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特許7282124生分解性ポリエステル樹脂組成物、不織布およびフィルム、並びにその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】生分解性ポリエステル樹脂組成物、不織布およびフィルム、並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/183 20060101AFI20230519BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20230519BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20230519BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20230519BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20230519BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20230519BHJP
   D04H 1/435 20120101ALI20230519BHJP
【FI】
C08G63/183 ZBP
C08L67/02
C08L1/02
C08K9/06
C08L101/16
C08J5/18 CEP
C08J5/18 CFD
D04H1/435
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021083240
(22)【出願日】2021-05-17
(65)【公開番号】P2021188038
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0064391
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0064393
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0077305
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0095851
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0149832
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522066333
【氏名又は名称】エコバンス カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Ecovance Co. Ltd.
【住所又は居所原語表記】102, Jeongja-ro, Jangan-gu, Suwon-si, Gyeonggi-do 16338, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】キム、キョンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョンモ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンドン
(72)【発明者】
【氏名】キム、フン
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-524871(JP,A)
【文献】特表2014-524959(JP,A)
【文献】特表2017-533282(JP,A)
【文献】国際公開第2009/069641(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/071156(WO,A1)
【文献】特開2011-137093(JP,A)
【文献】特表2013-510213(JP,A)
【文献】特表2012-512314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00-64/42
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C08L 101/16
C08J 5/00-5/22
D04H 1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分、ジカルボン酸成分及びナノセルロースからなる重合体を含み、
前記ジカルボン酸成分は、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含み、
前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、
前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、
前記ジオール成分および前記ジカルボン酸成分のモル比が1~2:1であり、
前記第1ジカルボン酸および前記第2ジカルボン酸のモル比が0.5~2:1であり、
KS M3100-1に基づいて、二酸化炭素の発生量を測定して算出した生分解度が85%以上である、生分解性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記生分解性ポリエステル樹脂組成物は、
160℃~240℃にて溶融押出後、50m/minの速度で20μm厚さのインフレーションフィルムを製造し、ASTM D882に準拠して100mm/minの速度で測定する際の引張強度が25MPa以上であるか、
220℃にて溶融押出後、50m/minの速度で紡糸して0.2mm厚の不織布フィルムを製造し、ASTM D882に準拠して100mm/minの速度で測定する際の引張強度が25MPa以上である、請求項1に記載の生分解性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記生分解性ポリエステル樹脂組成物は、
160℃~240℃にて溶融押出後、50m/minの速度で20μm厚さのインフレーションフィルムを製造し、ASTM D882に準拠して500mm/minの速度で測定する際の伸び率が400%以上であるか、
220℃にて溶融押出後、50m/minの速度で紡糸して0.2mm厚の不織布フィルムを製造し、ASTM D882に準拠して500mm/minの速度で測定する際の伸び率が400%以上である、請求項1に記載の生分解性ポリエステル樹脂の組成物。
【請求項4】
前記ナノセルロースは、
バクテリアセルロースと、シランカップリング剤で前処理されたナノセルロースとからなる群より選択される1つ以上を含む、請求項1に記載の生分解性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記ナノセルロースは、
i)100nm以下の直径を有する3次元網状構造を含むバクテリアセルロースと、
ii)下記化学式1で表されるシランカップリング剤で前処理されたナノセルロースと、
iii)下記式1による光透過率の変化率が25%以下であるナノセルロースとからなる群より選択される1つ以上を含む、請求項1に記載の生分解性ポリエステル樹脂組成物:
[化1]
前記化学式1において、
Yは有機官能性基であり、Lはアルキレン基またはアリーレン基であり、Rはアルキル基であり、RおよびRはそれぞれ独立して加水分解性基であり、
[式1]
前記式1において、
LT1は、前記ナノセルロースが0.1重量%~5重量%で分散された水分散体を、30℃の温度および850nm波長の条件で測定した1次光透過率(%)であり、
LT2は、前記条件で12時間後に測定した2次光透過率(%)である。
【請求項6】
前記生分解性ポリエステル樹脂組成物の総重量を基準に、前記ナノセルロースを0.001重量%~3重量%の量で含む、請求項1に記載の生分解性ポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
請求項2または3による生分解性ポリエステル樹脂組成物を含む、生分解性ポリエステル不織布。
【請求項8】
請求項2または3による生分解性ポリエステル樹脂組成物を含む、生分解性ポリエステルフィルム。
【請求項9】
1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分と、ジカルボン酸成分と、組成物の総重量を基準に、ナノセルロースを0.001重量%~3重量%の量で含む組成物とを準備する段階と、
前記組成物をエステル化反応してプレポリマーを調製する段階と、
前記プレポリマーを重縮合反応して重合体を調製する段階と、
前記重合体からペレットを製造する段階と、
前記ペレットを溶融押出し紡糸して不織布層を製造するか、または前記ペレットを溶融押出してインフレーションフィルムを製造する段階とを含み、
前記ジカルボン酸成分は、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含み、前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、
前記不織布層または前記フィルムの引張強度が25MPa以上であり、伸び率が400%以上である、生分解性ポリエステル不織布またはフィルムの製造方法。
【請求項10】
1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分と、ジカルボン酸成分と、ナノセルロースとを含む組成物をエステル化反応してプレポリマーを調製する段階と、
前記プレポリマーを重縮合反応して重合体を調製する段階と、
前記重合体からペレットを製造する段階と、
前記ペレットを固相重合する段階とを含み、
前記ジカルボン酸成分は、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含み、
前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、
前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、
前記固相重合する段階は、ガラス転移温度(Tg)~融点(Tm)の温度範囲で行われるか、または窒素雰囲気下の80℃~150℃および3torr以下にて3時間~20時間行われる、生分解性ポリエステル樹脂の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、生分解性ポリエステル樹脂組成物、生分解性不織布、生分解性ポリエステルフィルム、およびその製造方法に関するものである。また、実現例は、生分解性ポリエステル樹脂の調製方法および生分解性ポリエステル樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への懸念が増加するにつれ、様々な生活用品、特に使い捨て製品の処理問題に対する解決策が求められている。具体的に、高分子材料は、安価ながら加工性などの特性に優れるので、フィルム、繊維、包装材、ボトル、容器などと、様々な製品を製造するのに広く利用されているが、使用済み製品が寿命となって焼却処理する際には、有害な物質が排出され、自然に完全分解されるためには、種類によっては数百年もかかるという欠点を有している。
【0003】
このような高分子の限界を克服するために、非常に短時間内で分解される生分解性高分子に関する研究が盛んに進められている。ポリ乳酸(polylactic acid、PLA)は、天然生分解性高分子として、植物バイオマス資源に由来するので、容易に得ることができ広く活用されてきたが、低い耐熱温度、低い成形性などの物性的な限界と遅い生分解速度のために、その使用用途が限定的である。
【0004】
特に、不織布は、織布工程を経ず、繊維を平行または不定方向に配列した後、合成樹脂接着剤で結合してフェルト状にしたもので、最近では使い捨てで使用されるティッシュ、布巾、包装材、マスクなどに多く使用されているが、ポリ乳酸で不織布を製造すると、柔軟性が低くこわごわして使用感や着用感が非常に良くない。
【0005】
一例として、特許文献1は、ポリ乳酸とポリプロピレンとのブレンド紡糸により製造されることにより、柔軟性が向上した不織布を開示しているが、ポリ乳酸とポリプロピレンとは相溶性が良くないため加工性が低く、フィッシュアイ(fish eye)のようなへこんだ欠陥が生じ得るので、不織布の品質が低い。
【0006】
また、生分解性高分子としてポリ乳酸のほかにも、ポリブチレンアジペートテレフタレート(polybutyleneadipate terephthalate、PBAT)、ポリブチレンサクシネート(polybutylene succinate、PBS)などが使用されているが、強度などの機械的物性が良くないため、その使用用途が限定的である。
【0007】
このような物性的な限界を克服しようと、生分解性高分子をブレンドしたり、衝撃強度向上剤、鎖延長剤、またはナノフィラーを添加したりする方法が使用されているが、これによる物性の向上程度はさほど大きくなく、特にナノフィラーは均一な分散が難しいため、部位別偏差が発生し得る。また、このような添加剤は生分解ができないことは勿論のこと、これにより製造された製品の透明性などを低下させることも有り得るので、多様な分野に適用し得る物性を有する生分解性高分子の研究が必要な実情である。
【0008】
一例として、特許文献2は、PLA、PBSなどを含む組成物にポリプロピレンカーボネート(polypropylene carbonate、PPC)を混合して、耐久性を向上させた生分解性プラスチック組成物を開示しているが、このようなブレンドによる方法は、耐久性や透明性を向上させるのに限界がある。
【0009】
また、生分解性高分子として前述のPLA、PBATおよびPBSのほかにも、ポリブチレンサクシネートアジペート(polybutylene succinate adipate、PBSA)、ポリブチレンサクシネートブチレンテレフタレート(polybutylene succinate butylene terephthalate、PBST)などが広く使用されているが、このような脂肪族または脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂は、重合反応において発生する副反応により、カルボキシル基末端の濃度が増加して耐加水分解性が低い。したがって、このような脂肪族または脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂から製造される製品は、変色したり寿命および耐久性が低下したりする問題がある。
【0010】
このような問題を解決するために、脱活性化剤や鎖延長剤を添加する方法が試みられたが、脱活性化剤や鎖延長剤を添加する方法は、工程時間が長く、高分子の分子量とカルボキシル基末端の濃度を効率的に制御することができないため、耐加水分解性を向上させるのに限界がある。
【0011】
一例として、特許文献3は、鎖増量剤および加水分解安定化剤を添加した生分解性脂肪族-芳香族ポリエステル樹脂を開示しているが、このような鎖増量剤および加水分解安定化剤を添加する方法は、所望の分子量およびカルボキシル基末端の濃度を有する樹脂を得るのが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】韓国特許公開第2016-0079770号公報
【文献】韓国特許公開第2012-0103158号公報
【文献】韓国特許公開第2014-0103956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、実現例の課題は、生分解性、柔軟性、強度、透明性、耐久性、および加工性を向上させ得る生分解性ポリエステル樹脂組成物、生分解性不織布、生分解性ポリエステルフィルム、およびその製造方法を提供するものである。
【0014】
実現例の他の課題は、生分解性、耐加水分解性、寿命、強度、耐久性、および加工性に優れる生分解性ポリエステル樹脂の調製方法、およびこれにより調製された生分解性ポリエステル樹脂を提供するものである。
【0015】
実現例のまた他の課題は、生分解性ポリエステル樹脂組成物に含まれる、分散性および光透過率のいずれにも優れるナノセルロースを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一実現例によると、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分と、ジカルボン酸成分とを含む、生分解性ポリエステル樹脂組成物が提供され、前記ジカルボン酸成分は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。具体的に、前記ジカルボン酸成分は、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含み、ここで前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。具体的に、前記ジオール成分および前記ジカルボン酸成分のモル比が1~2:1であり、前記第1ジカルボン酸および前記第2ジカルボン酸のモル比が0.5~2:1であり、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物の生分解度が85%以上である。
【0017】
他の実現例によると、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物は、1種以上のナノセルロースをさらに含む。
【0018】
また他の実現例によると、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物を含む生分解性ポリエステル不織布またはフィルムが提供される。
【0019】
また他の実現例によると、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分とジカルボン酸成分とを含む組成物をエステル化反応してプレポリマーを調製する段階と、前記プレポリマーを重縮合反応して重合体を調製する段階と、前記重合体からペレット(pellet)を製造する段階とを含む、生分解性ポリエステル樹脂の調製方法が提供される。具体的に、前記生分解性ポリエステル樹脂の調製のための組成物は、ナノセルロースを3重量%以下の量でさらに含む。
【0020】
また他の実現例によると、前記生分解性ポリエステル樹脂のペレットを固相重合する段階をさらに含む、生分解性ポリエステル樹脂の調製方法が提供される。具体的に、前記固相重合する段階は、ガラス転移温度(Tg)~融点(Tm)の温度範囲で行われるか、または窒素雰囲気下の80℃~150℃および3torr以下にて3時間~20時間行われる。
【0021】
また他の実現例によると、前記生分解性ポリエステル樹脂の調製方法により調製された生分解性ポリエステル樹脂が提供される。
【0022】
また他の実現例によると、前記ペレットを溶融押出し紡糸して不織布層を製造するか、または前記ペレットを溶融押出してインフレーションフィルムを製造する段階をさらに含む、生分解性ポリエステル不織布またはフィルムの製造方法が提供される。具体的に、前記製造方法は、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分、ジカルボン酸成分、および組成物の総重量を基準に、ナノセルロースを3重量%以下の量で含む組成物を準備する段階と、前記組成物をエステル化反応してプレポリマーを調製する段階と、前記プレポリマーを重縮合反応して重合体を調製する段階と、前記重合体からペレットを製造する段階と、前記ペレットを溶融押出し紡糸して不織布層を製造するか、または前記ペレットを溶融押出してインフレーションフィルムを製造する段階とを含み、前記ジカルボン酸成分は、第1ジカルボン酸および前記第1デジカメカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含み、前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記不織布層または前記フィルムの引張強度が25MPa以上であり、伸び率が400%以上である。
【発明の効果】
【0023】
前記実現例による生分解性ポリエステル樹脂組成物は、特定のジオール成分とジカルボン酸成分とを含むことにより、生分解性を阻害しないながらも、強度、加工性および柔軟性のいずれも向上させ得るので、より多様な分野に適用され、優れた特性を発揮し得る。
