IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許-パワーエレクトロニクスユニット 図1
  • 特許-パワーエレクトロニクスユニット 図2
  • 特許-パワーエレクトロニクスユニット 図3
  • 特許-パワーエレクトロニクスユニット 図4
  • 特許-パワーエレクトロニクスユニット 図5
  • 特許-パワーエレクトロニクスユニット 図6
  • 特許-パワーエレクトロニクスユニット 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】パワーエレクトロニクスユニット
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20230519BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020573312
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2019063487
(87)【国際公開番号】W WO2020011438
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】102018211520.6
(32)【優先日】2018-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エガー ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ガンツ マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ホーヴァット ヤンコ
(72)【発明者】
【氏名】クル ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】セヴァー ピーター
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-514252(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0032937(US,A1)
【文献】特開2006-310363(JP,A)
【文献】特開2013-247354(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0143000(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0033932(US,A1)
【文献】特開平06-104358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの回路基板(2)と冷却装置(6)とを備えたパワーエレクトロニクスユニット(1)であって、
前記少なくとも1つの回路基板(2)は、少なくとも1つの電子部品(3a、3b)を備え、該電子部品は、伝熱領域(5a、5b)において、前記少なくとも1つの回路基板(2)の電子部品側(2a)に、熱伝達的に平坦に配置されており、
前記冷却装置(6)は、冷却流体(8)が、入口(9)から出口(10)に流れることができる少なくとも1つの衝突噴射チャンバ(7)を備え、
前記衝突噴射チャンバ(7)は、電子部品側(2a)とは反対側に位置する冷却側(2b)で、少なくとも1つの回路基板(2)に熱伝達的に接続されており、少なくとも1つの電子部品(3a、3b)で発生した電力散逸は、伝熱領域(5a、5b)において、衝突噴射チャンバ(7)内の冷却流体(8)に伝達され、
前記冷却装置(6)は、前記衝突噴射チャンバ(7)内に配置され、少なくとも1つの流入ノズル(12)を有する少なくとも1つのノズルプレート(11)を備え、該ノズルプレート(11)は、前記衝突噴射チャンバ(7)を、少なくとも1つの流入ノズル(12)を介して互いに流体的に接続する少なくとも1つの流入チャンバ(13)と少なくとも1つの流出チャンバ(14)とに区画し、
前記少なくとも1つの流入ノズル(12)は、前記少なくとも1つの電子部品(3a、3b)の伝熱領域(5a、5b)から離間して配置され、前記入口(9)を通って流入する冷却流体(8)は、前記少なくとも1つの電子部品(3a、3b)の伝熱領域(5a、5b)に向けて、加速しながら導かれ、
前記少なくとも1つの流入チャンバ(13)は、前記入口(9)と、前記少なくとも1つの流入ノズル(12)とを、互いに流体的に接続する流入通路(17)によって形成されており、
