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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】実装ライン、実装ラインの基板検査方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/08 20060101AFI20230519BHJP
【FI】
H05K13/08 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019177106
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021057392
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 恒太
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/064774(WO,A1)
【文献】特開2014-029945(JP,A)
【文献】特開2012-064831(JP,A)
【文献】特開2016-219608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装ラインであって、
少なくとも2台以上の表面実装機と、
検査機とを含み、
前記表面実装機は、
ヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットに昇降可能に支持された実装ヘッドと、
カメラと、
検査条件を満たした場合、基板に対する部品の実装状態を、前記カメラを用いて検査する検査処理を実行する検査部と、を備え、
検査条件は、検査機からの指示以外でも前記検査処理を実行する他の検査条件を含み、
前記検査部は、前記検査機からの指示以外の条件を満たした場合、前記検査処理を実行し、
前記検査機は、前記実装ラインの最下流に位置し、上流の前記表面実装機により生産された基板を検査し、
前記検査機は、基板に異常があった場合、前記検査処理を実行するべき表面実装機を指定して、検査指示を送る、実装ライン。
【請求項2】
実装ラインであって、
少なくとも2台以上の表面実装機と、
検査機とを含み、
前記表面実装機は、
ヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットに昇降可能に支持された実装ヘッドと、
カメラと、
検査条件を満たした場合、基板に対する部品の実装状態を、前記カメラを用いて検査する検査処理を実行する検査部と、を備え、
検査条件は、検査機からの指示以外でも前記検査処理を実行する他の検査条件を含み、
前記検査部は、前記検査機からの指示以外の条件を満たした場合、前記検査処理を実行し、
前記検査機は、前記実装ラインの最下流に位置し、上流の前記表面実装機により生産された基板を検査し、
前記表面実装機は、自機よりも上流に位置する表面実装機又は前記検査機から検査対象の搭載点だけを指定して検査指示を受けた場合、検査対象の搭載点が自機の作業対象であるか否かを判断し、作業対象である場合、前記検査処理を実行する、実装ライン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の実装ラインであって、
前記カメラは、前記ヘッドユニットに取り付けられたマーク認識用のヘッドカメラである、実装ライン
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の実装ラインであって、
前記他の検査条件は、
生産条件に関するデータの変更及びオペレーション作業の実行を少なくとも含み、
前記検査部は、生産条件に関するデータの変更又はオペレーション作業の実行のいずれかを検知した場合、前記検査処理を実行する、実装ライン
【請求項5】
請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の実装ラインであって、
前記他の検査条件は、
部品の実装に使用される機器の異常を含み、
前記検査部は、部品の実装に使用される機器の異常を検知した場合、前記検査処理を実行すると共に、自機よりも下流側の表面実装機に検査指示を送る、実装ライン
【請求項6】
実装ラインの基板検査方法であって、
