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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】グローブ弁又はベローズ弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/32 20060101AFI20230519BHJP
   F16K 41/10 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
F16K1/32 B
F16K41/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018133524
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020012484
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝俊
(72)【発明者】
【氏名】林 健司
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2008-0084328(KR,A)
【文献】特開2017-096422(JP,A)
【文献】特開平09-137879(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1274191(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/32
F16K 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱の開口部にボンネットを固着してバルブ本体を構成し、前記弁箱内に設けた弁座にストッパ部を有するステムの昇降動によりジスクを接離させて前記弁座を開閉させる構造であり、前記バルブ本体の部品をグローブ弁又はベローズ弁の部品として兼用化し、前記ステムと前記弁箱或はボンネットとの間に前記ステムが昇降動するときの距離を変更する距離変更手段を配置可能とし、この距離変更手段により前者のグローブ弁のステム昇降動距離を後者のベローズ弁よりも長くすることにより、前記グローブ弁とする際には、弁開時には前記ストッパ部を前記弁箱或はボンネットの底部に係止可能に設け、前記ベローズ弁とする際には、前記ステムの外周を包囲状態に設けたベローズの下端を前記ジスクに密封状態に固着すると共に、弁開時に前記ストッパ部の上部を前記弁箱或は前記ボンネットの底部に係止可能に設け、前記グローブ弁と前記ベローズ弁を兼用させる構造としたことを特徴とするグローブ弁又はベローズ弁。
【請求項2】
前記距離変更手段は、前記弁箱或は前記ボンネットの前記ステムの上昇位置に切欠いて形成される凹状段部であり、この凹状段部を形成したときには、前記ステムに形成された拡径状のストッパ部が係止可能なグローブ弁として使用され、一方、前記凹状段部の非形成時には、前記ストッパ部が前記弁箱或はボンネットの底部に係止可能なベローズ弁として使用され、このとき前者のグローブ弁とのステム昇降動距離の差を介して収縮時の前記ベローズの保護領域が確保される請求項1に記載のグローブ弁又はベローズ弁。
【請求項3】
前記距離変更手段は、前記ステムに形成された拡径状のストッパ部の上部に装着される環状カラーであり、このカラーの非装着時には、前記ストッパ部が前記弁箱或はボンネットの底部に係止可能なグローブ弁として使用され、一方、前記カラーを装着したときには、当該カラーが前記弁箱或は前記ボンネットの底部に係止可能なベローズ弁として使用され、このとき前者のグローブ弁とのステム昇降動距離の差を介して収縮時の前記ベローズの保護領域が確保される請求項1に記載のグローブ弁又はベローズ弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量調節に適したグローブ弁、又は可燃性ガスなどの危険性流体、蒸気流体などの特殊流体用に適したベローズ弁として兼用可能な構造のグローブ弁又はベローズ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、全開・全閉での使用はもとより、中間開度での流量制御に適した流量調節弁としてグローブ弁が広く用いられている。グローブ弁は、ステムの昇降によりこのステムに接続されたジスクが昇降し、この昇降により弁座との開度を調整して流量調節可能になっている。
