(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】油圧モータ
(51)【国際特許分類】
F03C 1/253 20060101AFI20230519BHJP
【FI】
F03C1/253
(21)【出願番号】P 2019026860
(22)【出願日】2019-02-18
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】清家 雄二
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-090393(JP,A)
【文献】特開2007-009801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03C 1/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシング内に収容され、回転可能なシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの回転軸線周りの、前記シリンダブロックに対する回転が規制されたシリンダブロック側摩擦板と、
前記ケーシングに対して回転が規制され、前記シリンダブロック側摩擦板と前記回転軸線方向に少なくとも部分的に重なるケーシング側板と、
前記シリンダブロック側摩擦板と前記ケーシング側板とを前記回転軸線方向に沿って互いに押圧する押圧機構と、
前記ケーシングに固定され、少なくとも1つの前記シリンダブロック側摩擦板の回転を検出する検出器と、を備えた油圧モータ。
【請求項2】
複数のシリンダブロック側摩擦板を有し、
前記検出器は、前記複数のシリンダブロック側摩擦板のうち、前記回転軸線に沿った方向において前記押圧機構に最も近接する前記シリンダブロック側摩擦板の回転を検出する請求項1に記載の油圧モータ。
【請求項3】
前記押圧機構に最も近接する前記シリンダブロック側摩擦板の厚さは、他のシリンダブロック側摩擦板の厚さよりも大きい請求項2に記載の油圧モータ。
【請求項4】
前記押圧機構は、
前記シリンダブロック側摩擦板及び前記ケーシング側板に押圧力を伝達するピストン部材と、
前記ピストン部材の前記回転軸線周りの回転を規制する規制部材と、を有する請求項1~3のいずれかに記載の油圧モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設車両等に用いられる油圧モータに関する。
【背景技術】
【0002】
建設車両等の幅広い分野において駆動力を発生させる機構として油圧モータが用いられている。油圧モータは、一例として、回転軸線方向に沿って延びる複数のシリンダ穴が形成されたシリンダブロックと、各シリンダ穴内に移動自在に保持されたピストンと、各ピストンの各シリンダ穴内での移動によりシリンダブロックを回転軸線周りに回転させるための斜板と、を有している。
【0003】
このような油圧モータでは、当該油圧モータの動作状態を監視するためにシリンダブロックの回転数を測定する場合がある。特許文献1には、シリンダブロックの外周面に被検出部を設け、被検出部に対向する状態でケーシングに配置された回転センサで被検出部を検出することにより、シリンダブロックの回転数を測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、油圧モータがさらに小型化された場合、回転センサが油圧モータ内に配置される部品のいずれかと互いに干渉することが考えられる。この場合、油圧モータ内に回転センサを適切に配置することが困難になる。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、小型化を図りながらも、回転数を適切に測定することが可能な油圧モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による油圧モータは、
ケーシングと、
前記ケーシング内に収容され、回転可能なシリンダブロックと、
前記シリンダブロックの回転軸線周りの、前記シリンダブロックに対する回転が規制されたシリンダブロック側摩擦板と、
前記ケーシングに対して回転が規制され、前記シリンダブロック側摩擦板と前記回転軸線方向に少なくとも部分的に重なるケーシング側板と、
前記シリンダブロック側摩擦板と前記ケーシング側板とを前記回転軸線方向に沿って互いに押圧する押圧機構と、
