(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】固形腫瘍を有する患者をクラス分けするための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20230519BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20230519BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20230519BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20230519BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230519BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
G01N33/53 K
C12Q1/06
C12Q1/6806 Z
C12Q1/6813 Z
G01N33/50 P
G01N33/68
(21)【出願番号】P 2018559227
(86)(22)【出願日】2017-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2017061089
(87)【国際公開番号】W WO2017194556
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-04-15
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-19
(32)【優先日】2016-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(73)【特許権者】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(73)【特許権者】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(73)【特許権者】
【識別番号】507139834
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリック-オピト ドゥ パリ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム・ガロン
(72)【発明者】
【氏名】ベルナルド・ムレチニック
(72)【発明者】
【氏名】フランク・パジェ
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】櫃本 研太郎
【審判官】石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-505607(JP,A)
【文献】特表2015-525349(JP,A)
【文献】特表2016-530505(JP,A)
【文献】特表2015-528698(JP,A)
【文献】特表2015-530877(JP,A)
【文献】特表2014-500493(JP,A)
【文献】Galon J,Cancer classification using the Immunoscore:a worldwide task force,Journal of Translational Medicine,2012年10月3日,Vol.10,Page.205
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結腸直腸癌に罹患した患者の生存期間の予後診断のためのインビトロ方法であって、
a)前記癌に対する前記患者の免疫応答の状態の指標となる2つ以上の生物学的マーカーを検出及び定量化する工程であって、免疫応答の状態の指標となる生物学的マーカーのそれぞれが、前記患者から得られた腫瘍サンプルにおいてインビトロで検出され、かつ定量化される工程;
b)前記癌に罹患した患者の参照群からの前記2つ以上の生物学的マーカーのそれぞれについて得られた値の分布と、前記2つ以上の生物学的マーカーについて工程a)で得られた値のそれぞれを比較する工程;
c)工程a)で得られた値に対応する分布のパーセンタイルを、前記2つ以上の生物学的マーカーについて工程a)で得られた値のそれぞれについて決定する工程;
d)工程c)で決定された生物学的マーカーのパーセンタイルの演算平均値またはメジアン値を算出する工程;ならびに
e)パーセンタイルの所定の参照演算平均値または所定のメジアン値と、工程d)で得られたパーセンタイルの演算平均値またはメジアン値を比較する工程であって、前記所定の参照値が生存期間に相関する工程
を含み、
前記2つ以上の生物学的マーカーが、CD3+細胞濃度及びCD8+細胞濃度を含み、
細胞の濃度を、腫瘍中心および/または腫瘍の侵入縁において定量する、方法。
【請求項2】
2つ以上の生物学的マーカーが、CD45RO+細胞濃度、GZM-B+細胞濃度、B細胞濃度および/またはDC細胞濃度をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2つ以上の生物学的マーカーが、腫瘍中心におけるCD3+細胞濃度、腫瘍中心におけるCD8+細胞濃度、侵入縁におけるCD3+細胞濃度、及び侵入縁におけるCD8+細胞濃度を含む、請求項
1または2に記載の方法。
【請求項4】
2つ以上の生物学的マーカーが、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2及びTBX21からなる群から選択される1個以上の遺伝子の発現レベルをさらに含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
2つ以上の生物学的マーカーが、GZMH、IFNG、CXCL13、GNLY、LAG3、ITGAE、CCL5、CXCL9、PF4、IL17A、TSLP、REN、IHH、PROM1及びVEGFAからなる群から選択される1個以上の遺伝子の発現レベルをさらに含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
2つ以上の生物学的マーカーが、ヒト適応免疫応答を示す少なくとも1つの遺伝子の発現レベルと、ヒト免疫抑制応答を示す少なくとも1つの遺伝子の発現レベルとをさらに含む、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ヒト適応免疫応答を示す少なくとも1つの遺伝子が、
【表1】
からなる群から選択され、ヒト免疫抑制応答を示す少なくとも1つの遺伝子が
【表2】
からなる群から選択される、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
それぞれの遺伝子の発現レベルが、mRNAハイブリダイゼーションおよび/または増幅により検出される、請求項
4から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
それぞれのタイプの細胞の濃度が、免疫組織学により検出される、請求項1から
6及び
8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形癌に罹患した患者をクラス分けするための方法、特に固形癌に罹患した患者の生存時間の予後診断のための方法、および/または固形癌に罹患した患者の抗腫瘍治療に対する応答性を検査するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Galonらにより詳細に説明されたように(イムノスコア(Immunoscore)を使用する癌のクラス分け:世界タスクフォース J Transl Med. 2012; 10: 205)、癌における臨床結果の予測は、原発腫瘍の外科切除の間に得られる組織サンプルの病理組織学的検査により通常実現される。伝統的な腫瘍ステージ化(AJCC/UICC-TNMクラス分け)は、腫瘍負荷(T)、排液性及び局所性リンパ節における癌細胞の存在(N)、ならびに転移の兆候(M)におけるデータを概説する。しかし、同一ステージにある患者の間で、臨床結果が顕著に変動しうることが現在認識されている。現在のクラス分けは、限定的な予後診断情報を提供し、治療に対する応答を予測しない。最近の文献により、腫瘍進行の制御における宿主免疫システムの重要性が示唆されている。そして、治療に対する予後及び応答を予測するためのツールとして実行される、免疫学的バイオマーカーを含む考え方が、証拠により支持されている。ヒト癌の巨大なコホートから収集された蓄積データにより、AJCC/UICC TNMクラス分けの有意性に付加されてよい予後診断値を有する免疫クラス分けのインパクトが示されている。従って、「イムノスコア(Immunoscore)」を伝統的なクラス分けに導入し、必須の予後診断及び強力な予測ツールを提供することを開始するのが不可欠である。このパラメーターを、腫瘍のルーチン化した診断及び予後評価の一部として、癌をクラス分けするバイオマーカーとして導入することは、患者の治療の合理的な層化を含む臨床的な意思決定を容易にするであろう。
【0003】
無数の特許出願に、免疫学的バイオマーカーを測定することによる、固形腫瘍に罹患した患者の生存期間の予後診断方法、および/または固形腫瘍に罹患した患者の抗腫瘍治療に対する応答を評価するための方法が記載されている。例えば、WO2015007625、WO2014023706、WO2014009535、WO2013186374、WO2013107907、WO2013107900、WO2012095448、WO2012072750及びWO2007045996を挙げることができる。これらの方法は全て、良好な結果を提供する。Galonら、Immunity 39, 2013, 11-26の概説で説明されるように、予後診断及び予測的免疫兆候は、広くオーバーラップしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2015007625
【文献】WO2014023706
【文献】WO2014009535
【文献】WO2013186374
【文献】WO2013107907
【文献】WO2013107900
【文献】WO2012095448
【文献】WO2012072750
【文献】WO2007045996
【非特許文献】
【0005】
【文献】J Transl Med. 2012; 10: 205
【文献】Galonら、Immunity 39, 2013, 11-26
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、固形腫瘍に罹患した患者の生存期間の予後診断方法、及び固形腫瘍に罹患した患者の抗腫瘍治療に対する応答を評価するための方法の正確性をさらに向上させた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、固形癌に罹患した患者の生存期間の予後診断のためのインビトロ方法に関し、該方法は以下の工程を含む:
a)前記癌に対する前記患者の免疫応答の状態の指標となる2つ以上の生物学的マーカーを定量化する工程であって、免疫応答の状態の指標となる生物学的マーカーのそれぞれが、前記患者から得られた腫瘍サンプルにおいて定量化される工程;
b)前記癌に罹患した患者の参照群からの前記2つ以上の生物学的マーカーのそれぞれについて得られた値の分布と、前記2つ以上の生物学的マーカーについて工程a)で得られた値のそれぞれを比較する工程;
c)工程a)で得られた値に対応する分布のパーセンタイルを、前記2つ以上の生物学的マーカーについて工程a)で得られた値のそれぞれについて決定する工程;
d)パーセンタイルの演算平均値またはメジアン値を算出する工程;ならびに
e)パーセンタイルの所定の参照演算平均値または所定のメジアン値と、工程d)で得られたパーセンタイルの演算平均値またはメジアン値を比較する工程であって、前記参照値が生存期間に相関する工程。
【0008】
典型的には、生存期間は、無病生存期間(DFS)、無進行生存期間(PFS)、疾患特異的生存期間(DSS)又は全生存期間(OS)である。
【0009】
本発明はまた、固形癌に罹患した患者の抗腫瘍治療に対する応答を評価するためのインビトロ方法に関し、該方法は以下の工程を含む:
a)前記癌に対する前記患者の免疫応答の状態の指標となる2つ以上の生物学的マーカーを定量化する工程であって、免疫応答の状態の指標となる生物学的マーカーのそれぞれが、前記患者から得られた腫瘍サンプルにおいて定量化される工程;
b)前記癌に罹患した患者の参照群からの前記2つ以上の生物学的マーカーのそれぞれについて得られた値の分布と、前記2つ以上の生物学的マーカーについて工程a)で得られた値のそれぞれを比較する工程;
c)工程a)で得られた値に対応する分布のパーセンタイルを、前記2つ以上の生物学的マーカーについて工程a)で得られた値のそれぞれについて決定する工程;
d)パーセンタイルの演算平均値またはメジアン値を算出する工程;ならびに
e)所定の参照値のパーセンタイルの所定の参照演算平均値または所定のメジアン値と、工程d)パーセンタイルの演算平均値またはメジアン値を比較する工程であって、前記参照値が前記抗腫瘍治療に相関する工程。
【0010】
「演算平均値」の語は、広く理解されるべきであり、サンプル値の合計をサンプルにおける要素の数により割った、サンプルの「古典的な」算術平均、ならびに荷重算術平均
【数1】
も包含する。
【0011】
加重値Wiは、それぞれの値による平均に対する影響の信頼性に対する測定値を示してよい。
【0012】
メジアン値は、多くの(典型的には5、10、15、200超の)生物学的マーカーが定量化される場合に特に適用される。
【0013】
本発明の方法は、特異的かつ複数の利点を有する。
【0014】
これらの方法において考慮される生物学的マーカーは、重要で特異的な特性を有するため、前記方法は非常な有意性を発揮し、強力な識別力を有する。
【0015】
考慮されるバイオマーカーは免疫バイオマーカーである。特に、バイオマーカーは適応免疫バイオマーカーである。その必須な特性の一つは、これらの免疫バイオマーカーが、再発期間、死亡前期間、治療応答前期間、治療応答の増幅、及び患者が治療に応答する間の延長期間に関連することである。
【0016】
本発明の方法の利点の一つは、各バイオマーカーの強度、発現、濃度、量のレベルが、長さ、生存期間、生存の延長、及び治療に対する応答の延長に関連することである。
【0017】
バイオマーカーのレベルが高くなるほど、もしくは低くなるほど、生存期間はより長く、もしくは短くなり、治療に対する応答はより良好に、もしくは悪化するため、本願発明の方法は適用可能である。
【0018】
該方法の大きな実行性に関連する重要で新規な要素の一つは、該方法が患者の臨床データ及び追跡調査と独立であることである。平均パーセンタイルを、患者の結果と独立に、バイオマーカーの生データ及び標準化データに基づいて計算することができる。
【0019】
包括的に適用可能な免疫反応を、ともに富化した場合、バイオマーカーが延長された生存期間及び治療に対するより良好な応答のカテゴリーに患者の階層を改善する一連のバイオマーカーにより特徴づける。
【0020】
それぞれのバイオマーカーで加重した、全てのバイオマーカーのパーセンタイル値平均により、危険カテゴリーへの非常に正確な患者の階層化が可能となる。
【0021】
典型的には、前記癌に罹患した患者の参照群は、少なくとも:100、200、300、400、500、1000もしくは2000人の患者を含む。
【0022】
典型的には、本発明の方法は、癌起源の種々の組織(例えば乳癌、結腸癌、直腸癌、肺癌、頭頸部癌、膀胱癌、卵巣癌、前立腺癌)、ならびに種々のタイプの癌細胞(腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌、黒色腫等)にも適用される。
【0023】
