(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230519BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
H01L21/304 646
H01L21/304 651B
H01L21/306 R
(21)【出願番号】P 2018009157
(22)【出願日】2018-01-23
【審査請求日】2020-12-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 克栄
(72)【発明者】
【氏名】菅原 雄二
(72)【発明者】
【氏名】竹松 佑介
(72)【発明者】
【氏名】石川 友也
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-192088(JP,A)
【文献】特開2015-119128(JP,A)
【文献】特開2006-080392(JP,A)
【文献】特開2003-092343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304-21/308
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成された基板の表面に薬液を供給して基板を処理する方法であって、
基板を保持する基板保持工程と、
前記薬液を基板の前記表面に供給する薬液供給工程と、
前記薬液供給工程に先立って、前記パターンの外表面に蓄積されている電荷を除去すべく、低導電性液体バルブを開いて、前記薬液よりも低い導電性を有する低導電性液体を低導電性液体供給源から低導電性液体ノズルに供給することにより、基板の前記パターンが形成された前記表面に、前記低導電性液体を前記低導電性液体ノズルから供給する低導電性液体供給工程と、
前記低導電性液体供給工程に先立って、前記パターンに蓄積している電荷を減少させるべく、前記薬液よりも低くかつ前記低導電性液体よりも高い導電性を有する高導電性液体を、前記低導電性液体バルブと異なる高導電性液体バルブを開いて、前記低導電性液体供給源と異なる高導電性液体供給源から高導電性液体ノズルに供給することにより、前記高導電性液体ノズルから前記高導電性液体を、基板の前記パターンが形成された前記表面ではない反対側の裏面に供給する高導電性液体供給工程とを含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記低導電性液体供給工程に並行して、基板の前記裏面に、基板を除電すべく、前記低導電性液体または前記高導電性液体を供給する工程をさらに含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記高導電性液体供給工程に並行して、基板の前記表面に液体を供給しない、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記高導電性液体供給工程に並行して、基板の前記表面の全域に対向する基板対向面を有する対向部材を、前記基板対向面が基板の前記表面に近接するような近接位置に配置する近接位置配置工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記低導電性液体供給工程の後、前記薬液供給工程に先立って、基板を除電すべく、基板の少なくとも前記表面に、前記高導電性液体を供給する第2の高導電性液体供給工程をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記基板保持工程が、
導電性材料を用いて形成された導電部を基板の周縁部に接触させることにより基板を保持する工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記低導電性液体が脱イオン水を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記高導電性液体がイオンを含有する液体を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
表面にパターンが形成された基板を保持する基板保持ユニットと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板の前記表面に、導電性を有する薬液を供給するための薬液供給ユニットと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板の前記表面に、前記薬液よりも低い導電性を有する低導電性液体を供給するための低導電性液体ノズルと、
前記低導電性液体ノズルに前記低導電性液体を供給するための低導電性液体供給源と、
前記低導電性液体供給源から前記低導電性液体ノズルへの前記低導電性液体の供給と供給停止とを切り換える低導電性液体バルブと、
前記基板保持ユニットによって保持されている基板において前記表面とは反対側の裏面に、前記薬液よりも低くかつ前記低導電性液体よりも高い導電性を有する高導電性液体を供給するための高導電性液体ノズルと、
前記高導電性液体ノズルに前記高導電性液体を供給するための、前記低導電性液体供給源と異なる高導電性液体供給源と、
前記高導電性液体供給源から前記高導電性液体ノズルへの前記高導電性液体の供給と供給停止とを切り換える高導電性液体バルブであって、前記低導電性液体バルブと異なる高導電性液体バルブと、
前記薬液供給ユニット、前記低導電性液体バルブおよび前記高導電性液体バルブを制御する制御装置とを含み、
前記制御装置が、前記薬液を基板の前記表面に供給する薬液供給工程と、前記薬液供給工程に先立って、前記パターンの外表面に蓄積されている電荷を除去すべく、前記低導電性液体バルブを開いて、基板の前記パターンが形成された前記表面に、前記低導電性液体ノズルによって前記低導電性液体を供給する低導電性液体供給工程と、前記低導電性液体供給工程に先立って、前記パターンに蓄積している電荷を減少させるべく、前記高導電性液体バルブを開いて、前記高導電性液体ノズルによって、前記高導電性液体を、基板の前記パターンが形成された前記表面ではない反対側の前記裏面に供給する高導電性液体供給工程とを実行する、基板処理装置。
【請求項10】
前記基板保持ユニットによってされている基板の前記表面の全域に対向する基板対向面を有し、前記基板対向面が基板の前記表面に近接するような近接位置に配置される対向部材をさらに含む、請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記基板保持ユニットが、基板の周縁部を接触支持する保持ピンであって、導電性材料を用いて形成された導電ピンを有する、請求項9または10に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板の表面を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理の対象になる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、たとえば、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置は、処理チャンバーと、処理チャンバー内において、基板をほぼ水平に保持しつつ、その基板を回転させるスピンチャックと、このスピンチャックによって回転される基板の表面(パターン(デバイス)が形成される面)に向けて薬液を吐出するためのノズルとを備えている。
【0003】
このような基板処理装置を用いた基板処理では、たとえば、回転状態の基板の表面のたとえば中央部に向けて、ノズルから薬液が吐出される。基板の表面の中央部に供給された薬液は、基板の回転により生じる遠心力を受けて、基板の表面上を周縁に向けて流れ、基板の表面の全域に行き渡る。これにより、基板の表面の全域に薬液による処理が施される。
【0004】
処理チャンバーに搬入されてきた基板には、その前工程(イオン注入、ドライエッチング)によって、基板の表面に電荷が蓄積している(すなわち帯電している)ことがある。処理チャンバーに搬入されてきた基板の表面に電荷が蓄積していると、ノズルからの薬液の、基板の表面への着液時に、基板の表面と薬液とが接触して基板の表面において急激な電荷の変化が生じ、薬液の着液位置またはその近傍で静電気放電(アーキング)が発生するおそれがある。その結果、パターン(デバイス)が破壊したり、パターンに穴が穿いたりする等、基板の表面に局所的な欠陥が発生することがある。
