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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】巻回装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20230519BHJP
   H01G 13/02 20060101ALI20230519BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20230519BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALN20230519BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALN20230519BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01G13/02 C
H01G13/02 M
H01G13/02 L
H01G13/02 301A
H01G13/00 361A
H01M10/0587
H01M10/0525
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022083702
(22)【出願日】2022-05-23
【審査請求日】2023-03-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】田邉 元一
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-141590(JP,A)
【文献】特開2017-84511(JP,A)
【文献】特開2014-41799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01G 13/02
H01G 13/00
H01M 10/0587
B65H 18/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な巻芯に対し、表面に活物質を有する帯状の電極シートと絶縁素材からなる帯状のセパレータシートとが供給されるとともに、前記巻芯が回転することにより前記電極シート及び前記セパレータシートを重ねつつ巻回する巻回装置であって、
前記巻芯の回転を制御する巻取制御手段と、
前記電極シートの先端部を先頭として、該電極シートを前記巻芯側に供給する電極シート供給手段と、
前記巻芯の外周面に設けられたマークと、
前記巻芯の周方向に沿った、前記マークに対する前記先端部の位置に係る情報を検出する先端部位置検出手段と、
前記先端部位置検出手段により検出された前記情報に基づき、前記電極シートの巻取前及び/又は巻取中に、前記巻芯の周方向に沿った前記電極シートの先端部の位置に関する良否を判定する判定手段とを備え、
前記先端部位置検出手段は、前記電極シート供給手段によって前記巻芯側へと前記電極シートが供給されてから該電極シートが1周分巻取られるまでの間に、前記情報の検出を行うように構成されており、
前記巻取制御手段は、前記判定手段によって不良と判定された場合、前記電極シートの巻取が完了する前に該電極シートの巻取が中止されるように、前記巻芯を制御可能に構成されていることを特徴とする巻回装置。
【請求項2】
前記マークは、前記巻芯の外周面に設けられた凹部の少なくとも底面に、前記電極シート及び前記巻芯の外周面の各色とは異なる色の彩色部が設けられてなることを特徴とする請求項1に記載の巻回装置。
【請求項3】
前記凹部は、前記巻芯の外周面のうち前記セパレータシートが巻き付けられる面から外れた位置に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の巻回装置。
【請求項4】
前記先端部位置検出手段は、前記情報として、前記電極シートによって前記マークが隠れた状態となっているか否かについての情報を検出するように構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の巻回装置。
【請求項5】
前記先端部位置検出手段は、前記彩色部の色を検知可能なカラーセンサを有しており、該カラーセンサによって前記彩色部の色が検知されるか否かに基づき、前記電極シートによって前記マークが隠れた状態となっているか否かについての情報を検出するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の巻回装置。
【請求項6】
前記先端部位置検出手段は、前記電極シート供給手段によって前記巻芯側へと前記電極シートが供給されてから前記巻芯の回転が開始されるまでの間に、前記情報の検出を行うように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の巻回装置。
【請求項7】
前記先端部位置検出手段は、前記巻芯の回転が開始されてから前記電極シートが1周分巻取られるまでの間に、前記情報の検出を行うように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の巻回装置。
