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特許7281975作業機械、システムおよび作業機械の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】作業機械、システムおよび作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20230519BHJP
【FI】
E02F9/20 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019112654
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020204193
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-03-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根田 知樹
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 健二郎
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/115809(WO,A1)
【文献】特許第6373728(JP,B2)
【文献】特許第5752350(JP,B2)
【文献】特許第6345080(JP,B2)
【文献】特許第3845597(JP,B2)
【文献】特許第5526299(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/42- 3/43
E02F 3/84- 3/85
E02F 9/00- 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被積込機械に荷を積み込む作業機械であって、
バケットを有する作業機と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
待機状態における前記バケットの現在の高さを検知する検知部と、
前記検知部により検知された前記バケットの前記現在の高さと前記待機状態における前記バケットの設定高さとから前記作業機械が前記被積込機械の進入を待機している前記待機状態における前記バケットの自然降下量を算出する自然降下量算出部と、を有し、
前記自然降下量算出部により算出された前記自然降下量に基づいて前記バケットが上昇するように前記作業機を制御する、作業機械。
【請求項2】
前記コントローラは、前記自然降下量の高さ分だけ前記バケットが上昇するように前記作業機を制御する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記コントローラは、前記被積込機械から送信された前記被積込機械の高さ情報を含む情報および前記被積込機械を計測した前記被積込機械の高さ情報を含む情報の少なくとも1つの情報に基づいて前記被積込機械の高さ情報を取得する高さ取得部をさらに備え、
前記コントローラは、前記高さ取得部により取得された前記被積込機械の前記高さ情報に基づいて前記バケットの高さを前記設定高さに調整するように前記作業機を制御する、請求項1または請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記被積込機械から送信された情報を受信する受信部をさらに備えた、請求項3に記載の作業機械。
【請求項5】
前記被積込機械を計測する計測装置をさらに備えた、請求項3または請求項4に記載の作業機械。
【請求項6】
送信部を有する被積込機械に荷を積み込む作業機械であって、
バケットを有する作業機と、
前記被積込機械の前記送信部との間で他のアクセスポイントを介することなく直接通信を行う受信部と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記被積込機械から送信された前記被積込機械の高さ情報を含む情報および前記被積込機械を計測した前記被積込機械の高さ情報を含む情報の少なくとも1つの情報に基づいて前記被積込機械の高さ情報を取得する高さ取得部を有し、
前記コントローラは、前記高さ取得部にて取得された前記被積込機械の前記高さ情報に基づいて、前記高さ取得部にて取得された前記被積込機械の高さにマージンとしての付加高さを追加することにより、前記作業機械が前記被積込機械に荷を積み込む際の前記バケットの設定高さを決定し、決定された前記バケットの前記設定高さとなるように前記作業機を制御する、作業機械。
【請求項7】
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の作業機械と、
前記作業機械の前記高さ取得部にて取得される前記被積込機械の前記高さ情報を前記作業機械へ送信する送信部とを有する、システム。
【請求項8】
バケットを含む作業機を有し、被積込機械に荷を積み込む作業機械の制御方法であって、
前記作業機械が前記被積込機械の進入を待機している待機状態における前記バケットの自然降下量を検知するステップと、
検知された前記自然降下量に基づいて前記バケットが上昇するように前記作業機を制御するステップとを備えた、作業機械の制御方法。
【請求項9】
前記被積込機械から送信された情報および前記被積込機械を計測した情報の少なくとも1つの情報に基づいて前記被積込機械の高さ情報を取得するステップと、
取得された前記被積込機械の前記高さ情報に基づいて前記バケットの高さを調整するステップとをさらに備えた、請求項8に記載の作業機械の制御方法。
【請求項10】
バケットを含む作業機を有し、送信部を有する被積込機械に荷を積み込む作業機械の制御方法であって、
前記被積込機械の前記送信部との間で他のアクセスポイントを介することなく直接通信を行うステップと、
前記被積込機械から送信された前記被積込機械の高さ情報を含む情報および前記被積込機械を計測した前記被積込機械の高さ情報を含む情報の少なくとも1つの情報に基づいて前記被積込機械の高さ情報を取得するステップと、
取得した前記被積込機械の前記高さ情報に基づいて、取得した前記被積込機械の高さにマージンとしての付加高さを追加することにより、前記作業機械が前記被積込機械に荷を積み込む際の前記バケットの設定高さを決定するステップと、
