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特許7281773細胞外小胞を生産する流体システムおよびそれに関連する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】細胞外小胞を生産する流体システムおよびそれに関連する方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 1/00 20060101AFI20230519BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230519BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20230519BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20230519BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20230519BHJP
   C12M 1/02 20060101ALN20230519BHJP
【FI】
C12P1/00 Z
A61K35/12
A61L27/36 100
A61L27/38 300
C12N5/07
C12M1/02 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020522409
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 EP2018067704
(87)【国際公開番号】W WO2019002608
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】1756183
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(73)【特許権者】
【識別番号】518369442
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(シーエヌアールエス)
(73)【特許権者】
【識別番号】520000526
【氏名又は名称】ジェネソン
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ガゾー,フローレンス
(72)【発明者】
【氏名】シルバ,アマンダ カリーヌ アンドリオラ
(72)【発明者】
【氏名】メルテン,オット-ヴィルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム,クレール
(72)【発明者】
【氏名】ピフックス,マックス
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/076924(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0355776(US,A1)
【文献】特開昭61-108371(JP,A)
【文献】色材, 2002, Vol.75, No.12, p.586-591
【文献】Nature Reviews Drug Discovery, 2013, Vol.12, p.347-357
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00
A61K 35/12
A61L 27/36
A61L 27/38
C12N 5/07
C12M 1/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ex vivoで生産用細胞(6)から細胞外小胞(EV)を生産するための方法であって、
攪拌機(7)を制御して容器(4)内に液体培地(5)の乱流を生じさせるステップであって、前記容器が出口(9)を含み、前記液体培地(5)が、マイクロキャリア(3)の表面に付着している生産用細胞(6)を含み、前記マイクロキャリア(3)が前記液体培地(5)中に懸濁されており、前記攪拌機(7)が、前記液体培地(5)が流れるように制御され、前記流れのコルモゴロフ長さが75μm以下である、ステップと、
前記容器(4)の前記出口(9)で細胞外小胞(EV)を含む液体培地(5)を収集するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記液体培地(5)を30分間よりも長く攪拌する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流れのコルモゴロフ長さが50μm以下である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
分離器が、前記容器(4)の前記出口で収集した前記液体培地(5)の一部から細胞外小胞(EV)を枯渇させ、前記液体培地(5)の前記一部が前記容器(4)内に再導入される、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の方法によって得ることが可能な細胞外小胞(EV)。
【請求項6】
請求項に記載の細胞外小胞(EV)を含む、医薬組成物。
【請求項7】
再生医療に使用するための、請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産用細胞から細胞外小胞を生産するシステム、このような小胞を生産および回収する方法ならびにこのようなシステムによって生産され、例えば細胞療法および再生医療に使用される小胞に関する。
【背景技術】
【0002】
(最新技術)
細胞は、その環境中に、例えばin vivoで生物体の体液中に細胞外小胞を放出することが知られている。細胞外小胞はこれまで、個別化した方法で、または標的化した方法で、ヒト身体に薬物を送達するのに効率的な手段であることが明らかにされてきた。第一に、細胞外小胞には天然の生体適合性および免疫寛容がある。細胞外小胞はセラノスティクスナノ粒子を含むこともでき、この両者によって、身体の特定部分を撮像し、治療機能を有する有効成分を送達することが可能になる。細胞外小胞には細胞間コミュニケーション機能もあり、例えば、異なる細胞間で脂質、膜および細胞質タンパク質ならびに/あるいは細胞質内にあるヌクレオチド、例えばmRNA、マイクロRNAまたは長鎖非コードRNAなどを輸送することを可能にする。
【0003】
特に、細胞外小胞の使用により、細胞を治療に使用するときの既知の問題、例えば細胞複製、分化、血管閉塞、拒絶のリスクならびに保管および凍結の困難などを解決することが可能になると思われる。したがって、特に細胞療法の代替法として、または細胞療法に加えて治療に使用するのに十分な量の細胞小胞を生産することが工業的に必要とされている。
【0004】
この目的に向けて、Piffouxら(Piffoux,M.,Silva,A.K.,Lugagne,J.B.,Hersen,P.,Wilhelm,C.およびGazeau,F.,2017,Extracellular Vesicle Production Loaded with Nanoparticles and Drugs in a Trade‐off between Loading,Yield and Purity:Towards a Personalized Drug Delivery System,Advanced Biosystems)は、細胞外小胞を生産する様々な方法の比較について記載している。
