(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】EL表示パネルの製造装置
(51)【国際特許分類】
H10K 71/20 20230101AFI20230519BHJP
H10K 50/11 20230101ALI20230519BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20230519BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20230519BHJP
H10K 50/818 20230101ALI20230519BHJP
C23C 14/24 20060101ALI20230519BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230519BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
H10K71/20
H10K50/11
H10K59/12
H10K50/12
H10K50/818
C23C14/24 S
G09F9/00 338
G09F9/30 365
(21)【出願番号】P 2019166774
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2018202376
(32)【優先日】2018-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598014825
【氏名又は名称】株式会社クオルテック
(72)【発明者】
【氏名】高原 博司
【審査官】中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181049(WO,A1)
【文献】特開2003-66400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-99/00
H05B 33/00-33/28
C23C 14/24
G09F 9/00
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色の画素と第2の色の画素とがマトリックス状に配置されたEL表示パネルの製造装置であって、
前記第1の色の画素と前記第2の色の画素に、第1の発光層を共通に形成する発光層形成手段と、
前記ELパネルの
TFT基板の表面から、前記第1の発光層
を改質させる第1の光を照射する光発生手段と、
前記第1の発光層に、前記第1の光を照射することにより発生する第2の光を、前記ELパネルの
TFT基板の裏面から検出する光検出手段を具備し、
前記第1の色の画素の反射膜および前記第2の色の画素の反射膜に、開口部を有し、
前記第2の光は、前記開口部から、前記ELパネルの
TFT基板の裏面に出射することを特徴とするEL表示パネルの製造装置。
【請求項2】
第1の色の画素と第2の色の画素とがマトリックス状に配置されたEL表示パネルの製造装置であって、
前記第1の色の画素と前記第2の色の画素に、第1の発光層を共通に形成する発光層形成手段と、
前記ELパネルの
TFT基板の表面から、前記第1の発光層
を改質させる第1の光を照射する光発生手段と、
前記第1の発光層に、前記第1の光を照射することにより発生する第2の光を、前記ELパネルの
TFT基板の裏面から検出する光検出手段と、
前記第2の光の波長と前記第2の光の強度のうち少なくとも一方により、前記第1の光を制御する光制御手段を具備し、
前記第1の色の画素の反射膜および前記第2の色の画素の反射膜に、光透過部を有し、
前記第2の光は、前記光透過部から前記ELパネルの
TFT基板の裏面に出射することを特徴とするEL表示パネルの製造装置。
【請求項3】
第1の色の画素と第2の色の画素とがマトリックス状に配置されたEL表示パネルの製造装置であって、
前記第1の色の画素と前記第2の色の画素に、第1の発光層を共通に形成する発光層形成手段と、
前記ELパネルの
TFT基板の表面から、前記第1の発光層
を改質させる第1の光を照射する光発生手段と、
前記第1の発光層の改質状態をモニターするモニター手段を具備し、
前記第1の色の画素
の反射膜および前記第2の色の画素
の反射膜に、光透過部を有し、
前記第1の発光層に、前記第1の光を照射することにより第2の光が発生し、
前記モニター手段は、前記光透過部から前記ELパネルの
TFT基板の裏面に出射する前記第2の光により、前記第1の発光層の改質状態をモニターすることを特徴とするEL表示パネルの製造装置。
【請求項4】
前記第1の光を透過させる光透過部を有する保持容器を更に具備し、
前記EL表示パネルは、前記保持容器内に配置され、
前記第1の光は、レーザ光であり、
前記第1の光は、前記光透過部を介して、前記保持容器内に導光され、前記第1の発光層に照射されることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載のEL表示パネルの製造装置。
【請求項5】
前記第1の色の画素の
反射膜の開口部または光透過部の位置と、前記第2の色の画素の
反射膜の開口部または光透過部の位置とが異なることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載のEL表示パネルの製造装置。
【請求項6】
前記開口部または前記光透過部の面積は、前記反射膜の面積の1/200~1/20であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のEL表示パネルの製造装置。
【請求項7】
前記第1の光は、レーザ光であり、
前記第1の光は、ガルバノミラーにより、前記第1の発光層に照射されることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載のEL表示パネルの製造装置。
【請求項8】
前記第1の光と前記第2の光を分離する光分離手段を更に具備することを特徴とする請求項1または請求項2記載のEL表示パネルの製造装置。
【請求項9】
前記第1の発光層は、蛍光材料のゲスト材料とTADF材料のゲスト材料を含有することを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3記載のEL表示パネルの製造装置。
【請求項10】
改質状態のモニターにより、前記第1の光の強弱と、前記第1の光の移動速度のうち少なくとも一方が制御されることを特徴とする請求項3記載のEL表示パネルの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EL表示パネルに関し、特に、有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro-Luminescence。以下、有機ELと呼ぶことがある。)素子などを有し、カラー画像表示に適するEL表示パネルとEL表示装置、EL表示パネルの製造方法およびEL表示パネルの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マトリックス状に有機EL素子が配置されたEL表示パネルが、スマートフォン、テレビの表示パネルとして商品化されている。
【0003】
図52は、従来のEL表示パネルの構造図である。画素電極15の周辺部には土手(バンク)95が形成されている。土手95は、ファイン蒸着マスク251(FMM(Fine Metal Mask)、FHM(Fine Hybrid Mask)等)が画素電極15等に接触することを防止する。
【0004】
EL表示パネルは、EL素子22が表示画面36にマトリックス状に配置されている。EL素子22は、正孔輸送層(HTL : hole transport layer)16、発光層(EML : emitter layer)17、電子輸送層(ETL : electron transport layer)18などの有機材料の積層構造を有し、この積層構造を挟持する画素電極15と、光透過性を有するカソード電極19で構成される。EL表示パネルにソースドライバ回路32、ゲートドライバ回路31を実装してEL表示パネルが構成される。
【0005】
図53は、従来のEL表示パネルの製造方法の説明図である。蒸着の際、赤(R)色、緑(G)色、青(B)色のEL材料を、対応する画素に蒸着させるために、ファイン蒸着マスク251が使用される。ファイン蒸着マスク251は、対応する画素形状にあわせた穴が開口された金属または樹脂からなるマスクである。
【0006】
図53(a)に図示するように、画素電極15には、正孔輸送層16が形成される。次に、
図53(b)に示すように、赤色のファイン蒸着マスク251Rが配置される。赤色のファイン蒸着マスク251Rは、赤色の画素電極15Rに対応する箇所が、開口されている。赤色のファイン蒸着マスク251Rは、他の色の画素電極(緑色の画素電極15G、青色の画素電極15B)に対応する箇所は開口されていない。
【0007】
以上のように、ファイン蒸着マスク251Rが配置された状態で、蒸発源から赤色の発光層材料172Rが蒸発され、マスク251Rの開口部から、赤色の画素37Rに、赤色の発光層材料172Rが蒸着される。蒸着された赤色の発光層材料は、赤色の発光層17Rとなる。
【0008】
緑色画素も赤色画素と同様に、
図53(c)に図示するように、緑色のファイン蒸着マスク251Gが配置され、マスク251Gの開口部を介して、緑色画素37Gに緑色の発光層17Gが形成される。
【0009】
青色画素も赤色画素と同様に、
図53(d)に図示するように、青色のファイン蒸着マスク251Bが配置され、マスク251Bの開口部を介して、青色画素37Bに青色の発光層17Bが形成される。
【0010】
図53(e)は
図53(d)の次の工程を示す説明図である。赤、緑、青の発光層17の上方に、電子輸送層18が蒸着される。また、電子輸送層18上にマグネシウム・銀(MgAg)などからなるカソード電極(陰極)19が形成される。
図53(f)に図示するように、カソード電極19上には、封止層20が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のEL表示パネルでは、赤色、緑色、青色のEL素子の発光層17の形成時に、赤色、緑色、青色のファイン蒸着マスク251を使用する。
【0013】
しかし、ファイン蒸着マスク251の位置ずれが発生すると、画素37に混色が発生する。また、蒸着マスクの位置決め機構および装置の価格が高いという課題があった。また、蒸着マスクの位置決めに長時間を必要とするため製造タクトが長いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、EL表示パネルの製造において、赤色、緑色、青色等の少なくとも1つの色の発光層の形成工程において、複数の色の画素37と共通に、連続した一色の発光層17を形成する。発光層は主として、ゲスト(ドーパント)材料とホスト材料の共蒸着により形成される。形成した発光層17に、発光層17を「改質」させるレーザ光を照射する。レーザ光の照射により発光する燐光または蛍光を計測し、燐光または蛍光の波長、強度データから発光層の改質状態をモニターする。計測した燐光または蛍光のデータにより発光層に照射するレーザ光のオンオフ、強弱変更、照射位置を制御する。
「改質」とは、発光層17が消光するか、非発光となるか、もしくは、減光するか、所定の発光波長から変化させることである。
【0015】
また、「改質」とは、ゲスト材料のバンドギャップはホスト材料のバンドギャップよりも大きく、ゲスト材料とホスト材料のHOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)およびLUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)の相対的な配置は、HOMOはゲスト材料のほうがホスト材料よりも低く、LUMOはゲスト材料のほうがホスト材料よりも高い、のうち少なくとも1つ以上の関係が発生することである。
【0016】
また、「改質」とは、ゲスト材料に紫外線等の光を吸収させ、ゲスト材料のバンドギャップを、可視光を発光するエネルギーギャップ領域よりも大きくすることである。
【0017】
また、「改質」とは、発光層17を構成する成分の少なくとも一部、例えばゲスト材料あるいはホスト材料が、分解または重合を生じるか、または分子構造に変化を生じ、物理的性質が変化することである。
【0018】
なお、ゲスト材料あるいはホスト材料を蒸発等し、蒸着された箇所から除去してもよい。あるいは、EL素子を構成する膜層が、変質すること、蒸発することにより除去してもよい。
【0019】
発光層17が、ゲスト材料あるいはホスト材料の共蒸着で形成されない単一の材料で構成される場合の「改質」とは、発光層17を構成する成分の少なくとも一部が、分解または重合を生じるか、または分子構造に変化を生じ、物理的性質が変化することである。また、EL素子を構成する膜層が、変質することである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、ファイン蒸着マスク251を使用せずに発光層17を形成する。発光層17は、複数の色の画素に連続して共通に形成する。発光層17にレーザ光59等を照射し、発光層17を改質する。
【0021】
ファイン蒸着マスク251を使用しないため、ファイン蒸着マスク251の位置ずれ課題が発生しない。したがって、蒸着マスク251の位置連ずれに伴う画素37に混色の発生がない。また、ファイン蒸着マスク251の位置決め機構および装置が不要であるため、製造装置のコストを削減できる。また、ファイン蒸着マスク251の位置決め時間がなく、製造タクトを短くできるという効果がある。
【0022】
レーザ光59等の照射により蛍光あるいは燐光発光する光を、ホトセンサなどを用いて測定あるいは検出することにより、発光層の改質状態をモニターする。モニターにより発光層が所定の改質状態に到達したかを正確に把握することができる。したがって、製造バラツキのないEL表示パネルを生産でき、また、EL表示パネルの良好な発光波長、発光効率を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施例におけるEL表示パネルの断面構造図である。
【
図2】本発明のEL表示パネルのブロック図および画素の等価回路図である。
【
図3】本発明のEL表示パネルの製造方法の説明図である。
【
図4】本発明のEL表示パネルの製造におけるレーザ装置の説明図である。
【
図5】本発明のEL表示パネルの製造におけるレーザ装置の説明図である。
【
図6】本発明のEL表示パネルの製造における蒸着装置とレーザ装置の説明図である。
【
図7】本発明のEL表示パネルの製造におけるレーザ装置の説明図である。
【
図11】本発明のEL表示パネルの製造におけるレーザ装置の説明図である。
【
図12】本発明のEL表示パネルの製造におけるレーザ装置の説明図である。
【
図13】本発明のEL表示パネルの製造におけるレーザ装置の説明図である。
【
図14】本発明のEL表示パネルの製造におけるレーザ装置の説明図である。
【
図15】本発明のEL表示パネルの製造方法の説明図である。
【
図16】本発明のEL表示パネルの製造方法の説明図である。
【
図17】本発明のEL表示パネルの製造方法の説明図である。
【
図18】本発明のEL表示パネルの製造方法の説明図である。
【
図19】本発明のEL表示パネルの製造方法の説明図である。
【
図20】本発明のEL表示パネルの製造方法の説明図である。
【
図21】本発明のEL表示パネルの製造方法の説明図である。
【
図22】本発明の第1の実施例におけるEL表示パネルの製造方法の説明図である。
【
図23】本発明のEL表示パネルの製造装置の説明図である。
【
図24】本発明のEL表示パネルの製造装置の光照射部の説明図である。
【
図25】本発明のEL表示パネルの製造方法の説明図である。
【
図26】本発明の第2の実施例におけるEL表示パネルの断面構造図である。
【
図27】本発明の第2の実施例におけるEL表示パネルの製造工程の説明図である。
【
図28】本発明の第3の実施例におけるEL表示パネルの断面構造図である。
【
図29】本発明の第3の実施例におけるEL表示パネルの製造工程の説明図である。
【
図30】本発明の第4の実施例におけるEL表示パネルの断面構造図である。
【
図31】本発明の第4の実施例におけるEL表示パネルの製造工程の説明図である。
【
図32】本発明の第5の実施例におけるEL表示パネルの断面構造図である。
【
図33】本発明の第5の実施例におけるEL表示パネルの製造工程の説明図である。
【
図34】本発明の第6の実施例におけるEL表示パネルの断面構造図である。
【
図35】本発明の第6の実施例におけるEL表示パネルの製造工程の説明図である。
【
図36】本発明の第7の実施例におけるEL表示パネルの断面構造図である。
【
図37】本発明の第7の実施例におけるEL表示パネルの製造工程の説明図である。
【
図38】本発明の第8の実施例におけるEL表示パネルの断面構造図である。
【
図39】本発明の第8の実施例におけるEL表示パネルの製造工程の説明図である。
【
図40】本発明のEL表示パネルの断面構造図である。
【
図41】本発明のEL表示パネルの画素配置の説明図である。
【
図42】本発明のEL表示パネルの画素配置の説明図である。
【
図43】本発明の第9の実施例におけるEL表示パネルの説明図である。
【
図44】本発明の第10の実施例におけるEL表示パネルの説明図である。
【
図45】本発明のEL表示パネルの動作の説明図である。
【
図46】本発明の第9の実施例におけるEL表示パネルの断面構造図である。
【
図47】本発明の第9の実施例におけるEL表示パネルの説明図である。
【
図48】本発明の第11の実施例におけるEL表示パネルの説明図である。
【
図49】本発明の第11の実施例におけるEL表示パネルの断面構造図である。
【
図50】本発明の第11の実施例におけるEL表示パネルの説明図である。
【
図51】本発明のEL表示パネルを用いたEL表示装置の説明図である。
【
図52】従来のEL表示パネルの断面構造図である。
【
図53】従来のEL表示パネルの製造工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書、図面において、同様または類似した機能を発揮する構成要素には、同一あるいは類似の参照符号を付加する。また、各実施例で重複する説明は省略する場合がある。
【0025】
本明細書の実施例の説明では、他の実施例との差異事項あるいは異なる個所を中心として説明をする。本発明の実施例で記載された事項は、本明細書で記載する他の実施例に適用することができる。また、本明細書で記載する他の実施例と組み合わせることができる。
【0026】
本発明のEL表示パネルおよび表示装置は、表示画面36に、赤色画素37R、緑色画素37G、青色画素37Bがマトリックス状に配置されている。しかし、本発明のEL表示パネルおよびEL表示装置は、マトリックス状に画素が配置されたものに限定するものではない。表示画面36に、複数の色の部分を有していれば本発明の技術的範疇である。たとえば、白色画素37W、黄色画素37Y、青色画素37Bがマトリックス状に形成された表示パネルでもよい。また、画素がマトリックス状に配置された表示パネルに限定されるものではなく、所定の7セグメント文字等を表示するEL表示パネルであっても良い。
【0027】
本発明のEL表示パネルの製造装置または製造方法において、「改質」は、形成した発光層17の一部に光を照射し、光を照射した箇所を「改質」するものであれば、どんなパネル構造、形態あっても、本発明の技術的思想は適用できる。本発明の技術的思想は、たとえば、単色のキャラクタ表示のEL表示パネルにも適用できることは言うまでもない。
【0028】
本発明は、蒸着等の工程により発光層17を形成した後に、レーザ光などを発光層17に照射し、発光層17を「改質」するとして説明するが、これに限定するものではない。たとえば、蒸着等の工程で発光層17を形成しつつ、レーザ光などを発光層17に照射して、発光層17を「改質」してもよい。
【0029】
発光層17等へのレーザ光59の照射は、真空中で実施する。なお、20ppm以上200ppm以下の酸素を含む窒素あるいはアルゴン雰囲気中で実施してもよい。20以上200ppm以下の酸素中で改質を実施することにより、改質時間が短時間になる。
【0030】
図2は、本発明のEL表示パネルの構造図、および画素の等価回路図である。表示画面36には、赤色画素37R、緑色画素37G、青色画素37Bがマトリックス状に配置されている。
【0031】
赤色画素37Rには画素電極15R、反射膜12Rが形成または配置されている。緑色画素37Gには画素電極15G、反射膜12Gが形成または配置されている。青色画素37Bには画素電極15B、反射膜12Bが形成または配置されている。
図41、
図42に図示するようにマトリックス状に画素37が配置され、表示画面36を構成する。
【0032】
画素電極15Rは、
図1、
図2、
図41、
図42等の画素37Rが対応し、
図1、
図2、
図41、
図42等の画素電極15Gは画素37Gが対応し、
図1、
図2、
図41、
図42等の画素電極15Bは画素37Bが対応する。赤色(R)画素37R、緑色(G)画素37G、青色(B)画素37Bがマトリックス状に配置されている。
【0033】
図42はダイモンド形状に画素が配置されたペンタイル(PenTile)の画素配置である。
図41は、ストライプ状の画素が配置されたスタンダードRGBストライプ配置である。いずれの画素配置もマトリックス状に配置されている。また、発光色(R、G、B)の発光効率に応じて、画素の面積が設定され形成されている。
【0034】
青(B)色は、発光効率が悪いため、青(B)色の画素の面積を大きくしている。RGBの画素を同一サイズとすると、画素の単位面積当たりの電力が大きくなる。
【0035】
本発明のEL表示パネルおよびEL表示装置は、マトリックス状に画素が配置されたものに限定するものではない。表示画面36に、複数の色の部分を有していれば本発明の技術的範疇である。
【0036】
たとえば、黄色画素37Y、青色画素37Bがマトリックス状に形成された表示パネルでもよい。また、画素がマトリックス状に配置された表示パネルに限定されるものではなく、所定の文字表示するEL表示パネルであっても良い。
【0037】
本発明のEL表示パネルの製造装置または製造方法において、「改質」は、形成した発光層17の一部に光を照射し、光を照射した箇所を「改質」するものであれば、どんなパネル構造、形態あっても、本発明の技術的思想は適用できる。本発明の技術的思想は、たとえば、単色のキャラクタ表示のEL表示パネルにも適用できることは言うまでもない。
【0038】
図2は、本発明のEL表示パネルの構造図、および画素の等価回路図である。表示画面36には、赤色(R)画素37R、緑色(G)画素37G、青色(B)画素37Bがマトリックス状に配置されている。
【0039】
トランジスタ21は、高温ポリシリコン(HTPS : High-temperature polycrystalline silicon)、低温ポリシリコン(LTPS : Low-temrature poly silicon)、連続粒界シリコン(CGS : Continuous grain silicon)、透明アモルファス酸化物半導体(TAOS : Transparent Amorphous Oxide Semiconductors)、アモルファスシリコン(AS : amorphous silicon)、赤外線RTA(RTA : rapid thermal annealing)で形成が例示される。
【0040】
本発明等のEL表示パネルは、
図41、
図42に図示するように同一色の画素37が縦方向および横方向にマトリックス状に配列されている。隣接した画素電極15間にも、発光層17の材料が蒸着されているが、隣接した画素電極15間には、ソース信号線35などが形成されている。
【0041】
隣接画素37間には所定の間隔がある。したがって、レーザ光59のレーザスポット91のサイズが大きくとも、横方向に隣接した画素の発光層17に照射されることはない。
【0042】
トランジスタ21は、高温ポリシリコン(HTPS : High-temperature polycrystalline silicon)、低温ポリシリコン(LTPS : Low-temrature poly silicon)、連続粒界シリコン(CGS : Continuous grain silicon)、透明アモルファス酸化物半導体(TAOS : Transparent Amorphous Oxide Semiconductors)、アモルファスシリコン(AS : amorphous silicon)、赤外線RTA(RTA : rapid thermal annealing)で形成が例示される。
【0043】
図2(a)は、本発明のEL表示パネルの構造図であり、
図2(b1)(b2)は、画素37の等価回路図である。
図2(b1)は、画素37を構成するトランジスタ21をPチャンネルトランジスタで構成した場合の等価回路図である。
図2(b2)は、画素37を構成するトランジスタ21をNチャンネルトランジスタで構成した場合の等価回路図である。画素37は、NチャンネルのトランジスタとPチャンネルのトランジスタの両方を用いて構成してもよい。
【0044】
画素37には、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)21、コンデンサ23、EL素子22が形成されている。スイッチ用トランジスタ21aはソースドライバ回路32が出力する映像信号を、駆動用トランジスタ21bのゲート端子に供給するスイッチ素子として機能する。駆動用トランジスタ21bはEL素子22に電流を供給する駆動用トランジスタとして機能する。
【0045】
各画素37のスイッチ用トランジスタ21aのゲート端子はゲート信号線34に接続され、スイッチ用トランジスタ21aのソース端子またはドレイン端子は、ソース信号線35、または駆動用トランジスタ21bのゲート端子と接続されている。
【0046】
駆動用トランジスタ21bのソース端子またはドレイン端子は、アノード電圧Vddが印加されている電極またはEL素子22のアノード端子と接続されている。
【0047】
EL素子22のアノード端子は、駆動用トランジスタ21bのドレイン端子またはソース端子と接続され、EL素子22のカソード端子はカソード電位Vssが印加されたカソード電極19と接続されている。
【0048】
本明細書では、駆動用トランジスタ21b、スイッチ用トランジスタ21aは、薄膜トランジスタとして説明するが、薄膜トランジスタに限定するものではなく、シリコンウエハに形成したトランジスタでもよい。トランジスタ21は、FET、MOS-FET、MOSトランジスタ、バイポーラトランジスタでもよい。
【0049】
TFT基板52の画素電極15の表面を酸素プラズマ処理し、その表面に付着した有機物等の汚染物を除去する。具体的には、TFT基板52を所定温度、例えば70~184℃程度に加熱し、続いて大気圧下で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。
【0050】
図1で図示するように、EL素子22を構成するアノード電極(画素電極)15は、透明電極であるITO、IZOで形成される。画素電極15の下層には反射膜12が形成されている。反射膜12と画素電極15を電極として、コンデンサ23を形成してもよい。反射膜12は電極である必要はなく、光を反射する膜であればよい。たとえば、ダイクロイックミラーのように、多層膜からなる反射膜が例示される。
【0051】
赤、緑、青色の画素37で絶縁膜14の膜厚を異ならせることにより、赤色画素37R、緑色画素37G、青色画素37Bで保持容量Cを異ならせることができる。
【0052】
画素電極15は、透明電極に限定するものでなく、アルミニウム、銀などの金属材料で形成しても良い。この場合、画素電極15が反射膜となる。また、反射膜12と画素電極15は積層して形成してもよい。
【0053】
反射膜12は、銀、アルミニウム、銀合金、アルミニウム合金が例示される。反射膜12と透明電極のITO等と積層構造で形成してもよい。たとえば、ITO、銀、ITOの3層構造が例示される。また、銀の層構造が例示されるまた、反射膜12に電圧を印加できるように構成し画素電極とすることもできる。
【0054】
本明細書では、絶縁膜14を、画素電極15と反射膜12間に形成するとしたがこれに限定するものではない。14は光透過性を機能として有すれば、いずれの材料であってもよい。たとえば、導電性を有していてもよい。たとえば、導電性高分子材料が例示される。
画素電極15Rは、
図2の画素37Rが対応し、画素電極15Gは画素37Gが対応し、画素電極15Bは画素37Bが対応する。
【0055】
EL素子22を構成するアノード電極(画素電極)15は、透明電極であるITO、IZOで形成される。画素電極15の下層には反射膜12が形成されている。反射膜12は、銀(Ag)あるいはアルミニウム(Al)もしくはこれらのいずれかの合金で形成される。
【0056】
反射膜12の上層にITOなどの透明電極を形成しているが、これに限定するものではなく、反射膜12の下層にもITOなどの透明電極を形成してもよい。つまり、反射膜12をITOなどでサンドイッチ構造に形成してもよい。
反射膜12は電極である必要はなく、光を反射する膜であればよい。たとえば、ダイクロイックミラーのように、多層膜からなる反射膜が例示される。
【0057】
本発明の製造装置、製造方法、EL表示パネル等の技術的思想は、反射膜12がなく、カソード電極19を反射膜とし、下部電極側からのみ光を取り出すようにした、下面発光型のEL素子22にも適用可能である。
【0058】
TFT基板52は、トランジスタ21、画素電極15等が形成されたガラス基板である。なお、ガラス基板の代わりに樹脂からなる基板の場合もある。たとえば、ポリイミド樹脂で形成された基板であってもよい。また、ワニスを平面上に塗布し、硬化させた樹脂フィルムであってもよい。たとえば、ワニスを硬化させ厚みが10~25μmのポリイミドフィルムとし、前記フィルムを0.1~0.7mmのポリエステル支持基板に貼り付けてもよい。また、金属材料、セラミック材料からなる基板であってもよい。
【0059】
なお、本明細書では、TFT基板52に発光層17などを形成する例を例示して説明するが、本発明は、TFT基板52を用いたEL表示パネルに限定するものではない。たとえば、TFTが形成されていない単純マトリックス型EL表示パネルであっても良いし、固定の文字を表示するキャラクタ表示のEL表示パネルであっても良い。
