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特許7281781マイクロホンモジュール及び該マイクロホンモジュールの検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】マイクロホンモジュール及び該マイクロホンモジュールの検査装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 29/00 20060101AFI20230519BHJP
【FI】
H04R29/00 320
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019042458
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2020145637
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】竹本 誠
【審査官】辻 勇貴
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-070475(JP,A)
【文献】国際公開第2010/026724(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0198276(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロホン素子とデジタルシグナルプロセッサを備えたマイクロホンモジュールの前記デジタルシグナルプロセッサの性能を検査するマイクロホンモジュールの検査装置であって、
有響空間内に配置されるスピーカと、
前記有響空間内に前記スピーカの放音方向に向けて配置される検査用マイクロホン素子と、
前記スピーカにテスト用信号を出力する信号発生部と、
前記検査用マイクロホン素子からの音声データのHi/Lowに応じてオン/オフするスイッチング素子と、
前記スイッチング素子の出力端とグランドとの間に介挿される第3の抵抗と、
を備える、
マイクロホンモジュールの検査装置。
【請求項2】
前記スイッチング素子は、NPN型のトランジスタであって、ベース端子が前記検査用マイクロホン素子のデータラインに接続され、コレクタ端子が電源電圧ラインに接続され、エミッタ端子が前記第3の抵抗を介してグランドに接続される、
請求項1に記載のマイクロホンモジュールの検査装置。
【請求項3】
マイクロホン素子とデジタルシグナルプロセッサを備えたマイクロホンモジュールの前記デジタルシグナルプロセッサの性能を検査するマイクロホンモジュールの検査装置であって、
有響空間内に配置されるスピーカと、
前記有響空間内に前記スピーカの放音方向に向けて配置される検査用マイクロホン素子と、
前記スピーカにテスト用信号を出力する信号発生部と、
前記検査用マイクロホン素子からの音声データのHi/Lowに応じてオン/オフするスイッチング素子と、
前記スイッチング素子の出力端と接続される第3の抵抗と、を備え、
前記スイッチング素子は、PNP型のトランジスタであって、ベース端子が前記検査用マイクロホン素子のデータラインに接続され、コレクタ端子がグランドに接続され、エミッタ端子が前記第3の抵抗を介して電源電圧ラインに接続される
イクロホンモジュールの検査装置。
【請求項4】
クロックを受信し、音声データを出力するマイクロホン素子と、
前記マイクロホン素子に前記クロックを供給し、前記マイクロホン素子から出力される音声データを取り込み、指向性制御、周波数特性制御、雑音抑制、レベル調整、出力フォーマット変換を含む各種信号処理を行うデジタルシグナルプロセッサと、
を備えたマイクロホンモジュールであって、
前記マイクロホン素子から前記デジタルシグナルプロセッサへの音声データ伝送用のデータライン上に設けられるデータ用テストポイントと、
前記デジタルシグナルプロセッサから前記マイクロホン素子へのクロック伝送用のクロックライン上に設けられるクロック用テストポイントと、
前記データラインとグランドとの間に介挿される第1の抵抗と、
前記第1の抵抗より前記デジタルシグナルプロセッサ側で、前記マイクロホン素子と前記デジタルシグナルプロセッサとの間の前記データライン上に挿入される第2の抵抗と、
を備え、
前記デジタルシグナルプロセッサの検査時に、
前記データ用テストポイントが、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のマイクロホンモジュールの検査装置の前記スイッチング素子の出力端に接続され、
