(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
F28D 20/00 20060101AFI20230519BHJP
【FI】
F28D20/00 A
(21)【出願番号】P 2019564404
(86)(22)【出願日】2018-05-15
(86)【国際出願番号】 US2018032685
(87)【国際公開番号】W WO2018236489
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-04-13
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】スタンスベリー、コーリー、エー
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0116188(US,A1)
【文献】実開昭59-134763(JP,U)
【文献】国際公開第2014/100142(WO,A1)
【文献】実開昭62-034668(JP,U)
【文献】特開2011-085379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵装置(100)であって、
ハウジング(14)と、
コンクリート材料により構成され、当該ハウジング内でタンデム式に支持された複数の板(10)であって、当該複数の板(10)の間に、熱伝達媒体を当該板(10)の表面を覆うように第1の方向に通過させるに十分な大きさの流路(12)を画定する複数の板(10)とを具備し、当該複数の板(10)の各々には断熱部を提供するように当該第1の方向に対して垂直な第2の方向に延びる複数の溝(28)が設けられており、
当該エネルギー貯蔵装置(100)は更に、
供給源から受け取った当該熱伝達媒体(32)を当該流路(12)に分配するように構成された流入口プレナム(30)と、
当該流路(12)から受け取った当該熱伝達媒体(32)を回収場所に移送するように構成された流出口プレナム(30)とを具備し、
蓄熱動作モードにおいて当該熱伝達媒体(32)の熱の一部が当該板(10)に伝達され、また、放熱動作モードにおいて当該板(10)の熱の一部が当該熱伝達媒体(32)に伝達されることを特徴とするエネルギー貯蔵装置(100)。
【請求項2】
前記断熱部は熱の移動を遅らせるように構成されていることを特徴とする、請求項1のエネルギー貯蔵装置(100)。
【請求項3】
前記溝(28)は前記コンクリート材料製の板(10)の長手方向の15cmないし1.2mの間隔で設けられている、請求項1のエネルギー貯蔵装置(100)。
【請求項4】
前記板(10)の間の前記流路(12)のうちの一部は断熱材(34)を含む、請求項1のエネルギー貯蔵装置(100)。
【請求項5】
前記エネルギー貯蔵装置は摂氏100度から摂氏315度の範囲で作動するように構成されている、請求項1のエネルギー貯蔵装置(100)。
【請求項6】
前記コンクリート材料製の板(10)
は鉄筋を含む、請求項1のエネルギー貯蔵装置(100)。
【請求項7】
熱エネルギーを貯蔵する方法であって、
ハウジングと、コンクリート材料製の複数の熱伝達板(10)とを有する熱伝達モジュール(100)を形成するステップを具備し、当該複数の熱伝達板は間に流路(12)が形成されるように当該ハウジング内で互いに離隔してタンデム式に支持され、当該ハウジング(14)は当該流路(12)の一方の端部に流入口プレナム(30)を、また、他方の端部に流出口プレナム(30)を有するものであり、
当該方法は更に、
第1の方向に延びる複数の溝から成る複数の断熱部を当該熱伝達板(10)に設けるステップと、
熱伝達媒体を、当該流入口プレナム(30)から、当該複数の熱伝達板(10)の間の流路の当該熱伝達板の表面に、当該第1の方向に対して垂直な第2の方向に差し向けるステップと、
蓄熱動作モードにおいて当該熱伝達媒体(32)から当該熱伝達板(10)へ熱を伝達させ、また、放熱動作モードにおいて当該熱伝達板(10)から当該熱伝達媒体(32)へ熱を伝達させるステップと、
当該流出口プレナム(30)を介して当該ハウジング(14)から当該熱伝達媒体を排出するステップと
を具備する方法。
【請求項8】
前記熱伝達モジュール(100)を摂氏100度から摂氏315度の範囲で作動させるステップを含む、請求項