前記ケーシングに固定され、少なくとも1つの前記シリンダブロック側摩擦板の回転を検出する検出器と、を備える。
【0008】
本発明の油圧モータにおいて、
複数のシリンダブロック側摩擦板を有し、
前記検出器は、前記複数のシリンダブロック側摩擦板のうち、前記回転軸線に沿った方向において前記押圧機構に最も近接する前記シリンダブロック側摩擦板の回転を検出してもよい。
【0009】
本発明の油圧モータにおいて、
前記押圧機構に最も近接する前記シリンダブロック側摩擦板の厚さは、他のシリンダブロック側摩擦板の厚さよりも大きくてもよい。
【0010】
本発明の油圧モータにおいて、
前記押圧機構は、
前記シリンダブロック側摩擦板及び前記ケーシング側板に押圧力を伝達するピストン部材と、
前記ピストン部材の前記回転軸線周りの回転を規制する規制部材と、を有してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型化を図りながらも、回転数を適切に測定することが可能な油圧モータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明による一実施の形態を説明するための図であって、油圧モータが組み込まれた油圧駆動装置の断面を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1のIIが付された部分を拡大して示す図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III線に対応する断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0014】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0015】
図1~
図3は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち
図1は、油圧モータ20が組み込まれた油圧駆動装置10の断面を示す図であり、
図2は、
図1のIIが付された部分を拡大して示す図であり、
図3は、
図1のIII-III線に対応する断面を示す図である。本実施の形態にかかる油圧駆動装置10は、作業機械の一例である作業車両に設置されるウインチユニットを駆動するために利用されるが、油圧駆動装置10の用途はこれに限られることはなく、例えば作業車両の走行ユニットや旋回ユニットの駆動においても利用され得る。
【0016】
図1に示された油圧駆動装置10は、油圧モータ20と、油圧モータ20に対して組み付けられたカウンタバランス弁12と、を備えている。
図1においては、油圧モータ20の一部及びカウンタバランス弁12が、油圧モータ20の回転軸21の軸線方向に沿う断面で示されている。ここで、「軸線方向(回転軸線方向)」とは、回転軸21の回転軸線Aに沿って延びる方向、又は、回転軸線Aに沿って延びる方向と平行な方向を意味する。以下の説明においては、単に軸線方向という場合、その方向は回転軸21の軸線方向を意味する。また、回転軸線Aに直交する方向を径方向と呼び、回転軸線Aを中心として回転する方向を周方向と呼ぶ。
【0017】
カウンタバランス弁12は、油圧モータ20に対して軸線方向の一方側(
図1では左側)に配置されている。カウンタバランス弁12は、油圧モータ20を駆動するために作動油を給排するとともに、油圧モータ20への作動油の供給停止後において油圧モータ20の慣性又は負荷の慣性や自重による作動油の流動を抑制して、油圧モータ20の停止を制御するために設けられる。
【0018】
カウンタバランス弁12は、複数の油路が形成された弁ボディ14と、弁ボディ14に収容されたチェック弁16と、を含んでいる。弁ボディ14には、第1給排油路と、第2給排油路とが形成されている。第1給排油路は、図示しない油圧ポンプ又は排出タンクに選択的に連通される外部連通口と、油圧モータ20に連通される内部連通口とを有し、第2給排油路は、油圧ポンプ又は排出タンクに選択的に連通される外部連通口と、油圧モータ20に連通される内部連通口とを有している。
【0019】
第1給排油路の外部連通口及び第2給排油路の外部連通口は、図示しない切換弁の動作に応じて、一方が油圧ポンプに接続された場合に、他方が排出タンクに接続される。第1給排油路の外部連通口が油圧ポンプに接続された場合には、第1給排油路の内部連通口が油圧モータ20に接続して作動油を供給する。一方で、第2給排油路の外部連通口が油圧ポンプに連通された場合には、第2給排油路の内部連通口が油圧モータ20に接続して作動油を供給する。本例では、前者においてウインチユニットが巻き上げられ、後者においてウインチユニットが巻き下げられることになる。