少なくとも1つの前記流入通路(17)は、一方の側が、前記少なくとも1つのノズルプレート(11)によって、他方の側が、前記ノズルプレート(11)に対向して配置された少なくとも1つのカバープレート(15)によって、区画され、
前記少なくとも1つの流出チャンバ(14)は、少なくとも1つの流出通路(18)を介して、前記出口(10)に流体的に接続され、前記流出通路(18)は、一方の側が、前記カバープレート(15)によって、他方の側が、前記ノズルプレート(11)によって区画されており、
前記少なくとも1つの流出通路(18)は、前記ノズルプレート(11)に形成された流出開口部(19)を介して、前記流出チャンバ(14)に流体的に接続され、前記ノズルプレート(11)は、当該ノズルプレート(11)を通して前記少なくとも1つの流出通路(18)を前記流出チャンバ(14)に流体的に接続するパワーエレクトロニクスユニット。
【請求項2】
前記衝突噴射チャンバ(7)は、少なくとも一方の側において、前記回路基板(2)によって、外部から区画されている、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスユニット。
【請求項3】
前記ノズルプレート(11)の少なくとも1つの流入ノズル(12)は、ノズルオリフィス(20)と、該ノズルオリフィス(20)を取り囲み、前記ノズルプレート(11)から前記流出チャンバ(14)に向けて突出して形成されたノズル壁(23)とで構成され、前記入口(9)を通って流入する冷却流体(8)は、前記電子部品(3a、3b)の伝熱領域(5a、5b)に向けて導かれる、請求項1または2に記載のパワーエレクトロニクスユニット。
【請求項4】
前記少なくとも1つのノズルプレート(11)は、前記少なくとも1つの回路基板(2)と平行で、かつ、前記少なくとも1つの回路基板(2)から間隔をおいて、前記衝突噴射チャンバ(7)内に配置され、前記少なくとも1つの流入ノズル(12)は、30°~150°の範囲の噴射角度で、前記伝熱領域(5a、5b)に向けられている、請求項1~3の何れかに記載のパワーエレクトロニクスユニット。
【請求項5】
前記噴射角度は、80°~100°の範囲である、請求項4に記載のパワーエレクトロニクスユニット。
【請求項6】
前記少なくとも1つの流入チャンバ(13)の流動断面積は、前記入口(9)から離れる方向に減少し、前記少なくとも1つの流出チャンバ(14)の流動断面積は、前記出口(10)に向かう方向に増加する、または、 前記少なくとも1つの流入チャンバ(13)の流動断面積、及び前記少なくとも1つの流出チャンバ(14)の流動断面積は、一定である、請求項1~の何れかに記載のパワーエレクトロニクスユニット。
【請求項7】
前記少なくとも1つのノズルプレート(11)に、少なくとも2つの流入ノズル(12)が隣接して形成され、少なくとも1つの前記流出開口部(19)は、隣接する流入ノズル(12)の間に配置されており、冷却流体(8)が、流入ノズル(12)を通って流出チャンバ(14)に流入するとともに、隣接する流入ノズル(12)の間の領域で、流出開口部(19)を通って、流出チャンバ(14)から流出する、請求項に記載のパワーエレクトロニクスユニット。
【請求項8】
なくとも1つの前記流入通路(17)は、前記ノズルプレート(11)及び/又は前記カバープレート(15)に形成されており、前記少なくとも1つの流出通路(18)は、前記ノズルプレート(11)及び/又はカバープレート(15)に形成されている、請求項1又は7に記載のパワーエレクトロニクスユニット。
【請求項9】
なくとも1つの前記流入通路(17)と、前記少なくとも1つの流出通路(18)とは、互いに平行に配置されている、請求項1、7又は8に記載のパワーエレクトロニクスユニット。
【請求項10】
前記パワーエレクトロニクスユニット(1)は、冷却側(2b)を互いに対向させた2つの回路基板(2)を備え、前記回路基板の間に、前記衝突噴射チャンバ(7)が配置され、
前記パワーエレクトロニクスユニット(1)は、互いに対向して前記少なくとも1つの流入チャンバ(13)を区画し、前記回路基板(2)に向かって前記流出チャンバ(14)を区画する2つのノズルプレート(11)を備える、請求項~9の何れかに記載のパワーエレクトロニクスユニット。
【請求項11】
前記少なくとも1つの流出チャンバ(14)は、少なくとも1つの側方流出通路(21)を介して、前記出口(10)に流体的に接続されるとともに、前記少なくとも1つの回路基板(2)、及び前記少なくとも1つのノズルプレート(11)に横方向に配置され、かつ、少なくとも1つの側板(22)によって、外部から区画されている、請求項1~1の何れかに記載のパワーエレクトロニクスユニット。