【0003】
この種のグローブ弁として、例えば、特許文献1のグローブ弁が開示されている。このグローブ弁では、弁軸をハンドルで回転させて上下動させ、弁軸の上下動と共に弁体を上下動させることにより弁開度を調節しようとするものである。このようなグローブ弁では、全閉から全開状態までの弁開度が弁体の上下動のストロークの大きさにより設定されるため、所定流量を確保して流量調節能力を向上させるためには、全開時の弁体と弁座との空間を広くして弁棒(弁体)のストロークをできる限り大きくする必要がある。
【0004】
一方において、例えば、可燃性ガスなどの危険性流体、蒸気流体などの特殊流体用のバルブとして、ベローズ弁が広く用いられている。ベローズ弁は、弁棒の周りが金属製のベローズで密封された構造に設けられ、弁軸の軸装部分に装着されるパッキンに流体圧が直接加わらないようになっている。
【0005】
このようなベローズ弁として、例えば、特許文献2のベローズ弁が開示されている。このベローズ弁において、弁軸は回動しつつ上下動可能に軸装部に取付けられ、この弁軸に対して弁体が空転するように接続されている。弁軸の周りには金属ベローズが設けられ、この金属ベローズの下端が弁体側に溶接により固着され、上端は弁箱とボンネットとの間に挟着されたベローズフランジに溶接により固着される。この構造により、このベローズ弁は、グローブ弁の場合と同様に、弁体が弁軸と共に昇降して弁座を開閉するようになっており、さらにベローズ弁の場合には、金属ベローズによってグランド側との間が遮蔽されてグランド側への漏れが防止されるようになっている。
この場合、金属ベローズからの流体の外部漏れを確実に防ぐために、通常はステムの昇降量を小さくして金属ベローズの収縮変形量を減らし、疲労破壊などの破損を防ぐようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-125364号公報
【文献】特許第4987953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前者のグローブ弁と後者のベローズ弁とは、前述したように、ステムの昇降によりこのステムと共にジスクを昇降させてバルブを開閉する構成においては共通しているものの、前者のグローブ弁では、ステムの昇降量を増やして流量調節機能を向上させる必要があり、一方、後者のベローズ弁では、ステムの昇降量を減らして金属ベローズの消耗や破損を回避させる必要があることが異なっている。このように、これらのバルブでは、ステムの昇降量について相反する条件が要求され、内部の構造も異なっていた。その上、元来グローブ弁とベローズ弁とは、バルブとしての機能が相違し、その使用箇所も異なっている。
【0008】
このことから、前者グローブ弁と後者ベローズ弁とは、ステムの昇降でジスクを昇降させて弁座に接離する構造が共通するにもかかわらず、これらバルブの部品を兼用化する着想には至らず、それぞれが全く別のバルブとして個々に製造されていた。そのため、これまでは各バルブを構成する部品が必要になることで部品点数が増加し、各部品の加工も必要になり製造効率が悪くなっていた。これに対し、本発明者らは、これらグローブ弁とベローズ弁の兼用化に着想し、両者を兼用化する上で、互いに異なるステムの昇降量の差の問題を解決できるバルブに着目した。
【0009】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、グローブ弁又はベローズ弁としてバルブ全体を兼用化でき、グローブ弁としての使用時には、ステムの昇降量を大きくして流量特性を確保して流量調節機能を向上し、一方、ベローズ弁としての使用時には、ステムの昇降量を小さくしてベローズの破損を防ぎつつグランドから漏れを確実に防止することで、双方のバルブの機能性を十分に発揮するグローブ弁又はベローズ弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、弁箱の開口部にボンネットを固着してバルブ本体を構成し、弁箱内に設けた弁座にストッパ部を有するステムの昇降動によりジスクを接離させて弁座を開閉させる構造であり、バルブ本体の部品をグローブ弁又はベローズ弁の部品として兼用化し、ステムと弁箱或はボンネットとの間にステムが昇降動するときの距離を変更する距離変更手段を配置可能とし、この距離変更手段により前者のグローブ弁のステム昇降動距離を後者のベローズ弁よりも長くすることにより、グローブ弁とする際には、弁開時にはストッパ部を弁箱或はボンネットの底部に係止可能に設け、ベローズ弁とする際には、ステムの外周を包囲状態に設けたベローズの下端をジスクに密封状態に固着すると共に、弁開時にストッパ部の上部を弁箱或はボンネットの底部に係止可能に設け、グローブ弁とベローズ弁を兼用させる構造としたグローブ弁又はベローズ弁である。


【0011】
請求項2に係る発明は、距離変更手段は、弁箱或はボンネットのステムの上昇位置に切欠いて形成される凹状段部であり、この凹状段部を形成したときには、ステムに形成された拡径状のストッパ部が係止可能なグローブ弁として使用され、一方、凹状段部の非形成時には、ストッパ部が弁箱或はボンネットの底部に係止可能なベローズ弁として使用され、このときグローブ弁とのステム昇降動距離の差を介して収縮時のベローズの保護領域が確保されるグローブ弁又はベローズ弁である。
【0012】
請求項3に係る発明は、距離変更手段は、ステムに形成された拡径状のストッパ部の上部に装着される環状カラーであり、このカラーの非装着時には、ストッパ部が弁箱或はボンネットの底部に係止可能なグローブ弁として使用され、一方、カラーを装着したときには、当該カラーが弁箱或はボンネットの底部に係止可能なベローズ弁として使用され、このときグローブ弁とのステム昇降動距離の差を介して収縮時のベローズの保護領域が確保されるグローブ弁又はベローズ弁である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によると、ステムと弁箱或はボンネットとの間にステムが昇降動するときの距離変更手段を配置可能とし、この距離変更手段によりグローブ弁のステム昇降動距離をベローズ弁よりも長くして両者を兼用させる構造としたことにより、バルブ全体をグローブ弁とベローズ弁として兼用化できる。この場合、グローブ弁としての使用時には、ステムの昇降量を大きくして流量特性を確保して流量調節機能を向上可能となる。一方、ベローズ弁としての使用時には、ステムの昇降量を小さくしてベローズの破損を防ぎつつグランドから漏れを確実に防止可能となる。これらにより、双方のバルブの機能性を十分に発揮するグローブ弁とベローズ弁の兼用構造を提供でき、バルブ部品を兼用部品として予め設けておくことにより、この兼用部品によって部品点数を抑えつつグローブ弁又はベローズ弁を容易に製作できる。
【0014】
請求項2に係る発明によると、距離変更手段を凹状段部とすることにより、別途部品を設けることなくグローブ弁又はベローズ弁として兼用化でき、しかも、凹状段部を切削加工などの加工手段により容易に形成できる。凹状段部を設けたときには、この凹状段部にステムのストッパ部を係止させてステムの昇降量を所定の大きさに確保して流量調整機能を向上した状態でグローブ弁として使用できる。一方、凹状段部の非形成時には、ストッパ部を弁箱或はボンネットの底部に係止させてステムの昇降量を減らし、グローブ弁として使用する場合とのステム昇降動距離の差により収縮時のベローズの保護領域を確保し、収縮時におけるベローズの破損を阻止して流体の外部漏れを防止した状態でベローズ弁として使用できる。
【0015】
請求項3に係る発明によると、距離変更手段を環状カラーとすることにより、ステムや弁箱、ボンネットに加工を施すことなく、カラーをステムのストッパ部の上部にワンタッチで着脱してグローブ弁又はベローズ弁として簡便に兼用化できる。カラーの非装着時には、ストッパ部を弁箱或はボンネットの底部に係止させることでステムの昇降量を所定の大きさに確保して流量調整機能を向上した状態でグローブ弁として使用できる。一方、カラーの装着時には、このカラーを弁箱或はボンネットの底部に係止させてステムの昇降量を減らし、グローブ弁として使用する場合とのステム昇降動距離の差により収縮時のベローズの保護領域を確保し、収縮時におけるベローズの破損を阻止して流体の外部漏れを防止した状態でベローズ弁として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のグローブ弁又はベローズ弁の第1実施形態を示す縦断面図である。
