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  • 特許-正極材料、および、電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】正極材料、および、電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20230519BHJP
   C01F 17/36 20200101ALI20230519BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20230519BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20230519BHJP
   H01B 1/10 20060101ALI20230519BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230519BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230519BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20230519BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20230519BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
C01F17/36
H01B1/06 A
H01B1/08
H01B1/10
H01M4/36 C
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/0562
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019563937
(86)(22)【出願日】2018-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2018041899
(87)【国際公開番号】W WO2019135322
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2018000430
(32)【優先日】2018-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 出
(72)【発明者】
【氏名】酒井 章裕
(72)【発明者】
【氏名】杉本 裕太
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 晃暢
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/077225(WO,A1)
【文献】特開2014-056818(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105254184(CN,A)
【文献】国際公開第2018/025582(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
H01M 4/36
H01M 4/505
H01M 4/525
H01M 10/0562
H01B 1/06-1/10
C01F 17/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質と第1固体電解質材料と被覆材料とを含み、
前記被覆材料は、酸化物固体電解質であり、前記正極活物質の表面に位置し、
前記第1固体電解質材料は、
リチウムと、
イットリウムと、
塩素、臭素、およびヨウ素からなる群より選択される少なくとも1種と、を含み、かつ、
硫黄を含まない、
正極材料。
【請求項2】
前記第1固体電解質材料は、組成式Liαβγで表され、
ここで、αとβとγとは、いずれも0より大きい値であり、
Mは、Li以外の金属元素及び半金属元素からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、イットリウムを含み、
Xは、Cl、Br、及びIからなる群より選ばれる少なくとも1種である、
請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
2≦γ/α≦2.22を満たす、
請求項2に記載の正極材料。
【請求項4】
前記Mは、イットリウムである
請求項2または3に記載の正極材料。
【請求項5】
2.7≦α≦3、
1≦β≦1.1、
γ=6、
を満たす、
請求項4に記載の正極材料。
【請求項6】
前記第1固体電解質材料は、ヨウ素を含む、
請求項1から5のいずれかに記載の正極材料。
【請求項7】
前記酸化物固体電解質は、ニオブ酸リチウムである、
請求項1から6のいずれかに記載の正極材料。
【請求項8】
前記正極活物質は、ニッケル・コバルト・マンガン酸リチウムである、
請求項1からのいずれかに記載の正極材料。
【請求項9】
請求項1からのいずれかに記載の正極材料を含む正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に配置される電解質層と、
を備える、
電池。
【請求項10】
前記電解質層は、前記第1固体電解質材料を含む、
請求項に記載の電池。
【請求項11】
前記電解質層は、前記第1固体電解質材料とは異なるハロゲン化物固体電解質材料を含む、
請求項または10に記載の電池。
【請求項12】
前記電解質層は、硫化物固体電解質を含む、
