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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】映像投影システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 13/388 20180101AFI20230519BHJP
   H04N 13/363 20180101ALI20230519BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20230519BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
H04N13/388
H04N13/363
H04N5/74 Z
G03B21/14 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019060064
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020162011
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】高島 深志
【審査官】秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-195460(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106028012(CN,A)
【文献】特開2004-282712(JP,A)
【文献】特表2018-518904(JP,A)
【文献】特開2017-126899(JP,A)
【文献】特開2017-040685(JP,A)
【文献】特開2015-032313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 13/00-13/398
H04N 5/74
G03B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井面と、前記天井面と対向する床面と、前記天井面と前記床面との間の正面とを有する筒状のスクリーンと、
映像データ、及び、前記スクリーンの形状を示す投影空間データが入力される入力部と、
前記スクリーンの形状に応じて発生する、前記映像データに基づく投影映像の歪みを補正する制御装置と、
前記天井面、前記床面及び前記正面に、前記投影映像を補正した補正映像を投影する複数の投影装置とを備え、
前記投影装置は、前記スクリーンに対して水平方向の両側に1台以上ずつ配置され
前記映像データは、三次元形状データである
映像投影システム。
【請求項2】
天井面と、前記天井面と対向する床面と、前記天井面と前記床面との間の正面とを有する筒状のスクリーンと、
映像データ、及び、前記スクリーンの形状を示す投影空間データが入力される入力部と、
前記スクリーンの形状に応じて発生する、前記映像データに基づく投影映像の歪みを補正する制御装置と、
前記天井面、前記床面及び前記正面に、前記投影映像を補正した補正映像を投影する複数の投影装置とを備え、
前記投影装置は、前記スクリーンに対して水平方向の両側に1台以上ずつ配置され、
前記制御装置は、
前記投影空間データに基づいて、それぞれの前記投影装置が前記投影映像を前記スクリーンに投影するための投影領域を算出し、
前記映像データを三次元形状データに変換した周囲環境映像を生成し、
それぞれの前記投影装置ごとに、前記投影領域に対応する前記周囲環境映像に基づいて前記投影映像を生成し、かつ、前記スクリーンの形状に応じて発生する前記投影映像の歪みを補正した前記補正映像を生成する
映像投影システム。
【請求項3】
前記天井面と前記正面との接合部と、前記床面と前記正面との接合部とは、湾曲している
請求項1又は2に記載の映像投影システム。
【請求項4】
それぞれの前記投影装置が前記スクリーンに投影する前記補正映像は、長方形であり、
それぞれの前記投影装置は、前記補正映像の長辺と水平方向とが平行となるように前記補正映像が示す物体を正立させて前記スクリーンに投影し、又は、前記補正映像の短辺と鉛直方向とが平行となるように前記補正映像が示す物体を正立させて前記スクリーンに投影する
請求項1~3のいずれか1項に記載の映像投影システム。
【請求項5】
前記映像データは、全方位撮像装置で撮像されたデータである
請求項1~のいずれか1項に記載の映像投影システム。
【請求項6】
前記スクリーンに投影された前記補正映像をスイートスポットから見た場合、前記補正映像に示される物体は、実寸大に表示される
請求項1~5のいずれか1項に記載の映像投影システム。
【請求項7】
前記投影空間データは、さらに、前記投影装置における仕様、及び、前記スクリーンに対する前記投影装置の配置位置を含
請求項1~6のいずれか1項に記載の映像投影システム。
【請求項8】
前記制御装置は、複数の前記投影装置の台数に応じて、一回ずつ前記周囲環境映像を生成する
請求項に記載の映像投影システム。
【請求項9】
前記入力部には、さらに、前記スクリーンの形状に応じて変形する前記投影映像の歪みを補正するための歪み補正データが入力され、
前記制御装置は、さらに、前記歪み補正データに応じて前記投影映像の歪みを補正する
請求項7又は8に記載の映像投影システム。
【請求項10】
前記歪み補正データは、複数の点と、前記複数の点のうちの少なくとも二つの点を結ぶ1以上の直線とで構成され、
前記制御装置は、前記複数の点のうちの少なくとも1つの第1点が移動すると、前記第1点の移動量に応じて前記投影映像の歪み補正処理を実行する
請求項9に記載の映像投影システム。
【請求項11】
前記歪み補正データは、前記複数の点と前記複数の直線とによって形成された三角形又は四角形が配列された集合体である
請求項10に記載の映像投影システム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記第1点が移動されると、前記第1点に接続される直線と当該直線に接続される第2点とを少なくとも移動させることで、前記投影映像の歪み補正処理を実行する
請求項10又は11に記載の映像投影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、映像投影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の映像投影システムとして特許文献1には、上半部分及び下半部分を有する表示スクリーンと床面とを有する全体密閉型ケース構造と、床面側と上半部分側とにそれぞれ配置されたプロジェクタとを備えるスクリーンプロジェクターシステムが開示されている。それぞれのプロジェクタは、上半部分と下半部分とのそれぞれにそれぞれ映像を投影する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-163244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1で開示される従来の映像投影システムでは、スクリーンに映る映像を視聴する視聴者が移動したり、座席から立上ったりすれば、投影する映像が視聴者によって遮られてしまい、スクリーンに影ができてしまうことがある。
【0005】
また、従来の映像投影システムでは、床面に映像を投影するわけではないため、視聴者がスクリーンを視聴した場合、視聴者は、床面の存在を認識してしまう。このため、視聴者は、スクリーンに映し出される臨場感を損ねてしまい、没入感を覚え難い。そこで、臨場感を出すために、スクリーンを半球状に形成し、スクリーン全域に投影することも考えられる。しかし、スクリーンが半球状になれば、スクリーンが大型化してしまう。
【0006】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、スクリーンに影が映り込み難く、かつ、スクリーン全域に投影しながらもスクリーンの大型化を抑制することができる映像投影システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示に係る映像投影システムの一態様は、天井面と、前記天井面と対向する床面と、前記天井面と前記床面との間の正面とを有する筒状のスクリーンと、映像データ、及び、前記スクリーンの形状を示す投影空間データが入力される入力部と、前記スクリーンの形状に応じて発生する、前記映像データに基づく投影映像の歪みを補正する制御装置と、前記天井面、前記床面及び前記正面に、前記投影映像を補正した補正映像を投影する複数の投影装置とを備え、前記投影装置は、前記スクリーンに対して水平方向の両側に1台以上ずつ配置され、前記映像データは、三次元形状データである。
また、上記目的を達成するために、本開示に係る映像投影システムの一態様は、天井面と、前記天井面と対向する床面と、前記天井面と前記床面との間の正面とを有する筒状のスクリーンと、映像データ、及び、前記スクリーンの形状を示す投影空間データが入力される入力部と、前記スクリーンの形状に応じて発生する、前記映像データに基づく投影映像の歪みを補正する制御装置と、前記天井面、前記床面及び前記正面に、前記投影映像を補正した補正映像を投影する複数の投影装置とを備え、前記投影装置は、前記スクリーンに対して水平方向の両側に1台以上ずつ配置され、前記制御装置は、前記投影空間データに基づいて、それぞれの前記投影装置が前記投影映像を前記スクリーンに投影するための投影領域を算出し、前記映像データを三次元形状データに変換した周囲環境映像を生成し、それぞれの前記投影装置ごとに、前記投影領域に対応する前記周囲環境映像に基づいて前記投影映像を生成し、かつ、前記スクリーンの形状に応じて発生する前記投影映像の歪みを補正した前記補正映像を生成する。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る映像投影システムによれば、スクリーンに影が映り込み難く、かつ、スクリーン全域に投影しながらもスクリーンの大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態に係る映像投影システムのブロック図である。
図2図2は、実施の形態に係る映像投影システムを上から見た上面図である。
図3図3は、図2のIII-III線における映像投影システムにおけるスクリーンの断面を示す断面図である。
図4図4は、実施の形態に係る映像投影システムの動作を示すフローチャートである。
図5図5は、実施の形態に係る映像投影システムに用いられるシミュレーションソフトウェアの仮想三次元空間データに配置したスクリーンデータを示すイメージ図である。
図6図6は、実施の形態に係る映像投影システムに用いられるシミュレーションソフトウェアによって、投影装置から見たスクリーンデータをレンダリングした投影領域を示すイメージ図である。
図7図7は、実施の形態に係る映像投影システムに用いられるシミュレーションソフトウェアの仮想三次元空間データに配置したスクリーンデータとスイートスポットとの関係を示すイメージ図である。
図8図8は、図7を上から見た場合、スクリーンデータをレンダリングしたそれぞれの視野角を示す模式図である。
図9図9は、右側の視野角で映像データをレンダリングし、かつ、左側の視野角で映像データをレンダリングした周囲環境映像を示すイメージ図である。
図10図10は、一般的なキューブ環境マッピング処理を用いてスクリーンに映像を投影した比較例を例示する説明図である。
図11図11は、実施の形態に係る映像投影システムの制御装置による投影映像の歪み補正処理の動作を示すフローチャートである。
図12図12は、実施の形態に係る映像投影システムの制御装置におけるテクスチャマッピング技術を用いた投影映像の歪み補正処理を示す説明図である。
図13図13は、実施の形態に係る映像投影システムの制御装置による歪み補正データに基づく投影映像の歪み補正処理の動作を示すフローチャートである。
図14図14は、頂点群で結ばれる三角形を示す図である。
図15図15は、細分化した投影映像を示す図である。
図16図16は、四角形を細分化する方法について説明する図である。
図17図17は、ワーピング補正の方法を説明する図である。
図18図18は、ワーピング補正点の移動前と移動後とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ、ステップの順序等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されてはいない。したがって、例えば、各図において縮尺等は必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0012】
以下の実施の形態に係る映像投影システムについて説明する。
【0013】
(実施の形態)
[構成]
図1は、実施の形態に係る映像投影システム1のブロック図である。図2は、実施の形態に係る映像投影システム1を上から見た上面図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、映像投影システム1は、投影装置30によってスクリーン10に映像を投影することで、スクリーン10を視聴する視聴者に映像を表示させる。映像投影システム1では、密閉型ケース構造又は一部分密閉型ケース構造であり、視聴者の水平視野角及び垂直視野角が180度未満となる連続画像がスクリーン10に表示される。
【0015】
映像投影システム1は、スクリーン10と、入力部20と、複数の投影装置30と、制御装置40と、記憶部50とを備える。
【0016】
図3は、図2のIII-III線における映像投影システム1におけるスクリーン10の断面を示す断面図である。
【0017】
図2及び図3に示すように、スクリーン10は、天井面11と、天井面11と対向する床面12と、天井面11と床面12との間の正面13とを有する筒状を成した、映像を映す幕である。スクリーン10には、それぞれの投影装置30から照射された映像が投影される。スクリーン10を構成する天井面11、床面12、及び、正面13に映像が投影される。
【0018】
本実施の形態では、スクリーン10において、天井面11及び床面12は平面視で半円形状であり、正面13は天井面11及び床面12の円弧状の縁を構成する端縁に沿って湾曲したアーチ状の湾曲面である。
【0019】
天井面11と正面13との接合部14と、床面12と正面13との接合部14とは、湾曲している。つまり、天井面11と正面13との接合部14、及び、床面12と正面13との接合部14は、アールが付けられ、丸められている。これら接合部14は、境界部分の角である。
【0020】
図1及び図2に示すように、入力部20は、映像データ、スクリーン10の形状を示すスクリーンデータ(投影空間データの一例)、及び、スクリーン10の形状に応じて変形する投影映像の歪みを補正するための歪み補正データが入力される。入力部20は、映像データ、スクリーンデータ等を入力する入力インターフェイスである。例えば、入力部20には、360度全天球カメラ等の全方位撮像装置等で撮像された映像が入力される。入力部20は、制御装置40と通信可能に接続され、上述のデータが入力されると、記憶部50に保存する。
【0021】
ここで、映像データは、スクリーン10に投影するための映像を示すデータである。映像は、動画像又は静止画像である。映像データは、全方位撮像装置で撮像されたデータ、又は、CAD(Computer Aided Design)等の作成された三次元形状データである。
【0022】
また、スクリーンデータは、スクリーン10の形状である三次元のスクリーン形状データ、投影装置データ(投影装置における仕様を示すデータである)、スイートスポット(スクリーン10に対する視聴者の位置、及び、視聴者がスクリーン10を視たとき角度(視線との角度))等である。また、投影装置データは、スクリーン10に対する投影装置30の配置位置、投影装置30がスクリーン10に映像を投影するときの投影角、スクリーン10に対する投影装置30の投射幅、スクリーン10に対する投影装置30の投射距離、投影装置30の解像度である。
【0023】
それぞれの投影装置30は、天井面11、床面12及び正面13に、投影映像を補正した補正映像をスクリーン10に投影する。本実施の形態では、2台の投影装置30がスクリーン10に映像を投影する。つまり、それぞれの投影装置30は、スクリーン10に対して水平方向の両側に1台以上ずつ配置される。具体的には、一方の投影装置30はスクリーン10の右側に配置され、他方の投影装置30はスクリーン10の左側に配置される。本実施の形態では、それぞれの投影装置30は、投影装置30が有するレンズ中心がスクリーン10の高さの中心となる位置に設置される。
【0024】
ここで、右側とは、スクリーン10の正面13と対向して見た場合の右側であり、左側はその反対側である。
【0025】
