IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ファームシップの特許一覧

<>
  • 特許-栽培設備 図1
  • 特許-栽培設備 図2
  • 特許-栽培設備 図3
  • 特許-栽培設備 図4
  • 特許-栽培設備 図5
  • 特許-栽培設備 図6
  • 特許-栽培設備 図7
  • 特許-栽培設備 図8
  • 特許-栽培設備 図9
  • 特許-栽培設備 図10
  • 特許-栽培設備 図11
  • 特許-栽培設備 図12
  • 特許-栽培設備 図13A
  • 特許-栽培設備 図13B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】栽培設備
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20230519BHJP
   A01G 9/24 20060101ALI20230519BHJP
   A01G 9/02 20180101ALI20230519BHJP
   A01G 31/06 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
A01G31/00 612
A01G9/24 A
A01G9/02 B
A01G31/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022049298
(22)【出願日】2022-03-25
【審査請求日】2022-10-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514108263
【氏名又は名称】株式会社ファームシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】北島 正裕
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 由久
(72)【発明者】
【氏名】岡 理一郎
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-141566(JP,A)
【文献】特開2020-092653(JP,A)
【文献】特開2017-201929(JP,A)
【文献】特開2015-204848(JP,A)
【文献】特開2010-104252(JP,A)
【文献】特開2008-263834(JP,A)
【文献】特開2004-121074(JP,A)
【文献】特開2002-119149(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163629(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/181699(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/119778(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/123448(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/000005(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 - 9/28
A01G 31/00 - 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に並んだ複数の栽培ユニットと、
水平方向である第1方向において前記複数の栽培ユニットの一端側に形成される第1空間と、
前記第1方向において前記複数の栽培ユニットの他端側に形成され、前記第1空間よりも温度が高い空気が流れる第2空間と、を備え、
前記複数の栽培ユニットを収容するユニット収納庫の内部には、前記複数の栽培ユニットを含んで構成された栽培ユニット集合体が少なくとも一つ以上収納されており、
前記栽培ユニット集合体は、前記第1方向において、前記ユニット収納庫の内部空間を仕切っており、
前記ユニット収納庫の内部空間において、前記栽培ユニット集合体を挟んで互いに反対側に位置する2つの空間のうちの一方が前記第1空間であり、他方が前記第2空間であり、
前記複数の栽培ユニットの各々は、
内部で植物が栽培される筐体と、
前記筐体内に向けて光を照射する光源と、
前記筐体の内部と、前記第1空間及び前記第2空間の少なくとも一方の空間とを流れる風を発生させる送風機と、を備え
上下に並んだ前記複数の栽培ユニットのうち、隣り合う2つの栽培ユニットの間には隙間が形成され、前記隣り合う2つの栽培ユニットの一方が備える前記光源は、前記隣り合う2つの栽培ユニットの間の前記隙間に配置され、
前記栽培ユニット集合体において、前記複数の栽培ユニットの各々は、水平方向であって前記第1方向と交差する第2方向において他の栽培ユニットと並んだ状態で配置され、
前記第2方向に並ぶ2以上の栽培ユニットは、連結した状態で前記第2方向に移動可能であり、
前記栽培ユニット集合体において、前記第2方向に並ぶ前記2つ以上の栽培ユニットが栽培ユニット列を構成し、
上下において隣り合う2つの前記栽培ユニット列の間には、前記隙間が前記栽培ユニット列に沿って連続することで構成され、且つ、前記光源の作動時に前記光源から発生する熱を排出する際の経路をなす連続通路が設けられている、栽培設備。
【請求項2】
上下に並んだ複数の栽培ユニットと、
水平方向である第1方向において前記複数の栽培ユニットの一端側に形成される第1空間と、
前記複数の栽培ユニットのうち、隣り合う2つの栽培ユニットの間に形成され、前記第1空間よりも温度が高い空気が流れる第2空間と、を備え、
前記複数の栽培ユニットを収容するユニット収納庫の内部には、前記複数の栽培ユニットを含んで構成された栽培ユニット集合体が少なくとも一つ以上収納されており、
記ユニット収納庫の内部空間において、前記栽培ユニット集合体を挟んで互いに反対側に位置する2つの空間のうちの一方が前記第1空間であり、
前記複数の栽培ユニットの各々は、
内部で植物が栽培される筐体と、
前記筐体内に向けて光を照射する光源と、