【0024】
したがって、これにより形成された不織布層を含む生分解性ポリエステル不織布は、使用感および着用感が良く、フィッシュアイのような欠陥がほとんどないため品質に優れるので、包装材、マスク、布巾などと、より多様な分野の製品に容易に適用され得る。
【0025】
また、前記実現例による生分解性ポリエステル樹脂組成物は、バクテリアセルロース、シランカップリング剤で前処理されたナノセルロース、または光透過率の変化率が25%以下であるナノセルロースをさらに含むことにより、透明性、分散性、生体適合性、および耐加水分解性をさらに向上させ得る。
【0026】
したがって、これにより形成された生分解性ポリエステルフィルムは、医療用機器や包装材に適用する際に優れた品質を有し、低温で保管および輸送される製品の包装材や耐久性を要する自動車用内装材、ゴミ袋、マルチングフィルム、および使い捨て製品に適用し得る優れた品質を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、一実現例による生分解性不織布を用いて製造されたマスクを示す。
図2図2は、図1のマスクをX-X'に沿って切断した断面図の一例を示す。
図3図3は、図1のマスクをX-X'に沿って切断した断面図の他の例を示す。
図4図4は、一実現例による生分解性不織布を製造する方法を示す。
図5図5は、バクテリアセルロースの透過電子顕微鏡(TEM)の画像を示す。
図6図6は、バクテリアセルロースの走査電子顕微鏡(SEM)の画像を示す。
図7図7は、バクテリアセルロースのX線回折(XRD)スペクトルを示す。
図8図8は、一実現例による生分解性ポリエステル樹脂を調製する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、実現例により発明を詳細に説明する。実現例は、以下に開示の内容に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない限り、様々な形態に変形することができる。
【0029】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0030】
また、本明細書に記載された構成成分の物性値、寸法等を表すすべての数値範囲は、特別な記載がない限り、すべての場合に「約」という用語で修飾されるものと理解するべきである。
【0031】
本明細書において、第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために用いられるものであり、前記構成要素は、前記用語によって限定されない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素として区別するためにのみ用いられる。
【0032】
図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさと異なり得る。
【0033】
[生分解性ポリエステル樹脂組成物]
一実現例による生分解性ポリエステル樹脂組成物は、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分およびジカルボン酸成分を含み、前記ジカルボン酸成分は、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含み、前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。
【0034】
他の実現例による生分解性ポリエステル樹脂組成物は、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分と、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と、100nm以下の直径を有する3次元網状構造のバクテリアセルロースとを含み、前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。
【0035】
また他の実現例による生分解性ポリエステル樹脂組成物は、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分と、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と、下記化学式1で表されるシランカップリング剤で前処理されたナノセルロースとを含み、前記第1ジカルボン酸が、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記第2デジカメカルボン酸が、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。
【0036】
前記化学式1において、Yは有機官能性基であり、Lはアルキレン基またはアリーレン基であり、Rはアルキル基であり、RおよびRはそれぞれ独立して加水分解性基ある。
【0037】
また他の実現例による生分解性ポリエステル樹脂組成物は、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分と、ジカルボン酸成分と、下記式1による光透過率の変化率が25%以下であるナノセルロースとを含み、前記ジカルボン酸成分は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、具体的に、前記ジカルボン酸成分は、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含み、ここで前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。
【0038】

前記式1において、LT1は、前記ナノセルロースが0.1重量%~5重量%で分散された水分散体を、30℃の温度および850nm波長の条件で測定した1次光透過率(%)であり、LT2は、前記条件で12時間後に測定した2次光透過率(%)である。
【0039】
[ジオールおよびジカルボン酸成分]
前記ジオール成分は、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含む。
【0040】
具体的に、前記ジオール成分は、前記ジオール成分の総モル数を基準に、95モル%以上、97モル%以上、98モル%以上、99モル%以上、または100モル%の1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含み得る。前記ジオール成分が1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むことにより、生分解性、柔軟性、および強度を向上させることができ、特に、前記ジオール成分が1,4-ブタンジオールのみからなる場合、生分解性、柔軟性、および強度を最大化し得る。
【0041】
必要に応じて、前記ジオール成分は、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体である第1ジオールとは異なる第2ジオールをさらに含み得る。
【0042】
前記第2ジオールは、プロパンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、またはエチレングリコールからなる群より選択された1種以上であり得る。具体的に、前記第2ジオールは1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,6-ヘキサンジオール、3,4-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、またはエチレングリコールからなる群より選択された1種以上であり得る。
【0043】
前記ジオール成分は、前記ジオール成分の総モル数を基準に、5モル%以下、3モル%以下、2モル%以下、または1モル%以下の前記第2ジオールを含み得る。
【0044】
前記ジカルボン酸成分は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。
【0045】
具体的に、前記ジカルボン酸成分は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を、前記ジカルボン酸成分の総モル数を基準に、15モル%以上、30モル%以上、45モル%以上、50モル%以上、75モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、または100モル%で含み、15モル%~80モル%、30モル%~60モル%、45モル%~55モル%、45モル%~100モル%、60モル%~95モル%、75モル%~100モル%、または85モル%~100モル%で含み得る。例えば、前記ジカルボン酸成分は、アジピン酸またはコハク酸を45モル%以上、50モル%以上、75モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、または100モル%で含み得る。
【0046】
前記ジオール成分および前記ジカルボン酸成分のモル比は、0.5~2:1であり、例えば、0.5~1.8:1、0.7~1.8:1、または0.9~1.6:1であり得る。一実現例によると、前記ジオール成分および前記ジカルボン酸成分のモル比は、1~2:1であり得る。具体的に、前記ジオール成分および前記ジカルボン酸成分のモル比は、1~1.8:1、1.1~1.8:1、1.2~1.7:1、1.3~1.6:1、または1.2~1.5:1であり得る。前記ジオール成分および前記ジカルボン酸成分のモル比が前記範囲を満足することにより、黄変のような変色もなく生分解性、強度および加工性をさらに向上させ得る。
【0047】
前記ジカルボン酸成分は、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含み得る。
【0048】
前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。具体的に、前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸またはジメチルテレフタル酸であり得る。
【0049】
また、前記ジカルボン酸成分は、前記ジカルボン酸成分の総モル数を基準に、15モル%以上、30モル%以上、45モル%以上、50モル%以上、55モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、15モル%~80モル%、30モル%~60モル%、45モル%~55モル%、30モル%~90モル%、35モル%~80モル%、40モル%~75モル%、45モル%~80モル%、45モル%~75モル%、45モル%~70モル%、または50モル%~70モル%の前記第1ジカルボン酸を含み得る。
【0050】
前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。具体的に、前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸またはコハク酸であり得る。
【0051】
前記ジカルボン酸成分は、前記ジカルボン酸成分の総モル数を基準に、15モル%以上、30モル%以上、45モル%以上、50モル%以上、55モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、15モル%~80モル%、30モル%~60モル%、45モル%~55モル%、30モル%~90モル%、35モル%~80モル%、40モル%~75モル%、45モル%~80モル%、45モル%~75モル%、45モル%~70モル%、または50モル%~70モル%の前記第2ジカルボン酸を含み得る。
【0052】
前記第1ジカルボン酸および前記第2ジカルボン酸のモル比は、0.5~2:1であり得る。例えば、前記第1ジカルボン酸および前記第2ジカルボン酸のモル比は、0.5~1.5:1、0.7~1.3:1、または0.8~1.2:1であり得る。前記第1ジカルボン酸および前記第2ジカルボン酸のモル比が前記範囲を満足することにより、生分解性および加工性をさらに向上させ得る。
【0053】
このように、前記実現例による生分解性ポリエステル樹脂組成物は、特定のジオール成分とジカルボン酸成分とを含むことにより、生分解性を阻害しないながらも、強度、加工性および柔軟性のいずれも向上させ得るので、より多様な分野に適用され優れた特性を発揮することができる。
【0054】
[組成物の特性]
前記生分解性ポリエステル樹脂組成物の生分解度が85%以上である。例えば、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物の生分解度は、90%以上または95%以上であり得る。前記生分解度は、KS M3100-1に基づいて、二酸化炭素の発生量を測定して算出し得る。具体的に、堆肥のみの接種源容器、および前記堆肥の乾燥重量の5重量%のサンプルを追加投入した試験容器を準備して、温度58±2℃、含水率50%、および酸素濃度6%以上の条件で180日間培養し、各容器から発生する二酸化炭素の量を測定して、下記式に基づいて生分解度を計算し得る。

【0055】
また、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物は、160℃~240℃にて溶融押出後、50m/minの速度で20μm厚さのインフレーションフィルムを製造し、ASTM D882に準拠して100mm/minの速度で測定する際の引張強度が25MPa以上であるか、220℃にて溶融押出後、50m/minの速度で紡糸して0.2mm厚の不織布フィルムを製造し、ASTM D882に準拠して100mm/minの速度で測定する際の引張強度が25MPa以上であり得る。例えば、前記引張強度は、25MPa以上、30MPa以上、35MPa以上、40MPa以上、45MPa以上、または48MPa以上であり、具体的に、25MPa~70MPa、30MPa~70MPa、35MPa~70MPa、25MPa~65MPa、30MPa~65MPa、35MPa~65MPa、25MPa~60MPa、30MPa~60MPa、または35MPa~60MPaであり得る。
【0056】
また、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物は、160℃~240℃にて溶融押出後、50m/minの速度で20μm厚さのインフレーションフィルムを製造し、ASTM D882に準拠して500mm/minの速度で測定する際の伸び率が400%以上であるか、220℃にて溶融押出後、50m/minの速度で紡糸して0.2mm厚の不織布フィルムを製造し、ASTM D882に準拠して500mm/minの速度で測定する際の伸び率が400%以上であり得る。例えば、前記伸び率は、400%以上、500%以上、または600%以上であり、1500%以下、1300%以下、1200%以下であり、具体的に400%~1500%、400%~1300%、400%~1200%、500%~1500%、500%~1400%、または500%~1200%であり得る。
【0057】
また、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物は、160℃~240℃にて溶融押出後、50m/minの速度で20μm厚さのインフレーションフィルムを製造し、KPS M 1001-0806に準拠して500mm/minの速度で測定する際の引裂強度が300N/cm以上であるか、220℃にて溶融押出後、50m/minの速度で紡糸して0.2mm厚の不織布フィルムを製造し、KPS m1001-0806に準拠して500mm/minの速度で測定する際の引裂強度が300N/cm以上であり得る。例えば、前記引裂強度は、300N/cm以上、400N/cm以上、または500N/cm以上であり、1800N/cm以下、1500N/cm以下または1300N/cm以下であり、具体的に、500N/cm~1800N/cm、700N/cm~1800N/cm、700N/cm~1500N/cm、または500N/cm~1300N/cmであり得る。
【0058】
[ナノセルロース]
前記生分解性ポリエステル樹脂組成物は、ナノセルロースをさらに含み得る。具体的に、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物は、セルロースナノクリスタル、セルロースナノファイバー、およびマイクロフィブリル化セルロースからなる群より選択された1種以上のナノセルロースを含んでよく、セルロースナノクリスタルまたはセルロースナノファイバーが強度および熱的特性の面から好ましい。前記生分解性ポリエステル樹脂組成物が前記ナノセルロースをさらに含むことにより、生分解性、強度、および熱的特性をさらに向上させ得る。
【0059】
より具体的に、前記ナノセルロースは、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテート、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、ペンチルセルロース、ヘキシルセルロース、およびシクロヘキシルセルロースからなる群より選択された1種以上であり得る。
【0060】
前記ナノセルロースの直径は1nm~100nmであり得る。例えば、前記ナノセルロースの直径は、1nm~95nm、5nm~90nm、10nm~80nm、1nm~50nm、5nm~45nm、10nm~60nm、1nm~10nm、10nm~30nm、または15nm~50nmであり得る。
【0061】
また、前記ナノセルロースの長さは5nm~10μmであり得る。例えば、前記ナノセルロースの長さは、5nm~1μm、10nm~150nm、20nm~300nm、200nm~500nm、100nm~10μm、500nm~5μm、300nm~1μm、または1μm~10μmであり得る。
【0062】
前記ナノセルロースの直径および長さが前記範囲を満足することにより、強度、特に引裂強度をさらに向上させ得る。
【0063】
また、前記ナノセルロースの含有量は、前記組成物の総重量を基準に0.001重量%以上、0.005重量%以上、0.01重量%以上、または0.1重量%であり、3重量%以下、2重量%以下、1.8重量%以下または1.2重量%以下であり得る。具体的に、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物の総重量を基準に、前記ナノセルロースを0.001重量%~3重量%の量で含み得る。ナノセルロースの含有量が前記範囲を満足することにより、生分解性および強度をさらに向上させ得る。より具体的に、前記ナノセルロースの含有量は、前記組成物の総重量を基準に0.001重量%~3重量%、0.005重量%~3重量%、0.005重量%~1.8重量%、0.01重量%~3重量%、0.01重量%~2重量%、または0.01重量%~1.8重量%であり得る。
【0064】
例えば、前記ナノセルロースは、バクテリアセルロース、シランカップリング剤で前処理されたナノセルロース、および光透過率が調整されたナノセルロースからなる群より選択される1つ以上を含み得る。
【0065】
具体的に、前記ナノセルロースは、i)100nm以下の直径を有する3次元網状構造を含むバクテリアセルロースと、ii)下記化学式1で表されるシランカップリング剤で前処理されたナノセルロースと、iii)下記式1による光透過率の変化率が25%以下であるナノセルロースとからなる群より選択される1つ以上を含み得る。
【0066】

前記化学式1において、Yは有機官能性基であり、Lはアルキレン基またはアリーレン基であり、Rはアルキル基であり、RおよびRはそれぞれ独立して加水分解性基である。
【0067】

前記式1において、LT1は、前記ナノセルロースが0.1重量%~5重量%で分散された水分散体を、30℃の温度および850nm波長の条件で測定した1次光透過率(%)であり、LT2は、前記条件で12時間後に測定した2次光透過率(%)である。
【0068】
[バクテリアセルロース]
一実現例によると、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物は、バクテリアセルロースを含む。
【0069】
