(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】配線探査システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/58 20200101AFI20230519BHJP
【FI】
G01R31/58
(21)【出願番号】P 2022046390
(22)【出願日】2022-03-23
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】520039179
【氏名又は名称】NTTアノードエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】福井 昭圭
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-247839(JP,A)
【文献】特開2016-217853(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2343931(KR,B1)
【文献】特開昭57-3054(JP,A)
【文献】特開2016-125935(JP,A)
【文献】特開2022-143643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00-31/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔制御のための遠隔制御信号を送信する配線識別送信機と、
前記配線識別送信機からの前記遠隔制御信号を受信する配線識別負荷装置と、
を備える配線探査システムであって、
前記配線識別負荷装置は、
一対の電源線をなす第1電源線と第2電源線の一方に接続された第1端子と、
他方に接続された第2端子と、
負荷とスイッチとを含む直列回路と、
前記配線識別送信機と通信可能に形成されていて、前記配線識別送信機からの前記遠隔制御信号を受信する第1通信処理部と、
前記遠隔制御信号の受信に応じて前記直列回路によって突入電流を生成させて、前記突入電流の生成に応じた応答信号を前記第1通信処理部から送信させる第1制御部と、
を備え、
前記配線識別送信機は、
前記配線識別負荷装置と通信可能に形成されている第2通信処理部と、
操作に応じて前記第2通信処理部から前記遠隔制御信号を送信させる第2制御部と、
を備え、
前記第1制御部は、前記スイッチをオンまたはオフすることで前記突入電流を前記第1端子と前記第2端子との間に通電させるとともに、前記スイッチの動作を監視し、監視した結果を示す信号として前記応答信号を生成し、前記応答信号を前記第1通信処理部から送信させ、
前記第2制御部は、前記第2通信処理部が前記応答信号を受信した場合、前記監視結果を所定の出力態様で出力する
配線探査システム。
【請求項2】
前記配線識別負荷装置は、警報を発する第1警報部を備え、
前記配線識別送信機は、警報を発する第2警報部を備え、
前記遠隔制御信号を送信させる操作がなされた場合、前記第1警報部または前記第2警報部の少なくとも一方が、所定時間、警報を発する
請求項1に記載の配線探査システム。
【請求項3】
前記配線識別負荷装置はバッテリによって駆動され、
前記第1制御部は、前記バッテリの電圧が所定値以下の場合、前記第1通信処理部から、前記バッテリの電圧が前記所定値以下であることを示すバッテリ電圧低下信号を送信させ、
前記第2制御部は、前記第2通信処理部が前記バッテリ電圧低下信号を受信した場合、前記第2警報部から警報を発する
請求項2に記載の配線探査システム。
【請求項4】
前記負荷は、コンデンサを含み、
前記第1制御部は、前記コンデンサの電圧が所定値以上の場合、前記第1通信処理部から、前記コンデンサの電圧が前記所定値以上であることを示すコンデンサ高電圧信号を送信させ、
前記第2制御部は、前記第2通信処理部が前記コンデンサ高電圧信号を受信した場合、前記第2警報部から警報を発する
請求項2に記載の配線探査システム。
【請求項5】
前記スイッチは、リレーの接点(以下、リレー接点という)であり、
前記第1制御部は、前記リレー接点の動作を、他のリレー接点の動作に基づいて監視し、前記応答信号を生成する
請求項1に記載の配線探査システム。
【請求項6】
前記負荷は、少なくとも一部の抵抗値が互いに異なる複数の抵抗と、前記抵抗を選択的に動作させる複数の選択リレーとを含み、
前記第2制御部は、前記第2通信処理部から、所定の設定部の設定状態に応じた設定信号を送信させ、
前記第1制御部は、前記第1通信処理部が受信した前記設定信号に基づいて前記選択リレーをオンまたはオフに制御する
請求項1から5のいずれか1項に記載の配線探査システム。
【請求項7】
遠隔制御のための遠隔制御信号を送信する配線識別送信機と、
前記配線識別送信機からの前記遠隔制御信号を受信する配線識別負荷装置と、
を備える配線探査システムの制御方法であって、
前記配線識別負荷装置は、
一対の電源線をなす第1電源線と第2電源線の一方に接続された第1端子と、
他方に接続された第2端子と、
負荷とスイッチとを含む直列回路と、
前記配線識別送信機と通信可能に形成されていて、前記配線識別送信機からの前記遠隔制御信号を受信する第1通信処理部と、
前記遠隔制御信号の受信に応じて前記直列回路によって突入電流を生成させて、前記突入電流の生成に応じた応答信号を前記第1通信処理部から送信させる第1制御部と、
を備え、
前記配線識別送信機は、
前記配線識別負荷装置と通信可能に形成されている第2通信処理部と、
操作に応じて前記第2通信処理部から前記遠隔制御信号を送信させる第2制御部と、
を備え、
前記第1制御部によって、前記スイッチをオンまたはオフすることで前記突入電流を前記第1端子と前記第2端子との間に通電させるとともに、前記スイッチの動作を監視し、監視した結果を示す信号として前記応答信号を生成させ、前記応答信号を前記第1通信処理部から送信させるステップと、
前記第2制御部によって、前記第2通信処理部が前記応答信号を受信した場合、前記監視結果を所定の出力態様で出力させるステップと