前記実装ラインは、
少なくとも2台以上の表面実装機と、
検査機とを含み、
前記表面実装機は、
ヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットに昇降可能に支持された実装ヘッドと、
カメラと、
検査条件を満たした場合、基板に対する部品の実装状態を、前記カメラを用いて検査する検査処理を実行する検査部と、を備え、
検査条件は、検査機からの指示以外でも前記検査処理を実行する他の検査条件を含み、
前記検査部は、前記検査機からの指示以外の条件を満たした場合、前記検査処理を実行し、
前記検査機は、前記実装ラインの最下流に位置し、上流の前記表面実装機により生産された基板を検査し、
前記検査機は、基板に異常があった場合、前記検査処理を実行するべき表面実装機を指定して、検査指示を送る、実装ラインの基板検査方法。
【請求項7】
実装ラインの基板検査方法であって、
実装ラインは、
少なくとも2台以上の表面実装機と、
検査機とを含み、
前記表面実装機は、
ヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットに昇降可能に支持された実装ヘッドと、
カメラと、
検査条件を満たした場合、基板に対する部品の実装状態を、前記カメラを用いて検査する検査処理を実行する検査部と、を備え、
検査条件は、検査機からの指示以外でも前記検査処理を実行する他の検査条件を含み、
前記検査部は、前記検査機からの指示以外の条件を満たした場合、前記検査処理を実行し、
前記検査機は、前記実装ラインの最下流に位置し、上流の前記表面実装機により生産された基板を検査し、
前記表面実装機は、自機よりも上流に位置する表面実装機又は前記検査機から検査対象の搭載点だけを指定して検査指示を受けた場合、検査対象の搭載点が自機の作業対象であるか否かを判断し、作業対象である場合、前記検査処理を実行する、実装ラインの基板検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面実装機に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の実装ラインは、基板に部品を実装する実装作業を分担して行うため、複数の表面実装機を有する場合がある。こうした実装ラインは、生産した基板の良否を検査するため、検査機を有する場合がある。下記特許文献1には、検査機で不良が検出された場合、検査機からの指令に基づいて、実装機にて対象ポイントを撮影し、得られた画像から不良を特定する点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4896655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検査機からの指示以外でも検査処理を実行することで、不良基板の発生を抑えることが求められていた。
本発明は不良基板の生産を抑えることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の表面実装機は、ヘッドユニットと、前記ヘッドユニットに昇降可能に支持された実装ヘッドと、カメラと、検査条件を満たした場合、基板に対する部品の実装状態を、前記カメラを用いて検査する検査処理を実行する検査部と、を備え、検査条件は、検査機からの指示以外でも前記検査処理を実行する他の検査条件を含み、前記検査部は、前記検査機からの指示以外の条件を満たした場合、前記検査処理を実行する。
【0006】
この構成では、検査機からの指示以外でも検査処理を実行することで、不良基板の発生を抑えることが出来る。つまり、生産された不良基板を検査機で検査する前でも、不良基板を検出できる確率が高くなるため、不良基板の発生を抑制することが出来る。
【0007】
前記表面実装機の一実施態様として、前記カメラは、前記ヘッドユニットに取り付けられたマーク認識用のヘッドカメラである。ヘッドカメラを利用して検査を行うので、追加コストが発生しないメリットがある。
【0008】
前記表面実装機の一実施態様として、前記他の検査条件は、生産条件に関するデータの変更及びオペレーション作業の実行を少なくとも含み、前記検査部は、生産条件に関するデータの変更又はオペレーション作業の実行のいずれかを検知した場合、前記検査処理を実行する。この構成では、生産条件に関するデータの変更ミスなどによる不良基板の発生を抑制できる。また、オペレーション作業のミスによる不良基板の発生を抑制できる。