【0005】
第一の方法は、毛細血管内の生理的条件下または血管狭窄時の病的条件下でかかるストレスを模倣した流体力学的ストレスに臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を曝露することによって、その細胞から細胞外小胞を生産するものである。これらのストレスは、生産用細胞をマイクロ流体チャネルに4時間通すことによって引き起こされる。マイクロ流体チップは、細胞が層流によって運ばれる200のチャネルを含み、並列化された方法で小胞を生産する。
【0006】
ただし、この方法には寸法上の問題、つまり、マイクロ流体チップによって生産される小胞の量が、上記の用途に必要とされる量に適合していないという問題がある。さらに、このようなチップに導入した細胞1個当たりに生産される細胞外小胞の収率(1細胞当たり約2×10個)は、細胞によって生産される小胞の理論的最大収率、例えば、MSC型細胞(間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)の頭字語)の1細胞当たり約3.5×10個よりはるかに少ない。最後に、この方法は、薬物の製造に必要なG.M.P.(Good Manufacturing Practisesの頭字語)と呼ばれる基準に準拠している必要がある。
【0007】
文献で一般に用いられ、Piffouxらによって記載されている第二の方法は、血清を含まないDMEM型(ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)の頭字語)培地でHUVECを3日間培養するもの(飢餓法または血清飢餓法と呼ばれる)である。血清が存在しないことによって細胞ストレスが生じ、生産用細胞による小胞の放出が惹起される。この方法は、マイクロ流体チップを用いる方法よりも収率が高く、より多くの小胞(1生産用細胞当たり約4×10個)の生産が可能である。ただし、このように計算された収率は、生産時間が先の方法の生産時間よりはるかに長いことと一致する。この方法では、上記の用途に十分な量の細胞外小胞を生産することはできない。最後に、この方法は細胞死を誘導するため、継続的に小胞を生産することはできない。
【0008】
Watsonら(Watson,D.C.,Bayik,D.,Srivatsan,A.,Bergamaschi,C.,Valentin,A.,Niu,G.,...およびJones,J.C.,2016,Efficient production and enhanced tumour delivery of engineered extracellular vesicles,Biomaterials,105,195-205)は、生産される小胞の量を増やすことが可能な小胞生産法について記載している。この方法は、HEK293型細胞を培養フラスコ、次いで中空繊維膜で培養するものである。中空繊維の中央通路によって培地が生産用細胞まで運ばれる。最初に生産用細胞をこの通路の周囲に播き、そこで細胞が繊維間の空隙に小胞を生産する。繊維間の空隙に含まれる液体培地を週3回収集することにより、播種した極めて大量の細胞、例えば約5×10個の細胞から数週間で約3×1012個の小胞が生産され、細胞外小胞の収率は1細胞当たり約6000個になり、純度比は極めて小さい(例えば、タンパク質1マイクログラム当たり1.09×10個の小胞)。ただし、この生産量は、上記の用途に関して言えば十分なものではなく、時間もかかりすぎる。さらに、この方法は、無血清培地での培地に特に耐性のある細胞系に相当する生産用細胞を用いて記載されているものであり、つまり、この方法は、耐性が低く、特に標的化治療への適用に適した幹細胞、例えばヒト幹細胞などの生産用細胞による小胞の生産に置き換えることができない。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、G.M.P基準に準拠する条件下、既知の方法を用いるよりも速く生産用細胞から大量の細胞外小胞を生産するための解決方法を提案することである。本発明のまた別の目的は、小胞生産システムの収率、つまり、生産される小胞の数と生産システムに導入する生産用細胞との間の比を増大させることが可能な解決方法を提案することである。本発明のまた別の目的は、生産システムに導入する細胞型の耐性にも、血清飢餓に対する耐性の有無にも関係なく、様々な付着生産用細胞から細胞外小胞を生産するのに適合したシステムを提案することである。本発明のまた別の目的は、継続的に細胞外小胞を生産および回収するための解決方法を提案することである。最後に、本発明のまた別の目的は、小胞を生産する流体システムの構造を簡略化すること、およびその製造コストを削減することである。
【0010】
具体的には、本発明の目的は、生産用細胞から細胞外小胞を生産する流体システムであって、少なくとも1つの容器と、容器に入れる液体培地と、生産用細胞とを含み、液体培地中に懸濁し表面に生産用細胞の大部分が付着したマイクロキャリアおよび液体培地の攪拌機も含み、攪拌機ならびに容器の形状および寸法が、容器内に液体培地の乱流を発生させることに適合していることを特徴とする、流体システムである。
【0011】
このようなシステムを用いれば、小胞を大量に、G.M.P基準に適合したシステムで生産することが可能であることが理解される。また、このようなシステムが細胞外小胞を生産する既知のシステムよりも単純であり、製造にかかる費用が少なくて済むことも理解される。
【0012】
本発明は、個々に、または技術的に可能な組合せのうちいずれか1つの形で取り入れられる以下の特徴によって補われるのが有利である:
液体培地の攪拌機および容器の寸法は、液体培地の流れを制御するのに適合しており、流れのコルモゴロフ長さが75μm以下、好ましくは50μmである;
流体システムは、出口と、出口と連結されたコネクタとを含み、コネクタが、液体培地と細胞外小胞とを含むことが可能である;
攪拌機は、回転速度(1つまたは複数)、形状、大きさが容器の形状および寸法とともに容器内での液体培地の乱流の発生に適合した回転式攪拌機である;
マイクロキャリアはマイクロビーズであり、マイクロビーズの直径が100μm~300μmである;
流体システムは、小胞が枯渇した液体培地を容器内に再導入することができるよう容器と流体連結されている細胞外小胞分離器を含む。
【0013】
本発明のまた別の目的は、ex vivoで生産用細胞から細胞外小胞を生産する方法であって、
攪拌機を制御して容器内に液体培地の乱流を生じさせ、容器が出口を含み、液体培地が、マイクロキャリアの表面に付着している生産用細胞を含み、マイクロキャリアが液体培地中に懸濁していることと、
容器の出口で細胞外小胞を含む液体培地を収集することと
を含む、方法である。
【0014】
この方法は、個々に、または技術的に可能な組合せのうちいずれか1つの形で取り入れられる以下の特徴によって補われるのが有利である:
液体培地を30分間よりも長く攪拌する;
液体培地が流れるよう攪拌機を制御し、流れのコルモゴロフ長さが75μm以下、好ましくは50μmである;
分離器が、容器の出口で収集した液体培地の一部から細胞外小胞を枯渇させ、液体培地の一部が容器内に再導入される。