【請求項12】
前記流入チャンバ(13)は、前記側板(22)に形成された少なくとも1つの流入開口部(24)を介して、前記口()に接続され、前記流入チャンバ(13)及び前記入口(9)は、前記側板(22)を介して接続されている、請求項1に記載のパワーエレクトロニクスユニット。
【請求項13】
前記少なくとも1つのノズルプレート(11)は、互いに隣接して配置され、前記ノズルプレート(11)上に、少なくとも1つのフロー領域(16a、16b)を形成する複数の流入ノズル(12)を備え、
前記少なくとも1つのノズルプレート(11)の前記少なくとも1つのフロー領域(16a、16b)は、前記少なくとも1つの回路基板(2)の少なくとも1つの伝熱領域(5a、5b)に対向し、かつ、離間して配置されている、請求項1~1の何れかに記載のパワーエレクトロニクスユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の少なくとも1つの回路基板及び冷却装置を有するパワーエレクトロニクスユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なパワーエレクトロニクスユニットは、先行技術から既に知られている。パワーエレクトロニクスユニットは、DBC(Direct Bonded Copper)基板等の回路基板を備え、回路基板には、絶縁ゲート電極バイポーラトランジスタ(IGBT)、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、ダイオード等の電子部品が配置、相互接続されている。
【0003】
パワーエレクトロニクスユニットの動作中、電子部品に電力散逸が発生し、これにより、パワーエレクトロニクスユニット内の電子部品が加熱される。電子部品の動作温度は、電子部品に流れる電流に依存し、最大許容動作温度を満たさなければならない。ここで、動作温度は、動作状態(電流、電圧、周波数、位相角、変調度)及び冷却に依存する。最大許容動作温度及び温度変化の回数は、パワーエレクトロニクスユニットの動作を制限する要因となる。
【0004】
電力散逸を発散して、電子部品を損傷や故障から保護するためには、電子部品を冷却する必要がある。冷却は、直接または間接的に行われる。間接冷却の場合、電子部品は、熱接続層、いわゆる熱界面材料(TIM)を介して、冷却流体の流れる冷却プレート等のヒートシンクに接続される。
【0005】
熱接続層は熱抵抗に大きく寄与するため、熱流密度の高いパワーエレクトロニクスユニットは、熱接続層を介さずに直接冷却する必要がある。その際、回路基板は、冷却流体が流れる通路の壁となる。DBT基板等の回路基板は、セラミック板を介して電気的に絶縁されているので、冷却流体から電子部品を絶縁する必要がなく、回路基板だけでなく電子部品も直接冷却することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、既に知られているように、局所的な温度上昇、いわゆるホットスポットが、回路基板上に発生する可能性があり、これは、加熱されている個々の電子部品に発生する。局所的な温度上昇は、パワーエレクトロニクスの効率的な動作を決定づけるものであり、パワーエレクトロニクスユニットの動作温度を決定する。そのため、より少ない加熱を受ける電子部品があっても、パワーエレクトロニクスユニット全体を最適に動作させることができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題が解決するために、一般的なタイプのパワーエレクトロニクスユニットの改良、または少なくとも代替的な実施形態を提案することを目的とする。
【0008】
本発明によれば、上記目的は、独立請求項1の主題によって解決され、好適な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0009】
本発明は、パワーエレクトロニクスユニットをより効果的に動作させるために、パワーエレクトロニクスユニット内で発生する局所的な温度上昇、いわゆるホットスポットを特異的に平準化するという考え方に基づいている。
【0010】