図2図1におけるグローブ弁の弁開状態を示す縦断面図である。
図3】凹状段部の非形成状態のベローズ弁を示す縦断面図である。
図4図3の弁開状態を示す縦断面図である。
図5】本発明のグローブ弁又はベローズ弁の第2実施形態を示す縦断面図である。
図6図5におけるベローズ弁の弁開状態を示す半截断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明におけるグローブ弁又はベローズ弁を実施形態に基づいて詳細に説明する。図1図4においては、本発明のグローブ弁又はベローズ弁の第1実施形態を示しており、このうち、図1図2ではグローブ弁の態様に設ける場合、図3図4ではベローズ弁の態様に設ける場合をそれぞれ示している。
【0018】
図1図2においては、本発明のグローブ弁又はベローズ弁(以下、バルブ本体1という)をグローブ弁の態様に構成している。バルブ本体1は、ダクタイル鋳鉄製の弁箱2、ボンネット3を有し、このバルブ本体1に対してステム6、ジスク7を有するステムユニット5が装着される。本発明は、バルブ本体1の部品をグローブ弁又はベローズ弁の部品として兼用化できる構造に設けたものであり、すなわち、これらの各部品は、図3図4に示したベローズ弁の態様に設ける場合にも兼用可能になっている。
【0019】
弁箱2は、流体の流入口10、流出口11を有し、これらの間には内部流路12が形成され、この内部流路12の途中にシール用弁座(弁座口)13が設けられる。弁箱2の上部には、内部流路12から外部に開口するようにフランジ面14が一体に形成され、このフランジ面14の内周側には環状段部15が形成される。
【0020】
ボンネット3には、ステム6を取付け可能な貫通孔20が形成され、この貫通孔20にステム6が挿着可能に設けられる。貫通孔20の一部には、所定長さの雌螺子21が形成される。ボンネット3の底面には、環状段部15に嵌入可能な凸状の環状突起部22が形成される。
【0021】
ボンネット3は、環状突起部22の環状段部15への嵌合により位置決めされた状態で、この環状段部15を介してフランジ面に嵌合状態で装着され、この上から固着ボルト23により弁箱2に固着される。図示しないが、弁箱2とボンネット3にはシール用パッキンが挿入されている。
【0022】
ステムユニット5を構成するジスク7及びステム6は、例えばステンレス鋼や鋳鉄により形成され、本実施形態ではこれらがステンレスにより形成されている。ステムユニット5は、これらジスク7とステム6とが一体化された状態で、弁箱2、ボンネット3に装着される。
【0023】
ステム6の外周には、雌螺子21に螺合する雄螺子24がその一部に形成され、これら雄螺子24と雌螺子21との螺合を介してボンネット3に対してステム6が昇降可能に取付けられる。ステム6の下部付近の外周には切欠き溝25が形成され、この切欠き溝25にはCリング等のリテイニングリング26が装着される。
【0024】
ステム6の雄螺子24よりも下部位置には、この雄螺子24の外径よりも大径である拡径状のストッパ部30が旋盤加工等の手段により形成され、このストッパ部30が弁開時にボンネット3側に係止可能に設けられる。ステム6の上部には、手動ハンドル31が一体に取付けられ、このハンドル31の回転操作によりステム6が昇降動可能となり、ジスク7により弁座13を開閉可能になっている。
【0025】
ジスク7は、略キノコ形状に形成され、ステム6の下部を挿入するための有底穴32が上面側に形成される。有底穴32には、リテイニングリング26が装着されたステム6が挿入され、このリテイニングリング26を介してステム6がジスク7に抜け止め状態で取付けられる。これにより、ジスク7はステム6に対して空転可能となり、ステム6との供回りが防止された状態に設けられる。
【0026】
上記の構成に設けることにより、図1図2におけるバルブ本体1は、ハンドル31の操作によりステム6を回動させ、このステム6の昇降動により弁箱2内の弁座13にジスク7を接離させて開閉させることが可能なグローブ弁となっている。
【0027】