典型的には、上記方法に供される患者は、以下からなる群から選択される固形癌に罹患していてよい:副腎皮質癌、肛門癌、胆管癌(例えば、周辺癌、遠位胆管癌、肝内胆管癌)、膀胱癌、骨肉腫(例えば、骨芽細胞腫、軟骨肉腫、血管腫、軟骨粘液線維腫、骨肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、骨の巨細胞腫、脊索腫、多発性骨髄腫)、脳及び中枢神経系癌(例えば、髄膜腫、星状細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫、神経膠腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、神経鞘腫、胚細胞腫、頭蓋咽頭腫)、乳癌(例えば、非浸潤性乳管癌、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性小葉癌、女性化乳房)、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌(例えば、子宮内膜腺癌、腺棘細胞腫、乳頭状漿液性腺癌、明細胞)、食道癌、胆嚢癌(粘液腺癌、小細胞癌)、消化管カルチノイド腫瘍(例えば、絨毛腫、破壊性絨毛腺腫)カポジ肉腫、腎臓癌(例えば、腎細胞癌)、喉頭及び下咽頭癌、肝臓癌(例えば、血管腫、肝細胞腺腫、限局性結節性過形成、肝細胞癌)、肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌)、中皮腫、形質細胞腫、鼻腔および副鼻腔癌(例えば、鼻腔神経芽細胞腫、正中線肉芽腫)、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔および口腔咽頭癌、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、下垂体癌、前立腺癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫(例えば、胚性横紋筋肉腫、肺胞性横紋筋肉腫、多形性横紋筋肉腫)、唾液腺癌、皮膚癌(例えば、黒色腫、非黒色腫皮膚癌)、胃癌、精巣癌(例えば、精上皮腫、非精上皮胚細胞癌)、胸腺癌、甲状腺癌(例えば、濾胞腺癌、未分化癌、低分化癌、髄様甲状腺癌)、膣癌、外陰癌および子宮癌(例えば、子宮平滑筋肉腫)。
【0024】
好ましい態様において、癌は結腸直腸癌である。
【0025】
本明細書において、「腫瘍組織サンプル」は、患者に由来するいずれかの組織の腫瘍サンプルを意味する。前記組織サンプルは、インビトロ評価の目的で取得される。複数の実施態様において、腫瘍サンプルは、患者から切除された腫瘍から得られてもよい。複数の実施態様において、腫瘍サンプルは、患者の原発腫瘍において実施される、または患者の原発腫瘍から離れた転移サンプルにおいて実施される生検から得られてよい。例えば、結腸直腸癌に罹患した患者の腸において実施される内視鏡生検である。典型的には、腫瘍組織サンプルをホルマリン中で固定し、パラフィン(ワックス)もしくはエポキシのような堅牢な固定剤中に埋め込み、型に設置して後に硬化させ、容易にカットできるブロックを生成する。その後物質の薄いスライスを、マイクロトームを使用して調製し、ガラススライド上に設置し、(染色スライドを得るためにBenchMark(登録商標)XTのようなIHC自動装置を使用して)例えば免疫解剖化学解析にかけることができる。腫瘍組織サンプルを、組織マイクロアレイ(TMA)と呼ばれるマイクロアレイで使用することができる。TMAは、その内部で1000までの分離組織コアがアレイ状にアセンブルされ、多重の組織学的解析を可能とするパラフィンブロックからなる。この技術により、DNA、RNAもしくはタンパク質レベルのいずれかで、組織試料において一度に分子標的の迅速な菓子かが可能となる。TMA技術は、WO2004000992、US8068988、Olli et al 2001 Human Molecular Genetics、Tzankov et al 2005, Elsevier、Kononen et al 1198; Nature Medicineに記載されている。
【0026】
複数の実施態様において、腫瘍組織サンプルは、以下を含む:(i)球状の一次腫瘍(全体として)、(ii)腫瘍の中心由来の組織サンプル、(iii)腫瘍を直接取り囲む組織であって、該組織が、腫瘍の「侵入縁(invasive margin)」とより特定して名付けられていてよい組織由来の組織サンプル、(iv)腫瘍に近接したリンパ小島、(v)腫瘍に近接して位置するリンパ節、(vi)(例えば治療後の患者のフォローアップのために)手術の前に回収された腫瘍組織サンプル、ならびに(vii)離れた部位への転移。
【0027】
本明細書において「侵入縁(invasive margin)」は、当業者における一般的な意味を有し、腫瘍を取り囲む細胞環境を指す。複数の実施態様において、腫瘍組織サンプルは、腫瘍の中心、腫瘍の侵入縁又は近接リンパ節に由来するか否かに関わらず、生検用、一つまたは複数の生物学的マーカーのさらなる定量用の、特に解剖学的もしくは免疫細胞学的方法を通した、フローサイトメトリー法を通した、及び、ゲノミクス及びプロテオミクス解析を含む遺伝子若しくはタンパク質発現解析法を通した、外科的腫瘍再切断または組織サンプルの回収に続くものを含む、腫瘍中心又は腫瘍を囲む侵入縁から除去された組織の塊または切片を含む。もちろん、腫瘍組織サンプルは、種々の公知の回収後調製及び保存技術(例えば固定、貯蔵、凍結等)にかけることができる。サンプルは、新鮮で、凍結され、固定され(例えばホルマリン固定され)または包理され(例えばパラフィン包埋され)ることができる。複数の実施態様において、複数の腫瘍排出リンパ節の定量化が再切片化腫瘍において実施される場合、腫瘍組織サンプルは、前記再切片化腫瘍に由来し、腫瘍中心、及び場合により腫瘍の侵入縁を包含する。前記実施態様において、免疫適応反応のマーカーの定量化は、典型的には、以下に記載する免疫解剖学(IHC)により実行する。複数の態様において、実施態様において、複数の腫瘍排出リンパ節の定量化がイメージ化により測定される場合、腫瘍組織サンプルは、生検の結果物であってよい。前記実施態様において、免疫適応反応のマーカーの定量化は、典型的には、少なくとも一つの遺伝子の発現レベルを測定することにより実施してよい。
【0028】
典型的には、腫瘍組織サンプルは、以下からなる群から選択してよい:(i)球状の一次腫瘍(全体として)、(ii)腫瘍の中心由来の組織サンプル、(iii)腫瘍を直接取り囲む組織であって、該組織が、腫瘍の「侵入縁」とより特定して名付けられていてよい組織由来の組織サンプル、(iv)腫瘍に近接したリンパ小島、または腫瘍により誘導される三次リンパ構造、(v)いずれかの時期及び典型的には手術前に行われる腫瘍生検、ならびに(vii)離れた部位への転移。
【0029】
好ましい実施態様において、腫瘍の中心および/または腫瘍の侵入縁において、2つ以上の生物学的マーカーを定量する。
【0030】
好ましい実施態様において、腫瘍の中心および/または腫瘍の侵入縁において、2つ以上の生物学的マーカーを定量する。
【0031】
サンプルは、新鮮で、凍結され、固定され(例えばホルマリン固定され)または包理され(例えばパラフィン包埋され)ることができる。好ましい実施態様において、腫瘍サンプルは、患者の腫瘍において実施された生検の結果物である。
【0032】
例は、結腸直腸癌に罹患した又は結腸直腸癌に罹患したと疑われる患者の腹部において実施された内視鏡生検である。
【0033】
本明細書において、「生物学的マーカー」は、腫瘍に対する癌患者の免疫応答の状態の指標である、検出可能で、測定可能で、かつ定量可能ないずれかのパラメーターからなる。
【0034】
生物学的マーカーは、腫瘍部位における免疫システム由来の細胞の、存在、あるいは数または濃度を含む。
【0035】
生物学的マーカーはまた、腫瘍部位における免疫システム由来の細胞により特異的に産生されるタンパク質の存在又は量も含む。
【0036】
生物学的マーカーはまた、腫瘍部位における、宿主の特的免疫応答の惹起に関連する遺伝子の発現レベルの指標であるいずれかの生物学的物質の存在または量も含む。従って生物学的マーカーは、腫瘍部位における免疫システム由来の細胞により特異的に産生されるタンパク質をコードするゲノムDNAにより転写されるメッセンジャーRNA(mRNA)の存在または量も含む。
【0037】
従って生物学的マーカーは、Bリンパ球、Tリンパ球、単球/マクロファージ樹状細胞、NK細胞、NKT細胞、及びNK-DC細胞を含み、腫瘍組織中もしくはその近接部位に補充され、腫瘍の侵入縁中及び近接したリンパ節を含む、免疫システム由来の細胞により特異的に発現される表面抗原、あるいはそのような表面抗原をコードするmRNAを含む。
【0038】
実例として、生物学的マーカーとして使用される所望の表面抗原は、T細胞またはT細胞サブセットにより発現されるCD3、CD4、CD8及びCD45ROを含む。
【0039】
例えば、CD3抗原の発現、またはそのmRNAの発現が生物学的マーカーとして使用される場合、本発明の方法の工程a)におけるこの生物学的マーカーの定量化は、全てのTリンパ球及びNKT細胞に関する患者の適応免疫応答のレベルの指標である。
【0040】
例えば、CD8抗原の発現、またはそのmRNAの発現が生物学的マーカーとして使用される場合、本発明の方法の工程a)におけるこの生物学的マーカーの定量化は、細胞傷害性Tリンパ球に関する患者の適応免疫応答のレベルの指標である。
【0041】
例えば、CD45RO抗原の発現、またはそのmRNAの発現が生物学的マーカーとして使用される場合、本発明の方法の工程a)におけるこの生物学的マーカーの定量化は、記憶Tリンパ球または記憶エフェクターT細胞に関する患者の適応免疫応答のレベルの指標である。
【0042】
さらに例示的に、生物学的マーカーとして使用されるタンパク質はまた、パーフォリン(perforin)、グラニュリシン(granulysin)及びまたグランザイム-B(granzyme-B)のような、免疫システム由来の細胞により特異的に産生される細胞傷害性タンパク質も含む。
【0043】
無数の特許出願が、本発明の方法において使用しうる免疫応答状態の指標である多数の生物学的マーカーを記載している。
【0044】
典型的には、(すべてが参照して取り込まれる)WO2015007625、WO2014023706、WO2014009535、WO2013186374、WO2013107907、WO2013107900、WO2012095448、WO2012072750及びWO2007045996に記載された、免疫応答状態の指標である生物学的マーカーを、使用することができる。
【0045】
典型的には、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50個の個別の生物学的マーカーの組み合わせを定量化してよく、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の生物学的マーカー、より好ましくは2、3、4、5又は6個の生物学的マーカーの組み合わせを定量化してよい。
【0046】
好ましい実施態様において、免疫応答状態の指標である生物学的マーカーは、WO2007045996に記載されたものである。
【0047】
典型的には、使用してよい生物学的マーカーは、免疫システムに由来する細胞の細胞濃度である。
【0048】
好ましい実施態様において、2つ以上の生物学的マーカーが、CD3+細胞濃度、CD8+細胞濃度、CD45RO+細胞濃度、GZM-B+細胞濃度および/またはB細胞濃度を含む。
【0049】
最も好ましい実施態様において、2つ以上の生物学的マーカーが、CD3+細胞濃度とCD8+細胞濃度、CD3+細胞濃度とCD45RO+細胞濃度、CD3+細胞濃度とGZM-B+細胞濃度、CD8+細胞濃度とCD45RO+細胞濃度、CD8+細胞濃度とGZM-B+細胞濃度、またはCD45RO+細胞濃度とGZM-B+細胞濃度を含む。
【0050】
B細胞濃度もまた測定してよい(WO2013107900及びWO2013107907参照)。DC細胞濃度もまた測定してよい(WO2013107907参照)。
【0051】
好ましい実施態様において、免疫システム由来の細胞濃度を、腫瘍の中心および/または腫瘍の侵入縁において定量する。
【0052】
最も好ましい実施態様において、2つ以上の生物学的マーカーは、腫瘍中心におけるCD3+細胞濃度、腫瘍中心におけるCD8+細胞濃度、侵入縁におけるCD3+細胞濃度、及び侵入縁におけるCD8+細胞濃度を含む。
【0053】
濃度を、「コールドスポット(cold spot)」で、すなわち濃度が最も低い腫瘍サンプル領域で、あるいは最も低い濃度を有する2から10エリアに対応する2、3、4、5、6、7、8、9、10個の「コールドスポット」において測定してよい。
【0054】
濃度をまた、「ホットスポット(hot spot)」で、すなわち濃度が最も高い領域で、あるいは最も高い濃度を有する2から10エリアに対応する2、3、4、5、6、7、8、9、10個の「ホットスポット」において測定してよい。
【0055】
腫瘍サンプル全体の平均濃度を測定してもよい。
【0056】
典型的には、WO2013186374に記載された方法を、腫瘍サンプルにおける免疫細胞を定量化するために使用してよい。
【0057】
本明細書において「マーカー」は、対象の適応免疫応答の状態の指標である検出可能な、測定可能な、又は定量可能なパラメーターからなる。マーカーは、(i)前記マーカーに対しる定量値の増大若しくは減少、及び(ii)患者において実際に観察された生存期間の間に良好な統計的相関が発見される場合に、本願発明の方法を実行する目的で「生物学的マーカー」となる。試験される各マーカーに対する相関値を計算し、そして本発明の「生物学的マーカー」として前記マーカーの統計的関連を決定するために、当業者に公知の統計方法のいずれかを使用してよい。例示的には、本明細書実施例に示されるように、カプランマイヤー(Kaplan-Meier)曲線および/または対数タンク試験(log-rank-test)および/またはコックス比例ハザードモデルを使用する統計方法を使用してよい。一変量及び多変量解析(例えば、それぞれ対数タンク試験及びコックス試験)により、0.5未満、より好ましくは10-3、10-4、10-5、10-6または10-7未満のP値が測定されるいずれかのマーカーは、本発明の癌予後診断法で使用できる「生物学的マーカー」からなる。複数の実施態様において、マーカーは、免疫システム由来の細胞の存在、数または濃度を含む。複数の実施態様において、マーカーは、免疫システム由来の細胞により特異的に産生されるタンパク質の存在または量を含む。複数の実施態様において、マーカーは、宿主の特異的な免疫応答の惹起に関連する遺伝子のレベルの指標となる生物学的物質の存在または量を含む。従って複数の実施態様において、マーカーは、免疫システム由来の細胞により特異的に産生されるタンパク質をコードするゲノムDNAにより転写されるメッセンジャーRNA(mRNA)の存在または量を含む。複数の実施態様において、マーカーは、Bリンパ球、Tリンパ球、単球/マクロファージ樹状細胞、NK細胞、NKT細胞、及びNK-DC細胞を含む、免疫システム由来の細胞により特異的に発現される表面抗原、あるいはそのような表面抗原をコードするmRNAを含む。1より大きい種類の生物学的マーカーで本願発明の方法を実施する場合、工程a)で定量化される特定の生物学的マーカーの数は、通常100個の特定マーカーより少ないものであり、ほとんどの実施態様において50個の特定マーカーより少ないも