【0060】
図1は、本発明のEL表示パネルの断面構成図である。TFT基板52の上にトランジスタ21などからなる画素37を形成し、その上に、一例として感光性樹脂よりなる平坦化膜28を設ける。反射膜12は、平坦化膜28の下層に形成しても良いし、平坦化膜28の上方に形成してもよい。
【0061】
平坦化膜28の上に、ITOまたはIZOからなる透明導電膜を形成し、この透明導電膜をパターニングすることにより、赤色の画素電極15R、緑色の画素電極15G、青色の画素電極15Bを形成する。画素電極15は、平坦化膜28のコンタクトホール(図示せず)を介して駆動用トランジスタ21bの一端子と導通させる。
【0062】
各画素電極15の下層に形成される絶縁膜14の膜厚は、EL素子の光学的距離Lを調整するために形成している。本発明は、複数色の画素電極15の下層の絶縁膜14において、いずれかの絶縁膜14の膜厚を異ならせた構成である。
【0063】
光学的距離(Optical Path Length)は光路長とも呼ぶ。実際に光が進む距離(物理的距離)に屈折率をかけたものである。物質中での光の速さは屈折率に反比例するため、光学的距離が等しければ光は進むのに同じ時間がかかる。
【0064】
なお、各色のEL素子を構成する各層の物質の屈折率は大きくは差がないため、各色のEL素子の光学的距離Lと物理的距離は相対的に比例する。したがって、光学的距離Lを物理的距離に置き換えても良い。
【0065】
本発明は、複数色を発光するEL表示パネルにおいて、少なくも1つの色のEL素子に、複数の発光層を形成し、他の色のEL素子の発光層17と異ならせ、光学的距離Lを異ならせた構成である。また、複数色を発光するEL表示パネルにおいて、少なくも1つの色のEL素子の光学的距離Lを、他の色のEL素子の光学的距離Lと異ならせた構成である。
【0066】
発光層17R(第1の発光層)が放出する光の主波長λ1(nm)は、発光層17G(第2の発光層)が放出する光の主波長λ2(nm)に比較してより長い。この主波長λ2は、発光層17B(第3の発光層)が放出する光の主波長λ3(nm)に比較してより長い。一例として、発光層17Rの発光色は赤色であり、発光層17Gの発光色は緑色であり、発光層17Bの発光色は青色であるとする。
図1に図示する本発明の第1の実施例では、赤の画素電極15R上には、発光層17R、発光層17G、発光層17Bが形成されている。
【0067】
反射膜12Rとカソード電極19R間の距離L1が赤色のEL素子22の光学的距離である。緑の画素電極15G上には、発光層17G、発光層17Bが形成されている。反射膜12Gとカソード電極19G間の距離L2が緑色のEL素子22の光学的距離である。青の画素電極15B上には、発光層17G、発光層17Bが形成されている。反射膜12Bとカソード電極19間の距離L3が青色のEL素子22の光学的距離である。
【0068】
赤の画素電極15R、緑の画素電極15G、青の画素電極15Bの上方には、発光層17R、発光層17G、発光層17Bが共通に形成されている。発光層17Rは、複数の色の画素(赤色の画素37R、緑色の画素37G、青色の画素37B)に、共通に、かつ連続した膜として形成されている。
【0069】
同様に、発光層17Gは、複数の色の画素に、共通に、かつ連続した膜として形成され、発光層17Bは、複数の色の画素に、共通に、かつ連続した膜として形成されている。発光層17R、発光層17G、発光層17Bは、ラフ蒸着マスクを使用して、表示画面36の全体に形成されている。
ラフ蒸着マスクは、表示領域に開口部が形成され、表示領域以外に開口部がない蒸着マスクである。
【0070】
ファイン蒸着マスクは、各画素に対応して蒸着材料を蒸着する部分に開口部が形成されている蒸着マスクである。表示領域以外に開口部はない点はラフ蒸着マスクと同様である。
【0071】
赤色は波長が最も長く、青色は波長が最も短く、緑色は、赤色と青色の波長の中間である。したがって、各色で最適な光学的距離Lは、赤色の光学的距離L1 > 緑色の光学的距離L2 > 青色の光学的距離L3となる。ただし、干渉次数は、赤色、緑色、青色で同一次数としている。
【0072】
本発明のEL表示パネルは、光取り出し側の電極には、光透過性の金属膜(MgAg19)を形成し、光取り出し側と逆側には反射膜12を形成する。反射膜として高反射金属である銀(Ag)を用いる。
【0073】
また、光学的距離Lに関して、L=(2m-(φ/π))×(λ/4)を満たすことで、取り出したい波長λの光を正面方向に集光させている。φは反射膜における反射時の位相シフト[rad]、干渉次数mは0又は正の整数であり、m=0の時に光学的距離Lは式を満足する正の最小値をとる。λは発光波長である。
【0074】
干渉次数mは、0又は1を選択する。干渉次数0の場合は、EL素子を構成する膜厚が薄く、使用する有機材料量を削減できるため、低コスト化を実現できる。また、視角方向による色変わりが発生しにくい。
【0075】
画素電極15上には、正孔輸送層16が形成されている。画素電極15と正孔輸送層16間に正孔注入層(HIL:Hole injection layer 図示せず)を形成してもよい。
正孔注入層は、正孔輸送層16のHOMO準位と陽極の仕事関数との間にHOMO準位を有し、陽極から有機層への掘る注入障壁を下げる働きをする。
【0076】
このような正孔注入層を構成する材料としては、例えば、ベンジジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキザゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、または、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマー、オリゴマーあるいはポリマーを用いることができる。
【0077】
画素電極15の正孔輸送層16の膜厚は、赤色、緑色、青色の画素37で異ならせてもよい。たとえば、画素電極15R上に正孔輸送層16Rを形成し、画素電極15G上に正孔輸送層16Gを形成し、画素電極15B上に正孔輸送層16Bを形成し、それぞれの正孔輸送層16の膜厚を異ならせる。
【0078】
本発明の第1の実施例のEL表示パネルは、
図1に図示するように、画素電極15の上方には、赤色の発光層17R、緑色の発光層17G、青色の発光層17Bが形成されている。
【0079】
「改質」する発光層17、たとえば、発光層17R、発光層17Gは、ホスト材料とゲスト材料との混合物を含んでいる。発光層17R、発光層17Gは、少なくとも、ホスト材料またはゲスト材料のいずれかが異なっており、発光色が互いに異なっている。
【0080】
発光層17Rが含んでいるゲスト材料の吸収スペクトルは、発光層17Gの発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。発光層17Gが含んでいるゲスト材料の吸収スペクトルは、発光層17Bの発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。
図1において、画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rは改質されている。また、画素電極15Bの上方の発光層17Gも改質されている。
【0081】
図1の画素電極15Rの上方の発光層17Rは、赤色で発光する。画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rは発光しない。画素電極15Gの上方の発光層17Gは、緑色で発光する。画素電極15Bの上方の発光層17Gは発光しない。
【0082】
図1の画素電極15Rの上方の発光層17Rは、画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rと比較して、発光するゲスト材料をより高い濃度で含有している。
【0083】
図1の画素電極15Rの上方の発光層17Rが含んでいるゲスト材料の多くは発光可能であり、画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rが含んでいるゲスト材料のほとんどは消光するか、または励起されない。
【0084】
画素電極15Rの上方の発光層17Rは、画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rと比較して、正孔移動度と正孔注入効率のうち少なくとも一方が小さい。
【0085】
画素電極15Rおよび画素電極15Gの上方の発光層17Gは、画素電極15Bの上方の発光層17Gと比較して、発光するゲスト材料を、より高い濃度で含有している。画素電極15Bの上方の発光層17Gのゲスト材料のほとんどは消光するか、励起されない。
【0086】
または、画素電極15Rおよび画素電極15Gの上方の発光層17Gは、画素電極15Bの上方の発光層17Gと電気的特性が異なっている。画素電極15Rおよび画素電極15Gの上方の発光層17Gは、画素電極15Bの上方の発光層17Gと比較して、正孔移動度と正孔注入効率のうち少なくとも一方がより小さい。
【0087】
画素電極15Rおよび画素電極15Gの上方の発光層17Gが含んでいるゲスト材料の多くは発光可能であり、画素電極15Bの上方の発光層17Gが含んでいる発光層17Gのゲスト材料のほとんどは消光するか、励起されない。
【0088】
画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rは、画素電極15Rの上方の発光層17Rと比較して、発光層17Rの正孔移動度と正孔注入効率がのうち少なくとも一方がより大きい。画素電極15Bの上方の発光層17Gは、画素電極15Rおよび画素電極15Gの上方の発光層17Gと比較して、発光層17Gの正孔移動度と正孔注入効率がのうち少なくとも一方がより大きい。
【0089】
本明細書では、画素電極15の上方に正孔輸送層16、発光層17、電子輸送層18を形成し、共通電極としてのカソード電極19形成されたEL素子22を有するEL表示パネルを例示して説明するが、これに限定するものではない。画素電極15の上方に電子輸送層18、発光層17、正孔輸送層16を形成し、共通電極としてのカソード電極19形成された逆構造のEL素子22を有するEL表示パネルでもよい。
逆構造のEL素子22の場合は、本発明の図面および本明細書とその説明において、正孔輸送層を電子輸送層と置き換えればよい。
【0090】
【0091】
画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rは、本発明の製造方法により、紫外線光領域または紫色光領域または青色光領域のレーザ光59が照射される。レーザ光59は、主として、発光層17Rのゲスト材料が吸収する。
【0092】
紫外線とは、波長が10(nm)以上400(nm)以下、すなわち、可視光線より短く軟X線より長い不可視光線の電磁波である。赤外線は、可視光線の赤色より波長が長く(周波数が低い)、電波より波長の短い電磁波のことである。
【0093】
発光層17Rのゲスト材料は、レーザ光59の吸収によって共有結合鎖が切断される。酸素の無い蒸着室56で共有結合鎖が切断されると、共有結合鎖のラジカルは二重結合を生成する。または、他の共有結合鎖の原子を引き抜き結合する。あるいは、他の共有結合鎖と架橋構造を生成し、構造に変化が生じる。または、共有結合鎖が切断されることで他の物質に変化する。したがって、発光層17Rのゲスト材料のHOMO、LUMO電位が変化し、レーザ光59を照射された発光層17Rのゲスト材料は発光しなくなる。
【0094】
レーザ光59は、狭指向性であり直進性がよい。そのため、所定の画素37の発光層17を選択してレーザ光59を照射することができる。本発明等のEL表示パネルは、
図2等に図示するように同一色の画素37が縦方向(画面の上から下方向)に配列されている。隣接した画素電極15間にも、発光層17の材料が蒸着されているが、隣接した画素電極15間には、ソース信号線35などが形成されている。また、隣接画素37間には所定の間隔がある。したがって、レーザ光59のレーザスポット91のサイズが大きくとも、横方向に隣接した画素の発光層17に照射されることはない。
【0095】
図6等に示すように、レーザ光59の走査方向は、ガルバノミラー62を制御することにより、高速かつ精度よく制御できる。また、レーザ装置58は、蒸着室56外に配置しているため、メンテナンスが容易である。レーザ光59は蒸着室56外で発生させ、発生したレーザ光59は、レーザ窓63を介して、蒸着室56内の真空中に導光させる。したがって、蒸着室56内の真空状態を良好に維持できる。なお、レーザ装置58またはレーザヘッド部は、蒸着室56内に配置してもよい。
【0096】
照射する光の波長が短いと材料への光吸収率が高まる。紫外線領域のレーザ光59は回折限界近くまでスポット径を絞ることができるので、加工したときに周囲への熱影響を小さくでき、微細加工に適する。
レーザ装置58は、連続発振モードの装置を使用することが例示される。しかし、パルス発振方式のレーザ装置58は、レーザ光パルスのエネルギーが強い。
【0097】
マトリックス状に画素が配置されたEL表示パネルのように、レーザ光59を照射する画素が離散的に配置されている場合は、画素は、赤色の画素、緑色の画素、青色の画素が定間隔で形成されている。
【0098】
レーザ光59は、たとえば赤色の画素を順次、照射する。したがって、赤色の画素にはパルス状にレーザ光59を照射することになる。このパネルの画素配置では、パルス発振方式のレーザ装置58を用いることが好ましい。
【0099】
パルス発振方式のレーザ装置58が出力するレーザ光59は、Qスイッチでオンオフ制御されるため、パルス強度のバラツキが発生しやすい。そのため、改質させる箇所(画素)に、複数のレーザパルスを照射して発光層17等を改質させることが望ましい。
【0100】
パルス発振レーザの場合は、同一箇所に複数のパルスを照射する。同一箇所に複数のパルスの照射することにより、同一箇所に照射されるレーザ光59のエネルギーが平均化され、改質状態が均一になる。なお、レーザパルスの照射間隔は、50nsec以上5μsec以下にすることが好ましい。
【0101】
連続発振レーザの場合は、同一箇所に複数回のレーザ光を走査(照射)する。同一箇所に複数回のレーザ光59を走査することにより、同一箇所に照射されるレーザ光のエネルギーが平均化され、改質状態が均一になる。なお、レーザ光59の照射間隔は、50nsec以上5μsec以下にすることが好ましい。
【0102】
レーザ装置58としては、一例として、オプトピア株式会社が製品化しているレーザ・リフト・オフ(LLO)装置のレーザ装置を使用することができる。レーザ・リフト・オフ装置のレーザ装置のレーザ波長は343(nm)、ラインビーム長は750mmである。ライン幅は30μm、エネルギー密度は250mJ/cm2、パルス幅は15nsである。
【0103】
したがって、大型のEL表示パネルであっても、1画素列(画面の上端から下端)に、一つのレーザスポット91で、1画素列にレーザ光59を照射することができる。レーザ光59のパルス幅は10nsec以上80nsec以下が適正である。
【0104】
その他、レーザ装置58として、波長355(nm)のUV光を発生させるYAGレーザを用いたもの、308(nm)のエキシマレーザを用いたものも例示される。
【0105】
本発明のEL表示装置の製造方法は、レーザ装置58を用いることにより、レーザ光59を走査し、精度よく画素37を選択して、所定の発光層17を改質することができる。また、レーザ光59は単位面積あたりの光強度が大きい。したがって、発光層17を短時間で改質することができる。
【0106】
本発明は、少なくとも、一つの色の発光層17を形成する工程では、従来の製造方法のように、ファイン蒸着マスク251は使用しない。そのため、ファイン蒸着マスク251の位置ずれによる発光色の混色問題は発生しない。したがって、混色による歩留まり低下を防止できる。ファイン蒸着マスク251の位置決め装置が不要であるから蒸着製造装置のコストを低減できる。ファイン蒸着マスク251を使用しないため、ファイン蒸着マスク251の位置決めも不要であるから、製造タクトを短縮することができる。
【0107】
本発明において、紫外線領域の波長の光を使用する。特にレーザ光59を使用する。レーザ光59の照射により、発光層17のゲスト材料とホスト材料の組み合わせ状態に変化を発生させる。主としてレーザ光59は、ゲスト材料に紫外線領域の光を吸収させる。
【0108】
本発明の製造方法・製造装置では光の照射により、ゲスト材料のバンドギャップはホスト材料のバンドギャップよりも大きく、ゲスト材料とホスト材料のHOMOおよびLUMOの相対的な配置は、HOMOはゲスト材料のほうがホスト材料よりも低く、LUMOはゲスト材料のほうがホスト材料よりも高い、のうち少なくとも1つ以上の関係を発生させる。
【0109】
したがって、レーザ光59を照射された発光層17は消光するか、非発光となるか、もしくはほとんど発光しなくなる。あるいは、ゲスト材料に光を吸収させることにより、ゲスト材料のバンドギャップを、可視光を発光するエネルギーギャップ領域よりも大きくする。そのため、発光層17が消光するか、非発光となるか、もしくはほとんど発光しなくなる。
【0110】
電子と正孔との再結合は、画素37Rでは、主に発光層17Rにおいて生じさせる。画素37Gでは電子と正孔との再結合は、主に発光層17Gにおいて生じさせる。画素37Bでは主に発光層17Bにおいて生じさせる。
【0111】
本発明の第一の実施例におけるEL表示パネルでは、画素37Rでは、電子と正孔との再結合は主に発光層17Rにおいて生じるが、再結合は発光層17Gおよび17Bにおいても発生する可能性がある。すなわち、画素電極15Rでは、発光層17R、17G、17Bの各々が発光する可能性がある。
【0112】
画素37Rでは、発光層17Rが含んでいるゲスト材料は、発光層17Gおよび発光層17Bが励起されるエネルギーを吸収して発光する。発光層17Gが含んでいるゲスト材料は、発光層17Bが放出する光を吸収して励起するが、発光層17Rが放出する光を吸収して励起することはほとんどない。また、発光層17Bが含んでいるゲスト材料は、発光層17Rまたは17Gが励起されるエネルギーを吸収して発光することはほとんどない。
【0113】
画素37Rでは、発光層17Bが放出する励起エネルギーうち少なくとも一部は、発光層17Rが含んでいるゲスト材料の発光スペクトルを有している光へと変換される。発光層17Gが励起されるエネルギーの少なくとも一部は、発光層17Rが含んでいるゲスト材料の発光スペクトルを有している光へと変換される。したがって、画素37Rの発光色は、発光層17Rの発光色とほぼ等しく、画素37Rは、赤色光を放出する。
【0114】
画素37Gでは、電子と正孔との再結合は主に発光層17Gにおいて生じるが、再結合は発光層17Gおよび17Bにおいても発光する可能性がある。画素電極15Gの上方の発光層17Rは、レーザ光59の照射により、発光するゲスト材料を含有していない。
【0115】
画素37Gの発光層17Rは発光するゲスト材料を含有していないので、発光層17Rにおいて、色変換は生じない。発光層17Bでは、上記の色変換を生じる。したがって、画素電極15Gの発光色は、発光層17Gの発光色とほぼ等しく、画素電極15Gは、緑色光を放出する。
【0116】
画素37Bでは、電子と正孔との再結合は、主に発光層17Bにおいて生じるが、再結合は発光層17Rおよび17Gにおいても発生する可能性がある。しかし、画素電極15Bの上方の発光層17Rおよび17Gは、レーザ光59の照射により、励起あるいは発光するゲスト材料を含有していないので、発光層17Bのみが発光する。
【0117】
画素37Bの発光層17Rおよび発光層17Gは、励起あるいは発光するゲスト材料を含有していないので、発光層17Rおよび17Gにおいて色変換は生じない。したがって、画素37Bの発光色は、発光層17Bの発光色とほぼ等しく、画素電極15Bは、青色光を放出する。
【0118】
図3(a)に図示するように、ホスト材料は、レーザ光59を吸収しにくく、ゲスト材料は、レーザ光59を吸収しやすい材料を選定する。もしくは、レーザ光59の波長は、ホスト材料が吸収しにくく、ゲスト(ドーパント)材料が吸収しやすい波長を選定する。
【0119】
好ましくは、
図3(a)に図示するように、ゲスト材料の吸収率が75%以上の時、ホスト材料の吸収率が25%以下の関係となるようなホスト材料、ゲスト材料を選定する。
なお、
図3において、ゲスト材料およびホスト材料の光吸収率(%)は、光吸収率の最大時を100%として規格化して図示している。
レーザ光59の波長は説明を容易にするため、350(nm)としている。紫外線領域の波長のYAGレーザの波長は、355(nm)である。
【0120】
図3(a)において、ゲスト材料Aは、波長400(nm)以下で吸収率(%)が増加する特性を有し、レーザ光59の波長で、75%以上の吸収率を有する材料の例である。ゲスト材料Bは、レーザ光59の波長近傍で良好な吸収率を有する材料の例である。
レーザ光59の波長で、ゲスト材料の光吸収率と、ホスト材料の光吸収率は3倍以上となるように、レーザ光波長、ゲスト材料、ホスト材料を選定する。
【0121】
たとえば、レーザ光59でのゲスト材料の光吸収率75%、ホスト材料の光吸収率25%とすれば、75%/25%=3倍である。レーザ光59でのゲスト材料の光吸収率50%、ホスト材料の光吸収率10%とすれば、50%/10%=5倍である。
【0122】
レーザ光59の波長は、正孔輸送層の光吸収率(%)も考慮する必要がある。正孔輸送層16の上方に発光層17が形成され、発光層17にレーザ光59を照射する。その際、発光層17を透過したレーザ光59が正孔輸送層16に照射される場合がある。正孔輸送層16がレーザ光59を吸収すると正孔輸送層16が特性変化する可能性がある。
【0123】
したがって、
図3(b)に図示するように、正孔輸送層16材料は、ホスト材料と同様に、ゲスト材料のレーザ光59の吸収率が、75%以上の時、ホスト材料のレーザ光59の吸収率が25%以下の関係となるような正孔輸送層16材料を選定することが好ましい。
【0124】
本発明は、発光層17がゲスト材料とホスト材料から形成される構成に限定するものではない。発光層17は、単一の材料で形成される場合もある。発光層17が単一の材料で形成される場合は、前記単一の材料を改質させる。
【0125】
本発明は、レーザ光59などを、EL素子22を形成する有機膜に照射し、発光層17などを改質させることを技術的思想とするものである。この場合、発光層17と正孔輸送層材料のレーザ光59の吸収率の関係が必要になる。つまり、
図3(b)に図示するように、レーザ光59の波長は、正孔輸送層の光吸収率(%)と発光層17の光吸収率(%)の関係が必要である。
【0126】
したがって、
図3(b)に図示するように、発光層17材料のレーザ光59の吸収率が75%以上の時、正孔輸送層材料のレーザ光59の吸収率が25%以下の関係となるような正孔輸送層材料を選定することが好ましい。
【0127】
図3(b)において、発光層材料Aは、波長400(nm)以下で吸収率(%)が増加する特性を有し、レーザ光59の波長で、75%以上の吸収率を有する材料の例である。発光層材料Bは、レーザ光59の波長近傍で良好な吸収率を有する材料の例である。正孔輸送層材料は、レーザ光59の波長で、光吸収率25%以下となる。
【0128】
以上のように、発光層17を構成する材料と、正孔輸送層を構成する材料は、改質させる光(レーザ光59等)の波長において、75%/25%=3倍以上の光吸収率差とする。好ましくは、4倍以上の光吸収率差とすることが好ましい。
レーザ光59の波長で、発光層17の光吸収率と、正孔輸送層の光吸収率は3倍以上となるように、レーザ光波長、発光層材料、正孔輸送層材料を選定する。
【0129】
たとえば、レーザ光59での発光層17の光吸収率75%、正孔輸送層材料の光吸収率25%とすれば、75%/25%=3倍である。レーザ光59での発光層17の光吸収率50%、正孔輸送層の光吸収率10%とすれば、50%/10%=5倍である。
図3で説明する事項は、本発明の他の実施例においても適用されることは言うまでもない。
【0130】
図1の実施例において、画素電極15Rの上方の発光層は、赤色の発光層17Rが赤色で発光する。緑色の発光層17G、青色の発光層17Bは発光しない。赤色の発光層17Rは、“発光”、緑色の発光層17Gは“消光”、青色の発光層17Bは“消光”となっている。
【0131】
画素電極15Gの上方の発光層は、緑色の発光層17Gが緑色で発光する。赤色の発光層17Rおよび青色の発光層17Bは発光しない。赤色の発光層17Rは、“消光”、緑色の発光層17Gは“発光”、青色の発光層17Bは“消光”となっている。
【0132】
画素電極15Bの上方の発光層は、青色の発光層17Bが青色で発光する。赤色の発光層17Rおよび青色の発光層17Bは発光しない。赤色の発光層17Rは、“消光”、緑色の発光層17Gは“消光”、青色の発光層17Bは“発光”となっている。
【0133】
正孔輸送層16は、発光層17へ正孔を輸送する働きをし、発光層と接するため発光層17から励起エネルギーが移動せず、さらには他の層と相互作用してエキサイプレックスを形成しないように、発光層17よりもエネルギーバンドギャップが大きな材料が用いられる。たとえば、TPD、α―NPD、NBP、TCTAが例示される。
正孔注入層は、正孔輸送層16のHOMO準位と陽極の仕事関数との間にHOMO準位を有し、陽極から有機層への掘る注入障壁を下げる働きをする。
【0134】
発光層17の上方には、電子輸送層18を形成されている。電子輸送層18とカソード電極19との間に電子注入層(EIL:Electron injection layer 図示せず)を形成してもよい。電子輸送層18の種類は、赤色画素37R、緑色画素37G、青色画素37Bで異ならせてもよい。
【0135】
カソード電極(陰極)19は、例えば金属材料を用いて構成されたものであり、光透過性を有している。例えば、MgAgなどの光透過性を有する層を用いた薄膜により構成されている。この金属陰極層は、さらにアルミキノリン錯体、スチリルアミン誘導体、フタロシアニン誘導体等の有機発光材料を含有した混合層であっても良い。さらに第3の層としてMgAgのような光透過性を有する層を別途有していてもよい。
【0136】
一実施例としてMgAgを例示してカソード電極(陰極)を形成している。カソード電極(陰極)19は、蒸着により形成する。カソード電極(陰極)19を形成したのち、下地に対して影響を及ぼすことのない程度に、成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法、例えば蒸着法やCVD法により、封止層20を形成する。例えば、アモルファス窒化シリコンからなる封止層20を形成する場合には、CVD法によって1μm以上5μm以下の膜厚に形成する。この際、有機層の劣化による輝度の低下を防止するため、成膜温度を常温に設定すると共に、封止層の剥がれを防止するために膜のストレスが最小になる条件で成膜することが望ましい。
【0137】
封止層20は、0.5μm以上2.0μm以下の膜厚でSiON膜などをCVDで形成した後、アクリルあるいはエポキシ樹脂からなる有機材料などを4μm以上30μmの膜厚で形成し、さらに、0.5μm以上2.0μm以下の膜厚でSiON膜またはSiNx膜を形成してもよい。封止層20には、封止フィルム27を貼り付け、防湿対策をすることが好ましい。また、光出射側には、表示コントラストを良好なものとするため、円偏光板(円偏光フィルム)29を貼り付けることが望ましい。
【0138】
電子注入層は、電子注入層として用いられるものであり、仕事関数が小さく、かつ光透過性の良好な材料を用いて構成される。このような材料としては、例えばリチウム(Li)の酸化物である酸化リチウム(Li2O)や、セシウム(Cs)の複合酸化物である炭酸セシウム(Cs2CO3)、さらにはこれらの酸化物および複合酸化物の混合物を用いることができる。その他、LiFなども例示される。
【0139】
電子注入層は、このような材料に限定されることはなく、例えば、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属、リチウム、セシウム等のアルカリ金属、さらにはインジウム(In)、マグネシウム(Mg)等の仕事関数の小さい金属、さらにはこれらの金属の酸化物および複合酸化物、フッ化物等を、単体でまたはこれらの金属および酸化物および複合酸化物、フッ化の混合物や合金として安定性を高めて使用しても良い。
【0140】
電子輸送層18は、カソード電極(陰極)19から電子を注入し輸送する機能を持つ。正孔輸送層16と同様に、バンドギャップが広い材料が好ましい。また、発光層17内で生成した励起子の移動を阻止する働きもあるため、励起子阻止層や、BCPはホールの移動を阻止する作用があるため、ホールブロッキング層として使われることもある。
【0141】
電子輸送層18の材料としては、例えば、キノリン、ペリレン、フェナントロリン、スチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、フラーレン、オキサジアゾール、フルオレノン、またはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。
【0142】
具体的には、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(略称Alq3)、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、アントラセン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、C60、アクリジン、スチルベン、1,10-フェナントロリンまたはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。このような電子輸送層(ETL)18は積層構造であっても良い。
【0143】
発光層17は、画素電極(陽極)15とカソード電極(陰極)19とに対する電圧印加時に、陽極側から注入された正孔と、陰極側から注入された電子とが再結合する領域である。
【0144】
このような発光材料としては、例えば、多環縮合芳香族化合物、ベンゾオキサゾール系、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系などの蛍光増白剤、金属キレート化オキサノイド化合物、ジスチリルベンゼン系化合物などの薄膜形成性の良い化合物を用いることができる。
