(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】低温硬化型プラスチゾル組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 27/06 20060101AFI20230519BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20230519BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20230519BHJP
C08K 5/16 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
C08L27/06
C08L33/06
C08K5/10
C08K5/16
(21)【出願番号】P 2019125500
(22)【出願日】2019-07-04
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】305032254
【氏名又は名称】サンスター技研株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】花咲 和明
(72)【発明者】
【氏名】南 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】南堀 考志
(72)【発明者】
【氏名】山村 直和
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-169756(JP,A)
【文献】特開平10-337531(JP,A)
【文献】特開平11-080598(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180393(WO,A1)
【文献】特開2020-147692(JP,A)
【文献】特開2009-138104(JP,A)
【文献】特開2004-231872(JP,A)
【文献】特開2016-098288(JP,A)
【文献】特開2016-188334(JP,A)
【文献】特開2015-183036(JP,A)
【文献】特開2000-212237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/06
C08L 33/06
C08K 5/10
C08K 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂、可塑剤、密着剤を含む、プラスチゾル組成物であって、
熱可塑性樹脂は、7~12質量%の割合で酢酸ビニルが共重合した塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含み、
熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリル系樹脂を更に含み、
密着剤は、ブロックイソシアネート樹脂を含み、ブロックイソシアネート樹脂は、芳香族系ブロックイソシアネート樹脂を含む、
プラスチゾル組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリル系樹脂は、カルボキシル基及び/又はアセトアセチル基を含む、請求項
1に記載のプラスチゾル組成物。
【請求項3】
可塑剤は、フタル酸ジエステルを含む、請求項1~
2のいずれか1項に記載のプラスチゾル組成物。
【請求項4】
フタル酸ジエステルは、アルキルベンジルフタレート及び/又はジアルキルフタレートを含む、請求項
3に記載のプラスチゾル組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のプラスチゾル組成物を使用することを含む、自動車の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温硬化型プラスチゾル組成物に関し、さらに詳しくは、例えば、自動車製造の際にボディーの塗装及び焼き付け工程等で使用され得るプラスチゾル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、車両軽量化のため、ボディーの樹脂化が進められている。現在の自動車製造工程では、樹脂製部品と鋼板製ボディーは別々に塗装され、焼き付けされて、その後両者が組み合わされる。
【0003】
ボディーシーラーとして、例えば、塩化ビニル系共重合体、可塑剤、充填材等を主成分とする、ポリ塩化ビニルプラスチゾル組成物が提案されており(例えば、特許文献1参照)、鋼板製ボディーのシーリングに使用される。そのボディーシーラーは、鋼板製ボディーに塗装されると同時に、140℃~160℃の温度領域で焼き付けが行われる。
【0004】
低温硬化性のボディーシーラーとして、アクリル樹脂と充填剤を可塑剤に分散してなるアクリルゾル組成物が低温硬化性と貯蔵安定性を兼ね備えることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-210900号公報
【文献】WO01/088011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車製造工程を更に効率化し、使用エネルギーを更に削減するために、樹脂製部品と鋼板製ボディーを同時に塗装することが、求められている。樹脂製部品-鋼板同時塗装工程では、樹脂製部品と鋼板製ボディーが同時に塗装され、焼き付けが行われる。その際、樹脂製部品の熱変形を防止するため、より低い温度、具体的には100~120℃に、焼き付け温度が制限される。しかし、一般に塩化ビニル系ボディーシーラーは、その低温焼き付け温度(100~120℃)で与えられる温度では、硬化物性及び接着性を発現することができない。また、一般にアクリル系ボディーシーラーは、低温硬化性と貯蔵安定性を兼ね備えると提案されたが、経済性は必ずしも十分ではない。