【0015】
本発明のまた別の目的は、本発明の細胞外小胞生産方法によって得ることが可能な細胞外小胞でもある。
【0016】
本発明のまた別の目的は、本発明の細胞外小胞生産方法によって得ることが可能な細胞外小胞を含む、医薬組成物でもある。
【0017】
細胞外小胞を含む医薬組成物は、再生医療に使用することができる点で有利である。
【0018】
定義
「細胞外小胞」という用語は一般に、生産用細胞によって内因性に放出され、直径が30nm~5000nmである小胞を指す。細胞外小胞は具体的には、エキソソームおよび/または微小胞および/または細胞アポトーシス小体に対応する。
【0019】
「マイクロキャリア」および「微小支持体」という用語は、表面または内側に付着している生産用細胞を増殖させ、最大径が50μm~500μm、好ましくは100μm~300μmである、球状の基質を指す。マイクロキャリアは一般に、密度が実質的に生産用細胞の液体培地の密度に近くなるよう選択されたビーズである。このため、穏やかにかき混ぜることにより、ビーズを液体培地中に懸濁させておくことができる。
【0020】
図面の説明
以下の説明から他の特徴と利点も明らかになるが、この説明は単に例示的で非限定的なものであって、添付の図面を参照しながら読むべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、細胞外小胞を生産する流体システムを模式的に示す図である。
図2図2は、流体システムにおいて様々な攪拌でHUVEC細胞によって生産された細胞外小胞の数を示す図である。
図3図3は、流体システムにおいて様々な攪拌でHUVEC細胞によって生産された細胞外小胞の数を示す図である。
図4図4は、流体システムにおいて様々な攪拌でMSC細胞によって生産された細胞外小胞の数を示す図である。
図5図5は、コルモゴロフ長さが、HUVEC細胞およびMSC細胞によって生産される細胞外小胞の数に及ぼす影響を示す図である。
図6図6は、マイクロキャリアの表面に付着している生産用細胞を示す図である。
図7図7は、マイクロキャリアの表面に付着している生産用細胞を示す図である。
図8図8は、様々な攪拌持続時間、様々な生産用細胞および様々な攪拌条件での細胞外小胞の生産収率を示す図である。
図9図9は、様々な生産用細胞および様々な攪拌条件での240分間の攪拌後の細胞外小胞の生産収率を72時間の血清除去法と比較して示す図である。
図10図10は、攪拌前および攪拌後にマイクロキャリア上に付着していた生産用細胞の濃度を様々な攪拌条件について示す図である。
図11図11は、細胞外小胞を生産する攪拌条件下でのHUVEC型生産用細胞の代謝を示す図である。
図12図12は、細胞外小胞を生産する攪拌条件下でのHUVEC型生産用細胞の代謝を示す図である。
図13図13は、細胞外小胞EVを生産する攪拌条件下でのマウスMSC型生産用細胞の代謝を示す図である。
図14図14は、細胞外小胞を生産する攪拌条件下でのマウスMSC型生産用細胞の代謝を示す図である。
図15図15は、流体システムによって生産した細胞外小胞のクライオ電子顕微鏡法による顕微鏡写真である。
図16図16は、流体システムによって生産した細胞外小胞の直径の分布を示す図である。
図17図17は、液体培地中で流体システムによって生産した細胞外小胞の粒子の数とタンパク質の質量との間の比によって得られた純度を72時間の血清除去法と比較して示す図である。
図18図18は、流体システムによって生産した細胞外小胞を含む液体培地の血管新生促進特性を示す図である。
図19図19は、流体システム、血清除去法または自発的小胞放出によって生産した細胞外小胞を含む液体培地の血管新生促進特性を示す図である。
図20図20は、流体システムによって生産した細胞外小胞を含む培地中で1日間インキュベートした後の心筋細胞(H9C2系)の代謝活性を示す図である。
図21図21は、流体システムによって生産した細胞外小胞を含む様々な培地中で2日間インキュベートした後の心筋細胞(H9C2系)の代謝活性を示す図である。
図22図22は、流体システムによって生産した細胞外小胞を異なる濃度で含む液体培地でのインキュベーションについて、投与量が心筋細胞の増殖に及ぼす効果を示す図である。
図23図23は、細胞外小胞を含む液体培地の存在下で2日間インキュベートした後の心筋細胞(H9C2系)の増殖を示す図である。
図24図24は、流体システムによって生産した細胞外小胞のラットの缶と盲腸の間の瘻の治療へのポロキサマーゲルの医薬組成物としての使用を示す図である。
図25図25は、流体システムによって生産した細胞外小胞のラットの缶と盲腸の間の瘻の治療へのポロキサマーゲルの医薬組成物としての使用を示す図である。
図26図26は、本発明による方法によって生産した細胞外小胞のプロテオミクスプロファイルと、先行技術による従来の生産方法によって生産した細胞外小胞のプロファイルとを比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(詳細な説明)
理論的要素
コルモゴロフ長さ(またはコルモゴロフ寸法または乱流長さ)とは、流体の粘度がこの流体の流れの運動エネルギーを消失させる長さのことである。実際には、コルモゴロフ長さは乱流の最も小さい渦の大きさに対応する。この長さLは、コルモゴロフ(Kolmogorov,A.N.,1941,January,The local structure of turbulence in incompressible viscous fluid for very large Reynolds numbers,In Dokl.Akad.Nauk,SSSR,Vol.30,No.4,pp.301-305)の刊行物で算出されており、以下の式(1):
=ν3/4・ε-1/4(1)
によって記述され、式中、νは流動している液体培地の動粘性率であり、εは流体の質量単位当たりに消失するエネルギー(または流体へのエネルギー注入率)である。
【0023】
Zhouら(Zhou,G.,Kresta,S.M.,1996,Impact of tank geometry on the maximum turbulence energy dissipation rate for impellers,AIChE journal,42(9),2476-2490)は、羽根型攪拌翼型攪拌機によって液体培地を攪拌した場合のεと容器の形状との間の関係について記載している。この関係は以下の式(2):
【数1】
で与えられ、式中、Nは液体培地中での攪拌機の無次元動力数(またはニュートン数)であり、Dは攪拌機の直径(メートル)であり、Nは回転速度(毎秒回転数)であり、Vは液体培地の体積(立方メートル)である。この関係は、本発明を実施するのに使用する容器および攪拌機の形状に対応するεを算出するのに用いられる。動力数Nは以下の式(3):
【数2】
