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特許7281987光源、検査装置、EUV光の生成方法及び検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】光源、検査装置、EUV光の生成方法及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20230519BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20230519BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20230519BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20230519BHJP
   G02F 1/37 20060101ALI20230519BHJP
   G02B 6/04 20060101ALI20230519BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20230519BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20230519BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230519BHJP
   G03F 1/84 20120101ALI20230519BHJP
【FI】
H01S3/10 Z
G01N21/84 E
G01N21/956 A
H01S3/00 A
G02F1/37
G02B6/04 A
G02B6/26
H05G2/00 K
G03F7/20 503
G03F1/84
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2019129165
(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2021009982
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2018131566
(32)【優先日】2018-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019129069
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115902
【氏名又は名称】レーザーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100129953
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 康弘
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 純
(72)【発明者】
【氏名】石田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】楠瀬 治彦
(72)【発明者】
【氏名】西澤 正泰
(72)【発明者】
【氏名】武久 究
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-270549(JP,A)
【文献】特開2003-270551(JP,A)
【文献】特開2005-338851(JP,A)
【文献】特開平11-258645(JP,A)
【文献】国際公開第2017/173315(WO,A1)
【文献】特開2001-215540(JP,A)
【文献】特開2003-114200(JP,A)
【文献】特開平08-213192(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0246607(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射したパルスレーザ光を少なくとも第1パルスレーザ光及び第2パルスレーザ光を含む2つ以上のパルスレーザ光に分離し、前記第2パルスレーザ光を前記第1パルスレーザ光よりも遅延させて出射させるダブルパルス発生素子を備え、
前記第1パルスレーザ光は、前記第1パルスレーザ光及び前記第2パルスレーザ光の照射によりプラズマを発生するターゲット材を照射し、
前記第2パルスレーザ光は、前記第1パルスレーザ光の照射により発生したプラズマ及び前記ターゲット材を照射し、
前記ダブルパルス発生素子は、前記第1パルスレーザ光と前記第2パルスレーザ光との間に光路差を有するようにして、前記第2パルスレーザ光を前記第1パルスレーザ光よりも遅延させて出射させ、
前記ダブルパルス発生素子は、
一端から入射した前記パルスレーザ光を他端から前記第1パルスレーザ光として出射させる第1パルス用ファイバと、一端から入射した前記パルスレーザ光を他端から前記第2パルスレーザ光として出射させる第2パルス用ファイバと、を有するバンドルファイバを備え、
前記第2パルス用ファイバの前記一端から前記他端までの長さを、前記第1パルス用ファイバの前記一端から前記他端までの長さよりも長くして、前記光路差を有するようにし、
前記バンドルファイバは、複数の前記第1パルス用ファイバと、複数の前記第2パルス用ファイバとを含み、
前記パルスレーザ光が入射する前記バンドルファイバの入射端は、円形状に束ねられ、前記パルスレーザ光が出射する前記バンドルファイバの出射端は、矩形状に束ねられ、
発生した前記プラズマからEUV光を生成する光源。
【請求項2】
前記第1パルス用ファイバは、前記入射端及び前記出射端の中央部に配置され、前記第2パルス用ファイバは、前記入射端及び前記出射端の周辺部に配置された、
請求項に記載の光源。
【請求項3】
入射したパルスレーザ光を少なくとも第1パルスレーザ光及び第2パルスレーザ光を含む2つ以上のパルスレーザ光に分離し、前記第2パルスレーザ光を前記第1パルスレーザ光よりも遅延させて出射させるダブルパルス発生素子を備え、
前記第1パルスレーザ光は、前記第1パルスレーザ光及び前記第2パルスレーザ光の照射によりプラズマを発生するターゲット材を照射し、
前記第2パルスレーザ光は、前記第1パルスレーザ光の照射により発生したプラズマ及び前記ターゲット材を照射し、
前記入射したパルスレーザ光は、
半導体過飽和吸収鏡を利用した固体レーザのモードロック動作、または、半導体レーザの利得スイッチを利用して生成される時間幅が200ピコ秒以下のパルスレーザ光であるか、
または、
前記200ピコ秒以下のパルスレーザ光を種火として光増幅器により増幅されたパルスレーザ光であり、
発生した前記プラズマからEUV光を生成する光源。
【請求項4】
前記ダブルパルス発生素子は、前記第1パルスレーザ光と前記第2パルスレーザ光との間に光路差を有するようにして、前記第2パルスレーザ光を前記第1パルスレーザ光よりも遅延させて出射させる、
請求項に記載の光源。
【請求項5】
前記ダブルパルス発生素子は、1/2波長板、ビームスプリッタ及び反射鏡を用いて前記光路差を有するようにする、
請求項に記載の光源。
【請求項6】
前記ダブルパルス発生素子は、プリズムを用いて、前記光路差を有するようにする、
請求項に記載の光源。
【請求項7】
前記ダブルパルス発生素子は、入射した前記パルスレーザ光を基本波として、前記パルスレーザ光の一部を高調波のパルスレーザ光に変換する非線形波長変換素子と、
残存する前記基本波及び前記高調波のパルスレーザ光に作用する波長分散素子と、
を含み、
前記第1パルスレーザ光の波長と前記第2パルスレーザ光の波長とを異ならせる、
請求項に記載の光源。
【請求項8】
前記波長分散素子は、前記高調波を反射し、前記基本波を透過させるダイクロイックミラー、または、前記高調波を透過させ、前記基本波を反射させるダイクロイックミラーのいずれかを含む請求項に記載の光源。
【請求項9】
前記ダブルパルス発生素子は、
一端から入射した前記パルスレーザ光を他端から前記第1パルスレーザ光として出射させる第1パルス用ファイバと、一端から入射した前記パルスレーザ光を他端から前記第2パルスレーザ光として出射させる第2パルス用ファイバと、を有するバンドルファイバを備え、
前記第2パルス用ファイバの前記一端から前記他端までの長さを、前記第1パルス用ファイバの前記一端から前記他端までの長さよりも長くして、前記光路差を有するようにする、
請求項に記載の光源。
【請求項10】
前記バンドルファイバは、複数の前記第1パルス用ファイバと、複数の前記第2パルス用ファイバとを含み、
前記パルスレーザ光が入射する前記バンドルファイバの入射端は、円形状に束ねられ、前記パルスレーザ光が出射する前記バンドルファイバの出射端は、矩形状に束ねられた、
請求項に記載の光源。
【請求項11】
前記第1パルス用ファイバは、前記入射端及び前記出射端の中央部に配置され、前記第2パルス用ファイバは、前記入射端及び前記出射端の周辺部に配置された、
請求項10に記載の光源。
【請求項12】
前記ダブルパルス発生素子は、
屈折率が1よりも大きい透明部材を備え、
前記透明部材は、前記パルスレーザ光が透過する光軸方向の長さが所定の長さの長軸部分と、前記光軸方向の長さが前記長軸部分よりも短い短軸部分と、を含み、
前記パルスレーザ光が前記長軸部分を透過して出射した前記第2パルスレーザ光を、前記パルスレーザ光が前記短軸部分を透過して出射した前記第1パルスレーザ光よりも遅延させて出射させる、
請求項に記載の光源。
【請求項13】
前記透明部材は、前記第1パルスレーザ光が出射する第1出射面と、前記第2パルスレーザ光が出射する第2出射面との間に、前記光軸方向の段差を有する、
請求項12に記載の光源。
【請求項14】
前記第1パルスレーザ光が前記ターゲット材を照射する第1光量に対する前記第2パルスレーザ光が前記ターゲット材を照射する第2光量の割合は、前記第1出射面に対する前記第2出射面の割合で調整可能であり、
前記第2パルスレーザ光が前記第1パルスレーザ光よりも遅延する時間は、前記段差の長さで調整可能である、
請求項13に記載の光源。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の光源と、
前記EUV光により検査対象を照明する照明光学系と、
前記EUV光により照明された前記検査対象からの光を検出して前記検査対象の画像を取得する検出光学系と、
を備えた検査装置。
【請求項16】
入射したパルスレーザ光を少なくとも第1パルスレーザ光及び第2パルスレーザ光を含む2つ以上のパルスレーザ光に分離し、前記第2パルスレーザ光を前記第1パルスレーザ光よりも遅延させて出射させるダブルパルス発生素子を配置するステップと、
前記ダブルパルス発生素子に前記パルスレーザ光を入射させるステップと、
前記第1パルスレーザ光及び前記第2パルスレーザ光の照射によりプラズマを発生するターゲット材を、前記第1パルスレーザ光によって照射するステップと、
前記第1パルスレーザ光の照射により発生した前記プラズマ及び前記ターゲット材を、前記第2パルスレーザ光によって照射するステップと、
発生した前記プラズマからEUV光を生成するステップと、
を備え
前記ダブルパルス発生素子は、前記第1パルスレーザ光と前記第2パルスレーザ光との間に光路差を有するようにして、前記第2パルスレーザ光を前記第1パルスレーザ光よりも遅延させて出射させ、
