(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】心筋細胞新生におけるHIPPO及びジストロフィン複合体シグナル伝達
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20230519BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20230519BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230519BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230519BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230519BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20230519BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230519BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20230519BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/713
A61K35/76
A61K48/00
A61P9/00
A61P9/04
A61P9/10
A61P9/10 103
A61P21/04
C12N15/864 100
(21)【出願番号】P 2019236153
(22)【出願日】2019-12-26
(62)【分割の表示】P 2016537445の分割
【原出願日】2014-12-09
【審査請求日】2020-01-24
(32)【優先日】2013-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391058060
【氏名又は名称】ベイラー カレッジ オブ メディスン
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
(73)【特許権者】
【識別番号】512038182
【氏名又は名称】テキサス ハート インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーティン、ジェームス、エフ.
(72)【発明者】
【氏名】モリカワ、ユカ
(72)【発明者】
【氏名】ヘレン、トッド、ライアン
(72)【発明者】
【氏名】リーチ、ジョン
【審査官】木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/039778(WO,A2)
【文献】BMC Cancer,2011年,Vol. 11, 523
【文献】Biochem. J.,2014年,Vol. 458,pp. 158-169
【文献】Development,2013年,Vol. 140,pp. 4683-4690
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)配列番号10に対して少なくとも95%の同一性を含む第1の核酸を含むshRNA、
(2)配列番号11に対して少なくとも95%の同一性を含む第2の核酸を含むshRNA、及び、
(3)配列番号12に対して少なくとも95%の同一性を含む第3の核酸を含むshRNAを含有し、
前記(1)乃至(3)のshRNAは、Salvadorの発現を抑制することが可能である、Salvadorの発現を抑制するための単離された合成核酸組成物。
【請求項2】
前記核酸が、
(i)配列番号10
の配列を含み、配列番号10のアンチセンス配列を更に含み、該配列及び該アンチセンス配列が互いにハイブリダイズして二本鎖構造を形成する場合に、該配列及び該アンチセンス配列が、ループ構造によって隔てられている、及び/又は、
(ii)配列番号11
の配列を含み、配列番号11のアンチセンス配列を更に含み、該配列及び該アンチセンス配列が互いにハイブリダイズして二本鎖構造を形成する場合に、該配列及び該アンチセンス配列が、ループ構造によって隔てられている、及び/又は、
(iii)配列番号12
の配列を含み、配列番号12のアンチセンス配列を更に含み、該配列及び該アンチセンス配列が互いにハイブリダイズして二本鎖構造を形成する場合に、該配列及び該アンチセンス配列が、ループ構造によって隔てられている、
ことを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1の核酸、第2の核酸、及び、第3の核酸のそれぞれが、少なくとも43ヌクレオチドの長さである、及び/又は、前記第1の核酸、第2の核酸、及び、第3の核酸のそれぞれが、137ヌクレオチド以下の長さである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ループ構造が、長さ5~19ヌクレオチドである、請求項
2に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1の核酸、第2の核酸、及び、第3の核酸が、同じ調節配列によって調節される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(i)配列番号10の配列を含むshRNA、(ii)配列番号11の配列を含むshRNA、及び、(iii)配列番号12の配列を含むshRNAを含有し、
前記(1)乃至(3)のshRNAは、Salvadorの発現を抑制することが可能である、Salvadorの発現を抑制するための単離された合成核酸組成物。
【請求項7】
前記単離された合成核酸が、ベクターに含まれる、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ベクターが、ウイルスベクターである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ベクターが、アデノ随伴ウイルスベクターである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記単離された合成核酸が、心筋細胞特異的プロモーターを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記心筋細胞特異的プロモーターが、ラット心室特異的心筋ミオシン軽鎖2(MLC-2v)プロモーター;心筋特異的αミオシン重鎖(MHC)遺伝子プロモーター;NCX1プロモーターの-137~+85の心臓細胞特異的最小プロモーター;鶏の心臓トロポニンT(cTNT)、又はその組合せである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
個体における心臓状態、又は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを治療するためである、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記心臓状態が、心筋細胞アポトーシス、壊死、自食、心血管疾患、心筋症、心不全、心筋梗塞、虚血、線維症又は糖尿病性心筋症、及び、老人性心筋症からなる群より選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、前記個体に2回以上与えられる、請求項12又は13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、前記個体に全身的に、又は、局所的に与えられる、請求項12~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物、及び、薬学的に許容できる担体を含有する医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年12月9日に出願された米国特許仮出願第61/913,715号の優先権を主張し、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、少なくとも細胞生物学、分子生物学及び医学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー
出生男児3500人当たり1人に生じる致死的な遺伝性X染色体連鎖障害(Emery、2002年)であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、骨格及び心筋線維の急速な進行性変性によって特徴づけられる。重要なことに、DMD患者は、心筋壊死、線維症及び拡張型心筋症を特徴とする心疾患を発症する。DMDは、骨格、心臓及び平滑筋細胞に存在する427kdの細胞骨格タンパクをコードするジストロフィン遺伝子の突然変異により生じる(Hoffmanら、1987年;Hoffmanら、1988年)。DMD患者では、ジストロフィン発現が無効化され、骨格及び心筋において必須の膜局在性構造であるジストロフィン結合糖タンパク質複合体(DGC)の崩壊に至る(Ohlendieck及びCampbell、1991年;Ohlendieckら、1993年)。DMDに有用なマウスモデルは、ヒトDMDと類似性がある疾患表現型を呈するジストロフィン-null株のmdxマウスである(Bulfieldら、1984年)。ヒトDMDほど重度ではないが、mdxマウスは、老化後の骨格筋変性/再生及び心筋症などヒト疾患の特徴を有する。
【0004】
Hippoシグナル伝達への導入
哺乳動物の中心的なHippoシグナル伝達成分には、ショウジョウバエHippoキナーゼに対してオーソロガスなSte20キナーゼMst1及びMst2がある。Mstキナーゼは、Salvador(Salv)足場タンパク質と複合体形成すると、ラージ腫瘍抑制遺伝子ホモログ(Lats)(Large Tumor Suppressor Homolog)キナーゼをリン酸化する。哺乳動物のLats1及びLats2は、NDRファミリーキナーゼであり、ショウジョウバエWartsに対してオーソロガスである。Latsキナーゼは、次に、Hippoシグナル伝達の最下流の成分でありTeadなどの転写因子とパートナーである関連する2つの転写活性化補助因子Yap及びTazをリン酸化して遺伝子発現を調節する。Yapは、また、標準的なWntシグナル伝達のエフェクターであるβカテニンと相互作用して遺伝子発現を調節する。リン酸化されると、Yap及びTazは、核から除かれ、転写的に不活性になる(
図1)。
【0005】
これまでのマウスにおける心臓の機能消失研究から、Hippoシグナル伝達が心筋細胞の増殖を阻害して、心臓のサイズを制御することが明らかになった(Heallenら、2011年)。Salv欠損性心臓は、心筋細胞の過形成により心臓のサイズが2.5倍に増加する心臓肥大症を発症する。加えて、心筋細胞の発達におけるYapを調べる実験は、Yapが、心筋細胞の発達の間の主要なHippoエフェクター分子であるという結論を支持する(von Giseら、2012年;Xinら、2011年)。Yapは、DNA結合転写調節因子と協力する補助因子である。最近の文献は、Teadファミリー補助因子が、主なYapパートナーであることを示す(Halder及びJohnson、2011年)。
【0006】
本開示は、Hippo経路を標的とすることにより少なくともDMDを含む心臓状態の療法を提供する、当技術分野における長年の必要性を解決する方法及び組成物に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ等を含めた哺乳動物個体における心臓の筋肉細胞(心筋細胞)に直接又は間接的に影響を及ぼす少なくとも1つの病状に対する療法を提供する方法及び組成物を対象とする。病状は、心不全、心筋症、心筋梗塞等のような心臓状態を含むどんな種類でもあり得る。病状は、その初発症状若しくは原因としての心臓状態であってもよく、又は続発症状若しくは原因であってもよい。個体は、男性でも女性でもよく、どんな年齢でもよい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
