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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】凹版印刷用スキージ装置および印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 3/38 20060101AFI20230519BHJP
   B41F 3/20 20060101ALI20230519BHJP
   B41F 3/81 20060101ALI20230519BHJP
   B41F 3/36 20060101ALI20230519BHJP
   B41F 17/14 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
B41F3/38
B41F3/20 D
B41F3/81
B41F3/36
B41F17/14 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019171148
(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2021045931
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】加藤 拓司
(72)【発明者】
【氏名】岡所 秀明
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-255614(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0037018(US,A1)
【文献】特開平11-20129(JP,A)
【文献】特開2018-202637(JP,A)
【文献】特開2014-33013(JP,A)
【文献】特開2007-237449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 1/00- 3/86
B41F 16/00-19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ブレードの先端部を凹版の版面に押圧した状態で前記第1ブレードが前記凹版に対して第1水平方向に相対移動されることで前記版面に付着する印刷材料を掻き取るとともに前記版面に設けられる凹部に前記印刷材料を充填する凹版印刷用スキージ装置であって、
前記第1ブレードを上下方向に昇降可能に保持するスキージヘッドと、
前記スキージヘッドを前記上下方向に昇降するヘッド昇降部とを備え、
前記ヘッド昇降部による前記スキージヘッドのヘッド昇降距離は前記スキージヘッドでの前記第1ブレードのブレード昇降距離よりも長く、
前記印刷材料の充填に続いて前記第1ブレードを前記版面から上方に離間させる際には、前記ヘッド昇降部が前記スキージヘッドを前記ヘッド昇降距離だけ上昇させた後で、前記スキージヘッド内で前記第1ブレードを上昇させることを特徴とする凹版印刷用スキージ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の凹版印刷用スキージ装置であって、
前記スキージヘッドは、
前記ヘッド昇降部により上下方向に昇降されるヘッド本体と、
前記ヘッド本体に対して前記第1ブレードを上下方向に昇降する第1ブレード昇降部と、
前記第1ブレードの第1直下位置で前記第1ブレードから滴下してくる前記印刷材料を受け取り可能に構成されるとともに、前記第1直下位置から横方向に離間した離間位置と前記第1直下位置との間で往復移動可能に設けられる第1受け部材と、
前記第1ブレード昇降部による前記第1ブレードの下降に連動して前記第1受け部材を前記離間位置に移動させるとともに前記第1ブレード昇降部による前記第1ブレードの上昇に連動して前記第1受け部材を前記第1直下位置に移動させる第1移動機構部と
を有する凹版印刷用スキージ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の凹版印刷用スキージ装置であって、
第2ブレードの先端部を前記版面に押圧した状態で前記第2ブレードが前記凹版に対して前記第1水平方向と反対の第2水平方向に相対移動されることで前記版面に付着する印刷材料を前記凹部に仮充填し、
前記ヘッド昇降距離は前記スキージヘッドでの前記第2ブレードのブレード昇降距離よりも長く、
前記仮充填に続いて前記第1ブレードを前記版面から上方に離間させる際には、前記ヘッド昇降部が前記スキージヘッドを前記ヘッド昇降距離だけ上昇させた後で、前記スキージヘッド内で前記第2ブレードを上昇させる凹版印刷用スキージ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の凹版印刷用スキージ装置であって、
前記スキージヘッドは、
前記ヘッド本体に対して前記第2ブレードを上下方向に昇降する第2ブレード昇降部と、
前記第2ブレードの第2直下位置で前記第2ブレードから滴下してくる前記印刷材料を受け取り可能に構成されるとともに、前記第2直下位置から横方向に離間した離間位置と前記第2直下位置との間で往復移動可能に設けられる第2受け部材と、
前記第2ブレード昇降部による前記第2ブレードの下降に連動して前記第2受け部材を前記離間位置に移動させるとともに前記第2ブレード昇降部による前記第2ブレードの上昇に連動して前記第2受け部材を前記第2直下位置に移動させる第2移動機構部と
を有する凹版印刷用スキージ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の凹版印刷用スキージ装置であって、
前記スキージヘッドは前記版面に前記印刷材料を供給する供給部を有する凹版印刷用スキージ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の凹版印刷用スキージ装置を有し、
