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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】中容器を有する化粧料容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/00 20060101AFI20230519BHJP
【FI】
A45D40/00 L
A45D40/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019010700
(22)【出願日】2019-01-24
(65)【公開番号】P2019126737
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】P 2018011012
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505090595
【氏名又は名称】株式会社佐野商会
(73)【特許権者】
【識別番号】000126528
【氏名又は名称】株式会社アサヒペン
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】佐野 則夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 典次
(72)【発明者】
【氏名】上村 裕一
(72)【発明者】
【氏名】木村 聡
(72)【発明者】
【氏名】片岡 陽平
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-035873(JP,A)
【文献】特開2011-235593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋と、中容器と、外容器とを含む化粧料容器であって、
前記外容器の内側にのみ、少なくとも一層の塗膜が形成されており、
前記少なくとも一層の塗膜は、前記外容器の内側に形成された第1塗膜を含み、
前記第1塗膜は、ビヒクルとアルミ箔粒とを含み、
前記外容器の外側の20度鏡面光沢度が150以上であり、
前記外容器の外側の60度鏡面光沢度が120以上であり、
前記外容器の紫外線遮蔽率が95%以上であり、
前記外容器の可視光遮蔽率が95%以上であり、
前記第1塗膜の前記ビヒクルは合成樹脂を含み、
前記第1塗膜は、該第1塗膜に含まれる合成樹脂の固形分100重量部に対して前記アルミ箔粒を50~200重量部含み、
前記少なくとも一層の塗膜は、第1塗膜と第2塗膜とを含む2層構造であることを特徴とする、化粧料容器。
【請求項2】
前記第2塗膜は、ビヒクルと顔料および/または染料とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の化粧料容器。
【請求項3】
前記第1塗膜は、前記外容器の内側表面に形成されており、
前記第2塗膜は、前記第1塗膜の前記外容器の内側表面とは反対側の面上に形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の化粧料容器。
【請求項4】
前記第2塗膜は、前記外容器の内側表面に形成されており、
前記第1塗膜は、前記第2塗膜の前記外容器の内側表面とは反対側の面上に形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の化粧料容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中容器を有する化粧料容器に係り、より詳しくは、中容器に充填した化粧料の光による変性を防止でき、光沢が高く、重厚感のある中容器を有する化粧料容器を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、蓋と、中容器と、外容器とを備える化粧料容器が用いられている。
例えば、特許文献1には、加飾を施した外容器内に内容器(中容器)を収容した二重容器であって、前記外容器は、少なくとも前記加飾を施した部分が透明または半透明であり、前記加飾は、外層側にあり直接視認可能な表面部と、前記表面部の内層側にあり、前記内容器の外表面の色と同系色の色を有する裏面部と、を有することを特徴とする二重容器が開示されている。
また、内容器の外側表面は、高輝度の金属調の塗装、クロムメッキ、金メッキ、蒸着等の適宜手段により鏡面(光沢)処理が施された反射面であることが開示されている。
【0003】
上記したような従来の化粧料容器では、化粧料が充填された中容器を、透明または半透明の外容器に着脱自在に収容し、蓋により化粧料を密閉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5770075号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような従来の中容器を有する化粧料容器は、透明または半透明の外容器および塗装等により鏡面(光沢)処理が施された反射面(すなわち、光沢面)である外側表面を備える中容器を備えている。
それゆえに、中容器の外側表面の反射面での光の反射が化粧料容器の高級感を表現するといった長所を有する。
【0006】
しかしながら、反射する光沢面は、塗装等により形成されているため、塗料の塗りムラや塗膜の凹凸によって、平滑性が低い。そのため、化粧料容器の外側から入ってきた光は、塗膜表面の粗い光沢面で反射するため、光は乱反射(拡散反射)する。
そのため、化粧料容器の光沢は十分に満足できるものではなく、また塗装で一定の光沢を有する化粧料容器を得るには熟練した塗装技術が必要であった。
【0007】
また、光沢面が中容器の外側表面であるため、中容器の外側表面で反射した光は透明または半透明の外容器を通過して化粧料容器の外側に出る。
それゆえに、反射した光が化粧料容器の外側に出るまでに、中容器と外容器の間の空間で乱反射するため、化粧料容器の外側から視認した化粧料容器の光沢がより低くなり、高級感が損なわれるという問題もあった。
【0008】
さらに、従来の中容器を有する化粧料容器は、中容器が化粧料容器の外側から視認できるため、化粧料の内容量が少なく見え、化粧料容器自体が小さく見えてしまうため、化粧料容器に重厚感がでないという問題もあった。また、中容器の光の遮蔽が不十分であった場合、光により内容物が経時に変性し、内容物の長期保存には不適であるなどの問題もあった。
【0009】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、中容器に充填した化粧料の光による変性を長期に防止でき、光沢が高く、重厚感のある中容器を有する化粧料容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、蓋と、中容器と、外容器とを含む化粧料容器であって、
前記外容器の内側にのみ、少なくとも一層の塗膜が形成されており、