特別な実施形態において、心臓の病状に対する療法の必要がある個体に、1つ以上の核酸又は1つ以上の核酸を含む細胞の有効量を与え、その核酸は個体に対し治療的有用性を提供する。特定の実施形態において、核酸は、少なくともshRNAを含めた、RNA干渉を直接又は間接的に提供する形態である。特別な実施形態において、shRNA組成物は、Hippo経路のメンバーを標的とする。shRNAは、Hippo経路のどのメンバーを標的とすることもできるが、特定の実施形態において、それはSalvador(Sav1)を標的とする。
【0009】
本開示の実施形態において、哺乳動物のSav1を標的とする核酸組成物があり、特定の実施形態において、核酸組成物はshRNA分子である。特定の実施形態において、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のうちの1つ以上を含むshRNA分子を含む治療用組成物がある。組成物は、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターを含めたベクターに包含されてもよく、されなくてもよい。特別な実施形態において、shRNA配列は、非組み込みベクターにおいて利用される。
【0010】
いくつかの実施形態において、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11若しくは配列番号12、及び/又は配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11若しくは配列番号12のうちの1つに対して少なくとも80%の同一性を含む派生した核酸を含む、単離された合成核酸組成物がある。この派生した核酸は、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のうちの1つと少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であってもよい。
【0011】
特定の実施形態において、核酸は、配列番号4(又は配列番号5、6、7、8、9、10、11若しくは12)の配列を含み、配列番号4(又は、それぞれ、配列番号5、6、7、8、9、10、11若しくは12)のアンチセンス配列を更に含み、その配列とアンチセンス配列が互いにハイブリダイズして二本鎖構造を形成する場合に、その配列及びアンチセンス配列は、ループ構造によって隔てられている。
【0012】
特定の実施形態において、核酸は、長さ少なくとも43ヌクレオチド又は長さ137ヌクレオチド以下である。いくつかの実施形態において、ループ構造は、長さ5~19ヌクレオチドである。特別な実施形態において、派生した核酸は、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のそれぞれと比較して1、2、3、4又は5個のミスマッチを有する。
【0013】
組成物のいくつかの実施形態において、核酸又は派生した核酸は、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターなどのベクターに含まれる。ベクターは、非組み込みベクターであってもよい。ベクターは、レンチウイルスベクターである非組み込みベクターであってもよい。ベクターのいくつかの実施形態において、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12を含む核酸のうちの2つ以上が、同じベクター上に存在する。
【0014】
特定の実施形態において、核酸の発現は、心筋細胞特異的プロモーター、例えばラット心室特異的心筋ミオシン軽鎖2(MLC-2v)プロモーター;心筋特異的αミオシン重鎖(MHC)遺伝子プロモーター;NCX1プロモーターの-137~+85の心臓細胞特異的最小プロモーター;鶏の心臓トロポニンT(cTNT)、又はその組合せなどの組織特異的又は細胞特異的プロモーターによって調節される。
【0015】
特定の実施形態において、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11又は配列番号12を含む核酸のうちの2つ以上が、同じベクター上に存在する。特定の場合において、この2つ以上の核酸は、同じ調節配列によって調節される又は異なる調節配列によって調節される。
【0016】
一実施形態において、心臓状態について個体を治療する方法であって、本開示に包含される組成物の有効量を個体に与える工程を含む方法がある。特定の実施形態において、個体における心臓状態に起因して、個体は心筋細胞新生を必要とする。特定の実施形態において、個体の心臓は、心筋細胞アポトーシス、壊死及び/又は自食作用を有する。特定の実施形態において、心臓状態は、心血管疾患、心筋症、心不全、心筋梗塞、虚血、壊死、線維症又は糖尿病性心筋症、老人性心筋症を含む。特別な実施形態において、個体はデュシェンヌ型筋ジストロフィーを有する。組成物は、個体に2回以上与えられ得る。組成物は、個体に全身的に又は局所的に与えられ得る。特定の実施形態において、個体は、心臓状態のための追加的な療法を受ける。
【0017】
特定の実施形態において、組成物は適切な容器内に保持されている、本開示によって包含されるような組成物を含むキットがある。
【0018】
特別な実施形態において、個体における心臓状態を治療する方法であって、Salvador(Sav1)を標的とするshRNAの治療上有効な量を個体に与える工程を含む方法がある。特定の実施形態において、shRNAは、AAV9ベクターで個体に与える。特定の場合において、個体は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを有する。
【0019】
次に続く本発明の詳細な説明をよりよく理解できるように、前述は、本発明の特徴及び技術的優位性についてある程度広く概説した。本発明の更なる特徴及び優位性について、以下に記述することとし、それが本発明の特許請求の主題を形成する。開示された概念及び特定の実施形態を、本発明の同じ目的を実施するために他の構造を修飾又は設計するための基礎として直ちに利用できることは、当業技術者によって理解されよう。そのような等価の構築物が、添付の特許請求に記載したように本発明の趣旨及び範囲から逸脱しないことも、当業技術者によって理解されよう。付随する図と関連して考慮すると、本発明に特徴的であると考えられる新規の特徴は、その組織化と操作方法の両方に関して、更なる目的及び優位性と合わせて、以下の説明からよりよく理解されるはずである。しかしながら、図のそれぞれが、実例及び説明のためだけに提供されるものであり、本発明の範囲の定義を意図するものではないことは、明示的に理解されるべきである。
【0020】
本発明のより完全な理解のために、付随する図面と併用して以下の説明に参照をここに作る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】発達及び再生の間のHippoシグナル伝達のモデルの例を例示する図である;
【
図2】Yapが、心臓再生において細胞分裂及び運動遺伝子を調節することを示す図である。ヒートマップ(A)及びqRT-PCR検証(B)は、一部のYap標的に対する相対的な転写産物レベルを示す。*p<0.05、**p<0.001、***p<0.0001。出展(Morikawaら、2014年);
【
図3】突部切除後のSalv CKO及びSalv CKO;mdx;utrn心臓を示す図である。出生8日後の非再生段階で心臓を切除し、切除3週間後に免疫組織化学によって評価した。報告されているように、Salv CKO変異体心臓は、再生することができる(左のパネル及び(Heallenら、2013年)。加えて、右パネルで示すように、複合変異体SalvCKO;mdx-;utrn+/-心臓も再生することができる。特に、mdx変異体心臓は、心筋細胞切除後に再生できない;
【
図4】Hippo除去が、慢性虚血及び確立された心不全後の心機能の回復を促進することを示す図である。成体心臓を、LAD-O(t=0)に供し、3週後に超音波心臓検査法によって研究した。不全の心臓を本研究に入れ、タモキシフェンを注射してSalvを不活性化した。示した通り、マウスを、超音波心臓検査法によって2週間間隔で研究した。Hippo欠損性心臓は、タモキシフェン注射の2週間後に機能の回復を示し、6週間までに機能回復が完了した;
【
図5】有効なSalv siRNAが、Salv mRNA発現を減少させることを示す図である。siRNAを、新生児心筋細胞にトランスフェクトし、Salv mRNAレベルを定量的RT PCRによって研究した。3つ全てのsiRNAが、Salv mRNAレベルを効果的に減少させた;
【
図6】マウスSav1 cDNA配列を例示する図である。灰色の領域は、shRNA配列(それぞれ配列番号4、配列番号5及び配列番号6)の例を示す。選択的エクソンを、二重下線を引いた配列対二重下線を引かない配列により示す。タンパク質構造ドメインを、5’から3’へ;WWドメイン、WWドメイン、SARAHドメインの順序で一本の下線を引いた配列によって示す;
【
図7】ブタSav1 cDNA配列を例示する図である。灰色の領域は、shRNA配列(それぞれ配列番号7、配列番号8及び配列番号9)の例を示す。選択的エクソンを、二重下線を引いた配列対二重下線を引かない配列により示す。タンパク質構造ドメインを、5’から3’へ;WWドメイン、WWドメイン、SARAHドメインの順序で一本の下線を引いた配列によって示す;
【
図8】ヒトSav1 cDNA配列を例示する図である。灰色の領域は、shRNA配列(それぞれ配列番号10、配列番号11及び配列番号12)の例を示す。選択的エクソンを、二重下線を引いた配列対二重下線を引かない配列により示す。タンパク質構造ドメインを、5’から3’へ;WWドメイン、WWドメイン、SARAHドメインの順序で一本の下線を引いた配列によって示す;
【発明を実施するための形態】
【0022】
I.典型的な定義
本明細書において明記されない又は文脈よって明確に否定されない限り、本発明に記載の内容において(特に以下の請求の範囲の内容において)、用語「a」及び「an」及び「the」並びに類似の指示対象の使用は、単数と複数の両方に及ぶものと解釈される。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」は、特に明記しない限り、制限のない用語(即ち、「を含むがこれに限定されない」という意味)として解釈される。本明細書における数値範囲の説明は、単にその範囲内に該当する各数値を個別に指す略記法としての役割しか意図しておらず、本明細書において別段の指示がない限り、各数値は、本明細書において個別に列挙されるように、明細書に組み込まれる。本明細書において特に明記されない又は文脈よって明確に否定されない限り、本明細書に記載される全ての方法は任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で使用される任意の及びあらゆる例又は例示的な言い回し(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、特に主張しない限り、本発明の範囲に制限を加えるものではない。明細書中のいかなる言い回しも、本発明の実施に不可欠ないずれの請求項にも記載されていない要素を示すとは解釈されないものとする。
【0023】
本明細書では、「アンチセンス配列」としても知られる用語「相補的ヌクレオチド配列」とは、タンパク質をコードしている「センス」核酸の配列と完全に相補的である核酸の配列のことを指す(例えば、二本鎖cDNA分子のコード鎖と相補的又はmRNA配列と相補的である)。本明細書において、少なくとも約15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25ヌクレオチドと相補的な配列を含む核酸分子が提供される。
【0024】