決定された前記バケットの前記設定高さとなるように前記作業機を制御するステップとを備えた、作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械、システムおよび作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの作業機械において、バケットに荷を入れてダンプトラック待ちなどする際にバケットが自然落下する場合がある。バケットの自然落下は、バケットの自重、荷の重量、メインバルブ内部でのスプール周辺の隙間からの作動油のリーク、シリンダ内部からの作動油の漏れなどにより生じる。このバケットの自然落下を防止するために、ブームシリンダの作動回路にパイロット操作チェック弁を用いることが、特開平2-88825号公報(特許文献1参照)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平2-88825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1に記載の技術では、油圧ショベルがバケットに荷を入れた状態でダンプトラックなどの被積込機械の到着を待っている場合、バケットの自然落下を完全に防止することはできない。バケットの自然落下が生じると、被積込機械の進入時にバケットが被積込機械に干渉する可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、被積込機械の進入時にバケットが被積込機械に干渉することを避けられる作業機械、システムおよび作業機械の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の作業機械は、被積込機械に荷を積み込む作業機械であって、作業機と、コントローラとを備えている。作業機は、バケットを有する。コントローラは、作業機械が被積込機械の進入を待機している待機状態におけるバケットの自然降下量を検知し、自然降下量に基づいてバケットが上昇するように作業機を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、被積込機械の進入時にバケットが被積込機械に干渉することを避けられる作業機械、システムおよび作業機械の制御方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施の形態における作業機械の構成を概略的に示す図である。
図2】本開示の一実施の形態における作業機械が被積込機械の進入を待機している状態を示す図である。
図3図1に示す作業機械の油圧回路と操作装置とを示すブロック図である。
図4図3に示すコントローラ内の機能ブロックを示す図である。
図5】本開示の一実施の形態における作業機械の制御方法を示す第1フロー図である。
図6】本開示の一実施の形態における作業機械の制御方法を示す第2フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について図に基づいて説明する。
明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。
【0010】
本開示では、作業機械として油圧ショベルを例に挙げて説明するが、本開示は油圧ショベル以外にバケットを有する作業機械であれば適用可能である。本開示は、たとえばクレーン、油圧で駆動しない超大型のロープショベル、電動モータで駆動する超大型電気式ショベルなどにも適用可能である。以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」とは、運転室2a内の運転席2bに着座したオペレータを基準とした方向である。
【0011】
<作業機械の構成>
図1は、本開示の一実施の形態における作業機械の一例としての油圧ショベルの構成を概略的に示す側面図である。図1に示されるように、本実施の形態の油圧ショベル100は、走行体1と、旋回体2と、作業機3とを主に有している。走行体1と旋回体2とにより作業機械本体が構成されている。
【0012】
走行体1は左右一対の履帯装置1aを有している。この左右一対の履帯装置1aの各々は履帯を有している。左右一対の履帯が回転駆動されることにより油圧ショベル100が自走する。
【0013】
旋回体2は走行体1に対して旋回自在に設置されている。この旋回体2は、運転室(キャブ)2aと、運転席2bと、エンジンルーム2cと、カウンタウェイト2dとを主に有している。運転室2aは、旋回体2のたとえば前方左側(車両前側)に配置されている。運転室2aの内部空間には、オペレータが着座するための運転席2bが配置されている。
【0014】
エンジンルーム2cおよびカウンタウェイト2dの各々は、運転室2aに対して旋回体2の後方側(車両後側)に配置されている。エンジンルーム2cは、エンジンユニット(エンジン、排気処理構造体など)を収納している。エンジンルーム2cの上方はエンジンフードにより覆われている。カウンタウェイト2dは、エンジンルーム2cの後方に配置されている。
【0015】
作業機3は、旋回体2の前方側であって運転室2aのたとえば右側にて支持されている。作業機3は、たとえばブーム3a、アーム3b、バケット3c、ブームシリンダ4a、アームシリンダ4b、バケットシリンダ4cなどを有している。ブーム3aの基端部は、ブームフートピン5aにより旋回体2に回転可能に連結されている。またアーム3bの基端部は、ブーム先端ピン5bによりブーム3aの先端部に回転可能に連結されている。バケット3cは、ピン5cによりアーム3bの先端部に回転可能に連結されている。
【0016】
ブーム3aは、ブームシリンダ4aにより駆動可能である。この駆動により、ブーム3aは、ブームフートピン5aを中心に旋回体2に対して上下方向に回動可能である。アーム3bは、アームシリンダ4bにより駆動可能である。この駆動により、アーム3bは、ブーム先端ピン5bを中心にブーム3aに対して上下方向に回動可能である。バケット3cは、バケットシリンダ4cにより駆動可能である。この駆動によりバケット3cは、ピン5cを中心にアーム3bに対して上下方向に回動可能である。このように作業機3は駆動可能である。
【0017】
作業機3は、バケットリンク3dを有している。バケットリンク3dは、第1リンク部材3daと、第2リンク部材3dbとを有している。第1リンク部材3daの先端と第2リンク部材3dbの先端とは、バケットシリンダトップピン3dcを介して、相対回転可能に連結されている。バケットシリンダトップピン3dcは、バケットシリンダ4cの先端に連結されている。したがって第1リンク部材3daおよび第2リンク部材3dbは、バケットシリンダ4cにピン連結されている。
【0018】