【0145】
多環縮合芳香族化合物としては、例えば、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン骨格を含む縮合環発光物質や、約8個の縮合環を含む他の縮合環発光物質などを挙げることができる。
【0146】
具体的には、1,1,193-テトラフェニル-1,3-ブタジエン、193’-(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニルなどを用いることができる。この発光層は、これらの発光材料の1種または2種以上からなる1層で構成されてもよいし、あるいは該発光層とは別種の化合物からなる発光層を積層したものであってもよい。
【0147】
発光層17は、燐光発光材料とホスト材料とを含有する層とすることが好ましい。燐光発光材料を用いて発光層17を構成した場合、正孔輸送層16は、炭素より重い第14族元素の有機化合物基を有する材料で構成されていることが好ましい。
【0148】
ホスト材料は、発光材料の濃度消光が激しいときや、発光材料のキャリア移動度が遅く単層膜として挿入できない場合など、バイポーラー性のホスト材料中に発光色素(ゲスト材料)をドーピングする。ホスト材料は、ゲスト材料よりも大きなバンドギャップを有している必要がある。
【0149】
また、燐光発光材料をドーピングするときは、ホスト材料の三重項のバンドギャップも燐光発光材料よりも大きい必要がある。小さい場合はエネルギー移動し、エネルギーを閉じ込められなくなったり、ホスト材料の三重項から熱失活してしまったりするので、材料の選択には注意を要する。
【0150】
燐光材料には、禁制である三重項からの発光をえるため、重原子効果を利用する。そのため、中心金属に白金やイリジウムを有する材料が例示される。これらの金属錯体は、配位子のπ電子の広がりを制御することによって、青(B)色~赤(R)色の発光色が得られている。
【0151】
ホスト材料としては、4,4'-Bis(9H-carbazol-9-yl)biphenyl 、4,4'-Bis(2,2-diphenylvinyl)biphenyl、9,9'-Bianthracene、4,4'-Bis(9H-carbazol-9-yl)biphenyl (purified by sublimation)、2,6-Bis[3-(9H-carbazol-9-yl)phenyl]pyridine、Bis[2-(2-pyridinyl)phenolato]beryllium(II) 、4,4'-Bis(9H-carbazol-9-yl)-2,2'-dimethylbiphenyl 、2,8-Bis(9H-carbazol-9-yl)dibenzothiophene 、2,6-Bis(9H-carbazol-9-yl)pyridine 、2,2''-Bi-9,9'-spirobi[9H-fluorene] (This product is only available in Japan.) 、9,9-Bis[4-(1-pyrenyl)phenyl]fluorene 、9,10-Bis(4-methoxyphenyl)anthracene 、4,4'-Bis(2,2-diphenylvinyl)biphenyl (purified by sublimation) 、Bis[2-[(oxo)diphenylphosphino]phenyl] Ether 、3,7-Bis[4-(9H-carbazol-9-yl)phenyl]-2,6-diphenylbenzo[1,2-b:4,5-b’]difuran 、9,10-Diphenylanthracene 、9,10-Di(1-naphthyl)anthracene 、1,3-Di-9-carbazolylbenzene (purified by sublimation) 、9,10-Di(2-naphthyl)anthracene 、9,10-Diphenylanthracene (purified by sublimation) 、3,3'-Di(9H-carbazol-9-yl)-1,1'-biphenyl 、9,9'-Diphenyl-9H,9'H-3,3'-bicarbazole 、3,3''-Di(9H-carbazol-9-yl)-1,1':3',1''-terphenyl 、9-[3-(Dibenzofuran-2-yl)phenyl]-9H-carbazole 、Diphenyl[9,9'-spirobi[9H-fluoren]-2-yl]phosphine Oxide (This product is only available in Japan.) 、1,4-Di(1-pyrenyl)benzene 、2,7-Di(1-pyrenyl)-9,9'-spirobi[9H-fluorene] 、9,10-Di(1-naphthayl)anthracene (purified by sublimation) 、9,10-Di(2-naphthayl)anthracene (purified by sublimation) 、2-Methyl-9,10-di(2-naphthyl)anthracene 、Poly(N-vinylcarbazole) 、Tris(8-quinolinolato)aluminum 、1,3,5-Tri(9H-carbazol-9-yl)benzene (purified by sublimation) 、Tris(8-quinolinolato)aluminum (purified by sublimation) 、4,4',4''-Tri-9-carbazolyltriphenylamine (purified by sublimation) 、4,4',4''-Tri-9-carbazolyltriphenylamine 、1,3,5-Tri(1-naphthyl)benzene 、9,9',10,10'-Tetraphenyl-2,2'-bianthracene等が例示される。
【0152】
赤色ドーパント(ゲスト材料)としては、4-(Dicyanomethylene)-2-methyl-6-(4-dimethylaminostyryl)-4H-pyran 、4-(Dicyanomethylene)-2-methyl-6-[2-(2,3,6,7-tetrahydro-1H,5H-benzo[ij]quinolizin-9-yl)vinyl]-4H-pyran 、DCJTB 、(1,10-Phenanthroline)tris[4,4,4-trifluoro-1-(2-thienyl)-1,3-butanedionato]europium(III) 、5,6,11,12-Tetraphenylnaphthacene 、Tris(1,3-diphenyl-1,3-propanedionato)(1,10-phenanthroline)europium(III) 、5,6,11,12-Tetraphenylnaphthacene (purified by sublimation) 、Tris[1-phenylisoquinoline-C2,N]iridium(III) (purified by sublimation) 、Tris(acetylacetonato)(1,10-phenanthroline)europium(III) 、Tris(1,10-phenanthroline)ruthenium(II) Bis(hexafluorophosphate) が例示される。
【0153】
緑色ドーパント(ゲスト材料)としては、Bis(8-quinolinolato)zinc(II) Hydrate 、Bis[2-(2-benzothiazolyl)phenolato]zinc(II) 、Bis[2-(2-benzoxazolyl)phenolato]zinc(II) 、3-(2-Benzothiazolyl)-7-(diethylamino)coumarin 、3-(2-Benzimidazolyl)-7-(diethylamino)coumarin 、Coumarin 545T 、(2,2'-Bipyridine)bis(2-phenylpyridinato)iridium(III) Hexafluorophosphate 、(2,2'-Bipyridine)bis[2-(2,4-difluorophenyl)pyridine]iridium(III)Hexafluorophosphate、9,10-Bis[N-(m-tolyl)anilino]anthracene 、9,10-Bis[N,N-di(p-tolyl)amino]anthracene 、2,6-Bis(diphenylamino)anthraquinone 、B5149 9,10-Bis[N-(p-tolyl)anilino]anthracene 、7-(Diethylamino)-3-(1-methyl-2-benzimidazolyl)coumarin 、Coumarin 153 、Coumarin 545 、N,N'-Dimethylquinacridone 、N,N'-Dimethylquinacridone (purified by sublimation) 、7-(Dimethylamino)-4-(trifluoromethyl)coumarin 、7-(Diethylamino)-4-(trifluoromethyl)coumarin 、5,12-Dibutyl-1,3,8,10-tetramethylquinacridone 、N,N'-Dibutylquinacridone 、(4,4'-Di-tert-butyl-2,2'-bipyridine)bis[(2-pyridinyl)phenyl]iridium(III) Hexafluorophosphate 、Quinacridone 、Quinacridone (purified by sublimation) 、Tris(2-phenylpyridinato)iridium(III) (purified by sublimation) 、Tris(acetylacetonato)(1,10-phenanthroline)terbium(III) が例示される。
【0154】
青ドーパント(ゲスト材料)としては、1,4-Bis[4-(di-p-tolylamino)styryl]benzene 、4,4'-Bis[4-(di-p-tolylamino)styryl]biphenyl 、1,4-Bis[2-(9-ethylcarbazol-3-yl)vinyl]benzene 、3-(Diphenylamino)dibenzo[g,p]chrysene 、Perylene 、Perylene (purified by sublimation) 、4-Styryltriphenylamine 、1,3,6,8-Tetraphenylpyrene 、2,5,8,11-Tetra-tert-butylperylene が例示される。
本発明のEL表示パネルの発光層17は、ホスト材料とドーパンド材料を共蒸着して形成することが好ましい。
【0155】
EL素子22が、共振器構造となっている場合、半透過、半反射性を有して構成されたカソード電極19の光反射面と、反射膜12の光反射面との間で多重干渉させた発光がカソード電極19側から取り出される。反射膜12の光反射面とカソード電極19側の光反射面との間の光学的距離Lは、取り出したい光の波長によって規定され、この光学的距離Lを満たすように各層の膜厚および干渉条件が設定される。
【0156】
このような上面発光型のEL素子22においては、このキャビティ構造を積極的に用いることにより、外部への光取り出し効率の改善や発光スペクトルの制御を行うことが可能である。
【0157】
図1の実施例では、赤色の画素37R、緑色の画素37G、青色の画素37Bの絶縁膜14を調整して、赤色の画素37R、緑色の画素37G、青色の画素37Bの光学的距離Lをキャビティ効果が最大に発揮されるように形成したものであった。しかし、本発明は、これに限定するものではない。
図40(a)は、赤(R)画素、緑(G)画素の干渉次数を0次、青(B)画素の干渉次数を1次に形成した実施例である。
【0158】
絶縁膜14の膜厚を、赤(R)画素、緑(G)画素で異ならせて形成している。また、青(B)画素の正孔輸送層を厚く形成している。正孔輸送層は、1回の蒸着による形成ではなく、複数回の蒸着により形成している。また、異なる正孔輸送層の材料で形成してもよい。
【0159】
キャビティ効果を発揮する光学的距離Lは、発光波長に比例する。したがって、赤の波長は緑の波長より長く、緑の波長は青の波長より長い。したがって、干渉次数が同一の場合、赤の光学的距離L1は緑の光学的距離L2より長く、緑の光学的距離L2は青の光学的距離L3より長い。
【0160】
EL素子22の膜厚は、100(nm)程度である。したがって、干渉次数が0次の場合、青の画素37Bの膜厚が最も薄くなる。光学的距離Lが薄いと製造時のダストなどによる欠陥が発生しやすい。したがって、赤の画素37Rに比較して、青の画素37Bの欠陥の発生が多く、青の画素37Bの欠陥でEL表示パネルの歩留まりを低下させていた。
【0161】
図40(a)の実施例のように、青の画素37Bの干渉次数を1次とし、他の色の画素よりもEL素子22の膜厚を厚くすることにより、EL表示パネルの歩留まりを向上できる。また、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素で、発光する波長に対応して最適な光学的距離Lを実現できるので、キャビティ効果を発揮し、良好な色再現性を実現できる。
【0162】
なお、
図40(a)では、3色のうち、青(B)の画素の干渉次数を1次としたが、本発明はこれに限定するものではなく、
図40(b)のように、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素のすべての干渉次数を1次してもよい。また、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素の膜厚の設定は、共通の膜層に限定するものではなく、たとえば、赤(R)画素は、正孔輸送層(HTL)とし、緑(G)画素は発光層(EML)とし、青(B)画素は絶縁膜14Bとしてもよい。
【0163】
また、
図40(c)に図示するように、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素で干渉次数を同一とし、共通の膜層で光学的距離を調整してもよい。
図40(c)は、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素の干渉次数を0次と共通にし、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素で絶縁膜を異ならせることにより、最適なキャビティ効果を実現し、良好な色再現性を実現した実施例である。青(B)画素では絶縁膜が無くとも良い。反射膜12Bと画素電極15Bとを積層させる。
【0164】
また、
図40(d)に図示するように、赤(R)画素、緑(G)画素、青(B)画素で干渉次数を異ならせ、複数の色で、干渉次数を1次としてよいことは言うまでもない。赤(R)画素は干渉次数を0次とし、緑(G)画素および青(B)画素で干渉次数を1次としている。緑(G)画素では発光層17Gを厚く形成し、青(B)画素では、絶縁膜14Bを厚く形成している。
【0165】
画素電極15の周囲には土手(バンク)95が形成されている。土手95は、主として、ファイン蒸着マスク251を配置する際、ファイン蒸着マスク251が画素電極15などと接触することを防止すること、発光層17が隣接した画素間に混入することを防止することを目的として形成される。
【0166】
本発明のように、ファイン蒸着マスク251を使用しない場合、レーザ光59などの狭指向性の光を照射して、発光層17を改質する場合、また、画素間に混色が発生しない場合、また、画素間の混色を防止または抑制できる場合等は、
図38、
図39に図示するように、土手95は形成しなくともよいことは言うまでもない。
【0167】
なお、本発明の製造装置、製造方法、EL表示パネル等は、反射膜12を形成し、透明なカソード電極19側から、発光層17で発生した光を取り出す上面発光型のELパネルを例示して説明する。しかし、本発明はこれに限定するものではなく、カソード電極19を反射膜として、下部電極側からのみ光を取り出すようにした、下面発光型のEL表示パネルにも適用できる。
【0168】
図6は、本発明のEL表示パネルの製造装置の蒸着装置の構成図および説明図である。本発明のEL表示パネルの蒸着装置は、金属蒸発源65、有機蒸発源66を備えた蒸着室56を有する。蒸着室56には、TFT基板52を保持するための移動ステージ51、真空ポンプ(真空排気装置)54、真空ポンプ54と蒸着室56とを結ぶ排気ダクト55を備えている。
【0169】
真空ポンプ54は、オイルミストや熱分解したオイル成分が、きわめてわずかであるが蒸着室内へ混入して不純物として振る舞うために、水分を効果的に除去できるクライオポンプや、メンテナンスがほぼ必要のないターボ分子ポンプと液体窒素トラップを組み合わせたドライな排気系を採用している。
【0170】
チャンバー室111の蒸着室56およびレーザ装置室118の真空度は、1×10-3Pa以上の真空度に保つことが好ましい。さらに好ましくは1×10-4Pa以上の真空度に保つことが好ましい。
【0171】
有機分子は酸素存在下で加熱すると、酸化反応が進み炭化してしまうことが多い。しかし、高真空下では沸点降下現象により沸点(昇華点)は低下するが、有機分子を構成するC-C結合などの化学結合を解離・分解するエネルギーは影響を受けない。そのため、大気中で分解することなく昇華(蒸発)することができない有機材料も、酸素も取り除かれた高真空状態で加熱することによって、容易に昇華させ基板上へ薄膜を製膜することが可能となる。
【0172】
また、蒸着された有機材料にレーザ光を照射しても、酸素も取り除かれた高真空状態であるため、有機材料は必要な化学的変化が促進される。したがって、酸化反応が進み炭化してしまうことがない。
2種類の有機材料を共蒸着法により製膜できるように、複数の蒸着用電源および膜厚計がホスト材料用とゲスト材料用に設置されている。
【0173】
図6に図示するように、レーザ装置58が発生したレーザ光59は、光量調整フィルタ60でレーザ光59の強度が調整される。発光層17を改質させるレーザ光59は、主として紫外線波長領域のレーザ光59を採用する。一例として、波長355(nm)のYAGレーザ光である。
【0174】
レーザ光59の波長は、ゲスト材料の光吸収率が高くなる波長を選定する。また、ゲスト材料に比較してホスト材料の吸収率が少なくなる波長を選定する。また、下層の正孔輸送層(HTL)の吸収率が少なくなる波長を選定する。したがって、レーザ光59の波長は紫外線の波長に限定されるものではなく、たとえば、青色光の波長、緑色光のレーザ光59であってもよい。
【0175】
紫外線を発生するレーザ装置は、光子の持つエネルギーが大きいため、結合の弱い部分を持つ材料(主に有機物)に照射すると、分子結合を直接解離する光分解加工が行える。
光分解加工はワークに当たったエネルギーが加熱ではなく、分解に主に使われるので加工面が極めてシャープとなる。
紫外線領域の波長の光を発生するレーザ装置として、紫外線レーザ(YAGレーザの3倍波、4倍波)、固体紫外線レーザ、エキシマレーザなどが例示される。
【0176】
レーザ光59を集光させて加工位置に照射することができるため、加工位置の有機材料などを容易に蒸発あるいは改質させることができる。有機材料などを蒸発させる際は、真空中で行うため、有機材料は炭化することがなく、レーザ光を照射した位置の周辺部に影響を与えない。
【0177】
紫外線領域の波長のレーザ光59は波長が短いため、レーザ光59のスポット径を小さくできる。また、加工に用いるエネルギー量を、高精細の画素に集光できるため、超高精細のEL表示パネルの画素の上方の有機材料の加工(光分解加工等)を行うことができる。
【0178】
本明細書において、理解を容易にするため、レーザ光59は主として410(nm)以下の紫外線領域の波長の光を使用するとして説明するが、これに限定するものではない。たとえば、410(nm)以上490(nm)以下の青(B)色領域の波長の光もレーザ光59として使用できる。
【0179】
レーザ光59aは、TFT基板52の上方から照射できるように構成することが好ましい。レーザ光59aによりゲスト材料が加熱され、加熱されたゲスト材料が昇華しても、周辺部に付着することを抑制することができる。
【0180】
レーザ装置58はフェムト秒レーザ装置を用いてもよい。フェムト秒レーザ装置はパルスレーザで、そのパルス幅がフェムト秒レベルのレーザ装置である。
レーザ強度はI = E / St で表される。Eはパルスエネルギー、Sはビームスポットの面積、t はレーザパルスの時間幅である。
【0181】
フェムト秒レーザ装置は、通常の加工に用いられるCO2レーザ装置やYAGレーザ装置などと違い、非熱加工であることに特徴がある。加工対象物にCO2レーザ光やYAGレーザ光を当てると、分子が光エネルギーを吸収して振動し、熱エネルギーに変換されて溶融・蒸発することで加工される。フェムト秒レーザの場合は光エネルギーで分子結合を切断し、周辺部分に熱拡散せずに分子を除去する「アブレーション」という現象で加工することができる。したがって、レーザ光59を照射した箇所のみを改質し、周辺部には熱的影響などを与えない。
【0182】
TFT基板52は移動ステージ51に積載され、移動ステージ51は、レーザ光59bが所定の位置に照射されるように移動する。あるいは、移動ステージは、レーザ光の位置にあわせて移動し、TFT基板52の位置を移動させる。
【0183】
光量調整フィルタ60として、偏光ビームスプリッターを用いたバリアブルアッテネータが例示される。偏光ビームスプリッターの手前でλ/2波長板を回転させる事により、透過率(反射率)を変化させる。キューブタイプの偏光ビームスプリッターを使用する為、光軸のシフトも最小限に抑えることができる。
【0184】
レーザ装置58が発生したレーザ光59は必要に応じて、シリンドリカルレンズ61で矩形あるいは楕円形に整形する。また、スリットマスクで画素形状に略一致させるように略矩形あるいは円形状に整形する。
【0185】
光量調整フィルタ60で強度が調整されたレーザ光59は、ガルバノミラー62に入射する。ガルバノミラー62は、XYの2次元エリア(TFT基板52等)にレーザ光59を走査させる。ガルバノミラー62ではXおよびY軸方向にレーザ光59を走査させる2つのモーター(ロータリーエンコーダー)を使用している。
【0186】
レーザ光59は、蒸着室56に配置されたレーザ窓63aを介して、蒸着室56に入射する。レーザ光59bは、高真空状態でTFT基板52を照射される。レーザ窓63aは石英ガラスで形成されている。
【0187】
レーザ光59はレーザ窓63aから、蒸着室56の真空中に入射させる。レーザ装置58は蒸着室56外部の大気中に配置されているため、レーザ装置58の操作、保守が容易である。
【0188】
レーザ光59をTFT基板52に結像するためのレンズとして、fθ(エフシータ)レンズ64を具備している。fθレンズ64は、レンズのレンズ面の曲率をかえることにより、レンズ周辺部と中心部で走査速度が一定になるように設計されている。
【0189】
fθレンズ64は、材質にベリリウムを使用したベリリウムミラーを用いている。ベリリウムはアルミニウムより軽く、鉄より丈夫な金属で研磨すると紫外光から赤外線を非常によく反射するのでレーザの波長にもマッチしている。
【0190】
レーザ装置58が発生したレーザ光59は、ガルバノミラー62でレーザ光59bの方向を変化させられ、fθレンズ64により、TFT基板52の表面に照射される。
【0191】
図7に図示するように、fθレンズ64位置を変化(fθレンズ64a、fθレンズ64b)させることにより、レーザ光59bのスポットサイズを容易に変更できる。レーザ光59bのスポットサイズを変更することにより、単位面積あたりに照射されるレーザ光59bの強度を変化させることができる。レーザ光59bの強度を変化させることにより、発光層17の改質状態あるいは改質時間を容易に調整することができる。
【0192】
TFT基板52に形成された発光層17には、レーザ光59bが照射され、レーザ光59bにより励起されて発光層17を構成する材料が蛍光・燐光71(発光71)を放射する。
【0193】
蛍光が発生するか、燐光71が発生するかは、発光層17の構成材料により異なる。発光層17が蛍光材料の場合は蛍光が発生する。発光層17が燐光材料の場合、燐光または蛍光と燐光が発生する。本発明は説明を容易にするため、発光層17の材料を問わず、蛍光・燐光71として説明をする。
蛍光・燐光71はレーザ窓63bを通過し、波長フィルタ75を所定の波長の光が通過して、光検出回路76cに入射する。
【0194】
レーザ窓63bを透過する光は、蛍光・燐光71だけでなく、レーザ光59cも透過する。波長フィルタ75は、蛍光・燐光71を透過させ、レーザ光59cを遮光する。波長フィルタ75を透過した蛍光・燐光71は、光検出回路76cのホトダイオード(PD)で、蛍光・燐光71を光-電気変換する。
なお、レーザ窓63bを波長フィルタ75としてもよい。レーザ窓63bとなる波長フィルタ75でレーザ光59cが遮光され、蛍光・燐光71が透過する。
【0195】
なお、本明細書、図面において、パネルはTFT基板52(画素にTFTが形成されているパネル)を例示して説明するが、パネルはTFT基板に限定されるものではない。表示部に複数の発光層が重ねられて形成されたELパネルであればいずれの形態のパネルでもよい。たとえば、キャラクタ表示のEL表示パネル、画素にTFTが形成されていないグラフィックEL表示パネル、単純なパターンあるいは形状を表示するEL表示パネルであってもよい。
【0196】
光検出回路76cに入射する蛍光・燐光71の強度は、TFT基板52の発光層17の改質状態で変化する。レーザ光59cを照射された発光層17から発生する蛍光・燐光71は初期では大きく、レーザ光59cで発光層17改質されると発生する蛍光・燐光71の強度が低下していく。蛍光・燐光71の強度が所定値以下となった場合に、レーザ光59bの照射を停止するように構成することにより、発光層17の改質状態を一定にすることができる。また、照射するレーザ光59bの強度を変化あるいは変更する。もしくは、レーザ光59bのパルスの照射期間あるいはパルス幅を変化あるいは変更する。
蛍光・燐光71の強度が所定値以下となると、レーザ光59bは次の画素の発光層17に照射される。あるいはレーザ光59bの照射を停止する。
【0197】
図4はTFT基板52の表面から発生する蛍光・燐光71を検出して発光層17等の改質方法を説明する説明図である。
図4に図示するように、改質を実施する装置は、光検出装置77と光制御装置78を有する。
【0198】
なお、
図4の構成、説明する内容は
図6等の他の本発明の実施例でも適用できることは言うまでもない。また、本明細書の実施例と組み合わせて実施できることも言うまでもない。
【0199】
図4(a)において、レーザ装置58はレーザ光59を発生する。レーザ光59は光分離ミラー72bに入射する。光分離ミラー72bは、レーザ装置58が発生したレーザ光59の強度をモニターするためのハーフミラー的な機能を有する。光分離ミラー72bは、レーザ光59の所定割合のレーザ光59bを反射する。
光分離ミラー72bで反射したレーザ光59bは、ミラー73bで反射し、レンズ74cで集光されて光検出回路76bに入射する。
【0200】
図4(b)は、光検出回路76の回路図である。光検出回路76は、ホトダイオード(PD)、オペアンプ84、抵抗R、コンデンサCなどで構成する。光検出回路76は、ホトダイオード(PD)で、レーザ光59bを光-電気変換する。光-電気変換されたレーザ光は、増幅され、アナログ信号電圧V2となる。アナログ信号電圧V2はA/D変換回路80bでデジタル信号に変換され、レーザ制御回路79に入力される。
【0201】
レーザ制御回路79は、レーザ光59の強弱を検出し、所定の強度値あるいは強度範囲内となるように、レーザ装置58にフィードバック制御する。フィードバック制御により、レーザ光59の強度は所定値範囲内に設定あるいは調整される。
【0202】
レーザ装置58からのレーザ光59aは光分離ミラー72b、光分離ミラー72aを透過し、蒸着室56のレーザ窓63aから、蒸着室56に導光され、改質対象の発光層17に入射する。
【0203】
光分離ミラー72aは、波長分離ミラーとして機能する。光分離ミラー72aは表面に光学的多層膜が形成され、特定の帯域の波長を透過し、特定の帯域の波長を反射する機能を有する。光分離ミラー72aはレーザ光59aを透過し、発光層17で励起された燐光・蛍光波長の光71を反射する。
【0204】
たとえば、レーザ光59aの波長が355(nm)とし、燐光・蛍光波長の光71が青色から緑色の波長400(nm)~600(nm)の場合、光分離ミラー72aは、レーザ光59aの波長が355(nm)を透過させ、燐光・蛍光波長の光71が青色から緑色の波長400(nm)~600(nm)を反射させる。
【0205】
燐光・蛍光波長の光71はレンズ74aで集光され、ミラー73aで方向を曲げられ、リレーレンズ74bで集光される。波長フィルタ75は、集光された光71のうち、一定の波長範囲内の光を透過させる。波長フィルタ75は、レーザ光59aで励起され、発生した所定帯域範囲内の波長の光強度を検出するために使用される。
波長フィルタ75で、所定の波長範囲内に制限することにより、発光層17の改質状態を適切にモニターでき、また、外乱によるノイズの影響も受けなくなる。
【0206】
波長フィルタ75を透過した燐光・蛍光波長の光71は、光検出回路76aに入射する。光検出回路76aは、ホトダイオード(PD)で、光71を光-電気変換する。光-電気変換された光71は、増幅され、アナログ信号電圧V1となる。アナログ信号電圧V1はA/D変換回路80aでデジタル信号に変換され、レーザ制御回路79に入力される。
【0207】
レーザ制御回路79は、燐光・蛍光(蛍光または燐光)波長の光71の強弱を検出し、所定の強度値あるいは強度範囲内かを検出し、所定の強度値あるいは強度範囲内である場合、レーザ装置58が照射するレーザ光59aの照射位置を変化あるいは移動させる。また、レーザ光59aの強度を変化させる。また、発光層17の改質状態をモニター制御する。
【0208】
レーザ光59bが蒸着された発光層17に照射され、発光層17は励起されて蛍光・燐光71を発光する。レーザ光59aは照射された発光層17を改質させる。発光層17が改質されると、発光層17が発生する蛍光・燐光71の強度は低下する。
