、一対の駆動輪2および一対の従輪3と、情報処理部4と、制御部5と、障害物センサ6と、追従対象センサ7と、進路変更検知センサ8と、を備えている。
【0020】
一対の駆動輪2と一対の従輪3とは、本体1の側面等に設けられる。駆動輪2には図示しない駆動装置が接続されており、制御部5の制御に基づいて駆動することで自律移動装置100を移動させる。図示しない駆動装置は、例えばモータまたは内燃機関などである。従輪3は、自律移動装置100が転倒しないようにバランスを取るための車輪であり、自律移動装置100のバランスが取れるのであればなくてもよい。
【0021】
情報処理部4は、障害物センサ6からの情報に基づいて、自律移動装置100の周囲に存在する障害物の有無、存在する場合の障害物の位置を検知する。また、情報処理部4は、追従対象センサ7および進路変更検知センサ8からの情報に基づいて、自律移動装置100から見た追従対象200の位置、移動速度、および向きを検知する。情報処理部4の機能構成についての詳細は後述する。
【0022】
制御部5は、情報処理部4から得られた情報に基づいて自律移動装置100の動作を制御する。制御部5の機能構成および各機能構成の実行する処理についての詳細は後述する。
【0023】
障害物センサ6は、自律移動装置100の周囲に存在する障害物に関する情報を取得する。障害物センサ6が取得する情報は、例えば、障害物の画像情報、または、自律移動装置100から障害物の表面までの距離である。障害物センサ6は、例えば図1に示すように本体1の前面などに配置される。障害物センサ6は、例えば、レーザーレンジファインダなどの測距センサ、または、ステレオカメラやTOF(Time-of-Flight)カメラなどの画像センサで構成される。なお、自律移動装置100から障害物の表面までの距離とは、自律移動装置100の中心から障害物の表面までの距離であってもよいし、搭乗する利用者を含む自律移動装置100の表面から障害物の表面までの距離であってもよい。
【0024】
追従対象センサ7は、自律移動装置100の本体1の例えば側面に配置されて、追従対象200に関する情報を取得する。追従対象センサ7が取得する情報は、例えば、追従対象200の画像情報、および/または、自律移動装置100から追従対象200までの距離(以下、追従対象距離)に関する情報である。
【0025】
追従対象センサ7は、障害物センサ6と同様に、レーザーレンジファインダなどの測距センサ、または、ステレオカメラやTOFカメラなどの画像センサで構成される。もしくは、追従対象センサ7は、追従対象200にあらかじめ取り付けられたビーコンなどの位置通知機器から無線送信される電波などを受信することで追従対象距離を計測してもよい。なお、追従対象センサ7の配置位置は本体1の側面に限定されず、例えば任意に配置位置やセンサの配置角度を変更できるようにしておき、追従対象200の位置に応じてセンサ配置位置および/または角度を適宜変化させるようにしてもよい。
【0026】
図1に示す例では、障害物センサ6と追従対象センサ7は互いに独立して設けられていたが、障害物センサ6と追従対象センサ7を兼ねる1つのセンサが設けられてもよい。ただし、本実施の形態において、自律移動装置100の進行方向(前方)と、追従対象200が存在する方向(横方向)とは異なっている。そのため、障害物センサ6と追従対象センサ7が独立していることが好ましい。
【0027】
進路変更検知センサ8は、自律移動装置100の本体1の例えば側面に配置されて、追従対象200が進路を変更しようとする動作を検知するための情報を取得する。進路変更検知センサ8は、障害物センサ6、または追従対象センサ7と同様に、レーザーレンジファインダなどの測距センサや、ステレオカメラやTOFカメラなどの画像センサなどで構成される。なお、図1に示す例では追従対象センサ7と進路変更検知センサ8とは互いに独立して設けられていたが、追従対象センサ7と進路変更検知センサ8を兼ねる1つのセンサが設けられてもよい。
【0028】
進路変更検知センサ8が取得した情報は、後述する情報処理部4の進路変更判定部45によって、追従対象200が進路を変更しようとしているか否かを判断するために用いられる。
【0029】
なお、図1では、追従対象センサ7および進路変更検知センサ8は、本体1の右側にのみ設けられているが、本発明はこれに限定されない。追従対象センサ7および進路変更検知センサ8は、本体1の左側のみ、または両側に設けられていてもよい。