スクリーン10に投影される映像(例えば、補正映像)は、長方形である。つまり、投影される映像の画像領域は、長尺である。このため、それぞれの投影装置30は、補正映像の長辺と水平方向とが平行となるように補正映像が示す物体を正立させてスクリーン10に投影し、又は、補正映像の短辺と鉛直方向とが平行となるように補正映像が示す物体を正立させてスクリーン10に投影する。
【0026】
具体的には、本実施の形態では、投影装置30が投影する映像のアスペクト比は16:10(又は16:9)である。スクリーン10に投影した映像の上下が切れてしまう場合、投影装置30の設置向きを90°回転することで、アスペクト比を縦長10:16(又は9:16)にできる。このため、投影装置30は、映像が天井面11と床面12とを覆い隠すように投影できる。
【0027】
制御装置40は、スクリーンデータが入力部20に入力されたかどうかを判定する。制御装置40は、スクリーンデータが入力部20に入力されていると判定すると、投影装置30が投影映像をスクリーン10に投影するための投影領域を算出する。投影領域は、スクリーン10の形状である三次元のスクリーン形状データ、投影装置30における仕様等に基づいて算出される。
【0028】
具体的には、制御装置40は、投影装置30がスクリーン10に映像を投影する際の視野角を算出する。この視野角は、スクリーン10に対する投影装置30の相対的な配置位置、投影装置30における仕様であるスクリーン10に対するそれぞれの投影装置30の投影角度、それぞれの投影装置30のレンズの画角である投射幅及び投射距離、アスペクト比等に基づいて算出される。制御装置40は、算出した視野角から、投影領域を算出する。制御装置40は、投影装置30ごとに投影領域を算出する。
【0029】
投影領域は、投影装置30がスクリーン10に映像を投影するため領域であり、本実施の形態では、スクリーンデータ、つまり、投影装置30から見たスクリーン10の形状に応じた三次元の領域である。
【0030】
また、制御装置40は、映像データが入力部20に入力されたかどうかを判定する。制御装置40は、映像データが入力されていると判定すると、映像データを仮想三次元空間データ内でレンダリングするために、映像データが三次元形状データか否かを判定する。
【0031】
制御装置40は、映像データが三次元形状データであると判定すると、この映像データに基づいて周囲環境映像を生成する。周囲環境映像は、投影装置30からスクリーン10に投影する際の水平視野角及び垂直視野角に基づいて、制御装置40が仮想三次元空間データ内で映像データをレンダリングすることで生成される。本実施の形態では、制御装置40の処理負荷を抑制するために、二台分の投影装置30の映像データのレンダリングを、一台につき一回ずつ行って複数の周囲環境映像を生成する。つまり、制御装置40は、右側の投影領域に対応する周囲環境映像を生成し、左側の投影領域に対応する周囲環境映像を生成する。このため、1つの周囲環境映像の大きさは、スクリーン10を正面13から見た場合の半分の大きさである。なお、周囲環境映像の生成についての詳細は後述する。
【0032】
また、制御装置40は、映像データが三次元形状データでないと判定すると、映像データが画像データであるか否かを判定する。映像データが画像データであれば、制御装置40は、この映像データを三次元形状データに変換する。つまり、制御装置40は、映像データに示される複数の物体を三次元形状データに変換する。
【0033】
また、制御装置40は、生成した周囲環境映像に基づいて、投影装置30ごとの投影映像を生成する。制御装置40は、周囲環境映像に示されるそれぞれの画素から投影映像を生成する。通常、投影装置30から湾曲したスクリーン10に投影した場合、投影映像は湾曲するため、視聴者からは歪んだ映像として見える。このため視聴者からは歪みの無い映像として投影できるように補正する。投影点は、スクリーン10に投影される一画素当たりの微小な領域であり、制御装置40は、投影領域の画素に格納されている被写界深度に基づいて、スクリーン10上のそれぞれの投影点を求め、その投影点に投影する画素を周囲環境映像から算出することで視聴者からは歪みの無い映像となるよう投影映像を補正する。なお、投影映像の生成についての詳細は後述する。
【0034】
ここまでに視聴者からは歪みの無い映像が投影されるはずだが、投影装置30には個体差があるため、実際の投影領域はレンズ及び投影装置30の仕様とは厳密には一致しない。また、施工したスクリーン10も施工用図面とは厳密に一致することはないため、これら乖離の結果が、最終的に投影映像の歪みとして現れる。このため、制御装置40は、歪み補正データが入力部20に入力されたか否かを判定し、歪み補正データが入力部20に入力されている場合、それぞれの投影装置30ごとに、スクリーン10の形状又は投影装置30の個体差に応じて発生する映像データに基づく投影映像の歪みを、歪み補正データを用いて補正する。制御装置40は、投影映像の補正を投影装置30ごとに行う。
【0035】
ここで、映像データに基づく投影映像とは、投影領域に対応する周囲環境映像に基づいて生成された映像を意味する。また、投影映像の歪みとは、スクリーン10に投影された場合に生じる歪みを意味する。また、歪み補正データを用いて投影映像を補正することを、歪み補正処理と言うことがある。なお、投影映像の歪み補正処理についての詳細は後述する。
【0036】
制御装置40は、一方の投影装置30に対応する投影映像を歪み補正処理を実行することで補正映像を生成し、生成した補正映像を一方の投影装置30に出力する。また、制御装置40は、他方の投影装置30に対応する投影映像を歪み補正処理を実行することで補正映像を生成し、生成した補正映像を他方の投影装置30に出力する。
【0037】
記憶部50は、制御装置40に通信可能に接続された半導体メモリ、ハードディスクドライブ等の記憶媒体である。記憶部50は、入力部20から入力された、映像データ、スクリーンデータ、歪み補正データ、制御装置40が生成する投影領域を示すデータ、周囲環境映像を示すデータ、投影映像を示すデータ、及び、補正映像を示すデータ等を保存し、かつ保存した上記それぞれのデータを読み出すことができる。
【0038】
[動作]
次に、映像投影システム1の動作について説明する。
【0039】
図4は、実施の形態に係る映像投影システム1の動作を示すフローチャートである。
【0040】
まず、視聴者は、映像投影システム1の入力部20に自身が視聴したい映像データを予め入力しておく。本実施の形態では、複数の投影装置30を用いているが、特に言及しない限り、主に一台の投影装置30について説明し、制御装置40がそれぞれの投影装置30に対して行う処理については、適宜説明を省略する。
【0041】
図4に示すように、映像投影システム1の制御装置40は、スクリーンデータが入力部20に入力されたかどうかを判定する(S1)。つまり、制御装置40は、スクリーン10の形状等に応じた映像を投影するために、記憶部50にスクリーンデータが保存されているかどうかを判定する。スクリーンデータには、スクリーン10の形状である三次元のスクリーン形状データ、スクリーン10に対する投影装置30の配置位置、投影装置30がスクリーン10に映像を投影するときの投影角、スクリーン10に対する投影装置30の投射幅、スクリーン10に対する投影装置30の投射距離、投影装置30の解像度、スクリーン10に対する視聴者の位置、及び、視聴者がスクリーン10を視たとき角度(視線との角度)等を含む。
【0042】
次に、制御装置40は、スクリーンデータが入力部20に入力されていると判定すると(S1でYes)、投影装置30から見たスクリーン10の形状に応じた三次元の領域である投影領域の算出を行う(S2)。
【0043】
投影領域の算出について説明する。
【0044】
図5は、実施の形態に係る映像投影システム1に用いられるシミュレーションソフトウェアの仮想三次元空間データに配置したスクリーンデータを示すイメージ図である。
【0045】
図5に示すように、制御装置40は、入力されたスクリーンデータを仮想三次元空間データに配置する。仮想三次元空間データは、映像データに基づいて補正映像を生成するためのソフトウェアであり、記憶部50にインストールされている。ソフトウェアは、スクリーンデータが示すスクリーン10の形状を三次元的にシミュレーションできる。制御装置40は、スクリーン10に対する投影装置30の相対的な配置位置、スクリーン10に対する投影装置30の投影角度、投影装置30のレンズの画角である投射幅及び投射距離、及び、投影装置30の解像度等から、投影装置30がスクリーン10に映像を投影する際の、視野角を算出する。