前記ダブルパルス発生素子は、
一端から入射した前記パルスレーザ光を他端から前記第1パルスレーザ光として出射させる第1パルス用ファイバと、一端から入射した前記パルスレーザ光を他端から前記第2パルスレーザ光として出射させる第2パルス用ファイバと、を有するバンドルファイバを備え、
前記第2パルス用ファイバの前記一端から前記他端までの長さを、前記第1パルス用ファイバの前記一端から前記他端までの長さよりも長くして、前記光路差を有するようにし、
前記バンドルファイバを、複数の前記第1パルス用ファイバと、複数の前記第2パルス用ファイバとを含むようにし、
前記パルスレーザ光が入射する前記バンドルファイバの入射端を、円形状に束ね、前記パルスレーザ光が出射する前記バンドルファイバの出射端を、矩形状に束ねる、
EUV光の生成方法。
【請求項17】
前記第1パルス用ファイバを、前記入射端及び前記出射端の中央部に配置し、前記第2パルス用ファイバを、前記入射端及び前記出射端の周辺部に配置する、
請求項16に記載のEUV光の生成方法。
【請求項18】
入射したパルスレーザ光を少なくとも第1パルスレーザ光及び第2パルスレーザ光を含む2つ以上のパルスレーザ光に分離し、前記第2パルスレーザ光を前記第1パルスレーザ光よりも遅延させて出射させるダブルパルス発生素子を配置するステップと、
前記ダブルパルス発生素子に前記パルスレーザ光を入射させるステップと、
前記第1パルスレーザ光及び前記第2パルスレーザ光の照射によりプラズマを発生するターゲット材を、前記第1パルスレーザ光によって照射するステップと、
前記第1パルスレーザ光の照射により発生した前記プラズマ及び前記ターゲット材を、前記第2パルスレーザ光によって照射するステップと、
発生した前記プラズマからEUV光を生成するステップと、
を備え
前記入射したパルスレーザ光を、
半導体過飽和吸収鏡を利用した固体レーザのモードロック動作、または、半導体レーザの利得スイッチを利用して生成される時間幅が200ピコ秒以下のパルスレーザ光とするか、
または、
前記200ピコ秒以下のパルスレーザ光を種火として光増幅器により増幅されたパルスレーザ光とする、
EUV光の生成方法。
【請求項19】
前記ダブルパルス発生素子は、前記第1パルスレーザ光と前記第2パルスレーザ光との間に光路差を有するようにして、前記第2パルスレーザ光を前記第1パルスレーザ光よりも遅延させて出射させる、
請求項18に記載のEUV光の生成方法。
【請求項20】
前記ダブルパルス発生素子は、1/2波長板、ビームスプリッタ及び反射鏡を用いて前記光路差を有するようにする、
請求項19に記載のEUV光の生成方法。
【請求項21】
前記ダブルパルス発生素子は、プリズムを用いて、前記光路差を有するようにする、
請求項19に記載のEUV光の生成方法。
【請求項22】
前記ダブルパルス発生素子は、入射した前記パルスレーザ光を基本波として、前記パルスレーザ光の一部を高調波のパルスレーザ光に変換する非線形波長変換素子と、
残存する前記基本波及び前記高調波のパルスレーザ光に作用する波長分散素子と、
を含み、
前記第1パルスレーザ光の波長と前記第2パルスレーザ光の波長とを異ならせる、
請求項18に記載のEUV光の生成方法。
【請求項23】
前記波長分散素子は、前記高調波を反射し、前記基本波を透過させるダイクロイックミラー、または、前記高調波を透過させ、前記基本波を反射させるダイクロイックミラーのいずれかを含む請求項22に記載のEUV光の生成方法。
【請求項24】
前記ダブルパルス発生素子は、
一端から入射した前記パルスレーザ光を他端から前記第1パルスレーザ光として出射させる第1パルス用ファイバと、一端から入射した前記パルスレーザ光を他端から前記第2パルスレーザ光として出射させる第2パルス用ファイバと、を有するバンドルファイバを備え、
前記第2パルス用ファイバの前記一端から前記他端までの長さを、前記第1パルス用ファイバの前記一端から前記他端までの長さよりも長くして、前記光路差を有するようにする、
請求項19に記載のEUV光の生成方法。
【請求項25】
前記バンドルファイバを、複数の前記第1パルス用ファイバと、複数の前記第2パルス用ファイバとを含むようにし、
前記パルスレーザ光が入射する前記バンドルファイバの入射端を、円形状に束ね、前記パルスレーザ光が出射する前記バンドルファイバの出射端を、矩形状に束ねる、
請求項24に記載のEUV光の生成方法。
【請求項26】
前記第1パルス用ファイバを、前記入射端及び前記出射端の中央部に配置し、前記第2パルス用ファイバを、前記入射端及び前記出射端の周辺部に配置する、
請求項25に記載のEUV光の生成方法。
【請求項27】
前記ダブルパルス発生素子は、
屈折率が1よりも大きい透明部材を備え、
前記透明部材は、前記パルスレーザ光が透過する光軸方向の長さが所定の長さの長軸部分と、前記光軸方向の長さが前記長軸部分よりも短い短軸部分と、を含み、
前記パルスレーザ光が前記長軸部分を透過して出射した前記第2パルスレーザ光を、前記パルスレーザ光が前記短軸部分を透過して出射した前記第1パルスレーザ光よりも遅延させて出射させる、
請求項18に記載のEUV光の生成方法。
【請求項28】
前記透明部材を、前記第1パルスレーザ光が出射する第1出射面と、前記第2パルスレーザ光が出射する第2出射面との間に、前記光軸方向の段差を有するようにする、
請求項27に記載のEUV光の生成方法。
【請求項29】
前記第1パルスレーザ光が前記ターゲット材を照射する第1光量に対する前記第2パルスレーザ光が前記ターゲット材を照射する第2光量の割合を、前記第1出射面に対する前記第2出射面の割合で調整し、
前記第2パルスレーザ光が前記第1パルスレーザ光よりも遅延する時間を、前記段差の長さで調整する、
請求項28に記載のEUV光の生成方法。
【請求項30】
請求項18~29のいずれか一項に記載のEUV光の生成方法により前記EUV光を生成するステップと、
生成された前記EUV光により検査対象を照明するステップと、
前記EUV光により照明された前記検査対象からの光を検出して前記検査対象の画像を取得するステップと、
を備えた検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源、検査装置、EUV(Extreme Ultraviolet)光の生成方法及び検査方法に関するものであり、例えば、EUV光を生成するための光源として、スズのドロップを利用したレーザ励起光源のLPP(Laser Produced Plasma)光源に替わる方式の光源、EUV光の生成方法、ならびに、EUV光を用いた検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の微細化を担うリソグラフィ技術に関しては、現在、露光波長193nmのArFエキシマレーザを露光光源としたArFリソグラフィが量産適用されている。また、露光装置の対物レンズとウエハとの間を水で満たして、解像度を高める液浸技術(ArF液浸リソグラフィと呼ばれる。)も量産に利用されている。さらに、一層の微細化を実現するために、露光波長13.5nmのEUVL(EUV Lithography)の実用化に向けて様々な技術開発が行われている。
【0003】
EUVLに用いられるマスクであるEUVマスクは、積層構造として、低熱膨張性ガラスから成る基板の上に、EUV光を反射させるための多層膜が設けられている。多層膜は、通常、モリブデンとシリコンを交互に数十層積み重ねた構造になっている。これにより、多層膜は、EUV光を垂直で約65%も反射させることができる。多層膜の上には、EUV光を吸収する吸収体が設けられている。吸収体をパターニングすることにより、マスクを形成することができる。実際に露光に使うためには、レジストプロセスにより、吸収体をパターン形成する。このようにして、パターン付きEUVマスクが完成する。
【0004】
EUVマスクにおける許容できない欠陥の大きさは、従来のArFマスクの場合に比べると大幅に小さくなっており、検出することが困難となっている。さらに、露光波長を用いて検査しなければ検出が困難な欠陥も存在することから、検査用照明光として、露光光と同じ波長の照明光を用いて検査するアクティニック(Actinic)検査は、パターン検査に不可欠となっている。この際の検査用照明光は、例えば、波長13.5nmのEUV光である。
【0005】
EUVマスクの検査装置の一般的な基本構成としては、光源から取り出されるEUV光を、EUV用の多層膜鏡のみで構成される照明光学系によって、EUVマスクまで導き、EUVマスクのパターン面における微小な検査領域を照明する。この検査領域におけるEUVマスクのパターンが、多層膜鏡のみで構成される拡大光学系によって、2次元イメージセンサーの表面に投影(結像)される。そして、観察されたパターンを解析し、パターンが正しいか否かを判断する。こうして、EUVマスクのパターン検査が行われる。
【0006】
一般に、EUV光源としては、DPP(Discharge Produced Plasma)光源、LDP(Laser-assisted Discharge Plasma)光源及びLPP(Laser Produced Plasma)光源が挙げられる。そのうち、LPP光源は、微小な液滴状に噴出されたスズ(Sn)、または、リチウム(Li)等のドロップに対して、レーザ光を集光することによりプラズマを発生させる方式である。
【0007】
EUVマスクの検査装置の照明光学系としては、EUVマスクにおける微小な検査領域を明るく照明できるように、光源から発生するEUV光を、検査領域を含む狭い領域に集光するような光学系が必要である。このような光学系の一つとしては、光源の発光部をEUVマスクのパターン面に投影する光学系が望ましい。ただし、光学系にはミラーしか利用できないため、例えば、回転楕円面鏡(以下、単に楕円面鏡と呼ぶ。)を1~数枚用いる光学系が利用されている。楕円面鏡は、2つの集光点を有しており、1つの集光点から発生する光は、もう一方の集光点に集光する性質を有する。
【0008】
楕円面鏡の2つの集光点を第1集光点及び第2集光点とする。第1集光点が光源の発光部と合うように、かつ、第2集光点がEUVマスク内の微小な検査領域と合うように、光源、楕円面鏡、及び、EUVマスクを配置する。例えば、光源がLPP光源の場合には、第1集光点がプラズマの輝点と合うようにする。これにより、微小な検査領域までEUV光を導いて照明することができる。
【0009】
また、楕円面鏡を2枚用いる場合も原理的には同様である。例えば、第1及び第2の楕円面鏡を用いる場合には、第1の楕円面鏡の第1集光点を光源の発光部に合わせ、第1の楕円面鏡の第2集光点を、第2の楕円面鏡の第1集光点に合わせる。第2の楕円面鏡の第2集光点を検査領域に合わせる。これにより、光源の発光部をEUVマスクのパターン面に投影することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Hiroyuki hara, et al. “Numerical evalutation of a 13.5-nm high-brightness microplasma EUV source”, J.Appo.Phys., 2015年11月20日, Vol.118, p.193301 (2015).