【0030】
<情報処理部4>
図2は、情報処理部4の機能構成について説明するためのブロック図である。図2に示すように、情報処理部4は、追従対象検知部41と、障害物検知部42と、追従対象位置検知部43と、障害物位置検知部44と、進路変更判定部45と、自己位置検知部46と、を備えている。
【0031】
追従対象検知部41は、追従対象センサ7が取得した情報に基づいて、自律移動装置100の周囲に追従対象200が存在するか否かを判断する。
【0032】
なお、1つのセンサが障害物センサ6と追従対象センサ7を兼ねる場合、当該センサから得られる情報は、障害物に関する情報と、追従対象200に関する情報とが混在した情報である。このため、このような場合、追従対象検知部41は、あらかじめ図示しない記憶部などに記憶された追従対象200の形状などを示す特徴情報に基づいて、障害物と追従対象200とを区別すればよい。
【0033】
障害物検知部42は、障害物センサ6が取得した情報に基づいて、自律移動装置100の進路上を含む周囲に障害物が存在するか否かを判断する。
【0034】
追従対象位置検知部43は、追従対象センサ7が取得した情報に基づいて、自律移動装置100から見た追従対象200の位置、すなわち、自律移動装置100から追従対象200までの距離、自律移動装置100から見て追従対象200が存在する方向、および追従対象200の移動速度、追従対象200の向きなどの情報が含まれる。
【0035】
追従対象200の移動速度(相対速度)は、例えば図示しない車輪速センサなどに基づいて算出した自律移動装置100の移動速度に基づいて算出されればよい。また、追従対象200の向きは、例えば追従対象200の前後や左右を認識できる画像に基づいて特定されればよい。追従対象200の前後や左右を認識できる画像とは、追従対象200が人である場合には顔や肩の位置などが認識できる画像、追従対象200が車両などである場合には車輪や着座部の位置などが認識できる画像である。
【0036】
障害物位置検知部44は、障害物センサ6が取得した情報に基づいて、自律移動装置100から見た障害物の位置、自律移動装置100から見た障害物が存在する方向、および自律移動装置100から障害物の表面までの距離を特定する。自律移動装置100の周囲に障害物が複数存在する場合、障害物位置検知部44は、例えば自律移動装置100から見て所定範囲内に存在する全ての障害物の位置を特定する。
【0037】
進路変更判定部45は、進路変更検知センサ8が取得した情報に基づいて、追従対象200が進路を変更しようとしているか否かを判定する。換言すれば、進路変更判定部45は、追従対象200に進路変更の予兆が検知されたか否かを判定する。具体的には、進路変更判定部45は、あらかじめ、自律移動装置100から見た、進路を変更する前後の追従対象200の画像を図示しない記憶部などに記憶しておき、進路変更検知センサ8が取得した画像と記憶部の画像とを照合させることで、進路変更の予兆が検知されたか否かを判定すればよい。また、過去に取得された、進路を変更する前後の追従対象200の画像を教師データとして用いて学習モデルをあらかじめ作成しておき、進路変更判定部45はこの学習モデルを用いて、追従対象200が進路変更の予兆が検知されたか否かを判定するようにしてもよい。
【0038】
さらに、進路変更判定部45は、進路変更検知センサ8が取得した情報に基づいて、進路変更後の追従対象200の進行方向を特定する。進路変更後の追従対象200の進行方向を特定方法としては、進路変更検知センサ8が取得した情報(画像情報)に基づいて追従対象200の向きを検出し、検出した向きに基づいて進行方向を特定する方法などが採用されうる。
【0039】
自己位置検知部46は、自律移動装置100自身の現在位置を検知する。自己位置検知部46は、例えばGPS(Global Positioning System)等を用いて自己位置を検知してもよいし、各種センサから得られたデータに基づいて自己位置を推定してもよい。
【0040】
