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特許7282072肺がんの治療に使用するための組み合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】肺がんの治療に使用するための組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/593 20060101AFI20230519BHJP
   A61K 31/453 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 31/485 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 31/553 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 31/59 20060101ALI20230519BHJP
   A61K 31/592 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230519BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
A61K31/593
A61K31/453
A61K31/485
A61K31/506
A61K31/519
A61K31/553
A61K31/59
A61K31/592
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P43/00 121
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020503373
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 GB2018050820
(87)【国際公開番号】W WO2018178668
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】1704909.9
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519353064
【氏名又は名称】エルディーエヌ ファーマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダルグレイッシュ,アンガス
(72)【発明者】
【氏名】ルイ,ワイ
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-511818(JP,A)
【文献】特開2015-107918(JP,A)
【文献】特表2008-535850(JP,A)
【文献】NORTON, R., et al.,Vitamine D: Potential in the Prevention and Treatment of Lung Cancer,Anticancer Research,2012年,vol.32,pp.211-222
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/593
A61K 31/453
A61K 31/485
A61K 31/506
A61K 31/519
A61K 31/553
A61K 31/59
A61K 31/592
A61P 35/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺がんを有する対象の治療のための、ビタミンD又はその活性代謝物と連続、別々または同時投与される、6-β-ナルトレキソールを含む医薬組成物であって、
前記活性代謝物が、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、カルシジオール、カルシトリオール、1a-ヒドロキシコレカルシフェロール、25-ヒドロキシコレカルシフェロール、1a,25-ヒドロキシコレカルシフェロール、および24,25-ヒドロキシコレカルシフェロールから成る群より選択される、医薬組成物
【請求項2】
前記対象は、抗がん剤を用いた治療を受けている又は受けるよう選択されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記6-β-ナルトレキソール及び前記ビタミンD又はその活性代謝物は、第1の治療期にそれを必要とする対象に投与され、回復期の後、次の第2の治療期に抗がん剤を続いて投与される、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記回復期は、1~7日である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記回復期は、3~5日である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記6-β-ナルトレキソールおよび前記抗がん剤は、同時に投与される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗がん剤は、細胞周期阻害剤又は細胞分裂停止を誘導する薬剤である、請求項2~6のいずれか一項に記載医薬組成物。
【請求項8】