【0209】
したがって、レーザ光59aは、発光層17を励起される機能と、発光層17を改質する機能の2つを併せ持つ。特に、レーザ光59aは、紫外線領域の光であるため、発光層17を励起しやすい。
【0210】
レーザ光59aは波長が固定波長のため、発生する蛍光・燐光71の波長と分離しやすい。したがって、蛍光・燐光71の波長検出が容易である。また、
図4で図示するように、光検出装置77は、蛍光・燐光71を分離する波長フィルタ75、光分離ミラー72aを具備するため、検出は容易である。
【0211】
波長フィルタ75の透過波長は、発光層17が発生する蛍光・燐光71の波長に対応させて切り替える。あるいは波長フィルタ75を取り替える。光検出回路76aの増幅率は、発光層17が発光する蛍光・燐光71の波長・強度で異なるからである。
【0212】
発光層、発光層17Rが発光する蛍光・燐光71の波長・強度と、発光層17Gが発光する蛍光・燐光71の波長・強度と、発光層17Bが発光する蛍光・燐光71の波長・強度とは異なるので、それぞれの発光層17の蛍光・燐光71に対応して最適値に制御する。
【0213】
蛍光・燐光71の強度を測定あるいは検出することにより、発光層17の改質状態を把握できる。改質状態が所定の設定値を越えた場合、レーザ光59aの照射対象の画素37の改質が完了したと判断し、改質させる次の画素にレーザ光59aを位置決め動作させる。あるいは、連続してレーザ光59aの照射位置を移動させる。
【0214】
光検出装置77と光制御装置78は、同一の部材に取り付けられている。したがって、レーザ光59の照射位置の移動にともない、光検出装置77も、同時に移動する。なお、光検出装置77を蒸着室56内に設置し、光制御装置78は蒸着室56外に設置してもよいことは言うまでもない。また、光検出装置77と光制御装置78とは、分離して配置しても良いことはいうまでもない。
【0215】
光検出装置77は、
図4(c)に図示するように、蛍光・燐光71を検出あるいは集光するレンズ74の角度θを可変できるように構成する。角度θは、蒸着室56外に設置した制御装置で行う。角度θは、蛍光・燐光71が最も強く検出できる角度に自動調整される。
蛍光・燐光71の強度を最も強く検出できるように、レンズ74a~74b、光検出装置77a~77bの位置を変更あるいは設定する。
【0216】
光検出装置77は、蛍光・燐光71の強度だけでなく、波長も判別できるように構成しておくことが好ましい。たとえば、赤色の発光波長が、緑色の発光波長に変化した割合、あるいは変化量を検出する。緑色の発光波長に変化すれば、結果的に、赤色の発光波長は「消光」状態となり、非発光になったと検出できる。
【0217】
なお、発光層17に照射するレーザ光59aとは別に、発光層17を励起させる光を別途発生させ、前記光を発光層17Gに照射させてもよい。たとえば、蛍光・燐光発光用のレーザ光59の発生装置を別途設置し、前記レーザ光59を改質する発光層17に照射する構成が例示される。
【0218】
発生する蛍光・燐光71の強度が所定値以下となれば、発光層17が消光状態となる。消光状態になると、発光層17Gの改質が完了したと判断し、レーザ光59aの照射位置を、次の画素に移動させる。また、改質に要する時間を計測あるいはモニターし、レーザ光59aの強度を制御する。
【0219】
蛍光・燐光71の強度・波長を、光検出装置77でモニターすることにより、改質対象の画素の発光層17の改質状態を精度よく検出あるいは測定でき、最短の期間で、最適な消光状態にすることができる。
【0220】
光制御装置78でレーザ装置58が出力するレーザ光59の強度をモニターすることにより、発光層17に照射するレーザ光強度を、安定した一定値にすることができるため、改質対象の画素の発光層17を精度よく消光状態にすることができる。
【0221】
レーザ装置58は、A紫外線(UV-A)近傍の310(nm)以上400(nm)以下の波長の光を発生し、発生した光を所定の画素電極15上に照射する機能を有する。
【0222】
レーザ光59aがTFT基板52に順次照射できるように、移動ステージ51を動作させてTFT基板52の位置を変化させる。もしくは、ガルバノミラー62などを用いて、レーザ光59aをTFT基板52上に走査する。
【0223】
TFT基板52の画素37にレーザ光59aを照射する際は、TFT基板52は移動ステージ51に配置される。移動ステージ51は、レーザ光59aの照射と同期して滑らかに移動する。移動は一例として、リニアモータにより行われる。
【0224】
レーザ光59aは画素37に結像される。レーザ光59aは、ガルバノミラー62で、画素列方向に走査される。EL表示パネルは画素列方向の画素は、同一の色に設定されている。つまり、画素列1が赤(R)色の画素であれば、画素列1に隣接した画素列2は、緑(G)色の画素であり、画素列2に隣接した画素列3は、青(B)色の画素である。画素列は、赤(R)、緑(G)、青(B)、赤(R)、緑(G)、青(B)、赤(R)と繰り返されて形成されている。レーザ光59の移動と同時にあるいは同期を取って、移動ステージ51が移動する。
【0225】
レーザ光59aの強度分布はガウス分布となる。改質する箇所の全体にレーザ光59aを照射する場合、
図19(b)に図示するように、レーザ光59aのガウス分布の強度63%の範囲W1を改質させる発光層17の幅にすることが好ましい。さらに好ましくは、レーザ光59aのガウス分布の強度80%の範囲W2を改質させる発光層17の幅に設定することが好ましい。
【0226】
発光層17のゲスト材料を改質させるか、蒸発させるかはレーザ装置58が発生し、TFT基板52に照射するレーザ光59aの強度を制御することにより容易に変更できる。レーザ光59の強度の可変は光量調整フィルタ60で行う。
【0227】
図19(a)のレーザスポット91aは円状である。各画素電極15に円状のレーザスポット91aの位置を移動させることにより、各画素37の発光層17を改質する。
【0228】
図19(a)のレーザスポット91b、91cのように、画素電極15の全体を囲うように楕円形あるいは矩形としてもよい。レーザ光59aを楕円形あるいは矩形にするは、シリンドルカルレンズ61を使用することにより容易に実現できる。レーザスポット91bは1つの画素電極15に全範囲に照射する形状である。レーザスポット91cは複数の画素電極15を同時に照射する形状である。レーザスポット91b、91cは、同一色の画素列上を順次移動させて該当画素の発光層17を改質させる。
【0229】
図19のレーザスポット91dのように、ストライプ状のレーザスポットとし、TFT基板52に、ライン状のレーザ光59aを照射してもよい。レーザスポット91dは、画素列端子で画素の発光層17を改質させる。
【0230】
レーザ光59のレーザスポット91は、改質させる画素37に照射され、レーザスポット91位置を移動させて、画素37の発光層のゲスト材料、あるいはホスト材料を改質(HOMO電位、LUMO電位、イオン化ポテンシャル等を変化)させる。もしくは、発光層17を形成するホスト材料とゲスト材料を蒸発させる。
【0231】
画素37の横幅が30μm以下と狭く、レーザ光59のレーザスポット91を画素37に照射すると隣接した画素37列にレーザ光59が照射される場合がある。この場合は、
図20に図示するように、スリットマスク92を使用して、隣接した画素列にレーザ光59が照射されないようにする。
【0232】
図20(a1)(a2)の平面図および断面図に図示するように、レーザスポット91aは、スリットマスク92のスリットから、レーザ光59が発光層17に照射される。レーザスポット91aはA方向に走査され、画素列方向の画素が順次、改質される。
【0233】
図20(b1)(b2)の平面図および断面図に図示するように、レーザスポット91bは、スリットマスク92のスリットから、レーザ光59が発光層17に照射される。レーザスポット91aはA方向に走査され、画素列方向の画素が順次、改質される。
【0234】
図20(c1)(c2)の平面図および断面図に図示するように、矩形状のレーザスポット91cは、スリットマスク92のスリットから、レーザ光59が発光層17に照射される。矩形状のレーザスポット91cは、表示画面36の1画素列に同時に照明する。レーザ光59が照射された画素例の発光層17は、1画素列の発光層17が同時に改質される。
【0235】
スリットマスク92は、レーザスポット91の移動に合わせて、移動し、表示画面36の所定の色の画素の発光層17を改質させる。もしくは、レーザスポット91は、スリットマスクの穴位置に合わせて移動し、表示画面36の所定の色の画素の発光層17を改質させる。
【0236】
スリットマスク92は、薄い金属膜あるいは樹脂膜で形成させる。そのため、画素37位置に対応させて配置するため、スリットマスク92は張力をかけて平面状に保持する必要がある。
【0237】
図21に図示するように、透明基板94に金属材料などでスリットパターン93を形成したものを使用してもよい。透明基板94は、レーザ光59などの紫外線領域の波長の光を、透過する基板を使用する。透明基板94として、石英ガラス、ソーダライムガラスなどが例示される。
【0238】
図21(a)(b)の平面図および断面図に図示するように、レーザ光59は、スリットパターン93のスリット穴から、発光層17に照射される。スリット穴を透過したレーザ光59は、矩形状であり、表示画面36の1画素列に同時に照明する。レーザ光59が照射された画素例の発光層17は、1画素列の発光層17が同時に改質される。
【0239】
スリットマスク92をEL表示パネルの全体にわたり、スリットマスク92のスリット(溝)を画素列位置に位置合わせすることは困難を伴う場合がある。特に、EL表示パネルが大画面でかつ、高精細画素の場合である。
以上の事項は、
図41、
図42に図示する画素配置においても、適用できることは言うまでもない。
【0240】
図4の本発明の製造装置の構成は、TFT基板52の画素が反射型(反射膜12を有する)の場合に適する。レーザ光59bの照射により発生する蛍光・燐光71が反射膜12で反射され、反射された蛍光・燐光71を光検出回路76で容易に検出できるからである。
【0241】
図6、
図7に図示するように、光検出回路76c、波長フィルタ75などをTFT基板52の裏面に配置してもよい。蛍光・燐光71aをTFT基板52の裏面に配置した光検出回路76cなどで検出する。
【0242】
光検出回路76c、波長フィルタ75などをTFT基板52の裏面に配置する構成は、TFT基板52の画素37が透過型の場合に適する。あるいは画素37に光透過性を有する場合に適する。あるいは画素37に光透過性を有するように画素を構成した場合に適用する。
レーザ光59bの照射により発生する蛍光・燐光71が反射膜12あるいは画素部などを透過し、透過した蛍光・燐光71を光検出回路76cで検出する。
【0243】
図6の実施例は、TFT基板52の裏面から放射される蛍光・燐光71を検出し、検出した蛍光・燐光71強度から、発光層17等の改質状態をモニターし、あるいは、発光層17へのレーザ光59bの強度などを変化させる。
【0244】
TFT基板52の画素が反射型(反射膜12を有する)の場合であっても、
図8、
図9、
図10などで説明するTFT基板52の構成を採用することにより、TFT基板52の裏面から、レーザ光59bの照射により発生する蛍光・燐光71を検出し、検出した蛍光・燐光71を光検出回路76に入射させることができるからである。
【0245】
図8は本発明のTFT基板の説明図である。赤(R)色の反射膜12R、緑(G)色の反射膜12G、青(B)色の反射膜12Bには開口部(光透過部)81が形成されている。開口部81のサイズは、反射膜12の面積の1/200~1/20に設定される。つまり、反射膜12の面積に対して開口部81は0.5%~5%に設定されている。
【0246】
開口部81は、反射膜12に形成された光透過部であり、一例として反射膜12が除去されている。開口部81を介して、蛍光・燐光71がTFT基板52の裏面に出射される。なお、83は赤(R)色の反射膜12R、緑(G)色の反射膜12G、青(B)色の反射膜12の組からなる1ドットである。
【0247】
なお、赤(R)色、緑(G)色、青(B)色の画素の開口部81を異ならせることが好ましい。開口部81位置で赤(R)色、緑(G)色、青(B)色の画素が判断できるからである。以上の事項は、光透過部82に対しても同様である。
反射膜12の膜厚は、50(nm)から300(nm)である。
図8において開口部の形状は円形に限定されない。たとえば、矩形、多角形であってもよい。
【0248】
反射膜12の上層には発光層17が形成される。発光層17にレーザ光59bが照射されると、発光層17のゲスト材料は前記レーザ光59bを吸収し、改質される。改質の状態に応じて蛍光・燐光71が発生する。
【0249】
蛍光・燐光71は、開口部81からTFT基板52の裏面から出射される。
図4と同様に、
図11に図示するように光検出装置77、光制御装置78を配置する。蛍光・燐光71の強度が所定値以下となると、レーザ光59bは次の画素の発光層17に照射される。あるいはレーザ光59bの照射を停止する。
【0250】
図11はTFT基板52の表面から発生する蛍光・燐光71を検出して、発光層17等の改質方法を説明する説明図である。
図11に図示するように、改質を実施する装置は、光検出装置77と光制御装置78を有する。
【0251】
図11において、レーザ装置58はレーザ光59bを発生する。レーザ光59bは発光層17に入射する。レーザ光59bにより発光層17から蛍光・燐光71が発生する。
レーザ光59b、蛍光・燐光71は反射膜12(光遮蔽層)の開口部81を介して、TFT基板52の裏面から出射される。
【0252】
光分離ミラー72aは、レーザ光59bと蛍光・燐光71とを分離する。一例として、レーザ光59bの355(nm)を透過させ、蛍光・燐光71の青色から緑色の波長の光を反射する。
【0253】
光分離ミラー72aを透過してレーザ光59bは、ミラー73bで反射し、レンズ74cで集光されて光検出回路76bに入射する。光検出回路76は、レーザ光59bを光-電気変換する。光-電気変換されたレーザ光59bは、増幅され、アナログ信号電圧V2となる。アナログ信号電圧V2はA/D変換回路80bでデジタル信号に変換され、レーザ制御回路79に入力される。
【0254】
レーザ制御回路79は、レーザ光59の強弱を検出し、所定の強度値あるいは強度範囲内となるように、レーザ装置58にフィードバック制御する。フィードバック制御により、レーザ光59の強度は所定値範囲内に設定あるいは調整される。
光分離ミラー72aはレーザ光59aを透過し、発光層17で励起された燐光・蛍光波長の光71を反射する。
【0255】
たとえば、レーザ光59aの波長が355(nm)とし、燐光・蛍光波長の光71が青色から緑色の波長400(nm)~600(nm)の場合、光分離ミラー72aは、レーザ光59aの波長が355(nm)を透過させ、燐光・蛍光波長の光71が青色から緑色の波長400(nm)~600(nm)を反射させる。
【0256】
燐光・蛍光波長の光71は、レンズ74aで集光され、ミラー73aで方向を曲げられ、リレーレンズ74bで集光される。波長フィルタ75は、集光された光71のうち、一定の波長範囲内の光を透過させる。波長フィルタ75は、レーザ光59aで励起され、発生した所定帯域範囲内の波長の光強度を検出するために使用される。
【0257】
波長フィルタ75を透過した燐光・蛍光波長の光71は、光検出回路76aに入射する。光検出回路76aは、蛍光・燐光71を光-電気変換する。光-電気変換された光71は、増幅され、アナログ信号電圧V1となる。アナログ信号電圧V1はA/D変換回路80aでデジタル信号に変換され、レーザ制御回路79に入力される。
【0258】
レーザ制御回路79は、燐光・蛍光71の強弱を検出し、所定の強度値あるいは強度範囲内かを検出し、所定の強度値あるいは強度範囲内である場合に、レーザ装置58が照射するレーザ光59aの照射位置を変化あるいは移動させる。また、レーザ光59aの強度を変化させる。また、発光層17の改質状態をモニター制御する。
【0259】
蛍光・燐光71の強度・波長を、光検出装置77でモニターすることにより、改質対象の画素の発光層17の改質状態を精度よく検出あるいは測定でき、最短の期間で、最適な消光状態にすることができる。
【0260】
図8のパネルの実施例は、開口部81の反射膜12が除去された構成であった。本発明はこれに限定するものではない。たとえば、
図9に図示するように、反射膜12の一部あるいは全部が、光透過性を有するよう構成してもよい。
【0261】
図9において、赤(R)色の反射膜12R、緑(G)色の反射膜12G、青(B)色の反射膜12Bには反射膜12が薄い領域である光透過部82が形成されている。光透過部82の形成面積は、光透過部82の光透過率に依存する。
【0262】
反射膜12が形成されていない場合であって、反射膜12の形成領域での透過率を100%としたとき、0.5%~5%の光透過率となるように、光透過部82が形成されている。光透過部82の膜厚は10(nm)以上50(nm)に形成される。
【0263】
以上のように構成することにより、TFT基板52の裏面から、レーザ光59bの照射により発生する蛍光・燐光71を検出し、検出した蛍光・燐光71を光検出回路76に入射させることができる。TFT基板52の裏面に向けて発生した蛍光・燐光71の反射膜12の面積に対して開口部81は0.5%~5%がTFT基板52の裏面に出射される。
【0264】
図8、
図9は反射膜12の中央部等の一部に開口部81、光透過部82が形成された構成であった。本発明はこれに限定するものではない。また、反射膜12に開口部81などを形成する。しかし、本発明の技術的思想は、レーザ光59などの照射により発光層17から発生した蛍光・燐光71を検出あるいは測定子、発光層17の改質状態を制御するものである。
【0265】
したがって、蛍光・燐光71の発生方向(TFT基板の表面あるいは裏面)に限定されるものでなく、また、蛍光・燐光71の検出方法、測定方法あるいは制御方法に限定されるものではない。また、反射膜12など画素構造に限定されるものではなく、たとえば、画素電極に開口部81などを形成してもよいし、明示的に画素領域に光透過部などを形成せずともよい。
図10は、画素の周辺部など表示に寄与しない領域などに光透過部82、開口部81を形成した構成である。
【0266】
図10(a)は、反射膜12の4辺または画像表示に寄与しない箇所に開口部81を形成した構成である。開口部81を介してTFT基板52の裏面に蛍光・燐光71が放射される。
図10(b)は、反射膜12の端部の画像表示に寄与しない箇所に光透過部82を形成した構成である。光透過部82を介してTFT基板52の裏面に蛍光・燐光71が放射される。
【0267】
図8および
図10(a)では開口部81、
図9および
図10(b)では光透過部82を赤色画素37R、緑色画素37G、青色画素37Bのそれぞれに形成すると図示したが、これに限定されるものではない。レーザ光59の照射により発生する蛍光・燐光71を検出する必要がない画素には形成する必要はない。たとえば、
図1のパネル構造では、赤色画素37R(発光層17R、17G、17B)は改質しないため、開口部81または光透過部82を形成または配置する必要はない。
【0268】
また、
図8および
図10(a)では開口部81、
図9および
図10(b)に光透過部82を形成するとしたが、
図8または
図9または
図10のそれぞれの構成に、開口部81と光透過部82の両方を形成しても良いことは言うまでもない。
【0269】
図7は、TFT基板52の裏面から出射された蛍光・燐光71を検出する方法の説明図である。
図7では、作図を容易にするため、また、理解を容易にするため説明に不要な箇所は省略している。たとえば、
図7で図示したガルバノミラー62、fθレンズ64、移動ステージ51などを省略している。
【0270】
また、
図6などで図示する蒸着室56などを省略している。また、
図4などで説明した機構などを省略している。以上の省略した構成あるいは省略した説明は本明細書のいずれの実施例においても適用すること、付加することができる。また、組み合わせることができることは言うまでもない。以上の事項は、本発明の他の実施例のおいても同様である。
図7において、レーザ装置58が出射するレーザ光59bは、TFT基板52に蒸着された発光層17に照射される。
【0271】
図7等に示すように、レーザ光59の走査方向は、ガルバノミラー62を制御することにより、高速かつ精度よく制御できる。また、レーザ装置58は、蒸着室56外に配置しているため、メンテナンスが容易である。レーザ光59は蒸着室56外で発生させ、発生したレーザ光59は、レーザ窓63を介して、蒸着室56内の真空中に導光させる。
【0272】
本発明は、少なくとも、一つの色の発光層17を形成する工程では、従来の製造方法のように、ファイン蒸着マスク251は使用しない。そのため、ファイン蒸着マスク251の位置ずれによる発光色の混色問題は発生しない。
【0273】
したがって、混色による歩留まり低下を防止できる。ファイン蒸着マスク251の位置決め装置が不要であるから蒸着製造装置のコストを低減できる。ファイン蒸着マスク251を使用しないため、ファイン蒸着マスク251の位置決めが不要であるから、製造タクトを短縮することができる。
【0274】
レーザ光59bを発光層17に照射することにより発生した蛍光・燐光71は、TFT基板52の裏面から放射され、波長フィルタ75により所定の波長の光が通過して、光検出回路76cに入射する。
【0275】
TFT基板52を透過する光は、蛍光・燐光71だけでなく、レーザ光59bも透過する。波長フィルタ75は、蛍光・燐光71を透過させ、レーザ光59bを遮光する。波長フィルタ75を透過した蛍光・燐光71は、光検出回路76cのホトダイオード(PD)で、蛍光・燐光71を光-電気変換する。
【0276】
光検出回路76cに入射する蛍光・燐光71の強度は、TFT基板52の発光層17の改質状態で変化する。レーザ光59cを照射された発光層17から発生する蛍光・燐光71は初期では大きく、レーザ光59cで発光層17改質されると発生する蛍光・燐光71の強度が低下していく。
【0277】
蛍光・燐光71の強度が所定値以下となった場合に、レーザ光59bの照射を停止するように構成することにより、発光層17の改質状態を一定にすることができる。また、照射するレーザ光59bの強度を変化あるいは変更する。もしくは、レーザ光59bのパルスの照射期間あるいはパルス幅を変化あるいは変更する。
蛍光・燐光71の強度が所定値以下となると、レーザ光59bは次の画素の発光層17に照射される。あるいはレーザ光59bの照射を停止する。
【0278】
レーザ制御回路79は、レーザ光59の強弱を検出し、所定の強度値あるいは強度範囲内となるように、レーザ装置58にフィードバック制御する。フィードバック制御により、レーザ光59の強度は所定値範囲内に設定あるいは調整される。
【0279】
レーザ制御回路79は、燐光・蛍光(蛍光または燐光)波長の光71の強弱を検出し、所定の強度値あるいは強度範囲内かを検出し、所定の強度値あるいは強度範囲内である場合、レーザ装置58が照射するレーザ光59aの照射位置を変化あるいは移動させる。また、レーザ光59aの強度を変化させる。また、発光層17の改質状態をモニター制御する。
【0280】
光検出装置77は、蛍光・燐光71の強度だけでなく、波長も判別できるように構成しておくことが好ましい。たとえば、赤色の発光波長が、緑色の発光波長に変化した割合、あるいは変化量を検出する。緑色の発光波長に変化すれば、結果的に、赤色の発光波長は所定の「消光」状態となり、非発光状態になったと判断できる。
【0281】
図12(a)に図示するように、発光層17に照射するレーザ光59aとは別に、発光層17を励起させるレーザ光59bを別途発生させ、前記レーザ光59bを発光層17に照射させてもよい。
【0282】
図12(a)のように、蛍光・燐光発光用のレーザ光59bの発生装置を別途設置する構成が例示される。波長フィルタ75も透過帯域も蛍光・燐光71の波長にあわせて選択する。
【0283】
発生する蛍光・燐光71の強度が所定値以下となれば、発光層17が消光状態となる。消光状態になると、発光層17の改質が完了したと判断し、レーザ光の照射位置を、次の画素に移動させる。また、改質に要する時間を計測し、レーザ光の強度を制御する。
【0284】
図12(a)において、レーザ装置58bが発生するレーザ光59bの波長を、レーザ装置58aが発生するレーザ光59aの波長と異ならせても良い。レーザ装置58aが発生するレーザ光59aは発光層17を改質するに最適な波長を選択する。レーザ装置58bが発生するレーザ光59bは発光層17の改質状態を検出するのに最適な波長を選択する。たとえば、レーザ装置58aが発生するレーザ光59aは、355(nm)のUV光レーザを選択する。レーザ装置58bが発生するレーザ光59bは、441.6(nm)のヘリウムカドミウムガスレーザー、および、458、488(nm)のアルゴンイオンレーザー355(nm)を選択する。波長フィルタ75も透過帯域も蛍光・燐光71の波長にあわせて選択する。
【0285】
以上のように、発光層17などを改質させるレーザ光59aと、改質状態を検出あるいは測定するレーザ光59bとを異ならせることは、本発明の他の実施例でも適用できることは言うまでもない。異ならせるとは光の波長、強度、パルス周期、パルス幅のいずれか1つ以上を異ならせることを言う。
【0286】
なお、本発明において発光層17あるいは正孔輸送層16などのEL素子22を構成する層に、レーザ光59を照射して改質させるとして説明するが、改質に作用するレーザ光59はレーザ光に限定されるものではなく、たとえば、LED素子が発生する光、水銀灯が発生する光などを使用してもよいことは言うまでもない。
【0287】
蛍光・燐光71の強度・波長を、光検出装置77でモニターすることにより、改質対象の画素の発光層17の改質状態を精度よく検出あるいは測定でき、最短の期間で、最適な消光状態にすることができる。
【0288】
また、
図12(b)に図示するように、ガルバノミラー62の角度θに適応させて、複数の光検出装置77を配置する構成も例示される。TFT基板52から出射される蛍光・燐光71aと蛍光・燐光71bの波長帯域は異なる。蛍光・燐光71の光学的距離によりTFT基板52から出射する波長(帯域)が異なるからである。TFT基板52を垂直に透過する場合と斜めの透過する場合では光学的距離が異なるからである。蛍光・燐光71bよりも蛍光・燐光71aの方が波長は長くなる。
【0289】
したがって、波長フィルタ75aと波長フィルタ75bの波長帯域を異ならせる。また、蛍光・燐光71の検出強度あるいは判定強度を異ならせる。検出する波長の感度を異ならせる。波長フィルタ75も透過帯域も蛍光・燐光71の波長にあわせて選択する。
【0290】
以上の事項は、
図4のように、TFT基板52を反射して出射する蛍光・燐光71を検出場合でも同様に適用される。たとえば、
図4(c)において光検出装置77a位置と光検出装置77b位置でモニターあるいは検出する蛍光・燐光71の波長帯域、検出強度、判定強度を異ならせる。
【0291】
また、
図6、
図7などで、ガルバノミラー62でレーザ光59の角度を変化させて発光層17に照射する場合、発生する蛍光・燐光71の波長も変化する。したがって、発光層17に照射するレーザ光59の角度によって、光検出装置77が検出する蛍光・燐光71の波長帯域、検出強度、判定強度を異ならせる。
以上の事項は本発明の他の実施例に適用できることは言うまでもない。また、他の実施例と組み合わせできることも言うまでもない。
【0292】
図12(b)の実施例では、光検出装置77は2個として図示したが、これに限定するものではない。たとえば、光検出装置77は2個以上でもよい。また、線状あるいは面状に多数個の光検出素子を配置して光検出装置77を構成してもよい。
【0293】
多数個の光検出素子のいずれかに蛍光・燐光71が照射され、照射された光検出素子が電気出力をして発光層17の改質状態を判断する。光検出装置77として、光検出素子が線状あるいは面状に配置されているため、光検出装置77を移動させる必要がない。
【0294】
図6は、ガルバノミラー62を走査して、レーザ光59bを照射する位置を変化あるいは変更する構成である。本発明はこれに限定するものではない。たとえば、
図5に図示するように、ミラー73をA、B方向に移動させ、レーザ光59bを照射する位置を変化あるいは変更する構成である。
【0295】
レーザ装置58はレーザ光59を発生させ、発生したレーザ光59は光量調整フィルタ60で調整され、ミラー73で反射されてレーザ光59bとなり、画素37のEL素子22の構成層に照射される。
【0296】
レーザ光59bの照射位置は、ミラー73を移動させることにより移動される。ミラー73に移動はリニアモータにより実施される。また、A、Bの方向(紙面の左右方向)以外の方向(紙面の前後方向)はガルバノミラーまたはリニアモータで移動させてもよい。
【0297】
レーザ光59bが照射された発光層17等は蛍光・燐光71を発生させ、発生した蛍光・燐光71はミラー73で反射して波長フィルタ75で波長選択されて光検出装置77に入射する。なお、レーザ光59などの調整方法などに関しては
図4、
図11で説明しているので説明を省略する。
【0298】
なお、
図6のミラー73は、ガルバノミラー62に置き換えてもよいことは言うまでもない。また、ガルバノミラー62とミラー73とを組み合わせて構成しても良いことは言うまでもない。以上の事項は
図13、
図14の実施例においても同様である。
【0299】
図6は、レーザ装置58がレーザ光59を発生させ、画素37のEL素子22の構成層に照射された発光層17等からの蛍光・燐光71を、再びミラー73で反射させて光検出装置77に入射させる構成であった。しかし、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、
図13の構成が例示される。
【0300】
図13、
図14のTFT基板52は、
図8、
図9、
図10の構成が例示される。または、画素が透明電極で形成された下面取り出しのTFT基板が例示される。なお、画素が下取り出しの透過型であっても良いことは言うまでもない。
【0301】
図13は、ガルバノミラー62aの傾き角度を変化させ、レーザ光59の照射位置を変化あるいは変更する構成である。また、画素37で発生した蛍光・燐光71は画素37を透過し、透過した蛍光・燐光71をミラー73bの位置と角度を移動または変化させて、蛍光・燐光71を光検出装置77に入射させる構成である。