【0046】
制御装置40は、算出された視野角に応じて、仮想三次元空間データ内に配置されたスクリーンデータをレンダリングする。スクリーンデータをレンダリングしたイメージ図を図6に示す。図6は、実施の形態に係る映像投影システム1に用いられるシミュレーションソフトウェアによって、投影装置30から見たスクリーンデータをレンダリングした投影領域を示すイメージ図である。レンダリングされたスクリーンデータが示す画像のそれぞれの画素(ピクセル)には、投影装置30からスクリーン10までの距離に応じた被写界深度が入力される。被写界深度が入力されたそれぞれの画素は、スクリーン10上に投影されるそれぞれの投影点で表される。それぞれの投影点の集合体によって、投影装置30から見た、スクリーン10上に投影される投影領域が算出される。
【0047】
一方、図4のステップS1に戻り、制御装置40は、スクリーンデータが入力されていないと判定すると(S1でNo)、処理をステップS1に戻す(スクリーンデータが入力されるまで待機する)。なお、制御装置40は、ステップS1でNoの場合、処理を終了する等を行ってもよい。
【0048】
次に、ステップS2の処理を終了後、制御装置40は、映像データが入力部20に入力されたかどうかを判定する(S3)。つまり、制御装置40は、記憶部50に映像データが保存されているかどうかを判定する。
【0049】
次に、制御装置40は、映像データが入力部20に入力されていないと判定すると(S3でNo)、処理をステップS3に戻す(映像データが入力されるまで待機する)。なお、制御装置40は、ステップS3でNoの場合、処理をステップS1に戻す処理を終了する等を行ってもよい。
【0050】
一方、制御装置40は、映像データが入力部20に入力されていると判定すると(S3でYes)、映像データが三次元形状データか否かを判定する(S4)。これは、制御装置40は、映像投影システム1に用いられるシミュレーションソフトウェアの仮想三次元空間データに映像データを配置し、仮想三次元空間データ内に配置された映像データをレンダリングする。このため、映像データが三次元形状データである必要がある。
【0051】
制御装置40は、映像データが三次元形状データでないと判定すると(S4でNo)、映像データが画像データであるか否かを判定する(S10)。
【0052】
制御装置40は、映像データが画像データであると判定すると(S10でYes)、この映像データを三次元形状データに変換する(S11)。例えば、映像データは、全方位撮像装置で撮影された映像であることが好ましい。一例をあげると、全方位撮像装置で撮像されたエクレクタンギュラー形式の画像データを用いる場合、まずは、制御装置40は、三次元形状データの球体を作成する。そして、制御装置40は、作成した球体にエクレクタンギュラー形式の画像をテクスチャマッピングすることで、画像データを三次元形状データに変換する。そして、制御装置40は、映像データを三次元形状データに変換後に、後述する周囲環境映像の生成(S5)を行う。
【0053】
なお、本実施の形態では、三次元形状データの球体を用いて、画像データを三次元形状データに変換する。また、所定の形状にテクスチャマッピングできればよいため、平面、又は、湾曲状の面等でもよく、球体には限定されない。また、球体は、長球、真球等でもよい。さらに、平面、又は、湾曲状の面の形状は、円形、多角形状等及びこれを組み合わせた形状でもよい。
【0054】
一方、制御装置40は、映像データが画像データでないと判定すると(S10でNo)、処理をステップS1に戻す。
【0055】
ステップS4の説明に戻り、制御装置40は、映像データが三次元形状データであると判定すると(S4でYes)、この映像データに基づいて周囲環境映像を生成する(S5)。これは、前述した通り、投影装置30から湾曲したスクリーン10に投影した場合、投影映像は湾曲するため、視聴者からは歪んだ映像として見える。これを補正するため制御装置40は、視聴者を中心とした全方位の映像である周囲環境映像を生成する。さらに、後述する投影映像をこの周囲環境映像から生成することで、湾曲したスクリーン10に投影した映像であっても、視聴者は歪みの無い映像が視聴できる。本実施の形態では、視聴者の前方から見たスクリーン10に映像が投影されるため、視聴者の前方から見たスクリーン10の形状と、投影装置30の配置位置、及び、配置角等に応じて、この周囲環境映像から投影用映像を生成する。
【0056】
本実施の形態では、広視野な映像投影を行うため、制御装置40は、スイートスポットSに基づいた周囲環境映像を生成する。スイートスポットSは、視聴者がスクリーン10を見た場合に、スクリーン10と天井面11及び正面13の接合部14の映像と、床面12及び正面13の接合部14の映像とが歪みなく見える視点の位置である。視聴者の視点がスイートスポットSから外れるほど、これらの接合部14に投影された映像は曲がって見える。これを緩和するために、本実施の形態では、それぞれの接合部14を円弧状に湾曲させる。
【0057】
周囲環境映像の生成について説明する。
【0058】
図7は、実施の形態に係るスクリーンデータとスイートスポットSとの関係を示すイメージ図である。
【0059】
まず、図7に示すように、スクリーン10を見た場合、スクリーン10における正面13側の4つの角のうちの、天井面11側の点a,b及び床面12側の点c,dを規定する。また、点a,b,c,dで囲まれる領域の中心点gを規定する。中心点gの高さは、スイートスポットSの高さと同値とする。また、スクリーン10を正面13から見た場合、中心点gを含む鉛直方向の直線と交差する、天井面11の点e及び床面12の点fを規定する。
【0060】
次に、スイートスポットSから点gまでの距離、点a,b間の距離、及び、点e,f間の距離に基づいて、水平角及び垂直角を三角関数により求める。水平角は、点a,cを結ぶ直線の中心点H1とスイートスポットSまでの直線と、点b,dを結ぶ直線の中心点H2とスイートスポットSまでの直線とがなす鋭角の角度である。垂直角は、点a,bを結ぶ直線の中心となる点eとスイートスポットSまでの直線と、点c,dを結ぶ直線の中心となる点fとスイートスポットSまでの直線とがなす鋭角の角度である。このように、水平角及び垂直角は、スイートスポットSとスクリーン10の形状との関係から算出する。
【0061】
図8は、図7を上から見た場合、算出した視野角で映像データをレンダリングした様子を示す模式図である。
【0062】
図7及び図8に示すように、周囲環境映像は、視聴者から見たスクリーン10に投影される領域のみでよく、算出された水平角及び垂直角に基づいて、最適なレンダリングすべき視野が決定されるが、これを図8のように左と右とに二回に分けてレンダリングする。
【0063】
なお、入力部20に入力された映像データが三次元形状データである場合には、レンダリングすべき視点は任意の視点であり、入力部20に入力された映像データが画像データである場合には、レンダリングすべき視点はステップS11で生成された球体の中心点となる。
【0064】
まず、一回目のレンダリングでは、制御装置40は、水平角の右側の半分と垂直角とで規定される右側の視野角V1で、映像データをレンダリングする。次に、二回目のレンダリングでは、制御装置40は、図7で示す水平角の左側の半分と垂直角とで規定される左側の視野角V2で、映像データをレンダリングする。そして、制御装置40は、二回のレンダリングで生成した周囲環境映像を生成する。
【0065】
ここで、映像データを一回のレンダリングで周囲環境映像を得ることは可能である。しかし、投影装置30の視野角が広角になるほど、レンダリングされた画像は、中心に向かうほど解像度が劣化してしまうという特性を有する。このため、より画像の解像度の劣化が少なくなるように、右側のスクリーン10の領域に対応する映像データをレンダリングし、かつ、左側のスクリーン10の領域に対応する映像データをレンダリングするという、制御装置40は、二回に分けたレンダリングをする。そして、図9に示すように、制御装置40は、2つの周囲環境映像を生成し、2つの周囲環境映像を繋ぎ合わせる。
【0066】
本実施の形態では、レンダリング回数を抑えるために、図9に示すように二回のレンダリングで、スクリーン10の大きさに応じた周囲環境映像を生成する。図9は、図8の視野角V1で映像データをレンダリングし、かつ、図8の視野角V2で映像データをレンダリングした周囲環境映像を示すイメージ図である。
