(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】ケーブルの補修方法及びケーブルの補修構造
(51)【国際特許分類】
H02G 1/16 20060101AFI20230519BHJP
【FI】
H02G1/16
(21)【出願番号】P 2019142876
(22)【出願日】2019-08-02
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000220642
【氏名又は名称】東京電設サービス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】小山 勇人
(72)【発明者】
【氏名】永原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】小沢 保夫
(72)【発明者】
【氏名】相原 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 豪志
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04212387(US,A)
【文献】特開2010-136518(JP,A)
【文献】特開2013-005645(JP,A)
【文献】特開2001-231149(JP,A)
【文献】特開2008-118827(JP,A)
【文献】特開平03-027711(JP,A)
【文献】特開2002-209320(JP,A)
【文献】米国特許第04511415(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともケーブルの外被に生じる外傷を補修するケーブルの補修方法において、
前記外傷に接着剤を塗布し、該接着剤により前記外傷を穴埋めする第1工程と、
穴埋めされた前記外傷を覆うとともに、前記ケーブル
の外被上に防水パテを形成する第2工程と、
前記防水パテ上に
金属からなる遮水シートを形成する第3工程と、
を備えることを特徴とするケーブルの補修方法。
【請求項2】
前記遮水シートは、アルミニウムシートであることを特徴とする請求項1に記載のケーブルの補修方法。
【請求項3】
前記第3工程
の後に、前記遮水シートを押圧状態で覆う第1のテープを前記ケーブルの外周に巻き付ける第4工程と、
前記第1のテープを押圧状態で覆う第2のテープを前記ケーブルの外周に巻き付ける第5工程と、をさらに備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のケーブルの補修方法。
【請求項4】
前記第1のテープは、自己融着テープであることを特徴とする請求項
3に記載のケーブルの補修方法。
【請求項5】
前記第2のテープは、PVCテープであることを特徴とする請求項
3又は4に記載のケーブルの補修方法。
【請求項6】
前記第4工程と前記第5工程との間において、
前記第1のテープを覆う防水テープを前記ケーブルの外周に巻き付ける第6工程をさらに備え、
前記第5工程においては、前記防水テープを押圧状態で覆う第2のテープを前記ケーブルの外周に巻き付けることを特徴とする請求項
3~5のいずれか一項に記載のケーブルの補修方法。
【請求項7】
前記第2工程と前記第3工程とは、前記第2工程及び前記第3工程を1セットとして複数セット繰り返されることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のケーブルの補修方法。
【請求項8】
少なくともケーブル
の外被に生じた外傷が補修されたケーブルの補修構造において、
前記外傷に塗布され、前記外傷を穴埋めする接着部と、
前記接着部を覆うとともに前記ケーブル
の外被上に形成される防水パテと、
前記防水パテ上に形成される
金属からなる遮水シートと、
を備えることを特徴とするケーブルの補修構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルの補修方法及びケーブルの補修構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧の電力ケーブル線路において使用されるケーブルとして、架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(以下、「CVケーブル」という)が知られている。CVケーブルは、布設及び保守管理の容易性等の観点から多く採用されているが、その長期の使用において、いわゆる水トリーによる絶縁体の劣化が生じるという課題がある。水トリーとは、ポリエチレンのような絶縁体中に微量の水分や異物が侵入し、この水分等が経時変化により絶縁体中を浸透することにより、絶縁劣化(絶縁体の破壊)が生じる現象である。
【0003】
