(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】血圧測定システム及びそれを利用した血圧測定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20230519BHJP
A61B 5/021 20060101ALI20230519BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
A61B5/022 400E
A61B5/021
A61B5/02 310J
A61B5/02 310A
(21)【出願番号】P 2021552933
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(86)【国際出願番号】 KR2020002728
(87)【国際公開番号】W WO2020180039
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0025830
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515273368
【氏名又は名称】チャームケア・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドン ファ
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0325398(US,A1)
【文献】特開平07-308295(JP,A)
【文献】特開2006-311951(JP,A)
【文献】特開2015-077229(JP,A)
【文献】特開2002-209859(JP,A)
【文献】特開平04-259448(JP,A)
【文献】特開平06-296591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02 - 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動脈波を測定する脈波測定センサ部と、
前記脈波測定センサ部で検出される第1及び第2の動脈波を利用して血圧を算出する血圧算出部とを含む血圧測定システムであり、
前記第1の動脈波は、身体の所定部位
において等圧下で測定される動脈波であり、前記第2の動脈波は、前記所定部位とは異なる部位に変動圧力が加えられた状態で測定される動脈波であり、
前記血圧算出部は、
前記第2の動脈波の測定の際、前記変動圧力による動脈波の遮断時間を基準に、前記第1の動脈波と前記第2の動脈波の同一時間地点が重なるように前記第1の動脈波の振幅を補正し、
振幅が補正された前記第1の動脈波を前記第2の動脈波にマッピングしたマッピング動脈波を算出し、
前記マッピング動脈波に含まれる、振幅が補正された前記第1の動脈波を利用して前記血圧を算出することを特徴とする血圧測定システム。
【請求項2】
前記脈波測定センサ部は、
前記第1の動脈波を測定する第1のセンサと、
前記第2の動脈波を測定する第2のセンサとを含むことを特徴とする請求項1に記載の血圧測定システム。
【請求項3】
前記第2のセンサによって動脈波の測定が行われる部位に前記変動圧力を加えるための加圧ユニットをさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の血圧測定システム。
【請求項4】
前記加圧ユニットは、
被検部を引き締めるための引き締め器と、空気袋に空気を注入するためのエアポンプと、熱膨張部材と、形状記憶合金とのうち何れか1つを含むことを特徴とする、請求項3に記載の血圧測定システム。
【請求項5】
前記加圧ユニットは、
前記空気袋へ空気を案内する通路と、前記空気袋の空気を排出するエア排出口とのうち少なくとも1つを開閉するためのバルブをさらに含むことを特徴とする、請求項4に記載の血圧測定システム。
【請求項6】
前記第2のセンサは、前記加圧ユニットが昇圧又は減圧される過程で前記第2の動脈波を測定することを特徴とする、請求項3乃至5のうち何れか一項に記載の血圧測定システム。
【請求項7】
前記第1のセンサ及び前記第2のセンサは、圧力センサと、光センサと、血管のインピーダンスを測定するインピーダンスセンサとのうち何れか1つを含むことを特徴とする、請求項2に記載の血圧測定システム。
【請求項8】
前記圧力センサは、空気圧センサと、フィルム型圧力センサと、ストレインゲージ(Strain Gauge)とのうち何れか1つを含むことを特徴とする、請求項7に記載の血圧測定システム。
