(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】浄水フィルター、浄水カートリッジ及びポット型浄水器
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20230101AFI20230519BHJP
B01D 39/14 20060101ALI20230519BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
C02F1/28 D
C02F1/28 G
B01D39/14 M
B01J20/20 A
(21)【出願番号】P 2019115552
(22)【出願日】2019-06-21
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】酒井 麻依子
(72)【発明者】
【氏名】内藤 宣博
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-060401(JP,U)
【文献】特開平09-239214(JP,A)
【文献】特開2009-006298(JP,A)
【文献】特開2016-117002(JP,A)
【文献】実公平07-037682(JP,Y2)
【文献】米国特許第05580451(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/28
B01D 39/00-41/04
B01J 20/00-20/28
B01J 20/30-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状である活性炭成型体を備え、原水が該円筒形状における径方向に通水される浄水フィルターであって、
前記活性炭成型体の前記原水が流入する側の側面に、熱融着性短繊維を含む不織布
Aを備え
、
前記活性炭成型体の、前記原水が前記円筒形状における径方向に通水されることにより浄化された浄水が排出される側の側面に、長繊維又は連続繊維からなる不織布Bを備える、浄水フィルター。
【請求項2】
前記不織布Aが無機繊維を含む、請求項1に記載の浄水フィルター。
【請求項3】
円筒形状である活性炭成型体を備え、原水が該円筒形状における径方向に通水される浄水フィルターであって、
前記活性炭成型体の前記原水が流入する側の側面に、熱融着性短繊維及び無機繊維を含む不織布Aを備える、浄水フィルター。
【請求項4】
前記熱融着性短繊維の熱融着性成分がポリエステル系樹脂である、請求項1
~3のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
【請求項5】
前記活性炭成型体が熱融着性短繊維を含む、請求項1
~4のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
【請求項6】
前記不織布
Aの厚さと目付から算出される見かけ密度が0.08~0.30g/cm
3である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
【請求項7】
前記不織布
Aがイオン交換繊維、セルロース系繊維及び動物繊維からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
【請求項8】
前記活性炭成型体を構成する活性炭が繊維状活性炭である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の浄水フィルターを備えるポット型浄水器用浄水カートリッジ。
【請求項10】
原水が流入する流入部、及び浄水が流出する流出部を有する筒状のケーシングと、前記ケーシングの内部に収容され、前記原水をろ過するため
の浄水フィルターと、を備え、
前記浄水フィルターは、円筒形状である活性炭成型体を備え、原水が該円筒形状における径方向に通水される浄水フィルターであって、
前記活性炭成型体の前記原水が流入する側の側面に、熱融着性短繊維を含む不織布を備える、浄水フィルターであり、
前記浄水フィルターは、弾性を有するとともに、空洞部を有する円筒状に形成され、軸方向の両端に、それぞれ第1面及び第2面を有しており、前記ケーシングは、前記浄水フィルターの第1面をカバーする第1カバー部と、前記浄水フィルターの第2面をカバーする第2カバー部と、前記浄水フィルターの外周面を覆う側壁部と、を備え、前記第1カバー部には、前記空洞部の外周を囲むように前記浄水フィルターの第1面に環状に接触し、前記浄水フィルターを軸方向に押圧し弾性変形させる第1接触部が形成され、前記第2カバー部には、前記空洞部の外周を囲むように前記浄水フィルターの第2面に環状に接触し、前記浄水フィルターを軸方向に押圧し弾性変形させる第2接触部が形成され、前記浄水フィルターは前記第1接触部及び前記第2接触部の押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング内部に収容され、前記ケーシングの前記流入部から流入した前記原水は、前記第1カバー部を介して、前記浄水フィルターの前記空洞部に流入し、当該浄水フィルターを径方向外方に通過して前記浄水フィルターの外周面と前記ケーシングの側壁部との間の空間に流出し、前記流出部から外部に排出されるように構成されている、ポット型浄水器用浄水カートリッジ。
【請求項11】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の浄水フィルターを備えるポット型浄水器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水フィルター、浄水カートリッジ及びポット型浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒形状の活性炭成型体を含む浄水フィルターが知られている。該浄水フィルターとして、活性炭成型体の活性炭が一部脱落し浄化された水に混入することを防ぐべく、円筒形状における外周側側面及び内周側側面に不織布を備えさせたものが知られている。
【0003】
上記浄水フィルターとして、例えば、円筒体の内周層と外周層がそれぞれ不織布からなり、内周層と外周層の間の層が活性炭素繊維と熱溶融性繊維からなる混抄紙によって構成され、前記円筒体の両端部を熱可塑性樹脂によって固着するようにした浄水フィルターにおいて、前記不織布を構成する繊維は、繊維径10~50μmの繊維と、繊維径0.5~3μmの繊維を含み、かつ65%RH、20℃における平衡水分率が5%以上の繊維を含むことを特徴とする浄水フィルターが知られている(例えば特許文献1参照。)。該浄水フィルターによれば、通水方向からの活性炭素繊維の脱落が防止されると共に、低水圧で使用される場合においても通水初期から通水性が高いものとなるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、浄水カートリッジを備えた浄水器として、いわゆるポット型のものが知られている。このポット型浄水器は、上側に位置する原水貯留部と、下側に位置する浄水貯留部との間に浄水カートリッジを介在させる構造になっている。原水貯留部に貯留される原水は自重により浄水カートリッジを通って浄水貯留部に流れ、浄水カートリッジ内にて浄化される。
【0006】
ポット型浄水器は、原水が自重により浄水カートリッジを通るため、特許文献1で想定されている用途である冷蔵庫の自動製氷機あるいは給湯器よりも一層低水圧となる。そして、本発明者等は、特許文献1の浄水カートリッジをポット型浄水器に適用した場合、流量が充分でなく、浄水に時間がかかる場合があることを知得した。
【0007】
また、ポット型浄水器は、前記したように浄水カートリッジの上側に原水貯留部を備えるところ、本発明者等は、円筒状である浄水フィルターの原水が流入する側の側面から活性炭成型体の活性炭が脱落した場合、脱落した活性炭が原水貯留部の水面に浮き上がり、ポット型浄水器のユーザーを不快にさせてしまうことを知得した。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題を解決し、例えばポット型浄水器に適用した場合にも、充分な流量を有し、かつ、脱落した活性炭の原水貯留部への流入を低減することに寄与する、浄水カートリッジに関する技術を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等が検討したところ、ポット型浄水器に適用した場合に、充分な流量を有するには、活性炭成型体の前記原水が流入する側の側面に配置される不織布における圧力損失を低減することが有効であることを知得した。しかしながら、本発明者等は、特許文献1の浄水カートリッジにおいて、ポット型浄水器とした場合の流量を高めるべく、円筒体の内周層と外周層としてそれぞれ配置される不織布の密度を低いものとすると、特に原水が流入する側の側面から原水貯留部への活性炭の漏出が多くなりやすくなることを知得した。すなわち、ポット型浄水器に適用する場合、充分な流量を有することと、原水貯留部への活性炭の漏出を低減させることとは、トレードオフの関係となっていることを知得した。
【0010】
そして、本発明者等が上記課題を解決すべくさらに検討を重ねたところ、活性炭成型体の原水が流入する側の側面に、種々ある不織布の中でも、熱融着性短繊維からなる不織布を配置することにより、初めて、例えばポット型浄水器に適用した場合にも、充分な流量を有し、かつ、脱落した活性炭の原水貯留部への流入を低減し得ることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
【0011】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.円筒形状である活性炭成型体を備え、原水が該円筒形状における径方向に通水される浄水フィルターであって、前記活性炭成型体の前記原水が流入する側の側面に、熱融着性短繊維を含む不織布を備える、浄水フィルター。
項2.前記熱融着性短繊維の熱融着性成分がポリエステル系樹脂である、項1に記載の浄水フィルター。
項3.前記活性炭成型体が熱融着性短繊維を含む、項1又は2に記載の浄水フィルター。
項4.前記不織布の厚さと目付から算出される見かけ密度が0.08~0.30g/cm3である、項1~3のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
項5.前記不織布がイオン交換繊維、セルロース系繊維及び動物繊維からなる群より選ばれる1種以上を含む、項1~4のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
項6.前記不織布が無機繊維を含む、項1~5のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
項7.前記活性炭成型体を構成する活性炭が繊維状活性炭である、項1~6のいずれか1項に記載の浄水フィルター。
項8.項1~7のいずれか1項に記載の浄水フィルターを備えるポット型浄水器用浄水カートリッジ。