前記少なくとも一層の塗膜は、前記外容器の内側に形成された第1塗膜を含み、
前記第1塗膜は、ビヒクルとアルミ箔粒とを含み、
前記外容器の外側の20度鏡面光沢度が150以上であり、
前記外容器の外側の60度鏡面光沢度が120以上であり、
前記外容器の紫外線遮蔽率が95%以上であり、
前記外容器の可視光遮蔽率が95%以上であることを特徴とする、化粧料容器に関する。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記第1塗膜の前記ビヒクルは合成樹脂を含み、
前記第1塗膜は、該第1塗膜に含まれる合成樹脂の固形分100重量部に対して前記アルミ箔粒を50~200重量部含むことを特徴とする、請求項1に記載の化粧料容器に関する。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記少なくとも一層の塗膜は、第1塗膜と第2塗膜とを含む2層構造であり、
前記第2塗膜は、ビヒクルと顔料および/または染料とを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の化粧料容器に関する。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記第1塗膜は、前記外容器の内側表面に形成されており、
前記第2塗膜は、前記第1塗膜の前記外容器の内側表面とは反対側の面上に形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の化粧料容器に関する。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記第2塗膜は、前記外容器の内側表面に形成されており、
前記第1塗膜は、前記第2塗膜の前記外容器の内側表面とは反対側の面上に形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の化粧料容器に関する。
【0015】
また、本発明は、蓋と、中容器と、外容器とを含む化粧料容器であって、
前記外容器の内側にのみ、少なくとも一層の塗膜が形成されており、
前記少なくとも一層の塗膜は、前記外容器の内側に形成された第1塗膜を含み、
前記第1塗膜は、ビヒクルとアルミ箔粒とを含み、
前記外容器の外側の60度鏡面光沢度が300以上であり、
前記外容器の紫外線遮蔽率が95%以上であり、
前記外容器の可視光遮蔽率が95%以上であることを特徴とする、化粧料容器に関する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、中容器を有する化粧料容器が、蓋と、中容器と、外容器とを含み、前記外容器の内側にのみ、少なくとも一層の塗膜が形成されており、前記少なくとも一層の塗膜の前記外容器の内側に形成された第1塗膜を含み、前記第1塗膜は、ビヒクルとアルミ箔粒とを含み、化粧料容器の外側から入ってくる光の反射面(すなわち、外容器の内側表面に塗布されて形成された塗膜の外容器との対向面である光沢面)は、外容器の内側表面上に形成されている。外容器の内側表面は滑らかであるため、光沢面も滑らかとなる。それゆえに、光の乱反射を抑えることができ、前記外容器の外側の20度鏡面光沢度が150以上であり、前記外容器の外側の60度鏡面光沢度が120以上である高い光沢を備えた鏡面状の化粧料容器を提供できる。また、前記外容器の紫外線遮蔽率が95%以上であり、前記外容器の可視光遮蔽率が95%以上であるために長期的に内容物を光による変性から保護することができる。
【0017】
加えて、光沢面が化粧料容器の外側近傍に形成されているので、光沢面で反射した光が化粧料容器の外側に出るまでに、さらに屈折することや反射することを防ぐことができるため、高い光沢を維持した化粧料容器を提供できる。
【0018】
また、光沢面が化粧料容器の外側近傍に形成されているので、化粧料容器の外側から中容器が見えない。それゆえに、化粧料の内容量が少なく見えて、化粧料容器自体が小さく見えることがなく、化粧料容器に重厚感を出すことができる。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、前記第1塗膜の前記ビヒクルは合成樹脂を含み、前記第1塗膜は、該第1塗膜に含まれる合成樹脂の固形分100重量部に対して前記アルミ箔粒を50~200重量部含むため、高い光沢を有する塗膜を提供することができる。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、前記少なくとも一層の塗膜は、第1塗膜と第2塗膜とを含む2層構造であり、前記第2塗膜は、ビヒクルと顔料および/または染料とを含むため、可視光遮蔽率を高めることができ、中容器の視認性をより減少させることができ、化粧料容器により重厚感を出すことができる。さらに、化粧料容器の光沢をより高めることができる。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、前記第1塗膜は、前記外容器の内側表面に形成されており、前記第2塗膜は、前記第1塗膜の前記外容器の内側表面とは反対側の面上に形成されているため、より完全に中容器に充填された化粧料の紫外線変性を防止することができる。また、可視光遮蔽率を高めることで、中容器の視認性をより減少させることができ、化粧料容器により重厚感を出すことができる。さらに、化粧料容器の光沢をより高めることができる。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、前記第2塗膜は、前記外容器の内側表面に形成されており、第2塗膜を所望の色彩とする、あるいは第2塗膜に所望の模様を施すことで、化粧料容器の美的外観をより良くすることができる。
【0023】
また、本発明によれば、中容器を有する化粧料容器が、蓋と、中容器と、外容器とを含み、前記外容器の内側にのみ、少なくとも一層の塗膜が形成されており、前記少なくとも一層の塗膜の前記外容器の内側に形成された第1塗膜を含み、前記第1塗膜は、ビヒクルとアルミ箔粒とを含み、化粧料容器の外側から入ってくる光の反射面(すなわち、外容器の内側表面に塗布されて形成された塗膜の外容器との対向面である光沢面)は、外容器の内側表面上に形成されている。外容器の内側表面は滑らかであるため、光沢面も滑らかとなる。それゆえに、光の乱反射を抑えることができ、前記外容器の外側の60度鏡面光沢度が300以上である高い光沢を備えた鏡面状の化粧料容器を提供できる。また、前記外容器の紫外線遮蔽率が95%以上であり、前記外容器の可視光遮蔽率が95%以上であるために長期的に内容物を光による変性から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る中容器を有する化粧料容器の概略縦断面図である。
図2図1の要部Aの拡大図である。
図3図1の要部Aの拡大図であって、外容器の内側表面上に第1塗膜が形成され、第1塗膜の外容器の内側表面とは反対側の面上に第2塗膜が形成されている実施形態を示す図である。
