(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】軌道回転ピンの直径寸法を検査するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/20 20060101AFI20230519BHJP
B24B 5/42 20060101ALI20230519BHJP
B24B 49/04 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
B23Q17/20 A
B24B5/42
B24B49/04 A
(21)【出願番号】P 2020505316
(86)(22)【出願日】2018-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2018070839
(87)【国際公開番号】W WO2019025480
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】102017000088988
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】500200708
【氏名又は名称】マーポス、ソチエタ、ペル、アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】MARPOSS S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】カルロ、ダラグリオ
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/013710(WO,A1)
【文献】特表平11-513317(JP,A)
【文献】特表2016-531014(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0232117(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/20
B24B 5/42
B24B 49/04
B23B 5/18
B23C 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具保持スライド(2)を有する数値制御工作機械における幾何学的軸(8)の周りの軌道運動において、ピン(15)の直径寸法を検査するための装置であって、
検査される前記ピン(15)と連携するように適合された基準デバイス(10)と、
前記基準デバイス(10)と共に移動可能な測定デバイス(6)と、
前記基準デバイス(10)および前記測定デバイス(6)を移動可能に支持するために前記工具保持スライド(2)に固定され、その軌道運動で検査される前記ピン(15)に追従するように前記基準デバイス(10)が移動することを可能にするように適合され、検査状態において、検査される前記ピン(15)と前記基準デバイス(10)との間の正確な連携は、実質的に重力により維持される支持デバイス(4)と、
前記検査状態に向かうおよび前記検査状態から離れる前記装置の自動変位を制御するための制御デバイス(50)と
を有し、
前記制御デバイス(50)は、電気モータ(60)と、前記電気モータ(60)と前記支持デバイス(4)との間の伝達機構(62)とを備え、
前記電気モータは、
前記装置の静止位置と前記検査状態との間の前記基準デバイス(10)の中間位置として開始位置を定義するようにプログラムされるプログラム可能型電気モータ(60)であ
り、前記中間位置において前記検査状態から離れる前記装置の前記自動変位を停止することができることを特徴とする、
装置。
【請求項2】
前記プログラム可能型電気モータ(60)は、前記自動変位の変位速度を定義するようにプログラムされる、請求項
1に記載の装置。
【請求項3】
前記プログラム可能型電気モータ(60)は、検査される前記ピン(15)が軌道移動している間に前記検査状態に向かう前記装置の前記自動変位が行われる前記変位速度を定義するようにプログラムされるため、前記自動変位と前記ピン(15)の軌道移動の同期を可能にする、請求項
2に記載の装置。
【請求項4】
前記プログラム可能型電気モータ(60)は、前記変位速度を定義するようにプログラムされ、それにより前記基準デバイス(10)と前記ピン(15)との間の接触は、前記ピン(15)が前記基準デバイス(10)から最大速度で実質的に離れて移動するときに生じる、請求項
3に記載の装置。
【請求項5】
前記プログラム可能型電気モータ(60)は、前記自動変位の開始瞬間を定義するようにプログラムされ、それにより前記基準デバイス(10)と前記ピン(15)との間の前記接触は、前記ピン(15)が前記基準デバイス(10)から前記最大速度で実質的に離れて移動するときに生じる、請求項