情報処理部4は、コンピュータによりプログラムが実行されることでソフトウェア的に実現されてもよいし、専用の回路などによってハードウェア的に実現されてもよい。情報処理部4をプログラムにより実現するコンピュータは、例示的に、プロセッサ、出力装置、メモリ、ストレージ、および、電源回路を備えてよい。これらの構成要素は、バスに接続されて相互に通信が可能である。プロセッサは、演算能力を備えた回路又はデバイスの一例である。プロセッサには、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、および、GPU(Graphics Processing Unit)の少なくとも1つが用いられてよい。
【0041】
情報処理部4の機能ブロック、すなわち追従対象検知部41と、障害物検知部42と、追従対象位置検知部43と、障害物位置検知部44と、進路変更判定部45と、自己位置検知部46とは、すべて1つのコンピュータによってプログラムが実行されることにより実現されてもよい。また、それぞれが独立したハードウェアによって実現されてもよいし、独立したコンピュータによってプログラムが実行されることにより実現されてもよい。
【0042】
<制御部5>
図3は、制御部5の機能構成について説明するためのブロック図である。制御部5は、進路決定部51と、駆動制御部52と、追従対象進路推定部53と、動作決定部54と、を備える。
【0043】
進路決定部51は、後述の追従対象進路推定部53が推定した、追従対象200の推定進路と、情報処理部4で得られた追従対象200の位置、および障害物の位置に関する情報に基づいて、自律移動装置100の進路を決定する。
【0044】
駆動制御部52は、駆動輪2を適切に制御して自律移動装置100を移動させる。
【0045】
追従対象進路推定部53は、進路変更判定部45によって追従対象200が進路を変更しようとしていると判定された場合に、変更後の進路に関する情報、および追従対象200の位置情報を情報処理部4から取得し、追従対象200の変更後の進路を推定する。より具体的には、追従対象進路推定部53は、追従対象200の向きを検出し、例えば追従対象200の向きが現在の推定進路からθだけ変わったことが検出された場合、追従対象200の現在の推定進路から、現在の追従対象の位置を中心にθだけ回転した方向に向かう進路を、追従対象200の変更後の進路と推定する。
【0046】
動作決定部54は、進路決定部51が決定した自律移動装置100の進路と、追従対象進路推定部53が推定した進路と、に基づいて、追従対象200が進路を変更しようとしている際の自律移動装置100の動作を決定する。自律移動装置100の動作の決定方法の詳細については後述する。
【0047】
制御部5は、情報処理部4と同様に、コンピュータによりプログラムが実行されることでソフトウェア的に実現されてもよいし、専用の回路などによってハードウェア的に実現されてもよい。制御部5をプログラムにより実現するコンピュータは、例示的に、プロセッサ、出力装置、メモリ、ストレージ、および、電源回路を備えてよい。これらの構成要素は、バスに接続されて相互に通信が可能である。
【0048】
進路決定部51と、駆動制御部52と、追従対象進路推定部53と、動作決定部54とは、すべて1つのコンピュータによってプログラムを実行されることにより実現されてもよい。また、それぞれが独立したハードウェアによって実現されてもよいし、独立したコンピュータによってプログラムが実行されることにより実現されてもよい。
【0049】
図1に示す例では、情報処理部4と制御部5とが異なる構成であるとして説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、例えば制御部5による制御と情報処理部4による判断とが、同一のコンピュータによって行われてもよい。
【0050】
<自律移動装置100の制御>
次に、図4を用いて、自律移動装置100の制御方法について説明する。図4は、自律移動装置100の制御方法を示すフローチャートである。
【0051】
ステップS11において、制御部5は、移動する追従対象200の進行方向および位置に基づいて、追従対象200に併走するように自律移動装置100を追従移動させる。なお、追従対象200に併走するように自律移動装置100を追従移動させるため、制御部5は、以下のような処理を実行する。
【0052】