前記凹版印刷用スキージ装置により前記凹部に前記印刷材料を充填して形成した前記印刷材料の印刷パターンを被転写体に転写して前記印刷パターンを印刷する
ことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、凹版の版面に付着する印刷材料を掻き取るとともに版面に設けられる凹部に印刷材料を充填する凹版印刷用スキージ装置および当該装置を用いた印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクなどの印刷材料で形成されたパターンを平板基材(ガラス板、樹脂フィルム等)や立体基材(容器、ボトル等)に印刷する凹版印刷技術が数多く提案されている。例えば特許文献1に記載の印刷装置では、凹版の版面に上記パターンに対応して設けられた凹部にインクが充填されてインクパターンが形成される(充填工程)。インクパターンは転写ローラに受理され(受理工程)。受理されたインクパターンが基材に転写される(転写工程)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-158499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記充填工程では、ディスペンサーなどの供給部から凹版にインクが供給される。また、ドクターブレードが下降して先端部材が凹版の版面に当接して押圧する。この状態で凹版が水平移動する。これにより凹版の版面において凹部内にインクが充填されるとともに余分なインクが版面から掻き取られる。また、インクが転写ローラに受理された後の凹版に残留付着するインクが乾燥して版面に固着するのを防止する目的で、仮充填用のドクターブレードの先端部材を版面に当接させてインクの仮充填が実行される(仮充填工程)。
【0005】
上記した充填工程や仮充填工程が完了すると、各ドクターブレードは上方に移動して凹版から退避する。このとき、インクの糸引き現象、つまり凹版の版面とドクターブレードの先端部材との間でインクが糸状に伸びて繋がる現象が発生することがある。そして、糸引き状態のインクが装置部品に干渉して当該装置部品を汚してしまうことがあった。ここで、糸引きが解消されるまで装置各部の動作を停止して待機することで上記問題を回避できるが、その待機時間の分だけ印刷タクトが増大してしまう。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ブレードが凹版から離れる際に発生する印刷材料の糸引きを短時間で良好に解消させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1の態様は、第1ブレードの先端部を凹版の版面に押圧した状態で第1ブレードが凹版に対して第1水平方向に相対移動されることで版面に付着する印刷材料を掻き取るとともに版面に設けられる凹部に印刷材料を充填する凹版印刷用スキージ装置であって、第1ブレードを上下方向に昇降可能に保持するスキージヘッドと、スキージヘッドを上下方向に昇降するヘッド昇降部とを備え、ヘッド昇降部によるスキージヘッドのヘッド昇降距離はスキージヘッドでの第1ブレードのブレード昇降距離よりも長く、印刷材料の充填に続いて第1ブレードを版面から上方に離間させる際には、ヘッド昇降部がスキージヘッドをヘッド昇降距離だけ上昇させた後で、スキージヘッド内で第1ブレードを上昇させることを特徴としている。
【0008】
また、この発明の第2の態様は、印刷装置であって、上記凹版印刷用スキージ装置を有し、凹版印刷用スキージ装置により凹部に印刷材料を充填して形成した印刷材料の印刷パターンを被転写体に転写して印刷パターンを印刷することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明では凹部への印刷材料の充填が完了すると、第1ブレードを版面から上方に離間する必要がある。ここで、印刷材料の充填に続いてスキージヘッド内で第1ブレードを上昇させると、その移動距離、つまり第1ブレードのブレード昇降距離は比較的短いため、印刷材料の糸引きを短時間で効果的に解消するのは難しい。そこで、本発明では、第1ブレード単独の上昇に先立ってスキージヘッドとともに第1ブレードはブレード昇降距離よりも長いヘッド昇降距離だけ上昇される。したがって、糸引きが発生したとしても、スキージヘッドの上昇中に糸引き状態を短時間でかつ良好に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る凹版印刷用スキージ装置の第1実施形態に相当するスキージユニットを装備する印刷システムの概略構成例を示す模式図である。
図2】版ステージユニットおよびスキージヘッドの構成を示す図である。
図3】印刷システムの電気的構成を示すブロック図である。
図4図1に示す印刷装置に装備されるスキージユニットの正面図である。
図5】スキージユニットを構成するスキージヘッドの側面図である。
図6】ブランケットロール、ステージおよびスキージユニットの動作を示すフローチャートである。
図7A】充填処理および仮充填処理におけるスキージユニットの動作を模式的に示す図である。
図7B】充填処理および仮充填処理におけるスキージユニットの動作を模式的に示す図である。
図7C】充填処理および仮充填処理におけるスキージユニットの動作を模式的に示す図である。
図7D】充填処理および仮充填処理におけるスキージユニットの動作を模式的に示す図である。
図7E】充填処理および仮充填処理におけるスキージユニットの動作を模式的に示す図である。
図7F】充填処理および仮充填処理におけるスキージユニットの動作を模式的に示す図である。
図7G】充填処理および仮充填処理におけるスキージユニットの動作を模式的に示す図である。