【0067】
なお、上述の代替として、一般的なキューブ環境マッピング処理を用いて周囲環境映像を生成してもよく、他の公知の手法を用いて周囲環境映像を生成してもよい。
【0068】
また、水平角及び垂直角に基づいてレンダリングされた映像データのアスペクト比が決定されるが、解像度は特に限定されないが、高解像度である方が望ましい。
【0069】
本実施の形態では、スクリーン10への投影映像が動画像である場合、三次元形状データのアニメーション表示等の動的な映像更新に備えるため、制御装置40は、周囲環境映像をリアルタイムで生成する。
【0070】
図10は、一般的なキューブ環境マッピング処理を用いてスクリーン10aに映像を投影した比較例を例示した説明図である。例えば、図10に示すように、一般的なキューブ環境マッピング処理を用いて映像をスクリーン10aに投影した場合、スクリーン10aに映像が投影されない背面を除いた、正面、上面、下面、左面、及び、右面の計5面の映像を個別にレンダリングすることがある。しかし、計5面の映像を個別にレンダリングすれば、制御装置の処理負荷が高くなる。
【0071】
図4に示すように、次に、制御装置40は、ステップS5で生成した周囲環境映像に基づいて、投影装置30ごとの投影映像を生成する(S6)。
【0072】
投影映像の生成について説明する。
【0073】
具体的には、制御装置40は、ステップS2で算出された投影領域に映像を投影するため、スクリーン10に映像が投影されたときのそれぞれの投影点の画素から投影映像を生成する。投影領域映像が示すそれぞれの画素には、ステップS2により、被写界深度が格納されている。制御装置40は、スイートスポットSとそれぞれの投影点(画素に格納された被写界深度)との位置データを記憶部50から読み出し、スイートスポットSからそれぞれの投影点までの、それぞれの単位ベクトルを算出する。制御装置40は、スイートスポットSからそれぞれの単位ベクトルの方向に伸ばした線と、周囲環境映像とのそれぞれの交点を算出する。算出されたそれぞれの交点上の周囲環境映像は、投影点の画素となる。制御装置40は、スクリーン10に映像が投影された際に、投影点ごとの画素を算出することによって、投影映像を生成する。制御装置40は、投影装置30ごとに、このような処理を行う。
【0074】
このとき得られた投影映像は、周囲環境映像から生成されるため、実寸大のスケール(1/1スケール)である。つまり、スクリーン10に投影された投影映像をスイートスポットSから見た場合、投影映像に示される物体は、実寸大に表示される。
【0075】
次に、制御装置40は、投影装置30ごとに生成した投影映像を歪み補正処理を実行する(S7)。投影映像は、図2のステップS2における仮想三次元空間データ内で算出された投影領域に基づいて生成される。しかし、投影装置30の個体差及びスクリーン10の施工精度によっては、スクリーン10に投影された映像に誤差が発生する場合がある。このため、投影映像の更なる補正処理である歪み補正処理を実行する。
【0076】
次に、制御装置40は、投影装置30ごとに、投影映像を歪み補正処理を実行した補正映像を生成する(S8)。
【0077】
次に、制御装置40は、生成したそれぞれの補正映像をそれぞれの投影装置30に出力する(S9)。制御装置40は、投影装置30ごとに、上述の処理を行う。こうして、制御装置40は、右側の投影装置30に、左側の投影領域に対応する補正映像を出力し、左側の投影装置30に、右側の投影領域に対応する補正映像を出力する。こうして、本実施の形態では、二台の投影装置30から投影された補正映像が繋がり、一つの映像がスクリーン10に表示される。
【0078】
そして、制御装置40は、処理を終了する。
【0079】
図4のステップS7で示す投影映像の歪み補正処理について、詳細に説明する。
【0080】
図11は、実施の形態に係る映像投影システム1の制御装置40による投影映像の歪み補正処理の動作を示すフローチャートである。
【0081】
制御装置40は、歪み補正データが入力部20に入力されたか否かを判定する(S31)。つまり、制御装置40は、記憶部50に歪み補正データが保存されているかどうかを判定する。
【0082】
制御装置40は、歪み補正データが入力部20に入力されたと判定すると(S31でYes)、投影映像が生成されたか否かを判定する(S32)。投影映像が生成されていなければ(S32でNo)、制御装置40は、処理を終了し、図4の処理を開始する。
【0083】
一方、制御装置40は、投影映像が生成されていると判定すると(S32でYes)、投影映像の歪み補正処理を実行する(S33)。
【0084】
ステップS33の投影映像の歪み補正処理について、具体的に説明する。
【0085】
(1)一般的な歪み補正処理について説明する。
【0086】
図12は、実施の形態に係る映像投影システム1の制御装置40におけるテクスチャマッピング技術を用いた投影映像の歪み補正処理を示す説明図である。
【0087】
図12に示すように、本実施の形態では、一般的なテクスチャマッピング技術を用いて投影映像の歪み補正処理を実行する。
【0088】
図12は、テクスチャマッピングの一般的な動作を示している。図12(a)では4つの頂点と二つの三角形とがあり、各頂点にはテクスチャ座標(U,V)上の点が入力されている。図12(b)は、テクスチャ画像である。図12(c)は、テクスチャマッピングした結果である。図12(d)は、頂点を移動させることで変化させたテクスチャである。この技術を応用して投影用映像を補正する。本開示では、図12(a)の各頂点を補正点と呼称する。補正点には二つの座標系上の位置情報が含まれており、一つ目はその補正点が投影領域画像のどこに位置するかのXY座標であり、二つ目はテクスチャマッピングを施す場合のUV座標である。また一般的なテクスチャマッピングでは、各頂点は、線分で繋がれ三角形を形成する。従って、歪み補正用データにおいても線分を定義し、この各線分を図12(a)のように補正線と呼称する。
【0089】
(2)歪み補正データの詳細について説明する。
【0090】
歪み補正データは、複数の補正点と、複数の補正点のうちの少なくとも二つの補正点を結ぶ補正線とで構成される。また、歪み補正データは、複数の補正点と複数の補正線とによって形成された三角形又は四角形が配列された集合体を構成する。歪み補正データには、補正点と、補正線と、後述するワーピング補正点とが含まれる。補正点、及び、ワーピング補正点は、点の一例である。補正線は、二つの補正点を結ぶ直線の一例である。
【0091】
補正点には、補正点のID、補正点の配置位置、補正点のテクスチャ座標位置、及び、2つの補正点を結ぶ連結補正線が含まれる。
【0092】
補正点のIDは、補正点を識別するためのユニークな数値である。補正点の配置位置は、図4のステップS6で生成した投影映像上の位置座標(X,Y)を示す。テクスチャ座標位置は、補正点が持つテクスチャ座標(U,V)を示す。連結補正線は、配列で定義され、隣り合う2つの補正点を結ぶ線を識別するためのIDを保有する。
【0093】
補正線には、補正線のID、補正線の連結補正点、及び、四角形補正が含まれる。補正線のIDは、補正線を識別するためのユニークな数値である。連結補正点は、配列で定義され、補正線に結ばれる補正点を識別するためのIDを保有する。四角形補正については後述する。
【0094】
(3)歪み補正データに基づく投影映像の補正について説明する。
【0095】
図13は、実施の形態に係る映像投影システム1の制御装置40による歪み補正データに基づく投影映像の歪み補正処理の動作を示すフローチャートである。
【0096】
図13に示すように、制御装置40は、テクスチャマッピングに必要な頂点群、及び、頂点群で結ばれる三角形を形成する(S41)。
【0097】
ステップS41の処理について図14を用いて説明する。図14は、入力された歪み補正データに含まれる補正線及び補正点から形成された頂点群(補正点の群)及び三角形群である。
【0098】
このように入力された歪み補正データには、図14のような任意の三角形群が形成可能となる補正点と補正線とのデータ群が含まれている。これを元に、制御装置40は、テクスチャマッピングに必要な頂点群(補正点の群)及び三角形を形成する。補正点には、前述の通りXY座標と、UV座標における2つの座標値が予め入力されており、これを元にテクスチャマッピングを施し、歪み補正を行う。
【0099】