前記筐体の内部と、前記第1空間及び前記第2空間の少なくとも一方の空間とを流れる風を発生させる送風機と、を備え
上下に並んだ前記複数の栽培ユニットのうち、隣り合う2つの栽培ユニットの間には隙間が形成され、前記隣り合う2つの栽培ユニットの一方が備える前記光源は、前記隣り合う2つの栽培ユニットの間の前記隙間に配置され、
前記栽培ユニット集合体において、前記複数の栽培ユニットの各々は、水平方向であって前記第1方向と交差する第2方向において他の栽培ユニットと並んだ状態で配置され、
前記第2方向に並ぶ2以上の栽培ユニットは、連結した状態で前記第2方向に移動可能であり、
前記栽培ユニット集合体において、前記第2方向に並ぶ前記2つ以上の栽培ユニットが栽培ユニット列を構成し、
上下において隣り合う2つの前記栽培ユニット列の間に設けられ、前記隙間が前記栽培ユニット列に沿って連続することで構成され、且つ、前記光源の作動時に前記光源から発生する熱を排出する際の経路をなす連続通路が、前記第2空間である、栽培設備。
【請求項3】
記隣り合う2つの栽培ユニットは、前記隙間の前記第1方向における端部に設けられたクランク状の屈曲部を備える、請求項1又は2に記載の栽培設備。
【請求項4】
前記複数の栽培ユニットの各々が有する前記送風機を制御する制御装置を有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の栽培設備。
【請求項5】
前記送風機は、
前記第1空間及び前記筐体の内部の一方から他方に送風する第1送風機と、
前記第2空間及び前記筐体の内部の一方から他方に送風する第2送風機と、を含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載の栽培設備。
【請求項6】
前記複数の栽培ユニットの各々が有する前記第1送風機及び前記第2送風機のうちのそれぞれを、栽培ユニット毎に制御する制御装置を有する、請求項に記載の栽培設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培設備に係り、特に、筐体内で植物が栽培される栽培ユニットを複数備える構成の栽培設備に関する。
【背景技術】
【0002】
植物を栽培する方法として、筐体及び光源を含むユニット(以下、栽培ユニット)を用いた栽培方法が開発されている。栽培ユニットでは、例えば、筐体内に養液の槽を配置し、養液に浮かべた状態で植物を保持し、光源からの光を植物に照射することで植物を筐体内で栽培する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記の栽培ユニットを複数用いて、それぞれの栽培ユニットで植物を同時期に栽培すれば、栽培対象の植物を大量に栽培することができる。この場合、スペース上の制約及び取り扱い易さ等の観点から、複数の栽培ユニットを所定方向に並べて利用することが想定され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-058285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、栽培ユニットが備える筐体内部の状態は、植物の栽培条件に関係し、特に、筐体内の温度及び湿度は、植物の成長速度及び品質等に影響を及ぼし得る。
【0006】
一方、栽培ユニットでは、光源の利用に伴う発熱等によって、筐体内及び光源周辺の温度が上昇する傾向にある。この点を踏まえ、栽培ユニットにおける栽培環境(特に、筐体内の温度及び湿度等)を適切に調整する必要がある。
【0007】
また、所定方向に並んだ複数の栽培ユニットの各々において植物を栽培する場合、好ましい栽培環境(筐体内の温度及び湿度等)は、栽培対象である植物の種類、及び植物の成長状況に応じて変わり得る。この点を考慮すると、栽培ユニットの栽培環境をユニット毎に調整することが好ましい。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、具体的には、所定方向に並んだ複数の栽培ユニットにおいて、栽培環境を栽培ユニット毎に調整可能な栽培設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの実施形態に係る栽培設備は、所定方向に並んだ複数の栽培ユニットと、所定方向と交差する方向において複数の栽培ユニットの一端側に形成される第1空間と、所定方向と交差する方向において複数の栽培ユニットの他端側に形成され、第1空間よりも温度が高い空気が流れる第2空間と、を備え、複数の栽培ユニットの各々は、内部で植物が栽培される筐体と、筐体の内部と、第1空間及び第2空間の少なくとも一方の空間とを流れる風を発生させる送風機と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一つの実施形態に係る栽培設備は、所定方向に並んだ複数の栽培ユニットと、所定方向と交差する方向において複数の栽培ユニットの一端側に形成される第1空間と、複数の栽培ユニットのうち、隣り合う2つの栽培ユニットの間に形成され、第1空間よりも温度が高い空気が流れる第2空間と、を備え、複数の栽培ユニットの各々は、内部で植物が栽培される筐体と、筐体の内部と、第1空間及び第2空間の少なくとも一方の空間とを流れる風を発生させる送風機と、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記のように構成された本発明の栽培設備では、所定方向に並んだ複数の栽培ユニットの各々において、筐体の内部と、第1空間及び第2空間の少なくとも一方の空間との間を流れる風を発生させることができる。これにより、複数の栽培ユニットでは、栽培環境としての筐体内の温度及び湿度等を、栽培ユニット毎に調整することができる。
【0012】
また、複数の栽培ユニットの各々は、筐体内に向けて光を照射する光源を有し、複数の栽培ユニットのうち、隣り合う2つの栽培ユニットの一方が備える光源は、隣り合う2つの栽培ユニットの間に配置されてもよい。
上記の構成によれば、隣り合う栽培ユニットの間のスペースを利用して光源を配置することができる。
【0013】