図4図1の要部Aの拡大図であって、外容器の内側表面上に第2塗膜が形成され、第2塗膜の外容器の内側表面とは反対側の面上に第1塗膜が形成されている実施形態を示す図である。
図5】本発明に係る中容器を有する化粧料容器の一実施例の一部切り欠き外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る中容器を有する化粧料容器の好適な実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る中容器を有する化粧料容器の概略縦断面図である。図2は、図1の要部Aの拡大図である。図3は、図1の要部Aの拡大図であって、外容器の内側表面上に第1塗膜が形成され、第1塗膜の外容器の内側表面とは反対側の面上に第2塗膜が形成されている実施形態を示す図である。図4は、図1の要部Aの拡大図であって、外容器の内側表面上に第2塗膜が形成され、第2塗膜の外容器の内側表面とは反対側の面上に第1塗膜が形成されている実施形態を示す図である。図5は、本発明に係る中容器を有する化粧料容器の一実施例の一部切り欠き外観図である。
【0026】
図1図5に示す如く、本発明に係る中容器を有する化粧料容器(1)は、蓋(2)と、中容器(3)と、外容器(4)とを備えている。
さらに、本発明に係る中容器を有する化粧料容器(1)には、外容器(4)の内側表面(41)にのみ、少なくとも一層の塗膜(C)が形成されている。
また、中容器(3)の内部空間(S)に収める内容物は、紫外線、可視光線、赤外線などの光によって変性し易い成分を含有するものであるときに本発明に係る化粧料容器(1)は特に効果的であるため、例えば、化粧料である。
【0027】
蓋(2)は、外容器(4)と着脱自在に係合でき、外容器(4)に係合した際、蓋(2)が中容器(3)の開口部に密着することにより外容器(4)内に収容された中容器(3)を密閉できるように構成されている。
蓋(2)の形状は特に限定されず、外容器(4)と着脱自在に係合でき、外容器(4)に係合した際、外容器(4)内に収容された中容器(3)を密閉できる形状であればいかなる形状であっても良い。例えば、図1に示す如く、縦断面視略コ字状であっても良い。
【0028】
蓋(2)と外容器(4)との係合手段は特に限定されず、スクリュー嵌合等、蓋と容器を係合させるために通常用いられ、当業者に自明の係合手段であればいかなるものであっても良い。例えば、外容器(4)の係合部(4e)に雄ねじを形成し、蓋(2)の係合部(2e)に雌ねじを形成し、雄ねじと雌ねじを螺合させることにより蓋(2)と外容器(4)を螺合させても良い。また、外容器(4)の係合部(4e)と蓋(2)の係合部(2e)の寸法を調整し、外容器(4)の係合部(4e)と蓋(2)の係合部(2e)を嵌合させても良い。
内部空間(S)の密閉性を高めるために、蓋(2)あるいは外容器(4)にパッキン等の弾性部材(図示せず)を設けても良い。
【0029】
蓋(2)の材質は、紫外線、可視光線、赤外線などの光の透過を防止でき、中容器(3)に充填された内容物を密閉できる材質であることが望ましい。
例えば、合成樹脂や金属等が挙げられるが、これに限定されず、光の透過を防止できることが自明である材質であればいかなるものを用いても良い。
蓋(2)の厚みは特に限定されず、光の透過を防止でき、中容器(3)に充填された内容物を密閉できる厚みであればいかなる厚みであってもよい。
蓋(2)は単層でもよく複数の層(例えば、金属の層と合成樹脂の層の2層構造等)から形成されていても良い。
【0030】
中容器(3)は、外容器(4)に着脱自在に収容できるように構成されている。
中容器(3)は、内容物を収容する内部空間(S)を有し、収容した内容物と接触する内側表面(31)と、中容器(3)を外容器(4)に収容した際に塗膜(C)と対向する外側表面(32)を備えている。
中容器(3)は、図1に示す如く、外容器(4)に収容された際、中容器(3)の外側表面(32)と外容器(4)の内側表面(41)上に設けられた塗膜(C)との間に隙間(空隙)(G)があっても、なくてもよい。
【0031】
外容器(4)への中容器(3)の収容の形態は特に限定されない。例えば、図1に示す如く、中容器(3)にフランジ(33)を設け、このフランジ(33)を外容器(4)の上端部(43)に載置することにより中容器(3)を外容器(4)に収容しても良い。また、外容器(4)と中容器(3)を嵌合させる等して中容器(3)を外容器(4)に収容しても良い。
【0032】
中容器(3)の形状は特に限定されず、外容器(4)に着脱自在であってもよく、一度着けると使用時は外れない形に収容する形状であればいかなる形状であっても良い。
例えば、中容器(3)の形状は、図1に示す如く、縦断面視略U字状でもよく縦断面視略V字状であっても良い。
中容器(3)は、詰め替え用の容器(レフィル容器)とすることが可能である。
中容器(3)は単層でもよく複数の層(例えば、合成樹脂の層とEVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)等のバリア層の2層構造等)から形成されていても良い。
【0033】
中容器(3)の材質は、中容器(3)に収容した内容物が変性しない、あるいは変性し難い材質(すなわち、収容物に対して不活性である材質)であることが望ましい。
中容器(3)の材質は、例えば、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)等の合成樹脂が挙げられるがこれに限定されず、化粧料を収容する容器に通常用いられ、当業者に自明の材質であればいかなる材質でも用いることができる。
尚、中容器(3)の材質は、中容器(3)に収容する化粧料の性質に合わせて適宜選択することができる。
【0034】
外容器(4)は、中容器(3)を収容して、蓋(2)と着脱自在に係合できるように構成されている。
外容器(4)は、化粧料容器(1)の外側に面する外側表面(42)、内側表面(41)、係合部(4e)、および上端部(43)を備えている。
外容器(4)の内側表面(41)には少なくとも一層の塗膜(C)が形成されている。
外容器(4)の形状は特に限定されず、蓋(2)と着脱自在に係合でき、中容器(3)を着脱自在であってもよく、一度着けると使用時は外れない形に収容する形状であってもよい。
例えば、外容器(4)の形状は、図1に示す如く、縦断面視略U字状等である。
【0035】
外容器(4)は透明、または外容器(4)の内側表面(41)上に設けられた塗膜(C)が外容器(4)の外側表面(42)側から視認できる程度に半透明である。
外容器(4)が透明または半透明であることにより、外容器(4)と外容器(4)の内側表面(41)上に設けられた塗膜(C)間の光の反射による輝きが化粧料容器(1)の高級感を表現する。
【0036】
外容器(4)の材質は、外容器(4)を、透明、または外容器(4)の内側表面(41)上に設けられた塗膜(C)が外容器(4)の外側表面(42)側から視認できる程度に半透明とすることができる材質であればいかなるものを用いても良い。