なお、制御装置40は後述するステップS49でテクスチャマッピングを実行するが、テクスチャマッピングの元となるテクスチャは、図4のステップS6で生成した投影映像そのものである。制御装置40は、このテクスチャマッピング技術を用いることで、補正点の位置を変更するだけで投影映像を変形する補正を行う。
【0100】
ただし、このテクスチャマッピング技術は、例えば図12の(d)に示すように、投影映像に歪みが発生する。この歪みを緩和するため、図13に示すように、投影映像を細分化する処理を行う(S42)。
【0101】
まず、投影映像の歪みを緩和する方法について図15を用いて説明する。
【0102】
図15は、細分化した投影映像を示す図である。
【0103】
制御装置40は、図14のように投影映像を細分化した複数の補正点を生成し、生成した複数の補正点に新たなテクスチャ座標を割り当てる。具体的には、制御装置40は、図15の(a)では細分化前の四角形であり、図15の(b)のように補正点を細分化する、つまり、図15の(a)の四角形を格子状に細分化する。制御装置40は、さらに、2つの隣接する三角形がペアとなるように、細分化された四角形をさらに細分化する。これにより、制御装置40は、補正点を移動させた際に、図15(c)のように投影映像の歪みを緩和したテクスチャマッピングを実行する。
【0104】
次に、ステップS42における細分化の方法について、図16を用いて説明する。
【0105】
図16は、四角形を細分化する方法について説明する図である。この四角形は、投影映像に相当してもよいし、図14にある隣接する二つの三角形をペアとすれば、図14内の複数の三角形ペアに用いてもよい。
【0106】
図16の(a)では、図12の(a)と同等に、四角形には頂点である4つの補正点(A,B,C,D)が規定される。これら4つの補正点は、歪み補正データ内の補正点における配置位置通りに配置される。4つの補正点を結んで形成される四角形状のそれぞれの辺は、時計回りに、補正線T,R,U,Lと規定される。具体的には、補正点A,Bで補正線T、補正点B,Cで補正線R、補正点C,Dで補正線U、補正点D,Aで補正線Lが規定される。それぞれの補正線T,R,U,Lは、予め定めた分割数nで均等分割される。均等分割した補正線T,R,U,L上の分割点には、補正点(頂点)が生成される。分割点となる補正点を識別するために、それぞれの補正線上の分割点に時計回りに0から始まる数値は、例えば、補正線Tでは分割点となる補正点1,2・・・n-2が振られる。補正線R,U,Lについても同様である。
【0107】
図16の(b)では、補正線Tの分割点の補正点1と、補正線Uの分割点の補正点n-2と線分TUで結ぶ。また、補正線Lの分割点の補正点n-2と、補正線Rの分割点の補正点1とを線分LRで結ぶ。制御装置40は、このように形成された線分TUと線分LRとを総当たりで交差判定し、線分TUと線分LRとの交点があれば、交点上に補正点を生成する。こうして、四角形状の補正点(A,B,C,D)で規定される領域が、さらに格子状に分割されることで、複数の補正点が生成される。
【0108】
また、制御装置40は、線分TUと線分LRとにより形成されたそれぞれの格子から、格子をさらに2つに分割する三角形を形成する。つまり、制御装置40は、線分TUと補正線Tとの交点(補正点)、線分LRと補正線Lとの交点(補正点)とを結ぶ対角線で格子を分割する。
【0109】
制御装置40は、このような処理により、図15の(b)のような細分化された補正点(テクスチャ座標)と、テクスチャ座標で規定される三角形とを求める。細分化により生成した補正点の算出は、補正点(A,B,C,D)の位置を配置座標でなく、歪み補正データ内の補正点におけるテクスチャ座標の位置に表現してから、上記処理を実行することで算出する。
【0110】
なお、2つの三角形がペアとなる四角形に基づいて、細分化処理を行う四角形補正を実行してもよい。また、四角形補正を実行しない場合は、細分化せずに、後述するステップS49でテクスチャマッピングを実行してもよい。
【0111】
また、上述の処理の通り、補正点の細分化は、基点となるA,B,C,Dの位置関係により自動形成される。基点となるA,B,C,Dの四つの補正点を移動した場合には、移動前の細分化処理結果を破棄し、制御装置40における上述の処理を再実行することで、移動後のA,B,C,Dの位置関係から細分化した補正点を自動形成する。このようにして補正点を移動した場合にも、細分化処理を再実行することで、通常のテクスチャマッピングよりも投影映像の変形を歪み無く実行することができる。一方、この細分化処理は、自動形成であるため、より細かな補正を行う場合、より多くの補正点を歪み補正データに追加する必要があることは言うまでもない。
【0112】
図13のステップS42の処理が終了すると、補正点の入力作業が増加を抑制するために、制御装置40は、ワーピング補正点が入力されたかどうかを判定する(S43)。
【0113】
例えば、スクリーン10の接合部14の湾曲を一様にする事が施工上困難である場合、この誤差が投影映像の歪みとして顕著に発生する場合がある。これを補正するためには、より多くの補正点を入力する必要があり、補正データの入力作業の負荷が増大することがある。本実施の形態では、この負荷を緩和するため、補正点を増やさずに、簡易に補正が行える処理を実行する。本実施の形態では、これをワーピング補正と呼称する。
【0114】
ワーピング補正では、バネ質点系(上述の複数の補正点及び補正線に対応する)によるシミュレーション技法を用いる。バネ質点系では、任意に配置された質点(上述の補正点に対応する)をバネ(上述の補正線に対応する)で結び、質点に与えられた力とそれぞれの質点が結ばれたバネが相互に及ぼしあう力を計算する。例えば、第1質点を移動させた場合に、第1質点に隣接する第2質点がバネの力で弾性的に移動する。つまり、一つの第1質点を移動するだけで、移動した第1質点の周辺の第2質点がバネの力で弾性的に移動する。本実施の形態では、移動させた1つの点をワーピング補正点と呼称するが、このワーピング補正点を移動することで、ワーピング補正点の近傍の補正点を弾性的に、つまり、自然に移動することができる。
【0115】
ワーピング補正の方法について説明する。
【0116】
図17は、ワーピング補正の方法を説明する図である。
【0117】
図17(a)及び図17(b)に示すように、投影映像をワーピング補正する際に、図17(a)で太い実線(制約線)内に例示された任意の隣接する三角形をペアとした四角形群の領域から図17(b)のように複数の補正点と、補正線とを後述するステップS45で自動形成する。自動形成された補正点と補正点を結ぶ補正線は、弾性的に変形移動するバネの性質を有する。
【0118】
制御装置40は、ワーピング補正点が移動するとその移動量とワーピング補正点と補正点との距離に応じて、自動形成された各補正点を弾性的に移動せることで、投影映像の歪み補正処理を実行する。
【0119】
図18は、ワーピング補正点の移動前と移動後とを示す図である。図18では、四角形内の任意のワーピング補正点を規定(破線で示すワーピング補正の移動前)し、これを移動させると(実線で示すワーピング補正の移動後)、ワーピング補正点の周辺に存在する補正点(前述の交点)も弾性移動するとともに、ワーピング補正点周辺の補正線も弾性変形(さらに弾性移動)する様子を示す。
【0120】
この弾性移動する補正点は、後述するステップS45で自動的に細分化した補正点であるため、ユーザが新たに、補正点を追加する必要は無い。このように、投影映像上の補正点を数多く設定せずとも、より簡易に自然な投影映像の歪み補正処理を実行できる。
【0121】
ここで、ワーピング補正点には、ワーピング補正点の配置位置、ワーピング補正点の移動量、ワーピング補正点の制約線、及び、ワーピング補正点の減衰力が含まれる。
【0122】
ワーピング補正点の配置位置は、図4のステップS6で生成した投影映像上の位置(X,Y)を示し、図18では制約線で囲まれた四角形内の位置を示す。
【0123】
ワーピング補正点の移動量は、ワーピング補正点を実際に移動させる量であり、図18のワーピング補正点の移動前から移動後までの量である。
【0124】
制約線は、ワーピング補正を行う際に影響する補正点(前述の交点)を限定するための変数であり、配列で定義される。つまり、制約線は、ワーピング補正を行う際に影響する限界の領域を区切る境界となる。複数の制約線で囲まれた領域内は、ワーピング補正を行う際に映像の歪みが補正される領域であり、複数の制約線で囲まれた領域の外側は、ワーピング補正を行っても映像の歪みが補正されない領域である。このため、複数の制約線で囲まれた領域内に配置される補正点が弾性移動し、補正線が弾性変形する。