7の方法。
【請求項9】
前記断熱部は熱が前記熱伝達板の長手方向へ移動するのを妨げる、請求項
7の方法。
【請求項10】
前記溝(28)を前記熱伝達板の長手方向の15cmないし1.2mの間隔で設けるステップを含む、請求項
7の方法。
【請求項11】
エネルギー貯蔵装置であって、
ハウジング(14)と、
コンクリート材料により構成され、当該ハウジング内でタンデム式に支持された複数の板(10)であって、当該複数の板の間に、熱伝達媒体を当該板の表面を覆うように第1の方向に通過させるに十分な大きさの流路(12)を画定する複数の板とを具備し、当該複数の板の
各々には断熱部を提供するように当該第1の方向に対して垂直な第2の方向に延びる複数の溝(28)が設けられており、
当該エネルギー貯蔵装置は更に、
供給源から受け取った当該熱伝達媒体を当該流路に分配するように構成された流入口プレナムと、
当該流路から受け取った当該熱伝達媒体を回収場所に移送するように構成された流出口プレナムとを具備する、エネルギー貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年6月21日出願の米国仮特許出願第62/522,737号の利益を主張する。
本発明は概してエネルギー貯蔵に関し、具体的には、低コストのモジュール式熱エネルギー貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギーを貯蔵することにより送電網の電力を平準化して多量の運転予備力の確保を不要にすることは、これまできわめて難しい課題であった。太陽電池や風力タービンなどの発電量の制御が難しい再生可能エネルギー装置が急速に普及しつつあるため、送電網の安定性が脅かされている。揚水発電や蓄電池などの従来のエネルギー貯蔵方法は、容量を使い果たしていたり、環境上の懸念があるため検討対象とするのがきわめて難しかったりする。エネルギーを電気として貯蔵するのではなく、発電に利用される熱源からの熱を発電直前に貯蔵する方式は、比較的低コストによる貯蔵が実現でき、原子力発電所の原子炉での利用が可能である。蓄熱はそれ自体新しいことではないが、高価な塩やどこにもあるとは限らない地層を利用する代わりに、一般的な材料を用いる比較的低コストのモジュール内にエネルギーを効率的に貯蔵する方式を実現するのはこれまでなかなか容易でなかった。したがって、本発明の目的は、容易に入手できる一般的な材料から作られる低コストのモジュール式エネルギー貯蔵装置を提供することである。
【発明の概要】
【0003】
上記および他の目的は、コンクリートに類する材料によって構成される複数の板がタンデム式に支持され、当該複数の板の間に、熱伝達媒体を当該板の表面を実質的に覆うように通過させるに十分な大きさの流路が形成されているエネルギー貯蔵装置によって達成される。当該流路の第1の端部と流体連通する流入口プレナムは、供給源から受け取った当該熱伝達媒体を当該流路を介して当該板の表面を覆うように分配するように構成されている。当該流路の第2の端部と流体連通する流出口プレナムは、当該流路から受け取った当該熱伝達媒体を回収場所に移送するように構成されており、蓄熱動作モードにおいて当該熱伝達媒体の熱の一部が当該板に伝達され、また、放熱動作モードにおいて当該板の熱の一部が当該熱伝達媒体に伝達される。
【0004】
一実施態様において、当該複数の板は金属ケーシングに格納され、好ましくは、当該熱伝達媒体が当該複数の板の間の当該流路を平行且つ水平に流れるように、互いに対向する縁部で支持され水平に延びる。当該熱伝達媒体はオイルまたは塩であるのが好ましい。
【0005】
別の実施態様において、当該板には当該熱伝達媒体の流れ方向に対して垂直な方向に溝が設けられており、当該溝は当該板の全長に沿って互いに離隔し、部分的な蓄熱(すなわち、熱を帯びている板の領域からあまり熱を帯びていない板の領域へ熱が伝達される状態)後に当該板の長手方向における熱の拡散を遅らせる断熱部を提供する。当該溝は、当該板の全長に沿って15cmないし1.2m(6インチないし4フィート)の間隔で設けるのが好ましい。当該エネルギー貯蔵装置は、およそ摂氏100度から摂氏315度(華氏212度から華氏599度)の範囲で作動する構成であるのが望ましい。そのような実施態様において、当該エネルギー装置は、逆流形熱交換器の動作と同じように、蓄熱動作と放熱動作とがそれぞれ互いに反対方向の流体の流れに対応するように構成されている。そのような実施態様において、当該コンクリートに類する材料製の板は、微小な鉄筋または他の同様な3次元補強材によって構成されることがある。さらに別の実施態様において、当該板の間の当該流路の少なくとも一部は断熱材を含むか、または当該板のうちの少なくとも一部の板のいくつかの区間とその下流の区間との間に断熱部が形成されているか、またはその両方である。