すなわち、制御部5は、追従対象200の現在位置と速度、所定の微少時間後の追従対象200の位置を推定し、推定された位置から追従対象200の進行方向に対して垂直な方向に所定距離Dだけ離れた位置を目標位置として設定する。そして、制御部5は、微少時間後に、自律移動装置100がその目標位置に到達できるように駆動制御部52を制御する。そして、制御部5は、当該制御を随時繰り返す。追従対象200の移動速度、進行方向および位置は、上述した情報処理部4の追従対象検知部41の検知結果に基づいて得られ、追従対象200の進路は、追従対象進路推定部53の推定処理によって得られる。以下の説明において、自律移動装置100が追従対象200に併走して追従移動する状態を、併走追従状態と記載する。
【0053】
ステップS12において、制御部5は、進路変更判定部45に、追従対象200の進路変更の予兆を検知したか否かを判定させる。追従対象200の進路変更の予兆を検知したと判定された場合(ステップS12:YES)、制御部5は処理をステップS13に進める。一方、そうでない場合(ステップS12:NO)、制御部5は処理をステップS11に戻す。すなわち、追従対象200が進路変更の予兆を検知しない限り、制御部5は、自律移動装置100の追従対象200への併走追従状態を維持する。
【0054】
ステップS13において、制御部5の追従対象進路推定部53は、追従対象検知部41および追従対象位置検知部43の検知結果に基づいて、進路変更後の追従対象200の変更後の進路を推定する。以下の説明において、ステップS13にて推定された、追従対象200の進路変更後の進路を推定進路と記載する。推定進路は、本発明の第1進路の一例である。
【0055】
ステップS14において、制御部5の進路決定部51は、追従対象200の推定進路と、情報処理部4で得られた追従対象200の位置、および障害物の位置に関する情報に基づいて、自律移動装置100の仮進路を決定する。自律移動装置100の仮進路とは、ステップS13にて推定した推定進路に沿って進路変更後の追従対象200が移動すると仮定したとき、進路変更後の追従対象200に対して併走追従状態を維持するための新たな進路である。仮進路は、例えば、追従対象200の推定進路の進行方向と平行な方向に向かう進路であって、当該推定進路の進行方向に対して垂直な方向に所定の距離Dsetだけ離れた進路に決定される。仮進路は、本発明の第2進路の一例である。
【0056】
ステップS15において、制御部5の動作決定部54は、現在位置から所定の閾値距離D1以内に、自律移動装置100の仮進路上のある1点との距離が所定の閾値距離D2未満となる障害物があるか否かを判定する。所定の閾値距離D1、D2はあらかじめ設定された距離であり、D1>D2である。特に閾値距離D2は、自律移動装置100に搭乗する人が障害物に接触しないような距離(例えば50cm程度)である。仮進路上に障害物が存在すると判定した場合(ステップS15:YES)、制御部5は、処理をステップS113に進め、そうでない場合(ステップS15:NO)、処理をステップS16に進める。なお、以下の説明において、自律移動装置100の仮進路上のある1点との距離が所定の閾値距離D2未満となる障害物が存在することを、単に仮進路上に障害物が存在する、と記載する。
【0057】
ステップS16において、制御部5の動作決定部54は、追従対象200の推定進路上のある1点と自律移動装置100の現在位置とが最も近くなる距離(以下、最近傍距離Dmin)を算出して、この最近傍距離Dminが所定の閾値距離D3以上であるか否かを判別する。所定の閾値距離D3はあらかじめ設定された距離であり、所定の距離Dset未満の距離である。閾値距離D3は、本発明の第1距離の一例である。最近傍距離Dminが閾値距離D3以上である場合(ステップS16:YES)、制御部5は、処理をステップS18に進め、そうでない場合(ステップS16:NO)、処理をステップS17に進める。
【0058】
以上のように、ステップS15で仮進路上のある1点との距離が閾値距離D2未満となる障害物が存在しないと判定され、かつステップS16において最近傍距離Dminが閾値距離D3未満であると判定された場合、処理はステップS17に進められる。最近傍距離Dminが閾値距離D3未満である場合とは、自律移動装置100が進路変更後の追従対象200の移動の妨げとなる場合である。
【0059】
このような場合、ステップS17において、制御部5の動作決定部54は、自律移動装置100の現在の進路と、ステップS14で決定した仮進路との交点I1まで、自律移動装置100を移動させる(後述の第1動作)要に決定する。これにより、自律移動装置100が進路変更後の追従対象200の移動の妨げとなる事態を回避することができる。