【0005】
そこで、下記特許文献1では、薬液供給開始時における基板の表面における静電気放電の発生を防止すべく、薬液供給の開始前に、薬液よりも導電率の低い除電液(たとえば炭酸水)を基板の表面に供給することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、処理チャンバーに搬入されてくる基板の帯電量が多い場合がある。炭酸水を用いた除電は電荷移動が速いため、炭酸水の基板への着液の際に、基板の表面と炭酸水との接触に伴って静電気放電が発生することがある。
また、基板の帯電量を徐々に低下させるべく、炭酸水よりも導電率の低い除電液(たとえばDIW(脱イオン水))を基板の表面に供給し、その供給後に、基板の表面に炭酸水を供給することも考えられる。しかしながら、基板の帯電量が多い場合には、基板の表面へのDIWの供給によっても静電気放電が発生するおそれもある。
【0008】
すなわち、基板への薬液の供給に伴う静電気放電の発生を抑制または防止すると共に、基板への除電液(炭酸水やDIW)の供給に伴う静電気放電の発生を抑制または防止する必要がある。換言すると、基板への液体の供給に伴う静電気放電の発生を抑制または防止する必要がある。
そこで、本発明の目的は、基板の表面への液体の供給に伴う静電気放電の発生を抑制または防止でき、これにより、基板の表面における局所的な欠陥の発生を抑制または防止できる、基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の一実施形態は、パターンが形成された基板の表面に薬液を供給して基板を処理する方法であって、基板を保持する基板保持工程と、前記薬液を基板の前記表面に供給する薬液供給工程と、前記薬液供給工程に先立って、基板を除電すべく、基板の前記表面に、前記薬液よりも低い導電性を有する低導電性液体を供給する低導電性液体供給工程と、前記低導電性液体供給工程に先立って、基板を除電すべく、前記薬液よりも低くかつ前記低導電性液体よりも高い導電性を有する高導電性液体を、基板の前記表面ではなく、基板において前記表面とは反対側の前記裏面に供給する高導電性液体供給工程とを含む、基板処理方法を提供する。
【0010】
この方法によれば、基板への薬液の供給に先立って、まず、基板の表面ではなく基板の裏面に高導電性液体が供給される。基板が帯電している場合、基板の表面(デバイスが形成されたデバイス面)に電荷が蓄積しているので、高導電性液体を基板の裏面に供給しても、基板の裏面で静電気放電が発生することはほとんどない。また、高導電性液体の導電率が比較的高いので、基板の裏面への低導電性液体の供給により、基板に蓄積している電荷の量を効果的に減少させることができる。
【0011】
また、高導電性液体の基板の裏面への供給により、基板の表面のパターンの内部に入り込んだ電荷を、パターンの外表面に引き出すことができる。
次いで、基板の表面に低導電性液体が供給される。これにより、パターンの外表面に逃がされた電荷を、低導電性液体によって効果的に除去できる。基板から電荷の量が減少された後に基板の表面に導電性液体が供給されるので、静電気放電の発生を効果的に抑制または防止できる。しかも、その導電性液体が、比較的導電率の低い低導電性液体であるので、静電気放電の発生を、より一層効果的に抑制または防止できる。
【0012】
そして、低導電性液体および高導電性液体によって十分に電荷が除去された後の基板の少なくとも表面に、薬液が供給される。これにより、薬液処理が実行される。したがって、基板の表面への薬液の供給に伴う静電気放電の発生を、抑制または防止できる。
これにより、基板の表面への液体(低導電性液体、高導電性液体、薬液)の供給に伴う静電気放電の発生を抑制または防止でき、ゆえに、基板の表面における局所的な欠陥の発生を抑制または防止できる。
【0013】
前記低導電性液体供給工程が、前記パターンの外表面に蓄積されている電荷を除去すべく、基板の前記パターンが形成された前記表面に、前記低導電性液体を供給する工程を含んでいてもよい。前記高導電性液体供給工程が、前記パターンに蓄積している電荷を減少させるべく、前記高導電性液体を、基板の前記パターンが形成された前記表面ではない反対側の前記裏面に供給する工程を含んでいてもよい。
前記低導電性液体供給工程が、低導電性液体バルブを開いて、前記薬液よりも低い導電性を有する低導電性液体を低導電性液体供給源から低導電性液体ノズルに供給することにより、基板の前記パターンが形成された前記表面に、前記低導電性液体を前記低導電性液体ノズルから供給する工程を含んでいてもよい。
前記高導電性液体供給工程が、前記低導電性液体バルブと異なる高導電性液体バルブを開いて、前記低導電性液体供給源と異なる高導電性液体供給源から高導電性液体ノズルに供給することにより、前記高導電性液体ノズルから前記高導電性液体を、基板の前記裏面に供給する工程を含んでいてもよい。
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記低導電性液体供給工程に並行して、基板の前記裏面に、基板を除電すべく、前記低導電性液体または前記高導電性液体を供給する工程をさらに含む。
この方法によれば、基板の表面への低導電性液体の供給に並行して、基板の裏面に、低導電性液体または高導電性液体が供給される。これにより、基板に蓄積している電荷を、より一層効果的に除去できる。ゆえに、薬液の供給時における静電気放電の発生を、より一層効果的に抑制または防止できる。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記高導電性液体供給工程に並行して、基板の前記表面に液体を供給しない。
基板の裏面への高導電性液体の供給に並行して基板の表面に液体を供給すると、基板の表面の液体の着液により、基板の表面に静電気放電が発生するおそれがある。
これに対し、この方法によれば、基板の裏面への高導電性液体の供給に並行して基板の表面に液体を供給しない。これにより、基板の表面における静電気放電の発生を、より効果的に抑制または防止できる。
【0015】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記高導電性液体供給工程に並行して、基板の前記表面の全域に対向する基板対向面を有する対向部材を、前記基板対向面が基板の前記表面に近接するような近接位置に配置する近接位置配置工程をさらに含む。
この方法によれば、対向部材の基板対向面を基板の表面に近接させながら、すなわち、対向部材の基板対向面によって基板の表面を保護しながら、基板の裏面に高導電性液体を供給する。そのため、基板の裏面から基板の表面側への高導電性液体の回り込みや、基板の表面側への高導電性液体の回り込みを良好に抑制または防止できる。
【0016】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記低導電性液体供給工程の後、前記薬液供給工程に先立って、基板を除電すべく、基板の少なくとも前記表面に、前記高導電性液体を供給する第2の高導電性液体供給工程をさらに含む。
この方法によれば、低導電性液体が基板に供給された後、基板に薬液が供給されるまでの間に、基板の少なくとも表面に高導電性液体が供給される。つまり、基板の表面に、低導電性液体→高導電性液体の順に供給する。低導電性液体→高導電性液体→薬液と、導電性の液体が、導電性の低いものから順に段階的に供給されるため、低導電性液体や高導電性液体に起因する静電気放電の発生を防止しながら基板を良好に除電することができ、また、薬液供給時における静電気放電の発生を効果的に抑制することができる。
【0017】
この発明の一実施形態では、前記基板保持工程が、導電性材料を用いて形成された導電部を基板の周縁部に接触させることにより基板を保持する工程を含む。
この方法によれば、低導電性液体または高導電性液体を介して、基板を良好に除電できる。
【0018】
前記低導電性液体が脱イオン水を含んでいてもよい。前記高導電性液体がイオンを含有する液体を含んでいてもよい。
