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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/76 20060101AFI20230519BHJP
   E02F 9/16 20060101ALI20230519BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
E02F3/76 A
E02F9/16 H
E02F9/24 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018047287
(22)【出願日】2018-03-14
(65)【公開番号】P2019157543
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】萩原 宏仁
(72)【発明者】
【氏名】池田 直人
【合議体】
【審判長】前川 慎喜
【審判官】有家 秀郎
【審判官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/277190(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/223092(US,A1)
【文献】特開2017-172184(JP,A)
【文献】特表2009-527672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F3/76
E02F9/16
E02F9/24
E02F9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブと、
前記キャブ内に配置される運転席と、
前記運転席の前方に配置され、前記運転席に前向きに着座したオペレータが車両を操向操作するための第1ステアリング装置と、
前記運転席の側方に配置され、前記運転席に前向きに着座したオペレータが車両を操向操作するための第2ステアリング装置と、
前記運転席にオペレータが着座しているか否かを検知する着座センサと、
前記運転席にオペレータが着座していないことが前記着座センサによって検知された場合に、作業車両が動き出し可能な状態で前記第2ステアリング装置による操向操作を不能にする制御部と、
を備える作業車両。
【請求項2】
前記第2ステアリング装置の後方に配置されるアームレストを備える、
を備える請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
作業機と、
前記第2ステアリング装置の前方に配置される作業機操作具と、
を備え、
前記第2ステアリング装置は、前記作業機操作具の後方に配置される、
請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記キャブは、上面視において前方に向かってテーパ状に形成されたフロアを有し、
前記作業機は、前記キャブの前方かつ下方に配置され、前記運転席に着座したオペレータから視認可能である、
請求項3に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、モータグレーダ及びホイールローダなどの作業車両は、車両を操向操作するためのステアリングホイールと、ステアリングの操作に連動して操舵輪を操舵するためのステアリング機構とを備える(例えば、特許文献1参照)。ステアリングホイールは、キャブ内において、運転席の前方に配置される。なお、操舵輪を操舵する方法は、車輪の向きや傾きを変える方法以外に、車体フレームを屈曲させる方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-158923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した作業車両において、オペレータは、運転席の前方に配置されたステアリングホイール(以下、「第1ステアリング装置」という。)ではなく、運転席の近くに別途配置したステアリングレバー(以下、「第2ステアリング装置」という。)で車両を操向操作したい場合がある。例えば、作業機を駆動操作するための作業機レバーが運転席の側方に配置されている場合には、作業機レバーで作業機を駆動操作しながら運転席の側方に配置した第2ステアリング装置で車両を操向操作することによって、作業効率を向上させることができる。キャブ内に設けられた第2ステアリング装置の使用可否は、操作スイッチによって選択することができる。
【0005】