のである。本願発明の方法を使用して、正確かつ信頼できる予後診断に必要な特定生物学的マーカーの数は、定量化のための技術のタイプに応じて顕著に変動してよい。例示的に、本願発明の方法を所望のタンパク質マーカーのin situ免疫解剖学検出により実行する場合、特に前記マーカーの個別の定量化を、腫瘍中心(CT)及び侵入縁(IM)の両方で実行する場合、高い統計的有意性が、少数の生物学的マーカーの組み合わせで見いだされるる。例示的に、実施例に記載されているように、1つのマーカーのみ、または2つのマーカーの組み合わせにより、高い統計的有意性が得られた。さらに例示的に、本願発明の方法を所望の遺伝子マーカーの遺伝子発現解析により実施する場合、少数の生物学的マーカーでも高い統計的有意性が見出された。いずれの特定理論に制限される意図なく、生物学的マーカー定量化のための遺伝子発現解析を使用することにより、及び10個の特定生物学的マーカーの組み合わせより好ましくは15個の特定生物学的マーカーの組み合わせ、最も好ましくは20個の特定生物学的マーカーの組み合わせを使用することにより、本願発明の方法を実施する場合に、高い統計的連関(10-3より低いP値)に達すると発明者は考える。複数の実施態様において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50個のマーカーのレベルを測定する。本明細書において、所望の種々の生物学的マーカーそれぞれの名称は、HUGO遺伝子命名委員会(HUGO Gene Nomenclature Committee)由来のデータベースにおけるものを含む、国際的に認識された遺伝子配列及びタンパク質配列データベースにおいて見いだされるような、対応する遺伝子の国際的に認識された名称を指す。本明細書において、所望の種々の生物学的マーカーそれぞれの名称は、国際的に認識された遺伝子配列及びタンパク質配列データベースGenbankにおいて見いだされるような、対応する遺伝子の国際的に認識された名称を指してよい。これらの国際的に認識された配列データベースを通して、本明細書に記載された所望の種々の生物学的マーカーそれぞれに対応する核酸及びアミノ酸配列を、当業者は検索してよい。
【0058】
免疫応答の状態の指標となる生物学的マーカーは、以下の、WO2007045996の表9にリストされた1種以上の遺伝子または対応するタンパク質の発現レベルを含んでよい:18s、ACE、ACTB、AGTR1、AGTR2、APC、APOA1、ARF1、AXIN1、BAX、BCL2、BCL2L1、CXCR5、BMP2、BRCA1、BTLA、C3、CASP3、CASP9、CCL1、CCL11、CCL13、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL5、CCL7、CCL8、CCNB1、CCND1、CCNE1、CCR1、CCR10、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCRL2、CD154、CD19、CD1a、CD2、CD226、CD244、PDCD1LG1、CD28、CD34、CD36、CD38、CD3E、CD3G、CD3Z、CD4、CD40LG、CD5、CD54、CD6、CD68、CD69、CLIP、CD80、CD83、SLAMF5、CD86、CD8A、CDH1、CDH7、CDK2、CDK4、CDKN1A、CDKN1B、CDKN2A、CDKN2B、CEACAM1、COL4A5、CREBBP、CRLF2、CSF1、CSF2、CSF3、CTLA4、CTNNB1、CTSC、CX3CL1、CX3CR1、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL16、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL9、CXCR3、CXCR4、CXCR6、CYP1A2、CYP7A1、DCC、DCN、DEFA6、DICER1、DKK1、Dok-1、Dok-2、DOK6、DVL1、E2F4、EBI3、ECE1、ECGF1、EDN1、EGF、EGFR、EIF4E、CD105、ENPEP、ERBB2、EREG、FCGR3A,、CGR3B、FN1、FOXP3、FYN、FZD1、GAPD、GLI2、GNLY、GOLPH4、GRB2、GSK3B、GSTP1、GUSB、GZMA、GZMB、GZMH、GZMK、HLA-B、HLA-C、HLA-、MA、HLA-DMB、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DPA1、HLA-DQA2、HLA-DRA、HLX1、HMOX1、HRAS、HSPB3、HUWE1、ICAM1、ICAM-2、ICOS、ID1、ifna1、ifna17、ifna2、ifna5、ifna6、ifna8、IFNAR1、IFNAR2、IFNG、IFNGR1、IFNGR2、IGF1、IHH、IKBKB、IL10、IL12A、IL12B、IL12RB1、IL12RB2、IL13、IL13RA2、IL15、IL15RA、IL17、IL17R、IL17RB、IL18、IL1A、IL1B、IL1R1、IL2、IL21、IL21R、IL23A、IL23R、IL24、IL27、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3、IL31RA、IL4、IL4RA、IL5、IL6、IL7、IL7RA、IL8、CXCR1、CXCR2、IL9、IL9R、IRF1、ISGF3G、ITGA4、ITGA7、インテグリンアルファE (抗原CD103、ヒト粘膜リンパ球、抗原1; アルファポリペプチド)、遺伝子hCG33203、ITGB3、JAK2、JAK3、KLRB1、KLRC4、KLRF1、KLRG1、KRAS、LAG3、LAIR2、LEF1、LGALS9、LILRB3、LRP2、LTA、SLAMF3、MADCAM1、MADH3、MADH7,MAF、MAP2K1、MDM2、MICA、MICB、MKI67、MMP12、MMP9、MTA1、MTSS1、MYC、MYD88、MYH6、NCAM1、NFATC1、NKG7、NLK、NOS2A、P2X7、PDCD1、PECAM、CXCL4、PGK1、PIAS1、PIAS2、PIAS3、PIAS4、PLAT、PML、PP1A、CXCL7、PPP2CA、PRF1、PROM1、PSMB5、PTCH、PTGS2、PTP4A3、PTPN6、PTPRC、RAB23、RAC/RHO、RAC2、RAF、RB1、RBL1、REN、Drosha、SELE、SELL、SELP、SERPINE1、SFRP1、SIRPベータ1、SKI、SLAMF1、SLAMF6、SLAMF7、SLAMF8、SMAD2、SMAD4、SMO、SMOH、SMURF1、SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOCS4、SOCS5、SOCS6、SOCS7、SOD1、SOD2、SOD3、SOS1、SOX17、CD43、ST14、STAM、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5A、STAT5B、STAT6、STK36、TAP1、TAP2、TBX21、TCF7、TERT、TFRC、TGFA、TGFB1、TGFBR1、TGFBR2、TIM-3、TLR1、TLR10、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TNF、TNFRSF10A、TNFRSF11A、TNFRSF18、TNFRSF1A、TNFRSF1B、OX-40、TNFRSF5、TNFRSF6、TNFRSF7、TNFRSF8、TNFRSF9、TNFSF10、TNFSF6、TOB1、TP53、TSLP、VCAM1、VEGF、WIF1、WNT1、WNT4、XCL1、XCR1、ZAP70及びZIC2。
【0059】
本明細書において、所望の遺伝子それぞれの名称は、HUGO遺伝子命名委員会由来のデータベースにおけるものを含む、国際的に認識された遺伝子配列及びタンパク質配列データベースにおいて見いだされるような、対応する遺伝子の国際的に認識された名称を指す。本明細書において、所望の遺伝子それぞれの名称は、国際的に認識された遺伝子配列及びタンパク質配列データベースGenbankにおいて見いだされるような、対応する遺伝子の国際的に認識された名称を指してもよい。これらの国際的に認識された配列データベースを通して、本明細書に記載された所望の遺伝子それぞれに対する核酸を、当業者は検索してよい。
【0060】
好ましい実施態様において、免疫応答の状態の指標である生物学的マーカーは、(参照して取り込まれる)WO2014023706に記載されたものである。
【0061】
この実施態様の下で、ヒト適応免疫応答を示す単独遺伝子と、ヒト免疫抑制応答を示す単独遺伝子(遺伝子のペア)の発現レベルEL1を、本願発明の方法で評定する。好ましくは、それぞれの1から3個の遺伝子、より好ましくはそれぞれの1または2個の遺伝子を使用する。それぞれの種の限定的な遺伝子数は、良好で信頼できる結果をもたらし、かつ実行しやすい。特に、両遺伝子のそれぞれに対して単一参照値が十分である。遺伝子数が多くなると、参照値はより洗練される。参照値の測定例が以下に記載される。
【0062】
1または2ペアより多い遺伝子の使用は、実行がより困難であり、より費用がかかり、かつ時間がかかるが、他の利点をもたらす。例えば、1個の遺伝子の発現レベルの評定が誤っていた場合、同種(ヒト適応免疫応答又は免疫抑制応答)の他の遺伝子の控えにより、全ての結果を埋め合わせられる。
【0063】
本明細書において、「適応免疫応答を示す遺伝子」の表現は、腫瘍における適応免疫応答の作用因子である、または腫瘍における適応免疫応答の安定化に貢献する細胞により発現される遺伝子のいずれかを指す。適応免疫応答は、「獲得免疫応答」とも呼ばれ、T細胞サブタイプの抗原依存性刺激、B細胞活性化、及び抗体産生を含む。例えば、適応免疫応答の細胞は、それに限定されないが、細胞傷害性T細胞、記憶T細胞、Th1及びTh2細胞、獲得マクロファージ及び獲得樹状細胞、NK細胞ならびにNKT細胞を含む。従って、適応免疫応答を示す遺伝子は、典型的には、Th1適応免疫、細胞傷害性応答、または記憶応答のための共制御される遺伝子のクラスターから選択してよく、Th1細胞表現マーカー、インターロイキン(もしくはインターロイキンレセプター)またはケモカイン(もしくはケモカインレセプター)をコードしてよい。
【0064】
特定の実施態様において、適応免疫応答を示す遺伝子は、以下の群から選択される:
-CXCL13、CXCL9、CCL5、CCR2、CXCL10、CXCL11、CXCR3、CCL2及びCX3CL1からなる群から選択されるケモカイン及びケモカインレセプターのファミリー、
-IL15からなるサイトカインのファミリー、
-IFNG、IRF1、STAT1、STAT4及びTBX21からなるTH1ファミリー、
-ITGAE、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CD247、CD69及びICOSからなるリンパ球膜レセプターのファミリー、
-GNLY、GZMH、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM及びPRF1からなる細胞傷害性分子のファミリー、
ならびにキナーゼLTK。
【0065】
そのような好ましい遺伝子及び対応するタンパク質は、それらが以下の表5に示すように治療に対する患者の応答について最良の結果をもたらすため、以下の表1に報告される。
【表1】
【0066】
本明細書において、「免疫抑制応答を示す遺伝子」の表現は、腫瘍における免疫抑制応答の作用因子である、または腫瘍における免疫抑制応答の安定化に貢献する細胞により発現される遺伝子のいずれかを指す。例えば、免疫抑制応答は以下を含む:
-T細胞サブタイプの抗原依存刺激の共阻害:遺伝子CD276、CTLA4、PDCD1、CD274、TIM-3またはVTCN1 (B7H4)、
-マクロファージ及び樹状細胞の不活性化、ならびにNK細胞の不活性化:遺伝子TSLP、CD1AまたはVEGFA、
-癌幹細胞マーカーの発現、分化、および/または腫瘍形成:PROM1、IHH、
-腫瘍環境で産生される免疫抑制タンパク質の発現:遺伝子PF4、REN、VEGFA。
【0067】
えば、免疫抑制応答の細胞は、未成熟樹状細胞(CD1A)、制御性T細胞(Treg 細胞)及びIL17A遺伝子を発現するTh17細胞を含む。
【0068】
従って、適応免疫応答を示す遺伝子は、典型的には共制御される適応免疫遺伝子の群から選択されてよく、一方免疫抑制遺伝子は、免疫細胞(例えば樹状細胞)の不活性化の表示であってよく、免疫抑制応答の誘導に貢献してよい。
【0069】
特定の実施態様において、免疫抑制応答の表示となる遺伝子または対応するタンパク質は、以下の表2に報告される遺伝子からなる群から選択される。
【表2】
【0070】
前記遺伝子は、好ましくは治療に対する患者の応答について最良の結果をもたらす。
【0071】
本発明に関する好ましい条件下で、適応免疫応答を示す遺伝子は、GNLY、CXCL13、CX3CL1、CXCL9、ITGAE、CCL5、GZMH、IFNG、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、LTK、PRF1、STAT1、CD69、CD247、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2およびTBX21からなる群から選択され、免疫抑制応答の表示遺伝子は、PF4、REN、VEGFA、TSLP、IL17A、PROM1、IHH、CD1A、CTLA4、PDCD1、CD276、CD274、TIM-3およびVTCN1 (B7H4)からなる群から選択される。
【0072】
1個の適応遺伝子と1個の免疫抑制遺伝子を組み合わせた場合に、より頻繁に複数の遺伝子が発見されることから、最も好ましい遺伝子は、以下である:
-適応免疫応答を表示する遺伝子:CD3G、CD8A、CCR2及びGZMA
-免疫抑制応答を表示する遺伝子:REN、IL17A、CTLA4及びPDCD1。
【0073】
本発明に関するさらに好ましい条件下で、適応免疫応答を表示する遺伝子と免疫抑制応答を表示する遺伝子は、上記表1及び2の遺伝子からなる群からそれぞれ選択される。
【0074】
好ましい2つの遺伝子ペアの組み合わせ(総計4個の遺伝子)は以下である:
-CCR2、CD3G、IL17A及びREN、ならびに
-CD8A、CCR2、REN及びPDCD1。
【0075】
本発明の方法に使用するために選択される遺伝子の正確な選択は、患者に対して熟慮された治療のタイプに依存してよい。例えば、ヤーボイ(登録商標)として市販され、MDX-010またはMDX-101としても知られるイピリムマブ(Ipilimumab)のような、免疫システムを活性化させることにより働くモノクローナル抗体のような薬剤を使用する治療が患者に対して考慮される場合、免疫抑制応答のためにCX3CL1 IL15, CD247, CD3G, CD8A, PRF1, CCL5 and TBX21からなる群から選択される遺伝子、好ましくはCX3CL1 and IL15と適応抑制応答のための遺伝子CTLA4が好ましいであろう。
【0076】
アバスチン(登録商標)として市販されるベバシズマブ(bevacizumab)のような血管内皮成長因子A(VEGF-A)を阻害する抗体のような治療が患者に対して考慮される場合、適応免疫応答に対してIL-15及びGZMAからなる群から選択される遺伝子、ならびに免疫抑制応答に対して遺伝子VEGFAが好ましいであろう。
【0077】
BMS-936558のようなPD-1を標的とする抗体のような治療が患者に対して考慮される場合、例えば遺伝子GZMA - PDCD1(CD279とも称される)のペアに同様の考慮が適用される。
【0078】
好ましい実施態様において、免疫応答の状態の指標である生物学的マーカーは、(参照して取り込まれる)WO2014009535に記載されたものである。
【0079】
免疫応答の状態の指標である生物学的マーカーは、CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2及びTBX21からなる群から選択される1個以上の遺伝子の発現レベルを含んでよい。
【0080】
好ましい実施態様において、免疫応答の状態の指標である生物学的マーカーは、(参照して取り込まれる)WO2012095448に記載されたものである。
【0081】
免疫応答の状態の指標である生物学的マーカーは、GZMH、IFNG、CXCL13、GNLY、LAG3、ITGAE、CCL5、CXCL9、PF4、IL17A、TSLP、REN、IHH、PROM1及びVEGFAからなる群から選択される1個以上の遺伝子の発現レベルを含んでよい。
【0082】
好ましい実施態様において、免疫応答の状態の指標である生物学的マーカーは、(参照して取り込まれる)WO2012072750に記載されたものである。免疫応答の状態の指標である生物学的マーカーは、miR.609、miR.518c、miR.520f、miR.220a、miR.362、miR.29a、miR.660、miR.603、miR.558、miR519b、miR.494、miR.130aまたはmiR.639を含むmiRNAクラスターの発現レベルを含んでよい。