項9.原水が流入する流入部、及び浄水が流出する流出部を有する筒状のケーシングと、前記ケーシングの内部に収容され、前記原水をろ過するための項1~7のいずれか1項に記載の浄水フィルターと、を備え、前記浄水フィルターは、弾性を有するとともに、空洞部を有する円筒状に形成され、軸方向の両端に、それぞれ第1面及び第2面を有しており、前記ケーシングは、前記浄水フィルターの第1面をカバーする第1カバー部と、前記浄水フィルターの第2面をカバーする第2カバー部と、前記浄水フィルターの外周面を覆う側壁部と、を備え、前記第1カバー部には、前記空洞部の外周を囲むように前記浄水フィルターの第1面に環状に接触し、前記浄水フィルターを軸方向に押圧し弾性変形させる第1接触部が形成され、前記第2カバー部には、前記空洞部の外周を囲むように前記浄水フィルターの第2面に環状に接触し、前記浄水フィルターを軸方向に押圧し弾性変形させる第2接触部が形成され、前記浄水フィルターは前記第1接触部及び前記第2接触部の押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング内部に収容され、前記ケーシングの前記流入部から流入した前記原水は、前記第1カバー部を介して、前記浄水フィルターの前記空洞部に流入し、当該浄水フィルターを径方向外方に通過して前記浄水フィルターの外周面と前記ケーシングの側壁部との間の空間に流出し、前記流出部から外部に排出されるように構成されている、ポット型浄水器用浄水カートリッジ。
項10.項1~7のいずれか1項に記載の浄水フィルターを備えるポット型浄水器。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えばポット型浄水器に適用した場合にも、充分な流量を有し、かつ、脱落した活性炭の原水貯留部への流入を低減することに寄与する、浄水カートリッジに関する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】in-outタイプカートリッジの外観斜視図。
【
図3】ケーシング及び浄水フィルターの外観斜視図。
【
図7】in-outタイプカートリッジ内の水の流れを説明する断面図。
【
図8】out-inタイプのカートリッジの外観斜視図。
【
図9】out-inタイプのカートリッジの断面図。
【
図10】out-inタイプのカートリッジ内の水の流れを説明する断面図。
【
図11A】in-outタイプカートリッジが使用されたポット型浄水器の断面模式図。
【
図11B】out-inタイプカートリッジが使用されたポット型浄水器の断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の浄水フィルターは、円筒形状である活性炭成型体を備え、原水が該円筒形状における径方向に通水される浄水フィルターであって、前記活性炭成型体の前記原水が流入する側の側面に、熱融着性短繊維を含む不織布を備えることを特徴とする。
【0015】
例えば
図1において、浄水フィルター3は、円筒形状である活性炭成型体35と、活性炭成型体35の径方向における内周側に配置される不織布36と、活性炭成型体35の径方向における外周側に配置される不織布37とを備える。
図1において、浄水フィルター3は、内部に空洞部を有する。
【0016】
円筒形状である本発明の浄水フィルターにおいて、原水及び浄水の通水方向のタイプとしては、in-outタイプと、out-inタイプの2通りが考えられる。
図1を参照して説明すると、in-outタイプでは、原水が浄水フィルター2の空洞部に流入し、円筒形状の径方向外周側に向かって、不織布36、活性炭成型体35、不織布37の順に通過することによって浄化され、浄水が不織布37の外面側(不織布37の、活性炭成型体35との接面とは反対の面側)へ排出される。そして、
図1に基づき説明すると、本発明の浄水フィルターにおける「活性炭成型体の前記原水が流入する側の側面」とは、in-outタイプの場合は活性炭成型体35の、不織布36との接面に相当し、当該不織布36が熱融着性短繊維からなる不織布である必要がある。
【0017】
また、out-inタイプは、上記in-outタイプと通水方向が逆方向であり、原水が不織布37の外面側(不織布37の、活性炭成型体35との接面とは反対の面側)から流入し、円筒形状の径方向中心方向に、不織布37、活性炭成型体35、不織布36の順に通過することによって浄化され、浄水が空洞部へ排出される。そして、
図1に基づき説明すると、本発明の浄水フィルターにおける「活性炭成型体の前記原水が流入する側の側面」とは、out-inタイプの場合は活性炭成型体35の、不織布37との接面に相当し、当該不織布37が熱融着性短繊維からなる不織布である必要がある。
【0018】
<活性炭成型体の原水が流入する側の側面に備えられる、熱融着性短繊維を含む不織布>
本発明の浄水フィルターは、活性炭成型体の前記原水が流入する側の側面に、熱融着性短繊維を含む不織布を備える。これにより、ポット型浄水器に適用した場合にも、充分な流量を有し、かつ、脱落した活性炭の原水貯留部への流入を低減することに寄与する、浄水カートリッジに関する技術を提供することができる。
【0019】
具体的に、本発明者等は、例えばスパンボンド不織布等の長繊維不織布は、長繊維軸方向が平面方向に多く配列するため、特に原水の流入側に配置した場合に圧力損失が比較的大きくなり、ポット型浄水器に適用した場合に流量に劣ることを知得した。そして、本発明者等は鋭意検討し、熱融着性短繊維を含む不織布とすることで、該短繊維が3次元にランダムに配列し、さらに熱融着性繊維に熱処理を加えることで熱融着繊維は比較的硬い状態で、かつ繊維軸方向が一部厚さ方向に配向した状態で不織布内に存在することとなる結果、例えばポット型浄水器に適用した場合にも、充分な流量を有し、かつ、脱落した活性炭の原水貯留部への流入を低減し得ることを見出したのである。
【0020】
熱融着性短繊維は、熱融着性成分を含む。熱融着性成分としては、融点(融点が存在しないものは軟化点、以下同じ。)が80~170℃のものが好ましく、80~140℃であるものがより好ましい。熱融着性成分の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、イソフタル酸等共重合成分が共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が挙げられる。中でも、親水性が比較的高く、水なじみ性がより良好となることで、ポット型浄水器に適用した場合の流量、特に浄水フィルターとしての使用開始時における流量がより向上するという観点から、熱融着性成分はポリエステル系が好ましく、イソフタル酸が共重合されたポリエチレンテレフタレートとすることがより好ましい。なお、本発明において、融点とは、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製DSC7)を用い、昇温速度20℃/分で測定した融解吸収曲線の極値を与える温度を融点とする。
【0021】
熱融着性短繊維は、単一の熱融着性成分のみから構成される全融タイプ、又は鞘部に熱融着性成分、芯部に、融点が鞘部の融点よりも好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上高い合成樹脂成分を配した、芯鞘型の熱融着性短繊維が挙げられる。中でも、浄水フィルターの強度、とりわけ後述する活性炭成型体を繊維状活性炭を含むものとした場合の浄水フィルターの強度、をより高めるという観点から、芯鞘型の熱融着性短繊維とすることが好ましい。芯鞘型の熱融着性短繊維とする場合、芯成分としては特に制限されないが、例えば、融点が150~300℃、より好ましくは200~300℃であって、融点が鞘部の融点よりも20℃以上高い合成樹脂成分が挙げられる。上記合成樹脂成分の具体例としては、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0022】
熱融着性短繊維の繊維長の具体例としては、例えば、1~100mmが挙げられ、10~80mmが好ましく挙げられる。また、熱融着性短繊維の繊維径としては、例えば、1~30μmが挙げられ、10~25μmが好ましく挙げられる。また、熱融着性短繊維の繊度としては、例えば0.1~20dtexが挙げられ、より好ましくは1~10dtexが挙げられる。
【0023】
本発明の浄水フィルターにおいて、活性炭成型体の原水が流入する側の側面に備えられる、熱融着性短繊維を含む不織布は、該熱融着性短繊維のみからなるものとすることができる。これにより、浄水フィルターの強度、特に後述する活性炭成型体を繊維状活性炭を含むものとした場合の浄水フィルターの強度、をより一層高めることができる。一方で、熱融着性短繊維を含む不織布は、該熱融着性短繊維以外の他の成分を含むことができる。活性炭成型体の原水が流入する側の側面に備えられる、熱融着性短繊維を含む不織布において、熱融着性短繊維の含有量としては、特に制限されないが、例えば、5~100質量%が挙げられ、20~100質量%が挙げられ、30~100質量%が挙げられる。
【0024】
上記熱融着性短繊維以外の他の成分としては、無機繊維が挙げられる。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、繊維状活性炭、キレート繊維、ロックウール、アルミナ繊維、チタニア繊維等が挙げられる。上記繊維は、熱融着性短繊維を含む不織布において骨材として機能し、該不織布の嵩高性をより向上させるのに寄与する。無機繊維の中でも、繊維状活性炭が好ましい。繊維状活性炭とする場合、メソ細孔率が好ましくは10%以下、より好ましくは6%以下で、かつ、比表面積が好ましくは1000m2/g以下、より好ましくは900m2/g以下の繊維状活性炭とすると、活性炭の強度が高まり、骨材としての機能がより一層高まる。
【0025】
なお、本発明において、細孔容積とは、QSDFT法(急冷固体密度汎関数法)によって算出される細孔容積をいう。QSDFT法とは、幾何学的・化学的に不規則なミクロポーラス・メソポーラスな炭素の細孔径解析を対象とした、約0.5nm~約40nmまでの細孔径分布の計算ができる解析手法である。QSDFT法では、細孔表面の粗さと不均一性による影響が明瞭に考慮されているため、細孔径分布解析の正確さが大幅に向上した手法である。本発明においては、Quantachrome社製「AUTOSORB-1-MP」を用いて窒素吸着等温線の測定、及びQSDFT法による細孔径分布解析をおこなう。77Kの温度において測定した窒素の脱着等温線に対し、Calculation modelとしてN2 at 77K on carbon[slit pore,QSDFT equilibrium model]を適用して細孔径分布を計算することで、特定の細孔径範囲の細孔容積を算出することができる。そして、活性炭の全細孔容積(m2/g)は、上記QSDFT法によって測定され、具体的には測定した窒素脱着等温線に対し、Calculation modelとしてN2 at 77K on carbon[slit pore,QSDFT equilibrium model]を適用して細孔径分布を計算することで、解析する。また、同様に、細孔径が2nm以下である細孔容積(m2/g)、細孔径が50nm以下の細孔容積についても、上記QSDFT法により、細孔径分布図の横軸Pore Widthが0.65nmにおけるCumulative Pore Volume(cc/g)の読み取り値から求める。そして、メソ細孔率は、上記細孔径が50nm以下の細孔容積から上記細孔径が2nm以下の上記全細孔容積を減ずることにより細孔径2~50nmの細孔容積を算出し、当該細孔径が2~50nmの細孔容積を、上記全細孔容積で除して、100を乗ずることにより、メソ細孔率(%)を求める。また、活性炭の比表面積は、Quantachrome社製「AUTOSORB-1-MP」を用いて77Kにおける窒素吸着等温線より、BET法によって相対圧0.1の測定点から計算する。