このような、水トリーの発生を抑制するために、例えば、シースに金属ラミネート層を接着した遮水層付きのケーブルが知られている(例えば、特許文献1参照)。遮水層を設けたケーブルにおいては、水分等の進入が防止され優れた遮水性能を発現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ケーブルが敷設されている現場においては稀頻度ながらもケーブルシースを損傷させるいわゆる外傷事象が発生している。このような事象が発生するたびにテープ等による損傷部分を補修することが行われているが、上記遮水層付きのケーブルの補修においては、損傷前の遮水性能を維持するまでには至っていない。従って、ケーブル、特に遮水層付きケーブルにおいては、補修後のケーブル性能維持に課題があった。
【0006】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものであり、外傷のあるケーブルにおいて、補修後の遮水性と耐電圧性等のケーブル性能に優れたケーブルの補修方法及びケーブルの補修構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る第1の態様は、少なくともケーブル外被に生じる外傷を補修するケーブルの補修方法であって、前記外傷に接着剤を塗布し、該接着剤により前記外傷を穴埋めする第1工程と、穴埋めされた前記外傷を覆うとともに、前記ケーブル外被上に防水パテを形成する第2工程と、前記防水パテ上に遮水シートを形成する第3工程とを有する。
【0008】
また、前記第3工程後に、前記遮水シートを押圧状態で覆う押圧テープを前記ケーブルの外周に巻き付ける第4工程と、前記押圧テープを覆う防水テープを前記ケーブルの外周に巻き付ける第5工程とをさらに備えることが好ましい。
【0009】
また、前記第5工程は、前記押圧テープを覆う第1防水テープを前記ケーブルの外周に巻き付ける第6工程と、前記第1防水テープを覆う第2防水テープを前記ケーブルの外周に巻き付ける第7工程と、を有することが好ましい。
【0010】
また、前記第2防水テープは、PVCテープであることが好ましい。
【0011】
また、前記押圧テープは、自己融着テープであることが好ましい。
【0012】
また、前記第2工程と前記第3工程とは、前記第2工程及び前記第3工程を1セットとして複数セット繰り返されることが好ましい。
【0013】
また、前記遮水シートは、アルミニウムシートであることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る第2の態様は、少なくともケーブル外被に生じた外傷が補修されたケーブルの補修構造であって、前記外傷に塗布され、前記外傷を穴埋めする接着部と、前記接着部を覆うとともに前記ケーブル外被上に形成される防水パテと、前記防水パテ上に形成される遮水シートとを有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る態様によれば、外傷部分に埋められた接着剤に防水パテと遮水シートを重ねることにより、優れた遮水性能を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係るケーブルの補修方法に適用する例示のCVケーブルの構成を表す断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るケーブルの補修方法により実現される補修されたケーブルの概略を表す断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るケーブルの補修方法において、(a)ケーブルの外傷部分に接着剤を塗布した状態を表す斜視図であり、(b)接着剤を塗布した部分を覆うとともにケーブル外被上に防水パテを形成した状態を表す斜視図であり、(c)防水パテ上にアルミニウムシートを形成した状態を表す斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るケーブルの補修方法において、(a)アルミニウムシートの外周上に防水パテを形成した状態を表す斜視図であり、(b)防水パテ上にアルミニウムシートを形成した状態を表す斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るケーブルの補修方法において、(a)ケーブルの外周に自己融着テープを巻き付けてアルミニウムシートが形成された部分を覆う状態を表す斜視図であり、(b)自己融着テープ上に防水シートを巻き付けた状態を表す斜視図であり、(c)防水シート上にPVCシートを巻き付けた状態を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は一つの例示であり、本発明の範囲において、種々の形態をとり得る。
【0018】
<ケーブルの構成>
図1を用いて、本実施の形態に係るケーブルの補修方法に適用するケーブルの構成について説明する。
図1に示すように、ケーブル1は、例えば遮水層付きのCVケーブルであり、中心に位置する導体2と、該導体2から径外側に向けて順に、内部半導電層3と、絶縁層4と、外部半導電層5と、遮蔽層6と遮水層7と、接着層8、防食層9とを有する。
【0019】
導体2は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などから構成される。導体2は、単線あるいは撚り線のいずれによって形成されていてもよい。