【0302】
図13に図示するように、ガルバノミラー62aの角度を変化させ、レーザ光59bを照射する位置を変化あるいは変更する構成である。レーザ装置58はレーザ光59を発生させ、発生したレーザ光59は光量調整フィルタ60で光の強弱が調整され、ガルバノミラー62aで反射されてレーザ光59bとなり、画素37のEL素子22の構成層に照射される。
【0303】
レーザ光59bが照射された発光層17等は蛍光・燐光71を発生させ、発生した蛍光・燐光71は画素37を透過し、ミラー73bで反射して波長フィルタ75で波長選択されて光検出装置77に入射する。
【0304】
ミラー73bは角度を変化させること、位置を移動させることにより移動される。ミラー73bの移動等はリニアモータにより実施される。また、A、Bの方向(紙面の左右方向)以外の方向(紙面の前後方向)はガルバノミラーまたはリニアモータで移動させてもよい。
【0305】
図14は、ミラー73aの位置を変化させ、レーザ光59の照射位置を変化あるいは変更する構成である。画素37で発生した蛍光・燐光71はミラー73bの位置を移動させて、蛍光・燐光71を光検出装置77に入射させる構成である。
【0306】
図14に図示するように、ミラー73aの位置を変化させ、レーザ光59bを照射する位置を変化あるいは変更する構成である。レーザ装置58はレーザ光59を発生させ、発生したレーザ光59は光量調整フィルタ60で光の強弱が調整され、ミラー73aで反射されてレーザ光59bとなり、画素37のEL素子22の構成層に照射される。
【0307】
レーザ光59bが照射された発光層17等は蛍光・燐光71を発生させ、発生した蛍光・燐光71は画素37を透過し、ミラー73bで反射し、波長フィルタ75で波長選択されて光検出装置77に入射する。
【0308】
ミラー73は角度を変化させること、位置を移動することができる。ミラー73の移動等はリニアモータにより実施される。また、A、Bの方向(紙面の左右方向)以外の方向(紙面の前後方向)はガルバノミラーまたはリニアモータで移動させてもよい。
【0309】
以上の実施例では、発光層17を改質には、レーザ装置58を使用するとして説明をした。しかし、本発明は、これに限定するものではない。たとえば、改質させる光として、紫外線光を発生するLED(light‐emitting diode)を使用してもよい。LEDは、発光素子が小さいため狭指向性の光を発生することができる。
図24は、LED122を用いた光発生器の説明図である。また、
図25は、
図24の光発生器を用いた発光層17の改質方法の説明図である。
【0310】
光発生器の基板123は、LED122が発生する熱を放熱するため、金属板またはセラミック板を基材として使用されている。基板の裏面には、放熱板(図示せず)を取り付ける。
【0311】
基板123には、紫外線光を発生するLED122が取り付けられている。LED122の発光部のサイズ(縦長さC、横長さB)は、画素37の改質させる領域のサイズと略一致させている。あるいは、発光部のサイズ(縦長さC、横長さB)は、画素37の改質させる領域のサイズよりも小さくしている。
【0312】
また、LED122の発光部の前にレンズ(図示せず)などを配置し、LED122が発生した紫外線光を画素37の略全体に照射できるように構成してもよい。LED122が発光すると、画素37の所定色の画素電極15の上方に形成された発光層17を改質できる。
【0313】
LED122の縦方向の実装位置Eは、画素37のピッチと一致させている。LED122の横方向の実装位置Dは、画素37の列ピッチと略一致させている。あるいは、LED122の縦方向の実装位置E、LEDの横方向の実装位置Dは、画素ピッチのN倍(Nは1以上の正数)としている。
【0314】
LEDの実装されている長さFは、EL表示パネルの第1行目から最終画素行目の長さである。したがって、長さFに実装させているLED個数は、EL表示パネルの画素行数と一致する。あるいは、長さFは、EL表示パネルの第1行目から最終画素行目の長さの1/N(Nは1以上の正数)にしている。
【0315】
図24では、図示を容易にするため、LED122の実装列は2列としたが、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、LED122の実装列を3列以上にしてもよい。また、LED122の実装列または実装行数は、表示パネルの画素列または画素行数としてもよい。この場合は、
図25に図示するように、光発生器はA方向に移動させる必要はない。EL表示パネルに光発生器を位置決めして、LED122を発光させればよい。
【0316】
図24に図示するように、LED122aとLED122bが発生する光の波長を異ならせてもよい。たとえば、LED122aが
図22で説明したレーザ光59aの主波長の光を発生させ、LED122bがレーザ光59bの主波長の光を発生させるように構成してもよい。
【0317】
図24(b)は、
図24(a)のAA’線での断面図である。LED122の周囲には、LED122が発生した紫外線光を吸収する光吸収材121が形成されている。LED122aは、紫外線光141aを発生させ、LED122bは、紫外線光141bを発生させる。光吸収材121として、アクリルあるいはエポキシ樹脂にカーボンを添加したものが例示される。
【0318】
図25(a)(b)に図示するように、光発生器はTFT基板52の画素電極15位置に一致させて配置される。また、光発生器は、画素列または画素行ピッチで移動し、移動した位置で、LED122が発光し、画素37の発光層17を改質させる。
【0319】
2画素列または2画素行を同時に改質させる場合は、LED122aとLED122bの両方が発光する。1画素列または1画素行を改質させる場合は、LED122aまたはLED122bの一方が発光する。
【0320】
以上のように、本発明は、紫外線光59を発生する光発生手段は、レーザ装置58に限定するものではない。ファイン蒸着マスク251を介さず、画素37位置に対応させて、紫外線光等の光を照射できる光発生手段であればいずれの手段であってもよい。また、光発生手段を、赤外光を発生する手段とすることにより、熱転写装置の光発生源としても適用できることは言うまでもない。ドナーフィルムには、発光層17となる転写有機膜が形成され、前記転写有機膜に赤外光のレーザなどの光を照射し、剥離させる。
【0321】
LED122が発生する光は、レーザ光のように単一波長ではなく一定の波長帯域を有している。したがって、LED122が発生する光は、主波長が310(nm)以上400(nm)以下の紫外線光を発生するものを採用する。
【0322】
波長355(nm)のUVレーザ光を発光層のゲスト(ドーパント)材料に照射した時の改質状態の分光特性である。なお、グラフの縦軸の強度は、レーザ光照射前(改質前)の最高強度を1として規格化している。
【0323】
図15は緑色燐光ドーパント材料であるIr(ppy)
3に波長355(nm)のUVレーザ光の照射前と照射後の分光特性を示すグラフである。レーザ光の照射によりIr(ppy)
3が改質し、緑波長の強度が大幅に低下している。波長フィルタ75は波長540(nm)近傍の波長を透過させるバンドパスフィルタとする。波長フィルタ75を透過する光の強度を計測、測定し、改質の変化をモニターし、レーザ光59のオンオフ、レーザ光59の強弱、レーザ光59の移動速度を制御する。
【0324】
レーザ光の照射による改質の程度は、EL素子構造検討を考慮し、また、EL素子試作をして、マイクロキャビティ効果等を考慮して決定する。また、レーザ光の単位面積あたりの強度、照射時間と改質効果を検討してレーザ装置58の制御を決定する。
【0325】
図16は赤色燐光ドーパント材料であるPG
2Ir(dpm)に波長355(nm)のUVレーザ光の照射前と照射後の分光特性を示すグラフである。レーザ光の照射によりPG
2Ir(dpm)が改質し、赤波長の強度が大幅に低下している。
【0326】
波長フィルタ75は波長620(nm)近傍の波長を透過させるバンドパスフィルタとする。波長フィルタ75を透過する光の強度を計測、測定し、改質の変化をモニターし、レーザ光59のオンオフ、レーザ光59の強弱、レーザ光59の移動速度を制御する。
【0327】
図17は赤色燐光ドーパント材料であるIr(piq)
3に波長355(nm)のUVレーザ光の照射前と照射後の分光特性を示すグラフである。レーザ光の照射によりIr(piq)
3が改質し、赤波長の強度が大幅に低下している。
【0328】
波長フィルタ75は波長620(nm)近傍の波長を透過させるバンドパスフィルタとする。波長フィルタ75を透過する光の強度を計測、測定し、改質の変化をモニターし、レーザ光59のオンオフ、レーザ光59の強弱、レーザ光59の移動速度を制御する。
【0329】
図18は赤色蛍光ドーパント材料であるDCMに波長355(nm)のUVレーザ光の照射前と照射後の分光特性を示すグラフである。レーザ光の照射によりDCMが改質し、赤波長の強度が大幅に低下している。
【0330】
波長フィルタ75は波長620(nm)近傍の波長を透過させるバンドパスフィルタとする。波長フィルタ75を透過する光の強度を計測、測定し、改質の変化をモニターし、レーザ光59のオンオフ、レーザ光59の強弱、レーザ光59の移動速度を制御する。
【0331】
第1の実施例における本発明のEL表示パネルの製造方法について説明をする。
図22は、第1の実施例における本発明のEL表示パネルの製造方法の説明図である。また、
図23は、本発明のEL表示パネルの製造装置の説明図である。
図6に図示するように、本発明の製造方法は、蒸着室56のような真空状態中にTFT基板52を配置する。EL素子22を構成する各有機膜は、蒸着により形成する。
【0332】
図23において、TFT基板52は搬入室113から成膜室116に搬入される。成膜室116内は、超真空状態に維持されている。成膜室116の中央部には中央室115があり、中央室115内には、各チャンバー室111にTFTを搬入、あるいは、各チャンバー室111から搬出する搬送ロボット(図示せず)が設置されている。搬送ロボットは、チャンバー室111から移動ステージ51等を搬出し、方向を変更して、次の工程のチャンバー室111に搬入する。チャンバー室111は蒸着室56である。
【0333】
発光層17などを改質させるレーザ装置58は、レーザ装置室118内に設置されており、TFT基板52はロードロック室(LL:load lock chamber)を経由してレーザ装置室118に搬入される。TFT基板52は、カソード電極19を形成後、あるいは、封止膜20、封止フィルム27による封止後、搬出室114から搬出される。
【0334】
搬入室113からTFT基板52は搬入され、正孔輸送層16を蒸着するチャンバー(HTL)111cに搬入される。チャンバー室111cで、
図22(a)に図示するように、TFT基板52の画素電極15の上方に正孔輸送層16が形成される。
【0335】
次に、TFT基板52は、発光層(EML)Rを蒸着するチャンバー室(EML(R))111dに搬入される。
図22(b)に図示するように、発光層17Rを、蒸着工法により、正孔輸送層16上に積層させる。発光層17Rはホスト材料と赤色のゲスト材料を共蒸着させて形成する。
【0336】
発光層17Rの形成工程では、従来の製造方法のように、画素37Rに対応した位置に開口が設けられたファイン蒸着マスク251Rは使用しない。発光層17Rは、表示画面36全体に、蒸着工法を使用して、連続膜として形成される。つまり、画素電極15R、画素電極15G、画素電極15Bに共通に、かつ連続して発光層17Rが形成される。発光層17Rの形成には、発光層17Rが表示画面36内に蒸着されるように、表示画面36に開口部を有するラフ蒸着マスク(図示せず)を使用する。
【0337】
図22の本発明の実施例において、EL表示パネルに、土手95を図示しているが、土手95は必ずしも必要な構成物ではない。土手95は、ソース信号線35上、ゲート信号線34上、画素電極15の周辺部に形成され、電界の遮蔽効果を発揮する。土手は可視光を吸収する色素、染料を添加した材料で形成する。
TFT基板52は、中央室115で搬送ロボットにより方向転換され、ロードロック室112を経由して、レーザ装置室118に搬入される。
【0338】
レーザ装置室118では、
図22(b)に図示するように、TFT基板52の発光層17にレーザ光59aの照射を行う。レーザ光59aは、画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rに照射する。レーザ光59aは、画素電極15Rの上方の発光層17Rには照射されない。レーザ光59aの照射部で、発光層17Rは改質され、改質層96aとなる。
【0339】
画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rのゲスト材料は、レーザ光59aを吸収し、共有結合鎖が切断される。酸素の無い蒸着室56で共有結合鎖が切断されると、共有結合鎖のラジカルは二重結合を生成したり、他の共有結合鎖の原子を引き抜き結合したり、他の共有結合鎖と架橋構造を生成したりと構造に変化が生じる。
画素電極15Rに対応した発光層17Rのゲスト材料は、レーザ光59aが照射されていない。したがって、発光するゲスト材料としての性能を維持する。
【0340】
本発明の実施例では、EL素子22を形成する各有機膜は、蒸着工法で形成するとして説明するが、これに限定するものではない。インクジェット方式あるいは印刷方式により、電子輸送層18、正孔輸送層16、発光層17などを形成してもよいことは言うまでもない。たとえば、インクジェット方式で発光層17Rを形成し、発光層17Rにレーザ光59を照射して改質させてもよい。たとえば、発光層17はホスト材料とゲスト材料とが溶剤に溶解されて、インクジェット方式で画素電極15の上方に発光層17として形成される。
【0341】
また、EL素子22を形成する各有機膜は、レーザ転写技術で形成してもよい。レーザ転写装置は、ドナーフィルムに照射する赤外線レーザ光を発生させるレーザ装置を具備する。ベースフィルムに有機EL素子を構成する発光材料が形成され、赤外線レーザ光の照射によりベースフィルムから発光材料が剥離し、画素37に発光層17が形成される。
【0342】
また、本発明は、理解を容易にするため、主としてゲスト材料が光を吸収し、発光層17が改質するとしたが、これに限定するものではない。たとえば、発光層17が、Alq3のような単一の有機膜で形成されている場合、この単一の有機膜に光を照射し、単一の有機膜を改質させる方式も本発明の技術的範疇である。
【0343】
レーザ光59は、波長λが300(nm)以上420(nm)以下の紫外光である。さらに好ましくは、レーザ光59は、波長λが310(nm)以上400(nm)以下の紫外光である。
【0344】
次に、TFT基板52は、ロードロック室112を経由して中央室115に搬入され、チャンバー室(EML(G))111bに搬入される。チャンバー室111bでは、
図22(c)に図示するように、発光層17Rの上方に、発光層17Gを蒸着工法により積層させる。
【0345】
発光層17Gの真空蒸着工程は、ファイン蒸着マスク251は使用しない。発光層17Gはラフ蒸着マスク(図示せず)を用いて、表示パネルの表示画面36に蒸着する。したがって、画素電極15R、画素電極15G、画素電極15Bの上方に、共通に発光層17Gが形成される。
TFT基板52は、中央室115で搬送ロボットにより、方向転換され、ロードロック室112を経由して、レーザ装置室118に搬入される。
【0346】
レーザ装置室118では、
図22(d)に図示するように、TFT基板52の発光層17Gにレーザ光59bの照射を行う。レーザ光59bは、画素電極15Bの上方の発光層17Gに照射する。レーザ光59bは、画素電極15Rおよび画素電極15Gの上方の発光層17Gには照射されない。レーザ光59bの照射部で、発光層17Gは改質され、改質層96bとなる。
【0347】
発光層17Gのゲスト材料は、発光層17Rのゲスト材料に比較して励起エネルギーが大きい場合が多い。励起エネルギーが大きいゲスト材料は、吸収する波長が短波長になる場合がある。その場合は、レーザ光59bの波長は、レーザ光59aより波長が短いレーザ光を選定する。たとえば、レーザ光59bは、波長λが300(nm)以上約380(nm)以下の紫外光である。レーザ光59aは、波長λが310(nm)以上400(nm)以下の紫外光である。または、レーザ光59aとレーザ光59bの波長を同一とし、レーザ光59aとレーザ光59bとの単位面積あたりの強度を異ならせる。
【0348】
画素37B(画素電極15B)の上方の発光層17Gは、レーザ光59bを吸収し、共有結合鎖が切断される。共有結合鎖が切断されると、共有結合鎖のラジカルは二重結合を生成したり、他の共有結合鎖の原子を引き抜き結合したり、他の共有結合鎖と架橋構造を生成したりと構造が変化する。画素37B(画素電極15B)の上方の発光層17Gは改質層96bとなる。したがって、前記発光層17Gのゲスト材料は改質されて励起できない。発光層17Gはホスト材料として機能する。
【0349】
画素電極15Gの上方の発光層17Rは改質層96aとし、画素電極15Bの上方の発光層17Gは改質層96bと記載している。改質層96aと改質層96bはゲスト材料などが異なり、物理的あるいは物性的性質が異なることが多い。しかし、改質層96aと改質層96bは物性的性質が同一である、あるいは類似することも多い。したがって、改質層96aと改質層96bは、同一だとして改質層96としてもよい。
【0350】
図23に図示するように、TFT基板52は、中央室115を経由して、チャンバー室(EML(B) ETL)111eに搬入される。
図22(e)に図示するように、発光層17Bを、発光層17Gの上方に積層させる。発光層17B材料の蒸着は、ホスト材料と青色発光のゲスト材料を真空中で、真空蒸着により発光層17G上に共蒸着させて積層させる。
【0351】
発光層17Bの真空蒸着工程は、ファイン蒸着マスク251は使用しない。発光層17Bはラフ蒸着マスク(図示せず)を用いて、表示パネルの表示画面36の全体に蒸着する。したがって、画素電極15R、画素電極15G、画素電極15Bの上方に、共通に発光層17Bが形成される。
【0352】
次に、
図22(f)に図示するように、発光層17Bの上方に電子輸送層18を形成し、続いて、電子注入層としてのLiFあるいはLiqなどを形成し、カソード電極19の電子輸送層18上に積層する。カソード電極19には、アルミニウム、銀、銀・マグネシウム(MgAg)合金、カルシウムなどを用いる。
【0353】
カソード電極19は、例えば真空蒸着により発光層17Bの上方に積層させる。この真空蒸着では、EL表示パネルの表示領域のみにカソード電極材料が蒸着されるように、ラフ蒸着マスクを使用する。これにより、カソード電極19は、表示領域全体に連続膜として形成される。
【0354】
次に、
図22(f)に図示するように、カソード電極(陰極)19を形成したのち、下地に対して影響を及ぼすことのない程度に、成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法、例えば蒸着法やCVD法により、封止層20を形成する。
【0355】
例えば、アモルファス窒化シリコンからなる封止層20を形成する場合には、CVD法によって2~3μmの膜厚に形成する。この際、有機層の劣化による輝度の低下を防止するため、成膜温度を常温に近い、摂氏15℃以上25℃の範囲に設定する。
【0356】
また、SiONなどをCVDで形成した後、アクリル系、エポキシ系の有機材料などを形成して、封止層20としてもよい。封止層20上には、封止フィルム27を貼り付け、防湿対策をすることが好ましい。次に、EL表示素子がTFT基板52と封止基板とシール層とによって取り囲まれるように、TFT基板52と封止基板とをシール層を介して貼り合わせる。
【0357】
または、TFT基板52は薄膜封止技術で封止する。薄膜封止技術は、TFT基板52上に極めて薄い無機膜と有機膜を多層に積層して形成する。無機膜(通常厚さ1μm未満)と有機膜(通常厚さ6μm以上)が交互に重なったマルチレイヤー構造を持つ。無機膜は主に酸素や水分の侵入を防いでEL素子22を保護する。
【0358】
TFT基板25は搬出室114を経由して、成膜室116から搬出される。なお、EL表示パネルの光出射側には、表示コントラストを良好なものとするため、円偏光板(円偏光フィルム)29を貼り付け、あるいは配置する。
【0359】
図22の実施例では、レーザ光59aを発生するレーザ装置、レーザ光59bを発生するレーザ装置58を使用するとして説明したが、本発明はこれに限定するものではない。可変波長の光を発生させる1台のレーザ装置58で、レーザ光59aとレーザ光59bを発生させてもよい。また、レーザ光59aまたはレーザ光59bのいずれかのレーザ光を発生するレーザ装置58を複数台、使用してもよいことは言うまでもない。レーザ光59aとレーザ光59bとは波長を異ならせても良い。
【0360】
以上の実施例では、発光層17を形成後、レーザ光59を照射して発光層17を改質するとして説明したが、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、蒸着により発光層17を形成しつつ、レーザ光59を照射して、前記発光層17を改質または除去してもよい。
【0361】
本発明のEL表示パネルは、複数色の画素37がマトリックス状に配置されている。EL表示パネルは、少なくも一色の画素に、第1の色の発光層17aが成膜され、その上に第2の色の発光層17bが成膜されている。第1の色の発光層17aの発光波長は、第2の色の発光層17bの発光波長よりも長い。前記第1の色の発光層17aのゲスト材料は、前記第2の色の発光層17bが励起されるエネルギーを吸収して発光する。
【0362】
また、本発明のEL表示パネルは、少なくも一色の画素に、第1の色の発光層17aが成膜され、その上に第2の色の発光層17bが成膜されている。前記第1の色の発光層17aに、レーザ光59などの狭指向性の光を照射し、前記第1の色の発光層17aを改質させて非発光層にする。前記第2の色の発光層17bが発光する。
【0363】
本発明は、複数色の画素37がマトリックス状に配置されたEL表示パネルに限定されるものではない。本発明の表示パネルは、表示部あるいは表示画面36に複数個所の発光する部分が形成されており、前記発光する部分に複数の発光層17が積層されている。前記複数の発光層17のうち、長波長の発光層17に、ファイン蒸着マスク251などを使用せず、レーザ光59などの狭指向性の光が照射され、前記長波長の発光層17が改質されていることを特徴とするものである。
【0364】
本発明の製造方法では、発光層17R、発光層17G、発光層17Bを形成するために、少なくともいずれかの発光層17の形成時に、ファイン蒸着マスク251を使用しない。本発明では、発光する発光層17R、発光層17G、発光層17Bを形成するために、少なくともいずれかの発光層17にレーザ光59などの紫外線波長の光を照射する。
【0365】
レーザ光59の照射位置の制御は、ガルバノミラー62あるいは、移動ステージ(リニアステージなど)により高精度に位置決めを行うことができる。また、位置決めは、TFT基板52の画素37位置に対応させて容易に設定することができる。したがって、画素37形状、画素37配置、画素37数が異なるEL表示パネルを、容易に品種変更して製造することができる。また、製造装置の設備コストも非常に安価である。
【0366】
従来のファイン蒸着マスク251を使用する製造方式では、画素37が高精細の場合は、ファイン蒸着マスク251の蒸着穴(マスク開口部)が小さくなるためファイン蒸着マスク251の蒸着穴の加工が困難である。
【0367】
また、ファイン蒸着マスク251を、EL表示パネルの画素37位置に合わせて位置決めすることが困難であるという課題があった。また、テレビ用の大型EL表示パネルの製造に使用するファイン蒸着マスク251は、大面積となり、重量が重い。したがって、ファイン蒸着マスク251を位置決めする搬送ロボットも大型になるという課題があった。
【0368】
本発明の製造方式では、レーザ光59を画素37に照射することにより、発光層17の発光色を決定する。紫外線波長のレーザ光59のスポットサイズは、直径10μ以下が実現可能である。また、レーザ光59は、ガルバノミラー62の制御により、高速に位置決めできる。また、EL表示パネルサイズが広面積であっても、レーザ光59は、ガルバノミラー62の制御により、EL表示パネルの周辺部から中央部のいずれの位置にでも、高速に位置決めできる。また、ファイン蒸着マスク251の位置決めが不要であり、レーザ光59の制御だけであるので、製造設備は安価であり、製造タクトも短くすることができる。
【0369】
以上の事項から、本発明の製造方式では、画素37が高精細であっても、EL表示パネルサイズが広面積であっても、EL表示パネルを低コストで製造することができる。また、優れた表示品位と高い製造歩留まりとを実現できる。
【0370】
以下、図面を参照しながら、本発明の第2の実施例について説明をする。
図26、
図27は本発明の第2の実施例におけるEL表示パネルの断面構成図および製造方法の説明図である。
【0371】
図26において、赤色の画素電極15Rの上方には、発光層(EML(R))17Rおよび発光層(EML(GB))17GBが形成されている。緑色の画素電極15Gおよび青色の画素電極15Bの上方には、発光層(EML(R))17Rおよび発光層(EML(GB))17GBが形成されている。
【0372】
発光層(EML(GB))17GBは、青色のゲスト材料と緑色のゲスト材料を含有している。青色のゲスト材料と緑色のゲスト材料とは、吸収する光の波長が異なる。
【0373】
緑色の画素電極15G上方には、発光層(EML(R))17Rは、レーザ光59aが照射されて改質されている。また、発光層(EML(GB))17GBにレーザ光59bが照射されて、発光層(EML(GB))17GBの青色のゲスト材料が改質されている。
【0374】
青色の画素電極15B上方には、発光層(EML(R))17Rは、レーザ光59aが照射されて改質されている。また、発光層(EML(GB))17GBにレーザ光59cが照射されて、発光層(EML(GB))17GBの緑色のゲスト材料が改質されている。
【0375】
以下、図面を参照しながら、本発明の第2の実施例の製造方法について説明をする。
図23の搬入室113からTFT基板52は搬入され、チャンバー(HTL)111cに搬入される。
図27(a)に図示するように、TFT基板52の画素電極15の上方に正孔輸送層16が形成される。
【0376】
次に、TFT基板52は、発光層(EML)Rを蒸着するチャンバー室(EML(R))111dに搬入される。
図27(b)に図示するように、発光層17Rを、蒸着工法により、正孔輸送層16上に積層させる。発光層17Rはホスト材料と赤色のゲスト材料を共蒸着させて形成する。発光層17Rは、表示画面36全体に、連続膜として形成される。
【0377】
次に、TFT基板52は、レーザ装置室118に搬入される。レーザ装置室118では、
図27(b)に図示するように、TFT基板52の発光層17Rにレーザ光59aの照射を行う。レーザ光59aは、画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rに照射する。レーザ光59aは、画素電極15Rの上方の発光層17Rには照射しない。レーザ光59aの照射部で、発光層17Rは改質され、改質層96aとなる。画素電極15Rの上方の発光層17Rは、レーザ光59aが照射されていないため、発光するゲスト材料としての性能を維持する。
【0378】
次に、TFT基板52は、ロードロック室112を経由して中央室115に搬入され、チャンバー室(EML(G))111bに搬入される。チャンバー室111bでは、
図27(c)に図示するように、発光層17Rの上方に、発光層(EML(GB))17GBを積層させる。
【0379】
発光層(EML(GB))17GBは、青色のゲスト材料と緑色のゲスト材料とを含有している。青色のゲスト材料と緑色のゲスト材料とは、吸収するレーザ光59の波長が異なる。発光層(EML(GB))17GBに照射するレーザ光59の波長を変更することにより、青色のゲスト材料と緑色のゲスト材料を選択して改質することができる。
【0380】
図3(c)に図示するように、ホスト材料は、レーザ光59a、レーザ光59b、レーザ光59cを吸収しにくい材料を選定する。あるいは、レーザ光59を透過する材料を選択する。
【0381】
当該材料がレーザ光などの光を「吸収しにくい」という概念は、当該材料が前記光を吸収しないことの他、前記レーザ光などの光を反射すること、あるいは前記レーザ光などの光を透過することをも含む。また、レーザ光などの光を吸収しても、当該材料あるいはその構成物が変化しないことをも含む。
【0382】
ゲスト材料Rは、レーザ光59aを吸収しやすい材料を選定する。ゲスト材料Bは、レーザ光59bを吸収しやすく、レーザ光59cを吸収しにくい材料を選定する。ゲスト材料Gは、レーザ光59cを吸収しやすく、レーザ光59bを吸収しにくい材料を選定する。
【0383】
好ましくは、
図3(c)に図示するように、レーザ光59bの波長で、ゲスト材料Bの吸収率が100%とした時、ゲスト材料Gの吸収率が25%以下となるゲスト材料Gの材料を選定する。また、レーザ光59cの波長で、ゲスト材料Gの吸収率が100%とした時、ゲスト材料Bの吸収率が25%以下となるゲスト材料Bを選定する。また、レーザ光59bの波長で、ゲスト材料Bの吸収率が100%とした時、ホスト材料の吸収率が25%以下となるホスト材料を選定する。
吸収率が100%は透過率0%、吸収率が0%は透過率100%、吸収率75%は透過率25%、吸収率25%は透過率75%と読み替えてもよい。
【0384】
図27(d)に図示するように、緑色の画素電極15G上方には、発光層(EML(GB))17が形成されている。発光層(EML(GB))17には、青色の発光に寄与するゲスト材料Bと、緑色の発光に寄与するゲスト材料Gを含有している。
【0385】
図3(c)に図示するように、レーザ光59bの波長は、レーザ光59cの波長よりも短波長である。ゲスト材料Bは、ゲスト材料Gよりも短波長の光をよく吸収する。
【0386】
緑色の画素電極15G上方の発光層(EML(GB))17に、レーザ光59bを照射すると、発光層(EML(GB))17のゲスト材料Bは、レーザ光59bを吸収し改質される。発光層(EML(GB))17のゲスト材料Gはレーザ光59bを吸収しない。発光層(EML(GB))17は、ゲスト材料Gが発光可能な状態を維持されるため、発光層(EML(GB))17は、緑発光する発光層17Gとなる。