【0026】
また、熱融着性短繊維以外の他の成分として、イオン交換繊維、セルロース系繊維及び動物繊維からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。これらの繊維は、熱融着性短繊維を含む不織布において、親水性を向上させるのに寄与し、ポット型浄水器に適用した場合に流量をより多くすることに寄与する。セルロース系繊維としては、木綿や、リネン、ラミーなどの麻繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨンなどの再生繊維、リヨセルなどの溶剤紡糸セルロース繊維などが挙げられる。動物繊維としては、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、シルク、アルパカ等が挙げられる。中でも、イオン交換繊維が好ましい。イオン交換繊維としては、弱酸型が好ましく、末端官能基がCa若しくはNaで置換されたポリアクリレート系イオン交換繊維が挙げられる。
【0027】
熱融着性短繊維を含む不織布の形態としては、特に制限されないが、嵩高性をより一層与え、ポット型浄水器に適用した場合にも、流量をより大きくし、かつ、脱落した活性炭の原水貯留部への流入をより低減させるという観点から、ニードルパンチ不織布とすることが好ましい。
【0028】
熱融着性短繊維を含む不織布の目付としては、ポット型浄水器に適用した場合にも、流量をより多くし、かつ、脱落した活性炭の原水貯留部への流入をより低減させるという観点から、10~100g/m2が好ましく、20~80g/m2がより好ましい。また、熱融着性短繊維を含む不織布の厚さとしては、ポット型浄水器に適用した場合にも、流量をより大きくし、かつ、脱落した活性炭の原水貯留部への流入をより低減させるという観点から、0.05~1.0mmが好ましく、0.08~0.6mmがより好ましい。また、熱融着性短繊維を含む不織布の、上記目付と上記厚さから算出される見かけ密度としては、0.05~0.4g/cm3が好ましく、0.08~0.3g/cm3がより好ましい。なお、上記見かけ密度は、次のように計算される。
見かけ密度(g/cm3)=目付(g/m2)/厚さ(mm)/1000
【0029】
<活性炭成型体の浄水が排出される側の側面に備えられる不織布>
本発明の浄水フィルターは、活性炭成型体の浄水が排出される側の側面に不織布を備えることができる。当該不織布としては、前述した、活性炭成型体の原水が流入する側の側面に備えられる不織布と同様の、熱融着性短繊維を含む不織布としてもよい。また、長繊維又は連続繊維からなる不織布とすることもできる。引裂強度が比較的高く、取り扱い性や加工性がより優れるという観点から、活性炭成型体の浄水が排出される側の側面に備えられる不織布として、長繊維又は連続繊維からなる不織布とすることが好ましい。
【0030】
長繊維又は連続繊維からなる不織布としては特に制限されないが、スパンボンド不織布とすることが好ましい。スパンボンド不織布を構成する長繊維または連続繊維としては、鞘部に熱融着性成分、芯部に、融点が鞘部の融点よりも好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上高い合成樹脂成分を配した、芯鞘型の熱融着性繊維が挙げられる。上記芯鞘型の熱融着性繊維の芯部としては、例えば融点が150~300℃、より好ましくは200~300℃であって、融点が鞘部の融点よりも20℃以上高い合成樹脂成分が挙げられ、より具体的には、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。上記芯鞘型の熱融着性繊維の鞘部としては、好ましくは融点が80~170℃、より好ましくは80~140℃であるものが挙げられ、より具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂、又はイソフタル酸等共重合成分が共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が挙げられる。中でも、柔軟性及び活性炭成型体に対する熱融着性により優れ、取り扱い性や加工性により優れるという観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレンがより好ましい。
【0031】
活性炭成型体の浄水が排出される側の側面に備えられる不織布の目付としては、流量をより多くし、かつ、脱落した活性炭の流出を抑える観点から、10~100g/m2が好ましく、20~80g/m2がより好ましい。活性炭成型体の浄水が排出される側の側面に備えられる不織布の厚さとしては、流量をより多くし、かつ、脱落した活性炭の流出を抑える観点から、0.05~1.0mmが好ましく、0.08~0.6mmがより好ましい。活性炭成型体の浄水が排出される側の側面に備えられる不織布の上記目付と上記厚さから算出される見かけ密度としては、0.05~0.4g/cm3が好ましく、0.08~0.3g/cm3がより好ましい。
【0032】
<活性炭成型体>
本発明の浄水フィルターは、円筒形状である活性炭成型体を備える。活性炭成型体に含まれる活性炭としては、粒状活性炭及び/又は繊維状活性炭が挙げられる。ポット型浄水器に適用した場合にも、流量をより大きくし、かつ、脱落した活性炭の原水貯留部への流入をより低減させるという観点から、活性炭成型体に含まれる活性炭としては、繊維状活性炭を含むものとすることが好ましく、繊維状活性炭のみからなるものとすることが好ましい。
【0033】
活性炭成型体に含まれる活性炭としては、ポット型浄水器に適用した場合の流量をより大きくすべく活性炭成型体の肉厚を可能な限り薄いものとした場合にも、トリハロメタン等の揮発性有機化合物の除去性能を担保しやすくする観点から、メソ細孔率が5~60%が好ましく、10~60%がより好ましく、20~60%がさらに好ましい。また、同様の観点から、当該活性炭の比表面積としては、1000~1800m2/gが好ましく、1000~1600m2/gがより好ましい。一方で、活性炭成型体に含まれる活性炭を上記メソ細孔率の範囲である活性炭、とりわけ上記メソ細孔率の範囲である繊維状活性炭とする場合、比較的大きな細孔が多くなることから、活性炭自体の強度が比較的低いものとなりやすく、活性炭が脱落しやすくなる傾向がある。しかしながら、本発明の浄水フィルターにおいては、活性炭成型体の原水が流入する側の側面に、熱融着性短繊維を含む不織布を備えることから、活性炭成型体を上記メソ細孔率である活性炭を含むものとしてポット型浄水器に適用した場合にも、脱落した活性炭の原水貯留部への流入を低減し得る。換言すれば、本発明の浄水フィルターにおいて、活性炭成型体を上記メソ細孔率である活性炭を含むものとしてポット型浄水器に適用した場合には、活性炭成型体の原水が流入する側の側面に、熱融着性短繊維を含む不織布を備えることによる技術的意義がより大きいものになるといえる。
【0034】
本発明の浄水フィルターにおいて、活性炭成型体は、活性炭以外の他の成分を含むことができる。上記他の成分として、熱融着性短繊維が挙げられる。活性炭成型体にも熱融着性短繊維を含有させることにより、活性炭成型体の原水が流入する側の側面に備えられる不織布、及び活性炭成型体の浄水が排出される側の側面に備えられる不織布との熱融着性がより一層向上する。熱融着性短繊維を含む活性炭成型体は、活性炭が、熱融着性成分によって互いに溶融接着されて形状保持された状態となる。当該熱融着性短繊維に含まれる熱融着性成分としては、融点が80~170℃のものが好ましく、80~140℃であるものがより好ましい。熱融着性成分の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、イソフタル酸等共重合成分が共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が挙げられる。また、活性炭成型体に含み得る熱融着性短繊維として、単一の熱融着性成分のみから構成される全融タイプ、又は鞘部に熱融着性成分、芯部に、融点が鞘部の融点よりも好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上高い合成樹脂成分を配した、芯鞘型の熱融着性短繊維が挙げられる。中でも、浄水フィルターの強度、とりわけ活性炭成型体を繊維状活性炭を含むものとした場合の浄水フィルターの強度、をより高めるという観点から、芯鞘型の熱融着性短繊維とすることが好ましい。芯鞘型の熱融着性短繊維とする場合、芯成分としては特に制限されないが、例えば、融点が150~300℃、より好ましくは200~300℃であって、融点が鞘部の融点よりも20℃以上高い合成樹脂成分が挙げられる。上記合成樹脂成分の具体例としては、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。また、活性炭成型体の原水が流入する側の側面に備えられる不織布に含有される熱融着性短繊維の熱融着性成分と、活性炭成型体に含有される熱融着性短繊維の熱融着性成分とを同種のものとすることが好ましい。ここで、同種とは、例えば、一方がポリエスエル系であれば他方もポリエスエル系であることを示す。
【0035】
また、活性炭成型体における活性炭以外の他の成分として、パルプが挙げられる。パルプは、活性炭成型体において、機械的強度をより向上させるのに寄与する。パルプとしては、濾水度が1~300、好ましくは10~200が挙げられる。パルプの繊維長としては、0.1~3mmが挙げられる。パルプの具体例としては、アクリル系パルプ、ポリオレフィン系パルプ、アラミド系パルプ、木質パルプ、麻パルプ等が挙げられる。
【0036】
また、活性炭成型体における活性炭以外の他の成分として、イオン交換繊維が挙げられる。イオン交換繊維としては、弱酸型が好ましく、末端官能基がCa若しくはNaで置換されたポリアクリレート系イオン交換繊維が挙げられる。
【0037】
活性炭成型体の形態としては、円筒形状であれば特に制限されないが、例えば、湿式成型された活性炭成型体、又は活性炭を含む乾式不織布又は湿式不織布が捲回された状態で成型されている活性炭成型体が挙げられる。
【0038】
具体的に、湿式成型された不織布の具体例として、活性炭を含むスラリーを調製し、該スラリーを、多数の吸引用小孔を有する成型用の型枠に流し込み、吸引用小孔を通じて吸引しながら濾過して予備成型体とし、該予備成型体を乾燥する方法(湿式成型法又はスラリー吸引法)により製造される活性炭成型体が挙げられる(以下、「スラリー吸引成型体」と略することがある。)。この場合、得られる活性炭成型体としては、例えば、活性炭が、前述したパルプと絡み合うことにより形状保持されるものが挙げられる。
【0039】
また、活性炭を含む乾式不織布又は湿式不織布が捲回された状態で成型されている活性炭成型体において、乾式不織布としては、エアレイド又はカード法(カードウェブ法)により得られる短繊維構造体による不織布、及び当該不織布にニードルパンチ加工を施して積層一体化したニードルパンチ不織布が挙げられる。また、湿式不織布としては、繊維状炭素材料を含む溶液を、パルパー、ビーター、リファイナーなどの装置を用いて混合、せん断し、均一に分散したスラリーを作製し、得られたスラリーをワイヤー上に流し、脱水、乾燥して得られる、湿式抄紙不織布が挙げられる。