外容器(4)の材質には、例えば、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル)、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)樹脂、ポリスチレン等を用いることができる。
【0037】
外容器(4)の内側表面(41)は、滑らか(表面粗さが小さい)であることが望ましく、滑らかで無ければ研磨等で滑らかにしても良い。
外容器(4)の内側表面(41)が滑らかであることにより、塗膜(C)の内側表面(C11)との対向面(Ca)(すなわち、光沢面)が滑らかに形成される(図2参照)。
それゆえに、外容器(4)の外側表面(42)から入ってきた光(L)が、塗膜(C)の対向面(Ca)で乱反射し難くなるため、外容器(4)の外側表面(42)の光沢が高くなる。
このように、外容器(4)の内側表面(41)が滑らかであることにより、滑らかな光沢面を備えた塗膜(C)を容易に形成することができる。
それゆえに、本発明において、滑らかな光沢面を備えた塗膜(C)は、熟練した塗装技術を必要とせずに形成することができるため、一定の光沢の塗膜(C)を容易に作製することができる。そのため、中容器を有する化粧料容器(1)の製造コストを低減でき、歩留まりも向上する。
【0038】
図2に示す如く、少なくとも一層の塗膜(C)は、外容器(4)の内側表面(41)に形成されており、少なくとも一層の塗膜(C)は第1塗膜(C1)を含んでいる。
少なくとも一層の塗膜(C)が外容器(4)の内側表面(41)に形成されていることにより、化粧料容器(1)の使用時に、塗膜(C)に使用者の手等が直接触れることがないため、使用によって塗膜(C)が汚れたり、剥がれたりすることがなく、長期間安定して本発明に係る化粧料容器(1)を使用することができる。
【0039】
第1塗膜(C1)は、合成樹脂(ビヒクル)とアルミ箔粒とを含んでいる。
第1塗膜(C1)に含まれる合成樹脂は、第一成分としてアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等のいずれかまたはその混合物と、第二成分としてニトロセルロース樹脂(NC)、セルロース・アセテート・ブチレート樹脂等の繊維素系樹脂のいずれかまたはその混合物が挙げられる。その理由は、第一成分が添加されていないと外容器(4)の内側表面(41)および第2塗膜(C2)との密着性が低下し、第二成分である繊維素系樹脂が添加されていないとアルミ箔粒の配向が乱れひいては光沢が低下するため、いずれの場合も望ましくないためである。
【0040】
合成樹脂固形分中に含まれる第一成分の割合は20~95重量%であり、望ましくはアクリル樹脂、ウレタン樹脂が40~90重量%とする。合成樹脂固形分中に含まれる第二成分の割合は、5~80重量%であり、望ましくはニトロセルロース樹脂(NC)が10~60重量%とする。その理由は、第一成分の割合が20重量%未満(第二成分が80重量%を超える)であれば、密着性が低下し、95重量%を超えると(第二成分が5重量%未満)、光沢が低下するため、いずれの場合も望ましくないためである。
【0041】
第1塗膜(C1)に含まれるアルミ箔粒は、アルミ顔料であれば特に限定されるものではないが、蒸着アルミ膜を粉砕したアルミ顔料であることが望ましい。この発明において使用するアルミ箔粒は、例えば基材フィルムにアルミ膜を蒸着させ、基材フィルムからアルミ膜を粉砕してアルミ片とすることにより得られるものなどを使用することができる。アルミ箔粒の厚みは0.001~0.04μmで、粒径は5~30μmのものが望ましい。その理由としては、厚み0.001μm未満または粒径5μm未満のアルミ箔粒の製造は困難であること、厚み0.04μmまたは粒径30μmのいずれかを超えるとアルミ箔粒の配向が乱れ、光沢が低下するためいずれの場合も望ましくないためである。
【0042】
第1塗膜(C1)は、合成樹脂固形分100重量部に対し、アルミ箔粒固形分を、50~200重量部含むことが望ましく、100~200重量部とすることがさらに望ましい。その理由は、アルミ箔粒固形分を50重量部未満にすると光沢が低下し、アルミ箔粒の固形分が200重量部を超えると、外容器(4)の内側表面(41)または第2塗膜に対する密着性が低下することため、いずれの場合も望ましくないためである。
【0043】
第1塗膜(C1)は、さらに顔料および/または染料を含んでいても良い。例えば、第1塗膜(C1)には、200nm以下の粒度に分散させたナノ分散顔料を配合することもできる。第1塗膜(C1)にナノ分散顔料を配合することで、金メッキ調やブロンズ調等の着色鏡面に仕上げることもできる。ナノ分散顔料としては、透明酸化鉄、透明酸化チタン等の無機顔料や、DPPレッド、キナクリドンレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、シオキサジンバイオレット等の有機顔料が挙げられ、200nm以下に分散したものであればこれに限定されない。その理由は、200nmを超える粒度の顔料を用いた場合は、使用する顔料が少量であったとしても、光沢が低下し、鏡面状にすることができないためである。
【0044】
第1塗膜(C1)に用いる染料は、特に限定されず、赤色、緑色、青色、あるいはこれらの任意の量の組み合わせ、または赤紫、青緑、黄色、あるいはこれらの任意の量の組み合わせを含む、様々な色の染料を用いることができる。
例えば、VALIFAST(色名:ブラック、ブルー、ブラウン、グリーン、オレンジ、ピンク、レッド、バイオレット、イエロー)(オリエント化学工業社製)、シークステイン(色名:ブラック、イエロー、オレンジ、レッド、グリーン、オーク、ブラウン、オールナット、ブルー)(和信化学工業社製)、バンチャック(色名:ブラック、スミクロ、レッド、スカーレット、ブラウン、オレンジ、イエロー、レモンイエロー、グリーン、ブルー、マホガニ、ダークマホガニ、オーク、ダークオーク、チーク、チェスナット、オールナット、ダークオールナット、クワイロ、ローズ)(玄々化学工業社製)等を第1塗膜(C1)に用いることができる。
【0045】
200nm以下に分散させたナノ分散顔料および/または染料の割合は、アルミ箔粒100重量部に対してナノ分散顔料および/または染料が10~100重量部となるように配合することが望ましい。その理由は、ナノ分散顔料および/または染料が10重量部未満では、色が薄くなり、ナノ分散顔料および/または染料が100重量部を超えると、光沢が低下し、メタリック調にはなるが目的とする鏡面状にすることができず、いずれの場合も望ましくないためである。
【0046】