前記クロック用テストポイントが、前記マイクロホンモジュールの検査装置の前記検査用マイクロホン素子のクロックラインに接続される、
マイクロホンモジュール。
【請求項5】
前記マイクロホン素子の出力ドライブ電流は、電源電圧を前記第2の抵抗の抵抗値と請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のマイクロホンモジュールの検査装置の前記第3の抵抗の抵抗値の和で除した値よりも大きい、
請求項4に記載のマイクロホンモジュール。
【請求項6】
前記第2の抵抗と前記第3の抵抗の組み合わせは、
前記第3の抵抗の抵抗値を、前記第2の抵抗の抵抗値と前記第3の抵抗の抵抗値の和で除した値に電源電圧を乗算して得られた電圧値がデジタル入力Lowレベルの最大値を超えない組み合わせである、
請求項5に記載のマイクロホンモジュール。
【請求項7】
前記第2の抵抗と前記第3の抵抗の組み合わせは、
前記第2の抵抗の抵抗値を、前記第2の抵抗の抵抗値と前記第3の抵抗の抵抗値の和で除した値に電源電圧を乗算して得られた電圧値がデジタル入力Hiレベルの最小値を下回らない組み合わせである、
請求項5に記載のマイクロホンモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロホンモジュール及び該マイクロホンモジュールの検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1つ以上のマイクロホン素子を用い、各マイクロホン素子の出力信号に対して、指向性制御、周波数特性制御、雑音抑制、レベル調整等の各を行って所望の特性を得ることができるマイクロホンモジュールがある。この種のマイクロホンモジュールにおける各種信号処理は、主にDSP(Digital Signal Processor、デジタルシグナルプロセッサ)によって行われる。マイクロホンモジュールは、小型化を目的として、マイクロホン素子及びDSPを1つの基板に実装する場合がある。
【0003】
一方、マイクロホンモジュールの検査装置として、装置そのものの小型化の要求から、密閉した有響空間内でスピーカを鳴動し、その音波によって検査するようにしたものがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
上述した有響空間でのマイクロホンモジュールの検査は、マイクロホン素子及びDSPが1つの基板に実装されたマイクロホンモジュールにおける、DSP単体の検査には不向きである。つまり、マイクロホン素子が出力レベル及び位相の特性を有しているため、有響空間でのマイクロホンモジュールの検査では、マイクロホン素子の特性を含めた結果としてDSPが検査されてしまうからである。
【0005】
マイクロホン素子及びDSPが1つの基板に実装させたマイクロホンモジュールでも、有響空間での検査を可能とする方法として、検査用のマイクロホン素子を別に設け、該マイクロホン素子に音波を入力し、その出力信号をもってDSPを検査する方法が考えられる。以下、この方法について、図9を参照して説明する。
【0006】
図9において、マイクロホンモジュール3は、2つのMEMS(Micro Electro Mechanical System)マイクロホン(マイクロホン素子)101と、DSP104と、アンプ105と、PDM clock用テストポイント106と、PDM data用テストポイント107と、Microphone Output端子108と、抵抗109と、MEMSマイクロホン電源用テストポイント110と、スイッチ111と、を備える。
【0007】
DSP104は、2つのMEMSマイクロホン101のそれぞれに共通するクロック(PDM clock)を供給し、また2つのMEMSマイクロホン101のそれぞれの出力信号(音声データ)を受け取り、それぞれの出力信号に対して、指向性制御、周波数特性制御、雑音抑制、レベル調整、出力フォーマット変換等の信号処理を行う。なお、PDMとは、パルス密度変調(Pulse Density Modulation)のことである。アンプ105は、DSP104のアナログ出力をマイクロホンモジュール3の所望のレベルにまで増幅し、Microphone Output端子108より出力する。
【0008】