前記細胞周期阻害剤は、フラボピリドール、ribociclib、スタウロスポリン/UCN-01、アベマシクリブ及びパルボシクリブ、ならびにその任意の組み合わせから成る群より選択される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記6-β-ナルトレキソールは、6-β-ナルトレキソールの血漿中濃度を0.34~3,400ng/mlに上昇させるのに十分な投与量レベルで投与される、請求項1~
8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記6-β-ナルトレキソールは、6-β-ナルトレキソールの血漿中濃度を0.34~340ng/mlに上昇させるのに十分な投与量レベルで投与される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記ビタミンD又はその活性代謝物は、前記ビタミンDの血中濃度を0.34~3,400ng/mlに上昇させるのに十分な投与量で投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記ビタミンD又はその活性代謝物がカルシトリオールである、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺がんの治療に使用するための化合物およびその化合物の投与を含む肺がんの治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2012年に、肺がんは、世界中のがん関連死のおよそ20%になり、男性では最も一般的ながん関連の死亡原因である。肺がんを有する対象は、現在イギリスの全てのがんサブグループの中で2番目に低い5年生存率を有する。典型的には、肺がんと診断された全ての患者について、10%のみが診断後5年以上生存する。個別の生存率は、診断がなされたステージおよび存在する肺がんのタイプに依存する。
【0003】
肺がんの圧倒的大多数は、長期間のタバコ喫煙によって引き起こされるが、ごく一部の症例は、喫煙したことがない対象に生じる。対象を肺がんにかかりやすくすることができるいくつかの遺伝的突然変異はあるが、大気汚染、ラドンガス、副流煙またはアスベストへの露出等の、他の環境要因も疾患にかかるリスクを増加させる。肺がんのり患に関連したリスク要因の大多数は環境的なので、肺がんと診断された対象の平均年齢は、70歳を超える。
【0004】
現在、症状の発生前に肺がんの存在を検出するための効果的なハイスループットスクリーニング方法はない。症状が出る前に診断できると、初期ステージでの治療的介入が可能となり、従って生存の可能性が増加するだろう。しかしながら、肺がんの大多数は、中期から後期のステージで診断される。これは主に肺がんに関連する症状と喫煙者がすでに経験している症状が類似することに起因し、これにより診断がかなり遅れる可能性がある。
【0005】
肺がんは、大気汚染物質中に存在する発癌物質がK-rasまたはEGFRなどの癌原遺伝子を活性化するかp53などの腫瘍抑制遺伝子を不活性化するDNAの突然変異を引き起こすときに発生する。典型的には、肺がんは、外科的な方法、化学療法あるいは放射線療法または上記のいずれかの組み合わせのいずれかによって治療される。市場に現れる少数の肺がんを標的とした治療方法もある。
【0006】
それにもかかわらず、肺がん対象の生存率は改善される必要があり、それを達成することができる方法は、新しい治療方法を開発することである。
【0007】
従って、肺がんの効果的な治療を開発する現在進行中の必要性がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、化学療法薬とともに、6-β-ナルトレキソールをビタミンDと一緒に同時投与すると、肺がん細胞の成長をさらに減少させるという知見に基づく。6-β-ナルトレキソールをビタミンDと組み合わせると、分離して投与したときの各薬剤の効果の和と比較してがん細胞の成長が大きく減少する。
【0009】
本発明は、6-β-ナルトレキソールが、細胞分裂停止機構によって作動し、細胞毒性を引き起こすのではなく、後者は6-β-ナルトレキソールの前駆物質であるナルトレキソンが抗ガン活性を媒介することによる機構であるという発見に基づいている。さらに、6-β-ナルトレキソールとナルトレキソンの効果差は、等価な投与量で達成される。重要なことに、本発明に関連する投与計画でナルトレキソンががんの治療のために対象に投与されるとき活性化される特定の代謝経路は、ヒト体内のかなりの量の6-β-ナルトレ
キソールが形成されるのを妨げる。
【0010】
したがって、本発明の第1の態様において、肺がんを有する対象の治療に使用するためのビタミンD又はその活性代謝物と連続、別々または同時投与するための、6-β-ナルトレキソールが提供される。
【0011】
本発明の第2の態様において、肺がんを有する対象の治療方法であって、その治療方法は、治療有効量の6-β-ナルトレキソールを投与するステップを含み、その対象は、ビタミンD又はその活性代謝物も投与される、治療方法が提供される。
【0012】
以下の図を参照することにより本発明はさらに定義される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、0.001μM、0.01μM、0.1μMまたは1μMの薬剤濃度で投与されるときのA549(肺がん)およびHCT116(大腸がん)細胞数に対する6-β-ナルトレキソール(6BN)およびナルトレキソン(NTX)の効果を示す。実験を、細胞に6-β-ナルトレキソールまたはナルトレキソンを投与していない対照(0)と並んで実行した。
