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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】ワイヤレス充電前の車両の位置合わせ
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/90 20160101AFI20230519BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20230519BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230519BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20230519BHJP
   B60L 53/38 20190101ALI20230519BHJP
【FI】
H02J50/90
H02J50/12
H02J7/00 301D
H02J7/00 P
B60L53/12
B60L53/38
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021500391
(86)(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 US2019039161
(87)【国際公開番号】W WO2020013989
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】16/030,036
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514287443
【氏名又は名称】インダクトイーブイ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ロング、ブルース リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ダガ、アンドリュー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】マクマホン、フランシス ジェイ.
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-005523(JP,A)
【文献】特開2007-010639(JP,A)
【文献】特開2010-246348(JP,A)
【文献】国際公開第2016/209503(WO,A1)
【文献】特表2009-523402(JP,A)
【文献】特開昭63-115207(JP,A)
【文献】特表2016-541223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J50/00-50/90
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
G05D1/00-1/12
G01S11/00-11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴誘導を使ったワイヤレス充電のための地上側ワイヤレス電力誘導コイルに車両を位置合わせする車両位置合わせシステムであって、
前記ワイヤレス電力誘導コイルへ充電用に前記車両を誘導するように駐車スロットの中心線に沿う、前記駐車スロットの中心線に平行であるが前記中心線からオフセットされる、または湾曲した軌跡に沿う、のうちの少なくとも1つのように設けられた送電線であって、当該送電線は、動作周波数を有する信号を漏洩する、送電線と、
前記車両が前記駐車スロット内で位置合わせされたまたは前記湾曲した軌跡に沿って移動するとき前記送電線の両側で対向しあうよう取り付けられた少なくとも2つの車載アンテナであって、当該アンテナは、前記送電線から漏洩する前記動作周波数を有した前記信号を検出する、少なくとも2つの車載アンテナと、
前記送電線の両側にある前記アンテナにより検出される信号間で相対信号位相を検出する信号処理回路と
を有し、
前記アンテナから検出された前記信号間の相対位相差は、前記送電線に対する前記車両の左右の位置合わせを表す
車両位置合わせシステム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、前記動作周波数は、61.5MHz未満であるシステム。
【請求項3】
請求項記載のシステムにおいて、前記動作周波数は、40.68MHzであるシステム。
【請求項4】
請求項記載のシステムにおいて、前記動作周波数は、13.56MHzであるシステム。
【請求項5】
請求項記載のシステムにおいて、前記車載アンテナは、前記車両の中心線から対称的にオフセットされるものであるシステム。