PDM clock用テストポイント106は、2つのMEMSマイクロホン101のそれぞれとDSP104を結ぶPDM clockライン120上に設けられる端子である。PDM data用テストポイント107は、2つのMEMSマイクロホン101のそれぞれとDSP104を結ぶPDM dataライン121上に設けられる端子である。Microphone Output端子108は、アンプ105の出力信号を外部に取り出すための端子である。抵抗109は、2つのMEMSマイクロホン101それぞれに電圧を印加するためのものであり、一端が電源ライン122に接続され、他端が2つのMEMSマイクロホン101それぞれの電源入力端(図示略)に接続される。スイッチ111は、2つのMEMSマイクロホン101のそれぞれの電源入力端とGNDとの間に介挿される。
【0009】
一方、マイクロホンモジュール3の検査装置4は、信号発生部201と、アンプ202と、スピーカ203と、有響空間204と、検査装置用PDMインターフェースのMEMSマイクロホン(検査用マイクロホン素子)205と、を備える。アンプ202、スピーカ203及びMEMSマイクロホン205は、それぞれ2つずつある。2つのスピーカ203と2つのMEMSマイクロホン205は、1組ずつ有響空間204内に対向配置される。
【0010】
信号発生部201は、2つの音声帯域の信号を発生し、一方の音声帯域の信号が2つのアンプ202の一方で増幅され、他方の音声帯域の信号が2つのアンプ202の他方で増幅される。アンプ202は、スピーカ203を駆動できるレベルまで増幅する。スピーカ203は、有響空間204内でアンプ202からの信号により鳴動する。
【0011】
2つのMEMSマイクロホン205は、クロックライン(PDM clockライン120)とデータライン(PDM dataライン121)がそれぞれ共通化されており、クロックラインがマイクロホンモジュール3のPDM clock用テストポイント106に接続され、データラインがPDM data用テストポイント107に接続される。各MEMSマイクロホン205は、DSP104から出力されるクロックで駆動し、音声データを出力する。出力された音声データは、PDM data用テストポイント107を介してDSP104に入力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2010/026724号
【文献】特開平5-049097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した図9のマイクロホンモジュール3及びマイクロホンモジュール3の検査装置4では、マイクロホンモジュール3内のMEMSマイクロホン101の出力と、検査装置4内のMEMSマイクロホン205の出力が、PDM data用テストポイント107で衝突することによる不具合が生じる。図10は、PDM data用テストポイント107におけるオシロスコープの波形の一例を示す図である。同図では、横軸に時間、縦軸に出力電圧を示しており、3.3VのI/O電圧に対して該中点の電位が出力されており、後段のDSP104ではロジックレベルのHi又はLowを認識することができない。
【0014】
図9に戻り、マイクロホンモジュール3は、MEMSマイクロホン電源用テストポイント110と、このMEMSマイクロホン電源用テストポイント110をGNDに接続するためのスイッチ111とを有しており、マイクロホンモジュール3の検査時に、スイッチ111を操作して、MEMSマイクロホン電源用テストポイント110をGNDに接続する。これにより、MEMSマイクロホン101は、電源offの状態になり、データは出力されない。したがって、MEMSマイクロホン同士のdataの衝突が回避され、MEMSマイクロホン205のデータのみが有効となってDSP104を検査することが可能となる。
【0015】
しかしながら、MEMSマイクロホン101の電源ラインに抵抗109を介挿した場合、DSP104の検査時に、抵抗109には式(1)に示す電流が流れるため、マイクロホンモジュール3の正確な電流が測定できない他、マイクロホンモジュール3の実運用時に抵抗109による電圧降下により、MEMSマイクロホン101の印加電圧が低下するという課題が生ずる。
【0016】
【数1】
【0017】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、MEMSマイクロホン及びDSPを1つの基板に実装させたマイクロホンモジュールの回路構成を複雑にすることなく、該マイクロホンモジュールのDSPの性能を正確に検査することができるマイクロホンモジュール及び該マイクロホンモジュールの検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のマイクロホンモジュールの検査装置は、マイクロホン素子とデジタルシグナルプロセッサを備えたマイクロホンモジュールの前記デジタルシグナルプロセッサの性能を検査するマイクロホンモジュールの検査装置であって、有響空間内に配置されるスピーカと、前記有響空間内に前記スピーカの放音方向に向けて配置される検査用マイクロホン素子と、前記スピーカにテスト用信号を出力する信号発生部と、前記検査用マイクロホン素子からの音声データのHi/Lowに応じてオン/オフするスイッチング素子と、前記スイッチング素子の出力端とグランドとの間に介挿される第3の抵抗と、を備える。