この発明の一実施形態は、表面にパターンが形成された基板を保持する基板保持ユニットと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の前記表面に、導電性を有する薬液を供給するための薬液供給ユニットと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の前記表面に、前記薬液よりも低い導電性を有する低導電性液体を供給するための低導電性液体供給ユニットと、前記基板保持ユニットによって保持されている基板において前記表面とは反対側の裏面に、前記薬液よりも低くかつ前記低導電性液体よりも高い導電性を有する高導電性液体を供給するための高導電性液体供給ユニットと、前記薬液供給ユニット、前記低導電性液体供給ユニットおよび前記高導電性液体供給ユニットを制御する制御装置とを含む基板処理装置を提供する。そして、前記制御装置が、前記薬液を基板の前記表面に供給する薬液供給工程と、前記薬液供給工程に先立って、基板を除電すべく、基板の前記表面に、前記低導電性液体を供給する低導電性液体供給工程と、前記低導電性液体供給工程に先立って、前記高導電性液体を、基板の前記表面ではなく、基板において前記表面とは反対側の前記裏面に供給する高導電性液体供給工程とを実行する。
【0019】
この構成によれば、基板への薬液の供給に先立って、まず、基板の表面ではなく基板の裏面に高導電性液体が供給される。基板が帯電している場合、基板の表面(デバイスが形成されたデバイス面)に電荷が蓄積しているので、高導電性液体を基板の裏面に供給しても、基板の裏面で静電気放電が発生することはほとんどない。また、高導電性液体の導電率が比較的高いので、基板の裏面への低導電性液体の供給により、基板に蓄積している電荷の量を効果的に減少させることができる。
【0020】
また、高導電性液体の基板の裏面への供給により、基板の表面のパターンの内部に入り込んだ電荷を、パターンの外表面に引き出すことができる。
次いで、基板の表面に低導電性液体が供給される。これにより、パターンの外表面に逃がされた電荷を、低導電性液体によって効果的に除去できる。基板から電荷の量が減少された後に基板の表面に導電性液体が供給されるので、静電気放電の発生を効果的に抑制または防止できる。しかも、その導電性液体が、比較的導電率の低い低導電性液体であるので、静電気放電の発生を、より一層効果的に抑制または防止できる。
【0021】
そして、低導電性液体および高導電性液体によって十分に電荷が除去された後の基板の少なくとも表面に、薬液が供給される。これにより、薬液処理が実行される。したがって、基板の表面への薬液の供給に伴う静電気放電の発生を、抑制または防止できる。
これにより、基板の表面への液体(低導電性液体、高導電性液体、薬液)の供給に伴う静電気放電の発生を抑制または防止でき、ゆえに、基板の表面における局所的な欠陥の発生を抑制または防止できる。
【0022】
前記低導電性液体供給ユニットが、前記基板保持ユニットによって保持されている基板の前記表面に、前記薬液よりも低い導電性を有する低導電性液体を供給するための低導電性液体ノズルと、前記低導電性液体ノズルに前記低導電性液体を供給するための低導電性液体供給源と、前記低導電性液体供給源から前記低導電性液体ノズルへの前記低導電性液体の供給と供給停止とを切り換える低導電性液体バルブとを含んでもよい。
前記高導電性液体供給ユニットが、前記基板保持ユニットによって保持されている基板において前記表面とは反対側の裏面に、前記薬液よりも低くかつ前記低導電性液体よりも高い導電性を有する高導電性液体を供給するための高導電性液体ノズルと、前記高導電性液体ノズルに前記高導電性液体を供給するための、前記低導電性液体供給源と異なる高導電性液体供給源と、前記高導電性液体供給源から前記高導電性液体ノズルへの前記高導電性液体の供給と供給停止とを切り換える高導電性液体バルブであって、前記低導電性液体バルブと異なる高導電性液体バルブとを含んでいてもよい。
前記制御装置が、前記低導電性液体バルブおよび前記高導電性液体バルブを制御してもよい。
前記低導電性液体供給工程が、前記パターンの外表面に蓄積されている電荷を除去すべく、前記低導電性液体バルブを開いて、基板の前記パターンが形成された前記表面に、前記低導電性液体ノズルによって前記低導電性液体を供給する工程を含んでいてもよい。前記高導電性液体供給工程が、前記パターンに蓄積している電荷を減少させるべく、前記高導電性液体バルブを開いて、前記高導電性液体ノズルによって、前記高導電性液体を、基板の前記パターンが形成された前記表面ではない反対側の前記裏面に供給する工程を含んでいてもよい。
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記基板保持ユニットによってされている基板の前記表面の全域に対向する基板対向面を有し、前記基板対向面が基板の前記表面に近接するような近接位置に配置される対向部材をさらに含む。
この構成によれば、対向部材の基板対向面を基板の表面に近接させながら、すなわち、対向部材の基板対向面によって基板の表面を保護しながら、基板の裏面に高導電性液体を供給ことが可能である。この場合、基板の裏面から基板の表面側への高導電性液体の回り込みや、基板の表面側への高導電性液体の回り込みを良好に抑制または防止できる。
【0023】
この発明の一実施形態では、前記基板保持ユニットが、基板の周縁部を接触支持する保持ピンであって、導電性材料を用いて形成された導電ピンを有する。
この構成によれば、低導電性液体または高導電性液体を介して、基板を良好に除電できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係る基板処理装置の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。
【
図2】
図2は、前記基板処理装置に備えられた処理ユニットの構成例を説明するための図解的な断面図である。
【
図3A】
図3Aは、前記基板処理装置の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【
図3B】
図3Bは、前記基板処理装置による処理対象の基板Wの表面Waを拡大し
て示す断面図である。
【
図4】
図4は、前記処理ユニットによる第1の基板処理例を説明するための流れ図である。
【
図5A-5C】
図5A~5Cは、前記第1の基板処理例の各工程が行われているときの基板を水平に見た模式図である。
【
図6A-6C】
図6A~6Cは、前記第1の基板処理例の各工程における、基板の帯電状態の変化を説明するための図である。
【
図7A-7C】
図7A~7Cは、第1の基板処理例に含まれる薬液供給工程の内容を説明するための図である。
【
図8】
図8は、除電試験の試験結果を示す図である。
【
図9】
図9は、前記処理ユニットにより実行される第2の基板処理例を説明するための流れ図である。
【
図10】
図10は、前記処理ユニットにより実行される第3の基板処理例を説明するための流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施の形態に係る基板処理装置1を上から見た模式図である。基板処理装置1は、シリコンウエハなどの基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施の形態では、基板Wは、円板状の基板である。基板処理装置1は、処理液およびリンス液で基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容する基板収容器が載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送するインデクサロボットIRおよび基板搬送ロボットCRと、基板処理装置1を制御する制御装置3とを含む。インデクサロボットIRは、基板収容器と基板搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。基板搬送ロボットCRは、インデクサロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。