【請求項9】
前記第1のセンサ及び前記第2のセンサは、互いに異なる部位で同時に前記第1の動脈波及び前記第2の動脈波をそれぞれ測定することを特徴とする、請求項2に記載の血圧測定システム。
【請求項10】
前記血圧算出部は、
前記マッピング動脈波に含まれる、振幅が補正された前記第1の動脈波において、最高値を最高血圧に決定し、最低値を最低血圧に決定することを特徴とする、請求項1に記載の血圧測定システム。
【請求項11】
2つの動脈波を測定する脈波測定センサ部及び前記
脈波測定センサ部で測定された第1及び第2の動脈波を利用して血圧を算出する血圧算出部を含む血圧測定システムによって行われる血圧算出方法であり、
前記第1の動脈波は、身体の所定部位
において等圧下で測定される動脈波であり、前記第2の動脈波は、前記所定部位とは異なる部位に変動圧力が加えられた状態で測定される動脈波であり、
前記血圧算出部が、
前記第2の動脈波の測定の際、前記変動圧力による動脈波の遮断時間を基準に、前記第1の動脈波と前記第2の動脈波の同一時間地点が重なるように前記第1の動脈波の振幅を補正し、振幅が補正された前記第1の動脈波を前記第2の動脈波にマッピングしたマッピング動脈波を算出し、前記マッピング動脈波に含まれる、振幅が補正された前記第1の動脈波を利用して前記血圧を算出するステップを含むことを特徴とする血圧算出方法。
【請求項12】
前記脈波測定センサ部が、互いに異なる部位で同時に前記第1の動脈波及び前記第2の動脈波をそれぞれ測定する動脈波測定ステップをさらに含むことを特徴とする、請求項11に記載の血圧算出方法。
【請求項13】
前記動脈波測定ステップは、
前記第2の動脈波が測定される部位の圧力が昇圧又は減圧される過程で前記第2の動脈波を測定することを特徴とする、請求項12に記載の血圧算出方法。
【請求項14】
前記血圧算出ステップは、
前記マッピング動脈波に含まれる、振幅が補正された前記第1の動脈波において、最高値を最高血圧に決定し、最低値を最低血圧に決定することを特徴とする、請求項11に記載の血圧算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧計及び血圧測定方法に関し、さらに詳しくは、最小1周期の動脈波を検出し、1周期の動脈波だけでも高速で血圧値を算出することができる血圧測定システム及びそれを利用した血圧測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、血液が血管の壁に及ぼす圧力を計ったものを血圧と言い、心臓は1分に約60~80回収縮と弛緩を繰り返す。心臓が収縮して血を押し出す際に血管に及ぶ圧力を「収縮期血圧」と言い、最も高いため「最高血圧」と言う。また、心臓が弛緩しながら血液を受け入れる際の血管の圧力を「拡張期血圧」と言い、最も低いため「最低血圧」と言う。
【0003】
通常、正常人の血圧は、収縮期血圧が120mmHgで、拡張期血圧は80mmHgである。韓国の成人4人のうち1人以上が高血圧に当たり、40歳以降からはその割合が急激に増加する傾向を示しており、その反対に低血圧に分類された患者もいる。
【0004】
上記高血圧が問題となるのは、高血圧を適切に管理せず放置すれば、眼疾患、腎臓疾患、動脈疾患、脳疾患、心臓疾患のような生命を脅かす他の合併症の原因となり得るため、合併症の危険性があるか、合併症を持つ患者の場合、持続的な血圧の測定と管理が行われなければならない。
【0005】
上述した高血圧など成人病にかかわる疾患と健康への関心が増加することにより、様々な種類の血圧測定装置が開発されている。血圧測定方式には、聴診(Korotkoff sounds)方式、オシロメトリック(oscillometric)方式、及びトノメトリック(tonometric)方式などがある。
【0006】
上記聴診方式は、典型的な圧力測定方式であり、動脈血が通る身体部位に十分な圧力を加えて血液の流れを遮断した後に減圧する過程で、初めで脈拍音が聞こえる瞬間の圧力を収縮期血圧(systolic pressure)として測定し、脈拍音が消える瞬間の圧力を拡張期血圧(diastolic pressure)として測定する方法である。
【0007】
そして、上記オシロメトリック方式とトノメトリック方式は、デジタル化された血圧測定装置に適用される方式である。上記オシロメトリック方式は、聴診方式と同様に、動脈の血流が遮断されるように動脈血の通る身体部位を十分に加圧した後、一定速度で減圧する過程、又は上記身体部位を一定速度で増圧されるように加圧する過程で発生する脈波を感知することによって収縮期血圧と拡張期血圧を測定する。