また、複数の栽培ユニットの各々は、筐体内に向けて光を照射する光源を有し、隣り合う2つの栽培ユニットの一方が備える光源は、第2空間内に配置されてもよい。
上記の構成によれば、第2空間を利用して光源を配置することができる。
【0014】
また、複数の栽培ユニットのうち、隣り合う2つの栽培ユニットの各々が備える筐体の間には隙間が形成され、隣り合う2つの栽培ユニットは、上記の隙間を通過する気流に対する抵抗を高める構造を備えてもよい。
上記の構成によれば、隙間を通過する空気の流れ(気流)を妨げて、隙間とその周辺空間との間での空気の出入りを抑えることができる。
【0015】
また、複数の栽培ユニットのうち、1つ以上の栽培ユニットは、水平方向において他の栽培ユニットと並んだ状態で配置され、水平方向に並ぶ2以上の栽培ユニットは、連結した状態で水平方向に移動可能であってもよい。
上記の構成であれば、例えば、水平方向に並ぶ2以上の栽培ユニットを容易に取り出すことができる。
【0016】
また、上下に並んだ複数の栽培ユニットのうち、隣り合う2つの栽培ユニットの間には隙間が形成されてもよい。また、水平方向に並ぶ2つ以上の栽培ユニットが栽培ユニット列を構成してもよい。この場合、上下において隣り合う2つの栽培ユニット列の間には、隙間が栽培ユニット列に沿って連続することで構成された通路が設けられているとよい。
上記の構成であれば、上下に隣り合う2つの栽培ユニット間の隙間が、栽培ユニット列に沿って連続して通路を構成する。この通路を利用することで、例えば、栽培ユニットにおいて植物栽培時に発生する熱を排出(排熱)することができる。
【0017】
また、複数の栽培ユニットの各々が有する送風機を制御する制御装置を有してもよい。
上記の構成であれば、制御装置によって、各栽培ユニットの送風機を制御することにより、各栽培ユニットにおける筐体内の温度及び湿度を適切に調整することができる。
【0018】
また、送風機は、第1空間及び筐体の内部の一方から他方に送風する第1送風機と、第2空間及び筐体の内部の一方から他方に送風する第2送風機と、を含んでもよい。
上記の構成であれば、第1送風機によって、筐体の内部と第1空間とを流れる風を発生させ、且つ、第2送風機によって、筐体の内部と第2空間とを流れる風を発生させる。これにより、各栽培ユニットにおいて、筐体内の温度及び湿度等を調整し易くなる。
【0019】
さらに、上記の構成において、複数の栽培ユニットの各々が有する第1送風機及び第2送風機のうちのそれぞれを、栽培ユニット毎に制御する制御装置を有してもよい。
上記の構成であれば、制御装置によって、各栽培ユニットの第1送風機及び第2送風機のそれぞれを制御することにより、各栽培ユニットにおける筐体内の温度及び湿度をより適切に調整することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、所定方向に並んだ複数の栽培ユニットにおいて、栽培環境を栽培ユニット毎に調整可能な栽培設備が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一つの実施形態に係る栽培設備の正面図である。
図2】本発明の一つの実施形態に係る栽培設備の正面図である。
図3】支持レールに支持された状態の栽培ユニットを示す斜視図である。
図4】水平方向に列状に並んだ複数の栽培ユニットの上面図である。
図5】上下方向に並んだ複数の栽培ユニットの各々の内部を正面側から見た模式断面図である。
図6】上下に重なった栽培ユニットの間に形成された流路を示す斜視図である。
図7】第1実施形態に係る栽培設備における気流の流れを示す模式正面図である。
図8】栽培設備の制御機構を示す図である。
図9】第2実施形態に係る栽培設備における気流の流れを示す模式正面図である。
図10】第2実施形態に係る栽培設備における気流の流れを示す模式側面図である。
図11】栽培ユニット間の隙間を封止する構造についての第1の例を示す図である。
図12】栽培ユニット間の隙間を封止する構造についての第2の例を示す図である。
図13A】変形例に係る栽培ユニットにおける気流の流れを示す模式図である(その1)。
図13B】変形例に係る栽培ユニットにおける気流の流れを示す模式図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明について、添付の図面に示す好適な実施形態を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、以下に説明する実施形態から変更又は改良され得る。また、本発明には、その等価物が含まれる。
【0023】
なお、本明細書にて参照する図面では、図示の便宜上、機器又は装置の一部を省略又は簡略化して図示する場合がある。例えば、図7、9及び10では、栽培ユニット内部の構造及び支柱群等についての図示を省略している。また、一部の図(例えば、図4~6)では、機器間(部品間)の接続構造を図示し易くする観点から、各機器(部品)の寸法及び縮尺等を実際の値とは異なる値に設定している。
【0024】
また、本明細書において、機器の位置、方向及び向き等を説明する際には、特に断る場合を除き、当該機器が利用されている状態での位置、方向及び向き等を説明する。
【0025】
また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「水平」、「垂直」、「直交」及び「平行」は、本発明の技術分野において一般的に許容される誤差の範囲を含み、厳密な水平、垂直、直交及び平行に対して数度(例えば2~3°)未満の範囲内でずれている状態も含むものとする。
また、本明細書において、「同じ、「同一」及び「等しい」という意味には、本発明が属する技術分野で一般的に許容される誤差の範囲が含まれ得る。
また、本明細書において、「全部」、「いずれも」及び「すべて」という意味には、100%である場合のほか、本発明が属する技術分野で一般的に許容される誤差の範囲が含まれ、例えば99%以上、95%以上、または90%以上である場合が含まれ得る。
【0026】
なお、以下では、水平方向であって互いに直交する2つの方向をX方向、Y方向と呼び、上下方向(すなわち、鉛直方向)をZ方向と呼ぶことする。本発明の一つの実施形態では、Z方向が「所定方向」に相当し、Y方向が「所定方向と交差する方向」に相当する。また、以下の説明では、説明の便宜上、X方向における一端側を「前側」と、他端側を「後側」と呼ぶこととする。