本発明のパワーエレクトロニクスユニットは、少なくとも1つの回路基板と冷却装置とを備えている。少なくとも1つの回路基板は、少なくとも1つの電子部品を備え、該電子部品は、伝熱領域において、少なくとも1つの回路基板の電子部品側に、熱伝達的に平坦に配置されている。冷却装置は、冷却流体が、入口から出口に流れることができる少なくとも1つの衝突噴射チャンバ(impingement jet chamber)を備えている。衝突噴射チャンバは、電子部品側とは反対側に位置する冷却側で、少なくとも1つの回路基板に熱伝達的に接続されており、少なくとも1つの電子部品で発生した電力散逸は、伝熱領域において、衝突噴射チャンバ内の冷却流体(8)に伝達される。
【0011】
本発明によれば、冷却装置は、少なくとも1つの流入ノズルを有する少なくとも1つのノズルプレートを備えている。ノズルプレートは、衝突噴射チャンバ内に配置され、衝突噴射チャンバを、少なくとも1つの流入チャンバと、少なくとも1つの流出チャンバとに区画する。少なくとも1つの流入ノズルと、少なくとも1つの流出チャンバとは、流入ノズルを介して互いに流体的に接続されている。
【0012】
さらに、少なくとも1つの流入ノズルは、少なくとも1つの電子部品の伝熱領域から離間して配置され、これにより、入口を通って流入する冷却流体は、少なくとも1つの電子部品の伝熱領域に向けて、加速しながら導かれる。衝突噴射チャンバは、少なくとも一方の側部において、回路基板によって外部から区画されている。
【0013】
本発明におけるパワーエレクトロニクスユニットでは、冷却流体は、入口から流入チャンバに流れ、少なくとも1つの流路ノズルを介して流出チャンバに流出される。このようにして、ノズルプレートは、いわゆるプレナリーチューブ(plenary tube)を構成する。ここで、少なくとも1つの流入ノズルは、少なくとも1つの電子部品の伝熱領域から離間して配置されており、流入ノズルから流出した冷却流体が、加速されて伝熱領域に向かって導かれるようになっている。その際、伝熱領域内の回路基板の冷却側に衝突する冷却流体は、衝突噴流の形で高速で衝突し、その結果、伝熱領域の伝熱係数が増大する。ここで、高速度とは、回路基板に衝突する前に流入ノズルから流出する冷却流体の流速が、回路基板に衝突した後、流出チャンバを出る前の冷却流体の流速よりも実質的に大きいことを意味する。これにより、冷却流体と回路基板との間の熱伝達係数に対応した熱流を、伝熱領域で有効に増加させることができる。
【0014】
少なくとも1つの電子部品において発生した電力散逸は、伝熱領域内で冷却流体に伝達されるので、電子部品は特異的に冷却することができ、その結果、回路基板内の局所的な温度上昇が特異的に平準化される。
【0015】
本実施形態において、少なくとも1つの電子部品の動作温度を低下させることができ、その結果、パワーエレクトロニクスユニット全体をより効率的に動作させることができる。衝突噴射チャンバが、一方の側の回路基板によって区画されている場合、冷却流体が回路基板の周りを直接循環することができ、これにより、回路基板が直接冷却される。回路基板がDBC基板である場合、各パワーエレクトロニクスユニットは、セラミック基板によって冷却流体から電気的に絶縁することができる。特に、冷却流体から各パワーエレクトロニクスユニットをさらに絶縁する必要がないので、回路基板と各パワーエレクトロニクスユニットを効率的に冷却することができる。
【0016】
好適には、少なくとも1つの流入ノズルが、ノズルプレートに、ノズルオリフィスと、ノズルオリフィスを取り囲み、ノズルプレートから流出チャンバに向けて突出するノズル壁とによって形成されいる。ノズルオリフィスは、ノズルオリフィスを流れるときの冷却流体の速度を決定する流動断面積を有する。ここで、流動断面積は、冷却流体が高速で伝熱領域の回路基板に衝突するように調整される。これにより、冷却流体を、ノズル壁によって伝熱領域に導くことができる。
【0017】
好適には、少なくとも1つのノズルプレートが、衝突噴射チャンバ内に、少なくとも1つの回路基板と平行に、かつ、少なくとも1つの回路基板から離間して配置されるとともに、少なくとも1つの流入ノズルが、噴射角度で伝熱領域に向けられている。ここで、噴射角度は、30°と150°の間、好ましくは80°と100°の間である。噴射角度は、冷却流体の噴射軸とノズルプレートとの間の角度として定義される。つまり、噴射角度は、冷却流体がノズルプレートに対して流入ノズルから離れる角度を示す。ノズルプレートが、互いに隣接して配置された複数の流入ノズルを有する場合、これらの流入ノズルは、異なる噴流角度で同じ伝熱領域に向けられ、この伝熱領域内の少なくとも1つの電子部品を、特に集中的に冷却することができる。
【0018】