【0026】
図2は、処理ユニット2の構成例を説明するための図解的な断面図である。
処理ユニット2は、箱形の処理チャンバー4と、処理チャンバー4内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック(基板保持ユニット)5と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面(基板Wの表面(パターン形成面)Wa(
図5A等を参照))に液体(処理液(薬液およびリンス液)および除電液)を供給するための上側液体供給ユニットと、スピンチャック5に保持されている基板Wの下面(基板Wの裏面Wb(
図5A等を参照))に液体(処理液(薬液およびリンス液)および除電液)を供給するための下側液体供給ユニットと、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に対向し、基板Wの上方の空間をその周囲の雰囲気から遮断する対向部材6と、スピンチャック5の側方を取り囲む筒状の処理カップ(図示しない)とを含む。
【0027】
処理チャンバー4は、スピンチャック5等を収容する箱型の隔壁7を含む。
スピンチャック5として、基板Wを水平方向に挟んで基板Wを水平に保持する挟持式のチャックが採用されている。具体的には、スピンチャック5は、スピンモータ(回転ユニット)12と、このスピンモータ12の駆動軸と一体化された下スピン軸13と、下スピン軸13の上端に略水平に取り付けられた円板状のスピンベース14とを含む。下スピン軸13は、導電性材料を用いて形成されている。下スピン軸13はアース接続されている。
【0028】
スピンベース14は、基板Wの外径よりも大きな外径を有する水平な円形の上面14aを含む。スピンベース14は、導電性材料を用いて形成されている。上面14aには、その周縁部に複数個(3個以上。たとえば6個)の挟持ピン15が配置されている。複数個の挟持ピン15は、スピンベース14の上面周縁部において、基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けてたとえば等間隔に配置されている。挟持ピン15は、導電性材料を用いて形成されたいわゆる導電ピンである。
【0029】
前述のように、下スピン軸13、スピンベース14および挟持ピン15が、それぞれ導電性材料(たとえば、カーボンを含む導電性材料、金属材料)を用いて形成されており、かつ、下スピン軸13がアース接続されている。そのため、導電性を有する液体(後述する低導電性液体、高導電性液体および薬液)がスピンチャック5に保持されている基板Wの表面または裏面に供給されると、当該液体を介して基板Wが除電される。
【0030】
対向部材6は、対向板17と、対向板17の中央部を上下方向に貫通する上面ノズル(低導電性液体ノズル)30とを含む。対向板17は、その下面に基板Wの上面全域に対向する、水平に配置された円形の基板対向面17aを有している。
この実施の形態では、上面ノズル30は、中心軸ノズルとして機能する。上面ノズル30は、スピンチャック5の上方に配置されている。上面ノズル30は、支持アーム22によって支持されている。上面ノズル30は、支持アーム22に対して回転不能である。上面ノズル30は、対向板17および支持アーム22と共に昇降する。上面ノズル30は、その下端部に、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面中央部に対向する吐出口30aを形成している。
【0031】
支持アーム22には、電動モータ、ボールねじ等を含む構成の対向部材昇降ユニット27が結合されている。対向部材昇降ユニット27は、対向部材6(対向板17および上スピン軸18)および上面ノズル30を、支持アーム22と共に鉛直方向に昇降する。
対向部材昇降ユニット27は、対向板17を、基板対向面17aがスピンチャック5に保持されている基板Wの上面に近接する近接位置(
図2に二点鎖線で示す位置。
図5Aも併せて参照)と、近接位置よりも大きく上方に退避した退避位置(
図2に実線で示す位置)の間で昇降させる。対向部材昇降ユニット27は、近接位置(
図5Aに示す位置)、上位置(
図5Bおよび
図5Cに示す位置)、および退避位置で対向板17を保持可能である。近接位置は、基板対向面17aが基板Wの上面との間に微小間隔(たとえば約0.3mm)を隔てて配置されるような位置である。上位置は、基板対向面17aと基板Wの上面との間の間隔が近接位置よりも大きく、かつ退避位置よりも小さい位置である。
【0032】
上側液体供給ユニットは、上面ノズル30と、上面ノズル30にそれぞれ処理液を供給する第1の上供給ユニット31、第2の上供給ユニット32および第3の上供給ユニット33とを含む。
第1の上供給ユニット31は、上面ノズル30に一端が接続された上共通配管35と、上共通配管35の他端に接続された上ミキシングバルブユニットUMVとを含む。上ミキシングバルブユニットUMVは、上共通配管35に送液する上接続部36と、複数のバルブとを含む。上接続部36の内部には、液体が流通するための流通空間が形成されている。上ミキシングバルブユニットUMVは、上接続部36にそれぞれ接続された、DIW上配管37、SC2上配管38および上吸引配管39をさらに含む。上ミキシングバルブユニットUMVに含まれる複数のバルブは、DIW上配管37を開閉するDIW上バルブ(低導電性液体バルブ)42と、SC2上配管38を開閉するSC2上バルブ43と、上吸引配管39を開閉する上吸引バルブ44とを含む。
【0033】
DIW上配管37には、DIW供給源(低導電性液体供給源)からのDIW(脱イオン水)が供給されるようになっている。上側液体供給ユニットに含まれる他のバルブを閉じた状態でDIW上バルブが開かれることにより、上面ノズル30にDIWが供給され、これにより、吐出口30aからDIWが下向きに吐出される。
SC2上配管38には、SC2供給源からのSC2(HClとH2O2とを含む混合液)が供給されるようになっている。上側液体供給ユニットに含まれる他のバルブを閉じた状態でSC2上バルブ43が開かれることにより、上面ノズル30にSC2が供給され、これにより、吐出口30aからSC2が下向きに吐出される。
【0034】
上吸引配管39の下流端には、吸引装置(図示しない)が接続されている。吸引装置は、たとえばエジェクタ式の吸引装置である。エジェクタ式の吸引装置は、真空発生器やアスピレータを含む。吸引装置の稼働状態において、吸引装置の内部が減圧されることにより、上吸引配管39の内部が吸引され、その結果、吸引装置の働きが有効化される。吸引装置の働きが有効化された状態において、上側液体供給ユニットに含まれる他のバルブを閉じた状態で上吸引バルブ44が開かれることにより、上吸引配管39の内部が吸引され、上接続部36の内部空間(流通空間)の液体、および上共通配管35の内部の液体が吸引装置によって吸引される。
【0035】
第2の上供給ユニット32は、上面ノズル30に接続されたSC1上配管46と、SC1上配管46に介装されたSC1上バルブ47とを含む。SC1上配管46には、SC1供給源からのSC1(NH4OHとH2O2とを含む混合液)が供給されるようになっている。上側液体供給ユニットに含まれる他のバルブを閉じた状態でSC1上バルブ47が開かれることにより、上面ノズル30にSC1が供給され、これにより、吐出口30aからSC1が下向きに吐出される。
【0036】
第3の上供給ユニット33は、上面ノズル30に接続されたHF上配管48と、HF上配管48に介装されたHF上バルブ49とを含む。HF上配管48には、HF供給源からのHFが供給されるようになっている。上側液体供給ユニットに含まれる他のバルブを閉じた状態でHF上バルブ49が開かれることにより、上面ノズル30にHFが供給され、これにより、吐出口30aからHFが下向きに吐出される。この実施の形態では、HFは、たとえば、希釈された希釈フッ酸(DHF)である。
【0037】
この実施の形態では、上面ノズル30、DIW上配管37およびDIW上バルブ42によって、低導電性液体供給ユニットが構成されている。
下側液体供給ユニットは、下面ノズル(高導電性液体ノズル)50と、下面ノズル50にそれぞれ処理液を供給する第1の下供給ユニット51、第2の下供給ユニット52および第3の下供給ユニット53とを含む。