具体的に、バクテリアセルロースは、結晶性および水素結合性に優れるので熱膨張率が低く、引張強度および衝撃強度のような強度特性、透明性、および生体適合性を向上させ得る。より具体的に、植物由来のセルロースは、単斜晶系(monoclinic unit cell)構造の成分をより多く含むのに対し、バクテリアセルロースは三斜晶系(triclinic unit cell)構造の成分をより多く含む。したがって、バクテリアセルロースは植物由来のセルロースに比べて、高い結晶性および水素結合性を有する。これに加えて、植物由来のセルロースはヘミセルロース、リグニンなどからなるのに対し、バクテリアセルロースは、純粋セルロースのみからなるので、追加の分離除去作業を必要としないメリットがある。
【0070】
前記生分解性ポリエステル樹脂組成物は、前記バクテリアセルロースを含むことにより、生体適合性に優れるので、国際規格ISO10993-1に基づいて、細胞毒性試験、感作性試験、皮内反応試験(または刺激性試験)、亜急性または亜慢性毒性試験、および遺伝毒性試験にパスすることができ、毒性を示さない。
【0071】
前記バクテリアセルロースの直径は100nm以下である。例えば、前記バクテリアセルロースの直径は、90nm以下、85nm以下、5nm~100nm、5nm~90nm、10nm~85nm、25nm~70nm、または25nm~65nmであり得る。バクテリアセルロースの直径が前記範囲を満足することにより、生分解性は勿論のこと、特に生体適合性をさらに向上させ得る。
【0072】
図5は、バクテリアセルロースの透過電子顕微鏡(TEM)画像を示したものであり、図6は、バクテリアセルロースの走査電子顕微鏡(SEM)画像を示すものである。
【0073】
また、前記バクテリアセルロースは、3次元網状構造を有する。具体的に、前記バクテリアセルロースは、前記直径範囲を満足する非常に薄くて長い繊維が3次元網状構造を成しているため表面積が大きいので、生分解性および生体適合性をさらに向上させ得る。
【0074】
前記バクテリアセルロースの結晶構造は、X線回折スペクトルにおいて14.5±0.2°および22.7±0.2°の回折角(2θ)においてピークを有し得る。図7は、バクテリアセルロースのX線回折スペクトルを示したものである。
【0075】
また、下記式2による前記バクテリアセルロースの結晶化度(crystallinity)は70%以上であり得る。例えば、前記細菌セルライトオスの結晶化度は、75%以上、80%以上、70%~98%、70%~95%、70%~90%、または75%~85%であり得る。
【0076】
前記式2において、前記結晶化度はX線回折分析法によって測定されたもので、Icは回折角2θ=22.7±0.2°における回折強度であり、Iaは回折角2θ=14.5±0.2°における回折強度である。
【0077】
例えば、前記結晶化度は、X線回折分析装置(High resolution X-ray diffractometer、BrukerD8 DISCOVER、Bruker社、ドイツ)を用いて測定され、40kVおよび40mAにてCu K-α粒子線(1.540600Å)を用いて測定され得る。
【0078】
また、示差走査熱容量分析法(DSC、Differential Scanning Calorimeter)により測定された前記バクテリアセルロースの結晶化度は70%以上であり得る。例えば、前記示差走査熱容量分析法によって測定されたバクテリアセルロースの結晶化度は、75%以上、80%以上、70%~98%、70%~95%、70%~90%、または75%~85%であり得る。
【0079】
前記示差走査熱容量分析法は、示差走査熱量計を用いて試料の熱転移(thermal transitions)にかかわる熱の流れを測定することにより、ピークの位置、形状、数等から定性的情報が得られ、ピークの面積から熱量変化の定量的情報が得られ得る。
【0080】
前記結晶化度は、前記示差走査熱量計を用いて測定された融解エンタルピー(△Hf)を100%結晶における融解エンタルピーで割って計算され得る。例えば、前記融解エンタルピーは、Q20(TA Instrument社)を用いて、窒素雰囲気下で昇温速度20℃/minで-20℃ないし220℃まで温度を上げながら測定し得る。
【0081】
バクテリアセルロースの結晶化度および回折角(2θ)が前記範囲を満足することにより、生分解性は勿論のこと、引張強度および衝撃強度のような強度特性および生体適合性をさらに向上させ得る。特に、前記バクテリアセルロースの結晶化度は、40%~65%である植物由来のセルロースの結晶化度に比べて優れるので、引張強度および衝撃強度のような強度特性を最大化し得る。
【0082】
また、前記バクテリアセルロースの嵩密度は1400kg/m~1800kg/mであり得る。例えば、前記バクテリアセルロースの嵩密度は、1450kg/m~1800kg/m、1500kg/m~1750kg/m、または1500kg/m~1700kg/mであり得る。
【0083】
前記生分解性ポリエステル樹脂組成物は、前記組成物の総重量を基準に前記バクテリアセルロースを0.01重量%~3重量%で含み得る。例えば、前記バクテリアセルロースの含有量は、前記組成物の総重量を基準に0.01重量%~2.5重量%、0.05重量%~2重量%、0.07重量%~1.8重量%、または0.07重量%~1.2重量%であり得る。バクテリアセルロースの含有量が前記範囲を満足することにより、生分解性および強度特性をさらに向上させ得る。
【0084】
また、前記実現例による生分解性ポリエステル樹脂組成物は、前記100nm以下の直径を有する3次元網状構造のバクテリアセルロースである第1セルロースとは異なる第2セルロースを含み得る。具体的に、前記100mn以下の直径を有する3次元網状構造を有するバクテリアセルロースが第1セルロースで良く、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物は、前記第1セルロースとは異なる第2セルロースをさらに含み得る。
【0085】
前記第2セルロースは、前記第1セルロースの直径よりも小さくて良い。具体的に、前記第2セルロースは、90nm以下、80nm以下、1nm~90nm、3nm~80nm、5nm~70nm、または5nm~50nmの直径を有するバクテリアセルロースであり得る。前記直径を有する第2セルロースをさらに含むことにより、生分解性および強度特性をさらに向上させ得る。
【0086】
前記実現例による生分解性ポリエステル樹脂組成物は、バクテリアセルロースを含むことにより、生分解性、強度、透明性、および加工性のいずれも向上させることができ、特に、生体適合性に優れる。
【0087】
[シランカップリング剤で前処理されたナノセルロース]
他の実現例によると、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物は、下記化学式1で表されるシランカップリング剤で前処理されたナノセルロースを含む。
【0088】

前記化学式1において、Yは有機官能性基であり、Lはアルキレン基またはアリーレン基であり、Rはアルキル基であり、RおよびRはそれぞれ独立して加水分解性基である。
【0089】
具体的に、Yは有機官能性基として、アルケニル基、エポキシ基、メタクリル基、C1-10アルコキシ基、C1-10アミン基、C1-10アルキルアミン基、C6-15アリールアミン基、C3-15ヘテロアリールアミン基、C6-15アリールアルキル基、またはC3-15ヘテロアリール基であり、ここでヘテロアリールアミン基およびヘテロアリール基は、N、OおよびSからなる群より選ばれた1種以上の元素を含み得る。また、前記アルケニル基は、例えばビニル基であり得る。
【0090】
前記Lは、アルキレン基またはアリーレン基であり、具体的にC1-10アルキル基またはC6-15アリーレン基であり得る。
【0091】
前記Rはアルキル基であり、具体的にC1-10アルキル基であり得る。
また、前記RおよびRはそれぞれ独立して加水分解性基として、具体的にそれぞれ独立して、ハロゲン基、C1-10アルコキシ基、C6-15アリールオキシ基、C6-15アルキルアリールオキシ基、C1-10アシルオキシ基、C1-10アルキルチオール基、C1-10アミン基、メタクリルオキシ基、またはオキシム基であり得る。前記RおよびRはそれぞれ独立して、C1-10アルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基がさらに好ましいが、これに限定されるものではない。また、前記RおよびRはそれぞれ独立して、C1-10アルコキシ基で置換されたC1-10アルコキシ基であり得る。
【0092】
前記前処理方法は、乾式法または湿式法を使用し得るが、これに限定されるものではない。
【0093】
具体的に、前記前処理方法は、スーパーミキサー(super mixer)などのような均一混合装置にナノセルロースおよびシランカップリング剤を投入して高速撹拌した後、100℃~120℃にて1時間以上乾燥する乾式法か、水分散されたナノセルロースにシランカップリング剤を投入した後、撹拌機により1時間以上撹拌する湿式法であり得る。このような乾式法および湿式法により、ナノセルロースの表面を疎水化処理し得る。
【0094】
前記ナノセルロースを前記化学式1で表されるシランカップリング剤で前処理、すなわち、疎水化処理することにより、界面接着力、分散性および相溶性を向上させ得るので、これを含む生分解性ポリエステル樹脂組成物の機械的物性や耐久性、特に、耐加水分解性に優れる。
【0095】
また、前記ナノセルロースは、前記ナノセルロースの総重量を基準に、0.01重量%~10重量%のシランカップリング剤で前処理され得る。例えば、前記ナノセルロースは、前記ナノセルロースの総重量を基準に、0.05重量%~8重量%、0.1重量%~8重量%、0.5重量%~6重量%、または0.7重量%~6重量%のシランカップリング剤で前処理され得る。
【0096】
シランカップリング剤の含有量が前記範囲を満足することにより、界面接着力、分散性および相溶性を最大化し得るので、これを含む生分解性ポリエステル樹脂組成物の機械的物性や耐久性、特に耐加水分解性をさらに向上させ得る。
【0097】
前記ナノセルロースは、セルロースナノクリスタル、セルロースナノファイバー、およびマイクロフィブリル化セルロースからなる群より選択された1種以上であり、セルロースナノクリスタルまたはセルロースナノファイバーが、強度および熱的特性の面から好ましい。前記生分解性ポリエステル樹脂組成物が、前記ナノセルロースをさらに含むことにより、生分解性、強度、および熱的特性をさらに向上させ得る。
【0098】
より具体的に、前記ナノセルロースは、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテート、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、ペンチルセルロース、ヘキシルセルロース、およびシクロヘキシルセルロースからなる群より選択された1種以上であり得る。
【0099】
前記ナノセルロースの直径は1nm~100nmであり得る。例えば、前記ナノセルロースの直径は、1nm~95nm、5nm~90nm、10nm~80nm、5nm~60nm、または15nm~60nmであり得る。
【0100】
また、前記ナノセルロースの長さは5nm~10μmであり得る。例えば、前記ナノセルロースの長さは、5nm~5μm、5nm~1μm、10nm~700nm、20nm~500nm、60nm~300nm、80nm~200nm、100nm~250nmであり得る。
【0101】
前記ナノセルロースの直径および長さが前記範囲を満足することにより、強度、特に引裂強度をさらに向上させ得る。
【0102】
また、前記ナノセルロースの含有量は、前記組成物の総重量を基準に0.01重量%~3重量%であり得る。例えば、前記ナノセルロースの含有量は、前記組成物の総重量を基準に、0.01重量%~2.5重量%、0.05重量%~2重量%、0.07重量%~1.8重量%、0.1重量%~1.2重量%、0.1重量%~1重量%、または0.15重量%~0.7重量%であり得る。ナノセルロースの含有量が前記範囲を満足することにより、生分解性および強度をさらに向上させ得る。
【0103】
また、示差走査熱容量分析法(DSC)により測定された前記ナノセルロースの結晶化度は70%以上であり得る。例えば、前記示差走査熱容量分析法によって測定された前記ナノセルロースの結晶化度は、75%以上、80%以上、70%~98%、70%~95%、75%~90%、または80%~90%であり得る。
【0104】
前記示差走査熱容量分析法は、示差走査熱量計を用いて試料の熱転移にかかわる熱の流れを測定することにより、ピークの位置、形状、数等から定性的情報が得られ、ピークの面積から熱量変化の定量的情報が得られ得る。
【0105】
前記結晶化度は、前記示差走査熱量計を用いて測定された融解エンタルピー(△Hf)を100%結晶における融解エンタルピーで割って計算され得る。例えば、前記融解エンタルピーは、Q20(TA Instrument社)を用いて、窒素雰囲気下で昇温速度20℃/minで-20℃ないし220℃まで温度を上げながら測定され得る。
【0106】
前記実現例による生分解性ポリエステル樹脂組成物は、前記化学式1で表されるシランカップリング剤で前処理されたナノセルロースを含むことにより、生分解性を阻害しないながらも、分散性、強度および加工性は勿論のこと、特に、耐加水分解性のような耐久性を向上させ得るので、より多様な分野に適用され、優れた特性を発揮することができる。
【0107】
[光透過率の変化率が調整されたナノセルロース]
また他の実現例によると、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物は、光透過率の変化率が25%以下であるナノセルロースを含む。
【0108】
前記実現例によるナノセルロースは、下記式1による光透過率の変化率が25%以下である。
【0109】

前記式1において、LT1は、前記ナノセルロースが0.1重量%~5重量%で分散された水分散体を30℃の温度および850nm波長の条件で測定した1次光透過率(%)であり、LT2は、前記条件で12時間後に測定した2次光透過率(%)である。
【0110】
一般に、天然物質のナノセルロースは、ゲル(gel)状態で調製されるか、保管および輸送が容易となるよう体積を減少させるために、凍結乾燥して乾燥粉末(dry powder)状で調製されるが、調製過程で凝集が起こり、単一粒子ではない凝集した2次粒子として存在するようになる。したがって、このようなゲルまたは乾燥粉末状のナノセルロースを用いて生分解性ポリエステル樹脂組成物を調製すると、分散性が良くないため、生分解性は勿論のこと、特に引裂強度およびシール強度のような耐久性が非常に低いという問題がある。
【0111】
しかし、前記実現例によるナノセルロースは、ゲルまたは乾燥粉末状の天然物質のナノセルロースでありながら、これを0.1重量%~5重量%で水に分散させた水分散体は、特定の温度、時間、および波長の条件で光透過率の変化率が25%以下を満足するので、分散性および光透過率のいずれも優れる。したがって、前記ナノセルロースを含む生分解性ポリエステル樹脂組成物の分散安定性、強度、および加工性のいずれも向上させ得る。
【0112】
まず、前記ナノセルロースは、1μm~50μmの粒径で凝集した2次粒子を有する乾燥粉末またはゲル状であり得る。例えば、前記ナノセルロースは、単一粒子ではなく、凝集した2次粒子を有する乾燥粉末またはゲル状であり、前記2次粒子の大きさは2μm~45μmまたは5μm~50μmであり得る。また、前述のように、前記ナノセルロースは、保管および輸送が容易となるよう体積を減少させるため、凍結乾燥された粉末状であり得る。
【0113】
前記ナノセルロースは、セルロースナノクリスタル、セルロースナノファイバー、およびマイクロフィブリル化セルロースからなる群より選択された1種以上であり、セルロースナノクリスタルまたはセルロースナノファイバーが強度および熱的特性の面から好ましい。前記ナノセルロースが生分解性ポリエステル樹脂組成物に含まれると、生分解性、強度、および熱的特性をさらに向上させ得る。
【0114】
より具体的に、前記ナノセルロースは、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテート、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、ペンチルセルロース、ヘキシルセルロース、およびシクロヘキシルセルロースからなる群より選択された1種以上であり得る。
【0115】
前記実現例によるナノセルロースは、前記式1による光透過率の変化率が25%以下である。
【0116】
具体的に、前記光透過率の変化率は、乾燥粉末またはゲル状のナノセルロースが0.1重量%~5重量%で分散された水分散体を、30℃の温度および850nm波長の条件で12時間測定したものである。
【0117】
例えば、前記水分散体に含まれている前記ナノセルロースの含有量は、0.3重量%~5重量%、0.5重量%~4重量%、0.5重量%~3.5重量%、0.8重量%~3重量%、0.9重量%~3重量%、0.9重量%~2.5重量%、または1重量%~2重量%であり得る。この際、前記ナノセルロースの含有量は、前記ナノセルロースが分散される水の総重量を基準にし得る。
【0118】
例えば、前記光透過率の変化率は、タービスキャン(Turbiscan、FORMULACTION社)を用いて測定し得る。具体的に、前記タービスキャンは、一定の温度条件下で、時間による分散安定性の変化を試料全体の高さに対して測定する装置であり、分散安定性に対する定量的な分析結果が得られ得る。より具体的に、前記タービスキャンにより、試料全体の高さに対して特定波長の光源を照射し、試料の粒子にぶつかって散乱する量および試料粒子を透過する量を測定し得る。
【0119】
前記実現例による光透過率の変化率は、前記水分散体を容器に入れて、その全体高さに対する光透過率を測定して得られ得る。具体的に、前記光透過率は、前記試料全体の高さに対して上部層で測定したものであり得る。試料の分散安定性が低いほど重い粒子は下に沈むので、上部層の光透過率は上昇することになる。したがって、光透過率の変化率が大きいほど分散安定性が低い。この際、前記上部層は、試料全体の高さにおいて、上部から1/3の位置までの部分を意味する。
【0120】
具体的に、前記水分散体を30℃の温度および850nm波長の条件で1次光透過率(LT1)を測定し、前記条件で12時間が経過した後に光透過率(LT2)を測定し、前記式1のように、前記LT1に対する前記LT1と前記LT2との差の絶対値の比率を光透過率の変化率として計算し得る。より具体的に、前記光透過率の変化率は、前記式1に基づいて計算され、30℃の温度および850nmの波長にて測定した初期光透過率(LT1)に対して、前記LT1および前記条件で12時間後に測定した光透過率(LT2)の差の絶対値の比率である。
【0121】
前記ナノセルロースが1重量%または2重量%で分散された水分散体を、30℃の温度および850nmの波長にて測定した光透過率は、3%~35%であり得る。例えば、前記ナノセルロースが1重量%または2重量%で分散された水分散体を、30℃の温度および850nmの波長にて測定した光透過率(LT1)は7%~35%、9%~33%、10%~33%、または10%~28%であり得る。
【0122】
また、前記ナノセルロースが1重量%または2重量%で分散された水分散体を、30℃の温度で12時間が経過した後に850nmの波長にて測定した光透過率は、5%~40%であり得る。例えば、前記ナノセルロースが1重量%または2重量%で分散された水分散体を、30℃の温度で12時間が経過した後に850nmの波長にて測定した光透過率は、7%~40%、9%~38%、10%~35%、または11%~31%であり得る。
【0123】
前記実現例によるナノセルロースの平均粒度は200nm以下であり、粒度偏差は20%以下であり得る。具体的に、水分散されたナノセルロースの平均粒度は、190nm以下または185nm以下であり、粒度偏差は18%以下、または16%以下であり得る。ナノセルロースの平均粒径および粒度偏差が前記範囲を満足することにより、前記ナノセルロースの分散性および耐久性のいずれも優れる。
【0124】
前記実現例によるナノセルロースは、ビーズミル前処理されるか、超音波前処理されたものであり得る。具体的に、前記ナノセルロースは、水分散されたナノセルロースがビーズミル前処理されるか、超音波前処理されたものであり得る。