【0040】
活性炭成型体の質量(g)と体積(=(1/2)×π×{(外径)2-(内径)2}×高さ)から算出される密度としては、0.10~0.55(g/cm3)が挙げられ、0.15~0.5(g/cm3)が好ましく挙げられる。
【0041】
<浄水フィルター>
図1を参照し、本発明の浄水フィルターの、活性炭成型体35の径方向における内周側に配置される不織布36、活性炭成型体35、活性炭成型体35の径方向における外周側に配置される不織布37、の具体的な組合せの例として、以下が挙げられる。
・in-outタイプ
不織布36:熱融着性短繊維を含む不織布/活性炭成型体35:活性炭を含む乾式不織布又は湿式不織布が捲回された状態で成型されている活性炭成型体/不織布37:熱融着性短繊維を含む不織布
不織布36:熱融着性短繊維を含む不織布/活性炭成型体35:活性炭を含む乾式不織布又は湿式不織布が捲回された状態で成型されている活性炭成型体/不織布37:長繊維又は連続繊維からなる不織布
・out-inタイプ
不織布36:熱融着性短繊維を含む不織布/活性炭成型体35:活性炭を含む乾式不織布又は湿式不織布が捲回された状態で成型されている活性炭成型体/不織布37:熱融着性短繊維を含む不織布
不織布36:長繊維又は連続繊維からなる不織布/活性炭成型体35:活性炭を含む乾式不織布又は湿式不織布が捲回された状態で成型されている活性炭成型体/不織布37:熱融着性短繊維を含む不織布
【0042】
浄水フィルターの、円筒形状における高さ(長さ)としては、10~250mmが挙げられ、20~150mmが好ましく挙げられる。また、円柱形状における外径としては、20~100mmが挙げられ、30~65mmが好ましく挙げられる。また、円柱形状における内径としては、5~90mmが挙げられ、10~55mmが好ましく挙げられる。
【0043】
本発明の浄水フィルターの製造方法としては、特に制限されない。例えば、活性炭成型体を、繊維状活性炭を含む乾式不織布又は湿式不織布が捲回された状態で成型されている活性炭成型体とする場合は、次のようにして製造することができる。まず、表面に離型処理が施された円柱状の芯を準備する。次に、当該芯に、活性炭成型体35の径方向における内周側に配置される不織布36を所定の厚さとなるように1回又は複数回巻き付ける。次いで、活性炭成型体35とする繊維状活性炭及び熱融着性短繊維を含む乾式不織布又は湿式不織布を、当該不織布36の上に所定の厚さとなるように1回又は複数回巻き付ける。そして、活性炭成型体35の径方向における外周側に配置される不織布37を所定の厚さとなるように1回又は複数回巻き付ける。そして、得られた、前述の芯に、外径側に向かって不織布36、活性炭成型体とする繊維状活性炭を含む乾式不織布又は湿式不織布、不織布37、の順に巻き付けたものを、炉に入れ、熱処理を施して、熱融着性短繊維の熱融着性成分等を溶融させ、冷却し、上記芯を抜き取ることで、空洞部から外周側に向かって不織布36、活性炭成型体35、不織布37を備える、浄水フィルターを得ることができる。
【0044】
<ポット型浄水器用浄水カートリッジ>
本発明のポット型浄水器用浄水カートリッジは、前述した本発明の浄水フィルターを備える。
【0045】
(A.in-outタイプ)
以下、本発明に係る浄水カートリッジのin-outタイプ(以下、第1実施形態と記載することがある。)について図面を参照しつつ説明する。
図2は本実施形態に係る浄水カートリッジ(以下、単にカートリッジと称することがある)1の外観斜視図、
図4Aは
図2の正面図である。以下では、説明の便宜のため、
図4Aの上下方向を「上下」、
図4Aの左右方向を「左右」または「水平」、
図4Aの紙面方向を「前後」と称し、これを基準に説明を行う。
【0046】
<1.浄水カートリッジの概要>
カートリッジ1は、原水が自重によりカートリッジ1を通過するポット型(サーバー型)の浄水器に主として用いられる。
図11Aに浄水器の一例を示す。同図に示すように、この浄水器100は、上部に開口S1を有する筐体101を備える。筐体101は、内側に、上部が開口したタンク102を有する。タンク102は、原水を貯留するための部分であり、上部の開口S2からタンク102に原水を注ぐことができる。タンク102の底部には開口S4が形成されており、カートリッジ1は、パッキン104とともに開口S4の周縁部をシールするように取り付けられる。タンク102内の原水は、カートリッジ1内部に流入する。なお、開口S2は、開口S1よりも小さく形成されるため、開口S1は、開口S2と開口S3とに区切られる。
【0047】
原水は、カートリッジ1内部を通過した後、カートリッジ1の下方から浄水として流出し、タンク102の下方のサーバー空間103に貯められる。開口S3は、サーバー空間103から浄水を取り出すための取り出し口として機能する。
【0048】
本実施形態に係るカートリッジ1は、
図2~5に示すように、全体として筒状であり、典型的には略円筒形状の外観を有する。カートリッジ1は、ケーシング2と、このケーシング2の内部に収容される略円筒状の浄水フィルター3とを備える。本実施形態のカートリッジ1は、浄水フィルター3の空洞部に流入した原水が、径方向外方に浄水フィルター3を通過し、浄水フィルター3の外周面とケーシング2の側壁部との間の空間に流出する、in-outタイプのカートリッジである。なお、
図2~11Bにおいて、浄水フィルター3における、円筒形状である活性炭成型体35と、活性炭成型体35の径方向における内周側に配置される不織布36と、活性炭成型体35の径方向における外周側に配置される不織布37は図示を省略する。
【0049】
浄水フィルター3は、原水をろ過して浄水とするための部材である。
図3に示すように、浄水フィルター3は中央に上面視略円形の空洞部34を有し、軸方向の両端に第1面31と第2面33とをそれぞれ有する。第1面31及び第2面33に連続し、軸方向に延びる浄水フィルター3の部分を、側周部32と称する。浄水フィルター3は、第1面31が上方に、第2面33が下方に向くような向きでケーシング2に収容される。この状態を収容状態と称する。浄水フィルター3の外径は、ケーシング2の側壁部21の内径よりも小さくなるように構成される。これにより、
図5に示すように、収容状態において、浄水フィルター3の外周面とケーシング2の側壁部21との間に環状の空間230が形成される。
【0050】
第1カバー部20は、略円筒形状の側壁部200と、側壁部200に囲まれた流入部207とを有する。流入部207は、タンク102とカートリッジ1内とを連通させる部分である。すなわち、タンク102内の原水は、流入部207を介してカートリッジ1の内部に流入する。
図5に示すように、流入部207は、側壁部200から連続し、下方へ窪んだ平底容器状に形成され、ケーシング2の内部空間に対向する面203を有する。収容状態における第1カバー部20は、面203において、浄水フィルター3の第1面31に密着することができる。特に、本発明に係る浄水カートリッジは、後述するように浄水フィルター3が第1カバー部20の第1接触部及び第2カバー部22の第2接触部の押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング2内部に収容される。この構成により、浄水フィルターとケーシング及び蓋体との間に弾性部材を介さずとも浄水フィルター3の空洞部34に流入した原水が、第1面31と第1カバー部20との隙間、及び第2面33と第2カバー部22との隙間を通過するのを防止することができ、原水が浄水フィルター3を通過するのを促進することができる。面203の中央には、原水がカートリッジ1内へ流入するための円形の貫通孔207aが形成される。収容状態において、浄水フィルター3の空洞部34は、貫通孔207aの概ね直下に位置し、原水は、貫通孔207aから浄水フィルター3の空洞部34に流入する。
【0051】
側壁部200は、面203の形成される位置から上下方向に延びるよう形成される。側壁部200の外側であって、貫通孔207aよりも上の位置には、カートリッジ1が開口S4の周縁部に取り付けられるためのフランジ204が形成される。また、フランジ204の上下方向の中心には、周方向に延びる溝210が形成される。溝210は、カートリッジ1が開口S4の周縁部に取り付けられる際に、カートリッジ1と開口S4の周縁部との隙間をシールするパッキン104が嵌められるための部分である。
【0052】
側壁部200のフランジ204よりも下で、かつ面203よりも上の位置には、通気口205が形成される。通気口205は、サーバー空間103とケーシング2内部とを連通させる。原水がカートリッジ1内に流入すると、カートリッジ1(ケーシング2)内部の空気が通気口205を介して排出されるため、カートリッジ1を通過する水の動きがよりスムーズになる。通気口205は、カートリッジ1が開口S4の周縁部に取り付けられた状態においてタンク102の外部に位置し、かつ浄水フィルター3の第1面31よりも上方に位置するように配置される。
【0053】
図3に示すように、側壁部200の外側であって通気口205よりも下の位置には、側壁部200の厚みが他の部分より薄い薄肉領域Rが形成される。薄肉領域R上には、径方向外側に突出する略四角形の爪部206が、周方向に間隔を空けて複数形成される。爪部206は、後述する第2カバー部22の窓部222と係合することにより、第1カバー部20と第2カバー部22とを連結可能にする。なお、爪部206と窓部222とによる連結手段は、あくまでも第1カバー部20と第2カバー部との連結手段の一例として挙げたものであり、連結手段は特にこれに限定されず、他の例として、例えば、溶着若しくは接着による連結、又はネジ嵌合による連結等が挙げられる。
【0054】
図5に示すように、第1カバー部20の面203には、面203からケーシング2の内部空間に向かって突出する環状の第1突部208が形成される。第1突部208は、収容状態では、浄水フィルター3の空洞部34を囲むように環状に浄水フィルター3の第1面31に接触し、浄水フィルター3を軸方向に押圧し弾性変形させる。この場合、第1突部208が、空洞部34の外周を囲むように環状に浄水フィルター3の第1面31に接触し、浄水フィルター3を軸方向に押圧し弾性変形させる第1接触部となり得る。本発明の浄水カートリッジにおいて、面203は突部を有さないものでもあり得る。例えば、面203は、平面状であり得る。この場合、面203が、空洞部34の外周を囲むように環状に浄水フィルター3の第1面31に接触し、浄水フィルター3を軸方向に押圧し弾性変形させる第1接触部となり得る。第1突部208の断面形状は特に限定されないが、略三角形状、略四角形状、略半円形状、略半楕円形状等が挙げられる。略三角形状、略四角形状の角については、丸みを帯びたものであってもよい。
【0055】
第2カバー部22は、底部227と、底部227から連続して立ち上がる側壁部220とを有し、全体として略円筒形の外観を有する。
図4Dに示すように、底部227の周縁部には、浄水がカートリッジ1外に排出されるための貫通孔223aが周方向に間隔を空けて複数形成される。複数の貫通孔223aをまとめて流出部223と称する。
図5に示すように、収容状態において、貫通孔223aは、浄水フィルター3の外周面とケーシング2の側壁部21との間の空間230の概ね直下にそれぞれ位置するように形成される。