【0008】
ここで、脈波の振幅が最大の瞬間と比べて一定レベルの際の圧力を収縮期血圧又は拡張期血圧として測定しても良く、上記脈波振幅の変化率が急激に変化する際の圧力を収縮期血圧又は拡張期血圧として測定しても良い。
【0009】
そして、加圧後に一定速度で減圧する過程においては、上記脈波の振幅が最大の瞬間よりも所定時間先に収縮期血圧が測定され、上記脈波の振幅が最大の瞬間よりも所定時間後に拡張期血圧が測定される。その反対に、一定速度で増圧(昇圧)する過程においては、上記脈波の振幅が最大の瞬間よりも後に収縮期血圧が測定され、上記脈波の振幅が最大の瞬間よりも先に拡張期血圧が測定される。
【0010】
上記トノメトリック方式は、動脈の血流を完全には遮断しない大きさの一定圧力を身体部位に加え、このとき発生する脈波の大きさ及び形態を利用して連続的に血圧を測定できる方式である。
【0011】
上述したように様々な方式で血圧を測定する装置、即ち血圧計は、健康指数の基本となる血圧を測定するための最も基本的な医療機器であり、一般の病院には殆ど必須具備されているだけでなく、家庭やスポーツセンタなどでも個人の血圧測定のために多く使用されている。
【0012】
現在使用されている殆どの血圧計は、心臓の高さと同じくらいの上腕で測定するものとなっているが、携帯及び測定の便利さのために手首や指などのような身体部位で血圧を測定できる製品も開発されている。上述した手首血圧計又は指血圧計は、上腕血圧計と比べてサイズが小さく、携帯が便利で、随時測定に容易であるという長所がある。
【0013】
一方、動脈波を利用して血圧を測定する従来の血圧計、例えばオシロメトリック方式の血圧計は、多くの周期の動脈パルス、即ち動脈波を検出して血圧を測定するものであり、血圧の測定に40秒以上所要される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、血圧を測定する血圧計に関するものであり、複数の種類、例えば2つのタイプの動脈波から最小1周期(1 period)の動脈波信号を検出し、1周期の動脈波だけでも血圧値を速やかに算出することができる血圧測定システム及びそれを利用した血圧測定方法を提供するのにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、動脈波を測定するための脈波測定センサ部と、当該脈波測定センサ部で検出される動脈波、例えば互いに異なる2つの動脈波から血圧を算出する血圧算出部とを含む血圧測定システムであり、当該脈波測定センサ部は、1つの動脈波を等圧下で測定し、他の1つの動脈波を変動圧下で測定し、当該血圧算出部は、変動圧下で測定される第2の動脈波に等圧下で測定される第1の動脈波をマッピングすることでマッピング動脈波を算出し、当該マッピング動脈波を利用して血圧を計算する血圧測定システムを提供する。つまり、当該脈波測定センサ部は、動脈で複数の動脈波を測定する動脈波検出用の構成である。
【0016】
当該脈波測定センサ部は、当該第1の動脈波を測定する第1のセンサと、当該第2の動脈波を測定する第2のセンサとを含んでいても良い。
【0017】
当該血圧測定システムは、当該第2のセンサによって動脈波の測定が行われる部位に圧力を加えるための加圧ユニットをさらに含んでいても良い。当該加圧ユニットは、被検部を引き締めるための引き締め器と、空気袋に空気を注入するためのエアポンプと、熱膨張部材と、形状記憶合金とのうち何れか1つを含んでいても良い。
【0018】
当該加圧ユニットは、当該空気袋へ空気を案内する通路と、当該空気袋の空気を排出するエア排出口とのうち少なくとも1つを開閉するためのバルブをさらに含んでいても良い。
【0019】
そして、当該第2のセンサは、当該加圧ユニットが昇圧又は減圧される過程で当該第2の動脈波を測定しても良い。より具体的に、当該第2のセンサは、一定の割合にて当該加圧ユニットが昇圧又は減圧される過程で当該第2の動脈波を測定しても良い。
【0020】
当該第1のセンサ及び第2のセンサは、圧力センサと、光センサと、血管のインピーダンスを測定するインピーダンスセンサとのうち何れか1つを含んでいても良い。ここで、当該圧力センサは、空気圧センサと、フィルム型圧力センサとのうち何れか1つを含んでいても良い。
【0021】
当該第1のセンサ及び第2のセンサは、互いに異なる位置で同時に当該第1の動脈波及び第2の動脈波をそれぞれ測定する。