【0387】
図27(e)に図示するように、青色の画素電極15B上方には、発光層(EML(GB))17が形成されている。発光層(EML(GB))17に、レーザ光59cを照射すると、発光層(EML(GB))17のゲスト材料Gは、レーザ光59cを吸収し改質される。ゲスト材料Bはレーザ光59bを吸収しない。発光層(EML(GB))17は、ゲスト材料Bが発光可能な状態を維持されるため、発光層(EML(GB))17は、青発光する発光層17Bとなる。
【0388】
次に、
図27(f)に図示するように、発光層17GBの上方に電子輸送層18を形成し、続いて、電子注入層としてのLiFまたはLiqを形成し、カソード電極19を電子輸送層18上に積層する。また、電子輸送層18上にカソード電極19を形成する。
【0389】
図26の画素電極15Rの上方の発光層17Rが含んでいる赤ゲスト材料Rの吸収スペクトルは、発光層17GBの緑ゲスト材料の発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。また、発光層17GBの緑ゲスト材料の発光スペクトルは、青ゲスト材料Bの発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。
【0390】
画素電極15RのR上方の発光層17Rが含んでいるゲスト材料の多くは発光可能である。画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rが含んでいる赤ゲスト材料Rはほとんど消光するか、または励起されない。
【0391】
画素電極15Gの上方の発光層17GBが含んでいる青ゲスト材料Bは、レーザ光59bの照射により、ほとんど消光するか、または励起されない。画素電極15Bの上方の発光層17GBが含んでいる緑ゲスト材料Gは、レーザ光59cの照射により、ほとんど消光するか、または励起されない。
【0392】
画素電極15Rの上方の発光層17Rでは、電子と正孔との再結合は主に発光層17Rの赤ゲスト材料Rにおいて生じるが、再結合は発光層17GBの緑ゲスト材料Gおよび青ゲスト材料Bにおいても生じる可能性がある。
【0393】
すなわち、画素電極15Rの上方の発光層17GBでは、緑ゲスト材料G、青ゲスト材料Bも励起することが可能である。発光層17GBの緑ゲスト材料Gは、青ゲスト材料Bが励起されるエネルギーを吸収する。画素電極15Rの上方の発光層17Rが含んでいる赤ゲスト材料Rは、緑ゲスト材料Gが励起されるエネルギーを吸収して発光する。
【0394】
画素電極15Gの上方の発光層17Rでは、含有する赤ゲスト材料Rは、レーザ光59aが照射されているため励起しない。また、発光層17GBの青ゲスト材料Bはレーザ光59bが照射されているため励起しない。そのため、発光層17GBは、緑で発光する。したがって、画素電極15Gの画素37は、緑で発光する。
【0395】
なお、画素電極15Gの上方の発光層17GBでは、発光層17GBの緑ゲスト材料Gが、青ゲスト材料Bが励起されるエネルギーを良好に吸収する材料あるいはEL素子22の構成では、画素電極15Gの上方の発光層17GBが含んでいる緑ゲスト材料Gは、青ゲスト材料Bが励起されるエネルギーを吸収して発光する。したがって、発光層17GBは、緑で発光する。この場合は、
図27(d)において、画素電極15Gの上方の発光層17GBにレーザ光59bを照射する工程を削除することができる。
【0396】
画素電極15Bの上方の発光層17Rでは、含有する赤ゲスト材料Rは、レーザ光59aが照射されているため励起しない。また、発光層17GBの緑ゲスト材料Gはレーザ光59cが照射されているため励起しない。そのため、発光層17GBは、青で発光する。したがって、画素電極15Bの画素37は、青で発光する。
【0397】
以下、図面を参照しながら、本発明の第3の実施例について説明をする。
図28、
図29は本発明の第3の実施例におけるEL表示パネルの断面構成図および製造方法の説明図である。
【0398】
図28において、赤色の画素電極15Rの上方には、発光層17R、発光層17G、発光層17Bが形成されている。緑色の画素電極15Gおよび青色の画素電極15Bの上方には、発光層17Gおよび発光層17Bが形成されている。
青色の画素電極15Bの上方の発光層17Gには、光が照射されて、発光層17Gの緑色のゲスト材料が改質されている。
【0399】
以下、図面を参照しながら、本発明の第3の実施例の製造方法について説明をする。
図29(a)に図示するように、TFT基板52は、画素電極15の上方に正孔輸送層16が形成される。次に、TFT基板52は、発光層(EML)Rを蒸着するチャンバー室(EML(R))111dに搬入される。
【0400】
図29(b)に図示するように、TFT基板52に、赤色の発光層17Rを形成するために、ファイン蒸着マスク251Rを配置する。ファイン蒸着マスク251Rは、赤の画素位置に開口部を有するマスクである。
【0401】
赤色の発光層材料172Rを蒸発させ、発光層17Rを正孔輸送層16上に積層させる。発光層17Rはホスト材料と赤色のゲスト材料を共蒸着させて形成する。共蒸着は真空工程で実施される。
【0402】
次に、TFT基板52は、チャンバー室111bに搬入される。チャンバー室111bでは、
図29(c)に図示するように、発光層17Gを積層させる。発光層17Gには、緑色のゲスト材料が含有されている。
【0403】
次に、TFT基板52は、
図23で示すレーザ装置室118に搬入される。
図29(d)に図示するように、青色の画素電極15Bの上方の発光層17Gに、レーザ光59が照射される。レーザ光59を照射すると、発光層17Gのゲスト材料Gは、レーザ光59を吸収し改質される。
緑色の画素電極15Gの上方の発光層17Gにはレーザ光59が照射されていないため、発光層17Gのゲスト材料Gが発光可能な状態が維持されている。
【0404】
次に、
図29(e)に図示するように、発光層17Bが形成される。発光層17Bは、ゲスト材料Bが発光可能な状態を維持されるため、発光層17Bは、青発光する発光層となる。
【0405】
次に、
図29(f)に図示するように、発光層17GBの上方に電子輸送層18を形成し、続いて、電子注入層を形成し、カソード電極19を電子輸送層18上に積層する。
【0406】
図28の画素電極15Rの上方の発光層17Rが含んでいる赤ゲスト材料Rの吸収スペクトルは、発光層17Gの緑ゲスト材料の発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。また、発光層17Gの緑ゲスト材料の発光スペクトルは、発光層17Bの青ゲスト材料Bの発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。
【0407】
画素電極15Rの上方の発光層17Rでは、電子と正孔との再結合は主に発光層17Rの赤ゲスト材料Rにおいて生じるが、再結合は発光層17Gの緑ゲスト材料Gおよび発光層17Bの青ゲスト材料Bにおいても生じる可能性がある。
【0408】
発光層17Gの緑ゲスト材料Gは、発光層17Bの青ゲスト材料Bが励起されるエネルギーを吸収する。画素電極15Rの上方の発光層17Rが含んでいる赤ゲスト材料Rは、緑ゲスト材料Gが励起されるエネルギーを吸収して発光する。
図28の本発明のEL表示パネルの画素電極15Rの発光層17は、赤色で発光する。
【0409】
画素電極15Gの上方の発光層17Gでは、電子と正孔との再結合は主に発光層17Gの緑ゲスト材料Gにおいて生じるが、再結合は発光層17Bの青ゲスト材料Bの青ゲスト材料Bにおいても生じる可能性がある。
【0410】
発光層17Gの緑ゲスト材料Gは、発光層17Bの青ゲスト材料Bが励起されるエネルギーを吸収する。
図28の本発明のEL表示パネルの画素電極15Gの発光層17は、緑色で発光する。
【0411】
画素電極15Bの上方の発光層17Gでは、含有する緑ゲスト材料Gは、レーザ光59が照射されて励起しない。発光層17Bは、青で発光する。したがって、画素電極15Bの画素37は、青で発光する。
【0412】
なお、
図29の本発明の製造方法では、ファイン蒸着マスク251で、発光層17Rを形成することを例示して説明したが、これに限定するものではない。たとえば、発光層17Rをインクジェット方式で形成してもよい。
【0413】
また、発光層17G、発光層17Bなどの他の発光層をファイン蒸着マスクで形成することも、本発明の技術的範疇である。また、発光層17に限定されるものでなく、たとえば、正孔輸送層16を形成してもよい。ファイン蒸着マスク251を使用して正孔輸送層16を形成することにより、たとえば、
図40に図示するように構成することにより、正孔輸送層(HTL)16R、正孔輸送層(HTL)16G、正孔輸送層(HTL)16Bの膜厚を容易に設定できる。
図30、
図31は本発明の第4の実施例におけるEL表示パネルの断面構成図および製造方法の説明図である。
【0414】
図30において、赤色の画素電極15Rの上方には、発光層17R、発光層EML(GB)が形成されている。緑色の画素電極15Gおよび青色の画素電極15Bの上方には、発光層EML(GB)が形成されている。
発光層EML(GB)は、ホスト材料と、緑発光のゲスト材料と青色発光のゲスト材料とが共蒸着されて形成される。
【0415】
以下、図面を参照しながら、本発明の第4の実施例の製造方法について説明をする。
図31に図示するように、TFT基板52は、画素電極15の上方に正孔輸送層16が形成される。次に、
図31(b)に図示するように、TFT基板52に、赤色の発光層17Rを形成するために、ファイン蒸着マスク251Rを配置する。赤色の発光層材料172Rを蒸発させ、発光層17Rを正孔輸送層16上に積層させる。発光層17Rはホスト材料と赤色のゲスト材料を共蒸着させて形成する。
【0416】
次に、
図31(c)に図示するように、発光層EML(GB)を積層させる。発光層EML(GB)は緑色発光のゲスト材料と青色発光のゲスト材料とを含有している。発光層EML(GB)は、ホスト材料、緑色発光のゲスト材料、青色発光のゲスト材料を共蒸着して形成する。
【0417】
次に、TFT基板52は、レーザ装置室118に搬入され、
図31(d)に図示するように、青色の画素電極15Bの上方の発光層EML(GB)に、レーザ光59cが照射される。レーザ光59cを照射すると、発光層EML(GB)の緑色のゲスト材料Gは、レーザ光59cを吸収し、改質層96となる。
【0418】
図3(c)に図示するように、ホスト材料および緑色のゲスト材料Bは、レーザ光59cを吸収しにくい材料を選定する。緑色のゲスト材料Gは、レーザ光59cを吸収しやすい材料を選定する。
【0419】
好ましくは、
図3(c)に図示するように、レーザ光59cの波長で、ゲスト材料Gの吸収率が100%とした時、ゲスト材料Bの吸収率が25%以下となるゲスト材料Bを選定する。また、ゲスト材料Gの吸収率とゲスト材料Bの吸収率の差が3倍以上となるように材料を選定する。
緑色の画素電極15Gの上方の発光層17Gにはレーザ光59cが照射されていないため、発光層17Gのゲスト材料Gが発光可能な状態が維持されている。
【0420】
次に、
図31(e)に図示するように、発光層EML(GB)の上方に電子輸送層18を形成し、
図31(f)に図示するように、電子注入層を形成し、カソード電極19を電子輸送層18上に積層する。
【0421】
図30の画素電極15Rの上方の発光層17Rが含んでいる赤ゲスト材料Rの吸収スペクトルは、発光層EML(GB)の緑ゲスト材料の発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。また、発光層EML(GB)の緑ゲスト材料の発光スペクトルは、発光層EML(GB)の青ゲスト材料Bの発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。
【0422】
画素電極15Rの上方の発光層17Rでは、電子と正孔との再結合は主に発光層17Rの赤ゲスト材料Rにおいて生じるが、再結合は発光層EML(GB)の緑ゲスト材料Gおよび青ゲスト材料Bにおいても生じる可能性がある。
【0423】
発光層EML(GB)の緑ゲスト材料Gは、青ゲスト材料Bが励起されるエネルギーを吸収する。画素電極15Rの上方の発光層17Rが含んでいる赤ゲスト材料Rは、緑ゲスト材料Gが励起されるエネルギーを吸収して発光する。
図30の本発明のEL表示パネルの画素電極15Rの発光層17Rは、赤色で発光する。
【0424】
画素電極15Gの上方の発光層EML(GB)では、電子と正孔との再結合は主に発光層17Gの緑ゲスト材料Gにおいて生じるが、再結合は発光層EML(GB)の青ゲスト材料Bの青ゲスト材料Bにおいても生じる可能性がある。
【0425】
発光層EML(GB)の緑ゲスト材料Gは、発光層EML(GB)の青ゲスト材料Bが励起されるエネルギーを吸収する。
図30の本発明のEL表示パネルの画素電極15Gの発光層EML(GB)は、緑色で発光する。
【0426】
画素電極15Bの上方の発光層EML(GB)では、含有する緑ゲスト材料Gは、レーザ光59cが照射されて励起しない。画素電極15Bの上方の発光層EML(GB)では、青ゲスト材料Bが発光する。したがって、画素電極15Bの画素37は、青色で発光する。
図32、
図33は本発明の第5の実施例におけるEL表示パネルの断面構成図および製造方法の説明図である。
【0427】
図32において、赤色、緑色および青色の画素電極15の上方には、発光層EML(RGB)が形成されている。発光層EML(RGB)は、ホスト材料と、赤発光のゲスト材料、緑発光のゲスト材料、青色発光のゲスト材料とが共蒸着されて形成されている。
【0428】
以下、本発明の第6の実施例の製造方法について説明をする。
図33(a)に図示するように、TFT基板52は、画素電極15の上方に正孔輸送層16が形成される。次に、
図33(b)に図示するように、TFT基板52に、発光層17RGBを正孔輸送層16上に積層させる。発光層17RGBは、ホスト材料と、赤発光のゲスト材料、緑発光のゲスト材料、青色発光のゲスト材料を共蒸着させて形成する。
【0429】
次に、TFT基板52は、レーザ装置室118に搬入され、
図33(c)に図示するように、緑色の画素電極15Gおよび青色の画素電極15Bの上方の発光層EML(RGB)に、レーザ光59aが照射される。レーザ光59aを照射すると、発光層EML(RGB)の赤色のゲスト材料Rは、レーザ光59aを吸収し、改質層96aとなる。
【0430】
図3(d)に図示するように、赤色のゲスト材料Rは、レーザ光59aを吸収しやすい材料を選定する。緑色のゲスト材料Gおよび青色のゲスト材料Bは、レーザ光59aを吸収しにくい材料を選定する。
【0431】
好ましくは、
図3(d)に図示するように、レーザ光59aの波長で、ゲスト材料Rの吸収率が100%とした時、ゲスト材料Gの吸収率が25%以下となるゲスト材料Gを選定する。また、ゲスト材料Rの吸収率とゲスト材料Gの吸収率の差が3倍以上となるように材料を選定する。
【0432】
赤色の画素電極15Rの上方の発光層17Rにはレーザ光59aが照射されていないため、発光層17RGBのゲスト材料R、ゲスト材料G、ゲスト材料Bが発光可能な状態が維持されている。
【0433】
次に、
図33(d)に図示するように、青色の画素電極15Bの上方の発光層EML(RGB)に、レーザ光59bが照射される。レーザ光59bを照射すると、発光層EML(RGB)の緑色のゲスト材料Gは、レーザ光59bを吸収し、改質層96bとなる。
【0434】
図3(d)に図示するように、緑色のゲスト材料Gは、レーザ光59bを吸収しやすい材料を選定する。青色のゲスト材料Bは、レーザ光59bを吸収しにくい材料を選定する。
【0435】
好ましくは、
図3(d)に図示するように、レーザ光59bの波長で、ゲスト材料Gの吸収率が100%とした時、ゲスト材料Bの吸収率が25%以下となるゲスト材料Bを選定する。また、ゲスト材料Gの吸収率とゲスト材料Bの吸収率の差が3倍以上となるように材料を選定する。
【0436】
次に、
図33(e)に図示するように、発光層EML(RGB)の上方に電子輸送層18を形成し、
図33(f)に図示するように、電子注入層を形成し、カソード電極19を電子輸送層18上に積層する。
【0437】
図32の画素電極15Rの上方の発光層EML(RGB)が含んでいる赤ゲスト材料Rの吸収スペクトルは、緑ゲスト材料の発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。また、発光層EML(RGB)の緑ゲスト材料の発光スペクトルは、青ゲスト材料Bの発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。
【0438】
画素電極15Rの上方の発光層EML(RGB)では、電子と正孔との再結合は主に発光層17Rの赤ゲスト材料Rにおいて生じるが、再結合は発光層EML(RGB)の緑ゲスト材料Gおよび青ゲスト材料Bにおいても生じる可能性がある。
【0439】
発光層EML(RGB)の緑ゲスト材料Gは、青ゲスト材料Bが励起されるエネルギーを吸収する。画素電極15Rの上方の発光層EML(RGB)が含んでいる赤ゲスト材料Rは、緑ゲスト材料Gが励起されるエネルギーを吸収して発光する。
図32の本発明のEL表示パネルの画素電極15Rの発光層17Rは、赤色で発光する。
【0440】
画素電極15Gの上方の発光層EML(RGB)では、電子と正孔との再結合は主に発光層17Gの緑ゲスト材料Gにおいて生じるが、再結合は発光層EML(RGB)の青ゲスト材料Bの青ゲスト材料Bにおいても生じる可能性がある。
【0441】
発光層EML(RGB)の緑ゲスト材料Gは、発光層EML(RGB)の青ゲスト材料Bが励起されるエネルギーを吸収する。
図24の本発明のEL表示パネルの画素電極15Gの発光層EML(RGB)は、緑色で発光する。
【0442】
画素電極15Bの上方の発光層EML(RGB)が含有する緑ゲスト材料Gは、レーザ光59bが照射されて励起しない。また、発光層EML(RGB)が含有する赤ゲスト材料Rは、レーザ光59aが照射されて励起しない。画素電極15Bの上方の発光層EML(RGB)では、青ゲスト材料Bが発光する。したがって、画素電極15Bの画素37は青色で発光する。
【0443】
以上の実施例では、画素電極15の上方の発光層17等にレーザ光59を照射し、発光層17等を改質するものであった。しかし、本発明はこれに限定するものではない。
図34、
図35は本発明の第6の実施例におけるEL表示パネルの断面構成図および製造方法の説明図である。
【0444】
図34、
図35の実施例は、隣接した画素37に連続した発光層17を形成し、該当の画素37の発光層17にレーザ光59を照射して、前記発光層17を除去するものである。
【0445】
図34において、赤色の画素電極15Rの上方には、発光層17R、発光層17G、発光層17Bが形成されている。緑色の画素電極15Gの上方には、発光層17G、発光層17Bが形成されている。青色の画素電極15Bの上方には、発光層17Bが形成されている。
【0446】
以下、本発明の第6の実施例の製造方法について説明をする。
図35(a)に図示するように、TFT基板52は、画素電極15の上方に正孔輸送層16が形成される。
【0447】
図35(b)に図示するように、TFT基板52に、発光層17Rを正孔輸送層16上に積層させる。発光層17Rは、赤色の画素37R、緑色の画素37G、青色の画素37Bに連続した発光層17として形成される。
【0448】
次に、TFT基板52は、レーザ装置室118に搬入され、
図35(b)に図示するように、緑色の画素電極15Gおよび青色の画素電極15Bの上方の発光層17Rに、レーザ光59aを照射する。レーザ光59aの照射により、発光層17Rはレーザ光59aを吸収し、過熱されて蒸発する。発光層17Rは蒸発することにより除去される。
【0449】
図35(c)に図示するように、TFT基板52に、発光層17Gを積層させる。発光層17Gは、赤色の画素37R、緑色の画素37G、青色の画素37Bに連続した発光層17として積層される。
【0450】
次に、TFT基板52は、レーザ装置室118に搬入され、
図35(d)に図示するように、青色の画素電極15Bの上方の発光層17Gに、レーザ光59bを照射する。レーザ光59bの照射により、発光層17Gはレーザ光59bを吸収し、過熱されて蒸発する。発光層17Gは蒸発することにより正孔輸送層16上から除去される。
【0451】
図35(e)に図示するように、TFT基板52に、発光層17Bを積層させる。発光層17Bは、赤色の画素37R、緑色の画素37G、青色の画素37Bに連続した発光層17として積層される。
次に、
図35(f)に図示するように、発光層17Bの上方に電子輸送層18を形成し、カソード電極19を電子輸送層18上に積層する。
【0452】
赤色の画素電極15Rの上方には、発光層17R、発光層17G、発光層17Gの3つの発光層が積層されている。緑色の画素電極15Gの上方には、発光層17G、発光層17Gの2つの発光層が積層されている。青色の画素電極15Bの上方には、発光層17Gが積層されている。
【0453】
なお、
図35(b)の工程で、発光層17Rは蒸発して除去されるが、発光層17Rの一部は残存する場合がある。しかし、残存した発光層17Rはレーザ光59aにより改質されているため、発光に寄与しない。また、
図35(d)の工程で、発光層17Gは蒸発して除去されるが、発光層17Gの一部は残存する場合がある。しかし、残存した発光層17Gはレーザ光59bにより改質されているため、発光に寄与しない。
【0454】
画素37Rでは、発光層17Bが放出する励起エネルギーうち少なくとも一部は、発光層17Rが含んでいるゲスト材料の発光スペクトルを有している光へと変換される。発光層17Gが励起されるエネルギーの少なくとも一部は、発光層17Rが含んでいるゲスト材料の発光スペクトルを有している光へと変換される。したがって、画素37Rの発光色は、発光層17Rの発光色とほぼ等しく、画素37Rは、赤色光を放出する。
【0455】
画素37Gでは、電子と正孔との再結合は主に発光層17Gにおいて生じるが、再結合は発光層17Bにおいても発光する可能性がある。発光層17Bが放出する励起エネルギーうち少なくとも一部は、発光層17Gが含んでいるゲスト材料の発光スペクトルを有している光へと変換される。したがって、画素電極15Gの発光色は、発光層17Gの発光色とほぼ等しく、画素電極15Gは、緑色光を放出する。
画素37Bでは、電子と正孔との再結合は、主に発光層17Bにおいて生じる。他の色の発光層17は、除去されているため、画素37Bは青色光を放出する。
したがって、レーザ光59で発光層17を除去することにより、赤色、緑色、青色の3原色を有するEL表示パネルを製造できる。
図36、
図37は本発明の第7の実施例におけるEL表示パネルの断面構成図および製造方法の説明図である。
【0456】
図36、
図37の実施例は、
図36(b)に図示するように、ファイン蒸着マスク251Hを使用して、2層の正孔輸送層16a、正孔輸送層16bを形成した実施例である。
【0457】
図36において、赤色の画素電極15Rの上方には、正孔輸送層16a、発光層17R、発光層17G、発光層17Bが形成されている。緑色の画素電極15Gの上方には、正孔輸送層16a、発光層17G、発光層17Bが形成されている。青色の画素電極15Bの上方には、正孔輸送層16a、正孔輸送層16b、発光層17G、発光層17Bが形成されている。
【0458】
以下、本発明の第7の実施例の製造方法について説明をする。
図37(a)に図示するように、TFT基板52は、画素電極15の上方に正孔輸送層16aが形成される。
【0459】
次に、
図37(b)に図示するように、TFT基板52にファイン蒸着マスク251Hが配置される。ファイン蒸着マスク251Hの穴を介して、正孔輸送層材料172Hが正孔輸送層16a上に積層させ、正孔輸送層16bとなる。
【0460】
次に、
図37(c)に図示するように、TFT基板52にファイン蒸着マスク251Rが配置される。ファイン蒸着マスク251Rの穴を介して、発光層材料172Rが正孔輸送層16a上に積層させ、発光層17Rとなる。
【0461】
次に、
図37(d)に図示するように、発光層17Gが形成される。発光層17Gは、赤色の画素37R、緑色の画素37G、青色の画素37Bに連続した発光層17Gとして形成される。
【0462】
TFT基板52は、レーザ装置室118に搬入され、
図37(e)に図示するように、青色の画素電極15Bの上方の発光層17Gに、レーザ光59を照射する。レーザ光59の照射により、発光層17Gはレーザ光59を吸収し、改質される。
次に、
図37(f)に図示するように、発光層17Bの上方に電子輸送層18を形成し、カソード電極19を電子輸送層18上に積層する。
【0463】
赤色の画素電極15Rの上方には、発光層17R、発光層17G、発光層17Gの3つの発光層が積層されている。緑色の画素電極15Gの上方には、発光層17G、発光層17Bの2つの発光層が積層されている。青色の画素電極15Bの上方には、発光層17G、発光層17Bが積層されている。
【0464】
画素37Rでは、発光層17Bが放出する励起エネルギーうち少なくとも一部は、発光層17Rが含んでいるゲスト材料の発光スペクトルを有している光へと変換される。発光層17Gが励起されるエネルギーの少なくとも一部は、発光層17Rが含んでいるゲスト材料の発光スペクトルを有している光へと変換される。したがって、画素37Rの発光色は、発光層17Rの発光色とほぼ等しく、画素37Rは、赤色光を放出する。
【0465】
画素37Gでは、電子と正孔との再結合は主に発光層17Gにおいて生じるが、再結合は発光層17Bにおいても発光する可能性がある。発光層17Bが放出する励起エネルギーうち少なくとも一部は、発光層17Gが含んでいるゲスト材料の発光スペクトルを有している光へと変換される。したがって、画素電極15Gの発光色は、発光層17Gの発光色とほぼ等しく、画素電極15Gは、緑色光を放出する。
【0466】
画素37Bでは、電子と正孔との再結合は、主に発光層17Bにおいて生じる。発光層17Gは、レーザ光59により改質されているので、発光に寄与しない。画素37Bは青色光を放出する。
【0467】
本発明の実施例は画素37にレーザ光59を照射し、照射した発光層17を改質させて、非発光層とした実施例である。しかし、本発明は、レーザ光59の照射は画素電極15上に限定されるものではない。
図39(e)に図示するように、画素37間にレーザ光59cを照射して、発光層17等を改質あるいは除去してもよい。
【0468】
図38、
図39は本発明の第8の実施例におけるEL表示パネルの断面構成図および製造方法の説明図である。第8の実施例は、隣接した画素間に、レーザ光59を照射し、隣接した画素間の発光層17等を改質させて、発光させなくした実施例である。
【0469】
第8の実施例では、
図38に図示するように、画素電極15間の発光層17および正孔輸送層16にレーザ光59cを照射し、改質層96cにしている。断面構造は
図1の実施例を例示し、
図1の土手95をなくし、
図1の土手95部にレーザ光59cを照射して、レーザ光59cを照射した箇所を改質層96cとした構造である。
【0470】
土手95を形成しないことにより、土手95を形成する工程が省略でき、製造コストを低減できる。また、画素37の開口率を高くでき、画素37での電流集中がなくなり、EL素子22を高寿命化できる。
【0471】
また、画素37間にレーザ光59cを照射することにより、隣接した画素37間に異なる色の発光層17が重なることによる混色がなくなり、混色発光がなくなる。
図39(a)に図示するように、TFT基板52の画素電極15の上方に正孔輸送層16が形成される。
【0472】
次に、
図39(b)に図示するように、発光層17Rを、蒸着工法により、正孔輸送層16上に積層させる。また、TFT基板52の発光層17にレーザ光59aの照射を行う。レーザ光59aは、画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rに照射する。
【0473】
図39(c)に図示するように、レーザ光59aの照射部で、発光層17Rは改質され、改質層96aとなる。次に、
図39(c)に図示するように、発光層17Rの上方に、発光層17Gを蒸着工法により積層させる。
【0474】
次に、
図39(d)に図示するように、TFT基板52の発光層17Gにレーザ光59bの照射を行う。レーザ光59bは、画素電極15Bの上方の発光層17Gに照射する。レーザ光59bの照射部で、発光層17Gは改質され、改質層96bとなる。
図39(e)に図示するように、隣接した画素間に、レーザ光59cを照射することにより、画素37間の発光材料等が改質される。
【0475】
なお、
図39(e)で図示するように、レーザ光59cの照射時に、スリットマスク92等を使用し、スリットマスク92cの開口部(光透過部)からレーザ光59cを照射すれば、位置精度よく画素37間を改質することができる。
次に、
図39(f)に図示するように、発光層17Bの上方に電子輸送層18を形成し、カソード電極19を電子輸送層18上に積層する。
【0476】
図46は、第9の実施例おける本発明のEL表示パネルの断面図である。赤色画素37Rには画素電極15R、反射膜12Rが形成または配置されている。緑色画素37Gには画素電極15G、反射膜12Gが形成または配置されている。青色画素37Bには画素電極15B、反射膜12Bが形成または配置されている。
【0477】
EL素子22を構成するアノード電極(画素電極)15は、透明電極であるITO、IZOで形成される。画素電極15の下層には反射膜12が形成されている。反射膜12は、銀(Ag)あるいはアルミニウム(Al)もしくはこれらのいずれかの合金で形成される。反射膜12と透明電極は積層されている。
【0478】
図46では、反射膜12の上層にITOなどの透明電極を形成しているが、これに限定するものではなく、反射膜12の下層にもITOなどの透明電極を形成してもよい。つまり、反射膜12の上層および下層をITOなど透明電極でサンドイッチ構造に形成することが好ましい。
【0479】
図46に図示する本発明の実施例では、赤色、緑色および青色の画素電極15上には、正孔輸送層(HTL)16、発光層17R、発光層17G、発光層17Bf、発光層17Bt、電子輸送層(ETL)18が形成されている。
【0480】