【0060】
一方、ステップS15で仮進路上のある1点との距離が閾値距離D2未満となる障害物が存在しないと判定され、かつステップS16において最近傍距離Dminが閾値距離D3以上であると判定された場合、処理はステップS18に進められる。なお、最近傍距離Dminが閾値距離D3以上である場合、自律移動装置100が進路変更後の追従対象200の移動の妨げとはならない。
【0061】
このような場合、ステップS18において、制御部5の動作決定部54は、追従対象200が変更後の進路に沿って移動を開始するまで、自律移動装置100をその場で停止させるように決定する。なお、その場とは、追従対象200の進路変更の予兆を検知した時点での自律移動装置100の位置を意味する。
【0062】
ステップS19において、制御部5の動作決定部54は、追従対象200を監視し、推定進路通りに移動を開始したか否かを判定する。追従対象200が推定進路通りに移動を開始したと判定した場合(ステップS19:YES)、制御部5は、処理をステップS110に進め、そうでない場合(ステップS19:NO)、処理をステップS112に進める。
【0063】
ステップS110において、制御部5の動作決定部54は、追従対象200の進路変更後の進行方向に合わせて自律移動装置100をその場で旋回させるように駆動制御部52を制御する。これにより、自律移動装置100の進行方向と追従対象200の進行方向とが一致する。なお、自律移動装置100の旋回動作は、例えば一対の駆動輪2を同じ速度で互いに逆回転させることにより行われればよい。
【0064】
ステップS111において、制御部5の動作決定部54は、自律移動装置100の今後の進路を仮進路に決定し、自律移動装置100を追従対象200への併走追従状態へと再度移行させる。
【0065】
ステップS112において、制御部5の動作決定部54は、自律移動装置100の追従対象200への併走追従状態を維持することが可能か否かを判定する。併走追従状態の維持が可能であると判定した場合(ステップS112:YES)、制御部5は、処理をステップS11に戻し、そうでない場合(ステップS112:NO)、処理を終了させる。
【0066】
ステップS113は、ステップS15にて仮進路上に障害物が存在すると判定された場合に実行されるステップである。ステップS113において、制御部5の動作決定部54は、ステップS14にて決定した仮進路を修正し、障害物と閾値距離D2以上離れた位置を通過する修正仮進路を決定する。
【0067】
ステップS114において、制御部5の動作決定部54は、自律移動装置100の現在の進路と、ステップS113で決定した修正仮進路との交点I2まで、自律移動装置100を移動させる。これにより、自律移動装置100の移動が障害物に阻害される事態が回避される。
【0068】
ステップS115において、制御部5の動作決定部54は、自律移動装置100の追従対象200への併走追従状態を維持することが可能か否かを判定する。併走追従状態の維持が可能であると判定した場合(ステップS115:YES)、の動作決定部54は、処理をステップS13に戻し、そうでない場合(ステップS115:NO)、処理を終了させる。
【0069】
以上のような制御により、自律移動装置100の追従対象200への併走追従状態において追従対象200が進路を変更しようとした場合、障害物の有無にかかわらず、追従対象200の変更後の進路に合わせて自律移動装置100の進路を確定させることができる。
【0070】
以下では、図4にて説明した制御によって自律移動装置100が実際にどのような動作を行うかについて、具体例を挙げて説明する。
【0071】
<第1動作:障害物なし、かつ最近傍距離Dminが閾値距離D3未満の場合>
まず、自律移動装置100の仮進路上に障害物がなく、かつ、最近傍距離Dminが閾値距離D3未満である場合、すなわち、図4のフローチャートにおいてステップS17の処理において実行される動作(第1動作)について説明する。
【0072】
図5A図5Dは、仮進路上に障害物がなく、かつ、最近傍距離Dminが閾値距離D3未満である場合に実行される第1動作について説明するための図である。なお、図5A図5D、後述の図6A図6D、および図7A図7Dにおいて、自律移動装置100および追従対象200の向きを示すため、それぞれ前側に□を付して示している。