【0022】
当該血圧算出部は、当該第2の動脈波の測定の際、動脈波の遮断時間を基準に、当該第2の動脈波に第1の動脈波をマッピングすることで当該マッピング動脈波を算出する。より具体的に、当該血圧算出部は、当該マッピング動脈波の最高値を最高血圧に決定し、当該マッピング動脈波の最低値を最低血圧に決定する。
【0023】
本発明の他の一態様は、動脈波を検出する脈波測定センサ部を有する血圧測定システムによる血圧測定方法であり、血圧を算出するプロセッサ(processor)が、変動圧下で測定される第2の動脈波に等圧下で測定される第1の動脈波をマッピングすることでマッピング動脈波を算出し、当該マッピング動脈波を利用して血圧を計算する血圧算出ステップを含む血圧測定方法を提供する。
【0024】
当該脈波測定センサ部が、互いに異なる位置で同時に当該第1の動脈波及び第2の動脈波をそれぞれ測定する動脈波測定ステップをさらに含んでいても良い。
【0025】
当該動脈波測定ステップは、第2の動脈波が測定される部位の圧力が昇圧又は減圧される過程で当該第2の動脈波を測定しても良い。より具体的に、当該動脈波測定ステップは、第2の動脈波が測定される部位の圧力が一定の割合で昇圧又は減圧される過程で当該第2の動脈波を測定する。
【0026】
当該第2の動脈波の測定の際、動脈波の遮断時間を基準に、当該第2の動脈波に第1の動脈波をマッピングすることで当該マッピング動脈波を算出する。より具体的に、当該血圧算出ステップは、当該マッピング動脈波の最高値を最高血圧に決定し、当該マッピング動脈波の最低値を最低血圧に決定する。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、互いに異なる部位で検出される2つの動脈波から血圧値を計算して出力することができるので、従来のオシロメトリック方式の血圧計が血圧の測定に40秒以上所要されるのに対し、1周期以上の動脈波、特にただ1周期の動脈波だけでも血圧を計算して速やかに算出することができ、血圧の計算に所要される時間が格段に減少され、複雑な血圧計算アルゴリズムが求められず、血圧計算方式が単純化されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の特徴及び長所は、後述する本発明の実施例に関する詳細な説明と共に、次に説明する図面を参照することでより理解し易くなる。
【0029】
【
図1】本発明に係る血圧測定システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明に係る血圧測定システムの一実施例を概略的に示す図である。
【
図3】
図2に示された血圧測定システムによる血圧測定方式を示す図である。
【
図4】本発明に係る血圧測定システムの他の実施例を概略的に示す図である。
【
図5】
図4に示された血圧測定システムによる血圧測定方式を示す図である。
【
図6】本発明に係る血圧測定システムのまた他の実施例を概略的に示す図である。
【
図7】
図6に示された血圧測定システムによる血圧測定方式を示す図である。
【
図8】本発明に係る血圧測定システムのまた他の実施例を概略的に示す図である。
【
図9】本発明に係る血圧測定システムのまた他の実施例を概略的に示す図である。
【
図10】本発明の一実施例に係る血圧測定方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図11】本発明に係る血圧測定方法を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の目的を具体的に実現できる本発明の望ましい実施例が添付された図面を参照しながら説明する。本実施例を説明するにおいて、同じ構成に対しては同じ名称及び同じ符号を使用することとし、それによる付加説明は下記では省略する。
【0031】
本明細書において使用される用語は、本発明の実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定する意図のものではない。例えば、「第1」と「第2」などのように序数を含む用語は、同じ名称の構成要素を説明する際、これらを互いに区分するために使用され得るが、構成要素の数を定義したり、限定するものではない。
【0032】
そして、ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いるか、「接続されて」いると言及された際は、該他の構成要素に直接連結あるいは接続されていても良いが、中間に他の構成要素が存在する連結関係、即ち間接的に連結される関係も含むと理解されなければならない。