【0038】
第1の下供給ユニット51は、下面ノズル50に一端が接続された下共通配管55と、下共通配管55の他端に接続された下ミキシングバルブユニットDMVとを含む。下ミキシングバルブユニットDMVは、下共通配管55に送液する下接続部56と、複数のバルブとを含む。下接続部56の内部には、液体が流通するための流通空間が形成されている。下ミキシングバルブユニットDMVは、下接続部56にそれぞれ接続された、DIW下配管57、SC2下配管58、CO2水下配管60および下吸引配管59をさらに含む。下側液体供給ユニットに含まれる複数のバルブは、DIW下配管57を開閉するDIW下バルブ62と、SC2下配管58を開閉するSC2下バルブ63と、CO2水下配管60を開閉するCO2水下バルブ(高導電性液体バルブ)65と、下吸引配管59を開閉する下吸引バルブ64とを含む。
【0039】
DIW下配管57には、DIW供給源からのDIWが供給されるようになっている。下ミキシングバルブユニットDMVに含まれる他のバルブを閉じた状態でDIW下バルブ62が開かれることにより、下面ノズル50にDIWが供給され、これにより、吐出口50aからDIWが上向きに吐出される。
SC2下配管58には、SC2供給源からのSC2が供給されるようになっている。下側液体供給ユニットに含まれる他のバルブを閉じた状態でSC2下バルブ63が開かれることにより、下面ノズル50にSC2が供給され、これにより、吐出口50aからSC2が上向きに吐出される。
【0040】
CO2水下配管60には、CO2水供給源(高導電性液体供給源)からのCO2水が供給されるようになっている。下側液体供給ユニットに含まれる他のバルブを閉じた状態でCO2水下バルブ65が開かれることにより、下面ノズル50にCO2水が供給され、これにより、吐出口50aからCO2水が上向きに吐出される。
下吸引配管59の下流端には、吸引装置(図示しない)が接続されている。吸引装置は、たとえばエジェクタ式の吸引装置である。エジェクタ式の吸引装置は、真空発生器やアスピレータを含む。吸引装置の稼働状態において、吸引装置の内部が減圧されることにより、下吸引配管59の内部が吸引され、その結果、吸引装置の働きが有効化される。吸引装置の働きが有効化された状態において、下側液体供給ユニットに含まれる他のバルブを閉じた状態で下吸引バルブ64が開かれることにより、下吸引配管59の内部が吸引され、下接続部56の内部空間(流通空間)の液体、および下共通配管55の内部の液体が吸引装置によって吸引される。
【0041】
第2の下供給ユニット52は、下面ノズル50に接続されたSC1下配管66と、SC1下配管66に介装されたSC1下バルブ67とを含む。SC1下配管66には、SC1供給源からのSC1が供給されるようになっている。下側液体供給ユニットに含まれる他のバルブを閉じた状態でSC1下バルブ67が開かれることにより、下面ノズル50にSC1が供給され、これにより、吐出口50aからSC1が上向きに吐出される。
【0042】
第3の下供給ユニット53は、下面ノズル50に接続されたHF下配管68と、HF下配管68に介装されたHF下バルブ69とを含む。HF下配管68には、HF供給源からのHFが供給されるようになっている。下側液体供給ユニットに含まれる他のバルブを閉じた状態でHF下バルブ69が開かれることにより、下面ノズル50にHFが供給され、これにより、吐出口50aからHFが上向きに吐出される。この実施の形態では、HFは、たとえば、希釈された希釈フッ酸(DHF)である。
【0043】
この実施の形態では、下面ノズル50、CO
2水下配管60およびCO
2水下バルブ65によって、高導電性液体供給ユニットが構成されている。
図3Aは、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
制御装置3は、たとえばマイクロコンピュータを用いて構成されている。制御装置3はCPU等の演算ユニット、固定メモリデバイス、ハードディスクドライブ等の記憶ユニッ
ト、および入出力ユニットを有している。記憶ユニットには、演算ユニットが実行するプログラムが記憶されている。
【0044】
また、制御装置3には、制御対象として、スピンモータ12、対向部材昇降ユニット27等が接続されている。制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、スピンモータ12、対向部材昇降ユニット27等の動作を制御する。
また、制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、DIW上バルブ42、SC2上バルブ43、上吸引バルブ44、SC1上バルブ47、HF上バルブ49、DIW下バルブ62、SC2下バルブ63、下吸引バルブ64、CO2水下バルブ65、SC1下バルブ67、HF下バルブ69を開閉する。
【0045】
以下では、パターン形成面(デバイス形成面)である、表面(表面)Waにパターン100が形成された基板Wを処理する場合について説明する。
図3Bは、基板処理装置1による処理対象の基板Wの表面Waを拡大して示す断面図である。処理対象の基板Wは、たとえばシリコンウエハであり、そのパターン形成面である表面Waにパターン100が形成されている。パターン100は、たとえば微細パターンである。パターン100は、
図3Bに示すように、凸形状(柱状)を有する構造体101が行列状に配置されたものであってもよい。この場合、構造体101の線幅W1はたとえば3nm~45nm程度に、パターン100の隙間W2はたとえば10nm~数μm程度に、それぞれ設けられている。パターン100の膜厚Tは、たとえば、0.2μm~1.0μm程度である。また、パターン100は、たとえば、アスペクト比(線幅W1に対する膜厚Tの比)が、たとえば、5~500程度であってもよい(典型的には、5~50程度である)。
【0046】
また、パターン100は、微細なトレンチにより形成されたライン状のパターンが、繰り返し並ぶものであってもよい。また、パターン100は、薄膜に、複数の微細穴(ボイド(void)またはポア(pore))を設けることにより形成されていてもよい。
パターン100は、たとえば絶縁膜を含む。また、パターン100は、導体膜を含んでいてもよい。より具体的には、パターン100は、複数の膜を積層した積層膜により形成されており、さらには、絶縁膜と導体膜とを含んでいてもよい。パターン100は、単層膜で構成されるパターンであってもよい。絶縁膜は、シリコン酸化膜(SiO2膜)やシリコン窒化膜(SiN膜)であってもよい。また、導体膜は、低抵抗化のための不純物を導入したアモルファスシリコン膜であってもよいし、金属膜(たとえばTiN膜)であってもよい。
【0047】
また、パターン100は、親水性膜であってもよい。親水性膜として、TEOS膜(シリコン酸化膜の一種)を例示できる。
図4は、処理ユニット2において実行される第1の基板処理例の内容を説明するための流れ図である。
図5A~5Cは、第1の基板処理例の各工程が行われているときの基板を水平に見た模式図である。
図6A~6Cは、第1の基板処理例の各工程における、基板Wの帯電状態の変化を説明するための図である。
【0048】
図1~
図4を参照しながら、第1の基板処理例について説明する。
図5A~7Cについては、適宜説明する。第1の基板処理例は、基板Wの表面から異物(パーティクル)を除去するための洗浄処理である。後述する第2の基板処理例および第3の基板処理例も同様に、基板Wの表面から異物を除去するための洗浄処理である。
未処理の基板W(たとえば直径300mmの円形基板)は、インデクサロボットIRおよび基板搬送ロボットCRによって基板収容器Cから処理ユニット2に搬入され、処理チャンバー4内に搬入され、基板Wがその表面Wa(パターン形成面。デバイス形成面。
図3B等参照)を上方に向けた状態でスピンチャック5に受け渡され、スピンチャック5に基板Wが保持される(基板保持工程。
図4のS1:基板W搬入)。この状態において、基板Wの裏面Wb(
図6A等参照)は下方を向いている。
【0049】
処理チャンバー4の内部空間に搬入されてきた基板には、その前工程(イオン注入、ドライエッチング)によって、基板Wに電荷が蓄積している(すなわち帯電している)ことがある。基板Wが帯電している場合、