【請求項6】
請求項1記載のシステムにおいて、前記信号処理回路は、2若しくはそれ以上の車載アンテナ間で切り替えを行うアンテナスイッチを含むものであるシステム。
【請求項7】
請求項1記載のシステムにおいて、前記信号処理回路は、前記送電線の両側で対向しあう前記アンテナにより検出される信号間で相対信号位相を検出し、前記アンテナが前記送電線から等距離にない場合、位置合わせ誤差の極性と位置合わせ誤差の大きさとを決定するものであるシステム。
【請求項8】
請求項記載のシステムにおいて、さらに、
前記位置合わせ誤差の極性および前記位置合わせ誤差の大きさに応じ、前記送電線に対して前記車両の位置合わせを調整するよう運転者に指示する可視、可聴、または可触手段を有するものであるシステム。
【請求項9】
請求項1記載のシステムにおいて、さらに、
約1mWの電力レベルで前記送電線に高周波の励振を提供する連続波高周波源を有するものであるシステム。
【請求項10】
請求項記載のシステムにおいて、前記送電線は、特性インピーダンスが300オームの送電線を有するものであるシステム。
【請求項11】
請求項記載のシステムにおいて、前記送電線は、外部シールドにスロットを伴う50または75オームの同軸ケーブルと、その同軸ケーブルの特性インピーダンスにマッチングさせた終端抵抗とを有するものであるシステム。
【請求項12】
請求項1記載のシステムにおいて、前記信号処理回路は、
各前記アンテナにより検出された前記信号間の前記相対位相差を検出する周波数変調受信機であって、前記位相差は、前記アンテナが前記送電線から等距離にないとき、シーケンシャル・スイッチングにより誘導される、周波数変調受信機と、
前記周波数変調受信機の出力に存在するアンテナ・スイッチング周波数成分に対応した同期検定器と、
前記同期検定器の出力から位置合わせ誤差の極性を決定する電圧コンパレータと、
前記同期検定器の前記出力から位置合わせ誤差の大きさを決定する絶対値回路と
を有するものであるシステム。
【請求項13】
磁気共鳴誘導を使ったワイヤレス充電のための地上側ワイヤレス電力誘導コイルに車両を位置合わせする方法であって、
駐車スロットの中心線に沿う、前記駐車スロットの中心線に平行であるが前記中心線からオフセットされる、または湾曲した軌跡に沿う、のうちの少なくとも1つのように設けられた送電線が、動作周波数を有する信号を漏洩する工程であって、前記送電線は、前記ワイヤレス電力誘導コイルへ充電用に前記車両を誘導するように設けられる、工程と、
前記ワイヤレス電力誘導コイルによる充電のため、前記送電線に対して前記車両の左右を位置合わせする工程であって、当該位置合わせ工程は、前記車両が前記駐車スロット内で位置合わせされたまたは前記湾曲した軌跡に沿って移動するとき前記送電線の両側で対向しあうよう取り付けられた少なくとも2つの車載アンテナが、前記送電線から漏洩する前記動作周波数を有した前記信号を検出する工程を有する、工程と、
前記送電線に対する前記車両の左右の位置合わせを表すものとしての、前記アンテナから検出された前記信号間の相対位相差に基づき、前記ワイヤレス電力誘導コイルに対して前記車両の位置合わせを調整する工程と
を有する方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法において、前記送電線は、50または75オームの同軸ケーブルの外部シールドのスロットを通じて、前記信号を漏洩するものである方法。
【請求項15】
請求項13記載の方法において、前記漏洩する信号は、13.56MHzの動作周波数を有するものである方法。
【請求項16】
請求項13記載の方法において、前記位置合わせ工程は、
周波数変調受信機が、前記送電線の両側で対向しあう前記アンテナにより検出される信号間の相対信号位相を検出する工程であって、前記位相差は、前記アンテナが前記送電線から等距離にないとき、シーケンシャル・スイッチングにより誘導され、前記シーケンシャル・スイッチングは、前記アンテナ間で切り替えを行う前記周波数変調受信機の出力に存在するアンテナ・スイッチング周波数成分に対応した同期検定器を含む、工程と、
電圧コンパレータが前記同期検定器の出力から位置合わせ誤差の極性を決定する工程と、
絶対値回路が前記同期検定器の前記出力から位置合わせ誤差の大きさを決定する工程と
を有するものである方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この特許出願は、2018年7月9日付で出願された米国特許出願第16/030,036号に基づく優先権の利益を主張するものであり、この参照によりその内容が本明細書に組み込まれる。
【0002】
この特許出願は、車両位置合わせシステムについて説明したものであり、磁気共鳴誘導を使ったワイヤレス充電に関する。