を含む制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線探査システムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には次のような配電路の識別方法が記載されている。すなわち、特許文献1に記載されている方法では、撤去予定の電源線の片線とアース間にテスト用の高周波信号を連続的または間欠的に注入し、電源装置側の配線で、同じテスト用の高周波信号が観測されるかどうかで、配線探査が行われる。この方法では、電源線にテスト用の高周波信号が例えば連続的に注入されるため、場合によっては他の運転中の負荷装置に誤動作や故障を発生させる恐れがあり、安全性について課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、安全に配線を探査することができる配線探査システムおよび制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決するため、本発明の一態様は、遠隔制御のための遠隔制御信号を送信する配線識別送信機と、前記配線識別送信機からの前記遠隔制御信号を受信する配線識別負荷装置と、を備える配線探査システムであって、前記配線識別負荷装置は、一対の電源線をなす第1電源線と第2電源線の一方に接続された第1端子と、他方に接続された第2端子と、負荷とスイッチとを含む直列回路と、前記配線識別送信機と通信可能に形成されていて、前記配線識別送信機からの前記遠隔制御信号を受信する第1通信処理部と、前記遠隔制御信号の受信に応じて前記直列回路によって突入電流を生成させて、前記突入電流の生成に応じた応答信号を前記第1通信処理部から送信させる第1制御部と、を備え、前記配線識別送信機は、前記配線識別負荷装置と通信可能に形成されている第2通信処理部と、操作に応じて前記第2通信処理部から前記遠隔制御信号を送信させる第2制御部と、を備え、前記第1制御部は、前記スイッチをオンまたはオフすることで前記突入電流を前記第1端子と前記第2端子との間に通電させるとともに、前記スイッチの動作を監視し、監視した結果を示す信号として前記応答信号を生成し、前記応答信号を前記第1通信処理部から送信させ、前記第2制御部は、前記第2通信処理部が前記応答信号を受信した場合、前記監視結果を所定の出力態様で出力する配線探査システムである。
【0006】
(2)本発明の一態様は、(1)の配線探査システムであって、前記配線識別負荷装置は、警報を発する第1警報部を備え、前記配線識別送信機は、警報を発する第2警報部を備え、前記遠隔制御信号を送信させる操作がなされた場合、前記第1警報部または前記第2警報部の少なくとも一方が、所定時間、警報を発する。
【0007】
(3)本発明の一態様は、(2)の配線探査システムであって、前記配線識別負荷装置はバッテリによって駆動され、前記第1制御部は、前記バッテリの電圧が所定値以下の場合、前記第1通信処理部から、前記バッテリの電圧が前記所定値以下であることを示すバッテリ電圧低下信号を送信させ、前記第2制御部は、前記第2通信処理部が前記バッテリ電圧低下信号を受信した場合、前記第2警報部から警報を発する。
【0008】
(4)本発明の一態様は、(2)の配線探査システムであって、前記負荷は、コンデンサを含み、前記第1制御部は、前記コンデンサの電圧が所定値以上の場合、前記第1通信処理部から、前記コンデンサの電圧が前記所定値以上であることを示すコンデンサ高電圧信号を送信させ、前記第2制御部は、前記第2通信処理部が前記コンデンサ高電圧信号を受信した場合、前記第2警報部から警報を発する。
【0009】
(5)本発明の一態様は、(1)の配線探査システムであって、前記スイッチは、リレーの接点(以下、リレー接点という)であり、前記第1制御部は、前記リレー接点の動作を、他のリレー接点の動作に基づいて監視し、前記応答信号を生成する。
【0010】
(6)本発明の一態様は、(1)~(5)の配線探査システムであって、前記負荷は、少なくとも一部の抵抗値が互いに異なる複数の抵抗と、前記抵抗を選択的に動作させる複数の選択リレーとを含み、前記第2制御部は、前記第2通信処理部から、所定の設定部の設定状態に応じた設定信号を送信させ、前記第1制御部は、前記第1通信処理部が受信した前記設定信号に基づいて前記選択リレーをオンまたはオフに制御する。
【0011】
(7)本発明の一態様は、遠隔制御のための遠隔制御信号を送信する配線識別送信機と、前記配線識別送信機からの前記遠隔制御信号を受信する配線識別負荷装置と、を備える配線探査システムの制御方法であって、前記配線識別負荷装置は、一対の電源線をなす第1電源線と第2電源線の一方に接続された第1端子と、他方に接続された第2端子と、負荷とスイッチとを含む直列回路と、前記配線識別送信機と通信可能に形成されていて、前記配線識別送信機からの前記遠隔制御信号を受信する第1通信処理部と、前記遠隔制御信号の受信に応じて前記直列回路によって突入電流を生成させて、前記突入電流の生成に応じた応答信号を前記第1通信処理部から送信させる第1制御部と、を備え、前記配線識別送信機は、前記配線識別負荷装置と通信可能に形成されている第2通信処理部と、操作に応じて前記第2通信処理部から前記遠隔制御信号を送信させる第2制御部と、を備え、前記第1制御部によって、前記スイッチをオンまたはオフすることで前記突入電流を前記第1端子と前記第2端子との間に通電させるとともに、前記スイッチの動作を監視し、監視した結果を示す信号として前記応答信号を生成させ、前記応答信号を前記第1通信処理部から送信させるステップと、前記第2制御部によって、前記第2通信処理部が前記応答信号を受信した場合、前記監視結果を所定の出力態様で出力させるステップとを含む制御方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の各態様によれば、安全に配線を探査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る配線探査システムの構成例を示す構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る配線識別負荷装置の構成例を示す構成図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る配線識別送信機の構成例を示す構成図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る配線識別送信機の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に係る配線識別負荷装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る配線探査システムの構成例を示す構成図である。