【文献】Hakaru Mizoguchi, et al. “Performance of one hundred watt HVM LPP-EUV Source”, 2015年3月13日, SPIE Vol.9422, p.94220C (2015).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
先に述べたように、EUVマスク検査装置では、EUVマスクにおける微小な検査領域を明るく照明できる高輝度の照明光が必要である。この目的のため、従来のLPP光源110は、図12に示すように、微細なスズの球(ドロップ120)に対して、励起用レーザ光L110を集光させて、球面状のスズプラズマを発生させている。そして、発生させたスズプラズマからEUV光E101をコレクターミラー130で取り出している。このようなLPP光源110は、高輝度のEUV光E101を生成させるために、励起用レーザ光L110として、パルス幅が数ナノから数10ナノ秒程度のナノ秒レーザ光を用いている。ナノ秒レーザ光は、ドロップ120を構成する金属表面を加熱してプラズマを発生させる。さらに、プラズマを励起して多価イオン化を行う。ナノ秒レーザ光は、1パルスの間に、このようなプラズマの発生及びプラズマの多価イオン化を行っている。
【0012】
しかしながら、ナノ秒レーザ光のパルスの最終部がプラズマを照射する段階では、プラズマは、ナノ秒レーザ光が照射されない領域まで拡がっている。よって、プラズマの一部しかナノ秒レーザ光によって励起されず、発光効率が低くなっている。例えば、プラズマが100[km/sec]の速度で膨張するとすれば、10[nsec]で1[mm]も膨張する。また、EUV光は、多価イオンが電子と再結合した際に放出されるが、電子はイオンや中性粒子よりも高速に離散するため、パルスの最終部がプラズマを照射する段階では、プラズマは電子が不足した状態となっている。よって、プラズマの一部しか発光に寄与しておらず、発光効率が低くなっている。
【0013】
また、ナノ秒レーザ光で必要なピークパワー密度を実現しようとすると、平均パワーの制限から、EUV光E101を生成する繰り返し生成周波数が低くなる。また、ナノ秒レーザ光を使用する場合には、アブレーションによるデブリの発生が多い。このため、光学系を汚染しやすい。
【0014】
露光装置においては、広い領域を照明するハイパワー光源を実現するために、2台のナノ秒レーザを用いるダブルパルスレーザ光による励起を行う場合がある。この励起方法は、一方のレーザ光の照射によって、ドロップレット120を気化する。そして、一定時間遅延させて、もう一方のレーザ光の照射によって、膨張したドロップレット120を照射する。このように2つのパルスレーザ光により、プラズマを励起する。これにより、生成されるEUV光を高エネルギーとすることができる。一方、検査用のEUV光としては、露光用のEUV光ほど高エネルギーを必要としない。むしろ、小型で繰り返し生成周波数が高いピコ秒レーザが適している。しかしながら、ピコ秒レーザを所望のタイミングで発振させることが困難であり、2台のピコ秒レーザを同期させるためには、複雑な装置を必要とする。よって、光源の装置が大型化する。
【0015】
本発明の目的は、このような問題を解決するためになされたものであり、発光効率及び検査精度を向上させることができる光源、検査装置、EUV光の生成方法及び検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る光源は、入射したパルスレーザ光を少なくとも第1パルスレーザ光及び第2パルスレーザ光を含む2つ以上のパルスレーザ光に分離し、前記第2パルスレーザ光を前記第1パルスレーザ光よりも遅延させて出射させるダブルパルス発生素子を備え、前記第1パルスレーザ光は、前記第1パルスレーザ光及び前記第2パルスレーザ光の照射によりプラズマを発生するターゲット材を照射し、前記第2パルスレーザ光は、前記第1パルスレーザ光の照射により発生したプラズマ及び前記ターゲット材を照射し、発生した前記プラズマからEUV光を生成する。このような構成により、発光効率を向上させることができるとともに、2台のパルスレーザを用いる方式の問題点であるタイミングずれ(ジッター)の発生を抑制し、装置を小型化しつつ、発光出力を安定化させることができる。
【0017】
また、本発明に係る検査装置は、上記光源と、前記EUV光により検査対象を照明する照明光学系と、前記EUV光により照明された前記検査対象からの光を検出して前記検査対象の画像を取得する検出光学系と、を備える。このような構成により、検査精度を向上させることができる。
【0018】
さらに、本発明によるEUV光の生成方法は、入射したパルスレーザ光を少なくとも第1パルスレーザ光及び第2パルスレーザ光を含む2つ以上のパルスレーザ光に分離し、前記第2パルスレーザ光を前記第1パルスレーザ光よりも遅延させて出射させるダブルパルス発生素子を配置するステップと、前記ダブルパルス発生素子に前記パルスレーザ光を入射させるステップと、前記第1パルスレーザ光及び前記第2パルスレーザ光の照射によりプラズマを発生するターゲット材を、前記第1パルスレーザ光によって照射するステップと、前記第1パルスレーザ光の照射により発生した前記プラズマ及び前記ターゲット材を、前記第2パルスレーザ光によって照射するステップと、発生した前記プラズマからEUV光を生成するステップと、を備える。このような構成により、発光効率を向上させることができるとともに、2台のパルスレーザを用いる方式の問題点であるタイミングずれ(ジッター)の発生を抑制し、装置を小型化しつつ、発光出力を安定化させることができる。
【0019】
また、本発明による検査方法は、上記EUV光の生成方法により前記EUV光を生成するステップと、生成された前記EUV光により検査対象を照明するステップと、前記EUV光により照明された前記検査対象からの光を検出して前記検査対象の画像を取得するステップと、を備える。このような構成により、検査精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、発光効率及び検査精度を向上させる光源、検査装置、EUV光の生成方法及び検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態1に係る光源を例示した構成図である。
図2】実施形態1に係るダブルパルス発生素子を例示した構成図である。
図3】実施形態1の変形例1に係るダブルパルス発生素子を例示した構成図である。
図4】実施形態1の変形例2に係るダブルパルス発生素子を例示した構成図である。
図5】実施形態1の変形例2に係るダブルパルス発生素子に入射するパルスレーザ光を例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、ピークパワーを示す。
図6】実施形態1の変形例2に係るダブルパルス発生素子から出射する複数のパルスレーザ光を例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、ピークパワーを示す。
図7】実施形態1の変形例3に係るダブルパルス発生素子を例示した構成図である。
図8】実施形態1の変形例4に係るダブルパルス発生素子を例示した構成図である。
図9】実施形態1に係るEUV光の生成方法を例示したフローチャート図である。
図10】実施形態2に係る検査装置1を例示した構成図である。
図11】実施形態2に係る検査方法を例示したフローチャート図である。
図12】LPP光源を例示した構成図である。
図13】実施形態3に係るダブルパルス発生素子を例示した構成図である。
図14】実施形態4に係るダブルパルス発生素子の主要部を例示した構成図である。
図15】実施形態4に係るダブルパルス発生素子を例示した構成図である。
図16】実施形態4の別の例に係るダブルパルス発生素子を例示した構成図である。
図17】(a)~(c)は、実施形態4の別の例に係る透明部材の断面図、並びに、光軸方向から見た第1パルスレーザ光及び第2パルスレーザ光の形状を例示した図である。
図18】(a)~(c)は、実施形態4のさらに別の例に係る透明部材の断面図、並びに、光軸方向から見た第1パルスレーザ光及び第2パルスレーザ光の形状を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施形態の具体的構成について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
【0023】
(実施形態1)
実施形態1に係る光源を説明する。本実施形態の光源は、例えば、検査装置において検査対象を照明する照明光の光源である。光源は、露光装置において露光光の光源に用いられてもよい。図1は、実施形態1に係る光源を例示した構成図である。
【0024】
図1に示すように、光源10は、ダブルパルス発生素子11を備えている。ダブルパルス発生素子11は、パルスレーザ光L10を入射させて使用する。パルスレーザ光L10は、例えば、数~数100[psec]のパルス幅を有するピコ秒パルスレーザ光L10である。パルスレーザ光L10は、図示しない励起用レーザにより生成される。励起用レーザは、ピコ秒のパルスレーザ光を生成する短パルスレーザである。光源10は、励起用レーザを備えてもよいし、光源10の外部に設置した励起用レーザを用いてもよい。
【0025】
励起用レーザとして、半導体過飽和吸収鏡を利用した固体レーザを用いてもよい。固体レーザのモードロック動作により、時間幅が200[psec]以下のパルス幅を有するパルスレーザ光L10を生成することができる。また、励起用レーザとして、半導体レーザを用いてもよい。半導体レーザの利得スイッチを利用することにより、時間幅が200[psec]のパルス幅を有するパルスレーザ光L10を生成することができる。さらに、上記のように生成された時間幅が200[psec]以下のパルスレーザ光L10を種火として光増幅器により増幅したものを用いてもよい。
【0026】