【0009】
前記表面実装機の一実施態様として、前記他の検査条件は、部品の実装に使用される機器の異常を含み、前記検査部は、部品の実装に使用される機器の異常を検知した場合、前記検査処理を実行すると共に、自機よりも下流側の表面実装機に検査指示を送ってもよい。この構成では、部品の実装に使用される機器に異常があった場合にも、検査処理を行うことで、不良基板の発生を抑制することが出来、高品質な生産が可能である。また、表面実装機は、自機よりも下流側の表面実装機に検査指示を出すことで、異常を検知する前に生産された基板の良否を遡って検査することが出来る。
【0010】
上記の表面実装機は、上記の表面実装機を少なくとも1台以上含む、実装ラインに適用することが出来る。この構成では、不良基板の発生が少ない実装ラインを構築することが出来る。
【0011】
前記実装ラインの一実施態様として、検査機を含み、前記検査機は、基板に異常があった場合、前記検査処理を実行するべき表面実装機を指定して、検査指示を送ってもよい。検査処理の実行を必要なマシン(表面実装機)に制限することが出来るので、タクトロスを少なくすることが出来る。また、検査結果のデータ量を減らすことが出来る。
【0012】
前記実装ラインの一実施態様として、前記表面実装機は、自機よりも上流に位置する表面実装機又は検査機から検査指示を受けた場合、前記検査処理を実行するべきか否かを判断し、検査が必要であると判断した場合、前記検査処理を実行する。検査処理の実行を必要なマシン(表面実装機)に制限することが出来るので、タクトロスを少なくすることが出来る。また、検査結果のデータ量を減らすことが出来る。
【0013】
本発明は表面実装機の基板検査方法であって、前記表面実装機は、ヘッドユニットと、前記ヘッドユニットに昇降可能に支持された実装ヘッドと、カメラと、を備え、検査条件は、検査機からの指示以外でも前記検査処理を実行する他の検査条件を含み、前記検査機からの指示以外の条件を満たした場合、前記基板に対する部品の実装状態を、前記カメラを用いて検査する検査処理を実行する。この方法は、検査機からの指示以外でも検査処理を実行することで、不良基板の発生を抑えることが出来る。つまり、生産された不良基板を検査機で検査する前でも、不良基板を検出できる確率が高くなるからである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検査機からの指示以外でも検査処理を実行することで、不良基板の発生を抑えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実装ラインの構成図
図2】基板の平面図
図3】表面実装機の平面図
図4】ヘッドユニットの側面図
図5】実装ヘッドの断面図
図6】表面実装機のブロック図
図7】検査処理が実行される事象を示す図
図8】検査処理が実行される事象を示す図
図9】検査処理が実行される事象を示す図
図10】モード判定フローを示す図
図11】検査モードの処理内容を示す図
図12】実施形態2のモード判定フローを示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて、説明する。
1.実装ラインの構成
図1は実装ラインSのライン構成図である。実装ラインSは、複数の表面実装機11と、検査機13と管理装置15から構成されている。この例では、表面実装機は11A~11Cの3台である。以下、マシンとは、表面実装機11又は検査機13を指すものとする。
【0017】
3台の表面実装機11A、11B、11Cは、搬送コンベア32によって、直列に接続されている。作業対象の基板Pは、3台の表面実装機11A、11B、11Cに順々に搬送され、各表面実装機11A、11B、11Cにて部品Bの実装作業を分担して実行するようになっている。この例では、基板Pの搬送方向は右方向であり、図1の左側が上流側、図1の右側が下流側である。尚、図中、1台目の表面実装機11Aにて、基板Pに多数の部品が搭載された状態となっているが、部品の搭載は、実際は、各表面実装機11A~11Cで段階的に行われる。図7~9も同様である。
【0018】
また。各表面実装機11A~11Cは、安全カバー60、表示パネル61、異常表示灯63を有している。