第1リンク部材3daの基端は、第1リンクピン3ddによりアーム3bに回転可能に連結されている。第2リンク部材3dbの基端は、第2リンクピン3deによりバケット3cの根元部分のブラケットに回転可能に連結されている。
【0019】
ブームシリンダ4aのヘッド側には、圧力センサ6aが取り付けられている。圧力センサ6aは、ブームシリンダ4aのシリンダヘッド側油室40A内の作動油の圧力(ヘッド圧)を検出することができる。ブームシリンダ4aのボトム側には、圧力センサ6bが取り付けられている。圧力センサ6bは、ブームシリンダ4aのシリンダボトム側油室40B内の作動油の圧力(ボトム圧)を検出することができる。
【0020】
ブームシリンダ4a、アームシリンダ4bおよびバケットシリンダ4cのそれぞれには、ストロークセンサ(検知部)7a、7b、7cが取り付けられている。
【0021】
ブームシリンダ4aにおけるシリンダ4aaに対するシリンダロッド4abの変位量からブーム角θbを算出することができる。またアームシリンダ4bにおけるシリンダロッドの変位量からアーム角θaを算出することができる。またバケットシリンダ4cにおけるシリンダロッドの変位量からバケット角θkを算出することができる。
【0022】
またブームフートピン5a、ブーム先端ピン5bおよびピン5cのそれぞれの周囲には、ポテンショメータ9a、9b、9cが取り付けられていてもよい。ポテンショメータ9aの測定値からブーム角θbを算出することができる。またポテンショメータ9bの測定値からアーム角θaを算出することができる。またポテンショメータ9cの測定値からバケット角θkを算出することができる。
【0023】
また旋回体2、ブーム3a、アーム3bおよび第1リンク部材3daのそれぞれには、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)8a、8b、8c、8dが取り付けられていてもよい。IMU8aは、前後方向、左右方向および上下方向における旋回体2の加速度と、前後方向、左右方向および上下方向まわりの旋回体2の角速度とを計測する。IMU8b、8c、8dのそれぞれは、前後方向、左右方向および上下方向におけるブーム3a、アーム3b、バケット3cの加速度と、前後方向、左右方向および上下方向まわりのブーム3a、アーム3b、バケット3cの角速度とを計測する。
【0024】
ブーム角θb、アーム角θa、バケット角θkのそれぞれは、IMU8b、8c、8dで算出されてもよい。ブーム角θb、アーム角θa、バケット角θk、ブーム長さ、アーム長さなどから作業機の姿勢を知ることができる。
【0025】
油圧ショベル100は、計測装置10と、受信部11と、旋回角度検知センサ13とを有している。計測装置10は、3次元距離センサであり、被積込機械50の高さを計測するために用いられる。計測装置10は、たとえばステレオカメラなどの撮像装置であってもよく、またLIDAR(Laser Imaging Detection And Ranging)であってもよい。
【0026】
受信部11は、被積込機械50の送信部からの信号を受信する。受信部11が受信する信号には、被積込機械50の高さ情報が含まれる。旋回角度検知センサ13は、走行体1に対する旋回体2の相対旋回角度を検知する。旋回角度検知センサ13は、たとえばスイングモータに設けられたセンサ、スイングマシナリの歯を検出するセンサ、またはIMU8aである。
【0027】
<作業機械の待機状態を含む動作>
次に、作業機械の待機状態を含む動作について図2を用いて説明する。
【0028】
図2は、本開示の一実施の形態における作業機械である油圧ショベルが被積込機械の進入を待機している状態(待機状態)を示す図である。なお被積込機械50はたとえばダンプトラックであるが、これに限定されるものではなく土砂などの荷を積載可能で、かつ走行可能であればよい。被積込機械50は、たとえばダンプトラック、自走式破砕機、ベルトコンベア式機械などの単独、または任意の組合せであってもよい。
【0029】
図2に示されるように、作業機械である油圧ショベル100は、掘削をすることによりバケット3c内に土砂などの荷を抱え込む。油圧ショベル100が掘削後にホイスト旋回することにより、油圧ショベル100のバケット3cが被積込機械50への積込み設定位置に到達する。
【0030】
バケット3cが設定高さに位置した状態で、油圧ショベル100は被積込機械50が積込み場へ進入してくるまで待機する。この待機状態におけるバケット3cの設定高さは、予め定められた一定の高さであってもよい。
【0031】
また待機状態におけるバケット3cの設定高さは、油圧ショベル100と被積込機械50との間の車々間通信により得られた被積込機械50の高さに基づいて算出された高さであってもよい。また待機状態におけるバケット3cの設定高さは、油圧ショベル100が計測(撮像または測定)した被積込機械50の高さに基づいて算出された高さであってもよい。
【0032】
本実施の形態の油圧ショベル100においては、上記のように、待機状態におけるバケット3cの設定高さが車々間通信などにより得られた被積込機械50の高さに基づいて算出される。これにより被積込機械50毎の適切な設定高さでバケット3cが待機できるため、バケット3cが被積込機械50と干渉することが避けられる。
【0033】
また待機状態においてバケット3cは、バケット3cの自重とバケット3c内の荷の重量とにより自然降下する。待機状態においてバケット3cが自然降下すると、バケット3cと積込み場へ進入してきた被積込機械50とが干渉する可能性がある。
【0034】
本実施の形態の油圧ショベル100においては、バケット3cの自然降下が検知される。その自然降下量が所定値以上の場合には、バケット3cが上昇するように作業機3が制御される。これにより待機状態にあるバケット3cが被積込機械50と干渉することが避けられる。
【0035】
被積込機械50が積込み場に進入すると、バケット3c内の荷がバケット3c内から排出され被積込機械50に積込まれる。バケット3c内の荷が排出された後、油圧ショベル100はダウン旋回することにより、油圧ショベル100のバケット3cが次回掘削位置に到達する。バケット3cが次回掘削位置に到達した後、次回の掘削が行われる。この後、上記と同様の動作が繰り返される。
【0036】
上記動作の繰り返しにより被積込機械50の荷台に荷が満載となると、被積込機械50は積込み場から荷の排出場所まで走行する。
【0037】
上記の掘削、ホイスト旋回、待機、荷の排出、およびダウン旋回からなる一連の動作は自動制御モードでオペレータの操作なしに行なわれてもよい。また上記一連の動作はオペレータの操作により行なわれてもよい。