ダブルパルス発生素子11は、入射したパルスレーザ光L10を少なくとも第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12を含む2つ以上のパルスレーザ光に分離する。ダブルパルス発生素子11によって分離されたパルスレーザ光を、第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12という。
【0027】
図2は、実施形態1に係るダブルパルス発生素子11を例示した構成図である。図2に示すように、ダブルパルス発生素子11は、ビームスプリッタ13、反射鏡14及び反射鏡15を含んでいる。
【0028】
ビームスプリッタ13は、入射したパルスレーザ光L10の一部を反射し、一部を透過する。よって、ビームスプリッタ13は、入射したパルスレーザ光L10を2つのパルスレーザ光に分離する。本実施形態において、分離されたパルスレーザ光のうち、ビームスプリッタ13で反射されたパルスレーザ光を第1パルスレーザ光L11とする。分離されたパルスレーザ光のうち、ビームスプリッタ13を透過し、反射鏡14及び反射鏡15で反射された後に、ビームスプリッタ13を透過したパルスレーザ光を第2パルスレーザ光L12とする。
【0029】
なお、パルスレーザ光L10をビームスプリッタ13に入射させる前に、1/2波長板12に通してもよい。1/2波長板12は、入射光の偏光成分に1/2波長の位相差を与える光学素子であり、S偏光、P偏光を含む入射光の偏光状態を制御する。また、ビームスプリッタ13は、偏光ビームスプリッタ(PBS)でもよい。偏光ビームスプリッタは、S偏光及びP偏光の反射及び透過を制御することができる。例えば、1/2波長板12及び偏光ビームスプリッタを用いることにより、第1パルスレーザ光L11はS偏光を含み、第2パルスレーザ光L12は、P偏光を含むようにすることができる。よって、偏光ビームスピリッタによって反射及び透過する第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12の強度比を最適化することができる。
【0030】
このように、ビームスプリッタ13を含むダブルパルス発生素子11は、入射したパルスレーザ光L10を、第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12に分離する。なお、ダブルパルス発生素子11は、3つ以上のパルスレーザ光に分離してもよい。
【0031】
ビームスプリッタ13で反射した第1パルスレーザ光L11は、ダブルパルス発生素子11から出射する。ビームスプリッタ13を透過し、反射鏡14及び15で反射した後で、ビームスプリッタ13を透過した第2パルスレーザ光L12も、ダブルパルス発生素子11から出射する。
【0032】
第2パルスレーザ光L12が、ダブルパルス発生素子11に入射してから、出射するまでの光路長は、第1パルスレーザ光L11が、ダブルパルス発生素子11に入射してから、出射するまでの光路長よりも長くなっている。ダブルパルス発生素子11は、ビームスプリッタ13、反射鏡14及び15を用いて光路差を有するようにしている。ダブルパルス発生素子11は、さらに、1/2波長板12を用いて、光路差を有するようにしてもよい。ダブルパルス発生素子11における光路差により、第2パルスレーザ光L12は、第1パルスレーザ光L11よりも遅延して出射する。
【0033】
例えば、第1パルスレーザ光L11と第2パルスレーザ光L12との間の光路差を、3[cm]程度とする。すなわち、ビームスプリッタ13の透過点13pから、反射鏡14の反射点14p及び反射鏡15の反射点15pを通って透過点13pまでの光路長を3[cm]程度とする。パルスレーザ光L10を10[psec]程度のピコ秒レーザ光とすると、第2パルスレーザ光L12は、第1パルスレーザ光L11よりも、100[psec]程度遅延して出射する。
【0034】
このように、ダブルパルス発生素子11は、第1パルスレーザ光L11と第2パルスレーザ光L12との間に光路差を有するようにして、第2パルスレーザ光L12を第1パルスレーザ光L11よりも遅延させて出射させる。なお、第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12の出射する方向は、図1に示すように、パルスレーザ光L10と同方向でもよいし、図2に示すように、パルスレーザ光L10と直交する方向でもよいし、図示しない光学素子を付加して特定の方向としてもよい。
【0035】
ダブルパルス発生素子11から出射した第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12は、ターゲット材20を照射する。第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12は、集光レンズ21等を経てターゲット材20を照射してもよい。
【0036】
ターゲット材20は、第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12の照射によりプラズマを発生する。ターゲット材20は、例えば、スズ(Sn)またはリチウム(Li)、キセノンアイス等である。なお、ターゲット材20は、第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12の照射によりプラズマを発生すれば、スズ等以外の材料を含んでもよい。ターゲット材20は、照射スポットよりも十分大きな体積の固体、または、液体の状態である。
【0037】
第1パルスレーザ光L11は、ターゲット材20を照射する。これにより、ターゲット材20からプラズマが発生する。具体的には、第1パルスレーザ光L11は、ターゲット材20の表面を加熱してプラズマを発生させる。第1パルスレーザ光L11の照射により発生したプラズマが集まったものを第1プラズマ層と呼ぶ。第1プラズマ層において、ある程度の電子及びイオンは再結合することにより、EUV光E1を生成する。EUV光E1は、例えば、13.5[nm]の波長を有している。
【0038】
第2パルスレーザ光L12は、第1パルスレーザ光L11の照射により発生したプラズマ及びターゲット材20を照射する。第2パルスレーザ光L12は、第1パルスレーザ光L11の出射から100[psec]程度遅延して出射する。第1プラズマ層の膨張速度は、例えば、100[km/sec]程度である。よって、第2パルスレーザ光L12が第1プラズマ層及びターゲット材20を照射する際には、第1プラズマ層は、ターゲット材20からの距離が10[μm]程度離れて膨張している。
【0039】
電子の速度は、イオンや中性粒子に比べて大きい。よって、第1プラズマ層中の電子は、短時間で空間に飛び去っている。したがって、第2パルスレーザ光L12が第1プラズマ層におけるプラズマを照射する際には、第1プラズマ層は電子が少ない状態になっている。これにより、第1プラズマ層では、再結合が起こりにくい状態になっている。
【0040】
第2パルスレーザ光L12は、そのような第1プラズマ層におけるプラズマを励起する。これにより、第2パルスレーザ光L12は、第1プラズマ層に多価イオンを発生させる。例えば、第1プラズマ層の温度が28[ev]程度になるように、第2パルスレーザ光L12の照射条件を設定する。
【0041】
また、第1プラズマ層を透過した第2パルスレーザ光L12は、ターゲット材20を照射する。よって、第2パルスレーザ光L12は、ターゲット材20からプラズマを発生させる。プラズマの発生によって、光電子及び熱電子は発生する。第2パルスレーザ光L12の照射により発生したプラズマが集まったものを第2プラズマ層と呼ぶ。第2プラズマ層において、ある程度の電子及びイオンは再結合することにより、EUV光E1を生成する。
【0042】
第2プラズマ層の電子は、高速に移動する。そして、ターゲット材20から10~数10[μm]程度離れた場所で膨張を続ける第1プラズマ層に到達する。到達した電子は、第1プラズマ層中の多価イオンと再結合する。多価イオンは、例えば、7価から12価である。これにより、EUV光E1が生成される。光源10は、このようにして、発生したプラズマからEUV光E1を生成する。具体的には、第1プラズマ層由来のイオンと電子との再結合、第2プラズマ層由来のイオンと電子の再結合、及び、第1プラズマ層由来のイオンと第2プラズマ層由来の電子との再結合により、EUV光E1は生成される。
【0043】
(変形例1)
次に、実施形態1の変形例1に係るダブルパルス発生素子を説明する。図3は、実施形態1の変形例1に係るダブルパルス発生素子11aを例示した構成図である。図3に示すように、ダブルパルス発生素子11aは、ビームスプリッタ13及びプリズム16を有している。ダブルパルス発生素子11aは、1/2波長板12を有してもよい。
【0044】
プリズム16は、底面が正方形をした四角柱となっている。1つの側面にビームスプリッタ13が接続されている。
【0045】
ビームスプリッタ13は、パルスレーザ光L10の一部を反射し、一部を透過させる。本変形例においても、ビームスプリッタ13で分離されたパルスレーザ光のうち、ビームスプリッタ13で反射したパルスレーザ光L10を第1パルスレーザ光L11とし、透過したパルスレーザ光L10を第2パルスレーザ光L12とする。なお、パルスレーザ光L10をビームスプリッタ13に入射させる前に、1/2波長板12に通した場合であって、ビームスプリッタ13が偏光ビームスプリッタの場合には、第1パルスレーザ光L11はS偏光を含み、第2パルスレーザ光L12は、P偏光を含む。
【0046】
ビームスプリッタ13で反射した第1パルスレーザ光L11は、ダブルパルス発生素子11aから出射する。ビームスプリッタ13を透過した第2パルスレーザ光L12は、プリズム16に入射する。プリズム16に入射した第2パルスレーザ光L12は、プリズム16の側面に対応した4つの内面で反射した後、ビームスプリッタ13を透過する。すなわち、第2パルスレーザ光L12は、プリズム16の内部を内面によって反射しながら回る。ビームスプリッタ13を透過した第2パルスレーザ光L12は、ダブルパルス発生素子11から出射する。