本明細書では、用語「ヌクレオチド配列に対応する」とは、同一の配列をコードしている核酸のヌクレオチド配列のことを指す。いくつかの例において、アンチセンスヌクレオチド(核酸)又はsiRNA(阻害的低分子RNA)(shRNAからプロセシングされる)が標的配列に結合する場合、特定のアンチセンス又は阻害的低分子RNA(siRNA)配列は、標的配列と実質的に相補的であり、従ってポリペプチドをコードしているmRNAの一部に特異的に結合することになる。従って、一般に、それら核酸の配列は、mRNA標的配列と高度に相補的であり、配列の全体を通じて1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10塩基以下のミスマッチしかないはずである。多くの例において、核酸の配列に関して完全一致であること、即ちオリゴヌクレオチドが特異的に結合する配列と完全に相補的である、従って相補的領域に沿って0ミスマッチであることが、望ましいことがある。高い相補配列は、mRNAの標的配列領域へ一般に非常に特異的に結合することになり、従ってポリペプチド産物への標的mRNA配列の翻訳を高い効率で減少させる、及び/又は更には阻害することになる。例えば米国特許第7,416,849号を参照のこと。
【0025】
実質的に、相補的オリゴヌクレオチド配列は、オリゴヌクレオチドが特異的に結合する対応するmRNA標的配列と約80パーセントより高く相補的(又は「%完全一致」)であり、より好ましくは、オリゴヌクレオチドが特異的に結合する対応するmRNA標的配列と約85パーセントより高く相補的である。特定の態様において、上記の通り、本発明の実行に使用する場合、更にかなり相補的なオリゴヌクレオチド配列を有することが望ましく、そのような例において、オリゴヌクレオチド配列は、オリゴヌクレオチドが特異的に結合する対応するmRNA標的配列と約90パーセントより高く相補的であり、特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドが特異的に結合する対応するmRNA標的配列と約95パーセントより高く相補的であってもよく、設計したオリゴヌクレオチドが特異的に結合する標的mRNAと最大96%、97%、98%、99%、更には100%完全一致で相補的であってもよい。例えば米国特許第7,416,849号を参照のこと。任意の核酸配列のパーセント類似性又はパーセント相補性は、例えば、当業者に公知の任意のコンピュータプログラムを利用することによって決定することができる。
【0026】
本明細書では、用語「ノックダウン」又は「ノックダウン技術」とは、標的遺伝子若しくは対象の遺伝子の発現が、shRNAの導入前の遺伝子発現と比較して減少する遺伝子サイレンシング技術のことを指し、その技術は標的遺伝子産物の産生の阻害をもたらすことができる。用語「減少した」は、標的遺伝子発現が0.1~100%まで低下することを示すために本明細書において使用される。例えば、発現を0.5、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95又は更に99%まで減少させることができる。発現を、例えば、2~4、11~14、16~19、21~24、26~29、31~34、36~39、41~44、46~49、51~54、56~59、61~64、66~69、71~74、76~79、81~84、86~89、91~94、96、97、98又は99などの範囲の任意の量(%)まで減少させることができる。遺伝子発現のノックダウンは、siRNA又はshRNAの使用によって導くことができる。
【0027】
本明細書では、用語「ヌクレオチド配列」とは、一本鎖又は二本鎖であり得るDNA又はRNAのポリマーのことを指し、DNA又はRNAポリマーに組み込み可能な合成、非天然又は改変ヌクレオチド塩基を任意選択で含有する。用語「ポリヌクレオチド」は、用語「オリゴヌクレオチド」と互換的に使用される。明らかに述べられない限り、用語「ヌクレオチド配列」は、「核酸配列」と交換可能である。「ヌクレオチド配列」及び「核酸配列」とは、ポリヌクレオチド分子中のヌクレオチドの配列のことを指す用語である。
【0028】
本明細書では、用語「作動的に連結された」とは、配列のうち一方の機能が他方の影響を受けるように諸核酸配列がポリヌクレオチド上において結びつけられていることを指す。例えば、調節DNA配列がコードDNA配列の発現に影響を及ぼすように2つの配列が位置する(即ち、コード配列又は機能的RNAが、プロモーターの転写制御下にある)場合、調節DNA配列は、RNA(「RNAコード配列」若しくは「shRNAコード配列」)又はポリペプチドをコードするDNA配列に「作動的に連結されている」と言われる。コード配列は、センス又はアンチセンス方向で調節配列に作動的に連結されていることができる。RNAコード配列とは、siRNA及びshRNAなどのRNA分子の合成鋳型として機能することができる核酸のことを指す。好ましくは、RNAコード領域は、DNA配列である。
【0029】
本明細書では、用語「薬学的に許容できる」とは、製剤の他の成分に適合し、そのレシピエントに対して有害でない担体、希釈剤、賦形剤及び/又は塩である。投与するための有効成分は、粉末として若しくは顆粒として;溶液、懸濁液若しくはエマルジョンとして又は本明細書全体の他の場所に記述されるように存在していてよい。
【0030】
本明細書では、用語「プロモーター」とは、通常そのコード配列の上流(5’)にあり、RNAポリメラーゼ及び適切な転写のために必要な他の因子による認識を可能とすることによってコード配列の発現を導く及び/又は制御するヌクレオチド配列のことを指す。「プロモーター」は、TATAボックスから構成される短いDNA配列である最小プロモーター及び転写開始の部位を指定するために機能し、発現の制御のために調節エレメントが付加される他の配列を含む。「プロモーター」とは、最小プロモーターに加えてコード配列又は機能的RNAの発現を制御する能力がある調節エレメントを含むヌクレオチド配列のことも指す。この種のプロモーター配列は、近位及びより遠位の上流エレメントからなり、後者のエレメントはエンハンサーとしばしば称される。従って、「エンハンサー」は、プロモーター活性を刺激するDNA配列であり、プロモーターの生得的なエレメント又はプロモーターのレベル若しくは組織特異性を強化するために挿入された異種性エレメントであってもよい。それは、両方の方向(センス又はアンチセンス)にはたらく能力があり、プロモーターの上流又は下流のいずれかに移動させた場合でも機能する能力がある。エンハンサーと上流にある他のプロモーターエレメントの両方は、その効果を媒介する配列特異的DNA結合タンパク質を結合する。プロモーターは、その全体を天然遺伝子から得ることも、天然に見出される異なるプロモーターから得られる異なるエレメントから構成されることも、又は合成DNAセグメントから構成されることもあり得る。プロモーターは、生理又は発達条件に応答して転写開始の有効性を制御するタンパク質因子の結合に関係するDNA配列を含有することもできる。shRNA又はRNAコード配列の発現を調節する当業者に公知の任意のプロモーターが、本発明の実行において想定される。
【0031】
本明細書では、用語「レポータエレメント」又は「マーカー」は、スクリーニングアッセイにおいて検出できるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。レポータエレメントによってコードされるポリペプチドの例には、それだけには限らないが、lacZ、GFP、ルシフェラーゼ及びクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼがある。例えば米国特許第7,416,849号を参照のこと。多くのレポータエレメント及びマーカー遺伝子が当業者に公知であり、本明細書に開示される発明における使用が想定される。
【0032】
本明細書では、用語「RNA転写産物」とは、DNA配列のRNAポリメラーゼ触媒転写から生じる産物のことを指す。「メッセンジャーRNA転写産物(mRNA)」とは、イントロンがなく、細胞によってタンパク質に翻訳され得るRNAのことを指す。
【0033】
本明細書では、用語「低分子干渉」又は「短鎖干渉RNA」又は「siRNA」とは、所望の遺伝子を標的とする、相同性を共有する遺伝子の発現を阻害する能力があるヌクレオチドのRNA二本鎖のことを指す。RNA二本鎖は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25塩基対を形成し、2ヌクレオチドの3’突出を保有する、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25ヌクレオチドの2つの相補的一本鎖RNAを含む。RNA二本鎖は、RNA分子の2つの領域間の相補的対合によって形成される。siRNAは遺伝子に「標的化」され、そこにおいてsiRNAの二本鎖部分のヌクレオチド配列は、標的とする遺伝子のヌクレオチド配列に相補的である。いくつかの実施形態において、siRNAsの二本鎖の長さは、30ヌクレオチド未満である。二本鎖は、長さ29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11又は10ヌクレオチドであってもよい。二本鎖の長さは、長さ17~25ヌクレオチドであってもよい。二本鎖RNAを、細胞中で単一の構築物から発現させることができる。
【0034】
本明細書では、用語「shRNA」(小ヘアピンRNA)とは、siRNAの一部がヘアピン構造の部分であるRNA二本鎖のことを指す(shRNA)。二本鎖部分に加えて、ヘアピン構造は、二本鎖を形成する2つの配列間に配置されるループ部分を含有することができる。ループは、長さが変化し得る。いくつかの実施形態において、ループは長さ5、6、7、8、9、10、11、12又は13ヌクレオチドである。ヘアピン構造は、3’又は5’突出部分を含有することもできる。いくつかの態様において、突出は、長さ0、1、2、3、4又は5ヌクレオチドの3’又は5’突出である。本発明の一態様において、ベクター内のヌクレオチド配列は、センス領域、ループ領域及びアンチセンス領域を含む小ヘアピンRNAを発現するための鋳型としての機能を果たす。発現の後に、センス及びアンチセンス領域は、二本鎖を形成する。それがshRNAを形成するこの二本鎖であり、そのshRNAは、例えばSav1 mRNAにハイブリダイズして、Sav1の発現を減少させる。
【0035】
本明細書では、用語「治療する」とは、例えば、それだけには限らないが、虚血性心疾患、心不全、心筋症等のような疾患又は障害の少なくとも1つの病徴を改善する、これらの発症を治癒及び/又は予防することを指す。
【0036】
本明細書では、用語「ベクター」とは、ベクターは、自己伝播性又は可動性であってもよく又はそうでなくてもよく、細胞ゲノムへの組み込みによるか又は染色体外に存在することができる(例えば、複製起点を持つ自律複製プラスミド)かのいずれかで原核又は真核宿主細胞を形質転換することができる、任意のウイルス又は非ウイルスベクター、並びに二本鎖又は一本鎖の直鎖又は環状である任意のプラスミド、コスミド、ファージ又はバイナリベクターのことを指す。当業者に公知の任意のベクターは、この発明の実行における使用が想定される。
【0037】
II.全般的な実施形態
本開示の実施形態は、心筋細胞が新生される必要があるものを含めた、心臓の病状の治療の方法及び組成物に関する。心筋細胞は、例えば、疾患、根本的な遺伝子状態、及び/又は外傷を含めた何らかの理由のために新生の必要がある場合がある。特定の実施形態において、個体は、例えば、心筋細胞損傷、壊死、及び/又はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)など心臓の線維症を有する。
【0038】