【請求項8】
前記電極シートとして、表面に正極活物質を有する帯状の正電極シートと表面に負極活物質を有する帯状の負電極シートとが前記巻芯に供給されるとともに、該巻芯の回転に伴い該正電極シート及び該負電極シートが重ねられつつ巻回されるように構成されており、
前記マークとして、所定の正極用マークと所定の負極用マークとが別々に設けられており、
前記先端部位置検出手段は、前記巻芯の周方向に沿った前記正極用マークに対する前記正電極シートの先端部の位置に係る情報と、前記巻芯の周方向に沿った前記負極用マークに対する前記負電極シートの先端部の位置に係る情報とを検出し、
前記判定手段は、前記先端部位置検出手段により検出された前記情報に基づき、前記巻芯の周方向に沿った前記正電極シート及び前記負電極シートのそれぞれの先端部の位置に関する良否を判定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の巻回装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、二次電池等に内蔵される巻回素子を得るための巻回装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、リチウムイオン電池等の二次電池に用いられる巻回素子は、正極活物質が塗布された正電極シートと、負極活物質が塗布された負電極シートとが、絶縁素材からなるセパレータシートを介して重ね合わされた状態で巻回されることにより製造される。
【0003】
巻回素子を製造するための巻回装置としては、回転可能な巻芯と、該巻芯に対し電極シートを供給する供給機構とを備えたものが知られている。供給機構は、電極シートを挟持可能な把持部(チャック)を有しており、該把持部が電極シートを挟持した状態で巻芯側へと接近移動することにより、巻芯へと電極シートを供給する。
【0004】
ところで、巻芯への電極シートの供給時に把持部に対し電極シートが滑ったり、巻芯の回転開始時にセパレータシートに対し電極シートが滑ったりすることにより、巻芯の周方向に沿った電極シートの先端部の位置にずれが生じることがある。このような位置ずれが生じると、各電極シートやセパレータシートの互いの位置関係が不適切なものとなり、電池容量の低下や内部短絡が発生するおそれがある。すなわち、電極シートの先端部の位置ずれは、電池性能に大きな影響を及ぼすおそれがある。従って、このような位置ずれの生じた巻回素子が後工程に送られることを未然に防止する必要がある。
【0005】
ここで、従来、完成後の巻回素子において、各電極シートやセパレータシートの互いの位置関係が適切であるか否かを判定可能に構成された巻回装置が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。この巻回装置についてより詳しく説明すると、この巻回装置は、電極シートと接触し、巻芯側に送り出された各電極シートの長さ(送り量)を計測するエンコーダと、電極シートにおける活物質の塗布開始部を検知するセンサとを有している。そして、センサにより前記塗布開始部が検知されると、エンコーダによる送り量の計測が開始され、各電極シートが巻き付く程度に巻芯が回転した段階になると、エンコーダにより計測された各電極シートの送り量が比較される。つまり、正電極シートの送り量と負電極シートの送り量とが比較される。そして、この比較結果に基づき、完成後の巻回素子の良否が判定され、不良品と判定された巻回素子が後工程に送られないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-67262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1に記載の技術によれば、結果的に、電極シートの先端部における位置ずれの有無を検出することができるようにも考えられるが、この技術は、結局のところ、両電極シートの相対位置関係を検出するものに過ぎない。従って、この技術では、電極シートの先端部の絶対的な位置ずれを正確に検出することができず、位置ずれの生じた不良品の巻回素子を誤って良品と判定するおそれがある。例えば、両電極シートにおいて同程度の滑りが生じた場合、得られた巻回素子は実際には位置ずれの生じた不良品であるが、上記技術では、得られた巻回素子が誤って良品と判定されてしまう。そのため、上記技術では、不良品の巻回素子が後工程に送られて、結果的に、後工程における無駄な作業を発生させるおそれがある。
【0008】
また、上記技術では、エンコーダに対する電極シートの滑りが生じると、計測される送り量が実際の送り量と相違してしまうため、巻回素子の良否判定に係る精度が不十分となるおそれがある。
【0009】