【0047】
このように、ダブルパルス発生素子11aにおいても、第1パルスレーザ光L11と第2パルスレーザ光L12との間に光路差を有するようにして、第2パルスレーザ光L12を第1パルスレーザ光L11よりも遅延させて出射させる。本変形例のダブルパルス発生素子11aは、ビームスプリッタ13及びプリズム16を用いて光路差を有するようにしている。
【0048】
(変形例2)
次に、実施形態1の変形例2に係るダブルパルス発生素子を説明する。図4は、実施形態1の変形例2に係るダブルパルス発生素子11bを例示した構成図である。図5は、実施形態1の変形例2に係るダブルパルス発生素子11bに入射するパルスレーザ光L10を例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、ピークパワーを示す。図6は、実施形態1の変形例2に係るダブルパルス発生素子11bから出射する複数のパルスレーザ光を例示したグラフであり、横軸は、時間を示し、縦軸は、ピークパワーを示す。
【0049】
図4に示すように、ダブルパルス発生素子11bは、プリズム17を有している。プリズム17は、底面が台形をした四角柱となっている。プリズム17の4つの側面17a、17b、17c、17dのうち、1つの側面17aに、パルスレーザ光L10を入射させる。例えば、台形をした底面の上底に接続された側面17aにパルスレーザ光L10を入射させる。
【0050】
図5に示すように、プリズム17に入射したパルスレーザ光L10は、20[psec]のパルス幅を有している。ピークパワーを1に規格化する。プリズム17の側面17aに入射したパルスレーザ光L10は、側面17aにおいて一部が反射され、一部が透過される。よって、プリズム17は、入射したパルスレーザ光L10を2つのパルスレーザ光に分離する。本変形例において、分離されたパルスレーザ光のうち、プリズム17の側面17aで反射されたパルスレーザ光を第1パルスレーザ光L11とする。分離されたパルスレーザ光のうち、側面17aを透過し、プリズム17の側面17b、17c、17dの内面で反射した後、側面17aを透過したパルスレーザ光を第2パルスレーザ光L12とする。なお、パルスレーザ光L10をS偏光としてもよい。そうすると、プリズム17の側面17a~17dに入射する角度を最適化することにより、側面17aを透過したパルスレーザ光L10を側面17b、17c、17dで全反射させることができる。
【0051】
図6に示すように、第1パルスレーザ光L11、すなわち、プリズム17の側面17aで反射されたパルスレーザ光の強度は、0.28である。第2パルスレーザ光L12、すなわち、プリズム17の内部を1回りして出射したパルスレーザ光の強度は、0.55である。
【0052】
プリズム17の内部を2回りして出射したパルスレーザ光を、第3パルスレーザ光L13とすると、第3パルスレーザ光L13の強度は、0.13である。プリズム17の内部を3回りして出射したパルスレーザ光を、第4パルスレーザ光L14とすると、第4パルスレーザ光L14の強度は、0.04である。
【0053】
第1~第4パルスレーザ光を総和した強度は、入射したパルスレーザ光L10と等しくなっている。プリズム17は、表面反射と内部における全反射を利用するので、パルスレーザ光の損失をほとんど0まで低減することができる。2回以降の第3パルスレーザ光の強度が小さくなるように、パルスレーザ光L10の入射条件を設定する。
【0054】
このように、プリズム17を含むダブルパルス発生素子11bは、入射したパルスレーザ光を第1~第4パルスレーザ光に分離し、第2~第4パルスレーザ光を第1パルスレーザ光よりも遅延させて出射させる。第1~第4パルスレーザ光における各パルスレーザ光の間に光路差を有するようにして、第2~第4パルスレーザ光を、第1パルスレーザ光L11よりも遅延させて出射させる。第2~第4パルスレーザ光が第1パルスレーザ光L11に対して遅延する時間は、プリズム17のサイズに依存する。
【0055】
(変形例3)
次に、実施形態1の変形例3に係るダブルパルス発生素子を説明する。図7は、実施形態1の変形例3に係るダブルパルス発生素子11cを例示した構成図である。
【0056】
図7に示すように、ダブルパルス発生素子11cは、非線形波長変換素子18及び波長分散素子19を含んでいる。非線形波長変換素子18は、例えば、非線形光学結晶を含み、入射した励起用のパルスレーザ光L10を基本波として、パルスレーザ光L10の一部を高調波のパルスレーザ光に変換する。非線形波長変換素子18は、変換した高調波のパルスレーザ光を波長分散素子19に対して入射させる。
【0057】
波長分散素子19は、入射したパルスレーザ光を異なる波長のパルスレーザ光に分散させる。すなわち、波長分散素子19は、残存する基本波及び高調波のパルスレーザ光に作用して、異なる波長のパルスレーザ光に分散させる。したがって、波長分散素子19は、入射したパルスレーザ光を異なる波長のパルスレーザ光に分散させることにより、パルスレーザ光を分離する。そして、波長分散素子19は、分離したパルスレーザ光を、波長毎に遅延時間を変えて出射させる。例えば、ダブルパルス発生素子11cから出射された任意の波長のパルスレーザ光を第1パルスレーザ光L11とする。第1パルスレーザ光L12から遅延して出射されたパルスレーザ光を第2パルスレーザ光L12とする。波長分散素子19は、例えば、第1パルスレーザ光L11と第2パルスレーザ光L12との間に光路差を有するようにして、第2パルスレーザ光L12を第1パルスレーザ光L11よりも遅延させて出射させる。
【0058】
このように、ダブルパルス発生素子11cは、少なくとも第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12を含む2つ以上のパルスレーザ光に分離する。ダブルパルス発生素子は、第1パルスレーザ光の波長と第2パルスレーザ光の波長とを異ならせる。例えば、ダブルパルス発生素子11cは、遅延時間を変えて出射させる第2パルスレーザ光L12の波長を、第1パルスレーザ光L11よりも短波長にする。または、ダブルパルス発生素子11cは、遅延時間を変えて出射させる第2パルスレーザ光L12の波長を、第1パルスレーザ光L11よりも長波長にする。
【0059】
短波長の光は、長波長の光に比べ、より高密度のプラズマ中に侵入することができる。よって、第2パルスレーザ光L12の波長を、第1パルスレーザ光L11よりも短波長にした場合には、同一波長の光を異なるタイミングで照射した前述の実施形態1、変形例1及び2と同様の効果が得られるのみならず、プラズマの励起をより効果的に促進させることができる。
【0060】
(変形例4)
次に、実施形態1の変形例4に係るダブルパルス発生素子を説明する。図8は、実施形態1の変形例4に係るダブルパルス発生素子11dを例示した構成図である。
【0061】
図8に示すように、ダブルパルス発生素子11dは、波長変換結晶18d及びダイクロイックミラー13dを含んでいる。ダブルパルス発生素子11dは、反射鏡14及び15を含んでもよい。波長変換結晶18dには、短パルスレーザ60から発振されたパルスレーザ光L10が入射されている。波長変換結晶18dは、パルスレーザ光L10の光軸上に一つないし複数個配置されてもよい。パルスレーザ光L10は、例えば、1064[nm]の波長のパルスレーザ光L10を含んでいる。波長変換結晶18dは、入射したパルスレーザ光L10を基本波W0として、高調波のパルスレーザ光を生成する。高調波のパルスレーザ光は、例えば、532[nm]の波長のパルスレーザ光を含む高調波W1である。なお、高調波のパルスレーザ光は、高調波W1だけでもよいし、高調波W1の他に、355[nm]の波長のパルスレーザ光を含む高調波W2を有してもよい。また、高調波のパルスレーザ光は、高調波W1の他に、266[nm]の波長のパルスレーザ光を含む高調波W3を有してもよい。
【0062】
ダイクロイックミラー13dは、高調波W1、W2及びW3のパルスレーザ光を反射し、基本波W0のパルスレーザ光を透過させる。よって、ダイクロイックミラー13dは、入射したパルスレーザ光を2つのパルスレーザ光に分離する。本変形例において、分離されたパルスレーザ光のうち、ダイクロイックミラー13dで反射された高調波W1、W2及びW3のパルスレーザ光を第1パルスレーザ光L11とする。分離されたパルスレーザ光のうち、ダイクロイックミラー13dを透過し、反射鏡14及び反射鏡15で反射された後に、ビームスプリッタ13を透過した基本波W0のパルスレーザ光を、第2パルスレーザ光L12とする。
【0063】
このように、ダイクロイックミラー13dを含むダブルパルス発生素子11dは、入射したパルスレーザ光L10を、第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12に分離する。なお、ダブルパルス発生素子11dは、3つ以上のパルスレーザ光に分離してもよい。
【0064】
ダイクロイックミラー13dで反射した第1パルスレーザ光L11は、ダブルパルス発生素子11dから出射する。ダイクロイックミラー13dを透過し、反射鏡14及び15で反射した後で、ダイクロイックミラー13dを透過した第2パルスレーザ光L12も、ダブルパルス発生素子11dから出射する。
【0065】
第2パルスレーザ光L12が、ダブルパルス発生素子11dに入射してから、出射するまでの光路長は、第1パルスレーザ光L11が、ダブルパルス発生素子11dに入射してから、出射するまでの光路長よりも長くなっている。ダブルパルス発生素子11dは、ダイクロイックミラー13d、反射鏡14及び15を用いて光路差を有するようにしている。これにより、ダブルパルス発生素子11dは、第1パルスレーザ光の波長と第2パルスレーザ光の波長とを異ならせる。具体的には、ダブルパルス発生素子11dは、遅延時間を変えて出射させる第2パルスレーザ光L12の波長を、第1パルスレーザ光L11よりも長波長にする。
【0066】