第1塗膜(C1)には、アルミ箔粒の沈降を防ぐ為の沈降防止剤や耐候性を向上させる為の紫外線防止剤(紫外線散乱剤と紫外線吸収剤を含む)、光安定化剤、化粧料等の内容物の酸化を防止する為の酸化防止剤等の添加剤を配合することもできる。沈降防止剤としては、一般に使用される物であれば特に限定されないが、酸化ポリエチレンワックス、シリカ等が挙げられる。紫外線防止剤としては、一般に使用される物であれば特に限定されないが、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0047】
第1塗膜(C1)の膜厚は、0.1~5μmであればよいが、望ましくは0.1~3μmであり、さらに望ましくは0.1~1μmとすることがよい。その理由は、第1塗膜(C1)の膜厚が0.1μm未満では、アルミ箔粒の粒子が目立って光沢が低下し、鏡面状に仕上がらず、5μmを超える膜厚にしても光沢の向上は望めず、しかも作業工数が増えることから、いずれの場合も望ましくないためである。
【0048】
上記の通り、第1塗膜(C1)を外容器(4)の内側に設けることにより、外容器(4)外側の20度鏡面光沢度が150以上であり、外容器(4)外側の60度鏡面光沢度が120以上である非常に鮮映性の高い鏡面状の仕上げにすることが可能となる。更に外容器(4)の紫外線遮蔽率が95%以上となり、外容器(4)の可視光遮蔽率が95%以上となる。本発明に係る化粧料容器(1)は、上述の光沢度、紫外線遮蔽率、可視光遮蔽率を備えることにより、中容器に充填した内容物の光による劣化を防止でき、光沢が高く、重厚感を備えることができる。
【0049】
第1塗膜(C1)の塗装方法は、スプレー塗装が望ましく、好適には、エアースプレー塗装である。その理由は、スプレー塗装がプラスチック基材上に薄く均一に塗膜形成することができるためである。
【0050】
第1塗膜(C1)に使用する塗料は、その塗料組成中の全固形分が0.1~3重量%であることが望ましい。
その理由は、塗料固形分を0.1重量%未満とすると、膜厚がつかないため60度鏡面光沢度が120以上とならず、3重量%を超えるとアルミ箔粒の配向が乱れ、光沢が低下することから、いずれの場合も望ましくないためである。
【0051】
第1塗膜(C1)に使用する塗料の粘度は、20~40秒(温度が23℃、オリフィス径が3mmの条件でフローカップ法により測定)であることが望ましいが、さらに望ましくは、20~35秒である。
その理由は、塗料の粘度が40秒を超えると、外容器(4)の内側表面(41)あるいは第2塗膜(C2)上にアルミ箔粒が均一に塗膜形成することが困難となるためである。
【0052】
スプレーの塗装圧は、0.05MPa~0.3MPaで行うことが望ましい。
その理由は、0.05MPa未満では、塗装することが困難であり、0.3MPaを超えると、薄く均一に塗膜形成することが困難となるため、いずれの場合も望ましくないためである。
【0053】
第1塗膜(C1)の外容器(4)の内側表面(41)とは反対側の面上には保護層を設けても良い。保護層は、塗料、フィルム、紙等の任意の材質を用いて、接着等の任意の方法を用いて設けることができる。
保護層を設けることで、使用者の手が接触すること等により第1塗膜(C1)のアルミ箔粒が第1塗膜(C1)から剥がれ落ちてしまうことを防止できる。
【0054】
図3に示す如く、少なくとも一層の塗膜(C)は、第1塗膜(C1)と第2塗膜(C2)とを含む2層構造であっても良く、第1塗膜(C1)は、外容器(4)の内側表面(41)に形成されており、第2塗膜(C2)は、第1塗膜(C1)の外容器(4)の内側表面(41)とは反対側の面上に形成されている。
【0055】
第2塗膜(C2)の膜厚は、1~50μmとすることが望ましく、さらに望ましくは1~30μmである。その理由は、第2塗膜(C2)の膜厚を1μm未満とすると、第2塗膜(C2)の隠蔽性が低下し、第2塗膜(C2)の膜厚を、50μmを超えるものとすると、第2塗膜(C2)の残留溶剤が第1塗膜(C1)の合成樹脂を溶解させ、アルミ箔粒の並びを悪くし、化粧料容器(1)の光沢を低下させ、いずれの場合も望ましくないためである。
【0056】
第2塗膜(C2)は、合成樹脂(ビヒクル)と顔料および/または染料を含む。
第2塗膜(C2)に用いる顔料はとくに限定されないが、例えば、隠蔽性が良い、酸化チタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、カーボンブラックなどが挙げられ、望ましくはカーボンブラックが使用される。
【0057】
第2塗膜(C2)に用いる染料は、特に限定されず、赤色、緑色、青色、あるいはこれらの任意の量の組み合わせ、または赤紫、青緑、黄色、あるいはこれらの任意の量の組み合わせを含む、様々な色の染料を用いることができる。
例えば、VALIFAST(色名:ブラック、ブルー、ブラウン、グリーン、オレンジ、ピンク、レッド、バイオレット、イエロー)(オリエント化学工業社製)、シークステイン(色名:ブラック、イエロー、オレンジ、レッド、グリーン、オーク、ブラウン、オールナット、ブルー)(和信化学工業社製)、バンチャック(色名:ブラック、スミクロ、レッド、スカーレット、ブラウン、オレンジ、イエロー、レモンイエロー、グリーン、ブルー、マホガニ、ダークマホガニ、オーク、ダークオーク、チーク、チェスナット、オールナット、ダークオールナット、クワイロ、ローズ)(玄々化学工業社製)等を第2塗膜(C2)に用いることができる。
第2塗膜(C2)に染料を用いた場合でも、外容器(4)の外側の20度鏡面光沢度が150以上であり、外容器(4)の外側の60度鏡面光沢度が120以上である、高い光沢度を具備した化粧料容器(1)とすることができる。
【0058】
第2塗膜(C2)のカーボンブラックと合成樹脂との比率は、合成樹脂固形分100重量部に対し、カーボンブラック1~20重量部が望ましいが、さらに望ましくは2~10重量部とする。その理由は、カーボンブラックの配合を1重量部未満とすると、隠蔽性が低下し、カーボンブラックの配合が20重量部を超えると、塗装時に粘度が高くなりすぎて分散しにくくなり、塗装表面を均一にすることが困難となることから、いずれの場合も望ましくないためである。
【0059】
カーボンブラック以外の顔料または染料を用いる場合、合成樹脂と顔料または染料の比率は、合成樹脂固形分100重量部に対し、顔料10~150重量部とすることが望ましい。その理由は、顔料または染料の配合を60重量部未満とすると、第2塗膜(C2)の遮蔽性が低下し、顔料または染料の配合が150重量部を超えると、塗装時に粘度が高くなりすぎて分散しにくくなり、いずれの場合も望ましくないためである。
より具体的には、酸化チタンの場合は60~150重量部、黄色酸化鉄および赤色酸化鉄の場合は10~40重量部が好ましい。その理由は、酸化チタンの配合を60重量部未満とすると、第2塗膜(C2)の遮蔽性が低下し、酸化チタンの配合が150重量部を超えると、塗装時に粘度が高くなりすぎて分散しにくくなり、いずれの場合も望ましくないためである。同様に、黄色酸化鉄および赤色酸化鉄を用いる場合も、その配合が10重量部未満とすると、第2塗膜(C2)の遮蔽性が低下し、40重量部を超えると、塗装時に粘度が高くなりすぎて分散し難くなりいずれの場合も望ましくないためである。また、第2塗膜(C2)に体質顔料である炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、タルク、クレー等を用いても良い。