【0033】
本明細書において、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを意味し、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものの存在、即ち付加可能性を排除しないと理解されなければならない。
【0034】
図1乃至
図9を参照すると、本発明の実施例は、動脈で動脈波を測定する脈波測定センサ部100と、上記脈波測定センサ部100で検出される動脈波から血圧を算出する血圧算出部200とを含む血圧測定システム及びそれを利用した血圧測定方法に関する。上記脈波測定センサ部100は、動脈で複数の種類の動脈波、例えば2つの動脈波を検出する。そして、上記血圧算出部200は、上記脈波測定センサ部100によって検出される互いに異なる動脈波、例えば後述する2つの動脈波を利用して血圧を算出する。
【0035】
本発明の実施例において、上記脈波測定センサ部100は、1つの動脈波を等圧(動脈に加えられる外力がないか、一定の状態)下で測定し、他の1つの動脈波を変動圧、即ち圧力変動環境(動脈に加えられる外力が変動する状態)下で測定する。例えば、上記脈波測定センサ部100は、等圧下で測定される動脈波(第1の動脈波)と、変動圧下で測定される動脈波(第2の動脈波)とを同時に検出する。つまり、上記脈波測定センサ部は、互いに異なる環境下において複数の動脈波を検出する。
【0036】
上記脈波測定センサ部100は、身体の所定部位で動脈波を検出するセンサである。より具体的に説明すると、上記脈波測定センサ部100は、上述した第1の動脈波を測定する第1のセンサ110と、上記第2の動脈波を測定する第2のセンサ120とを含んでいても良い。
【0037】
上記第1のセンサ110及び第2のセンサ120は、身体の互いに異なる位置で同時に上記第1の動脈波及び第2の動脈波をそれぞれ測定する。例えば、上記第1のセンサ110は、一定の圧力で皮膚に接触した状態で当該部位の動脈波、即ち第1の動脈波を検出する。そして、上記第2のセンサ120は、第1のセンサ110の測定位置とは異なる部位で動脈波(第2の動脈波)を検出する。このとき、上記第2のセンサ120は、変動圧力、即ち第2のセンサによる測定位置を押す力(圧力)が変化される環境で第2の動脈波を検出する。
【0038】
上記第1のセンサ110及び第2のセンサ120は、圧力センサと、光学式心拍センサー(PPGセンサ)などのような光センサと、血管のインピーダンス(Impedance)を測定するインピーダンスセンサとのうち何れか1つを含んでいても良い。ここで、上記圧力センサは、空気圧センサと、フィルム型圧力センサとのうち何れか1つを含んでいても良い。上述したセンサ自体は公知のものであるので、それに関する付加説明は省略する。
【0039】
そして、上記血圧算出部200は、変動圧下で測定される第2の動脈波に等圧下で測定される第1の動脈波をマッピングすることでマッピング動脈波を算出(収得)し、上記マッピング動脈波を利用して血圧を計算する構成要素である。
【0040】
上記血圧測定システム10は、上記第2のセンサ120によって動脈波の測定が行われる部位(上述した第2のセンサの測定位置)に圧力を加えるための加圧ユニット300をさらに含んでいても良い。後述する第1の実施例のように、被検者が自ら第2のセンサによる測定部位を徐々に加圧したり、押す力を小さくしていきながら手作業で変動圧力環境を具現しても良く、上述した加圧ユニット300によって自動で変動圧力が具現されても良い。
【0041】
上記加圧ユニット300は、被検部を引き締めるための引き締め器(例えば、韓国公開特許第10-2018-0019325号及び第10-2017-0042118号に開示されている例などのような手首引き締め装置)と、空気袋310に空気を注入するためのエアポンプと、熱膨張部材と、形状記憶合金とのうち何れか1つを含んでいても良い。
【0042】
上記加圧ユニット300は、上記空気袋310へ空気を案内する通路と、上記空気袋の空気を排出するエア排出口とのうち少なくとも1つを開閉するためのバルブ(図示せず)をさらに含んでいても良い。
【0043】