しかしながら、第2ステアリング装置の使用可否を操作スイッチで選択することはオペレータにとって大変煩わしい。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、第2ステアリング装置を簡便に使用可能な作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業車両は、キャブと、運転席と、第1ステアリング装置と、第2ステアリング装置と、着座センサと、制御部とを備える。運転席は、キャブ内に配置される。第1ステアリング装置は、運転席の前方に配置され、車両を操向操作するために用いられる。第2ステアリング装置は、運転席の側方に配置され、車両を操向操作するために用いられる。着座センサは、運転席にオペレータが着座しているか否かを検知する。制御部は、運転席にオペレータが着座していないことが着座センサによって検知された場合に、第2ステアリング装置による操向操作を不能にする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第2ステアリング装置を簡便に使用可能な作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るモータグレーダの構成を示す側面図
図2】本実施形態に係るキャブの内部構造を示す上面図
図3】本実施形態に係るキャブの内部構造を示す左側面図
図4】本実施形態に係る制御部の構成を示すブロック図
図5】本実施形態に係るステアリングレバーの操向操作可否制御を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る第1及び第2ステアリング装置を作業車両の一例であるモータグレーダに適用した場合について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。例えば、本発明に係る第1及び第2ステアリング装置は、モータグレーダに限らず、操舵輪で走行可能な作業車両に適用可能である。このような作業車両としては、モータグレーダのほか、ホイールローダなどが挙げられる。操舵輪を操舵する方法は、車輪の向きや傾きを変える方法以外に、車体フレームを屈曲させる方法がある。
【0011】
本明細書において、「前」は、作業車両の前進方向を示す用語であり、「後」は作業車両の後退方向を示す用語である。「左」「右」は作業車両が前進しているときの進行方向を基準とする用語である。「上」「下」は鉛直方向を基準とする用語である。
【0012】
(モータグレーダ1)
図1は、本実施形態に係るモータグレーダ1の構成を示す側面図である。
【0013】
モータグレーダ1は、走行輪11,12、車体フレーム2、キャブ(運転室)3、作業機4、外装カバー5を備える。
【0014】
走行輪11,12は、前輪11及び後輪12を有する。前輪11は、図示しないステアリングシリンダによって操舵される操舵輪である。前輪11は、左右に一輪ずつ設けられる。後輪12は、外装カバー5内に収容されるエンジン6によって駆動される駆動輪である。後輪12は、左右に二輪ずつ設けられる。図1では、左側一輪の前輪11と、左側二輪の後輪12とが図示されている。ただし、前輪11及び後輪12の数及び配置は適宜変更可能である。
【0015】
車体フレーム2は、前後方向に延びる。車体フレーム2は、リアフレーム21、フロントフレーム22及びアーティキュレートシリンダ23を有する。リアフレーム21は、エンジン6と外装カバー5を支持する。リアフレーム21には、後輪12が取り付けられる。フロントフレーム22は、リアフレーム21の前方に配置される。フロントフレーム22は、アーティキュレートシリンダ23を介してリアフレーム21に連結される。フロントフレーム22は、アーティキュレートシリンダ23の伸縮により、リアフレーム21に対して左右に回動可能である。フロントフレーム22には、前輪11が取り付けられる。
【0016】
キャブ3は、リアフレーム21の前端部、或いはフロントフレーム22の後端部によって支持される。キャブ3は、左右一対のドア3a,3aを有する。図1では、左側のドア3aが図示されている。オペレータは、ドア3aを開けてキャブ3に出入りすることができる。キャブ3の内部構造については後述する。ドア3aは、縁にフレームがあり、全体は透明なガラス窓になっていて、外部を視認可能になっている。
【0017】