発光層17は、蛍光材料のゲスト(ドーパント)材料と、TADF(熱活性化遅延蛍光 Thermally activated delayed fluorescence)のゲスト(ドーパント)材料と、ホスト材料のうち少なとも1つ以上の材料を共蒸着して構成される。
【0481】
発光層17に赤色の蛍光材料のゲスト(ドーパント)材料を含有する場合は、Rfの記号を付加し、発光層17に赤色のTADF材料のゲスト(ドーパント)材料を含有する場合は、Rtの記号を付加する。
【0482】
同様に、発光層17に緑色の蛍光材料のゲスト(ドーパント)材料を含有する場合は、Gfの記号を付加し、発光層17に緑色のTADF材料のゲスト(ドーパント)材料を含有する場合は、Gtの記号を付加する。
【0483】
発光層17に青色の蛍光材料のゲスト(ドーパント)材料を含有する場合は、Bfの記号を付加し、発光層17に青色のTADF材料のゲスト(ドーパント)材料を含有する場合は、Btの記号を付加する。
【0484】
本明細書および図面において、発光層17に、Rfの記号が記載されている場合は、発光層17に赤色の蛍光材料のゲスト(ドーパント)材料を含有する。Rtの記号が記載されている場合は、発光層17に赤色のTADF材料のゲスト(ドーパント)材料を含有する。発光層17に、Gfの記号が記載されている場合は、発光層17に緑色の蛍光材料のゲスト(ドーパント)材料を含有する。Gtの記号が記載されている場合は、発光層17に緑色のTADF材料のゲスト(ドーパント)材料を含有する。発光層17に、Bfの記号が記載されている場合は、発光層17に青色の蛍光材料のゲスト(ドーパント)材料を含有する。Btの記号が記載されている場合は、発光層17に青色のTADF材料のゲスト(ドーパント)材料を含有する。
【0485】
本発明の実施例において、発光層17にTADFのゲスト材料または蛍光のゲスト材料のうち、少なくとも一方を含有するとして説明するが、TADFのゲスト材料、蛍光のゲスト材料に限定されるものではない。本発明の技術的思想は、TADFのような、光発光効率が高く(たとえば、三重項励磁状態を一重項励磁状態に変換でき、光変換効率が高い材料)、発光スペクトルが、蛍光のゲスト材料の吸収スペクトルと重なりが大きい材料であれば、いずれでもよい。
【0486】
図46において、発光層17Rは、赤色の蛍光材料のゲスト材料Rfと赤色のTADF材料のゲスト材料Rtを含有する。発光層17Gは、緑色の蛍光材料のゲスト材料Gfと緑色のTADF材料のゲスト材料Gtを含有する。発光層17Bfは、青色の蛍光材料のゲスト材料Bfを含有する。発光層17Btは、青色のTADF材料のゲスト材料Btを含有する。
【0487】
蛍光のゲスト材料として、たとえば、2,5,8,11-tetra-tert-butylperylene (TBPe)、9,10-Bis[N,N-di-(p-tolyl)-amino]anthracene (TTPA)、2,8-di-tert-butyl-5,11-bis(4-tert-butylphenyl)-6,12-diphenyltetracene (TBRb)、tetraphenyldibenzoperiflanthene (DBP)が例示される。
【0488】
TADFのゲスト材料として、たとえば、10'H-spiro[acridine-9,9'-anthracen]-10'-one (ACRSA)、 3-(9,9-dimethylacridin-10(9H)-yl)-9H-xanthen-9-one(ACRXTN)、 2-phenoxazine-4,6-diphenyl-1,3,5-triazine (PXZ-TRX)、 2,4,6-tri(4-(IOH-phenoxazin-10H-yl)phenyl)-1,3,5-triazine (tri-PXZ-TRZ)が例示される。
【0489】
ホスト材料として、たとえば、 bis-(2-(diphenylphosphino)phenyl)ether oxide (DPEPO)、 1,3-Bis(N-carbazolyl)benzene (mCP)、3,3-di(9H-carbazol-9-yl)biphenyl (mCBP)、4,4'-bis(9-carbazolyl)-1,1'-biphenyl (CBP)、3,3-Di(9H-carbazol-9-yl)biphenyl(mCBP)が例示される。
【0490】
たとえば、赤色の発光層17Rの蛍光のゲスト材料として、DBP、tri-PXZ-TRZ、DCM((E)-2-(2-(4-(Dimethylamino)styryl)-6-methyl-4H -pyran-4-ylidene)malononitrile)、DCM2(4-(Dicyanomethylene)-2-methyl-6-julolidyl-9-enyl-4H -pyran)、Rubrene(5,6,11,12-Tetraphenylnaphthacene)を使用する。緑色の発光層17Gの蛍光のゲスト材料として、TTPA、ACRXTN、Alq3を使用する。青色の発光層17Bの蛍光のゲスト材料として、TBPe、TPB、Perylene、3-DPADBCを使用する。
【0491】
たとえば、赤色の発光層17RのTADFのゲスト材料として、tri-PXZ-TRZ、PPZ-DPO、PPZ-DPS、4CzTPN-Me、4CzTPN-Ph、HAP-3TPAを使用する。緑色の発光層17GのTADFのゲスト材料として、PXZ-DPS、PPZ-3TPT、PXZ-DPS、4CzPN、4CzTPN、4CzIPN、Spiro-CN、PXZ-TRZを使用する。青色の発光層17BのTADFのゲスト材料として、ACRSA、ACRXTN、DMAC-DPS、PPZ-4TPT、2CzPNを使用する。
【0492】
なお、TADF材料は、4CzIPN、pata-3CzBN、4CzBN、5CzBNのように、分子にパラ体構造を導入して電荷非局在励起種を形成したものを採用することが好ましい。
【0493】
図46に図示するように、赤の画素電極15R、緑の画素電極15G、青の画素電極15Bの上方には、発光層17R、発光層17G、発光層17Bが共通に形成されている。発光層17Rは、複数の色の画素(赤色の画素37R、緑色の画素37G、青色の画素37B)に、共通に、かつ連続した膜として形成されている。
【0494】
同様に、発光層17Gは、複数の色の画素に、共通に、かつ連続した膜として形成され、発光層17Bは、複数の色の画素に、共通に、かつ連続した膜として形成されている。発光層17R、発光層17G、発光層17Bは、ラフ蒸着マスクを使用して、表示画面36の全体に形成されている。
【0495】
ラフ蒸着マスクは、表示領域に開口部が形成され、表示領域に開口部があり、表示領域以外に開口部がない蒸着マスクである。したがって、ラフ蒸着マスクを使用すると、表示領域部に連続した蒸着膜が形成され、他の領域には蒸着膜は形成されない。
【0496】
ファイン蒸着マスク(FMM:Fine Metal Mask)は、各画素に対応して蒸着材料を蒸着する部分に開口部が形成されている蒸着マスクである。表示領域以外に開口部はない点はラフ蒸着マスクと同様である。
【0497】
画素電極15上には、正孔輸送層16が形成されている。画素電極15と正孔輸送層16間に正孔注入層(HIL:Hole injection layer 図示せず)を形成してもよい。
【0498】
本発明で発光層17等と表現するが、発光層17は発光しない場合もある。たとえば、発光層17Btの励起エネルギーがFRETで発光層17Bfに移動し、発光層17Bfが発光する場合は、発光層17Btは発光しないか、ほとんど発光しない。したがって、本明細書において発光層17は発光することに限定されない。
【0499】
本発明のEL表示パネルは、
図46に図示するように、画素電極15Rの上方には、赤色の発光層17R、緑色の発光層17G、青色の発光層17Bが形成されている。同様に、画素電極15Gの上方には、赤色の発光層17R、緑色の発光層17G、青色の発光層17Bが形成されている。また、画素電極15Bの上方には、赤色の発光層17R、緑色の発光層17G、青色の発光層17Bが形成されている。
【0500】
赤色の発光層17Rは、蛍光のゲスト材料Rf、TADFのゲスト材料Rtを含有する。緑色の発光層17Gは、蛍光のゲスト材料Gf、TADFのゲスト材料Gtを含有する。青色の発光層17Bは、発光層17Bfと発光層17Btで構成される。発光層17Bfは、蛍光のゲスト材料Bfを含有する。発光層17Btは、TADFのゲスト材料Btを含有する。
【0501】
また、各発光層17は、ホスト材料とゲスト材料が共蒸着されて形成されている。各発光層17のホスト材料は異ならせてもよい。たとえば、赤色の発光層17Rには、ホスト材料としてmCPを使用し、緑色の発光層17G、青色の発光層17Bには、ホスト材料としてmCBPを使用することが例示される。
【0502】
ホスト材料は、電子輸送性、正孔輸送性を考慮して選択する。mCBPは電子輸送性が高く、mCPは正孔輸送性が高い。mCPをアノード側に使用し、mCBPをカソード側に使用することにより、発光効率等が向上する。また、発光層17Rなどカソード側の発光層を改質する時、発光効率が向上する。
また、発光層にホスト材料が含んでいても、ホスト材料にエネルギー移動がすることがない、あるいは少なくなるようにホスト材料を選定する。
【0503】
発光層17Rが含んでいるゲスト材料の吸収スペクトルは、発光層17Gの発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。発光層17Gが含んでいるゲスト材料の吸収スペクトルは、発光層17Bの発光スペクトルと少なくとも部分的に重なり合っている。
【0504】
発光層17の上方には、電子輸送層18を形成されている。電子輸送層18とカソード電極19との間に電子注入層(EIL:Electron injection layer 図示せず)を形成してもよい。電子輸送層18の種類は、赤色画素37R、緑色画素37G、青色画素37Bで異ならせてもよい。
発光層17BtのTADFゲスト材料の発光スペクトルと、発光層17Bfのゲスト材料の吸収スペクトルの一部が重なっている。
【0505】
発光層17Bfのゲスト材料の発光スペクトルと、発光層17Gの蛍光のゲスト材料の吸収スペクトルの一部が重なっている。また、発光層17GのTADFのゲスト材料の発光スペクトルと、発光層17Gの蛍光のゲスト材料の吸収スペクトルの一部が重なっている。なお、発光層17BtのTADFゲスト材料の発光スペクトルと、発光層17GのTADFのゲスト材料の吸収スペクトルの一部が重なっていることが好ましい。
【0506】
発光層17Gのゲスト材料の発光スペクトルと、発光層17Rの蛍光のゲスト材料の吸収スペクトルの一部が重なっている。また、発光層17RのTADFのゲスト材料の発光スペクトルと、発光層17Rの蛍光のゲスト材料の吸収スペクトルの一部が重なっている。なお、発光層17GのTADFゲスト材料の発光スペクトルと、発光層17RのTADFのゲスト材料の吸収スペクトルの一部が重なっていることが好ましい。
なお、発光層17の発光スペクトルと吸収スペクトルの重なりが大きい方が、FRET効率が向上することから好ましい。
【0507】
TADF材料は、三重項励起子を一重項励起子に熱的に変換することが可能である。したがって、三重項エネルギーを遷移確率の高い一重項エネルギーとして再利用することができるため、発光効率が優れている。
【0508】
TADF材料の励起は、分子内のドナーおよびアクセプター部位間の電荷移動により誘起されるため、TADF材料の発光スペクトルは、一般的に幅の広いスペクトルとなる。そのため、TADF材料を発光色素とする有機EL素子22は、広帯域の発光スペクトルとなる。蛍光のゲスト材料を発光層17にドーピングした場合、一般的に幅の狭いスペクトルとなる。
【0509】
TADFのゲスト材料の一重項励起エネルギーを、蛍光のゲスト材料よりもわずかに高いように材料選定を行うことにより、FRETによりTADF材料から蛍光材料間にエネルギー移動が生じ、結果として高いEL量子効率を維持しつつ、純色(狭いスペクトル幅)発光を得ることができる。
【0510】
したがって、一般的な蛍光色素を発光分子とする有機EL素子においても理論限界に達するEL効率を実現することが可能となる。また、EL素子22の耐久性も著しく向上する。
【0511】
図45は、
図46、
図47で説明した本発明の第9の実施例のEL表示パネルの動作の説明図である。画素37Gの発光層17R、画素37Bの発光層17R、発光層17Gが改質されている。改質層96a、改質層96bは主としてゲスト材料が改質しているため、発光あるいは励起エネルギーが移動しない。ホスト材料は変化していらず、正孔輸送性能を維持している。
【0512】
図45の画素37Rにおいて、発光層17BtのTADFのゲスト材料は、電荷再結合がTADF分子上で生じることにより、三重項励起子の準位Tt1を生成する。生成された三重項励起子は、TADF分子内でのRISCプロセスにより一重項励起状態の準位St1に変換される。発光層17BtのTADFのゲスト材料は、RISCプロセスにより、三重項励起状態(Tr1)から一重項励起状態(St1)に励起する。
【0513】
発光層17BtのTADF分子の一重項励起状態(St1)の一重項励起エネルギーは、FRETプロセス(FRETb)により、発光層17Bfの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sb1)に移動する。
【0514】
発光層17Bfの蛍光のゲスト材料の発光スペクトルと、発光層17Gの蛍光のゲスト材料の吸収スペクトルとは少なくとも一部が重なるようにゲスト材料を選定している。発光層17Bfの一重項準位(Sb1)は、発光層17Gの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sg1)よりも高い材料を選定する。したがって、FRETプロセス(FRETg)により、発光層17Bfの一重項準位(Sb1)の一重項励起エネルギーは、発光層17Gの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sg1)に移動することができる。
【0515】
発光層17Gの蛍光のゲスト材料の発光スペクトルと、発光層17Rの蛍光のゲスト材料の吸収スペクトルとは少なくとも一部が重なるようにゲスト材料を選定している。発光層17Gの一重項準位(Sg1)は、発光層17Rの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sr1)よりも高い材料を選定する。したがって、FRETプロセス(FRETr)により、発光層17Gの一重項準位(Sg1)の一重項励起エネルギーは、発光層17Rの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sr1)に移動することができる。
発光層17Rにエネルギー移動した一重項励起子は蛍光のゲスト材料の準位Sr1から準位Sr0へと輻射遷移し、発光層17Rは赤(R)色の光を発生する。
以上の励磁エネルギーの移動は、発光層17Bから、発光層17G、発光層17Rに移動し、発光層17Rで赤色の発光が発生するものである。
【0516】
発光層17Rの発光は、発光層17R内でも発生する。画素37Rにおいて、発光層17RのTADFのゲスト材料は、電荷再結合がTADF分子上で生じることにより、三重項励起子の準位Trt1を生成する。生成された三重項励起子は、TADF分子内でのRISCプロセスにより一重項励起状態の準位Srt1に変換される。発光層17RのTADFのゲスト材料は、RISCプロセスにより、三重項励起状態(Trt1)から一重項励起状態(Srt1)に励起する。
【0517】
発光層17GのTADFのゲスト材料の発光スペクトルと、発光層17Gの蛍光のゲスト材料の吸収スペクトルとは、少なくとも一部が重なっている。また、TADFのゲスト材料の一重項励起準位(Sgt1)は、蛍光のゲスト材料の一重項励起準位(Sgf1)より、少し高い材料を選定している。
【0518】
発光層17RのTADFの一重項励起状態(Srt1)の一重項励起エネルギーは、FRETプロセス(FRETr)により、発光層17Rの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Srf1)に移動する。発光層17Rにエネルギー移動した一重項励起子は蛍光のゲスト材料の準位Srf1から準位Srf0へと輻射遷移し、発光層17Rは赤(R)色の光を発生する。
【0519】
発光層17Gの蛍光のゲスト材料の発光スペクトルと、発光層17Rの蛍光のゲスト材料の吸収スペクトルとは、少なくとも一部が重なっている。また、発光層17Gの蛍光のゲスト材料の一重項励起準位(Sgt1)は、発光層17Rの蛍光のゲスト材料の一重項励起準位(Srf1)より、少し高くなる関係の材料を選定している。
【0520】
発光層17RのTADFのゲスト材料の発光スペクトルと、発光層17Rの蛍光のゲスト材料の吸収スペクトルとは、少なくとも一部が重なっている。また、TADFのゲスト材料の一重項励起準位(Srt1)は、蛍光のゲスト材料の一重項励起準位(Srf1)より、少し高い関係のある材料を選定している。
【0521】
図45において、画素37Gの発光層17Rは改質され改質層96aとなっている。したがって、TADFのゲスト材料および蛍光のゲスト材料の発光は発生しない。画素37Gの発光層17Bの励起エネルギーは、発光層17Gに移動し、発光層17Gが発光する。
【0522】
画素37Gの発光層17BtのTADFのゲスト材料は、三重項励起子の準位Tt1を生成する。発光層17BtのTADFのゲスト材料は、RISCプロセスにより、三重項励起状態(Tr1)から一重項励起状態(St1)に励起する。
【0523】
発光層17BtのTADF分子の一重項励起状態(St1)の一重項励起エネルギーは、FRETプロセス(FRETb)により、発光層17Bfの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sb1)に移動する。
【0524】
発光層17Bfの蛍光のゲスト材料の発光スペクトルと、発光層17Gの蛍光のゲスト材料の吸収スペクトルとは少なくとも一部が重なるようにゲスト材料を選定している。発光層17Bfの一重項準位(Sb1)は、発光層17Gの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sg1)よりも高い材料を選定する。したがって、FRETプロセス(FRETg)により、発光層17Bfの一重項準位(Sb1)の一重項励起エネルギーは、発光層17Gの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sg1)に移動することができる。
【0525】
発光層17Gの蛍光のゲスト材料の発光スペクトルと、発光層17Rの蛍光のゲスト材料の吸収スペクトルとは少なくとも一部が重なるようにゲスト材料を選定している。発光層17Gの一重項準位(Sg1)は、発光層17Rの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sr1)よりも高い材料を選定する。したがって、FRETプロセス(FRETr)により、発光層17Gの一重項準位(Sg1)の一重項励起エネルギーは、発光層17Rの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sr1)に移動することができる。
【0526】
画素37Gは、正孔が改質された発光層17Rのホスト材料中を移動し、発光層17Gで電子と結合する。発光層17Gにエネルギー移動した一重項励起子は蛍光のゲスト材料の準位Sg1から準位Sg0へと輻射遷移し、発光層17Gは緑(G)色の光を発生する。
【0527】
画素37Gは、発光層17GにTADFのゲスト材料を含有する場合は、好ましくは、発光層17Gの蛍光のゲスト材料の発光スペクトルが、発光層17GのTADFのゲスト材料の吸収スペクトルと少なくとも一部が重なるようにゲスト材料を選定する。TADFのゲスト材料の一重項エネルギーは、蛍光のゲスト材料の一重項エネルギーよりもわずかに高い材料を選定する。
【0528】
また、発光層17GにTADFのゲスト材料を含有する場合は、好ましくは、発光層17Gの蛍光のゲスト材料の発光スペクトルが、発光層17GのTADFのゲスト材料の吸収スペクトルと少なくとも一部が重なるようにゲスト材料を選定する。
【0529】
TADFのゲスト材料の一重項エネルギーは、蛍光のゲスト材料の一重項エネルギーよりもわずかに高い材料を選定する。発光層17GのTADFのゲスト材料の一重項励起エネルギーは、FRETにより、発光層17G蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sgf1)に移動する。
【0530】
画素37Gは、正孔が改質された発光層17Rのホスト材料中を移動し、発光層17Gで電子と結合する。発光層17Gにエネルギー移動した一重項励起子は蛍光のゲスト材料の準位Sg1から準位Sg0へと輻射遷移し、発光層17Gは緑(G)色の光を発生する。
図45の画素37Gは、発光層17BのTADF材料のエネルギーを吸収して発光層17Gが発光する場合もある。
【0531】
発光層17BのTADFのゲスト材料は、三重項励起子の準位Tbt1を生成する。生成された三重項励起子は、TADF分子内でのRISCプロセスにより一重項励起状態の準位Sbt1に変換される。
【0532】
発光層17BのTADFのゲスト材料の発光スペクトルと、発光層17Bの蛍光のゲスト材料の吸収スペクトルとは、少なくとも一部が重なっている。また、発光層17BのTADFのゲスト材料の一重項励起準位(Sbt1)は、発光層17Bの蛍光のゲスト材料の一重項励起準位(Sbf1)より、少し高い関係の材料を選定している。
【0533】
発光層17BのTADFの一重項励起状態(Sgt1)の一重項励起エネルギーは、FRETプロセス(FRETb)により、発光層17Gの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sgf1)に移動する。発光層17Gにエネルギー移動した一重項励起子は蛍光のゲスト材料の準位Sgf1から準位Sgf0へと輻射遷移し、発光層17Gは緑(G)色の光を発生する。
【0534】
また、発光層17BのTADFの一重項励起状態(Sbt1)の一重項励起エネルギーは、FRETプロセスにより、発光層17Bの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sbf1)に移動する。発光層17Gの一重項準位(Sbf1)にエネルギー移動した一重項励起子は、発光層17Gの蛍光のゲスト材料の準位Sgf1から準位Sgf0へと輻射遷移し、発光層17Gは緑(G)色の光を発生する。
【0535】
発光層17BのTADFのゲスト材料の発光スペクトルは、発光層17Rのゲスト材料の吸収スペクトルと少なくとも一部が一致している。また、好ましくは、発光層17Bの蛍光のゲスト材料の発光スペクトルは、発光層17Rのゲスト材料の吸収スペクトルと少なくとも一部が一致している。また、発光層17BのTADFの一重項励起準位(Sbt1)は、発光層17Rの蛍光の一重項励起準位(Srf1)よりも高い準位となる関係になるように各材料が選定されている。また、発光層17Bの蛍光の一重項励起準位(Sbf1)は、発光層17Rの蛍光の一重項励起準位(Srf1)よりも高い準位となる関係になるように各材料が選定されている。
【0536】
発光層17RのTADFのゲスト材料は、三重項励起子の準位Trt1を生成する。生成された三重項励起子は、RISCプロセスにより一重項励起状態の準位Sbt1に変換される。
【0537】
発光層17RのTADFの一重項励起状態(Sbt1)の一重項励起エネルギーは、FRETプロセス(FRETb)により、発光層17Rの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Srf1)に移動する。発光層17Rにエネルギー移動した一重項励起子は蛍光のゲスト材料の準位Srf1から準位Srf0へと輻射遷移し、発光層17Rは赤(R)色の光を発生する。
【0538】
また、発光層17Rの蛍光の一重項励起状態(Sbf1)の一重項励起エネルギーは、FRETプロセスにより、発光層17Rの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Srf1)に移動する。発光層17Rにエネルギー移動した一重項励起子は蛍光のゲスト材料の準位Srf1から準位Srf0へと輻射遷移し、発光層17Rは赤(R)色の光を発生する。
【0539】
図45において、画素37Gの発光層17Rは改質され改質層96aとなっている。したがって、TADFのゲスト材料および蛍光のゲスト材料の発光は発生しない。画素37Gの発光層17Bの励起エネルギーは、発光層17Gに移動し、発光層17Gが発光する。
【0540】
画素37Gの発光層17BtのTADFのゲスト材料は、三重項励起子の準位Tt1を生成する。発光層17BtのTADFのゲスト材料は、RISCプロセスにより、三重項励起状態(Tr1)から一重項励起状態(St1)に励起する。
【0541】
発光層17BtのTADF分子の一重項励起状態(St1)の一重項励起エネルギーは、FRETプロセス(FRETb)により、発光層17Bfの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sb1)に移動する。
【0542】
発光層17Bfの蛍光のゲスト材料の発光スペクトルと、発光層17Gの蛍光のゲスト材料の吸収スペクトルとは少なくとも一部が重なるようにゲスト材料を選定している。発光層17Bfの一重項準位(Sb1)は、発光層17Gの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sg1)よりも高い材料を選定する。したがって、FRETプロセス(FRETg)により、発光層17Bfの一重項準位(Sb1)の一重項励起エネルギーは、発光層17Gの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sg1)に移動することができる。
【0543】
発光層17Gの蛍光のゲスト材料の発光スペクトルと、発光層17Rの蛍光のゲスト材料の吸収スペクトルとは少なくとも一部が重なるようにゲスト材料を選定している。発光層17Gの一重項準位(Sg1)は、発光層17Rの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sr1)よりも高い材料を選定する。したがって、FRETプロセス(FRETr)により、発光層17Gの一重項準位(Sg1)の一重項励起エネルギーは、発光層17Rの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sr1)に移動することができる。
【0544】
図45において、画素37Bの発光層17Rは改質され、改質層96aとなっている。また、画素37Bの発光層17Gは改質され、改質層96bとなっている。したがって、画素37Bの発光層17R、および発光層TADFのゲスト材料および蛍光のゲスト材料は改質され発光しない。発光層17Bの励起エネルギーが発生する場合は、エネルギーは発光層17Gに移動し、発光層17Gが発光する。
【0545】
発光層17Bの蛍光のゲスト材料の発光スペクトルと、発光層17Bの蛍光のゲスト材料の吸収スペクトルとは少なくとも一部が重なるようにゲスト材料を選定している。発光層17BのTADFの一重項準位(Sbt1)は、発光層17Gの蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sbf1)よりも高い材料を選定する。したがって、FRETプロセス(FRETb)により、発光層17BのTADFの一重項準位(Sbt1)の一重項励起エネルギーは、蛍光のゲスト材料の一重項励起状態(Sbf1)に移動することができる。
【0546】
画素37Bは、正孔は、主として改質された発光層17Rのホスト材料、発光層17Gのホスト材料中を移動し、発光層17Bで電子と結合する。発光層17Bにエネルギー移動した一重項励起子は蛍光のゲスト材料の準位Sbf1から準位Sbf0へと輻射遷移し、発光層17Bは青(B)色の光を発生する。
【0547】
本発明の実施例において、発光層17BtのTADFのゲスト材料としてACRSAが例示され、発光層17Bfの蛍光のゲスト材料としてTBPeが例示される。
発光層17GのTADFのゲスト材料としてPXZ-TRZが例示され、蛍光のゲスト材料としてTTPAが例示される。
発光層17RのTADFのゲスト材料としてtri-PXZ-TRZが例示され、蛍光のゲスト材料としてDBPが例示される。
【0548】
本発明の明細書および図面では、ゲスト材料を38とし、ホスト材料を39としている。発光層17Btはゲスト材料38Btとホスト材料39Btで構成されている。発光層17Bfはゲスト材料38Bfとホスト材料39Bfで構成されている。発光層17Gはゲスト材料38Gとホスト材料39Gで構成されている。発光層17Rはゲスト材料38Rとホスト材料39Rで構成されている。
【0549】
図47の本発明の実施例では、発光層17RはTADFのゲスト材料38Rtと蛍光のゲスト材料38Rfとホスト材料39Rとが共蒸着されている。発光層17GはTADFのゲスト材料38Gtと蛍光のゲスト材料38Gfとホスト材料39Gとが共蒸着されている。発光層17Bfは蛍光のゲスト材料38Bfとホスト材料39Bfとが共蒸着され、発光層17Btは蛍光のゲスト材料38Btとホスト材料39Btとが共蒸着されている。
また、画素37Gの発光層17Rが改質され、画素37Bの発光層17Rと発光層17Gが改質されている。
図46において、発光層は、TADFのゲスト材料と蛍光のゲスト材料のうち少なくとも一方のゲスト材料を含有する。
【0550】
図43は、
図46の発光層17の一実施例の構成図である。発光層17RはTADFのゲスト材料38Rt、蛍光のゲスト材料38Rf、ホスト材料39Rで構成される。
発光層17RはTADFのゲスト材料38Rt、蛍光のゲスト材料38Rf、ホスト材料39Rで構成される。
発光層17GはTADFのゲスト材料38Gt、蛍光のゲスト材料38Gf、ホスト材料39Gで構成される。
【0551】
発光層17Bfは蛍光のゲスト材料38Bf、ホスト材料39Bfで構成される。発光層17Btは蛍光のゲスト材料38Bt、ホスト材料39Btで構成される。
【0552】
発光層17Btでは電荷再結合をTADF分子上で生じさせることにより、三重項励起子を生成する。生成された三重項励起子は、TADF分子内でのRISCプロセスにより一重項励起状態に変換される。