4に記載の装置。
【請求項6】
前記基準デバイスの前記開始位置は、較正段階で取得される、請求項1から
5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記伝達機構(62)は、前記支持デバイス(4)の構成要素に結合されたドライバ(68)と、前記プログラム可能型電気モータ(60)に結合されたウォーム(64)と、前記ドライバ(68)に結合された前記ウォームに結合されたヘリカルギアホイール(66)とを含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記ドライバ(68)は、回転するように適合され、実質的に平坦なセクション(71)を有するシャフト(72)と前記ドライバ(68)の蝶形のシート(70)との間のバックラッシュを有する結合の手段によって前記支持デバイス(4)の構成要素に結合される、請求項
7に記載の装置。
【請求項9】
前記ドライバ(68)は、前記ドライバ(68)の前記回転中に前記蝶形のシート(70)の内側に突出して前記シャフト(72)と前記ドライバ(68)との間の相対回転を拘束し、前記支持デバイス(4)
の位置をロックするように適合されたボルト(74)を含む、請求項
8に記載の装置。
【請求項10】
前記基準デバイス(10)の配置を前記ピン(15)上、前記装置の検査状態に向けて案内するための前記支持デバイス(4)に関連付けられた案内機構を含む、請求項1から
9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記基準デバイス(10)は、前記ピン(15)の表面と係合するように適合されたベアリングおよび基準面を有するV字形デバイスである、請求項1から
10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記工具保持スライド(2)は、研削ホイール(1)を担持し、前記制御デバイス(50)は、前記研削ホイールの摩耗を補償するための機構を含む、請求項1から
11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
工具保持スライド(2)を有する数値制御工作機械上の既知の回転速度での幾何学的軸(8)の周りの軌道運動において、ピン(15)の直径寸法を検査するための方法であって、装置は、
検査される前記ピン(15)と連携するように適合された基準デバイス(10)と、
前記基準デバイス(10)と共に移動可能な測定デバイス(6)と、
前記基準デバイス(10)および前記測定デバイス(6)を移動可能に支持するために前記工具保持スライド(2)に固定され、その軌道運動で検査される前記ピン(15)に追従するように前記基準デバイス(10)が移動することを可能にするように適合された支持デバイス(4)と、
検査状態に向かうおよび検査状態から離れる前記装置の変位を制御するためのプログラム可能型電気モータ(60)を備え、前記検査状態において、前記基準デバイス(10)は、検査される前記ピン(15)上に静止する制御デバイス(50)と
を含み、
前記方法は、必ずしもこの順序である必要はない以下のステップ:
前記基準デバイス(10)が前記ピン(15)から離間する前記装置の開始位置を定義することと、
前記ピン(15)の一致位置を定義することであって、前記基準デバイス(10)は、前記一致位置で前記ピン(15)と係合することができることと、
前記既知の回転速度に基づいて、前記ピンがその軌道運動において、所定の角度位置と前記一致位置との間の経路をカバーするために必要な進行時間を計算することと、
前記装置の変位速度を定義し、前記ピン(15)の前記開始位置から前記一致位置に前記装置を変位させるのに必要な接近時間を計算することと、
前記進行時間および接近時間に基づいて遅延を計算することと、
前記ピン(15)がその軌道運動中に前記所定の角度位置に位置する通過瞬間を検出することと、
前記通過瞬間および前記遅延に基づいて開始瞬間を計算することと、
前記開始瞬間において、前記開始位置から前記検査状態への前記装置の変位を制御することと
を含む、方法。
【請求項14】
前記一致位置は、前記幾何学的軸(8)と位置合わせされ、前記ピン(15)がその経路の下死点に向かって軌道移動している前記ピン(15)の中心位置として選ばれる、請求項
13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具保持スライドを有する数値制御工作機械における幾何学的軸の周りの軌道運動において、ピンの直径寸法を検査するための装置であって、検査されるピンと連携するように適合された基準デバイスと、基準デバイスと共に移動可能な測定デバイスと、基準デバイスおよび測定デバイスを移動可能に支持するために工具保持スライドに固定され、その軌道運動で検査されるピンに追従するように基準デバイスが移動することを可能にするように適合された支持デバイスと、検査状態に向かうおよび検査状態から離れる装置の自動変位を制御するための制御デバイスとを有する装置に関する。