【0027】
<栽培設備の基本構成>
本発明の一つの実施形態に係る栽培設備(以下、栽培設備100)は、建物内で水耕栽培方式にて植物を栽培するために利用される。建物内に設置される栽培設備100の台数は、特に限定されず、任意の数に設定できる。
【0028】
栽培設備100は、図1に示すように、ユニット収納庫10と、複数の栽培ユニット30とを備える。
【0029】
ユニット収納庫10は、複数の栽培ユニットを収納可能な収納庫(チャンバ)であり、開閉自在な不図示の扉をX方向の一端側(前側)に備え、その扉を閉めた状態では、庫内が略密閉空間又は半密閉空間となる。庫内には、図1に示すように支柱群12Gが設けられている。支柱群12Gは、図2に示すようにX方向において一定間隔毎に列状に配置された複数の支柱12からなる支柱列を、Y方向に間隔を空けて複数有する。支柱12は、ユニット収納庫10においてZ方向に延出する棒体又は板体である。
【0030】
また、支柱群12Gには、Y方向において所定間隔離れて並んで対をなす支柱列12P(以下、対をなす支柱列12P)が一組以上含まれる。対をなす支柱列12Pのうち、一方の支柱列12P(以下、第1の支柱列)に含まれる各支柱のX方向における位置と、他方の支柱列12P(以下、第2の支柱列)に含まれる各支柱のX方向における位置とは、略同一位置である。また、Y方向における第1の支柱列と第2の支柱列との間隔は、一つの栽培ユニット30の筐体の幅よりも幾分広くなっている(図1参照)。
【0031】
第1の支柱列中の各支柱12、及び第2の支柱列中の各支柱12には、図1及び2に示すように、X方向に延在する支持レール16が固定されている。支持レール16は、Z方向に一定のピッチで複数設けられ、Y方向において第1の支柱列及び第2の支柱列の間に配置されている。それぞれの支持レール16は、例えば、L字状の断面を有する鋼材(つまり、アングル)によって構成され、ユニット収納庫10のX方向一端(前端)からX方向他端(後端)に亘って延びている。
【0032】
また、第1の支柱列に固定された複数の支持レール16(以下、第1の支柱列側の支持レール16)の各々は、第1の支柱列中の各支柱12を横切った状態で各支柱12に固定されている。第2の支柱列に固定された複数の支持レール16(以下、第2の支柱列側の支持レール16)の各々は、第2の支柱列中の各支柱12を横切った状態で各支柱12に固定されている。また、第1支柱列側の各支持レール16と、第2支柱列側の各支持レール16とは、互いに対をなす。対をなす支持レール16同士は、Z方向において同じ位置に配置されている。
【0033】
対をなす2つの支持レール16のうちの一方は、図3に示すように、Y方向の一方側に水平に延出した部分(以下、第1の延出部分14)を有する。もう一方の支持レール16は、図3に示すように、Y方向の他方側に水平に延出した部分(以下、第2の延出部分15)を有する。第1の延出部分14と、第2の延出部分15とは、Z方向において略同一位置にあり、Y方向において互いに対向する向きに延出している。
【0034】
栽培ユニット30は、図3に示すように箱状の機器であり、その内部では植物が栽培され、詳しくは水耕栽培(養液栽培)方式で栽培される。ユニット収納庫10内には、複数の栽培ユニット30が収納され、各栽培ユニット30は、庫内に収納された状態で利用される。つまり、栽培設備100では、栽培ユニット30毎に植物Pを栽培する。これにより、例えば広い養液プールにフロートを浮かべて多数の植物Pを栽培する場合に比べて、機器の管理等が容易になる。例えば、複数の栽培ユニット30のうち、一つの栽培ユニット30で故障等が発生した場合には、そのユニットのみを交換すればよい。
【0035】
栽培ユニット30は、図3に示す筐体31を有する。筐体31は、平面視での形状が方形をなす略密閉構造の容器であり、底壁、天井壁及び4つの側壁を有する。また、筐体31の側壁の下端部には、図3に示すように、Y方向の外側に向かって略水平に突出したリブ状の被支持部32が設けられている。
【0036】
栽培ユニット30は、図1に示すように、対をなす支柱列12Pの間に位置する空間(収納スペース)に収納される。収納スペース内に配置された栽培ユニット30は、それぞれの支柱列12Pに固定された複数の支持レール16のうち、栽培ユニット30の筐体31と隣り合う支持レール16によって支持される。詳しく説明すると、図3に示すように、筐体31のY方向一端面から突出した被支持部32が、当該一端面と隣り合う支持レール16に支持され、厳密には、その支持レール16が備える第1の延出部分14上に載置される。また、筐体31のY方向他端面から突出した被支持部32が、当該他端面と隣り合う支持レール16に支持され、厳密には、その支持レール16が備える第2の延出部分15上に載置される。
【0037】
収納スペース内に配置された栽培ユニット30は、図1に示すように、上記の支持構造によって支持(保持)される。また、支持レール16に載せられた被支持部32が支持レール16に沿ってX方向にスライドすることで、栽培ユニット30をユニット収納庫10内でX方向に移動させることができる。これにより、栽培ユニット30の収納時にはユニット収納庫10の奥側に栽培ユニット30を押し込むことができ、栽培ユニット30の取り出し時にはユニット収納庫10の手前側に栽培ユニット30を引き出すことができる。
【0038】
また、図2に示すように、ユニット収納庫10内では、Z方向において同じ位置に複数の栽培ユニット30を収納することができる。つまり、収納スペース内で同じ高さに配置された複数の栽培ユニット30を、同じ支持レール16によって支持することができる。これらの複数の栽培ユニット30は、X方向に列状に連なって栽培ユニット列30Lを構成する。
【0039】