図7H】充填処理および仮充填処理におけるスキージユニットの動作を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明に係る凹版印刷用スキージ装置の第1実施形態に相当するスキージユニットを装備する印刷システムの概略構成例を示す模式図である。図2は版ステージユニットおよびスキージヘッドの構成を示す図である。さらに、図3は印刷システムの電気的構成を示すブロック図である。この印刷システム100は、例えばガラス製の容器やボトル、樹脂製の容器やボトル等、水平方向Xと平行な回転対称軸まわりに回転対称な形状を有する物品(以下においては、これら総称して「ボトルB」と称する)の側面Baに対し、凹版Pの版面Paに設けられた凹部Pbに対応するインクパターンを印刷するためのシステムである。ここで、各図における方向を統一的に示すために、X方向と直交する水平方向をY方向とし、鉛直方向をZ方向としている。また、以下の各図において構成要素の近傍に付された点線矢印は、当該構成要素の動きを示すものである。
【0012】
印刷システム100は、ボトルBの側面Baに対し、それぞれが1つのインク色で印刷を行う2組の印刷装置、すなわち第1の印刷装置101および第2の印刷装置102を備えている。これらの印刷装置101、102はX方向に並列配置されている。より詳しくは、印刷装置102は印刷装置101から見てX方向の矢印方向X1を向いており、逆に印刷装置101は印刷装置102から見てX方向の矢印方向X2を向いている。このように2台の印刷装置101、102を有することから、印刷システム100はボトルBの側面Baに対して2色印刷を行うことができる。なお、印刷装置を1組とした単色印刷システム、あるいは印刷装置を3組以上備えた多色印刷システムを構成することも可能である。
【0013】
第1の印刷装置101および第2の印刷装置102は、版ステージユニット1、スキージユニット2、転写ユニット3および仮硬化ユニット4をそれぞれ備えている。これらのユニットは、Y2方向側からY1方向側に向けて上記の順番で並べて配置される。また、第2の印刷装置102のY1方向側には本硬化装置200が設けられている。これら第1の印刷装置101、第2の印刷装置102、本硬化装置200およびボトル着脱ステーション(図示省略)の間で、ボトルBはボトル保持装置300で保持された状態でボトル搬送装置400により循環搬送される。なお、本実施形態では、ボトル保持装置300に対するボトルBの装着および取り外しは上記ボトル着脱ステーションにてオペレータによる手動作業によって行われる。一方、それ以外の作業を自動化するために、印刷システム100はさらに、これらの各ユニット動作を制御する制御装置900を備えている。
【0014】
第1の印刷装置101および第2の印刷装置102は、以下に説明するように、同じ構成を有し、同様の印刷処理を実行する。印刷システム100における印刷処理は、
(1)版ステージユニット1およびスキージユニット2による光硬化性インクを用いたインクパターンの形成、
(2)転写ユニット3によるインクパターンの受理、
(3)インクパターンの転写ユニット3からボトルBの側面Baへの転写、
(4)仮硬化ユニット4からの光照射によるインクの仮硬化、
の各工程からなる単色印刷動作を各印刷装置101,102でそれぞれ実行した後、
(5)本硬化装置200によるインクの本硬化、
を実行することにより完結する。
【0015】
より具体的には、ボトルBはボトル着脱ステーションでオペレータによる手動操作にてボトル保持装置300に着脱される。つまり、印刷済のボトルBがボトル保持装置300から取り外された後で印刷すべきボトルBがボトル保持装置300に装着される。こうして装着されたボトルBはボトル保持装置300より回転対称軸まわり回転自在に保持され、その状態でボトル保持装置300と一体的にボトル搬送装置400によって第1の印刷装置101に搬送される。この第1の印刷装置101においてボトル保持装置300でボトルBを回転自在に保持したまま当該ボトルBに対し上記(1)~(4)の各工程が実行される。その後で、ボトルBを保持したボトル保持装置300が第1の印刷装置101から第2の印刷装置102に搬送される。
【0016】
版ステージユニット1は、図2に示すように、インクパターンを形成するための凹版Pを上面に載置するステージ11を備えている。ステージ11はアライメント機構12を介してベース部13に取り付けられている。アライメント機構12にはアライメント駆動部12a(図3)が接続され、制御装置900からの制御指令に応じてステージ11をXYZ方向およびZ軸回りの回転方向に移動させる。特に、ステージ11に載置された凹版Pの版面Paの高さ位置を制御するために、アライメント駆動部12aはステージ11をZ方向に昇降し、上下方向Zにおいてステージ11に載置された凹版Pの版面Paを掻き取り高さ位置(図7A図7B図7C中の符号H1)および受理高さ位置(図7A図7B図7C中の符号H3)に位置決めする。なお、アライメント機構12としては、例えばクロスローラベアリング機構を使用することができる。
【0017】
ベース部13は、印刷システム100の台座にY方向に延設されたガイドレール14に係合される。ベース部13にはベース駆動部13a(図3)が接続され、制御装置900からの制御指令に応じてステージ11をガイドレール14に沿ってY方向に往復移動させる。なお、ベース部13の可動範囲のうち最もY2方向側に寄った位置(図2に実線で示す位置)がベース部13のホームポジションである。
【0018】
ホームポジションに位置決めされた状態におけるステージ11の上方にはアライメントカメラ(図示省略)が配置されている。アライメントカメラはステージ11に載置された凹版Pの周縁部または凹版Pの上面に設けられたアライメントマークを撮像し、画像データを制御装置900に送出する。制御装置900はステージ11上における凹版Pの位置を検出し、必要に応じてアライメント機構12を動作させることで、凹版Pの位置を適正位置に調整する。
【0019】