【0002】
本発明はまた、既知の回転速度での幾何学的軸の周りの軌道運動において、ピンの直径寸法を検査するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、クランクシャフトにおいて、研削盤、例えばフライスまたは研削盤での機械加工の過程で幾何学的軸の周りを軌道運動して回転するクランクピンの直径寸法を検査するための前記特徴を有する装置は、本特許出願と同一の出願人によって出願された、国際公開第9712724号パンフレットで公開された国際特許出願に示されている。
【0004】
特に、引用した国際特許出願に示され記載される実施形態によれば、装置は、検査されるクランクピン上に静止し、実質的に重力によりクランクピンの表面との正しい連携を維持するV字形基準デバイスと、前記V字形基準デバイスに関連付けられ、引き込み位置から動作位置への変位中に同じクランクピンとの係合に入ることを意図した適切な表面を有する要素を備えた案内手段とを有する。
【0005】
国際特許出願の国際公開第9712724号パンフレットによる解決策は、計量学的観点から、小さな慣性力による優れた結果を保証し、本特許出願の出願人によって製造された同等の特徴を備えた装置の性能は、前記解決策の有効性および信頼性を確立している。
【0006】
異なるまたは追加の案内手段を用いる同様の装置は、例えば、同じく本特許出願と同一の出願人によって出願された欧州特許出願公開第1118833号明細書で公開された欧州特許出願に示されている。
【0007】
また、これらの解決策は、優れた性能を保証する。上述の解決策では、静止位置から制御状態への、およびその逆の変位は、典型的には複動油圧シリンダを備える油圧または空気圧駆動ユニットを備えた制御デバイスによって制御される。これらの周知の駆動ユニットは、特に制御された変位の速度、およびそのような変位中の基準デバイスの静止位置または他の開始/停止/立位位置の定義が関係する限り、使用の柔軟性が制限されており、例えば、回転速度、回転軸からの距離、または他の幾何学的特性が異なる軌道部品を検査するときにあらゆる調整を実質的に可能にしない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第9712724号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第1118833号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、例えば、クランクピン用の研削盤でのプロセス中検査のために、工作機械における軌道運動において円筒部品の寸法および/または形状検査のための装置を提供することであり、これは、精度および再現性の点で前述の特許出願による装置と少なくとも同じ性能を保証し、特に特定の用途の特性に基づいたサイクル時間の最適化に関して、使用の柔軟性に関する側面を改善することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この問題は、請求項1に記載の検査装置によって解決される。本発明による装置では、制御デバイスは、プログラム可能型電気モータと、伝達機構とを備える。ステッパまたは異なるタイプのモータとすることができるプログラム可能型電気モータの手段によって、装置、より具体的には基準デバイス(および基準デバイスと共に移動する測定デバイス)の変位速度は、特定のニーズに応じて、かつ特定の用途に基づいてサイクル時間を最適化するために柔軟な方法で選択することができる。例えば、検査状態に向かうおよび検査状態から離れる変位の速度は、検査されるピンの軌道回転速度に基づいて、そのようなピンの幾何学的特性も考慮に入れて個々に設定することが可能である。このようにして、基準および測定デバイスの変位をピンの回転と同期させ、例えば、基準デバイスが最も有利な瞬間に、典型的にはピンが実質的に最大速度で基準デバイスから離れて移動するときにピンと係合することを可能にする適切な変位速度を選ぶことを可能にし、したがって基準デバイスとピンとの間の機械的衝撃を最小限に抑える。プログラム可能型電気モータと支持デバイスとの間の伝達機構は、基準デバイス、典型的にはV字形基準デバイスがピン上に静止しており、その軌道運動で後者に追従しているときに機械的に干渉しないなどの特徴を有し、実質的に重力の影響によって正しい接触を維持する。
【0011】