【0007】
本発明は、より低い焼き付け温度(具体的には、100~120℃)で、硬化物性及び接着性を発現可能かつ経済性に優れた、新たな組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、特定の範囲の量で酢酸ビニルを共重合させた塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含むプラスチゾル組成物は、より低い温度(具体的には、100~120℃)で硬化物性及び接着性を発現可能であり、経済性に優れることを見出した。更に、そのようなプラスチゾル組成物は、自動車製造用途に好適であることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本明細書は、以下の実施形態を含む。
1.熱可塑性樹脂、可塑剤、密着剤を含む、プラスチゾル組成物であって、
熱可塑性樹脂は、7~12質量%の割合で酢酸ビニルが共重合した塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含む、プラスチゾル組成物。
2.熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリル系樹脂を含む、上記1に記載のプラスチゾル組成物。
3.(メタ)アクリル系樹脂は、カルボキシル基及び/又はアセトアセチル基を含む、上記2に記載のプラスチゾル組成物。
4.可塑剤は、フタル酸ジエステルを含む、上記1~3のいずれか1つに記載のプラスチゾル組成物。
5.フタル酸ジエステルは、アルキルベンジルフタレート及び/又はジアルキルフタレートを含む、上記4に記載のプラスチゾル組成物。
6.密着剤は、ブロックイソシアネート樹脂を含む、上記1~3のいずれか1つに記載のプラスチゾル組成物。
7.ブロックイソシアネート樹脂は、芳香族系ブロックイソシアネート樹脂を含む、上記6に記載のプラスチゾル組成物。
8.上記1~7のいずれか1つに記載のプラスチゾル組成物を使用することを含む、自動車の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、特定の量で酢酸ビニルを共重合させた塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含む組成物であり、より低温で硬化物性及び接着性を発現することができ、経済性に優れる。よって、本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、自動車を更に効率的に、更に低エネルギーで製造するために好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、
熱可塑性樹脂、可塑剤、密着剤を含み、
熱可塑性樹脂は、7~12質量%の割合で酢酸ビニルが共重合した塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(コポリマー)を含む。
【0012】
本明細書において、熱可塑性樹脂とは、加熱すると軟化して可塑性を有し、冷却すると固化する樹脂をいい、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体(塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体)を含み、7~12質量%の割合で酢酸ビニルが塩化ビニルと共重合しており、本発明が目的とするプラスチゾル組成物を得られる限り特に制限されることはない。
【0013】
酢酸ビニルと塩化ビニルとの共重合体は、酢酸ビニルに由来する繰り返し単位を、7~12質量%の割合で含み、7~10質量%の割合で含むことが好ましく、8~9質量%の割合で含むことがより好ましい。このような酢酸ビニルと塩化ビニルの共重合体を含むことで、本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、より低温で硬化物性及び接着性を発現することができる。
【0014】
酢酸ビニルと塩化ビニルの共重合体に含まれる、酢酸ビニルに由来する繰り返し単位の含有量(質量%)は、下記のようにして求めることができる。
酢酸ビニルと塩化ビニルの共重合体100mgとKBr10mgを混合し、すりつぶして成形して、測定サンプルを準備する。この測定サンプルについて、赤外分光光度計(例えば、島津製作所製、FTIR-8100A(商品名))を使用して、赤外吸収スペクトルを測定する。ピーク1(1430cm-1付近のC-H面内変角による吸収ピークトップ)のAbs.値(以下「A1」という)と、ピーク2(1740cm-1付近のC=O伸縮による吸収ピークトップ)のAbs.値(以下「A2」という)を読み取る。下記式から算出する。
酢酸ビニルに由来する繰り返し単位の含有量(質量%)
=(3.73×A2/A1+0.024)×1.04
【0015】
本発明の実施形態において、酢酸ビニルと塩化ビニルとの共重合体は、さらに、下記一般式(1)で示される化合物を含むことができる。酢酸ビニルと塩化ビニルとの共重合体は、一般式(1)で示される化合物を、例えば、100~3000ppmの量で、より好ましくは500~2000ppmの量で、含むことができる。
【化1】
(ここで、一般式(1)において、R
1は炭素数6~18のアルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を示し、R
2は水素又は炭素数6~18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を示し、R