請求項から11のいずれかに記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池用の正極材料、および、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インジウムを含むハロゲン化物を固体電解質として用いた全固体電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-244734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、電池の充放電効率のさらなる向上が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一様態における正極材料は、正極活物質と第1固体電解質材料と被覆材料とを含み、前記被覆材料は、酸化物固体電解質であり、前記正極活物質の表面に位置し、前記第1固体電解質材料は、リチウムと、イットリウムと、塩素、臭素、およびヨウ素からなる群より選択される少なくとも1種と、を含み、かつ、硫黄を含まない。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、電池の充放電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施の形態1における正極材料1000の概略構成を示す断面図である。
図2図2は、実施の形態2における電池2000の概略構成を示す断面図である。
図3図3は、実施例4および比較例4の交流インピーダンス測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態が、図面を参照しながら説明される。
【0009】
(実施の形態1)
実施の形態1における正極材料は、正極活物質と第1固体電解質材料と被覆材料とを含む。
【0010】
第1固体電解質材料は、下記の組成式(1)により表される材料である。
Liαβγ ・・・式(1)
ここで、αとβとγとは、0より大きい値である。Mは、Li以外の金属元素と半金属元素とのうちの少なくとも1つを含む。Xは、Cl、Br、I、からなる群より選ばれる1種または2種以上の元素である。
【0011】
被覆材料は、正極活物質の表面に、位置する。
【0012】
以上の構成によれば、電池の充放電効率を向上させることができる。
【0013】
特許文献1では、インジウムを含む化合物からなる固体電解質を含む全固体二次電池において、正極活物質の対Li電位が平均で3.9V以下であることが好ましく、これにより酸化分解による分解生成物からなる皮膜が良好に形成され、良好な充放電特性が得られると言及されている。また、対Li電位が平均で3.9V以下の正極活物質として、LiCoO、LiNi0.8Co0.15Al0.05などの一般的な層状遷移金属酸化物正極が開示されている。また、酸化分解の詳細なメカニズムについては明らかにされていない。
【0014】
一方、本発明者らが鋭意検討した結果、正極材料にハロゲン化物固体電解質(すなわち、第1固体電解質材料)を用いた電池では、対Li電位が平均で3.9V以下の正極活物質を用いた場合であっても充電中にハロゲン化物固体電解質が酸化分解し、それに伴い電池の充放電効率が低下する課題が存在し、その原因がハロゲン化物固体電解質に含まれるハロゲン元素の酸化反応にあることを見出した。
【0015】
具体的には、正極材料中の正極活物質からリチウムと電子が引き抜かれる通常の充電反応に加え、正極活物質と接するハロゲン化物固体電解質からも電子が引き抜かれる副反応が生じ、副反応に電荷が消費される。このため、充放電効率が低下すると考えられる。
【0016】
また、ハロゲン化物固体電解質の酸化反応に伴い、正極活物質とハロゲン化物固体電解質の間に、リチウムイオン伝導性に乏しい酸化層が形成され、正極の電極反応において大きな界面抵抗として機能すると考えられる。この課題を解消するためには、ハロゲン化物固体電解質への電子授受を抑制し、酸化層形成を抑制する必要がある。
【0017】
本開示の構成では、正極活物質とハロゲン化物固体電解質との間に、被覆材料が介在する。これにより、被覆材料により、ハロゲン化物固体電解質への電子授受が抑制される。このため、ハロゲン化物固体電解質の副反応が生じず、充放電効率を向上することができる。また、副反応が生じないため、酸化層形成が抑制され、電極反応の界面抵抗を低減することができる。
【0018】
なお、「半金属元素」とは、B、Si、Ge、As、Sb、Teである。
【0019】
また、「金属元素」とは、水素を除く周期表1族から12族中に含まれるすべての元素、及び、前記の半金属元素とC、N、P、O、S、Seを除く全ての13族から16族中に含まれる元素である。すなわち、ハロゲン化合物と無機化合物を形成した際に、カチオンとなりうる元素群である。
【0020】
なお、組成式(1)においては、Mは、Y(=イットリウム)を含んでもよい。
【0021】
すなわち、第1固体電解質材料は、金属元素としてYを含んでもよい。
【0022】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0023】
Yを含む第1固体電解質材料として、例えば、LiMe(a+mb+3c=6、かつ、c>0を満たす)(Me:Li、Y以外の金属元素と半金属元素の少なくとも1つ)(m:Meの価数)の組成式で表される化合物であってもよい。
【0024】
Meとして、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Sc、Al、Ga、Bi、Zr、Hf、Ti、Sn、Ta、Nbのいずれか、もしくはこれらの混合物を用いてもよい。
【0025】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率をより向上することができる。
【0026】
なお、組成式(1)において、
2≦γ/α≦2.22
が満たされてもよく、
2.7≦α≦3、
1≦β≦1.1、
γ=6、
が満たされてもよい。
【0027】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0028】
なお、組成式(1)において、Xは、I(=ヨウ素)を含んでもよい。
【0029】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0030】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A1)により表される材料であってもよい。