一方、図3、4においては、ベローズ弁の態様にバルブ本体40を設けた場合を示している。このバルブ本体40は、前述した弁箱2、ボンネット3、ステム6とジスク7とを有するステムユニット5等の部品を兼用して使用し、これに加えてベローズユニット41を有している。
【0028】
ベローズユニット41は、ベローズ42とこのベローズ保持用のベローズホルダ43とを有している。
ベローズ42は、成型ベローズの態様により、例えば0.1~0.2mm程度の厚さで所定長さの略円筒状に形成され、このベローズ42の上下端部には環状縁部44、45がそれぞれ設けられる。ベローズホルダ43は、例えば2mm程度の厚さの鋼板により環状に形成される。ベローズ42の上端側の環状縁部44は、ベローズホルダ43の内周側に溶接により固着され、これらベローズ42とベローズホルダ43とが一体化されてベローズユニット41が構成される。
【0029】
ベローズユニット41のベローズ42の下端側の環状縁部45は、ジスク7の略中間付近から下部にかけて形成された拡径部7aの上面に溶接により固着され、これによりステム6の下部外周囲がベローズ42で被覆シールされた状態で、ステムユニット5とベローズユニット41とが一体化される。
【0030】
ベローズ弁の態様のバルブ本体40を構成する場合、弁箱2のフランジ面14の内側にボンネット3に装着されたステムユニット5をジスク7側から装入し、このステムユニット5に一体化したベローズユニット41のベローズホルダ43を環状段部15の内周に装着させる。
【0031】
この状態で環状突起部22を環状段部15に嵌入させるようにボンネット3を弁箱2に取付け、固着用ボルト23でこれらを固着する。これにより、弁箱2とボンネット3との間にベローズホルダ43がシール状態で固定され、ステム6の下部外周囲がベローズ42により被覆された状態でステムユニット5が取付けられる。
【0032】
これにより、ステム6の外周を包囲状態に設けたベローズ42下端の環状縁部45をジスク7に密封状態に固着した状態で、ベローズ42上端の環状縁部44を弁箱2に固着したボンネット3の内部に密封状態に固着したベローズ弁を構成する。本例では、ベローズ42の上端をベローズホルダ43に固着しているが、弁箱2の内部に固着するようにしてもよい。
【0033】
上記のグローブ弁の態様のバルブ本体1、又はベローズ弁の態様のバルブ本体40の何れに設ける場合にも、ステム6と弁箱2或はボンネット3との間には距離変更手段50が配置可能になっており、この距離変更手段50により、ステム6が昇降動するときの距離(ストローク)を変更可能になっている。
そして、この距離変更手段50により、グローブ弁の態様のときのステム昇降動距離をベローズ弁の態様のときのステム昇降動距離よりも長くすることで、両者のバルブを兼用させる構造としている。
【0034】
図1図2に示すように、本実施形態における距離変更手段50は、ボンネット3におけるステム6の上昇位置に切欠いて形成される凹状段部により設けられる。
凹状段部50は、切削可能等の加工手段により切欠き状に形成され、この凹状段部50を形成したときには、ステム6のストッパ部30がこの凹状段部50に係止するグローブ弁の態様のバルブ本体1に設けられ、このときステム6がステム昇降動距離L1により昇降動可能になる。
【0035】
一方、図3図4に示すように、凹状段部50の非形成時には、ストッパ部30がボンネット3の底部3aに係止可能なベローズ弁の態様のバルブ本体40に設けられ、このときステム6がステム昇降動距離L2により昇降動可能になる。
【0036】
図1図2と、図3図4とを比較した場合、凹状段部50の長さからベローズホルダ43の高さを引いた長さの分だけ、グローブ弁態様であるバルブ本体1のステム昇降動距離L1が、ベローズ弁態様であるバルブ本体40のステム昇降動距離L2よりも長くなり、これらの差(ステム昇降動距離L1-ステム昇降動距離L2)S1により、グローブ弁として使用するときのストローク(昇降動距離)を、ベローズ弁として使用するときよりも大きく確保している。
【0037】
この場合、バルブ本体をベローズ弁として使用するときには、差S1を介して図4に示した収縮時のベローズ42の保護領域T1が確保され、この保護領域T1に収縮時のベローズ42が収まるようになっている。すなわち、図4に示すように、バルブ本体40では、全開時にストッパ部30がボンネット底部3aに係止することで、バルブ本体1に比較して差S1の分だけステム6の上昇移動量を少なくして保護領域Tを大きく確保することにより、ベローズ42が保護領域T1内で必要以上に収縮することを防いでいる。
