(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】高度心臓波形分析
(51)【国際特許分類】
A61B 5/346 20210101AFI20230519BHJP
A61B 5/339 20210101ALI20230519BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20230519BHJP
A61B 5/36 20210101ALI20230519BHJP
A61B 5/355 20210101ALI20230519BHJP
A61B 5/358 20210101ALI20230519BHJP
A61B 5/349 20210101ALI20230519BHJP
A61B 5/35 20210101ALI20230519BHJP
【FI】
A61B5/346
A61B5/339
A61B5/33 300
A61B5/36
A61B5/355
A61B5/358
A61B5/349
A61B5/35
(21)【出願番号】P 2021510052
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 US2019047141
(87)【国際公開番号】W WO2020041231
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-04-13
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504291867
【氏名又は名称】ザ クリーヴランド クリニック ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】THE CLEVELAND CLINIC FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】カンティロン,ダニエル ジェイ.
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-500093(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0095520(US,A1)
【文献】特開2011-062367(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0164349(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0231947(US,A1)
【文献】特表2018-503885(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0046289(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0339442(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0306652(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
A61B 5/02-5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1人または複数人の医療専門家に関連付ける1つまたは複数の入力機構を含む1つまたは複数の表示デバイスと、
患者をモニタするように構成されるデバイスと、を含み、
前記デバイスは、
前記患者と前記1つまたは複数の表示デバイスとに関連付けられるウェアラブルデバイスと通信するように構成される少なくとも1つの無線トランシーバと、
命令を記憶する非一時的メモリと、
前記患者に関連付けられる
前記ウェアラブルデバイスから心電図波形データを受信することと、前記心電図波形データに対して数学的分析を実行して、前記心電図波形データからのウェーブレットを含む心臓分析を提供することと、
前記1つまたは複数の表示デバイスに表示される前記心臓分析の視覚化を生成することと、前記心臓分析と少なくとも1つの患者固有のベースライン値との間の比較を一連の論理比較で生成することと、前記心臓分析と少なくとも1つの患者固有のベースライン値との間の前記比較に基づいて数値を提供することと、前記数値が疾患状態及び/又は疾患状態の変化に関する特定の定量化可能な現象を満たす
ときに前記数値が臨床的に関連する事象を示すかどうかを決定することと、前記数値が患者の臨床的に関連する事象を示す場合に
臨床的に関連する事象の警告を提供する触覚、音声、および/または視覚的警報を含む動作可能な提案を生成することと、
前記動作可能な提案を前記1つまたは複数の表示デバイスに送信することと、前記動作可能な提案を生成すると