上記第2のセンサ120は、上記加圧ユニット300が昇圧又は減圧される過程で上記第2の動脈波を測定しても良い。上記第2のセンサ120は、一定の割合にて上記加圧ユニット300が昇圧又は減圧される過程で上記第2の動脈波を測定しても良い。例えば、空気袋310がエアポンプにより徐々に膨張したり、エアポンプにより膨張した空気袋310から徐々に排気(Air Discharge)が行われる途中で上記第2のセンサ120による第2の動脈波の測定が行われる。
【0044】
上記血圧算出部200は、上記第2の動脈波の測定の際、動脈波の遮断時間(
図11の最も上に示すグラフにおいてaとb地点の時間)を基準に、上記変動圧下で測定される動脈波(第2の動脈波)に等圧下で測定される動脈波(第1の動脈波)をマッピングすることで上記マッピング動脈波を算出し、上述したマッピング動脈波を利用して血圧を算出する。より具体的に、上記血圧算出部は、上記マッピング動脈波の最高値を最高血圧に決定し、上記マッピング動脈波の最低値を最低血圧に決定する。
【0045】
上記脈波測定センサ部100、即ち第1のセンサ110及び第2のセンサ120は、プロセッサ(Processor)、即ち制御部Cにより制御され、上記加圧ユニット300も上述した制御部Cにより制御されることによって、後述する空気袋の空気充填及び排気が行われても良い。そして、上述した方式で算出された血圧値、例えば最高血圧及び最低血圧は、デジタルモニタなどのような血圧出力部400に表示される。
【0046】
以下、
図2乃至
図9を参照しながら、本発明に係る血圧測定システムの具体的な実施例を説明する。
【0047】
先ず、
図2及び
図3を参照すると、本発明に係る血圧測定システムの第1の実施例10は、指で動脈の脈波、即ち動脈波を検出する血圧計であって、上述した第1のセンサ110が光センサからなり、上述した第2のセンサ120がフィルム型圧力センサからなる例である。上記第1のセンサ110は、指パッド101に配置されても良い。
【0048】
被検者は、第1のセンサ110(光センサ)が配置された部位に一本の指F1を載せて一定の圧力で接触させ、他の指F2で第2のセンサ120(フィルム型圧力センサ)が配置された部位を徐々に強く押す。このような過程中において、上記第1のセンサ110は等圧下で第1の動脈波を検出し、上記第2のセンサ120は変動圧下で第2の動脈波(変動圧動脈波)を検出する。
【0049】
上記指パッド101は、指周りを巻いて固定可能なバンドタイプで提供されても良く、上記第2のセンサ120もバンドタイプで指に固定されても良い。
【0050】
次いで、
図4及び
図5を参照すると、本発明に係る血圧測定システムの第2の実施例10Aは、指で動脈波を検出する血圧計であって、上述した第1のセンサ110が光センサからなり、上述した第2のセンサ120が空気圧センサからなる例であり、上記第2のセンサ120には空気袋310が備えられる。上記第1のセンサ110及び第2のセンサ120は、上述した実施例のようにバンドタイプで指を巻いて固定されても良い。
【0051】
被検者は、第1のセンサ110(光センサ)が配置された部位に一本の指F1を載せて一定の圧力で接触させ、他の指F2で第2のセンサ120(空気圧センサ)が配置された空気袋310を押す。上記空気袋310には空気が入れられ、被検者は上述した他の指F2で上記空気袋310を所定圧力、例えば300mmHgの圧力になるように押している状態で上記空気袋310のエアホール311から排気が行われ、このような排気過程(減圧過程)で上記第2のセンサ120(空気圧センサ)による変動圧動脈波、即ち第2の動脈波の検出が行われる。
【0052】
そして、上述した方式で第1の実施例10及び第2の実施例10Aにより第1の動脈波及び第2の動脈波(変動圧動脈波)の測定が行われると、上記血圧算出部200が、上記第2の動脈波の測定の際、動脈波の遮断時間を基準に、上記変動圧下で測定される動脈波(第2の動脈波)に等圧下で測定される動脈波(第1の動脈波)をマッピングすることで上記マッピング動脈波を算出し、上述したマッピング動脈波を利用して血圧を算出する。
【0053】
図6及び
図7を参照すると、本発明に係る血圧測定システムの第3の実施例10Bは、上腕カフ型血圧計であって、第1の動脈波を検出するための第1のセンサ110と、変動圧動脈波、即ち第2の動脈波を検出するための第2のセンサ120とを含み、上記第1のセンサ110は光センサからなり、第2のセンサ120は空気圧センサからなる例である。
【0054】
上記第1のセンサ110及び第2のセンサ120は、上腕に着用されるカフベルト500に備えられる。より具体的に説明すると、上記カフベルト500には空気袋310が備えられ、上記空気袋310は手動又は自動のポンプ機構(エアポンプ)により空気充填されても良い。そして、上記第2のセンサ120、即ち空気圧センサは上記空気袋310に備えられ、上記第1のセンサ110は空気袋310の外部領域、即ち空気袋310の圧力による影響を受けない部位に備えられる。