【0020】
次に、油圧モータ20について説明する。本実施の形態では、油圧モータ20は、図示しない減速機を含む減速機付き油圧モータである。油圧モータ20は、回転軸21、ケーシング23、シリンダブロック30、ピストン40、斜板50、制動機構60、検出器90及び図示しない減速機構を含んでいる。なお、これに限られず、油圧モータ20は減速機を含まない油圧モータであってもよい。
【0021】
ケーシング23は、固定ブロック25と、固定ブロック25に取り付けられた回転ブロック27と、固定ブロック25に対して回転ブロック27と反対側から取り付けられた蓋ブロック29と、を有している。回転ブロック27は、固定ブロック25に対して、回転軸21の回転軸線A周りに相対回転可能に構成されている。蓋ブロック29は、固定ブロック25に対して固定されている。ケーシング23は、回転軸21、シリンダブロック30、ピストン40、斜板50、シリンダブロック側摩擦板61、ケーシング側板71、押圧機構80、検出器90及び減速機構を収容している。
【0022】
回転軸21は、固定ブロック25から軸線方向の一方側に突出するとともに、固定ブロック25から軸線方向の他方側(
図1では右側)に突出している。蓋ブロック29における固定ブロック25に対面する面には、収容孔29Aが形成されている。回転軸21における軸線方向の一方側の端部は、収容孔29A内に収容されている。収容孔29Aと回転軸21との間には、第1軸受29Bが配置されている。これにより、回転軸21における軸線方向の一方側の端部は、収容孔29A内において第1軸受29Bにより回転軸線A周りに回転可能に支持される。なお図示はしないが、回転軸21は、固定ブロック25の内部においても、他の軸受を介して固定ブロック25に回転自在に支持されている。また、蓋ブロック29の軸線方向の他方側部分には、蓋ブロック29の軸線方向の他方側を向く面(固定ブロック25側を向く面)から軸線方向の一方側に向けて切り欠いた凹部29Cが設けられている。凹部29Cは、後述の押圧機構80の押付部材84の少なくとも一部を収容する。
【0023】
シリンダブロック30は、回転軸21の径方向外側に配置されており、回転軸21とともに回転するように回転軸21に保持されている。図示の例では、シリンダブロック30が、スプライン結合により回転軸21に保持されている。これにより、シリンダブロック30の、回転軸21に対する周方向の相対移動が規制されている。換言すると、シリンダブロック30と回転軸21とは、回転軸線A周りに一緒に回転するように構成されている。シリンダブロック30は、軸線方向に沿って見た場合に、回転軸21の径方向外側において周方向の全周に延びる形状に形成されている。このシリンダブロック30には、軸線方向に沿って延びる複数のシリンダ孔32が形成されている。複数のシリンダ孔32は、同一円周上において周方向に間隔を空けて配置されている。
【0024】
図2及び
図3によく示されているように、シリンダブロック30の外周面には、周方向に配列された複数の凹部34が設けられている。図示された例では、凹部34は、軸線方向に沿って延びる溝部として形成されている。凹部34は、軸線方向に直交する断面において、シリンダブロック30を外周面から円弧状(扇形状)に切り欠いた形状を有している。凹部34は、シリンダ孔32に対して径方向外側、且つ、周方向において隣り合う2つのシリンダ孔32の間、に位置している。すなわち、シリンダブロック30に設けられたシリンダ孔32の数及び凹部34の数は同一である。複数の凹部34は、周方向に沿って一定の角度ピッチを有して配列されている。凹部34は、シリンダブロック側摩擦板61に設けられた後述する凸部65と係合し、シリンダブロック側摩擦板61のシリンダブロック30に対する周方向の相対移動を規制する機能を有する。
【0025】
ピストン40は、複数のシリンダ孔32の各々に保持され、軸線方向に沿って移動可能となっている。ピストン40の各々は、カウンタバランス弁12を介して油圧ポンプから流入した作動油が蓋ブロック29側からシリンダ孔32に供給されることにより、斜板50側へ向けて移動するようになっている。また、ピストン40の各々が斜板50の後述する斜面51に押されて蓋ブロック29側に移動することにより、シリンダ孔32内の作動油が排出される。各ピストン40の斜板50側の端部の各々には、シュー41が揺動自在に取り付けられている。これらのシュー41は、斜板50の斜面51上を当該斜面51に沿って移動するようになっている。