また、ダイクロイックミラー13dは、高調波W1、W2及びW3のパルスレーザ光を透過させ、基本波W0のパルスレーザ光を反射してもよい。この場合には、ダブルパルス発生素子11dは、遅延時間を変えて出射させる第2パルスレーザ光L12の波長を、第1パルスレーザ光L11よりも短波長にする。なお、実施形態1及び変形例1~4の第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12は、ターゲット材20を照射する目的以外に用いてもよい。
【0067】
次に、光源10の動作として、EUV光の生成方法を説明する。図9は、実施形態1に係るEUV光の生成方法を例示したフローチャート図である。
【0068】
図9のステップS11に示すように、まず、ダブルパルス発生素子11を配置する。ダブルパルス発生素子11は、入射したパルスレーザ光L10を少なくとも第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12を含む2つ以上のパルスレーザ光に分離する。そして、ダブルパルス発生素子11は、第2パルスレーザ光L12を第1パルスレーザ光L11よりも遅延させて出射させる。なお、ダブルパルス発生素子11は、変形例1~4のダブルパルス発生素子11a~11dでもよい。
【0069】
次に、ステップS12に示すように、ダブルパルス発生素子11にパルスレーザ光L10を入射させる。これにより、ダブルパルス発生素子11は、パルスレーザ光を第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12に分離し、第2パルスレーザ光L12を第1パルスレーザ光L11よりも遅延させて出射させる。
【0070】
次に、ステップS13に示すように、ターゲット材20を、第1パルスレーザ光L11によって照射する。これにより、ターゲット材20は、プラズマを発生する。具体的には、第1パルスレーザ光L11は、ターゲット材20の表面を加熱してプラズマを発生させ、第1プラズマ層を形成する。
【0071】
次に、ステップS14に示すように、第1パルスレーザ光L11の照射により発生したプラズマ及びターゲット材20を、第2パルスレーザ光L12によって照射する。具体的には、第2パルスレーザ光L12は、第1パルスレーザ光L11よりも遅延して出射し、第1プラズマ層におけるプラズマを励起する。これにより、第2パルスレーザ光L12は、第1プラズマ層に多価イオンを発生させる。また、第2パルスレーザ光L12はターゲット材20を照射する。よって、プラズマを発生させ、第2プラズマ層を形成する。
【0072】
次に、ステップS15に示すように、発生したプラズマからEUV光E1を生成する。プラズマ中のイオン及び電子が再結合する際に、EUV光E1が生成される。本実施形態では、第1プラズマ層を構成するイオン及び電子の再結合、第2プラズマ層を構成するイオン及び電子の再結合に加えて、第1プラズマ層中の多価イオンと、第2プラズマ層から移動した電子との再結合も行われる。よって、発光効率を向上させることができる。このようにして、ターゲット材20に対して、第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12を照射することにより発生したプラズマからEUV光E1が生成される。
【0073】
次に、本実施形態の効果を説明する。
本実施形態の光源10は、ダブルパルス発生素子11によって励起用のパルスレーザ光L10を、第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12に分離している。そして、第2パルスレーザ光L12を、第1パルスレーザ光よりも遅延させてターゲット材20に照射している。よって、電子が不足した第1プラズマ層に対して、第2プラズマ層の電子が供給される。このため、EUV光E1の発光強度を向上させることができるとともに、EUV光E1の発光効率を向上させることができる。
【0074】
また、ターゲット材20を照射する第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12に、10[psec]程度のパルス幅を有する短パルスレーザ光を用いている。よって、ターゲット材20が加熱される深さを浅くすることができる。よって、ターゲット材20の消耗を抑えることができ、ターゲット材20の交換頻度を少なくすることができる。
【0075】
プラズマの生成と励起に必要なピークパワー密度(1011[W/cm]以上)を維持したまま、1パルスあたりのエネルギーを低く抑えることができる。よって、EUV光E1の繰り返し生成周波数の高い光源10を実現することができる。
【0076】
一般的に、ナノ秒レーザ光を利用するLPP光源の場合には、アブレーション等により、ドロップレット等のターゲットから発生するデブリが多い。これに対して、本実施形態の光源10は、ピコ秒レーザ光等の短パルスレーザ光を用いるので、デブリの発生を少なくすることができ、光学系の汚染を抑制することができる。
【0077】
ダブルパルス発生素子11に励起用パルスレーザ光L10を照射するという簡単な構造とすることができる。よって、安定的に動作させることができる。
【0078】
また、ダブルパルス発生素子11が非線形波長変換素子18及び波長分散素子19を含む場合には、短波長の第2パルスレーザ光L12は遅延してターゲット材20を照射する。よって、第2パルスレーザ光L12のプラズマでの吸収を大きくし、プラズマの励起をより効果的に促進させることができる。
【0079】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係る検査装置を説明する。図10は、実施形態2に係る検査装置1を例示した構成図である。図10に示すように、検査装置1は、光源10、照明光学系30及び検出光学系40を備えている。検査装置1は、検査対象50を検査する。検査対象50は、例えば、EUVマスクである。なお、検査対象50は、EUVマスクに限らず、基板等でもよい。
【0080】
照明光学系30は、EUV光E1により検査対象50を照明する。照明光学系30は、楕円面鏡31~33、落とし込み鏡34を含んでいる。検出光学系40は、EUV光E1により照明された検査対象50からの光E2を検出して検査対象50の画像を取得する。検出光学系40は、シュバルツシルト光学系41、平面鏡42、凹面鏡43、検出器44を備えている。シュバルツシルト光学系41は、凹面鏡41a及び凸面鏡41bを含む拡大光学系である。ステージ51上に検査対象50として、例えば、EUVマスクが載置されている。
【0081】
光源10から取り出されたEUV光E1は、楕円面鏡31に入射する。楕円面鏡31は、石英を含む基板と、基板の主面にコーティングされた金属膜とを含んでいる。金属膜は、例えば、ルテニウム膜である。ルテニウム膜がコーティングされた面が反射面である。楕円面鏡32及び楕円面鏡33の構造も、楕円面鏡31と同様である。
【0082】
楕円面鏡31で反射したEUV光E1は、絞られながら進み、集光点IF1において集光する。集光点IF1で集光したEUV光E1は、集光点IF1の後で拡がる。その後、EUV光E1は、楕円面鏡32で反射し、絞られながら進み、集光点IF2において集光する。その後、集光点IF2の後で拡がったEUV光E1は、楕円面鏡33で反射される。楕円面鏡33で反射したEUV光E1は、絞られながら進み、落とし込み鏡34に入射する。落とし込み鏡34は、例えば、多層膜平面鏡である。落とし込み鏡34に入射したEUV光E1は、落とし込み鏡34によって反射し、検査対象50の検査領域を照明する。なお、照明光学系30は、楕円面鏡31~33及び落とし込み鏡34以外の光学素子を付加してもよいし、楕円面鏡31~33のいくつかを省いてもよい。
【0083】
楕円面鏡31の2つの集光点のうち、第1集光点は、プラズマの輝点に位置するように配置されている。楕円面鏡31の第2集光点は、楕円面鏡32の第1集光点(集光点IF1)に位置している。楕円面鏡32の第2集光点は、楕円面鏡33の第1集光点(集光点IF2)に位置している。楕円面鏡33の第2集光点は、落とし込み鏡34を介して、検査対象50の検査領域に位置している。
【0084】
EUV光E1により照明された検査対象50からの光E2は、EUV光E1の反射光及び回折光を含んでおり、検査領域内のパターン情報を含んでいる。検査対象50からの光E2は、凹面鏡41a及び凸面鏡41bとで構成されたシュバルツシルト光学系41によって拡大される。拡大された光E2は、平面鏡42で折り返された後に、凹面鏡43でさらに拡大され、検出器44に入射する。
【0085】
検出器44は、例えば、TDIカメラである。検出器44に配置されたセンサ面に検査領域からの光E2が投影される。これにより、検出器44は、検査領域のパターンを光学像として入力し、検査領域の画像を取得する。そして、パターンが解析され、欠陥が検出される。
【0086】
次に、検査装置1を用いた検査方法を説明する。図11は、実施形態2に係る検査方法を例示したフローチャート図である。
【0087】
図11のステップS21に示すように、まず、照明光として、EUV光E1を生成する。EUV光E1の生成方法は、実施形態1に記載された方法を用いる。ダブルパルス発生素子11として、ダブルパルス発生素子11a~11dを用いてもよい。
【0088】
次に、ステップS22に示すように、生成されたEUV光E1により検査対象50を照明する。具体的には、楕円面鏡31~33及び落とし込み鏡34を含む照明光学系30を用いて、光源10で生成されたEUV光E1を検査対象50まで導く。
【0089】
次に、ステップS23に示すように、EUV光E1により照明された検査対象50からの光E2を検出して検査対象50の画像を取得する。具体的には、シュバルツシルト光学系41、平面鏡42、凹面鏡43、検出器44を含んだ検出光学系を用いて、検査対象50の画像を取得する。
次に、ステップS24に示すように、取得した画像を用いて検査対象50を検査する。このようにして、検査装置1は検査対象50を検査することができる。