プログラム可能型電気モータは、移動の再現性の向上を保証することに加えて、例えば、検査されるピンから別のピンに移行するときに必要な移動を最小限に抑えるように、装置の静止位置ならびに可能な中間位置、少なくとも1つの中間位置を柔軟かつ有利な方法で定義することを可能にし、ピンは、例えば同じクランクシャフトのクランクピンである。そのような静止/中間位置は、例えば、較正段階で自動的に取得するか、または異なる方法で設定することができる。
【0012】
加えて、本発明による電気機械的解決策は、油圧駆動ユニットおよび関連回路を用いる既知の解決策よりも単純かつ安価であり、例えば環境の保護の規則に準拠するためにそのようなデバイスによって必要とされる複雑かつ費用のかかる管理手順を必要としない。特に、本発明は、機械を装備するための直接的な費用を削減し、かつオイル廃棄費用を大幅に削減することの両方を可能にし、既知の技術によって利用可能になるものよりもはるかに優れた環境持続性特徴を保証する。本発明による電気機械的駆動解決策によって提供される別の利点は、空気圧または油圧駆動手段が用いられるときに起こるものとは対照的に、流体の粘性、ダクトの長さおよび動作温度などの要因による影響を受けない移動の滑らかさである。
【0013】
ここで、例示的かつ非限定的であると理解される、添付の図面に示される好ましい実施形態を参照して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】クランクシャフト用の研削盤の研削ホイールスライドに装着された既知の検査装置の側面図である。
【
図2】いくつかの部品が断面で示されている、
図1の既知の検査装置の詳細の拡大図である。
【
図5】極めて単純化して、本発明による装置のいくつかの特徴を示す図である。
【
図6】3つの異なる断面平面に沿った、本発明による装置の制御デバイスの縦断面図である。
【
図7】
図6の制御デバイスのいくつかの構成要素の分解図である。
【
図8】
図6の制御デバイスのいくつかの構成要素の拡大された異なる向きの斜視断面図である。
【
図9a】異なる動作位置にある
図6の制御デバイスのいくつかの構成要素の概略部分断面図である。
【
図9b】異なる動作位置にある
図6の制御デバイスのいくつかの構成要素の概略部分断面図である。
【
図9c】異なる動作位置にある
図6の制御デバイスのいくつかの構成要素の概略部分断面図である。
【
図9d】異なる動作位置にある
図6の制御デバイスのいくつかの構成要素の概略部分断面図である。
【
図10】動作の段階で示され、検査される軌道回転ピンと係合している本発明による検査装置の部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1および
図2は、クランクシャフトの寸法検査、特にピン、または工具、すなわち工具保持スライド2、より具体的には研削ホイールスライドによって担持され、幾何学的軸3を中心に回転する研削ホイール1を備えるコンピュータ数値制御(「CNC」)研削盤などの工作機械上を軌道運動して移動するクランクピン15の直径寸法の検査ための既知のタイプの装置を示す。装置は、クランクシャフトの処理中、ならびに/またはそのような処理の前および/もしくは後に検査を実行することができる。作業台は、回転の幾何学的軸8を定義する、図には示されていないスピンドルおよび死点を備える。機械加工されるクランクシャフトは、工作機械に装着され、主軸が幾何学的軸8と位置合わせされる。結果として、クランクシャフトの各クランクピン15は、軸8を中心に軌道運動を行う。クランクピン15は円形軌跡に追従して軸8を中心に偏心回転するが、工具保持スライド2に対するピンの軌跡は、点線によって描かれ、参照番号16によって示される弧によって実質的に表すことができる。
【0016】
図1および
図2の既知の装置は、ピン15の表面と係合することを意図した静止および基準面を備えた基準デバイス10、特にV字形デバイスと、フィーラ17の半径方向変位を検出し、処理および表示ユニット100に電気的に接続される、例えば欧州特許出願公開第11 18833号明細書で公開された先に引用した特許出願に示されているものと同様の、基準デバイス10に接続されて共に移動可能なこれ自体は既知の測定デバイス6とを備え、次いで後者は、(これ自体は既知の方法であり、図には示されていない)研削盤の数値制御に接続されている。フィーラ17は、検査されるピン15の表面に接触し、V字形基準デバイス10の二等分線と一致する、またはそれに対してわずかに角度を付けた測定方向に沿って移動するように基準デバイス10に接続され、相対的な静止および基準面の間でV字形基準デバイス10を通過する。支持デバイス4は、工具保持スライド2に固定され、移動可能に、すなわちV字形基準デバイス10および測定デバイス6の移動がその軌道運動で検査されるピン15に追従することを可能にするために、V字形基準デバイス10および測定デバイス6を支持する。支持デバイス4は、