【0026】
斜板50は、シリンダブロック30側に、ピストン40を周方向に回転移動させるための斜面51を有している。斜面51は、回転軸線Aに直交する面に対して傾斜している。この斜面51に、ピストン40がシュー41を介して当接している。また、斜板50には、回転軸21が通される貫通孔53が形成されている。斜面51は、ピストン40が斜板50側に移動した場合に、ピストン40に対して周方向に沿った反力を付与するようになっている。これにより、作動油がシリンダ孔32に供給されて対応するピストン40が当該シリンダ孔32から進出した際には、ピストン40が周方向に回転移動し、これに伴い、シリンダブロック30及び回転軸21が一体に回転するようになっている。
【0027】
回転軸21における、軸線方向の他方側(
図1では右側)の端部は、図示しない減速機構に接続されている。減速機構は、一例として、遊星歯車減速機構を含み、回転軸21の回転を減速させて回転ブロック27に伝達する。回転ブロック27は、固定ブロック25に回転自在に支持されることで、回転軸21から減速機構を介して回転を伝達された際に回転軸線A周りに回転する。回転ブロック27には、径方向の外側に張り出した環状のフランジ部27Aが形成されており、フランジ部27Aには図示しないドラムが取り付けられる。回転ブロック27の回転にともなってドラムが回転することで、図示しないウインチユニット等が駆動される。
【0028】
制動機構60は、シリンダブロック30に係合したシリンダブロック側摩擦板61と、ケーシング23に係合したケーシング側板71と、シリンダブロック側摩擦板61とケーシング側板71とを回転軸線方向に沿って互いに押圧する押圧機構80と、を含んでいる。
【0029】
制動機構60は、複数のシリンダブロック側摩擦板61を有している。シリンダブロック側摩擦板61は、回転軸線Aと直交する板面を有するとともに、軸線方向から見てリング状の形状を有した、板状の部材である。本実施の形態の制動機構60は、軸線方向に配列された複数のシリンダブロック側摩擦板61を有している。各シリンダブロック側摩擦板61は、本体63と、本体63の軸線方向の一方側及び他方側を向く面上に設けられたライニング材67を有している。ライニング材67は、シリンダブロック側摩擦板61の耐摩耗性を向上させるために設けられる。
【0030】
本体63の内周部分には、径方向の内側に向かって突出する凸部65が形成されている。
図3に示された例では、シリンダブロック側摩擦板61は、内周部分に、周方向に沿って配列された複数の凸部65を有している。複数の凸部65は、周方向に沿って一定の角度ピッチを有して配列されている。とりわけ、凸部65の角度ピッチは、シリンダブロック30の外周面に設けられた凹部34の角度ピッチと同一である。シリンダブロック側摩擦板61がシリンダブロック30に組み付けられた状態において、凸部65の少なくとも一部が凹部34内に位置する。とりわけ凸部65の径方向内側に位置する先端部分を含む少なくとも一部が凹部34内に位置する。これにより、凸部65は凹部34と係合し、シリンダブロック側摩擦板61のシリンダブロック30に対する周方向の相対移動が規制される。その一方、凸部65は、軸線方向に沿って延びる溝部として形成された凹部34に沿って、軸線方向に相対移動可能である。すなわち、シリンダブロック側摩擦板61は、シリンダブロック30に対して軸線方向に相対移動可能である。
【0031】
複数のシリンダブロック側摩擦板61のうちの少なくとも1つのシリンダブロック側摩擦板61には、被検出部69が設けられている。本実施の形態では、複数のシリンダブロック側摩擦板61のうち、軸線方向において押圧機構80に最も近接する(軸線方向の最も一側に位置する)シリンダブロック側摩擦板61Aに、被検出部69が設けられている。
図1及び