内部半導電層3は、導体2上に形成され、例えば、ポリエチレンやエチレンコポリマーなどにカーボンブラック等の導電性付与剤を配合した半導体性の組成物から形成されたものである。
絶縁層4は、内部半導電層3上に形成され、例えば、架橋ポリエチレン樹脂などの樹脂組成物が適用される。
外部半導電層5は、絶縁層4上に形成され、内部半導電層3と同様に半導電性の組成物から形成されたものである。
遮蔽層6は例えば、単線やテープ状の金属等で構成されるものであり、銅やアルミニウムが上げられる。遮水層7は、例えば、円筒状の金属等で構成されるものであり、アルミニウム、鉛等が上げられる。
接着層8は、遮水層7と防食層9とを接着させるものであり、例えば、ホットメルト接着剤からなるものが挙げられる。
防食層9は、ケーブル1の外被を構成するものであり、接着層8を介して遮水層7上に形成され、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)が適用される。
なお、上記した導体2、内部半導電層3、絶縁層4、外部半導電層5、遮水層7、接着層8及び防食層9の構成はあくまで例示であり、一般の電力ケーブルにおいて採用される種々の材質、組成物等が適用される。
【0020】
<ケーブルの補修>
図2~
図4を用いて、ケーブルの補修方法について説明する。本実施の形態においては、ケーブル1を構成する遮水層7、接着層8及び防食層9に外傷Aが発生した場合におけるケーブルの補修方法について説明する。
【0021】
(ケーブルの補修構造)
図2を用いて、本実施の形態に係るケーブルの補修方法によって実現される補修後のケーブルの構成(ケーブルの補修構造)について説明する。補修後のケーブル1は、遮水層7、接着層8及び防食層9において生じる外傷Aを埋める接着剤10と、接着剤10及び防食層9の一部を覆う防水パテ20と、防水パテ20を覆う遮水シート30とを有する。
【0022】
接着剤10は、ケーブル1の外傷Aに対して塗布することにより、外傷A(凹み)を防食層9の表面に達するまで埋められる。接着剤10は、特に限定されず一般に使用される接着剤が適用されるが、補修後のケーブル1における絶縁性能を維持する観点からは、防食層9と同等の絶縁性能を有しているものが好ましい。接着剤10によって外傷Aが埋められることにより、既存のケーブル1と同等の耐電圧性能を維持することができる。
【0023】
防水パテ20は、外傷Aに埋められ防食層9の表面に達した接着剤10と接着剤が塗布された周辺領域を含めた領域とを覆うように塗布される。これにより、ケーブル1の軸方向に平行な方向に対する水分等の侵入が防止される。また、防水パテ20は、後述する遮水シート30とケーブル1の防食層9とを接着するための接着機能を有する。防水パテ20は、特に限定されず、一般に使用される防水用のパテ及びパテに相当する材料が適用される。
【0024】
遮水シート30は、塗布された防水パテ20を覆うように防食層9上に貼り付けられる。これにより、ケーブル1の軸方向に垂直な方向に対する水分等の侵入が防止される。遮水シート30は、遮水性の観点から、例えば、アルミニウム等の金属箔で構成されている。遮水シート30は、アルミニウム等の金属箔に限られず、要求される遮水性能を満たすものであれば各種材質のものが適用される。
【0025】
上記のように、外傷Aに対して塗布された接着剤10へ水分等が進入することを防止するために、防水パテ20と遮水シート30とからなる多層構造とすることにより、ケーブル1の軸方向に平行な方向及び軸方向と垂直な方向に対する遮水性能が高められる。
【0026】
また、上記防水パテ20及び遮水シート30は、一層ずつ形成される場合に限られず、複数層形成される場合にも適用される。例えば、防水パテ20上に遮水シート30が形成された状態において、遮水シート30上に遮水シート30の周囲に沿って枠状に防水パテ20を塗布し、さらに塗布された枠状の防水パテ20上に遮水シート30が貼り付けられる構成としてもよい(
図4参照)。このような構成とすることにより、上層の遮水シート30は、下層の遮水シート30と切り離され、ケーブル1の移動に追従できるようになる。
【0027】
(ケーブルの補修方法)
図3~
図5を用いて、ケーブルの補修方法について説明する。本実施の形態においては、複数本からなるケーブル束の内の1つのケーブル1において生じた外傷Aを補修する方法について説明する。
図3(a)に示すように、ケーブル1の外被において、遮水層7、接着層8及び防食層9を貫通して生じる複数箇所の外傷A(凹み)にそれぞれ接着剤10が塗布される。接着剤10は、防食層9の表面に達するまで塗布される。これによって、外傷Aが接着剤10により完全に埋められ、外傷Aの発生により露出状態であった遮水層7が外部と遮断される。
【0028】
次いで、
図3(b)に示すように、上記接着剤10が塗布された接着部分に対する遮水性能を高めるために、接着剤10が塗布された部分をすべて覆うようにケーブル1の防食層9上に防水パテ20が塗布される。これにより、接着剤10が塗布された部分が防水パテ20によって隙間なく覆われるので、ケーブル1の軸方向に平行な方向における、外傷Aを覆う接着部分への水分等の進入が防止される。