図1に示す配線探査システム100は、配線識別負荷装置1と、配線識別送信機2とを備える。
図1は、配線探査システム100を用いて、電源配線システム10において撤去対象の撤去装置7に交流電力を供給する一対の電源線である電源線303および304を探索する例を示す。
【0016】
図1に示す電源配線システム10は、交流給電システムであって、電源装置4の端子L1と端子L2から、撤去装置7と現用装置8へ交流電力が供給される。なお、本実施形態に係る配線探査システム100は、例えば、交流100V、交流200V等の2線式の単相交流の電源配線システム10に加え、例えば、直流48V等の電源配線システムにも適用することができる。
【0017】
撤去装置7と現用装置8は、例えば通信装置であって、撤去装置7が電気設備工事において撤去しようとする装置である。電源装置4から撤去装置7へは、一対の電源線である電源線301および302、一対の電源線である電源線303および304、分電盤5内のブレーカ51、ならびに、一対の電源線である電源線305および306を介して、交流電力が供給される。電源装置4から現用装置8へは、一対の電源線である電源線301および302、分岐点B1およびB2、一対の電源線である電源線307および308、分電盤6内のブレーカ61、ならびに、一対の電源線である電源線309および310を介して、交流電力が供給される。
【0018】
配線識別負荷装置1は、第1端子11と、第2端子12と、負荷13とスイッチ14との直列回路15とを備える。直列回路15は、負荷13とスイッチ14とを含む。第1端子11は、撤去装置7に接続されている一対の電源線の一方である電源線305に対して、ブレーカ51の2次側で、電源線41によって接続されている。第2端子12は、撤去装置7に接続されている一対の電源線の他方である電源線306に対して、ブレーカ51の2次側で、電源線42によって接続されている。負荷13は、抵抗、コンデンサ等の負荷素子である。スイッチ14は、電磁リレー等の接点、MOS-FET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor;金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)等の半導体スイッチ、ソリッドステートリレー等であり、配線識別負荷装置1が備える後述するマイコン(マイクロコンピュータ)等によってオンまたはオフに制御される。
図1に示す例では、負荷13の一方の端子が直接または他の回路を介して第1端子11に接続されている。また、負荷13の他方の端子が直接または他の回路を介してスイッチ14の一方の端子に接続されている。また、スイッチ14の他方の端子が直接または他の回路を介して第2端子12に接続されている。
【0019】
配線識別負荷装置1は、スイッチ14をオンまたはオフすることで所定パターンの電流(負荷電流Ia)を第1端子11と第2端子12との間に通電する。所定パターンは、例えば、負荷13が含むコンデンサを充電する際の突入電流の波形(突入電流パターン)としたり、複数の突入電流の組み合わせから成るパターンとしたりすることができる。この第1端子11と第2端子12間に通電する電流Iaは、撤去装置7へ交流電力を供給する電源装置4から供給された交流電力によって配線識別負荷装置1内で発生される。
【0020】
なお、本実施形態において負荷13が本発明の負荷の一構成例である。また、本実施形態においてスイッチ14が本発明のスイッチの一構成例である。また、本実施形態において直列回路15が本発明の直列回路の一構成例である。
【0021】
一方、配線識別送信機2は、例えばクランプ型電流センサ2sとの組み合わせによって、電源線303または304に流れる所定パターンの電流変化を検知するために用いられる。作業者は、配線識別送信機2を操作することで配線識別負荷装置1を遠隔制御し、配線識別負荷装置1に所定パターンの電流変化を発生させ、例えばクランプ型電流センサ2sを用いて電源線303または304に流れる所定パターンの電流変化を確認する。配線識別送信機2は、作業者の操作に応じて無線通信によって遠隔制御信号を配線識別負荷装置1へ送信する。遠隔制御信号を受信した配線識別負荷装置1は、スイッチ14をオンまたはオフすることで突入電流を第1端子11と第2端子12との間に通電させるとともに、スイッチ14の動作を監視し、監視結果を示す信号として応答信号を配線識別送信機2へ送信する。配線識別送信機2は、応答信号を受信した場合、監視結果を所定の出力態様で出力する(例えば、画像、光信号、音響信号、合成音声信号等で出力する)。
【0022】
なお、クランプ型電流センサ2sは、例えば、測定部2hを貫通する測定導体に流れる電流によって生じる磁界をホール素子を用いて検知することで交流および直流の電流を非接触で検知するセンサである。クランプ型電流センサ2sは、例えば、検知した電流値を表示する機能のみを有するものであってもよいし、内部にマイコン等を備え、所定パターンの測定電流の変化を検知しているか否かを判定して判定した結果を表示する機能を有するものであってもよい。あるいは、クランプ型電流センサ2sは、検知した電流波形(電流の時間変化)を表示する機能を有するものであってもよい。クランプ型電流センサ2sは、測定電流として、例えば、電源線303または304に流れる所定パターンの電流変化を検知する。本実施形態では、クランプ型電流センサ2sは、検知した電流波形を示すアナログ信号を出力するものであるとする。なお、クランプ型電流センサ2sと配線識別送信機2は一体的に構成されていてもよい。
【0023】
配線探査システム100によれば、配線識別負荷装置1で自動で負荷電流Iaを所定のターンで発生させ、電源側の配線に流れる電流をクランプ型電流センサ2sを用いて確認し、負荷電流と同じ測定電流のパターンが観測された系統を撤去予定の電源線と特定することができる。本実施形態によれば、高周波電圧を電源線に注入する必要がないので、他の装置に誤作動や故障を発生させること無く電源線を安全に探索することができる。
【0024】
次に、
図2を参照して、配線識別負荷装置1の構成例について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る配線識別負荷装置の構成例を示す構成図である。