Li6-3d ・・・式(A1)
ここで、組成式(A1)においては、Xは、Cl、Br、I、からなる群より選択される二種以上の元素である。
【0031】
また、組成式(A1)においては、0<d<2、を満たす。
【0032】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0033】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A2)により表される材料であってもよい。
LiYX ・・・式(A2)
ここで、組成式(A2)においては、Xは、Cl、Br、I、からなる群より選択される二種以上の元素である。
【0034】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0035】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A3)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ1+δCl ・・・式(A3)
ここで、組成式(A3)においては、0<δ≦0.15、が満たされる。
【0036】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0037】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A4)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ1+δBr ・・・式(A4)
ここで、組成式(A4)においては、0<δ≦0.25、が満たされる。
【0038】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0039】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A5)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ+a1+δ-aMeCl6-x-yBr ・・・式(A5)
ここで、組成式(A5)においては、Meは、Mg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選択される1種または2種以上の元素である。
【0040】
また、組成式(A5)においては、
-1<δ<2、
0<a<3、
0<(3-3δ+a)、
0<(1+δ-a)、
0≦x≦6、
0≦y≦6、
(x+y)≦6、
が満たされる。
【0041】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0042】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A6)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ1+δ-aMeCl6-x-yBr ・・・式(A6)
ここで、組成式(A6)においては、Meは、Al、Sc、Ga、Biからなる群より選択される1種または2種以上の元素である。
【0043】
また、組成式(A6)においては、
-1<δ<1、
0<a<2、
0<(1+δ-a)、
0≦x≦6、
0≦y≦6、
(x+y)≦6、
が満たされる。
【0044】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0045】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A7)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ-a1+δ-aMeCl6-x-yBr ・・・式(A7)
ここで、組成式(A7)においては、Meは、Zr、Hf、Tiからなる群より選択される1種または2種以上の元素である。
【0046】
また、組成式(A7)においては、
-1<δ<1、
0<a<1.5、
0<(3-3δ-a)、
0<(1+δ-a)、
0≦x≦6、
0≦y≦6、
(x+y)≦6、
が満たされる。
【0047】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0048】
なお、第1固体電解質材料は、下記の組成式(A8)により表される材料であってもよい。
Li3-3δ-2a1+δ-aMeCl6-x-yBr ・・・式(A8)
ここで、組成式(A8)においては、Meは、Ta、Nbからなる群より選択される1種または2種以上の元素である。
【0049】
また、組成式(A8)においては、
-1<δ<1、
0<a<1.2、
0<(3-3δ-2a)、
0<(1+δ-a)、
0≦x≦6、
0≦y≦6、
(x+y)≦6、
が満たされる。
【0050】
以上の構成によれば、第1固体電解質材料のイオン導電率を、より向上することができる。これにより、電池の充放電効率を、より向上させることができる。
【0051】
なお、第1固体電解質材料として、例えば、LiYX、LiMgX、LiFeX、Li(Al、Ga、In)X、Li(Al、Ga、In)X、など、が用いられうる。
【0052】
正極活物質は、金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵・放出する特性を有する材料を含む。正極活物質として、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物(例えば、Li(NiCoAl)O、Li(NiCoMn)O、LiCoO、など)、遷移金属フッ化物、ポリアニオンおよびフッ素化ポリアニオン材料、および、遷移金属硫化物、遷移金属オキシ硫化物、遷移金属オキシ窒化物、など、が用いられうる。特に、正極活物質として、リチウム含有遷移金属酸化物を用いた場合には、製造コストを安くでき、平均放電電圧を高めることができる。
【0053】