3は水素又はプロペニル基を示し、Aは炭素数2~4のアルキレン基を示し、nは1~200の整数を示し、Mはアルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残基を示す。)
【0016】
一般式(1)において、R1の炭素数は7~11、R2及びR3は水素、Aは炭素数2~3のアルキレン基、nは1~40であることが好ましい。本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、そのような一般式(1)で示される化合物を含む酢酸ビニルと塩化ビニルとの共重合体を含む場合、低温での硬化物性及び貯蔵安定性により優れ、自動車製造のためにより優れる。
【0017】
前記一般式(1)で示される化合物は、例えば、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド100モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ドデシルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルプロペニルフェノールプロピレンオキシド10モルランダム付加体硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルプロペニルフェノールブチレンオキシド4モルブロック付加体硫酸エステルナトリウム塩及びドデシルプロペニルフェノールエチレンオキシド30モルブロック付加体硫酸エステルナトリウム塩等からなる群より選択される化合物であることが好ましい。
【0018】
前記一般式(1)で示される化合物は、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩からなる群より選択される化合物であることがより好ましい。本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、そのような一般式(1)で示される化合物を含む酢酸ビニルと塩化ビニルとの共重合体を含む場合、自動車製造のために更により優れる。
【0019】
一般式(1)で示される化合物は、酢酸ビニルと塩化ビニルとの共重合体を製造する際に、界面活性剤としても作用し得、本発明の実施形態のプラスチゾル組成物の保存安定性等に寄与し得、特に低温での硬化物性、保存安定性により優れ、特に自動車製造用に優れる。
【0020】
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、一般式(1)で示される化合物を含む場合、貯蔵安定性が向上し得る。本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、さらに、可塑剤として、例えばアルキルベンジルフタレート又はアルキルスルフォン酸フェニル系可塑剤等を含む場合、硬化性を向上しながら貯蔵安定性の悪化を最小限にし得る。一般式(1)で示される化合物を後添加しても貯蔵安定性等を向上することができるが、酢酸ビニルと塩化ビニルとの共重合体に一般式(1)で示される化合物が含まれることが好ましい。尚、一般式(1)で示される化合物は、エチレン性二重結合が開いた繰り返し単位の形態で、含まれてよい。
【0021】
本明細書において、熱可塑性樹脂は、上述の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の他に、例えば、(メタ)アクリル系樹脂(アクリル系樹脂及びメタクリル系樹脂を含む)、塩化ビニルホモポリマー、塩化ビニルと水酸基を有するビニルとの共重合体、塩化ビニルとカルボン酸基を有するビニルとの共重合体などの塩化ビニル系樹脂(上述の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を除く)、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル-スチレン)樹脂等を含むことができる。
【0022】
熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリル系樹脂を含むことが好ましく、(メタ)アクリル系樹脂は、カルボキシル基及び/又はアセトセチル基を含むことがより好ましい。また、貯蔵安定性と硬化性を両立のためコアシェル構造を有するアクリル樹脂が好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂は、入手容易で有り、低温硬化性、貯蔵安定性、接着性に優れ、好ましい。更に、(メタ)アクリル系樹脂は、カルボキシル基及び/又はアセトセチル基を含む場合、より低温で界面破壊(AF)を生じ難く、凝集破壊(CF)を生じやすく、より好ましい。
【0023】
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、プラスチゾル組成物全体を100質量部として、熱可塑性樹脂を、例えば、1~50質量部含むことができ、2~40質量部含むことが好ましく、3~35質量部含むことがより好ましく、5~30質量部含むことが更により好ましい。
【0024】
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、プラスチゾル組成物全体を100質量部として、上述の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を、例えば、1~50質量部含むことができ、2~40質量部含むことが好ましく、3~35質量部含むことがより好ましく、5~30質量部含むことが更により好ましい。
【0025】