図2に示す配線識別負荷装置1は、第1端子11、第2端子12、ダイオードブリッジDB、バッテリBT1、マイコン101、バッテリ電圧検出部102、コンデンサ電圧検出部103、警報部104、負荷投入部105、負荷選定部106、無線通信部107、コンデンサC1、抵抗R3、電流計AS、および電圧計VSを備える。配線識別負荷装置1は、バッテリBT1を電源として駆動される。以下の説明では、配線識別負荷装置1として、単相交流用の配線に適用する構成を例示する。
【0025】
第1端子11には
図1に示す電源線41が接続される。第2端子12には
図1に示す電源線42が接続される。ダイオードブリッジDBは、例えば単相交流用の全波整流型整流器である。ダイオードブリッジDBは、交流入力側を第1端子11と第2端子12に接続する。また、ダイオードブリッジDBは、直流出力側の正極端子をコンデンサC1、電流計ASおよび電圧計VSの正極端子に接続する。また、ダイオードブリッジDBは、直流出力側の負極端子をグランド(GND)に接続する。バッテリBT1は、正極端子を電源Vcに接続し、負極端子をグランドに接続する。なお、以下では電源Vcの電圧を電源電圧Vcともいう。なお、配線識別負荷装置1を直流用の配線に適用する構成であっても、ダイオードブリッジDBを設けておくことで、第1端子11と第2端子12を逆極性に接続した場合を保護できる。
【0026】
コンデンサC1は突入電流パターンを生成するための素子であり、例えば電解コンデンサである。コンデンサC1の両端子は、ダイオードブリッジDBの直流出力側の正極端子と、電圧計VSの負極端子に接続される。抵抗R3は放電抵抗であり、コンデンサC1に充電された電荷を放電させる。抵抗R3の両端子は、電流計ASの負極端子と、電圧計VSの負極端子に接続される。電流計ASは抵抗R3に流れる電流を計測する。電圧計VSはコンデンサC1の端子電圧を計測する。
【0027】
マイコン101は、内部にプロセッサ、メモリ、タイマ、アナログ/デジタル変換器、シリアル通信回路、無線モジュール制御回路等を備え、メモリに記憶されているプログラムを実行することで配線識別負荷装置1内の各部を制御する。マイコン101は、電源端子VcおよびGNDと、アナログ入力端子AI1と、デジタル入力端子DI1およびDI2と、デジタル出力端子DO1~DO8と、無線モジュール制御端子TXおよびRXとを備える。なお、マイコンは、CPU(中央処理装置)等とも呼ばれる。本実施形態においてマイコン101が本発明の第1制御部の一構成例である。なお、デジタル出力端子DO1~DO8は、直接、トランジスタを駆動する能力を有しているものとする。
【0028】
バッテリ電圧検出部102は、抵抗R1と、抵抗R2を備える。抵抗R1は一方の端子を電源Vcに接続し、他方の端子を抵抗R2の一方の端子とマイコン101のアナログ入力端子AI1に接続する。抵抗2は他方の端子をグランドに接続する。バッテリ電圧検出部102は、バッテリBT1の端子電圧である電源電圧Vcを、抵抗R1と抵抗R2で分圧し、分圧した電圧をマイコン101のアナログ入力端子AI1に出力する。
【0029】
コンデンサ電圧検出部103は、コンパレータCMPと、抵抗R4と、抵抗R5と、可変抵抗R6とを備える。抵抗R4は一方の端子をコンデンサC1の正極端子に接続し、他方の端子を抵抗R5の一方の端子とコンパレータCMPの非反転入力端子に接続する。抵抗5は他方の端子をグランドに接続する。可変抵抗R6は、一方の端子を電源Vcに、他方の端子をグランドに、可動接点に接続された端子をコンパレータCMPの反転入力端子に接続する。コンパレータCMPは、コンデンサC1の端子電圧を抵抗R4と抵抗R5で分圧した電圧と、電圧Vcを可変抵抗R6で調整した電圧とを比較する。コンデンサ電圧検出部103は、コンデンサC1の電圧が所定値以上の場合にHレベル(電源Vc)の信号を出力し、コンデンサC1の電圧が所定値未満の場合にLレベル(グランドレベル)の信号を出力する。
【0030】
警報部104は、ブザーBZ1と、トランジスタTR8を備える。ブザーBZ1の一方の端子は電源Vcに接続され、他方の端子はトランジスタTR8のコレクタに接続されている。トランジスタTR8のエミッタはグランドに接続され、ベースはマイコン101のデジタル出力端子DO1に接続されている。ブザーBZ1はトランジスタTR8がオンすると鳴動する。警報部104は、デジタル出力端子DO1がHレベルの場合、警報音を出力する。警報部104は、本発明の第1警報部の一構成例である。
【0031】
負荷投入部105は、リレーRY1と、抵抗R7と、トランジスタTR1を備える。負荷投入部105は第1端子11と第2端子12の間に突入電流を通電させるスイッチ14を構成する。リレーRY1は、電磁リレーであり、端子1a、1c、2aおよび2cと、コイルL1を備える。コイルL1は、一方の端子を電源Vcに接続し、他方の端子をトランジスタTR1のコレクタに接続する。トランジスタTR1のエミッタはグランドに接続され、ベースはマイコン101のデジタル出力端子DO2に接続されている。デジタル出力端子DO2がHレベルの場合、トランジスタTR1がオンし、コイルL1に電流が流れる。端子1aは、ノーマリオープン端子であり、リレーRY1のコイルL1に電流が流れた場合にコモン端子である端子1cと接続される。端子1aと端子1c間にノーマリオープン接点が設けられている。端子2aはノーマリオープン端子であり、リレーRY1のコイルL1に電流が流れた場合に、コモン端子である端子2cと接続される。端子2aと端子2c間にノーマリオープン接点が設けられている。端子1aは電源Vcに接続されている。端子1cは抵抗R7の一方の端子とマイコン101のデジタル入力端子DI2に接続されている。抵抗R7の他方の端子はグランドに接続されている。端子2aはグランドに接続されている。端子2cは負荷選定部106の一方の端子に接続されている。負荷投入部105は、端子1aと端子1c間の接点がオンした場合、デジタル入力端子DI2に対してHレベルの信号を出力し、端子1aと端子1c間の接点がオフした場合、デジタル入力端子DI2に対してLレベルの信号を出力する。
【0032】
負荷投入部105において、端子1aと端子1c間の接点と、端子2aと端子2c間の接点は、連動して動作する。また、端子2aと端子2c間の接点が、