図2に示されているように、シリンダブロック側摩擦板61Aの厚さ(本体63Aの厚さ)は、他のシリンダブロック側摩擦板61の厚さ(本体63の厚さ)よりも大きくなっている。被検出部69は、本体63Aの外周部分に設けられている。被検出部69は、検出器90によりシリンダブロック側摩擦板61Aの回転を検出するために設けられる。被検出部69の具体的構成は、検出器90により検出可能なものであれば特に限られない。一例として、被検出部69は、本体63Aの外周面上に、互いに異なる磁極(N極及びS極)を周方向に交互に配置して構成されるものとすることができる。換言すると、被検出部69は、周方向に交互に配置された互いに異なる磁極を含むものとすることができる。他の例として、被検出部69は、本体63Aの外周面上に、凸部及び凹部を周方向に交互に配置して構成されるものとすることができる。換言すると、被検出部69は、周方向に交互に配置された凸部及び凹部を含むものとすることができる。
【0032】
ケーシング側板71は、回転軸線Aと直交する板面を有するとともに、軸線方向から見てリング状の形状を有した、板状の部材である。本実施の形態の制動機構60は、軸線方向に配列された複数のケーシング側板71を有している。シリンダブロック側摩擦板61とケーシング側板71とは、軸線方向に沿って交互に配列されており、ケーシング側板71は、シリンダブロック側摩擦板61と回転軸線方向に少なくとも部分的に重なっている。なお、複数のシリンダブロック側摩擦板61と複数のケーシング側板71のうち、軸線方向において押圧機構80に最も近接する位置には、シリンダブロック側摩擦板61Aが位置している。
【0033】
ケーシング側板71は、ケーシング23(固定ブロック25)に対して、回転軸線A周りの相対回転が規制されている。ケーシング側板71の、ケーシング23に対する相対回転を規制する手段は特に限定されない。本実施の形態では、ケーシング側板71の外周部分に、周方向に沿って配列された複数の凸部が設けられている。また、ケーシング23の固定ブロック25に、各凸部に対応する凹部が形成されている。凹部は、軸線方向に沿って延びる溝部として形成されている。そして、ケーシング側板71の凸部が固定ブロック25の凹部に係合することにより、ケーシング側板71のケーシング23に対する相対回転が規制される。その一方、ケーシング側板71の凸部は、固定ブロック25の凹部に沿って、軸線方向に相対移動可能である。すなわち、ケーシング側板71は、ケーシング23に対して軸線方向に相対移動可能である。
【0034】
押圧機構80は、ピストン部材82と、ピストン部材82をシリンダブロック側摩擦板61及びケーシング側板71側へ押付ける押付部材84と、ピストン部材82のケーシング23に対する回転軸線A周りの相対回転を規制する規制部材86と、ピストン部材82とケーシング23との間を密封する密封部材88と、を有する。
【0035】
本実施の形態のピストン部材82は、軸線方向から見てリング状の形状を有している。ピストン部材82は、大径部82Aと、大径部82Aの軸線方向の他方側に位置する小径部82Bとを含んでいる。回転軸線Aと直交する方向における小径部82Bの外径は、大径部82Aの外径よりも小さい。大径部82Aの外周面及び小径部82Bの外周面には、それぞれ周方向に沿って延びる溝部が形成されており、これらの溝部内にそれぞれ密封部材88が配置されている。密封部材88としては、例えばOリングを用いることができる。ピストン部材82の軸線方向の一方側部分には、大径部82Aの軸線方向の一方側を向く面(蓋ブロック29側を向く面)から軸線方向の他方側に向けて切り欠いた凹部82Cが設けられている。凹部82Cは、押付部材84の少なくとも一部を収容する。ピストン部材82をケーシング23(固定ブロック25)に組み付けた状態において、大径部82Aと小径部82Bとの間に形成される段部と、固定ブロック25と、の間には、圧力室Cが形成される。ピストン部材82は、固定ブロック25に対して軸線方向に相対移動可能に構成されている。この場合、ピストン部材82の軸線方向への移動にともなって、圧力室Cの容積が変化する。
【0036】
押付部材84は、ピストン部材82をシリンダブロック側摩擦板61及びケーシング側板71側へ押付けるための部材である。
図1及び
図2に示された例では、押付部材84は、ばね部材、とりわけコイルばね、で構成される。押付部材84は、ピストン部材82の凹部82Cと、蓋ブロック29の凹部29Cとの間に、軸線方向に圧縮された状態で配置されている。したがって、押付部材84は、ピストン部材82を軸線方向の他方側へ向けて押付ける。
【0037】