【0006】
本発明はまた、コンクリートに類する材料製の複数の熱伝達板が間に流路が形成されるように互いに離隔してタンデム式に支持され、当該熱伝達板を格納するハウジングが当該流路の一方の端部に流入口プレナムを、また、他方の端部に流出口プレナムを有する熱伝達モジュールを形成するステップを含む熱エネルギー貯蔵方法を企図する。この方法は、熱伝達媒体を、当該流入口プレナムから、当該複数の熱伝達板の間の流路の当該熱伝達板の表面に差し向けて、当該熱伝達媒体から当該熱伝達板へ熱を伝達させたあと、当該流出口プレナムを介して当該ハウジングから当該熱伝達媒体を排出する。
【0007】
この熱伝達媒体を差し向けるステップは、当該複数の熱伝達板の上およびその間を通るように当該熱伝達媒体を平行かつ水平に差し向けるステップを含むのが好ましい。一実施態様においてこの方法は、微小な鉄筋または他の同様な3次元補強材によって当該熱伝達板を補強するステップを含む。この方法では、部分的な蓄熱後に当該板の全長に沿う熱の拡散を遅らせるために、当該板に断熱部を設けるのが好ましい。一実施態様において、当該断熱部は当該熱伝達媒体の流れ方向に対して垂直な方向に延びる溝である。当該溝は、15cmないし1.2m(6インチないし4フィート)の間隔で設けるのが好ましい。
【0008】
この方法はまた、当該熱伝達モジュールをおよそ摂氏100度から摂氏315度(華氏212度から華氏599度)の範囲で作動させる。この方法はまた、逆流形熱交換器の動作と同じように、互いに反対方向の流体の流れに対応する蓄熱動作と放熱動作とを含むことがある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0010】
【
図1】いくつかのコンクリート板がその間に流路が形成される定位置に配置された、本発明のエネルギー貯蔵装置のハウジングの一部を示す斜視図である。
【0011】
【
図2】流入口プレナムと断熱部が見えるすべてのコンクリート板とを含む、本発明のエネルギー貯蔵装置のモジュール全体の切欠き図である。
【0012】
【0013】
【
図4】エネルギー貯蔵装置のハウジング全体を組み立て済みの状態で示す斜視図である。
【0014】
【
図5】板ホルダーが板を水平に支持する定位置に配置された、ハウジングの長手方向全体に延びる細長い外殻胴部の斜視図である。
【0015】
【
図6】
図5に示す胴部の第1の端部を閉じる第1の端部キャップの斜視図である。
【0016】
【
図7】
図6に示す第1の端部キャップと鏡像関係にある、
図5に示す胴部の第2の端部を閉じる第2の端部キャップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願は、低コスト材料を用いるモジュールにより熱エネルギーを貯蔵する方法を説明する。この方法では、薄い断面のコンクリート板10(
図1、2、3に示す)を互いに近接させて当該コンクリート板の間に流路12が形成されるように配列する。次に、これらのコンクリート板を、低コストの金属製モジュールハウジングの胴部20内の作り付けの互いに隣接する離隔部材18の間に形成された案内スロット16に組み込むことによって、コンクリート板10を離隔関係に保ち、流路12を形成する。当該胴部20の組み立て終了後、2つの端部キャップ22、24を胴部20の両端部にそれぞれ配置し、溶接などによって胴部に固定し、コンクリート板10の両端部とそれぞれの端部キャップ22、24との間にプレナム26を形成する。水平に置かれた状態で、この2つのプレナム26と流路12とは、熱伝達流体(オイル、塩など)を循環させてエネルギーをコンクリート板10に伝達させることにより、温度勾配を「蓄熱レベル」の上昇につれて組立体の長手方向下方に移動させることができる。熱を抽出する際には、流れを反転させて、装置を逆流形熱交換器のように作動させる。熱伝達流体が流れていないとき熱波が板の下流へ移動する効果を抑えるために、各コンクリート板の長手方向の所与の距離ごとに垂直方向の溝を実質的に板の全長に沿って設けるのが好ましい。この所与の距離は、