により既知の方法で与えられ、式中、Pは攪拌機によって与えられる力であり、ρは液体培地の密度である。式(3)は、液体培地の流れのレイノルズ数に応じて、Nienowら(Nienow,A.W.およびMiles,D.,1971,Impeller power numbers in closed vessels,Industrial & Engineering Chemistry Process Design and Development,10(1),41-43)またはZhouら(Zhou,G.,Kresta,S.M.,1996,Impact of tank geometry on the maximum turbulence energy dissipation rate for impellers,AIChE journal,42(9),2476-2490)に記載されている通りに調整することができる。以下の式(4):
【数3】
によりシステムのレイノルズ数を算出することも可能である。
【0024】
流体システムの一般的構造
図1に、細胞外小胞EVを生産する流体システム1を模式的に示す。細胞外小胞EVを生産する流体システム1は、容器4中で細胞外小胞EVを大量に生産することを目的とするものである。ただし、本発明は、この実施形態に限定されるわけではなく、並列に、または直列に流体連結されている一連の容器4を含み得る。
【0025】
容器4には液体培地5が含まれている。容器4は、例えばガラスもしくはプラスチック材料でできた器、フラスコまたは液体培地5を含むのに適合した任意の他の容器であり得る。容器4の体積は、細胞外小胞EVを大量に生産するのを可能にする因子の1つであり、この体積は50mL~500L、好ましくは100mL~100L、好ましくは500mL~10Lであり得る。図1に模式的に示される容器4の体積は1Lである。容器4は通常、ガスの入り口とガスの出口とを含み、そこを細胞培養に適合した濃度のOおよびCOを含む、例えば5%のCOを含む空気が流れることができる。この空気は、適合したガス注入器/混合器から、またはCO制御空気オーブンから来るものであり得る。第二のポンプ17によって容器4内のこの空気の流れを制御することができる。容器4は、液体培地5と細胞外小胞EVとを含むことが可能な出口9も含む。この出口は、マイクロキャリア3を分離および/またはろ過し、マイクロキャリア3が容器4の外に回収されないようにする手段によって完成する。この出口9によって、生産された細胞外小胞EVを容器4から取りだすことができる。容器4は、液体培地5を容器4に導入するのに適合した少なくとも1つの入り口8も含み得る。
【0026】
液体培地5は一般に、生理食塩水、例えば等張液であり得る。好ましくは、液体培地5は、目的とする細胞の培養を可能にする化合物を含む、もしくはこれを加えた液体培地、または予め細胞外小胞から精製した血清を添加した培地、または血清を含まず、流体システム1によって生産された細胞外小胞EVを血清由来のタンパク質もしくはその他の小胞によって汚染しないようにした培地である。血清を含まないDMEM型液体培地5を使用することができる。液体培地5の最大体積は部分的には、容器4によって決まる。この最大体積は、50mL~500L、好ましくは100mL~100L、より好ましくは500mL~10Lであってもよい。容器4に含まれる液体培地5の最小体積は部分的には、液体培地5を攪拌する攪拌機7の選択によって決まる。
【0027】
流体システム1は、液体培地5中に懸濁したマイクロキャリア3も含む。マイクロキャリア3は、例えばデキストランでできたマイクロビーズ14であってよく、各マイクロビーズ14を細胞の培養に必要なコラーゲンまたはその他の材料の層で覆うことができる。マイクロキャリア3の製造には、ガラス、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、コラーゲンおよび/またはアルギン酸塩などの他の材料も使用することができる。一般的な方法では、細胞培養に適合した一式のマイクロキャリアは、細胞外小胞EVの生産に適合したものである。例えば、マイクロキャリア3の密度は、液体培地5の密度よりわずかに大きいものであり得る。デキストランでできたマイクロビーズ14の密度は、例えば1.04である。この程度の密度であれば、液体培地5をわずかに攪拌することによってマイクロビーズ14を液体培地5中に懸濁させることが可能であり、液体培地5中での各マイクロキャリア3の抗力はマイクロキャリア3の密度に左右される。マイクロキャリア3の最大径は50μm~500μm、好ましくは100μm~300μm、好ましくは130μm~210μmであり得る。
【0028】
例えば、マイクロキャリア3は、Cytodex 1(登録商標)型のマイクロビーズ14であり得る。このマイクロビーズ14によって形成された粉末を使用前に水で戻し、滅菌することができる。次いで使用前、4℃で、血清を含まない培地(例えば、DMEM)中5gのPBSを使用することができる。
【0029】
流体システム1は生産用細胞6も含む。細胞外小胞EVは、流体システム1によってこの生産用細胞6から生産される。流体システム1によって細胞外小胞EVを生産する前に、適合した細胞培地中、生産用細胞6をマイクロキャリア3の表面で培養することができる。したがって、生産用細胞6の培養と細胞外小胞EVの生産の間に細胞を移動させる必要はなく、これにより、いかなる汚染も回避し、方法全体を簡略化することが可能になる。生産用細胞6の一部が例えば液体培地5の攪拌によって剥離することがあるとしても、生産用細胞6の大部分はマイクロキャリア3の表面に対して付着性を示す。次いで、他の生産用細胞が液体培地5中に懸濁するか、容器4の底に沈降する。一般的な方法では、非付着性の生産用細胞、好ましくは付着性の生産用細胞6を含めた任意の種類の生産用細胞6を使用することができる。例えば、生産用細胞6は多分化能性細胞または人工多能性幹細胞(IPSまたはIPSC)であり得る。これらは遺伝子改変細胞および/または腫瘍系であってもよい。
【0030】
容器4は、液体培地5を攪拌する攪拌機7も含む。攪拌機7は羽根型攪拌翼であってよく、その羽根は少なくとも一部が液体培地5に浸かっており、磁力の伝達によって動く。攪拌機7は、容器に含まれる液体培地5を攪拌するのに十分な流速の液体培地5の灌流システムまたは(例えば、ローラ上に配置された)回転壁を有するシステムであってもよい。攪拌機7および容器4の寸法は、容器4内の液体培地5の乱流を制御するのに適合している。乱流は、レイノルズ数が2000より大きい流れを意味する。例えば、レイノルズ数を式(4)により算出することができる。好ましくは、液体培地5の流れのレイノルズ数Reは、7000超、好ましくは10000超、好ましくは12000超である。
【0031】
本発明の例示的実施形態に使用される攪拌機7は、容器4内に配置され磁力伝達システムによって動く羽根型攪拌翼を含む。液体培地5中の羽根型攪拌翼の速度によって液体培地5が流れる。攪拌機は、容器4の寸法を考慮に入れ、乱れた流れを制御するのに適合している。図1に示される攪拌機7の場合、複数のパラメータによって、液体培地5の乱流、特に液体培地5の動粘性率v、容器4の寸法、特に容器4に含まれる液体培地5の体積V、羽根型攪拌翼の浸かった部分に対応する動力数N、攪拌機、特に攪拌翼の直径D、攪拌翼の回転速度Nの代表的な値を算出することが可能である。したがって、使用者は、これらのパラメータに従って、流れの乱流、特に、(1)、(2)および(3)の式によって与えられるコルモゴロフ長さLの代表的な値を算出することができる。具体的には、攪拌機7は、長さLが75μm以下、好ましくは50μm以下である流れを制御するのに適合している。
【0032】