【0019】
上記構成によれば、マイクロホン素子と、該マイクロホン素子から出力される音声データを取り込み、指向性制御、周波数特性制御、雑音抑制、レベル調整、出力フォーマット変換を含む各種信号処理を行うデジタルシグナルプロセッサと、を備えたマイクロホンモジュールにおけるデジタルシグナルプロセッサの性能を正確に検査することができる。
【0020】
上記構成において、前記スイッチング素子は、NPN型のトランジスタであって、ベース端子が前記検査用マイクロホン素子のデータラインに接続され、コレクタ端子が電源電圧ラインに接続され、エミッタ端子が前記第3の抵抗を介してグランドに接続される。
【0021】
上記構成によれば、スイッチング素子にNPN型トランジスタを用いても、マイクロホンモジュールにおけるデジタルシグナルプロセッサの性能を正確に検査することができる。
【0022】
本発明のマイクロホンモジュールの検査装置は、マイクロホン素子とデジタルシグナルプロセッサを備えたマイクロホンモジュールの前記デジタルシグナルプロセッサの性能を検査するマイクロホンモジュールの検査装置であって、有響空間内に配置されるスピーカと、前記有響空間内に前記スピーカの放音方向に向けて配置される検査用マイクロホン素子と、前記スピーカにテスト用信号を出力する信号発生部と、前記検査用マイクロホン素子からの音声データのHi/Lowに応じてオン/オフするスイッチング素子と、前記スイッチング素子の出力端と接続される第3の抵抗と、を備え、前記スイッチング素子は、PNP型のトランジスタであって、ベース端子が前記検査用マイクロホン素子のデータラインに接続され、コレクタ端子がグランドに接続され、エミッタ端子が前記第3の抵抗を介して電源電圧ラインに接続される。
【0023】
上記構成によれば、スイッチング素子にPNP型トランジスタを用いても、マイクロホンモジュールにおけるデジタルシグナルプロセッサの性能を正確に検査することができる。
【0024】
本発明のマイクロホンモジュールは、クロックを受信し、音声データを出力するマイクロホン素子と、前記マイクロホン素子に前記クロックを供給し、前記マイクロホン素子から出力される音声データを取り込み、指向性制御、周波数特性制御、雑音抑制、レベル調整、出力フォーマット変換を含む各種信号処理を行うデジタルシグナルプロセッサと、を備えたマイクロホンモジュールであって、前記マイクロホン素子から前記デジタルシグナルプロセッサへの音声データ伝送用のデータライン上に設けられるデータ用テストポイントと、前記デジタルシグナルプロセッサから前記マイクロホン素子へのクロック伝送用のクロックライン上に設けられるクロック用テストポイントと、前記データラインとグランドとの間に介挿される第1の抵抗と、前記第1の抵抗より前記デジタルシグナルプロセッサ側で、前記マイクロホン素子と前記デジタルシグナルプロセッサとの間の前記データライン上に挿入される第2の抵抗と、を備え、前記デジタルシグナルプロセッサの検査時に、前記データ用テストポイントが、前記マイクロホンモジュールの検査装置の前記スイッチング素子の出力端に接続され、前記クロック用テストポイントが、前記マイクロホンモジュールの検査装置の前記検査用マイクロホン素子のクロックラインに接続される。
【0025】
上記構成によれば、デジタルシグナルプロセッサの性能検査を簡単な回路構成で実現できる。
【0026】
上記構成において、前記マイクロホン素子の出力ドライブ電流は、電源電圧を前記第2の抵抗の抵抗値と請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のマイクロホンモジュールの検査装置の前記第3の抵抗の抵抗値の和で除した値よりも大きい。
【0027】
上記構成によれば、デジタルシグナルプロセッサの性能を正確に検査することができる。
【0028】
上記構成において、前記第2の抵抗と前記第3の抵抗の組み合わせは、前記第3の抵抗の抵抗値を、前記第2の抵抗の抵抗値と前記第3の抵抗の抵抗値の和で除した値に電源電圧を乗算して得られた電圧値がデジタル入力Lowレベルの最大値を超えない組み合わせである。