図2図2は、10nM NTX (LDN)、10μM NTX、10nM 6BN、10μM 6BN、100nMカルシトリオール(CCT)、またはカルシトリオール(CCT)と併用して10nM NTX(LDN)、10μM NTX、10nM 6BNまたは10μM 6BNを投与したときのA549(肺がん)およびHCT116(大腸がん)細胞株の細胞数(aとb)および細胞生存率(cとd)に対する効果を示す。実験を、細胞に6BN、NTXまたはCCTを投与していない対照(UN)と並んで実行した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、特定の投与計画で6-β-ナルトレキソールを投与することは肺がん細胞の成長を停止するのに効果的であるという知見に基づく。6-β-ナルトレキソールは、他の化学療法薬及びビタミンDなどの他の薬剤と組み合わせて投与するとき相乗効果を有することも示されている。
【0015】
重要なことに、6-β-ナルトレキソールを投与すると細胞増殖の減少を招くが、細胞毒性の原因とはならない。従って、特定の投与計画で6-β-ナルトレキソールを投与すると増殖を受けた細胞のみが標的となり、一方で体細胞は影響されないままであることが想定される。疾患のある細胞のみを標的とする薬剤を投与すると、細胞毒性機構を介して機能する抗がん剤を投与したときに観察されるオフターゲットの効果を大幅に低下するようである。このように、6-β-ナルトレキソールを他の抗がん剤と組み合わせて投与すると治療効果が増加し、治療においてしばしば伝統的な抗がん剤を併用することに起因する、固有の厳しい副作用を低下する。さらに、併用療法において6-β-ナルトレキソールを投与すると第2の抗がん剤を大きな用量で投与することができると想定され、それは疾患のある増殖細胞のみを標的とする薬剤を投与することに起因して副作用が最小化されることによる。
【0016】
本発明は、以下の定義を参照してさらに理解することができる。
本明細書で使用されるように、「6-β-ナルトレキソール」は、17-(シクロプロピルメチル)-4,5-エポキシモルフィナン-3,6ベータ,14-トリオール(CAS番号49625-89-0)およびその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物およびプロドラッグを指す。6-β-ナルトレキソールは、ナルトレキソンの活性代謝物である。用語6-β-ナルトレキソールは、その機能的に等価な類
似体および代謝物、ならびに上記の任意の薬学的に許容される塩も包含し、それは本発明内で具現化された6-β-ナルトレキソールの新規用途に関して機能的等価性を保持する。
【0017】
本明細書で使用されるように、「化学療法薬」は、当該技術分野において使用されるその従来の意味を有する。本発明の目的について、用語化学療法薬は、フレーズ「抗がん剤」内に包含される。
【0018】
本明細書で使用されるように、用語「対象」は、すべての動物(哺乳類等)を指し、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、げっ歯類等を含むが、これに限定されず、本発明に従って6-β-ナルトレキソールが使用される治療のレシピエントとされる。典型的には、用語「対象」および「患者」は、ヒト対象に関して本明細書において互換的に使用される。
【0019】
本明細書で使用されるように、用語「治療する」および「治療」および「治療すること」は、1)診断された病的状態または障害の進行を治癒、緩徐、および/又は停止する治療的処置および2)標的となる病的状態または障害の発生を予防するおよび/または緩徐する予防又は防止処置の両方を指す。従って、治療を必要とするものは、既に障害にかかったもの、障害にかかる傾向にあるもの、および障害を防止すべきものを含む。いくつかの例において、対象が以下の1つ以上を示すなら、本発明に従って腫瘍/がんはうまく「治療」されたと言える:がん細胞の数の減少または完全な欠如、腫瘍のサイズの減少、軟組織および骨へのがんの伝播などを含む、周辺組織へのがん細胞の浸潤の阻害または欠如、腫瘍の転移の阻害または欠如、腫瘍の増殖の阻害または欠如、罹患率または死亡率の減少、腫瘍の腫瘍形成能、腫瘍化頻度または腫瘍化能力の低下、腫瘍におけるがん幹細胞の数または頻度の低下、腫瘍化細胞の非腫瘍化状態への分化、またはいくつかの効果の組み合わせである。
【0020】
本明細書で使用されるように、用語「腫瘍/がん」は、良性(非がん性)または前がん性を含む、悪性(がん性)病変のいずれかの、過剰な細胞成長、増殖および/または生存から生ずる、組織のすべての腫瘍を指す。用語「腫瘍/がん」および「新生物」は、互換的に使用されうる。腫瘍およびがんは、良性、悪性、転移性および非転移性タイプを含み、進行している、悪化している、安定化したまたは寛解した腫瘍、またはがん、または転移のすべてのステージ(I、II、III、IVまたはV)またはグレード(G1、G2、G3など)を含む。
【0021】
本発明の第1の態様に従って、肺がんを有する対象の治療に使用するためのビタミンD又はその活性代謝物と同時、別々または連続投与するための、6-β-ナルトレキソールが提供される。
【0022】