流体システム1の例示的実施形態では、攪拌機7の回転速度は100rpm(毎分回転数)に制御することが可能であり、羽根型攪拌翼の直径は10.8cmであり、容器4に含まれる液体培地の体積は400mLである。式(3)によって測定される液体培地5中での羽根型攪拌翼の動力数Nは実質的に3.2に等しい。式(2)によって算出される質量単位当たりに消失するエネルギーεは5.44×10-1J・kg-1に等しい。したがって、式(1)によって算出されるコルモゴロフ長さLは41.8μmに等しい。
【0033】
マイクロキャリアおよび生産用細胞の調製
容器4は、使い捨ての容器であっても、液体培地5、マイクロキャリア3および生産用細胞6を導入する前に滅菌してもよい。マイクロキャリア3、この場合、マイクロビーズ14も滅菌する。マイクロビーズ14を容器4内で、血清を含む生産用細胞6の培地中でインキュベートする。このインキュベーションによって、培地に酸素が送り込まれ、マイクロビーズ14の表面が、マイクロビーズ14の表面への生産用細胞6の付着を促進するタンパク質の少なくとも部分的な層で覆われる。
【0034】
生産用細胞6を流体システム1に導入する前に、トリプシンを含む培地によって生産用細胞6を懸濁させる。次いで、それを300Gで5分間遠心分離してチューブの底に濃縮し、トリプシンを含む培地をDMEM培地に置き換えることができる。次いで、実質的に1個のマイクロビーズ14当たり5~20個の生産用細胞6に対応する量で培地とマイクロビーズ14とを含む容器5に生産用細胞6を導入する。そののち、生産用細胞6とマイクロビーズ14を攪拌した後、沈降させてマイクロビーズ14と生産用細胞6とを接触させ、マイクロビーズ14の表面への生産用細胞6の付着を促進する。攪拌を周期的に、例えば5~24時間にわたって45分毎に再開して、マイクロビーズ14の表面への生産用細胞6の付着の均一性を促進することができる。そののち、培地を弱く攪拌する(例えば、羽根型攪拌翼を20rpmの速度で回転させる)とともに、培地も定期的に交換しながら(例えば、毎日培地の5%~40%を交換しながら)、生産用細胞の培養を実施する。
【0035】
細胞外小胞EVの生産例
例えば血清を含まない液体培地5、マイクロキャリア3およびマイクロキャリア3の表面に付着した生産用細胞6を含む容器4内で細胞外小胞EVを生産する。マイクロキャリア3上で生産用細胞6を培養するために生産前に使用し、血清を含む培地、容器4を血清を含まないDMEM液体培地5で3~4回洗浄し、各洗浄は例えば約400mLの体積に相当する。次いで、液体培地5の攪拌を攪拌機7により制御して容器4内に乱流を発生させる。好ましくは、コルモゴロフ長さLが75μm以下、好ましくは50μm以下である液体培地5の流れを制御するよう攪拌を調節する。液体培地5の攪拌は、少なくとも30分間、好ましくは1時間超、好ましくは2時間超制御する。生産中に細胞外小胞EVの生産量を測定する。この目的に向けて、攪拌を一時的に中断することができる。マイクロビーズ14を容器4の底に沈降させ、次いで、細胞外小胞EVを含む液体培地5の試料を採取する。試料を2000Gで10分間遠心分離して細胞残屑を除去する。個々の粒子を追跡する方法(またはNTA、ナノ粒子トラッキング解析(Nanoparticle Tracking Analysis)の頭字語)により上清を解析して、細胞外小胞EVの数をカウントし、試料の細胞外小胞EVの濃度を推定する。攪拌開始時の細胞外小胞EVの濃度がゼロに近い、またはごくわずかであることを確認することができる。
【0036】
生産された細胞外小胞EVを透過型電子クライオ顕微鏡法により観察および/またはカウントすることもできる。この目的に向けて、細胞外小胞EVを含む溶液2.7μLの滴をクライオ顕微鏡法に適合したグリッド上に置き、次いで、液体エタンに浸漬して前記滴をほぼ瞬時に凍結させ、氷晶が形成されないようにする。細胞外小胞EVを載せたグリッドを顕微鏡に導入し、約-170℃の温度で細胞外小胞EVを観察する。
【0037】
細胞外小胞の分離
容器4内で生産された細胞外小胞EVを容器4の出口9を通して容器4から取り出し、液体培地5中に懸濁させることができる。出口9にフィルタ18を配置して、容器4から細胞外小胞EVを取り出す過程でマイクロキャリア3およびマイクロキャリア3に付着した生産用細胞6をろ過することができる。出口9にはコネクタ13が流体連結されており、生産された細胞外小胞EVを含む液体培地5の輸送が可能である。
【0038】
流体システム1は細胞外小胞EVの分離器15を含み得る。分離器15は分離器入口10を含み、容器4の細胞外小胞EVを含む液体培地5を直接的に、または間接的に運搬することができる。分離器15は第一の分離器出口11を含んでもよく、液体培地5はそれを通って、細胞外小胞EVの濃度が分離器15の入口10よりも低いか、場合によっては実質的にゼロである状態で分離器15から出ることが可能である。分離器15は第二の分離器15の出口12を含んでもよく、液体培地5はそこから、細胞外小胞EVの濃度が分離器15の入口10よりも高い状態で分離器15から出ることが可能である。
【0039】
一般的な方法では、小胞EVが枯渇した液体培地5を例えば容器4の入口8から容器4内に再導入することができるように、細胞外小胞EVの分離器15を容器4と流体連結することができる。したがって、容器4内の液体培地5の体積を実質的に一定にして、細胞外小胞EVの生産および/または取出しを連続的に実施することができる。
【0040】
図1に示される流体システム1の例示的実施形態では、液体培地5を第一のポンプ16によりコネクタ13を介して容器4から取り出して、液体培地5を収集器19内に輸送することができる。第一のポンプ16がもう1つあれば、もう1つのコネクタを介して、収集器19に含まれる液体培地5を分離器15の入口10まで運搬することが可能になる。第一の分離器15の出口11は、細胞外小胞EVが枯渇した液体培地5を容器4内に再導入するようコネクタを介して容器4と連結されている。第二の分離器15の出口12は、収集器19に含まれる液体培地5の細胞外小胞EVを増やすようコネクタを介して収集器19と連結されている。あるいは、分離器15の入口10が容器4の出口9と直接(または第一のポンプ16を介して)連結されていてもよい。第一の分離器15の出口11は容器4と連結され、第二の分離器15の出口12は収集器19と連結されている。複数の分離器を直列に配置して液体培地5の細胞外小胞EV分離の程度を変化させ、かつ/または並列に配置して各分離器15内の液体培地5の流速を第一のポンプ16の流速に適合させてもよい。
【0041】
細胞外小胞EVの生産に対する攪拌の影響
図2に、流体システム1において攪拌機7によって制御された様々な攪拌で生産された細胞外小胞EVの数を示す。左側の縦軸は、容器4内で生産された細胞外小胞EVの数に対応する。棒はそれぞれ、容器4内の攪拌機7の様々な回転速度での細胞外小胞EV生産量に対応する。右側の縦軸は、細胞外小胞EVの生産時に攪拌機7によって生じ、式(1)、(2)および(3)によって算出された長さLに対応する。容器4内で、100mlスピナフラスコに入れた50mLの液体培地5中3g・L-1の濃度のマイクロキャリア3を用いてHUVEC型生産用細胞6から細胞外小胞EVを生産する。液体培地5の流れを制御することによって長さLを35μmに等しくした場合(300RPMの棒に対応する生産量)、細胞外小胞EVの生産量が、これより攪拌が弱く、長さLが75μm、好ましくは50μmに等しい条件下での細胞外小胞EVの生産量(150RPMの棒に対応する生産量)と比較して有意に高いことが観察される。