図1に示すスイッチ14に対応する。この場合、端子2aと端子2c間の接点すなわちスイッチ14の動作が、他の端子1aと端子1c間の接点(以下、監視用接点ともいう)の動作に基づいて、マイコン101によって監視されることになる。
【0033】
負荷選定部106は、リレーRY2~RY7と、抵抗R11~R19と、トランジスタTR2~TR7を備える。リレーRY2~RY7は、電磁リレーであり、端子aおよび端子cと、コイルL2~L7の各1個とをそれぞれ備える。リレーRY2~RY7は、本発明における選択リレーの一構成例である。以下、リレーRY2~RY7を選択リレーともいう。なお、トランジスタTR3~TR6とコイルL3~L6は図示を省略している。端子aはノーマリオープン端子であり、端子cはコモン端子である。コイルL2~L7の各一方の端子は電源Vcに接続されている。コイルL2~L7の各他方の端子はトランジスタTR2~TR7の各コレクタに接続されている。トランジスタTR2~TR7の各エミッタはグランドに接続され、各ベースはマイコン101のデジタル出力端子DO3~DO8に接続されている。デジタル出力端子DO3~DO8がHレベルの場合、トランジスタTR2~TR7がオンし、コイルL2~L7に電流が流れる。リレーRY2~RY7のコイルL2~7に電流が流れた場合に、端子aと端子cが接続される。
【0034】
リレーRY5~RY7の各端子cはコンデンサC1の負極端子に接続されている。リレーRY5の端子aは抵抗R11~R13の各一方の端子と接続されている。リレーRY6の端子aは抵抗R14~R16の各一方の端子と接続されている。リレーRY7の端子aは抵抗R17~R19の各一方の端子と接続されている。
【0035】
リレーRY2の端子aは、抵抗R11、R14およびR17の各他方の端子と接続されている。リレーRY3の端子aは、抵抗R12、R15およびR18の各他方の端子と接続されている。リレーRY4の端子aは、抵抗R13、R16およびR19の各他方の端子と接続されている。リレーRY2~RY4の各端子cはリレーRY1の端子2cに接続されている。
【0036】
抵抗R11~R19のいずれか一つが、リレーRY2~RY4のいずれか一つと、リレーRY5~RY7のいずれか一つとをオンすることで選択される。抵抗R11~R19のいずれか一つと、コンデンサC1の直列回路が、負荷13に対応する。抵抗R11~R19の抵抗値は互いに異なる。ただし、互いに同一の抵抗値を有する複数の抵抗が含まれていてもよい。電源配線システム10の例えば3種類の電源電圧に応じてリレーRY5~RY7の一つを選択し、突入電流の例えば3種類の電流値に応じてリレーRY2~RY4の一つを選択することで、電源電圧と電流値に応じて抵抗R11~R19のいすれか一つを選択することができる。例えば直流48V、交流100V、および交流200Vの3種類の電源電圧において、突入電流を例えば5A、10Aおよび30Aに設定するような設定値に抵抗R11~R19の各抵抗値を設定しておくことで、電源電圧や突入電流を選択することができる。
【0037】
無線通信部107は、通信モジュールRM1を備える。通信モジュールRM1は、配線識別送信機2の後述する通信モジュールRM2と通信可能に形成されている。無線通信部107は、配線識別送信機2からの遠隔制御信号、バッテリ電圧低下信号、設定信号等の所定の信号を受信する。無線通信部107は、配線識別送信機2に対して、バッテリ電圧低下信号、コンデンサ高電圧信号、応答信号等の所定の信号を送信する。なお、通信モジュールRM1は、直接または図示していないアクセスポイント等を介して通信モジュールRM2との間で無線通信を行う。無線通信部107(あるいは無線通信部107とマイコン101の一部の機能を組み合わせた機能的構成)は、本発明の第1通信処理部の一構成例である。
【0038】
なお、本実施形態において、配線識別送信機2からの遠隔制御信号は突入電流の生成を指示する信号である。配線識別送信機2からのバッテリ電圧低下信号は、配線識別送信機2が備えるバッテリBT2(
図3)の電圧が所定値以下であることを通知する信号である。配線識別送信機2からの設定信号は負荷選定部106の抵抗R11~R19の選択動作(リレーRY2~RY7のオンまたはオフの動作状態)を指示する信号である。配線識別送信機2に対するバッテリ電圧低下信号はバッテリBT1の電圧が所定値以下であることを通知する信号である。配線識別送信機2に対するコンデンサ高電圧信号は、コンデンサC1の端子電圧が所定値以上であることを通知する信号である。配線識別送信機2に対する応答信号は負荷投入部105によって突入電流を生成した場合の負荷投入部105の動作状態の監視結果を通知する信号である。
【0039】
次に、
図3を参照して、配線識別送信機2の構成例について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る配線識別送信機の構成例を示す構成図である。
図3に示す配線識別送信機2は、バッテリBT2、マイコン201、バッテリ電圧検出部202、警報部203、突入電流出力スイッチ部204、LED表示部205、設定部206、液晶表示部207、および無線通信部208を備える。配線識別送信機2は、バッテリBT2を電源として駆動される。
【0040】
バッテリBT2は、正極端子を電源Vcに接続し、負極端子をグランドに接続する。なお、以下では電源Vcの電圧を電源電圧Vcともいう。
【0041】
マイコン201は、内部にプロセッサ、メモリ、タイマ、アナログ/デジタル変換器、シリアル通信回路、無線モジュール制御回路等を備え、メモリに記憶されているプログラムを実行することで配線識別送信機2内の各部を制御する。マイコン201は、電源端子VcおよびGNDと、アナログ入力端子AI1~AI4と、デジタル入力端子DI1と、デジタル出力端子DO1~DO3と、無線モジュール制御端子TXおよびRXと、シリアルデータ端子SDAと、シリアルクロック端子SCLとを備える。本実施形態においてマイコン201が本発明の第2制御部の一構成例である。なお、デジタル出力端子DO1~DO8は、直接、トランジスタやLED(発光ダイオード)を駆動する能力を有しているものとする。
【0042】
バッテリ電圧検出部202は、抵抗R1と、抵抗R2を備える。抵抗R1は一方の端子を電源Vcに接続し、他方の端子を抵抗R2の一方の端子とマイコン201のアナログ入力端子AI1に接続する。抵抗2は他方の端子をグランドに接続する。バッテリ電圧検出部202は、バッテリBT2の端子電圧である電源電圧Vcを、抵抗R1と抵抗R2で分圧し、分圧した電圧をマイコン201のアナログ入力端子AI1に出力する。