本明細書で使用されるように、「ビタミンD」は、ビタミンDおよびビタミンDの代謝経路のすべての中間体または産物を指し、6-β-ナルトレキソールの細胞分裂停止効果をブーストすることができる代謝物を生じる。代謝物は、ビタミンDの前駆物質を指してもよく、本発明の治療を受ける対象に自然発生するビタミンDの合成経路に組み込まれることができる。あるいは、代謝物は、ビタミンDを利用する同化または異化プロセスから生じる分子を指しうる。ビタミンD代謝物の非限定的な例は、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、カルシジオール、およびカルシトリオール、1a-ヒドロキシコレカルシフェロール、25-ヒドロキシコレカルシフェロール、1a,25-ヒドロキシコレカルシフェロール、24,25-ヒドロキシコレカルシフェロールを含む。「活性」代謝物は、本発明の文脈において使用されることができる代謝物である。ビタミンDまたはその活性代謝物の投与計画は、当該技術分野の当業者に周知であろう。用語ビタミンDは、上記のすべての薬学的に許容される塩も包含する。本発明において使用するためのビ
タミンDの特に適切な代謝物は、カルシトリオールである。発明者らは、カルシトリオールを特定の用量の6-β-ナルトレキソールとともに同時投与すると、6-β-ナルトレキソールの細胞分裂停止効果を増強することを示してきた。カルシトリオールは、単独で肺がん細胞に投与しても独立した細胞分裂停止効果を有さないように思われる。
【0023】
本明細書で使用されるように、用語「同時投与」または「同時に」または「同時の」、「連続」または「別々」は、6-β-ナルトレキソールとビタミンD生成物の投与が同じ治療計画の一部として生じることを意味する。
【0024】
「同時」投与は、本明細書において定義されるように、6-β-ナルトレキソールとビタミンD産物をお互いに約2時間または約1時間未満以内に投与することを含み、さらに好ましくは同時である。
【0025】
「別々」投与は、本明細書において定義されるように、6-β-ナルトレキソールとビタミンD産物を約12時間、または約8時間、または約6時間または約4時間または約2時間以上離して投与することを含む。
【0026】
「連続」投与は、本明細書において定義されるように、6-β-ナルトレキソールとビタミンD産物を各々複数の分割量および/または用量および/または別の機会に投与することを含む。6-β-ナルトレキソールは、ビタミンD産物の投与前または後に患者に投与されうる。あるいは、ビタミンD産物は、6-β-ナルトレキソールを用いた治療が終わったあとに患者に適用し続けてもよい。
【0027】
他の実施例において、6-β-ナルトレキソールとビタミンDは同時に投与される。
【0028】
1つの実施例において、ビタミンD産物は、少なくとも40ng/ml、より好ましくは少なくとも50ng/mlの対象の血中ビタミンD濃度にするのに十分な量で患者に投与される。好ましくは、血中ビタミンD濃度は、40~220ng/mlに上昇し、より好ましくは、血中ビタミンD濃度は、40~90ng/mlに上昇する。
【0029】
十分な量は、投与を受ける患者の特定のパラメータをルーチン的に試験することにより当業者によって測定されることができ、特定のパラメータは、年齢、体重、性別、病歴および/または喫煙、アルコール消費量および運動の水準を含む他の生活習慣の因子等であるが、これに限定されない。さらに、当業者は用量がビタミンD血中濃度を十分な量に上昇するのに十分となっているかを対象から得られた生物学的試料にルーチン的に生化学的および分析的試験を実行することにより確かめることができる。好ましくは、分析が実行される試料は、血液である。そのような周知の試験の例は、マススペクトロメトリーであり、ビタミンDまたはその活性代謝物のレベルを定量的に測定することができるが、これに限定されない。十分な量は従って、所望の血中ビタミンD濃度を達成する量である。所望の濃度は、ビタミンDまたはその活性代謝物の用量を単回投与した後または反復投与した後に達成されることができる。ビタミンD産物と6-β-ナルトレキソール産物が同時に投与されることになっている場合、6-β-ナルトレキソール産物を投与する前にビタミンD血中濃度が所望の範囲にあるかどうかは重要でないが、ただしビタミンD産物が血中ビタミンD濃度を所望の濃度範囲に上昇するのに十分な量投与されるという条件のもとである。患者から得られた生物学的試料中のビタミンDまたはその活性代謝物の濃度を測定するための他の方法は、当業者に周知であろう。特定の実施例において、血中ビタミンD濃度を特定のレベルを超えて上昇させるのに十分なビタミンDの量は、ビタミンD産物の「治療有効量」と呼ばれる。
【0030】
他の実施例において、6-β-ナルトレキソールは、対象に使用するためであり、対象
は、抗がん剤を用いた治療を受けているまたは受けるよう選択されている。
【0031】
さらにその第1の態様に従って、抗がん剤は、PI3-キナーゼ阻害剤、AKT阻害剤、タキサン、抗代謝剤、アルキル化剤、細胞周期阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤および細胞毒性抗体から成る群より選択されうる。抗がん剤は、すべての従来の方法で投与されることができ、投与方法は使用される抗がん剤に大きく依存する。従って、とりわけ、非経口、経口、舌下、経鼻および/または肺性経路による投与が想定される。
【0032】