【背景技術】
【0003】
共鳴誘導ワイヤレス充電では、共通のコイル軸に沿って変位された2つの同軸コイルから成る空芯トランス(空芯変圧器)を使用する。トランス(変圧器)連結係数およびワイヤレス電力伝送効率は、一次および二次コイルを軸合わせしないと損なわれてしまう。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2015/0260835号明細書
(特許文献2) 米国特許第4,219,821号明細書
(特許文献3) 中国特許出願公開第106981215号明細書
(特許文献4) 米国特許出願公開第2017/0136880号明細書
(特許文献5) 米国特許出願公開第2012/0262002号明細書
(特許文献6) 米国特許出願公開第2014/0217966号明細書
(特許文献7) 米国特許出願公開第2016/0318413号明細書
(特許文献8) 米国特許出願公開第2017/0274787号明細書
(特許文献9) 米国特許出願公開第2018/0111492号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両ワイヤレス充電の場合、これは、コイル軸合わせを確実に実現するため車両の駐車位置が精確かつ反復可能になるよう何らかの対策を講じなければならないことを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
車両位置合わせシステムは、磁気共鳴誘導を使ったワイヤレス充電のためのワイヤレス電力誘導コイルに車両を位置合わせする。本システムは動作周波数を有する信号を漏洩する送電線を含み、この送電線は、前記ワイヤレス電力誘導コイルを含む前記駐車スロット内に設けられる。前記送電線は、前記ワイヤレス電力誘導コイルへ充電用に前記車両を誘導する。前記車両が前記駐車スロット内で位置合わせされたとき前記送電線の両側、好ましくは前記送電線に対し対称的に取り付けられた少なくとも2つの車載アンテナは、前記送電線から漏洩する前記信号を検出する。信号処理回路は、前記送電線の両側にある前記アンテナにより受信される信号間で相対信号位相を検出する。前記アンテナから検出された前記信号間の相対位相差は、前記送電線に対する前記車両の左右の位置合わせを表す。
【0006】
実施形態例において、前記送電線は、動作周波数で信号を漏洩し、前記駐車スロットの中心線に沿って、または前記中心線に平行に、ただし前記中心線からオフセットされて配置され、前記駐車スロット内の前記ワイヤレス電力誘導コイルへと前記車両を誘導するため、軌跡に沿って湾曲する。前記送電線は、特性インピーダンスが300オームの送電線あるいは外部シールドにスロットを伴う50または75オームの同軸ケーブルと、その同軸ケーブルの特性インピーダンスにマッチングさせた終端抵抗とを有することができる。実施形態例において、前記信号処理回路は、車両と駐車スロットの位置合わせにより決定され各前記アンテナにより検出される前記信号間の相対位相差を検出する周波数変調受信機を含み、前記位相差は、前記アンテナが前記送電線から等距離にないとき、シーケンシャル・スイッチングにより誘導される。前記信号処理回路は、2若しくはそれ以上の車載アンテナ間で切り替えを行うアンテナスイッチを含むこともできる。前記信号処理回路は、さらに、前記周波数変調受信機の出力に存在するアンテナ・スイッチング周波数成分に対応した同期検定器と、前記同期検定器の出力から位置合わせ誤差の極性を決定する電圧コンパレータと、前記同期検定器の前記出力から位置合わせ誤差の大きさを決定する絶対値回路とを含むことができる。前記システムは、前記位置合わせ誤差の極性および前記位置合わせ誤差の大きさに応じて、前記車両の位置合わせを調整するよう運転者に指示する可視、可聴、または可触手段を含むこともできる。一実施形態例において、前記動作周波数は、13.56MHzまたは13.56MHz ISM周波数であるが、駐車スペースの寸法および車両の前記アンテナの間隔に応じて、最高61.5MHz若しくはそれ以上の周波数も使用できる。
【0007】
磁気共鳴誘導を使ったワイヤレス充電用ワイヤレス電力誘導コイルに車両を位置合わせする方法も提供される。前記駐車スロット内に設けられた送電線は、動作周波数を有する信号を漏洩し、前記ワイヤレス電力誘導コイルへ充電用に前記車両を誘導するよう前記駐車スロット内に設けられる。前記車両は、当該車両が前記駐車スロット内で位置合わせされたとき前記送電線の両側で対向しあうよう取り付けられた少なくとも2つの車載アンテナを使って、前記駐車スロット内で前記送電線に対して左右の位置合わせが行われる。前記アンテナは、前記送電線から漏洩する前記動作周波数を有した前記信号を検出し、前記車両の位置合わせは、前記送電線に対する前記車両の位置合わせを表すものとしての、前記アンテナから検出された前記信号間の相対位相差に基づき、前記ワイヤレス電力誘導コイルに対して調整される。