【0038】
<作業機械の油圧回路と操作装置>
次に、作業機械の油圧回路と操作装置とについて図3を用いて説明する。
【0039】
図3は、図1に示す作業機械の油圧回路と操作装置とを示すブロック図である。図3に示されるように、エンジン42は、たとえばディーゼルエンジンである。エンジン42への燃料の噴射量が制御されることにより、エンジン42の出力が制御される。
【0040】
油圧ポンプ43は、エンジン42に連結されている。エンジン42の回転駆動力が油圧ポンプ43に伝達されることにより、油圧ポンプ43が駆動される。油圧ポンプ43は、たとえば斜板を有し、斜板の傾転角が変更されることにより吐出容量を変化させる可変容量型の油圧ポンプである。
【0041】
油圧ポンプ43から吐出された油の一部は、作動油としてメインバルブ41に供給される。また油圧ポンプ43から吐出された油の残りは、自己圧減圧弁45によって一定の圧力に減圧されて、パイロット用として供給される。自己圧減圧弁45によって一定の圧力に減圧された油は、EPC(Electromagnetic Proportional Control)弁46を介してメインバルブ41へ供給される。
【0042】
EPC弁46は、コントローラ20からの電流指令を受ける。EPC弁46は、電流指令の電流値に応じたパイロット圧を発生する。EPC弁46は、パイロット圧によってメインバルブ41のスプールを駆動する。
【0043】
メインバルブ41には、油圧アクチュエータとして、ブームシリンダ4aと、アームシリンダ4bと、バケットシリンダ4cと、旋回モータ44とが接続されている。旋回モータ44は、走行体1に対して旋回体2を相対的に回転させる。メインバルブ41のスプールが軸方向に移動することにより、油圧アクチュエータ4a、4b、4c、44の各々に対する作動油の供給量が調整される。これにより、作業機3の動作および旋回体2の旋回が制御される。
【0044】
なお、本例においては、油圧アクチュエータ4a、4b、4c、44を作動するために、その油圧アクチュエータ4a、4b、4c、44に供給される油は作動油と称される。また、メインバルブ41を作動するためにメインバルブ41に供給される油はパイロット油と称される。また、パイロット油の圧力はPPC圧(パイロット油圧)と称される。
【0045】
油圧ポンプ43は、上記のように作動油とパイロット油との両方を送出するものであってもよい。また油圧ポンプ43は、作動油を送出する油圧ポンプ(メイン油圧ポンプ)と、パイロット油を送出する油圧ポンプ(パイロット油圧ポンプ)とを別々に有してもよい。
【0046】
油圧ショベル100が自動制御モードの状態にある場合、操作装置25からの操作指令なしでコントローラ20からの指令によりEPC弁46が制御されることにより油圧アクチュエータ4a、4b、4c、44の各々に対する作動油の供給量が調整される。これにより油圧ショベル100が自動制御モードの状態にある場合、操作装置25からの操作指令なしで、上記の掘削、ホイスト旋回、待機、荷の排出、およびダウン旋回からなる一連の動作が行なわれる。
【0047】
一方、油圧ショベル100が自動制御モードの状態にない場合、操作装置25からの操作指令に基づくコントローラ20からの指令によりEPC弁46が制御される。これにより操作装置25の操作に基づいて、上記の掘削、ホイスト旋回、待機、荷の排出、およびダウン旋回からなる一連の動作が行なわれる。
【0048】
操作装置25は、運転室2a(図1)内に配置されている。操作装置25は、オペレータにより操作される。操作装置25は、作業機3を駆動するオペレータ操作を受け付ける。また操作装置25は、旋回体2を旋回させるオペレータ操作を受け付ける。
【0049】
操作装置25は、第1操作レバー25Rと、第2操作レバー25Lとを有している。第1操作レバー25Rは、たとえば運転席2b(図1)の右側に配置されている。第2操作レバー25Lは、たとえば運転席2bの左側に配置されている。第1操作レバー25Rおよび第2操作レバー25Lでは、前後左右の動作が2軸の動作に対応する。
【0050】
第1操作レバー25Rにより、たとえばブーム3aおよびバケット3cが操作される。第1操作レバー25Rの前後方向の操作は、たとえばブーム3aの操作に対応し、前後方向の操作に応じてブーム3aが上昇する動作および下降する動作が実行される。第1操作レバー25Rの左右方向の操作は、たとえばバケット3cの操作に対応し、左右方向の操作に応じてバケット3cの上下方向への動作が実行される。
【0051】
第2操作レバー25Lにより、たとえばアーム3bおよび旋回体2が操作される。第2操作レバー25Lの前後方向の操作は、たとえばアーム3bの操作に対応し、前後方向の操作に応じてアーム3bの上下方向への動作が実行される。第2操作レバー25Lの左右方向の操作は、たとえば旋回体2の旋回に対応し、左右方向の操作に応じて旋回体2の右旋回動作および左旋回動作が実行される。
【0052】
なお、第1操作レバー25Rの左右方向の操作がブーム3aの操作に対応し、前後方向の操作がバケット3cの操作に対応してもよい。また第2操作レバー25Lの前後方向が旋回体2の操作に対応し、左右方向の操作がアーム3bの操作に対応してもよい。
【0053】
操作装置25は、オペレータ操作に応じた操作信号を出力する。操作装置25から出力された操作信号に基づいて、操作量センサ26により操作量が検知される。操作量センサ26は、たとえばポテンショメータ、ホール素子などである。操作量センサ26により検知された操作量の信号がコントローラ20に入力される。コントローラ20は、上記のように操作装置25からの操作指令に基づいてEPC弁46を制御する。
【0054】
操作装置25の操作によって調整され、操作量センサ26によって検知される操作量は本実施の形態における操作指令値に相当する。
【0055】
本例においては、操作装置25は、たとえば電気方式の操作装置であるが、パイロット油圧方式の操作装置であってもよい。操作装置25がパイロット油圧方式である場合には、操作装置25の操作量はたとえば油の圧力を検知する圧力センサによって検知される。
【0056】
<コントローラ20内の機能ブロック>
次に、図3に示されたコントローラ20内の機能ブロックについて図4を用いて説明する。
【0057】
図4は、図3に示すコントローラ内の機能ブロックを示す図である。図4に示されるように、コントローラ20は、記憶部23と、操作指令値取得部31と、荷重値算出部32と、旋回角度取得部33と、作業機姿勢検知部34と、待機状態判定部35と、バケット高さ検知部36と、自然降下量算出部37と、自然降下量判定部38と、バケット高さ調整指令部39とを有している。