シリンダブロック30の回転にともなってピストン部材82も回転軸線A周りに回転すると、ピストン部材82と固定ブロック25との間に配置された密封部材88が摩耗し得る。この場合、密封部材88による密封性が低下し、後述するように圧力室C内に油が流入した際に、当該油の漏出を生じ得る。これを抑制するために、本実施の形態の押圧機構80は、ピストン部材82のケーシング23に対する回転軸線A周りの相対回転を規制する規制部材86を有している。規制部材86は、例えば軸線方向に延びる棒状のピン部材とすることができる。規制部材86は、蓋ブロック29に設けられた蓋ブロック側収容凹部29D内と、ピストン部材82に設けられたピストン部材側収容凹部82D内とに跨るように配置される。押圧機構80がこのような規制部材86を有していることにより、ピストン部材82の回転軸線A周りの回転が規制され、密封部材88の摩耗が抑制される。したがって、圧力室C内に油が流入した際の当該油の漏出を効果的に抑制することが可能になる。なお、規制部材86の具体的形状は棒状のピン部材に限られない。例えば、規制部材86は、蓋ブロック側収容凹部29Dとピストン部材側収容凹部82D内とに跨るように配置されたキー部材であっても良い。
【0038】
制動機構60は、例えば、油圧駆動装置10が組み込まれたウインチユニットにおいて、ウインチユニットの動作が停止している際に制動力を発揮するブレーキとして用いられる。図示しない油圧ポンプから吐出された油が圧力室Cに供給されると、圧力室C内の油の圧力により、ピストン部材82は、押付部材84による軸線方向の他側へ向かう押付力に抗して、軸線方向の一側へ移動する。これにより、シリンダブロック側摩擦板61及びケーシング側板71には、押圧機構80による押圧力は作用しない。すなわち、シリンダブロック側摩擦板61とケーシング側板71とは、軸線方向に沿って互いに押圧されない。この場合、シリンダブロック側摩擦板61とケーシング側板71との間には摩擦力が発生せず、シリンダブロック30の回転速度を低下させる又は回転を停止させる制動力は生じない。したがって、例えば、油圧駆動装置10が組み込まれたウインチユニットにおいて、巻上げ、巻出し等の動作が可能になる。
【0039】
圧力室Cから油が排出されると、ピストン部材82は、押付部材84による軸線方向の他側へ向かう押付力を受けて、軸線方向の他側へ移動する。これにより、シリンダブロック側摩擦板61とケーシング側板71とは、軸線方向に沿って互いに押圧される。したがって、シリンダブロック側摩擦板61とケーシング側板71との間に摩擦力が発生し、シリンダブロック30の回転速度を低下させる又は回転を停止させる制動力が生じる。したがって、例えば、油圧駆動装置10が組み込まれたウインチユニットにおいて、巻上げ、巻出し等の動作速度が低下し又は動作が停止する。
【0040】
本実施の形態の油圧モータ20は、少なくとも1つのシリンダブロック側摩擦板61の回転を検出する検出器90を備えている。検出器90は、固定ブロック25に取り付けられている。具体的には、検出器90は、固定ブロック25に設けられた取付孔25A内に配置されている。検出器90は、被検出部69に対して径方向の外側に位置するとともに、回転軸線Aへ向くように取り付けられている。
図2及び
図3によく示されているように、とりわけ検出器90の先端(検出部)は、被検出部69に近接し且つ対向するように位置している。なお、検出器90の基端側にはOリング等の密封部材により密封され、取付孔25Aを介した油漏れが防止されている。
【0041】
検出器90としては、被検出部69に対して非接触で当該被検出部69を検出可能な近接センサが好適に用いられる。被検出部69が、本体63Aの外周面上に、互いに異なる磁極(N極及びS極)を周方向に交互に配置して構成されるものである場合には、検出器90は、例えば、被検出部69に含まれる互いに異なる磁極が検出器90の先端近傍を通過する際に生じる、磁界の変化等を検出可能な近接センサを用いることができる。また、被検出部69が、本体63Aの外周面上に、凸部及び凹部を周方向に交互に配置して構成されるものである場合には、検出器90は、例えば、被検出部69に含まれる凸部及び凹部が検出器90の先端近傍を通過する際に生じる、検出器90で発生させた磁界により被検出部69に生じた渦電流の変化に起因するインピーダンス変化や、被検出部69と検出器90との間に生じる静電容量の変化等を検出可能な近接センサを用いることができる。
【0042】