ベース部13がホームポジションからY1方向に移動する経路に沿って、スキージユニット2および転写ユニット3が設けられている。スキージユニット2は、直下を通過するステージ11に載置された凹版Pの上面に対向するノズル23を備えている。ノズル23には、制御装置900により制御されるインク供給部24から光硬化性インク(以下、単に「インク」ということがある)が供給される。供給されたインクはノズル23の下端に設けられた吐出口から吐出され、凹版Pの版面Paに塗布される。
【0020】
光硬化性インクは、顕色剤としての顔料、重合により強固なポリマー層を構成するポリマー材料(モノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方を含む)、および光照射を受けて化学変化することで生じる活性種によりポリマー材料の重合反応を促進する光重合開始剤を含むものである。
【0021】
ノズル23のY1方向側に本充填用として機能する第1ブレード機構21が設けられるとともにY2方向側に仮充填用として機能する第2ブレード機構22が設けられている。第1ブレード機構21に設けられるドクターブレードにより本充填処理が実行され、第2ブレード機構22に設けられるドクターブレードにより仮充填処理が実行される。これら2種類の充填処理を行うことでインク固着を防止しつつ凹版Pの版面Paに設けられた凹部Pbにインクが充填される一方、それ以外の余剰インクが除去されてインクパターンが形成される。なお、スキージユニット2の構成および動作については後で詳述する。
【0022】
こうしてインクが充填された凹版Pは、さらにY2方向に移動して転写ユニット3の配設位置に到達する。図1および図2に示すように、転写ユニット3は、ブランケットロール30と、ブランケットロール30を回転させるロール回転部33と、ブランケットロール30をY方向に移動させるロール水平移動部34(図3)とを備えている。より詳しくは、ブランケットロール30は、例えば金属製の円筒であるブランケット胴31と、その表面に巻き付けられたブランケット32とを備えており、全体として概略円筒形状をなしている。ブランケットロール30は、図示しないフレームにより回転自在に支持されており、制御装置900により制御されるロール回転部33により、図1に一点鎖線で示す中心軸回りに回転駆動される。
【0023】
ブランケット32は弾性を有する樹脂材料、例えばシリコン樹脂製であり、その表面にインクパターンを担持可能である。ブランケット32はボトルBの側面BaであるボトルBの表面に生じ得る凹凸よりも十分に大きな厚さを有している。図2に示すように、ステージ11に載置された凹版Pがブランケットロール30の直下位置を通過するとき、ブランケット32の表面が凹版Pの上面に当接する。このとき、凹版Pの凹部に充填されているインクがブランケット32の表面に移行する。こうして凹版P上のインクパターンがブランケット32に受理される。
【0024】
こうしていったんブランケット32に受理(一次転写)されたインクパターンは、最終的な被転写体であるボトルBの表面に二次転写される。このように、ブランケット32は、ボトルBの側面Baに最終転写されるインクパターンを一時的に担持する中間転写体として機能するものである。なお、本実施形態では、2つの印刷装置101、102が装備されて2種類のインクパターンを形成する。
【0025】
このように構成された印刷システム100では、制御装置900によってボトル搬送装置400が制御されることで、ボトル保持装置300がボトル着脱ステーション、第1の印刷装置101、第2の印刷装置102および本硬化装置200の順序で循環搬送される。このうちボトル着脱ステーションでは、搬送されてきたボトル保持装置300に対し、オペレータがボトルBの着脱作業をマニュアルで行う。つまり、ボトル保持装置300に印刷済のボトルBが装着されている場合、ボトル保持装置300でのボトルBの保持を解除して印刷済のボトルBをボトル保持装置300から取り外す。一方、ボトル保持装置300に対して印刷前のボトルBが未装着の場合には、オペレータは印刷前のボトルBをボトル保持装置300に運び込み、ボトル保持装置300により保持させる。こうしてボトルBの装着操作が完了し、その旨を操作パネルなどの入力装置(図示省略)に入力すると、それを受け取った制御装置900はボトルBを保持したボトル保持装置300を第1の印刷装置101に搬送して印刷処理を行う。
【0026】
この印刷処理は、制御装置900が予め記憶されたプログラムを実行し装置各部に所定の動作を実行させることにより実現される。この印刷処理では、凹版Pが第1の印刷装置101に搬入されてステージ11にセットされ、アライメント調整を受ける。一方、第1の印刷装置101に搬送されてきたボトル保持装置300では、制御装置900からの駆動指令に応じてモータ(図示省略)が作動を開始し、ボトルBが回転対称軸まわりに回転させる。その回転中にボトルBの印刷開始位置を検出し、検出結果に基づいてボトルBの回転量を調整することで当該印刷開始位置が印刷装置101と対向するようにボトルBが位置決めされる。なお、この位置決め処理については、凹版Pのアライメント調整処理と同様にカメラによるボトルBを撮像して得られる画像に基づいて行ってもよいし、ボトルBの特定部位をセンサで検出することでセンサから出力される検出信号に基づいて行ってもよい。いずれにしても、本実施形態では、凹版Pのアライメント調整処理と並行して、印刷装置101に対するボトルBの位置決め処理を自動的に行っている。もちろん、ボトルBの位置決め処理を次に説明する印刷装置101でのインクパターンの受理処理と並行して行うように構成してもよい。
【0027】
続いて、第1の印刷装置101のステージ11がY1方向に移動を開始し、凹版Pの版面Paにスキージユニット2のノズル23から光硬化性インクが塗布され、第1ブレード機構21のドクターブレードにより余剰インクが掻き取られることで、版面Paの凹部Pbにインクが充填される。ステージ11がさらに移動し、回転するブランケットロール30の直下位置を通過することで、凹版Pに形成されたインクパターンがブランケット32の表面に受理される。その後で、ボトル保持装置300がY1方向に移動し、ボトルBの側面Baの印刷開始位置をブランケット32の表面に押し当てる。これにより、ブランケット32からボトルBへのインクパターンの転写が開始される。この転写処理では、インクパターンを受理しているブランケット32とボトルBとが当接しながら互いにウィズ回転することにより、ブランケット32表面のインクパターンが順次ボトルBに転写されてゆく。