【0029】
上記構成によれば、デジタルシグナルプロセッサの性能を正確に検査することができる。
【0030】
上記構成において、前記第2の抵抗と前記第3の抵抗の組み合わせは、前記第2の抵抗の抵抗値を、前記第2の抵抗の抵抗値と前記第3の抵抗の抵抗値の和で除した値に電源電圧を乗算して得られた電圧値がデジタル入力Hiレベルの最小値を下回らない組み合わせである。
【0031】
上記構成によれば、デジタルシグナルプロセッサの性能を正確に検査することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、MEMSマイクロホン及びDSPを1つの基板に実装させたマイクロホンモジュールの回路構成を複雑にすることなく、該マイクロホンモジュールのDSPの性能を正確に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の第1実施形態に係るマイクロホンモジュール及び該マイクロホンモジュールの検査装置それぞれの回路構成を示す図
図2図1のマイクロホンモジュールのMEMSマイクロホンがHi、検査装置のMEMSマイクロホンがLowを出力した場合の電圧、電流の状態を示す図
図3図1のマイクロホンモジュールのMEMSマイクロホンがLow、検査装置のMEMSマイクロホンがHiを出力した場合の電圧、電流の状態を示す図
図4図1のマイクロホンモジュールのMEMSマイクロホンがHi、検査装置のMEMSマイクロホンがHiを出力した場合の電圧、電流の状態を示す図
図5】本発明の第1実施形態に係るマイクロホンモジュール及び該マイクロホンモジュールの検査装置におけるdata用テストポイントのオシロスコープの波形を示す図
図6】本発明の第2実施形態に係るマイクロホンモジュール及び該マイクロホンモジュールの検査装置それぞれの回路構成を示す図
図7】NPN型トランジスタ及びPNP型トランジスタを用いた場合のdata用テストポイントの出力電圧を示す図
図8】本発明の第3実施形態に係るマイクロホンモジュール及びマイクロホンモジュールの検査装置それぞれの回路構成を示す図
図9】従来のマイクロホンモジュール及びマイクロホンモジュールの検査装置それぞれの回路構成を示す図
図10】従来のマイクロホンモジュール及びマイクロホンモジュールの検査装置におけるdata用テストポイントのオシロスコープの波形を示す図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るマイクロホンモジュール1及び該マイクロホンモジュール1の検査装置2それぞれの回路構成を示す図である。なお、図1において、前述した図9と同じ構成要素には同一の参照符号を付与している。図1において、マイクロホンモジュール1は、2つのMEMSマイクロホン(マイクロホン素子)101と、DSP104と、アンプ105と、PDM clock用テストポイント106と、PDM data用テストポイント107と、Microphone Output端子108と、抵抗(第1の抵抗)102と、抵抗(第2の抵抗)103とを備えている。
【0035】
抵抗102は、2つのMEMSマイクロホン101のそれぞれとDSP104を結ぶPDM dataライン121とGNDとの間に介挿されている。抵抗103は、2つのMEMSマイクロホン101のそれぞれとDSP104を結ぶPDM dataライン121上で、抵抗102よりDSP104側に直列に介挿されている。抵抗102の抵抗定数は、例えば100kΩ、抵抗103の抵抗定数は、例えば220Ωである。
【0036】
PDM clock用テストポイント106は、2つのMEMSマイクロホン101それぞれとDSP104を結ぶPDM clockライン120上に設けられている。PDM data用テストポイント107は、2つのMEMSマイクロホン101それぞれとDSP104を結ぶPDM dataライン121上で、抵抗103よりDSP104側に設けられている。
【0037】
DSP104は、PDM clockライン120を通して、2つのMEMSマイクロホン101それぞれにPDM clockを供給する。また、DSP104は、PDM dataライン121を通して、2つのMEMSマイクロホン101それぞれから出力されるPDMdata(音声データ)を受け取り、それぞれのPDMdataに対して、指向性制御、周波数特性制御、雑音抑制、レベル調整、出力フォーマット変換等の信号処理を行う。なお、前述したように、PDMとは、パルス密度変調のことである。アンプ105は、DSP104のアナログ出力をマイクロホンモジュール1の所望のレベルにまで増幅し、Microphone Output端子108より出力する。Microphone Output端子108は、アンプ105の出力信号を外部に取り出すための端子である。