【0043】
警報部203は、ブザーBZ1と、トランジスタTR8を備える。ブザーBZ1の一方の端子は電源Vcに接続され、他方の端子はトランジスタTR8のコレクタに接続されている。トランジスタTR8のエミッタはグランドに接続され、ベースはマイコン201のデジタル出力端子DO1に接続されている。ブザーBZ1はトランジスタTR8がオンすると鳴動する。警報部203は、デジタル出力端子DO1がHレベルの場合、警報音を出力する。警報部203は、本発明の第2警報部の一構成例である。
【0044】
突入電流出力スイッチ部204は、スイッチSW1と、抵抗R23を備える。スイッチSW1は、例えばモーメンタリ動作のノーマリオープン(A接点)の押しボタンスイッチである。スイッチSW1の一方の端子は電源Vcに接続され、他方の端子はデジタル入力端子DI1と抵抗R23の一方の端子とに接続されている。抵抗R23の他方の端子はグランドに接続されている。突入電流出力スイッチ部204は、作業者がスイッチSW1を押下することでデジタル入力端子DI1にHレベルの信号を出力する。スイッチSW1は、遠隔制御信号の生成と配線識別負荷装置1への送信を指示するための操作子である。
【0045】
LED表示部205は、発光ダイオードLED1と、発光ダイオードLED2と、抵抗R24と、抵抗R25とを備える。抵抗R24の一端はデジタル出力端子DO2に接続され、他端は発光ダイオードLED1のアノードに接続されている。発光ダイオードLED1のカソードはグランドに接続されている。抵抗R25の一端はデジタル出力端子DO3に接続され、他端は発光ダイオードLED2のアノードに接続されている。発光ダイオードLED2のカソードはグランドに接続されている。デジタル出力端子DO2がHレベルの場合、発光ダイオードLED1は点灯する。デジタル出力端子DO2がLレベルの場合、発光ダイオードLED1は消灯する。デジタル出力端子DO3がHレベルの場合、発光ダイオードLED2は点灯する。デジタル出力端子DO3がLレベルの場合、発光ダイオードLED2は消灯する。LED表示部205は、本発明の第2警報部の一構成例である。また、LED表示部205は、本発明において、監視結果を所定の出力態様で出力する際の出力先の一構成である。
【0046】
設定部206は、可変抵抗R26と、可変抵抗R27を備える。可変抵抗R26は、一方の端子を電源Vcに、他方の端子をグランドに、可動接点に接続された端子をアナログ入力端子AI2に接続する。可変抵抗R27は、一方の端子を電源Vcに、他方の端子をグランドに、可動接点に接続された端子をアナログ入力端子AI3に接続する。可変抵抗R26は、例えば、探索対象の電源配線システム10の電源電圧を、例えば直流48V、交流100V、または交流200Vのいずれに設定するために用いられる。可変抵抗R27は、例えば、突入電流の値を設定するために用いられる。設定部206は、可変抵抗R26の可動接点の位置に応じた電圧をアナログ入力端子AI2に出力する。また、設定部206は、可変抵抗R27の可動接点の位置に応じた電圧をアナログ入力端子AI3に出力する。設定部206は、本発明の設定部の一構成例である。
【0047】
液晶表示部207は、液晶表示パネルLCDを備える。液晶表示パネルLCDは、電源Vc、グランド、リアルデータ端子SDA、および、シリアルクロック端子SCLに接続され、リアルデータ端子SDAおよびシリアルクロック端子SCLから出力された制御信号に基づき、文字や画像を表示する。液晶表示部207は、本発明の第2警報部の一構成例である。また、本発明において、液晶表示部207は、監視結果を所定の出力態様で出力する際の出力先の一構成である。
【0048】
無線通信部208は、通信モジュールRM2を備える。通信モジュールRM1は、配線識別負荷装置1の通信モジュールRM1と通信可能に形成されている。無線通信部208は、配線識負荷装置1へ、遠隔制御信号、バッテリ電圧低下信号、設定信号等の所定の信号を送信する。無線通信部208は、配線識別負荷装置1から、バッテリ電圧低下信号、コンデンサ高電圧信号、応答信号等の所定の信号を受信する。なお、通信モジュールRM2は、直接または図示していないアクセスポイント等を介して通信モジュールRM1との間で無線通信を行う。無線通信部208(あるいは無線通信部208とマイコン201の一部の機能を組み合わせた機能的構成)は、本発明の第2通信処理部の一構成例である。
【0049】
また、本実施形態では、アナログ入力端子AI4へクランプ型電流センサ2sが計測した電流値を示すアナログ信号が入力される。マイコン201は、例えば、クランプ型電流センサ2sが計測した電流波形を液晶表示部207から出力したり、予測される電流波形と計測した電流波形との比較結果を示す情報を液晶表示部207から出力したりする。
【0050】
次に、
図4を参照して配線識別送信機2の動作例について説明する。
図4は、本発明の実施形態に係る配線識別送信機2の動作例を示すフローチャートである。
図4に示す処理は、配線識別送信機2が起動後、所定の初期設定処理を実行後、所定の周期で繰り返し実行される。なお、無線通信部107と無線通信部208は、
図4および後述する
図5の処理とは並列的に無線通信を行い、相手側が送信した所定の信号を受信して、受信した信号を所定の記憶部に記憶する機能を有しているものとする。
【0051】
図4に示す処理では、まず、マイコン201がアナログ入力端子AI1に入力されたバッテリ電圧検出部202が検出したバッテリ電圧に応じた電圧値を取得する(ステップS101)。次に、マイコン201が、バッテリ電圧が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS102)。バッテリ電圧が所定値以下でなかった場合(ステップS102:NO)、マイコン201は無線通信部208がバッテリ低下信号を受信したか否かを判定する(ステップS103)。バッテリ低下信号を受信していなかった場合(ステップS103:NO)、マイコン201は無線通信部208がコンデンサ高電圧信号を受信したか否かを判定する(ステップS104)。コンデンサ高電圧信号を受信していなかった場合(ステップS104:NO)、マイコン201は警報部203からの警報の出力を停止する(ステップS105)。なお、ステップS105では、警報の出力が停止されていた場合、マイコン201は重ねて停止させる信号を出力する処理を実行してもよいし、なにも実行しなくてもよい。