特定の実施形態において、方法及び組成物は、DMDの個体に利用される。DMD患者における疾患のある心臓は、広範囲にわたる心筋細胞損傷、壊死及び線維症を有する。同様に、ヒトDMDをモデル化したmdx変異体マウスは、心不全並びに重度の線維症及び拡張を伴う心筋症を有する。Hippoシグナル伝達経路は、組織切断又は心筋梗塞後における心臓再生の重要な抑制因子として同定された(Heallenら、2013年)。加えて、データは、Hippoが心臓におけるDMD関連の遺伝子の転写を調節することを示す。まとめると、Hippoシグナル伝達が、デュシェンヌ型心筋症に対する修復応答を阻害すると考えられた。本明細書に示されるように、再生性野生型新生児心臓とは対照的に、新生児mdx心臓は、突部切除後に再生することができない。最も注目すべきことに、この再生能が、Hippo;mdx複合変異体心臓において大きく回復されたことは、mdx心臓表現型の遺伝子抑制を示した。まとめると、Hippoシグナル伝達を調節することは、DMD心臓筋肉など、心臓の筋肉を修復するための強力な手法として機能する。
【0039】
DMD心筋症を改善することに加えて、確立された心不全(HF)後のHippo経路阻害により、虚血性心筋症及びHFのマウスモデルにおいて心機能が大幅に改善されたことが本明細書に示される。Hippo経路を欠損させるために、確立された虚血性心筋症及びHFを有するマウスを、心筋梗塞の誘導後3週間待つことによって作製した。3週間の時点で、Hippo経路は不活性化され、心機能を超音波心臓検査法によって2週間間隔で追跡した。Hippo欠損は、確立されたHFにおいて心臓の修復を強く強化し、これによって、Hippo変異体は、手術していない疑似対照と同等の機能を回復する。
【0040】
Hippo経路メンバーSalvador(Sav1)を特異的に標的とする固有だが、典型的な3つの短ヘアピンRNA(shRNA)の組を本明細書に示す。shRNAは、マウスモデルにおける遺伝子ノックアウトと類似の、Sav1 mRNAレベルの選択的な減少をもたらす。特定の実施形態において、shRNAは、心臓に対する指向性を有するAAV9(アデノ随伴ウイルスセロタイプ9)ベクターを使用して送達することができる。本開示の特別な実施形態では、標的Sav1に特異的なヌクレオチドのshRNA配列が想定される。
【0041】
III.Salvador
特別な実施形態において、Hippo経路メンバーであるSalvador(salvadorファミリーWWドメイン含有タンパク質1)は、心臓の病状の治療においてshRNAにより標的化される。遺伝子は、salvadorホモログ1、Salv、SAV1、SAV、WW45又はWWP4と称される場合がある。代表的な核酸は、GenBank(登録商標)アクセッション番号CR457297.1で提供され、代表的なタンパク質配列は、GenBank(登録商標)アクセッション番号Q9H4B6で提供される。
【0042】
遺伝子は、2つのWWドメイン(タンパク質リガンドとの特異的相互作用を媒介するモジュラータンパク質ドメイン)及びコイルドコイル領域を含むタンパク質をコードする。それは、成体組織において偏在して発現する。それは、C末端にSARAH(Sav/Rassf/Hpo)ドメイン(ドメインにその名を与える3種類の真核性腫瘍抑制遺伝子)も含む。Sav(Salvador)及びHpo(Hippo)ファミリーにおいて、SARAHドメインは、HpoからSav足場タンパク質を経て下流の成分Wts(Warts)へのシグナル伝達を媒介し;HpoによるWtsのリン酸化は、サイクリンE、Diap1及び他の標的を下方制御することによって、細胞周期停止及びアポトーシスを起動させる。SARAHドメインは、二量体化に関与する可能性もある。
【0043】
IV.治療の方法の例
本開示の実施形態において、Sav1遺伝子を標的とする核酸を使用して個体の心臓状態を治療する方法がある。特定の実施形態において、心臓状態は、例えば疾患(例えば罹患した若しくは遺伝的な)又は外傷いずれかの理由により新生の必要がある心筋細胞を含む。特定の実施形態において、個体において疾患のある心臓がある。個体は、なんらかの理由により新生の必要がある心筋細胞を有することができる。例えば、個体における心筋細胞は、アポトーシス性、自己貪食性であっても、又は組織は壊死性であってもよい。
【0044】
特定の実施形態において、個体は心不全、心臓の線維症、心筋症、虚血性心筋症、心筋壊死、拡張型心筋症、骨格及び/又は心筋線維の変性、糖尿病性心筋症、老人性心筋症等を有することができる。特定の実施形態において、本開示の方法は、細胞周期に再び入る心筋細胞の能力を可能にする。個体は、年齢、疾患、外傷等のためを含めた任意の理由により心機能を改善する必要がある場合がある。
【0045】
特別な実施形態において、個体中に存在している心筋細胞が新生できるように、Sav1を標的とする核酸の有効量を個体に与える。他の実施形態において、Sav1を標的とする核酸を個体に与え、例えば、核酸は、送達時に心筋細胞又は幹細胞を含めた細胞内に既に存在する。
【0046】
本開示の核酸組成物は、1回又は2回以上個体に与えることができる。送達は、心筋細胞新生が必要であると診断された場合、又は心臓状態が診断された場合に行い得る。送達は、個人若しくは家族既往歴がある、過体重、高コレステロール、及び/又は喫煙者であるなど、心臓状態の影響を受けやすい個体に行い得る。心臓の病徴が改善される及び/又は心筋細胞が新生されていると決定されたら、送達を中断しても継続してもよい。
【0047】
V.Sav1を標的とする核酸
特別な実施形態において、Sav1の発現が検出可能に減少するような、Sav1を標的とする1つ以上の核酸がある。核酸は、DNA又はRNAであってもよいが、特定の実施形態において、核酸はshRNAなどのRNAである。
【0048】
一実施形態において、shRNAは、センス領域、ループ領域及びセンス領域に相補的なアンチセンス領域を含む「ヘアピン」又はステム-ループRNA分子である。他の実施形態において、shRNAは、非共有結合的に結合して二本鎖を形成する異なるRNA分子を2つ含む。例えば米国特許第7,195,916号を参照のこと。
【0049】
特定の場合において、shRNAは、in vivoでステム-ループ構造を形成する一本鎖RNA分子であり、長さ約40~135ヌクレオチドであってもよい。少なくとも特定の場合において、5~19ヌクレオチドループは、塩基対形成によって二本鎖ステムを作る2つの相補的な19~29ヌクレオチド長のRNA断片を連結する。in vivoでのshRNAの転写及び合成は、Pol IIIプロモーターによって導かれ、次いで得られたshRNAは、RNase III酵素であるダイサーによって切断されて、成熟siRNAが生成される。成熟siRNAは、RISC複合体に入る。従って、特定の実施形態において、本開示によるSav1発現の阻害のためのshRNAは、センス及びアンチセンス両方のヌクレオチド配列を含有する。
【0050】
本開示は、Sav1標的化shRNAの特定の例(配列番号4、5、6、7、8、9、10、11、又は12)を提供するが、他のshRNA組成物を利用することもできる。当業者は、任意の様式で適切な配列を同定することができるが、特定の実施形態において、2つ以上の生物由来の遺伝子を整列させ、アミノ酸コード配列について重なり合う領域を探し、特定の長さ(例えば19ntなど)の領域について配列を精査し、3nt以下の反復を有する領域について配列を精査し、及び/又は潜在的配列をBLASTして、ヒトゲノムの他の任意の部分に対して<15bpの相同性しかないことを確実にすることができる。
【0051】
そのヌクレオチド配列によって細胞中の特定のmRNAに適切に標的化される場合、shRNAは、Sav1の遺伝子発現を特異的に抑制する。少なくともいくつかの場合において、shRNAは、特定のmRNAの細胞レベルを減少させ、そのようなmRNAによりコードされるタンパク質のレベルを低下させることができる。shRNAは、配列相補性を利用してmRNAを標的とすることにより分解し、配列特異的である。従って、それらは高度に標的特異的であり得、哺乳動物において、同じ遺伝子の異なる対立遺伝子によってコードされるmRNAを標的とすることが示されている。
【0052】
特定の実施形態において、下方制御又はノックダウンしようとする標的遺伝子の領域を標的とするshRNAは、細胞中で発現される。shRNA二本鎖は、下方制御のために標的とする遺伝子の配列に対して、配列において実質的に同一であってもよい(例えば少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一)。特定の実施形態において、shRNAの配列と標的Sav1配列の間に5個以下のミスマッチしかない。特定の実施形態において、最低18bpの相同性が、shRNA配列とその標的の間の相補性領域に利用される。特別な実施形態において、特異的アッセイを利用して、shRNAとその標的について適切なミスマッチを試験する。特定の実施形態において、アルゴリズムを利用して、shRNAとその標的について適切なミスマッチを同定することができる。
【0053】
従って、標的配列とshRNAの間に完全な相補性は必要でないことに留意されたい。即ち、得られるアンチセンスsiRNA(shRNAのプロセシング後)は、標的配列と十分に相補的である。センス鎖は、生物学的条件下でアンチセンス鎖にアニールする(ハイブリダイズする)ためにアンチセンス鎖と実質的に相補的である。
【0054】
特に、shRNAの相補的ポリヌクレオチド配列を、所望の標的タンパク質又はmRNAの特定の領域に特異的にハイブリダイズするように設計して、複製、転写又は翻訳に干渉させることができる。用語「ハイブリダイズ」又はそのバリエーションは、安定で特異的な結合がその間で起こるような、アンチセンスヌクレオチド配列と標的DNA又はmRNAとの十分な程度の相補性又は対合のことを指す。特に、100%相補性又は対合が望ましいが、必須ではない。既定の条件下、例えばin vivo治療を目的とする場合には好ましくは生理的条件下で、非標的配列へのアンチセンスヌクレオチド配列の非特異的結合を実質的に伴わずに、アンチセンスヌクレオチド配列と目的とする標的核酸との間に十分なハイブリダイゼーションが起こるなら、特異的ハイブリダイゼーションが起きている。好ましくは、特異的ハイブリダイゼーションは、標的DNA又はmRNAによってコードされる遺伝子産物の正常な発現に干渉する。
【0055】
例えば、アンチセンスヌクレオチド配列は、標的遺伝子の複製若しくは転写調節領域、又は翻訳開始領域及びエクソン/イントロン連結部などの翻訳調節領域、又は標的mRNAのコード領域に特異的にハイブリダイズするように設計することができる。特定の実施形態において、shRNAは、Sav1タンパク質のN末端領域をコードする配列、Sav1タンパク質の中央をコードする配列、又はSav1タンパク質のC末端領域をコードする配列を標的とする。
【0056】
shRNA:合成
一般に当業者に公知であるように、一般的に使用されるオリゴヌクレオチドは、天然に存在するプリン及びピリミジン塩基の組合せ、糖、並びにホスホジエステル結合におけるリン酸基を含むヌクレオシド間の共有結合を有する、リボ核酸又はデオキシリボ核酸のオリゴマー又はポリマーである。しかしながら、下記の通り、用語「オリゴヌクレオチド」とは、天然に存在するオリゴヌクレオチドの天然には存在しない様々な模倣体及び派生体、即ち修飾形態も包含することに留意されたい。
【0057】
本開示のshRNA分子は、DNA及びRNA分子の合成について当業者に公知の任意の方法によって調製することができる。これらには、例えば、固相ホスホラミダイト化学合成など当業者に周知の、オリゴデオキシリボヌクレオチド及びオリゴリボヌクレオチドを化学的に合成する技術がある。別法として、RNA分子は、shRNA分子をコードしているDNA配列のin vitro及びin vivo転写によって生成することができる。そのようなDNA配列は、T7又はSP6ポリメラーゼプロモーターなど適切なRNAポリメラーゼプロモーターを組み込んだ多種多様なベクターに組み込むことができる。別法として、shRNAを使用されるプロモーターに応じて構成的又は誘導的に合成するアンチセンスcDNA構築物を、安定して細胞株に導入することができる。
【0058】