【0058】
記憶部23には、待機状態におけるバケット3cの設定高さ、自然降下量のしきい値、付加高さなどが記憶されている。これらの記憶情報は、油圧ショベル100の出荷時に予め記憶部23に記憶されていてもよく、また出荷後に記憶部23に記憶されてもよい。
【0059】
操作指令値取得部31は、操作装置25における操作量の信号を操作指令値として操作量センサ26から取得する。操作指令値取得部31は取得した操作指令値を待機状態判定部35へ出力する。
【0060】
荷重値算出部32は、バケット3c内の荷重値を算出するために必要な情報の信号を荷重値検知センサ12から取得する。荷重値算出部32は、取得した情報に基づいてバケット3c内の荷重値を算出する。荷重値算出部32は、算出した荷重値を待機状態判定部35へ出力する。
【0061】
なお荷重値検知センサ12は、バケット3c内の荷重値を算出するために必要な情報を検知する。バケット3c内の荷重値は、たとえばブームフートピン5a回りのブーム3a、アーム3b、バケット3cの各モーメントの釣り合いから算出される。この荷重値の算出には、ブームフートピン5aからブーム3aの重心までの距離、ブームフートピン5aからアーム3bの重心までの距離、ブームフートピン5aからバケット3cの重心までの距離、ブーム3aの重量、アーム3bの重量、バケット3cの重量、ブームシリンダ4aのヘッド圧とボトム圧などが用いられる。よって荷重値検知センサ12には、上記距離を取得するためのストロークセンサ7a~7c(またはポテンショメータ9a~9c、IMU8a~8c)、ブームシリンダ4aのヘッド圧とボトム圧とを測定する圧力センサ6a、6bなどが該当する。
【0062】
旋回角度取得部33は、走行体1に対する旋回体2の旋回角度の検知信号を旋回角度検知センサ13から取得する。旋回角度取得部33は取得した旋回角度の検知信号を待機状態判定部35へ出力する。
【0063】
作業機姿勢検知部34は、作業機3の姿勢を求めるために必要な情報の信号を作業機姿勢検知センサ14から取得する。作業機姿勢検知部34は、取得した情報に基づいて作業機3の姿勢を検知する。作業機姿勢検知部34は、検知した作業機3の姿勢の情報を待機状態判定部35へ出力する。
【0064】
なお作業機姿勢検知センサ14は、作業機3の姿勢を求めるために必要な情報を検知する。作業機3の姿勢は、たとえばストロークセンサ7a~7c(またはポテンショメータ9a~9c、IMU8a~8c)などから求めることができる。このため作業機姿勢検知センサ14には、たとえばストロークセンサ7a~7c(またはポテンショメータ9a~9c、IMU8a~8c)が該当する。また作業機姿勢検知センサ14は、視覚センサ(ステレオカメラ、3Dスキャナ)などであってもよい。
【0065】
待機状態判定部35は、油圧ショベル100が待機状態にあるか否かを判定する。待機状態とは、被積込機械50が積込み場へ進入してくるまで油圧ショベル100が動作を停止して待機している状態である。
【0066】
待機状態判定部35は、たとえば油圧ショベル100がホイスト旋回をすることによりバケット3cが目標バケット排出位置に到達したことにより待機状態になったと判定する。
【0067】
ホイスト旋回の判定は、バケット3cが荷を抱えた状態で旋回体2が走行体1に対して旋回していることを検知することにより可能である。このため待機状態判定部35は、荷重値算出部32からの荷重値情報、旋回角度取得部33からの旋回角度情報などから油圧ショベル100がホイスト旋回を行なっているか否かを判定することができる。
【0068】
バケット3cが目標バケット排出位置に到達したことの判定は、作業機3の姿勢、旋回体2の走行体1に対する旋回角度などを検知することにより可能である。このため待機状態判定部35は、作業機姿勢検知部34からの作業機3の姿勢情報、旋回角度取得部33からの旋回角度情報などから、バケット3cが目標バケット排出位置に到達したか否かを判定することができる。
【0069】
待機状態判定部35は、待機状態の判定時において油圧ショベル100が停止していることを判定してもよい。油圧ショベル100が自動制御モードにない場合、油圧ショベル100が停止しているか否かは、操作装置25の第1操作レバー25Rおよび第2操作レバー25Lが中立状態にあるか否かを検知することにより可能である。このため待機状態判定部35は、操作指令値取得部31からの操作指令値情報などから、油圧ショベル100が停止していることを判定することができる。また油圧ショベル100の停止は、たとえばメインバルブに搭載されている各軸のスプールストロークセンサにおけるスプールストローク量の計測値がスプール不感帯に入っていることにより判定することもできる。また油圧ショベル100の停止は、たとえばMS(Mechatro Smart)シリンダとIMUとから取得できる各軸シリンダ速度情報と旋回速度情報とから判定することもできる。
【0070】
油圧ショベル100が待機状態にあると待機状態判定部35が判定した場合、その判定信号はバケット高さ検知部36に出力される。
【0071】
バケット高さ検知部36は、待機状態判定部35から待機状態の信号を受けると、作業機姿勢検知センサ14からの情報に基づいてバケット3cにおける現在の高さを検知する。バケット高さ検知部36は、検知したバケット3cにおける現在の高さの信号を自然降下量算出部37へ出力する。
【0072】
自然降下量算出部37は、バケット高さ検知部36から取得した現在の高さと記憶部23に記憶された待機状態におけるバケット3cの設定高さとに基づいて待機状態におけるバケット3cの自然降下量を算出する。具体的には、バケット3cの設定高さからバケット3cの現在の高さを減ずることにより、自然降下量((設定高さ)-(現在の高さ))が算出される。
【0073】
また自然降下量は、たとえば待機状態に遷移した瞬間のバケット3cの高さ・姿勢情報をたとえば記憶部23に記憶保持した後に、その記憶保持したバケット3cの高さから現在のバケットの高さを減ずることによっても算出され得る。
【0074】
自然降下量算出部37は、上記により算出した自然降下量の信号を自然降下量判定部38へ出力する。
【0075】
自然降下量判定部38は、自然降下量算出部37から取得した自然降下量と、記憶部23に記憶された自然降下量のしきい値とを対比する。自然降下量判定部38は、待機状態におけるバケット3cの自然降下量が上記しきい値を超えたか否かを判定する。
【0076】