前記動作可能な提案を含むように前記1つまたは複数の表示デバイスに前記視覚化を変更することと
、前記動作可能な提案を前記患者の電子カルテシステムに送信することと、前記1人または複数人の医療専門家のうちの少なくとも1人が前記1つまたは複数の表示デバイス上の前記動作可能な提案の視覚化を修正するときに前記動作可能な提案に対する強調表示、編集、または注釈付けのうちの少なくとも1つである修正を受信することと、前記動作可能な提案の前記修正を含む修正後の動作可能な提案を前記電子カルテシステムに送信することと、前記修正後の動作可能な提案を前記電子カルテシステム内の前記動作可能な提案にリンクすることとを含むプロセスを実現するように、前記命令を実行するプロセッサと、
を含むシステム。
【請求項2】
前記心電図波形データ、前記心臓分析、前記数値、および
前記数値が臨床的に関連する事象を示すかどうかの決定のうちの少なくとも1つは、
前記電子カルテシステムに送信される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記患者からの初期データを受信し、
前記少なくとも1つの患者固有のベースライン値を前記患者からの初期データに基づいて特定するように、前記命令を実行するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記数学的分析は、さらに、
PR間隔、RR間隔、QRS制限時間間隔、固有時間間隔、RT間隔、およびQT時間間隔のうちの少なくとも1つを含む時間間隔を取得することと、
自動化手順を実行することにより、補正後のQT間隔、前記QT間隔の補正後のモバイル平均線を算出することと、
T最大電圧からT最小電圧までの最大絶対値としてのTピーク振幅電圧およびTピーク-終了点時間間隔を取得することと、
STセグメントの線形回帰としてのST角度およびベースラインに対するST振幅電圧の変化を取得することと、
QRSおよびQT波形軌跡のX、Yプロット座標を測定することと、
QRS波形形態の患者固有のテンプレートと一致するX、Y座標のパーセンテージを算出することと、または、
QT波形形態のX、Yプロットの曲線下面積を測定することを含む、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願)
本願は、2018年8月21日に提出された、出願番号が62/720469、出願名称が「高度心臓波形分析」の米国仮出願の利益を主張するものである。様々な目的のために、本願の全体的な内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般に、高度心臓波形分析(ACWA)に関し、より具体的には、心電図波形分析、データ提示、および動作可能な提案生成のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心電図は、患者の心臓の心電図波形を記録するプロセスである。心電図波形の最初の既知の記録は、20世紀初頭に亜鉛メッキ皮膚電極を用いて人体表面から取得された。最初の既知の記録以来、科学の進歩は、心血管疾患に対する心電図波形の診断価値を高める。しかし、心電図波形を用いる現代の診断ツールは、限られた分析能力しか提供しないが、これら分析能力は、通常、心臓再分極の重要な変化を組み込みず、性別、一日中の時間、ベースライン異常の存在、および個々の心拍数の差を含む交絡生理学的変数を効果的に考慮に入れることができないため、所定の患者の文脈の解釈を制限する。なお、現代のツールは、非常に限られた出力表示を提供し、臨床的関連性に応じて主要なデータ要素を交換、強調表示、注釈付け、編集して電子カルテに簡潔に導くための動的ツールを欠いている。
【0004】
これに加えて、90%を超えるテレメトリ警告が、ベッドサイドの医療サービス提供者の臨床応答を誘発せず、ベッドサイドの医療サービス提供者が臨床応答を行う価値もない一方で、心肺停止(CPA)の最大44%が正しく検出されなかったという事実がある。米国心臓協会の生存統計によると、約4分の1の患者だけが病院内のCPAで生存している。ただし、継続的な心調律モニタリング(CCRM)を行う患者に対して心不整脈リアルタイム検出をECGに基づいて行う方法を含める非侵襲的心血管リスク層別化法が進んでいる。残念ながら、CCRMデータの収集、処理、分析およびモバイル配信のための凝集の方法は存在せず、継続的な心房性または心室性不整脈、心肺停止、重大な代謝障害または差し迫った心不全の悪化に対して事前警告を提供することはできない。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、一般に、高度心臓波形分析(ACWA)に関し、心臓波形データを収集、処理、分析およびモバイル管理するための方法に関し、当該方法は、高度リスク層別化ツールを用いて、心肺停止、心不全代償および重大な代謝障害を含む心不整脈を事前警告する。注意されるべきこととしては、ACWAは、心電図波形データだけでなく、生理学的交絡変数をも考慮に入れることができる。より具体的には、本開示は、心電図波形分析、データ提示および動作可能な提案生成のためのシステムおよび方法に関する。