【0083】
生物学的マーカーを定量化する一般的な方法
本明細書で包含される細胞タイプ、タンパク質タイプ又は核酸タイプの生物学的マーカーを定量化するための、当業者に既知の方法のいずれかを、本月明の癌予後診断方法を実施するために使用してよい。従って、サンプル中のタンパク質又は核酸を検出及び定量化するための、当業者に既知の標準及び非標準(新たに出現した)技術のいずれかを、容易に適用することができる。
【0084】
本発明の生物学的マーカーの発現を、転写された核酸またはタンパク質の発現を検出するための広範囲にわたる公知方法のいずれかにより評定してよい。そのような方法の非限定的例は、分泌、細胞表面、細胞質もしくは核タンパク質の現出のための免疫学的方法、タンパク質精製方法、タンパク質機能もしくは活性アッセイ、核酸ハイブリダイゼーション法、核酸逆転写法、及び核酸増幅法を含む。
【0085】
好ましい実施態様において、その通常の翻訳語修飾のすべてもしくは一部を実行したマーカータンパク質を含む、マーカータンパク質もしくはそのフラグメントに特異的に結合する、抗体(例えば、放射線標識化、クロモフォア標識化、蛍光標識化、ポリマー鎖抗体、または酵素標識抗体)、抗体誘導体(例えば、基質に、またはタンパク質-リガンドペア(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン)のタンパク質もしくはリガンドとコンジュゲートした抗体)、あるいは抗体フラグメント(例えば、単一鎖抗体、単離抗体超可変ドメイン等)を使用して、マーカーの発現を評定する。
【0086】
特定の実施態様において、生物学的マーカー、または生物学的マーカーのセットを、公知の免疫組織学的方法のいずれかで定量してよい。
【0087】
典型的には、さらなる解析のために、腫瘍の薄い切片の一つを、最初に所望の生物学的マーカーの一つに対する標識抗体とインキュベートする。洗浄後、標識抗体、例えば、放射線、蛍光もしくは酵素標識により担われる標識の種類に応じて、適切な技術により所望の前記生物学的マーカーに結合した標識抗体を明らかにする。複数の標識化を同時に実行することができる。
【0088】
免疫組織学は、典型的には以下の工程を含む:i)腫瘍組織サンプルをホルマリンで固定する工程、ii)前記腫瘍組織サンプルを、パラフィン中に包理する工程、iii)前記腫瘍組織サンプルを、切断して染色用切片にする工程、iv)前記切片を、所望の免疫チェックポイントタンパク質に特異的な結合パートナーとインキュベートする工程、v)前記切片をリンスする工程、vi)前記切片を、典型的にはビオチン化された二次抗体とインキュベートする工程、ならびにvii)典型的にはアビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体との抗原-抗体複合体を明らかにする工程。従って、腫瘍組織サンプルを、所望の免疫チェックポイントタンパク質に対する結合タンパク質と最初にインキュベートする。洗浄後、所望の免疫チェックポイントタンパク質に結合した標識抗体を、標識化抗体、例えば放射線、蛍光または酵素ラベルにより担われる標識の種類に応じて、適切な技術により明らかにする。複数の標識化を同時に実行することができる。あるいは、本願発明の方法は、(染色シグナルを強化する)増幅システムと酵素分子に連結した二次抗体を使用してよい。そのような連結二次抗体は、例えばDako、EnVisionシステムから市販されている。例えばヘマトキシリン及びエオシン、DAPI、Hoechstでカウンター染色をしてもよい。他の染色法を、自動化、半自動化または手動システムを含む、当業者に明らかな適切な方法またはシステムのいずれかを使用して実行してよい。
【0089】
例えば、1種以上の標識を、抗体に結合し、それにより標的タンパク質(すなわち生物学的マーカー)の検出を可能とすることができる。例示的な標識は、放射性アイソトープ、フルオロフォア、リガンド、化学蛍光剤、酵素、およびそれらの組み合わせを含む。一次および/または二次親和性リガンドにコンジュゲートすることができる標識の非限定的な例は、蛍光染料または金属(例えば、フルオロセイン、ローダミン、フィコエリスリン、フルオロスカミン)、クロモフォア染料(例えばロドプシン)、化学蛍光化合物(例えばルミナール、イミダゾール)、及び生物蛍光タンパク質(例えば、ルシフェリン、ルシフェラーゼ)、ヘプタン(例えばビオチン)を含む。他の種々の有用な蛍光色素及びクロモフォアは、Stryer L (1968) Science 162:526-533、及びBrand LとGohlke J R (1972) Annu. Rev. Biochem. 41:843-868に記載されている。親和性リガンドはまた、酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ)、ラジオアイソトープ(例えば、3H、14C、32P、35Sまたは125I)及び粒子(例えば金)とすることができる。異なるタイプの標識を、種々の化学反応、例えば、アミン反応またはチオール反応を使用してアフィニティリガンドにコンジュゲートすることができる。しかし、アミン及びチオール以外の他の反応基、例えば、アルデヒド、カルボン酸及びグルタミンを使用することができる。種々の酵素染色法が、所望のタンパク質を検出するために当業者に知られている。例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼのような異なる酵素、またはDAB、AECもしくはFast Redのような異なる色素原を使用して酵素反応を可視化することができる。複数の実施態様において、標識は量子ドットである。例えば、量子ドット(Qドット)は、免疫組織科学、フローサイトメトリー及びプレートベースのアッセイを含む、成長しつつある適用のリストにおいて有用になりつつあり、それゆえ本発明との連携に有用であろう。Qドットナノクリスタルは、感度及び定量性について極度に明るいシグナル;イメージング及び解析について高い光学安定性を含むユニークな光学特性を有する。単一の励起光源が必要で
あり、コンジュゲートの範囲の増大は、広範囲の細胞ベースの応用においてそれらを有用にする。Qドットバイオコンジュゲートは、最も明るい慣用的な市販の染色と匹敵する量子収量により特徴づけられる。さらに、これらの量子ドットベースのフルオロフォアは、慣用的な染色よりも10から1000倍高く光を吸収する。Qドット量子ドットに潜在する発光は、狭く対称的であり、それは他の色とのオーバーラップを最小化し、同時に多くの色を使用することができるという事実にもかかわらず、隣接する検出チャンネルを介したにじみを最小化し、クロストークを弱化することを意味する。他の例において、標識化結合パートナーもしくは抗体を介して検出することができるペプチドもしくはタンパク質に抗体をコンジュゲートすることができる。間接IHCアッセイにおいて、それが標識されていないため、一次結合パートナーの結合を検出するために、二次抗体もしくは二次結合パートナーが必要である。
【0090】
複数の実施態様において、得られる染色標本を、検出可能シグナルを検出し、染色のデジタルイメージのようなイメージを得るためのシステムを使用してそれぞれイメージ化する。イメージ獲得のための方法は当業者に公知である。例えば、一度サンプルを染色すれば、例えば、正立もしくは倒立光学顕微鏡、走査コンフォーカル顕微鏡、カメラ、走査もしくはトンネル電子顕微鏡、カニングプローブ顕微鏡、及び赤外線イメージ検出器のような、染色もしくはバイオマーカー標識を検出するために、いずれかの光学もしくは非光学イメージデバイスを使用することができる。複数の例において、イメージをデジタルで捕捉することができる。その後得られたイメージを、サンプル中の免疫チェックポイントタンパク質の量、所望のマーカー陽性の細胞の絶対数、または所望のマーカー陽性の細胞表面を、定量的もしくは半定量的に測定するために使用することができる。IHCと使用するために適する種々の自動サンプルプロセシング、スキャニング及び解析システムを、当業者は利用することができる。そのようなシステムは、自動染色及び顕微鏡スキャニング、コンピューター化イメージ解析、(サンプルの方向及びサイズにおけるばらつきをコントロールする)シリアル切片比較、デジタル記録生成器、ならびに(組織切片を設置するスライドのような)サンプルのアーカイブ及びトラッキングを含むことができる。細胞イメージシステムは、慣用的な光学顕微鏡を、イメージプロセシングシステムを組み合わせて、免疫染色サンプルを含む、細胞及び組織において定量解析を実行するものが市販されている。例えば、CAS-200システム (Becton, Dickinson & Co.)を参照。特に、検出を、手動で、あるいはコンピュータープロセッサー及びソフトウェアを含むイメージプロセシング技術により行うことができる。そのようなソフトウェアを使用して、例えば、当業者に既知の手順を使用して(例えば米国特許第US20100136549号として出版されているものを参照)、例えば染色品質もしくは染色強度を含む要素に基づいて、イメージを変形し、較正し、標準化し、および/または評価することができる。イメージを、定量的もしくは半定量的に解析し、サンプルの染色強度に基づいてスコア化することができる。定量的もしくは半定量的組織化学は、特定されたバイオマーカー(すなわち免疫チェックポイントタンパク質)の存在を同定かつ定量化するために組織化学を実行したサンプルのスキャン及びスコア化法を指す。定量的もしくは半定量的方法は、染色濃度もしくは染色量を検出するイメージングソフトウェアを使用することができ、あるいは訓練されたオペレーターが結果を数値でランク付けする、人の目による染色検出法を使用することができる。例えば、ピクセルカウントアルゴリズム及び組織認識パターン(例えば、Aperioスペクトルソフトウェア、自動QUantitatative解析プラットフォーム(AQUA(登録商標)プラットフォーム)、またはIlastic 及びCalopixソフトウェアとのTribvn)を使用して、及び染色度を測定もしくは定量化もしくは半定量化する他の標準方法を使用して、イメージを定量的に解析することができる;例えば、米国特許第8,023,714号、米国特許第7,257,268号、米国特許第7,219,016号、米国特許第7,646,905号、米国特許公開公報第US20100136549号及び第20110111435号;Camp et al. (2002) Nature Medicine, 8:1323-1327;Bacus et al. (1997) Analyt Quant Cytol Histol, 19:316-328参照。総染色範囲の総計に対する(茶色染色のような)強力な陽性生殖の比率を、算出し、スコア化することができる。検出したバイオマーカー(すなわち免疫チェックポイントタンパク質)の量を定量化し、陽性ピクセルおよび/またはスコアのパーセンテージとして示すことができる。例えば、陽性ピクセルのパーセンテージとして、量を定量化することができる。複数の例において、染色された領域のパーセンテージ、例えば陽性ピクセルのパーセンテージとして、量を定量化する。例えば、サンプルは、総染色範囲に比較して、少なくとも、もしくはおよそ少なくとも、もしくは約0、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%あるいはそれより多い陽性ピクセルを有することができる。例えば、所望のマーカーに陽性な細胞の絶対数として量を定量化することができる。複数の実施態様において、サンプルの組織染色の強度もしくは量の数的表示であるサンプルに対して示され、サンプル中に存在する標的バイオマーカー(例えば、免疫チェックポイントタンパク質)の量を示す。光学濃度またはパーセンテージ範囲値を、例えば整数計測における計測スコアとして示すことができる。
【0091】
従って、複数の実施態様において、本発明の方法は、以下からなるステップを含む:i)生物学的マーカーと選択的に相互作用することができる結合パートナーを使用することにより、自動スライド染色システムにより得られる組織切片の1つ以上の免疫染色切片を提供するステップ、ii)高解像度スキャンキャプチャーによるステップi)のスライドのデジタル化を実行するステップ、iii)デジタル画像上で組織切片のスライスを検出するステップ、iv)同一表面を有する、均一に分散したユニットを有するサイズ参照グリッドを提供するステップであって、前記グリッドが解析する組織切片のサイズに調製されるステップ、ならびにv)各ユニットにおける染色細胞の強度または絶対数を検出、定量化及び測定するステップ。
【0092】
複合組織分析技術は、腫瘍組織サンプルにおける複数の免疫チェックポイントタンパク質を定量するために特に有用である。そのような技術は、単一の腫瘍組織サンプルから測定する少なくとも5個、または少なくとも10個、またはそれ以上のバイオマーカーを可能とするであろう。さらに、バイオマーカーの局在を保存し、癌細胞と非癌細胞におけるバイオマーカーの存在を区別することができることも技術に有益である。そのような方法は、例えば、米国特許番号第6,602,661号、第6,969,615号、第7,214,477号、第7,838,222号;米国特許公開番号第2011/0306514号(参照して本明細書に導入される);ならびにChung & Hewitt, Meth Mol Biol, Prot Blotting Detect, Kurlen & Scofield, eds. 536: 139-148, 2009に教唆される多層免疫組織学(L-IHC)、多層発現スキャニング(LES)または複合組織免疫ブロッティング(MTI)を含み、各文献は、多層及びブロット化膜、紙、フィルター等の組織切片の、8枚まで、9枚まで、10枚まで、11枚まで、またはそれより多いイメージを使用できることを教唆している。L-IHC/MTIプロセスを実行するために有用な被覆膜は、20/20 GeneSystems, Inc. (Rockville, MD)により市販されている。
【0093】
複数の実施態様において、L-IHC法を、新鮮もしくは保存した、種々の組織サンプルのいずれかにおいて実行することができる。組織サンプルは、慣用的に10%の通常バッファー化ホルマリン中に固定され、病理学部門で処理されたコアニードル生検を含む。標準的な厚さ5μmの組織切片を、組織ブロックから、L-IHCに使用される荷電スライドに切り出した。そして、L-IHCにより、組織切片から複数のバイオアフィニティ被覆膜に転移させた分子のコピーを得て、組織「イメージ」のコピーを本質的に生成する際の複数のマーカーを試験することが可能となる。パラフィン切片の場合、既知の方法で、例えば切片を、キシレンもしくはNEO-CLEAR(登録商標)のようなキシレン置換物に切片を暴露して、組織切片を脱パラフィン化する。パパイン、トリプシン、プロテイナーゼK等のようなプロテイナーゼで切片を処理することができる。その後、例えば、タンパク質のような組織分子を積層体を介して導入する直径0.4μmの孔を有する複数の厚さ10μmで被覆したポリマー主鎖のシートを含む膜基質の積層体を供して、その後組織切片上に設置する。液体と組織分子の移動は、膜表面に本質的に垂直となるよう設計される。切片、膜、スペーサー紙、吸収紙、重しその他のサンドウィッチを、組織から膜積層体に分子が移動するのを容易にするよう熱に暴露することができる。組織のタンパク質の一部を、(20/20 GeneSystems, Inc., Rockville, MDより市販の)積層体のバイオアフィニティ被覆膜のそれぞれで捕捉する。そして各膜は、組織のコピーを含み、単一組織切片で実行されるマーカープロフィールのオープンエンドな発展を可能とする、標準免疫ブロット技術を使用する、異なるバイオマーカーに対するプローブとすることができる。例えば、組織サンプルにおける異なる量の分子について生じうるように、組織からの積層体におけるより末端の膜においてタンパク質の量がより低くなりうるため、組織サンプルから放出される分子の異なる移動度、膜への分子の異なる結合親和性、トランスファーの長さ等、値の正規化、対照の実行、組織分子のトランスファーレベルの評価等を、膜の中や間に生じる変化に対する較正手順において含み、膜の中や間の情報の直接比較を可能とすることができる。従って、例えば、タンパク