【0019】
検査機13は、実装ラインSの最下流に位置しており、生産された基板Pについて不良の有無を検査する。検査機13は、検査用のカメラを有している。
【0020】
不良の有無は、基板Pの画像から判断することが出来る。具体的には、搭載点Mにおける部品Bの有無、搭載点Mに対する部品Bのずれの大きさ、部品Bの傾きの大きさなどから判断することが出来る。図2は、基板Pの平面図である。図2の例では、基板P上に12個の部品B1~B12が搭載されている。搭載点Mは部品Bの搭載座標であり、一般的には、部品Bの中心と一致する。図2のM5、M6は、部品5と部品6の搭載点を示している。
【0021】
また、図1に示すように、各表面実装機11A~11C及び検査機13は、通信線14を介して通信可能に接続されており、実装ラインSを構成する他のマシンとの間で、データを送受信することが出来る。
【0022】
管理装置15は、実装ラインSを管理する装置である。管理装置15は、通信線14に接続されており、実装ラインSを構成する各マシンと通信することが出来る。
【0023】
管理装置15は、生産する基板Pや生産に使用する部品Bのデータなど生産計画の情報を記憶しており、各マシンに生産計画の情報を送信することが出来る。また、それ以外にも、生産状況に関するログを記憶することが出来る。
【0024】
2.表面実装機の構成
図3は、表面実装機11の平面図である。表面実装機11は、基台31と、搬送コンベア32と、ヘッドユニット33と、駆動部34と、フィーダ35を備える。搬送コンベア32は、作業対象の基板Pを、基台31上においてX方向に搬送する。
【0025】
駆動部34は、ヘッドユニット33を、基台31上において、平面方向(XY方向)に移動させる装置である。
【0026】
駆動部34としては、モータを駆動源とする2軸や3軸のボール螺子機構などを例示することが出来る。フィーダ35は、基板Pに実装する部品Bを供給する装置である。
【0027】
図4に示すように、ヘッドユニット33は、支持部材38に対してスライド可能に支持されており、複数本の実装ヘッド40を備えている。実装ヘッド40は、ヘッドユニット33に対して、昇降操作可能に支持されている。
【0028】
図5に示すように、実装ヘッド40は、ノズルシャフト41と、吸着ノズル45とを備える。ノズルシャフト41は、軸中心部にエアの供給経路42を有している。吸着ノズル45は、ノズルシャフト41の先端に取り付けられている。
【0029】
吸着ノズル45は、いわゆるバフィングノズルであり、ノズルホルダ46と、ノズル本体47と、ばね48と、を備える。ノズルホルダ46がシャフトホルダ43に突き当たることで、ノズルシャフト41に対して、吸着ノズル45が上下方向で位置決めされるようになっている。ノズル本体47は、ノズルホルダ46に対して出没可能に取り付けられている。ばね48は、ノズル本体47の外周に取り付けられており、ノズル本体47を突出方向に付勢する。
【0030】
エア源53に接続された負圧発生器51から供給経路42に負圧を供給することで、吸着ノズル45の先端に吸引力が生じ、部品Bを吸着保持することが出来る。また負圧の供給を停止することで、部品Bの保持を解くことが出来る。ノズルシャフト41には圧力センサ55が設置されており、負圧のレベルを検出することが出来る。
【0031】
ヘッドユニット33及び実装ヘッド40は、フィーダ35から供給される部品Bを、基台中央の作業位置にて、基板Pに実装する機能を果たす。
【0032】
表面実装機11は、基台カメラ37とヘッドカメラ36を有している。基台カメラ37は、図3に示すように、基台31上において撮影面を上方に向けて配置されている。基台カメラ37は、吸着ノズル45に保持された部品Bを下方から撮影する。
【0033】
基台カメラ37の画像から、吸着ノズル45に対する部品Bの吸着状態を検出することが出来る。つまり、基台カメラ37の画像から吸着ノズル45に対する部品Bの吸着位置のずれ量を検出することが出来る。また、吸着ノズル45に対する部品Bの吸着角度のずれ量を検出することが出来る。
【0034】
基台カメラ37により撮影した画像の認識結果(吸着位置のずれや吸着角度のずれ)に基づいて、基板Pに対する部品Bの位置や角度を補正することで、部品Bの搭載精度を高めることが出来る。
【0035】