【0028】
ここで、ボトルBの胴部Bbはバックアップローラ(図示省略)に当接しており、ボトルBの回転に伴いインクパターンがバックアップローラとの当接位置に到達すると、未硬化のインクがボトルBからバックアップローラに転写されることがある。また、ボトルBが1周以上回転する場合、ボトルBの側面Baのインクパターンがブランケット32に再転写されてしまうことがある。これらはボトルBの側面Baのインクパターンを乱すとともに、ブランケット32やバックアップローラをインクにより汚染することになる。
【0029】
この問題を防止するために、比較的低露光量の紫外線照射による仮硬化処理が行われる。すなわち、ブランケット32からインクパターンの転写を受けた直後のボトルBの表面に向けて、仮硬化ユニット4から光(紫外線)が照射される。後述するように、仮硬化ユニット4から照射される光は、インクに含まれるポリマー材料の一部を重合させることでインクの粘度を増大させるが、インク全体を硬化させるには至らない性質を有するものである。
【0030】
こうしてインクの粘度が増大することで他の物体への付着性が低下し、インクを担持するボトルBの側面Baがバックアップローラまたはブランケット32に接触したときにインクがこれらに転写されてしまうことが防止される。
【0031】
印刷装置101での印刷処理が完了すると、上記インクパターンが印刷されたボトルBを保持したままボトル保持装置300は第1の印刷装置101から第2の印刷装置102に搬送される。そして、第2の印刷装置102により、第1の印刷装置101と同様にして、印刷処理が行われる。これによって、既に印刷されたインクパターンの上に第2の印刷装置102による別のインクパターンが重ね合わせて印刷される。その後で、これらのインクパターンが印刷されたボトルBを保持したままボトル保持装置300は第2の印刷装置102から本硬化装置200に搬送される。
【0032】
この時点ではインクは完全に硬化していない。これを完全に硬化させるために本硬化装置200は仮硬化ユニット4よりも大出力の光(紫外線)をボトルBに照射する。これによって、インクが完全に硬化して印刷を完了する。その後で、ボトルBを保持したままボトル保持装置300は本硬化装置200から着脱ステーションに戻される。このような一連の動作が繰り返して実行される。
【0033】
次に、スキージユニット2の構成について図4および図5を参照しつつ説明した後で、スキージユニット2の動作について図6および図7A図7Hに参照しつつ説明する。
【0034】
図4図1に示す印刷装置に装備されるスキージユニットの正面図であり、スキージユニット2全体をY1方向側からY2方向に向かって見た図である。また、図5はスキージユニットを構成するスキージヘッドの側面図であり、後で詳述するように本充填処理を行う時のブレード姿勢を示している。スキージユニット2は、スキージヘッド2Hと、スキージヘッド2Hを上下方向Zに昇降するヘッド昇降部2Eとを備えている。
【0035】
スキージヘッド2Hは、ヘッド本体20と、第1ブレード機構21と、第2ブレード機構22と、ノズル23と、インク供給部24とを有している。一方、ヘッド昇降部2Eは、上下方向Zに延設されたレール25、25と、支持プレート26、26と、エアシリンダ27、27と、連結部材28、28とを有している。
【0036】
Z方向に延設されたレール25、25は、図4に示すように、ヘッド本体20のX方向サイズよりも若干狭い間隔でX方向に互いに離間して固定配置されている。これらのレール25、25に沿ってヘッド本体20は上下方向Zに昇降自在となっている。このヘッド本体20のX1方向側およびX2方向側には、支持プレート26、26がそれぞれ固定配置されている。各支持プレート26、26のY1方向側の平面には、エアシリンダ27が取り付けられている。各エアシリンダ27は連結部材28を介してヘッド本体20と連結されている。そして、制御装置900からの下降指令に応じて各エアシリンダ27が連結部材28をZ2方向に移動させると、図4図7Aなどに示すようにスキージヘッド2Hは凹版Pの版面Paの直上位置(以下「ヘッド下降位置H2」という)に位置決めされる。このとき、版面Paが上下方向Zにおいて掻き取り高さ位置(図7Aの符号H1)に位置するようにステージ11は位置決めされている。
【0037】
逆に、制御装置900からの上昇指令に応じて各エアシリンダ27が連結部材28をZ1方向に移動させると、図7Dなどに示すようにスキージヘッド2Hはブランケットロール30の最も高い位置(以下「ブランケット上限位置H4」という)よりも高い位置(以下「ヘッド上昇位置H5」という)に位置決めされる。このようにヘッド昇降部2Eにより上下方向Zにおいてスキージヘッド2Hが移動される距離を「ヘッド昇降距離DH」と称する。なお、本実施形態では、ヘッド昇降部2Eはエアシリンダ27、27を昇降駆動源として用いているが、その他の昇降駆動源、例えばモータを用いてもよい。
【0038】
このように昇降駆動されるヘッド本体20のY1方向側には第1ブレード機構21およびインク供給部24が取り付けられる一方、Y2方向側には第2ブレード機構22が取り付けられている。また、ヘッド本体20の下端部には、4本のノズル23が吐出口を下方に向けた状態でX方向に配設されている。
【0039】
インク供給部24は4本のシリンジ241を有している。各シリンジ241では、上端部が図示を省略するインクタンクと接続されるとともに下端部がチューブ242を介してノズル23と接続されている。このため、図7Aに示すように凹版Pを保持するステージ11が所定のインク供給位置PY3に位置決めされた状態で制御装置900からの指令に応じて全シリンジ241が作動すると、比較的高い粘性を有するインク(図7A中の符号IK)がノズル23の吐出口から下方に向けて吐出され、凹版Pの版面Paに供給される。