また、栽培ユニット列30Lのうち、X方向に隣り合う2つの栽培ユニット30は、互いに連結する。詳しく説明すると、各栽培ユニット30は、同じ外形形状及び同じサイズを有する。また、各栽培ユニット30では、図4に示すように、筐体31のY方向両側に位置する側壁が後方に突出しており、突出した両側壁の間に凹部(以下、第1の凹部33)が形成されている。また、筐体31の前端部では、図4に示すように、筐体31の一端面及び他端面のそれぞれがY方向内側にオフセットしているため、筐体31の前端部以外の部分と比べて、筐体31の幅が短くなっている。また、第1の凹部33のY方向の幅W1(詳しくは、後方に突出した側壁の内壁面間の間隔)が、筐体31の前端部の幅W2より僅かに広くなっている。
【0040】
以上の構成により、栽培ユニット列30Lでは、図4に示すように、X方向に隣り合う2つの栽培ユニット30のうち、前側の栽培ユニット30の筐体31の後端部に形成された第1の凹部33に、後側の栽培ユニット30が備える筐体31の前端部が嵌合する。これに伴い、2つの栽培ユニット30の筐体31同士が部分的に接合する。この結果、隣り合う2つの栽培ユニット30同士が連結し、栽培ユニット列30Lを構成する複数の栽培ユニット30が一体化する。
【0041】
以上により、栽培ユニット列30Lは、ユニット収納庫10内をX方向(水平方向)に列をなしたまま移動可能である。つまり、栽培ユニット列30Lに含まれる複数の栽培ユニット30の各々の被支持部32を、同じ支持レール16上でスライド移動させることで、栽培ユニット列30Lを一体的に移動させることができる。
【0042】
また、図5に示すように、収納スペース内(つまり、対をなす支柱列12Pの間)では、2個以上の栽培ユニット30を上下に重ねる(積み重ねる)ことができる。すなわち、ユニット収納庫10内では、複数の栽培ユニット30がZ方向に並べて収納可能である。具体的に説明すると、対をなす支柱列12Pの間において、ある栽培ユニット30を支持している支持レール16の直上又は直下に位置する支持レール16に、別の栽培ユニット30を支持させることで、複数の栽培ユニット30が上下に並んだ状態で配置される。
【0043】
また、X方向において同じ位置に配置され、且つ、Z方向に隣り合う(つまり、上下に重なる)2つの栽培ユニット30は、互いに連結する。より詳しく説明すると、各栽培ユニット30では、図5に示すように、筐体31のY方向両側に位置する側壁が上方に突出しており、突出した両側壁の間に凹部(以下、第2の凹部34)が形成されている。また、筐体31の下端部では、図5に示すように、筐体31の一端面及び他端面がY方向内側にオフセットしているため、筐体31の下端部以外の部分と比べて、筐体31の幅が短くなっている。また、第2の凹部34のY方向の幅W3(詳しくは、上方に突出した側壁の内壁面間の間隔)が、筐体31の下端部の幅W4より僅かに広くなっている。
【0044】
以上の構成により、上下に重なる2つの栽培ユニット30のうち、下側の栽培ユニット30の筐体31の上端部に形成された第2の凹部34に、上側の栽培ユニット30の筐体31の下端部が嵌合する。これにより、上下に重なる2つの栽培ユニット30同士が連結し、この結果、Z方向において2つ以上の栽培ユニット30を積み上げることが可能となる。
【0045】
以上のように、ユニット収納庫10内において栽培ユニット列30Lを複数段配置し、隣り合う2つの栽培ユニット30同士を連結させることで、図2に示すように、X方向及びZ方向に複数の栽培ユニット30が並んだ栽培ユニット集合体30Gが構成される。つまり、栽培ユニット集合体30Gにおいて、Z方向に並ぶ複数の栽培ユニット30の各々は、X方向において他の栽培ユニット30と並んだ状態で配置される。X方向に並ぶ2以上の栽培ユニット30は、栽培ユニット列30Lを構成し、栽培ユニット列30Lは、上下に2列以上(2段以上)配置される。
【0046】
なお、栽培ユニット集合体30Gにおいて、栽培ユニット列30Lを構成する栽培ユニット30の数、及び、栽培ユニット列30Lの数(段数)は、それぞれ、2以上であればよく、特に限定されるものではない。
【0047】
また、図4及び5から分かるように、栽培ユニット集合体30Gでは、各栽培ユニット30の両側面(Y方向の端面であり、詳しくはXZ面)が、略同一平面上に配置され、換言すると、連続面を形成するように配置されている。
【0048】
また、栽培ユニット集合体30Gにおいて、X方向に隣り合う2つの栽培ユニット30の間には、図4に示すように、X方向における隙間(以下、前後の隙間Ga)が形成される。また、図5に示すように、Z方向に隣り合う2つの栽培ユニット30の間には、Z方向における隙間(以下、上下の隙間Gb)が形成されている。
【0049】
前後の隙間Gaは、図4に示すように、その前後に配置された栽培ユニット30の筐体31に挟まれ、当該栽培ユニット30の両脇に位置する空間(詳しくは、後述の低温空間LS及び高温空間HS)と連通している。前後の隙間Gaには、栽培ユニット30周辺の空気が流れ込み、また、前後の隙間Gaから空気が外に流出する場合がある。一方で、X方向において隣り合う2つの栽培ユニット30同士を連結させる上述の嵌合構造により、前後の隙間Gaは、図4に示すようにY方向の端部(詳しくは、開口部付近)でクランク状に屈曲している。前後の隙間Gaにおけるこのような屈曲部分は、前後の隙間Gaを通過する気流に対する抵抗を高める構造として機能し、ラビリンスシール構造に準じた効果を発揮する。
【0050】
上下の隙間Gbは、その上下に配置された栽培ユニット30の筐体31に挟まれ、当該栽培ユニットの両脇に位置する空間(詳しくは、後述の低温空間LS及び高温空間HS)と連通している。また、上下に重なる2つの栽培ユニット30がX方向に複数組配置される場合、つまり、上下において隣り合う2つの栽培ユニット列30Lが設けられる場合、2つの栽培ユニット列30Lの間では、図6に示すように、上下の隙間GbがX方向に連続して通路(以下、連続通路IL)を構成する。この連続通路ILは、閉断面構造に近い断面構造をなし、X方向において栽培ユニット列30Lの全長に相当する長さを有する。
【0051】
また、上下の隙間Gbには、栽培ユニット30周辺の気流が流れ込み、また、上下の隙間Gbから空気が外に流出する場合がある。一方で、Z方向において隣り合う2つの栽培ユニット30同士を連結させる上述の嵌合構造により、上下の隙間Gbは、図5に示すようにY方向の端部でクランク状に屈曲している。上下の隙間Gbにおけるこのような屈曲部分は、上下の隙間Gbを通過する気流に対する抵抗を高める構造として機能し、ラビリンスシール構造に準じた効果を発揮する。