ヘッドカメラ36は、図4に示すように、ヘッドユニット33の外側面において、撮影面を下方に向けて配置されている。ヘッドカメラ36は、作業位置に停止した基板Pの位置を認識するために設けられている。
【0036】
この例では、基板Pに付された位置マーク(フィデューシャルマーク)Fを画像認識することで、基板Pの位置を認識することが出来る。
【0037】
また、ヘッドカメラ36は、基板Pの検査用としても、使用することが出来る。これについては、後述する。
【0038】
図6は、表面実装機11の電気的構成を示すブロック図である。コントローラ100は、表面実装機11の制御装置である。
【0039】
コントローラ100は、CPU101とメモリ103とを有している。メモリ103には、基板Pの生産に必要なプログラムや情報が記憶されている。例えば、部品Bを実装するための実装プログラムが記憶されている。
【0040】
コントローラ100には、搬送コンベア32、駆動部34、基台カメラ37、ヘッドカメラ36、通信部105が接続されている。
【0041】
コントローラ100は、実装プログラムに従って駆動部34を制御することで、ヘッドユニット33を用いて実装処理を実行する。実装処理は、基板Pに対して部品Bを実装(搭載)する処理である。
【0042】
コントローラ100は、基台カメラ37により撮影された画像から、吸着ノズル45に保持された部品Bを画像認識することが出来る。また、ヘッドカメラ36により撮影された画像から基板Pを画像認識することが出来る。
【0043】
また、コントローラ100には、設定変更パネル106、異常停止スイッチ107、スタートスイッチ108が接続されている。
【0044】
設定変更パネル106は、オペレータが生産条件に関するデータの変更する操作パネルである。異常停止スイッチ107は、オペレータが表面実装機11を緊急停止するスイッチである。スタートスイッチ108は、オペレータが表面実装機11の稼働を開始するスイッチである。
【0045】
3.不良基板の発生防止
検査機13で基板Pの不良を検出した場合、検査機13から各表面実装機11A~11Cに対して検査指示を送り、不良の原因を特定することで、不良基板の生産(発生)を抑制することが出来る。
【0046】
しかし、不良基板の生産後、検査機13で不良を検出するまでには、タイムラグがあるため、検査機13だけの不良検査では、不良基板の発生数を充分に抑えられない懸念がある。
【0047】
表面実装機11A~11Cは、検査機13からの指示に加えて、検査機13からの指示以外でも、検査部であるコントローラ100にて、検査処理を実行することで、不良基板の発生を抑えることが出来る。
【0048】
具体的には、以下の(1)~(4)の場合、検査処理を実行する。
(1)オペレータが生産条件に関するデータの変更した場合である。生産条件に関するデータは、例えば、基板Pに部品Bを搭載する時の搭載条件やヘッドユニット33の制御条件が含まれる。搭載条件は、搭載時の実装ヘッド40の下降量や負圧を入り切りするタイミングなどが含まれる。また、制御条件は、搭載時のヘッドユニット33の移動速度などの条件である。
【0049】
データ変更は、オペレータが設定変更パネル106を介して実行する。そのため、コントローラ100は、設定変更パネル106の操作の有無から、生産条件に関するデータの変更の有無を検知することが出来る。
【0050】
コントローラ100は、生産条件に関するデータの変更を検知した場合、実装処理の終了後、検査処理を実行する。検査処理は、基板Pの画像をヘッドカメラ36で撮影し、その画像から、部品Bの実装状態の良否を検査する検査処理を実行する。
【0051】
例えば、図7に示すように、1目台目の表面実装機11Aにて、生産条件に関するデータ変更が行われた場合、データ変更が行われた表面実装機11Aにて、検査処理を実行する。このようにすることで、生産条件に関するデータの変更ミスなどによる、不良基板の発生を抑制できる。例えば、変更ミスなどによる実装不良を早期に検出し、その基板Pが下流機に送られることを抑制できる。また、誤った生産条件で、次の基板Pが生産されることを抑制できる。
【0052】