shRNA分子は、適切に保護されたリボヌクレオシドホスホラミダイト及び従来通りのDNA/RNA合成装置を使用して化学的に合成することができる。特別注文のshRNA合成サービスが、Ambion(Austin、 Tex.、USA)及びDharmacon Research(Lafayette、Colo.、USA)などの商業的な供給メーカーから利用可能である。例えば米国特許第7,410,944号を参照のこと。
【0059】
細胞内の安定性及び半減期を高める手段として、DNA分子に対して様々な周知の修飾を導入することができる。考え得る修飾には、それだけには限らないが、分子の5’及び/又は3’末端へのリボ若しくはデオキシヌクレオチドの隣接配列の付加、又はオリゴデオキシリボヌクレオチド骨格内のホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオエート若しくは2’O-メチルの使用がある。本発明のアンチセンス核酸は、当業者に公知の手順を使用して化学合成又は酵素的ライゲーション反応を使用して構築することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、天然に存在するヌクレオチド、又は分子の生物学的安定性を高める若しくはアンチセンスとセンス核酸の間に形成される二本鎖の物理的安定性を高めるように設計された様々な修飾ヌクレオチドを使用して化学的に合成することができる(例えば、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換されたヌクレオチドを使用できる)。
【0060】
本発明のshRNA分子は、任意のSav1 shRNAの構造の、修飾された様々な等価物であってもよい。「修飾された等価物」とは、同じ標的特異性を有する特定のsiRNA分子の修飾された形態(即ち無修飾の特定のsiRNA分子を相補する同じmRNA分子を認識する)のことを意味する。従って、無修飾siRNA分子の修飾された等価物は、修飾されたリボヌクレオチド、即ち、無修飾ヌクレオチドの塩基、糖及び/又はリン酸(若しくはホスホジエステル結合)の化学構造に修飾を含有するリボヌクレオチドを有することができる。例えば米国特許第7,410,944号を参照のこと。
【0061】
好ましくは、修飾shRNA分子は、修飾骨格又は非天然のヌクレオシド間結合、例えば、修飾リン含有骨格並びにモルホリノ骨格;シロキサン、スルフィド、スルフォキシド、スルホン、スルホン酸、スルホンアミド、及びスルファミン酸骨格;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格;アミド骨格、等のような非リン骨格を含有する。例えば米国特許第7,410,944号を参照のこと。
【0062】
修飾リン含有骨格の例には、それだけには限らないが、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、対掌性ホスホロチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、アルキルホスホネート、チオノアルキルホスホネート、ホスフィナート、ホスホルアミダート、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホトリエステル及びボラノホスフェート並びにその様々な塩形態がある。例えば米国特許第7,410,944号を参照のこと。
【0063】
上記の非リン含有骨格の例は、当業者に公知であり、例えば、米国特許第5,677,439号であり、それぞれを参照により本明細書に組み込む。例えば米国特許第7,410,944号を参照のこと。
【0064】
shRNA化合物の修飾形態は、修飾ヌクレオシド(ヌクレオシド類似体)、即ち、修飾プリン若しくはピリミジン塩基、例えば5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ピリジン-4-オン、ピリジン-2-オン、フェニル、シュードウラシル、2,4,6-トリメトキシベンゼン、3-メチルウラシル、ジヒドロウリジン、ナフチル、アミノフェニル、5-アルキルシチジン(例えば、5-メチルシチジン)、5-アルキルウリジン(例えば、リボチミジン)、5-ハロウリジン(例えば、5-ブロモウリジン)、又は6-アザピリミジン、又は6-アルキルピリミジン(例えば6-メチルウリジン)、2-チオウリジン、4-チオウリジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、5’-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン、5-メトキシアミノメチル-2-チオウリジン、5-メチルアミノメチルウリジン、5-メチルカルボニルメチルウリジン、5-メチルオキシウリジン、5-メチル-2-チオウリジン、4-アセチルシチジン、3-メチルシチジン、プロピン、ケウオシン、ワイブトシン、ワイブトキソシン、β-D-ガラクトシルケウオシン、N-2,N-6及びO-置換プリン、イノシン、1-メチルアデノシン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアノシン、2-メチルアデノシン、2-メチルグアノシン、N6-メチルアデノシン、7-メチルグアノシン、2-メチルチオ-N-6-イソペンテニルアデノシン、β-D-マンノシルケウオシン、ウリジン-5-オキシ酢酸、2-チオシチジン、トレオニン誘導体等を含有することもできる。例えば米国特許第7,410,944号を参照のこと。
【0065】
加えて、修飾shRNA化合物は、置換又は修飾糖部分、例えば、2’-O-メトキシエチル糖部分を有することもできる。例えば米国特許第7,410,944号を参照のこと。
【0066】
加えて、任意の標的遺伝子を効果的にサイレンシングするためのshRNAの設計を支援するためにいくつかの供給会社が、標的遺伝子のmRNA又はコードDNA配列が与えられた場合にshRNAを「選ぶ」ためのこれらの全般的な指針を利用するウェブ型設計ツールを維持している。そのようなツールの例は、Dharmacon、Inc.(Lafayette、Colo.)、Ambion、Inc.(Austin、Tex.)のウェブサイトで見ることができる。例えば、shRNAの選択が、標的遺伝子に固有の部位/配列(即ち、標的とする遺伝子以外の遺伝子と有意な相同性を共有しない配列)を選ぶことを含むことにより、他の遺伝子は、この特定の標的配列のために設計した同じshRNAによって偶然に標的となることはない。
【0067】
考慮すべき別の基準は、標的配列が公知の多型部位を含むか否かである。多型部位を含む場合、標的配列と所与のshRNA中の相補鎖の間の1塩基ミスマッチが、そのshRNAによって誘導されるRNAiの有効性を大きく減少させ得るので、ある特定の対立遺伝子を標的とするように設計されたshRNAは、別の対立遺伝子を効果的に標的とすることができない。標的配列並びにそのような設計ツール及び設計基準を考えれば、本開示を承知している当業者は、Sav1のmRNAレベルを減少させるのに有用な更なるsiRNA化合物を設計し合成することができるはずである。
【0068】
shRNA:投与
本開示は、ポリマー又は賦形剤及び1つ以上のshRNA分子をコードしている1つ以上のベクターの組成物を提供する。ベクターは、適切な担体と共に医薬組成物に製剤化し、任意の適切な投与経路を使用して哺乳動物に投与することができる。
【0069】
この精度のため、一般に従来の薬物と関連する副作用を、減少又は除去することができる。加えて、shRNAは、比較的安定であり、アンチセンスのようにそれらを修飾して、安定性の増大、送達可能性及び製造の容易さなど医薬の特徴を改善することもできる。更に、shRNA分子は、天然の細胞経路、即ちRNA干渉を活用するので、標的とするmRNA分子を分解する効率が高い。その結果、対象においてshRNA化合物の治療上有効な濃度を達成することは、比較的容易である。例えば米国特許第7,410,944号を参照のこと。
【0070】
shRNA化合物は、異なる経路による様々な方法によって哺乳動物に投与することができる。それらは、標的組織への直接注射など任意の適切な限局化投与方法によって、特定の器官又は組織に直接送達することもできる。別法として、それらは、イオン導入により、又はヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、及び生体接着微小球など他の媒体への組み込みによりリポソーム内に封入して送達することができる。
【0071】
静脈内注射したRNAiによる特定の遺伝子発現のin vivo阻害を、哺乳動物を含めた様々な生物において達成した。特別な実施形態において、shRNA分子は、ウイルス又は非ウイルスベクターを含めたベクターに含まれる。特定の実施形態において、ベクターは組み込まれないが、他の実施形態において、それは組み込まれる。ウイルスベクターは、例えばレンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、及びレトロウイルスであり得る。非ウイルスベクターには、プラスミドがある。特定の実施形態において、AAV9ベクター(Pirasら、2013年)が利用される。ベクターは、全身的又は局所的に個体に送達され得る。特定の実施形態において、ベクターは、組織特異的又は心筋細胞特異的プロモーターなど細胞特異的プロモーターを利用する。特定の実施形態において、ベクターは、局所注射によって送達される。
【0072】
本発明のshRNA分子の投与経路の1つには、例えば、疾患のある心臓組織又は虚血性心臓組織などへの、所望の組織部位でのベクターの直接注射がある。
【0073】
一般に、ポリヌクレオチド配列、並びに第1のセグメント、第1のセグメントの直ぐ3’に位置する第2のセグメント、及び第2のセグメントの直ぐ3’に位置する第3のセグメントをコードしている単離された核酸配列に作動的に連結されたプロモーターを含むベクターが本発明に含まれ、第1及び第3のセグメントは、それぞれ長さ30塩基対より短く、それぞれ長さ10塩基対より長く、第3のセグメントの配列は、第1のセグメントの配列の相補体である。第1のセグメントの直ぐ3’に位置する第2のセグメントは、4~10(即ち、4、5、6、7、8、9、10)ヌクレオチドを含有するループ構造をコードする。核酸配列は、siRNAとして発現され、指定した核酸配列を標的とする小ヘアピンRNA分子(shRNA)として機能する。
【0074】
より具体的には、本発明は、Sav1由来遺伝子産物の発現を選択的に減少させる組成物及び方法を含む。本発明は、Sav1を標的とするshRNAをコードしている核酸配列を含むポリヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。shRNAは、二本鎖構造及びループ構造を含むヘアピン構造を形成する。ループ構造は、4、5又は6ヌクレオチドなど4~10ヌクレオチドを含有することができる。二本鎖は、10~27ヌクレオチドなど、長さ30ヌクレオチド未満である。shRNAは、突出領域を更に含むことができる。そのような突出は、3’突出領域又は5’突出領域であってもよい。突出領域は、例えば、長さ1、2、3、4、5、又は6ヌクレオチドであってもよい。
【0075】
本発明は、とりわけ、哺乳動物に本明細書に記述したベクターを1つ以上含む組成物を投与することによって哺乳動物を治療する方法を提供する。本発明の一態様において、異なるshRNA(Sav1核酸配列の異なる領域を標的とする)をそれぞれコードしている複数のベクターを、哺乳動物に同時に又は連続的に投与することができる。個々のベクターは、同じ遺伝子の異なる領域を標的とする複数のshRNAをコードすることができ;即ち、配列番号10を含むshRNA及び配列番号11を含むshRNA及び配列番号12を含むshRNAのうちの2つ以上を含むshRNAをコードすることができる。別の態様において、個々のベクターは、配列番号10を含むshRNAの複数のコピー又は配列番号11を含むshRNAの複数のコピー又は配列番号12を含むshRNAの複数のコピーを任意の比率でコードすることができる。