自然降下量算出部37は、上記判定の結果、自然降下量がしきい値を超えていると判定した場合、その判定信号をバケット高さ調整指令部39へ出力する。
【0077】
バケット高さ調整指令部39は、自然降下量判定部38の判定信号に基づいて、作業機3の油圧アクチュエータ4a、4b、4cを駆動制御する。具体的には、自然降下量がしきい値を超えていると自然降下量判定部38が判定した場合、自然降下量の高さ分だけバケット3cが上昇するようにバケット高さ調整指令部39は油圧アクチュエータ4a、4b、4cを駆動制御する。
【0078】
作業機3の駆動制御時には、たとえばシリンダ4a~4cの各シリンダ長が自然降下する前のシリンダ4a~4cの各シリンダ長に戻るように作業機3が駆動制御されてもよい。また作業機3の駆動制御時には、たとえばバケット3cが自然降下した高さ分だけ単独のブーム上げ動作が行なわれてもよい。また作業機3の駆動制御時には、たとえばブーム3a、アーム3b、バケット3cの各々が自然降下前の作業機角度に戻るように駆動されてもよい。
【0079】
以上によりバケット3cの自然降下が検知され、自然降下量が所定値以上の場合には、バケット3cが上昇するように作業機3が制御される。
【0080】
コントローラ20は、被積込機械高さ検知部21と、バケット設定高さ決定部22とを有している。被積込機械高さ検知部21は、計測装置10または受信部11からの情報を取得して、被積込機械50の高さを検知する。計測装置10は、上記のとおり3次元距離センサであり、たとえばステレオカメラなどの撮像装置またはLIDARである。計測装置10がステレオカメラの場合には計測装置10は被積込機械50の画像を撮像する。計測装置10がLIDARの場合には計測装置10は被積込機械50にパルス状に発光するレーザーを照射し、その散乱光を測定する。被積込機械50の高さは、UWB(Ultra Wide Band)測位により検知されてもよい。計測装置10が計測(撮像または測定)した情報は、被積込機械高さ検知部21へ出力される。
【0081】
受信部11は、上記のとおり被積込機械50の送信部53からの信号を受信する。受信部11と送信部53との間で直接通信を行なうことにより、油圧ショベル100と被積込機械50との間で車々間通信が行なわれる。
【0082】
また管理装置60(たとえば管理サーバ)経由で受信部11と送信部53との間で通信が行なわれてもよい。この場合、受信部11および管理装置60の間の通信と、送信部53および管理装置60の間の通信との各々は、図示しないアクセスポイントを介して無線で行なわれる。
【0083】
受信部11が受信する信号には、被積込機械50の高さ情報が含まれる。被積込機械50の高さ情報は、たとえば被積込機械50の記憶部52に記憶されている。また受信部11が受信する信号には、被積込機械50が配置された地面(積込み場における地面)の高さ情報が含まれる。被積込機械50が配置された地面の高さは、たとえば被積込機械50のGNSS(Global Navigation Satellite Systems)用のアンテナ51から取得される。受信部11が受信した信号は、被積込機械高さ検知部21へ出力される。
【0084】
被積込機械高さ検知部21は、計測装置10または受信部11から取得した情報に基づいて被積込機械50の高さを検知する。被積込機械高さ検知部21は、検知した被積込機械50の高さの信号をバケット設定高さ決定部22へ出力する。
【0085】
バケット設定高さ決定部22は、被積込機械50の高さを取得して、その被積込機械50の高さに基づいてバケット3cの設定高さH2を算出する。図2に示されるように、バケット3cの設定高さH2は、被積込機械50の高さH1に、マージンとしての付加高さHAを追加した高さ((被積込機械50の高さH1)+(付加高さHA))である。付加高さHAは記憶部23に記憶されている。
【0086】
バケット設定高さ決定部22は、算出した設定高さの信号をバケット高さ調整指令部39へ出力する。
【0087】
バケット高さ調整指令部39は、バケット設定高さ決定部22から取得した設定高さの信号に基づいて、作業機3の油圧アクチュエータ4a、4b、4cを駆動制御する。具体的には、バケット3cが設定高さとなるように、バケット高さ調整指令部39は油圧アクチュエータ4a、4b、4cを駆動制御する。
【0088】
以上により待機状態におけるバケット3cの設定高さH2を、油圧ショベル100と被積込機械50との間の通信により得られた被積込機械50の高さに基づいて算出された高さとすることができる。また待機状態におけるバケット3cの設定高さH2を、油圧ショベル100が計測(撮像または測定)した被積込機械50の高さに基づいて算出された高さとすることができる。
【0089】
またバケット設定高さ決定部22は、算出した設定高さH2の信号を自然降下量算出部37へ出力してもよい。この場合、自然降下量算出部37は、バケット高さ検知部36から取得した現在の高さと、バケット設定高さ決定部22から取得した設定高さH2との差分である自然降下量((設定高さ)-(現在の高さ))を算出してもよい。自然降下量算出部37は、自然降下量と、記憶部23に記憶されたしきい値とを対比し、待機状態におけるバケット3cの自然降下量がしきい値を超えているか否かを判定する。この判定結果に基づいて、上記と同様に、バケット高さ調整指令部39は作業機3の油圧アクチュエータ4a、4b、4cを駆動制御してもよい。具体的には、自然降下量がしきい値を超えていると自然降下量算出部37が判定した場合、自然降下量の高さ分だけバケット3cが上昇するようにバケット高さ調整指令部39は油圧アクチュエータ4a、4b、4cを駆動制御する。
【0090】
以上のようにコントローラ20は、油圧ショベル100が被積込機械50の進入を待機している待機状態におけるバケット3cの自然降下量を検知し、その自然降下量に基づいてバケット3cが上昇するように作業機3を制御する。
【0091】
またコントローラ20は、作業機姿勢検知センサ14(検知部)により検知されたバケット3cの現在の高さと、待機状態におけるバケット3cの設定高さH2とからバケット3cの自然降下量を検知する。
【0092】
またコントローラ20は、自然降下量の高さ分だけバケット3cが上昇するように作業機3を制御する。
【0093】
またコントローラ20は、高さ取得部(受信部11、計測装置10)により取得された被積込機械50の高さH1(図2)の情報に基づいてバケット3cの高さを設定高さH2(図2)に調整するように作業機3を制御する。
【0094】