さらに、上記技術では、最終的に得られる巻回素子が良品又は不良品のいずれであっても、巻芯による電極シート等の巻取は、該巻取が完了するまで続けられる。そのため、不良品の巻回素子の製造のために多くの材料(電極シート等)が無駄になり、生産コストの増大を招くおそれがある。さらに、不良品の巻回素子の製造に時間をかけることになるため、生産効率の低下を招く。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、巻芯の周方向に沿った電極シートの先端部の位置ずれをより正確に検出することができるとともに、生産コストの低減や生産効率の向上などを図ることができる巻回装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0012】
手段1.回転可能な巻芯に対し、表面に活物質を有する帯状の電極シートと絶縁素材からなる帯状のセパレータシートとが供給されるとともに、前記巻芯が回転することにより前記電極シート及び前記セパレータシートを重ねつつ巻回する巻回装置であって、
前記巻芯の回転を制御する巻取制御手段と、
前記電極シートの先端部を先頭として、該電極シートを前記巻芯側に供給する電極シート供給手段と、
前記巻芯の外周面に設けられたマークと、
前記巻芯の周方向に沿った、前記マークに対する前記先端部の位置に係る情報を検出する先端部位置検出手段と、
前記先端部位置検出手段により検出された前記情報に基づき、前記電極シートの巻取前及び/又は巻取中に、前記巻芯の周方向に沿った前記電極シートの先端部の位置に関する良否を判定する判定手段とを備え、
前記先端部位置検出手段は、前記電極シート供給手段によって前記巻芯側へと前記電極シートが供給されてから該電極シートが1周分巻取られるまでの間に、前記情報の検出を行うように構成されており、
前記巻取制御手段は、前記判定手段によって不良と判定された場合、前記電極シートの巻取が完了する前に該電極シートの巻取が中止されるように、前記巻芯を制御可能に構成されていることを特徴とする巻回装置。
【0013】
上記手段1によれば、先端部位置検出手段によって、巻芯に設けられたマークに対する電極シートの先端部の位置に係る情報が検出され、判定手段によって、前記情報に基づき、電極シートの先端部の位置に関する良否が判定される。このようにマークを用いて電極シートの先端部の位置を直接的に検出するため、電極シートの先端部の位置ずれをより正確に検出することができ、ひいては良否判定の精度を高めることができる。例えば両電極シートにおいて同程度の滑りが生じた場合、マークに対する両電極シートの先端部の位置がそれぞれ不適切となるため、不良と判定することができる。
【0014】
また、電極シートの先端部の位置ずれが生じた不良品の巻回素子が後工程に送られることをより確実に防止できる。従って、後工程における無駄な作業の発生を効果的に抑制することができる。
【0015】
さらに、上記手段1によれば、先端部位置検出手段によって、巻芯側へと電極シートが供給されてから該電極シートが1周分巻取られるまでの間に前記情報の検出が行われ、判定手段によって、電極シートの巻取前及び/又は巻取中に、検出された前記情報に基づき良否判定が行われる。そして、不良判定された場合には、巻取制御手段によって、電極シートの巻取が完了する前に該電極シートの巻取が中止される。従って、材料(電極シート等)の無駄を極力減らすことができ、生産コストの低減を図ることができる。また、電極シートの先端部の位置ずれが生じているにも関わらず、電極シート等の巻取が続けられることをより確実に防止でき、次の巻回素子の製造に速やかに移ることができる。そのため、生産効率の向上を図ることができる。
【0016】
手段2.前記マークは、前記巻芯の外周面に設けられた凹部の少なくとも底面に、前記電極シート及び前記巻芯の外周面の各色とは異なる色の彩色部が設けられてなることを特徴とする手段1に記載の巻回装置。
【0017】
上記手段2によれば、彩色部は、電極シートや巻芯の外周面の各色とは異なる色であるため、マークに対する電極シートの先端部の位置に係る情報をより精度よく検出することができる。その結果、良否判定を一層正確に行うことができる。
【0018】
また、彩色部は凹部の底面にあるから、彩色部に対しセパレータシート等が接触しにくくなる。そのため、巻回素子の製造を繰り返し行うことに伴い、彩色部が剥げたり欠けたりすることをより確実に防止でき、長期間に亘って前記情報を精度よく検出することができる。さらに、マークに関するメンテナンスや部品交換の頻度を低減させることができるため、生産コストの低減や生産効率の向上をより効果的に図ることができる。
【0019】
尚、前記情報の検出精度をより高めるという点では、彩色部の色は、色相環における電極シート(特に前記情報の検出に用いられる部位)の色の反対色又は該反対色に近い色とすることが好ましい。
【0020】
手段3.前記凹部は、前記巻芯の外周面のうち前記セパレータシートが巻き付けられる面から外れた位置に設けられていることを特徴とする手段2に記載の巻回装置。
【0021】
上記手段3によれば、凹部は、巻芯の外周面のうちセパレータシートが巻き付けられる面には設けられないようになっている。従って、凹部に巻回素子の内周部分が入り込むことを防止できる。これにより、巻芯から巻回素子をより容易に取外すことができる。また、巻芯から巻回素子を取外す際などに、凹部に起因する傷が巻回素子につくことをより確実に防止でき、巻回素子の品質向上を図ることができる。
【0022】