(2)オペレータが、検査対象のオペレーション作業を実行した場合である。検査対象のオペレーション作業は、基板Pの生産を一時中断して、表面実装機11の状態を確認する作業やメンテナンスする作業などである。オペレーション作業の実行により、実装済みの部品Bに手が触れて部品Bが動いたりする可能性がある。また、オペレーション作業で何らかのミスをする可能性があるので、不良の有無を検査することが望ましい。オペレーション作業の検知は、異常停止スイッチ107が操作されたか、否かにより判断できる。また、安全カバー60が設置されている場合、安全カバー60の開閉からでも、判断することが出来る。
【0053】
コントローラ100は、検査対象のオペレーション作業を検知した場合、実装処理の終了後、上記の検査処理を実行する。
【0054】
例えば、図7に示すように、1台目の表面実装機11Aにて、検査対象のオペレーション作業を検知した場合、検査対象のオペレーション作業を検知した表面実装機11Aにて、実装処理の終了後、検査処理を実行する。このようにすることで、オペレーション作業のミスによる不良基板の流出を抑制できる。例えば、作業ミスによる実装不良を早期に検出し、その基板Pが下流に送られることを抑制できる。また、作業ミスのあった状態で、次の基板Pが生産されることを抑制できる。
【0055】
(3)検査機13から検査指示が、表面実装機11に送信された場合である。検査機13は、不良基板を検出した場合、不良箇所を生産した表面実装機11に対して、検査指示を送ることができる。
【0056】
検査指示を受けた表面実装機11は、実装処理の終了後、上記の検査処理を実行する。
例えば、図8に示すように、検査機13から2台目の表面実装機11Bに対して、検査指示が送られた場合、検査指示を受けた2台目の表面実装機11Bは、実装処理の終了後、検査処理を実行する。このようにすることで、不良基板の発生原因を早期に特定し、不良基板Pが生産され続けることを抑制できる。
【0057】
(4)コントローラ100が、部品Bの実装に使用される機器の異常を検知した場合である。部品Bの実装に使用される機器は、例えば、実装ヘッド40(吸着ノズル含む)である。異常は、実装ヘッド40の負圧の異常や、部品Bの吸着異常が考えられる。負圧の異常は、圧力センサ55により検出することが出来る。吸着異常は、基台カメラ37による撮影される部品Bの画像から検知することが出来る。
【0058】
コントローラ100は、部品Bの実装に使用される機器の異常を検知した場合、実装処理の終了後、検査処理を実行する。このようにすることで、部品Bの実装に使用される機器の異常による基板の流出を抑制できる。例えば、機器の異常による実装不良を早期に検出し、その基板Pが下流に送られることを抑制できる。また、異常な機器を用いて基板Pの生産が継続されることを抑制できる。
【0059】
コントローラ100は、更に、下流側の表面実装機11に検査指示を送る。例えば、図9に示すように、1台目の表面実装機11Aで部品の実装に使用される機器の異常を検知した場合、1台目の表面実装機11Aのコントローラ100は、下流に位置する2台目の表面実装機11Bと、3台目の表面実装機11Cに対して検査指示を送る。
【0060】
検査指示を受けた2台目の表面実装機11Bと3台目の表面実装機11Cは、実装処理の終了後、検査処理を実行する。
【0061】
下流側の表面実装機11B、11Cに検査指示を出すことで、異常を検知する前に生産された基板Pの良否を遡って検査することが出来る。
【0062】
上記した(1)~(4)の4つの条件のうち、(1)、(2)、(4)の3つの条件が、本発明の「検査機からの指示以外でも検査処理を実行する他の検査条件」に相当している。
【0063】
また、検査処理は、基板Pに搭載された全部品Bを対象としてもいいし、検査するべき一部の部品Bだけを対象に限定して行ってもよい。
【0064】
例えば、図2に示すように、全部品B1~B12のうち、検査するべき部品Bが、破線枠で囲まれたB5とB6である場合、検査するべき部品B5、B6の画像を撮影して、部品B5、部品B6の実装状態のみ検査してもよい。検査対象を絞ることで、検査処理に必要な時間を短縮できる。
【0065】
尚、オペレータが生産条件に関するデータの変更した場合、検査するべき部品Bは、データ変更に関連した部品である。例えば、ある実装ヘッド40についてデータ変更がされた場合、検査するべき部品Bは、その実装ヘッド40で実装される搭載点Mの部品Bある。
【0066】