【0125】
例えば、前記ナノセルロースは、1μm~50μmの粒径を有する乾燥粉末またはゲル状のセルロースナノクリスタルを水分散させた後、これをビーズミル前処理するか、超音波前処理したものであり得る。
【0126】
まず、前記ビーズミル前処理は、湿式ミリング装置として、垂直ミルまたは水平ミルにより行われ得る。水平ミルが、チャンバ(chamber)内部に充填できるビーズの量がより多く、機械の偏摩耗減少、ビーズの摩耗低減、およびメンテナンスがより容易であるという点で好ましいが、これに限定されるものではない。
【0127】
前記ビーズミル前処理は、ジルコニウム、ジルコン、ジルコニア、石英、および酸化アルミニウムからなる群より選択された1種以上のビーズを用いて行われ得る。
【0128】
具体的に、前記ビーズミル前処理は、0.3mm~1mmの直径を有するビーズを用いて行われ得る。例えば、前記ビーズの直径は、0.3mm~0.9mm、0.4mm~0.8mm、0.45mm~0.7mm、または0.45mm~0.6mmであり得る。ビーズの直径が前記範囲を満足することにより、ナノセルロースの分散性をさらに向上させ得る。ビーズの直径が前記範囲を超えると、ナノセルロースの粒度および粒度偏差が増加して分散性が低下し得るので、光透過率が不均一となり、品質が低下し得る。
【0129】
また、前記ビーズミル前処理は、ナノセルロースの比重よりも高いビーズを使用することが、十分なエネルギーを伝え得る点から好ましい。例えば、前記ビーズは水分散されたナノセルロースよりも比重の高いジルコニウム、ジルコン、ジルコニア、石英、および酸化アルミニウムからなる群より選択された1種以上であり、前記水分散されたナノセルロースに比べ4倍以上比重の高いジルコニウムビーズが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0130】
前記ビーズミル前処理は、チャンバ内にビーズを80%以上充填して行われ得る。また、前記ビーズミル前処理は、20m/sec以下の線速度で行われ得る。具体的に、前記ビーズミル前処理は、80%以上のチャンバ内のビーズ充填率および20m/sec以下の線速度で行われ得る。例えば、前記ビーズミル前処理は、80%以上、または83%以上のチャンバ内ビーズ充填率、および18m/sec以下または16m/sec以下の線速度で行われ得る。充填率および線速度が前記範囲を満足することにより、ビーズミル前処理の効果、すなわち、分散性の向上を最大化し得る。
【0131】
また、前記超音波前処理は、20kHzの超音波(ultrasound)を溶液中に放出して発生する波動により、ナノ粒子を物理的に閉鎖または粉砕させる方法である。
【0132】
前記超音波前処理は、30000J以下のエネルギー量で30分未満の時間で行われ得る。例えば、前記超音波前処理は、25000J以下または22000J以下のエネルギー量で、25分以下、20分以下または18分以下の時間で行われ得る。エネルギー量および実行時間が前記範囲を満足することにより、超音波前処理の効果、すなわち、分散性の向上を最大化し得る。エネルギー量が前記範囲を超えると、むしろナノ粒子が再凝集され分散性が低下し得る。
【0133】
前記実現例によるナノセルロースは、ビーズミル前処理または超音波前処理されたものであり得る。または、前記実現例によるナノセルロースは、ビーズミル前処理および超音波前処理のいずれもが行われたものであり得る。この際、ビーズミル前処理の後に、超音波前処理が行われることが、再凝集を防止して分散性を向上させる点で好ましい。
【0134】
前記ナノセルロース、具体的に水分散されたナノセルロースがビーズミル前処理されるか超音波前処理されると、分散性を最大化し得るので、ナノセルロース粒子の数がより多くなり得る。具体的に、類似の光透過率の変化率を有する場合、追加でビーズミル前処理されるか、超音波前処理されている水分散されたナノセルロースが、ビーズミル前処理または超音波前処理されていない水分散されたナノセルロースに比べて、同一含有量においてナノセルロース粒子の数がより多いことがあり得る。したがって、前記ナノセルロースが追加でビーズミル前処理または超音波前処理されると、分散安定性をさらに向上させ得る。
【0135】
したがって、前記ナノセルロースを含む生分解性ポリエステル樹脂組成物から形成された生分解性ポリエステルフィルムは、低温で保管および輸送される製品の包装材や耐久性を要する自動車用内装材、ゴミ袋、マルチングフィルム、および使い捨て製品に適用し得る優れた品質を有する。
【0136】
前記ナノセルロースの含有量は、前記組成物の総重量を基準に0.01重量%~3重量%であり得る。例えば、前記ナノセルロースの含有量は、前記組成物の総重量を基準に、0.01重量%~2.5重量%、0.02重量%~2重量%、0.02重量%~1.5重量%、0.04重量%~1.2重量%、0.05重量%~1重量、0.05重量%~0.8重量%、または0.05重量%~0.7重量%であり得る。ナノセルロースの含有量が前記範囲を満足することにより、生分解性、分散性および強度をさらに向上させ得る。
【0137】
[触媒および添加剤]
前記生分解性ポリエステル樹脂組成物は、チタン系触媒、ゲルマニウム系触媒、アンチモン系触媒などを含み得る。具体的に、前記生分解性ポリエステル樹脂は、チタンイソプロポキシド、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ゲルマニウムオキシド、ゲルマニウムメトキシド、ゲルマニウムエトキシド、テトラメチルゲルマニウム、テトラエチルゲルマニウム、硫化ゲルマニウム、アンチモントリオキシド、酢酸アンチモン、アンチモントリエチレングリコール、ジブチルスズオキシド、酢酸カルシウム、および酢酸マグネシウムからなる群より選択された1種以上の触媒を含み得る。
【0138】
また、前記触媒の含有量は、前記組成物の総重量を基準に、50ppm~1000ppm、または100ppm~1000ppmであり得る。例えば、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物は、前記組成物の総重量を基準に、55ppm~900ppm、70ppm~850ppm、100ppm~800ppm、100ppm~700ppm、150ppm~700ppm、200ppm~500ppm、130ppm~500ppm、130ppm~450ppm、130ppm~300ppm、または250ppm~450ppmの触媒を含み得る。触媒の含有量が前記範囲を満足することにより、黄変のような変色なく加工性を向上させ得る。
【0139】
また、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物は、シリカ、カリウムまたはマグネシウムのような添加剤、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフィン、リン酸または亜リン酸のような安定化剤、および酢酸コバルトのような色補正剤からなる群より選択された1種以上をさらに含み得る。
【0140】
[生分解性不織布]
また、前記実現例による生分解性ポリエステル樹脂組成物を含む生分解性ポリエステル不織布が提供される。すなわち、前記生分解性ポリエステル不織布は、前記実現例による生分解性ポリエステル樹脂組成物から形成される。
【0141】
一実現例による生分解性不織布は、生分解性ポリエステル樹脂組成物から形成された不織布層を含み、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物が1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分およびジカルボン酸成分を含み、前記ジカルボン酸成分は、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含み、前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。
【0142】
特に、実現例による生分解性不織布は、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物から形成された不織布層を含むことにより、使用感および着用感が良く、フィッシュアイのような欠陥がほとんどないので品質に優れる。したがって、前記生分解性不織布は、包装材、マスク、布巾などと、より多様な分野の製品に容易に適用されることができ、特に、マスクに適用する際の着用感に非常に優れる。
【0143】
前記生分解性不織布は、前記不織布層の少なくとも一面に位置する抗菌性コーティング層を含み得る。
【0144】
図1は、前記実現例による生分解性不織布を用いて製造されたマスク1を示したものであり、図2および図3は、図1の一実現例および他の実現例によるマスクをX-X'に沿って切断した断面図をそれぞれ示したものである。
【0145】
具体的に、図2は、不織布層100の一面に抗菌性コーティング層200が形成された生分解性不織布2を例示しており、図3は、不織布層100の両面に抗菌性コーティング層200が形成された生分解性不織布2を例示している。より具体的に、図2は、内面または外面に抗菌性コーティング層200が形成されたマスク1の断面図を示し、図3は、内面および外面に抗菌性コーティング層200が形成されたマスク1の断面図を示している。
【0146】
このように、前記生分解性不織布は、不織布層、および前記不織布層の一面または両面に位置する抗菌性コーティング層を含むことにより、抗菌性をさらに向上させ得る。前記生分解性不織布の用途はマスクに限定されるものではなく、例えば、前記生分解性不織布を食品用または医療用包装材として使用する場合、食品が変質したり、医療用製品に微生物が成長したりすることを効果的に防止することができる。
【0147】
前記抗菌性コーティング層は、前記抗菌性コーティング層の総重量を基準に、0.5重量%~10重量%の銀ナノを含み得る。例えば、前記銀ナノの含有量は、前記抗菌性コーティング層の総重量を基準に、0.5重量%~8重量%、0.5重量%~3重量%、0.7重量%~2.5重量%、または0.8重量%~1.5重量%であり得る。銀ナノの含有量が前記範囲を満足することにより、抗菌性をさらに向上させることができ、特に、前記抗菌性コーティング層を含む生分解性不織布を食品包装材として使用する際、食品が変質することをより効果的に防止することができる。
【0148】
前記不織布層の厚さは0.1mm~10mmであり得る。例えば、前記不織布層の厚さは0.1mm~5.0mm、0.1mm~3.0mm、0.1mm~0.5mm、0.5mm~3.0mm、0.5mm~1.0mm、または1.0mm~2.0mmであり得る。
【0149】
また、前記抗菌性コーティング層の厚さは10nm~1μmであり得る。例えば、前記抗菌性コーティング層の厚さは、10nm~700nm、20nm~500nm、20nm~100nm、50nm~500nm、または90nm~500nmであり得る。
【0150】
前記生分解性不織布の厚さは0.1mm~10mmであり得る。例えば、前記生分解性不織布の厚さは0.1mm~5.0mm、0.1mm~3.0mm、0.1mm~0.5mm、0.5mm~3.0mm、0.5mm~1.0mm、または1.0mm~2.0mmであり得る。
【0151】
前記不織布層の平均気孔径は200μm以下であり得る。例えば、前記不織布層の平均気孔径は、180μm以下、160μm以下、10μm~200μm、50μm~200μm、100μm~180μm、または130μm~160μmであり得る。不織布層の平均気孔径が前記範囲を満足することにより、通気性および柔軟性をさらに向上させ得る。
【0152】
前記不織布層の引張強度は25MPa以上であり得る。例えば、前記不織布層の引張強度は、30MPa以上、33MPa以上、35MPa以上、30MPa~60MPa、33MPa~55MPa、または33MPa~53MPaであり得る。
【0153】
前記不織布層の引裂強度は300N/cm以上であり得る。例えば、前記不織布層の引裂強度は、350N/cm以上、450N/cm以上、500N/cm以上、550N/cm以上、400N/cm~1500N/cm、450N/cm~1300N/cm、500N/cm~1200N/cm、または550N/cm~1100N/cmであり得る。
【0154】
また、前記不織布層の伸び率は400%以上であり得る。例えば、前記不織布層の伸び率は、450%以上、500%以上、550%以上、400%~900%、450%~800%、または550%~750%であり得る。
【0155】
前記不織布層の引張強度、引裂強度および伸び率が前記範囲を満足することにより、様々な分野の製品への適用が容易であるとともに、寿命も向上させ得る。
【0156】
前記不織布層の初期弾性モジュラスは200kgf/mm以下であり得る。例えば、前記不織布層の初期弾性モジュラスは、180kgf/mm以下、160kgf/mm以下、60kgf/mm~200kgf/mm、80kgf/mm~180kgf/mm、または85kgf/mm~160kgf/mmであり得る。不織布層の初期弾性モジュラスが前記範囲を満足することにより、柔軟性をより向上させ得るので、特にマスクのように長時間皮膚に接触する製品に適用した際の着用感に優れる。
【0157】
[生分解性ポリエステルフィルム]
また、前記実現例による生分解性ポリエステル樹脂組成物を含む生分解性ポリエステルフィルムが提供される。すなわち、前記生分解性ポリエステルフィルムは、前記実現例による生分解性ポリエステル樹脂組成物から形成される。
【0158】
つまり、生分解性ポリエステル樹脂組成物から形成された生分解性ポリエステルフィルムであって、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物が、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分と、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と、ナノセルロースとを含み、前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記ナノセルロースは、100nm以下の直径を有する3次元網状構造のバクテリアセルロース、下記化学式1で表されるシランカップリング剤で前処理されたナノセルロース、または下記式1による光透過率の変化率が25%以下のナノセルロースである、生分解性ポリエステルフィルムが提供される。
【0159】


前記化学式1において、Yは有機官能性基であり、Lはアルキレン基またはアリーレン基であり、Rはアルキル基であり、RおよびRはそれぞれ独立して加水分解性基である。
【0160】


前記式1において、LT1は、前記ナノセルロースが0.1重量%~5重量%で分散された水分散体を、30℃の温度および850nm波長の条件で測定した1次光透過率(%)であり、LT2は、前記条件で12時間後に測定した2次光透過率(%)である。
【0161】
一実現例による生分解性ポリエステルフィルムは、生分解性ポリエステル樹脂組成物から形成された生分解性ポリエステルフィルムであって、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物が、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分と、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と、100nm以下の直径を有する3次元網状構造のバクテリアセルロースとを含み、前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。前記実現例による生分解性ポリエステルフィルムは、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物から形成されることにより、特に、医療用機器や包装材に適用する際に優れた品質を有する。
【0162】
他の実現例による生分解性ポリエステルフィルムは、生分解性ポリエステル樹脂組成物から形成された生分解性ポリエステルフィルムであって、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物が、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分と、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と、前記化学式1で表されるシランカップリング剤で前処理されたナノセルロースとを含み、前記第1ジカルボン酸が、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記第2ジカルボン酸が、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。前記生分解性ポリエステルフィルムは、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物から形成されることにより、低温で保管および輸送される製品の包装材や耐久性を要する自動車用内装材およびゴミ袋として使用し得る優れた品質を有する。
【0163】
また他の実現例による生分解性ポリエステルフィルムは、前記式1による光透過率の変化率が25%以下であるナノセルロースを含む。具体的に、前記実現例による生分解性ポリエステルフィルムは、生分解性ポリエステル樹脂組成物から形成された生分解性ポリエステルフィルムであって、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物が、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分と、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含むジカルボン酸成分と、前記式1による光透過率の変化率が25%以下であるナノセルロースとを含む。より具体的に、前記実現例による生分解性ポリエステルフィルムは、生分解性ポリエステル樹脂組成物から形成された生分解性ポリエステルフィルムであって、前記生分解性ポリエステル樹脂組成物が、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分と、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と、前記式1による光透過率の変化率が25%以下であるナノセルロースとを含み、前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。前記ナノセルロースを含む生分解性ポリエステル樹脂組成物から形成された生分解性ポリエステルフィルムは、低温で保管および輸送される製品の包装材や耐久性を要する自動車用内装材、ゴミ袋、マルチングフィルム、および使い捨て製品に適用し得る優れた品質を有する。
【0164】
前記ジオール成分、ジカルボン酸成分、およびナノセルロースに関する説明は、前述の通りである。
【0165】
前記生分解性ポリエステルフィルムの厚さは5μm~200μmであり得る。例えば、前記生分解性ポリエステルフィルムの厚さは、5μm~180μm、5μm~160μm、10μm~150μm、15μm~130μm、20μm~100μm、15μm~100μm、25μm~80μm、または25μm~60μmであり得る。
【0166】
前記生分解性ポリエステルフィルムの引張強度は25MPa以上であり得る。例えば、前記生分解性ポリエステルフィルムの引張強度は、30MPa以上、35MPa以上、40MPa以上、45MPa以上、48MPa以上、35MPa~70MPa、40MPa~70MPa、40MPa~65MPa、45MPa~65MPa、45MPa~63MPa、48MPa~60MPa、または48MPa~55MPaであり得る。
【0167】
前記生分解性ポリエステルフィルムの引張強度偏差は7%以下であり得る。例えば、前記生分解性ポリエステルフィルムの引張強度偏差は、6.5%以下または6.3%以下であり得る。
【0168】
また、前記生分解性ポリエステルフィルムは、25℃の温度および50%RHの湿度条件下で6ヶ月間の引張強度の変化率が30%以下であり得る。例えば、25℃の温度および50%RHの湿度条件下で6ヶ月間の引張強度の変化率は、28%以下または26%以下であり得る。引張強度の変化率が前記範囲を満足することにより、耐久性がより向上し得る。