作業機4は、ドローバ40、旋回サークル41、ブレード42及びリフトシリンダ44を有する。ドローバ40は、フロントフレーム22の下方に配置される。ドローバ40の前端部は、図示しない玉軸を介して、フロントフレーム22の前端部に左右揺動可能に連結される。ドローバ40の後端部は、リフトシリンダ44によって支持される。ドローバ40の後端部は、リフトシリンダ44の伸縮によって上下揺動可能である。旋回サークル41は、ドローバ40の後端部の下方に配置される。旋回サークル41は、車両上面視において、時計回りと反時計回りの両方に旋回可能である。
【0018】
ブレード42は、前輪11と後輪12との間に配置される。ブレード42は、旋回サークル41に支持される。前後方向に対するブレード42の傾斜角度は、旋回サークル41の旋回によって調整可能である。
【0019】
(キャブ3の内部構造)
図2は、キャブ3の内部構造を示す上面図である。図3は、キャブ3の内部構造を示す左側面図である。
【0020】
キャブ3には、フロア30、運転席31、右側コンソール32R、左側コンソール32L、右側アームレスト33R、左側アームレスト33L、ステアリングホイール34(「第1ステアリング装置」の一例)、着座センサ35、アクセルペダル36、ブレーキペダル37、インチングペダル38、ステアリングレバースイッチ39及び制御部40を備える。
【0021】
フロア30は、六角形状の板部材によって構成される。フロア30は、上面視において前方に向かってテーパ状に形成される。具体的には、フロア30の前端部の右側には右側カット部30aが形成され、フロア30の前端部の左側には左側カット部30bが形成される。このように、フロア30を前方に向かってテーパ状に形成することにより、フロア30の前方斜め下の視界を広くできるため、オペレータは運転席31に着座したままブレード42による整地作業状況を的確に視認することができる。
【0022】
運転席31は、フロア30上に配置される。運転席31は、オペレータが着座するためのシートである。オペレータは、運転席31に着座し、前方を向いた状態でモータグレーダ1を操作する。運転席31のうち座部31aの内部には、着座センサ35が配置される。着座センサ35は、運転席31にオペレータが着座しているか否かを検知する。着座センサ35は、検知結果を制御部40に出力する。
【0023】
右側コンソール32Rは、運転席31の右側に配置される。右側コンソール32Rの上部には、右側作業機レバー群32a、走行レバー32b、変速レバー32c及び右側アームレスト33Rなどが配置される。右側作業機レバー群32aは、作業機4を駆動操作するための操作具である。本実施形態において、右側作業機レバー群32aには、3つの作業機レバーが含まれる。これら3つの作業機レバーは、それぞれ基端部を中心として前後に揺動可能に構成される。走行レバー32bは、車両の前進、後進及び停止を切り換えるための操作具である。走行レバー32bは、前進位置、後進位置、及びニュートラル位置に移動可能である。走行レバー32bは、右側作業機レバー群32aの後方に配置される。変速レバー32cは、車両の変速を行うための操作具である。変速レバー32cは、例えば1速度段から8速度段まで切換え可能に構成される。変速レバー32cは、走行レバー32bの左側に配置される。ただし、右側コンソール32R上の各レバーの数、配置及び操作方向は適宜変更可能である。右側アームレスト33Rは、右腕用の肘掛けである。右側アームレスト33Rは、右側コンソール32R上の各種レバーの後方に配置される。
【0024】
左側コンソール32Lは、運転席31の左側に配置される。左側コンソール32Lの上部には、左側作業機レバー群32d(「作業機操作具」の一例)、ステアリングレバー32e(「第2ステアリング装置」の一例)及び左側アームレスト33Lなどが配置される。左側作業機レバー群32dは、作業機4を駆動操作するための操作具である。本実施形態において、左側作業機レバー群32dには、3つの作業機レバーが含まれる。これら3つの作業機レバーは、それぞれ基端部を中心として前後に揺動可能に構成される。なお、ステアリングレバー32eには、手首を使って操作するジョイスティックレバー以外に、指にて操作可能なスイッチタイプレバーも含む。
【0025】
ステアリングレバー32eは、車両を操向操作するための操作具である。ステアリングレバー32eは、運転席31の側方(具体的には、左側)に配置される。ステアリングレバー32eは、左側作業機レバー群32dの後方に配置される。ステアリングレバー32eは、前後方向において、左側作業機レバー群32dと左側アームレスト33Lとの間に配置される。
【0026】