【0029】
次いで、
図3(c)に示すように、防食層9表面に塗布された防水パテ20上に遮水シート30としてアルミニウムシート30が貼り付けられる。防水パテ20は接着機能を有しているので、アルミニウムシート30は遮水シート30上に接着・固定される。これにより、ケーブル1の軸方向に垂直な方向における、外傷Aを覆う接着部分への水分等の進入が防止される。
【0030】
以上の工程に基づいて外傷Aを有するケーブル1の補修を行うことにより、外傷Aに塗布された接着剤10が防水パテ20とアルミニウムシート30との多層構造によって覆われる。これにより、外傷Aが発生する前のケーブル1と同等の遮水性能、耐電圧性能を有するケーブルの補修構造(
図2)が得られる。
【0031】
上記ケーブルの補修方法では、防水パテ20及び遮水シート(アルミニウムシート)30を一層ずつ形成することとしたが、防水パテ20と遮水シート30とを1セットとしてこれを複数セット繰り返して形成する構成とすることもできる。具体的には、
図4に示すようなケーブル1の補修構造に係る構成とすることができる。
【0032】
図4(a)に示すように、上記工程により防食層9上に遮水シート(アルミニウムシート)30が貼り付けられた状態(
図3(c)参照)において、遮水シート(アルミニウムシート)30の外周上に全周にわたって防水パテ21が塗布される。
【0033】
次いで、
図4(b)に示すように、塗布された防水パテ21上にアルミニウムシート31が貼り付けられる。防水パテ21は接着機能を有するので、アルミニウムシート31はその外周部分が防水パテ21上に接着され固定される。一方、アルミニウムシート31の外周以外の部分は防水パテ21に固定されていない。このような構成とすることにより、上層のアルミニウムシート31が、下層のアルミニウムシート30といわゆる縁切りされた状態となるので、上層のアルミニウムシート31はケーブル1の移動に追従することができる。
【0034】
以上のようにケーブルの補修を行うことにより、防水パテとアルミニウムシートとの多層構造を複数セット(防水パテ20及びアルミニウムシート30、防水パテ21及びアルミニウムシート31)形成する補修構造となり、上記遮水性能、耐電圧性能の向上に加えて、ケーブル1の移動に対する追従性も向上させることができる。なお、上記構成では、上層の防水パテ21及びアルミニウムシート31の多層構造において、防水パテ21が下層のアルミニウムシート30の外周のみに塗布される例について説明したが、これに限られない。下層のアルミニウムシート30の全面に防水パテ21が塗布される構成も適用される。
【0035】
また、本実施の形態に係るケーブルの補修方法においては、補修後におけるケーブル1の遮水性能等をさらに向上させるために、
図5に示すように、補修箇所に対してテープを巻き付ける構成とすることができる。以下では、
図4(b)に示した防水パテとアルミニウムシートとからなる多層構造を2セット(防水パテ20及びアルミニウムシート30、防水パテ21及びアルミニウムシート31)形成したケーブル1の補修構造に対して、テープを巻き付ける構成について説明する。
【0036】
図5(a)に示すように、遮水シート(アルミニウムシート)30,31及び防水パテ20,21が二層ずつ形成された状態(
図4(b)参照)において、自己融着テープ40が補修部分を覆い且つ複数本のケーブル1を束ねるようにハーフラップ状に1層巻き付けられる。これにより、ケーブル1は自己融着テープ40により押圧状態で巻き付けられるので、外傷Aの保護に寄与する下層アルミニウムシート30に対して十分な面圧が確保され、補修構造が安定的に保たれる。なお、ケーブル1に巻き付けられる自己融着テープは、特に限定されず、一般に使用されるものが適用される。
【0037】
次いで、
図5(b)に示すように、巻き付けられた自己融着テープ40上に、自己融着テープ40を覆うように、防水テープ50がハーフラップ状に巻き付けられる。これにより、ケーブル1の補修構造の遮水性能がより高められる。ケーブル1に巻き付けられる防水テープ50は、特に限定されず、一般に使用されるものが適用される。なお、防水テープ50は、要求される遮水性能に応じて、省略することができる。
【0038】
次いで、
図5(c)に示すように、巻き付けられた防水テープ50上に、防水テープ50を押圧状態で覆うように、PVC(ポリ塩化ビニル)テープ60がハーフラップ状に2層巻き付けられる。PVCテープ60は、防水機能を有している。これにより、ケーブル1の補修構造の遮水性能がより高められるとともに、補修部分に対して押圧力が付与されるため、ケーブル1の補修構造がより安定的に維持される。なお、本実施の形態では、PVCテープ60を用いたが、これに限られず、ケーブルの補修構造の遮水性能が高められるものであれば、他の材質に基づくテープを適用することもできる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施の形態に係る実施例について説明する。なお以下の実施例は、本発明に係る態様を説明する例示にすぎず、本発明は当該実施例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例)