【0076】
本発明のベクターは、プロモーターを更に含むことができる。プロモーターの例には、調節可能なプロモーター及び構成的プロモーターがある。例えば、プロモーターはCMV又はRSVプロモーターであってもよい。ベクターは、合成最小ポリアデニル化シグナルなどポリアデニル化シグナルを更に含むことができる。多くのそのようなプロモーターは当業者に公知であり、この発明における使用が想定される。他の例において、プロモーターは、心臓組織特異的プロモーターなど組織特異的プロモーターであってもよい。
【0077】
ベクターは、1つ以上のマーカー遺伝子又はレポータ遺伝子を更に含むことができる。多くのマーカー遺伝子及びレポータ遺伝子が、当業者に公知である。本発明は、本発明の実行において当業者に公知の1つ以上のマーカー遺伝子及び/又はレポータ遺伝子の使用を想定する。マーカー遺伝子又はレポータ遺伝子は、1つ以上の連結された遺伝子の発現を追跡するための方法を提供する。細胞内の発現に対するマーカー遺伝子又はレポータ遺伝子は、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的又は他の物理的手段によって検出可能な産物、通常タンパク質をもたらす。対象の遺伝子由来かどうかにかかわらない遺伝子発現産物、マーカー遺伝子又はレポータ遺伝子は、標識することによって検出することもできる。本明細書に含まれる本発明における使用に想定される標識には、それだけには限らないが、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて一般に使用される)、ビオチン、ジゴキシゲニン、又は例えば、ペプチドに識別用放射性同位元素を組み込むことによって検出可能にできる若しくはペプチドと特異的に反応する抗体を検出するために使用することができるハプテン及びタンパク質がある。例えば米国特許第7,419,779号を参照のこと。
【0078】
本発明の一態様において、本発明のshRNAを1つ以上含む1つ以上のベクターは、最初の投与後に任意の時間間隔で、最初の投与後に無制限の回数を再投与することができる。
【0079】
shRNA:医薬組成物
本発明のshRNAコード核酸は、医薬組成物に製剤化することができ、従来通りの医薬品調剤技術に従って調製される。例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences、第18版(1990年、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.)を参照のこと。本発明の医薬組成物は、shRNAをコードしているベクターの治療上有効な量を含む。これらの組成物は、ベクターに加えて、薬学的に許容できる賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤又は当業者に周知の他の物質を含むことができる。そのような物質は、非毒性であるべきであり、有効成分の効力に干渉するべきでない。担体は、例えば、静脈、経口、筋肉内、皮下、くも膜下腔内、神経弓突起又は非経口投与のために所望される調製形態によって多種多様な形態をとることができる。
【0080】
本発明のベクターが投与のために調製される場合、それらを、薬学的に許容できる担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせて、医薬製剤又は単位剤形を形成することができる。そのような製剤中の全有効成分は、製剤の重量の0.1~99.9%を含む。
【0081】
本発明の別の態様において、本発明のベクターは、遺伝子サイレンシングが起こるべき場合にそれを誘導するのに十分な割合のサンプルが細胞に入ることを可能とする任意の手段によって適切に製剤化し、細胞の環境に導入することができる。ベクターのための多くの製剤が当業者に公知であり、ベクターが作用できるように標的細胞に入る限り使用することができる。
【0082】
例えば、ベクターは、リポソーム、ミセル構造、及びカプシドを含むリン酸緩衝生理食塩水など緩衝液中に製剤化することができる。本発明のベクターの医薬製剤は、水性若しくは無水の溶液又は分散の形態、或は別法として乳液又は懸濁液の形態をとることもできる。本発明のベクターの医薬製剤は、任意選択の成分として、可溶化又は乳化剤、及び当技術分野において周知の型の塩を含むことができる。本発明の医薬製剤において有用である担体及び/又は希釈剤の非限定的な特定の例には、水及び生理的に許容できる食塩水がある。個体に投与するための組成物を調製するための他の薬学的に許容できる担体には、例えば、グリコール、グリセロール、又は注射可能な有機エステルなどの溶媒又は媒体がある。薬学的に許容できる担体は、例えば、shRNAコードベクターを安定化するか、又は吸収を高めるように作用する生理的に許容できる化合物を含有することができる。他の生理的に許容できる担体には、例えば、グルコース、スクロース若しくはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸若しくはグルタチオンなどの酸化防止剤、キレート剤、低分子量タンパク質又は他の安定剤若しくは賦形剤、生理食塩水、デキストロース溶液、フルクトース溶液、エタノール、又は動物性、植物性若しくは合成起源の油がある。担体は、他の成分、例えば、保存剤を含有することもできる。
【0083】
生理的に許容できる化合物を含めた薬学的に許容できる担体の選択が、例えば、組成物の投与経路によって決まることは認識されよう。ベクターを含有する組成物は、臨床検査薬、栄養物質、毒素、又は更なる治療剤など第2の試薬を含有することもできる。心臓疾患の治療に有用な多くの薬剤は当業者に公知であり、本発明のベクターと組み合わせての使用が想定される。
【0084】
陽イオン性脂質が付いたベクターの製剤を使用して、細胞へのベクターのトランスフェクションを容易にすることができる。例えば、リポフェクチンなど陽イオン性脂質、陽イオン性グリセロール誘導体、及びポリリシンなどポリ陽イオン性分子を使用することができる。適切な脂質には、例えば、製造業者の指示に従って使用することができるOligofectamine及びLipofectamine(Life Technologies)がある。
【0085】
適切な量のベクターが導入されなければならず、これらの量は、標準的な方法を使用して経験的に決定することができる。一般に、細胞の環境における個々のベクター種の有効濃度は、約50nM以下、10mM以下であり、又は約1nM以下の濃度の組成物を使用することができる。他の態様において、本方法は、約200pM以下の濃度を利用し、約50pM以下の濃度でも多くの状況において使用することができる。当業者は、標準的な方法を使用して任意の特定の哺乳動物対象に対する有効濃度を決定することができる。
【0086】
shRNAは、治療上有効な量で好ましくは投与される。投与される実際の量、並びに投与の速度及び時間的経過は、治療しようとする状態、疾患又は障害の性質及び重症度で決まることになる。治療の処方、例えば、用量、タイミング等の決定は、一般的な開業医又は専門医の責任の範囲内にあり、治療しようとする障害、状態又は疾患、個々の哺乳動物対象の状態、送達の部位、投与の方法及び開業医に公知の他の因子を一般に考慮する。技術及び手順の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 第18版(1990年、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.)に見ることができる。
【0087】
別法として、抗体又は細胞特異的リガンドなどの標的化系の使用により、標的化療法を使用して、特定の型の細胞にshRNAコードベクターを一層特異的に送達することができる。標的化は、例えば、薬剤が許容できないほど有毒な場合、又は非常に高い用量を必要とする場合、又は標的細胞に入ることができない場合等種々の理由から、より望ましいことがある。
【0088】
shRNA:遺伝子療法
例えば小ヘアピン形態(shRNA)のsiRNA化合物が直接転写され得るDNAベクターを使用する遺伝子療法手法によって、siRNAを哺乳動物細胞、特にヒト細胞に送達することもできる。最近の研究により、二本鎖siRNAが、RNAiを媒介するのに非常に効果的であることが示されたが、短い一本鎖ヘアピン形状RNAも、恐らく、細胞内酵素によって二本鎖siRNAにプロセシングされる分子内二本鎖に折りたたまれるので、RNAiを媒介することができる。そのような小ヘアピンRNAの転写を導く、少数個(例えば、3、4、5、6、7、8、9個)のヌクレオチドによって隔てられた短い逆位反復を保有するDNAベクターを細胞又は組織にトランスフェクトすることによってそのようなshRNAの産生をin vivoで容易に達成できるので、この発見は、重要且つ広範囲の意味を有する。加えて、宿主細胞ゲノムへのベクター若しくはベクターセグメントの組み込みを導く、又は転写ベクターの安定性を確実にするための機序が含まれている場合、コードされているshRNAにより生じるRNAiを、安定で、且つ受け継がれ得るようにすることができる。そのような技術は、哺乳動物細胞において特定の遺伝子の発現を「ノックダウンする」ために使用されてきただけでなく、現在、外生的に発現している導入遺伝子、並びに生きているマウスの脳及び肝臓における内在性遺伝子の発現をノックダウンするために利用され、成功を収めている。
【0089】
遺伝子療法は、当業者に公知であるように一般に認められた方法に従って実施される。例えば米国特許第5,837,492号及び第5,800,998号並びにその中の引用文献を参照のこと。遺伝子療法においてベクターとは、その中にコードされるポリヌクレオチドを発現するのに十分な配列を含有するポリヌクレオチド配列を含むことが意味される。ポリヌクレオチドがshRNAをコードする場合、発現はアンチセンスポリヌクレオチド配列を産生することになる。このように、この状況において、発現は、タンパク質産物が合成されることを必要としない。ベクターにコードされるshRNAに加えて、ベクターは、真核細胞において機能的なプロモーターも含有する。shRNA配列は、このプロモーターの制御下にある。適切な真核性プロモーターには、本明細書の他の場所に記述されているものがあり、当業者に公知である。発現ベクターは、従来通りに使用される選択可能なマーカー、レポータ遺伝子及び他の調節配列などの配列を含むこともできる。
【0090】
従って、in situで生成されるshRNAの量は、核酸配列の転写を導くために使用されるプロモーターの性質(即ち、プロモーターが構成的か又は調節可能か、強いか又は弱いかどうか)及び細胞内にあるshRNA配列をコードしている核酸配列のコピー数などの因子を制御することによって調節される。
【0091】
Sav1 shRNAの発現の場合、プロモーターはshRNA配列に作動的に連結される。本明細書では、用語「プロモーター」とは、特定の宿主細胞においてプロモーター配列に作動的に連結されている標的遺伝子配列の発現を調節するDNA配列のことを指す。用語「作動的に連結される」は、核酸断片が別の核酸断片に連結され、その結果その機能又は発現が、他の核酸断片による影響を受けることを意味する。本発明の発現カセットは、任意選択の、転写を制御するためのオペレーター配列、適切なmRNAリボゾーム結合部位をコードする配列、並びに転写及び翻訳の終了を制御する配列など様々な発現調節配列を更に含むことができる。本発明において使用されるプロモーターは、標的遺伝子の発現を構成的に誘導する構成的プロモーター、又は所与の位置及び時点で標的遺伝子の発現を誘導する誘導可能なプロモーターであってもよい。プロモーターの特定の例には、U6プロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、SV40プロモーター、CAGプロモーター(Hitoshi Niwaら、Gene、108:193~199頁、1991年;及びMonahanら、Gene Therapy、7:24~30頁、2000年)、CaMV 35Sプロモーター(Odellら、Nature 313:810~812頁、1985年)、Rsyn7プロモーター(米国特許出願番号第08/991601号)、ユビキチンプロモーター(Christensenら、Plant Mol.Biol.12:619~632頁、1989年)、ALSプロモーター(米国特許出願番号第08/409297号)等があり得る。また、使用可能なプロモーターは、米国特許第5,608,149号、第5,608,144号、第5,604,121号、第5,569,597号、第5,466,785号、第5,399,680号、第5,268,463号、第5,608,142号等に開示されている。