図2の部分図に示すように、研削ホイール1の回転幾何学的軸3および検査されるクランクシャフトの回転幾何学的軸8に平行な第1の回転軸7を定義するピボットの手段によって回転する、第1の結合要素9を備える。次に、基準デバイス10を担持する第2の結合要素12は、軸3および8に平行な第2の回転軸11を定義する第2のピボットの手段によって結合要素9に回転可能に結合される。上記のように、機械加工中に検査されるクランクピン15は、工具保持スライド2に対して弧16に沿って移動するため、基準デバイス10は、ピン15上に静止するときに同様の軌跡に沿って、上から下へおよびその逆に、クランクピン15の軌道運動の回転に等しい毎分数回または数十回転の周期数の往復運動を伴って進行する。これは、現在の数値制御研削盤において、本発明による検査装置が工具保持スライド2によって担持されてクランクピン15の機械加工を行う間、後者が工具、特に研削ホイール1を機械加工される表面と接触状態に維持するようにクランクピン15を「追跡」して軌道移動するという事実に由来する。明らかなこととして、削り代の除去による前方閉鎖運動が横断方向「追跡」運動に追加される。
【0017】
案内機構は、V字形基準デバイス10の配置をピン15上、すなわち装置の検査状態に向けて案内するための支持デバイス4に関連付けられ、工具保持スライド2と第2の結合要素12との間に制限デバイス20を備える。例えば、欧州特許出願公開第11 18833号明細書で公開された先に引用した特許出願に記載されている案内機構は、支持デバイス4の構成要素の相互移動を拘束し、それにより装置の静止位置から検査状態に移行しながら、V字形基準デバイス10は、重力の影響下で、研削ホイール1のプロファイルに平行で、典型的にはそこから数ミリメートルの距離で研削ホイール1に非常に近い軌跡に追従するように拘束される。
【0018】
静止位置から検査状態に向かう、およびその逆、すなわち検査状態から離れる装置の自動変位を制御するための制御デバイス50は、例えば第1の結合要素9に作用する第1の軸7の周りで支持デバイス4を反時計回りまたは時計回りに回転させる、例えば油圧式の複動シリンダ38を備えた駆動機構を備える。機械的停止および装置の構成要素に作用する重力の力の影響により、第1の結合要素9の反時計回りの回転は、案内機構によって案内される、検査されるピン15に向かうV字形基準デバイス10の下降を引き起こし、一方で第1の結合要素9の時計回りの回転は、検査されるピン15から離れて、静止位置に向かうV字形基準デバイス10の上昇を引き起こす。
【0019】
図示しない追加の補償デバイスを設けて、研削ホイールスライド2上の支持デバイス4の位置の調整を可能にし、研削ホイール1の摩耗による検査されるピン15の位置変化を補償することができる。
【0020】
図3および
図4は、
図1および
図2の既知の装置の特徴の多くを備え、例えば研削盤の工具保持スライドに同様に固定されることを意図した本発明による装置を示す。
図3および
図4の装置の制御デバイス50は、上述の制御デバイスとは異なる特徴を有し、プログラム可能型電気モータ60、好ましくは必ずしもステッピングモータではないが、モータ60と支持デバイス4との間の伝達機構62を含む。伝達機構は、例えば
図6に示されており、3つの異なる断面平面に沿った断面が2つの太い破線によって区切られている。
【0021】
図5は、可能な伝達機構62のいくつかの構成要素を非常に概略的に示しており、特に、ウォーム64と、ウォーム64に結合されたヘリカルギアホイール66とを備える。ドライバ68は、ウォーム64およびヘリカルギアホイール66を介してプログラム可能型電気モータ60に結合され、支持デバイスの構成要素、特に結合要素9と連携する。
図6、
図7、
図8および
図9a~
図9dは、例示的な実施形態のみを表す特定の伝達機構の詳細を示す。特に、伝達機構62は、プログラム可能型電気モータ60に結合された伝達本体63を備え、前記ウォーム64、ヘリカルギアホイール66およびドライバ68を適切なシートに収容する。ドライバ68は、ヘリカルギアホイール66と同軸に回転する実質的に回転対称を有する要素によって形成され、
図7および9にも見られる蝶形のシート70を備え、これは、
図9a~
図9dに示すように、結合要素9に接続された回転シャフト72の平坦端部部分71を収容し、一連の移動およびいくつかの内部構成要素が互いにどのように連携するかを表す。ドライバ68と支持デバイスの構成要素、特に結合要素9は、回転シャフト72の平坦端部部分71と蝶形のシート70との間に隙間を有する結合によって相互に接続される。
【0022】