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、プラスチゾル組成物全体を100質量部として、(メタ)アクリル樹脂を、例えば、0.1~49質量部含むことができ、0.2~10質量部含むことが好ましく、0.3~5質量部含むことがより好ましく、0.5~3質量部含むことが更により好ましい。
【0026】
本明細書において、可塑剤とは、熱可塑性樹脂に加えることで、塑性を増大させて軟らかくすることができ、本発明が目的とするプラスチゾル組成物を得られる限り特に制限されることはない。
【0027】
可塑剤として、例えば、フタル酸ブチルベンジル(ブチルベンジルフタレート:BBP)、フタル酸オクチルベンジル(オクチルベンジルフタレート:OBP)、及びフタル酸イソノニルベンジル(イソノニルベンジルフタレート)等のアルキルベンジルフタレート;フタル酸ジメチルシクロヘキシル(ジメチルシクロヘキシルフタレート:DMCHP);フタル酸ポリエステル;安息香酸エステル;フタル酸ジイソノニル(ジイソノニルフタレート:DINP)、フタル酸ジオクチル(ジオクチルフタレート:DOP)、フタル酸ジメチル(ジメチルフタレート:DMP)、フタル酸ジエチル(ジエチルフタレート:DEP)、フタル酸ジブチル(ジブチルフタレート:DBP)、フタル酸ジヘプチル(ジヘプチルフタレート:DHP)、フタル酸ジノニル(ジノニルフタレート:DNP)、フタル酸ジデシル(ジデシルフタレート:DDP)、フタル酸ジノルマルオクチル(ジノルマルオクチルフタレート:DnOP)、フタル酸ジイソデシル(ジイソデシルフタレート:DIDP)、及びフタル酸ビス-2-エチルへキシル(ビスー2-エチルフタレート:DEHP)等のジアルキルフタレート;トリメリット酸トリス(トリオクチルトリメリテート:TOTM)、トリオクチルトリメリテート(TOTN)、トリイソオクチルトリメリテート、及びトリイソデシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル;1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジオクチル、コハク酸ジイソノニル等の脂肪族又は脂環族ジカルボン酸ジエステル;アルキルスルホン酸フェニル系エステル;トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクロロエチルホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3-ジブロモプロピル)-2,3-ジクロロプロピルホスフェート、
ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤等を例示できる。
【0028】
可塑剤は、フタル酸ジエステルを含むことが好ましく、フタル酸ジエステルは、アルキルベンジルフタレート及び/又はジアルキルフタレートを含むことがより好ましい。
可塑剤が、フタル酸ジエステルを含む場合、適度な硬化性を持ちながら貯蔵安定性が優れ好ましく、アルキルベンジルフタレート及び/又はジアルキルフタレートを含む場合、硬化性を高めより好ましい。
【0029】
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、プラスチゾル組成物全体を100質量部として、可塑剤を、例えば、5~60質量部含むことができ、10~55質量部含むことが好ましく、15~50質量部含むことがより好ましく、20~40質量部含むことが更により好ましい。
【0030】
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、プラスチゾル組成物全体を100質量部として、上述のフタル酸ジエステルを、例えば、5~60質量部含むことができ、10~55質量部含むことが好ましく、15~50質量部含むことがより好ましく、20~40質量部含むことが更により好ましい。
【0031】
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、プラスチゾル組成物全体を100質量部として、アルキルベンジルフタレートを、例えば、0.1~60質量部含むことができ、0.3~20質量部含むことが好ましく、0.5~10質量部含むことがより好ましく、1~5質量部含むことが更により好ましい。
【0032】
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、プラスチゾル組成物全体を100質量部として、ジアルキルフタレートを、例えば、0.1~60質量部含むことができ、0.2~50質量部含むことが好ましく、0.3~40質量部含むことがより好ましく、0.5~30質量部含むことが更により好ましい。
【0033】
本明細書において、密着剤とは、本実施形態のプラスチゾル組成物から形成される膜(基材上の塗膜)の、基材に対する密着性(又は接着性)を向上させることができ、本発明が目的とするプラスチゾル組成物を得ることができる限り、特に制限されることはない。
【0034】
密着剤として、例えば、ブロックイソシアネート、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリアミン、ポリオール等を例示することができる。
【0035】
密着剤は、ブロックイソシアネートを含むことができ、含むことが好ましい。「ブロックイソシアネート」は、例えば、比較的低分子のポリイソシアネート成分の末端のNCO基が、例えば、重亜硫酸塩類、フェノール、クレゾール、エチルフェノールなどのフェノール系化合物、アセトアニリド、酢酸アミド等の酸アミド化合物、ε‐カプロラクタム、δ‐バレロラクタムなどのラクタム系化合物、低級1価アルコール、セロソルブ、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミン、ピラゾールなどのアミン系化合物、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物等のブロック剤でブロックされた化合物をいう。