【0056】
図5に示すように、収容状態における第2カバー部22は、面221において浄水フィルター3の第2面33に接触することができる。特に、本発明に係る浄水カートリッジは、後述するように浄水フィルター3が第1接触部及び前記第2接触部の押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング2内部に収容されることから、浄水フィルターとケーシング及び蓋体との間に弾性部材を介さずとも浄水フィルター3の空洞部34に流入した原水が、第1面31と第1カバー部20との隙間、及び第2面33と第2カバー部22との隙間を通過するのを防止することができ、原水が浄水フィルター3を通過するのを促進することができる。ここで、面221は、ケーシング2の内部空間に対向する底部227の面である。面221には、面221からケーシング2の内部空間に向かって突出する環状の第2突部224が形成される。第2突部224は、収容状態では、浄水フィルター3の空洞部34の外周を囲むように環状に浄水フィルター3の第2面33に接触し、浄水フィルター3を軸方向に押圧し弾性変形させる。この場合、第2突部224が、空洞部34の外周を囲むように環状に浄水フィルター3の第2面33に接触し、浄水フィルター3を軸方向に押圧し弾性変形させる第2接触部となり得る。また、本発明の浄水カートリッジにおいて、面221は突部を有さないものでもあり得る。例えば、面221は、平面状であり得る。この場合、面221が、空洞部34の外周を囲むように環状に浄水フィルター3の第2面33に接触し、浄水フィルター3を軸方向に押圧し弾性変形させる第2接触部となり得る。第2突部224の断面形状は特に限定されないが、略三角形状、略四角形状、略半円形状、略半楕円形状等が挙げられる。略三角形状、略四角形状の角については、丸みを帯びたものであってもよい。
【0057】
側壁部220は、第1カバー部20の側壁部200と概ね同じ径の略円筒状に形成される。側壁部220の上部には、爪部206と対応する周方向の位置に、略四角形の開口である窓部222が爪部206と同数だけ形成される。これにより、薄肉領域Rを第2カバー部22の上側から第2カバー部22の内部に差し込み、爪部206と窓部222とを1対1対応させて係合させると、第1カバー部20と第2カバー部22とが連結した連結状態とすることができる。連結状態において、側壁部200及び側壁部220とは概ね面一となり、共にケーシング2の側壁部21を形成する。なお、窓部222と爪部206との係合を外すことで、第1カバー部20から第2カバー部22を取り外すこともできる。つまり、第1カバー部20と第2カバー部22とは、着脱可能に連結することができるし、着脱不能に連結することもできる。
【0058】
第1カバー部20の材料としては、プラスチックが挙げられる。当該プラスチックとしては、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、AS樹脂(アクリロニトリルスチレン)、PS(ポリスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PLA(ポリ乳酸)樹脂製である。より具体的には、ポリプロピレン(PP)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)からなる群から選択される。第1カバー部20の硬度は、95~100であり、後述する浄水フィルター3の硬度よりも高い。なお、ABS樹脂の硬度は95、ポリプロピレンの硬度は100、ポリエチレンテレフタレート樹脂の硬度は97である。
【0059】
第2カバー部22の材料としては、プラスチックが挙げられる。当該プラスチックとしては、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、AS樹脂(アクリロニトリルスチレン)、PS(ポリスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PLA(ポリ乳酸)樹脂製である。より具体的には、ポリプロピレン(PP)、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)からなる群から選択される。第2カバー部22の硬度は、95~100であり、後述する浄水フィルター3の硬度よりも高い。なお、ABS樹脂の硬度は95、ポリプロピレンの硬度は100、ポリエチレンテレフタレート樹脂の硬度は97である。
【0060】
第1カバー部20の硬度が浄水フィルター3の硬度よりも高く、かつ第2カバー部22の硬度が浄水フィルター3の硬度よりも高いのであれば、第1カバー部20と第2カバー部22とは同じ材料から形成されてもよいし、異なる材料から形成されてもよい。なお、本明細書中の硬度の測定は、測定機器はTECLOCK製硬度計GS701Gにて、JIS S 6050「プラスチック字消し」にて規定されている方法にて実施し、N=5での平均値を測定値、で行うものとする。
【0061】
図6で説明するように、第1カバー部20及び第2カバー部22のうち少なくとも一方は、内壁面に浄水フィルター3の位置決めのためのリブ240、241を備えていてもよい。
図6Aはケーシング2の右側面図であり、
図6Bは
図6AのB-B断面図である。また、
図6Cはケーシング2の右側面図であり、
図6Dは
図6CのD-D断面図である。
図6Bに示すように、第1カバー部20の内壁面には、ケーシング2の内部空間に向かって突出し、上下方向(浄水フィルター3の軸方向)に延びるリブ240が形成される。
図6Dに示すように、リブ240は、第1カバー部20の内壁面に4つ形成され、周方向に概ね等間隔に配置される。なお、
図6B及び
図6Dに示すリブ240はあくまでも一例である。リブ240が形成される位置、リブ240の形状及びリブ240の数等は、
図6B及び
図6Dに示す態様に限定されず、適宜変更することができる。
【0062】
図6Eはケーシング2の右側面図であり、
図6Fは
図6EのF-F断面図である。
図6Bに示すように、第2カバー部22の内壁面には、ケーシング2の内部空間に向かって突出し、上下方向(浄水フィルター3の軸方向)に延びるリブ241が形成される。
図6Fに示すように、リブ241は、第2カバー部22の内壁面に4つ形成され、周方向に概ね等間隔に配置される。
図6Gは、収容状態における
図6EのF-F断面図である。
図6Gに示すように、リブ241は、収容状態において、浄水フィルター3の中心がケーシング2の中心と概ね揃うように浄水フィルター3を位置決めする。なお、
図6B及び
図6Fに示すリブ241はあくまでも一例である。リブ241が形成される位置、リブ241の形状及びリブ241の数等は、
図6B及び
図6Fに示す態様に限定されず、適宜変更することができる。
【0063】
リブ240、241は、収容状態において、浄水フィルター3の外周面とケーシング2の側壁部との間に空間230を備え、浄水フィルター3の中心がケーシング2の中心と概ね揃うように浄水フィルター3を位置決めする。浄水フィルター3がケーシング2に対して適切な位置に位置決めされることで、空洞部34、流入部207及び流出部223との相対位置が適切に維持されるとともに、浄水のための空間230が適切に確保される。これにより、水がカートリッジ1内を均一に移動するので、水浄化の効率が維持される。
【0064】
<2.浄水フィルター>
前述したように、浄水フィルター3は、空洞部34の原水を、側周部32を径方向外方に通過させることによって原水をろ過し、浄水とするための部材である。浄水フィルター3は、軸方向の両端に第1面31と第2面33とをそれぞれ有する。浄水フィルター3は、弾性を有する材料から形成されることが好ましい。これにより、浄水フィルター3は、第1カバー部20及び第2カバー部22のような、より硬度の高い物体と密着することができる。
【0065】
浄水フィルター3をケーシングに収容する前の状態(すなわち、浄水フィルター3を軸方向に押圧し弾性変形させる前の状態)の第1面31と第2面33との距離L1(
図2参照)は、連結状態における第1カバー部20の面203と第2カバー部22面221との距離L2(
図5参照)と同値、又はわずかに短くなる様に形成されることが好ましい。
【0066】
また、浄水フィルター3をケーシングに収容する前の状態(すなわち、浄水フィルター3を軸方向に押圧し弾性変形させる前の状態)の第1面31と第2面33との距離L1(
図2参照)は、連結状態における第1突部208の先端部209と、第2突部224の先端部225との間の距離L3(すなわち、第1接触部と第2接触部との間の距離L3、
図5参照)よりも長くなることが好ましい。これにより収容状態の浄水フィルター3の第1面31においては、空洞部34の径方向外方の領域に第1突部208が食い込んで係合し、浄水フィルター3を軸方向に圧縮する力が浄水フィルター3に加わり、第1面31と第1カバー部20の面203との間を遮断する。同様に、収容状態の浄水フィルター3の第2面33においては、空洞部34の径方向外方の領域に第2突部224が食い込んで係合し、浄水フィルター3を軸方向に圧縮する力が浄水フィルター3に加わり、第2面33と第2カバー部22の面221との間を遮断することが好ましい。これらによって、浄水フィルター3の両端の面を介して水が通過することが抑制され、空洞部34の原水と、空間230の浄水とが分離される。すなわち、第1接触部である第1突部208が、空洞部34の外周を囲むように環状に浄水フィルター3の第1面31に接触し、浄水フィルター3を軸方向に押圧し弾性変形させ、第2接触部である第2突部224が、空洞部34の外周を囲むように環状に浄水フィルター3の第2面33に接触し、浄水フィルター3を軸方向に押圧し弾性変形させる。これにより、浄水フィルターとケーシング及び蓋体との間に弾性部材を介さずとも、浄水フィルターの空洞部に流入した原水が、第1面31と第1カバー部との隙間、及び第2面33と第2カバー部との隙間を通過するのを防止することができ、原水が浄水フィルター3を通過するのを促進することができる。
【0067】
浄水フィルター3をケーシングに収容する前の状態(すなわち、浄水フィルター3を軸方向に押圧し弾性変形させる前の状態)の浄水フィルター3の長さL1の、収容状態における接触部間における圧縮率(L3/L1×100(%))は、98%以下であることが好ましく、96~98%がより好ましく、97~98%がより好ましく挙げられる。また、収容状態において、接触部の面積を減少させ、浄水フィルター3を軸方向に押圧し弾性変形させる圧力を増加しやすくする観点から、第1接触部及び第2接触部が環状の第1突部208及び第2突部224であって、収容状態における浄水フィルター3の長さL1の第1、第2接触部間における圧縮率(L3/L1×100(%))を上記範囲としつつ、浄水フィルター3をケーシングに収容する前の状態(すなわち、浄水フィルター3を軸方向に押圧し弾性変形させる前の状態)の浄水フィルター3の長さL1に対する連結状態における第1カバー部20の面203と第2カバー部22の面221との距離L2の比率(L2/L1×100(%))としては、例えば、98%以上が挙げられ、98~101%が好ましく挙げられ、99~101%がより好ましく挙げられる。
【0068】