質のようなビオチン化市販分子のようなタンパク質を定量化するための、標準的な試薬及び方法を使用して、公知のBlot fastStain、Ponceau Red、ブリリアントブルー染色等のような、標識アビジンもしくはストレプトアビジン;タンパク質染色に膜を暴露することにより結合ビオチンを明らかにする、いずれかの手段を使用し、膜当たりの総タンパク質を測定することができる。
【0094】
複数の態様において、本願発明の方法は、バイオマーカーを測定するために複合組織インプリンティング(MTI)技術を利用し、該方法は、複数のバイオマーカー、複数の場合に少なくとも6個のバイオマーカーを可能とすることにより、貴重な生検組織を保存する。
【0095】
複数の実施態様において、本発明の一部に使用されてもよい別途の複合組織解析システムが存在する。そのような技術の一つは、質量分析ベースの選択反応モニタリング(SRM)アッセイシステム(OncoPlexDx (Rockville, MD)より"Liquid Tissue"として市販)である。この技術は、米国特許第7,473,532号に記載されている。
【0096】
複数の実施態様において、本願発明の方法は、GE Global Research (Niskayuna, NY)により開発された複合IHC技術を利用した。この技術は、米国特許公報第2008/0118916号及び第2008/0118934号に記載されている。そこでは、複合標的を含有する生物学的サンプルにおいて、サンプルに蛍光プローブを結合させた後シグナル検出し、その後プローブを不活性化した後に別の標的にプローブを結合させ、検出及び不活性化を行い、全ての標的が検出されるまでこのプロセスを継続するステップを含む連続解析を実行する。
【0097】
複数の実施態様において、マルチスペクトルイメージシステムでシグナルを測定することができる蛍光(例えば、フルオロフォアまたは量子ドット)を使用する場合に、複合組織イメージングを実行することができる。マルチスペクトルイメージングは、イメージの各ピクセルにおける分光学的情報を集積し、得られたデータを分光イメージプロセシングソフトウェアで解析する技術である。例えば、該システムは、電子的に継続的選択可能であり、その後そのデータを扱うよう設計された解析プログラムを利用する、異なる波長の一連のイメージを採取することができる。従って該システムは、染料のスペクトルが高度にオーバーラップしている、あるいはそれらが共局在している、あるいはサンプル中の同一点に発生していたとしても、スペクトル曲線が異なっていれば、複数の染料からの定量的情報を同時に得ることが可能である。多くの生物学的材料が、自家蛍光し、またはより高いエネルギー光に励起された場合により低いエネルギー光を発する。このシグナルは、イメージ及びデータのコントラストを低くしうる。複合スペクトルイメージング能を有さない高感度カメラは、蛍光シグナルとともに自家蛍光シグナルを増大させるのみである。マルチスペクトルイメージングは、組織から自家蛍光を混合させずに分離し、それにより達成可能なシグナル-ノイズ比を改善する。簡単には、定量化を、以下のステップにより実行することができる:i)患者から得られた腫瘍組織マイクロアレイ(TMA)をえるステップ、ii)その後、所望の免疫チェックポイントタンパク質に特異性を有する抗抗体でTMAサンプルを染色するステップ、iii)さらに、腫瘍及び基質の自動セグメント化を補助するために、上皮細胞マーカーでTMAスライドを染色するステップ、iv)その後、マルチスペクトルイメージングシステムを使用してTMAスライドをスキャンするステップ、v)強力なパターン認識アルゴリズムを介して、特定の組織の検出、定量化、およびセグメント化を可能とする自動イメージ解析ソフトウェア(例えばPerkin Elmer Technology)を使用してスキャンしたイメージを処理するステップ。典型的には、自動学習アルゴリズムをトレーニングして、基質から腫瘍をセグメント化し、標識された細胞を同定する。
【0098】
患者から得られた腫瘍サンプルにおける遺伝子発現レベルを測定を、当業者に既知の技術群により実行することができる。
【0099】
典型的には、遺伝子の発現レベルを、該遺伝子により生成されるmRNAの量を測定することにより評定する。
【0100】
mRNAの量を測定する技術は当業者に公知である。例えば、サンプル(例えば、患者から調製された細胞または組織)に含まれる核酸を、最初に、例えば溶解酵素または化学溶液を使用する標準方法により抽出する、あるいはメーカーの説明書に従って核酸結合樹脂により抽出する。その後抽出したmRNAを、ハイブリダイゼーション(例えば、ノーザンブロット解析)および/または増幅(例えばRT-PCR)により検出する。好ましくは、定量又は半定量RT-PCRが好ましい。好ましくは、定量又は半定量RT-PCRが好ましい。
【0101】
他の増幅法は、リガーゼ鎖反応(LCR)、転写仲介増幅(TMA)、鎖置換増幅(SDA)及び核酸配列ベース増幅(NASBA)、RNAの次世代定量シークエンシング(NGS)を含む。
【0102】
少なくとも10ヌクレオチドを含み、本明細書における所望のmRNAに相補的又は相同である配列を提示する核酸は、ハイブリダイゼーションプローブまたは増幅プライマーとして有用である。そのような核酸は、完全に同一である必要はないが、典型的には相当するサイズの相同領域に少なくとも約80%同一、より好ましくは85%同一、さらにより好ましくは90から95%同一である。ある実施態様において、ハイブリダイゼーションを検出するために、検出可能な標識のような適当な手段と組み合わせて核酸を使用することが有益であろう。広範囲の適切な指示薬が当業者に既知であり、蛍光、放射性、酵素または他のリガンド(例えばアビジン/ビオチン)を含む。
【0103】
典型的にはプローブは、長さ10から1000ヌクレオチド、例えば10から800、より好ましくは15から700、典型的には20から500ヌクレオチドの一本鎖核酸を含む。典型的にはプライマーは、増幅する所望の核酸に完全に、またはほぼ完全に一致するよう設計された、長さ10から25ヌクレオチドの、より短い一本鎖核酸である。プローブ及びプライマーは、それらがハイブリダイズする核酸に「特異的である」、すなわちそれらは好ましくは、高度にストリンジェントな条件(溶解温度Tmの最高値、例えば50%ホルムアミド、5xまたは6xSCC(SCCは0.15MNaCl, 0.015MNaクエン酸))下でハイブリダイズする。
【0104】
上記増幅及び検出方法でプライマーまたはプローブとして使用してよい核酸を、キットとして組み合わせてよい。そのようなキットは、コンセンサスプライマー及び分子プローブを含む。好ましいキットはまた、増幅が発生したかを計測するために必要な成分も含む。キットはまた、例えば、PCRバッファー及び酵素;陽性対照配列、反応対照プライマー;ならびに特定の配列を増幅及び検出するための説明書も含んでよい。
【0105】
特定の実施態様において、本発明の生物学的マーカーの発現を、(そのDNA、RNAまたはそれに対するタンパク質において)生物マーカーを、デジタルオリゴヌクレオチドバーコードでタグ化し、バーコードの数を測定またはカウントすることにより評定してよい。
【0106】
特定の実施態様において、本発明の方法は、卵丘細胞から抽出した総RNAを提供し、より好ましくは定量的または半定量的RT-PCRにより、増幅および特異的なプローブへのハイブリダイゼーションに該RNAをかけるステップを含む。
【0107】
開示された方法で使用されるプローブは、in situハイブリダイゼーション(ISH)手順(例えば、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、発色in situハイブリダイゼーション(CISH)及び銀染色in situハイブリダイゼーション(SISH))あるいは比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)のような核酸検出に使用することができる。
【0108】
in situハイブリダイゼーションは、標的核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)に特異的にハイブリダイズできる、または該配列に特異的である標識プローブに、(スライド上にマウントされた細胞または組織サンプルのような)中期または間期染色体調製物の内容物において、標的核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)を含むサンプルを接触させることを含む。スライドに、場合により、例えばパラフィンまたは一様なハイブリダイゼーションを阻害しうる他の物質を除去する前処理を行ってよい。サンプル及びプローブは両方とも、例えば加熱して二本鎖核酸を変性させることにより、処理される。(典型的には平衡に達するまで)ハイブリダイゼーションを起こす条件下及び十分な時間、(適切なハイブリダイゼーションバッファー中で配合された)プローブ及びサンプルを組み合わせる。染色体調製物を洗浄して過剰なプローブを除去し、染色体標的の特異的な標的の検出を、標準技術を使用して実施する。
【0109】
例えば、蛍光標識アビジンまたはアビジン-アルカリホスファターゼを使用して、ビオチン化プローブを検出することができる。蛍光色素検出のために、蛍光色素を直接検出することができ、あるいは、例えばフルオロセインイソチオシアネート(FITC)-コンジュゲート化アビジンと、サンプルをインキュベートすることができる。FITCシグナルの増幅は、必要であれば、ビオチンコンジュゲート化ヤギ抗アビジン抗体とインキュベートし、洗浄し、FITCコンジュゲートアビジンと2度目のインキュベーションを行うことにより有効化することができる。酵素活性による検出のために、サンプルを、例えばストレプトアビジンとインキュベートし、洗浄し、ビオチンコンジュゲート化ホスファターゼとインキュベートし、再び洗浄し、(例えばアルカリホスファターゼ(AP)バッファー中で)前平衡化することができる。in situハイブリダイゼーションの一般的な記載として、米国特許第4,888,278号が参照される。
【0110】
FISH、CISH及びSISHのための無数の手順が当業者に知られている。例えば、FISHを実行する手順は、米国特許第5,447,841号、第5,472,842号及び第5,427,932号;ならびに例えばPinkel et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 83:2934-2938, 1986;Pinkel et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 85:9138-9142, 1988;及びLichter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 85:9664-9668, 1988に記載されている。CISHは、例えばTanner et al., Am. J. Pathol. 157:1467-1472, 2000及び米国特許第6,942,970号に記載されている。さらなる検出法は、米国特許第6,280,929号に記載されている。
【0111】
無数の試薬及び検出スキームをFISH、CISH及びSISHと組み合わせて、感度、解像度又は他の所望の特性を改善することができる。上記で議論したように、(蛍光染料及びQUANTUM DOTS(登録商標)を含む)フルオロフォアで標識したプローブを、FISHを実行する際に、場合により直接検出することができる。あるいは、(以下の非限定的例のような:ビオチン、ジゴキシゲニン、DNP及び種々のオキサゾール、ピラゾール、チアゾール、ニトロアリール、ベンゾフラザン、トリテルペン、ウレア、チオウレア、ロテノン、クマリン、クマリンベース化合物、ポドフィロトキシン、ポドフィロトキシンベース化合物、およびそれらの組み合わせ)ハプテン、リガンドまたは他の間接的に検出可能な部分でプローブを標識することができる。その後、サンプル(例えばプローブが結合する細胞又は組織サンプル)を、選択されたハプテン又はリガンドに特異的な抗体(またはレセプター、又は他の特異的結合パートナー)のような標識された検出薬剤と接触させることにより、そのような非蛍光分子(及びそれらが結合する標的核酸配列)で標識したプローブを検出することができる。検出薬剤を、フルオロフォア(例えばQUANTUM DOT(登録商標)で、または他の間接的に検出可能な部分で標識することができ、あるいはフルオロフォアで標識することができる1つ以上の付加的な特異的結合剤(例えば、二次抗体もしくは特異的抗体)と接触させることができる。
【0112】
他の例において、プローブ、または(抗体、例えば一時抗体、レセプターもしくは他の結合剤のような)特異的結合剤を、蛍光性もしくは染色性組成物を検出可能な蛍光、染色若しくは(例えば、SISHにおいて検出可能な金属粒子の蓄積におけるような)他の検出可能なシグナルに変換することができる酵素で標識する。上述のように、直接またはリンカーを介して間接的に、関連するプローブ又は検出薬剤に酵素を接着することができる。適切な薬剤(例えば結合薬剤)及び化学物質(例えばリンカー及び接着化学物質)の例は、米国特許出願番号第2006/0246524号;第2006/0246523号及び第2007/0117153号に記載されている。
【0113】
標識プローブ-特異的結合剤のペアを適切に選択することにより、複合検出スキームを生成し、(例えば単一の細胞もしくは組織サンプル上で、または1より多い細胞もしくは組織サンプル上で)単一アッセイにおける複合標的核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)の検出を容易にすることができることを、当業者は理解するであろう。例えば、第一の標的配列に対応する第一プローブをビオチンのような第一のハプテンで標識することができる一方、第二の標的配列に対応する第二プローブをDNPのような第二のハプテンで標識することができる。サンプルをプローブに暴露した後、第一の特異的結合剤(この場合、第一のフルオロフォア、例えば585nmで発光する、例えば第一の分光的に異なるQUANTUM DOT(登録商標)で標識したアビジン)、ならびに第二の特異的結合剤(この場合、第二のフルオロフォア(例えば705nmで発光する、例えば第二の分光的に異なるQUANTUM DOT(登録商標))で標識した、抗DNP抗体もしくは抗体フラグメント)と、サンプルを接触させることにより、結合プローブを検出することができる。付加的なプローブ/結合剤を、他の分光的に異なるフルオロフォアを使用して、複合検出スキームに追加することができる。直接または間接(1ステップ、2ステップまたはそれ以上)の無数のバリエーションを想定することができ、その全ては、記載されるプローブ及びアッセイの文脈で適切である。
【0114】
典型的にはプローブは、長さ10から100ヌクレオチドの、例えば10から800の、より好ましくは15から700の、典型的には20から500の一本鎖核酸を含む。典型的にはプライマーは、増幅する所望の核酸に完全にまたはほぼ完全に一致するよう設計される、長さ10から25ヌクレオチドのより短い一本鎖核酸である。プローブ及びプライマーは、それらがハイブリダイズする核酸に「特異的である」、すなわちそれらは好ましくは、高度にストリンジェントな条件(溶解温度Tmの最高値、例えば50%ホルムアミド、5xまたは6xSCC(SCCは0.15MNaCl, 0.015MNaクエン酸))下でハイブリダイズする。
【0115】
上記増幅及び検出方法で使用する核酸プライマーまたはプローブは、キットとして組み合わせてよい。そのようなキットは、コンセンサスプライマー及び分子プローブを含む。好ましいキットはまた、増幅が発生したかを計測するために必要な成分も含む。キットはまた、例えば、PCRバッファー及び酵素;陽性対照配列、反応対照プライマー;ならびに特定の配列を増幅及び検出するための説明書も含んでよい。
【0116】
特定の実施態様において、本発明の方法は、卵丘細胞から抽出した総RNAを提供し、より好ましくは定量的または半定量的RT-PCRにより、増幅および特異的なプローブへのハイブリダイゼーションに該RNAをかけるステップを含む。
【0117】