【0006】
一様態では、本開示は、波形分析、データ提示および動作可能な提案生成を実行することができるシステムを含む。当該システムは、命令を記憶するように構成される非一時的メモリと、プロセッサとを含む。プロセッサは、患者に関連付けられるウェアラブルデバイスから心電図波形データを受信し、心電図波形データに対して数学的分析を実行して心臓分析を提供し、心臓分析の視覚化を生成することと、心臓分析と少なくとも1つのベースライン値との比較に基づいて患者に数値を提供することと、数値に基づいて心電図波形データに対して動作可能な提案を生成するか否かを决定することと、動作可能な提案を生成するか否かの決定に応じて視覚化を変更することとを行うように、命令を実行する。当該システムは、視覚化を1人または複数人の医療専門家に伝送するための無線トランシーバをさらに含む。
【0007】
別の態様では、本開示は、心電図波形分析、データ提示および動作可能な提案生成のための方法を含む。当該方法は、プロセッサを含むシステムによって実行され得る。当該方法は、患者に関連付けられるウェアラブルデバイスから心電図波形データを受信することと、心電図波形データに対して数学的分析を実行して心臓分析を提供することと、コントロールパネルディスプレイ上で心臓分析の視覚化を生成することと、心臓分析と少なくとも1つのベースライン値との比較に基づいて患者に数値を提供することと、数値に基づいて心電図波形データに対して動作可能な提案を生成するか否かをシステムによって决定することと、を含む。動作可能な提案が生成されると、動作可能な提案は、1人または複数人の医療専門家に送信され、心臓分析の視覚化とともに表示される。
図面を参照して以下の説明を読むことにより、本開示の上記および他の特徴は、当業者にとって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一様態による高度心臓波形分析(ACWA)を実行することができるシステムの例示を示すブロック図である。
【
図2】波形分析、データ提示および動作可能な提案生成を実行するために
図1のシステムで使用され得るコンピューティングデバイスの例示を示すブロック図である。
【
図3】ACWAを実行するために必要とされ得る異なる周期測定値および導関数を示す心周期の例示である。
【
図4】本開示の別の様態によるACWAを実行するための方法を示すプロセスフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1、定義
本開示の文脈において、単数形「1つ」、「1つの」および「当該」は、文脈が明らかに別途で示しない限り、複数形も含み得る。
【0010】
本明細書で使用される「含む」および/または「含まれる」という用語は、述べられる特徴、ステップ、動作、素子および/またはアセンブリの存在を指定することができるが、1つまたは複数の他の機能、ステップ、動作、素子、アセンブリおよび/または組み合わせの存在または追加を排除するものではない。
【0011】
本明細書で使用される「および/または」という用語は、関連して列記されるアイテムのうちの1つまたは複数の任意のおよび全ての組み合わせを含み得る。
【0012】
本明細書で使用される「高度心臓波形分析(ACWA)」という用語は、心電図波形分析、データ提示および動作可能な提案生成のための分析ツールまたは分析ツールの使用を指し得る。ACWAの分析ツールは、個々の患者に固有であり得る。ACWAは、さらに、高度リスク層別化ツールを適用して心不整脈を事前警告する心臓波形データの収集、処理、分析およびモバイル管理の方法を指し得る。
【0013】
本明細書で使用される「心電図(ECGまたはEKG)」という用語は、患者の皮膚に置かれた単一または複数の電極を用いて患者の心臓のある期間内の電気的活動を記録するプロセスを指し得る。電極は、各心拍の間に心筋の脱分極および再分極の電気生理学的パターンに起因する皮膚上の低振幅の電気的変化を検出する。
【0014】
本明細書で使用される「心電図波形」という用語は、単位時間(X軸)当たりに単一または複数の表面皮膚電極(Y軸)からの記録された電気信号のプロット軌跡を指し得る。心電図波形は、患者に関連付けられるウェアラブルデバイスによって収集され得る。
【0015】
本明細書で使用される「心電図波形データ」という用語は、心電図波形内にカプセル化された数値を指し得る。
【0016】
本明細書で使用される「ウェアラブルデバイス」という用語は、患者の身体上または身体の近傍に着用される心電図波形を収集する技術を指し得る。