【0052】
ユニット収納庫10内には、通常、一つ以上の栽培ユニット集合体30Gが収納されている(図1参照)。ユニット収納庫10内において、栽培ユニット集合体30Gは、庫内の床面から天井面に亘って配置されており、隔壁として庫内空間をY方向に仕切っている。つまり、ユニット収納庫10内において栽培ユニット集合体30Gの両脇位置(厳密には、Y方向における両側の位置)には、栽培ユニット集合体30Gによって仕切られた2つの空間が存在する。
【0053】
上記2つの空間のうちの一方の空間は、Y方向において栽培ユニット集合体30GのY方向の一端側に位置し、低温の空気が流れる空間であり、以下、低温空間LSと呼ぶ。もう一方の空間は、Y方向において栽培ユニット集合体30GのY方向の他端側に位置し、高温の空気が流れる空気であり、以下、高温空間HSと呼ぶ。本発明の一つの実施形態において、低温空間LSは、第1空間に相当し、高温空間HSは、第2空間に相当する。
【0054】
低温空間LSを流れる空気は、低温の空気であり、具体的には、不図示の空調装置によって冷却された空気、あるいは、ユニット収納庫10の外から導入されるフレッシュな空気である。低温空間LSは、栽培ユニット集合体30GがY方向の一端側に備える連続面全体に隣接している。つまり、低温空間LSは、栽培ユニット集合体30Gを構成する各栽培ユニット30が備える筐体31のY方向一端面に隣接している。
【0055】
高温空間HSを流れる空気は、低温空間LS内の空気よりも高温の空気であり、具体的には、不図示の暖房装置によって加温された空気、あるいは、栽培ユニット30の光源周辺にあり光源35からの発生熱によって温められた空気である。高温空間HSは、栽培ユニット集合体30GがY方向の他端側に備える連続面全体に隣接している。つまり、高温空間HSは、栽培ユニット集合体30Gを構成する各栽培ユニット30が備える筐体31のY方向他端面に隣接している。
【0056】
なお、ユニット収納庫10内には、対をなす支柱列12Pを、Y方向に間隔を空けて複数組設けることで、2つ以上の栽培ユニット集合体30Gが配置されてもよい(図1参照)。その場合、2つ以上の栽培ユニット集合体30Gによって庫内が3つ以上の空間に仕切られることになる。3つ以上の空間は、1つ以上の低温空間LSと、1つ以上の高温空間HSとを含み、低温空間LSと高温空間HSとがY方向に交互に配置される。
【0057】
<栽培ユニットの詳細構成>
次に、栽培ユニット30の詳細構成について図5を参照しながら説明する。
栽培ユニット30は、図5に示すように、前述の筐体31と光源35とを備え、筐体31内に、支持プレート36、撹拌機器37、及び3台の送風機41、42、43を備える。
【0058】
筐体31(筐体31の天井壁を除く)を構成する材質は、特に限定されないが、断熱性及び遮光性(反射性)に優れた材料であることが好ましい。筐体31の平面サイズは、任意に決めることができ、一例を挙げると、幅(Y方向における長さ)を約600mmとし、奥行き(X方向における長さ)を約600mmとしてもよい。
【0059】
筐体31の下端部は、養液の槽38をなしている。槽38は、深さを有するトレー形状の部分であり、図5に示すように、槽38内には養液Lが溜められる。支持プレート36は、発泡スチロール等からなる板体であり、図5に示すように、槽38内の養液に浮かべられた状態で植物Pを保持する。具体的に説明すると、支持プレート36には、1個又は複数個の貫通穴が形成されており、この貫通穴に、植物Pの根を保持したウレタン製の培地Bが嵌め込まれている。これにより、支持プレート36が培地Bを介して植物Pを支持し、植物Pは、その根が養液に浸かった状態で保持される。
【0060】
光源35は、例えば、LED(Light Emitting Diode)、エレクトロルミネッセンス素子、又は半導体レーザ用素子等からなり、筐体31内に光を照射する。本発明の一つの実施形態では、図5に示すように、光源35が筐体31の天井壁の上面に設置されている。したがって、光源35からの光は、筐体31の天井壁を透過して筐体31内に照射される。換言すると、筐体31の天井壁は、光透過性を有し、例えば透明又は半透明の板体によって構成されている。
【0061】
また、本発明の一つの実施形態において、光源35は、図5に示すように、前述の連続通路IL内に配置されている。詳しく説明すると、上下に重なった2つの栽培ユニット30のうち、下側の栽培ユニット30が備える光源35は、筐体31の上端部に形成された第2の凹部34内に配置され、筐体31の天井壁の上面に固定されている。そして、上側の栽培ユニット30の筐体31の下端部が第2の凹部34に嵌合した状態では、上下2つの栽培ユニット30の筐体31同士の隙間、すなわち上下の隙間Gb内に光源35が位置する。
【0062】
一方、上下の隙間Gbは、前述したように、栽培ユニット集合体30GにおいてX方向に連続して連続通路ILを構成する。つまり、連続通路ILは、各栽培ユニットの光源35(厳密には、上下に重なった2つの栽培ユニット30のうち、下側の栽培ユニット30が備える光源35)を収容する空間をなす。
【0063】
また、連続通路ILは、光源35の作動時に光源35から発生する熱(以下、光源由来の熱)を排出する際の経路をなす(図10参照)。つまり、栽培ユニット集合体30Gにおける各栽培ユニット30で植物を栽培する間、連続通路IL内の空気は、光源由来の熱によって加温され、その温度は、栽培ユニット集合体30Gと隣接する低温空間LS内の空気の温度よりも高くなる。
【0064】
撹拌機器37は、槽38内の養液を撹拌する電動機器であり、例えば、槽38内で回転するスターラ、養液を循環させる循環ポンプ、又は養液中にエアを吹き込むエアポンプ等によって構成される。
【0065】
3台の送風機41、42、43は、筐体31内の状態、特に温度及び湿度を調整する目的で筐体31内に設けられている。一つ目の送風機(以下、低温用送風機41)は、筐体31のうち、低温空間LSと隣接する側壁に形成された貫通孔39の内部又は貫通孔39周辺に配置される。本発明の一つの実施形態において、低温用送風機41は、第1送風機に相当し、主として低温空間LSから筐体31内に送風する目的で利用される。つまり、低温送風機41は、筐体31の内部と、低温空間LSの空間とを流れる風を発生させる送風機である。