【0060】
第2塗膜(C2)の染料と合成樹脂との比率は、合成樹脂固形分100重量部に対し、染料1~150重量部であることが望ましい。その理由は、染料の配合を1重量部未満とすると、隠蔽性が低下し、染料の配合が150重量部を超えると、塗装時に粘度が高くなりすぎて分散しにくくなり、塗装表面を均一にすることが困難となることから、いずれの場合も望ましくないためである。
【0061】
第2塗膜(C2)の合成樹脂成分としては、第1塗膜(C1)と密着する合成樹脂であれば特に種類は限定されないが、一般的にはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、繊維素系樹脂等が用いられるが、望ましくはアクリル樹脂、ウレタン樹脂が用いられる。
【0062】
第2塗膜(C2)には、顔料の沈降を防ぐ為の沈降防止剤や耐候性を向上させる為の紫外線防止剤(紫外線散乱剤と紫外線吸収剤を含む)、光安定化剤、化粧料等の内容物の酸化を防止する為の酸化防止剤等の添加剤を配合することもできる。沈降防止剤としては、一般に使用される物であれば特に限定されないが、酸化ポリエチレンワックス、シリカ等が挙げられる。紫外線防止剤としては、一般に使用される物であれば特に限定されないが、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0063】
第2塗膜(C2)の塗装方法としては、スプレー塗装であればよいが、望ましくはエアースプレー塗装がよい。
その理由は、第1塗膜(C1)の上に均一に塗膜形成することができるためである。塗料固形分、塗料粘度、スプレー塗装圧の条件は、塗料の種類により異なり、限定されるものではない。
【0064】
第2塗膜(C2)の塗料中に含まれる溶剤は、第1塗膜(C1)の合成樹脂を溶解させない弱溶剤であるアルコール系溶剤、エーテルアルコール系溶剤、脂肪族系溶剤、脂環族系溶剤、イソパラフィン系溶剤等の含有率を50~100重量%以上とすることが望ましいが、より望ましくは、前記弱溶剤が60~100重量%とする。その理由は、弱溶剤の含有率を50重量%未満とすると、第1塗膜(C1)を再溶解させ、アルミ箔粒の配向が乱れ、光沢が低下するためである。
【0065】
図4に示す如く、少なくとも一層の塗膜(C)は、第1塗膜(C1)と第2塗膜(C3)とを含む2層構造であっても良く、第2塗膜(C3)は、外容器(4)の内側表面(41)に形成されており、第1塗膜(C1)は、第2塗膜(C3)の外容器(4)の内側表面(41)とは反対側の面上に形成されている。第2塗膜(C3)は、合成樹脂(ビヒクル)と顔料および/または染料を含む。
【0066】
第2塗膜(C3)の膜厚は、50μm以下とすることが望ましく、さらに望ましくは30μm以下である。その理由は、第2塗膜(C3)の膜厚を、50μmを超えるものとすると、化粧料容器(1)の光沢を低下させ望ましくないからである。
【0067】
第2塗膜(C3)の顔料には、200nm以下の粒度に分散させたナノ分散顔料が挙げられる。第2塗膜(C3)にナノ分散顔料を配合することで、着色カラークリヤーの鏡面に仕上げることもできる。ナノ分散顔料としては、透明酸化鉄、透明酸化チタン等の無機顔料や、DPPレッド、キナクリドンレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、シオキサジンバイオレット等の有機顔料が挙げられ、200nm以下に分散したものであればこれに限定されない。その理由は、200nmを超える粒度の顔料を用いた場合は、使用する顔料が少量であったとしても、光沢が低下するためである。
【0068】
第2塗膜(C3)に用いる染料は、特に限定されず、赤色、緑色、青色、あるいはこれらの任意の量の組み合わせ、または赤紫、青緑、黄色、あるいはこれらの任意の量の組み合わせを含む、様々な色の染料を用いることができる。
例えば、VALIFAST(色名:ブラック、ブルー、ブラウン、グリーン、オレンジ、ピンク、レッド、バイオレット、イエロー)(オリエント化学工業社製)、シークステイン(色名:ブラック、イエロー、オレンジ、レッド、グリーン、オーク、ブラウン、オールナット、ブルー)(和信化学工業社製)、バンチャック(色名:ブラック、スミクロ、レッド、スカーレット、ブラウン、オレンジ、イエロー、レモンイエロー、グリーン、ブルー、マホガニ、ダークマホガニ、オーク、ダークオーク、チーク、チェスナット、オールナット、ダークオールナット、クワイロ、ローズ)(玄々化学工業社製)等を第2塗膜(C3)に用いることができる。
第2塗膜(C3)に染料を用いた場合でも、外容器(4)の外側の20度鏡面光沢度が150以上であり、外容器(4)の外側の60度鏡面光沢度が120以上である、高い光沢度を具備した化粧料容器(1)とすることができる。
【0069】
第2塗膜(C3)は合成樹脂を含む。ナノ顔料および/または染料と合成樹脂との比率は、合成樹脂固形分100重量部に対し、ナノ顔料および/または染料20重量部までが望ましいが、さらに望ましくは10重量部までとする。その理由は、ナノ顔料および/または染料の配合が20重量部を超えると、光沢が低くなるためである。
【0070】
第2塗膜(C3)の合成樹脂成分としては、第1塗膜(C1)および外容器(4)の内側表面(41)と密着する合成樹脂であれば特に種類は限定されないが、一般的にはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、繊維素系樹脂等が用いられるが、望ましくはアクリル樹脂、ウレタン樹脂が用いられる。
【0071】
第2塗膜(C3)には、顔料の沈降を防ぐ為の沈降防止剤や耐候性を向上させる為の紫外線防止剤(紫外線散乱剤と紫外線吸収剤を含む)、光安定化剤、化粧料等の内容物の酸化を防止する為の酸化防止剤等の添加剤を配合することもできる。沈降防止剤としては、一般に使用される物であれば特に限定されないが、酸化ポリエチレンワックス、シリカ等が挙げられる。紫外線防止剤としては、一般に使用される物であれば特に限定されないが、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。光安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0072】
第2塗膜(C3)の塗装方法としては、スプレー塗装であればよいが、望ましくはエアースプレー塗装がよい。その理由は、外容器(4)の上に均一に塗膜形成することができるためである。塗料固形分、塗料粘度、スプレー塗装圧の条件は、塗料の種類により異なり、限定されるものではない。また、第2塗膜(C3)を塗装後に塗装面を研磨等で滑らかにしても良い。
【実施例
【0073】