【0017】
本明細書で使用される「心周期」という用語は、収縮および拡張期間の心室の物理的収縮および弛緩、ならびにそれに伴う心臓内部血流および血圧の変化、ならびに心臓に出入りする血管の変化を指し得る。心周期は、さらに、収縮および弛緩(例えば、心拍)期間の心臓の電気的脱分極および再分極に関連する心電図波形データ要素を指し得る。単一の心拍ごとに、心電図波形は、P、Q、R、SおよびT部分を示し得る。QRS部分は、一緒にQRS複合波を構成し得る。心周期は、ヒトの心房(PR間隔)およびヒトの心室(QRS間隔、QT間隔、RT間隔)に関するデータ要素を含み得る。
【0018】
本明細書で使用される「生理学的交絡変数」という用語は、結果が変数間の実際関係を反映できないように、その存在が研究中の変数に影響を与える外部変数を指し得る。生理学的交絡変数の例示は、性別、一日中の時間、ベースライン異常の存在、特定の薬物曝露、個々の心拍数変動などを含む。
【0019】
本明細書で使用される「心臓分析」という用語は、心周期にわたる心電図波形データの直接測定、および心電図波形データの数学的分析を指し得る。場合によっては、心臓分析は、生理学的交絡変数の存在を考慮に入れ得る。心臓分析は、心電図波形の少なくとも一部および数学的分析に従って任意の算出される数値の連続的かつ分類的な記述的報告を含み得る。
【0020】
本明細書で使用される「数学的分析」という用語は、データ(例えば、1つまたは複数の心周期の心電図波形データの少なくとも一部)への数学の適用を指し得る。例えば、適用される数学は、グラフ曲線の線形または論理回帰分析、予め指定された時間序列データに関わる数学的導関数(例えば、曲線下方の面積)、および心周期内の心電図心臓波形のリアルタイムと記憶された基準X、Y座標間の比較を含み得るが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書で使用される「機械学習」という用語は、類似のデータパターンまたは傾向が提示された場合に特定の臨床転帰または発症発生の確率または可能性を特定するために、相関候補変数における傾向を含む特定のデータパターンを相関特定の転帰または臨床所見に関連付けるソフトウェアコード、ルーチン、および/または方法である、コンピューティングデバイスおよび/またはルールエンジンが自己修正することを指し得る。例えば、機械学習アプリケーションは、機械学習プロセスの訓練段階中に既に生命を脅かす不整脈の事象に関連付けられている特定のデータパターンを識別することによって、生命を脅かす不整脈の確率または可能性を識別し、この過程において、時間の経過とともにコードが修正され、繰り返し、ECG波形内の特定のパターンが、深刻に生命を脅かす不整脈の高い確率に関連付けられる。
【0022】
本明細書で使用される「コントロールパネルディスプレイ」という用語は、分析された心臓データ、数学的分析結果、リアルタイムおよび/または記憶された心電図波形データ要素および関連付けられた数値等を表示するためのグラフィカルユーザインターフェースを指し得る。
【0023】
本明細書で使用される「動作可能な提案」という用語は、心臓分析に基づく患者に関する臨床的に関連する事象の警告を指し得る。動作可能な提案は、将来発生する臨床事象を受信者に警告するために、コンピューティングデバイスによって生成される視覚、聴覚、および触覚要素を含んでもよい。動作可能な提案は、表示デバイスに伝送されるグラフィカル表示、テキスト、および数値要素を含み得るが、これらに限定されない。動作可能な提案は、様々な臨床事象、状態、および疾患状態を示し得、ヒトの体内の心房性または心室性不整脈事象、うっ血性心不全状態、差し迫った心肺停止、心不全の悪化状態、急性冠症候群、または臨床的に重要な電解質障害もしくは代謝障害を含むが、これらに限定されない。動作可能な提案は、所定のタイムスタンプで患者の電子カルテに挿入したり、エンドユーザによる閲覧のためにグラフィカルユーザインターフェースディスプレイに配置したり、音声若しくはテキストアラートを送信することによってエンドユーザに緊急に伝達したりし得る。
【0024】
本明細書で使用される「補正後の動作可能な提案」という用語は、臨床的に関連する情報を強調表示、注釈付けする、または交換する目的で、ユーザによって変更、修正、または他の方法で実行されて他のエンドユーザに再伝送される動作可能な提案を指し得る。補正後の動作可能な提案は、その所定のタイムスタンプで動作可能な提案とともに患者の電子カルテに挿入され、その後、他の医療専門家に再伝送され得る。
【0025】
本明細書で使用される「電子カルテ(EMR)」という用語は、医療専門家による閲覧、編集、および追加のために、患者の病歴のデジタルバージョンを指し得る。
【0026】
本明細書で使用される「タイムスタンプ」という用語は、特定事象の発生時間のデジタル記録を指し得る。