【0169】
前記生分解性ポリエステルフィルムの引裂強度は、300N/cm以上、400N/cm以上、または500N/cm以上であり、1800N/cm以下、1500N/cm以下または1300N/cm以下であり、具体的に500N/cm~1800N/cm、700N/cm~1800N/cm、700N/cm~1500N/cm、または500N/cm~1300N/cmであり得る。
【0170】
前記生分解性ポリエステルフィルムの伸び率は、400%以上、500%以上、または600%以上であり、1500%以下、1300%以下、1200%以下であり、具体的に400%~1500%、400%~1300%、400%~1200%、500%~1500%、500%~1400%、または500%~1200%であり得る。
【0171】
また、前記生分解性ポリエステルフィルムのシール強度は800gf以上であり得る。例えば、前記生分解性ポリエステルフィルムのシール強度は、830gf以上、850gf以上または880gf以上であり得る。
【0172】
前記生分解性ポリエステルフィルムの単位衝撃吸収エネルギーは0.85kgf-cm/μm以上であり得る。例えば、前記生分解性ポリエステルフィルムの単位衝撃吸収エネルギーは、0.9kgf-cm/μm以上または0.95kgf-cm/μm以上であり得る。
【0173】
また、前記生分解性ポリエステルフィルムをX線回折分析装置で回折角2θが10°~80°にて測定した結晶化度の偏差は2%以下であり得る。例えば、前記前記生分解性ポリエステルフィルムをX線回折分析装置で回折角2θが10°~80°にて測定した結晶化度の偏差は、1.9%以下、1.8%以下、または1.7%以下であり得る。
【0174】
[生分解性不織布の製造方法]
一実現例による生分解性不織布の製造方法は、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分とジカルボン酸成分とを含む組成物をエステル化反応してプレポリマーを調製する段階と、前記プレポリマーを重縮合反応して重合体を調製する段階と、前記重合体からペレットを製造する段階と、前記ペレットを紡糸して不織布層を製造する段階とを含み、前記ジカルボン酸成分は、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含み、前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。前記実現例により製造された不織布層は、引張強度が25MPa以上であり、伸び率が400%以上である。
【0175】
図4は、前記実現例による生分解性不織布を製造する方法を示したものである。
以下では、図4を参照して、前記実現例による生分解性不織布を製造する方法(S100)について説明する。
【0176】
(a)プレポリマーの調製
まず、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分とジカルボン酸成分とを含む組成物をエステル化反応してプレポリマーを調製する(S110)。
【0177】
前記ジオール成分および前記ジカルボン酸成分に関する説明は、前述の通りである。
【0178】
前記段階S110は、前記組成物にチタン系触媒またはゲルマニウム系触媒を投入する段階を含み得る(S111)。具体的に、前記エステル化反応の前にチタン系触媒またはゲルマニウム系触媒を前記組成物に投入し得る。前記チタン系触媒または前記ゲルマニウム系触媒に関する説明は、前述の通りである。
【0179】
また、前記段階S110は、前記組成物にナノセルロースを投入する段階を含み得る(S112)。具体的に、前記エステル化反応の前に、ナノセルロースを前記組成物に投入し得る。前記ナノセルロースに関する説明は、前述の通りである。一実現例によると、前記生分解性不織布の製造方法は、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分、ジカルボン酸成分、および組成物の総重量を基準に、ナノセルロースを3重量%以下の量で含む組成物を準備する段階と、前記組成物をエステル化反応してプレポリマーを調製する段階とを含む。
【0180】
この際、前記段階S112で投入されるナノセルロースは、前記ジオール成分に分散されたナノセルロースであり得る。例えば、前記ジオール成分が1,4-ブタンジオールであり、前記段階S112で投入されるナノセルロースが、1,4-ブタンジオールに分散されたナノセルロースであり得る。
【0181】
または、前記段階S112で投入されるナノセルロースは、水に分散された後、再び前記ジオール成分に再分散されたナノセルロースであり得る。具体的に、前記ナノセルロースを水に分散させた後、これを前記ジオール成分に再度分散させることにより、2度の分散段階を経たナノセルロースであり得る。
【0182】
このように、前記組成物に含まれているジオール成分と同じジオール成分にナノセルロースを分散させた後、前記組成物に投入することにより、分散性を向上させ、強度、特に引裂強度の向上を最大化し得る。
【0183】
また、前記エステル化反応の前に、前記段階S110の組成物にシリカ、カリウムまたはマグネシウムのような添加剤、およびトリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフィン、リン酸、または亜リン酸のような安定化剤からなる群より選択された1種以上をさらに投入し得る。
【0184】
前記エステル化反応は、250℃以下にて0.5時間~5時間行われ得る。具体的に、前記エステル化反応は、240℃以下、235℃以下、180℃~250℃、185℃~240℃、または200℃~240℃にて副産物である水とメタノールとが理論的に90%に到達するまで常圧にて行われ得る。例えば、前記エステル化反応は、0.5時間~4.5時間、0.5時間~3.5時間、または1時間~3時間行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0185】
前記プレポリマーの数平均分子量は、500~10000であり得る。例えば、前記プレポリマーの数平均分子量は、500~8500、500~7000、1000~6000、または2500~5500であり得る。または前記プレポリマーの数平均分子量は、1500~10000であり得る。例えば、前記プレポリマーの数平均分子量は、1500~8500、1500~6500、または2000~5500であり得る。前記プレポリマーの数平均分子量が前記範囲を満足することにより、縮重合反応において重合体の分子量を効率的に増加させ得るので、強度をさらに向上させ得る。
【0186】
前記数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定し得る。具体的に、ゲル透過クロマトグラフィーによって出たデータは、Mn、Mw、Mpなど、様々の項目があるが、そのうち数平均分子量(Mn)を基準にして分子量を測定し得る。
【0187】
(b)重合体の調製
その後、前記プレポリマーを重縮合反応して重合体を調製する(S120)。
【0188】
前記重縮合反応は、180℃~280℃および1.0Torr以下にて1時間~6時間、または1時間~5時間行われ得る。例えば、前記重縮合反応は、190℃~270℃、210℃~260℃、215℃~245℃、または230℃~255℃にて行われ、0.9Torr以下、0.7Torr以下、0.2Torr~1.0Torr、0.3Torr~0.9Torr、0.5Torr~0.9Torr、または0.4Torr~0.6Torrにて行われ、1.5時間~5.5時間、2時間~5時間、1.5時間~4.5時間、2時間~4時間、3.5時間~4.5時間、または2.5時間~3.5時間行われ得る。
【0189】
また、前記重縮合反応の前に、前記プレポリマーにシリカ、カリウムまたはマグネシウムのような添加剤、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフィン、リン酸または亜リン酸のような安定化剤、およびアンチモントリオキシド、三酸化アンチモン、またはテトラブチルチタネートのような重合触媒からなる群より選択された1種以上をさらに投入し得る。
【0190】
前記重合体の数平均分子量は40000以上であり得る。例えば、前記重合体の数平均分子量は、43000以上、45000以上、40000~70000、または50000~70000であり得る。前記重合体の数平均分子量が前記範囲を満足することにより、強度および加工性をさらに向上させ得る。
【0191】
また、前記重合体の酸価は1.8mgKOH/g以下であり得る。例えば、前記重合体の酸価は、1.5mgKOH/g以下、1.3mgKOH/g以下、または1.25mgKOH/g以下であり得る。重合体の酸価が前記範囲を満足することにより、耐加水分解性の向上を最大化し得る。
【0192】
(c)ペレットの製造
その後、前記重合体からペレットを製造する(S130)。
具体的に、前記段階S130は、前記重合体を15℃以下、10℃以下、または6℃以下に冷却する段階と、前記冷却された重合体をカットしてペレットを製造する段階とを含み得る。
【0193】
前記カット段階は、当業界で使用されるペレットのカッターであれば制限なく使用して行われ、ペレットは様々な形状を有し得る。
【0194】
(d)不織布層の製造
その後、前記ペレットを紡糸して不織布層を製造する(S140)。
前記紡糸は、メルトブロー(melt blown)、スパンボンド(spun bond)、フラッシュスパン(flash spun)、電気紡糸(electro-spinning)、または湿式(wet-laid)法でよく、メルトブローが気孔の大きさの面から好ましいが、これに限定されるものではない。
【0195】
具体的に、メルトブロー法は、高分子を高速で紡糸する方法として、気孔径が小さく、高度のフィルタ性能を有する不織布を生産することができ、医療界で使用される衛生製品や電気的特性製品などに広く使用されているが、比表面積が大きく強度が弱いという問題がある。
【0196】
しかしながら、前記実現例による生分解性不織布の製造方法は、メルトブロー法を用いても、生分解性、柔軟性および加工性を低下させないながらも、優れた強度を有する不織布を製造し得る。
【0197】
具体的に、前記段階S130は前記ペレットを、160℃~260℃、180℃~260℃、160℃~240℃、185℃~240℃、または190℃~230℃にて、30m/min~100m/min、30m/min~70m/min、または70m/min~100m/minの紡糸速度で紡糸して不織布層を製造し得る。
【0198】
また、前記段階S140は、前記不織布層の少なくとも一面に抗菌性組成物をコーティングする段階をさらに含み得る(S141)。
【0199】
具体的に、前記段階S140において、前記不織布層の少なくとも一面に抗菌性組成物をコーティングして抗菌性コーティング層を形成することにより、不織布層および前記不織布層の少なくとも一面に抗菌性コーティング層を含む生分解性不織布が得られ得る。前記コーティングは、グラビアコーティング、スロットコーティング、コンマコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、または含浸コーティングによって行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0200】
前記抗菌性組成物は、前記抗菌性組成物の総重量を基準に0.5重量%~10重量%の銀ナノを含み得る。例えば、前記銀ナノの含有量は、前記抗菌性組成物の総重量を基準に、0.5重量%~8重量%、0.5重量%~3重量%、0.7重量%~2.5重量%、または0.8重量%~1.5重量%であり得る。銀ナノの含有量が前記範囲を満足することにより、抗菌性をさらに向上させることができ、特に、前記抗菌性コーティング層を含む生分解性不織布を食品包装材として使用する際、食品が変質することをより効果的に防止することができる。
【0201】
[生分解性ポリエステルフィルムの製造方法]
また、前記実現例による生分解性ポリエステルフィルムの製造方法が提供される。
【0202】
前記実現例による生分解性ポリエステルフィルムの製造方法は、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分、ジカルボン酸成分、およびナノセルロースを含む組成物を準備する段階と、前記組成物をエステル化反応してプレポリマーを調製する段階と、前記プレポリマーを重縮合反応して重合体を調製する段階と、前記重合体からペレットを製造する段階と、前記ペレットを乾燥および溶融押出する段階とを含み、前記ジカルボン酸成分は、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含み、前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。前記ナノセルロースは、前記組成物の総重量を基準に3重量%以下の量で含まれ得る。前記実現例に基づいて製造されたフィルムは、引張強度が25MPa以上であり、伸び率が400%以上である。
【0203】
前記ナノセルロースは、i)100nm以下の直径を有する3次元網状構造を含むバクテリアセルロースと、ii)下記化学式1で表されるシランカップリング剤で前処理されたナノセルロースと、iii)下記式1による光透過率の変化率が25%以下であるナノセルロースとからなる群より選択される1つ以上を含み得る。
【0204】
一実現例による生分解性ポリエステルフィルムの製造方法は、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分、ジカルボン酸成分、および100nm以下の直径を有する3次元網状構造のバクテリアセルロースを含む組成物をエステル化反応してプレポリマーを調製する段階と、前記プレポリマーを重縮合反応して重合体を調製する段階と、前記重合体からペレットを製造する段階と、前記ペレットを乾燥および溶融押出する段階とを含み、前記ジカルボン酸成分は、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含み、前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。
【0205】
他の実現例による生分解性ポリエステルフィルムの製造方法は、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分、ジカルボン酸成分、および前記化学式1で表されるシランカップリング剤で前処理されたナノセルロースを含む組成物をエステル化反応してプレポリマーを調製する段階と、前記プレポリマーを重縮合反応して重合体を調製する段階と、前記重合体からペレットを製造する段階と、前記ペレットを乾燥および溶融押出する段階とを含み、前記ジカルボン酸成分が、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含み、前記第1デジカメカルボン酸が、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記第2ジカルボン酸が、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。
【0206】
また他の実現例による生分解性ポリエステルフィルムの製造方法は、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分、ジカルボン酸成分、および前記式1による光透過率の変化率が25%以下であるナノセルロースを含む組成物をエステル化反応してプレポリマーを調製する段階と、前記プレポリマーを重縮合反応して重合体を調製する段階と、前記重合体からペレットを製造する段階と、前記ペレットを乾燥および溶融押出する段階とを含み、前記ジカルボン酸成分は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、具体的に、前記ジカルボン酸成分は、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含み、ここで前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。
【0207】
前記ジオール成分、前記ジカルボン酸成分および前記バクテリアセルロースに関する説明は、前述の通りである。
【0208】
前記バクテリアセルロースは、前記ジオール成分に分散されたセルロースであり得る。例えば、前記ジオール成分が1,4-ブタンジオールであり、前記バクテリアセルロースが1,4-ブタンジオールに分散されたものであり得る。または、前記バクテリアセルロースは水に分散された後、再び前記ジオール成分に再分散されたセルロースであり得る。具体的に、前記セルロースを水に分散させた後、これを前記ジオール成分に再度分散させることにより2度の分散段階を経たセルロースであり得る。このように、前記ジオール成分と同じジオール成分に分散されたバクテリアセルロースを含むことにより、分散性をさらに向上させ、優れた強度特性を有し得る。
【0209】
前記エステル化反応の前に、前記チタン系触媒、ゲルマニウム系触媒、アンチモン系触媒、添加剤、および安定化剤を前記組成物に投入し得る。前記触媒、前記添加剤および前記安定化剤に関する説明は、前述の通りである。
【0210】
前記プレポリマーを調製する段階は、前記ジオール成分、前記ジカルボン酸成分および前記ナノセルロースを含む組成物を第1段階エステル化反応して調製しても良く、1次エステル化反応および2次エステル化反応による2段階エステル化反応して調製しても良い。前記2段階エステル化反応してプレポリマーを調製すると、前記ナノセルロースを2次エステル化反応段階で投入することにより、ナノセルロースの結合力を向上させ得る。具体的に、2次エステル化反応段階において、前記ナノセルロース、すなわち水分散されたナノセルロースを投入することが、耐久性をさらに向上させ得る。
【0211】
また、前記ナノセルロースは、100℃~160℃、好ましくは110℃~140℃の温度条件で投入することが、耐加水分解性を向上させ得る点から好ましい。さらには、前記ナノセルロースは、0.2kg/min~0.6kg/minまたは0.3kg/min~0.5kg/minの速度で投入することが、凝集を防止しながら耐加水分解性を向上させることができ、適切な工程速度を維持し得る。または、前記ナノセルロースは、2kg/min~10kg/min、2.5kg/min~9.5kg/minまたは3kg/min~8kg/minの速度で投入することが、凝集を防止しながら耐加水分解性をさらに向上させ、適切な工程速度を維持し得る。
【0212】
より具体的に、2段階エステル化反応は、(1)前記ジオール成分および前記第1ジカルボン酸成分を1次エステル化反応させる段階と、(2)前記(1)段階の反応生成物に、前記ジオール成分および前記第2ジカルボン酸成分と、前記ナノセルロースとを投入して2次エステル化反応させる段階とを含み得る。
【0213】
前記プレポリマーの調製段階、前記重合体の調製段階、および前記ペレットの製造段階におけるその他の工程条件は、先般生分解性不織布の製造方法におけるプレポリマーの調製段階(S110)、前記重合体の調製段階(S120)、および前記ペレットの製造段階(S130)において例示した工程条件が同一に適用され得る。
【0214】
その後、前記ペレットを乾燥および溶融押出して生分解性ポリエステルフィルムを製造する。
【0215】
前記乾燥は、60℃~100℃にて2時間~12時間行われ得る。具体的に、前記乾燥は65℃~95℃、70℃~90℃、または75℃~85℃にて3時間~12時間、または4時間~10時間行われ得る。ペレットの乾燥工程条件が前記範囲を満足することにより、製造される生分解性ポリエステルフィルムの品質をさらに向上させ得る。
【0216】
前記溶融押出は、270℃以下の温度にて行われ得る。例えば、前記溶融押出は、265℃以下、260℃以下、255℃以下、200℃~270℃、200℃~255℃、または205℃~245℃の温度にて行われ得る。また、前記溶融押出は5torr以下の圧力にて行われ得る。例えば、前記溶融押出は4.5torr以下または4torr以下の圧力にて行われ得る。前記溶融押出は、インフレーションフィルム(blown film)工程により行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0217】