抗がん剤がPI3-キナーゼ阻害剤である場合、適した例は、ワートマニン、LY294002、デメトキシビリジン、IC87114、NVP-BEZ235、BAY 80-6946、BKM120、GDC-0941、GDC-9080を含み、その組み合わせ、および上記のすべての薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物およびプロドラッグを含むが、これに限定されない。
【0033】
抗がん剤がAKT阻害剤である場合、適した例は、MK-2206、GSK690693、ペリフォシン、PHT-427、AT7867、ホノキオール、PF-04691502を含み、その組み合わせ、および上記のすべての薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物およびプロドラッグを含むが、これに限定されない。
【0034】
抗がん剤がタキサンである場合、適した例は、パクリタキセルおよびドセタキセルを含み、その組み合わせ、および上記のすべての薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物およびプロドラッグを含むが、これに限定されない。
【0035】
抗がん剤が抗代謝剤である場合、適した例は、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、カペシタビン、シトシンアラビノシド(シタラビン)、ゲムシタビン、6-チオグアニン、ペントスタチン、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、フルダラビンおよびクラドリビンを含み、その組み合わせ、および上記のすべての薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物およびプロドラッグを含むが、これに限定されない。ゲムシタビンは、特に好ましい抗代謝剤である。例として、ゲムシタビンは800~1200mg/m、好ましくは900~1100mg/m、例えば約1000mg/mまたは1000mg/mの用量(投与あたり)で投与されうる。
【0036】
抗がん剤がアルキル化剤である場合、適した例は、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、トロホスファミド、メルファラン(L-サルコリシン)、クロラムブシル、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン(BCNU)、ストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)、ダカルバジン(DTIC;ジメチルトリアゼノイミダゾールカルボキサミド)、テモゾロミドおよびオキサリプラチンを含み、その組み合わせ、および上記のすべての薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物およびプロドラッグを含むが、これに限定されない。シクロホスファミドおよびオキサリプラチンは特に好ましいアルキル化剤である。例として、オキサリプラチンは、65~105mg/m、好ましくは75~95mg/m、例えば約85mg/mまたは85mg/mの用量(投与当たり)で投与されうる。例として、シクロホスファミドは、1800mg/mまで、例えば400~1800mg/mの用量(投与当たり)で投与されうる。
【0037】
抗がん剤が細胞周期阻害剤である場合、適した例は、エポチロン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、スタウロスポリン/UCN-01、17AAG、XL844、CHIR-124、PF-00477736、CEP-3891、フラボピリドール、ベルベリン、P276-00、テラメプロコル、イソフラボンダイゼイン、BI2536、BI6727、GSK461364、シクラポリン、ON-01910、NMS-P937、TAK
-960、イスピネシブ、モナストロール、AZD4877、LY2523355、ARRY-520、MK-0731、SB743921、GSK923295、ロナファーニブ、proTAME、ボルテゾミブ、MLN9708、ONX0912、CEP-18770を含み、その組み合わせ、および上記の任意の薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物およびプロドラッグを含むが、これに限定されない。細胞周期阻害剤の特に適した例は、ヘスペラジン、ZM447439、VX-680、MLN-8054、PHA-739358、AT-9283、AZD1152、MLN8237、ENMD2076、SU6668を含み、その組み合わせ、ならびにオーロラキナーゼの他の阻害剤を含み、そして上記のすべての薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、包接化合物およびプロドラッグを含むが、これに限定されない。好ましくは、細胞周期阻害剤は、フラボピリドール、リボシクリブ、スタウロスポリン/UCN-01、アベマシクリブおよびパルボシクリブ、ならびにその任意の組み合わせから成るリストより選択される。特定の実施例において、細胞周期阻害剤は、フラボピリドール、リボシクリブ、スタウロスポリン/UCN-01、アベマシクリブおよびパルボシクリブ、ならびにその任意の組み合わせから成るリストより選択される。
【0038】