本発明のパワーエレクトロニクスユニットの他の実施形態において、少なくとも1つの流入チャンバの流動断面積は、入口から離れるに従い減少し、少なくとも1つの流出チャンバの流動断面積は、出口に向かって増加している。本実施形態では、流入チャンバ内の冷却流体の速度を一定に保つことができ、その結果、複数の流入ノズルが互いに隣接して配置されたている場合、全ての流入ノズルを通る冷却流体は、同じ速度で流出し、入口からの流入ノズルの配置に拘わらず、各流入ノズルによる回路基板に対して、同一の冷却効果を発揮する。
【0019】
流出チャンバ内においても、冷却流体の速度を一定に保つために、流出チャンバの流動断面積は、出口に向かって徐々に大きくなっている。ここで、各流動断面積は、流出チャンバまたは流入チャンバ内の冷却流体の主な流れ方向に対して、横方向に決定される。また、少なくとも1つの流入チャンバの流量断面積、及び少なくとも1つの流出チャンバの流量断面積は、一定であってもよい。
【0020】
好適には、少なくとも1つの流入チャンバが、入口と、少なくとも1つの流入ノズルとを流体的に接続する少なくとも1つの流入通路によって形成されている。少なくとも1つの流入通路は、一方の側が、少なくとも1つのノズルプレートによって、他方の側が、ノズルプレートに対向して配置されたカバープレートによって、区画されている。このようにして、冷却流体を少なくとも1つの流入ノズルに特異的に導くことができ、冷却装置の構造をさらに簡略化することができる。
【0021】
好適には、少なくとも1つの流出チャンバは、一方の側が、ノズルプレートによって、他方の側が、カバープレートによって区画された少なくとも1つの流出通路を介して、出口に流体的に接続されている。少なくとも1つの流出通路は、ノズルプレートに形成された流出開口部を介して、流出チャンバに流体的に接続され、流出開口部は、ノズルプレートを介して、少なくとも1つの流出通路と流出チャンバとを流体的に接続されている。
【0022】
好適には、少なくとも1つの流入通路は、ノズルプレート及び/又はカバープレートに形成されている。また、少なくとも1つの流出通路は、ノズルプレート及び/又はカバープレート内に形成される。少なくとも1つの流入通路及び少なくとも1つの流出通路は、交互に、または追加的に、互いに平行に配置されている。
【0023】
好適には、少なくとも1つのノズルプレートにおいて、少なくとも2つの流入ノズルが互いに隣接して形成され、少なくとも1つの流出開口部が、隣接する流入ノズルの間に配置されている。これにより、冷却流体は、流入ノズルを通って流出チャンバ内に流れ、隣接する流入ノズルの間の領域で、流出開口部を通って流出チャンバから流出することができる。
【0024】
冷却流体が伝熱領域で回路基板に衝突すると、流出チャンバ内で、各流入ノズルに横方向に渦領域が発生する。隣接する流入ノズルで発生する渦領域は、隣接する流入ノズル間の領域に一致する。この渦領域に配置された流出開口部を介して、冷却流体が流出チャンバから流出することにより、流出チャンバから流出した冷却流体の戻り流による圧力損失が最小になる。これにより、冷却装置の効率を高めることができ、パワーエレクトロニクスユニットをより効率的に動作させることができる。
【0025】
好適には、少なくとも1つの流出チャンバは、少なくとも1つの横方向流出通路を介して、出口に流体的に接続されている。少なくとも1つの横方向流出通路は、少なくとも1つの回路基板、及び少なくとも1つのノズルプレート上で、少なくとも1つの側板によって、外部から区画されている。
【0026】
好適には、流出チャンバ及び流入チャンバは、互いに熱的に切り離されて構成されている。また、冷却装置の高さは、冷却側に対して垂直に定義され、このため、パワーエレクトロニクスユニットの設置スペースの要件を低減することができる。また、流入チャンバは、側板に形成された少なくとも1つの流入開口部を介して入口に接続されている。ここで、流入開口部は、側板を介して流入チャンバと入口とを接続する。
【0027】
より好適には、パワーエレクトロニクスユニットは、衝突噴射チャンバが配置されている間に、冷却側が互いに対向した2枚の回路基板を備えている。また、パワーエレクトロニクスユニットは、互いに対向して配置された2つのノズルプレートを備え、これらのノズルプレートは、互いに向かい合った、少なくとも1つの流入チャンバを区画するとともに、回路基板と向かい合った流出チャンバを区画する。
【0028】
このようなパワーエレクトロニクスユニットの構成により、2つの回路基板を冷却装置により冷却することができ、その結果、パワーエレクトロニクスユニットの冷却効率を向上させることができる。また、パワーエレクトロニクスユニットに必要な設置スペースと、パワーエレクトロニクスユニットの自重を、低減することができる。