本実施の形態の油圧モータ20は、ケーシング23と、ケーシング内23に収容され、回転可能なシリンダブロック30と、シリンダブロック30の回転軸線A周りの、シリンダブロック30に対する回転が規制されたシリンダブロック側摩擦板61と、ケーシング23に対して回転が規制され、シリンダブロック側摩擦板61と回転軸線方向に少なくとも部分的に重なるケーシング側板71と、シリンダブロック側摩擦板61とケーシング側板71とを回転軸線方向に沿って互いに押圧する押圧機構80と、ケーシング23に固定され、少なくとも1つのシリンダブロック側摩擦板61の回転を検出する検出器90と、を備える。
【0043】
このような油圧モータ20によれば、シリンダブロック側摩擦板61、ケーシング側板71及び押圧機構80を含む制動機構60を備えた油圧モータ20において、回転軸21やシリンダブロック30の回転を直接測定することなく、回転軸線Aから比較的離間したシリンダブロック側摩擦板61の回転を測定することにより、油圧モータ20の回転数を測定することができる。したがって、小型化された油圧モータ20においても、検出器90の配置位置の自由度を向上させることが可能になり、油圧モータ20の回転数を適切に測定することができる。
【0044】
本実施の形態の油圧モータ20は、複数のシリンダブロック側摩擦板61を有し、検出器90は、複数のシリンダブロック側摩擦板61のうち、回転軸線Aに沿った方向において押圧機構80に最も近接するシリンダブロック側摩擦板61Aの回転を検出する。
【0045】
制動機構60における適切な制動能力の確保の観点からは、被検出部69が設けられるシリンダブロック側摩擦板61の本体63の外径は、他のシリンダブロック側摩擦板61の本体63の外径と同等の寸法とすることが好ましい。この場合、被検出部69が設けられるシリンダブロック側摩擦板61の外径は、他のシリンダブロック側摩擦板61の外径よりも、被検出部69の径方向に沿った厚みに対応して大きくなる。本実施の形態の油圧モータ20では、複数のシリンダブロック側摩擦板61のうち、径方向寸法が最も大きくなり得る、被検出部69が設けられるシリンダブロック側摩擦板61が、押圧機構80に最も近接する位置、すなわち固定ブロック25における蓋ブロック29側の開口部に最も近接する位置、に配置される。したがって、複数のシリンダブロック側摩擦板61を固定ブロック25内に組み込む際に、当該被検出部69が設けられるシリンダブロック側摩擦板61を最後に組み付けるようにすることができ、組み付け作業の容易化を図ることができる。
【0046】
本実施の形態の油圧モータ20では、押圧機構80に最も近接するシリンダブロック側摩擦板61Aの厚さは、他のシリンダブロック側摩擦板61の厚さよりも大きい。
【0047】
このような油圧モータ20によれば、被検出部69における、検出器90と対面する部分の面積を大きくすることができる。これにより、検出器90によるシリンダブロック側摩擦板61Aの回転の検出精度を効果的に向上させることができる。
【0048】
本実施の形態の油圧モータ20では、押圧機構80は、シリンダブロック側摩擦板61及びケーシング側板71に押圧力を伝達するピストン部材82と、ピストン部材82の回転軸線A周りの回転を規制する規制部材86と、を有する。
【0049】
このような油圧モータ20によれば、押圧機構80が、規制部材86を有していることにより、ピストン部材82の回転軸線A周りの回転が規制され、ピストン部材82の外周部と固定ブロック25との間に配置される密封部材88の摩耗が抑制される。したがって、ピストン部材82と固定ブロック25との間に形成される圧力室C内に油が流入した際の当該油の漏出を効果的に抑制することが可能になる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、上述の各実施の形態においては、各種の変更が行われてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 油圧駆動装置
12 カウンタバランス弁
20 油圧モータ
21 回転軸
23 ケーシング
25 固定ブロック
25A 取付孔
27 回転ブロック
29 蓋ブロック
30 シリンダブロック
32 シリンダ孔
34 凹部
40 ピストン
50 斜板
60 制動機構
61 シリンダブロック側摩擦板
63 本体
65 凸部
67 ライニング材
69 被検出部
71 ケーシング側板
80 押圧機構
82 ピストン部材
84 押付部材
86 規制部材
88 密封部材
90 検出器
A 回転軸線
C 圧力室