[生分解性ポリエステル樹脂の調製方法]
一実現例による生分解性ポリエステル樹脂の調製方法は、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分とジカルボン酸成分とを含む組成物をエステル化反応してプレポリマーを調製する段階と、前記プレポリマーを重縮合反応して重合体を調製する段階と、前記重合体からペレットを製造する段階とを含み、前記ジカルボン酸成分は、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含み、前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。
【0218】
他の実現例による生分解性ポリエステル樹脂の調製方法は、前記ペレットの製造段階の後、前記ペレットを固相重合する段階をさらに含む。すなわち、前記実現例による生分解性ポリエステル樹脂の調製方法は、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分とジカルボン酸成分とを含む組成物をエステル化反応してプレポリマーを調製する段階と、前記プレポリマーを重縮合反応して重合体を調製する段階と、前記重合体からペレットを製造する段階と、前記ペレットを固相重合する段階とを含み、前記ジカルボン酸成分は、第1ジカルボン酸および前記第1ジカルボン酸とは異なる第2ジカルボン酸を含み、前記第1ジカルボン酸は、テレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含み、前記第2ジカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、およびこれらの誘導体からなる群より選択された1種以上を含む。
【0219】
また、前記組成物は、ジオール成分およびジカルボン酸成分のほか、前述のナノセルロースまたはその他の触媒や添加剤をさらに含み得る。これにより、前記実現例による生分解性ポリエステル樹脂およびその調製方法は、生分解性ポリエステル樹脂組成物およびその調製方法としても適用され得る。
【0220】
図8は、前記実現例による生分解性ポリエステル樹脂を調製する方法を示したものである。
以下では、図8を参照して、前記実現例による生分解性ポリエステル樹脂を調製する方法(S200)について説明する。
【0221】
(a)プレポリマーの調製
まず、1,4-ブタンジオールまたはその誘導体を含むジオール成分とジカルボン酸成分とを含む組成物をエステル化反応してプレポリマーを調製する(S210)。
【0222】
前記プレポリマーの数平均分子量は1500~10000であり得る。例えば、前記プレポリマーの数平均分子量は、1500~8500、2000~8000、3500~6000、または4500~5500であり得る。プレポリマーの数平均分子量が前記範囲を満足することにより、後続の段階である固相重合の工程時間を短縮することができ、調製される生分解性ポリエステル樹脂の変色を効果的に防止することにより、品質を向上させ得る。
【0223】
前記プレポリマーの固有粘度(IV)は0.1dl/g~0.6dl/gであり得る。例えば、前記プレポリマーの固有粘度(IV)は、0.1dl/g~0.55dl/g、0.15~0.45dl/g、または0.15dl/g~0.35dl/gであり得る。プレポリマーの固有粘度(IV)が前記範囲を満足することにより、調製されるポリエステル樹脂の流通安定性を向上させ得る。
【0224】
前記プレポリマーのカルボキシル基末端の濃度は25meq/kg~50meq/kgであり得る。例えば、前記プレポリマーのカルボキシル基末端の濃度は、25meq/kg~45meq/kg、28meq/kg~43meq/kgで、または30meq/kg~40meq/kgであり得る。プレポリマーのカルボキシル基末端の濃度が前記範囲を満足することにより、後続の段階である固相重合の工程時間を短縮することができ、調製されるポリエステル樹脂の耐加水分解性を向上させ得る。
【0225】
前記プレポリマーのメルトフローインデックスは、190℃および2.1kgの条件下で15g/10min以上であり得る。例えば、前記プレポリマーのメルトフローインデックスは、190℃および2.1kgの条件下で、18g/10min以上、20g/10min以上、15g/10min~27g/10min、18g/10min~27g/10min、または20g/10min~26g/10minであり得る。プレポリマーのメルトフローインデックスが前記範囲を満足することにより、後続の段階である固相重合の工程時間を短縮することができ、調製されるポリエステル樹脂の耐加水分解性を向上させ得る。
【0226】
前記プレポリマーの調製段階におけるその他の工程条件は、前記生分解性不織布の製造方法におけるプレポリマーの調製段階(S110)において例示した工程条件が同一に適用され得る。
【0227】
(b)重合体の調製
その後、前記プレポリマーを重縮合反応して重合体を調製する(S220)。
【0228】
前記重合体の数平均分子量は20000以上であり得る。例えば、前記重合体の数平均分子量は、23000以上、25000以上、28000以上、20000~100000、25000~80000、または28000~35000であり得る。重合体の数平均分子量が前記範囲を満足することにより、後続の段階である固相重合の工程時間を短縮することができ、調製される生分解性ポリエステル樹脂の変色を効果的に防止することにより、品質を向上させ得る。
【0229】
前記重合体の固有粘度(IV)は0.65dl/g~1.3dl/gであり得る。例えば、前記重合体の固有粘度(IV)は、0.7dl/g~1.3dl/g、0.75dl/g~1.15dl/g、または0.85dl/g~1.15dl/gであり得る。重合体の固有粘度(IV)が前記範囲を満足することにより、調製されるポリエステル樹脂の流通安定性を向上させ得る。
【0230】
前記重合体のカルボキシル基末端の濃度は20meq/kg~40meq/kgであり得る。例えば、前記重合体のカルボキシル基末端の濃度は、21meq/kg~40meq/kg、23meq/kg~35meq/kg、または23meq/kg~33meq/kgであり得る。重合体のカルボキシル基末端の濃度が前記範囲を満足することにより、後続の段階である固相重合の工程時間を短縮することができ、調製されるポリエステル樹脂の耐加水分解性を向上させ得る。
【0231】
前記重合体のメルトフローインデックスは、190℃および2.1kgの条件下で13g/10min以下であり得る。例えば、前記重合体のメルトフローインデックスは、190℃および2.1kgの条件下で、11g/10min以下、10g/10min以下、2g/10min~13g/10min、または4g/10min~10g/10minであり得る。重合体のメルトフローインデックスが前記範囲を満足することにより、後続の段階である固相重合の工程時間を短縮することができ、調製されるポリエステル樹脂の耐加水分解性を向上させ得る。
【0232】
前記プレポリマーおよび前記重合体の数平均分子量の比は1:8~13であり得る。例えば、前記プレポリマーおよび前記重合体の数平均分子量の比は、1:8~12、または1:8.5~11.5であり得る。
【0233】
前記プレポリマーおよび前記重合体の固有粘度(IV)の比は、1:2~7であり得る。例えば、前記プレポリマーおよび前記重合体の固有粘度(IV)の比は、1:2~6、または1:2.5~5.5であり得る。
【0234】
前記プレポリマーおよび前記重合体のカルボキシル基末端の濃度の比は、1.1~1.5:1であり得る。例えば、前記プレポリマーおよび前記重合体のカルボキシル基末端の濃度の比は、1.1~1.4:1、1.12~1.35:1、または1.12~1.3:1であり得る。
【0235】
前記プレポリマーおよび前記重合体のメルトフローインデックス(melting flow index、MFI)の比は、190℃および2.1kgの条件下で1.5~3.5:1であり得る。例えば、前記プレポリマーおよび前記重合体のメルトフローインデックスの比は、190℃および2.1kgの条件下で1.8~3.2:1、2~3:1、または2.5~2.9:1であり得る。
【0236】
プレポリマーおよび重合体の、数平均分子量、固有粘度、カルボキシル基末端の濃度、およびメルトフローインデックスの比が前記範囲を満足することにより、後続の段階である固相重合の工程時間を短縮しながら、調製される生分解性ポリエステル樹脂の耐加水分解性を向上させ得る。
【0237】
前記重合体の調製段階におけるその他の工程条件は、前記生分解性不織布の製造方法における重合体の調製段階(S120)において例示した工程条件が同一に適用され得る。
【0238】
(c)ペレットの製造
その後、前記重合体からペレットを製造する(S230)。
【0239】
具体的に、前記段階S230は、前記重合体を15℃以下、10℃以下、または6℃以下に冷却する段階と、前記冷却された重合体をカットする段階とを含み得る。
【0240】
前記カット段階は、当業界で使用されるペレットカッターであれば制限なく使用して行われ、ペレットは様々な形状を有し得る。
【0241】
(d)固相重合
最後に、前記ペレットを固相重合して、生分解性ポリエステル樹脂を調製する(S240)。
【0242】
前記固相重合は、ガラス転移温度(Tg)~融点(Tm)温度の範囲で行われ得る。具体的に、前記固相重合は、前記重合体のガラス転移温度(Tg)~融点(Tm)温度の間で行われ、融点の温度に近づくほど好ましいが、これに限定されるものではない。
【0243】
具体的に、前記固相重合は、窒素雰囲気下の80℃~150℃および3torr以下にて3時間~20時間行われ得る。例えば、前記固相重合は、窒素雰囲気下で85℃~200℃、90℃~180℃、または95℃~150℃の温度および2.5torr以下、または1.5torr以下の圧力にて3時間~18時間、3時間~15時間、または3時間~12時間行われ得る。固相重合の工程条件が前記範囲を満足することにより、調製される生分解性ポリエステル樹脂の寿命および耐久性、特に耐加水分解性を向上させ得る。
【0244】
また、前記固相重合は1次固相重合であり得る。具体的に、前記固相重合が1次固相重合であり、前記1次固相重合後調製された生分解性ポリエステル樹脂の固有粘度(IV)が1.0dl/g未満のとき、2次固相重合をさらに行える(S241)。
【0245】
より具体的に、前記1次固相重合後調製された生分解性ポリエステル樹脂の固有粘度(IV)を測定した後、測定された固有粘度(IV)が1.0dl/g未満、または0.9dl/g未満のとき、80℃~150℃、85℃~200℃、90℃~180℃、または95℃~150℃の温度および2.5torr以下、または1.5torr以下の圧力にて3時間~30時間、または4時間~24時間2次固相重合をさらに行える。
【0246】
前記実現例による生分解性ポリエステル樹脂の調製方法は、特定のジオール成分とジカルボン酸成分とを含む組成物から形成されたペレットを固相重合する段階を含むことにより、従来の鎖延長剤や脱活性化剤を使用した方法に比べて工程時間が短く、副反応を効果的に抑制することができ、分子量およびカルボキシル基末端の濃度を効率的に調整し得る。
【0247】
したがって前記方法は、これにより調製されるポリエステル樹脂の生分解性、耐加水分解性、寿命、強度、耐久性、および加工性のいずれも向上させ、変色なく優れた耐久性、加工性、および流通安定性を有する生分解性ポリエステル樹脂を提供し得る。
【0248】
前記生分解性ポリエステル樹脂の数平均分子量は50000以上であり得る。例えば、前記生分解性ポリエステル樹脂の数平均分子量は、52000以上、53000以上、50000~150000、52000~130000、または53000~120000であり得る。生分解性ポリエステル樹脂の数平均分子量が前記範囲を満足することにより、強度、特に引裂強度のような機械的物性がより向上され得る。
【0249】
前記生分解性ポリエステル樹脂の固有粘度(IV)は1.2dl/g以上であり得る。例えば、前記生分解性ポリエステル樹脂の固有粘度(IV)は、1.22dl/g以上、1.25dl/g以上、1.2dl/g~5dl/g、1.2dl/g~3.5dl/g、1.2dl/g~3dl/g、または1.25dl/g~2.5dl/gであり得る。生分解性ポリエステル樹脂の固有粘度が前記範囲を満足することにより、耐加水分解性がより向上され得る。
【0250】
前記生分解性ポリエステル樹脂のカルボキシル基末端の濃度は、25meq/kg以下であり得る。例えば、前記生分解性ポリエステル樹脂のカルボキシル基末端の濃度は、23meq/kg以下、20meq/kg以下、1meq/kg~25meq/kg、5meq/kg~20meq/kg、または8meq/kg~20meq/kgであり得る。生分解性ポリエステル樹脂のカルボキシル基末端の濃度が前記範囲を満足することにより、耐加水分解性を最大化し得る。したがって、耐久性および流通安定性がより向上され得る。
【0251】
前記生分解性ポリエステル樹脂のメルトフローインデックスは、190℃および2.1kgの条件下で3.9g/10min以下であり得る。例えば、前記生分解性ポリエステル樹脂のメルトフローインデックスは、190℃および2.1kgの条件下で、3.8g/10min以下、3.5g/10min以下、3.3g/10min以下、3.1g/10min以下、0.1g/10min~3.9g/10min、0.1g/10min~3.8g/10min、0.3g/10min~3.5g/10min、0.5g/10min~3.5g/10min、1.2g/10min~3.3g/10min、1.5g/10min~3.3g/10min、または1.8g/10min~3.1g/10minであり得る。生分解性ポリエステル樹脂のメルトフローインデックスが前記範囲を満足することにより、耐加水分解性がより向上され得る。
【0252】
前記重合体および前記生分解性ポリエステル樹脂の数平均分子量の比は1:1.5~2.5であり得る。例えば、前記重合体および前記生分解性ポリエステル樹脂の数平均分子量の比は、1:1.6~2.5、または1:1.7~2.4であり得る。
【0253】
前記重合体および前記生分解性ポリエステル樹脂の固有粘度(IV)の比は、1:1~2であり得る。例えば、前記重合体および前記生分解性ポリエステル樹脂の固有粘度(IV)の比は、1:1.1~1.9、または1:1.2~1.8であり得る。
【0254】
前記重合体および前記生分解性ポリエステル樹脂のカルボキシル基末端の濃度の比は、1.4~4:1であり得る。例えば、前記重合体および前記生分解性ポリエステル樹脂のカルボキシル基末端の濃度の比は、1.4~3.8:1または1.45~3.5:1であり得る。
【0255】
前記重合体および前記生分解性ポリエステル樹脂のメルトフローインデックスの比は、190℃および2.1kgの条件下で2~6:1であり得る。例えば、前記重合体および前記生分解性ポリエステル樹脂のメルトフローインデックスの比は、190℃および2.1kgの条件下で、2.3~6:1、2.5~5.8:1、または2.8~5.5:1であり得る。
【0256】
また、前記生分解性ポリエステル樹脂で製造されたサンプルのPCT(pressure cooker test)前後の引張強度の変化率は20%以下であり、PCTを行った後の黄色度は3.5以下であり得る。具体的に、前記生分解性ポリエステル樹脂で製造されたサンプルにPCTを行ったとき、前後の引張強度の変化率は、18%以下、5%~20%、または8%~18%であり得る。また、前記生分解性ポリエステル樹脂で製造されたサンプルのPCT後の黄色度は3以下、または2.8以下であり得る。
【0257】
前記PCTは、例えばオートクレーブ(autoclave)を用いて、80℃の温度および100%の湿度を維持して、24時間後に引張強度測定器(インストロン社)により測定した前後の引張強度の変化率を測定するテストとして、耐久性、流通安定性および寿命特性を評価し得る。
【0258】
[成形品]
一実現例による成形品は、前記実現例による生分解性ポリエステル樹脂または樹脂組成物から製造され得る。
【0259】
具体的に、前記成形品は、前記生分解性ポリエステル樹脂または樹脂組成物を押出、射出など、当業界に公知の方法により成形して製造され、前記成形品は、射出成形品、押出成形品、薄膜成形品、またはブロー(blown)成形品であり得るが、これに限定されるものではない。
【0260】
例えば、前記生分解性ポリエステル樹脂または樹脂組成物を溶融押出して生分解性ポリエステルフィルムまたはシートを製造することができ、前記溶融押出は、270℃以下、250℃以下、または240℃以下にて行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0261】
また、前記成形品は、農業用マルチング(mulching)フィルム、使い捨て手袋、食品包装材、ゴミ袋などとして利用され得るフィルムまたはシート状であり、織物、編物、不織布、ロープなどとして利用され得る繊維状であり、弁当などのような食品包装用容器として利用され得る容器状であり得る。
【0262】
特に、前記成形品は、強度および加工性は勿論のこと、特に耐加水分解性を向上させ得る前記生分解性ポリエステル樹脂または樹脂組成物から形成されるので、電子製品および部品の包装材や食品用包装材に適用する際、優れた特性を発揮し得る。
【0263】
特に、前記成形品は、透明性、強度および加工性は勿論のこと、特に生分解性、引張強度および衝撃強度のような強度特性、耐加水分解性のような耐久性、および生体適合性を向上させ得る前記生分解性ポリエステル樹脂または樹脂組成物から形成され得るので、医療用機器や包装材、低温で保管および輸送される製品の包装材、耐久性を要する自動車用内装材、または優れた耐久性および伸び率を要するごみ袋、マルチングフィルム、および使い捨て製品に適用する際、優れた特性を発揮し得る。
【0264】
(実施例)
前記内容を下記の様々な実施例によりさらに詳細に説明するが、以下に記載の範囲で実施形態が限定されるものではない。
【0265】
A.生分解性不織布の製造および評価
(製造例A1-1)
1,4-ブタンジオール1.4モル、アジピン酸0.5モル、およびジメチルテレフタル酸0.5モルを混合し、前記混合物にチタン系触媒であるテトラブチルチタネート(CAMEO Chemicals社)300ppmを投入した後、220℃および常圧にてエステル化反応を行い、5000の数平均分子量を有するプレポリマーを調製した。
【0266】
前記プレポリマーに、重縮合触媒であるテトラブチルチタネート(CAMEO Chemicals社)100ppmを添加し、240℃に昇温した後、0.5torrにて3時間の重縮合反応を行い、50000の数平均分子量を有する重合体Aを調製し、これを5℃に冷却した後、ペレットカッターでカットしてペレットを製造した。
【0267】
前記ペレットをメルトブロー法により220℃にて溶融押出し、50m/minの紡糸速度で紡糸して、平均気孔径が150μmであり、厚さ0.2mmの不織布層を製造した。
【0268】
前記不織布層の一面に銀ナノを1重量%で含む抗菌性コーティング組成物をスピンコーティングして、前記不織布層の一面に抗菌性コーティング層が形成された厚さ0.2mmの生分解性不織布を製造した。
【0269】
(製造例A1-2)
前記重縮合反応の際、1,4-ブタンジオールに分散されたナノセルロース(直径20nm、長さ200nm)0.1重量%をさらに投入したことを除いて、前記製造例A1-1と同様の手順で行うことにより、生分解性不織布を製造した。
【0270】
(製造例A1-3)
前記重縮合反応の際、1,4-ブタンジオールに分散されたナノセルロース(直径20nm、長さ200nm)0.5重量%をさらに投入したことを除いて、前記製造例A1-1と同様の手順で行うことにより、生分解性不織布を製造した。
【0271】
(製造例A2-1)
前記重合体Aの代わりに、ポリ乳酸樹脂(4032D、NatureWorks社)を使用し、抗菌性コーティング層を形成しないことを除いて、前記製造例A1-1と同様の手順で行うことにより、生分解性不織布を製造した。
【0272】
(製造例A2-2)
前記重合体Aの代わりに、ポリ乳酸樹脂(4032D、NatureWorks社)およびポリプロピレン(ハンファトータル社)を190℃にてツインスクリューを用いてコンパウンドした重合体Bを使用し、抗菌性コーティング層を形成しないことを除いて、前記製造例A1-1と同様の手順で行うことにより、生分解性不織布を製造した。