【0042】
図3に、流体システム1において攪拌機7によって制御された様々な攪拌で生産された細胞外小胞EVの数を示す。HUVEC型生産用細胞6が2000万個使用され、1000mLスピナフラスコに入れた350mLの液体培地5中3g・L-1の濃度のマイクロキャリア3が用いられている。左側の縦軸は、容器4内で生産された細胞外小胞EVの数に対応する。棒はそれぞれ、容器4内の攪拌機7の様々な回転速度での細胞外小胞EV生産量に対応する。右側の縦軸は、細胞外小胞EVの生産時に生じ、式(1)、(2)および(3)によって算出された長さLに対応する。液体培地5の流れを制御することによって長さLを40μm未満にした場合、細胞外小胞EVの生産量が、これより弱い攪拌条件下での細胞外小胞EVの生産量(125RPM、150RPMおよび175RPMの棒に対応する生産量)と比較して有意に高いことが観察される。
【0043】
図4に、流体システム1において攪拌機7によって制御された様々な攪拌で生産された細胞外小胞EVの数を示す。MSC型(間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)の頭字語)の生産用細胞6を使用し、500mLスピナフラスコに入れた200mLの液体培地5中3g・L-1の濃度でマイクロキャリア3を導入する。左側の縦軸は、容器4内で生産された細胞外小胞EVの数に対応する。棒はそれぞれ、容器4内の攪拌機7の様々な回転速度での細胞外小胞EV生産量に対応する。右側の縦軸は、細胞外小胞EVの生産時に生じ、式(1)、(2)および(3)によって算出された長さLに対応する。液体培地5の流れを制御することによって長さLを35μmに等しくした場合(175RPMの棒に対応する生産量)、細胞外小胞EVの生産量が、これより攪拌が弱く、長さLが50μmに等しい条件下での細胞外小胞EVの生産量と比較して有意に高いことが観察される。
【0044】
図5に、コルモゴロフ長さLが生産される細胞外小胞EVの数に及ぼす影響を示す。長さLは、細胞外小胞EVの生産量に関する尺度母数である。四角形(a)は、様々な長さLについて図2に示される細胞外小胞EVの生産量に対応し、菱形(b)は、様々な長さLについて図3に示される細胞外小胞EVの生産量に対応し、三角形(c)は、様々な長さLについて図4に示される細胞外小胞EVの生産量に対応する。図5の図表から、Lに応じた細胞外小胞EV生産量の傾きの変化を特徴付け、実質的にL=50μmに等しいLの特性値が抽出される。したがって、50μm以下のL値で細胞外小胞EVの生産量が有意に増加する。
【0045】
図6に、細胞外小胞EVの生産に相当する攪拌の前に液体培地5中に懸濁させたマイクロキャリア3、この場合はマイクロビーズ14の表面に付着している生産用細胞6を示す。マイクロキャリア3の表面に付着している生産用細胞6が目で確認でき、定量化できる。
【0046】
図7に、細胞外小胞EVの生産に相当する攪拌の後に液体培地5中に懸濁させたマイクロキャリア3、この場合はマイクロビーズ14の表面に付着している生産用細胞6を示す。マイクロキャリア3の表面に付着している生産用細胞6が目で確認でき、定量化できる。細胞外小胞EVを生産する攪拌の前と後でマイクロキャリア3の表面に付着している生産用細胞の数を比較することにより、既に記載した攪拌条件、例えば、長さLが75μm未満、好ましくは50μm未満となる流れを生じさせる攪拌がマイクロキャリア3からの生産用細胞6の剥離を引き起こすことはないことを確認することができる。
【0047】
図8に、様々な攪拌持続時間、様々な生産用細胞および攪拌機7によって制御された流れの様々な長さLに対応する様々な攪拌条件での細胞外小胞EVの生産収率を示す。曲線(a)は、攪拌中の生産された粒子(細胞外小胞EVを含む)の数の間および容器4内に導入された生産用細胞6の数の間の比の展開を示したものであり、生産用細胞6はマウスMSC型のものであり、液体培地5の流れは実質的に35μmに等しい長さLを特徴とするものである。曲線(b)は、同じ展開を示したものであり、生産用細胞6はヒトMSC型のものであり、液体培地5の流れは実質的に33μmに等しい長さLを特徴とするものである。曲線(c)は、同じ展開を示したものであり、生産用細胞6はHUVEC型のものであり、液体培地5の流れは実質的に35μmに等しい長さLを特徴とするものである。曲線(d)は、同じ展開を示したものであり、生産用細胞6はヒトMSC型のものであり、液体培地5の流れは実質的に35μmに等しい長さLを特徴とするものである。曲線(e)は、同じ展開を示したものであり、生産用細胞はHUVEC型のものであり、液体培地5の流れは実質的に50μmに等しい長さLを特徴とするものである。曲線(f)は、同じ展開を示したものであり、生産用細胞はマウスMSC型のものであり、液体培地5の流れは実質的に50μmに等しい長さLを特徴とするものである。曲線(g)は、同じ展開を示したものであり、生産用細胞6はヒトMSC型のものであり、液体培地5の流れは実質的に50μmに等しい長さLを特徴とするものである。曲線(h)は、同じ展開を示したものであり、生産用細胞はマウスMSC型のものであり、液体培地5の流れは実質的に53μmに等しい長さLを特徴とするものである。このように、30分より長い攪拌持続時間では、細胞外小胞EVが既知のものより高い収率で生産される。
【0048】
図9に、様々な生産用細胞6および様々な攪拌条件での240分間の攪拌後の細胞外小胞EVの生産収率を示す。左の4つの棒は、マウスMSC型生産用細胞6を用いた細胞外小胞EVの生産収率を示す。50μm(1番目の棒)、47μm(2番目の棒)および35μm(3番目の棒)の長さLが得られる攪拌に対応する3種類の攪拌条件の生産収率が血清飢餓法(または血清除去法)による生産収率と比較されている。L=47μmおよびL=35μmの条件下の方が、L=50μmの条件下および血清飢餓条件下よりも細胞外小胞EVの生産収率が有意に高い。3つの棒は、HUVEC型生産用細胞6を用いた細胞外小胞EVの生産収率を示す。50μm(4番目の棒)および47μm(5番目の棒)の長さLが得られる攪拌に対応する2種類の攪拌条件の生産収率が血清飢餓法による生産収率と比較されている。L=35μmの条件下の方が、L=50μmの条件下および血清飢餓条件下よりも細胞外小胞EVの生産収率が高い。図の最も右側にある4つの棒は、ヒトMSC型生産用細胞6を用いた細胞外小胞EVの生産収率を示す。50μm(8番目の棒)、35μm(9番目の棒)および33μm(10番目の棒)の長さLが得られる攪拌に対応する3種類の条件の生産収率が血清飢餓法による生産収率と比較されている。L=35μmおよびL=33μmの条件下の方が、L=50μmの条件下および血清飢餓条件下よりも細胞外小胞EVの生産収率が有意に高い。
【0049】
図10に、攪拌前および攪拌後にマイクロキャリア3上に付着していた生産用細胞6の濃度を様々な攪拌条件について示す。棒(a)は、細胞外小胞EVを生産する攪拌の前(J0)および「強い」攪拌条件と呼ぶ攪拌条件下での、すなわち、長さL=35μmを特徴とする流れが生じるよう攪拌機7を制御したときの攪拌の1日後(J1)の生産用細胞6の濃度に対応する。棒(b)は、細胞外小胞EVを生産する攪拌の前(J0)および「弱い」攪拌条件と呼ぶ攪拌条件下での、すなわち、長さL=50μmを特徴とする流れが生じるよう攪拌機7を制御したときの攪拌の1日後(J1)の生産用細胞6の濃度に対応する。細胞外小胞EVを生産するのに液体培地5を攪拌した後にも生産用細胞6の濃度の有意な低下はみられない。