コントローラ20は、たとえばコンピュータ、サーバー、携帯端末などであり、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。コントローラ20は、油圧ショベル100に搭載されていてもよく、油圧ショベル100から離れた遠隔地に設置されていてもよい。
【0095】
管理装置60は、遠隔運転室70とネットワークを介して接続されていてもよい。遠隔運転室70は、管理装置60を介さずに上記アクセスポイントとは異なるアクセスポイントを介して油圧ショベルに無線接続されてもよい。この無線接続を通じて油圧ショベル100は遠隔運転室70により遠隔操作されてもよい。なお遠隔運転室70は、作業現場から離れた地点に設けられる。
【0096】
管理装置60は、油圧ショベル100および遠隔運転室70から被積込機械50の制御信号を受信して、これを無人走行する被積込機械50に送信するものであってもよい。油圧ショベル100および遠隔運転室70から被積込機械50へ送信される制御信号の例としては、進入指示信号、発進指示信号が挙げられる。進入指示信号は、被積込機械50に積込み場まで進入することを指示する信号である。発進指示信号は、被積込機械50に積込みの完了により積込み場を発進し積込み場からの退出を指示する信号である。
【0097】
<作業機械の制御方法>
次に、バケット3cが待機状態において自然降下した場合にバケット3cを上昇させる制御について図5を用いて説明する。
【0098】
図5は、本開示の一実施の形態における作業機械の制御方法を示す第1フロー図である。図5に示されるように、まず油圧ショベル100が被積込機械50の待機状態にあるか否かが判定される(ステップS1)。油圧ショベル100が待機状態にあるか否かは、図4に示される操作量センサ26、荷重値検知センサ12、旋回角度検知センサ13、作業機姿勢検知センサ14などからの情報に基づいて行なわれる。
【0099】
油圧ショベル100が待機状態にないと判定された場合、引き続き油圧ショベル100が待機状態になったか否かの判定が行なわれる(ステップS1:図5)。
【0100】
一方、油圧ショベル100が待機状態にあると判定された場合、バケット3cの自然降下量が検知される(ステップS2:図5)。バケット3cの自然降下量は、図4に示されるように、自然降下量算出部37により算出される。自然降下量算出部37は、バケット高さ検知部36により検知されたバケット3cの現在の高さと、待機状態における設定高さとの差分((設定高さ)-(現在の高さ))から自然降下量を算出する。
【0101】
この設定高さとして、図4に示されるように記憶部23に記憶された設定高さが用いられる。またこの設定高さとして、バケット設定高さ決定部において算出された設定高さが用いられてもよい。具体的には、送信部53と受信部11との間の車々間通信により得られた被積込機械50の高さに基づく設定高さが用いられてもよい。またこの設定高さとして、油圧ショベル100の計測装置10が計測(撮像または測定)した被積込機械50の高さに基づく設定高さが用いられてもよい。
【0102】
バケット3cの自然降下量が検知された後、その自然降下量がしきい値を超えたか否かが判定される(ステップS3:図5)。図4に示されるように、自然降下量がしきい値を超えたか否かの判定は、自然降下量判定部38により行なわれる。自然降下量がしきい値を超えていないと自然降下量判定部38により判定された場合、引き続き自然降下量が検知される(ステップS2)。
【0103】
一方、自然降下量がしきい値を超えていると自然降下量判定部38により判定された場合、バケット3cの高さが上昇するように作業機3が制御される(ステップS4:図5)。バケット3cの高さ制御は、図4に示されるように、バケット高さ調整指令部39により行なわれる。バケット高さ調整指令部39は、自然降下量判定部38の判定信号に基づいて作業機3の油圧アクチュエータ4a、4b、4cを駆動制御する。これによりバケット3cの高さが上昇するように制御される。具体的には、自然降下量がしきい値を超えていると自然降下量算出部37が判定した場合、自然降下量の高さ分だけバケット3cが上昇するようにバケット高さ調整指令部39は油圧アクチュエータ4a、4b、4cを駆動制御する。
【0104】
この後、被積込機械50による積込み場への進入が完了したか否かが判定される(ステップS5)。被積込機械50による積込み場への進入が完了していないと判定された場合、引き続き自然降下量の検知が行なわれる(ステップS2)。
【0105】
一方、被積込機械50による積込み場への進入が完了したと判定された場合、バケット3c内の荷が被積込機械50の荷台に排出される(ステップS6)。この後、油圧ショベル100はダウン旋回をして次回の掘削を行なうか、または掘削を終了する。
【0106】
以上のように待機状態においてバケット3cが自然降下した場合にバケット3cを上昇させる制御が行なわれる。
【0107】
次に、待機状態におけるバケット3cの高さを設定高さに調整する制御について図6を用いて説明する。
【0108】
図6は、本開示の一実施の形態における作業機械の制御方法を示す第2フロー図である。図6に示されるように、油圧ショベル100は、被積込機械50の高さ情報を取得する(ステップS11)。被積込機械50の高さ情報は、図4に示されるように、計測装置10が計測(撮像または測定)した情報および受信部11が受信した情報の少なくとも1つの情報に基づいて被積込機械高さ検知部21により検知される。
【0109】
被積込機械50の高さを検知する際には、被積込機械50が配置された地面(積込み場における地面)の高さ情報が参照される。被積込機械50が配置された地面の高さは、被積込機械50のGNSS用のアンテナ51により取得され、送信部53にて油圧ショベル100の受信部に送信される。
【0110】
上記において取得された被積込機械50の高さ情報に基づいて、油圧ショベル100が被積込機械50に荷を積み込む際のバケット3cの設定高さが決定される(ステップS12:図6)。バケット3cの設定高さは、図4に示されるように、バケット設定高さ決定部22において、被積込機械50の高さに、マージンとしての付加高さを追加することにより決定される。
【0111】
バケット3cが上記設定高さとなるように、バケット3cの高さ位置が調整される(ステップS13:図6)。バケット3cの高さ位置の調整は、図4に示されるように、バケット高さ調整指令部39がバケット設定高さ決定部22から取得した設定高さの信号に基づいて、作業機3の油圧アクチュエータ4a、4b、4cを駆動制御することにより行なわれる。具体的には、バケット3cが設定高さとなるように、バケット高さ調整指令部39は油圧アクチュエータ4a、4b、4cを駆動制御する。