【0125】
制約線の配列には、補正線が保持するIDが格納される。補正線は、補正線であると同時に制約線として制御装置40に認識される。複数の制約線で囲まれた領域内の補正点のみがワーピング補正に影響され、制約線上の補正点はワーピング補正に影響されない。
【0126】
ワーピング補正点の減衰力は、ワーピング補正の強さを示し、ワーピング補正点に近い補正点ほど、移動量が大きいことを示す。
【0127】
図13に示すステップS43の処理において、制御装置40は、ワーピング補正点が入力部20に入力されたことを判定すると(S43でYes)、ワーピング補正に影響する三角形を抽出する(S44)。具体的には、制御装置40は、それぞれの三角形に示される、3つの補正点と3つの補正点を結ぶ補正線に基づいて、三角形の重心を計算する。制御装置40は、計算した三角形の重心がワーピング補正点の制約線で形成される多角形内に含まれていれば、ワーピング補正に影響する三角形と判定し、この三角形を抽出する。
【0128】
一方、制御装置40は、ワーピング補正点が入力されていないことを判定すると(S43でNo)、ステップS49に進み、テクスチャマッピングを実行する。
【0129】
次に、ステップS44の処理を終了すると、制御装置40は、抽出したワーピング補正に影響する三角形に対し、ステップS42と同様に細分化する(S45)。ただし、ステップS42ですでに細分化された三角形に対しては、さらに細分化を行わなくてもよい。
【0130】
次に、制御装置40は、細分化された三角形が保持する補正点(頂点)に対してバネを接続する(S46)。制御装置40は、バネの両端における一方端を補正点P1とし、他方端を補正点P2とし、補正点P1、P2をバネのデータ構造として記憶部50に格納する。また、制御装置40は、バネの自然長における、補正点P1と補正点P2との距離もバネのデータ構造として記憶部50に格納する。
【0131】
次に、制御装置40は、以下の式(1)を用いて、バネに接続された補正点を弾性移動させる(S47)。制御装置40は、弾性移動を補正点ごとに行う。ただし、制約線上の頂点に関して移動は行わない。
【0132】
【数1】
【0133】
なお、本実施の形態で使用する式は、ワーピング補正点に近い位置に配置された補正点である程、ワーピング補正の影響力が強くなるが、本式を用いずに独自の計算式で実装してもよい。
【0134】
次に、制御装置40は、バネ質点系による弾性移動を実行する(S48)。
【0135】
具体的には制御装置40は、以下の式(2)を用いて、ステップS46でバネに接続された補正点P1、P2の位置を更新する。制御装置40は、これらの位置を更新をバネごとに行う。ただし、制約線上の頂点に関して移動は行わない。
【0136】
制御装置40は、バネ質点系による弾性移動の処理を複数回繰り返す。これにより、弾性移動のシミュレーション精度が向上する。本実施の形態では、処理時間の関係上、処理を二回にわたって実行しているが、処理を任意の回数にわたって実行してもよい。
【0137】
【数2】
【数3】
(補正点P1+補正点P2)/2は、補正点P1と補正点P2とを結ぶ補正線の中心を示す。
k:バネ定数
f:(バネの自然長-バネの現在長)で示されるバネの力
バネの現在長は、補正点P1から補正点P2までの距離
【0138】
なお、本実施の形態で使用する式(2)を用いずに独自の計算式で頂点移動を実装してもよい。
【0139】
次に、制御装置40は、上述の処理で生成された補正点、三角形、及び、図4のステップS6で生成した投影映像に基づいて、テクスチャマッピングによる補正処理を実行する(S49)。こうして、制御装置40は、図4のステップS7に示すテクスチャマッピングによる補正処理を実行することで、図4のステップS8に示す投影映像を補正した補正映像を生成する。
【0140】
これにより、それぞれの映像装置が補正映像をスクリーン10に投影すると、視聴者は、スイートスポットSから、歪みの無い又は歪みの抑制された映像を見ることができる。
【0141】
[作用効果]
次に、本実施の形態における映像投影システム1の作用効果について説明する。
【0142】
上述したように、本実施の形態に係る映像投影システム1は、天井面11と、天井面11と対向する床面12と、天井面11と床面12との間の正面13とを有する筒状のスクリーン10と、映像データ、及び、スクリーン10の形状を示すスクリーンデータが入力される入力部20と、スクリーン10の形状に応じて発生する、映像データに基づく投影映像の歪みを補正する制御装置40と、天井面11、床面12及び正面13に、投影映像を補正した補正映像を投影する複数の投影装置30とを備える。そして、投影装置30は、スクリーン10に対して水平方向の両側に1台以上ずつ配置される。
【0143】
これによれば、スクリーン10に対して水平方向の両側、つまり、スクリーン10の右側と左側とに投影装置30をそれぞれ設置し、それぞれの投影装置30がスクリーン10に映像を投影する。このため、スクリーン10に映像が投影されている最中に、視聴者が移動したり、座席から立上ったりしても、投影する映像が視聴者によって遮られ難い。これにより、スクリーン10に影ができ難くなるため、視聴者に違和感を与えてしまうといったことが生じ難くなる。
【0144】
また、この映像投影システム1では、筒状のスクリーン10の全面に映像を投影するため、視聴者の視野角の全てにスクリーン10が映る。このため、従来の映像投影システム1のように床面12に映像が投影されていない場合よりも、本実施の形態における映像投影システム1の方が、視聴者に臨場感を与え易くなり、没入感を与え易くなる。
【0145】
また、この映像投影システム1では、スクリーン10の形状を筒状にすることで、スクリーン10の形状を半球状に形成する場合に比べて、スクリーン10の大型化が抑制されている。
【0146】
したがって、この映像投影システム1では、スクリーン10に影が映り込み難く、かつ、スクリーン全域に投影しながらもスクリーン10の大型化を抑制することができる。
【0147】
また、本実施の形態に係る映像投影システム1において、天井面11と正面13との接合部14と、床面12と正面13との接合部14とは、湾曲している。
【0148】
例えば、それぞれの接合部14が湾曲していなければ、スイートスポットSから少しズレた位置でスクリーン10に投影された映像を見た場合、それぞれの接合部14に投影された映像の部分が不自然に屈曲して見える。
【0149】
しかし、本実施の形態では、スイートスポットSから少しズレた位置でスクリーン10に投影された映像を見た場合、それぞれの接合部14が投影された映像が滑らかに曲がって見える。このため、スイートスポットSから少しズレた位置でスクリーン10を見てもスクリーン10に投影された映像に違和感を覚え難い。その結果、映像投影システム1では、視聴者に対して、より広範囲で没入感を与える映像を視聴させることができる。
【0150】
また、本実施の形態に係る映像投影システム1において、それぞれの投影装置30がスクリーン10に投影する補正映像は、長方形である。また、それぞれの投影装置30は、補正映像の長辺と水平方向とが平行となるように補正映像が示す物体を正立させてスクリーン10に投影し、又は、補正映像の短辺と鉛直方向とが平行となるように補正映像が示す物体を正立させてスクリーン10に投影する。
【0151】
これによれば、スクリーン10の大きさと、補正映像のアスペクト比との関係から、スクリーン10に投影した補正映像で覆うことができなくても、映像の向きを変える(投影装置30自体を90°回転させる)ことで、スクリーン10の全てを映像で覆うことができる。このため、映像投影システム1では、視聴者に対して、没入感を損ね難い。
【0152】
また、本実施の形態に係る映像投影システム1において、映像データは、全方位撮像装置で撮像されたデータである。
【0153】
また、本実施の形態に係る映像投影システム1において、映像データは、三次元形状データである。
【0154】
これらによれば、映像データを三次元形状データに加工しやすい。
【0155】
また、本実施の形態に係る映像投影システム1において、スクリーン10に投影された補正映像をスイートスポットSから見た場合、補正映像に示される物体は、実寸大に表示される。
【0156】
これによれば、特定の位置(スイートスポットS)から見れば、実寸大で映像を見ることができるため、視聴者は、臨場感を覚え易くなり、没入感を覚え易くなる。