ステアリングレバー32eは、例えば操向操作用のスイッチタイプレバーである。ステアリングレバー32eは、基端部を中心として左右に揺動可能に構成される。具体的には、ステアリングレバー32eは、オペレータが操作しない状態では中央の中立位置に位置しており、オペレータの操作に応じて中立位置から右側又は左側に傾動する。オペレータは、例えば、左手の親指でステアリングレバー32eを左右に操作しながら、左手の人差し指で左側作業機レバー群32dを前後に操作しつつ、さらに右手の人差し指で右側作業機レバー群32aを前後に操作することもできる。このように、ステアリングレバー32eは、車両を操向操作しながら作業機4を駆動操作する、いわゆる複合操作に便利である。ステアリングレバー32eは、左手の手首を使って操作するジョイスティックレバーでもよい。
【0027】
ただし、左側コンソール32L上の各レバーの数、配置及び操作方向は適宜変更可能である。左側アームレスト33Lは、左腕用の肘掛けである。左側アームレスト33Lは、ステアリングレバー32eの後方に配置される。
【0028】
ステアリングホイール34は、運転席31の前方に配置される。ステアリングホイール34は、車両を操向操作するための操作具である。ステアリングホイール34は、運転席31に着座したオペレータから見て左右に回動可能に構成される。上述した複合操作ではステアリングレバー32eが主に用いられるため、ステアリングホイール34は、主に作業機4を駆動操作せずに車両を操向操作する場合に用いられる。
【0029】
アクセルペダル36は、エンジン回転数を所望の回転数に設定するためにオペレータが足で踏む操作具である。ブレーキペダル37は、後輪12を制動するためにオペレータが足で踏む操作具である。インチングペダル38は、クラッチに滑りを生じさせることで車速を低減させるためにオペレータが足で踏む操作具である。車両上面視において、アクセルペダル36およびブレーキペダル37はステアリングホイール34の右側に配置され、インチングペダル38はステアリングホイール34の左側に配置される。
【0030】
ステアリングレバースイッチ39は、運転席31の右上方に配置される。ステアリングレバースイッチ39は、キャブ3の内壁に取り付けられる。ステアリングレバースイッチ39は、ステアリングレバー32eの作動(ON)と非作動(OFF)とを切り換えるための操作具である。ステアリングレバースイッチ39は、作動位置(ON位置)と非作動位置(OFF位置)とに切替え可能に構成される。ステアリングレバースイッチ39が作動位置にある場合において、後述する諸条件が満たされるときには、ステアリングレバー32eによる操向操作が不能となる。ステアリングレバースイッチ39が非作動位置にある場合には、ステアリングレバー32eによる操向操作が一切不能となる。
【0031】
制御部40は、右側コンソール32Rの内部に収容される。制御部40は、キャブ3内の各操作具に接続されており、各操作具の操作状態に応じて車両制御する。
【0032】
(制御部40の構成)
図4は、制御部40の構成を示すブロック図である。制御部40は、車体制御部41とステアリング制御部42とを有する。
【0033】
車体制御部41は、着座センサ35、車速センサ50、走行レバー32b及びブレーキペダル37に接続される。車体制御部41は、以下の4つの条件が成立するか否かを判定する。
【0034】
・条件1:運転席31にオペレータが着座していないこと
・条件2:車速が所定速度以下であること
・条件3:走行レバー32bがニュートラル位置にあること
・条件4:ブレーキペダル37が踏まれていないこと
【0035】
車体制御部41は、条件1~4の全てが成立する場合、ステアリングレバー32eによる操向操作を不許可にすべきことを示す不許可信号をステアリング制御部42に出力する。
【0036】
基本的には、条件1が成立すれば、オペレータが操向操作可能な状態にないと判断してステアリングレバー32eによる操向操作を不許可にしてもよいが、本実施形態では、条件1に加えて条件2~4が加重されている。条件2と条件3は、オペレータが着座しているにもかかわらず、車両のバウンシングなどによって一時的に着座していないと判定される場合を考慮して設けられた条件である。具体的には、条件2は、車速がある程度速いのであれば、ステアリングレバー32eによる操向操作が必要になる場合があることを考慮して設けられた条件である。条件3は、走行レバー32bが前進位置又は後進位置にあるのであれば、オペレータに操向操作の意図がある場合があることを考慮して設けられた条件である。条件4は、オペレータが運転席31から立ち上がった状態でステアリングレバー32eによる前輪11の動作を確認したい場合があることを考慮して設けられた条件である。