15cmから1.2m(6インチから4フィート
)の間が好ましいが、モジュール100の長さに応じてさらに長い距離でもよい。溝28は
図2に明瞭に示してある。性能特性に負の影響を与えずに、構造体をつなぎ合わせて板の間隔を保つために、
図1に参照符号34で例示する薄い帯状の材料(非限定的に断熱材を含む)を、流路12の中心に沿って一方のプレナムから他方のプレナムへ延びるように配置してもよい。断熱材を溝28の中に組み込んだり、あるいは溝の代わりに断熱材で熱伝達板の隣接する区間をつなぎ合わせたりすることもできる。図示のコンクリート板10は水平方向に延びているが、本発明の範囲内で、垂直方向に延びるように構成してもよいことを理解されたい。ただし、水平の流路が好ましい。
【0018】
したがって、本発明の一実施態様は、原子炉などの熱源からの熱エネルギーを貯蔵するために、金属ケーシング14に格納された表面面積比の大きいコンクリート構造体を使用する。コンクリート板10は、強度、耐久性、および熱伝達性を高めるために、微小な鉄筋または他の同様な混和材を含むのが好ましい。微小な鉄筋に代わるものとして、鋼、鋼繊維、ガラス繊維、炭素繊維、他の金属、複合材および高温プラスチックがある。配管の使用は不要であるが、前述の好ましい流路10の構造体に代わるものとして、金属製または複合材の管体を使用してもよい。モジュール内の熱伝達媒体はすべて、蓄熱のために金属ケーシングまたはケーシング内で使用される比較的薄いコンクリート板によって画定された流路を流れる。コンクリート板10は、超高性能コンクリート、高性能コンクリート、高強度コンクリートまたは高温コンクリート製でよい。あるいは、板10は耐火れんが、セラミック、固体塩または金属製であってもよい。
【0019】
熱伝達媒体または流体の流路は、表面積が最大になり、熱伝達媒体の駆動に必要な熱伝導手段およびポンプ出力が最小になるように、隣接するコンクリート板の間に形成される。離隔部材18は、薄い帯状または棒状の材料若しくは延べ棒で形成することができ、高温プラスチック、金属、複合材またはガラス繊維製でよい。熱伝達媒体は、加圧せず、コンクリートまたは金属の構造体との間で負の相互作用を起こさない適当な特性を持つオイルまたは塩から成るのが好ましい。そのような相互作用を避けるために、当該構造体に保護被膜を施すことができる。熱伝達媒体は、Therminol、Duratherm HF、Calder 1、Mobiltherm、Paratherm、DowthermもしくはPhillips 66などの炭化水素系の流体、Duratherm SもしくはSylthermのようなケイ素系の流体、または硝酸塩などの液体塩でもよい。
【0020】
一実施態様では、コンクリート板の高さ方向に(すなわち熱伝達媒体の流れに垂直な方向に)溝を設けることによって、部分的な蓄熱(すなわち、熱伝達媒体からコンクリート板への熱伝達によって板の蓄熱容量が部分的に満たされた状態)後の板の間の熱拡散を遅らせる断熱部を提供する。断熱部は、板全体の温度が均一になるのを妨げる働きがあるが、それがなければ、部分的な蓄熱後の放熱時に高い品質で熱を回収できなくなる。ハウジング14は、プラスチック、被覆炭素鋼、ステンレス鋼、複合材またはガラス繊維によって作製することができ、ハウジングの内部、内側周り、または外側周りに層状の断熱材を施すのが好ましい。断熱材は、複層胴部内の空気間隙、ガラス繊維、エアロゲル、セラミック、鉱物繊維、鉱物綿またはシリカであってよい。
【0021】
本発明のエネルギー貯蔵装置は、コンクリート板10が水平または垂直に向いた状態で作動させることができる。また、胴部20、端部キャップ22、24およびコンクリート板10を使用する場所で注型してもよいし、完全に構成されたハウジング14およびコンクリート板10を別々に輸送して現地で組み立ててもよい。あるいは、両方の方式を任意に組み合わせてもよい。
【0022】