【0073】
図5Aには、直進する追従対象200に併走して追従する自律移動装置100が示されている。図5Aに示す例では、自律移動装置100は、追従対象200の左側、かつ距離Dsetだけ離れた位置を追従対象200に追従して移動している。図5Aにおいて、追従対象200の現在の推定進路C200_pおよび自律移動装置100の進路C100_pが破線の矢印で示されている。
【0074】
図5Bには、進路C200_pに沿って移動していた追従対象200が、進路を変更しようとしている様子が示されている(図4のステップS13の処理)。図5Bでは、追従対象200の向きが推定進路C200_pに対してθ1だけ変更されている。このような場合、自律移動装置100は、追従対象200の推定進路C200_pから、追従対象200の現在位置を中心にθ1だけ回転した方向に向かう、追従対象200の変更後の推定進路C200_n1を推定する。
【0075】
そして、自律移動装置100は、追従対象200の変更後の推定進路C200_n1と、自律移動装置100の現在位置との距離の最小値(最近傍距離)Dminを算出する。図5Bに示す例では、最近傍距離Dminが閾値距離D3未満であり、追従対象200が変更後の進路C200_n1に沿って移動する際に、自律移動装置100が移動の妨げとなってしまっている。
【0076】
このような場合、自律移動装置100は、追従対象200の変更後の推定進路C200_n1に基づいて、推定進路C200_n1から距離Dsetだけ離れた位置を維持する、自律移動装置100の新たな進路(仮進路)C100_n1を決定する(図4のステップS14の処理)。そして、図5Cに示すように、自律移動装置100は、現在の進路C100_pと仮進路C100_n1との交点I1まで移動する(図4のステップS17の処理)。図5Cに示す矢印A1は、自律移動装置100の交点I1までの移動を示す矢印である。図5Cに示すように、交点I1の位置は、追従対象200の進路変更を検知した時点の自律移動装置100の位置から、当初の進路C100_pに沿って若干後退した位置である。これにより、自律移動装置100が進路変更後の追従対象200の移動の妨げとなる事態を回避することができる。
【0077】
その後、図5Dに示すように、自律移動装置100は、追従対象200と同じ向きを向くように旋回動作を行う(図4のステップS110の処理)。この後、追従対象200が変更後の推定進路C200_n1に沿って移動を開始した場合、自律移動装置100も、仮進路C100_n1に沿って移動を開始する(図4のステップS111の処理)。このような第1動作により、併走追従状態において、追従対象200が自律移動装置100の方に進路を変更しようとした場合でも、追従対象200の進路変更後の移動の妨げとなることなく、併走追従状態を維持することができる。
【0078】
<第2動作:障害物なし、かつ最近傍距離Dminが閾値距離D3以上の場合>
次に、自律移動装置100の仮進路上に障害物がなく、かつ、最近傍距離Dminが閾値距離D3以上である場合、すなわち、図4のフローチャートにおいて、S18の処理が実行される場合に行われる第2動作について説明する。
【0079】
図6A図6Dは、仮進路上に障害物がなく、かつ、最近傍距離Dminが閾値距離D3以上である場合に行われる第2動作について説明するための図である。
【0080】
図6Aには、図5Aと同様に、直進する追従対象200に併走して追従する自律移動装置100が示されている。
【0081】
図6Bには、進路C200_pに沿って移動していた追従対象200が、進路を変更しようとしている様子が示されている(図4のステップS13の処理)。図6Bでは、追従対象200の向きが推定進路C200_pに対してθ2だけ変更されている。自律移動装置100は、追従対象200の推定進路C200_pから、追従対象200の現在位置を中心にθ2だけ回転した方向に向かう、追従対象200の変更後の推定進路C200_n2を推定する。
【0082】
そして、自律移動装置100は、追従対象200の変更後の推定進路C200_n2と、自律移動装置100の現在位置との距離の最小値(最近傍距離)Dminを算出する。図6Bに示す例では、最近傍距離Dminが閾値距離D3以上であり、追従対象200が変更後の進路C200_n2に沿って移動する際に、自律移動装置100が移動の妨げとはならない。