水の通過をさらに確実に阻止する観点からは、浄水フィルターの第1面31、及び浄水フィルターの第2面33のうち少なくとも一方には、シール剤が塗布されていることが好ましい。また、浄水フィルターの第1面31、及び第2面33の双方にシール剤が塗布されていることがより好ましい。本実施形態では、第1面31及び第2面33にシール剤として、ホットメルト接着剤が塗布される。ホットメルト接着剤の主成分としては、例えばエチレン酢酸ビニル(EVA)、オレフィン、ゴム等が挙げられる。シール剤の塗布厚さとしては、10μm~1000μm、塗布量としては、1~100(mg/cm2)とすることが挙げられる。なお、シール剤は、浄水フィルター3をケーシング2に収容する前に、予め塗布し、固化させたものとすることができる。
【0069】
カートリッジ1の内部を通過する水の主な流れは、
図7中に示す矢印で表される。まず原水が第1カバー部20、すなわち流入部207を介してカートリッジ1内に流入する。カートリッジ1内に流入した原水は、空洞部34内に流入し、一旦貯留される。ここで、空洞部34の上側周縁及び下側周縁には、それぞれ第1突部208及び第2突部224が係合して、浄水フィルター3を軸方向に押圧し、弾性変形させている。このため、原水は第1面31及び第2面33を介して空間230へと流出しない。空洞部34内に貯留された原水は、側周部32を径方向外方に通過し、浄水として空間230へ流出する。続いて、浄水は空間230から流出部223を介してカートリッジ1の外部へ排出される。
【0070】
浄水フィルター3は、活性炭成型体を繊維状活性炭を含むものとすると、弾性をより有しやすくなる。浄水フィルター3の硬度は、第1カバー部20の硬度及び第2カバー部22の硬度よりも低いことが好ましい。ケーシング2の硬度は、浄水フィルター3より硬く、浄水フィルター3の硬度は、86以下であることが好ましく、50~80程度あることがより好ましい。なお、同硬度測定は、JIS S 6050「プラスチック字消し」にて規定されている方法にて実施し、N=5での平均値を硬度とする。
【0071】
<5.特徴>
カートリッジ1の製造時において、浄水フィルター3の第1面31と第2面33との距離(浄水フィルター3の長さ)L1は、連結状態における第1カバー部20の面203と第2カバー部22面221との距離L2と同値、又はわずかに短くなる様に形成されることが好ましい。また、浄水フィルター3の長さL1は、連結状態における第1突部208の先端部209と、第2突部224の先端部225との間の距離L3よりも長くなることが好ましい。これにより収容状態の浄水フィルター3の第1面31においては、空洞部34の径方向外方の領域に第1突部208が食い込んで係合し、浄水フィルター3を軸方向に圧縮する力が浄水フィルター3に加わり、第1面31と第1カバー部20の面203との間を遮断する。同様に、収容状態の浄水フィルター3の第2面33においては、空洞部34の径方向外方の領域に第2突部224が食い込んで係合し、浄水フィルター3を軸方向に圧縮する力が浄水フィルター3に加わり、第2面33と第2カバー部22の面221との間を遮断することが好ましい。これらによって、浄水フィルター3の両端の面を介して水が通過することが抑制され、空洞部34の原水と、空間230の浄水とが分離される。
【0072】
さらに、第1面31及び第2面33自体がシール剤によってシールされることにより、カートリッジ1内部に流入した原水が浄水フィルター3の第1面31や第2面33を介して空間230にバイパスすることがさらに確実に阻止され、上述の効果をより高めることができる。
【0073】
浄水フィルター3は活性炭成型体を繊維状活性炭を含むものとすると、弾性をより有しやすくなる。これにより、第1カバー部20及び第2カバー部22を介して上下方向に圧縮される力が加わったとしても崩れにくく、破片を生じる可能性が低い。つまり、カートリッジ1内の水を汚染する可能性が低く、浄水の品質が維持される。また、浄水フィルター3が弾性を有することにより、第1カバー部20及び第2カバー部22の各突部208、224が、浄水フィルター3に係合したとき、浄水フィルター3を各突部208、224の形状に追従するように変形させることができる。すなわち、各突部208、224と浄水フィルター3とを密着させることができる。これによって、上述した原水の遮断効果をより向上することができる。
【0074】
一方、例えば、繊維状活性炭を含まず、粒状活性炭のみからなる浄水フィルターは、第1接触部及び第2接触部の押圧力により弾性変形しにくくなる。このような浄水フィルターに無理に押圧力を加えると、粒状活性炭の一部が崩れ落ち、浄水フィルターとして機能しなくなる可能性がある。また、押圧力を加えても反発力が生じず、浄水フィルターの両端面が第1、第2カバー部に密着しづらい。このため、浄水フィルターの空洞部に流入した原水が、第1面と第1カバー部との隙間、及び第2面と第2カバー部との隙間を通過するのを防止するためには、前述の隙間をシールするための弾性部材が別途必要となる。
【0075】
カートリッジ1は、同じ構成の浄水フィルター3を有するout-inタイプのカートリッジと比較すると、水のろ過速度が速いという特徴を有する。また、ケーシング2の外周面の液密性を確保する必要がないため、第1カバー部20と第2カバー部22とを着脱可能に構成することができ、浄水フィルター3の交換作業が容易となる。
【0076】
(B.out-inタイプ)
以下、本発明に係る浄水カートリッジのout-inタイプ(以下、第2実施形態と記載することがある。)について図面を参照しつつ説明する。
図8は本実施形態に係る浄水カートリッジ(以下、単にカートリッジと称することがある)1の外観斜視図、
図9は断面図である。以下では、説明の便宜のため、
図9の上下方向を「上下」、
図9の左右方向を「左右」または「水平」、
図9の紙面方向を「前後」と称し、これを基準に説明を行う。
【0077】
第2実施形態に係る浄水カートリッジが第1実施形態と相違するのは、ケーシング2の構成である。より具体的には、本実施形態のカートリッジ1は、ケーシング2の側壁部と、浄水フィルター3の外周面との隙間に流入した原水が、径方向外側から内側に向かって浄水フィルター3を通過し、浄水フィルター3の空洞部から浄水として流出する、out-inタイプのカートリッジである。以下では、同一構成については同一の符号を付して、説明を省略する。
【0078】
<1.ケーシング>
ケーシング2は、浄水フィルター3の第1面31をカバーする第1カバー部と、浄水フィルター3の第2面33をカバーする第2カバー部と、浄水フィルター3の外周面を覆う側壁部とを備える。本実施形態では、
図8に示すように、ケーシング2は、浄水フィルター3の第1面31をカバーする第1カバー部20と、浄水フィルター3の第2面33をカバーする第2カバー部22とが連結されてなり、側壁部は、後述する第1カバー部20の側壁部と第2カバー部22の側壁部とから構成される。以下、第2カバー部22が第1カバー部20に連結された状態を連結状態と称する。連結状態において、ケーシング2内部には浄水フィルター3を収容するための空間が形成される。
【0079】
第1カバー部20は、上カバー部20aと、上カバー部20aの下端に一体的に連結される下カバー部20bとのパーツからなる。
図9に示すように、上カバー部20aは、略円筒形状の側壁部231と、側壁部231に連続する略円形の上面部232とを有する。上面部232の周縁部には、原水がカートリッジ1内に流入するための貫通孔207aが周方向に間隔を空けて複数形成され、全体として複数の貫通孔207aが環状に配置された流入部207が形成される。側壁部231の外側上部には、カートリッジ1が浄水器の開口S4の周縁部に取り付けられるためのフランジ204が形成される。また、フランジ204の上下方向の中心にはパッキン104が嵌められるための溝210が形成される。浄水器の一例を
図11Bに示す。
図11Bに示す浄水器100は、カートリッジ1の構成以外は
図11Aに示すものと共通であるため、説明は省略する。
【0080】
下カバー部20bは、略円筒形状の側壁部233と、側壁部233の内側に形成された略円形の面部203′とを有する。
図9に示すように、面部203′の周縁部には、流入部207を形成する貫通孔207aと対応する位置に貫通孔234aが周方向に間隔を空けて複数形成され、ケーシング2の内外を連通させる。面部203′のケーシング2の内部空間に対向する面を、面203と称する。面203には、複数の貫通孔234aに囲まれるように、環状の第1突部208が形成される。つまり、第1突部208は、流入部207aよりも径方向内側に形成される。第1突部208は、収容状態では、浄水フィルター3の第1面31において、浄水フィルター3の第1面31において、浄水フィルター3の空洞部34を囲むように環状に接触し、浄水フィルター3を軸方向に押圧し弾性変形させる。この場合、第1突部208が、空洞部34の外周を囲むように環状に浄水フィルター3の第1面31に接触し、浄水フィルター3を軸方向に押圧し弾性変形させる第1接触部となり得る。本発明の浄水カートリッジにおいて、面203は突部を有さないものでもあり得る。例えば、面203は、平面状であり得る。この場合、面203が、空洞部34の外周を囲むように環状に浄水フィルター3の第1面31に接触し、浄水フィルター3を軸方向に押圧し弾性変形させる第1接触部となり得る。第1突部208の断面形状は特に限定されないが、略三角形状、略四角形状、略半円形状、略半楕円形状等が挙げられる。略三角形状、略四角形状の角については、丸みを帯びたものであってもよい。
【0081】
面部203′の上面部232に対向する側には、前後方向に延びる断面四角形の通気通路235が形成される。通気通路235は、側壁部233に形成された断面四角形の通気口205と通じている。通気通路235は、下面203′から立ち上がる略平行な2つの側面と、2つの側面とに連続する上面で規定されるため、カートリッジ1内部を通過する水の流路とは隔離されている。
【0082】
第2カバー部22は、底部227と、底部227から連続して立ち上がる側壁部220とを有し、全体として略円筒形の外観を有する。側壁部220は、側壁部231及び側壁部233と概ね同じ径の略円筒形状に形成される。底部227の中央部には、浄水がカートリッジ1外に流出するための流出部223が形成される。流出部223は、円形の貫通孔223aを有する。底部227のケーシング2の内部空間に対向する面を面221と称する。面221において、流出部223の径方向外側の位置には、流出部223を囲むように環状の第2突部224が形成される。
【0083】
本実施形態では、上カバー部20aと下カバー部20b、及び第1カバー部20と第2カバー部22とは、互いの連結部分が液密を保つように連結される。
図8に示すように、第1カバー部20と第2カバー部22とが連結した連結状態において、側壁部231、側壁部233及び側壁部220とは概ね面一となり、共にケーシング2の側壁部21を形成する。上カバー部20aと下カバー部20b、及び第1カバー部20と第2カバー部22とは、例えば、超音波接合により連結される。
【0084】
収容状態において、浄水フィルター3の外径は、ケーシング2の側壁部21の内径よりもわずかに小さい。これにより、第1実施形態と同様、収容状態では側周部32とケーシング2の側壁との隙間に環状の空間230が形成される。
【0085】
以下では、カートリッジ1を通過する水の流路について、より具体的に説明する。カートリッジ1内の水の主な流れは、