ブロック剤は、ポリイソシアネートのイソシアナート基と結合し、常温では安定であるが、ある温度以上に加熱されると、イソシアネート基から解離可能な、活性水素を含む化合物をいい、本発明が目的とするプラスチゾル組成物を得られる限り特に制限されることはない。本発明の実施形態において、比較的低温で解離することが求められることから、オキシム系化合物、アミン系化合物等が、ブロック剤として好ましい。
【0036】
ポリイソシアネート成分として、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族イソシアネート;ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、メタフェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水添MDI等の脂環式ジイソシアネート;これらのイソシアネートのビューレット体、イソシアヌレート体、エチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールとのアダクト体、又は、ウレタンプレポリマ等を例示できる。
【0037】
ブロックイソシアネートは、ウレタンプレポリマをブロックしたブロックウレタンプレポリマー、(所謂、ブロック型ウレタン樹脂)を含むことができる。ブロック型ウレタン樹脂は、塗布後の加熱によりブロック剤が解離すると、ウレタン樹脂の分子間架橋による橋かけ反応を生じ、橋かけ反応でウレタン樹脂が網目構造をとり得る。
【0038】
ブロック型ウレタン樹脂として、例えば、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオール等のポリオールと、ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、トリレンジイソシアナート(TDI)及びヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)等のイソシアナートとを反応させて得られるウレタン樹脂を、上述のブロック剤を用いてブロックしたブロック型ウレタン樹脂を用いることができる。ポリプロピレングリコール(PPG)とトリレンジイソシアナート(TDI)またはジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)から合成されたウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0039】
密着剤としての「ポリアミド」は、例えば、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、または芳香族ジアミン等のポリアミン類と多塩基酸とを反応させて得られるアミド、具体的には、リノール酸等の不飽和脂肪酸を熱重合したダイマー酸またはトリマー酸等の重合脂肪酸とポリアミンとの反応生成物等を含むことができ、本発明が目的とするプラスチゾル組成物を得られる限り、特に制限されることはない。
【0040】
密着剤としての「エポキシ樹脂」は、分子中に2以上のエポキシ基を含む化合物であって、本発明が目的とするプラスチゾル組成物を得られる限り特に制限されることはない。例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂等を例示することができる。また、このエポキシ樹脂は、例えば、可撓性を付与するためにNBR等のゴムで変性した各種変性タイプの化合物を使用することができる。
【0041】
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、プラスチゾル組成物全体を100質量部として、密着剤を、例えば、0.1~30質量部含むことができ、0.2~10質量部含むことが好ましく、0.3~7質量部含むことがより好ましく、1~4質量部含むことが更により好ましい。
【0042】
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、プラスチゾル組成物全体を100質量部として、上述のブロックイソシアネートを、例えば、0.1~30質量部含むことができ、0.2~10質量部含むことが好ましく、0.3~7質量部含むことがより好ましく、1~4質量部含むことが更により好ましい。
【0043】
ブロックイソシアネートは、脂肪族ブロックイソシアネートと芳香族ブロックイソシアネートの両方を含むことができる。ブロックイソシアネートは、芳香族ブロックイソシアネートを含むことが好ましい。
【0044】
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、その他の成分を適宜含むことができる。その他の成分として、例えば、硬化剤、充填材、希釈剤、界面活性剤(上述の一般式(1)で示される化合物を除く)、その他の添加剤等を例示することができる。
【0045】
本発明の実施形態において、硬化剤とは、常温では硬化作用を有さないが、ある温度になると、硬化作用を発現する化合物であって、本発明が目的とするプラスチゾル組成物を得られる限り、特に制限されることはない。