【0083】
このような場合、自律移動装置100は、追従対象200の変更後の推定進路C200_n2に基づいて、推定進路C200_n1から距離Dsetだけ離れた位置を維持する、自律移動装置100の新たな進路(仮進路)C100_n2を決定する(図4のステップS14の処理)。そして、自律移動装置100は、現在の位置で停止する(図4のステップS18の処理)。
【0084】
その後、図6Dに示すように、自律移動装置100は、追従対象200と同じ向きを向くように旋回動作を行う(図4のステップS110の処理)。この後、追従対象200が変更後の推定進路C200_n2に沿って移動を開始したとすると、自律移動装置100は、仮進路C100_n2に向かって移動を開始する(図4のステップS111の処理)。図6Dに示す矢印A2は、進路変更後に仮進路C100_n2に向かう移動の例を示す矢印である。このような第2動作により、併走追従状態において、自律移動装置100が移動の妨げとならない方向に追従対象200が進路を変更した場合、追従対象200の進路変更に合わせて、自律移動装置100もスムーズに進路変更させることができる。
【0085】
なお、上述の説明では、第2動作の例として、図6A図6Dに示すように、追従対象200が、自律移動装置100の存在する方向に進路を変更する場合について示した。しかしながら、追従対象200が自律移動装置100とは反対方向に進路を変更した場合も、自律移動装置100は、第2動作を実行すればよい。
【0086】
<第3動作:仮進路上に障害物がある場合>
次に、自律移動装置100の仮進路上に障害物がある場合、すなわち、図4のフローチャートにおいて、S113の処理が実行される場合に行われる第3動作について説明する。
【0087】
図7A図7Dは、仮進路上に障害物300が存在する場合に行われる第3動作について説明するための図である。
【0088】
図7Aには、図5Aおよび図6Aと同様に、直進する追従対象200に併走して追従する自律移動装置100が示されている。
【0089】
図7Bには、進路C200_pに沿って移動していた追従対象200が、進路を変更しようとしている様子が示されている(図4のステップS13の処理)。図7Bでは、追従対象200の向きが推定進路C200_pに対してθ3だけ変更されている。自律移動装置100は、追従対象200の推定進路C200_pから、追従対象200の現在位置を中心にθ3だけ回転した方向に向かう、追従対象200の変更後の推定進路C200_n3を推定する。
【0090】
そして、自律移動装置100は、追従対象200の変更後の推定進路C200_n3に基づいて、推定進路C200_n1から距離Dsetだけ離れた位置を維持する、自律移動装置100の新たな進路(仮進路)C100_n3を決定する(図4のステップS14の処理)。そして、自律移動装置100は、現在位置から閾値距離D1以内に、仮進路C100_n3上に障害物300が存在することを検知する(図4のステップS15:YES)。このような場合、自律移動装置100が仮進路上を実際に移動することはできないため、自律移動装置100の存在が追従対象200の進路変更後の移動の妨げとなるか否かにかかわらず、仮進路を修正する必要が生じる。
【0091】
このため、図7Cに示すように、自律移動装置100は、仮進路C100_n3に基づいて、検知された障害物300から閾値距離D2以上離れた位置を通過する修正仮進路C100_n3_rを決定する(図4のステップS113の処理)。そして、自律移動装置100は、現在の進路C100_pと修正仮進路C100_n3_rとの交点I2まで移動する(図4のステップS114の処理)。図7Cに示すように、交点I2の位置は、追従対象200の進路変更を検知した時点の自律移動装置100の位置から、当初の進路C100_pに沿って若干前進した位置である。これにより、進路変更後に自律移動装置100が障害物300と接触する事態を回避することができる。
【0092】
なお、自律移動装置100が障害物300を避けて前進する動作は、追従対象200にとっては予想できない動作である可能性がある。このため、前進動作を行う前に、自律移動装置100は、図示しない報知手段(スピーカーから出力される音声、またはランプの点灯、点滅など)によって、前進することを追従対象200に対して報知するようにしてもよい。