図10中に示す矢印で表される。まず、タンク102から原水が流入部207、すなわち第1カバー部20を介してカートリッジ1内に流入する。流入部207から流入した原水は、貫通孔234aを通過し、空間230内に一旦貯留される。空間230内に貯留された原水は、浄水フィルター3の側周部32を径方向外側から内側へと通過し、浄水として空洞部34へと流入する。浄水は、空洞部34から流出部223からカートリッジ1の外部へ排出される。
【0086】
<2.特徴>
第2実施形態の浄水フィルター3、面203、面221、第1突部208、及び第2突部224の構成は第1実施形態と共通である。従って、これらの構成による特徴は第1実施形態の説明で記載した通りである。以下では、第2実施形態に特有の特徴を記載する。
【0087】
カートリッジ1では、浄水フィルター3の側周部32の径方向外側から内側へと水がろ過される。このため、浄水が存在するエリアである空洞部34に、中空糸膜等の別の種類のフィルターをさらに配置することができる。別の種類のフィルターを空洞部34に配置することで、カートリッジ1の容積を増加させることなく、コンパクトでろ過性能のより高い浄水カートリッジを提供することができる。
【実施例】
【0088】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0089】
(実施例1)
(1)浄水フィルターの製造
原水及び浄水の通水方向のタイプとしてin-outタイプとなるように、以下のようにして浄水フィルターを製造した。
【0090】
(1-1)活性炭成型体の原水が流入する側の側面に備えられる、熱融着性短繊維を含む不織布の準備
まず、熱融着性成分としてイソフタル酸が共重合されたポリエチレンテレフタレートを鞘部に、ポリエチレンテレフタレートを芯部に、配した、熱融着性短繊維を準備した。該熱融着性短繊維の、鞘部の融点は110℃、芯部の融点は260℃、繊維長は51mm、繊維径は12μm、繊度2.2dtexであった。該短繊維をカーディングして薄いウェブを形成し、該ウェブにニードルパンチ加工を施して温度175℃で熱処理、冷却することにより、短繊維が3次元にランダムに配列し該繊維同士が互いに交絡し熱融着した、活性炭成型体の原水が流入する側の側面に備えられる、熱融着性短繊維を含む不織布Aを得た。該不織布の目付は50g/m2、厚さは0.18mm、見かけ密度は0.28g/cm3であった。
【0091】
(1-2)活性炭成型体とする不織布の準備
(1-2-1)原材料の準備
活性炭成型体とする不織布を製造するにあたり、以下の原材料を準備した。
・繊維状活性炭(株式会社アドール製商品名「W-10」、メソ細孔率27%、比表面積1100m2/g)
・弱酸型ポリアクリレート系イオン交換繊維(ユニチカ株式会社製Ca置換ポリアクリレート系イオン交換繊維:商品名A-02CAU)
・熱融着性短繊維(熱融着性成分としてイソフタル酸が共重合されたポリエチレンテレフタレートを鞘部に、ポリエチレンテレフタレートを芯部に、配した、熱融着性短繊維、鞘部の融点は110℃、芯部の融点は260℃、繊維長は51mm、繊維径は12μm、繊度は2.2dtex)
【0092】
(1-2-2)活性炭を含む湿式不織布の製造
上記繊維状活性炭を78質量部、イオン交換繊維を10質量部、熱融着性短繊維を12質量部、合計100質量部を、パルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製した。得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後、プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取った。その後、熱プレスローラーでシートを110℃で熱プレスし、湿式不織布Bを得た。
【0093】
(1-3)活性炭成型体の浄水が排出される側の側面に備えられる不織布の準備
スパンボンド不織布C(ユニチカ株式会社製商品名エルベス(登録商標)S0303WTO、芯部がポリエステル系樹脂からなり、鞘部がポリオレフィン系樹脂からなる芯鞘型複合繊維である連続繊維からなるスパンボンド不織布であり、堆積された連続繊維同士が、熱エンボス加工により部分的に圧着されることにより一体化された不織布、該不織布の目付30g/m2、厚さ0.23mm、見かけ密度0.13g/cm3)を準備した。
【0094】
(1-4)浄水フィルターの製造
芯として外径が23.7mmの鉄製の円筒状パイプを準備し、当該芯に、不織布Aを所定の厚さとなるように捲回し、次いで、当該不織布Aの上に、活性炭成型体とする活性炭を含む湿式不織布Bを、当該不織布Aの上に所定の厚さとなるように捲回し、さらに、活性炭を含む湿式不織布Bの上に、スパンボンド不織布Cを所定の厚さとなるように捲回した。そして、不織布A、活性炭を含む湿式不織布B、及びスパンボンド不織布Cを捲回した状態で、炉に入れ、雰囲気温度150℃で2時間熱処理を施した後、自然冷却した。その後、芯を除去した後、カット機で92mmの長さにカットし、本発明の浄水フィルターを得た。なお、浄水フィルターの高さ(長さ)L1は92mm、外径は40mm、内径は22.4mmであった。また、JIS S 6050準拠デュロメータ硬さ計(株式会社テクロック社製)で測定される浄水フィルターの硬度は62であり弾性を有していた。また、浄水フィルターにおける活性炭成型体は、外径が39.5mm、内径が22.8mm、質量が18.2gであり、活性炭成型体に含有される熱融着性短繊維の熱融着性成分、不織布Aの熱融着性短繊維の熱融着性成分及びスパンボンド不織布Cを構成する複合繊維のポリオレフィン系樹脂が溶融することにより、不織布Aと活性炭成型体、スパンボンド不織布Cと活性炭成型体とが融着していた。
【0095】
(2)浄水カートリッジの製造
得られた浄水フィルターを含む、本発明の浄水カートリッジを製造した。浄水カートリッジは、前述した第1実施形態と同様のものを製造し、ケーシングの材料はABS樹脂であり、硬度は95であった。また、ケーシングのL2は92.0mm、L3は89.2mmとした。すなわち、原水が流入する流入部、及び浄水が流出する流出部を有する筒状のケーシングと、前記ケーシングの内部に収容され、前記原水をろ過するための浄水フィルターと、を備え、前記浄水フィルターは、弾性を有するとともに、空洞部を有する円筒状に形成され、軸方向の両端に、それぞれ第1面及び第2面を有しており、前記ケーシングは、前記浄水フィルターの第1面をカバーする第1カバー部と、前記浄水フィルターの第2面をカバーする第2カバー部と、前記浄水フィルターの外周面を覆う側壁部と、を備え、前記第1カバー部には、前記空洞部の外周を囲むように前記浄水フィルターの第1面に環状に接触し、前記浄水フィルターを軸方向に押圧し弾性変形させる第1接触部が形成され、前記第2カバー部には、前記空洞部の外周を囲むように前記浄水フィルターの第2面に環状に接触し、前記浄水フィルターを軸方向に押圧し弾性変形させる第2接触部が形成され、前記浄水フィルターは前記第1接触部及び前記第2接触部の押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング内部に収容され、前記ケーシングの前記流入部から流入した前記原水は、前記第1カバー部を介して、前記浄水フィルターの前記空洞部に流入し、当該浄水フィルターを径方向外方に通過して前記浄水フィルターの外周面と前記ケーシングの側壁部との間の空間に流出し、前記流出部から外部に排出されるように構成されている、ポット型浄水器用浄水カートリッジを得た。
【0096】
(3)浄水器の製造
上記浄水カートリッジを、
図11Aに示すような浄水器に取り付け、本発明のポット型浄水器を得た。
【0097】
(実施例2)
(1)浄水フィルターの製造
原水及び浄水の通水方向のタイプとしてin-outタイプとなるように、以下のようにして浄水フィルターを製造した。
(1-1)活性炭成型体の原水が流入する側の側面に備えられる、熱融着性短繊維を含む不織布の準備
(1-1-1)原材料の準備
上記不織布を製造するにあたり、以下の原材料を準備した。
・熱融着性短繊維(実施例1で準備した、活性炭成型体の原水が流入する側の側面に備えられる、熱融着性短繊維を含む不織布に用いた熱融着性短繊維を準備した。)
・繊維状活性炭(株式会社アドール製商品名「A-7」、メソ細孔率4%、比表面積850m2/g)
・弱酸型ポリアクリレート系イオン交換繊維(ユニチカ株式会社製Ca置換ポリアクリレート系イオン交換繊維:商品名A-02CAU)
(1-1-2)熱融着性短繊維を含む不織布の製造
上記熱融着性短繊維35質量部、繊維状活性炭20質量部、イオン交換繊維45質量部、合計100質量部を、混合し、カーディングして薄いウェブを形成し、該ウェブにニードルパンチ加工を施して温度110℃で熱処理、冷却することにより、短繊維が3次元にランダムに配列し該繊維同士が互いに交絡し熱融着した、活性炭成型体の原水が流入する側の側面に備えられる、熱融着性短繊維を含む不織布Dを得た。該不織布の目付は70g/m2、厚さは0.42mm、見かけ密度は0.17g/cm3であった。
【0098】
(1-2)活性炭成型体とする不織布の準備
実施例1と同一の、活性炭成型体とする不織布Bを準備した。
【0099】
(1-3)活性炭成型体の浄水が排出される側の側面に備えられる不織布の準備
実施例1と同一の、活性炭成型体の浄水が排出される側の側面に備えられる不織布C(スパンボンド不織布)を準備した。
【0100】
(1-4)浄水フィルターの製造
芯として外径が23.7mmの鉄製の円筒状パイプを準備し、当該芯に、不織布Dを所定の厚さとなるように捲回し、次いで、当該不織布Dの上に、活性炭成型体とする活性炭を含む湿式不織布Bを、当該不織布Dの上に所定の厚さとなるように捲回し、さらに、活性炭を含む湿式不織布Bの上に、スパンボンド不織布Cを所定の厚さとなるように捲回した。そして、不織布D、活性炭を含む湿式不織布B、及びスパンボンド不織布Cを捲回した状態で、炉に入れ、雰囲気温度150℃で2時間熱処理を施した後、自然冷却した。その後、芯を除去した後、カット機で92.0mmの長さにカットし、本発明の浄水フィルターを得た。なお、浄水フィルターの高さ(長さ)L1は92.0mm、外径は40.0mm、内径は22.4mmであった。また、JIS S 6050準拠デュロメータ硬さ計(株式会社テクロック社製)で測定される浄水フィルターの硬度は62であり弾性を有していた。また、浄水フィルターにおける活性炭成型体は、外径が39.5mm、内径が23.2mm、質量が17.2gであり、活性炭成型体に含有される熱融着性短繊維の熱融着性成分、不織布Dの熱融着性短繊維の熱融着性成分及びスパンボンド不織布Cを構成する複合繊維のポリオレフィン系樹脂が溶融することにより、不織布Dと活性炭成型体、スパンボンド不織布Cと活性炭成型体とが融着していた。
【0101】
(2)浄水カートリッジの製造