図6Aに示すように、電荷は、主として、基板Wの表面Waに蓄積している。より具体的には、電荷は、基板Wの表面Waのパターン100の内部に入り込んでいる。基板Wに対し、薬液(SC1やSC2等の導電性の薬液)を供給すると、基板Wの表面Waと薬液とが接触して基板Wの表面Waにおいて急激な電荷の変化が生じ、薬液の着液位置またはその近傍で静電気放電が発生するおそれがある。その結果、パターン100が破壊したり、パターン100に穴が穿いたりする等、基板Wの表面Waに局所的な欠陥が発生することがある。そのため、薬液供給工程S5に先立って、基板Wを除電すべく、高導電性液体供給工程S3および低導電性液体供給工程S4が実行される。
【0050】
基板搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避した後、制御装置3は、スピンモータ12を制御してスピンベース14の回転速度を、所定の除電回転速度(約500rpm未満で、たとえば約200rpm)まで上昇させ、その除電回転速度に維持させる(
図4のS2:基板W回転開始)。
また、制御装置3は、対向部材昇降ユニット27を制御して、対向板17を退避位置から下降させて、
図5Aに示すように近接位置に配置する。
【0051】
基板Wの回転が除電回転速度に達すると、制御装置3は、
図5Aに示すように、高導電性液体(薬液(たとえばSC1、SC2)よりも低い導電性を有する液体)としてのCO
2水を、基板Wの表面Waではなく、基板Wの裏面Wbに供給する高導電性液体供給工程(
図4のS3)を実行する。CO
2水はイオンを含有しているために、ある程度高い導電率を有している。高導電性液体供給工程S3において基板Wに供給されるCO
2水の電気抵抗率(電気抵抗率が低い方が導電率が高い)は、たとえば10
-6MΩ・cm~20MΩ・cmの範囲で、より具体的には約20MΩ・cm~約30MΩ・cmである。
【0052】
具体的には、制御装置3は、CO2水下バルブ65を開く。それにより、回転状態の基板Wの裏面Wb(すなわち下面)の中央部に向けて、下面ノズル50の吐出口50aからCO2水が吐出される。基板Wの裏面Wbに着液したCO2水は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの周縁部に移動する。これにより、基板Wの裏面Wbの全域を覆うCO2水の液膜が形成される。
【0053】
CO
2水の導電率が比較的高いので、基板Wの裏面Wbへの高導電性液体としてのCO
2水の供給により、基板Wのパターン100に蓄積している電荷の量を効果的に減少させることができる。また、基板Wの裏面WbへのCO
2水の供給により、
図6Bに示すように、基板Wの表面Waのパターン100の内部に入り込んだ電荷を、パターン100の外表面に引き出すことができる。すなわち、基板Wの裏面Wbへの高導電性液体としてのCO
2水の供給により、基板Wの表面Waにおける局所的な電荷配置を拡散することができる。基板Wの表面Wa(パターン100)に電荷が蓄積されているので、基板Wの裏面WbにCO
2水を供給しても、基板Wの裏面Wbで静電気放電が発生することはほとんどない。
【0054】
高導電性液体供給工程S3において、仮に、基板Wの裏面WbへのCO2水の供給に並行して基板Wの表面Waに液体を供給すると、基板Wの表面Waの液体の着液により、基板Wの表面Waに静電気放電が発生するおそれがある。
高導電性液体供給工程S3において、基板Wの裏面WbへのCO2水の供給に並行して基板Wの表面Waに液体を供給しないので、基板Wの表面Waにおける静電気放電の発生を、より効果的に抑制または防止できる。
【0055】
また、高導電性液体供給工程S3において、対向部材6を近接位置に配置しながら、すなわち、対向部材6の基板対向面17aによって基板Wの表面Waを保護しながら、基板Wの裏面WbにCO2水を供給する。そのため、基板Wの裏面Wbから基板Wの表面Wa側へのCO2水の回り込みを良好に抑制または防止できる。
なお、対向部材6の上面ノズル30にさらに不活性ガス配管(図示省略)を接続し、不活性ガス配管に不活性ガスバルブ(図示省略)を介装してもよい。この場合、不活性ガス配管には不活性ガス供給源から不活性ガス(たとえば、N2ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、またはこれらの混合ガス)が供給される。不活性ガスバルブは、制御装置3により制御される。この場合、高導電性液体供給工程S3において、制御装置3は、対向部材6を近接位置に配置した状態で不活性ガスバルブを開くことにより、不活性ガス配管を介して上面ノズル30に不活性ガスが供給され、吐出口30aから基板Wの表面Waの中央部に向けて、不活性ガスが下向きに吐出される。これにより、基板Wの上面に沿って、基板Wの中央部から周縁部に向けて流れる不活性ガスの気流が形成される。ゆえに、基板Wの裏面Wbから基板Wの表面Wa側へのCO2水の回り込みを、さらに良好に抑制または防止できる。
【0056】
CO2水の吐出開始から予め定める第1の除電期間(たとえば約60秒間)が経過すると、制御装置3は、CO2水下バルブ65を閉じて下面ノズル50からのCO2水の吐出を停止する。これにより、高導電性液体供給工程S3が終了する。
高導電性液体供給工程S3の終了後、制御装置3は、下吸引バルブ64を開く。これにより、下共通配管55の内部および下接続部56の内部空間からCO2水が吸引除去される。CO2水の除去後、制御装置3は、下吸引バルブ64を閉じる。
【0057】
また、制御装置3は、対向部材昇降ユニット27を制御して、対向板17を近接位置から上昇させて、
図5Bに示すように上位置に配置する。
次いで、制御装置3は、
図5Bに示すように、基板Wの表面Waおよび基板Wの裏面Wbに、低導電性液体(薬液(たとえばSC1、SC2)および高導電性液体(たとえばCO
2水)よりも低い導電性を有する液体)としてのDIWを供給する低導電性液体供給工程(
図4のS4)を実行する。DIWはイオンをほとんど含有していないために、その導電率はかなり低い。低導電性液体供給工程S4において基板Wに供給されるDIWの電気抵抗率は、たとえば10MΩ・cm~20MΩ・cmの範囲で、より具体的には約18MΩ・cmである。
【0058】
具体的には、制御装置3は、DIW上バルブ42を開く。それにより、回転状態の基板Wの表面Wa(すなわち上面)の中央部に向けて、上面ノズル30の吐出口30aからDIWが吐出される。基板Wの表面Waに着液したDIWは、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの周縁部に移動する。これにより、基板Wの表面Waの全域を覆うDIWの液膜が形成される。併せて、制御装置3は、DIW下バルブ62を開く。それにより、回転状態の基板Wの裏面Wb(すなわち下面)の中央部に向けて、下面ノズル50の吐出口50aからDIWが吐出される。これにより、基板Wの裏面Wbの全域を覆うDIWの液膜が形成される。
【0059】
基板Wの裏面WbへのCO
2水の供給により、
図6Cに示すように、パターン100の外表面に引き出された電荷が、基板Wの表面WaへのDIWの供給によって効果的に除去される。また、基板Wから電荷の量が減少された後に基板Wの表面Waに導電性液体(DIW)が供給されるので、静電気放電の発生を効果的に抑制または防止できる。しかも、その導電性液体が、比較的導電率の低いDIWであるので、静電気放電の発生を、より一層効果的に抑制または防止できる。
【0060】
また、基板Wの表面WaへのDIWの供給に並行して、基板Wの裏面Wbに、DIWが供給される。これにより、基板Wに蓄積している電荷を、より一層効果的に除去できる。
DIWの吐出開始から予め定める第2の除電期間(たとえば約60秒間)が経過すると、制御装置は、DIW上バルブ42およびDIW下バルブ62を閉じて、上面ノズル30からのDIWの吐出および下面ノズル50からのDIWの吐出を停止する。これにより、低導電性液体供給工程S4が終了する。
【0061】