硬化剤として、例えば、60℃以上、好ましくは100~200℃の温度で活性化してエポキシ樹脂と反応し得る潜在性硬化剤(活性化温度60℃未満のものでは、粘度が上昇し、貯蔵安定性が悪化するので望ましくない):具体例として、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、1,3-ビス(ヒドラジノカルボエチル)-5-イソプロピルヒダントイン、エイコサン二酸ジヒドラジド、ハイドロキノンジグリコール酸ジヒドラジド、レゾルシノールジグリコール酸ジヒドラジド、4,4’-エチリデンビスフェノールジグリコール酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物;4,4’-ジアミノジフェニルスルホン;イミダゾール、2-n-ヘプタンデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物;メラミン;ベンゾグアナミン;N,N’-ジアルキル尿素化合物;N,N’-ジアルキルチオ尿素化合物;ジアミノジフェニルメタン、ジアミノビフェニル、ジアミノフェニール、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ドデカンジアミン、デカンジアミン、オクタンジアミン、テトラデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ヒドラジド系ポリアミン等の融点60℃以上の常温固形のポリアミン;シアノグアニジン等のグアニジン誘導体が挙げられる。これらの1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。
硬化剤として市販品を使用することができ、例えば、ADEKA社製のEH-4030s(商品名)、日本ヒドラジド社製のADH(商品名)、ADEKA社製のEH3731s(商品名)等を例示することができる。
【0046】
本発明の実施形態において、充填材とは、本発明の実施形態のプラスチゾル組成物を増量するとともに、プラスチゾル組成物から形成される膜にある程度の強さを与えることができる化合物であって、本発明が目的とするプラスチゾル組成物を得られる限り、特に制限されることはない。
【0047】
充填材として、例えば、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム等)、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩及び硫酸塩、マイカ(雲母)、グラファイト、タルク(滑石)、クレー、硝子フレーク(硝子ビーズ)、ヒル石、カオリナイト、ワラストナイト(針状カルシウムメタシリケート)、シリカ、珪藻土、石膏、セメント、転炉スラグ、シラス、ゼオライト、セルロース粉、粉末ゴム、ゾノライト、チタン酸カリウム、ベントナイト、窒化アルミ、窒化珪素、亜鉛華、酸化チタン、酸化カルシウム、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、その他にも炭酸カルシウムウィスカ(針状炭酸カルシウム)、セラミック短繊維またはそのウィスカ、ロックウール短繊維、ガラスファイバー短繊維、チタン酸カリウム短繊維、ケイ酸カルシウム短繊維、アルミニウムシリケート、カーボンファイバー短繊維、アラミドファイバー短繊維、セピオライト等の鉱物繊維、各種ホイスカー等の繊維状充填材、ガラスバルーン、シリカバルーン、樹脂バルーン、炭素無機中空球等の中空状充填材、塩化ビニリデン、アクリルニトリル等の有機合成樹脂からなるプラスチックバルーン等の有機中空状充填材や、アルミニウムフィラー等のメタリックフィラー等を例示できる。
【0048】
本発明の実施形態において、希釈剤とは、本実施形態のプラスチゾル組成物の流動性を維持し得る化合物であって、本発明が目的とするプラスチゾル組成物を得られる限り、特に制限されることはない。
希釈剤として、例えば、ナフサ、パラフィン等の高沸点炭化水素系溶剤等を例示することができる。
希釈剤として市販品を使用することができ、希釈剤の沸点が100℃以上、250℃以下であることが好ましく、より好ましくは希釈剤の沸点は150℃以上、220℃以下、さらに好ましくは160℃以上、200℃以下である。例えば、エクソンモービル社製のアイソパーH(商品名)、エクソンモービル社製のD-40(商品名)、エクソンモービル社製のD-80(商品名)等を例示することができる。
【0049】
本発明の実施形態において、その他の添加剤として、例えば、吸湿剤(酸化カルシウム、モレキュラーシーブス等)、揺変性賦与剤(有機ベントナイト、フュームドシリカ、ステアリン酸アルミニウム、金属石けん類、ヒマシ油誘導体等)、安定剤[2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等]、硬化促進剤(ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸鉛、オクチル酸ビスナス等)、顔料(タルク、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ)等を例示することができる。その他の添加剤は、本発明が目的とするプラスチゾル組成物を得られる限り、特に制限されることなく、適宜使用することができる。
【0050】
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、上述の成分を混合することによって製造することができる。
プラスチゾル組成物は、混合分散機として、具体的には、例えば、プラネタリーミキサー、ニーダー、アトライター、グレンミル、ロール、ディゾルバー等を使用して、標記成分を混合して製造することができる。
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、粉末状熱可塑性樹脂が可塑剤に均質分散された流動性を有したゾル状の形態を有することができ、通常充填剤などを含むことができる。