【0027】
本明細書で使用される「ベースライン」という用語は、あるパラメータの平均値を指し得る。ベースラインは、患者固有、人口固有などであり得る。
【0028】
本明細書で使用される「臨床的に関連する事象」という用語は、深刻であると考えられる(限定値を超える)任意のタイプの有害および/または疾患に関する発生を指し得る。臨床的に関連する事象は、異なる患者ごとに異なる可能性がある。
【0029】
本明細書で使用される「ルールエンジン」という用語は、それぞれが条件およびアクションを有するルールを使用するシステムを指し得る。動作中、ルールエンジンは、全てのルールを実行し、条件が真であるルールを選択し、その後、対応する動作を評価し得る。
【0030】
本明細書で使用される「警報」という用語は、ユーザに警告する信号を指し得る。ユーザは、それぞれタッチ、聴覚および/または視覚を用いて、触覚、聴覚および/または視覚的に警報を知覚し得る。
【0031】
本明細書で使用される「自動化」という用語は、人間の干渉なしに(または制限された)自動的に動作されることを指し得る。
【0032】
本明細書で使用される「患者」という用語は、任意の温血生物を指し得、ヒト、ブタ、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、サル、ウサギ、ウシなどを含むが、これらに限定されない。対象は、医療サービスを待っているか、受けているか、または必要としている可能性がある。
【0033】
本明細書で使用される「医療専門家」という用語は、医療サービスを提供する人を指し得る。医療専門家は、医師、看護師、施術看護師、救急医療技術者、または訓練された他のタイプの介護者であり得る。
【0034】
本明細書で使用される「閾値」という用語は、特定の定量化可能な現象の限界として定義される任意の所定の値を指し得る。この限界を上回るまたは下回る任意の測定値は、応答能力を有するシステムおよびユーザに送信される信号、警報、メッセージ、または他の形態の通信を開始し得る。
【0035】
2、概説
本開示は、一般に、高度心臓波形分析(ACWA)に関し、より具体的には、心電図波形分析、データ提示および動作可能な提案生成のためのシステムおよび方法に関する。システムおよび方法は、心不整脈、心不全、差し迫った心肺停止、急性冠症候群、または重大な代謝異常を含む(これらに限定されない)が、心臓疾患に対する動作可能な提案を生成するために使用され得る。注意されるべきこととしては、ACWAは、いつ動作可能な提案を発行するかを特定する際に、生理学的交絡変数を考慮に入れることができる。さらに、本開示は、通信ツールを含み、この通信ツールにより、医療専門家が、表示された動作可能な提案を強調表示、編集、注釈付け、および交換し、臨床的関連性に応じて電子カルテシステムに導出することができる。
【0036】
3、システム
本開示の一様態は、高度心臓波形分析(ACWA)を実行することができるシステム10(
図1)を含み得る。システム10は、心電図波形分析、データ提示および動作可能な提案生成を実行することができる。システム10は、心不整脈、心不全、差し迫った心肺停止、急性冠症候群、または重大な代謝異常を含む(これらに限定されない)が、心臓疾患に対する動作可能な提案を生成することができる。注意されるべきこととしては、システム10は、いつ動作可能な提案を発行するかを特定する際に、生理学的交絡変数を考慮に入れることができる。さらに、本開示は、通信ツールを含み、この通信ツールにより、医療専門家が、表示された動作可能な提案を強調表示、編集、注釈付け、および交換し、患者と共有/検討し、臨床的関連性に応じて電子カルテシステムに導出することができる。
【0037】
システム10(
図1)は、ウェアラブルデバイス14および表示デバイス16と通信し得るコンピューティングデバイス12を含み得る。ウェアラブルデバイス14は、患者に関連付けることができる。ウェアラブルデバイス14は、心電図データを収集し得る1つまたは複数の電極に結合し得る。たとえば、心電図データを表面の皮膚電極から継続的に記録し、収集することができる。ウェアラブルデバイス14は、心電図データをコンピューティングデバイス12に送信することができる。コンピューティングデバイス12は、心電図データに対してACWAを実行し、1つまたは複数の心臓分析(例えば、ウェーブレット)の視覚化を表示デバイス16に送信することができる。コンピューティングデバイス12はまた、動作可能な提案を表示デバイス16に送信することができる。動作可能な提案自体は、所与のタイムスタンプで患者のEMRに変更不可能に挿入され得、タイムスタンプは、表示デバイス16に送信され得る。医療専門家は、テキストメッセージまたは視覚、聴覚および/または振動アラートを伴うプッシュ通知と類似のモバイルデバイス通信を、表示デバイス16で受信し得る。