【0273】
(評価例A1:引張強度、伸び率および初期弾性モジュラス)
不織布サンプルを長さ100mmおよび幅15mmに切断した後、ASTM D882に基づいて、インストロン(INSTRON)社の万能試験機(4206-001、UTM)によりチャック間の間隔が50mmになるように装着し、引張速度100mm/minで引張強度および初期弾性モジュラスを測定し、引張速度500mm/minで破断伸び率を測定した。
【0274】
(評価例A2:引裂強度)
不織布サンプルをKPS M 1001-0806に基づいて切断し、500mm/minの一定の速度でサンプルが切断されるまでかかる最大荷重を測定して、下記式に基づいて引裂強度を計算した。
【0275】
【0276】
(評価例A3:抗菌性)
KS K0890繊維材料の抗菌試験法である平行区画線法によりPassまたはFailで評価した。
【0277】
(評価例A4:フィッシュアイ(fish eye))
不織布面積100mm基準で、100μm以上の異物や劣化物のような欠陥を顕微鏡で検出して数を測定した。
【0278】
(評価例A5:生分解度)
不織布サンプルについて、KS M3100-1に基づいて、二酸化炭素の発生量を測定して生分解度を算出した。具体的に、堆肥工場で製造された堆肥のみの接種源容器を準備し、前記堆肥に、前記堆肥の乾燥重量の5重量%のサンプルを投入した試験容器を準備した。その後、温度58±2℃、含水率50%および酸素濃度6%以上の条件で180日間培養し、各容器から発生する二酸化炭素を捕集し、これをフェノールフタレイン水溶液で滴定することにより、各容器から発生する二酸化炭素の量を測定した。測定された二酸化炭素の発生量をもって下記式に基づいて生分解度を計算した。
【0279】
【0280】
前記表1から分かるように、製造例A1-1~製造例A1-3の生分解性不織布は、製造例A2-1およびA2-2の生分解性不織布に比べて、生分解性、引張強度、引裂強度、伸び率、初期弾性モジュラス、および抗菌性のいずれも優れた結果を示した。
【0281】
具体的に、製造例A1-1~A1-3の生分解性不織布は、製造例A2-1およびA2-2の生分解性不織布に比べて、生分解性、引張強度、引裂強度、および伸び率のいずれも優れるため、様々な分野に適用するのに容易であることが分かる。また、製造例A1-1~A1-3の生分解性不織布は、フィッシュアイのようなへこんでいる欠陥が発見されず、初期弾性モジュラスが低いため柔軟性に優れるので、製品に適用する際に使用感や着用感に優れることが分かる。
【0282】
B.生分解性ポリエステルフィルムの製造および評価
(製造例B1-1)
1,4-ブタンジオール1.3モル、アジピン酸0.5モル、およびジメチルテレフタル酸0.5モルを混合した混合物Aに、1,4-ブタンジオールに分散されたバクテリアセルロース(直径:50nm、結晶化度:89%、回折角(2θ):14.6°および22.6°)0.1重量%、およびチタン系触媒のテトラブチルチタネート(CAMEO Chemicals社)300ppmを投入した後、220℃および常圧にてエステル化反応を行い、2000の数平均分子量を有するプレポリマーを調製した。
【0283】
前記プレポリマーに、重縮合触媒のテトラブチルチタネート(CAMEO Chemicals社)100ppmを添加し、240℃に昇温した後、0.5torrにて3時間の重縮合反応を行い、50000の数平均分子量を有する重合体を調製し、これを5℃に冷却した後、ペレットカッターでカットしてペレットを製造した。
【0284】
前記ペレットを80℃にて5時間乾燥した後、インフレーションフィルム押出機(Blown Film Extrusion Line、YOOJIN ENGINEERING社、韓国)により210℃にて溶融押出し、50m/minの速度で厚さ20μmの生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0285】
(製造例B1-2)
前記混合物Aの代わりに、1,4-ブタンジオール1.5モル、コハク酸0.4モル、およびジメチルテレフタル酸0.5モルを混合した混合物Bを使用し、これにバクテリアセルロース(直径:30nm、結晶化度:89%、回折角(2θ):14.6°および22.6°)0.1重量%をさらに投入したことを除いて、前記製造例B1-1と同様の手順で行うことにより、生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0286】
(製造例B2-1)
バクテリアセルロースを投入せず、前記混合物Aの代わりに1,4-ブタンジオール0.9モル、アジピン酸0.5モル、およびジメチルテレフタル酸0.5モルを混合した混合物Cを用いて、30000の数平均分子量を有する重合体を調製したことを除いて、前記製造例B1-1と同様の手順で行うことにより、生分解性フィルムを製造した。
【0287】
(製造例B2-2)
PBAT(JinHui社、中国)、PLA(4032D、NatureWork社)およびアクリル系衝撃補強剤(AIM5000、DONGYANG M&M INDUSTRY社、韓国)を80:15:5の重量比で混合し、230℃にてツインスクリューによりコンパウンドして重合体を調製した。
【0288】
前記重合体をインフレーションフィルム押出機(Blown Film Extrusion Line、YOOJIN ENGINEERING社、韓国)により220℃にて溶融押出し、50m/minの速度で、厚さ20μmの生分解性フィルムを製造した。
【0289】
(製造例B2-3)
セルロースナノファイバー(幅:500nm、長さ:10μm)がランダムに位置して表面積の大きい多孔質構造体のセルロースを、エレクトロスピニング法により得た。PBAT(JinHui社、中国)に前記多孔質構造体セルロース0.1重量%を投入し、230℃にてツインスクリューによりコンパウンドして重合体を調製した。
【0290】
前記重合体を、インフレーションフィルム押出機(Blown Film Extrusion Line、YOOJIN ENGINEERING社、韓国)により190℃にて溶融押出し、50m/minの速度で、厚さ20μmの生分解性フィルムを製造した。
【0291】
(製造例B2-4)
1,4-ブタンジオール1.3モル、アジピン酸0.5モル、およびジメチルテレフタル酸0.5モルの混合物に、1,4-ブタンジオールに分散された微細繊維セルロース(直径:200nm、長さ:8μm、結晶化度:61%、回折角(2θ):16.5°および22.2°)0.1重量%、およびチタン系触媒のテトラブチルチタネート(CAMEO Chemicals社)300ppmを投入した後、220℃および常圧にてエステル化反応を行い、2000の数平均分子量を有するプレポリマーを調製した。
【0292】
前記微細繊維セルロースは、植物系セルロースを物理的方法(高速ホモジナイザー)で処理して調製した。
【0293】
前記プレポリマーに、重縮合触媒のテトラブチルチタネート(CAMEO Chemicals社)100ppmを添加し、250℃に昇温した後、0.5torrにて3時間の重縮合反応を行い、40000の数平均分子量を有する重合体を調製し、これを5℃に冷却した後、ペレットカッターでカットしてペレットを製造した。
【0294】
前記ペレットを80℃にて5時間乾燥した後、インフレーションフィルム押出機(Blown Film Extrusion Line、YOOJIN ENGINEERING社、韓国)により240℃にて溶融押出し、50m/minの速度で、厚さ20μmの生分解性フィルムを製造した。
【0295】
(評価例B1:引張強度)
フィルムサンプルを長さ100mmおよび幅15mmに切断した後、ASTM D882に基づいて、インストロン社の万能試験機(4206-001、UTM)により、チャク間の間隔が50mmになるように装着して、引張速度100mm/minで引張強度を測定した。
【0296】
(評価例B2:単位衝撃吸収エネルギー)
ASTM D3420の規定に基づいて、(株)東洋精機製作所のフィルム衝撃試験機(Film Impact Tester)を用いて測定した。振り子チップ(Pendulum Tip)は1インチ直径の半球形を使用しており、フィルムサンプルは直径が約50mmの円孔を有するサンプル台に装着した。このようにして測定した衝撃吸収エネルギー(kgf-cm)を、フィルムサンプルの厚さ(μm)で割って単位衝撃吸収エネルギー(kgf-cm/μm)を計算した。この際、各サンプル別に10回ずつ測定して得た平均値を取った。
【0297】
(評価例B3:生分解度)
フィルムサンプルについて、前記評価例A5と同様の方法により生分解度を測定した。
【0298】
【0299】
前記表2から分かるように、製造例B1-1および製造例B1-2の生分解性ポリエステルフィルムは、製造例B2-1~製造例B2-4の生分解性フィルムに比べて、引張強度、単位衝撃吸収エネルギー、および生分解性のいずれも優れている。
【0300】
具体的に、製造例B1-1および製造例B1-2の生分解性ポリエステルフィルムは、特定の直径を有するバクテリアセルロースを用いることにより、引張強度および単位衝撃吸収エネルギーに優れるので、強度および耐久性、特に耐衝撃性に優れることが分かる。また、生分解性にも優れるので、医療用機器や包装材に適用するのに容易であることが分かる。
【0301】
特に、製造例B1-1および製造例B1-2の生分解性ポリエステルフィルムは、ナノセルロースを用いた製造例B2-3および植物系セルロースを用いた製造例B2-4に比べて、引張強度、単位衝撃吸収エネルギーおよび生分解性のいずれも優れている。
【0302】
C.生分解性ポリエステルフィルムの製造および評価
(製造例C1-1)
1,4-ブタンジオール60モル部およびジメチルテレフタル酸50モル部を混合し、前記混合物にチタン系触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)200ppmを投入した後、210℃および常圧にて2時間の1次エステル化反応を行った。
【0303】
前記反応生成物に、1,4-ブタンジオール40モル部、アジピン酸50モル部をさらに混合し、前記混合物に、下記化学式1-1で表されるシランカップリング剤で前処理されたナノセルロース0.2重量%およびチタン系触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)200ppmを投入した後、210℃および常圧にて2次エステル化反応を行い、5000の数平均分子量を有するプレポリマーを調製した。
【0304】
前記前処理されたナノセルロースは、セルロースナノクリスタル(直径:50nm、長さ:150nm、結晶化度88%)に、前記ナノセルロースの総重量を基準に5重量%のシランカップリング剤を投入および撹拌して調製した。
【0305】
前記プレポリマーに、重縮合触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)200ppmを添加し、240℃に昇温した後、0.8torrにて4時間の重縮合反応を行い、50000の数平均分子量を有する重合体を調製し、これを5℃に冷却した後、ペレットカッターでカットしてペレットを製造した。
【0306】
前記ペレットを80℃にて5時間乾燥した後、インフレーションフィルム押出機(Blown Film Extrusion Line、YOOJIN ENGINEERING社、韓国)により210℃にて溶融押出し、50m/minの速度で、厚さ20μmの生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0307】
【0308】
(製造例C1-2)
1,4-ブタンジオール60モル部およびジメチルテレフタル酸50モル部の代わりに1,4-ブタンジオール50モル部およびジメチルテレフタル酸50モル部を使用し、1,4-ブタンジオール40モル部およびアジピン酸50モル部の代わりに1,4-ブタンジオール50モル部およびコハク酸50モル部を使用したことを除いて、前記製造例C1-1と同様の手順で行うことにより、生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0309】
(製造例C2-1)
PBAT(Ecoworld、JinHui社、中国)およびPLA(4032D、Naturework社)を90:10に混合した後、220℃にてツインスクリューにより押出して重合体を調製した。これを5℃に冷却した後、ペレットカッターでカットしてペレットを製造した。前記ペレットを前記製造例C1-1と同様の方法により乾燥および溶融押出して、生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0310】
(製造例C2-2)
PBAT(Ecoworld、JinHui社、中国)にエポキシ系鎖延長剤(ADR4368、BASF社)0.3重量%を添加した後、230℃にてツインスクリューにより押出して重合体を調製した。これを5℃に冷却した後、ペレットカッターでカットしてペレットを製造した。前記ペレットを前記製造例C1-1と同じ方法により乾燥および溶融押出して生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0311】
(製造例C2-3)
1,4-ブタンジオール50モル部およびジメチルテレフタル酸40モル部を混合し、前記混合物にチタン系触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)400ppmを投入した後、230℃および常圧にて1時間の1次エステル化反応を行った。
【0312】
前記反応生成物に1,4-ブタンジオール40モル部、アジピン酸50モル部をさらに混合し、前記混合物に、1,4-ブタンジオールに分散されたセルロースナノクリスタル(直径:50nm、長さ:150nm、結晶化度88%)0.2重量%およびチタン系触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)200ppmを投入した後、210℃および常圧にて2時間の2次エステル化反応を行い、5000の数平均分子量を有するプレポリマーを調製した。
【0313】
前記プレポリマーに重縮合触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)200ppmを添加し、240℃に昇温した後、0.8torrにて4時間の重縮合反応を行い、50000の数平均分子量を有する重合体を調製し、これを5℃に冷却した後、ペレットカッターでカットしてペレットを製造した。
【0314】
前記ペレットを80℃にて5時間乾燥した後、インフレーションフィルム押出機(Blown Film Extrusion Line、YOOJIN ENGINEERING社、韓国)により、210℃にて溶融押出し、50m/minの速度で、厚さ20μmの生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0315】
(評価例C1:引張強度および引張強度変化率)
フィルムサンプルを長さ100mmおよび幅15mmに切断した後、ASTM D882に基づいて、インストロン社の万能試験機(4206-001、UTM)により、チャク間の間隔が50mmになるように装着し、100mm/minの引張速度で引張強度を測定した。
【0316】
引張強度変化率は、前記方法を用いて、25℃の温度および50%R.Hの湿度条件のチャンバにて6ヶ月経過前後の引張強度を測定して計算した。
【0317】
(評価例C2:引裂強度)
フィルムサンプルについて、前記評価例A2と同様の方法により引裂強度を測定した。
【0318】
(評価例C3:伸び率)
フィルムサンプルを長さ100mmおよび幅15mmに切断し、インストロン社の万能試験機(4206-001、UTM)により、500mm/minの速度において破断寸前の最大変形量を測定した後、最初長さに対する最大変形量の比率で計算した。
【0319】
(評価例C4:酸価)
生分解性ポリエステルフィルムを製造する手順中に得た重合体である生分解性ポリエステル樹脂をジクロロメタンに溶解させた後、0.1Nの水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定して酸価を測定した。
【0320】
(評価例C5:生分解度)
フィルムサンプルについて、前記評価例A5と同様の方法により生分解度を測定した。
【0321】
【0322】
前記表3から分かるように、製造例C1-1の生分解性ポリエステルフィルムは、製造例C2-1~C2-3のフィルムに比べて、生分解性、引張強度、引張強度変化率、引裂強度、伸び率、および酸価のいずれも優れた結果を示した。
【0323】
具体的に、製造例C1-1の生分解性ポリエステルフィルムは、製造例C2-1~C2-3に比べて低い酸価を有する重合体の生分解性ポリエステル樹脂で製造されることにより、生分解性、引張強度、引張強度変化率、および伸び率のいずれも優れるので、様々な分野に適用するのに容易であることが分かる。
【0324】
D.生分解性ポリエステルフィルムの製造および評価
(製造例D1-1)
(1)前処理されたナノセルロースの製造
1μm~50μmの粒径を有する乾燥粉末状のセルロースナノクリスタル(cellulose nanocrystal、CNC)を1重量%で水に分散させた後、チップ(tip)型の超音波分散機(NVC-100、Celluforce社)により、20000Jのエネルギー量で15分間超音波処理して、前処理されたナノセルロースを製造した。
【0325】
(2)生分解性ポリエステルフィルムの製造
1,4-ブタンジオール50モル部およびジメチルテレフタル酸50モル部を混合し、前記混合物にチタン系触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)200ppmを投入した後、210℃および常圧にて2時間の1次エステル化反応を行った。
【0326】
前記反応生成物に1,4-ブタンジオール50モル部、アジピン酸50モル部をさらに混合し、前記混合物に、前記段階(1)で製造している前処理されたナノセルロース0.1重量%およびチタン系触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)150ppmを投入した後、210℃および常圧にて2時間の2次エステル化反応を行い、5000の数平均分子量を有するプレポリマーを調製した。
【0327】
前記プレポリマーに、重縮合触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)200ppmを添加し、240℃に昇温した後、0.5torrにて4時間の重縮合反応を行い、50000の数平均分子量を有する重合体を調製し、これを5℃に冷却した後、ペレットカッターでカットしてペレットを製造した。
【0328】
前記ペレットを80℃にて5時間乾燥した後、インフレーションフィルム押出機(Blown Film Extrusion Line、YOOJIN ENGINEERING社、韓国)により160℃にて溶融押出し、50m/minの速度で、厚さ20μmの生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0329】
(製造例D1-2)
(1)前処理されたナノセルロースの製造
1μm~50μmの粒径を有する乾燥粉末状のセルロースナノクリスタル(CNC)を2重量%で水に分散させた後、0.5mmの直径を有するジルコニウムビーズを用いて、85%の充填率および15m/secの線速度で30分間ビーズミル処理した。その後、チップ型の超音波分散機(HD4400、Kコーポレーション社、韓国)を用いて10000Jのエネルギー量で15分間超音波処理して、前処理されたナノセルロースを製造した。
【0330】
(2)生分解性ポリエステルフィルムの製造
1,4-ブタンジオール50モル部およびジメチルテレフタル酸50モル部を混合し、前記混合物にチタン系触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)200ppmを投入した後、210℃および常圧にて2時間の1次エステル化反応を行った。
【0331】