【0029】
このようなパワーエレクトロニクスユニットの構成において、少なくとも1つの流出チャンバは、少なくとも1つの横方向流出通路を介して、出口に流体的に接続されている。ここで、少なくとも1つの横方向流出通路は、回路基板およびノズルプレート上で、少なくとも1つの側板によって、外部から横方向に区画することができる。
【0030】
また、側板に形成された少なくとも1つの流入開口部を介して、流入チャンバを入口に接続することができる。ここで、流入開口部は、側板を介して流入チャンバと入口とを接続する。
【0031】
好適には、少なくとも1つのノズルプレートは、互いに隣接して配置され、ノズルプレート上に、少なくとも1つのフロー領域を形成する複数の流入ノズルを備えている。少なくとも1つのノズルプレートの少なくとも1つのフロー領域は、少なくとも1つの回路基板の少なくとも1つの伝熱領域とは反対側に配置され、かつ間隔をあけて配置されている。
【0032】
フロー領域に配置された流入ノズルは、伝熱領域内の電子部品が複数の流入ノズルによって、効率的かつ集中的に冷却されるように、実質的に伝熱領域に向けられている。
【0033】
ノズルプレートは、ノズルプレート上に分散して配置された複数のフロー領域を構成してもよい。各フロー領域は、個別にまたはグループで、回路基板の冷却側の複数の伝熱領域に割り当てることができる。複数の伝熱領域を、個別にまたはグループで、各フロー領域に割り当ててもよい。個々のフロー領域は、その数、配置、互いの距離、あるいは流入ノズルの向きなどによって、互いに異なるものであってもよい。基本的に、各フロー領域の構成は、対応する伝熱領域の電子部品と一致させる。例えば、集中的に加熱される電子部品(例えば、半導体やダイオードなど)を冷却するためのフロー領域は、わずかに加熱される電子部品を冷却するためのフロー領域よりも、多くの流入ノズルを備えればよい。これにより、温度差、いわゆるホットスポットを回路基板上で平準化することができ、パワーエレクトロニクスユニットが効率的に動作する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、パワーエレクトロニクスユニットにおいて、僅かな加熱を受ける電子部品と、過度な加熱を受ける電子部品とを、異なる強度で冷却することができる。これにより、回路基板の温度差を平準化することができ、その結果、パワーエレクトロニクスユニットを効率的に動作させることができる。
【0035】
本発明のさらなる重要な特徴及び利点は、図面及び図面に関連する記載において説明される。
【0036】
上述した特徴、及び以下で説明する特徴は、本発明の範囲を逸脱しない範囲で、記載された組み合わせだけでなく、他の組み合わせや、記載事項に限定されるものではない。
【0037】
本発明の好ましい実施形態を図面に示し、以下の説明でより詳細に説明する。また、同じ参照番号は、同じまたは類似のまたは機能的に同じ構成を示している。また、これらは、模式的に示したものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本発明によるパワーエレクトロニクスユニットの基本構成を示した断面図である。
図2図2は、本発明によるパワーエレクトロニクスユニットの冷却装置におけるノズルプレートの構成を示した平面図である。
図3図3は、本発明によるパワーエレクトロニクスユニットの他の構成を示した断面図である。
図4図4は、本発明の第1の実施形態におけるパワーエレクトロニクスユニットの断面図である。
図5図5は、本発明の第2の実施形態におけるパワーエレクトロニクスユニットの断面図である。
図6図6は、本発明の第3の実施形態におけるパワーエレクトロニクスユニットの断面図である。
図7図7は、本発明の第3の実施形態におけるパワーエレクトロニクスユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、本発明におけるパワーエレクトロニクスユニット1の基本的な構成示した断面図である。パワーエレクトロニクスユニット1は、電子部品側2aと冷却側2bを有する回路基板2(ここではDBC基板)を備えている。電子部品側2aには、導体線4を介して電気的に相互接続され、保護層25で覆われた2つの電子部品3a、3b(例えば、IGBT、MOSFET、ダイオード、半導体など)が固定されている。各電子部品3a、3bは、伝熱領域5a、5bにおいて、回路基板2に熱伝達的に載置されている。電子部品3a、3bを冷却するために、パワーエレクトロニクスユニット1は、冷却装置6を備えている。冷却装置6は、冷却流体8が入口9から出口10へ流れることができる衝突噴射チャンバ7を備えている。衝突噴射チャンバ7は、回路基板2の冷却側2bに熱的に接触しており、回路基板2は、衝突噴射チャンバ7を、外部から区画している。各電子部品3a、3bで発生した電力散逸は、それぞれ、伝熱領域5a又は5bにおいて、衝突噴射チャンバ7内の冷却流体8に伝えられ、これにより各電子部品3a、3bが直接に冷却される。