他の実施例において、6-β-ナルトレキソールは、肺がんを有する対象の治療に使用するためであり、対象は細胞周期阻害剤又は細胞分裂停止を誘導する薬剤を用いる治療を受けている又は受けるよう選択されている。6-β-ナルトレキソールが細胞分裂停止を誘導する能力は、細胞周期阻害剤である抗がん剤の治療効果に特に有益な効果を有する可能性が高い。本明細書において定義されるように、「細胞分裂停止」は、細胞の成長と増殖を阻害することを指す。細胞周期阻害剤は、細胞周期の進行を直接的にまたは間接的に促進する細胞性因子の活性を阻害することにより機能する。細胞周期阻害剤の非限定的な例は、DNAトポイソメラーゼ阻害剤である。DNAトポイソメラーゼは、DNA複製および修復時にDNAのほどき(unwinding)と巻き戻し(rewinding)の原因となる。DNAトポイソメラーゼを阻害すると、このようにDNAの複製を阻害して細胞分裂停止を誘導する。がん細胞の有害な代謝プロファイルは、続いて修復されないDNA変異が蓄積することに起因してDNA損傷応答経路が活性化しうる。DNA損傷応答経路が活性化すると、最終的にがん細胞内のアポトーシス促進性のカスケードが活性化し、がん細胞死につながる。このように、細胞周期阻害剤によって引き起こされる細胞分裂停止は、後の阻害剤の細胞毒性活性に関連付けられる。細胞周期阻害剤を6-β-ナルトレキソールと一緒に投与することにより細胞分裂停止をさらにブーストすると、このクラスの抗がん剤の細胞障害効果をさらに増強するだろう。この有益な効果は、細胞周期阻害剤である全ての抗がん剤および細胞分裂停止を誘導する全ての薬剤に利用可能であると想定される。
【0039】
他の実施例において、細胞周期阻害剤は、フラボピリドール、ribocilib、スタウロスポリン/UCN-01、アベマシクリブ及びパルボシクリブ、ならびにその任意の組み合わせから成る群より選択される。
【0040】
本明細書において使用されるように、用語「がん細胞」は、腫瘍またはがんに由来する細胞または不死化細胞株を指す。
【0041】
6-β-ナルトレキソールは、単独でまたはビタミンDと併用してのいずれかで、第1の治療期にそれを必要とする対象に投与され、回復期が続き、回復期の後、対象に抗がん剤が投与され、回復期は6-β-ナルトレキソールと抗がん剤の投与が欠如することにより特徴づけられている。継続投与とは対照的に回復期を使用すると、継続投与と比較したときに細胞数が非常に減少する原因となる可能性が高い。第1の治療期に細胞の成長と増殖を阻害すると、がん細胞が存在する細胞周期の期を同期する。後の回復期に細胞分裂停止は一時的に延期される。その後抗がん剤を投与すると最終的に細胞毒性が引き起こされ
る。理論に拘束されるものではないが、細胞周期の特定の期でがん細胞を同期することにより6-β-ナルトレキソールは抗がん剤を整列された状態の細胞に作用させ、それにより感受性を増加させると思われる。細胞分裂停止時に停止される特定の細胞性プロセスは、アポトーシスを達成するために望ましく、従って連続的な細胞分裂停止により抗がん剤の最大細胞毒性効果は実現が妨げられうる。
【0042】
さらなる態様において、回復期は1~7日である。他の実施例において、回復期は2~5日である。他の実施例において、回復期は3~5日である。
【0043】
他の実施例において、6-β-ナルトレキソールは、6-β-ナルトレキソールの血漿中濃度を約0.34~3,400ng/ml、好ましくは約0.34~340ng/mlに上昇させるのに十分な投与量レベルで投与される。より好ましくは、6-β-ナルトレキソールは、6-β-ナルトレキソールの血漿中濃度を約0.34~34ng/mlに増加させるのに十分な投与量レベルで投与される。6-β-ナルトレキソールの投与を受けている対象から得られた血漿試料中の6-β-ナルトレキソール濃度を測定する方法は、当該技術分野における当業者に周知であろう。そのような方法の非限定的な例は、質量分析、核磁気共鳴分析、IR分光、または気相または液相クロマトグラフィーを含む。
【0044】
本発明の第2の態様において、治療有効量の6-β-ナルトレキソールを投与するステップを含み、その対象はビタミンD又はその活性代謝物も投与される、肺がんを有する対象の治療方法が提供される。
【0045】
用語「治療有効量」は、6-β-ナルトレキソールまたはその類似体またはいずれかの薬学的に許容される塩の量を指し、それにより好ましくは疾患の症状の重症度が減少するか、疾患の症状がない時期の頻度と期間が増加するか、または疾患の苦痛による機能障害または身体障害が防止される。用語「有効量」または「薬剤的な有効量」は、所望の生物学的または治療的結果を提供するのに十分な薬剤の量を指す。その結果は、疾患の徴候、症状または原因の1つ以上の減少、回復、寛解、緩和、遅延、および/または軽減または生命システムの任意の他の所望の変化であることができる。がんに関連して、有効量は、腫瘍を収縮させるおよび/または腫瘍の成長速度を減少させる(腫瘍の成長を抑制することなど)または他の望ましくない細胞増殖を防止または遅延させるのに十分な量を含みうる。いくつかの実施例においては、有効量は、がんまたは腫瘍の発生を遅延する、または生存時間を延長するまたは安定化を誘導するのに十分な量である。
【0046】