なお、実施の形態1においては、正極活物質は、ニッケル・コバルト・マンガン酸リチウムであってもよい。例えば、正極活物質は、Li(NiCoMn)Oであってもよい。
【0054】
以上の構成によれば、電池のエネルギー密度および充放電効率を、より高めることができる。
【0055】
被覆材料としては、電子伝導性が低い材料、が用いられうる。被覆材料として、酸化物材料、酸化物固体電解質などが用いられうる。
【0056】
酸化物材料としては、例えば、SiO、Al、TiO、B、Nb、WO、ZrOなどが用いられうる。酸化物固体電解質としては、例えば、LiNbOなどのLi-Nb-O化合物、LiBO、LiBOなどのLi-B-O化合物、LiAlOなどのLi-Al-O化合物、LiSiOなどのLi-Si-O化合物、LiSO、LiTi12などのLi-Ti-O化合物、LiZrOなどのLi-Zr-O化合物、LiMoOなどのLi-Mo-O化合物、LiVなどのLi-V-O化合物、LiWOなどのLi-W-O化合物などが用いられうる。
【0057】
なお、実施の形態1においては、被覆材料は、酸化物固体電解質であってもよい。
【0058】
酸化物固体電解質は、イオン導電率が高く、高電位安定性が高い。このため、酸化物固体電解質を用いることで、充放電効率をより向上することができる。
【0059】
なお、実施の形態1においては、酸化物固体電解質は、ニオブ酸リチウムであってもよい。例えば、酸化物固体電解質は、LiNbOであってもよい。
【0060】
ニオブ酸リチウムは、イオン導電率がより高く、高電位安定性がより高い。したがって、ニオブ酸リチウムを用いることで、充放電効率をより向上することができる。
【0061】
図1は、実施の形態1における正極材料1000の概略構成を示す断面図である。
【0062】
実施の形態1における正極材料1000は、第1固体電解質粒子100と、正極活物質粒子110と、被覆層111と、を含む。
【0063】
正極活物質粒子110と第1固体電解質粒子100とは、被覆層111により隔てられ、直接接触しない。
【0064】
被覆層111は、被覆材料を含む層である。すなわち、正極活物質粒子110の表面には、被覆層111が設けられる。
【0065】
なお、被覆層111の厚みは、1nm以上かつ100nm以下であってもよい。
【0066】
被覆層111の厚みが1nm以上であることで、正極活物質粒子110と、第1固体電解質粒子100との、直接接触を抑制し、第1固体電解質材料の副反応を抑制できる。このため、充放電効率を向上することができる。
【0067】
また、被覆層111の厚みが100nm以下であることで、被覆層111の厚みが厚くなり過ぎない。このため、電池の内部抵抗を十分に小さくすることができる。その結果、電池のエネルギー密度を高めることができる。
【0068】
また、被覆層111は、正極活物質粒子110の粒子を一様に被覆してもよい。正極活物質粒子110と、第1固体電解質粒子100との、直接接触を抑制し、第1固体電解質材料の副反応を抑制できる。このため、充放電効率を向上することができる。
【0069】
もしくは、被覆層111は、正極活物質粒子110の粒子の一部を被覆してもよい。被覆層111を有さない部分を介して、複数の正極活物質粒子110同士が直接接触することで、正極活物質粒子110の粒子間での電子伝導性が向上する。このため、電池の高出力での動作が可能となる。
【0070】
また、実施の形態1における、第1固体電解質粒子100の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、針状、球状、楕円球状、など、であってもよい。例えば、第1固体電解質材料の形状は、粒子であってもよい。
【0071】
例えば、実施の形態1における第1固体電解質粒子100の形状が粒子状(例えば、球状)の場合、メジアン径は、100μm以下であってもよい。メジアン径が100μmより大きいと、正極活物質粒子110と第1固体電解質粒子100とが、正極材料において良好な分散状態を形成できない可能性が生じる。このため、充放電特性が低下する。また、実施の形態1においては、メジアン径は10μm以下であってもよい。
【0072】
以上の構成によれば、正極材料において、正極活物質粒子110と第1固体電解質粒子100とが、良好な分散状態を形成できる。
【0073】
また、実施の形態1においては、第1固体電解質粒子100は、正極活物質粒子110のメジアン径より小さくてもよい。
【0074】
以上の構成によれば、電極において第1固体電解質粒子100と正極活物質粒子110とが、より良好な分散状態を形成できる。
【0075】
正極活物質粒子110のメジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。
【0076】
正極活物質粒子110のメジアン径が0.1μmより小さいと、正極材料において、正極活物質粒子110と第1固体電解質粒子100とが、正極材料において良好な分散状態を形成できない可能性が生じる。この結果、電池の充放電特性が低下する。また、正極活物質粒子110のメジアン径が100μmより大きいと、正極活物質粒子110内のリチウム拡散が遅くなる。このため、電池の高出力での動作が困難となる場合がある。
【0077】
正極活物質粒子110のメジアン径は、第1固体電解質粒子100のメジアン径よりも、大きくてもよい。これにより、正極活物質粒子110と第1固体電解質粒子100とが、良好な分散状態を形成できる。
【0078】
なお、実施の形態1における正極材料1000においては、第1固体電解質粒子100と被覆層111とは、図1に示されるように、互いに、接触していてもよい。
【0079】
また、実施の形態1における正極材料1000は、複数の第1固体電解質粒子100と、複数の正極活物質粒子110と、を含んでもよい。
【0080】
また、実施の形態1における正極材料1000における、第1固体電解質粒子100の含有量と正極活物質粒子110の含有量とは、互いに、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0081】