【0038】
なお、この実施形態において、距離変更手段50をボンネット3のステム6上昇位置に設けているが、この距離変更手段50を弁箱2側に設けるようにしてもよい。距離変更手段50は、凹状段部に限ることなく、各種の態様によりステム6と弁箱2或はボンネット3との間に配置したり非配置の状態に設けることができる。
また、バルブ本体1とバルブ本体40とで長さの異なるステム6を使用しているが、同じ長さのステムを共通して使用できる。
【0039】
続いて、本発明におけるグローブ弁又はベローズ弁の上記実施形態における動作並びに作用を説明する。
上記実施形態のバルブ本体1、40において、ステム6とボンネット3との間に距離変更手段50を配置可能とし、この距離変更手段50によりグローブ弁の態様時のステム昇降動距離L1を、ベローズ弁の態様時のステム移動距離L2よりも長くして両者を兼用させる構造としているので、弁箱2、ステム6及びジスク7を有するステムユニット5、並びにバルブ本体1、40に用いられるハンドル31や固着ボルト23等の各種部品を兼用化しつつ、グローブ弁又はベローズ弁の何れの態様にも設けることができる。
ボンネット3は、距離変更手段50を形成或は非形成とすることで、容易にグローブ弁又はベローズ弁用として設けることができる。
【0040】
このことにより、弁箱2、ステム6、ジスク7、ハンドル31、固着ボルト23及びその他の部品を予め共通部品として設けるようにすれば、距離変更手段50を形成したボンネット3か、或は凹状段部を非形成としたボンネット3を用いることにより、部品点数を削減しつつグローブ弁態様のバルブ本体1又はベローズ弁態様のバルブ本体40を簡便に製作でき、部品の加工工数も少なくなって製造効率を高めることもできる。
【0041】
この場合、距離変更手段50として凹状段部をボンネット3に配置可能とし、この凹状段部50を切削加工等の加工手段により形成するか、又は凹状部を非形成の状態にできるため、容易にグローブ弁用、又はベローズ弁用のボンネット3を製作できる。
【0042】
図1において、ハンドル31を時計方向に回したときには、雄螺子24と雌螺子21との螺合を介してステム6が回転してこのステム6とジスク7とが弁閉方向に下降し、ハンドル31を締め切ったときに図1に示した弁閉状態となる。
【0043】
図2において、ハンドル31を反時計方向に回したときには、ステム6とジスク7とが弁開方向に上昇し、ストッパ部30が凹状段部50に係止したときにステム6の上昇が停止する。このとき、ジスク7がボンネット底部3aに接触することがなく、ジスク7の損傷や、ステム6からのジスク7のずれや離脱が防がれている。
【0044】
一方、図3において、ハンドル31を時計方向に回してステム6とジスク7とを弁閉方向に下降させるときには、ベローズ42の上下端部が、ジスク7、弁箱2とボンネット3の間に固定されたベローズホルダ42に溶接されていることで、ジスク7の回転が防がれた状態になっている。このため、ステム6がジスク7に対して空転しつつ、これらステム6とジスク7とが弁閉方向に下降する。これにより、バルブ本体40では、ステム6の回転時にベローズ42にねじれ力が加わることがなく、ベローズ42の破損や劣化が防がれている。
【0045】
図4において、ハンドル31を反時計方向に回してステム6とジスク7とを弁開方向に上昇させるときには、ストッパ部30がボンネット底部3aに係止したときに、ステム6の上昇が停止する。この場合、前述したようにステム昇降動距離の差S1を介して収縮時のベローズ42の保護領域T1を確保していることにより、ジスク7上昇時におけるベローズ42の必要以上の収縮を防止してベローズ42の破損や劣化を阻止可能となる。これによって、ボンネット3側への流体の外部漏れを確実に防止している。
【0046】
上記実施形態においては、バルブ本体1の状態でボンネット40に切欠き形成した凹状段部50によりステム昇降動距離L1を増やしているため、弁箱2やボンネット3を高さ方向に延長することなく、バルブ全体のコンパクト性を保ちながら流量調整能力を向上できる。
【0047】