【0038】
一方、マイクロホンモジュール1の検査装置2は、信号発生部201と、アンプ202と、スピーカ203と、有響空間204と、検査装置用PDMインターフェースのMEMSマイクロホン(検査用マイクロホン素子)205と、スイッチング素子であるNPN型トランジスタ206と、抵抗207と、を備える。アンプ202、スピーカ203及びMEMSマイクロホン205は、それぞれ2つずつある。2つのスピーカ203と2つのMEMSマイクロホン205は、1組ずつ有響空間204内に対向配置される。
【0039】
信号発生部201は、2つの音声帯域の信号(テスト用信号)を発生し、一方の音声帯域の信号が2つのアンプ202の一方で増幅され、他方の音声帯域の信号が2つのアンプ202の他方で増幅される。アンプ202は、スピーカ203を駆動できるレベルまで増幅する。スピーカ203は、有響空間204内でアンプ202からの信号により鳴動する。
【0040】
2つのMEMSマイクロホン205は、クロックライン(PDM clockライン)210とデータライン(PDM dataライン)211がそれぞれ共通化されており、クロックラインがマイクロホンモジュール1のPDM clock用テストポイント106に接続され、データラインがNPN型トランジスタ206を介してPDM data用テストポイント107に接続される。各MEMSマイクロホン205は、DSP104から出力されるクロックで駆動し、音声データを出力する。NPN型トランジスタ206は、ベースがMEMSマイクロホン205のデータライン211に接続され、コレクタが3.3Vの電源ライン212に接続され、エミッタが抵抗207を介してGNDに接続されるとともに、マイクロホンモジュール1のPDM data用テストポイント107に接続される。抵抗207の抵抗定数は、例えば51Ωである。
【0041】
マイクロホンモジュール1のMEMSマイクロホン101と、検査装置2のMEMSマイクロホン205は、共にデジタル信号を出力する。MEMSマイクロホン101の出力信号(Hi,Low)とMEMSマイクロホン205の出力信号(Hi,Low)の組み合わせで、PDM data用テストポイント107には4通りの状態が存在する。この内、MEMSマイクロホン101及びMEMSマイクロホン205がともにLowを出力する場合、PDM data用テストポイント107にもLowが出力される。その他の3通りの場合について、図2から図4を用いて説明する。
【0042】
図2から図4は、MEMSマイクロホン101及びMEMSマイクロホン205の出力状態における各部の電圧、電流を示す図である。図2から図4において、符号1010で示す図は、MEMSマイクロホン101のCMOS出力を模式的に表した図である。図2は、MEMSマイクロホン101がHi(3.3V)、MEMSマイクロホン205がLow(0V)を出力した場合を示している。この時、CMOS出力1010は12.2mAの掃き出し電流となる。NPN型トランジスタ206がoffであることから、12.2mAの掃き出し電流は抵抗207に流れる。PDM data用テストポイント107の電圧は、抵抗(第2の抵抗)103及び抵抗(第3の抵抗)207の分圧によって0.62Vとなる。
【0043】
DSP104の入力電圧は0.62VとなってデータLowと認識される。MEMSマイクロホン205の信号がDSP104に受け渡される。
【0044】
図3は、MEMSマイクロホン101がLow(0V)、MEMSマイクロホン205がHi(3.3V)を出力した場合を示している。この時、NPN型トランジスタ206がonであり、NPN型トランジスタ206のベース-エミッタ間のPN接合の電圧降下により、PDM data用テストポイント107の電圧は2.5Vとなる。抵抗207には式(2)に示す電流が流れる。
【0045】
【数2】
【0046】
また、抵抗103に流れる電流、すなわちCMOS出力1010の引き込み電流は式(3)で表される。
【0047】
【数3】
【0048】
DSP104の入力電圧は2.5VとなってデータHiと認識される。MEMSマイクロホン205の信号がDSP104に受け渡される。
【0049】
MEMSマイクロホン101の出力ドライブ電流は、電源電圧3.3Vを抵抗(第2の抵抗)103の抵抗値と抵抗(第3の抵抗)207の抵抗値の和で除した値よりも大きくすればよい。
【0050】
【数4】
【0051】