【0066】
二つ目の送風機(以下、高温用送風機42)は、筐体31のうち、高温空間HSと隣接する側壁に形成された貫通孔39の内部又は貫通孔39周辺に配置される。本発明の一つの実施形態において、高温用送風機42は、第2送風機に相当し、主として筐体31内から高温空間HSに送風する目的で利用される。つまり、高温送風機42は、筐体31の内部と、高温空間HSの空間とを流れる風を発生させる送風機である。
【0067】
三つ目の送風機(以下、循環用送風機43)は、例えば、筐体31内において筐体31の天井壁の直下位置に配置され、主として筐体31内の空気を循環させる目的で利用される。
【0068】
上記3つの送風機41、42、43は、公知のファンによって構成される。公知のファンとしては、プロペラファン、シロッコファン、ターボファン、斜流ファン、及びラインフローファン(登録商標)等が利用可能である。
また、互いに機能が異なる上記3つの送風機41、42、43のそれぞれの台数は、特に限定されず、1台又は複数台であってもよい。
【0069】
また、栽培ユニット30は、不図示の受電機構を備え、電源の電力を受電機構にてから受電し、栽培ユニット30が備える各電気機器(具体的には、光源35、撹拌機器37、及び送風機41、42、43)の各々に供給する。受電機構は、例えば、コネクタであり、不図示の給電用プラグがコネクタに接続されることで受電可能となる。
なお、受電機構の種類は、特に限定されず、支柱12又は支持レール16に敷設された架線に接して集電する集電装置(トロリー)でもよく、あるいは、ワイヤレス電力伝送方式のような無線給電方式にて受電するものでもよい。
【0070】
<栽培ユニットにおける栽培環境の調整について>
栽培ユニット集合体30Gを構成する複数の栽培ユニット30の各々は、前述したように、筐体31内に送風機41、42、43を備えている。これにより、植物Pの栽培環境を栽培ユニット30毎に調整することが可能である。
【0071】
具体的に説明すると、各栽培ユニット30では、図7に示すように、低温用送風機41が作動することで、低温空間LSから筐体31の内部に送風し、低温空間LS内の空気を筐体31内に取り込むことができる。また、図7に示すように、高温用送風機42が作動することで、筐体31の内部から高温空間HSに送風し、筐体31内の空気を高温空間HSに排出することができる。これにより、筐体31内の状態、特に、筐体31内の温度及び湿度等を調整することができる。
【0072】
また、低温用送風機41及び高温用送風機42は、個々の栽培ユニット30に備えられているため、各栽培ユニット30の筐体31内の状態を個別に(栽培ユニット30毎に)調整することができる。
【0073】
詳しく説明すると、栽培設備100は、図8に示すように制御装置50を備える。制御装置50は、例えば制御用コンピュータ又は制御用プロセッサであり、各栽培ユニット30に備えられた不図示の制御回路と無線方式で通信し、各栽培ユニット30における送風機41、42、43を制御する。
【0074】
制御装置50は、各栽培ユニット30が有する低温用送風機41及び高温用送風機42のうちの少なくとも一方を制御する。本発明の一つの実施形態において、制御装置50は、各栽培ユニット30が有する3つの送風機41、42、43のそれぞれを、栽培ユニット30毎に制御する。具体的には、各栽培ユニット30における各送風機の発停、並びに各送風機による送風量(厳密には、回転数等)が、栽培ユニット30毎に制御装置50によって制御される。
【0075】
以上のように筐体31内の状態を栽培ユニット30毎に調整することができる。これにより、植物Pの成長度合いが栽培ユニット30間で異なっていても、各筐体31内の温度及び湿度等を、各筐体31内における植物Pの成長度合いに応じて個々に調整することができる。この結果、各栽培ユニット30における栽培環境が、適切に且つ良好に調整されるようになる。
【0076】
また、本発明の一つの実施形態では、栽培ユニット集合体30Gを構成する複数の栽培ユニット30のうち、X方向又はZ方向に隣り合う2つの栽培ユニット30同士が互いに連結している。これにより、栽培ユニット集合体30Gが、低温空間LS及び高温空間HSを仕切る隔壁としての機能を良好に発揮し、低温空間LSと高温空間HSとを適切に仕切ることができる。この結果、一方の空間の空気が他方の空間に流入するのを抑え、低温空間LS及び高温空間HSを利用した栽培環境(つまり、筐体31内の温度及び湿度)の調整を適切に実施することができる。
【0077】
また、X方向又はZ方向に隣り合う2つの栽培ユニット30は、栽培ユニット30間に形成される隙間(すなわち、前後の隙間Ga及び上下の隙間Gb)を通過する気流に対する抵抗を高める構造を備える。具体的には、前述したように、Y方向における隙間の端部(詳しくは開口端付近)に屈曲部を設け、この屈曲部がラビリンスシール構造に準じた効果を発揮する。これにより、低温空間LSと高温空間HSとをより確実に仕切り、一方の空間の空気が他方の空間に流入するのを、より効果的に抑えることができる。この結果、低温空間LSと高温空間HSを利用した栽培環境の調整を、より適切に実施することができる。
【0078】
<その他の実施形態>
以上までに本発明の栽培設備について具体例を挙げて説明してきたが、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例に過ぎず、上記以外の実施形態も考えられ得る。
【0079】
上記の実施形態(以下、第1実施形態)では、各栽培ユニット30における栽培環境を調整するために、低温空間LSの空気を筐体31内に取り込み、筐体31内の空気を高温空間HSに排出することとした。ただし、各栽培ユニット30における栽培環境を調整する構成については、別の方法が考えられる。
以下では、各栽培ユニット30における栽培環境を調整する他の実施形態(以下、第2実施形態)について図9及び10を参照しながら説明する。
【0080】