表示デバイス16は、1人または複数人の医療専門家に関連付けることができ、動作可能な提案に対して実行されるべきアクションを可能にし、それにより、修正後の動作可能な提案を作成することができる。例えば、表示デバイス16は、入力機構(例えば、タッチスクリーン、キーボード、マウスなど)に関連付けることができる。医療専門家は、(例えば、医師が第2の所見を与えるため、緊急応答専門家が患者に対して行動をとるため、訓練中の医師が病院外の主治医と動作可能な提案または修正後の動作可能な提案を交換するため、非心臓医がレビューのために心臓専門家に動作可能な提案を送信し、修正後の動作可能な提案を受け取るため)、修正後の動作可能な提案を他の医療専門家に送信することができる。コンピューティングデバイス12は、動作可能な提案および/または動作可能な提案の修正をそれぞれのタイムスタンプとともに患者に関連付けられる電子カルテに送信することができる。修正後の動作可能な提案は、共有スペースのドキュメント編集とほとんど同じ方法で追跡できる。元の動作可能な提案または修正後の動作可能な提案の以前のバージョンに容易に復元することができる。さらに、コンピューティングデバイス12は、他の要素、例えば、動作可能な提案の生成をもたらすそれらの要素を電子カルテに送信することができる。
【0038】
図2は、コンピューティングデバイス12をより詳細に示している。しかし、
図2は、コンピューティングデバイス12の完全な詳細を示していない。コンピューティングデバイス12は、ルールエンジン23を実現するための命令およびデータを記憶するように構成される非一時的メモリ22を含み得る。コンピューティングデバイス12は、非一時的メモリ22にアクセスし、ルールエンジン23を実現するように命令を実行することができるプロセッサ24をさらに含み得る。非一時的メモリ22はまた、心波形データ25(心臓分析を含んでもよい)およびベースラインデータ26を含むデータを記憶することができる。コンピューティングデバイス12は、ウェアラブルデバイス14、表示デバイス16、および電子カルテ(図示せず)と通信し得る無線トランシーバ27を含み得る。無線トランシーバは、ブルートゥース(登録商標)、セルラー、WiFiなどを含む1つまたは複数のプロトコルに従って通信することができる。場合によっては、コンピューティングデバイス12はさらに、データ送信のための有線接続を含むことができる。
【0039】
動作において、コンピューティングデバイス12は、患者に関連付けられるウェアラブルデバイス14から心電図波形データを受信することができる。コンピューティングデバイス12は、心電図波形データ25の数学的分析を実行して、心臓分析を提供することができる。例えば、心臓分析は、一心周期または複数の心周期から得られた心電図波形データ25から(単一の心周期または複数の心周期から)取得されたウェーブレットであり得る。心電図波形データ25の異なる部分の例が
図3に示されている。心臓分析は、PR間隔、RR間隔、RT間隔、QRS制限時間間隔、固有時間間隔、QT間隔、補正後のQT間隔、QT間隔補正後のモバイル平均線、Tピーク振幅電圧(T最大電圧からT最小電圧までの最大絶対値として)、Tピーク-終了点時間間隔、STセグメントの線形回帰としてのST角度、ベースラインのST振幅変化の測定値、QRSおよびQT波形軌跡、QRS波形形態の患者固有のテンプレートと一致するX、Y座標のパーセンテージ、QT波形形態の患者固有のテンプレートと一致するX、Y座標のパーセンテージ、およびQT波形形態のX、Yロットの曲線下の面積を含むが、これらに限定されない。いずれの場合も、心臓分析は、自動心臓波形分析プログラムに従って自動的に特定される。心臓分析の視覚化を生成して、表示デバイスに送信することができる。
【0040】
コンピューティングデバイス12のルールエンジン23は、心臓分析と記憶されたベースラインデータ26との間で比較を実行することができる。記憶されたベースラインデータ26は、患者に固有であってもよく(例えば、患者から最初に提出されたデータに基づいて生成される)、これは生理学的交絡変数の影響を改善することができる。各患者は、それ自体を対照として、感度の向上を達成することができ、この中では、患者固有のテンプレートと、継続的に収集される(例えば、時間変動を示す)クロックベースのデータによって得られる許容正常範囲を使用して、所定仕様のパーセント偏差および重み付け指標の組み合わせが組み込まれている。したがって、重要な測定値の個々の波形ウェーブレットと作動傾向を継続的に分析することができる。さらに、動作可能な提案を生成するためのパラメータは、指示に固有であってもよい。
【0041】