ドライバ68は、例えば、さらなる対のギア65の手段によってモータ60によって駆動される、ウォーム64に結合されたヘリカルギアホイール66に接続される。ドライバ68は、実質的に円筒形の外側表面を有する部分77を有し、その一部76も円筒形であるがより小さい直径を有する。ドライバ68の部分77を収容する伝達本体63のシート67も実質的に円筒形であり、より大きい半径方向寸法を有する一部69を含む。ドライバ68は、ボルト74およびボルト74を外向きに押すばね75を収容する蝶形のシート70と連通する貫通した実質的に半径方向の穴73を定義する。上述のように、回転シャフト72は、支持デバイス4の結合要素9に接続される。
【0023】
「研削ホイール摩耗回復」機構、または研削ホイール摩耗補償機構は、シャフト80(
図6)であって、シャフト80の回転軸、またはシャフト軸83に対して偏心して配置された2つのローラを両端で支持するシャフト80と、ドライバ68の部分77の円筒面と接触している内側ローラ82と、支持デバイス4に作用する、より具体的には制限デバイス20と連携する外側ローラ84(
図3および
図4にも見られる)とを含む。
【0024】
図9aでは、測定位置、すなわち検査状態での機構が示されており、V字形基準デバイス10は、ピン15上に静止しており、回転シャフト72の平坦端部部分71が蝶形のシート70の広い部分で自由に回転することができるため、自由に移動する(
図9aは、それらの間で回転シャフト72の平坦端部部分71が自由に回転することができる2つの可能な限界位置を示す)。外側ローラ84は、内側ローラ82がより小さい直径を有するドライバ68の一部76上に静止しているので、後退位置にある。モータ60は、静止状態にある。
【0025】
静止位置(
図9bおよび
図9c)に向かう後退方向の移動の段階において、ドライバ68は、回転を開始し(
図9a~
図9dを参照して、反時計回り方向に)、シャフト72を引き始め、次いで結合要素9を持ち上げる。同時に、外側ローラ84は、シャフト軸83を中心に同じ方向に回転し、その偏心のために、実際には、以前に想定された位置に対して(
図4を参照して、右に向かって)前進する。
【0026】
この点まで、ばね75によって押されたボルト74は、シート67のより大きい半径方向寸法を備えた一部69の表面と接触したままであり、蝶形のシート70内に突出しない。
【0027】
図9cの状態から
図9dの状態まで、回転シャフト72の平坦端部部分71を同伴するドライバ68の反時計回りの回転が継続し、同時にボルト74は、ばね75の推力により、その上に静止するドライバ68を収容するシート67の表面の直径の変動に遭遇し、蝶形のシート70の内側に突出するように押されるため、シャフト72とドライバ68との間の相対回転を拘束する。これにより、静止位置が、重力の力により静止位置を超えて後退方向における装置のさらなる移動を引き起こし得る支持デバイス4の構成要素の配置に対応するとき、第1の結合要素9の位置をロックすることを可能にする。
【0028】
静止位置から検査状態への移行の段階中、プロセスは、反対である。検査状態に向かって移動すると、ドライバ68の時計回り(
図9a~
図9dの図を参照)の回転の過程において、内側ローラ82が回転されて外側ローラ84の偏心回転を引き起こすことにより、V字形デバイス10が検査されるピン15に近づくと、外側ローラ84の表面は、制限デバイス20に対して後退して(
図4を参照して左に向かって)第1の回転軸7の周りの支持デバイス4の可能な小さいさらなる回転のための空間を残し、そのような小さいさらなる回転により、研削ホイール1の摩耗を回復させることが可能になり、ピン15の小さな変位を引き起こす(
図4を参照して左に向かって)。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、ヘリカルギアホイール66とドライバ68は互いにしっかりと接続されておらず、より具体的には4つ以上のゴムパッド78(
図8)がそれらの間に配置され、ダンパとして作用し、急激なトルク変動を吸収するように非常に小さい相互回転を可能にする。
【0030】
プログラム可能型電気モータ60を備えた制御デバイス50は、上述の自動変位の速度、すなわち、V字形基準デバイス10が検査状態に向かっておよび検査状態から離れて移動する変位速度を柔軟に定義および調整することを可能にする。特に、ある特定の位置から開始して、装置の自動変位が発生し、V字形基準デバイス10がクランクピン15に向かって移動し、後者が軌道移動する速度を定義することができるため、2つの移動(すなわち、装置の自動変位およびクランクピン15の軌道移動)の同期を可能にし、それによりV字形基準デバイス10とクランクピン15との間の接触は、好ましくはクランクピン15がV字形基準デバイス10から最大速度で実質的に離れて移動するとき、実質的にあらゆる大きな衝突なしに穏やかに生じる。これは、ピン15が中心位置にあり、研削ホイール1およびクランクシャフトの回転幾何学的軸3および8と位置合わせされ、その経路の下死点に向かって下降しているときに起こる(