【0553】
発光層17Bfにエネルギーアクセプターとして機能する蛍光のゲスト材料38Bfがドーピングされている場合、TADF分子の一重項励起エネルギーは、FRETbプロセスによりに青色の蛍光のゲスト材料38Bfにエネルギー移動する。
【0554】
FRETbプロセスにより青色の蛍光分子に移動した一重項励起子エネルギーは、さらにFRETgプロセスにより緑色の発光層17Gの緑色の蛍光のゲスト材料38GfあるいはTADFのゲスト材料38Gtに移動する。
【0555】
FRETgプロセスにより緑色の発光層17Gの緑色の蛍光のゲスト材料38GfあるいはTADFのゲスト材料38Gtに移動したエネルギーはFRETrプロセスにより、赤色の発光層17Rの赤色の蛍光のゲスト材料38RfあるいはTADFのゲスト材料38Rtに移動する。また、TADFのゲスト材料38Rtに移動したエネルギーは、蛍光のゲスト材料38Rfに移動する。蛍光のゲスト材料38Rfに移動したエネルギーは、Sr1準位からSr0準位に移動して赤(R)の波長帯域の光が発生する。
なお、以上のエネルギー移動は、各発光層が改質されていない場合である。
【0556】
たとえば、発光層17Rが改質されている場合は、FRETrプロセスは発生せず、TADFのゲスト材料38Gtに移動したエネルギーは、蛍光のゲスト材料38Gfに移動し、蛍光のゲスト材料38Gfに移動したエネルギーは、Sg1準位からSg0準位に移動して緑(G)の波長帯域の光が発生する。
【0557】
たとえば、発光層17Rおよび発光層17Gが改質されている場合は、FRETgプロセスは発生せず、蛍光のゲスト材料38Bfに移動したエネルギーは、Sb1準位からSb0準位に移動し、青(B)の波長帯域の光が発生する。
【0558】
図43の実施例は、青色の発光層が発光層17Btと発光層17Bfに分離された実施例である。
図44は、青色の発光層17Bにおいて、ホスト材料39BとTADFのゲスト材料38Gtと蛍光のゲスト材料38Gfが共蒸着されている構成である。他の発光層(発光層17G、発光層17B)は
図43と同様である。
【0559】
発光層17Bでは電荷再結合をTADF分子上で生じさせることにより、三重項励起子を生成する。生成された三重項励起子は、TADF分子内でのRISCプロセスにより一重項励起状態に変換される。
【0560】
発光層17Bにエネルギーアクセプターとして機能する蛍光のゲスト材料38Bfがホスト材料39Bと共蒸着されている場合、TADFのゲスト材料38Btの一重項励起エネルギーは、FRETbプロセスによりに青色の蛍光のゲスト材料38Bfにエネルギー移動する。
【0561】
FRETbプロセスにより青色の蛍光分子に移動した一重項励起子エネルギーは、さらにFRETgプロセスにより緑色の発光層17Gの緑色の蛍光のゲスト材料38GfあるいはTADFのゲスト材料38Gtに移動する。
【0562】
FRETgプロセスにより緑色の発光層17Gの緑色のTADFのゲスト材料38Gtあるいは蛍光のゲスト材料38Gfに移動したエネルギーは、FRETrプロセスにより、赤色の発光層17Rの赤色の蛍光のゲスト材料38RfあるいはTADFのゲスト材料38Rtに移動する。あるいは、緑色の発光層17Gの緑色のTADFのゲスト材料38Gtの励磁エネルギーは、蛍光のゲスト材料38Gfにエネルギー移動し、移動したエネルギーはFRETrプロセスにより、赤色の発光層17Rの赤色の蛍光のゲスト材料38RfあるいはTADFのゲスト材料38Rtに移動する。
【0563】
TADFのゲスト材料38Rtに移動したエネルギーは、蛍光のゲスト材料38Rfに移動する。蛍光のゲスト材料38Rfに移動したエネルギーは、Sr1準位からSr0準位に移動して赤(R)の波長帯域の光が発生する。また、緑色の発光層17Gの緑色のゲスト材料38Gから赤色の発光層17Rの蛍光のゲスト材料38Rfに移動した励磁エネルギーは、Sr1準位からSr0準位に移動して赤(R)の波長帯域の光が発生する。
なお、以上のエネルギー移動は、各発光層が改質されていない場合である。
【0564】
たとえば、発光層17Rが改質されている場合は、FRETrプロセスは発生せず、TADFのゲスト材料38Gtに移動したエネルギーは、蛍光のゲスト材料38Gfに移動し、蛍光のゲスト材料38Gfに移動したエネルギーは、Sg1準位からSg0準位に移動して緑(G)の波長帯域の光が発生する。
【0565】
また、青色のゲスト材料38Bから、蛍光のゲスト材料38Gfに移動したエネルギーは、Sg1準位からSg0準位に移動して緑(G)の波長帯域の光が発生する。
【0566】
発光層17Rおよび発光層17Gが改質されている場合は、FRETgプロセスは発生せず、蛍光のゲスト材料38Bfに移動したエネルギーは、Sb1準位からSb0準位に移動し、青(B)の波長帯域の光が発生する。
【0567】
図43は、発光層17Gに、ホスト材料39GとTADFのゲスト材料38Gtと蛍光のゲスト材料38Gfとが共蒸着されている。また、発光層17Rに、ホスト材料39BとTADFのゲスト材料38Btと蛍光のゲスト材料38Bfとが共蒸着されている。
【0568】
発光層17Rtの蛍光のゲスト材料38Rtに移動したエネルギーはFRETrプロセスにより、発光層17Rfの蛍光のゲスト材料38RfあるいはTADFのゲスト材料38Rtに移動する。あるいは、緑色の発光層17Gの緑色のTADFのゲスト材料38Gtの励磁エネルギーは、蛍光のゲスト材料38Gfにエネルギー移動し、移動したエネルギーはFRETrプロセスにより、赤色の発光層17Rの赤色の蛍光のゲスト材料38RfあるいはTADFのゲスト材料38Rtに移動する。
【0569】
TADFのゲスト材料38Rtに移動したエネルギーは、FRETrプロセスにより蛍光のゲスト材料38Rfに移動する。また、発光層17RtのTADFのゲスト材料38Rtで電荷結合が生じることにより、三重項励起子を生成する。生成された三重項励起子(三重項励起エネルギー)は、TADF分子内でのRISCプロセスにより一重項励起状態(一重項励起エネルギー)に変換される。発光層17Rtで発生した一重項励起エネルギーは、FRETgにより発光層17Rfの蛍光のゲスト材料38Rfにエネルギー移動する。
【0570】
蛍光のゲスト材料38Rfに移動したエネルギーは、Sr1準位からSr0準位に移動して赤(R)の波長帯域の光が発生する。また、緑色の発光層17Gtの緑色のゲスト材料38Gtから赤色の発光層17Rfの蛍光のゲスト材料38Rfに移動した励磁エネルギーは、Sr1準位からSr0準位に移動して赤(R)の波長帯域の光が発生する。
なお、以上のエネルギー移動は、各発光層が改質されていない場合である。
【0571】
発光層17Rt、発光層17Rfが改質されている場合は、FRETrプロセスは発生せず、TADFのゲスト材料38Gtに移動したエネルギーは、蛍光のゲスト材料38Gfに移動し、蛍光のゲスト材料38Gfに移動したエネルギーは、Sg1準位からSg0準位に移動して緑(G)の波長帯域の光が発生する。
【0572】
また、青色のゲスト材料38Bfから、蛍光のゲスト材料38Gfに移動したエネルギーは、Sg1準位からSg0準位に移動して緑(G)の波長帯域の光が発生する。
【0573】
発光層17Rt、発光層17Rfおよび発光層17Gt、発光層17Gfが改質されている場合は、FRETgプロセスは発生せず、蛍光のゲスト材料38Bfに移動したエネルギーは、Sb1準位からSb0準位に移動し、青(B)の波長帯域の光が発生する。
【0574】
図47は、本発明の第1の実施例におけるEL表示パネルの断面および構成図である。
図47において、画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rは改質されている。また、画素電極15Bの上方の発光層17Gは改質されている。
【0575】
図47の画素電極15Rの上方の発光層17Rは、赤色で発光する。画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rは改質されているため発光しない。画素電極15Gの上方の発光層17Gは、緑色で発光する。画素電極15Bの上方の発光層17Gは改質されているため発光しない。
【0576】
図47の画素電極15Rの上方の発光層17Rが含んでいるゲスト材料の多くは発光可能であり、画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rが含んでいるゲスト材料のほとんどは消光するか、または励起されない。
【0577】
画素電極15Rの上方の発光層17Rは、画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rと比較して、正孔移動度と正孔注入効率のうち少なくとも一方が小さい。
【0578】
画素電極15Rおよび画素電極15Gの上方の発光層17Gは、画素電極15Bの上方の発光層17Gと比較して、発光するゲスト材料を、より高い濃度で含有している。画素電極15Bの上方の発光層17Gのゲスト材料のほとんどは消光するか、励起されない。
【0579】
または、画素電極15Rおよび画素電極15Gの上方の発光層17Gは、画素電極15Bの上方の発光層17Gと電気的特性が異なっている。画素電極15Rおよび画素電極15Gの上方の発光層17Gは、画素電極15Bの上方の発光層17Gと比較して、正孔移動度と正孔注入効率のうち少なくとも一方がより小さい。
【0580】
画素電極15Rおよび画素電極15Gの上方の発光層17Gが含んでいるゲスト材料の多くは発光可能であり、画素電極15Bの上方の発光層17Gが含んでいる発光層17Gのゲスト材料のほとんどは消光するか、励起されない。
【0581】
画素電極15Gおよび画素電極15Bの上方の発光層17Rは、画素電極15Rの上方の発光層17Rと比較して、発光層17Rの正孔移動度と正孔注入効率がのうち少なくとも一方がより大きい。画素電極15Bの上方の発光層17Gは、画素電極15Rおよび画素電極15Gの上方の発光層17Gと比較して、発光層17Gの正孔移動度と正孔注入効率がのうち少なくとも一方がより大きい。
【0582】
図44は、発光層17RはTADFのゲスト材料38Rt、蛍光のゲスト材料38Rf、ホスト材料39Rで構成されている。発光層17GはTADFのゲスト材料38Gt、蛍光のゲスト材料38Gf、ホスト材料39Gで構成されている。発光層17Bfは蛍光のゲスト材料38Bf、ホスト材料39Bfで構成されている実施例であった。
【0583】
図48は、本発明の第11の実施例におけるEL表示パネルの説明図である。また、
図49は、本発明の第11の実施例におけるEL表示パネルの構造図である。
【0584】
発光層17Rは、発光層17Rfと発光層17Rtで構成されている。発光層17Rfは、蛍光のゲスト材料38Rf、ホスト材料39Rfで構成される。発光層17Rtは、TADFのゲスト材料38Rt、ホスト材料39Rtで構成される。
【0585】
発光層17Gは、発光層17Gfと発光層17Gtで構成されている。発光層17Gfは、蛍光のゲスト材料38Gf、ホスト材料39Gfで構成される。発光層17Gtは、TADFのゲスト材料38Gt、ホスト材料39Gtで構成される。
【0586】
発光層17Bは、発光層17Bfと発光層17Btで構成されている。発光層17Bfは、蛍光のゲスト材料38Bf、ホスト材料39Bfで構成される。発光層17Btは、TADFのゲスト材料38Bt、ホスト材料39Btで構成される。
【0587】
発光層17Btでは電荷再結合をTADF分子上で生じさせることにより、三重項励起子を生成する。生成された三重項励起子は、TADF分子内でのRISCプロセスにより一重項励起状態に変換される。
発光層17Bfと発光層17Bfは積層されているため、発光層17Btと発光層17Bf間に、FRETbプロセスが発生する。
【0588】
発光層17Bfにエネルギーアクセプターとして機能する蛍光のゲスト材料38Bfがドーピングされている場合、TADF分子の一重項励起エネルギーは、FRETbプロセスによりに青色の蛍光のゲスト材料38Bfにエネルギー移動する。
【0589】
FRETbプロセスにより青色の蛍光分子に移動した一重項励起子エネルギーは、発光層17GtのTADFのゲスト材料38Gt、または発光層17Gfのゲスト材料38Gfに移動する。発光層17GtのTADFのゲスト材料38Gtに移動したエネルギーは、FRETgプロセスにより緑色の発光層17Gfの緑色の蛍光のゲスト材料38Gfに移動する。
発光層17Gの緑色の蛍光のゲスト材料38Gf、またはTADFのゲスト材料38Gtのエネルギーは、発光層17Gt、発光層17Gfに移動する。
【0590】
FRETgプロセスにより緑色の発光層17Gの緑色の蛍光のゲスト材料38GfあるいはTADFのゲスト材料38Gtに移動したエネルギーはFRETrプロセスにより、赤色の発光層17Rの赤色の蛍光のゲスト材料38RfあるいはTADFのゲスト材料38Rtに移動する。また、TADFのゲスト材料38Rtに移動したエネルギーは、蛍光のゲスト材料38Rfに移動する。蛍光のゲスト材料38Rfに移動したエネルギーは、Sr1準位からSr0準位に移動して赤(R)の波長帯域の光が発生する。
なお、以上のエネルギー移動は、各発光層が改質されていない場合である。
【0591】
図50の実施例では、緑色の画素37Gの発光層17Rf、発光層17Rtが改質されている。したがって、発光層17Btあるいは発光層17BfのエネルギーはFRETプロセス等により発光層17Gfに移動し、また、発光層17GtのエネルギーはFRETプロセス等により、発光層17Gfに移動し、発光層17Gfが緑色で発光する。
また、
図50の実施例では、青色の画素37Bの発光層17Rf、発光層17Rt、発光層17Gtが改質されている。
【0592】
発光層17Btでは電荷再結合をTADF分子上で生じさせることにより、三重項励起子を生成する。生成された三重項励起子は、TADF分子内でのRISCプロセスにより一重項励起状態に変換される。
発光層17Bfと発光層17Bfは積層されているため、発光層17Btと発光層17Bf間に、FRETプロセスが発生し、発光層17Bfが発光する。
発光層17Gfには、励磁エネルギーが与えられないか、ほとんどエネルギーがないため、発光しない。
【0593】
図43、
図44、
図48等では、発光層17にTADF材料のゲスト材料、蛍光材料のゲスト材料を使用した実施例である。
図4では、発光層17にレーザ光59aを照射し、発生する光(燐光または蛍光)をモニターし、発光層17を改質させる実施例を説明した。レーザ光59aによる発光層17の改質は、
図43、
図44、
図48等にも適用できる。
【0594】
図47の本発明にEL表示パネルは、
図4(a)のように配置する。レーザ光59aの照射により発光層17から発生した発光71は、レーザ窓63bを通過し、波長フィルタ75を所定の波長の光が通過して、光検出回路76cに入射する。
【0595】
図4(a)において、レーザ窓63bを透過する光は、発光71だけでなく、レーザ光59aも透過する。光バンドパスミラー72aはレーザ光59aと透過し、発光71と反射させる。光バンドパスミラー72aを反射した光は、ミラー73aで反射され、リレーレンズ74bで中継される。光バンドパスミラー72は、所定の帯域の波長の光を反射する光学的ミラーである。
【0596】
波長フィルタ75は所定範囲の帯域の発光71を透過させる。発光71の波長帯域は、レーザ光59aの照射による発光層17の改質状態により変化する。したがって、改質状態を把握するためには、波長フィルタ75により一定の帯域を透過する光の強度を測定することが有効である。
波長フィルタ75を透過した発光71は、光検出回路76aのホトダイオード(PD)で、発光層17からの発光71を光-電気変換する。
【0597】
赤色の画素37R、緑色の画素37G、青色の画素37Bには、ファイン蒸着マスクを使用せず、画素間に連続した赤色の発光層17Rが形成される。緑色の画素37G、青色の画素37Bの発光層17Rには、レーザ光59aが照射され、改質層96aとなる。
【0598】
光検出回路76aに入射する発光71の強度は、TFT基板52の発光層17の改質状態で変化する。レーザ光59aを照射された発光層17から発生する発光71は初期では大きく、レーザ光59aで発光層17改質されると発生する発光71の強度が低下、あるいは変化していく。また、発光71の波長も変化する。
【0599】
発光層17Rには、赤色のTADFのゲスト材料38Rt、赤色の蛍光材料の38Rfが含有されている。レーザ光59aの照射により、赤色のTADFのゲスト材料38Rt、赤色の蛍光材料の38Rfが励起されて発光する。ゲスト材料38Rtと蛍光材料の38Rfの発光波長(帯域)および発光強度は異なる。
【0600】
発光層17Rに照射したレーザ光59aにより、赤色のTADFのゲスト材料38Rt、赤色の蛍光材料の38Rfからは発光71は変化し、発光71の変化に対応して、レーザ光59aの強度、レーザ光59aの照射位置、レーザ光59aのオンオフ(継続、停止)が制御される。
【0601】
発光71は、燐光または蛍光がある。燐光と蛍光とは、発生するまでの遅延時間が異なる。したがって、レーザ光59aを発光層17に照射後、発光71の測定開始時間を設定することにより、発生した発光71を燐光と蛍光に分離し、燐光または蛍光の強度、波長帯域、強度の変化、強度の変化割合を検出することができる。
【0602】
また、レーザ光59aの照射により、燐光材料が発生する燐光と、蛍光材料が発生する蛍光とは、波長または波長帯域が異なることが多い。したがって、燐光と蛍光を分離して、光検出回路76aで検出する、あるいは測定することにより、より良好に改質層96に照射するレーザ光59aの強度の変更、オンオフを制御できる。
【0603】
以上のことは、TADF材料に関しても同様である。TADF材料にレーザ光発光71は、蛍光材料または燐光材料と異なる発光特性の場合がある。TADF材料の場合も、発生した発光71をTADFの発生光と、他の光とに分離し、発光の強度、波長帯域、強度の変化、強度の変化割合を検出することができる。また、TADFの発生光と他の光とを分離して、光検出回路76aで検出する、あるいは測定することにより、より良好に改質層96に照射するレーザ光59aの強度の変更、オンオフを制御できる。
【0604】
発光71の強度が所定値以下となった場合に、レーザ光59aの照射を停止するように構成することにより、発光層17の改質状態を一定にすることができる。また、照射するレーザ光59aの強度を変化あるいは変更する。もしくは、レーザ光59aのパルスの照射期間、照射するエネルギーの強度あるいはパルス幅を変化あるいは変更する。
発光71の強度等が所定値以下となると、レーザ光59aは次の画素の発光層17に照射される。あるいはレーザ光59aの照射を停止する。
【0605】
光検出回路76aに入射する発光71の強度は、TFT基板52の発光層17の改質状態で変化する。レーザ光59aを照射された発光層17から発生する発光71は初期では大きく、レーザ光59aで発光層17改質されると発生する発光71の強度が低下していく。発光71の強度が所定値以下となった場合に、レーザ光59aの照射を停止するように構成することにより、発光層17の改質状態を一定にすることができる。また、照射するレーザ光59aの強度を変化あるいは変更する。もしくは、レーザ光59aのパルスの照射期間、照射するエネルギーの強度あるいはパルス幅を変化あるいは変更する。
発光71の強度等が所定値以下となると、レーザ光59aは次の画素の発光層17に照射される。あるいはレーザ光59aの照射を停止する。
【0606】
なお、発光層17に照射するレーザ光59aとは別に、発光層17を励起させる光を別途発生させ、前記光を発光層17に照射させてもよい。たとえば、蛍光発光用のレーザ光の発生装置を別途設置し、前記レーザ光を改質する発光層17に照射してもよい。
【0607】
緑色の画素37G、青色の画素37Bの発光層17Rの改質後、ファイン蒸着マスクを使用せず、画素間に連続した緑色の発光層17Gが形成される。青色の画素37Bの発光層17Gには、レーザ光59aが照射され、改質層96bとなる。
【0608】
青色の画素37Bの発光層17Gの改質は、改質層96aと同様であるため省略するが、青色の画素37Bの発光層17GはTADFのゲスト材料38Gtと蛍光のゲスト材料38Gfを含有する。レーザ光59aの照射により、TADFのゲスト材料38Gtと蛍光のゲスト材料38Gfは、各固有の発光71が発生する。これらの発光71を検出、あるいは測定してレーザ光59aを制御する。
青色の画素37Bの発光層17Gを改質後、ファイン蒸着マスクを使用せず、画素間に連続した青色の発光層17Bが形成される。
【0609】
レーザ光59aは波長が固定波長のため、発生する発光71の波長と分離しやすい。発光71の波長検出が容易である。しかし、改質層96aと改質層96bを改質させる際に発生する発光71の波長帯域、波長、強度は異なる。改質層96aと改質層96bとに照射する際に発生する発光71は、発光層17が発生する発光71の波長に対応させて切り替える。あるいは波長フィルタ75を取り替えることが好ましい。
【0610】
光制御装置78でレーザ装置58が出力するレーザ光59の強度をモニターすることにより、発光層17に照射するレーザ光強度を、安定した一定値にすることができるため、改質対象の画素の発光層17を精度よく、消光状態にすることができる。
【0611】
レーザ光59aがTFT基板52に順次、照射できるように、移動ステージ51を動作させてTFT基板52の位置を変化させる。もしくは、ガルバノミラー62などを用いて、レーザ光59aをTFT基板52上に走査する。
なお、画素37が透過性を有する場合は、
図11等で説明した方式を採用することで、発光層17を改質できることは言うまでもない。
【0612】
図11の実施例は、TFT基板52の裏面から放射される発光71を検出し、検出した発光71強度から、発光層17等の改質状態をモニターし、あるいは、発光層17へのレーザ光59bの強度などを変化させる。発光71は開口部291あるいは光透過部292を通過等して、A/D変換回路80に入射する。
【0613】
発光71は、開口部291からTFT基板52の裏面から出射される。
図4と同様に、
図11に図示するように光検出装置77、光制御装置78を配置する。発光71の強度が所定値以下となると、レーザ光59bは次の画素の発光層17に照射される。あるいは、レーザ光59bの照射を停止する。
以上の事項は、
図48、
図49、
図50の本発明のEL表示パネル、EL表示パネルの製造方法においても適用できる。
【0614】
図50において、赤色の画素37R、緑色の画素37G、青色の画素37Bには、ファイン蒸着マスクを使用せず、画素間に連続した赤色の発光層17Rfが形成される。続いて、赤色の画素37R、緑色の画素37G、青色の画素37Bには、ファイン蒸着マスクを使用せず、画素間に連続した赤色の発光層17Rtが形成されて、発光層17Rfと発光層17Rtが積層される。
緑色の画素37G、青色の画素37Bの発光層17Rf、発光層17Rtには、レーザ光59aが照射され、改質層96aとなる。
【0615】
なお、画素間に連続した赤色の発光層17Rfを形成し、発光層17Rtを形成し、発光層17Rfと発光層17tとを積層した後、レーザ光59aを照射するとしたが、これに限定するものではない。たとえば、画素間に連続した赤色の発光層17Rfを形成し、レーザ光59aを照射して改質層96aとし、次に、画素間に連続した赤色の発光層17Rtを形成し、レーザ光59aを照射して、発光層17Rtを改質層96aとしても良いことは言うまでもない。
【0616】
光検出回路76aに入射する発光71の強度は、TFT基板52の発光層17Rf、発光層17Rtの改質状態で変化する。発光層17Rfが改質される際に発生する発光71と、発光層17Rtが改質される際に発生する発光71とは、発光強度、発光波長、発光変化速度等が異なることが多い。したがって、発光71の経時変化より、発光層17Rfと発光層17Rtとの改質状態をモニターし、レーザ光59aの制御を調整あるいは変化させる。
【0617】
また、発光層17Rfと発光層17Rtが吸収する光波長(レーザ光59a等)が異なる場合等は、発光層17Rfに照射する光波長と、発光層17Rtに照射する光波長とを異ならせることが好ましい。発光層17Rfと発光層17Rtとが積層された状態では、異なる2種類以上の光波長を発光層17Rに照射する。異なる2種類以上の光波長の強度、オンオフは独立して制御、調整できるように構成する。
【0618】
発光層17Rに照射したレーザ光59aにより、発光層17Rt、発光層17Rtからは発光71は変化し、発光71の変化に対応して、レーザ光59aの強度、レーザ光59aの照射位置、レーザ光59aのオンオフ(継続、停止)が制御される。
【0619】
発光層17Rtと発光層17Rtとが発生する発光71を分離して、光検出回路76aで検出する、あるいは測定することにより、より良好に、発光層17Rtと発光層17Rtに照射するレーザ光59aの強度の変更、オンオフを制御できる。
【0620】
発光層17Rtの発光71と発光層17Rtの発光71とのいずれかの発光71の強度が所定値以下となった場合に、レーザ光59aの照射を停止するように構成することにより、発光層17Rの改質状態を一定にすることができる。また、照射するレーザ光59aの強度を変化あるいは変更する。もしくは、レーザ光59aのパルスの照射期間、照射するエネルギーの強度あるいはパルス幅を変化あるいは変更させる。
発光71の強度等が所定値以下となると、レーザ光59aは次の画素の発光層17に照射される。あるいはレーザ光59aの照射を停止する。
【0621】
なお、発光層17に照射するレーザ光59aとは別に、発光層17Rf、発光層Rtを励起させる光を別途発生させ、前記光を発光層17に照射させてもよい。たとえば、発光層17Rf用のレーザ光の発生装置と、発光層17Rt用のレーザ光の発生装置を別途設置し、前記レーザ装置からのレーザ光を改質する発光層17に照射してもよい。
【0622】
緑色の画素37G、青色の画素37Bの発光層17Rf、発光層17Rtの改質後、ファイン蒸着マスクを使用せず、画素間に連続した緑色の発光層17Gf、発光層17Gtが形成される。青色の画素37Bの発光層17Gtには、レーザ光59aが照射され、改質層96bとなる。
【0623】
青色の画素37Bの発光層17Gfは、発光する可能性はあるが、青色の画素37Bの発光層17Gtが改質層96bとなっており、改質層96Gtから発光層17Gfへのエネルギー移動はなく、また、発光層17GfのHOMO、LUMOレベルが発光の条件にならないように、構成されているため、青色の画素37Bの発光層17Gfは発光しない。
【0624】
青色の画素37Bの発光層17Gtを改質後、ファイン蒸着マスクを使用せず、画素間に連続した青色の発光層17Bfおよび青色の発光層17Btが形成される。
【0625】
なお、
図1、
図26、
図28、
図32、
図34、
図36、
図38、
図43、
図44、
図48等の実施例において、蛍光のゲスト材料38を使用するとしたが、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、蛍光のゲスト材料38の代わりに燐光材料からなるゲスト材料38を使用しても良いことは言うまでもない。また、蛍光材料と燐光材料の両方のゲスト材料を発光層17に使用してのよい。また、各発光層で、燐光材料と蛍光材料を選択して使用してもよい。
以上のように、本発明は、レーザ光などを照射し、発光層17などを改質あるいは除去させて非発光状態とすることを技術思想としている。
実施の形態の各々の図で述べた内容(一部でもよい)を様々な電子機器に適用することができる。具体的には、電子機器の表示部に適用することができる。
【0626】
そのような電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機又は電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが例示される。
【0627】
図51(a)は、本発明のEL表示パネル371を用いたディスプレイの斜視図である。EL表示パネル371は筐体372に取り付けられている。
図51(a)に示すディスプレイは様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能を有する。
図51(b)は、本発明のEL表示パネル371を用いたスマートフォンの斜視図である。EL表示パネル371は筐体372に取り付けられている。
【0628】
本実施の形態に係るEL表示パネルを用いたEL表示装置とは、情報機器などのシステム機器を含む概念である。表示装置の概念は、情報機器などのシステム機器を含む。
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
【0629】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0630】
本開示は、EL表示装置、EL表示パネルに有用である。特に、アクティブ型の有機ELフラットパネルディスプレイに有用である。また、本発明のEL表示パネルの製造方法、製造装置として有用である。
【符号の説明】
【0631】
12 反射膜
14 絶縁膜
15 画素電極
16 正孔輸送層(HTL)
17 発光層(EML)
18 電子輸送層(ETL)
19 カソード電極
20 封止層
21 TFT(トランジスタ)
22 EL素子
23 コンデンサ
27 封止フィルム
28 平坦化膜
29 円偏光板(円偏光フィルム)
31 ゲートドライバIC(回路)
32 ソースドライバIC(回路)
34 ゲート信号線
35 ソース信号線
36 表示画面
37 画素
38 ゲスト材料
39 ホスト材料
52 TFT基板
54 真空ポンプ
55 排気ダクト
56 蒸着室
58 レーザ装置
59 レーザ光
60 光量調整フィルタ
61 シリンドリカルレンズ
62 ガルバノミラー
63 レーザ窓
64 fθレンズ
65 金属蒸発源
66 有機蒸発源
71 燐光・蛍光
72 光分離ミラー
73 ミラー
74 レンズ
75 フィルタ
76 光検出回路
77 光検出装置
78 光制御装置
79 レーザ制御回路
80 ホトダイオード(光センサ)
81 開口部
82 光透過部
84 オペアンプ
91 レーザスポット
92 スリットマスク
94 透明基板
95 土手
111 チャンバー室
112 ロードロック室
113 搬入室
114 搬出室
115 中央室
116 チャンバー室
118 レーザ装置室
121 黒色樹脂
122 LED
123 ベース基板
371 EL表示パネル
372 筐体