【0055】
上記カフベルト500に備えられる所謂マジックテープと呼ばれるベルクロ510やボタン、その他のベルト固定手段を利用して上述した上腕カフ型血圧計が被検者の上腕に着用された後、被検者の上腕が圧迫されるよう上記空気袋310に所定圧力まで空気が入れられる。その後、上記空気袋310の排気により一定の割合で徐々に減圧が行われ、この排気過程において、第1のセンサ110は一定の圧力下で第1の動脈波(光動脈波)を検出し、同時に上記第2のセンサ120(空気圧センサ)による変動圧動脈波、即ち第2の動脈波の検出が行われる。
【0056】
そして、上述した方式で第3の実施例により第1の動脈波及び第2の動脈波(変動圧動脈波)の測定が行われると、上記血圧算出部200が、上記第2の動脈波の測定の際、動脈波の遮断時間を基準に、上記変動圧下で測定される動脈波(第2の動脈波)に等圧下で測定される動脈波(第1の動脈波)をマッピングすることで上記マッピング動脈波を算出し、上述したマッピング動脈波を利用して血圧を計算する。
【0057】
図8を参照すると、本発明に係る血圧測定システムの第4の実施例は、手首血圧計10Cであって、第1の動脈波を検出するための第1のセンサ110と、変動圧動脈波、即ち第2の動脈波を検出するための第2のセンサ120とを含み、上記第1のセンサ110は光センサからなり、第2のセンサ120は空気圧センサからなる例である。
【0058】
上記第1のセンサ110及び第2のセンサ120は、手首に着用される手首カフ600に備えられる。より具体的に説明すると、上記手首カフ600には空気袋310が備えられ、上記空気袋310は手動又は自動ポンプ機構(エアポンプ)により空気充填されても良い。そして、上記第2のセンサ120、即ち空気圧センサは上記空気袋310に備えられ、上記第1のセンサ110は空気袋310の外部領域、即ち空気袋310の圧力による影響を受けない部位、例えば血圧値を出力するディスプレイ装置(血圧出力部)用ケース610の下側に備えられる。上記手首カフ600は、マジックテープやボタンやバックルなどのストラップ着脱手段620によって連結される。
【0059】
上述した手首血圧計10Bが被検者の手首に着用された後、被検者の手首が局所的に圧迫(例えば、橈骨動脈や尺骨動脈が通る部位の圧迫)されるよう上記空気袋310に所定圧力まで空気が入れられる。その後、上記空気袋310の排気により一定の割合で徐々に減圧が行われ、この排気過程において、第1のセンサ110は一定の圧力下で第1の動脈波(光動脈波)を検出し、同時に上記第2のセンサ120(空気圧センサ)による変動圧動脈波、即ち第2の動脈波の検出が行われる。
【0060】
そして、上述した方式で第4の実施例により第1の動脈波及び第2の動脈波(変動圧動脈波)の測定が行われると、上記血圧算出部200が、上記第2の動脈波の測定の際、動脈波の遮断時間を基準に、上記変動圧下で測定される動脈波(第2の動脈波)に等圧下で測定される動脈波(第1の動脈波)をマッピングすることで上記マッピング動脈波を算出し、上述したマッピング動脈波を利用して血圧を計算する。
【0061】
次いで、
図9を参照すると、本発明に係る血圧測定システムの第5の実施例10Dは、患者監視装置に具現された血圧測定システムであって、監視モニタ700に連結され、互いに別途分離された酸素飽和度測定器800と、上腕カフ500とを含み、上記上腕カフ500には、空気袋310と、空気圧センサ120とが備えられる。
【0062】
上記酸素飽和度測定器800は、酸素飽和度を測定するためのセンサ、例えば光センサ(第1のセンサ110)を利用して第1の動脈波を測定し、上記上腕カフ500は、被検者の上腕に着用されるベルト(Belt)であって、上腕カフ500、即ちカフベルトに備えられる空気袋及び空気圧センサにより、上述した第3の実施例と同じ方式で変動圧動脈波(第2の動脈波)が測定される。つまり、本実施例においては、上記上腕カフ500に空気袋及び第2のセンサが備えられるが、第1のセンサはなく、酸素飽和度測定器が第1のセンサの機能をする。
【0063】
そして、上述した方式で第5の実施例により第1の動脈波及び第2の動脈波(変動圧動脈波)の測定が行われると、上記血圧算出部200が、上記第2の動脈波の測定の際、動脈波の遮断時間を基準に、上記変動圧下で測定される動脈波(第2の動脈波)に等圧下で測定される動脈波(第1の動脈波)をマッピングすることで上記マッピング動脈波を算出し、上述したマッピング動脈波を利用して血圧を計算する。