【0040】
電子部品3a、3bを冷却するために、冷却装置6は、複数の流入ノズル12を有するノズルプレート11を備えている。各流入ノズル12は、ノズルプレート11に設けられたノズルオリフィス20によって形成されている。ノズルプレート11は、衝突噴射チャンバ7を、入口側の流入チャンバ13と出口側の流出チャンバ14とに区画している。流入チャンバ13及び流出チャンバ14は、互いに、流入ノズル12を介して流体的に接続している。ノズルプレート11は、回路基板2と平行に、かつ、回路基板2から離間して配置されている。流入チャンバ13は、ノズルプレート11及びカバープレート15によって、外部から区画されている。また、流出チャンバ14は、回路基板2及びノズルプレート11によって区画されている。なお、図1は、パワーエレクトロニクスユニット1の一部のみを断面図で示している。流入チャンバ13及び流出チャンバ14は、横方向に閉じられ、入口9及び出口10を介して、外部に流体的に繋がっている。
【0041】
パワーエレクトロニクスユニット1において、冷却流体8は、矢印で示すように、入口9から流入チャンバ13に流入し、流入ノズル12を介して流出チャンバ14に導かれる。冷却流体8は、流入ノズル12を通って各電子部品3a、3bの伝熱領域5a、5bに流れている間、加速される。その結果、冷却流体8は、各伝熱領域5a、5bにおける回路基板2の冷却側2bに、衝突噴流の形で高速で衝突し、これにより伝熱領域5a、5bにおける伝熱係数が増大する。これにより、冷却流体8と回路基板2との間の熱伝達係数に対応する熱流が、伝熱領域5a、5bにおいて、有効に増大する。各電子部品3a、3bで発生した電力散逸は、伝熱領域5a、5bにおいて、冷却流体8に伝達されるため、電子部品3a、3bを確実に冷却することができる。
【0042】
流入ノズル12は、互いに隣接して配置され、ノズルプレート11に、2つのフロー領域16a、16bを形成している。各フロー領域16a、16bは、伝熱領域5a、5bに対向する位置に配置されている。これにより、フロー領域16a、16b内の流入ノズル12から流出する冷却流体8は、伝熱領域5a、5bにおける電子部品3a、3bを有効に冷却する。
【0043】
フロー領域16a、16bは、単位面積当たりの流入ノズル12の数、すなわち、性能密度によって互いに異なる。本実施形態では、フロー領域16aは、単位面積当たりの複数の流入ノズル12を有するため、より高い性能密度を有する。電子部品3aは、矢印で示されるように、フロー領域16aによって、電子部品3bよりも集中的に加熱され、また、集中的に冷却される。このように、本実施形態におけるフロー領域16a、16bの性能密度は、各伝熱領域5a、5bにおける電子部品3a、3bの熱流密度と一致している。このようにして、回路基板2上の局所的な温度上昇は、パワーエレクトロニクスユニット1内において、有効に平準化される。これにより、各電子部品3a、3bの動作温度が低減され、パワーエレクトロニクスユニット1全体が、より効率的に動作することができる。
【0044】
図2は、ダイオードとIGBTのハーフブリッジを冷却するためのノズルプレート11の構成を例示している。ここでは、ノズルプレート11は、4つのグループに配置された10個の同一のフロー領域16を備えている。各フロー領域16は、個々の電子部品3を冷却するために設けられた複数の流入ノズル12を備えている。
【0045】
図3は、衝突噴射チャンバ7の他の構成を示した断面図である。本実施形態では、流入チャンバ13の流動断面積は、入口9から離れるに従い減少し、流出チャンバ14の流動断面積は、出口10に向かって増加している。これにより、本実施形態では、流入ノズル12を通る冷却流体8の体積流量は一定に保たれ、冷却流体8は、全ての流入ノズル12から同じ速度で流出する。従って、入口9における流入ノズル12の配置にかかわらず、回路基板2上で同一の冷却効果を達成することができる。このような流入チャンバ13及び流出チャンバ14の構成により、パワーエレクトロニクスユニット1を効率的に冷却することができる。