別の好ましい実施態様において、DNAチップ解析により発現レベルを測定する。そのようなDNAチップまたは核酸マイクロアレイは、マイクロチップ、ガラススライドまたはミクロスフェアサイズのビーズでありうる基質に化学的に接着した異なる核酸プローブからなる。マイクロチップは、ポリマー、プラスチック、樹脂、ポリサッカリド、シリカもしくはシリカベースの物質、カーボン、金属、無機ガラス、またはニトロセルロースから構成されてよい。プローブは、cDNAまたは約10から約60塩基対であってよいオリゴヌクレオチドのような核酸を含む。発現レベルを測定するために、場合により最初に逆転写にかけられた、試験対象由来のサンプルを、標識化し、ハイブリダイゼーション条件下でマイクロアレイと接触させ、マイクロアレイ表面に接着したプローブ配列に相補的である標的核酸との間で複合体を形成する。その後、標識しハイブリダイズした複合体を検出し、定量化もしくは半定量化することができる。種々の方法により、例えば放射性もしくは蛍光標識を使用することにより、標識化を達成してよい。多くの種類のマイクロアレイハイブリダイゼーション技術が当業者に利用可能である(例えば、Hoheiselによるレビュー, Nature Reviews, Genetics, 2006, 7:200-210を参照)。
【0118】
遺伝子の発現レベルを、絶対発現レベルまたは標準化発現レベルとして表現してよい。本発明の方法では、両方のタイプの値を使用する。実験開始時の小さな差異が、数サイクル後に膨大な差異をもたらしうるため、定量PCRを発現評価法として使用する場合、標準化発現レベルとして表現するのが好ましい。
【0119】
典型的には、発現レベルは、遺伝子の発現を、患者の癌ステージを測定するために関係しない遺伝子、例えば構成的に発現されるハウスキーピング遺伝子の発現と比較することにより、該遺伝子の絶対発現レベルを較正して標準化される。標準化に適切な遺伝子は、アクチン遺伝子ACTB、リボソーム18S遺伝子、GUSB、PGK1及びTFRCのようなハウスキーピング遺伝子を含む。この標準化により、あるサンプル、例えば患者のサンプルの発現レベルを、別のサンプルのへつ現レベルと比較すること、または異なる供給源に由来するサンプル群を比較することが可能となる。
【0120】
本明細書において所望の遺伝子それぞれの名称は、HUGO遺伝子命名委員会由来のデータベースにおけるものを含む、国際的に認識された遺伝子配列及びタンパク質配列データベースにおいて見いだされるような、対応する遺伝子の国際的に認識された名称を指す。明細書において、所望の遺伝子それぞれの名称は、国際的に認識された遺伝子配列及びタンパク質配列データベースGenbankにおいて見いだされるような、対応する遺伝子の国際的に認識された名称を指してよい。これらの国際的に認識された配列データベースを通して、本明細書に記載された所望の遺伝子それぞれに対応する核酸を、当業者は検索してよい。
【0121】
本発明の癌予後評価法を、適応免疫応答を示す少なくとも一つの遺伝子と、免疫抑制応答を示す少なくとも一つの遺伝子とを組み合わせを含む場合に、遺伝子を組み合わせて実行してよい。本発明の方法で使用してよい遺伝子の数は、該方法を実行するときに実際に利用できる所望の異なる生物学的遺伝子の数にのみ限定される。従って、一実施態様において、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50個の異なる遺伝子の組み合わせ、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9または10個の組み合わせ、より好ましくは2、3、4、5または6個の組み合わせを定量化する。しかし、高い統計的相関(10-3より低いP値)に達するために必要とされる組み合わせ遺伝子の数は、遺伝子の組み合わせを定量化するために使用される技術に依存するであろう。適応免疫応答を示す遺伝子として使用される遺伝子の数と、免疫抑制応答を示す遺伝子として使用される遺伝子の数は、同じであってよく、または異なっていてよい。
【0122】
本発明に関連する好ましい条件下で、(適応免疫応答及び免疫抑制応答)それぞれの種類の遺伝子のほぼバランス化された数は、例えばそれぞれに2個、またはそれぞれに3個、または一つの種に5個かつ他の種で5個、使用される。
【0123】
患者から得られた腫瘍サンプルにおける遺伝子発現レベルの測定は、当業者に既知の技術により実行してよい。
【0124】
典型的には、遺伝子の発現レベルを、この遺伝子により産生されるmRNAの量を測定することにより評価する。従って本発明の主題は、前記遺伝子に対応するmRNAの量を測定することにより、ヒト適応免疫応答を示す一つまたは複数の遺伝子の発現レベルELA、あるいはヒト免疫抑制応答を示す一つまたは複数の遺伝子の発現レベルELIを測定する工程を含む、上記規定される癌を有する患者をスクリーニングする方法である。
【0125】
mRNAの量を測定する方法は当業者に公知である。例えば、サンプル(例えば、患者から調製された細胞または組織)に含まれる核酸を、最初に、例えば溶解酵素または化学溶液を使用する標準方法により抽出する、あるいはメーカーの説明書に従って核酸結合樹脂により抽出する。その後抽出したmRNAを、ハイブリダイゼーション(例えば、ノーザンブロット解析)および/または増幅(例えばRT-PCR)により検出する。好ましくは、定量又は半定量RT-PCRが好ましい。リアルタイムまたは半定量RT-PCRが特に有利である。
【0126】
他の増幅法は、リガーゼ鎖反応(LCR)、転写仲介増幅(TMA)、鎖置換増幅(SDA)及び核酸配列ベース増幅(NASBA)、RNAの次世代定量シークエンシング(NGS)を含む。
【0127】
少なくとも10ヌクレオチドを含み、本明細書における所望のmRNAに相補的又は相同である配列を提示する核酸は、ハイブリダイゼーションプローブまたは増幅プライマーとして有用である。そのような核酸は、完全に同一である必要はないが、典型的には相当するサイズの相同領域に少なくとも約80%同一、より好ましくは85%同一、さらにより好ましくは90から95%同一である。ある実施態様において、ハイブリダイゼーションを検出するために、検出可能な標識のような適当な手段と組み合わせて核酸を使用することが有益であろう。広範囲の適切な指示薬が当業者に既知であり、蛍光、放射性、酵素または他のリガンド(例えばアビジン/ビオチン)を含む。
【0128】
典型的にはプローブは、長さ10から1000ヌクレオチド、例えば10から800、より好ましくは15から700、典型的には20から500ヌクレオチドの一本鎖核酸を含む。典型的にはプライマーは、増幅する所望の核酸に完全に、またはほぼ完全に一致するよう設計された、長さ10から25ヌクレオチドの、より短い一本鎖核酸である。プローブ及びプライマーは、それらがハイブリダイズする核酸に「特異的である」、すなわちそれらは好ましくは、高度にストリンジェントな条件(溶解温度Tmの最高値、例えば50%ホルムアミド、5xまたは6xSCC(SCCは0.15MNaCl, 0.015MNaクエン酸))下でハイブリダイズする。
【0129】
上記増幅及び検出方法でプライマーまたはプローブとして使用してよい核酸を、キットとして組み合わせてよい。そのようなキットは、コンセンサスプライマー及び分子プローブを含む。好ましいキットはまた、増幅が発生したかを計測するために必要な成分も含む。キットはまた、例えば、PCRバッファー及び酵素;陽性対照配列、反応対照プライマー;ならびに特定の配列を増幅及び検出するための説明書も含んでよい。
【0130】
特定の実施態様において、本発明の方法は、卵丘細胞から抽出した総RNAを提供し、より好ましくは定量的または半定量的RT-PCRにより、増幅および特異的なプローブへのハイブリダイゼーションに該RNAをかけるステップを含む。
【0131】
開示された方法で使用されるプローブは、in situハイブリダイゼーション(ISH)手順(例えば、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)、発色in situハイブリダイゼーション(CISH)及び銀染色in situハイブリダイゼーション(SISH))あるいは比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)のような核酸検出に使用することができる。
【0132】
in situハイブリダイゼーションは、標的核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)に特異的にハイブリダイズできる、または該配列に特異的である標識プローブに、(スライド上にマウントされた細胞または組織サンプルのような)中期または間期染色体調製物の内容物において、標的核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)を含むサンプルを接触させることを含む。スライドに、場合により、例えばパラフィンまたは一様なハイブリダイゼーションを阻害しうる他の物質を除去する前処理を行ってよい。サンプル及びプローブは両方とも、例えば加熱して二本鎖核酸を変性させることにより、処理される。(典型的には平衡に達するまで)ハイブリダイゼーションを起こす条件下及び十分な時間、(適切なハイブリダイゼーションバッファー中で配合された)プローブ及びサンプルを組み合わせる。染色体調製物を洗浄して過剰なプローブを除去し、染色体標的の特異的な標的の検出を、標準技術を使用して実施する。
【0133】
例えば、蛍光標識アビジンまたはアビジン-アルカリホスファターゼを使用して、ビオチン化プローブを検出することができる。蛍光色素検出のために、蛍光色素を直接検出することができ、あるいは、例えばフルオロセインイソチオシアネート(FITC)-コンジュゲート化アビジンと、サンプルをインキュベートすることができる。FITCシグナルの増幅は、必要であれば、ビオチンコンジュゲート化ヤギ抗アビジン抗体とインキュベートし、洗浄し、FITCコンジュゲートアビジンと2度目のインキュベーションを行うことにより有効化することができる。酵素活性による検出のために、サンプルを、例えばストレプトアビジンとインキュベートし、洗浄し、ビオチンコンジュゲート化ホスファターゼとインキュベートし、再び洗浄し、(例えばアルカリホスファターゼ(AP)バッファー中で)前平衡化することができる。in situハイブリダイゼーションの一般的な記載として、米国特許第4,888,278号が参照される。
【0134】
FISH、CISH及びSISHのための無数の手順が当業者に知られている。例えば、FISHを実行する手順は、米国特許第5,447,841号、第5,472,842号及び第5,427,932号;ならびに例えばPinkel et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 83:2934-2938, 1986;Pinkel et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 85:9138-9142, 1988;及びLichter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 85:9664-9668, 1988に記載されている。CISHは、例えばTanner et al., Am. J. Pathol. 157:1467-1472, 2000及び米国特許第6,942,970号に記載されている。さらなる検出法は、米国特許第6,280,929号に記載されている。
【0135】
無数の試薬及び検出スキームをFISH、CISH及びSISHと組み合わせて、感度、解像度又は他の所望の特性を改善することができる。上記で議論したように、(蛍光染料及びQUANTUM DOTS(登録商標)を含む)フルオロフォアで標識したプローブを、FISHを実行する際に、場合により直接検出することができる。あるいは、(以下の非限定的例のような:ビオチン、ジゴキシゲニン、DNP及び種々のオキサゾール、ピラゾール、チアゾール、ニトロアリール、ベンゾフラザン、トリテルペン、ウレア、チオウレア、ロテノン、クマリン、クマリンベース化合物、ポドフィロトキシン、ポドフィロトキシンベース化合物、およびそれらの組み合わせ)ハプテン、リガンドまたは他の間接的に検出可能な部分でプローブを標識することができる。その後、サンプル(例えばプローブが結合する細胞又は組織サンプル)を、選択されたハプテン又はリガンドに特異的な抗体(またはレセプター、又は他の特異的結合パートナー)のような標識された検出薬剤と接触させることにより、そのような非蛍光分子(及びそれらが結合する標的核酸配列)で標識したプローブを検出することができる。検出薬剤を、フルオロフォア(例えばQUANTUM DOT(登録商標)で、または他の間接的に検出可能な部分で標識することができ、あるいはフルオロフォアで標識することができる1つ以上の付加的な特異的結合剤(例えば、二次抗体もしくは特異的抗体)と接触させることができる。
【0136】
他の例において、プローブ、または(抗体、例えば一時抗体、レセプターもしくは他の結合剤のような)特異的結合剤を、蛍光性もしくは染色性組成物を検出可能な蛍光、染色若しくは(例えば、SISHにおいて検出可能な金属粒子の蓄積におけるような)他の検出可能なシグナルに変換することができる酵素で標識する。上述のように、直接またはリンカーを介して間接的に、関連するプローブ又は検出薬剤に酵素を接着することができる。適切な薬剤(例えば結合薬剤)及び化学物質(例えばリンカー及び接着化学物質)の例は、米国特許出願番号第2006/0246524号;第2006/0246523号及び第2007/0117153号に記載されている。
【0137】
標識プローブ-特異的結合剤のペアを適切に選択することにより、複合検出スキームを生成し、(例えば単一の細胞もしくは組織サンプル上で、または1より多い細胞もしくは組織サンプル上で)単一アッセイにおける複合標的核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)の検出を容易にすることができることを、当業者は理解するであろう。例えば、第一の標的配列に対応する第一プローブをビオチンのような第一のハプテンで標識することができる一方、第二の標的配列に対応する第二プローブをDNPのような第二のハプテンで標識することができる。サンプルをプローブに暴露した後、第一の特異的結合剤(この場合、第一のフルオロフォア、例えば585nmで発光する、例えば第一の分光的に異なるQUANTUM DOT(登録商標)で標識したアビジン)、ならびに第二の特異的結合剤(この場合、第二のフルオロフォア(例えば705nmで発光する、例えば第二の分光的に異なるQUANTUM DOT(登録商標))で標識した、抗DNP抗体もしくは抗体フラグメント)と、サンプルを接触させることにより、結合プローブを検出することができる。付加的なプローブ/結合剤を、他の分光的に異なるフルオロフォアを使用して、複合検出スキームに追加することができる。直接または間接(1ステップ、2ステップまたはそれ以上)の無数のバリエーションを想定することができ、その全ては、記載されるプローブ及びアッセイの文脈で適切である。
【0138】
典型的にはプローブは、長さ10から100ヌクレオチドの、例えば10から800の、より好ましくは15から700の、典型的には20から500の一本鎖核酸を含む。典型的にはプライマーは、増幅する所望の核酸に完全にまたはほぼ完全に一致するよう設計される、長さ10から25ヌクレオチドのより短い一本鎖核酸である。プローブ及びプライマーは、それらがハイブリダイズする核酸に「特異的である」、すなわちそれらは好ましくは、高度にストリンジェントな条件(溶解温度Tmの最高値、例えば50%ホルムアミド、5xまたは6xSCC(SCCは0.15MNaCl, 0.015MNaクエン酸))下でハイブリダイズする。
【0139】
上記増幅及び検出方法で使用する核酸プライマーまたはプローブは、キットとして組み合わせてよい。そのようなキットは、コンセンサスプライマー及び分子プローブを含む。好ましいキットはまた、増幅が発生したかを計測するために必要な成分も含む。キットはまた、例えば、PCRバッファー及び酵素;陽性対照配列、反応対照プライマー;ならびに特定の配列を増幅及び検出するための説明書も含んでよい。
【0140】
特定の実施態様において、本発明の方法は、卵丘細胞から抽出した総RNAを提供し、より好ましくは定量的または半定量的RT-PCRにより、増幅および特異的なプローブへのハイブリダイゼーションに該RNAをかけるステップを含む。