【0008】
前記方法は、2若しくはそれ以上の車載アンテナ間で切り替えを行う工程と、各前記アンテナにより検出される前記信号間の相対信号位相を検出する工程とを含むこともでき、前記位相差は、前記アンテナが前記送電線から等距離にないとき、シーケンシャル・スイッチングにより誘導される。前記シーケンシャル・スイッチングは、前記アンテナ間で切り替えを行う前記周波数変調受信機の出力に存在するアンテナ・スイッチング周波数成分に対応した同期検定器と、前記同期検定器の出力から位置合わせ誤差の極性を決定する電圧コンパレータと、前記同期検定器の前記出力から位置合わせ誤差の大きさを決定する絶対値回路とを含む。前記調整工程は、前記位置合わせ誤差の極性および前記位置合わせ誤差の大きさに応じ、前記車両の位置合わせを調整するよう、可視、可聴、または可触手段を使って運転者に指示する工程を含むこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本明細書で説明した以上の前記システムおよび方法の有益な特徴および利点等は、以下の添付の図面と関連付けて以降の詳細な説明から明確に理解されるであろう。
図1a図1aは、誘導ワイヤレス電力伝送コイルと、前記駐車スロットの中心線上にある送電線を含んだ位置合わせシステムとを備えた車両駐車スロットを表した図である。
図1b図1bは、角度を成した駐車スロットと、誘導ワイヤレス電力伝送コイルと、位置合わせシステムとを備えた車両駐車場を表した図であり、前記位置合わせシステムは、前記駐車スロット内で充電用の適切な位置への車両誘導を支援する湾曲した送電線を含む。
図1c図1cは、曲がったのち電磁誘導充電位置に近づくバスを表した図であり、前記位置合わせシステムの長く湾曲した送電線は、前記充電コイルに位置合わせするための適切な軌跡を確実に実現する。
図2a図2aは、一実施形態例に係る前記車両駐車位置合わせ用装置を概念的に表した図である。
図2b図2bは、車両アンテナ位相差と車両位置合わせの代表的な関係を示した図である。
図3a図3aは、前記駐車スロット高周波源と、300オームのバランス送電線として実装された送電線との一実施形態を示した図である。
図3b図3bは、前記駐車スロット高周波源と、終端処理された50または75オームの同軸ケーブルとして実装された送電線との代替一実施形態を示した図であり、前記送電線は、外部導体またはシールドに特別設計されたスロットを伴う。
図4図4は、前記アンテナ整流スイッチとそれに伴う回路の一実施形態を示した図である。
図5図5は、FM後の受信機信号処理回路の一実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
進歩性のある本システムおよび方法は、本開示の一部を形成する添付の図面および例と併せて以下の詳細な説明を参照すると、より容易に理解されるであろう。本システムおよび方法は本明細書に説明し示す具体的な製品、方法、条件、またはパラメータに限定されないこと、また本明細書で使用する用語は単に例をとって特定の実施形態を説明するためのものであり、限定を意図したものではないことを理解すべきである。同様に、考えられる機序または作用機序または改良の理由に関するいかなる説明も、単なる例示を意図したものであり、本明細書で説明するシステムおよび方法は、そのようないかなる示唆された機序または作用機序または改良の理由の正確さ若しくは不正確さにも制約されるものではない。本明細書全体にわたり、前記説明では、方法、ならびにそのような方法を実施するソフトウェアの双方に言及することを理解すべきである。
【0011】
以下、図1~5を参照して例示的な実施形態を詳しく説明する。この説明では、本明細書で説明するシステムおよび方法の考えられる実施態様の詳細な一例を提供しているが、これらの詳細事項は単なる例であり、請求項の主題の範囲を画定するものでは決してないことに注意すべきである。
【0012】
図1aは、自動車の駐車スロット10を概略的に表したものである。ワイヤレス電力伝送一次コイル12は、前記駐車スロット10の先端付近に示されているが、当該ワイヤレス電力伝送一次コイル12は、前記駐車スロット10の最後部または当該駐車スロット境界内の他の部分に設置することもできる。前記一次コイルの位置に関係なく、車両は、前記駐車スロット10の示された境界内に駐車されなければならない。埋め込まれ、または表面実装された送電線14は、この駐車スロットの中心線に沿って延長する。この送電線14は、低電力連続波の高周波源20に接続されており(図2)、車載電子機器により使用される局所的な高周波場を生成して、前記駐車スロット10の境界内における車両位置合わせを決定する。前記送電線14の長さおよび配向は、図1aに示した短く直線状の実施形態から図1bおよび1cに示すような長く湾曲したものまで異なる。