【0040】
版面Paに供給されたインクを凹部Pbに充填させてインクパターンを形成する、いわゆる本充填ために第1ブレード機構21が設けられるとともに、後で説明するように受理処理後の仮充填のために第2ブレード機構22が設けられている。これら第1ブレード機構21および第2ブレード機構22はヘッド本体20を挟んでほぼ対称な構成を有している。そこで、以下においては、第1ブレード機構21の構成について説明し、第2ブレード機構22の構成について相当符号を付して構成説明を省略する。
【0041】
第1ブレード機構21は、本充填用のドクターブレード211と、ブレード昇降部212と、インク受け部材213と、移動機構部214とを有している。ドクターブレード211は、図5において先端部211aが斜め左下方向に延びる姿勢(以下「本充填姿勢」という)でブレード昇降部212によりヘッド本体20に対して上下方向Zに昇降される。すなわち、ブレード昇降部212では、ヘッド本体20のY1方向側に取り付けられたレール212aに対してスライダ212bが上下方向Zに移動自在に設けられている。このスライダ212bに対し、ブレード支持部材212cの上端部が固定されている。ブレード支持部材212cはZ2方向に延設され、その下端部からZ2方向にドクターブレード211が本充填姿勢で取り付けられている。このようにブレード昇降部212は、ドクターブレード211を本充填姿勢を維持したまま上下方向Zに移動自在に支持している。
【0042】
また、ブレード昇降部212は、ドクターブレード211を上下方向Zに移動するための駆動源としてエアシリンダ212dを有している。エアシリンダ212dはピストン部212eをZ2方向に向けた状態でシリンダ支持部材(図示省略)によりヘッド本体20に固定されている。ピストン部212eは連結部材212fによってブレード支持部材212cの上端部と連結されている。このため、図5に示すように制御装置900からの指令に応じてエアシリンダ212dのピストン部212eが下方に伸張すると、ドクターブレード211は本充填姿勢のまま下方位置に位置決めされる。このようにエアシリンダ212dによりドクターブレード211が上下方向Zにおいて移動される距離を「ブレード昇降距離DB」と称する。
【0043】
インク受け部材213はX方向に延設された皿形状を有しており、移動機構部214に支持されながらドクターブレード211の直下位置(図7A図7F等)と当該直下位置からY1方向側に離間した離間位置(図7B図7C等)との間で移動される。インク受け部材213のX方向サイズはドクターブレード211のそれよりも長く、インク受け部材213のX方向の両端部がそれぞれ移動機構部214の揺動プレート214a、214aの下方端部で支持されている。各揺動プレート214a、214aは図5において紙面側(X1方向側)から見て略右角括弧(right angle bracket)形状を有している。そして、各揺動プレート214a、214aの上端部はヘッド本体20からY1方向に突設された突起部に対してX方向と平行に伸びる揺動軸AX(図4)まわりに揺動自在となっている。
【0044】
本実施形態では、揺動プレート214a、214aに対して外力が作用していない間、インク受け部材213をドクターブレード211の直下位置に位置させた状態で揺動プレート214a、214aは静止する(図5において第2ブレード機構22の揺動プレート224a、224a参照)。一方、揺動プレート214a、214aに対して外力が作用すると、それに応じて揺動プレート214a、214aは揺動する。より具体的には、本実施形態では、ブレード支持部材212cの下端部からY1方向にカムとして機能するローラ212gが回転自在に取り付けられている。また、揺動プレート214aのY2方向側の側面にローラ212gに向けて突出したカムフォロア部位214bが設けられている。このため、ドクターブレード211がZ2方向に下降すると、ローラ212gの周面がカムフォロア部位214bに摺接しながら揺動プレート214aを矢印R1に揺動させる。これによって、インク受け部材213がドクターブレード211の直下位置から離間位置に移動する。逆に、ドクターブレード211がZ2方向に上昇すると、揺動プレート214aは矢印R1と反対の方向に揺動され、インク受け部材213が離間位置からドクターブレード211の直下位置に移動する。このように、移動機構部214はブレード昇降部212によるドクターブレード211の昇降に連動してインク受け部材213を直下位置と離間位置との間で往復移動させる。
【0045】
図6はブランケットロール、ステージおよびスキージユニットの動作を示すフローチャートである。また、図7A図7Hは充填処理および仮充填処理におけるスキージユニットの動作を模式的に示す図である。各印刷装置101、102において印刷動作を開始する際には、凹版Pが載置されたステージ11は、図7Aに示すように、インク供給位置PY3に移動される(ステップS21)。また、当該ステージ移動と同時あるいは前後して凹版Pの版面Paが上下方向Zにおいて掻き取り高さ位置H1に位置するようにステージ11は下降される(矢印M1)。
【0046】
スキージユニット2では、ステージ11の下降に同期してヘッド昇降部2Eが作動し、矢印M2で示すようにスキージヘッド2Hをヘッド上昇位置H5からヘッド下降位置H2に下降させる(ステップS31)。それに続いて、インクIKが各ノズル23から吐出されて版面Paに供給される(ステップS32)。これによりインク溜りが版面Pa上に形成される。
【0047】
インク供給が完了すると、ステージ11は、図7B中の矢印M3に示すように、インク供給位置PY3から本充填開始位置PY4に移動する(ステップS22)。これによって、インク溜りはドクターブレード211の直下位置からY1方向側に位置する。
【0048】