本発明をさらに具体的に説明するために、以下に実施例および比較例を挙げて説明するが、これら実施例等は本発明を限定するものではない。
【0074】
<蓋、中容器、外容器の材料>
実施例および比較例で用いた蓋、中容器、外容器は以下の材料により作製した。
蓋:ABS樹脂(白色)
中容器:ポリプロピレン樹脂(白色)
外容器:アクリルスチレン樹脂(透明)
【0075】
<塗膜の材料>
実施例および比較例で用いた材料は以下の通りである。
アクリル樹脂は、アクリディックA-165(DIC株式会社製、固形分45%、プラスチック用アクリル樹脂)を用いた。
繊維素系樹脂は、1/2NC(ニトロセルロース樹脂、固形分20%)を用いた。
アルミ箔粒は、メタルアーL-55350(ECKART社製、固形分10%、厚み0.001~0.01μm、最大粒径5~30μm)を用いた。
顔料は、NSP-CZ306(D)YELLOW(日弘ビックス株式会社製、イエロー顔料、有機顔料、平均粒径200nm以下)と、カーボンブラックMA-100(三菱化学株式会社製、カーボンブラック、無機顔料)を用いた。
染料は、バンチャク(レッド、ブルー、イエロー、ブラック)を用いた。
【0076】
<第1塗膜に使用する塗料の調製法>
実施例および比較例で用いた、第1塗膜(C1)に使用する塗料は以下の通りである。
第1塗膜A:メタルアーL-55350(7.0重量部)、アクリディックA-165(1.4重量部)、1/2NC(0.5重量部)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(50.0重量部)、ブチルセロソルブ(10.0重量部)、酢酸ブチル(31.1重量部)を攪拌混合し、調製した。
第1塗膜B:メタルアーL-55350(7.0重量部)、アクリディックA-165(2.8重量部)、1/2NC(0.5重量部)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(50.0重量部)、ブチルセロソルブ(10.0重量部)、酢酸ブチル(29.7重量部)を攪拌混合し、調製した。
第1塗膜C:メタルアーL-55350(7.0重量部)、アクリディックA-165(1.4重量部)、1/2NC(0.5重量部)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(50.0重量部)、ブチルセロソルブ(10.0重量部)、酢酸ブチル(29.7重量部)、NSP-CZ306(D)YELLOW(顔料)(5.0重量部)を攪拌混合し、調製した。
第1塗膜D:メタルアーL-55350(7.0重量部)、アクリディックA-165(1.4重量部)、1/2NC(0.5重量部)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(50.0重量部)、ブチルセロソルブ(10.0重量部)、酢酸ブチル(29.7重量部)、バンチャクイエロー(5.0重量部)を攪拌混合し、調製した。
【0077】
<第2塗膜に使用する塗料の調製法>
実施例および比較例で用いた、図3に示す第2塗膜(C2)に使用する塗料は以下の通りである。
第2塗膜A:アクリディックA-165(30.0重量部)に、カーボンブラックMA-100が1.5重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル30.0重量部、イソプロピルアルコール30.0重量部、ブチルセロソルブ8.5重量部を添加して分散させ、調製した。
【0078】
実施例および比較例で用いた、図4に示す第2塗膜(C3)に使用する塗料は以下の通りである。
第2塗膜B:アクリディックA-165(30.0重量部)に、NSP-CZ306(D)YELLOW(顔料)が5.0重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル30.0重量部、イソプロピルアルコール30.0重量部、ブチルセロソルブ5.0重量部を添加して分散させ、調製した。
第2塗膜Ca:アクリディックA-165(30.0重量部)に、バンチャクレッドが5.0重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル30.0重量部、イソプロピルアルコール30.0重量部、ブチルセロソルブ5.0重量部を撹拌混合し、調製した。
第2塗膜Cb:アクリディックA-165(30.0重量部)に、バンチャクレッドが2.5重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル30.0重量部、イソプロピルアルコール30.0重量部、ブチルセロソルブ7.5重量部を撹拌混合し、調製した。
第2塗膜D:アクリディックA-165(30.0重量部)に、バンチャクブルーが5.0重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル30.0重量部、イソプロピルアルコール30.0重量部、ブチルセロソルブ5.0重量部を撹拌混合し、調製した。
第2塗膜E:アクリディックA-165(30.0重量部)に、バンチャクイエローが5.0重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル30.0重量部、イソプロピルアルコール30.0重量部、ブチルセロソルブ5.0重量部を撹拌混合し、調製した。
第2塗膜Fa:アクリディックA-165(30.0重量部)に、バンチャクブラックが5.0重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル30.0重量部、イソプロピルアルコール30.0重量部、ブチルセロソルブ5.0重量部を撹拌混合し、調製した。
第2塗膜Fb:アクリディックA-165(30.0重量部)に、バンチャクブラックが2.5重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル30.0重量部、イソプロピルアルコール30.0重量部、ブチルセロソルブ7.5重量部を撹拌混合し、調製した。
【0079】
<塗膜形成方法>
すべての塗膜は、上記内容で調整した塗料を外容器の内側表面上、第1塗膜上、あるいは第2塗膜上にエアースプレー塗装後、70℃、30分で乾燥させて形成した。
【0080】
<各試験に用いた実施例および比較例>
各試験において、実施例および比較例として以下のものを用いた。
尚、全ての実施例および比較例において、蓋、中容器、外容器、塗膜の組成および塗膜の形成方法は上記した同じものを用いた。
実施例1:外容器の内側表面にのみ第1塗膜Aが形成されている化粧料容器
実施例2:第1塗膜Aが外容器の内側表面に形成され、第2塗膜Aが第1塗膜の外容器の内側表面とは反対側の面上に形成されている化粧料容器
実施例3:第2塗膜Bが外容器の内側表面に形成され、第1塗膜Aが第2塗膜Bの外容器の内側表面とは反対側の面上に形成されている化粧料容器