【0050】
図11に、細胞外小胞EVを生産する攪拌条件下でのHUVEC型生産用細胞6の代謝活性を示す。1Lスピナフラスコ内で75RPMで回転する攪拌機7によって液体培地5の攪拌を制御し、実質的に50μmに等しい長さLを特徴とする流れを240分間生じさせる。液体培地5中のアラマーブルー試薬が発光する波長の変化を観察することによって代謝を測定する。上記の攪拌条件下では、生産用細胞6の代謝の有意な低下はみられない。
【0051】
図12に、細胞外小胞EVを生産する攪拌条件下でのHUVEC型生産用細胞6の代謝を示す。1Lスピナフラスコ内で125RPMで回転する攪拌機7によって液体培地5の攪拌を制御し、実質的に35μmに等しい長さLを特徴とする流れを240分間生じさせる。液体培地5中のアラマーブルー試薬が発光する波長の変化を観察することによって代謝を測定する。250分間の攪拌後、生産用細胞6の代謝の低下または場合によっては消失さえみられる。しかし、この細胞代謝の低下は、攪拌時の細胞外小胞EVの生産を妨げるものではない。
【0052】
図13に、細胞外小胞EVを生産する攪拌条件下でのMSC型生産用細胞6の代謝を示す。1Lスピナフラスコ内で75RPMで回転する攪拌機7によって液体培地5の攪拌を制御し、実質的に50μmに等しい長さLを特徴とする流れを240分間生じさせる。液体培地5中のアラマーブルー試薬が発光する波長の変化を観察することによって代謝を測定する。上記の攪拌条件下では、生産用細胞6の代謝の有意な低下はみられない。
【0053】
図14に、細胞外小胞EVを生産する攪拌条件下でのMSC型生産用細胞6の代謝を示す。1Lスピナフラスコ内で125RPMで回転する攪拌機7によって液体培地5の攪拌を制御し、実質的に35μmに等しい長さLを特徴とする流れを240分間生じさせる。液体培地5中のアラマーブルー試薬が発光する波長の変化を観察することによって代謝を測定する。上記の攪拌条件下では、生産用細胞6の代謝の有意な低下はみられない。
【0054】
このように、実質的に50μmに等しい長さLを特徴とする流れを生じさせる攪拌に対応する弱い攪拌条件では、生産用細胞6を次の細胞外小胞EVの生産に再利用することができる。
【0055】
図15は、流体システム1によってマウスMSC細胞により生産した細胞外小胞EVの顕微鏡写真である。スケールバーは200nmの長さに対応する。透過型電子クライオ顕微鏡法(クライオ-TEM)の技術を用いて顕微鏡写真法を実施する。
【0056】
図16に、流体システム1によって生産した細胞外小胞EVのクライオ-TEMにより測定した直径の分布を示す。分布(a)は、実質的に35μmに等しい長さLを特徴とする流れを生じさせる攪拌(強い攪拌条件)を用い、マウスMSC細胞により生産した細胞外小胞EVに対応する。分布(b)は、実質的に50μmに等しい長さLを特徴とする流れを生じさせる攪拌(弱い攪拌条件)を用いて生産した細胞外小胞EVに対応する。弱い攪拌条件下で生産した細胞外小胞EVの直径中央値の方が、強い攪拌条件下で生産した細胞外小胞EVの直径中央値よりも大きい。細胞外小胞EVの大きさは、実質的に30~500nmであると思われる。
【0057】
図17に、粒子の数とマイクログラムで表したタンパク質の質量との間の比によって示される、液体培地5中で流体システム1によって生産した細胞外小胞EVの純度を示す。細胞外小胞EVの生産過程では、生産用細胞6によって様々な物質、この場合は細胞外小胞EVのほかにタンパク質凝集体も生産され得る。個々の粒子を追跡する解析(またはナノ粒子トラッキング解析(Nanoparticle Tracking Analysis)を表すNTA)により粒子を定量化しても、これらの様々な物質を識別することは不可能であり、また、NTAによって測定した粒子の数と生産されたタンパク質の質量との間の比を定量化して細胞外小胞EVの純度を定めるのが有利である。図17に示される棒(a)は、マウスMSC型生産用細胞6による細胞外小胞EVの生産に対応し、棒(b)は、ヒトMSC型生産用細胞6による細胞外小胞EVの生産に対応する。左の2つの棒は強い攪拌条件下での細胞外小胞EVの生産に対応し、右の2つの棒は血清飢餓法による細胞外小胞EVの生産に対応する。生産後に得られた培地の細胞外小胞EVの純度は2つの方法で同程度であった。
【0058】
図18に、流体システム1によってマウスMSC細胞により生産した細胞外小胞EVを含み、血清を含まない液体培地5の血管新生促進特性を示す。図18のパネルAは、HUVEC型細胞が付着している表面の写真である。表面の一部分(写真中央の細胞のない領域)から細胞が除去されている。この写真は実験開始時に撮影したものであり、この時間t=0時間では、細胞が流体システム1によって生産された細胞外小胞EVを含む液体培地5で覆われている。図18のパネルBは、細胞外小胞EVを含む液体培地5中で4時間インキュベートした後の同じ表面の写真である。図18のパネルCは、細胞外小胞EVを含む液体培地5中で9時間インキュベートした後の同じ表面の写真である。実験の過程で、HUVEC型細胞が、表面の実験開始時に細胞が存在しなかった部分を覆っている。したがって、細胞外小胞EVを含む液体培地5には、血管新生促進特性および/または増殖促進特性がある。
【0059】
図19に、流体システム1によって様々な条件下でマウスMSC細胞により生産した細胞外小胞EVを含む液体培地5の血管新生促進特性を示す。各棒は、各インキュベーション条件について0時間(図18のパネルAに対応する)~9時間(図18のパネルCに対応する)の周縁部の閉鎖の割合を正規化したものを示す。1番目の棒(「完全培地」)は、HUVEC細胞培地中でのインキュベーションに対応する(陽性対照に対応する)。2番目の棒(「陰性対照」)は、細胞外小胞EVも血清も含まず、所与の体積のPBSを加えた液体培地5(培地)中でのインキュベーションに対応する。3番目の棒(「強い攪拌10/1」)は、流体システム1によって強い攪拌条件下で生産した細胞外小胞EVを含み、同じ所与の体積のPBSを加えた液体培地5中でのインキュベーションに対応し、導入した生産用細胞6の量は、1個の受容HUVEC細胞に対し10個のマウスMSC生産用細胞6に相当する。4番目の棒(「弱い攪拌10/1」)は、流体システム1によって弱い攪拌条件下で生産した細胞外小胞EVを含み、同じ所与の体積のPBSを加えた培地5中でのインキュベーションに対応し、導入した生産用細胞6の量は、1個の受容HUVEC細胞に対し10個のマウスMSC生産用細胞6に相当する。5番目の棒(「lib 10/1」)は、エキソソームが枯渇したHUVEC細胞培地中でのインキュベーションに対応し、導入した生産用細胞6の量は、1個の受容HUVEC細胞に対し10個の生産用細胞6に相当する。6番目の棒(「ストレス10/1」)は、血清飢餓法によって生産した細胞外小胞EVを含み、同じ所与の体積のPBSを加えた液体培地5中でのインキュベーションに対応し、導入した生産用細胞6の量は、1個の受容HUVEC細胞に対し10個のマウスMSC生産用細胞6に相当する。強い攪拌条件下で生産した細胞外小胞EVを含む液体培地5中でのインキュベーション(「強い攪拌10/1」)により、最初は細胞がなかった部分を有意に覆うことが可能である。