【0090】
本実施形態の検査装置1によれば、発光効率が高いEUV光E1を用いて検査対象50を検査することができるので、効率よく検査することができる。また、高輝度のEUV光E1を用いて検査することができるので、精度よく検査することができる。よって、EUVLフォトマスク検査装置として必要な性能を備えることができる。また、シンプルな構造で検査を行うことができるので、故障が少なく、安定的に検査することができ、検査コストを低減することができる。また、光源10における励起用レーザ光として、ピコ秒レーザ等の短パルスレーザを用いるので、デブリの発生を抑制することができ、検査装置1の汚染を抑制することができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1及び変形例1~4の記載に含まれている。
【0091】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係る光源を説明する。本実施形態の光源は、第2パルスレーザ光L12を、第1パルスレーザ光L11よりも遅延させて出射させるダブルパルス発生素子として、オプティカルファイバを束ねたバンドルファイバを用いている。
【0092】
図13は、実施形態3に係るダブルパルス発生素子を例示した構成図である。図13に示すように、本実施形態のダブルパルス発生素子11eは、バンドルファイバ70を備えている。また、ダブルパルス発生素子11eは、レンズ81~83を備えてもよい。
【0093】
バンドルファイバ70は、複数のファイバを含んでいる。ファイバは、例えば、オプティカルファイバであり、光学ガラス等の透明部材を含んでいる。バンドルファイバ70は、複数のファイバが束状に束ねられたものである。バンドルファイバ70は、第1パルス用ファイバ71と、第2パルス用ファイバ72と、を有している。図では、図が煩雑にならないように、いくつかの第1パルス用ファイバ71及び第2パルス用ファイバ72のみに符号を付している。第2パルス用ファイバ72の一端から他端までの長さは、第1パルス用ファイバ71の一端から他端までの長さよりも長い。バンドルファイバ70は、1本の第1パルス用ファイバ71及び1本の第2パルス用ファイバ72を含んでもよいし、複数本の第1パルス用ファイバ71及び第2パルス用ファイバ72を含んでもよい。
【0094】
バンドルファイバ70の一端(入射端70aと呼ぶ。)を、レンズ81の焦点に配置する。バンドルファイバ70の他端(出射端70bと呼ぶ。)を、レンズ82の焦点に配置する。平行光にされたパルスレーザ光L10をレンズ81に入射させる。パルスレーザ光L10は、レンズ81によって集光される。レンズ81によって集光されたパルスレーザ光L10は、バンドルファイバ70の入射端70aに入射する。
【0095】
第2パルス用ファイバ72の一端から他端までの長さを、第1パルス用ファイバ71の一端から他端までの長さよりも長くしているので、第2パルス用ファイバ72に入射したパルスレーザ光L10は、第1パルス用ファイバ71に入射したパルスレーザ光L10よりも遅延してバンドルファイバ70の出射端70bに到達する。よって、第1パルス用ファイバ71は、一端から入射したパルスレーザ光L10を他端から第1パルスレーザ光L11として出射させる。第2パルス用ファイバ72は、一端から入射したパルスレーザ光L10を他端から第2パルスレーザ光L12として出射させる。このように、ダブルパルス発生素子11eは、バンドルファイバ70を用いて、第1パルスレーザ光L11と、第2パルスレーザ光L12との間に光路差を有するようにする。
【0096】
バンドルファイバ70の入射端70a、すなわち、パルスレーザ光L10が入射するバンドルファイバ70の入射端70aは、円形状に束ねられている。パルスレーザ光L10の光軸に直交する断面は、通常、円形である。よって、入射端70aを円形状にすると、パルスレーザ光L10を効率よくバンドルファイバ70に入射させることができる。なお、入射端70aの形状は、円形状に限らず、パルスレーザ光L10の断面の形状に合わせて調整してもよい。
【0097】
複数の第1パルス用ファイバ71は、入射端70aの中央部に位置するように円形状に配置されている。そして、中央部の第1パルス用ファイバ71の周りを囲むように、第2パルス用ファイバ72は、入射端70aの周辺部に同心円の環状に配置されている。パルスレーザ光L10の断面における強度分布は、中央部が大きく、周辺部が小さい同心円の分布となる場合がある。したがって、例えば、第1パルス用ファイバ71の径と、第2パルス用ファイバ72の径とが同じ場合には、中央部に配置された第1パルス用ファイバ71の本数と、周辺部に配置された第2パルス用ファイバ72の本数とを調整することにより、第1パルスレーザ光L11の光量に対する第2パルスレーザ光L12の光量の割合を調整することができる。
【0098】
なお、ファイバの本数の調整の他、第1パルス用ファイバ71及び第2パルス用ファイバ72の径を調整することにより、光量の割合を調整してもよい。また、入射端70aの中央部に第2パルス用ファイバ72を配置し、入射端70aの周辺部に第1パルス用ファイバ71を配置してもよい。入射するパルスレーザ光L10の強度分布、及び、利用する第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12の光量により、入射端70aの形状及びファイバの配置は調整可能である。
【0099】
一方、バンドルファイバ70の出射端70b、すなわち、第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12が出射するバンドルファイバ70の出射端70bは、矩形状に束ねられている。検出器が検査する検査対象の視野は、通常、矩形であるので、検査対象を照明する照明光の断面も矩形が望ましい。よって、出射端70bを矩形状にすることにより、ターゲット材20を照射する照射スポットを矩形状に配置させることができる。これにより、断面が矩形の照明光を効率的に生成することができる。なお、出射端70bの形状は、矩形状に限らない。検査対象の視野、照明光の断面等に合わせて、出射端70bの形状を調整してもよい。
【0100】
複数の第1パルス用ファイバ71は、矩形状の出射端70bの中央部に一列に並ぶように配置されている。よって、第1パルスレーザ光L11をターゲット材20に照射することにより、複数の照射スポットがライン状に並ぶようにターゲット材20を照射することができる。第1パルスレーザ光L11により照射されたターゲット材20からは、プラズマ及びイオンが発生し、EUV光が生成される。
【0101】
複数の第2パルス用ファイバ72は、複数の第1パルス用ファイバ71を両側から挟むように、出射端70bの周辺部に一列に配置されている。第1パルスレーザ光L11の照射により発生したプラズマ及びイオンは、照射スポットから拡がる。そして、第1パルスレーザ光L11から遅延して出射端70bから出射した第2パルスレーザ光L12は、拡がるプラズマ及びイオンを照射しつつ、ターゲット材20を照射する。この際に、第2パルスレーザ光L12は、第1パルスレーザ光L11よりも外側から出射する。よって、拡がるプラズマ及びイオンを効率よく照射することができる。
【0102】
なお、出射端70bの中央部に第2パルス用ファイバ72を配置し、出射端70bの周辺部に第1パルス用ファイバ71を配置してもよい。出射する第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12の強度分布及び光量により、出射端70bの形状及びファイバの配置は調整可能である。また、ターゲット材を照射する第1パルスレーザ光L11または第2パルスレーザ光L12の結像の状態に応じて第1パルス用ファイバ71及び第2パルス用ファイバ72の配置を調整する。
【0103】
このように、ダブルパルス発生素子11eは、バンドルファイバ70の出射端70bにおける第1パルス用ファイバ71及び第2パルス用ファイバ72の配置を調整することにより、出射端70bから出射される第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12の照射スポットの分布を制御することができる。よって、検査領域の視野に合わせて、照射スポットの分布を制御することができ、効率よく、検査対象を照明することができる。
【0104】
本実施形態のダブルパルス発生素子11eによれば、第2パルス用ファイバL12の長さを、第1パルス用ファイバL11の長さよりも長くしたバンドルファイバを用いて、光路差を有するようにしている。これにより、第2パルスレーザ光L12を第1パルスレーザ光L11よりも遅延させて出射させることができる。各ファイバの長さを調整することにより、容易に遅延時間を調整することができる。
【0105】
また、励起用のパルスレーザ光L10の断面における強度分布に応じて、バンドルファイバ70の入射端70aの形状を調整することができる。また、ターゲット材20の照射スポットの配置形状に応じて、出射端70bの形状を調整することができる。よって、第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12の光量の割合を調整することができ、効率よく、ターゲット材20を照射することができる。
【0106】
例えば、パルスレーザ光L10の入射端70aを円形状に配置する一方で、出射端70bの形状を矩形状とする。これにより、照明光の断面形状を、視野サイズに合わせた矩形とすることができ、第1パルスレーザ光l11及び第2パルスレーザ光L12を無駄なく効率よく使用することができる。よって、検査に用いる照明光となるEUV光を効率的に生成することができる。
【0107】
さらに、出射端70bの中央部に第1パルス用ファイバ71を配置し、出射端70bの周辺部に第2パルス用ファイバ72を配置することにより、第1パルスレーザ光L11により生成された膨張過程のプラズマに対し、不足なく第2パルスレーザ光L12を照射させることができ、EUV光の生成効率を向上させることができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1及び2の記載に含まれている。