低導電性液体供給工程S4の終了後、制御装置3は、上吸引バルブ44を開く。これにより、上共通配管35の内部および上接続部36の内部空間からDIWが吸引除去される。DIWの除去後、制御装置3は、上吸引バルブ44を閉じる。
また、制御装置3は、スピンモータ12を制御してスピンベース14の回転速度を、所定の液処理回転速度(たとえば約500rpm)まで上昇させ、その液処理回転速度に維持させる。
【0062】
次いで、制御装置3は、
図5Cに示すように、基板Wの表面Waに薬液を供給して、基板Wの表面Waを処理(洗浄)する薬液供給工程(
図4のS5)を実行する。この実施の形態に係る薬液供給工程S5では、制御装置3は、基板Wの表面Waだけでなく、基板Wの裏面Wbにも薬液を供給して、基板Wの裏面Wbを処理(洗浄)している(同時両面処理)。薬液供給工程S5では、最初に、基板Wの表面WaにSC1またはSC2が供給される。SC1およびSC2は、多量のイオンを含有しているために、高い導電率を有している。基板Wに供給されるSC1の電気抵抗率は、たとえば10
-3MΩ・cmのオーダーである。また、基板Wに供給されるSC2の電気抵抗率は、たとえば約10
-5MΩ・cm程度である。
【0063】
SC1およびSC2は、CO2水よりも高い導電性を有する液体である。そのため、基板Wの表面Waが十分に除電されていない状態(基板Wの表面Waに多量の電荷が蓄積されている状態)で、基板Wの表面WaにSC1またはSC2が供給されると、SC1またはSC2の基板Wの表面Waへの着液時に、基板Wの表面WaとSC1またはSC2とが接触して基板Wの表面Waにおいて急激な電荷の変化が生じ、基板Wの表面Waにおける薬液の着液位置またはその近傍で静電気放電が発生するおそれがある。
【0064】
しかしながら、DIWおよびCO
2水によって十分に電荷が除去された後の基板Wの表面WaにSC1またはSC2が供給されるので、薬液供給工程S5において、基板Wの表面WaへのSC1やSC2の着液時に、静電気放電が発生しない。
薬液供給工程S5の終了に次いで、制御装置3は、基板Wの表面Waに、リンス液としてのDIWを供給して、基板Wの表面Waに付着している薬液を洗い流すリンス工程(
図4のS6)を実行する。この実施の形態に係るリンス工程S6では、基板Wの表面Waだけでなく、基板Wの裏面Wbにもリンス液としてのDIWを供給して、基板Wの裏面Wbを処理(洗浄)している(同時両面処理)。
【0065】
制御装置3によりDIW上バルブ42およびDIW下バルブ62を開くことで、基板Wの表面Waおよび裏面WbへDIWが供給される。そして、DIW上バルブ42およびDIW下バルブ62が開かれてから予め定める期間が経過すると、制御装置3はDIW上バルブ42およびDIW下バルブ62を閉じる。これにより、基板Wの表面Waおよび裏面WbへのDIWの供給が停止され、リンス工程S6が終了する。リンス液としてDIWを用いたが、リンス液としてCO2水を用いるようにしてもよい。
【0066】
その後、制御装置3は、対向部材昇降ユニット27を制御して、対向板17を退避位置に上昇させる。
次いで、制御装置3は、乾燥工程(
図4のS7)を実行する。具体的には、制御装置3は、液処理回転速度よりも大きい所定の振り切り速度(たとえば数千rpm)まで基板Wの回転速度を上昇させ、その振り切り速度で基板Wを回転させる。これにより、大きな遠心力が基板W上の液体に加わり、基板Wに付着している液体が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから液体が除去され、基板Wが乾燥する。
【0067】
乾燥工程S7の開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、スピンモータ12を制御してスピンチャック5の回転(すなわち、基板Wの回転)を停止させる(
図4のS8)。その後、基板搬送ロボットCRが、処理チャンバー4の内部空間に進入して、処理済みの基板Wを処理チャンバー4外へと搬出する(
図4のS9)。その基板Wは、基板搬送ロボットCRからインデクサロボットIRへと渡され、インデクサロボットIRによって、基板収容器Cに収納される。
【0068】
図7A~7Cは、第1の基板処理例に含まれる薬液供給工程S5の内容を説明するための図である。薬液供給工程S5は、薬液を用いて基板Wの表面Waおよび裏面Wbを洗浄する工程である。
薬液供給工程S5の例として、第1の薬液供給工程S51、第2の薬液供給工程S52および第3の薬液供給工程S53がある。
【0069】
第1の薬液供給工程S51は、基板Wの表面Waおよび裏面WbにSC1を供給するSC1供給工程と、このSC1供給工程の後、基板Wの表面Waおよび裏面Wbに、リンス液としてのDIW(またはCO2水)を供給する中間リンス工程と、この中間リンス工程の後、基板Wの表面Waおよび裏面WbにSC2を供給するSC2供給工程と、このSC2供給工程の後、基板Wの表面Waおよび裏面Wbに、リンス液としてのDIW(またはCO2水)を供給する中間リンス工程と、この中間リンス工程の後、基板Wの表面Waおよび裏面WbにDHF(希釈フッ酸)を供給するDHF供給工程とを含む。
【0070】
第2の薬液供給工程S52は、基板Wの表面Waおよび裏面WbにSC2を供給するSC2供給工程と、このSC2供給工程の後、基板Wの表面Waおよび裏面Wbに、リンス液としてのDIW(またはCO2水)を供給する中間リンス工程と、この中間リンス工程の後、基板Wの表面Waおよび裏面WbにSC1を供給するSC1供給工程とを含む。
第3の薬液供給工程S53は、基板Wの表面Waおよび裏面WbにSC1を供給するSC1供給工程を含む。
【0071】
また、上ミキシングバルブユニットUMVまたは下ミキシングバルブユニットDMVを用いた、上面ノズル30または下面ノズル50からの処理液(薬液またはリンス液(この実施の形態では、DIW、CO2水、SC2))の供給の場合には、上面ノズル30または下面ノズル50からの処理液の吐出の終了後、対応する上吸引バルブ44または下吸引バルブ64が開かれ、上共通配管35または下共通配管55の内部、および上接続部36または下接続部56の内部空間から、DIWまたはCO2水が吸引除去される。
【0072】
以上により、この実施の形態によれば、基板Wへの薬液(SC1またはSC2)の供給に先立って、まず、基板Wの表面Waではなく基板Wの裏面WbにCO2水が供給される。基板Wが帯電している場合、基板Wの表面Waに電荷が蓄積しているので、CO2水を基板Wの裏面Wbに供給しても、基板Wの裏面Wbで静電気放電が発生することはほとんどない。また、CO2水の導電率が比較的高いので、基板Wの裏面WbへのCO2水の供給により、基板Wに蓄積している電荷の量を効果的に減少させることができる。
【0073】
また、CO2水の基板Wの裏面Wbへの供給により、基板Wの表面Waのパターン100の内部に入り込んだ電荷を、パターン100の外表面に引き出すことができる。
次いで、基板Wの表面WaにDIWが供給される。これにより、パターン100の外表面に引き出された電荷を、DIWによって効果的に除去できる。また、基板Wから電荷の量が減少された後に基板Wの表面Waに導電性液体(DIW)が供給されるので、静電気放電の発生を効果的に抑制または防止できる。しかも、その導電性液体が、比較的導電率の低いDIWであるので、静電気放電の発生を、より一層効果的に抑制または防止できる。
【0074】
そして、DIWおよびCO2水によって十分に電荷が除去された後の基板Wの少なくとも表面Waに、薬液供給工程S5が実行される。したがって、薬液供給工程S5において、基板Wの表面WaへのSC1やSC2の供給に伴う静電気放電の発生を、抑制または防止できる。
これにより、基板Wの表面Waへの液体(DIW、CO2水、薬液)の供給に伴う静電気放電の発生を抑制または防止でき、ゆえに、基板Wの表面Waにおける局所的な欠陥の発生を抑制または防止できる。
【0075】
次に、除電試験について説明する。
除電試験では、次に述べる実施例および比較例に係る基板処理方法(洗浄処理)を試料に施す。
実施例:表面Waにパターン100(
図3B参照)が配置された基板W(半導体ウエハ。外径300(mm))を試料として採用し、表面Waを上方に向けた状態でスピンチャック5(
図2参照)に保持させた。スピンチャック5に保持されて回転状態にある試料に対し、処理ユニット2を用いて前述の