場合によっては、ルールエンジン23によって使用されるベースラインデータ26は、患者(例えば、年齢、性別、疾患の重症度、体重など)に類似する患者または一般集団の集団データを含み得る。これは、心臓モニタリング開始時の疾患の病理状態に起因して、患者の心電図が異常であることが分かっているか、または疑われる場合に特に重要である。この場合、コンピューティングデバイス12は、正常な心臓波形に影響を与えることが知られている、モニタリングの開始時に入力される容易に識別可能な変数に基づいて、マッチする集団データから得られる「正常な」波形テンプレートを選択することができ、変数は、年齢、性別、人種、および肥満度指数などを含む。非患者固有の「正常な」波形が比較的悪く、ベースラインで過剰な警告を生成する場合、コンピューティングデバイス12は、再アクティブ化されるまでウェーブレットベースの分析を中止することを許可することができる。別途プログラムされない限り、「スリープ」機能は、指定された期間後に再びアクティブになるように設定され得る。ウェーブレット・マッチングが一時停止されている間、非ウェーブレット基本かつ高度分析を継続することができる。
【0042】
ルールエンジン23は、心臓分析とベースライン値との間で一連の論理比較(例えば、1つまたは複数のウェーブレット比較)を実行することができる。ルールエンジン23は、1つまたは複数のウェーブレットの比較に基づいて数値を提供することができる。数値は、臨床的に関連する状態、例えば、一般的なまたは特定の心臓病変の有無を示すことができる。ルールエンジン23は、数値に基づいて、心電図波形データに対して動作可能な提案を生成するか否かを決定することができる。動作可能な提案が生成されると、触覚、音声、または視覚的警報とともに表示デバイス16に送信される。心電図データ、心臓分析、数値、および/または動作可能な提案のうちの少なくとも1つは、患者に関連付けられる(それぞれがタイムスタンプに関連付けられる)電子健康記録に送信することができる。
【0043】
一例として、ルールエンジン23は、24時間の時間領域で制御盤ユーザインターフェースのラジアルディスプレイ上で連続的に収集および報告された、記憶されたQTおよびRT間隔データに対して、分類および連続変数分析を実行することができる。この場合、ベースライン値からの大幅な逸脱、および/または特定の絶対値の違反は、一連のルールエンジンおよび論理的な比較をトリガーできる。これらの比較により、心室異所性心拍および/または心室頻拍の同時存在について、心拍バッファサンプルにおいて収集された複数の心拍のRT測定値を測定および分析し、高い確率で深刻に生命を脅かす心室性不整脈についての病理学的QT間隔延長の存在に固有の動作可能な提案を生成すると決定する場合に、R-T時間測定値の精確な結合的間隔を異常な心拍のR-R間隔と比較する。ルールエンジン23はまた、他の関連する臨床変数および/または生理学的交絡変数を組み込むことができる。各患者は、それ自体の対照であり、形態学的特徴は、記憶されたテンプレートとリアルタイムで比較される。
【0044】
本開示は、人工心電図評価を行うことなく、患者のカルテにACWA生成の動作可能な提案を挿入する前にそれをレビューすることなく、連続的な心不整脈モニタリングプロセスの完全(または半完全)自動化を提供することができる。ACWAによって実行される高度パターン識別プログラムおよび/または機械学習アルゴリズムは、完全に自動化された心臓モニタリングシステムを可能にし、人為的エラーの可能性を制限し、微細で高リスクの心律動パターンを識別する能力を向上させることができる。完全な自動化を欠く場合、システム10は、導入された人的エラーの可能性を軽減することができる。
【0045】
IV、方法
本開示の別の様態は、高度心臓波形分析(ACWA)を実行するための方法40(
図4)を含み得る。方法40は、フローチャート図を有するプロセスチャートとして示されている。簡潔にするために、方法40は、直列に実行されるものとして示され、説明される。しかしながら、いくつかのステップは、異なる順序で、および/または本明細書に示され、説明される他のステップと同時に発生する可能性があるため、本開示は、図示される順序に限定されないことを理解および認識されたい。さらに、方法40を実施するために、図示された態様のすべてが必要とされるわけではない。
【0046】
方法40は、ハードウェアによって実行されてもよく、例えば、方法40は、主に、
図1のシステム10のコンピューティングデバイス12によって実行されてもよい。システム10のコンピューティングデバイス12の1つまたは複数のハードウェア要素は、ソフトウェアルーチンを実行して方法40の少なくとも一部を実現することができる。さらに、システム10のコンピューティングデバイス12の1つまたは複数の要素は、ソフトウェアルーチンを記憶する非一時的メモリ22と、方法40の少なくとも一部に対応するソフトウェアルーチンを実行するための1つまたは複数のプロセッサ24とを含み得る。