【0108】
(実施形態4)
次に、実施形態4に係る光源を説明する。本実施形態の光源は、パルスレーザ光L10の光路上に配置させた透明部材をダブルパルス発生素子とし、透明部材を通過させる時間の差により、第2パルスレーザ光を、第1パルスレーザ光よりも遅延させる。
【0109】
図14は、実施形態4に係るダブルパルス発生素子の主要部を例示した構成図である。図14に示すように、本実施形態のダブルパルス発生素子11fは、屈折率が1よりも大きい透明部材90を備えている。透明部材90は、例えば、石英等の光学ガラスである。透明部材90は、パルスレーザ光L10の光軸方向LXに段差91を有している。透明部材90は、段差91及び段差91を光軸方向LXに延長した延長面92を境界にして、パルスレーザ光L10が透過する光軸方向LXの長さが所定の長さの長軸部分93と、光軸方向LXの長さが長軸部分93よりも短い短軸部分94とを含む。よって、透明部材90に入射したパルスレーザ光L10は、長軸部分93及び短軸部分94を透過する。なお、長軸部分93よりも短い短軸部分94には、短軸部分94における光軸方向LXの長さが0、すなわち、短軸部分94がない場合も含まれる。
【0110】
透明部材90の屈折率が1よりも大きいので、長軸部分93を透過して出射するパルスレーザ光L10は、短軸部分94を透過して出射するパルスレーザ光L10よりも遅延する。このように、本実施形態のダブルパルス発生素子11fは、パルスレーザ光L10が長軸部分93を透過して出射した第2パルスレーザ光L12を、短軸部分94を透過して出射した第1パルスレーザ光L11よりも遅延させて出射させる。図の縞状の線の間隔は、パルス間隔を示している。
【0111】
図15は、実施形態4に係るダブルパルス発生素子を例示した構成図である。図15には、パルスレーザ光L10、第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12の時間に対する強度変化、並びに、透明部材90を光軸方向LXから見た形状も示している。図15に示すように、ダブルパルス発生素子11fの透明部材90は、図示しないレンズにより平行光に変換されたパルスレーザ光L10の光路上に配置されている。透明部材90は、光軸方向LXから見て、中央部が円形の短軸部分94と、短軸部分94を囲むように形成された円環状の長軸部分93とを含んでいる。第1パルスレーザ光L11は、パルスレーザ光L10の断面の中央部が透過したものであり、第2パルスレーザ光L12は、パルスレーザ光L10の断面の周辺部が透過したものである。
【0112】
平行光に変換されたパルスレーザ光L10は、透明部材90に入射する。短軸部分94に入射したパルスレーザ光L10は、透明部材90を透過して、短軸部分94から第1パルスレーザ光L11として出射する。透明部材90における第1パルスレーザ光L11が出射する面を第1出射面90aと呼ぶ。長軸部分93に入射したパルスレーザ光L10は、透明部材90を透過して、長軸部分93から第2パルスレーザ光L12として出射する。第2パルスレーザ光L12が出射する面を第2出射面90bと呼ぶ。よって、透明部材90は、第1出射面90aと、第2出射面90bとの間に、光軸方向LXの段差91を有する。
【0113】
第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12は、レンズ84で集光されてターゲット材20を照射する。第1パルスレーザ光L11がターゲット材20を照射する光量を第1光量と呼ぶ。第2パルスレーザ光L12がターゲット材20を照射する光量を第2光量と呼ぶ。そうすると、第1光量に対する第2光量の割合は、第1出射面90aに対する第2出射面90bの割合で調整可能である。具体的には、第1出射面90aの径により算出される第1出射面90aの面積と、第2出射面90bの径により算出される第2出射面90bの面積とを調整することにより、第1光量に対する第2光量の割合を調整することができる。
【0114】
なお、短軸部分94の光軸方向LXの長さを0とした場合には、透明部材90は、円筒状の長軸部分93を含んでいる。この場合には、段差91は、長軸部分93の光軸方向LXの長さとなる。
【0115】
透明部材90は、複数の段差91を有する多段差形状でもよい。例えば、段差を2つ設けることにより、パルスレーザ光L10を3つに分離することができる。これにより、第3パルスレーザ光をさらに形成することができる。
【0116】
段差91の長さをLとし、透明部材90の屈折率nとし、光速をcとすると、透明部材90に入射したパルスレーザ光L10が長軸部分93を透過してターゲット材に到達する時間と、短軸部分94を透過してターゲット材に到達する時間と、の時間差Δtは、下記の(1)式になる。
【0117】
時間差Δt=L・(n-1)/c (1)
【0118】
ここで、例えば、屈折率n=1.5、段差91の長さL=60[mm]とすれば、時間差Δt=100[psec]となる。このように、第2パルスレーザ光L12が第1パルスレーザ光L11よりも遅延する時間は、段差91の長さで調整可能である。
【0119】
図15では、透明部材90を光軸方向LXから見て、中央部に配置された円形の短軸部分94と、周辺部に配置された円環状の長軸部分93とを含むようにしたが、これに限らない。図16は、実施形態4の別の例に係るダブルパルス発生素子を例示した構成図である。図16に示すように、透明部材95は、中央部に配置された円形の長軸部分93と、周辺部に配置された円環状の短軸部分94とを含むようにしてもよい。この場合には、第1パルスレーザ光L11は、パルスレーザ光L10の断面の周辺部が透過したものであり、第2パルスレーザ光L12は、パルスレーザ光L10の断面の中央部が透過したものである。この場合でも、第1光量に対する第2光量の割合は、第1出射面90aに対する第2出射面90bの割合で調整可能である。
【0120】
図17(a)~(c)は、実施形態4の別の例に係る透明部材の断面図、並びに、光軸方向から見た第1パルスレーザ光及び第2パルスレーザ光の形状を例示した図である。図17(a)に示すように、同心円状に配置された長軸部分93及び短軸部分94を有する透明部材96を用いて、第2パルスレーザ光L12を、第1パルスレーザ光L11よりも遅延させて出射させてもよい。図17(b)及び(c)に示すように、第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12は、同心円状に出射する。
【0121】
図18(a)~(c)は、実施形態4のさらに別の例に係る透明部材の断面図、並びに、光軸方向から見た第1パルスレーザ光及び第2パルスレーザ光の形状を例示した図である。図18(a)に示すように、格子状に配置された長軸部分93及び短軸部分94を有する透明部材97を用いて、第2パルスレーザ光L12を、第1パルスレーザ光L11よりも遅延させて出射させてもよい。図18(b)及び(c)に示すように、第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12は、格子状に出射する。
【0122】
本実施形態のダブルパルス発生素子11fによれば、段差91を有する透明部材90を用いることにより、長軸部分93を透過してターゲット材20に到達する時間と、短軸部分94を透過してターゲット材20に到達する時間を異なるようにする。これにより、第2パルスレーザ光L12を、第1パルスレーザ光L11よりも遅延させることができる。遅延時間は、段差91の長さで調整することができる。
【0123】
また、各パルスレーザ光がターゲット材20を照射する光量を、各出射面の比からなる透過面積比を調整することにより、容易に調整することができる。また、第1パルスレーザ光L11及び第2パルスレーザ光L12の照射位置は、透明部材90における長軸部分93及び短軸部分94の配置で調整することができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1~3の記載に含まれている。
【0124】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。また、実施形態1~4における構成は、適宜、組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0125】
1 検査装置
10 光源
11、11a、11b、11c、11d、11e、11f ダブルパルス発生素子
12 1/2波長板
13 ビームスプリッタ
13d ダイクロイックミラー
13p 透過点
14、15 反射鏡
14p、15p 反射点
16、17 プリズム
17a、17b、17c、17d 側面
18 非線形波長変換素子
18d 波長変換結晶
19 波長分散素子
20 ターゲット材
21 集光レンズ
30 照明光学系
31、32、33 楕円面鏡
34 落とし込み鏡
40 検出光学系
41 シュバルツシルト光学系
41a 凹面鏡
41b 凸面鏡
42 平面鏡
43 凹面鏡
44 検出器
50 検査対象
51 ステージ
60 短パルスレーザ
70 バンドルファイバ
70a 入射端
70b 出射端
71 第1パルス用ファイバ
72 第2パルス用ファイバ
81、82、83、84 レンズ
90、95、96、97 透明部材
90a 第1出射面
90b 第2出射面
91 段差
92 延長面
93 長軸部分
94 短軸部分
110 LPP光源
120 ドロップ
130 コレクターミラー
E101 EUV光
L10 パルスレーザ光
LX 光軸
L11 第1パルスレーザ光
L12 第2パルスレーザ光
L13 第3パルスレーザ光
L14 第4パルスレーザ光
L110 励起用レーザ光
W0 基本波
W1、W2、W3 高調波
図1
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