【0157】
また、本実施の形態に係る映像投影システム1において、スクリーンデータは、さらに、投影装置30における仕様、及び、スクリーン10に対する投影装置30の配置位置を含む。制御装置40は、スクリーンデータに基づいて、それぞれの投影装置30が投影映像をスクリーン10に投影するための投影領域を算出し、映像データを三次元形状データに変換した周囲環境映像を生成し、それぞれの投影装置30ごとに、投影領域に対応する周囲環境映像に基づいて投影映像を生成し、かつ、スクリーン10の形状に応じて発生する投影映像の歪みを補正した補正映像を生成する。
【0158】
これによれば、投影領域をより精度よく算出することができる。このため、スクリーンにズレを生じさせないように、映像を投影することができる。
【0159】
また、制御装置40は、スクリーンの形状に応じて投影映像が変形して表示されないように、スクリーンの形状に応じた、映像データに基づく投影映像の歪みを補正することができる。このため、スクリーンには、歪みが補正された補正映像を投影することができる。その結果、視聴者は、スイートスポットSから、歪みの無い又は歪みの抑制された映像を見ることができる。したがって、視聴者は、臨場感を覚え易くなり、没入感を覚え易くなる。
【0160】
また、本実施の形態に係る映像投影システム1において、制御装置40は、複数の投影装置30の台数に応じて、一回ずつ周囲環境映像を生成する。
【0161】
例えば、図10のように、周囲環境映像をキューブ状に模擬した場合は、正面、上面、下面、左面、及び、右面の計5面の映像を個別にレンダリングするため、制御装置の処理負荷が高くなってしまう。このため、スクリーン10aに表示される映像が滑らかな動きを再現できず、映像の動きが途切れ途切れになることがある。
【0162】
しかしながら、本実施の形態では、制御装置40は、図9のように周囲環境映像を屏風状に模擬し、さらにスクリーン形状とスイートスポットから最適な視野角でレンダリングすることで、レンダリング回数が左と右との二回となるため、従来のように、5面をレンダリングする場合に比べて、周囲環境映像の生成が高速化される。
【0163】
また、本実施の形態に係る映像投影システム1において、入力部20には、さらに、スクリーン10の形状に応じて変形する投影映像の歪みを補正するための歪み補正データが入力される。そして、制御装置40は、さらに、歪み補正データに応じて投影映像の歪みを補正する。
【0164】
これによれば、歪み補正データに基づいて、スクリーン10の形状に応じた投影映像の歪み補正処理を実行することができる。このため、スクリーン10に投影された補正映像は、例えばスクリーン10の接合部14でスクリーン10の施工図面と実際の施工とで乖離が発生した場合にも、滑らかに見えるため、不自然に湾曲して見え難くなる。このため、視聴者は、臨場感を覚え易くなり、没入感を覚え易くなる。
【0165】
また、本実施の形態に係る映像投影システム1において、歪み補正データは、複数の補正点と、複数の補正点のうちの少なくとも二つの補正点を結ぶ1以上の補正線とで構成される。そして、制御装置40は、複数の補正点のうちの少なくとも1つの補正点が移動すると、補正点の移動量に応じて投影映像の歪み補正処理を実行する。
【0166】
これによれば、複数の補正点と、三角形状又は四角形状に細分化できるようにそれぞれの補正点を結んだ複数の補正線とを投影映像に配置(プロット)することで、複数の補正点のうちの補正点を移動させると、補正点に引っ張られるように、補正点の周辺の領域に対応する投影映像が移動する。このため、映像投影システム1では、投影した映像が不自然に歪んで見えることが抑制され、映像が滑らかに見える。
【0167】
また、本実施の形態に係る映像投影システム1において、歪み補正データは、複数の補正点と複数の補正線とによって形成された三角形又は四角形が配列された集合体である。
【0168】
これによれば、歪み補正データを用いて投影映像を補正することで、投影映像を細分化することができる。このため、映像投影システム1では、投影した映像が不自然に歪んで見えることが抑制され、映像が滑らかに見える。
【0169】
また、本実施の形態に係る映像投影システム1において、制御装置40は、ワーピング補正点が移動されると、ワーピング補正点に接続される補正線と当該補正線に接続される他の補正点とを少なくとも移動させることで、投影映像の歪み補正処理を実行する。
【0170】
これによれば、複数の点と、三角形状又は四角形状になるようにそれぞれの補正点を結んだ複数の補正線とを映像データの映像に配置(プロット)することで、複数の補正点のうちのワーピング補正点を移動させると、ワーピング補正点に接続される補正線及びこの補正線に接続される他の補正点がワーピング補正点に引っ張られるように移動する。この際、ワーピング補正点、ワーピング補正点に接続される補正線及び他の補正点に対応する投影映像、つまり、ワーピング補正点とその周辺の領域に対応する投影映像が移動する。このため、この映像投影システム1では、移動させる全ての点を選択しなくても映像を滑らかに補正することができる。その結果、映像投影システム1では、投影された映像が不自然に歪んで見えることが抑制されるとともに、歪み補正を簡易にすることができるため使い勝手がよい。
【0171】
(その他の変形例)
以上、本開示に係る映像投影システムについて、上記各実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態に施したものも、本開示の範囲内に含まれてもよい。
【0172】
例えば、上記実施の形態に係る映像投影システムにおいて、歪み補正データは後述する投影映像に関しスクリーンへの実投影時に歪みが発生した際に用いるが、歪みを許容する場合には必ずしも入力する必要はない。
【0173】
また、上記実施の形態に係る映像投影システムにおいて、スクリーンの正面と対向して視た場合、投影装置の一部は、スクリーンの正面と重なる位置に配置されていてもよく、スクリーンの正面と重ならない位置に配置されていてもよい。この場合、投影装置は、天井面の延長面と床面の延長面との間に配置される。
【0174】
また、上記実施の形態に係る映像投影システムに含まれる各処理部は典型的に集積回路であるLSIとして実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部又は全てを含むように1チップ化されてもよい。
【0175】
また、集積回路化はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後にプログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又はLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0176】
なお、上記各実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリ等の記憶媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0177】
また、上記で用いた数字は、全て本開示を具体的に説明するために例示するものであり、本開示の実施の形態は例示された数字に制限されない。
【0178】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0179】
また、フローチャートにおける各ステップが実行される順序は、本開示を具体的に説明するために例示するためであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が、他のステップと同時(並列)に実行されてもよい。
【0180】
なお、上記の各実施の形態に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0181】
1 映像投影システム
10 スクリーン
11 天井面
12 床面
13 正面
14 接合部
20 入力部
30 投影装置
40 制御装置
S スイートスポット
図1
図2
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図5
図6
図7
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図9
図10
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