【0092】
本開示の組換えベクターは、当業者に公知の従来通りの方法を使用して宿主細胞に導入することができる。宿主細胞は、ベクターの操作のために又はベクターを個体へ移す手段として利用することができる。好ましくは、宿主細胞へのベクターの細胞内組み込みは、塩化カルシウム、微粒子銃、エレクトロポレーション、PEG媒介融合、顕微鏡下注射、リポソーム媒介法、等のような当業者に公知の従来通りの方法によって実施することができる。
【0093】
本発明において利用できる宿主細胞の例には、それだけには限らないが、大腸菌(Escherichia coli)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、ストレプトマイセス、シュードモナス、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)及びブドウ球菌などの原核生物細胞、真菌(例えばアスペルギルス)、酵母(例えばピキア・パストリス[Pichia pastoris])、酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母及びアカパンカビ(Neurospora crassa)など低級な真核細胞、並びに昆虫細胞、植物細胞、哺乳動物細胞などより高級な真核細胞があり得る。好ましくは、宿主細胞はヒト細胞であってもよい。
【0094】
一方、本開示において使用される標準的な組換えDNA及び分子クローニング技術は、当業者に周知であり、以下の文献において見ることができる:Sambrook,J.、Fritsch,E.F.及びManiatis,T.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor、N.Y.(1989年);Silhavy,T.J.、Bennan,M.L.及びEnquist,L.W.、Experiments with Gene Fusions、Cold Spring Harbor Laboratory:Cold Spring Harbor、N.Y.(1984年);並びにGreene Publishing Assoc.and Wiley-Interscienceによって出版されている(1987年)、Ausubel,F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology。
【0095】
本発明による医薬組成物は、本発明の組換えベクターの治療上有効な量及び単独又は1つ以上の薬学的に許容できる担体と組み合わせた心臓病の薬を含むことができる。本明細書では、用語「治療上有効な量」とは、陰性対照によって呈される所望の治療応答より大きいそれを生じる能力がある量のことを指す。好ましくは、治療上有効な量は、心血管疾患を予防又は治療するのに十分な用量である。
【0096】
本開示における組換えベクターの治療上有効な量は、0.0001~100mg/日/kg(BW)、好ましくは0.005~0.05mg/日/kgの範囲であってもよい。しかしながら、本薬物の有効な用量は、疾患の種類及び重症度、年齢、体重、患者の健康及び性別、投与経路並びに治療期間など様々な因子に応じて変化し得る。
【0097】
本明細書では、用語「薬学的に許容できる」とは、化合物が、生理的に許容でき、ヒト又は動物に投与された場合に、アレルギー反応(例えば胃腸障害、及びめまい)又は類似の反応を引き起こさず、有効成分の作用に対して阻害効果がないことを意味する。薬学的に許容できる担体の例には、あらゆる溶媒、分散媒、水中油型又は油中水型乳剤、水性組成物、リポソーム、マイクロビーズ及びミクロソームがあり得る。
【0098】
一方、本発明の医薬組成物は、薬物の投与経路に応じて、当業者に公知の従来通りの方法により任意の適切な担体と組み合わせて適切に製剤化することができる。医薬組成物の投与経路に対して特段の制限はない。従って、本発明による薬物組成物は、経口又は非経口経路によって投与することができる。非経口投与経路の例には、経皮、鼻腔内、腹膜内、筋肉内、皮下及び静脈内経路があり得る。
【0099】
本発明の医薬組成物が経口経路によって投与される場合、医薬組成物は、当業者に公知の従来通りの方法に従って、任意の経口的に許容できる媒体と組み合わせて散剤、顆粒剤、錠剤、ピル、糖衣剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、懸濁剤及びカシュ剤など様々な剤形に製剤化することができる。適切な媒体の例には、様々な充填材、例えばラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール及びマルチトールなどの糖;コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉及びジャガイモ澱粉などの澱粉;セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース物質;ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP)等があり得る。必要に応じて、架橋したポリビニルピロリドン、寒天、及びアルギン酸又はアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤を添加することができる。更に、医薬組成物は、抗凝固剤、潤滑剤、湿潤剤、芳香剤、乳化剤及び保存剤を更に含むことができる。
【0100】
本発明の医薬組成物が非経口経路によって投与される場合、医薬組成物は、当業者に公知の従来通りの方法に従って、任意の非経口的に許容できる媒体と組み合わせて例えば、注射可能な調剤、経皮性調剤又は鼻吸入剤に製剤化することができる。注射可能な調剤の製剤に関しては、病原菌及び真菌を含めた微生物汚染からの医薬製剤の保護と組み合わせて殺菌を実行しなければならない。注射可能な調剤に適切な媒体の例には、それだけには限らないが、水、エタノール、多価アルコール(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、その混合物及び/又は植物油を含めた溶媒又は分散媒があり得る。より好ましくは、適切な媒体の例には、ハンクス溶液、リンガー溶液、トリエタノールアミン含有PBS(リン酸緩衝食塩水)、注射用蒸留水、10%エタノール、40%プロピレングリコール及び5%デキストロースなどの等張液があり得る。微生物汚染に対して注射可能な調剤を保護するために、調剤は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、等を更に含むことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。
【0101】
経皮性製剤の場合、本発明の医薬組成物は、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、外液剤、パスタ剤、塗布剤又は噴霧剤の形態で製剤化され得る。用語「経皮性投与」は、医薬組成物が表皮に局所適用される場合に、医薬組成物に含有される有効成分の治療上有効な量が表皮に移ることを意味する。これらの製剤については、全ての製薬化学分野において一般に公知の手引き書である文献に記述されている(Remington’s Pharmaceutical Sciences、第15版、1975年、Mack Publishing Company、Easton、Pa.)。
【0102】
吸入による投与の場合、本発明で使用する化合物は、適切な推進体、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切な気体を使用する加圧パック又はネビュライザーからのエアゾールスプレーの形態で都合よく送達される。加圧エアゾールの場合、単位用量は、一定量を送達するための弁を備えることによって決定することができる。吸入器又は通気器で使用するための例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物とラクトース又は澱粉など適切な粉末基剤との粉末状の混合物を含有するように製剤化することができる。
【0103】
他の薬学的に許容できる媒体は、文献に見ることができる(Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版、Mack Publishing Comany、Easton、Pa.、1995年)。
【0104】
本発明の医薬組成物は、1つ以上の緩衝液(例えば生理食塩水若しくはPBS)、炭水化物(例えばグルコース、マンノース、スクロース若しくはデキストラン)、酸化防止剤、静菌剤、キレート剤(例えばEDTA若しくはグルタチオン)、アジュバント(例えば水酸化アルミニウム)、懸濁化剤、増粘剤、及び/又は保存剤を更に含むことができる。
【0105】
加えて、本発明の医薬組成物は、哺乳動物に組成物を投与した後に有効成分が急速な、持続性の又は遅延性の放出を実現できるように、当業者に公知の従来通りの方法によって適切に製剤化することができる。
【0106】
更に、本発明の医薬組成物は、心臓状態を治療するための治療効果を有する公知の薬物と併用して投与することができる。
【実施例】
【0107】
以下の実施例は、本発明の特定の非限定的な態様を示すために含まれる。以下に続く実施例に開示される技術が、本発明の実行においてよく機能することが本発明者等によって発見された技術を表すことは、当業者によって認識されよう。しかしながら、当業者は、本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく、開示されている特定の実施形態に多くの変化を加えても、同様の又は類似の結果を得ることができることを本開示に照らして認識すべきである。
【0108】
実施例1
Hippoシグナル伝達は、成体の心筋細胞新生を促進する
他の器官が再生能を有する一方で、心筋細胞は、損傷した心臓を修復するのに十分に新生又は再生することができない(Kikuchi及びPoss、2012年)。Hippoシグナル伝達が、出生後の心筋細胞新生の負の調節因子であるという仮説を検討するために、成体心筋細胞においてSalv及び両方のLats遺伝子を不活性化した。
【0109】
成体心筋細胞におけるSalv、Lats1及びLats2の役割を試験するために、コンディショナルnull対立遺伝子を、Hippo遺伝子及びタモキシフェン調節心筋細胞cre活性を誘導するMyh6creERT2導入遺伝子に対して使用した(Sohalら、2001年)。心臓は複数の細胞型を含有するので、心筋細胞系統を追跡するために、心筋細胞を、cre活性化に応じてeGFPを発現するR26mTmG(mTmG)対立遺伝子を使用して可視化した(Muzumdarら、2007年)。3月齢マウスにタモキシフェンを注射することによってSalv及びLats1/2の変異体である成体心筋細胞を作製した(Heallenら、2013年)。Hippo欠損が細胞周期の再開をもたらすかどうか決定するために、マウスを、5-エチニル-2'-デオキシウリジン(EdU)で注射した。de novo DNA合成を示す核EdU組み込みが、Salvコンディショナルノックアウト(CKO)及びLats1/2CKO変異体心筋細胞の両方において検出されたことは、Hippoシグナル伝達を欠損させた場合の内在性心筋細胞新生能を示している。EdU陽性の細胞の定量は、Hippo欠損性心臓におけるDNA合成の有意な誘導を示し、Salv CKO心筋細胞と比較してLats1/2変異体においてより大きく増加した(Heallenら、2013年)。細胞周期の再開も、FACS分析を使用して単離した心筋細胞核において定量した(Bergmannら、2009年;Heallenら、2013年)。Lats1/2CKO及びSalv CKO心筋細胞核の両方が、対照と比較してKi-67発現心筋細胞の数を増加させた(Heallenら、2013年)。これらの結果は、心筋細胞が、Hippo経路崩壊に応じて細胞周期に再び入ることを示し、Hippoシグナル伝達が成体心筋細胞新生の負の調節因子であるという仮説を支持する。