<第1固体電解質材料の製造方法>
実施の形態1における第1固体電解質材料は、例えば、下記の方法により、製造されうる。
【0082】
目的とする組成の配合比となるような二元系ハロゲン化物の原料粉を用意する。例えば、LiYClを作製する場合には、LiClとYClを、3:1のモル比で用意する。
【0083】
このとき、原料粉の種類を選択することで、上述の組成式における「M」と「Me」と「X」とを決定することができる。また、原料と配合比と合成プロセスを調整することで、上述の値「α」と「β」と「γ」と「d」と「δ」と「a」と「x」と「y」とを調整できる。
【0084】
原料粉をよく混合した後、メカノケミカルミリングの方法を用いて原料粉同士を混合・粉砕・反応させる。もしくは、原料粉をよく混合した後、真空中で焼結してもよい。
【0085】
これにより、前述したような結晶相を含む固体電解質材料が得られる。
【0086】
なお、固体電解質材料における結晶相の構成(結晶構造)は、原料粉どうしの反応方法および反応条件の調整により、決定することができる。
【0087】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2が説明される。上述の実施の形態1と重複する説明は、適宜、省略される。
【0088】
図2は、実施の形態2における電池2000の概略構成を示す断面図である。
【0089】
実施の形態2における電池2000は、正極201と、電解質層202と、負極203と、を備える。
【0090】
正極201は、上述の実施の形態1における正極材料(例えば、正極材料1000)を含む。
【0091】
電解質層202は、正極201と負極203との間に配置される。
【0092】
以上の構成によれば、電池の充放電効率を向上することができる。
【0093】
正極201に含まれる、正極活物質粒子110と第1固体電解質粒子100の体積比率「v:100-v」について、30≦v≦95が満たされてもよい。v<30では、十分な電池のエネルギー密度確保が困難となる可能性がある。また、v>95では、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0094】
正極201の厚みは、10μm以上かつ500μm以下であってもよい。なお、正極201の厚みが10μmより薄い場合には、十分な電池のエネルギー密度の確保が困難となる可能性がある。なお、正極201の厚みが500μmより厚い場合には、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0095】
電解質層202は、電解質材料を含む層である。当該電解質材料は、例えば、固体電解質材料(すなわち、第2固体電解質材料)である。すなわち、電解質層202は、固体電解質層であってもよい。
【0096】
電解質層202に含まれる第2固体電解質材料としては、上述の実施の形態1における第1固体電解質材料が挙げられる。すなわち、電解質層202は、上述の実施の形態1における第1固体電解質材料を含んでもよい。
【0097】
以上の構成によれば、電池の充放電効率を、より向上することができる。
【0098】
もしくは、電解質層202に含まれる第2固体電解質材料としては、上述の実施の形態1における第1固体電解質材料とは異なるハロゲン化物固体電解質材料であってもよい。すなわち、電解質層202は、上述の実施の形態1における第1固体電解質材料とは異なるハロゲン化物固体電解質材料を含んでもよい。
【0099】
以上の構成によれば、電池の出力密度および充放電効率を、向上することができる。
【0100】
電解質層202に含まれるハロゲン化物固体電解質材料は、金属元素としてYを含んでもよい。
【0101】
以上の構成によれば、電池の出力密度および充放電効率を、より向上することができる。
【0102】
電解質層202に含まれるハロゲン化物固体電解質材料としては、上述の実施の形態1における第1固体電解質材料として示された材料が、用いられうる。
【0103】
電解質層202に含まれる第2固体電解質材料として、硫化物固体電解質を用いてもよい。すなわち、電解質層202は、硫化物固体電解質を含んでもよい。
【0104】
以上の構成によれば、還元安定性に優れる硫化物固体電解質を含むため、黒鉛または金属リチウムなどの低電位負極材料を用いることができ、電池のエネルギー密度を向上することができる。
【0105】
硫化物固体電解質としては、LiS-P、LiS-SiS、LiS-B、LiS-GeS、Li3.25Ge0.250.75、Li10GeP12、など、が用いられうる。また、これらに、LiX(X:F、Cl、Br、I)、LiO、MO、LiMO(M:P、Si、Ge、B、Al、Ga、In、Fe、Znのいずれか)(p、q:自然数)などが、添加されてもよい。
【0106】
電解質層202に含まれる第2固体電解質材料として、酸化物固体電解質、高分子固体電解質、錯体水素化物固体電解質を用いてもよい。
【0107】
酸化物固体電解質としては、例えば、LiTi(POおよびその元素置換体を代表とするNASICON型固体電解質、(LaLi)TiO系のペロブスカイト型固体電解質、Li14ZnGe16、LiSiO、LiGeOおよびその元素置換体を代表とするLISICON型固体電解質、LiLaZr12およびその元素置換体を代表とするガーネット型固体電解質、LiNおよびそのH置換体、LiPOおよびそのN置換体、LiBO、LiBOなどのLi-B-O化合物をベースとして、LiSO、LiCOなどが添加されたガラス、ガラスセラミックスなど、が用いられうる。
【0108】
高分子固体電解質としては、例えば、高分子化合物と、リチウム塩との化合物が用いられうる。高分子化合物はエチレンオキシド構造を有していてもよい。エチレンオキシド構造を有することで、リチウム塩を多く含有することができ、イオン導電率をより高めることができる。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiC(SOCF、など、が使用されうる。リチウム塩として、これらから選択される1種のリチウム塩が、単独で、使用されうる。もしくは、リチウム塩として、これらから選択される2種以上のリチウム塩の混合物が、使用されうる。