【0141】
別の好ましい実施態様において、DNAチップ解析により発現レベルを測定する。そのようなDNAチップまたは核酸マイクロアレイは、マイクロチップ、ガラススライドまたはミクロスフェアサイズのビーズでありうる基質に化学的に接着した異なる核酸プローブからなる。マイクロチップは、ポリマー、プラスチック、樹脂、ポリサッカリド、シリカもしくはシリカベースの物質、カーボン、金属、無機ガラス、またはニトロセルロースから構成されてよい。プローブは、cDNAまたは約10から約60塩基対であってよいオリゴヌクレオチドのような核酸を含む。発現レベルを測定するために、場合により最初に逆転写にかけられた、試験対象由来のサンプルを、標識化し、ハイブリダイゼーション条件下でマイクロアレイと接触させ、マイクロアレイ表面に接着したプローブ配列に相補的である標的核酸との間で複合体を形成する。その後、標識しハイブリダイズした複合体を検出し、定量化もしくは半定量化することができる。種々の方法により、例えば放射性もしくは蛍光標識を使用することにより、標識化を達成してよい。多くの種類のマイクロアレイハイブリダイゼーション技術が当業者に利用可能である(例えば、Hoheiselによるレビュー, Nature Reviews, Genetics, 2006, 7:200-210を参照)。
【0142】
遺伝子の発現レベルを、絶対発現レベルまたは標準化発現レベルとして表現してよい。本発明の方法では、両方のタイプの値を使用する。実験開始時の小さな差異が、数サイクル後に膨大な差異をもたらしうるため、定量PCRを発現評価法として使用する場合、標準化発現レベルとして表現するのが好ましい。
【0143】
典型的には、発現レベルは、遺伝子の発現を、患者の癌ステージを測定するために関係しない遺伝子、例えば構成的に発現されるハウスキーピング遺伝子の発現と比較することにより、該遺伝子の絶対発現レベルを較正して標準化される。標準化に適切な遺伝子は、アクチン遺伝子ACTB、リボソーム18S遺伝子、GUSB、PGK1及びTFRCのようなハウスキーピング遺伝子を含む。この標準化により、あるサンプル、例えば患者のサンプルの発現レベルを、別のサンプルのへつ現レベルと比較すること、または異なる供給源に由来するサンプル群を比較することが可能となる。
【0144】
抗腫瘍治療
それゆえ本発明の方法により、以前に同定されなかったそれ自体新しい患者群、すなわち抗癌治療により癌の治療に成功するであろう患者群を規定することが可能となる。
【0145】
抗癌治療は、放射線療法、化学療法、または免疫療法からなってよい。治療は、アジュバント療法(すなわち一次腫瘍の外科処置後の治療)またはネオアジュバント療法(すなわちすなわち一次腫瘍の外科処置前の治療)からなってよい。
【0146】
それゆえ本発明は、本発明の上記方法による抗腫瘍治療に良好な応答者として考えられているステージIからIIIの癌患者の治療に使用するための、化学治療剤放射線治療剤または免疫治療剤、このましくは後者に関する。
【0147】
「化学治療剤」の語は、腫瘍成長の阻害に有効な化学的化合物を指す。化学治療剤の例は、チオテパ及びシクロフォスファミドのようなアルキル化剤;ブサルファン、イムプロサルファン及びピポサルファンのようなアルキルスルフォネート、ベンゾドパ、カルボクオン、メツレドパ及びウレドパのようなアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホフホラミド及びトリメチルオロメラミンを含むエチレンイミン及びメチルアメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成アナログトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(アドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCBI-TMIを含む);エリューセロビン;パンクラチスタチン;サルコディクチイン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラヌスチン、イソスファミド、メクロレタミン、メクロメタミン酸化物塩酸塩、メルファラン、ノベムビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードのような窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンのようなノトロソウレア;エネジイン抗生物質のような抗生物質(例えば、カリケアミシン、特にカリケアミシン111及びカリケアミシン211、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl. 33:183-186 (1994)参照;ダイネミシンAを含むダイネミシン;エスペラマイシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連するクロモタンパク質エネジイン抗生物質クロモフォア;アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カンニノマイシン、カルシノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(デオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダヌルビシン、マルセロマイシン、ミトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)のような抗代謝物質;デノプテリン、メトトレキサート、プトロプテリン、トリメトレキサートのような葉酸アナログ;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモファー、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスリジン、5-FUのようなピリミジンアナログ;カルステロン、ドロモスタノロンプロピオナート、エピチオスタノール、メピトスタン、テストラクトンのようなアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗アドレナール;ふぉりん酸のような葉酸補充薬;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エフロルニチン;エリピチニウム酢酸;エポチロン;エトグルシド;ガリウム硝酸塩;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;マイタンシン及びアンサミトシンのようなマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;リゾキサン;シゾフィラン;スピロゲナニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2トキシン、ベラクリンA、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;デカルバジン;マンノムスチン;ミトブロムトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガサイトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキシド、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N)及びドキタキセル(TAXOTERE(登録商標)、, Rhone-Poulenc Rorer, Ant
ony, France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチンのような白金アナログ;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;ミトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ;イバンドロナート;CPT-11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;カペシタビン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸または誘導体。この定義には、以下も含まれる:例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びトレミフェン(Fareston)のような、腫瘍に対するホルモン作用を制御または阻害するよう作用する抗ホルモン剤、ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリンのような抗アンドロゲン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸または誘導体。
【0148】
本明細書において「免疫治療剤」の語は、癌細胞に対する体の免疫応答を、間接もしくは直接上昇、刺激もしくは増大させる、ならびに/あるいは他の抗癌治療の副作用を減少させる、化合物、組成物、または治療を指す。したがって免疫治療は、癌細胞に対する免疫システムの応答を間接もしくは直接刺激もしくは増大させる、ならびに/あるいは他の抗癌剤を原因としていてよい副作用を減少させる治療である。免疫治療はまた、免疫学的治療、生物学的治療、生物学的応答改変治療およびバイオ治療として当業者に呼称される。当業者に公知の一般的な免疫治療剤の例は、それに限定されないが、サイトカイン、癌ワクチン、モノクローナル抗体及び非サイトカインアジュバントを含む。あるいは免疫治療処置は、一定量の免疫細胞(T細胞、NK細胞、樹状細胞、B細胞等)を患者に投与することからなってよい。
【0149】
免疫治療剤は、非特異的である、すなわち、免疫システムを全般的に増強し、癌細胞の増殖および/または拡散に対抗する際に人体がより有効となるようにすることができ、あるいはそれらは特異的である、すなわち、癌細胞それ自体を標的としすることができ、免疫治療レジメンを非特異的または特異的免疫治療剤の使用と組み合わせてもよい。
【0150】
非特異的免疫治療剤は、免疫システムを刺激するまたは間接的に改善する物質である。非特異的免疫治療剤は、癌治療用の主治療として単独で使用され、さらには主治療に加えて使用され、その場合非特異的免疫治療剤は、他の治療法(例えば癌ワクチン)の有効性を増強するアジュバントとして機能する。非特異的免疫治療剤はまた、後者の文脈において、他の治療法の副作用、例えばある種の化学治療剤により誘導される骨髄抑制を軽減するよう作用することができる。非特異的免疫治療剤は、鍵となる免疫システム細胞に作用し、サイトカイン及び免疫グロブリンの産生増大のような二次応答を引き起こすことができる。あるいは、該薬剤はそれ自体サイトカインを含んでよい。非特異的免疫治療剤は、一般的にサイトカインまたは非サイトカインアジュバントに分類される。
【0151】
サイトカインのメンバーは、免疫システムをブーストするよう設計された全般的な非特異的免疫治療として、あるいは他の治療とともに提供されるアジュバントとして癌治療における適用が見出されている。適切なサイトカインは、それに限定されないが、インターフェロン、インターロイキン、及びコロニー刺激因子を含む。
【0152】
本発明で理解されるインターフェロン(IFN)は、一般的なタイプのIFN、IFN-アルファ(IFN-α)、IFN-ベータ(IFN-β)及びIFN-ガンマ(IFN-γ)を含む。IFNは癌細胞に対して直接、例えばその成長を鈍化し、より正常なふるまいを有する細胞へのそれらの成長を促進し、および/またはそれらの抗原産生を増大し、癌細胞を免疫システムがより認識し破壊しやすいようにすることにより、作用することができる。IFNはまた、癌細胞に対して間接的に、例えば血管新生を鈍化させ、免疫システムをブーストし、および/またはナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞及びマクロファージを刺激することにより、作用することができる。組換えIFN-アルファは、Roferon (Roche Pharmaceuticals)及びIntron A (Schering Corporation)として市販されている。単独の、または他の免疫治療もしくは化学治療と組み合わせてのIFN-アルファの使用は、(転移性メラノーマを含む)メラノーマ、(転移性腎臓癌を含む)腎臓癌、乳癌、前立腺癌、及び(転移性子宮頸癌を含む)子宮頸癌を含む種々の癌の治療で有効であることが示されている。
【0153】
本発明で理解されるインターロイキンは、IL-2、IL-4、IL-11及びIL-12を含む。市販の組換えインターロイキンの例は、Proleukin(登録商標)(IL-2; Chiron Corporation)及びNeumega(登録商標)(IL-12; Wyeth Pharmaceuticals)を含む。Zymogenetics, Inc. (Seattle, Wash.)は現在IL-21の組換体を試験しており、それもまた本発明の組み合わせにおける使用のために考えられる。単独の、または他の免疫治療もしくは化学治療と組み合わせてのインターロイキンは、(転移性腎臓癌を含む)腎臓癌、(転移性メラノーマを含む)メラノーマ、(再発卵巣癌を含む)卵巣癌、(転移性子宮頸癌を含む)子宮頸癌乳癌、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、脳腫瘍及び前立腺癌を含む種々の癌の治療で有効であることが示されている。
【0154】
インターロイキンはまた、種々の癌の治療においてIFN-アルファと組み合わせた良好な活性が示されている(Negrier et al., Ann Oncol. 2002 13(9):1460-8 ; Touranietal, J. Clin. Oncol. 2003 21(21):398794)。
【0155】
本発明で考慮されるコロニー刺激因子(CSF)は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSFまたはフィルグラスチム)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSFまたはサルグラモウチム)及びエリスロポエチン(エポエチンアルファ、ダルベポエチン)を含む。一つ以上の成長因子で治療することにより、伝統的な化学治療を行っている患者の血球細胞の新たな産生の刺激を補助することができる。従って、CSFでの治療は、化学治療に関連する副作用の低減に有用である可能性があり、使用される化学治療剤の用量を高めることを可能とする。種々の組換えコロニー刺激因子、例えばNeupogen(登録商標)(G-CSF; Amgen)、Neulasta (ペルフィルグラスチム; Amgen)、Leukine (GM-CSF; Berlex)、Procrit (エリスロポエチン; Ortho Biotech)、Epogen (エリスロポエチン; Amgen)、Arnesp (エリスロポエチン)が市販されている。コロニー刺激因子は、メラノーマ、(転移性結腸直腸癌を含む)結腸直腸癌及び肺癌を含む癌の治療において有効性が示されている。
【0156】
本発明の組み合わせにおける使用に適した非サイトカインアジュバントは、それに限定されないが、レバミソル、アルムヒドロキシド(アルム)、カルメッテ-グエリンバチルス(ACG)、不完全フロイントアジュンバント(IFA),QS-21、DETOX、キーホールリンペットホモシアニン(KLH)及びジニトロフェニル(DNP)を含む。他の免疫および/または化学治療と組み合わせた非サイトカインアジュバントは、例えば結腸癌及び結腸直腸癌(レバミソル);メラノーマ(BCG及びQS-21);腎臓癌及び膀胱癌(BCG)を含む種々の癌に対する有効性が示されている。
【0157】
特異的もしくは非特異的標的に加えて、免疫治療剤は、活性である、すなわち体自体の免疫応答を刺激することができ、あるいはそれらは不活性である、すなわち、体の外で産生された免疫システム成分を含むことができる。
【0158】