【0093】
そして、図7Dに示すように、自律移動装置100は、交点I2まで移動する。図7Dに示す矢印A3は、自律移動装置100の交点I2までの移動を示す矢印である。自律移動装置100が交点I2まで移動するのを見た追従対象200は、自らの進路を修正する必要に気づくはずである。このため、その後、自律移動装置100は、追従対象200の変更後の進路を再度推定し、再推定後の追従対象200の推定進路と自律移動装置100との最近傍距離Dminの大きさに基づいて、上述した第1動作あるいは第2動作へと移行する。
【0094】
<作用・効果>
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る自律移動装置100は、追従対象200と併走した状態で、追従対象200に追従して移動する自律移動装置100であって、追従対象200が進路を変更しようとする予兆を検知した場合に、追従対象200の変更後の進路である第1進路を推定する追従対象進路推定部53と、第1進路に沿って追従対象200が移動すると仮定した場合に、追従対象200と併走した状態で移動させるための自律移動装置100の第2進路を決定する進路決定部51と、予兆を検知した時点での自律移動装置100の位置および第1進路に基づいて、追従対象200が変更後の進路に沿って移動を開始するまで自律移動装置100を位置で停止させるか否かを決定する動作決定部54と、を有する。
【0095】
このような構成により、併走追従状態において、追従対象200が進路を変更しようとした場合に、追従対象200に合わせてスムーズに自らの進路を変更することができ、併走追従状態を維持することができる。これにより、自律移動装置100の利便性が向上する。
【0096】
また、本発明の実施の形態に係る自律移動装置100によれば、動作決定部54は、予兆を検知した時点での自律移動装置100の位置と第1進路との距離の最小値Dminが第1距離D3以上である場合に、追従対象200が変更後の進路に沿って移動を開始するまで自律移動装置100を、予兆を検知した時点での自律移動装置100の位置で停止させるように決定する。
【0097】
このような構成により、自律移動装置100は、追従対象200が進路を変更しようとした場合に、追従対象200に合わせてスムーズに自らの進路を変更することができ、併走追従状態を維持することができる。
【0098】
また、本発明の実施の形態に係る自律移動装置100によれば、動作決定部54は、予兆を検出した時点での自律移動装置100の位置と第1進路との距離の最小値Dminが第1距離D3未満である場合に、自律移動装置100を、予兆を検知する前の自律移動装置の進路と第2進路との交点まで移動させるように決定する。
【0099】
このような構成により、自律移動装置100は、自律移動装置100が移動の妨げとなるような進路に進路変更しようとした場合に、追従対象200の移動の妨げとならない位置まで自律移動装置100を移動させることができる。これにより、追従対象200および自律移動装置100のスムーズな進路変更が可能となる。
【0100】
以上説明した自律移動装置100は、例えば介護現場や商業施設などの施設において、利用者が自律移動装置100に搭乗した状態で、施設スタッフまたは家族などと横に並んだまま移動する事ができる。これにより、利用者(被介護者)と施設スタッフまたは家族など(介護者)とのコミュニケーションを増加させたり、利用者が心理的な寄り添い感を多く感じるようになったりなどの効果が得られ、利用者の満足を高めることが期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、追従対象に併走した状態で、追従して自律移動する自律移動装置に有用である。
【符号の説明】
【0102】
1 本体
2 駆動輪
3 従輪
4 情報処理部
5 制御部
6 障害物センサ
7 追従対象センサ
8 進路変更検知センサ
41 追従対象検知部
42 障害物検知部
43 追従対象位置検知部
44 障害物位置検知部
45 進路変更判定部
46 自己位置検知部
51 進路決定部
52 駆動制御部
53 追従対象進路推定部
54 動作決定部
100 自律移動装置
200 追従対象
300 障害物

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D