スキージユニット2では、ステージ11の本充填開始位置PY4への移動完了後に、ブレード昇降部212により本充填用のドクターブレード211が下降され(矢印M4)、ドクターブレード211の先端部211a(図5)がインク溜りのY2方向側で版面Paと当接する(ステップS33)。また、ドクターブレード211の下降に連動してインク受け部材213は離間位置に移動する(矢印M5)。
【0049】
こうして本充填準備が完了すると、図7C中の矢印M6に示すように、ステージ11は本充填開始位置PY4(点線位置)から本充填完了位置PY1に移動する(ステップS23)。すなわち、ドクターブレード211の先端部211aを版面Paに押圧した状態でドクターブレード211が凹版Pに対してY1方向に相対移動されることで版面Pa上のインクIKを掻き取るとともに版面Paに設けられる凹部Pb(図1)にインクIKを充填する。これによって、インクパターンIKPが凹版Pに形成される(本充填処理)。
【0050】
次に、受理処理に移行するために、ドクターブレード211を凹版Pの版面Paの上方に退避させる必要がある。しかしながら、本充填処理直後においてはドクターブレード211の先端部211aにはインクIKが付着しており、その状態のままドクターブレード211を上昇させると、インクIKの糸引きが発生することがある。糸引きを発生させたまま印刷処理を続けると、ドクターブレード211の周辺構成を汚染してしまう可能性がある。また、糸引きを発生させたままインク受け部材213を直下位置に戻すと、インク受け部材213にインクIKが付着してしまう。
【0051】
そこで、本実施形態では、スキージユニット2においてブレード昇降部212によりドクターブレード211を上昇させる前に、図7D中の矢印M7で示すように、ヘッド昇降部2Eによってスキージヘッド2Hを大きく上昇させている。より詳しくは、インク受け部材213を離間位置に位置させたままブレード昇降部212はスキージヘッド2Hをヘッド下降位置H2からヘッド昇降距離DHだけ上昇させ、ヘッド上昇位置H5に位置決めする(ステップS34)。このスキージヘッド2Hの上昇移動中にインクIKの糸引きは解消され、またインク受け部材213の汚染も回避される。
【0052】
上記スキージヘッド2Hの上昇に同期して、版面Paが受理高さ位置H3に位置するようにステージ11は上昇される(ステップS24:矢印M8)。ここで、受理高さ位置H3とは、上下方向ZにおいてインクパターンIKPがブランケット32の最下限位置と一致あるいは若干高い位置となり、ブランケット32への受理が実行可能となる版面Paの高さ位置を意味している。
【0053】
こうして、受理処理の準備が完了すると、ロール回転部33によりブランケットロール30の回転が開始される(ステップS11)とともに、それに同期してブランケットロール30の直下位置、つまり受理開始位置に向けてのステージ11の移動を開始する(ステップS25)。そして、図7Eに示すように、ステージ11のY2方向への移動(矢印M9)により凹版Pが受理開始位置を通過する間に、インクパターンIKPが版面Paからブランケット32に一次転写される(受理処理)。そして、ステージ11の受理完了位置(図示省略)への移動(ステップS26)と同期してブランケットロール30の回転が停止される(ステップS12)。
【0054】
受理処理を実行している間に、スキージユニット2においては、図7E中の矢印M10で示すようにブレード昇降部212によりドクターブレード211がブレード昇降距離DBだけ上昇される(ステップS35)。また、これに連動してインク受け部材213が離間位置から直下位置に移動される(矢印M11)。こうしてスキージヘッド2Hは初期状態に戻され、待機中にドクターブレード211の先端部211aから滴下してくるインクIKを受け止めてインクIKによる汚染を効果的に防止することができる。
【0055】
受理処理完了後においては、ブランケットロール30が受理したインクパターンIKPのボトルBへの転写(ステップS13、S14)から独立して仮充填処理が実行される(ステップS27~S29、S36~S39)。ステージ11は、図7Fに示すように、受理高さ位置H3から掻き取り高さ位置H1に下降する(ステップS27:矢印M12)とともにY1方向に移動されて仮充填開始位置PY2に位置決めされる(ステップS28:矢印M13)。この「仮充填開始位置PY2」は版面PaのY1方向端部が仮充填用のドクターブレード221の直下位置に位置するときのステージ11の位置を意味している。
【0056】
一方、スキージユニット2においては、ステージ11の下降に同期してヘッド昇降部2Eが作動し、矢印M14で示すようにスキージヘッド2Hをヘッド上昇位置H5からヘッド下降位置H2に下降させる(ステップS36)。また、ステージ11の仮充填開始位置PY2への位置決め完了後に、仮充填用のブレード昇降部222により仮充填用のドクターブレード221が下降され(矢印M15)、ドクターブレード221の先端部221a(図5)が版面Paと当接する(ステップS37)。また、ドクターブレード221の下降に連動してインク受け部材223は離間位置に移動する(矢印M16)。
【0057】
こうして仮充填準備が完了すると、図7G中の矢印M17に示すように、ステージ11は仮充填開始位置PY2(点線位置)から仮充填完了位置PY5に移動する(ステップS29)。すなわち、ドクターブレード221の先端部221aを版面Paに押圧した状態でドクターブレード221が凹版Pに対してY2方向に相対移動されることで版面Pa上のインクIKを凹部Pb(図1)にインクIKを送り込んで凹部Pbに残留するインクIKが乾燥固着するのを防止する(仮充填処理)。
【0058】