【0064】
図10を参照すると、動脈波を検出する脈波測定センサ部を有する血圧測定システムによる血圧測定方法の一実施例は、血圧を算出するプロセッサ(processor)、即ち制御部C、より具体的には、上述した血圧算出部200が、変動圧下で測定される第2の動脈波に等圧下で測定される第1の動脈波をマッピングすることでマッピング動脈波を算出し、上記マッピング動脈波を利用して血圧を計算する血圧算出ステップを含む。
【0065】
上記マッピング動脈波の算出は、上記第2の動脈波の測定の際、動脈波の遮断時間を基準に行われる。言い換えれば、本実施例は、上記第2の動脈波の測定の際、動脈波の遮断時間を基準に、上記変動圧下で測定される第2の動脈波に等圧下で測定される第1の動脈波をマッピングすることで上記マッピング動脈波を算出し、上述したマッピング動脈波を利用して血圧を計算する。
【0066】
もちろん、上述した血圧算出のために、上述した脈波測定センサ部100により人体の互いに異なる位置で同時に上記第1の動脈波及び第2の動脈波をそれぞれ測定する動脈波測定ステップが行われる。
【0067】
上記動脈波測定ステップは、第2の動脈波が測定される部位の圧力が昇圧又は減圧される過程で上記第2の動脈波を測定しても良い。より具体的に、上記動脈波測定ステップは、第2の動脈波が測定される部位の圧力が一定の割合で昇圧又は減圧される過程で上記第2の動脈波を測定する。
【0068】
そして、上記血圧算出ステップは、上述したマッピング動脈波の最高値を最高血圧に決定し、マッピング動脈波の最低値を最低血圧に決定する。
【0069】
図11を参照すると、上述した第2のセンサ120により測定される信号、例えば変動圧力が、圧力に対する変動圧動脈波(第2の動脈波)に変換され、第1のセンサ110では一定の圧力における動脈波、即ち第1の動脈波が測定される。
【0070】
図11に示すグラフで最も上のグラフは、減圧過程、例えば上述した空気袋に充填された空気が排気される過程において上述した空気圧センサなどのような第2のセンサで測定される圧力であって、空気袋自体の圧力と血管の圧力が共に反映されたグラフであり、a及びb地点は動脈波が遮断される地点である。
【0071】
そして、
図11の上から2つ目のグラフは、第1のセンサにより測定される信号、即ち第1の動脈波を示すグラフである。
【0072】
次いで、
図11の最も下に示すグラフは、上述したマッピング動脈波を示すグラフであって、最も上のグラフ(第2の動脈波グラフ)のaとb地点が中間のグラフ(第1の動脈波グラフ)の同一時間地点(cとd地点)に重なるように2つのグラフを重ねて示したグラフである。このようなマッピング動脈波において最高値が最高血圧に決定され、マッピング動脈波の最低値が最低血圧となる。なお、2つの動脈波のマッピングの際、第2の動脈波のaとb地点に第1の動脈波のcとd地点が正確に重ねられるために、第1の動脈波の振幅が補正される。
【0073】
上述したように、本発明の実施例は、上述した第1の動脈波及び第2の動脈波を基に、等圧下で測定される第1の動脈波と変動圧下で測定される変動圧動脈波とをマッピングしたマッピング動脈波を利用して血圧の計算が行われ、マッピングの基準としては、動脈波の遮断地点、より具体的には、動脈波の遮断時間が使用される。
【0074】
より具体的に説明すると、上記制御部C、特に血圧算出部200は、上述したマッピング動脈波の最高値を最高血圧に、マッピング動脈波の最低値を最低血圧に決定する。
【0075】
以上のように本発明に係る実施例を調べたが、上記に説明した実施例の他にも、本発明がその趣旨や範疇から離れることなく他の特定の形態に具体化され得るという事実は、当該技術において通常の知識を有する者には自明なことである。
【0076】
それゆえ、上述した実施例は制限的なものではなく例示的なものとされるべきであり、よって、本発明は、上述した説明に限定されることなく、添付された請求項の範疇及びその同等範囲内において変更されても良い。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、人体の血圧を測定するための血圧測定装置であって、医療機器分野、特に血圧計に係わる技術分野に利用可能な発明であり、本発明によれば、短い時間に検出される信号を利用して速やかで且つ正確に血圧値を算出することができる。