【0037】
車体制御部41は、条件1~4のうち少なくとも1つが成立しない場合、ステアリングレバー32eによる操向操作を許可すべきことを示す許可信号をステアリング制御部42に出力する。
【0038】
ステアリング制御部42は、ステアリングレバースイッチ39、ステアリングレバー32e及びステアリングホイール34に接続される。ステアリング制御部42は、以下の3つの条件A~Cが成立するか否かを判定する。
【0039】
条件A:車体制御部41から許可信号が入力されたこと
条件B:ステアリングレバースイッチ39が作動位置にあること
条件C:ステアリングレバー32eが中立位置にあること
【0040】
ステアリング制御部42は、条件A~Cの全てが成立する場合、ステアリングレバー32eによる操向操作を可能にする。具体的には、ステアリング制御部42は、上記3つの条件全てが成立する場合、ステアリングレバー32eの操作方向及び操作量に応じて、前輪11を操舵するためのステアリングシリンダを駆動させる。
【0041】
基本的には、条件Aが成立すれば、ステアリングレバー32eによる操向操作をロック(無効化)する必要はないが、本実施形態では、条件Aに加えて条件B,Cが加重されている。条件Bは、ステアリングレバー32eによる操向操作をしても差し支えない状況であるとしても、もともとオペレータがステアリングレバー32eによる操向操作を望まない場合があることを考慮して設けられた条件である。条件Cは、ステアリングレバー32eによる操向操作をしても差し支えない状況になったとしても、ステアリングレバー32eが操作されたままの状態では当該操作が意図したものでない可能性があることを考慮して設けられた条件である。
【0042】
ステアリング制御部42は、条件A~Cのうち少なくとも1つが成立しない場合、ステアリングレバー32eによる操向操作を不能にする。具体的には、ステアリング制御部42は、条件A~Cのうち少なくとも1つが成立しない場合、ステアリングレバー32eが操作されたとしても、ステアリングシリンダを駆動させない。
【0043】
一方、ステアリング制御部42は、条件A~Cのそれぞれが成立するか否かにかかわらず、ステアリングホイール34の回動方向及び回動量に応じて、ステアリングシリンダを駆動させる。
【0044】
(制御部40の動作)
制御部40によるステアリングレバー32eの操向操作可否制御について、図5を参照しながら説明する。図5は、ステアリングレバー32eの操向操作可否制御を説明するためのフローチャートである。なお、本フローチャートは、車体の動き出し時におけるステアリングレバー32eの操向操作可否について示している。したがって、ステアリングレバー32eの操向操作が可能になったところで「END」にしている。
【0045】
ステップS1において、車体制御部41は、上述した条件1~4の全てが成立するか否かを判定する。具体的には、車体制御部41は、運転席31にオペレータが着座しておらず(条件1)、車速が所定速度以下であり(条件2)、走行レバー32bがニュートラル位置にあり(条件3)、さらに、ブレーキペダル37が踏まれていない(条件4)か否かを判定する。条件1~4の全てが成立する場合、車体制御部41からステアリング制御部42に不許可信号が入力され、処理はステップS5に進む。条件1~4のうち少なくとも1つが成立しない場合、車体制御部41からステアリング制御部42に許可信号が入力され、処理はステップS2に進む。
【0046】
ステップS2において、ステアリング制御部42は、上述した条件Bが成立するか否かを判定する。具体的には、ステアリング制御部42は、ステアリングレバースイッチ39が作動位置にあるか否かを判定する。ステアリングレバースイッチ39が作動位置にある場合、処理はステップS3に進む。ステアリングレバースイッチ39が非作動位置にある場合、処理はステップS5に進む。
【0047】
ステップS3において、ステアリング制御部42は、上述した条件Cが成立するか否かを判定する。具体的には、ステアリング制御部42は、ステアリングレバー32eが中立位置にあるか否かを判定する。ステアリングレバー32eが中立位置にある場合、処理はステップS4に進む。ステアリングレバー32eが中立位置にない場合、処理はステップS5に進む。
【0048】
ステップS4において、ステアリング制御部42は、ステアリングレバー32eによる操向操作を可能にする。すなわち、ステアリング制御部42は、ステアリングレバー32eによる操向操作を制限せず有効にする。
【0049】