【0110】
Salv CKO及びLats1/2CKO心筋細胞が、有糸分裂及び細胞質分裂によって発達するかどうかを評価した。免疫組織化学を、M期マーカーであるAurora Bキナーゼ(Aurkb)を用いて実行して、Hippo欠損性心筋細胞において細胞分裂が起こるかどうか決定した。Lats1/2及びSalv CKO心筋細胞におけるAurkb発現が分裂溝において明らかに検出可能だったことは、細胞分裂の直接的な証拠を提供した(Heallenら、2013年)。Hippo欠損性心臓とは対照的に、Aurkb発現は、対照心臓において検出されなかった。
【0111】
要約すると、ストレスがない成体マウス心臓におけるHippo経路の不活性化は、心筋S期の開始及び有糸分裂による発達の増大を伴う心筋細胞新生の強化をもたらす(Heallenら、2013年)。これらの所見は、成体心筋細胞新生におけるHippoシグナル伝達の阻害的役割を明らかにする。
【0112】
実施例2
Hippoシグナル伝達は、急性傷害モデルにおける成体心臓再生を促進する
生存の最初の6日目における心尖部切除は、心臓再生をもたらすが、生後(P)7日目以降に実行された切除は、線維形成及び瘢痕をもたらす(Porrelloら、2011年)。
【0113】
再生能力を試験するために、対照及びHippo欠損性心臓において、通常は再生しないP8段階で、均一なサイズの尖部切除を実行した。Salvを不活性化するために、切除の前後にマウスにタモキシフェン4用量を注射した。mTmGレポータにおける組換えを検出するGFP蛍光、及び抗Salv抗体による免疫蛍光の両方が、切除4日後(4dpr)に変異体心筋におけるSalvの効果的な欠失を示した。連続切断による21dpr心臓の評価は、一部の場合を除いて対照心臓の重度の瘢痕を明らかにした。それに対し、切除されたHippo欠損性心臓は、心筋を効率的に再生し、瘢痕サイズが減少した(Heallenら、2013年)。再生された心尖部は、主に先在する心筋細胞に由来していた。
【0114】
左前下行(LAD)冠動脈閉鎖を、P8及び生後2ヵ月で実行した。P8心臓において、LAD閉鎖(LADO)後に、閉鎖21日後に分析すると、機能が回復し、瘢痕サイズが減少していた。組織検査でも、LADO後に心筋が回復し、瘢痕組織が減少しているのを確認した(Heallenら、2013年)。成体心臓において、LADO後の心筋細胞再生について同様に強い組織学的及び機能的な証拠があった。超音波心臓検査法によって評価される短縮率及び駆出率が、LADOの3週間後までに、成体Hippo欠損性心臓が疑似手術を施した動物のそれと同等の機能を回復したことを示したことは、Hippo欠損性心筋細胞が、虚血性損傷後に生存及び/又は増殖を高めたことを示唆している(Heallenら、2013年)。
【0115】
実施例3
HIPPO欠損性心筋細胞は、再生中に大規模に増殖し、移動特性を獲得する
4dpr(P12)Hippo欠損性心臓を、更に詳細に評価した。採取の4時間前に、細胞周期に入った細胞を可視化するために、心臓にEdUをパルスした。対照心臓において、EdU陽性細胞は、切除した区域の近くのGFP陰性、非心筋細胞系統において主に見られ、浸潤性炎症細胞及び増殖性心臓線維芽細胞である可能性が最も高い。類似の増殖性GFP陰性細胞が、Salv CKO心臓においても観察された。対照とは対照的に、Salv CKO切除心臓は、境界区域及び遠位心臓領域の両方の中にEdU/GFP二重陽性心筋細胞を有していた(Heallenら、2013年;Morikawaら、2014年)。
【0116】
Hippo欠損は、心臓の全体に渡って、心筋細胞が細胞周期に再び入る能力を強化する。Salv CKO変異体心臓において、心筋細胞系統由来の細胞は、周囲の境界区域心筋細胞から分離し、多数の非心筋細胞を含有する切除された区域に入った。更に、Hippo欠損性GFP陽性心筋由来細胞は、葉状仮足様の突出を伸ばした。対照心臓において、GFP陽性細胞は境界区域内に集まり、心臓の切除された領域を浸潤させなかった(Morikawaら、2014年)。
【0117】
実施例4
Yapは、細胞周期の進行及び細胞骨格再形成を促進する遺伝子を直接調節する
心臓再生におけるHippoシグナル伝達の直接標的化に対する更なる洞察を得るために、クロマチン免疫沈降塩基配列決定(ChIP-seq)実験を、HippoエフェクターYapに対する抗体を使用して実行した。マイクロアレイ実験のmRNA発現データを使用して、ChIP-seqデータセットに対し、Nkx2.5
cre Salv変異体心臓において上方制御される遺伝子を重ね合わせた(
図2A、B)。遺伝子発現変化を、qRT-PCR実験によって確認した(
図2B)。遺伝子存在論分析は、Yapが細胞周期の進行及び細胞骨格力学に関係する遺伝子を直接調節することを示した(
図2A及び[Morikawaら、2014年])。Yapにより調節される細胞周期遺伝子の中には、Cdk6、及びこれまでに確認されているYap標的、CyclinE2などのサイクリン依存性キナーゼも含まれる。別のYap標的、細胞周期遺伝子Lin9は、MuvB複合体のメンバーであり、G2/M遷移を強化する(Kleinschmidtら、2009年;Sadasivamら、2012年)(
図2A、B)。
【0118】
細胞骨格と細胞周期の進行の両方を調節しているYap標的遺伝子には、Aurkb及びBirc5(サバイビン)がある(
図2A、B)。Aurkb及びBirc5は、染色体パッセンジャー複合体成分であり、有糸分裂並びに細胞分裂の間の染色体凝縮及び分離に重要である。重要なことに、Birc5は、発達過程の心臓においてHippoシグナル伝達によって調節されることが以前に示された(Heallenら、2011年)。細胞分裂を調節する細胞質分裂溝及び中央紡錘体において発現する遺伝子、例えばAnillin、Pkp4及びEct2が、直接的Yap標的遺伝子であることは、Yapが心筋細胞を再生する際に細胞分裂を促進することを示す(Hesseら、2012年;Matthewsら、2012年;Wolfら、2006年)。
【0119】
実施例5
Yapは、心臓再生の間に細胞骨格再形成及び細胞運動性を促進する遺伝子を直接調節する
細胞形態学における劇的な変化と整合して、Yapが、アクチン細胞骨格を調節する遺伝子に直接結合することも発見した(
図2A、B)。マウスにおいて欠損していると心機能不全が引き起こされるEnah、Ena/VASPアクチン調節因子など、Yapにより調節される標的のいくつかは、葉状仮足及び糸状仮足に局所化することが公知である(Mejillanoら、2004年;Morikawaら、2014年)。
【0120】
Yapは、心筋細胞と細胞外基質(ECM)との力伝達に関係する遺伝子にも結合する。これらは、アクチン細胞骨格を細胞質膜に連結することに関係する遺伝子を含む。サルコグリカンδ(Sgcd)及びシントロフィンB1(Sntb1)は、両方ともジストロフィン糖タンパク質複合体(DGC)の成分であり、この複合体はアクチン細胞骨格をECMに連結するために重要で、筋細胞間で力を伝達することができる(Barton、2006年;Goyenvalleら、2011年)。いずれの遺伝子も、筋ジストロフィーのヒト患者において変異しており、機械的ストレスに応じて原形質膜を安定させる。アクチン結合タンパク質(Talin2)は、アクチン細胞骨格をインテグリン及びECMに連結する。最後に、介在板(ICD)において発現するCtnna3、カドヘリン結合遺伝子は、アクチン細胞骨格をICD及びECMの両方に連結し、心筋細胞間の張力を検出している可能性が高い(Liら、2012年)。
【0121】
実施例6
Hippo除去は、MDX変異体心臓において心臓再生異常を救済する。
Hippo経路の機能喪失が、mdx再生不全表現型を抑制できるかどうか決定するために、Salv;mdx二重変異体心臓を作製し、二重変異体及び対照サンプルに対し生後8日目で尖切除を実施した。
図3に示すように、心筋を再生できないmdx変異体とは対照的に、Salv CKO及びSalv;mdx二重変異体は心筋を再生した(Morikawaら、2014年)。これは、Hippo除去、それによるYapの上方制御及びYap標的遺伝子の上方制御が、mdx心臓表現型を抑制できることを示す。この所見は、心筋におけるHippo除去が、DMD心筋症を治療する有望な手法であることを示す。
【0122】
実施例7
Hippo欠失は、確立された心不全において心筋細胞再生を促進する
心筋梗塞の3週間後にHippo経路の不活性化が、心機能の改善を伴う心筋細胞再生をなおも促進するかどうか決定した。多くの患者が、心不全及び死亡を伴う病理学的心臓リモデリングに至る慢性梗塞を患うので、これは臨床的に重要な問題である。これまで、Hippo欠失が、確立された成熟瘢痕において心臓再生を効果的に促進する可能性があるかどうかは知られていなかった。心筋梗塞を、時点0で、対照の心臓及び注射していないSalv CKO心臓に発生させた(
図4)。注射していないSalv CKOマウスは、対照レベルのSalvをなお発現する。疑似対照も、時間0で確立した。梗塞の3週間後に、全てのマウスを、超音波心臓検査法によって慎重に調べ、EFの減少を伴う心不全である手術したマウスを本研究に含め、タモキシフェン注射を投与してHippo経路を不活性化した。
【0123】
心機能のパラメータを、タモキシフェン注射後に2週間間隔で全ての心臓において評価した(
図4)。Salv CKO変異体は、2週間の時点(心筋梗塞後5週間)で機能回復が始まり、手術していない対照のレベルに達する(心筋梗塞後9週間)まで機能は改善され続けた。確立された心不全の後のHippo経路の不活性化により、心機能の復活を伴う心臓の修復が得られる。
【0124】
実施例8
成体心臓においてHippo経路を不活性化する小ヘアピンRNA(SHRNA)の設計
Salvに対するshRNAの3つの例は、Salv分子の、マウス、ヒト及びブタの間で保存されている領域に対するものであり、それにより、標準的な方法を使用してこれらの3つの種の間で互換的に使用することができる([Tafer、2014年];
図6、7及び8)。新生児心筋細胞において内在性Salv発現を抑制する各shRNAの機能効率を、siRNAノックダウン実験を使用して確認した(
図5)。3つ全てのshRNAが、Salv発現をおよそ70%効果的にノックダウンし、shRNA#3が最大のノックダウン効率をもたらした。
参照文献
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【0125】
本発明及びその優位性について詳述してきたが、添付の請求の範囲に定義されるように本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく本明細書に様々な変化、置換及び変更を行い得ることは理解されよう。更に、本出願の範囲は、本明細書に記述される過程、機械、製造、組成物、手段、方法及び工程の特別な実施形態に制限されることを意図しない。当業者が本発明の開示から容易に認識できる通り、本明細書に記述される対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行する又は実質的に同じ結果をもたらす現存する若しくは後に開発されることになる過程、機械、製造、組成物、手段、方法又は工程を、本発明により利用することができる。従って、添付の請求の範囲は、その範囲にそのような過程、機械、製造、組成物、手段、方法又は工程を含むことを意図する。
【配列表】