本実施例では、本実施の形態に係る補修方法による遮水性能を検証するために、外傷を形成したケーブルに本実施の形態に係る補修方法を適用し、ケーブルの遮水性能の指標である透湿度を測定する試験を行った。具体的には、新品の遮水層付きの100mm2ケーブルの絶縁体等を抜き出し、防食層、接着層及び遮水層からなる筒状体に対してドリルを用いて1.5mmの貫通孔(外傷)を設けることにより、模擬ケーブルを作製した。
【0041】
外傷を形成した上記模擬ケーブルに対して以下の工程(i)~(vii)を経てケーブルの補修を実施した。
(i)形成された外傷に接着剤を塗布し、接着剤が防食層の表面に到達するまで外傷を穴埋めした(
図3(a)参照)。
(ii)工程(i)で塗布された接着剤を覆うように防水パテを防食層表面に貼り付けた(
図3(b)参照)。
(iii)工程(ii)で形成された防水パテ上にアルミニウムシートを貼り付けた(
図3(c)参照)。
(iv)工程(iii)で形成されたアルミニウムシートの外周に全周にわたって防水パテを貼り付けた(
図4(a)参照)。
(v)工程(iv)で形成された防水パテ上にアルミニウムシートを貼り付けた(
図4(b)参照)。
(vi)工程(v)で形成されたアルミニウムシートを押圧状態で覆うように自己融着テープをケーブルの周方向に巻き付けた(
図5(a)参照)。
(vii)工程(vi)で巻き付けられた自己融着テープを押圧状態で覆うようにPVCテープをケーブルの周方向に巻き付けた(
図5(c)参照)。
【0042】
(比較例)
上記実施例と同じ方法により、新品の遮水層付きの100mm2ケーブルの絶縁体等を抜き出し、防食層、接着層及び遮水層からなる筒状体に対してドリルを用いて1.5mmの貫通孔(外傷)を設けることより、模擬ケーブルを作製した。比較例においては、実施例のようなケーブルの補修は行わずに、模擬ケーブルのままの状態とした。
【0043】
(透湿度試験)
上記実施例及び比較例に係るケーブルにおいて、模擬ケーブル長さを約0.3mに調整し、筒状態となったケーブル両端に、銅製の端末キャップを取り付ける。端末キャップには水分量変化を観測できる露点計のセンサー部が配置されており、これを60℃の温水中で30日間浸漬し、30日後の水分量を露点計にて測定することにより、次式に基づき透湿度Pを測定した。
【0044】
[式1]
P=Q/(2π・L・t・d)・ln(R2/R1)・・・(g・cm/(cm2・day・mmHg))
Q:透過水分量(g)
d:飽和水蒸気圧(mmHg)
L:試料長(cm)
R1:遮水層内径(cm)
R2:シース(防食層)外径(cm)
t:試験時間(day)
【0045】
透湿度試験の結果において、透湿度値が、設計基準として要求される透湿度値5.1×10-10g・cm/(cm2・day・mmHg)以下である場合には「○」と評価し、それ以外の場合には「×」と評価した。
【0046】
上記実施例及び比較例について、透湿度試験を行った結果を表1に示す。
【0047】
【0048】
透湿度試験の結果、実施例に係る補修された模擬ケーブルにおいては、上記試験の30日後の透湿度値が6.8×10-11g・cm/(cm2・day・mmHg)であり、設計基準として要求される透湿度値5.1×10-10g・cm/(cm2・day・mmHg)を満たす結果が得られた。さらに、実施例における透湿度値は、同条件で実験を行った新品の遮水層付きケーブルにおける透湿度値2.1×10-11g・cm/(cm2・day・mmHg)と同程度となり本補修方法の有効性が確かめられた。
一方、比較例に係る模擬ケーブル(補修を行わない模擬ケーブル)においては、透湿度試験の開始直後に試料内に水が侵入し測定不可の状態となった。
【0049】
上記実施の形態においては、遮水層付きのCVケーブルを例に挙げてケーブルの補修方法及びケーブルの補修構造について説明したが、これに限られない。適用されるケーブルは、遮水層がないケーブルやその他電力ケーブルにも適用される。
また、上記実施の形態においては、補修の対象が遮水層7、接着層8及び防食層9において外傷Aを有するケーブル1である場合を例に挙げて説明したが、これに限られない。補修対象となるケーブルは、防食層9のみに外傷Aを有するものなど、特に遮水層を含む遮水層よりも外側の構成部材において外傷Aを有するものが、外傷Aの位置や大きさにかかわらず、適用される。一方、遮水層よりも内側の構成部材において外傷Aを有するケーブルを補修する場合には、上記実施の形態とは異なる方法で補修を行う必要があるが、上記実施の形態に係る補修方法及び補修構造が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 ケーブル
2 導体
3 内部半導電層
4 絶縁層
5 外部半導電層
6 遮蔽層
7 遮水層
8 接着層
9 防食層
10 接着剤
20 防水パテ
21 防水パテ
30 遮水シート(アルミニウムシート)
31 遮水シート(アルミニウムシート)
40 自己融着テープ
50 防水テープ
60 PVCテープ
A 外傷