ステップS5において、ステアリング制御部42は、ステアリングレバー32eによる操向操作を不能にする。すなわち、ステアリング制御部42は、ステアリングレバー32eによる操向操作を制限して無効にする。そして、ステップS1に戻って、ステアリングレバー32eの操向操作可否制御を繰り返す。
【0050】
(特徴)
(1)モータグレーダ1は、キャブ3内に配置される運転席31と、ステアリングホイール34(「第1ステアリング装置」の一例)と、ステアリングレバー32e(「第2ステアリング装置」の一例)と、着座センサ35と、制御部40とを備える。ステアリングホイール34は、運転席31の前方に配置される。ステアリングレバー32eは、運転席31の側方に配置される。制御部40は、運転席31にオペレータが着座していないことが着座センサ35によって検知された場合、ステアリングレバー32eによる操向操作を不能にする。従って、ステアリングホイール34とは別にステアリングレバー32eを設けた場合であっても、オペレータが乗降時に不要な操作をしなくても済む。
【0051】
(2)モータグレーダ1は、ステアリングレバー32eの後方に配置される左側アームレスト33Lを備える。この場合、オペレータがステアリングレバー32eを意図せず操作しやすくなるが、このような場合であっても、意図しない操作を効果的に抑制できる。
【0052】
(3)ステアリングレバー32eは、左側作業機レバー群32d(「作業機操作具」の一例)の後方に配置される。従って、ステアリングレバー32eで車両を操向操作しながら左側作業機レバー群32dで作業機4を駆動操作する、いわゆる複合操作を簡便に行うことができる。
【0053】
(4)キャブ3のフロア30は、上面視において前方に向かってテーパ状に形成されており、作業機4は、運転席に着座したオペレータから視認可能である。具体的には、図2に示すように、キャブ3のフロア30がテーパ状に形成されたエリアからブレード42が視認可能である。ここで、例えば左側コンソール32Lの前部に上下回動可能なロックバーを取り付け、当該ロックバーの上下に応じてステアリングレバー32eの操向操作可否を制御するとすれば、折角向上させた作業機4の視認性を毀損してしまう。従って、フロア30をテーパ状にすることで作業機4の視認性を向上させた場合には、着座センサ35の検知結果に基づいてステアリングレバー32eの操向操作可否を制御する手法が特に有用である。
【0054】
(他の実施形態)
上記実施形態では、本発明に係る第1及び第2ステアリング装置をモータグレーダに適用した場合について説明したが、本発明に係る第1及び第2ステアリング装置は、操舵輪で走行可能な作業車両(例えば、ホイールローダなど)に広く適用可能である。
【0055】
上記実施形態において、車体制御部41は、4つの条件1~4全てが成立する場合、不許可信号をステアリング制御部42に出力することとしたが、これに限られない。車体制御部41は、少なくとも条件1を含む1以上3以下の条件が成立する場合に不許可信号を出力することにしてもよい。
【0056】
上記実施形態において、車体制御部41は、条件4として「ブレーキペダル37が踏まれていないこと」が成立するか否か判定することとしたが、これに代えて、条件4として「インチングペダル38が踏まれていないこと」が成立するか否か判定してもよい。
【0057】
上記実施形態において、車体制御部41は、3つの条件A~C全てが成立する場合、ステアリングレバー32eによる操向操作を可能にすることとしたが、これに限られない。車体制御部41は、少なくとも条件Aを含む1以上2以下の条件が成立する場合に、ステアリングレバー32eによる操向行操作を可能にすることとしてもよい。なお、モータグレーダ1は、条件Bに係るステアリングレバースイッチ39を備えていなくてもよい。
【0058】
上記実施形態において、ステアリングレバー32eは、運転席31の左側に配置されることとしたが、運転席31の右側に配置されていてもよい。また、ステアリングレバー32eは、図2に示した位置から前後左右にずれた位置に移動してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 モータグレーダ
11,12 走行輪
2 車体フレーム
3 キャブ
4 作業機
30 フロア
31 運転席
32R 右側コンソール
32L 左側コンソール
32e ステアリングレバー(第2ステアリング装置)
33R 右側アームレスト
33L 左側アームレスト(アームレスト)
34 ステアリングホイール(第1ステアリング装置)
35 着座センサ
39 ステアリングレバースイッチ
40 制御部
図1
図2
図3
図4
図5