図4は、MEMSマイクロホン101がHi(3.3V)、MEMSマイクロホン205がHi(3.3V)を出力した場合を示している。この時、NPN型トランジスタ206がonであり、NPN型トランジスタ206のベース-エミッタ間のPN接合の電圧降下により、PDM data用テストポイント107の電圧は2.5Vとなる。抵抗207には式(2)に示す電流が流れる。また抵抗103に流れる電流、すなわちCMOS出力1010の掃き出し電流は式(4)で表される。
【0052】
【数5】
【0053】
DSP104の入力電圧は2.5VとなってデータHiと認識される。MEMSマイクロホン205の信号がDSP104に受け渡される。
【0054】
抵抗(第2の抵抗)103と抵抗(第3の抵抗)207の組み合わせは、次式で得られる電圧値0.62Vがデジタル入力Lowレベルの最大値VIL(Max)を超えないような組み合わせとするのが望ましい。
【0055】
【数6】
【0056】
また、抵抗(第2の抵抗)103と抵抗(第3の抵抗)207の組み合わせは、次式で得られる電圧値2.7Vがデジタル入力Hiレベルの最小値VIH(Min)を下回らないような組み合わせとするのが望ましい。
【0057】
【数7】
【0058】
図5は、マイクロホンモジュール1におけるdata用テストポイント107のオシロスコープの波形を示している。図5では図10に示すようなMEMSマイクロホン同士のdataの衝突が回避されている。MEMSマイクロホン101とMEMSマイクロホン205がともにLowを出力する場合、および上記図2から図4のいずれの場合も、常にMEMSマイクロホン205の信号が優先されてDSP104に入力されるので、検査装置2を用いてDSP104の検査が可能となる。
【0059】
このように、第1実施形態に係るマイクロホンモジュール1及び該マイクロホンモジュール1の検査装置2によれば、マイクロホンモジュール1のPDM dataライン121において対GNDとの間に抵抗102を接続し、対DSPとの間に抵抗103を接続し、検査装置2のMEMSマイクロホン205のPDM dataライン211にNPN型トランジスタ206を接続し、マイクロホンモジュール1のPDM dataライン121の抵抗出力と検査装置2のNPN型トランジスタ206を接続して、MEMSマイクロホン205の出力をDSP104に入力するようにしたので、マイクロホンモジュール1の回路構成を複雑にすることなく、該マイクロホンモジュール1のDSP104の性能を正確に検査することができる。
【0060】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係るマイクロホンモジュール及びマイクロホンモジュールの検査装置それぞれの回路構成を示す図である。前述した第1実施形態に係る検査装置2では、MEMSマイクロホン205からの音声データをNPN型トランジスタ206から外部に取り出すようにようにしたが、第2実施形態に係る検査装置5では、MEMSマイクロホン205からの音声データをPNP型トランジスタ208から外部に取り出すようにようしている点で異なっている。
【0061】
図6において、スイッチング素子であるPNP型トランジスタ208は、ベースがMEMSマイクロホン205のデータライン211に接続され、コレクタがGNDに接地され、エミッタが抵抗207を介して3.3Vの電源ライン212に接続されるとともに、マイクロホンモジュール1のPDM data用テストポイント107に接続される。抵抗207の抵抗定数は、例えば51Ωである。
【0062】
図7は、検査装置2又は検査装置5において、NPN型トランジスタ206及びPNP型トランジスタ208を用いた場合のPDM data用テストポイント107における出力電圧を示す図である。一般にデジタルデータのHi/Lowの認識レベルにはしきい値が設定されており、入力Lowレベルの最大値VIL(Max)および入力Hiレベルの最小値VIH(Min)の一例として式(5)、(6)で与えられる。
【0063】
【数8】
【0064】
電源電圧が3.3Vの場合、式(5)及び式(6)はそれぞれ式(7)、(8)となる。
【0065】
【数9】
【0066】
図7におけるデータLowのレベル0V、0.6V、0.8Vは、上記式(7)の入力Lowレベルの最大値0.99Vを下回る値となってデータLowを認識することができ、データHiのレベル2.5V、2.7V、3.3Vは、上記式(8)の入力Hiレベルの最小値2.31Vを上回る値となってデータHiを認識することができる。NPN型トランジスタ、PNP型トランジスタのいずれの場合も、検査装置2又は検査装置5を用いてマイクロホンモジュール1を検査することができる。