不活性特異的免疫治療は、典型的には、癌細胞の表面に発見される特定の抗原に特異的である、または特定の細胞増殖因子に特異的である1つ以上のモノクローナル抗体の使用に関する。モノクローナル抗体を、複数の方法において癌の治療で使用してよく、例えば、特異的なタイプの癌に対する対象の免疫応答を増強する、血管新生に関するもののような特異的な細胞増殖因子を標的とすることにより、または化学治療剤、放射性粒子もしくは毒素のような薬剤に連結もしくはコンジュゲートされる場合に癌細胞への他の抗癌剤の送達を増強することにより、癌細胞の増殖を阻害する。
【0159】
本発明と組み合わせて含有するために適する癌免疫治療剤として現在使用されているモノクローナル抗体は、それに限定されないが、以下を含む:リツキシマブ(リツキサン(登録商標))、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))、イブリツモマブチウエキサン(ゼバリン(登録商標))、トシツモマブ(ベクサール(登録商標))、セツキシマブ(C-225、エルビツクス(登録商標))、ベバシズマブ(アバスチン(登録商標))、ゲムツズマブオゾガミシン(マイロタルグ(登録商標))、アレムツズマブ(カンパス(登録商標))、及びBL22。モノクローナル抗体を、(進行した転移性乳癌を含む)乳癌、(進行したおよび/または転移性結腸直腸癌を含む)結腸直腸癌、卵巣癌、肺癌、前立腺癌、子宮頸癌、メラノーマ及び脳腫瘍を含む広範囲の癌の治療で使用される。他の例は、抗CTLA4抗体(例えばイプリムマブ)、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、抗TIM3抗体、抗LAG3抗体、抗B7H3抗体、抗B7H4抗体または抗B7H6抗体を含む。
【0160】
モノクローナル抗体を、単独で、または他の免疫治療剤もしくは化学治療剤と組み合わせて使用することができる。
【0161】
活性特異的免疫治療は、典型的には、癌ワクチンの使用に関する。癌細胞全体、癌細胞の一部、または癌細胞に由来する1個以上の抗原を含む癌ワクチンが開発されている。癌ワクチンは、単独で、または1つ以上の免疫もしくは化学治療剤と組み合わせて、メラノーマ、腎臓癌、乳癌、結腸直腸癌及び肺癌を含む複数のタイプの癌の治療において研究されている。非特異的免疫治療は、体の免疫応答を増強するために、癌ワクチンと組み合わせると有用である。
【0162】
免疫治療処置は、Nicholas P. Restifo, Mark E. Dudley及びSteven A. Rosenberg の「Adoptive immunotherapy for cancer: harnessing the T cell response」(Nature Reviews Immunology, Volume 12, April 2012)により記載されるように、適応免疫治療からなっていてよい。適応免疫治療において、患者の循環リンパ球、または腫瘍浸潤リンパ球をインビトロで単離し、IL-2のようなリンホカインにより活性化し、または腫瘍ネクローシスの遺伝子で誘導され、再投与される(Rosenberg et al., 1988; 1989)。活性化リンパ球は、最も好ましくは、血液もしくは腫瘍サンプルから早期に単離された患者自身の細胞でかるインビトロで活性化(「エクスパンド(expand)した」)ものである。この形態の免疫治療は、メラノーマ及び腎臓癌が減退する複数のケースを生み出した。
【0163】
本明細書において、「放射線治療剤」の語は、限定されることなく、癌を治療もしくは改善するために有効であることが当業者に知られている、いすれかの放射線治療剤を指すことが意図される。例えば、放射線治療剤は、近接照射治療もしくは放射線核種治療において投与されるもののような薬剤でありうる。そのような方法は、場合により、限定されないが、化学治療および/または他の放射線治療のような1つ以上の追加の癌治療の投与をさらに含むことができる。
【0164】
好ましい実施態様において、抗腫瘍治療は、チェックポイント阻害癌免疫治療剤での治療である。
【0165】
本明細書において、「チェックポイント阻害癌免疫治療剤」または「免疫チェックポイントインヒビター」の表現は(両方が相互に交換的に使用されるであろうが)、当業者に一般的な意味を有し、免疫チェックポイント阻害タンパク質の機能を阻害するいずれかの化合物を指す。阻害は、機能の軽減と完全なブロックとを含む。好ましい免疫チェックポイントインヒビターは、免疫チェックポイントタンパク質を特異的に認識する抗体である。複数の免疫チェックポイントインヒビターが公知であり、これらの公知の免疫チェックポイントインヒビターとのアナロジーで、別の免疫チェックポイントインヒビターが(近い)将来開発されてもよい。免疫チェックポイントインヒビターは、ペプチド、抗体、核酸分子及び低分子を含む。特に、本発明の免疫チェックポイントインヒビターは、対象におけるCD8+T細胞の増殖、移動、残留および/または細胞傷害活性、対象のCD8+T細胞の腫瘍浸潤を増強するために投与される。本明細書において、「CD8+T細胞」は、当業者に一般的な意味を有し、その表面にCD8を発現するT細胞のサブセットを指す。それらは、MHCクラスI限定で、細胞傷害性T細胞として機能する。「CD8+T細胞」はまた、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、Tキラー細胞、細胞傷害性T細胞、CD8+T細胞またはキラーT細胞とも呼ばれる。CD8抗原は、免疫グロブリンスーパー遺伝子ファミリーのメンバーであり、主要組織適合性複合体クラスI限定相互作用における結合認識因子である。CD8T細胞の殺傷活性を増大する免疫チェックポイントインヒビターの能力は、当業者に公知のいずれかのアッセイで測定してよい。典型的には前記アッセイは、CD8+T細胞が標的細胞(例えば、CD8+T細胞により認識される、および/または溶解される標的細胞)と接触するようにされるインビトロのアッセイである。例えば、本発明の免疫チェックポイントインヒビターを、本発明の免疫チェックポイントインヒビターにより接触されるCD8+T細胞またはCD8 T細胞で、同一のエフェクター:標的細胞比で得られる特異的な溶解の、約20%より多く、好ましくは約30%より多く、少なくとも約40%、少なくとも約50%、またはそれ以上、CD8+T細胞による特異的な溶解を増大する能力について選択することができる。古典的な細胞傷害活性
についてのプロトコルの例は、慣用的である。
【0166】
典型的には、チェックポイントブロック癌免疫治療剤は、細胞傷害性T細胞関連タンパク質(CTLA4)及びプログラム細胞死1(PDCD1、PD-1として最もよく知られる)のような活性化T細胞により発現される免疫抑制受容体、または種々のメンバーのキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)ファミリーのようなNK細胞により発現される免疫抑制受容体をブロックする薬剤、あるいはPD-1リガンドCD274(PD-L1またはB7-H1として最もよく知られる)のような、これらの受容体の主要なリガンドをブロックする薬剤である。
【0167】
典型的には、チェックポイントブロック癌免疫治療剤は抗体である。
【0168】
複数の態様において、チェックポイントブロック癌免疫治療剤は、以下からなる群選択される抗体である:抗CTLA4抗体、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、抗PDL2抗体、抗TIM-3抗体、抗LAG3抗体、抗IDO1抗体、抗TIGIT抗体、抗B7H3抗体、抗B7H4抗体、抗BTLA 抗体及び抗B7H6抗体。
【0169】
抗CTLA-4抗体の例は、米国特許番号第5,811,097号;第5,811,097号;第5,855,887号;第6,051,227号;第6,207,157号;第6,682,736号;第6,984,720号;及び第7,605,238号に記載されている。抗CTLA-4抗体の一つは、トレメリムマブ(チシリムマブ、CP-675,206)である。複数の実施態様において、抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ(10D1, MDX-D010としても知られる)であり、これはCTLA-4に結合する総ヒトモノクローナルIgG抗体である。
【0170】
PD-1及びPD-L1抗体の例は、米国特許番号第7,488,802号;第7,943,743号;第8,008,449号;第8,168,757号;第8,217,149号;ならびにPCT特許公開番号第WO03042402号、第WO2008156712号、第WO2010089411号、第WO2010036959号、第WO2011066342号、第WO2011159877号、第WO2011082400号及び第WO2011161699号に記載されている。複数の実施態様において、PD-1ブロック剤は、抗PD-L1抗体を含む。特定の他の実施態様において、D-1ブロック剤は、抗PD-1抗体、ならびに、ニボルマブ(MDX 1106, BMS 936558, ONO 4538)、PD-1に結合し、そのリガンドPD-L1及びPD-L2による活性化をブロックする、全長ヒトIgG4抗体;ランブロリズマブ(MK-3475又はSCH 900475)、PD-1に対するヒト化モノクローナルIgG4抗体;CT-011、PD-1に結合するヒト化抗体;B7-DCの融合タンパク質であるAMP-224;抗体Fc部分;PD-L1 (B7-H1)ブロック化のためのBMS-936559 (MDX-1105-01)のような類似の結合タンパク質を含む。
【0171】
他の免疫チェックポイントインヒビターは、IMP321、可溶性Ig融合タンパク質(Brignone et al., 2007, J. Immunol. 179:4202-4211)のようなリンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)インヒビターを含む。
【0172】
他の免疫チェックポイントインヒビターは、B7-H3及びB7-H4インヒビターのようなB7インヒビターを含む。特に、抗B7-H3抗体MGA271 (Loo et al., 2012, Clin. Cancer Res. July 15 (18) 3834)を含む。
【0173】
TIM3(T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3)インヒビター(Fourcade et al., 2010, J. Exp. Med. 207:2175-86及びSakuishi et al., 2010, J. Exp. Med. 207:2187-94)もまた含まれる。本明細書において、「TIM-3」の語は、当業者におけるその一般的な意味を有し、T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン含有分子3を指す。TIM-3の天然リガンドは、ガレクチン9 (Gal9)である。従って、本明細書において「TIM-3インヒビター」の語は、TIM-3の機能を阻害することができる化合物、物質、または組成物を指す。例えば、組成物は、TIM-3の発現もしくは活性を阻害し、TIM-3シグナル経路を制御もしくはブロックし、および/またはTIM-3のガレクチン-9への結合をブロックすることができる。TIM-3に対する特異性を有する抗体は当業者に既知であり、典型的には国際公開第WO2011155607号、第WO2013006490号及び第WO2010117057号に記載されているものである。複数の実施態様において、免疫チェックポイントインヒビターは、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)インヒビター、好ましくはIDO1インヒビターである。IDOインヒビターの例は、国際公開第2014150677号に記載されている。IDOインヒビターの例は、制限なく、1-メチル-トリプトファン(IMT)、β-(3-ベンゾフラニル)-アラニン、β-(3-ベンゾ(b)チエニル)-アラニン、6-ニトロ-トリプトファン、6-フルオロ-トリプトファン、4-メチル-トリプトファン、5-メチル-トリプトファン、6-メチル-トリプトファン、5-メトキシ-トリプトファン、5-ヒドロキシ-トリプトファン、インドール3-カルボニル、3,3'-ジインドリルメタン、エピガロカテキンガレート、5-Br-4-Cl-インドキシル1,3-ジアセテート、9-ビニルカルバゾール、アセメタシン、5-ブロモ-トリプトファン、5-ブロモインドキシルジアセテート、3-アミノ-ナフトール酸、ピロリジンジチオカルバメート、4-フェニルイミダゾール、ブラッシニン誘導体、チオハイダントニン誘導体、β-カルボリン誘導体またはブラッシレキシン誘導体を含む。好ましくは、IDOインヒビターは、1-メチル-トリプトファン、β-(3-ベンゾフラニル)-アラニン、6-ニトロ-L-トリプトファン、3-アミノ-ナフトール酸及びβ-[3-ベンゾ(b)チエニル]-アラニンまたはそれらの誘導体もしくはプロドラッグから選択される。
【0174】
複数の実施態様において、免疫チェックポイントインヒビターは、抗TIGIT(T細胞免疫グロブリン及びITIMドメイン)抗体である。
【0175】
好ましい実施態様において、チェックポイントブロック癌免疫治療剤は、イピリムマブのようなCTLA4ブロッキング抗体、ニボルマブまたはペムブロリズマブのようなPD-1ブロッキング抗体、あるいはそれらの組み合わせである。
【0176】
本発明は、以下の図面及び実施例により、さらに説明されるであろう。これらの実施例及び図面は、いかなる面でも本発明の範囲を制限するように理解されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【
図1】本発明を実行するためのシステムのスキーム図解である。
【
図2】本発明に関する手順の一例を示すフローダイアグラムである。
【
図3】5個の事前決定された参照演算平均値パーセンタイルのKaplan Meir曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0178】
実施例
ステージI/II/IIIの結腸直腸癌患者(n=539)の参照群を、アルゴリズムスコア法により解析した。腫瘍のスライド全体を、CD3及びCD8抗体で染色した。デジタル病理学及びイメージ解析ソフトウェアを使用して、腫瘍の侵入縁(IM)とコア(中心)(CT)腫瘍を測定した。CT及びIM領域のCD3及びCD8濃度を定量化した(細胞/mm
2)。全ての濃度またはすべてのマーカーの分布は、プロットされ、表に報告される。対応するパーセンタイル(すなわち、5%間隔のステップ)を導き出した。以下の表に示される例において、各バイオマーカーについて、4超の濃度バイオマーカー値平均を、ウェート1で算出した。各コホートに対するKaplan Meier曲線を、それぞれ0-10%、10-25%、25-75%、75-95%、95-100%の平均パーセンタイル値に対応する5つのグループカテゴリー(I0、I1、I2、I3、I4)で
図3に示す。
【0179】
以下の表において、仮説的患者に対するパーセンタイル算術平均値の計算の例を示す。
【0180】
【0181】
仮説的患者に対するパーセンタイル算術平均値は、約47.5であろう。仮説的患者は、グループI2に属するよう分類されるであろう。
【0182】
CCR2、CD3D、CD3E、CD3G、CD8A、CXCL10、CXCL11、GZMA、GZMB、GZMK、GZMM、IL15、IRF1、PRF1、STAT1、CD69、ICOS、CXCR3、STAT4、CCL2及びTBX21からなる群からの21個の遺伝子の発現レベルである21個の生物学的マーカー、ならびにGZMH、IFNG、CXCL13、GNLY、LAG3、ITGAE、CCL5、CXCL9、PF4、IL17A、TSLP、REN、IHH、PROM1及びVEGFAからなる群からの15個の遺伝子の発現レベルである15個の生物学的マーカーで、同タイプの実験が行われた。
【0183】
パーセンタイルの平均値を算出することにより、非常に正確な結果が得られた。
【0184】
引用文献
本出願を通して、種々の引用文献が、本発明の属する技術常識の状態が記載される。これらの引用文献の開示は、本明細書の開示に参照されて取り込まれる。