第2実施形態では、第1実施形態と同様、低温空間LSの空気を筐体31内に取り込む。詳しくは、低温用送風機41(第1送風機に相当)を作動させて、筐体31のY方向一端側の側壁に形成された貫通孔39を通じて、低温空間LSから筐体31の内部に送風する。その一方で、第2実施形態では、筐体31内の空気を、高温空間HSに排出する代わりに、連続通路IL、すなわち光源由来の熱によって温められた空気が流れる空間へ排出する。つまり、第2実施形態では、低温空間LSを第1空間として利用し、低温空間LSより温度が高い空気が流れる連続通路ILを第2空間として利用する。
【0081】
詳しくは、第2実施形態では、図10に示すように、筐体31の天井壁に孔(以下、天井孔44)が形成されており、天井孔44の直下位置には循環用送風機43が配置されている。第2実施形態において、循環用送風機43は、筐体31の内部と連続通路ILとを流れる風を発生させる。このような構成において循環用送風機43(第2送風機に相当)が作動すると、循環用送風機43が筐体31の内部から連続通路ILに送風し、これにより、筐体31内の空気を連続通路ILに排出することができる。この結果、第1実施形態と同様、各栽培ユニット30における栽培環境、詳しくは、各筐体31内の温度及び湿度等を適切に且つ良好に調整することができる。
【0082】
また、上述の実施形態では、低温空間LSの空気を筐体31内に取り込み、筐体31内の空気を高温空間HS又は連続通路ILに排出することとしたが、これに限定されるものではない。低温用送風機41が、筐体31の内部から低温空間LSへ送風してもよく、高温用送風機42が、高温空間HSから筐体31の内部へ送風してもよい。また、第2実施形態において、循環用送風機43が、連続通路ILから筐体31の内部へ送風してもよい。
上記の構成であれば、例えば、筐体31内を加温する目的で、高温空間HS又は連続通路ILの空気を筐体31内に取り込むことができる。この場合、高温用送風機42又は循環用送風機43を、上述の実施形態における回転方向とは逆方向に回転さればよい。
【0083】
また、上述の実施形態では、栽培ユニット30間に形成された隙間(すなわち、前後の隙間Ga及び上下の隙間Gb)を通過する気流に対する抵抗を高める構造として、隙間の端部に屈曲部を設けることとした。ただし、これに限定されるものではなく、例えば、上記の隙間を封止する構造を用いてもよい。具体的には、図11に示すように、隙間の開口付近にて筐体31の側壁にゴム等の密着部材61を取り付けて隙間(図11では、前後の隙間Ga)を塞いでもよい。あるいは、図12に示すように、隙間の開口付近にて筐体31の側壁にブラシ等の起毛部材62を取り付けて、隙間(図12では、前後の隙間Ga)と低温空間LS又は高温空間HSとの間の空気の流れを遮ってもよい。
【0084】
また、上記の実施形態では、各栽培ユニット30に複数の送風機が備えられ、具体的には、第1送風機としての低温用送風機41と、第2送風機としていの高温用送風機42又は循環送風機43とが備えられることとした。ただし、これに限定されず、図13A及び13Bに示すように、各栽培ユニット30には単一の送風機(以下、変形例の送風機45)が備えられてもよい。変形例の送風機45は、正逆両方向に回転可能な送風機であり、正回転時には、低温空間LSから筐体31の内部へ送風し、且つ、筐体31内から高温空間HS又は連続通路IL(図13Aでは高温空間HS)へ送風する。他方、変形例の送風機45は、逆回転時には、高温空間HS又は連続通路IL(図13Bでは高温空間HS)から筐体31の内部へ送風し、且つ、筐体31の内部から低温空間LSへ送風する。なお、変形例に係る送風機45は、栽培ユニット30毎に設けられ、それぞれの回転方向は、制御装置50によって制御される。
【0085】
また、上述の実施形態では、光源35が筐体31の天井壁の上面に設置されていることとした。ただし、これに限定されず、光源35が筐体31の内部に収容されてもよく、筐体31内で光を照射してもよい。
【0086】
また、上述の実施形態では、水平方向(X方向)及び上下方向(Z方向)に複数の栽培ユニット30を並べることで栽培ユニット集合体30Gを構成したが、これに限定されるものではない。水平方向(X方向)又は上下方向(Z方向)のいずれか一方において複数の栽培ユニット30を並べることで栽培ユニット集合体30Gを構成してもよい。
【0087】
また、上述の実施形態では、所定方向をZ方向とし、少なくともZ方向に複数の栽培ユニット30が並ぶ構成を前提としたが、これに限定されるものではない。所定方向をX方向とし、少なくともX方向に複数の栽培ユニット30が並ぶ構成(例えば、X方向においてのみ栽培ユニット30が並ぶ構成)に対しても、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0088】
10 ユニット収納庫
12 支柱
12G 支柱群
12P 支柱列
14 第1の延出部分
15 第2の延出部分
16 支持レール
30 栽培ユニット
30L 栽培ユニット列
30G 栽培ユニット集合体
31 筐体
32 被支持部
33 第1の凹部
34 第2の凹部
35 光源
36 支持プレート
37 撹拌機器
38 槽
39 貫通孔
41 低温用送風機
42 高温用送風機
43 循環用送風機
44 天井孔
45 変形例の送風機
50 制御装置
61 密着部材
100 栽培設備
B 培地
IL 連続通路
HS 高温空間
LS 低温空間
P 植物
【要約】
【課題】 所定方向に並んだ複数の栽培ユニットにおいて、栽培環境を栽培ユニット毎に調整可能な栽培設備を提供する。
【解決手段】 本発明の栽培設備は、所定方向に並んだ複数の栽培ユニットと、所定方向と交差する方向において複数の栽培ユニットの一端側に形成される第1空間と、所定方向と交差する方向において複数の栽培ユニットの他端側に形成され、第1空間よりも温度が高い空気が流れる第2空間と、を備え、複数の栽培ユニットの各々は、内部で植物が栽培される筐体と、第1空間及び筐体の内部の一方から他方に送風する第1送風機と、第2空間及び筐体の内部の一方から他方に送風する第2送風機と、を備える。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B