得られた浄水フィルターを含む、本発明の浄水カートリッジを製造した。浄水カートリッジは、前述した第1実施形態と同様のものを製造し、ケーシングの材料はABS樹脂であり、硬度は95であった。また、ケーシングのL2は92.0mm、L3は89.2mmとした。すなわち、原水が流入する流入部、及び浄水が流出する流出部を有する筒状のケーシングと、前記ケーシングの内部に収容され、前記原水をろ過するための浄水フィルターと、を備え、前記浄水フィルターは、弾性を有するとともに、空洞部を有する円筒状に形成され、軸方向の両端に、それぞれ第1面及び第2面を有しており、前記ケーシングは、前記浄水フィルターの第1面をカバーする第1カバー部と、前記浄水フィルターの第2面をカバーする第2カバー部と、前記浄水フィルターの外周面を覆う側壁部と、を備え、前記第1カバー部には、前記空洞部の外周を囲むように前記浄水フィルターの第1面に環状に接触し、前記浄水フィルターを軸方向に押圧し弾性変形させる第1接触部が形成され、前記第2カバー部には、前記空洞部の外周を囲むように前記浄水フィルターの第2面に環状に接触し、前記浄水フィルターを軸方向に押圧し弾性変形させる第2接触部が形成され、前記浄水フィルターは前記第1接触部及び前記第2接触部の押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング内部に収容され、前記ケーシングの前記流入部から流入した前記原水は、前記第1カバー部を介して、前記浄水フィルターの前記空洞部に流入し、当該浄水フィルターを径方向外方に通過して前記浄水フィルターの外周面と前記ケーシングの側壁部との間の空間に流出し、前記流出部から外部に排出されるように構成されている、ポット型浄水器用浄水カートリッジを得た。
【0102】
(3)浄水器の製造
上記浄水カートリッジを、実施例1と同様に浄水器に取り付け、本発明のポット型浄水器を得た。
【0103】
(比較例1)
(1)浄水フィルターの製造
原水及び浄水の通水方向のタイプとしてin-outタイプとなるように、以下のようにして浄水フィルターを製造した。
(1-1)活性炭成型体の原水が流入する側の側面に備えられる、不織布の準備
実施例1の、活性炭成型体の浄水が排出される側の側面に備えられる不織布として準備した不織布と同一の不織布C(スパンボンド不織布)を準備した。
【0104】
(1-2)活性炭成型体とする不織布の準備
実施例1と同一の、活性炭成型体とする不織布Bを準備した。
【0105】
(1-3)活性炭成型体の浄水が排出される側の側面に備えられる不織布の準備
実施例1と同一の、活性炭成型体の浄水が排出される側の側面に備えられる不織布C(スパンボンド不織布)を準備した。
【0106】
(1-4)浄水フィルターの製造
芯として外径が23.7mmの鉄製の円筒状パイプを準備し、当該芯に、不織布Cを所定の厚さとなるように捲回し、次いで、当該不織布Cの上に、活性炭成型体とする活性炭を含む湿式不織布Bを、当該不織布Cの上に所定の厚さとなるように捲回し、さらに、活性炭を含む湿式不織布Bの上に、別のスパンボンド不織布Cを所定の厚さとなるように捲回した。そして、不織布C、活性炭を含む湿式不織布B、及びスパンボンド不織布Cを捲回した状態で、炉に入れ、雰囲気温度150℃で2時間熱処理を施した後、自然冷却した。その後、芯を除去した後、カット機で92.0mmの長さにカットし、比較例の浄水フィルターを得た。なお、浄水フィルターの高さ(長さ)L1は92.0mm、外径は40.0mm、内径は22.4mmであった。また、JIS S 6050準拠デュロメータ硬さ計(株式会社テクロック社製)で測定される浄水フィルターの硬度は62であり弾性を有していた。また、浄水フィルターにおける活性炭成型体は、外径が39.5mm、内径が22.9mm、質量が18.3gであり、活性炭成型体に含有される熱融着性短繊維の熱融着性成分、スパンボンド不織布Cを構成する複合繊維のポリオレフィン系樹脂が溶融することにより、内層側のスパンボンド不織布Cと活性炭成型体、外層側のスパンボンド不織布Cと活性炭成型体とが融着していた。
【0107】
(2)浄水カートリッジの製造
得られた浄水フィルターを含む、比較例の浄水カートリッジを製造した。浄水カートリッジは、前述した第1実施形態と同様のものを製造し、ケーシングの材料はABS樹脂であり、硬度は95であった。また、ケーシングのL2は92.0mm、L3は89.2mmとした。すなわち、原水が流入する流入部、及び浄水が流出する流出部を有する筒状のケーシングと、前記ケーシングの内部に収容され、前記原水をろ過するための浄水フィルターと、を備え、前記浄水フィルターは、弾性を有するとともに、空洞部を有する円筒状に形成され、軸方向の両端に、それぞれ第1面及び第2面を有しており、前記ケーシングは、前記浄水フィルターの第1面をカバーする第1カバー部と、前記浄水フィルターの第2面をカバーする第2カバー部と、前記浄水フィルターの外周面を覆う側壁部と、を備え、前記第1カバー部には、前記空洞部の外周を囲むように前記浄水フィルターの第1面に環状に接触し、前記浄水フィルターを軸方向に押圧し弾性変形させる第1接触部が形成され、前記第2カバー部には、前記空洞部の外周を囲むように前記浄水フィルターの第2面に環状に接触し、前記浄水フィルターを軸方向に押圧し弾性変形させる第2接触部が形成され、前記浄水フィルターは前記第1接触部及び前記第2接触部の押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング内部に収容され、前記ケーシングの前記流入部から流入した前記原水は、前記第1カバー部を介して、前記浄水フィルターの前記空洞部に流入し、当該浄水フィルターを径方向外方に通過して前記浄水フィルターの外周面と前記ケーシングの側壁部との間の空間に流出し、前記流出部から外部に排出されるように構成されている、ポット型浄水器用浄水カートリッジを得た。
【0108】
(比較例2)
(1)浄水フィルターの製造
原水及び浄水の通水方向のタイプとしてin-outタイプとなるように、以下のようにして浄水フィルターを製造した。
【0109】
(1-1)活性炭成型体とする不織布の準備
実施例1と同一の、活性炭成型体とする不織布Bを準備した。
【0110】
(1-2)活性炭成型体の浄水が排出される側の側面に備えられる不織布の準備
実施例1と同一の、活性炭成型体の浄水が排出される側の側面に備えられる不織布C(スパンボンド不織布)を準備した。
【0111】
(1-3)浄水フィルターの製造
芯として外径が23.7mmの鉄製の円筒状パイプを準備し、当該芯に、活性炭成型体とする活性炭を含む湿式不織布Bを所定の厚さとなるように捲回し、さらに、活性炭を含む湿式不織布Bの上に、スパンボンド不織布Cを所定の厚さとなるように捲回した。そして、活性炭を含む湿式不織布B、及びスパンボンド不織布Cを捲回した状態で、炉に入れ、雰囲気温度150℃で2時間熱処理を施した後、自然冷却した。その後、芯を除去した後、カット機で92.0mmの長さにカットし、比較例の浄水フィルターを得た。なお、浄水フィルターの高さ(長さ)L1は92.0mm、外径は40.0mm、内径は22.5mmであった。また、JIS S 6050準拠デュロメータ硬さ計(株式会社テクロック社製)で測定される浄水フィルターの硬度は62であり弾性を有していた。また、浄水フィルターにおける活性炭成型体は、外径が39.5mm、内径が22.4mm、質量が18.3gであり、活性炭成型体に含有される熱融着性短繊維の熱融着性成分、スパンボンド不織布Cを構成する複合繊維のポリオレフィン系樹脂が溶融することにより、外層側のスパンボンド不織布Cと活性炭成型体とが融着していた。
【0112】
(2)浄水カートリッジの製造
得られた浄水フィルターを含む、比較例の浄水カートリッジを製造した。浄水カートリッジは、前述した第1実施形態と同様のものを製造し、ケーシングの材料はABS樹脂であり、硬度は95であった。また、ケーシングのL2は92.0mm、L3は89.2mmとした。すなわち、原水が流入する流入部、及び浄水が流出する流出部を有する筒状のケーシングと、前記ケーシングの内部に収容され、前記原水をろ過するための浄水フィルターと、を備え、前記浄水フィルターは、弾性を有するとともに、空洞部を有する円筒状に形成され、軸方向の両端に、それぞれ第1面及び第2面を有しており、前記ケーシングは、前記浄水フィルターの第1面をカバーする第1カバー部と、前記浄水フィルターの第2面をカバーする第2カバー部と、前記浄水フィルターの外周面を覆う側壁部と、を備え、前記第1カバー部には、前記空洞部の外周を囲むように前記浄水フィルターの第1面に環状に接触し、前記浄水フィルターを軸方向に押圧し弾性変形させる第1接触部が形成され、前記第2カバー部には、前記空洞部の外周を囲むように前記浄水フィルターの第2面に環状に接触し、前記浄水フィルターを軸方向に押圧し弾性変形させる第2接触部が形成され、前記浄水フィルターは前記第1接触部及び前記第2接触部の押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング内部に収容され、前記ケーシングの前記流入部から流入した前記原水は、前記第1カバー部を介して、前記浄水フィルターの前記空洞部に流入し、当該浄水フィルターを径方向外方に通過して前記浄水フィルターの外周面と前記ケーシングの側壁部との間の空間に流出し、前記流出部から外部に排出されるように構成されている、ポット型浄水器用浄水カートリッジを得た。
【0113】
(3)浄水器の製造
上記浄水カートリッジを、実施例1と同様に浄水器に取り付け、比較例のポット型浄水器を得た。
【0114】
(4)評価
(4-1)流量
JIS S 3201 2017 6.1 ろ過流量試験 c)1)に準じ、ろ過流量を測定、算出した。
(4-2)脱落した活性炭の原水貯留部への流入の評価
原水貯留部に水が溜まっている状態で、目視で脱落した活性炭の有無を確認した。
(4-3)リークの有無
実施例1、2及び比較例1、2に係る浄水カートリッジそれぞれに、初濃度2mg/Lの遊離残留塩素を通水し、リークの有無を確認した。また、実施例1、2及び比較例1、2に係る浄水カートリッジについて、通水後に浄水フィルターをケーシングから取り出し、ケーシングの第1接触部(第1突部)と接触していた部分と、第2接触部(第2突部)と接触していた部分との距離L4を測定し、距離L4の長さL1に対する割合W(%)から、浄水フィルターの弾性回復の程度を評価した。
【0115】
評価結果を表1に示す。
【0116】
【0117】
表1に示すように、実施例1及び2の浄水フィルターは、円筒形状である活性炭成型体を備え、原水が該円筒形状における径方向に通水される浄水フィルターであって、活性炭成型体の前記原水が流入する側の側面に、熱融着性短繊維を含む不織布を備えることから、ポット型浄水器に適用した場合にも、充分な流量を有し、かつ、脱落した活性炭の原水貯留部への流入を低減するものであった。
【0118】
一方、比較例1は、活性炭成型体の前記原水が流入する側の側面に、熱融着性短繊維を含む不織布を備えず、連続繊維からなるスパンボンド不織布を備えるものであったことから、流量が充分でなく、浄水に時間がかかるものであった。
【0119】
また、比較例2は、活性炭成型体の前記原水が流入する側の側面に、熱融着性短繊維を含む不織布を備えないものであったことから、脱落した活性炭の原水貯留部への流入が認められた。
【符号の説明】
【0120】
1 カートリッジ
2 ケーシング
3 浄水フィルター
20 第1カバー部
21 側壁部
22 第2カバー部
31 第1面
32 側周部
33 第2面
34 空洞部
35 活性炭成型体
36 活性炭成型体の径方向における内周側に配置される不織布
37 活性炭成型体の径方向における外周側に配置される不織布
203 面
207 流入部
208 第1突部(第1接触部)
221 面
223 流出部
224 第2突部(第2接触部)
230 空間
300 シート