【0109】
錯体水素化物固体電解質としては、例えば、LiBH-LiI、LiBH-Pなど、が用いられうる。
【0110】
なお、固体電解質層は、第2固体電解質材料を、主成分として、含んでもよい。すなわち、固体電解質層は、第2固体電解質材料を、例えば、固体電解質層の全体に対する重量割合で50%以上(50重量%以上)、含んでもよい。
【0111】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0112】
また、固体電解質層は、第2固体電解質材料を、例えば、固体電解質層の全体に対する重量割合で70%以上(70重量%以上)、含んでもよい。
【0113】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0114】
なお、固体電解質層は、第2固体電解質材料を主成分として含みながら、さらに、不可避的な不純物、または、第2固体電解質材料を合成する際に用いられる出発原料および副生成物および分解生成物など、を含んでいてもよい。
【0115】
また、固体電解質層は、第2固体電解質材料を、例えば、混入が不可避的な不純物を除いて、固体電解質層の全体に対する重量割合で100%(100重量%)、含んでもよい。
【0116】
以上の構成によれば、電池の充放電特性を、より向上させることができる。
【0117】
以上のように、固体電解質層は、第2固体電解質材料のみから構成されていてもよい。
【0118】
なお、固体電解質層は、第2固体電解質材料として挙げられた材料のうちの2種以上を含んでもよい。例えば、固体電解質層は、ハロゲン化物固体電解質材料と硫化物固体電解質材料とを含んでもよい。
【0119】
電解質層202の厚みは、1μm以上かつ300μm以下であってもよい。電解質層202の厚みが1μmより薄い場合には、正極201と負極203とが短絡する可能性が高まる。また、電解質層202の厚みが300μmより厚い場合には、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0120】
負極203は、金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵・放出する特性を有する材料を含む。負極203は、例えば、負極活物質を含む。
【0121】
負極活物質には、金属材料、炭素材料、酸化物、窒化物、錫化合物、珪素化合物、など、が使用されうる。金属材料は、単体の金属であってもよい。もしくは、金属材料は、合金であってもよい。金属材料の例として、リチウム金属、リチウム合金、など、が挙げられる。炭素材料の例として、天然黒鉛、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、人造黒鉛、非晶質炭素、など、が挙げられる。容量密度の観点から、珪素(Si)、錫(Sn)、珪素化合物、錫化合物、を好適に使用できる。
【0122】
負極203は、固体電解質材料を含んでもよい。以上の構成によれば、負極203内部のリチウムイオン伝導性を高め、高出力での動作が可能となる。固体電解質材料としては、電解質層202の例示としてあげる材料を用いてもよい。
【0123】
負極活物質粒子のメジアン径は、0.1μm以上かつ100μm以下であってもよい。負極活物質粒子のメジアン径が0.1μmより小さいと、負極において、負極活物質粒子と固体電解質材料とが、良好な分散状態を形成できない可能性が生じる。これにより、電池の充放電特性が低下する。また、負極活物質粒子のメジアン径が100μmより大きいと、負極活物質粒子内のリチウム拡散が遅くなる。このため、電池の高出力での動作が困難となる場合がある。
【0124】
負極活物質粒子のメジアン径は、固体電解質材料のメジアン径よりも、大きくてもよい。これにより、負極活物質粒子と固体電解質材料との良好な分散状態を形成できる。
【0125】
負極203に含まれる、負極活物質粒子と固体電解質材料の体積比率「v:100-v」について、30≦v≦95が満たされてもよい。v<30では、十分な電池のエネルギー密度確保が困難となる可能性がある。また、v>95では、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0126】
負極203の厚みは、10μm以上かつ500μm以下であってもよい。負極の厚みが10μmより薄い場合には、十分な電池のエネルギー密度の確保が困難となる可能性がある。また、負極の厚みが500μmより厚い場合には、高出力での動作が困難となる可能性がある。
【0127】
正極201と電解質層202と負極203とのうちの少なくとも1つには、粒子同士の密着性を向上する目的で、結着剤が含まれてもよい。結着剤は、電極を構成する材料の結着性を向上するために、用いられる。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、など、が挙げられる。また、結着剤としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体が用いられうる。また、これらのうちから選択された2種以上が混合されて、結着剤として用いられてもよい。
【0128】
正極201と負極203との少なくとも1つは、電子導電性を高める目的で、導電助剤を含んでもよい。導電助剤としては、例えば、天然黒鉛または人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維または金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウムなどの金属粉末類、酸化亜鉛またはチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子化合物、など、が用いられうる。炭素導電助剤を用いた場合、低コスト化を図ることができる。
【0129】