手段4.前記先端部位置検出手段は、前記情報として、前記電極シートによって前記マークが隠れた状態となっているか否かについての情報を検出するように構成されていることを特徴とする手段2又は3に記載の巻回装置。
【0023】
上記手段4によれば、マークに対する電極シートの先端部の位置に係る情報として、マーク及び先端部間の距離などではなく、電極シートによってマークが隠れた状態となっているか否かについての情報が検出される。従って、情報の検出をより簡易に行うことができるとともに、良否判定に係る正確性をより高めることができる。
【0024】
手段5.前記先端部位置検出手段は、前記彩色部の色を検知可能なカラーセンサを有しており、該カラーセンサによって前記彩色部の色が検知されるか否かに基づき、前記電極シートによって前記マークが隠れた状態となっているか否かについての情報を検出するように構成されていることを特徴とする手段4に記載の巻回装置。
【0025】
上記手段5によれば、カラーセンサによって彩色部の色が検知されるか否かに基づき、電極シートによってマークが隠れた状態となっているか否かについての情報が検出される。従って、先端部位置検出手段をより低コストで実現することができ、ひいては巻回装置の製造やメンテナンス等に係るコストの低減を図ることができる。
【0026】
手段6.前記先端部位置検出手段は、前記電極シート供給手段によって前記巻芯側へと前記電極シートが供給されてから前記巻芯の回転が開始されるまでの間に、前記情報の検出を行うように構成されていることを特徴とする手段1に記載の巻回装置。
【0027】
上記手段6によれば、巻芯の回転が開始される前に、前記情報の検出が行われる。従って、電極シート等を巻回する工程のごく初期段階で、前記位置ずれに関する良否判定を行うことができる。これにより、材料(電極シート等)の無駄をより減らすことができ、生産コストの低減を一層図ることができる。また、電極シートの先端部の位置ずれが生じた場合には、次の巻回素子の製造により速やかに移ることができ、生産効率の更なる向上を図ることができる。
【0028】
また、上記手段6によれば、巻芯への電極シートの供給時における電極シート供給手段に対する電極シートの滑りに起因した前記位置ずれを検出することができる。従って、不良判定となった場合に、前記位置ずれの原因を特定しやすくなり、ひいては不良品の発生に対する対応(点検など)に要する手間や時間を低減させることができる。
【0029】
手段7.前記先端部位置検出手段は、前記巻芯の回転が開始されてから前記電極シートが1周分巻取られるまでの間に、前記情報の検出を行うように構成されていることを特徴とする手段1に記載の巻回装置。
【0030】
上記手段7によれば、巻芯への電極シートの供給時における電極シート供給手段に対する電極シートの滑りに起因する前記位置ずれのみならず、巻芯の回転開始時におけるセパレータシートに対する電極シートの滑りに起因した前記位置ずれをも検出することができる。従って、前記位置ずれに関する良否判定の精度をより高めることができる。
【0031】
また、上記手段6及び7の双方を採用することで、前記位置ずれの原因特定をより容易に行うことができる。すなわち、巻芯の回転が開始されるまでの間に検出した前記情報に基づき不良と判定された場合には、前記位置ずれの原因が、巻芯への電極シートの供給時における電極シート供給手段に対する電極シートの滑りであると特定することができる。また、巻芯の回転が開始されるまでの間に検出した前記情報に基づき良と判定された一方で、巻芯の回転が開始されてから電極シートが1周分巻取られるまでの間に検出した前記情報に基づき不良と判定された場合には、前記位置ずれの原因が、巻芯の回転開始時におけるセパレータシートに対する電極シートの滑りであると特定することができる。そして、原因特定が容易になることで、不良品の発生に対する対応(点検など)に要する手間や時間をより低減させることができる。
【0032】
手段8.前記電極シートとして、表面に正極活物質を有する帯状の正電極シートと表面に負極活物質を有する帯状の負電極シートとが前記巻芯に供給されるとともに、該巻芯の回転に伴い該正電極シート及び該負電極シートが重ねられつつ巻回されるように構成されており、
前記マークとして、所定の正極用マークと所定の負極用マークとが別々に設けられており、
前記先端部位置検出手段は、前記巻芯の周方向に沿った前記正極用マークに対する前記正電極シートの先端部の位置に係る情報と、前記巻芯の周方向に沿った前記負極用マークに対する前記負電極シートの先端部の位置に係る情報とを検出し、
前記判定手段は、前記先端部位置検出手段により検出された前記情報に基づき、前記巻芯の周方向に沿った前記正電極シート及び前記負電極シートのそれぞれの先端部の位置に関する良否を判定するように構成されていることを特徴とする手段1に記載の巻回装置。
【0033】
上記手段8によれば、電極シートごとに別々のマークを用いるため、各電極シートのそれぞれの先端部の位置に係る情報をより精度よく検出することができる。その結果、各電極シートの先端部の位置についての良否判定を一層正確に行うことができる。
【0034】