また、検査機13が不良基板を検出した場合、検査するべき部品Bは、不良原因となった搭載点Mの部品Bである。例えば、ある部品Bの位置ずれが、許容値外のため不良と判断した場合、検査するべき部品Bは、その搭載点Mの部品Bである。
【0067】
また、部品Bの実装に使用される機器の異常を検知した場合、検査するべき部品Bは、異常を検知した機器を使用して実装される搭載点Mの部品Bである。例えば、ある実装ヘッド40が負圧の異常や吸着異常を起こした場合、検査するべき部品Bは、その実装ヘッド40を使用して実装される搭載点Mの部品Bである。
【0068】
また、表面実装機11Aが、部品Bの実装に使用される機器の異常を検知したことに伴い、下流側の表面実装機11B、11Cに検査指示を出して、異常を検知する前に生産された基板Pの良否を遡って検査する場合、下流側の表面実装機11B、11Cは、表面実装機11Aにて、異常を検知した機器を使用して実装された部品のみ検査してもよい。
【0069】
図10はモード判定フローである。モード判定フローは、検査モードを実行するか、否かを判断するフローであり、各表面実装機11A~11Cにて実行される。
【0070】
検査モードは、図11に示すように、基板Pに部品Bを搭載する実装処理(S100)と、不良の有無を検査する検査処理(S120)とを実行するモードである。
【0071】
図10に示すように、モード判定フローは、S10~S45の8ステップから構成されている。モード判定フローは、生産される1枚の基板単位で実行される。
【0072】
S10、S20、S30、S40の4つのステップは、検査モードを実行するか否かを判断する判断ステップである。判断主体は、コントローラ100である。
【0073】
S10は、生産対象の基板Pについて、実装処理を開始する時点で、検査機13から検査指示があるか、否かを判定する処理である。
【0074】
検査機13からの検査指示がある場合、S10にてYESの判定となり、S15に移行する。S15では、検査機13からの指示に従い、指示された搭載点Mが、検査対象点にセットされる。その後、検査モードに移行する。
【0075】
S20は、生産対象の基板Pについて、実装処理を開始する時点で、上流機(自機から見て上流に位置する他機)11から検査指示があるか、否かを判定する処理である。自機とは自分である。例えば、表面実装機11Bについて考える場合、表面実装機11Bは自機であり、表面実装機11Aは上流の他機、表面実装機11Cは下流の他機である。
【0076】
上流機11からの検査指示がある場合、S20にてYESの判定となり、S25に移行する。S25では、上流機11からの指示に従い、指示された搭載点Mが検査対象点にセットされる。その後、検査モードに移行する。
【0077】
S30は、生産対象の基板Pについて、実装処理を開始する時点で、検査対象のオペレーション作業を検知したか、否かを判定する処理である。検査対象のオペレーション作業を検知した場合、S30にてYESの判定となり、S35に移行する。S35では、全搭載点Mが検査対象点にセットされる。その後、検査モードに移行する。
【0078】
S40は、生産対象の基板Pについて、実装処理を開始する時点で、生産に使用される機器の異常を検知したか、否かを判定する処理である。
【0079】
生産に使用される機器の異常を検知した場合、S40にてYESの判定となり、S45に移行する。S45では、異常を検出した機器に関連する搭載点Mが検査対象点にセットされる。その後、検査モードに移行する。
【0080】
検査モードに移行すると、基板Pに対する各部品Bの実装処理がまず行われ、その後、検査処理が実行される。
【0081】
検査処理では、検査対象点に実装された部品Bの画像をヘッドカメラ36で撮影し、その画像から、検査対象の部品Bについて、実装状態の良否が検査される。実装状態の良否は、検査対象点における部品Bの有無、搭載点Mに対する部品Bのずれの大きさ、部品Bの傾きの大きさなどから判断することが出来る。検査対象点とは、基板上の全搭載点のうち、S15~S45にて検査対象としてセットされた搭載点Mである。図2の例では、M5とM6の2つの搭載点である。
【0082】
検査処理にて、不良を検出した場合、コントローラ100は、不良の発生を報知することが出来る。また、コントローラ100は、不良の有無に拘わらず、検査処理で得た画像のデータを管理装置15に送信してログとして残すことが出来る。画像データのログを残すことで、不良発生時の原因特定に有効となる。