【0060】
図20に、様々な液体培地中で1日間インキュベートした後、インキュベーション培地に含まれるアラマーブルーにより測定した心筋細胞の増殖を示す。1番目の棒は、H9C2心筋細胞の培養に適合した培地(「完全培地」、陽性対照)中でのインキュベーションに対応する。2番目の棒は、PBS中でのインキュベーションに対応する。3番目の棒は、流体システム1によって強い攪拌条件下で生産した細胞外小胞EVを含む液体培地5中でのインキュベーションに対応し(「強い攪拌10/1」)、導入した生産用細胞6の量は、1個の受容細胞に対し10個の生産用細胞6に相当する。4番目の棒は、流体システム1によって弱い攪拌条件下で生産した細胞外小胞EVを含む液体培地5中でのインキュベーションに対応し(「弱い攪拌10/1」)、導入した生産用細胞6の量は、1個の受容細胞に対し10個の生産用細胞6に相当する。5番目の棒は、エキソソームが枯渇した心筋細胞培地中でのインキュベーションに対応し(「lib 10/1」)、導入した生産用細胞6の量は、1個の受容細胞に対し10個の生産用細胞6に相当する。6番目の棒は、血清を含まない培地での生産方法によって生産した細胞外小胞EVを含む液体培地5中でのインキュベーション「ストレス」に対応し、導入した生産用細胞6の量は、1個の受容細胞に対し10個の生産用細胞6に相当する。流体システム1によって強い攪拌条件下および/または弱い攪拌条件下で生産した細胞外小胞EVを含む液体培地5でのインキュベーション条件では、心筋細胞の増殖がPBSでのインキュベーション条件ならびに「エキソ」条件下および「ストレス」条件下よりも有意に高くなる。
【0061】
図21に、2日間インキュベートした後のH9C2心筋細胞の増殖を示す。弱い攪拌条件下、強い攪拌条件下で流体システム1によって、およびエキソソームが枯渇した完全培地中での自発的放出によってマウスMSC型生産用細胞6から生産した細胞外小胞EVを含む液体培地5中でインキュベートした心筋細胞の方が、血清飢餓状態の培地でインキュベートした心筋細胞よりも有意に多く増殖する。弱い攪拌条件下および強い攪拌条件下で生産した細胞外小胞EVを含む液体培地5中でインキュベートした心筋細胞の方が、血清飢餓状態の培地中でインキュベートした心筋細胞よりも有意に多く増殖する。
【0062】
図22に、流体システム1によって生産した細胞外小胞EVを異なる濃度で含む液体培地5でのインキュベーションについて、投与量がH9C2心筋細胞の増殖に及ぼす効果を示す。液体培地中で2日間インキュベートした後の心筋細胞代謝活性をアラマーブルーにより測定する。3種類のインキュベーション条件、すなわち、(a)の弱い攪拌条件下で生産した細胞外小胞EVを含む液体培地5中、(b)の弱い攪拌条件下で生産した細胞外小胞EVを含む液体培地5中および(c)の血清飢餓状態の液体培地中という条件について心筋細胞の代謝を測定する。曲線(a)および(b)の心筋細胞の代謝の測定は、横軸に示される細胞外小胞EVの濃度と心筋細胞の濃度との間の比を変えて実施する。曲線(a)は、細胞外小胞EVの存在下で投与量が増殖に及ぼす効果を示しており、細胞外小胞EVと心筋細胞との間の濃度比が増大すると心筋細胞の代謝が増大する。
【0063】
図23に、マウスMSC細胞の細胞外小胞EVを心筋細胞1個当たり細胞外小胞EV 100000個の濃度で含む液体培地5の存在下で2日間インキュベートした後の心筋細胞の増殖を示す。2日後の心筋細胞の増殖は、液体インキュベーション培地5が流体システム1によって強い攪拌条件下または弱い攪拌条件下で生産した細胞外小胞EVを含む場合の方が、血清飢餓によって得た細胞外小胞EVを含む液体培地および/またはエキソソームが枯渇した完全培地での自発的放出によって得た細胞外小胞EVを含有する心筋細胞培地よりも有意に高い。
【0064】
図24に、流体システム1によって生産した細胞外小胞EVの組成物の医薬組成物としての使用を示す。1群のラットの各個体に盲腸瘻造設術を施術する。3種類の条件下、すなわち、対照条件下、各マウスの瘻開口部にポロキサマー407を含むゲルを塗布することによる治療に対応する条件下(「ゲル」)および本発明の方法による流体システム1によって、例えば強い攪拌条件下で生産した細胞外小胞EVを含むこのゲルを塗布することに対応する条件下(「ゲル+小胞」)で、盲腸瘻造設術によって形成された瘻の開口部の糞便の存在を観察する。明灰色の棒は、糞便がみられた瘻開口部に対応し、暗灰色の棒は、糞便がみられなかった瘻開口部に対応する。細胞外小胞EVを含むゲルの塗布によって、上記の条件下での瘻開口部の糞便の存在を有意に減少させることができ、(腸分泌物を放出する)産生量の多い瘻の場合、対照および小胞を含まないゲルのグループよりも減少する。したがって、流体システム1によって生産した細胞外小胞EVの組成物を再生医療に使用することができる。
【0065】
図25に、流体システム1によって生産した細胞外小胞EVの組成物の医薬組成物としての使用を示す。図24に示される観察結果からスコアを算出する。瘻開口部に糞便がある場合、1に等しいスコアを割り当て、瘻開口部に糞便がない場合、0に等しいスコアを割り当てる。図25には、全盲腸瘻造設術ならびに対照、「ゲル」および「ゲル+小胞」の各条件について平均スコアが示されている。細胞外小胞EVを含むゲルの塗布により、瘻の平均産生能スコアが対照および小胞を含まないゲルのグループと比較して減少し、上記の条件での瘻開口部の糞便の存在が有意に減少する。したがって、流体システム1によって生産した細胞外小胞EVの組成物を再生医療に使用することができる。
【0066】
図26に、本発明による方法によって生産した細胞外小胞のプロテオミクスプロファイルを先行技術による従来の生産方法によって生産した細胞外小胞と比較したもの、より具体的には、細胞外小胞の特徴付けに従来用いられているマーカーのプロテオミクスプロファイルを示す。4種類の異なる生産方法によって得た細胞外小胞のプロテオミクスプロファイルを比較した。フラスコで72時間わたって血清除去により生産する方法(2D)、バイオリアクタで72時間にわたって血清除去により生産する方法(3D)、50μmに等しいコルモゴロフ長さを特徴とする中速バイオリアクタで4時間にわたって生産する方法(MS)および35μmに等しいコルモゴロフ長さを特徴とする高速バイオリアクタで4時間にわたって生産する方法(HS)。
【0067】
このように、細胞外小胞の特徴付けに従来用いられている生物学的マーカーの存在が観察された。本発明の方法または従来の生産方法によって生産した細胞外小胞の間で共通するマーカー(CD63、CD9、CD81、lamp2およびTSG101)の有無および量はほぼ同じである。結論として、本発明による方法によって生産される細胞外小胞は、先行技術の方法によって生産される細胞外小胞とほぼ同じプロテオミクスプロファイルを有する。細胞外小胞の特徴付けに従来用いられているマーカーの有無および量によって特徴付けられるプロテオミクスプロファイルはほぼ同じプロテオミクスプロファイルであると考えられる。
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