なお、実施の形態2における電池は、コイン型、円筒型、角型、シート型、ボタン型、扁平型、積層型、など、種々の形状の電池として、構成されうる。
【実施例
【0130】
以下、実施例および比較例を用いて、本開示の詳細が説明される。
【0131】
≪実施例1≫
[第1固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉LiBr、LiCl、LiI、YCl、YBrを、モル比でLiBr:LiCl:LiI:YCl:YBr=1:1:4:1:1となるように、秤量した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、25時間、600rpmでミリング処理することで、第1固体電解質材料LiYBrClの粉末を得た。
【0132】
[正極活物質被覆層の作製]
アルゴングローブボックス内で、エトキシリチウム(高純度化学製)5.95gとペンタエトキシニオブ(高純度化学製)36.43gとを、超脱水エタノール(和光純薬製)500mLに溶解して、被覆溶液を作製した。
【0133】
正極活物質Li(NiCoMn)O(以下、NCMと表記する)上への被覆層の形成には、転動流動造粒コーティング装置(パウレック製、FD-MP-01E)を用いた。正極活物質の投入量、攪拌回転数、送液レートは、それぞれ、1kg、400rpm、6.59g/分とした。
【0134】
処理後の粉末を、アルミナ製るつぼに入れ、大気雰囲気下に取り出した。
【0135】
次いで、大気雰囲気下300℃、1時間の熱処理を行った。
【0136】
熱処理後の粉末を、メノウ乳鉢にて再粉砕することで、被覆層を粒子表層に形成した実施例1の正極活物質を得た。
【0137】
当該被覆層の材料は、LiNbOである。
【0138】
[正極材料の作製]
アルゴングローブボックス内で、実施例1の第1固体電解質材料と、実施例1の正極活物質(被覆層を形成したNCM)を、30:70の重量比率で秤量した。これらをメノウ乳鉢で混合することで、実施例1の正極材料を作製した。
【0139】
≪実施例2≫
[第1固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉LiCl、YCl、YBr、LiIを、モル比でLiCl:YCl:YBr:LiI=6:2:1:3となるように、秤量した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、25時間、600rpmでミリング処理することで、第1固体電解質材料LiYBrClIの粉末を得た。
【0140】
第1固体電解質材料の作製以外の項目は、上述の実施例1の方法と同様に実施し、実施例2の正極材料を得た。
【0141】
≪実施例3≫
[第1固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉LiBr、YBr、LiIを、モル比でLiBr:YBr:LiI=2:1:1となるように、秤量した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、25時間、600rpmでミリング処理することで、第1固体電解質材料LiYBrIの粉末を得た。
【0142】
第1固体電解質材料の作製以外の項目は、上述の実施例1の方法と同様に実施し、実施例3の正極材料を得た。
【0143】
≪実施例4≫
[第1固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉YBr、LiIを、モル比でYBr:LiI=1:3となるように、秤量した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、25時間、600rpmでミリング処理することで、第1固体電解質材料LiYBrの粉末を得た。
【0144】
第1固体電解質材料の作製以外の項目は、上述の実施例1の方法と同様に実施し、実施例4の正極材料を得た。
【0145】
≪実施例5≫
[第1固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉LiBr、LiI、YIを、モル比でLiBr:LiI:YI=1:2:1となるように、秤量した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、25時間、600rpmでミリング処理することで、第1固体電解質材料LiYBrIの粉末を得た。
【0146】
第1固体電解質材料の作製以外の項目は、上述の実施例1の方法と同様に実施し、実施例5の正極材料を得た。
【0147】
≪実施例6≫
[第1固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のアルゴングローブボックス内で、原料粉LiClとYClとを、モル比でLiI:YI=2.7:1.1となるように、秤量した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-5型)を用い、15時間、250rpmでミリング処理することで、第1固体電解質材料Li2.71.1Clの粉末を得た。
【0148】
第1固体電解質材料の作製以外の項目は、上述の実施例1の方法と同様に実施し、実施例6の正極材料を得た。
【0149】
≪比較例1≫
正極活物質被覆層の作製を実施せず、被覆層を形成していないNCMを用いたこと以外の項目は、上述の実施例1の方法と同様に実施し、比較例1の正極材料を得た。
【0150】
≪比較例2≫
正極活物質被覆層の作製を実施せず、被覆層を形成していないNCMを用いたこと以外の項目は、上述の実施例2の方法と同様に実施し、比較例2の正極材料を得た。
【0151】
≪比較例3≫
正極活物質被覆層の作製を実施せず、被覆層を形成していないNCMを用いたこと以外の項目は、上述の実施例3の方法と同様に実施し、比較例3の正極材料を得た。
【0152】
≪比較例4≫
正極活物質被覆層の作製を実施せず、被覆層を形成していないNCMを用いたこと以外の項目は、上述の実施例4の方法と同様に実施し、比較例4の正極材料を得た。