仮充填処理の完了後においては、本充填処理後と同様にしてスキージヘッド2Hを初期状態に戻す。つまり、スキージユニット2において、図7G中の矢印M18で示すように、ヘッド昇降部2Eによってスキージヘッド2Hをヘッド下降位置H2からヘッド昇降距離DHだけ上昇させ、ヘッド上昇位置H5に位置決めする(ステップS38)。このスキージヘッド2Hの上昇移動中にインクIKの糸引きは解消され、またインク受け部材223の汚染も回避される。それに続いて、図7H中の矢印M19で示すようにブレード昇降部222によりドクターブレード221がブレード昇降距離DBだけ上昇される(ステップS39)。また、これに連動してインク受け部材223が離間位置から直下位置に移動され(矢印M20)、ドクターブレード221の先端部221aから滴下してくるインクIKを受け止めてインクIKによる汚染を効果的に防止することができる。
【0059】
上記した一連の動作が繰り返されてボトルBへの印刷が連続的に行われる。
【0060】
以上のように、本実施形態では、本充填処理直後のドクターブレード211および仮充填処理直後のドクターブレード221を2段階で上昇させている。その第1段階目においては、比較的長いヘッド昇降距離DHだけ移動させているため、上昇直後に糸引きが発生したとしても、上昇途中で糸引きを強制的に解消することができる。そのため、糸引きによる汚染を確実に防止することができる。
【0061】
また、第1段階目の上昇はインク受け部材213、223を離間位置に位置決めしたまま実行されるため、糸引きによるインク受け部材213、223の汚染も確実に防止することができる。
【0062】
また、単に糸引きを解消することだけに着目すると、各ドクターブレード211、221の上昇完了後に糸引きが解消されるのを待ってもよいが、その待ち時間の分だけ印刷タクトの増大を招いてしまう。これに対し、本実施形態ではドクターブレード211、221の上昇途中で糸引きを解消しているため、印刷タクトの悪化を確実に防止することができる。
【0063】
また、ドクターブレード211、221の上昇途中での糸引き解消を図るために、ブレード昇降距離DBを長くすることが考えられる。しかしながら、ドクターブレード211、221をそれぞれ個別に昇降させる必要があるため、ブレード昇降部212、222のいずれについても、駆動源たるエアシリンダのピストンストロークを長く設定する必要がある。そのため、スキージヘッド2Hの大型化および重量化が避けられない。これに対し、本実施形態では、ドクターブレード211、221の上昇距離、つまりブレード昇降距離DB短く設定する一方で、両ドクターブレード211、221を大きく上昇させるために共通のヘッド昇降部2Eを用いている。このため、スキージヘッド2Hの小型軽量化を図ることができ、ドクターブレード211、221の動作速度を高めることができる。
【0064】
また、上記実施形態では、ドクターブレード211、221の昇降に連動してインク受け部材213、223を移動させるように構成している。このため、簡易な構成で、しかも適切なタイミングでインク受け部材213、223を移動させることができ、ドクターブレード211、221の先端部211a、221aから滴下されるインクIKを確実に回収することができる。
【0065】
以上説明したように、上記実施形態においては、ドクターブレード211、221がそれぞれ本発明の「第1ブレード」および「第2ブレード」の一例に相当している。また、Y方向、Y1方向およびY2方向がそれぞれ本発明の「横方向」、「第1水平方向」および「第2水平方向」に相当している。また、ブレード昇降部212、222がそれぞれ本発明の「第1ブレード昇降部」および「第2ブレード昇降部ブレード」の一例に相当している。また、インク受け部材213、223がそれぞれ本発明の「第1受け部材」および「第2受け部材」の一例に相当している。また、ドクターブレード211、221の直下位置がそれぞれ本発明の「第1直下位置」および「第2直下位置」に相当している。また、移動機構部214、224がそれぞれ本発明の「第1移動機構部」および「第2移動機構部」の一例に相当している。また、インク供給部24が本発明の「供給部」の一例に相当している。また、インクIKおよびインクパターンIKPがそれぞれ本発明の「印刷材料」および「印刷パターン」の一例に相当している。さらに、ボトルBが本発明の「被転写体」の一例に相当している。
【0066】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、本充填および仮充填を行う印刷装置に対して本発明を適用しているが、本充填のみを実行する印刷装置および当該印刷装置に装備される凹版印刷用スキージ装置に対しても本発明を適用することができる。
【0067】
また、ボトルBにインクパターンIKPを印刷する印刷装置に適用しているが、その他の立体基材ならびに平板基材(ガラス板、樹脂フィルム等)を被転写体とする凹版印刷技術にも本発明を適用することができる。
【0068】
また、本実施形態では、ブランケットロール30を中間転写体として使用した印刷装置に本発明を適用しているが、その他の凹版印刷装置に対しても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
この発明は、凹版の版面に付着する印刷材料を掻き取るとともに版面に設けられる凹部に印刷材料を充填する凹版印刷用スキージ装置全般および当該装置を用いた印刷装置全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
2…スキージユニット(凹版印刷用スキージ装置)
2E…ヘッド昇降部
2H…スキージヘッド
11…ステージ
20…ヘッド本体
21…第1ブレード機構
22…第2ブレード機構
23…ノズル
24…インク供給部
101…第1の印刷装置
102…第2の印刷装置
211,221…ドクターブレード
211a,221a…(ドクターブレードの)先端部
212,222…ブレード昇降部
214,224…移動機構部
B…ボトル(被転写体)
DH…ヘッド昇降距離
IK…インク(印刷材料)
IKP…インクパターン(印刷パターン)
P…凹版
Pa…版面
Pb…凹部
Z…上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H