【0013】
図1bは、角度を成した一連の駐車スロット10を表したものである。前記ワイヤレス電力伝送一次コイル12は、各前記角度を成した駐車スロット10内の先端付近に示されている。埋め込まれ、または表面実装された送電線14は、前記駐車スロット内の前記中心線に沿って当該駐車スロットから延出しており、当該駐車スロット10内の前記ワイヤレス電力誘導コイル12へ車両を誘導する軌跡に沿った車両移動用車線内へと曲線状に敷設される。車両15は、右から左の方向に移動し、前記送電線および低電力連続波の高周波源20(図2)から、充電一次コイル12が利用できる適切なスロット用の位置合わせ信号を受信する。前記車両15は、図2を参照して後述するように、当該車両15上の受信アンテナにより前記送電線14からの前記位置合わせ信号を使用する。
【0014】
図1cはバス16を表したもので、このバス16は、曲がりきったのち、ワイヤレス電力誘導コイルを含むワイヤレス電磁誘導充電ステーションに近づいている。重要な点として、このバス16は前記ワイヤレス電力誘導コイル12において適切に位置合わせされており、正しい軌跡を描くには、適切な回転半径および位置が非常に重要である。この例において、送電線14は数十フィートもの長さを有し、前記充電コイル12における適切な位置合わせのための正しい経路に沿って一定の態様で前記バス16を誘導するよう、適切な配向で道路17に埋め込まれている。
【0015】
図2aは、位置合わせ用電子機器をブロック図で表したものである。地上には、高周波源20と、ある長さの送電線14とがある。車両には、この車両の中心線から左右へ等距離に取り付けられた2つの小型アンテナ22、24がある。当業者であれば、検出される位相オフセットに相当するオフセット値が得られる場合は、前記アンテナ22、24をオフセットして配置できる(等距離ではなく)ことも理解されるであろう。前記アンテナ22、24は、同軸ケーブル26でアンテナスイッチ28に接続される。前記アンテナスイッチ28は、アンテナ整流クロック30により制御されて、従来の周波数変調無線受信機32と、前記アンテナ22、24のどちらか一方を交互に接続する。一実施形態例において、前記整流信号は、デューティサイクル50%の矩形波である。
【0016】
前記駐車スロット10の境界内で車両が対称的に位置合わせされた場合のように、前記2つの受信アンテナ22、24が前記送電線14から等距離に配置された場合、前記アンテナスイッチ28の整流作用は、前記受信機信号に何ら影響を及ぼさない。前記2つのアンテナの入力信号31の振幅および位相は、同一であり、受信機32からの反応はない。しかし、前記駐車スロット10内で前記車両の位置合わせにずれがあると、前記車両のアンテナ22、24は前記送電線14に対して対称的ではなくなる。すると、前記アンテナのスイッチ作用により、整流率で信号の振幅および位相に摂動が生じる。前記送電線14により近い前記アンテナからの信号は、より遠く離れたアンテナよりも、大きな振幅および進み位相を有する。前記周波数変調受信機32は、前記振幅摂動を無視するが、周波数は時間的な位相変化率であることから前記位相摂動を検出し、アンテナスイッチ整流信号を複製して前記受信機の音声出力34に含める。前記受信機の音声整流信号の複製は、限定された受信機帯域幅により修正される。前記整流信号の周波数が、前記受信機で収集された音声の通過帯域を超えた場合、収集される整流信号はない。前記整流信号の周波数が、前記受信機の音声通過帯域周波数の下限のすぐ上である場合、前記収集される整流信号は、前記受信機の音声通過帯域の上限によりローパス・フィルタリングされるものの、元の整流矩形波に近くなる。前記受信機の音声通過帯域の上半分の整流信号の周波数は、概して正弦波形の収集音声信号になる。
【0017】
さらに図2aに例示するように、前記音声出力34は同期検定器36に提供され、各前記アンテナ信号間の位相差が検出され、位置合わせのずれがあった場合、それを表す出力信号が、電圧コンパレータ38に提供されて、どちらの信号が進み位相または遅れ位相を有するかに基づいて、位置合わせ誤差の極性が決定され、かつ、位置合わせ誤差の大きさを決定する絶対値検出器40に提供される。実施形態例において、前記位置合わせ誤差の極性および位置合わせ誤差の大きさの信号は、表示装置および他の視聴覚手段に提供され、前記駐車スロット10内で前記ワイヤレス電力誘導コイル12に対して前記車両を調整するよう運転者にフィードバックが提供される。
【0018】
図2bは、各前記位置合わせアンテナ間の位相差を表す一例を、前記位置合わせ誤差、すなわち中心線からの変位の関数として示したものである。
【0019】