図1のシステム10の他のコンポーネント(ウェアラブルデバイス14、表示デバイス16など)も、方法40を容易にするために使用され得る。
【0047】
図4の42では、心電波形データを受信することができる。心電図波形データは、1つまたは複数の皮膚表面電極によって記録され、患者に関連付けられるウェアラブルデバイス(例えば、ウェアラブルデバイス14)によって伝送されてもよい。44では、心電図波形データに対して数学的分析を実行することができる。例えば、心電波形全体(1つまたは複数の心周期)から心電図波形の特定の特徴を分離して、引き出すことができる。数学的分析に基づいて、1つまたは複数の心臓分析を提供することができる。
【0048】
46では、心臓分析の視覚化を生成することができる。可視化は、例えば、制御パネルディスプレイ上で生成することができる。可視化は、医療専門家に表示する(および/または医療専門家によって使用される)ために、表示デバイス(例えば、表示デバイス16)に送信することができる。心臓分析はまた、患者に関連付けられ、タイムスタンプとともに患者の電子カルテに送信することもできる。
【0049】
48では、心臓分析とベースライン値との比較に基づいて数値を提供することができる。例えば、比較は、心電図波形と少なくとも1つのベースライン値との関連性、心電図波形とベースライン波形との間のウェーブレットマッチング、および/または臨床的に関連する事象に関連付けられる任意の心周期測定値の特定の変化に基づくことができる。ベースライン値は、患者固有のベースライン値であり得る。しかしながら、他の場合、ベースライン値は、同様な状況(例えば、同じ性別、同じ体重、同じ年齢など)の患者のものであり得る。他の例において、ベースライン値は、一般集団のベースライン値であり得る。コンピューティングデバイスは、ルールエンジン(例えば、ルールエンジン23)を使用して、心電図波形データとベースラインとの間に一連の論理比較を適用することができ、これらは、ルールエンジンに記憶され、またはルールエンジンによってアクセスすることができる。ルールエンジンの比較に基づいて、数値を生成できる。特に選択されたベースライン値のために、数値は、生理学的交絡変数を考慮に入れることができる。ルールエンジンは、数値が疾患状態を示すか、または非疾患状態を示すかを特定することができる。場合によっては、数値は、患者に関連付けられる電子カルテに送信されてもよく、および/または、数値は、パネルディスプレイに送信されてもよく、他の場合では、磁気テープまたはアイコンとして表示されて臨床的に関連する事象を表す別のグラフィカルユーザインターフェースに送信されてもよい。
【0050】
50では、数値に基づいて、動作可能な提案を生成するか否かを決定することができる。この決定は、数値が閾値(例えば、疾患状態および/または疾患状態の変化)を満たすか否かに基づくことができる。場合によっては、この決定は、患者に関連付けられる電子カルテに送信することができる。動作可能な提案は、不整脈、心不全、差し迫った心肺停止、急性冠症候群、または重大な代謝異常を含むが、これらに限定されない、1つまたは複数の心疾患に向けられてもよい。動作可能な提案が生成されると、動作可能な提案は、1人または複数人の医療専門家に(例えば、メッセージングプログラムを介して)送信され、心臓分析の可視化とともに(例えば、表示デバイス16上に)表示することができる。動作可能な提案は、触覚、音声、または視覚的警報を伴うことができまる。動作可能な提案は、医療専門家によって強調表示され、編集され、注釈付けされ、交換され、コンピューティングデバイス12に返送することができる。
【0051】
修正後の動作可能な提案および/または動作可能な提案に対する注釈は、(例えば、コンピューティングデバイス12によって)受信および/または生成することができる。コンピューティングデバイス12は、修正後の動作可能な提案を電子カルテシステムに送信し、修正後の動作可能な提案を元の動作可能な提案にリンクすることができる。電子カルテでは、関連性の順に、動作可能な提案を表示することができる。修正後の動作可能な提案は、コンピューティングデバイス12によって他の医療専門家に送信することができる。例えば、医療専門家は、他の医療専門家に修正後の動作可能な提案を送信することができる(例えば、医師が第2の所見を提供するため、緊急応答専門家が患者に対して行動をとるため、訓練中の医師が病院外の主治医と動作可能な提案または修正後の動作可能な提案を交換するため、非心臓医がレビューのために心臓専門家に動作可能な提案を送信し、修正後の動作可能な提案を受信するため等)。
【0052】
上記の説明に基づいて、当業者は、改善、変更、および修正に認識するであろう。これらの改善、変更および修正は、当業者の能力の範囲内であり、添付の特許請求の範囲によってカバーされることを意図している。