溝が設けられた構造体への熱エネルギーの充填および当該構造体からの熱エネルギーの取り出しは、温度勾配をコンクリートの長手方向に移動させることにより行われる。動作温度は、摂氏100度から摂氏315度(華氏212度から華氏599度)の範囲である。蓄熱と放熱とは、互いに反対方向に流体が流れることによって生じるが、これは逆流形熱交換器の動作に類似する。手作業を最小限に抑え、生産効率を最大化するために、従来のコンクリート補強材の代わりにマイクロ鉄筋または同様の混和材を使用することができる。
【0023】
流入する熱伝達媒体の圧力は、大気圧またはそれより若干高い(すなわち100~150.3kPa(14.5~21.8psia))のが好ましい。熱伝達媒体の流量は、約0~10kg/s(0~22.0lbs/s)の範囲が望ましく、1モジュール当たり約1.77kg/s(3.9lbs/s)であるのが好ましい。コンクリート板の厚さは、約12.7~76.2mm(0.5~3インチ)の範囲であり、より好ましくは約31.8mm(1.25インチ)である。流路の幅は、約1~10mm(0.04~0.4インチ)の範囲であり、より好ましくは約2.5mm(1/10インチ)である。
【0024】
図1に示す金属ハウジングまたはケーシング14では、モジュール式案内スロット16によって互いに離隔した3枚のコンクリート板10がケーシング14の胴部20の上部壁の下側から延びて、板10の間に流路12を形成している。垂直方向に延びる溝28が図示されているが、熱伝達媒体の流れは、流路を実質的にコンクリート板10の全面にわたって水平かつ平行に進むのが好ましい。ただし、モジュールの最上部と最下部のプレナムにより、熱伝達媒体が垂直方向に流れるようにしてもよいことを理解されたい。
【0025】
図2は、すべてのコンクリート板10を含むモジュール100全体の切欠き図であり、細長い形状のコンクリート板10の各端部にプレナム26があり、より見やすい左側のプレナムにはモジュール100の左上隅に示す流入口または流出口ノズル30があることがわかる。
図2において両端に矢尻のある矢印32で示すように熱伝達媒体は両方向に流れるので(一方の方向はコンクリート板を蓄熱させ、その反対の方向はコンクリート板を放熱させる)、右側または左側のプレナム26のうちのいずれが、流入口プレナムであるかまたは流出口プレナムであるかは問題ではない。
図3は、1枚のコンクリート板10の斜視図である。
図4は、組み立て済みハウジング構成部品の斜視図であり、
図5、6、7は、分解されたハウジング構成部品の斜視図である。
【0026】
したがって、本発明では、モジュール内に金属管を配置する必要がない。機能装置の一部である金属ケーシングは、流路の各端部に簡単なプレナムを容易に取り付けられる構成になっている。モジュール100は、コンクリートの有利な熱特性(すなわち、比熱、耐久性、廉価性、入手容易性など)を利用する。モジュールが熱伝達媒体を移動させるために必要とするポンプ出力は、コンクリート板の間の流路が大きく、流速が小さいため、滞留時間が長く、熱伝達が促進されるから、比較的小さい。熱伝達媒体が水平に流れる構成では、流入管と流出管の取り付けと装置の交換を容易に行える。この水平な構成はまた、同じ案内スロット内のコンクリートに単に垂直方向の溝を設けることによって「断熱部」を容易に追加できるようにする。本発明はまた、補強材として従来の労働集約的な鉄筋を使用する必要がない。
【0027】
熱伝達流体または媒体を加熱するための熱は、原子炉の一次または二次ループと熱交換関係にある熱交換器、石炭プラント、太陽熱、または他の同様の熱源から得ることができる。あるいは、ガスタービンサイクルから熱を得ることもできる。
【0028】
したがって、本発明は、揚水式水力や適合性のある地層への空気圧入を別にすれば、現在利用できる最も経済的なエネルギー貯蔵手段であり、しかも立地の制約がない。本発明は、原子力発電所などの既存の熱源設備、廉価な材料、および単純な設計を用いて、大きな商業規模では長年事実上取り組んでこられなかったきわめて重要な課題を解決するものである。本発明は、加圧環境が不要であり、破滅的な安全上のリスクが低い。
【0029】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何ら制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物を包含する。