いくつかの実施例においては、治療有効量は再発を防止または遅延するのに十分な量である。治療有効量は、1回以上の投与で投与されることができる。治療製剤または複数の治療製剤の治療有効量は、以下の1つ以上、(i)がん細胞数の減少、(ii)腫瘍サイズの減少、(iii)がん細胞の周辺組織への浸潤の阻害、遅延、ある程度の緩徐および好ましくは停止、(iv)腫瘍転位の阻害(すなわちある程度の緩徐および好ましくは停止)、(v)腫瘍成長の阻害、(vi)腫瘍の発生および/または再発の防止または遅延、(vii)がんに関連する1つ状の症状のある程度の軽減を生じうる。
【0047】
例えば、腫瘍の治療について、「治療有効投与量」は、ベースライン測定値と比較して、例えば、少なくとも約10%、または約20%、または約60%またはそれより多いというような、少なくとも約5%腫瘍の収縮を誘導しうる。ベースライン測定値は、未治療の対象に由来しうる。
治療製剤または複数の治療製剤の治療有効量は、症状の重症度を低減するか、そうでなければ対象の症状を緩解させることができる。当該技術分野の当業者は、そのような量を対象のサイズ、対象の症状の重症度、および特定の組成または選択された投与経路等の因子に基づいて決定することができるだろう。
【0048】
特定の実施例において、方法は、抗がん剤を用いた治療を受けている対象の肺がんを治療するためである。好ましくは、その抗がん剤は、細胞周期阻害剤または細胞分裂停止を誘導する薬剤である。
【0049】
特定の実施例において、細胞周期阻害剤は、フラボピリドール、ribocilib、スタウロスポリン/UCN-01、アベマシクリブ及びパルボシクリブ、ならびにその任意の組み合わせから成る群より選択される。
【0050】
本発明の第2の態様の特定の実施例において、方法は、対象の肺がんを治療するためであり、その対象はビタミンDまたはその活性代謝物を同時に投与される。ビタミンDおよび6-β-ナルトレキソールは、別々に、同時にまたは連続に投与されうる。
【0051】
特定の実施例において、6-β-ナルトレキソールおよびビタミンD産物は同時に投与される。
【0052】
特定の実施例において、6-β-ナルトレキソールは、6-β-ナルトレキソールの血漿中濃度を約0.34~3,400ng/ml、好ましくは約0.34~340ng/mlに上昇させるのに十分な投与量レベルで投与される。
【0053】
特定の実施例において、6-β-ナルトレキソールは、第1の治療期に投与され、回復期の後、回復期に続く第2の治療期に抗がん剤を投与され、その回復期は6-β-ナルトレキソールかその抗がん剤のいずれかの投与を欠如することにより特徴づけられている。
【0054】
本発明の使用について、6-β-ナルトレキソールまたはその類似体あるいはいずれかの薬学的に許容される塩をビタミンDまたはその活性代謝物あるいはいずれかの薬学的に許容される塩と組み合わせた処方で含む医薬組成物が提供される。その医薬組成物は、経口水溶液、カプレット、カプセル、注射剤、不溶解性剤、座薬、トローチ剤または錠剤として提供されうる。特定の実施例において、その医薬組成物は、経口投与型、具体的には錠剤として提供される。
【0055】
本明細書で使用されるように、用語「医薬組成物」は、例えば、特定の量、例えば治療有効量の治療化合物または複数の化合物を、疾患を治療するためにヒトなどの哺乳類に投与される薬学的に許容される担体中に含む混合物を意味する。
【0056】
本明細書で使用されるように、用語「薬学的に許容される」は、化合物、材料、組成物および/または剤形を指し、医学的良識の範囲内で、哺乳類、特にヒトの組織、と接触をするのに適しており、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応および他の問題となる合併症を伴わず、妥当な利益/リスク率を示すものである。
【0057】
用語製剤は、固形剤形を提供する担体としての被包材料を有する活性成分(複数含む)の混合物を含むことを意図し、活性化合物は(他の担体の有無に関わらず)担体によって囲まれるので、担体は従って製剤に関連する。同様に、カシェーが含まれる。錠剤、散剤、カシェーおよびカプセル剤を経口投与に適した固形剤形として使用することができる。
【0058】
医薬製剤は、単位剤形であることができる。そのような剤形においては、組成物は、適切な量の活性成分(複数含む)を含む複数の単位投与量に分割される。単位剤形は、包装された製剤であることができ、包装は、例えば小瓶またはアンプル内に小包された錠剤、カプセル剤および散剤等の、別々の量の製剤を含む。単位剤形は、カプセル剤、カシェーまたは錠剤自体であることもでき、または適切な数の任意のこれらの包装された形である
ことができる。
【0059】
1つの実施例において、ビタミンD産物は、本発明の組成物に剤形あたり約400~10,000IUで利用される。さらに、本発明の組成物は、組成物の重量あたり約0.01~25%のビタミンD産物、好ましくは組成物の重量あたり約0.1~20%のビタミンD産物、より好ましくは組成物の重量あたり0.5~10%のビタミンD産物を含んでもよい。本発明の他の実施例において、組成物は、もしあれば、ビタミンD産物の分解を説明する適切な投与量のビタミンD産物を含む。
【0060】