高周波源20により提供される前記システムの最大動作周波数は、前記2つの車載アンテナ22、24間の間隔により設定され、その間隔は前記車両の幅未満でなければならない。米国において、平均的な駐車スロット幅は約9フィートである。自動車の幅は、一般に8フィートを超えない。位相のあいまいさを回避するには、動作周波数において前記2つの検出アンテナ22、24をλ/2を超えない距離だけ離さなければならない。2つの検出アンテナを8フィート離間する場合、最大システム動作周波数は約61.5MHzである。前記車両の運転者が、前記駐車スロット幅の1/2未満の初期位置合わせ誤差で前記駐車スロットに進入すると想定できる場合は、それよりも高い周波数および狭いアンテナ間隔が可能である。2より多くの車載アンテナを使用し、1または複数の追加アンテナを使って位相のあいまいさを解消する場合にも、より高い動作周波数は可能である。当業者であれば、動作周波数を下げるに伴い位置合わせ誤差の信号対雑音比は徐々に悪化するものの、前記システム動作周波数に下限はないことが理解されるであろう。
【0020】
本明細書で説明する装置は、駐車スロットの中心線に対する車両の左右位置合わせを実現する。車両の左右位置合わせのずれは、可視、可聴、または可触手段で運転者に示される。視覚指標は、点灯するインジケータ、グラフィック表示、またはソフトウェアにより生成されビデオカメラ画像上にオーバーレイされるグラフィックとすることができる。可聴指標は、連続またはパルス型の音声、またはソフトウェアにより生成される音声合成装置とすることができる。可触指標は、車両のステアリングホイールまたは操作機構、ギアシフトレバー、運転席により、あるいは車両の床を通じ、または床に取り付けられた車両制御ペダルを通じて提供できる。例えば、2013年8月6日付で出願された米国仮特許出願第61/862,572号に記述されている運転者への視覚キューまたは技術的手段を使うと、確実に運転者が前記駐車スロット10へ十分深く進入して充電用磁気コイルを位置合わせするよう、軸方向コイルアライメント用に前後方向へ位置合わせされる車両がどこで停止すべきかを示し、制御することができる。
【0021】
図3aおよび3bは、前記送電線14の一実施形態例を例示したものである。特に、図3aは前記高周波源20と、埋め込まれ若しくは表面実装された送電線14とを示しており、前記送電線14からは前記動作周波数の信号が漏洩する。この実施形態では、40.68MHz、インピーダンス50オームの連続波高周波源20が高周波の励振を提供する。電力レベルとしては約1mWが使用される。インピーダンス整合用のバランには、ミニサーキット社製RF変圧器42、型番ADT 4-6Tを使用している。前記送電線14は、ある長さの通常の特性インピーダンス300オームのバランス送電線により実装される。この送電線は漏洩用に設計されてはいないものの、実施形態例ではアンテナ22、24に十分検出される漏洩がある。反射波および定在波を排除するため、300オームの抵抗44でバランス線を終端させている。前記送電線のバランスを取る必要はない。漏洩する不平衡型同軸線も等しく適切であろう。あるいは、他の送電線インピーダンス、例えば50または75オームの同軸ケーブルで、外部シールドにスロットを伴うものも等しく使用できるであろう。図3bは、不平衡型の50または75オーム同軸ケーブルの送電線14′を示したもので、特別設計されたスロット43、および当該同軸ケーブルの特性インピーダンスとマッチングさせた終端抵抗45を備えている。
【0022】
図4は、図2の前記アンテナ22、24、アンテナ整流スイッチ28、および整流クロック30に伴う回路を示したものである。前記アンテナ22、24は、アンテナ間の整合性を確実に実現するようプリント基板上に製作された矩形のスパイラルを含む。前記矩形スパイラルの巻き数は、前記アンテナの望ましいインダクタンス値に応じて異なり、キャパシタンスと共鳴して動作周波数で望ましい反応を実現する。一構成例では、10巻きの矩形スパイラルがアンテナ22、24に使用された。当該アンテナ22、24は電気的に小型で、前記動作周波数では、追加キャパシタンスを使用しなければ共鳴しない。前記アンテナ22、24は、ある長さの通常の特性インピーダンス50オーム同軸ケーブル26に接続される。この2本のケーブル26は、当該車両の中心線に対して前記アンテナが対称的に離間された場合、同じ長さであり、それぞれ前記アンテナ22、24に接続された端部で前記ケーブル26にいくつかのフェライトビーズを通したものを含むフェライト・スリーブ46を有することでバランとして機能し、通常であれば当該ケーブルの外部導体に誘導されるRF電流を抑制する。誘導RF電流は著しいシステムエラーを生じるため、抑制しなければならない。実施形態例では、動作周波数40.68MHzが使用される。この周波数はこの用途にほぼ最適で、国内でも国際的にもISM(産業化学医療)用途に割り当てられており、これには高周波誘導加熱、周波数または位相に対し高感度のドップラーベースのモーションおよび侵入アラーム、ジアテルミー、焼灼、および他の非通信用途が含まれる。ISM周波数は非通信用途に確保されているが、主なISM用途からの電波干渉の可能性を利用者がいとわない場合は、通信にも使用できる。その利点は、機械器具の認証とスペクトル割り当てに関する規制上の負担が大幅に軽減されることである。本明細書で説明する車両位置合わせシステムの最大範囲は、最大でも数フィートであり、他の40.68MHz ISM周波数の利用者から電波干渉を受ける可能性は極めて低い。