【0052】
ステップS105の処理の後、マイコン201は、設定部206がアナログ入力端子AI2およびAI3へ出力した電圧値(以下、設定状態ともいう)を取得する(ステップS106)。次に、マイコン201は、設定状態に基づき設定信号を生成し、生成した設定信号を無線通信部208から配線識別負荷装置1へ送信する(ステップS107)。
【0053】
次に、マイコン201は、突入電流出力スイッチ部204のスイッチSW1が操作されたか否かを判定する(ステップS108)。突入電流出力スイッチ部204のスイッチSW1が操作(押下)されていた場合(ステップS108:YES)、マイコン201は、遠隔制御信号を無線通信部208から配線識別負荷装置1へ送信する(ステップS109)。次に、マイコン201は、警報部203のブザーBZ1を所定時間、鳴動させて、警報を出力する(ステップS110)。
【0054】
ステップS110での警報の出力は、遠隔で突入電流を通電制御時に、誤って、別の作業者が配線識別負荷装置1と分電盤51の電源線41および41との接続作業をしていた場合に、作業者が感電、衝撃等を受けることを防止するためのものである。配線識別送信機2に設けられた突入電流出力用のスイッチSW1が押されると、一定時間、配線識別送信機2と配線識別負荷装置1の両方、またはいずれかの警報部203または104のブザーBZ1を鳴動させる等で、例えば両方の装置周辺の作業者に注意をうながす。これによって、作業者が感電、衝撃等を受ける恐れを低減させる。なお、警報の出力は、液晶表示部207やLED表示部205等を用いて行ってもよい。
【0055】
次に、マイコン201は、無線通信部208が配線識別負荷装置1から応答信号を受信したか否かを判定する(ステップS111)。応答信号を受信していなかった場合(ステップS111:NO)、マイコン201は、遠隔制御信号を送信してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS112)。所定時間が経過していなかった場合(ステップS112:NO)、マイコン201は、再度、無線通信部208が配線識別負荷装置1から応答信号を受信したか否かを判定する(ステップS111)。
【0056】
応答信号を受信した場合(ステップS111:YES)、マイコン201は、応答信号が示す負荷投入部105の動作状態の監視結果等を示す情報を液晶表示部207等から出力し(ステップS113)、
図4に示す処理を終了する。所定時間が経過しても応答信号を受信しなかった場合(ステップS112:YES)、マイコン201は、応答信号を受信できなかった旨を示す情報を液晶表示部207等から出力し(ステップS113)、
図4に示す処理を終了する。
【0057】
一方、バッテリ電圧が所定値以下であった場合(ステップS102:YES)、マイコン201は、バッテリ電圧低下信号を無線通信部208から配線識別負荷装置1へ送信する(ステップS114)。次に、マイコン201は、警報部203、液晶表示部207等からバッテリ電圧が低下した旨の警報を出力し(ステップS115)、
図4に示す処理を終了する。
【0058】
また、無線通信部208がバッテリ低下信号を受信した場合(ステップS103:YES)、マイコン201は、警報部203、液晶表示部207等から配線識別負荷装置1のバッテリ電圧が低下した旨の警報を出力し(ステップS115)、
図4に示す処理を終了する。
【0059】
また、無線通信部208がコンデンサ高電圧信号を受信した場合(ステップS104:YES)、マイコン201は、警報部203、液晶表示部207等から配線識別負荷装置1のコンデンサC1の電圧が高電圧である旨の警報を出力し(ステップS115)、
図4に示す処理を終了する。
【0060】
次に、
図5を参照して配線識別負荷装置1の動作例について説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る配線識別負荷装置1の動作例を示すフローチャートである。
図5に示す処理は、配線識別負荷装置1が起動後、所定の初期設定処理を実行後、所定の周期で繰り返し実行される。
【0061】
図5に示す処理では、まず、マイコン101がアナログ入力端子AI1に入力されたバッテリ電圧検出部102が検出したバッテリ電圧に応じた電圧値を取得する(ステップS201)。次に、マイコン101が、バッテリ電圧が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS202)。バッテリ電圧が所定値以下でなかった場合(ステップS202:NO)、マイコン101がデジタル入力端子DI1に入力されたコンデンサ電圧検出部103が出力したコンデンサC1の電圧と所定値との比較結果を取得する(ステップS203)。次に、マイコン101が、デジタル入力端子DI1の値に基づいてコンデンサC1の電圧が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS204)。コンデンサC1の電圧が所定値以上でない場合(ステップS204:NO)、マイコン101は無線通信部107がバッテリ低下信号を受信したか否かを判定する(ステップS205)。
【0062】
バッテリ低下信号を受信していなかった場合(ステップS205:NO)、マイコン101は警報部104からの警報の出力を停止する(ステップS206)。なお、ステップS206では、警報の出力が停止されていた場合、マイコン101は重ねて停止させる信号を出力する処理を実行してもよいし、なにも実行しなくてもよい。
【0063】
ステップS206の処理の後、マイコン101は、無線通信部107が配線識別送信機2から受信した設定信号に基づき、選択リレーRY2~RY7をオンまたはオフに制御する(ステップS207)。次に、マイコン101は無線通信部107が遠隔制御信号を受信したか否かを判定する(ステップS208)。遠隔制御信号を受信した場合(ステップS208:YES)、マイコン101は、警報部104のブザーBZ1を所定時間、鳴動させて、警報を出力する(ステップS209)。
【0064】
次に、マイコン101は、デジタル出力端子DO2から所定の信号を出力して負荷投入部105のスイッチ14に対応する接点を制御するとともに、デジタル入力端子DI2の入力信号に基づき監視用接点の状態を取得する(ステップS210)。次に、マイコン101は、取得した監視用接点の状態に基づき応答信号を生成して無線通信部107から配線識別送信機2へ送信し(ステップS211)、