図10)。より具体的には、既知の回転速度で軌道回転しているピン15の直径寸法を検査するための本発明による方法は、必ずしもこの順序である必要はない以下のステップを含む。装置の開始位置、すなわち基準デバイス10がピン15から離間する位置、ならびにピン15の一致位置、すなわち基準デバイス10がピン15と係合することが望ましい位置が定義される。一致位置は、例えば、好ましい実施形態によれば、研削ホイール1およびクランクシャフトの回転幾何学的軸3および8と位置合わせされ、ピン15がその経路の下死点に向かって下降している上述の中心位置として選ばれる。進行時間は、ピン15の既知の回転速度、すなわち、ピンがその軌道運動において、所定の角度位置と一致位置との間の経路をカバーするために必要な時間に基づいて計算される。そのような経路は、360°よりも低いまたは高い角度に対応し得る。装置の変位速度が計算され、接近時間が装置、より具体的には基準デバイス10をピン15の開始位置から一致位置に変位させるのに必要な時間として計算される。変位速度は、接近時間が進行時間よりも短くなるように設定され、遅延は、前記進行および接近時間に基づいて計算される。通過瞬間は、ピン15がその軌道運動中に上述の所定の角度位置に位置する瞬間として、例えばこれ自体は既知であり図面には示されていない近接スイッチの手段によって検出され、開始瞬間は、上述の通過瞬間および遅延に基づいて計算される。開始瞬間において、設定された変位速度での開始位置から検査状態への装置の変位が制御される。このようにして、V字形基準デバイス10は、上記で定義したように後者の一致位置でピン15と係合し、部品間の接触は、負の跳ね返りおよび物理的損傷を引き起こし得るあらゆる大きな衝突なしで起こる。
【0031】
V字形基準デバイス10がクランクピン15上に静止するとき、その移動は、モータ60から完全に独立している。特に、検査状態において、クランクピン15とV字形基準デバイス10との間の正確な連携は、実質的に重力により、より具体的には重力の力およびクランクピン15の推力によって生じる結合要素9、12の変位により維持され、後者は、検査装置の構成要素の重力の力に対抗する。
【0032】
軌道運動におけるV字形基準デバイス10の移動とピン15の移動との間の正確かつ柔軟な同期を行う可能性により、V字形基準デバイス10および測定デバイス8がクランクピン15上に運ばれるときにクランクシャフトが回転することができる最大回転速度の限界を上げることが可能である。したがって、導入段階中に機械サイクルを中断または減速する必要なく、研削サイクルを最適化することが可能になる。
【0033】
モータ60をプログラムする可能性により、非常に単純かつ柔軟な方法で静止位置を定義する可能性など、他の利点を提供する。また、検査状態から離れて移動する支持デバイス4の後方移動を停止することができる少なくとも中間位置を定義することも可能である。これにより、例えば、クランクシャフトの検査中にあるクランクピン15から次の検査されるクランクピン15に移行するとき、検査状態から静止位置までの全経路を回避することが可能になる。進行される経路の短縮により、時間の面で明らかな利点を可能にする。この場合、中間位置は、クランクシャフト部品の最大半径方向サイズを出るために必要な最小引き込みストロークに基づいて選択され、簡単にプログラムすることができる。一般に、本発明による装置においてモータ60をプログラムする可能性により、装置の任意の開始位置、すなわち基準デバイス10がピン15から離間する任意の位置を単純かつ柔軟な方法で定義することが可能になり、ピン15が軌道移動している間(例えば、上述の方法に従って)、またはピン15が静止状態にある間に検査状態に向かって変位する準備ができる。
【0034】
プログラム可能型電気モータ60の駆動、またはプログラミングデータの入力は、例えば、物理的I/Oデバイスまたはシリアル通信を介して行われ得る。プログラミングデータは、プログラム可能型電気モータ60に直接、またはより頻繁には、制御デバイス50に存在する電子ユニットを介して入力することができる。I/Oデバイスは、工作機械の数値制御に接続することができる。
【0035】
好ましい実施形態では、本発明による装置は、統合された診断機能を有する。特に、制御デバイス50は、電子ユニットに加えて、位置センサ、エンコーダおよび/または信号が電子ユニットによって処理されてシステムの移動および安全パラメータを監視し、例えば装置の移動可能な部品の位置、または変位速度を知る他の構成要素を備える。
【0036】
静止位置および任意の中間位置は、較正段階で非常に簡単に定義することができる。