【0083】
上記のモード判定フローは、一枚の基板Pごとに行わるため、生産の途中で、S10~S40のいずれかに該当する検査事由が発生した場合、次の基板Pを生産する時に、検査モードに移行して、検査処理が実行される。
【0084】
尚、S10、S20、S30でYES判定となって検査モードに移行した場合、検査モードを一定期間は実行してもよい。
【0085】
また、S10~S40の4ステップとも全てNOの場合(該当しない場合)、検査モードに移行せず、通常の生産が行われる。
【0086】
本発明の実装ラインSによれば、検査機13からの指示以外でも検査処理を実行することで、不良基板の発生を抑えることが出来る。つまり、検査機13からの指示だけで検査処理を実行する場合に比べて、不良基板の発生を早期に検出することが可能であり、不良基板が以降の工程に流出することを抑えることが出来る。
【0087】
<実施形態2>
図12は、実施形態2のモード判定フローである。実施形態2のモード判定フローは、実施形態1のモード判定フローに対して、S13とS23の処理が追加されている。S13とS23の処理は、いずれも、自機で検査するべきかを判定する処理である。
【0088】
例えば、検査機13から、検査対象の搭載点Mだけを指定して、全ての表面実装機11A~11Cに対して検査指示を出す場合、各表面実装機11A~11Cは、指示された検査対象の搭載点Mが、自機の作業対象(つまり自己の実装処理対象)であるか、判断する。
【0089】
そして、検査対象の搭載点Mが自機での作業対象に含まれている場合、S15に移行して、検査対象の搭載点Mを検査対象点にセットした後、検査モードに移行する。
【0090】
一方、検査対象の搭載点Mが自機での作業対象に含まれていない場合、検査は不要と判断し、S20に移行して、次の判定ステップに移行する。
【0091】
また、例えば、1台目の表面実装機11Aから下流の表面実装機11B、11Cに対して検査指示を出す場合、下流の各表面実装機11B、11Cは、自機で検査処理を実行する必要があるか否かを、判断する。
【0092】
自機での検査が必要と判断される場合、S25に移行して、上流機11からの指示に従い、指示された搭載点Mが検査対象点にセットされる。その後、検査モードに移行する。
【0093】
一方、自機での検査が不要と判断される場合、S20に移行して、次の判定ステップに移行する。自機での検査が不要と判断される場合は、例えば、検査済みの基板Pが搬入された場合である。つまり、2台目の表面実装機11Bで検査済みの基板が、3台目の表面実装機11Cに搬入された場合である。基板が検査済みであるか否かは、例えば、基板Pを搬送する時に、表面実装機間で通信で情報を送るとよい。
【0094】
実施形態2は、各表面実装機11A~11Cが、必要な場合にだけ、検査処理を実行するので、タクトロスを抑制できると共に、検査処理により残されるデータ量を削減することが出来る。
【0095】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0096】
(1)実施形態1では、実装ラインSを3台の表面実装機11A~11Cと、1台の検査機13と、管理装置15とから構成した。実装ラインSは、少なくとも1台の表面実装機を有していれば、ライン構成はどのような形態でもよい。また、検査機13は、実装ラインSに含まれていてもいいし、実装ライン外にあってもよい。検査機13が、実装ライン外にある場合でも、不良基板が発生した場合、検査処理を実行するべき表面実装機11を指定して検査指示を送ってもよい。また、全表面実装機11に検査指示を送ってもよい。
【0097】
(2)実施形態1では、ヘッドカメラ36を利用して検査処理を行ったが、検査用のカメラを専用に設けて、検査処理を行ってもよい。
【0098】
(3)実施形態1では、実装ヘッド40を負圧吸引式としているが、実装ヘッド40は、チャック式でもよい。
【符号の説明】
【0099】
11 表面実装機
13 検査機
15 管理装置
33 ヘッドユニット
36 ヘッドカメラ
40 実装ヘッド(部品の実装に使用される機器)
45 吸着ノズル
100 コントローラ(検査部)
P 基板
B 部品
S 実装ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12