続いて、本発明におけるグローブ弁又はベローズ弁の第2実施形態を説明する。なお、この実施形態において前記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。図5図6においては、本発明のグローブ弁又はベローズ弁をベローズ弁の態様に構成した状態を示している。
【0048】
この実施形態におけるバルブ本体60においては、距離変更手段61が、ステム6のストッパ部31の上部に装着される環状カラーにより設けられる。カラー61は、例えば普通鋼によってその外径がストッパ部30と略同径となるように形成される。
【0049】
カラー30の非装着時には、ストッパ部30がボンネット底部3aに係止するグローブ弁の態様に構成され、この場合、ステム6がステム昇降動距離L3により昇降動可能になる。
一方、カラー61を装着したときには、このカラー61がボンネット底部3aに係止可能なベローズ弁の態様に構成され、この場合、ステム6がステム昇降動距離L4により昇降動可能になる。
【0050】
これらグローブ弁の場合とベローズ弁の場合とを比較した場合、カラー61の高さからベローズホルダ43の高さを引いた長さの分だけ、グローブ弁態様のステム昇降動距離L3が、ベローズ弁態様のステム昇降動距離L4よりも長くなり、これらの差(ステム昇降動距離L3-ステム昇降動距離L4)S2により、グローブ弁として使用するときのストロークを、ベローズ弁として使用するときよりも大きく確保している。
【0051】
これにより、ベローズ弁の態様時には、差S2を介して収縮時のベローズ42の保護領域T2が確保され、この保護領域T2に収縮時のベローズ42が収まる。すなわち、ベローズ弁の態様時には、全開時にカラー61の上面がボンネット底部3aに係止することで、グローブ弁の態様時に比較して差S2の分だけステム6の上昇移動量を少なくして保護領域T2を大きく確保し、ベローズ42の保護領域T2内での必要以上の収縮を防いでいる。
【0052】
バルブ本体60をグローブ弁の態様に設けた場合、ハンドル31を時計方向に回したときにステム6とジスク7とが下降し、ハンドル31を締め切ったときに弁閉状態となる。
ハンドル31を反時計方向に回したときには、ステム6とジスク7とが上昇し、ストッパ部30がボンネット底部3aに係止した際にステム6の上昇が停止する。
【0053】
バルブ本体60をベローズ弁の態様に設けた場合、ハンドルを反時計方向に回転したときには、ステム6とジスク7とが弁開方向に上昇動作し、カラー61がボンネット底部3aに係止したときに、ステム6の上昇が停止する。この場合、上記保護領域T2を確保していることにより、収縮時のベローズ42の過大な収縮を防いで破損や劣化を阻止し、ボンネット3側への流体の外部漏れを防止可能となる。
【0054】
この実施形態におけるバルブ本体60では、ボンネット3や弁箱2に距離変更手段を設けるために切削加工等を施すことなく、カラー61を距離変更手段として着脱することで、グローブ弁又はベローズ弁の態様にできる。このため、弁箱2、ボンネット3、ステムユニット5、並びにその他のほぼ全ての部品の兼用化が可能となる。
【0055】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。例えば、ステムにストッパ部を設けることなく、ジスクの上端側にストッパ部を形成するようにしてもよく、この場合、ステムにストッパ部の加工を施したり、環状カラーのような部品の追加をする必要がなくなるため、製造効率を向上しつつグローブ弁とベローズ弁の兼用構造に設けることができる。
【0056】
また、本発明は、グローブ弁又はベローズ弁として兼用する場合に限らず、既設のバルブに前述の距離変更手段を配置したり或は非配置の状態とすることにより、グローブ弁からベローズ弁、或はベローズ弁からグローブ弁にバルブの態様を変更することもできる。
【符号の説明】
【0057】
1、40、60 バルブ本体
2 弁箱
3 ボンネット
3a 底部
6 ステム
7 ジスク
13 弁座
30 ストッパ部
42 ベローズ
50 凹状段部(距離変更手段)
61 環状カラー(距離変更手段)
L1、L2、L3、L4 ステム昇降動距離
S1、S2 ステム昇降動距離の差
T1、T2 保護領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6