【0051】
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、保存安定性に優れることが好ましい。保存安定性は、40℃で7日間保管し、その前後の粘度を測定し、保管前の粘度を基準として、粘度が何%増えたか(粘度増加率)で評価する。詳細な評価方法は、実施例に記載した。
粘度増加率は、40% 以下である場合A(優良)、40%を超え、60% 以下である場合B(良)、60%を超え、80% 以下である場合C(普通)、80%を超える場合D(不十分)、ゲル化を認めた場合E(不良)。
【0052】
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、100℃において14分保持焼付後のせん断強度は、0.2~3.0MPaであることが好ましく、0.3~2.0MPaであることがより好ましく、0.4~1.5MPaであることが更により好ましい。
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、100℃において14分保持焼付後の抗張力は、0.1~2.5MPaであることが好ましく、0.2~1.5MPaであることがより好ましく、0.3~1.0MPaであることが更により好ましい。
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、100℃において14分保持焼後の伸び率は、50~400%であることが好ましく、70~300%であることがより好ましく、80~200%であることが更により好ましい。
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、100℃において14分保持焼付後の破壊状態は、凝集破壊(CF)であることが好ましい。
【0053】
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、110℃において14分保持焼付後のせん断強度は、0.2~3.0MPaであることが好ましく、0.3~2.0MPaであることがより好ましく、0.4~1.5MPaであることが更により好ましい。
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、110℃において14分保持焼付後の抗張力は、0.1~2.5MPaであることが好ましく、0.2~1.5MPaであることがより好ましく、0.3~1.0MPaであることが更により好ましい。
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、110℃において14分保持焼付後の伸び率は、50~400%であることが好ましく、70~300%であることがより好ましく、80~200%であることが更により好ましい。
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、110℃において14分保持焼付後の破壊状態は、凝集破壊(CF)であることが好ましい。
【0054】
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、120℃において14分保持焼付後のせん断強度は、0.2~3.0MPaであることが好ましく、0.3~2.0MPaであることがより好ましく、0.4~1.5MPaであることが更により好ましい。
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、120℃において14分保持焼付後の抗張力は、0.1~2.5MPaであることが好ましく、0.2~1.5MPaであることがより好ましく、0.3~1.0MPaであることが更により好ましい。
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、120℃において14分保持焼付後の伸び率は、50~400%であることが好ましく、70~300%であることがより好ましく、80~200%であることが更により好ましい。
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、120℃において14分保持焼付後の破壊状態は、凝集破壊(CF)であることが好ましい。
【0055】
本実施形態のプラスチゾル組成物は、公知の塗装方法、例えば、刷毛塗り、ローラー塗装、エアスプレー塗装、静電塗装、エアレススプレー塗装等の塗布方法を用いて、必要な場所に任意の厚さ及び塗布形態において塗布することができ、例えば、熱風循環乾燥炉等を使用して所定温度に加熱することで塗膜を形成することができる。
【0056】
本発明の実施形態において、本発明の実施形態のプラスチゾル組成物を使用することを含む、自動車の製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、自動車を製造するための塗装工程に使用することができる。塗装方法として、例えば、エアレススプレー塗装を用いることができ、このエアレススプレー塗装に、静電エアレススプレー塗装及びエアアシストエアレススプレー塗装等の改良方法も含まれる。
【0057】
上記塗装手段において、コンピュータ制御による自動塗装機や、ロボット塗装機による塗装も可能である。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0059】
本実施例で使用した成分を以下に示す。
(A)熱可塑性樹脂
(a1)塩化ビニルホモポリマー
(a2)酢酸ビニル-塩化ビニルコポリマー(酢酸ビニル含有量:5~6質量%)(東ソー社製のリューロンペースト952(商品名))
(a3)酢酸ビニル-塩化ビニルコポリマー(酢酸ビニル含有量:8~9質量%)(東ソー社製のリューロンペーストG50(商品名))