1つの実施例において、6-β-ナルトレキソール産物は、本発明の組成物において治療有効量の6-β-ナルトレキソールを含む固形経口剤形で利用され、例えば、錠剤あたり約0.01~50mg、好ましくは約0.01~40mg、最も好ましくは約0.01~20mgの6-β-ナルトレキソール産物であってもよく、錠剤あたり約0.01mg、約0.05mg、約0.1mg、約0.3mg、約0.5mg、約1mg、約2mg、約3mg、約5mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mgまたは約50mgの6-β-ナルトレキソール産物であってもよい。特定の実施例において、組成物は、もしあれば、6-β-ナルトレキソール産物の分解を説明する適切な投与量の6-β-ナルトレキソール産物を含む。特定の実施例において、組成物は3~4.5mgの6-β-ナルトレキソール産物を含む。
【0061】
医薬組成物は、ビタミンD産物と6-β-ナルトレキソール産物の両者と薬学的に許容される賦形剤の混合物として提供されてもよい。本明細書において使用されるように、用語「賦形剤」は、固形経口投与製剤を調製するための製薬技術において共通して使用される薬学的に許容される成分を指す。賦形剤の分類の例は、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、滑剤、安定剤、フィラーおよび希釈剤を含むが、これに限定されない。使用される各賦形剤の量は、当該技術分野において通常の範囲内で変動しうる。全て参照により本明細書に組み入れられる以下の参考文献は、経口剤形を処方するために使用される技術および賦形剤を開示する。The Handbook of Pharmaceutical Excipients, 4th edition, Rowe et al., Eds., American Pharmaceuticals Association (2003); and Remington: the Science and Practice of Pharmacy, 20th edition, Gennaro, Ed., Lippincott Williams & Wilkins (2000)を参照する。
【0062】
適切な賦形剤は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、ラクトース一水和物、糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガント、結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コーンスターチ、コロイド性無水シリカ、二酸化チタン、低融点ワックス、カカオバター等を含む。
【0063】
他の実施例において、医薬組成物は、少なくとも1つの賦形剤を含む。
【0064】
本発明の全ての態様に従って、腫瘍/がんは、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、肺扁平上皮がんを含むが、これに限定されない。
【0065】
本発明を以下の非限定的な実施例により説明する。
【実施例
【0066】
実施例1-肺および大腸がん細胞に対する低用量の6-β-ナルトレキソールまたはCCTの投与
A549(肺がん)およびHCT116(大腸がん)細胞への6-β-ナルトレキソール(6BN)およびナルトレキソン(NTX)の投与に対する細胞分裂阻害効果をインビトロで調べた。まず、A549およびHCT116を6-ウェルプレートに2×10/ウェル濃度で播種して、一晩付着させた。次に細胞を0.001μM、0.01μM、0.1μMまたは1μMの6BNまたはNTXとともに48時間培養した。実験を、細胞に6-β-ナルトレキソールまたはナルトレキソンを投与していないコントロールと並んで実施した(図1)。
【0067】
次に細胞の生存率を、トリパンブルーを生細胞と死細胞を識別する方法として使用する細胞計数により測定した。細胞分裂停止は細胞数の減少により示されたが、細胞生存率の関連する減少はなかった。
【0068】
実験から、6-β-ナルトレキソールを投与すると肺がん細胞の細胞分裂停止が選択的に低下し、大腸がん細胞に高濃度で投与しても細胞分裂停止はあまり明白に低下しなかった。細胞生存率の低下は観察されなかった。
【0069】
実施例2-CTTと併用した低用量の6-β-ナルトレキソールまたはLDNの投与
次にカルシトリオールと一緒に低用量(10nM)または高用量(10μM)の6-β-ナルトレキソールまたはナルトレキソン(NTX)を同時投与する効果を検討した。細胞分裂停止および細胞毒性効果をA549およびHCT116の両細胞で検討した。A549およびHCT116を6-ウェルプレートに2×10/ウェル濃度で播種して、一晩付着させた。翌日低用量または高用量の6BNまたはNTXをカルシトリオールと分離してまたは組み合わせて細胞に加えて48時間培養した。A549細胞には10nMのカルシトリオールを同時投与し、HCCT116細胞には10nMのカルシトリオールを同時投与した。
【0070】
次に細胞生存率および細胞分裂停止を実施例1に記載するように測定した。
【0071】
実験から、カルシトリオールと同時投与すると、10nMの6BNで処置されたA549細胞は、細胞分裂停止の著しい減少を示した。HCCT116細胞で、またはカルシトリオールを10μMの6BNと一緒に投与しても、同等の効果は観察されなかった。さらに、結果から、100nMのカルシトリオールと10nMのNTXの組み合わせは、HCCT116細胞の生存率を低下させることが示された。細胞数の減少は、細胞分裂停止とは対照的に、細胞毒性によって達成され、従って、6BNとカルシトリオールの組み合わせはNTXに対してまったく別の機構を介して治療効果を達成することが実証された。
図1
図2