【0046】
図4は、第1の実施形態におけるパワーエレクトロニクスユニット1の断面図である。流入チャンバ13は、入口9(ここでは見えない)と流入ノズル12とを。互いに流体的に接続する流入通路17によって形成されている。流入通路17は、ノズルプレート11に形成され、一方の側は、ノズルプレート11によって、他方の側は、カバープレート15によって区画されている。流出チャンバ14は、カバープレート15に形成された流出通路18を介して、出口10(ここでは見えない)に流体的に接続されている。流出通路18は、一方の側は、ノズルプレート11によって、他方の側は、カバープレート15によって区画されており、ノズルプレート11に形成された流出開口部19を介して、ノズルプレート11を通って流出チャンバ14に流体的に接続されている。流入通路17及び流出通路18は、互いに平行に配置され、図面に対して垂直に延びている。
【0047】
2つの流入ノズル12は、回路基板2上の電子部品3a、3bを冷却するために設けられ、ノズルプレート11内に互いに隣接して配置されている。流出開口部19は、流入ノズル12の間に配置され、冷却流体8は、回路基板2の伝熱領域5a、5bに衝突し、横方向に発展した渦流が、流入ノズル12の間で収束する。流出開口部19は、冷却流体8が流出通路18に直接流入し、さらに、出口10(ここでは見えない)に流入するように、収束した渦流の領域内に配置されている。これにより、流出チャンバ14内の圧力損失が最小化し、冷却装置の効率を高めることができる。ここで、矢印が、流出チャンバ14内の冷却流体8の流れを示す。
【0048】
本実施形態におけるパワーエレクトロニクスユニット1では、各フロー領域16a、16bは、それぞれ流入ノズル12によって形成されている。各流入ノズル12は、ノズルオリフィス20と、ノズルオリフィス20を取り囲んで、ノズルプレート11から流出チャンバ14内に突出するノズル壁23とによって形成されている。ノズルオリフィス20または流入ノズル12を通って流れる冷却流体8の速度は、フロー断面によって調整することができる。本実施形態では、流入ノズル12は、回路基板2の冷却側2bに対して、90°の噴射角度で配向されており、これにより、冷却流体8は、伝熱領域5a、5bに最短経路で伝導され、90°の噴射角度で回路基板2の冷却側2bに衝突する。
【0049】
図5は、第2の実施形態におけるパワーエレクトロニクスユニット1の断面図である。流入チャンバ13(第1の実施形態と同じ)は、一方の側がノズルプレート11によって、他方の側がカバープレート15によって、外部から区画された流入通路17によって形成されている。冷却流体8を流出チャンバ14から排出するために、本実施形態におけるパワーエレクトロニクスユニット1では、側方流出通路21が設けられている。側方流出通路21は、回路基板2及びノズルプレート11に横方向に配置され、側板22によって外部から区画されている。これ以外のパワーエレクトロニクスユニット1の構造は、第1の実施形態におけるのパワーエレクトロニクスユニット1と同様である。ここで、矢印が、流出チャンバ14内の冷却流体8の流れを示す。
【0050】
図6及び図7は、第3の実施形態におけるパワーエレクトロニクスユニット1の断面図である。パワーエレクトロニクスユニット1は、各冷却側2bが互いに対向して配置された2枚の回路基板2を備えている。回路基板2の間には、衝突噴射チャンバ7が配置されている。さらに、パワーエレクトロニクスユニット1は、互いに対向して配置された2つのノズルプレート11を備え、ノズルプレート11は、流入チャンバ13と、回路基板2に向かって流出チャンバ14とを区画している。横方向において、流出チャンバ14は、側方流出通路21を区切る側板22によって区画されている。流入チャンバ13は、側板22の一方に形成された流入開口部24を介して、入口9に接続されている。これ以外のパワーエレクトロニクスユニット1の構造は、第2の実施形態のパワーエレクトロニクスユニット1と同様である。ここで、矢印は、衝突噴射チャンバ7内の冷却流体8の流れを示す。
【0051】
以上のように、パワーエレクトロニクスユニット1内において、わずかに加熱された電子部品3bと、集中的に加熱された電子部品3aとを、異なる強さで冷却することができる。これにより、回路基板2上の温度差を平準化することができ、その結果、パワーエレクトロニクスユニット1を効率的に動作させることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7