図4に示す第1の基板処理例(洗浄処理)を実行した。
【0076】
比較例1~9:表面Waにパターン100(
図3B参照)が配置された基板W(半導体ウエハ。外径300(mm))を試料として採用し、表面Waを上方に向けた状態でスピンチャック5(
図2参照)に保持させた。スピンチャック5に保持されて回転状態にある試料に対し、処理ユニット2を用いて洗浄処理を施した。比較例1~9が、前述の
図4に示す実施例と相違するのは、除電工程(
図4の高導電性液体供給工程S3および低導電性液体供給工程S4)の内容である。
【0077】
比較例1:高導電性液体供給工程S3に相当する工程、および低導電性液体供給工程S4に相当する工程がそれぞれ行われていない。すなわち、薬液供給工程S5が最初に実行される。
比較例2:高導電性液体供給工程S3に代えて、CO2水を、基板Wの裏面Wbではなく、基板Wの表面Waに供給する工程を実行する。低導電性液体供給工程S4に相当する工程は行われない。すなわち、基板Wの表面WaへのCO2水の供給後、薬液供給工程S5が実行される。
【0078】
比較例3:高導電性液体供給工程S3を行った。低導電性液体供給工程S4に相当する工程は行われない。すなわち、高導電性液体供給工程S3の後薬液供給工程S5が実行される。
比較例4:高導電性液体供給工程S3に代えて、CO2水を、基板Wの裏面Wbだけでなく基板Wの表面Waにも供給する工程を実行する。低導電性液体供給工程S4に相当する工程は行われない。すなわち、基板Wの表面WaへのCO2水の供給後、薬液供給工程S5が実行される。
【0079】
比較例5:高導電性液体供給工程S3に相当する工程が行われていない。低導電性液体供給工程S4に相当する工程が最初に実行される。この工程では、DIWを、基板Wの裏面Wbではなく、基板Wの表面Waに供給する工程を実行する。
比較例6:高導電性液体供給工程S3に相当する工程が行われていない。低導電性液体供給工程S4に相当する工程が最初に実行される。この工程では、DIWを、基板Wの表面Waではなく、基板Wの裏面Wbに供給する工程を実行する。
【0080】
比較例7:高導電性液体供給工程S3に相当する工程が行われていない。低導電性液体供給工程S4が最初に実行される。
比較例8:高導電性液体供給工程S3に代えて、CO2水を、基板Wの裏面Wbだけでなく基板Wの表面Waにも供給する工程を実行する。この工程後、低導電性液体供給工程S4が実行される。
【0081】
比較例9:高導電性液体供給工程S3に代えて、CO
2水を、基板Wの裏面Wbではなく、基板Wの表面Waに供給する工程を実行する。この工程後、低導電性液体供給工程S4が実行される。
試験結果を、
図8に示す。実施例では、静電気放電が発生しなかった。これに対し、比較例1~9では、基板Wの表面Waの中央部に静電気放電の痕跡が見られた。比較例2、比較例4、比較例8および比較例9では、高い導電性を有するCO
2水を最初に基板Wの表面に供給している。このCO
2水の供給に伴って静電気放電が発生したものと考えられる。
【0082】
比較例5および比較例7では、低い導電性を有するDIWが最初に基板Wの表面Waに供給されている。このDIWの供給によっても基板Wの表面Wa(特に、
図6Aに示すようにパターン100の内部に入り込んだ電荷)が十分に除電されておらず、そのため、その後に続く基板Wの表面Waへの薬液の供給に伴って静電気放電が発生したものと考えられる。
【0083】
比較例1、比較例3および比較例6では、高い導電性を有する薬液が最初に基板Wの表面Waに供給されている。薬液の供給開始前に、基板Wの表面Waが十分に除電されておらず、そのため、基板Wの表面Waへの薬液の供給に伴って静電気放電が発生したものと考えられる。
以上、この発明の一実施の形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することもできる。
【0084】
図9は、処理ユニット2により実行される第2の基板処理例を説明するための流れ図である。
図9に示す第2の基板処理例が
図4等に示す第1の基板処理例と相違する点は、低導電性液体供給工程として、低導電性液体供給工程S4に代えて、低導電性液体供給工程S11を採用した点である。低導電性液体供給工程S11では、DIWを、基板Wの表面Waおよび裏面Wbの両面ではなく、基板Wの表面Waのみに供給している。
【0085】
また、
図4に示す第1の基板処理例において、低導電性液体供給工程S4において、基板Wの表面Waに低導電性液体としてのDIWを供給しながら、基板Wの裏面Wbに高導電性液体としてのCO
2水を供給するようにしてもよい。
図10は、処理ユニット2により実行される第3の基板処理例を説明するための流れ図である。
【0086】
図10に示す第3の基板処理例が
図4等に示す第1の基板処理例と相違する点は、低導電性液体供給工程S4の後、薬液供給工程S5に先立って、基板Wを除電すべく、基板Wの少なくとも表面Wa(表面Waおよび裏面Wbの双方(または表面Waのみ))に、高導電性液体(薬液(たとえばSC1、SC2)よりも低い導電性を有する液体)としてのCO
2水を供給する第2の高導電性液体供給工程S21を実行するようにした点である。
【0087】
図2に破線で示すように、上ミキシングバルブユニットUMVは、上接続部36に接続されたCO
2水上配管40と、CO
2水上配管40を開閉するCO
2水上バルブ45とをさらに含んでいてもよい。上側液体供給ユニットに含まれる他のバルブを閉じた状態でCO
2水上バルブ45が開かれることにより、上面ノズル30にCO
2水が供給され、これにより、吐出口30aからCO
2水が下向きに吐出される。
【0088】
この第3の基板処理例によれば、DIWが基板Wに供給された後、基板Wに薬液が供給されるまでの間に、基板Wの少なくとも表面WaにCO2水が供給される。つまり、基板Wの表面Waに、DIW→CO2水の順に供給する。DIW→CO2水→薬液と、導電性の液体が、導電性の低いものから順に段階的に基板に供給されるため、DIWやCO2水に起因する静電気放電の発生を防止しながら基板Wを良好に除電することができ、これにより、薬液供給時における静電気放電の発生を効果的に抑制することができる。
【0089】
また、薬液供給工程S5として、基板Wの両面(表面Waおよび裏面Wb)を、薬液を用いて処理するものを例に挙げたが、薬液供給工程S5が、基板Wの一方面(表面Waまたは裏面Wb)を、薬液を用いて処理するものであってもよい。
また、薬液供給工程S5において基板Wの表面Waに最初に供給される薬液として、SC1やSC2を例示したが、他の薬液(オゾン水やSPM(H2SO4とH2O2とを含む混合液)、HF等)であってもよい。
【0090】
また、高導電性液体と低導電性液体との組合せとして、CO2水とDIWとの組み合わせを例示したが、その他に、NH3水とDIWとの組み合わせ、NH4OH水溶液(1:100)とDIWとの組み合わせ、H2SO4水溶液とDIWとの組み合わせ、HCl水溶液(1:50)とDIWとの組み合わせ、HF水溶液(1:500)とDIWとの組み合わせ等を例示することができる。
【0091】
また、第1~第3の基板処理例として、基板Wを洗浄する洗浄処理を例に挙げたが、エッチング液を用いて基板Wをエッチングするエッチング処理に本発明を適用することもできる。
また、前述の実施の形態において、基板処理装置1が半導体ウエハからなる基板Wの表面を処理する装置である場合について説明したが、基板処理装置が、液晶表示装置用基板、有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などの基板を処理する装置であってもよい。ただし、本発明の効果は、基板Wの表面が疎水性を示す場合にとくに顕著に発揮される。
【0092】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 :基板処理装置
3 :制御装置
4 :処理チャンバー
5 :スピンチャック(基板保持ユニット)
30 :上面ノズル(低導電性液体供給ユニット)
37 :DIW上配管(低導電性液体供給ユニット)
42 :DIW上バルブ(低導電性液体供給ユニット)
50 :下面ノズル(高導電性液体供給ユニット)