【0023】
2つの論理インバータ48、抵抗R6およびR7、ならびにキャパシタC6から成るRC発振器30は、望ましいアンテナ整流周波数の2倍で矩形波信号を生成し、これが次いでD型フリップフロップ50により2で除算されることにより、50%のデューティサイクルを伴う望ましい周波数で整流クロックが生成される。構成要素RI、R3、R4、DI、D2、およびLIは、Qフリップフロップ出力ではなくQにより制御されるダイオードRFスイッチ28を有する。R2、R5、C4、およびC5は、スイッチ制御波形の立ち上がり部分および立ち下り部分の変化を和らげることにより、スイッチングの過渡変化を限定する。R8、C8、およびそれに付随する論理インバータ52は、前記アンテナ整流クロックの制御信号を遅延させて、受信機遅延に関する補正を行う。
【0024】
図5は、受信機後の信号処理回路を示したものである。前記アンテナ整流スイッチ28の出力は、従来の狭帯域FM受信機32のアンテナ入力へと進む。この回路は、消費者向けポケットサイズ走査受信機、Uniden BC72XLY小型スキャナーを含むが、任意の狭帯域VHF FM受信機の実施態様、アナログまたはデジタル、ハードウェアまたはソフトウェアが許容範囲内である。車両位置合わせ誤差は、帯域幅の限定された矩形波として、前記アンテナ整流クロック周波数で、前記受信機の音声出力に現れる。矩形波の大きさは、位置合わせ誤差の大きさを示す。矩形波の極性は、位置合わせ誤差の方向、左か右かを示す。次いで同期検出により位置合わせ誤差に比例した振幅を伴うDC電圧が生成され、極性は位置合わせ誤差の方向を示す。
【0025】
2つのオペアンプ54は、前記FM受信機からの前記音声信号を、利得1および-1で増幅する。集積回路56は、3つの単極双投(single-pole double throw:SPDT)CMOS FETスイッチを含み、その1つは、前記遅延されたアンテナ整流スイッチ制御信号により駆動される同期整流器として使用される。抵抗R16およびキャパシタCl Iから成るローパスフィルター58は、前記SPDTスイッチ56に続き、整流周波数のリップルがすべて除去されて直流信号が残り、その振幅は車両位置のずれに比例し、極性は前記車両位置合わせ誤差の方向、前記駐車スロット中心線の左か右かにより決定される。絶対値回路は前記車両変位誤差の振幅の大きさを得る一方、電圧コンパレータは誤差の極性を決定する。
【0026】
2つのオペアンプ60、62は、RCローパスフィルター後のバッファアンプとして、かつ、基準電圧ゼロのコンパレータとして使用される。トランジスタ64に伴う構成要素は、前記オペアンプ部の電圧飽和を防ぐことにより、電圧コンパレータとしての開ループ接続でオペアンプを使用する際にときおり生じる繊細な問題を回避する。オペアンプ62により実装された前記電圧コンパレータ38は、前記位置合わせ誤差の極性、左か右かを示す論理レベル信号を提供する。オペアンプ66とそれに伴う構成要素は、前記同期検定器後の信号の極性とは独立して、前記位置合わせ誤差の大きさの単極表現を提供する絶対値検出器40を有する。
【0027】
上述の実施態様において、前記車両の二重検知アンテナ22、24および前記送電線14は、前記車両の中心線および駐車スロットの中心線に沿ってそれぞれ取り付けられる。車両のアンダーボディおよび駐車スロットの障害物を避けるため必要になる可能性があるオフセット位置は、前記同期検定器後のハードウェアまたはソフトウェアに適切なオフセット補正を含めることにより対応可能である。後者の状況において、必要なオフセット補正は、車両通信リンクへの接地により提供される。
【0028】
以上、種々の実施態様について説明したが、これらは単なる例として示したものであり、限定的なものではないことを理解すべきである。例えば、上述したシステムおよび方法に伴う要素(素子)のいずれも、本明細書において上述した任意の望ましい機能を使用することができる。したがって、好適な実施態様の範囲および要旨は、上述した実施態様例のいずれにも限定されるものではない。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5