前記反応生成物に1,4-ブタンジオール50モル部、コハク酸50モル部をさらに混合し、前記混合物に、前記段階(1)で製造している前処理されたナノセルロース0.2重量%およびチタン系触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)150ppmを投入した後、210℃および常圧にて2時間の2次エステル化反応を行い、4000の数平均分子量を有するプレポリマーを調製した。
【0332】
前記プレポリマーに重縮合触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)150ppmを添加し、250℃に昇温した後、0.8torrにて3時間の重縮合反応を行い、55000の数平均分子量を有する重合体を調製し、これを5℃に冷却した後、ペレットカッターでカットしてペレットを製造した。
【0333】
前記ペレットを80℃にて5時間乾燥した後、インフレーションフィルム押出機(Blown Film Extrusion Line、YOOJIN ENGINEERING社、韓国)により160℃にて溶融押出し、50m/minの速度で厚さ20μmの生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0334】
(製造例D1-3)
(1)前処理されたナノセルロースの製造
1μm~50μmの粒径を有する乾燥粉末状のセルロースナノクリスタル(CNC)を1重量%で水に分散させた後、0.5mmの直径を有するジルコニウムビーズを用いて、85%の充填率および15m/secの線速度で2時間ビーズミル処理して、前処理されたナノセルロースを製造した。
【0335】
(2)生分解性ポリエステルフィルムの製造
1,4-ブタンジオール100モル部およびコハク酸100モル部を混合し、前記混合物にチタン系触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)300ppmを投入した後、220℃および常圧にて3時間のエステル化反応を行い、5000の数平均分子量を有するプレポリマーを調製した。前記エステル化反応の途中に、前記段階(1)で製造している前処理されたナノセルロース0.1重量%を投入した。
【0336】
前記プレポリマーに重縮合触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)250ppmを添加し、250℃に昇温した後、0.5torrにて4時間の重縮合反応を行い、55000の数平均分子量を有する重合体を調製し、これを5℃に冷却した後、ペレットカッターでカットしてペレットを製造した。
【0337】
前記ペレットを80℃にて5時間乾燥した後、インフレーションフィルム押出機(Blown Film Extrusion Line、YOOJIN ENGINEERING社、韓国)により160℃にて溶融押出し、50m/minの速度で厚さ20μmの生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0338】
(製造例D2-1)
(1)前処理されたナノセルロースの製造
1μm~50μmの粒径を有する乾燥粉末状のセルロースナノクリスタル(CNC)を2重量%で水に分散させた後、撹拌機(NCV-100、Celluforce社)により8000rpmで1時間撹拌処理して、前処理されたナノセルロースを製造した。
【0339】
(2)生分解性ポリエステルフィルムの製造
1,4-ブタンジオール50モル部およびジメチルテレフタル酸50モル部を混合し、前記混合物にチタン系触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)200ppmを投入した後、210℃および常圧にて2時間の1次エステル化反応を行った。
【0340】
前記反応生成物に1,4-ブタンジオール50モル部、コハク酸50モル部をさらに混合し、前記混合物に、前記段階(1)で製造している前処理されたナノセルロース0.3重量%およびチタン系触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)250ppmを投入した後、220℃および常圧にて2時間の2次エステル化反応を行い、4000の数平均分子量を有するプレポリマーを調製した。
【0341】
前記プレポリマーに重縮合触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)150ppmを添加し、250℃に昇温した後、0.8torrにて3時間の重縮合反応を行い、55000の数平均分子量を有する重合体を調製し、これを5℃に冷却した後、ペレットカッターでカットしてペレットを製造した。
【0342】
前記ペレットを80℃にて5時間乾燥した後、インフレーションフィルム押出機(Blown Film Extrusion Line、YOOJIN ENGINEERING社、韓国)により160℃にて溶融押出し、50m/minの速度で厚さ20μmの生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0343】
(製造例D2-2)
(1)前処理されたナノセルロースの製造
1μm~50μmの粒径を有する乾燥粉末状のセルロースナノクリスタル(CNC)を1重量%で水に分散させた後、チップ型の超音波分散機(HD4400、Kコーポレーション社)により50000Jのエネルギー量で30分間超音波処理して、前処理されたナノセルロースを製造した。
【0344】
(2)生分解性ポリエステルフィルムの製造
1,4-ブタンジオール50モル部およびジメチルテレフタル酸50モル部を混合し、前記混合物にチタン系触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)200ppmを投入した後、210℃および常圧にて2時間の1次エステル化反応を行った。
【0345】
前記反応生成物に1,4-ブタンジオール50モル部、アジピン酸50モル部をさらに混合し、前記混合物に、前記段階(1)で製造している前処理されたナノセルロース0.2重量%およびチタン系触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)250ppmを投入した後、220℃および常圧にて2時間の2次エステル化反応を行い、4000の数平均分子量を有するプレポリマーを調製した。
【0346】
前記プレポリマーに重縮合触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)350ppmを添加し、250℃に昇温した後、0.8torrにて3時間の重縮合反応を行い、45000の数平均分子量を有する重合体を調製し、これを5℃に冷却した後、ペレットカッターでカットしてペレットを製造した。
【0347】
前記ペレットを80℃にて5時間乾燥した後、インフレーションフィルム押出機(Blown Film Extrusion Line、YOOJIN ENGINEERING社、韓国)により160℃にて溶融押出し、50m/minの速度で厚さ20μmの生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0348】
(製造例D2-3)
(1)前処理されたナノセルロースの製造
1μm~50μmの粒径を有する乾燥粉末状のセルロースナノクリスタル(CNC)を1重量%で水に分散させた後、1.5mmの直径を有するジルコニウムビーズを用いて、50%の充填率および25m/secの線速度で1時間ビーズミル処理して、前処理されたナノセルロースを製造した。
【0349】
(2)生分解性ポリエステルフィルムの製造
1,4-ブタンジオール50モル部およびジメチルテレフタル酸50モル部を混合し、前記混合物にチタン系触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)200ppmを投入した後、210℃および常圧にて2時間の1次エステル化反応を行った。
【0350】
前記反応生成物に1,4-ブタンジオール50モル部、アジピン酸50モル部をさらに混合し、前記混合物に、前記段階(1)で製造している前処理されたナノセルロース0.2重量%およびチタン系触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社社)250ppmを投入した後、210℃および常圧にて2時間の2次エステル化反応を行い、4000の数平均分子量を有するプレポリマーを調製した。
【0351】
前記プレポリマーに重縮合触媒のテトラブチルチタネート(アルドリッチ社)150ppmを添加し、250℃に昇温した後、0.8torrにて3時間の重縮合反応を行い、45000の数平均分子量を有する重合体を調製し、これを5℃に冷却した後、ペレットカッターでカットしてペレットを製造した。
【0352】
前記ペレットを80℃にて5時間乾燥した後、インフレーションフィルム押出機(Blown Film Extrusion Line、YOOJIN ENGINEERING社、韓国)により160℃にて溶融押出し、50m/minの速度で厚さ20μmの生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0353】
(製造例D2-4)
ジルコニウムビーズの代わりにアセタール素材のエンジニアリングプラスチックボールを使用したことを除いて、製造例D1-3と同様の手順で行うことにより、生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0354】
(評価例D1:粒度および粒度偏差)
前記製造例D1-1~D2-4の段階(1)で製造されている前処理されたナノセルロースについて、ゼータサイザーナノZS(Zetasizer Nano ZS、Marven社)により、25℃の温度および175°の測定アングルにおいて動的光散乱(DLS)の原理に基づいて粒度および粒度偏差を測定した。この際、0.5の信頼区間における多分散指数(PDI)により導出されたピーク値を粒度として測定し、15回スキャンして得られた最大値および最小値により粒度偏差を計算した。
【0355】
(評価例D2:光透過率の変化率)
前記製造例D1-1およびD1-3と、製造例D2-2およびD2-4との段階(1)で製造されている前処理されたナノセルロースが、それぞれ1重量%で分散された水分散体を調製し、前記製造例D1-2と、製造例D2-1およびD2-3との段階(1)で製造されている前処理されたナノセルロースが、それぞれ2重量%で分散された水分散体を調製した。
【0356】
前記各々の水分散体についてタービスキャン(Turbiscan、FORMULACTION社)により、30℃の温度および850nmの波長にて12時間光透過率の変化率を測定した。前記光透過率の変化率は、下記式1に基づいて計算した。この際、前記水分散体を入れた容器の上部層で測定しており、前記上部層は、前記水分散体を入れた容器の全体高さにおいて、上端から3分の1である位置までの部分を意味する。
【0357】

前記式1において、LT1は前記ナノセルロースが0.1重量%~5重量%で分散された水分散体を30℃の温度および850nm波長の条件で測定した1次光透過率(%)であり、LT2は前記条件で12時間後に測定した2次光透過率(%)である。
【0358】
(評価例D3:引張強度および引張強度偏差)
前記製造例D1-1~D2-4の段階(2)で製造されたフィルムサンプルを長さ100mmおよび幅15mmに切断した後、ASTM D882に基づいてインストロン社の万能試験機(4206-001、UTM)により、チャク間の間隔が50mmになるように装着し、100mm/minの引張速度で引張強度を測定した。
【0359】
また、前記製造例D1-1~D1-3および製造例D2-1~D2-4の段階(2)で製造されたフィルムサンプルを、ASTM D882規格に基づいて長さ50cmおよび幅15cmで30枚を切断した後、前記と同様の方法により、面積内の任意の位置で測定した引張強度の偏差を計算した。
【0360】
(評価例D4:引裂強度)
前記製造例D1-1~D2-4の段階(2)で製造されたフィルムサンプルについて、前記評価例A2と同様の方法により引裂強度を測定した。
【0361】
(評価例D5:伸び率)
前記製造例D1-1~D2-4の段階(2)で製造されたフィルムサンプルを長さ100mmおよび幅15mmに切断し、インストロン社の万能試験機(4206-001、UTM)により500mm/minの速度で破断寸前の最大変形量を測定した後、最初長さに対する最大変形量の比率で計算した。
【0362】
(評価例D6:シール強度)
前記製造例D1-1~D2-4の段階(2)で製造されたフィルムサンプルを長さ150mmおよび幅15mmに切断した。このように切断した2枚のサンプルを当接するように配置し、40psi/1secの条件の熱勾配(heat gradient)で120℃にて熱接着した後、剥離テスター(peel tester)を用いて180°の角度にて300mm/min速度で剥離する際に測定された最大応力をシール強度として測定した。
【0363】
(評価例D7:生分解度)
フィルムサンプルについて、前記評価例A5と同様の方法により生分解度を測定した。
【0364】
【0365】
前記表4から分かるように、製造例D1-1~D1-3の生分解性ポリエステルフィルムは、製造例D2-1~D2-4のフィルムに比べて生分解性、引張強度、引張強度偏差、引裂強度、伸び率、およびシール強度のいずれも優れた結果を示した。
【0366】
具体的に、製造例D1-1~D1-3の生分解性ポリエステルフィルムは、実現例によるナノセルロースを含む生分解性ポリエステル樹脂で製造されることにより、生分解性は勿論のこと、引張強度、引裂強度、伸び率、およびシール強度のような耐久性に優れるので、様々な分野に適用するのに容易である。
【0367】
E.生分解性ポリエステル樹脂の調製および評価
(製造例E1-1)
1,4-ブタンジオール1.3モル、アジピン酸0.5モル、およびジメチルテレフタル酸0.5モルを混合した混合物Aに、チタン系触媒のテトラブチルチタネート(CAMEO Chemicals社)400ppmを投入した後、210℃および常圧にてエステル化反応を行い、3000の数平均分子量を有するプレポリマーを調製した。
【0368】
前記プレポリマーに重縮合触媒のテトラブチルチタネート(CAMEO Chemicals社)100ppmを添加し、220℃に昇温した後、0.5torrにて3時間の重縮合反応を行い、30000の数平均分子量を有する重合体を調製し、これを5℃に冷却した後、ペレットカッターでカットしてペレットを製造した。
【0369】
前記ペレットを固相重合器(Vacuum Tumbler Reactor、商品名:Batch SSP、Roschermatic社)に入れて、窒素雰囲気下の真空において105℃および1torrにて10時間固相重合を行い、生分解性ポリエステル樹脂を調製した。
【0370】
(製造例E1-2)
108℃にて24時間固相重合を行ったことを除いて、前記製造例E1-1と同様の手順で行うことにより、生分解性ポリエステル樹脂を調製した。
【0371】
(製造例E1-3)
前記混合物Aの代わりに、1,4-ブタンジオール1.5モル、コハク酸0.5モル、およびジメチルテレフタル酸0.6モルを混合した混合物Bを使用したことを除いて、前記製造例E1-1と同様の手順で行うことにより、生分解性ポリエステル樹脂を調製した。
【0372】
(製造例E2-1)
1,4-ブタンジオール1.3モル、アジピン酸0.5モル、およびジメチルテレフタル酸0.5モルを混合した混合物Cに、チタン系触媒のテトラブチルチタネート(CAMEO Chemicals社)100ppmを投入した後、210℃および常圧にてエステル化反応を行い、3000の数平均分子量を有するプレポリマーを調製した。
【0373】
前記プレポリマーに重縮合触媒のテトラブチルチタネート(CAMEO Chemicals社)100ppmを添加し、220℃に昇温した後、0.5torrにて3時間の重縮合反応を行い、30000の数平均分子量を有する重合体を調製した。
【0374】
前記重合体に、脱活性化剤として亜リン酸をさらに投入し、190℃に昇温して、2時間後に反応を終結させ、生分解性ポリエステル樹脂を調製した。
【0375】
(製造例E2-2)
1,4-ブタンジオール1.3モル、アジピン酸0.5モル、およびジメチルテレフタル酸0.5モルを混合した混合物Dに、チタン系触媒のテトラブチルチタネート(CAMEO Chemicals社)200ppmを投入した後、210℃および常圧にてエステル化反応を行い、3000の数平均分子量を有するプレポリマーを調製した。
【0376】
前記プレポリマーに重縮合触媒のテトラブチルチタネート(CAMEO Chemicals社)100ppmを添加し、220℃に昇温した後、0.5torrにて3時間の重縮合反応を行い、49000の数平均分子量を有する重合体を調製した。
【0377】
前記重合体に、エポキシ系鎖延長剤(ADR 4368、Joncryl社)0.3重量%を投入し、260℃にてツインスクリューによりコンパウンドした重合体を、5℃の温度に冷却して、生分解性ポリエステル樹脂を調製した。
【0378】
(評価例E1:数平均分子量)
プレポリマー(a)、重合体(b)、および生分解性ポリエステル樹脂(c)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解した後、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。ゲル透過クロマトグラフィーによって出たデータは、Mn、Mw、Mpなどと、様々の項目があるが、Mn(数平均分子量)を基準にして分子量を測定した。
【0379】
(評価例E2:カルボキシル基末端の濃度)
プレポリマー(a)、重合体(b)、および生分解性ポリエステル樹脂(c)のそれぞれ1gをo-クレゾール20mLに完全に溶解した後、クロロホルム50mLで希釈して指示薬を入れた状態で、水酸化ナトリウム/メタノール溶液で滴定して測定した。
【0380】
(評価例E3:固有粘度(IV))
プレポリマー(a)、重合体(b)、および生分解性ポリエステル樹脂(c)のそれぞれ2gをクロロホルム25mLに完全に溶解した後、粘度計(Canon Viscometer)を用いて測定した。
【0381】
(評価例E4:メルトフローインデックス(MFI))
メルトフローインデックス(MFI)を測定器(Tinus Olsen社)により190℃および2.1kgの条件下で測定した。
【0382】
(評価例E5:プレッシャークッカー試験(pressure cooker test:PCT))
生分解性ポリエステル樹脂を220℃にて溶融押出した後、インフレーションフィルム製造装置(Extrusion Blown Film Equipment、商品名:SJ-D50、SANBI社)を用いて、50m/minの速度で生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0383】
前記フィルムをオートクレーブに入れ、80℃の温度および100%の湿度を24時間維持するPCT(pressure cooker test)を行った。
【0384】
引張強度測定器(インストロン社)を用いて前記PCT前後における引張強度の変化率を評価し、ASTM E313に基づいて色差計(Intertek社)を用いて、前記PCTを行った後の黄色度(YI)を測定した。
【0385】
(評価例E6:生分解度)
生分解性ポリエステル樹脂について、前記評価例A5と同様の方法により生分解度を測定した。
【0386】
【0387】
前記表5から分かるように、製造例E1-1~E1-3の生分解性ポリエステル樹脂は、製造例E2-1およびE2-2の樹脂に比べて、カルボキシル基末端の濃度、固有粘度、メルトフローインデックス、生分解性のいずれも優れた結果を示した。また、製造例E1-1~E1-3の生分解性ポリエステル樹脂で製造したフィルムは、製造例E2-1およびE2-2の樹脂で製造したフィルムに比べて黄色度も低かった。
【0388】
具体的に、製造例E1-1~E1-3の生分解性ポリエステル樹脂は、脱活性化剤および鎖延長剤を投入した製造例E2-1およびE2-2の樹脂に比べて、カルボキシル基末端の濃度および固有粘度が低く、生分解性に優れ、メルトフローインデックスもまた比較的低いので、耐加水分解性に優れることが分かる。
【符号の説明】
【0389】
1:マスク
2:生分解性不織布
100:不織布層
200:抗菌性コーティング層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8