(a4)酢酸ビニル-塩化ビニルコポリマー(酢酸ビニル含有量:14~15質量%)(東ソー社製のLB-082(商品名))
(a5)アクリル樹脂(カルボキシル基を有する)(三菱ケミカル社製のダイヤナールLP-3106(商品名))
(a6)アクリル樹脂(アセトアセチル基を有する)(三菱ケミカル社製のダイヤナールLP-3104(商品名))
【0060】
(B)可塑剤
(b1)可塑剤(フタル酸ジイソノニル)(新日本理化社製のサンソサイザーDINP(商品名))
(b2)可塑剤(フタル酸アルキルベンジル)(FERRO社製のサンチサイザー261A(商品名))
【0061】
(C)密着剤
(c1)芳香族系ブロックイソシアネート樹脂(ADEKA社製のアデカレジンQR-9485-3(商品名))
(c2)脂肪族系ブロックイソシアネート樹脂(三井化学社製のタケネートB-7210(商品名))
【0062】
(D)その他
(d1)硬化剤(ADEKA社製のアデカハードナーEH-4358S(商品名))
(d2)充填材(白石工業社製の活性炭酸カルシウム ハクエンカCCR(商品名)備北粉化工業社製のホワイトンB(商品名))
(d3)希釈剤(エクソンモービル社製のD-40(商品名))
(d4)添加剤(井上石灰工業社製のQC-X(商品名))
【0063】
これらの成分を表1~3に示す割合で配合し、実施例1~18及び比較例1~6のプラスチゾル組成物を製造した。
【0064】
このようにして得られた実施例1~18及び比較例1~6のプラスチゾル組成物について、下記の評価を行った。評価結果は、表1~3にまとめて記載した。
【0065】
硬化性
(i)100℃硬化性評価
下記のようにして、せん断強度(MPa)、破壊状態、抗張力(MPa)、伸び率(%)を評価した。
(せん断強度および破壊状態)
25×100×1mmの電着塗装鋼板を用い、ラップ長さ25mm、厚み1mmで剪断接着試験片を作製後、100℃×14分保持にて焼付けを行い、次いで20℃に冷却してからJASO M 323-77に準じてせん断強度を測定した。その後、破壊状態を確認した。破壊状態の評価基準は以下の通りである。
CF:接着層の凝集破壊
AF:被着体と接着層との間の界面破壊
【0066】
(抗張力および伸び率)
JASO M 323-77に準じ、試験片を作成後、100℃×14分保持にて焼付けを行い、次いで20℃に冷却してから、破断時の強度と伸び率を測定した。
【0067】
(ii)110℃硬化性評価
焼付け温度を110℃とした以外は、(i)100℃硬化性評価に記載した方法と同じ方法で評価を行った。
【0068】
(iii)120℃硬化性評価
焼付け温度を120℃とした以外は、(i)100℃硬化性評価に記載した方法と同じ方法で評価を行った。
【0069】
プラスチゾル組成物の保存性
40℃7日後の粘度変化率は、次のように算出した。
JASO M323-77の粘度試験A法に準じ、20℃、7番ローター、20回転/分、ローターの回転開始から1分後の粘度を測定した。次式により変化率(%)を算出した。
変化率=(n2-n1)/n1×100
ここで、n1:初期の粘度(20℃)
n2:40℃で放置後の粘度
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
実施例1~18のプラスチゾル組成物は、いずれも100℃で硬化して、所定の範囲のせん断強度等を示し、優れた低温硬化性を示すとともに、40℃で7日間保存しても所定の範囲の粘度増加率を示し、高い保存安定性を示した。
【0074】
これに対し、比較例1~4のプラスチゾル組成物は、いずれも100℃で硬化せず、低温硬化性を示さなかった。比較例1~4のプラスチゾル組成物は、(a3)の代わりに、(a1)又は(a2)を含み、一定の割合より少ない量で、酢酸ビニルが共重合された酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体を使用したからであると考えられる。
【0075】
更に、比較例5~6のプラスチゾル組成物は、100℃で硬化して、所定の範囲のせん断強度等を示し、優れた低温硬化性を示すが、40℃で7日間保存するとゲル化し、保存安定性に劣ることを示した。比較例5~6のプラスチゾル組成物は、(a3)の代わりに、(a4)を含み、一定の割合より多い量で、酢酸ビニルが共重合された酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体を使用したからであると考えられる。
【0076】
プラスチゾル組成物の物性として、せん断強度は、大きい方が好ましく、破壊状態は、凝集破壊(CF)の方が、界面破壊(AF)より好ましい。抗張力は、大きい方が好ましく、伸びは、大きい方が好ましい。
実施例4のプラスチゾル組成物と実施例10のプラスチゾル組成物について、(a3)の量が、14.5以上の場合と、(a4)と(a5)の合計の量が、0.5以下の場合に、100℃での硬化で界面破壊を生じる傾向にあることがわかる。
実施例13から、(b2)の量が0の場合、100℃での硬化で界面破壊を生じる傾向にあることがわかる。
実施例15~18から、(c1)の量が0の場合と、(d1)の量が0の場合、100℃での硬化で界面破壊を生じる傾向にあることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、特定の量で酢酸ビニルを共重合させた塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含む組成物であり、より低温で硬化物性及び接着性を発現することができ、経済性に優れる。よって、本発明の実施形態のプラスチゾル組成物は、自動車を更に効率的に、更に低エネルギーで製造するために好適に使用することができる。