実施例4a:第2塗膜Cが外容器の内側表面に形成され、第1塗膜Aが第2塗膜Caの外容器の内側表面とは反対側の面上に形成されている化粧料容器
実施例4b:第2塗膜Cが外容器の内側表面に形成され、第1塗膜Aが第2塗膜Cbの外容器の内側表面とは反対側の面上に形成されている化粧料容器
実施例5:第2塗膜Dが外容器の内側表面に形成され、第1塗膜Aが第2塗膜Dの外容器の内側表面とは反対側の面上に形成されている化粧料容器
実施例6:第2塗膜Eが外容器の内側表面に形成され、第1塗膜Aが第2塗膜Eの外容器の内側表面とは反対側の面上に形成されている化粧料容器
実施例7a:第2塗膜Fが外容器の内側表面に形成され、第1塗膜Aが第2塗膜Faの外容器の内側表面とは反対側の面上に形成されている化粧料容器
実施例7b:第2塗膜Fが外容器の内側表面に形成され、第1塗膜Aが第2塗膜Fbの外容器の内側表面とは反対側の面上に形成されている化粧料容器
実施例8:外容器の内側表面にのみ第1塗膜Bが形成されている化粧料容器
実施例9:外容器の内側表面にのみ第1塗膜Cが形成されている化粧料容器
実施例10:外容器の内側表面にのみ第1塗膜Dが形成されている化粧料容器
比較例1:塗膜が一切形成されていない化粧料容器
比較例2:中容器の外側表面にのみ第1塗膜Aが形成されている化粧料容器
比較例3:中容器の外側表面に第1塗膜Aが形成され、第2塗膜Aが第1塗膜Aの中容器の外側表面とは反対側の面上に形成されている化粧料容器
【0081】
<光沢度試験>
本発明に係る中容器を有する化粧料容器の光沢を確認するために、20度鏡面光沢度および60度鏡面光沢度を以下の方法で測定した。
【0082】
20度鏡面光沢度:micro-TRI-gloss(BYK-Gardner社製)を用いて、外容器の外側の光沢を測定した。
【0083】
60度鏡面光沢度:micro-TRI-gloss(BYK-Gardner社製)を用いて、外容器の外側の光沢を測定した。
【0084】
【表1】
【0085】
上記表1は、実施例1~10および比較例1~3の20度鏡面光沢度および60度鏡面光沢度試験の結果を示す表である。
上記表1より、20度光沢および60度光沢の両方(特に、20度光沢)において、実施例1~10は比較例1~3と比較して大きな光沢度を備えていた。
この結果より、本発明に係る中容器を有する化粧料容器は、比較例1~3の化粧料容器よりも光沢が高く、鮮映性の高い鏡面状であることがわかった。
また、第1塗膜に顔料または染料を配合した実施例9~10は、比較例1~3よりも光沢が高く、鮮映性の高い鏡面状であったが、同じ顔料または染料を第1塗膜ではなく第2塗膜に配合した実施例3および6よりも20度光沢および60度光沢の両方が低い値であった。この結果から、顔料または染料を配合して化粧料容器を着色する場合は、第1塗膜に顔料または染料を配合するよりも、第2塗膜に顔料または染料を配合する方が、より高い光沢を得られることがわかった。
【0086】
<紫外線・可視光遮蔽率試験>
本発明に係る中容器を有する化粧料容器の紫外線・可視光遮蔽率を確認するために、紫外線・可視光遮蔽率を以下の方法で測定した。
【0087】
実施例1~10および比較例1~3の紫外線・可視光遮蔽率を、UVmini-1240(島津製作所社製)を用いて、250nm~750nmの波長域において10nm幅で測定した。
【0088】
【表2】
【0089】
上記表2は、実施例1~10および比較例1~3の紫外線・可視光遮蔽率の結果を示す表である。
上記表2より、紫外線および可視光の両方において、実施例2は比較例1~3と比較してより優れた遮蔽率を備えていた。この結果より、実施例2に係る中容器を有する化粧料容器は、従来の化粧料容器よりも優れた紫外線・可視光遮蔽率を備えていることがわかった。
また、実施例1および3~10は、紫外線および可視光の両方において、比較例1よりも優れた遮蔽率を備えており、比較例2~3と同等以上の優れた遮蔽率を備えていることがわかった。
【0090】
<重厚感の官能試験>
本発明に係る中容器を有する化粧料容器の重厚感を、官能試験によって確認した。
尚、本明細書において、「重厚感がある」とは、化粧料容器に収容された化粧料容器の内容量が多く見え、化粧料容器自体が大きく見え、化粧料容器自体に重々しさがあることを指す。
【0091】
日常的に化粧料容器を使用しているモニター10名を対象に、実施例1~10および比較例1~3の重厚感の官能試験(目視試験)を行った。
評価は以下の3段階で行った。
重厚感あり:〇
重厚感少しあり:△
重厚感なし:×
【0092】
【表3】
【0093】
上記表3は、実施例1~10および比較例1~3の重厚感の官能試験(目視試験)の結果を示す表である。
上記表3より、実施例1~10は比較例1~3と比較してより優れた重厚感を備えていた。
この結果より、本発明に係る中容器を有する化粧料容器は、従来の化粧料容器よりも優れた重厚感を備えていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明に係る中容器を有する化粧料容器は、蓋と、中容器と、外容器とを含み、前記外容器の内側にのみ、少なくとも一層の塗膜が形成されており、前記少なくとも一層の塗膜は、前記外容器の内側に形成された第1塗膜を含み、前記第1塗膜は、ビヒクルとアルミ箔粒とを含み、化粧料容器の外側から入ってくる光の反射面(すなわち、外容器の内側表面に塗布されて形成された塗膜の外容器との対向面である光沢面)は、外容器の内側表面上に形成されている。外容器の内側表面は滑らかであるため、光沢面も滑らかとなる。それゆえに、光の乱反射を抑えることができ、前記外容器の外側の60度鏡面光沢度が120以上且つ20度鏡面光沢度が150以上である高い光沢を備えた化粧料容器を提供できる。また、前記外容器の紫外線遮蔽率が95%以上であり、前記外容器の可視光遮蔽率が95%以上であるために長期的に内容物を光による変性から保護することができる。
【0095】
加えて、光沢面が化粧料容器の外側近傍に形成されているので、光沢面で反射した光が化粧料容器の外側に出るまでに、さらに屈折することや反射することを防ぐことができるため、高い光沢を維持した化粧料容器を提供できる。
また、光沢面が化粧料容器の外側近傍に形成されているので、化粧料容器の外側から中容器が見えない。それゆえに、化粧料の内容量が少なく見えて、化粧料容器自体が小さく見えることがなく、化粧料容器に重厚感を出すことができる。
【0096】
それゆえに、本発明に係る中容器を有する化粧料容器は、例えば、紫外線、可視光線、赤外線等の光によって劣化し易い成分を含む化粧料(化粧品)等の内容物の保存容器として好適に使用される。また、内容物の性質に関わらず、重厚感や高級感を出すための容器として、化粧料の保存容器として好適に使用される。
【符号の説明】
【0097】
1 化粧料容器
2 蓋
3 中容器
31 中容器の内側表面
32 中容器の外側表面
4 外容器
41 外容器の内側表面
42 外容器の外側表面
C 塗膜
C1 第1塗膜
C2 第2塗膜(図3
C3 第2塗膜(図4
図1
図2
図3
図4
図5