図5に示す処理を終了する。
【0065】
一方、バッテリ電圧が所定値以下であった場合(ステップS202:YES)、マイコン101は、バッテリ電圧低下信号を無線通信部107から配線識別送信機2へ送信する(ステップS212)。次に、マイコン101は、警報部104等からバッテリ電圧が低下した旨の警報を出力し(ステップS214)、
図5に示す処理を終了する。
【0066】
一方、コンデンサC1の電圧が所定値以上であった場合(ステップS204:YES)、マイコン101は、コンデンサ高電圧信号を無線通信部107から配線識別送信機2へ送信する(ステップS213)。次に、マイコン101は、警報部104等からコンデンサC1の電圧が高電圧である旨の警報を出力し(ステップS214)、
図5に示す処理を終了する。
【0067】
また、無線通信部107がバッテリ低下信号を受信した場合(ステップS205:YES)、マイコン101は、警報部104等から配線識別送信機2のバッテリ電圧が低下した旨の警報を出力し(ステップS214)、
図5に示す処理を終了する。
【0068】
以上のように本実施形態によれば、遠隔制御によって配線識別負荷装置2内の負荷13に所定の突入電流を通電させることで電源線を識別することができ、安全に配線を探査することができる。
【0069】
また、本実施形態により、一種類の配線識別負荷装置で複数の電源種別のケーブル探査を行えるようになり、ラインナップの統一による製品コスト(開発・製造)の低減が可能になった。
【0070】
また、コンデンサ電圧、バッテリ電圧の検出機能、警報機能等により、配線探査の安全性と作業の信頼性が向上した。
【0071】
また、遠隔で、突入電流値の制御等が容易にできるようになり、作業効率が向上するとともに、配線識別負荷装置の設定状態が手元の配線識別送信機で確認できるため、装置の誤操作リスクが低減可能になった。
【0072】
また、上述した動作例では、コンデンサC1の電圧が所定値以上の場合、配線識別負荷装置1と配線識別送信機2の両方で警報が出力される。よって、配線識別負荷装置1と配線識別送信機2の両方の周辺の作業者に、コンデンサC1の電圧が所定値以上であることについて注意喚起することができる。
【0073】
(第1の実施形態の変形例)
上記の実施形態において、2線式単相交流用の配線に適用する事例について説明したが、これに代えて3線式単相交流用の配線に適用してもよい。3線式単相交流用の配線には、第1相と第2相の配線のほかに中生線が含まれる。この場合、第1端子11と第2端子12を有する電源配線システム10を、上記のうちの2線に接続して利用するとよい。なお、接続先の組み合わせによって、第1端子11と第2端子12に掛かる交流電圧が変わるのでこれに注意する。
【0074】
(第2の実施形態)
第1の実施形態において、単相交流用の配線又は直流用の配線に適用する事例について説明したが、これに代えて3相交流用の配線に適用してもよい。この場合の構成を下記のように変更する。
【0075】
例えば、ダイオードブリッジDB(
図2)を、例えば3相交流用の全波整流型整流器にする。この場合のダイオードブリッジDBの交流入力側を、外部接続用の第1端子から第3端子(不図示)に接続する。この第1端子から第3端子は、前述の第1端子11と第2端子12の代わりに利用され、分電盤に接続される。
【0076】
なお、3相交流の基本波の位相に寄らずに、電源配線システム10が生成するパルス電流に応じて、電流の変化が生じる。ただし、3相交流の基本波の位相と、電源配線システム10が生成するパルス電流のタイミングとによって、3相交流の各相に流れるパルス電流の大きさが変化する。そこで、3相交流の配線に適用する場合には、同じ接続構成を維持しているなかで、パルス電流を複数回発生させて、その結果に基づいて、ケーブルの選択の適否を判定するとよい。
【0077】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0078】
例えば、上記実施形態では、コンデンサC1の電圧と所定の電圧とのコンパレータCMPによる比較結果をマイコン101に入力するようにしているが、例えばコンデンサC1の電圧を分圧した電圧をアナログ入力端子に入力するようにしてもよい。
【0079】
また、上記実施形態でコンピュータが実行するプログラムの一部または全部は、コンピュータ読取可能な記録媒体や通信回線を介して頒布することができる。
【符号の説明】
【0080】
100…配線探査システム、10…電源配線システム、1…配線識別負荷装置、2…配線識別送信機、2s…クランプ型電流センサ、11…第1端子、12…第2端子、15…直列回路、RY1~RY7…リレー、13…負荷、R11~R19…抵抗(負荷)、C1…コンデンサ(負荷)、R3…抵抗(放電抵抗)、301、302、303、304、305、306、41、42…電源線、BT1、BT2…バッテリ、101…マイコン(第1制御部)、201…マイコン(第2制御部)、102、202…バッテリ電圧検出部、103…コンデンサ電圧検出部、104…警報部(第1警報部)、203…警報部(第2警報部)、105…負荷投入部、106…負荷選定部、107…無線通信部(第1通信処理部)、208…無線通信部(第2通信処理部)、204…突入電流出力スイッチ部、205…LED表示部、206…設定部、207…液晶表示部
【要約】
【課題】安全に配線を探査することができる配線探査システムおよび制御方法を提供する。
【解決手段】配線識別送信機と配線識別負荷装置とを備える配線探査システムであって、配線識別負荷装置は、一対の電源線の一方に接続された第1端子と、他方に接続された第2端子と、負荷とスイッチとを含む直列回路と、配線識別送信機からの遠隔制御信号に応じて直列回路によって突入電流を生成させて、突入電流の生成に応じた応答信号を送信させる第1制御部を備え、配線識別送信機は、操作に応じて遠隔制御信号を送信させる第2制御部を備え、第1制御部は、スイッチをオンまたはオフすることで突入電流を第1端子と第2端子との間に通電させるとともに、スイッチの動作を監視し、監視結果を示す信号として応答信号を送信させ、第2制御部は、応答信号を受信した場合、監視結果を所定の出力態様で出力する。
【選択図】
図4