【0112】
以上のように待機状態におけるバケット3cの高さを設定高さに調整する制御が行なわれる。
【0113】
図5に示された自然降下量の検知(ステップS2)において、バケット3cの現在の高さと、待機状態における設定高さとの差分から自然降下量を求める際に、設定高さとして図6のステップS12で決定されたバケット3cの設定高さが用いられてもよい。
【0114】
<作用効果>
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
【0115】
本実施の形態においては、図2に示されるように油圧ショベル100が被積込機械50の進入を待機している待機状態において、図4に示されるようにコントローラ20がバケット3cの自然降下量を検知し、自然降下量に基づいてバケット3cが上昇するように作業機3を制御する。このため、被積込機械50が積込み場に進入してきた際に、バケット3cが被積込機械50に干渉することが避けられる。
【0116】
また自然降下量に基づいてバケット3cが上昇する。このため自然降下に伴ってバケット3cの角度が排土方向に変化することが抑制され、そのバケット3cの角度の変化に伴ってバケット3c内から荷がこぼれ落ちることが抑制される。
【0117】
また本実施の形態によれば図4に示されるように、油圧ショベル100は、待機状態におけるバケット3cの現在の高さを検知する作業機姿勢検知センサ14(検知部)を有している。コントローラ20は、作業機姿勢検知センサ14により検知されたバケット3cの現在の高さと、待機状態におけるバケット3cの設定高さとからバケット3cの自然降下量を検知する。これにより待機状態においてバケット3cの自重とバケット3c内の荷重とによりバケット3cが降下した高さ分を検知することができる。
【0118】
また本実施の形態によれば図4に示されるように、コントローラ20は、自然降下量の高さ分だけバケット3cが上昇するように作業機を制御する。これによりバケット3cを設定高さに維持するよう制御することができる。
【0119】
また本実施の形態によれば図4に示されるように、油圧ショベル100は、被積込機械50から送信された情報および被積込機械50を計測した情報の少なくとも1つの情報に基づいて被積込機械50の高さ情報を取得する被積込機械高さ検知部21(高さ取得部)を有している。コントローラ20は、被積込機械高さ検知部21により取得された被積込機械50の高さ情報に基づいてバケット3cの高さを上記設定高さに調整するように作業機3を制御する。これにより被積込機械50毎の高さを検知することができる。このため異なる被積込機械50が積込み場に進入する場合でも、バケット3cが被積込機械50に干渉することを確実に避けることができる。またバケット3cが自然降下していなくても、被積込機械50が積込み場へ進入する際にバケット3cに干渉しそうなときにバケット3cの高さを調整することができる。これにより、たとえば地形認識の計測誤差、作業機制御の停止誤差などの影響でバケット3cを正しい目標待機姿勢にできないことにより被積込機械50の進入時にバケット3cが干渉するというリスクを減らすことができる。
【0120】
また本実施の形態によれば図4に示されるように、油圧ショベル100は、被積込機械50から送信された情報を受信する受信部11を有している。これにより油圧ショベル100と被積込機械50との間の車々間通信が可能となり、油圧ショベル100は被積込機械50が持っている情報(たとえばその被積込機械50の高さ情報)を取得することができる。これにより複数の被積込機械50毎にバケット3cを適切な高さに調整することが可能となる。よって、異なる被積込機械50が積込み場に進入する場合でもバケット3cが被積込機械50に干渉することを確実に避けることができる。
【0121】
また本実施の形態によれば図4に示されるように、油圧ショベル100は、被積込機械50を計測する計測装置10を有している。この計測装置10により被積込機械50毎に、その高さを計測することが可能となる。これにより複数の被積込機械50毎にバケット3cを適切な高さに調整することが可能となる。よって、異なる被積込機械50が積込み場に進入する場合でもバケット3cが被積込機械50に干渉することを確実に避けることができる。
【0122】
また本実施の形態によれば図4に示されるように、被積込機械50は、油圧ショベル100の被積込機械高さ検知部21(高さ取得部)にて取得される被積込機械50の高さ情報を油圧ショベル100へ送信する送信部53を有している。これにより油圧ショベル100と被積込機械50との間の車々間通信が可能となり、油圧ショベル100は被積込機械50が持っている被積込機械50の高さ情報を取得することができる。
【0123】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0124】
1 走行体、1a 履帯装置、2 旋回体、2a 運転室、2b 運転席、2c エンジンルーム、2d カウンタウェイト、3 作業機、3a ブーム、3b アーム、3c バケット、3d バケットリンク、3da 第1リンク部材、3db 第2リンク部材、3dc バケットシリンダトップピン、3dd 第1リンクピン、3de 第2リンクピン、4a ブームシリンダ、4a 油圧アクチュエータ、4aa シリンダ、4ab シリンダロッド、4b アームシリンダ、4c バケットシリンダ、5a ブームフートピン、5b ブーム先端ピン、5c ピン、6a,6b 圧力センサ、7a,7c ストロークセンサ、9a,9b,9c ポテンショメータ、10 計測装置、11 受信部、12 荷重値検知センサ、13 旋回角度検知センサ、14 作業機姿勢検知センサ、20 コントローラ、21 被積込機械高さ検知部、22 バケット設定高さ決定部、23,52 記憶部、25 操作装置、25L 第2操作レバー、25R 第1操作レバー、26 操作量センサ、31 操作指令値取得部、32 荷重値算出部、33 旋回角度取得部、34 作業機姿勢検知部、35 待機状態判定部、36 バケット高さ検知部、37 自然降下量算出部、38 自然降下量判定部、39 バケット高さ調整指令部、41 メインバルブ、42 エンジン、43 油圧ポンプ、44 旋回モータ、45 自己圧減圧弁、46 EPC弁、50 被積込機械、51 アンテナ、53 送信部、60 管理装置、70 遠隔運転室、100 油圧ショベル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6