【0153】
≪比較例5≫
正極活物質被覆層の作製を実施せず、被覆層を形成していないNCMを用いたこと以外の項目は、上述の実施例5の方法と同様に実施し、比較例5の正極材料を得た。
【0154】
≪比較例6≫
正極活物質被覆層の作製を実施せず、被覆層を形成していないNCMを用いたこと以外の項目は、上述の実施例6の方法と同様に実施し、比較例6の正極材料を得た。
【0155】
[硫化物固体電解質材料の作製]
露点-60℃以下のAr雰囲気のアルゴングローブボックス内で、LiSとPとを、モル比でLiS:P=75:25となるように、秤量した。これらを乳鉢で粉砕して混合した。その後、遊星型ボールミル(フリッチュ社製、P-7型)を用い、10時間、510rpmでミリング処理することで、ガラス状の固体電解質を得た。ガラス状の固体電解質について、不活性雰囲気中で、270度で、2時間熱処理した。これにより、ガラスセラミックス状の固体電解質であるLiS-Pを得た。
【0156】
[二次電池の作製1]
上述の実施例1~5および比較例1~5の正極材料、およびガラスセラミックス状のLiS-Pそれぞれを用いて、下記の工程を実施した。
【0157】
まず、絶縁性外筒の中で、LiS-Pを80mg、正極合剤を10mgの順に積層した。これを360MPaの圧力で加圧成型することで、正極と固体電解質層を得た。
【0158】
次に、正極側に、アルミニウム粉末を20mg積層した。これを360MPaの圧力で加圧成型することで、正極側に集電体を形成した。
【0159】
次に、固体電解質層の正極と接する側とは反対側に、金属In(厚さ200μm)、金属Li(厚さ300μm)、金属In(厚さ200μm)の順に積層した。これを80MPaの圧力で加圧成型することで、正極、固体電解質層、負極からなる積層体を作製した。
【0160】
次に、積層体の上下にステンレス鋼集電体を配置し、集電体に集電リードを付設した。
【0161】
最後に、絶縁性フェルールを用いて、絶縁性外筒内部を外気雰囲気から遮断・密閉することで、電池を作製した。
【0162】
以上により、上述の実施例1~5および比較例1~5の電池をそれぞれ作製した。
【0163】
[二次電池の作製2]
上述の実施例6および比較例6の正極材料、および第1固体電解質材料Li2.71.1Clそれぞれを用いて、下記の工程を実施した。
【0164】
まず、絶縁性外筒の中で、Li2.71.1Clを80mg、正極合剤を10mgの順に積層した。これを360MPaの圧力で加圧成型することで、正極と固体電解質層を得た。
【0165】
次に、正極側に、アルミニウム粉末を20mg積層した。これを360MPaの圧力で加圧成型することで、正極側に集電体を形成した。
【0166】
次に、固体電解質層の正極と接する側とは反対側に、金属In(厚さ200μm)、金属Li(厚さ300μm)、金属In(厚さ200μm)の順に積層した。これを80MPaの圧力で加圧成型することで、正極、固体電解質層、負極からなる積層体を作製した。
【0167】
次に、積層体の上下にステンレス鋼集電体を配置し、集電体に集電リードを付設した。
【0168】
最後に、絶縁性フェルールを用いて、絶縁性外筒内部を外気雰囲気から遮断・密閉することで、電池を作製した。
【0169】
以上により、上述の実施例6および比較例6の電池をそれぞれ作製した。
【0170】
[充放電試験]
上述の実施例1~6および比較例1~6の電池をそれぞれ用いて、以下の条件で、充放電試験が実施された。
【0171】
電池を25℃の恒温槽に配置した。
【0172】
電池の理論容量に対して0.05Cレート(20時間率)となる電流値70μAで、定電流充電し、電圧3.7Vで充電を終了した。
【0173】
次に、同じく0.05Cレートとなる電流値70μAで、放電し、電圧1.9Vで放電を終了した。
【0174】
以上により、上述の実施例1~6および比較例1~6の電池のそれぞれの初回充放電効率(=初回放電容量/初回充電容量)を得た。この結果は、下記の表1に示される。
【0175】
【表1】
【0176】
[交流インピーダンス測定]
実施例4および比較例4の電池を用いて、以下の条件で、充放電試験が実施された。
【0177】
電池を25℃の恒温槽に配置した。
【0178】
電池の理論容量に対して0.05Cレート(20時間率)となる電流値70μAで、定電流充電し、電圧3.7Vで充電を終了した。
【0179】
充電終了後の電池について、以下の条件「基準電圧:開回路電圧」「電圧振幅:10mV」「周波数:1MHz-0.01Hz」で、交流インピーダンス試験が実施された。
【0180】
図3は、実施例4および比較例4の交流インピーダンス測定の結果を示す図である。
【0181】
得られたcole-coleプロットを図3(a)に、Bode線図を図3(b)に示す。
【0182】
≪考察≫
表1に示す結果から、組成式Liαβγにより表され、αとβとγとは、0より大きい値であり、かつ、Mは、Li以外の金属元素と半金属元素とのうちの少なくとも1つを含み、かつ、Xは、Cl、Br、Iからなる群より選ばれる1種または2種以上の元素である第1固体電解質材料を含み、正極活物質の表面に、被覆材料を含む被覆層が設けられることで、電池の充放電効率が向上することが確認された。
【0183】
図3(a)に示すcole-coleプロットから、正極活物質の表面に、被覆材料を含む被覆層が設けられることで、半円弧状の応答として現れる電極反応の界面抵抗が大きく低減することが確認された。
【0184】
また、図3(b)のBode線図から、正極活物質の表面に、被覆材料を含む被覆層が設けられることで、10-10Hzに現れる第1固体電解質材料の酸化層形成が抑制されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本開示の電池は、例えば、全固体リチウム二次電池などとして、利用されうる。
【符号の説明】
【0186】
1000 正極材料
100 第1固体電解質粒子
110 正極活物質粒子
111 被覆層
2000 電池
201 正極
202 電解質層
203 負極
図1
図2
図3