【0067】
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態に係るマイクロホンモジュール6及びマイクロホンモジュール6の検査装置7それぞれの回路構成を示す図である。図8において、マイクロホンモジュール6は、TDM(Time Division Multiplexing)インターフェースのMEMSマイクロホン601、TDM clock用テストポイント606、TDM data用テストポイント607及びTDM WS(Word Select)用テストポイント608を有している。検査装置7は、TDMインターフェースのMEMSマイクロホン705を有している。
【0068】
TDMインターフェースのMEMSマイクロホン601及び705は、マイクロホンモジュール6及びマイクロホンモジュール6の検査装置7内でTDM4多重とする。マイクロホンモジュール6のDSP104は、クロックを生成しTDMインターフェースのMEMSマイクロホン601に供給するとともに、TDM clock用テストポイント606を介して検査装置7のTDMインターフェースのMEMSマイクロホン705にも供給する。また、DSP104は、WS信号を生成し、1段目のMEMSマイクロホン601に供給するとともに、TDM WS用テストポイント608を介して検査装置7の1段目のMEMSマイクロホン705にも供給する。
【0069】
1段目のMEMSマイクロホン601、705は、WS信号を生成してWSO端子から出力し、2段目のWS端子に入力する。2段目、3段目のMEMSマイクロホンも同様にWS信号を生成してWSO端子から出力し、次段のWS端子に入力する。
【0070】
MEMSマイクロホン601、705は、WSがHiの区間でのみ有効dataを出力し、時分割でdataラインに音声データを出力し多重化する。マイクロホンモジュール6の検査装置7内のdataラインは、検査装置7のNPN型トランジスタ206に接続され、トランジスタの出力は、マイクロホンモジュール6内のTDM data用テストポイント607を介してDSP104に入力される。
【0071】
上記の構成では、第1実施形態と同様、マイクロホンモジュール6の検査装置7内のMEMSマイクロホン705の信号が優先されてDSP104に入力されるので、検査装置7を用いてDSP104の検査が可能となる。
【0072】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、上記実施形態では、Microphone Output端子108の出力フォーマットをモノラルのアナログ出力としたが、ステレオのアナログ出力でも良いし、それ以上のチャンネル数があっても良い。また、デジタルのフォーマットとして出力することも可能で、その場合には、アンプ105を設置しないで直接Microphone Output端子108に出力する方法や、アンプ105を、ドライブ能力を高めるためのバッファ等に適宜、置き換えることができる。
【0073】
また、本実施の形態では、IO電圧を3.3Vとしたが、その他の電圧にも置き換えることが可能で、その場合は抵抗102、103、207の値を適宜、変更する。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、マイクロホン素子とデジタルシグナルプロセッサを備えたマイクロホンモジュールと、該マイクロホンモジュールのデジタルシグナルプロセッサの性能を検査する検査装置に好適である。
【符号の説明】
【0075】
1,6 マイクロホンモジュール
2,5,7 マイクロホンモジュールの検査装置
101,205 MEMSマイクロホン
102,103,207 抵抗
104 DSP
105,202 アンプ
106 PDM clock用テストポイント
107 PDM data用テストポイント
108 Microphone Output端子
120,210 PDM clockライン
121,211 PDM dataライン
212 電源ライン
201 信号発生部
203 スピーカ
204 有響空間
206 NPN型トランジスタ
208 PNP型トランジスタ
601,705 TDMインターフェースのMEMSマイクロホン
606 TDM clock用テストポイント
607 TDM data用テストポイント
608 TDM WS用テストポイント
1010 MEMSマイクロホンのCMOS出力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10