尚、上述した各手段に係る技術事項を適宜組み合わせてもよい。例えば、上記手段2に係る技術事項に対し上記手段6に係る技術事項を組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】電池素子の概略構成を示す斜視模式図である。
図2】正電極シートの概略構成を示す平面模式図である。
図3】負電極シートの概略構成を示す平面模式図である。
図4】巻回装置の概略構成図である。
図5】巻芯などを示す斜視模式図である。
図6】巻回工程のフローチャートである。
図7】巻芯側に電極シートを供給する際における巻回部などの概略構成図である。
図8】第一正極用センサにより、正極用マークに対する正電極シートの先端部の位置に係る情報を検出する際について説明するための説明図である。
図9】第一負極用センサにより、負極用マークに対する負電極シートの先端部の位置に係る情報を検出する際について説明するための説明図である。
図10】第二正極用センサにより、正極用マークに対する正電極シートの先端部の位置に係る情報を検出する際について説明するための説明図である。
図11】第二負極用センサにより、負極用マークに対する負電極シートの先端部の位置に係る情報を検出する際について説明するための説明図である。
図12】電極シートを切断する際における巻回部などの概略構成図である。
図13】マークに対し正常な位置関係で配置された電極シートの一例を示す斜視模式図である。
図14】マークに対し異常な位置関係で配置された電極シートの一例を示す斜視模式図である。
図15】別の実施形態におけるマークなどを示す斜視模式図である。
図16】別の実施形態におけるマークなどを示す斜視模式図である。
図17】別の実施形態において、成形タブを有する正電極シートの概略構成を示す平面模式図である。
図18】別の実施形態において、成形タブを有する負電極シートの概略構成を示す平面模式図である。
図19】別の実施形態において、溶接タブを有する正電極シートの概略構成を示す平面模式図である。
図20】別の実施形態において、溶接タブを有する負電極シートの概略構成を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、巻回装置によって得られる「巻回素子」としてのリチウムイオン電池素子の構成について説明する。
【0037】
図1に示すように、リチウムイオン電池素子1(以下、単に「電池素子1」という)は、2枚のセパレータシート2,3を介して、正電極シート4及び負電極シート5が重ね合わされた状態で巻回されることにより製造される。本実施形態では、正電極シート4及び負電極シート5がそれぞれ「電極シート」に相当する。尚、2枚のセパレータシート2,3に代えて、折返された1枚のセパレータシートを用いてもよい。また、以下においては、説明の便宜上、セパレータシート2,3及び電極シート4,5を「各種シート2~5」と称することがある。
【0038】
セパレータシート2,3は、それぞれ同一の幅を有する帯状をなしており、異なる電極シート4,5同士が互いに接触して短絡を起こしてしまうのを防止すべく、ポリプロピレン(PP)等の絶縁体により構成されている。
【0039】
電極シート4,5は、薄板状の金属シートからなり、セパレータシート2,3よりも幅広とされている。また、電極シート4,5の表裏両面には活物質が塗布されている。正電極シート4には例えばアルミニウム箔シートが用いられ、その表裏両面に正極活物質(例えば、マンガン酸リチウム粒子等)が塗布されている。負電極シート5には例えば銅箔シートが用いられ、その表裏両面に負極活物質(例えば、活性炭等)が塗布されている。そして、活物質を介して、正電極シート4及び負電極シート5間におけるイオン交換ができるようになっている。より詳しくは、充電時には、正電極シート4側から負電極シート5側へとイオンが移動し、放電時には、負電極シート5側から正電極シート4側へとイオンが移動する。
【0040】
加えて、本実施形態では、1つの電池素子1を構成する両電極シート4,5の長さはそれぞれ予め設定された一定の所定値とされている。本実施形態において、一素子分の負電極シート5の長さは、負電極シート5で正電極シート4をより確実に覆うべく、一素子分の正電極シート4の長さよりも若干大きなものとされている。
【0041】
また、図2及び図3に示すように、各電極シート4,5の表裏両面には、活物質が塗布された活物質塗布部4a,5a(散点模様を付した部位)と、活物質が塗布されていない活物質不塗布部4b,5bとが設けられている。正電極シート4の活物質不塗布部4bは、正電極シート4の幅方向一端側に設けられており、セパレータシート2,3の幅方向一端縁からはみ出している(図1参照)。一方、負電極シート5の活物質不塗布部5bは、負電極シート5の幅方向他端側に設けられており、セパレータシート2,3の幅方向他端縁からはみ出している(図1参照)。これら活物質不塗布部4b,5bは電極シート4,5の長手方向に沿って連続的に延びており、それぞれ電極タブとして機能する。
【0042】
リチウムイオン電池を得るに際しては、巻回された電池素子1が金属製で筒状をなす図示しない電池容器(ケース)内に配設されるとともに、正電極シート4の電極タブ(活物質不塗布部4b)及び負電極シート5の電極タブ(活物質不塗布部5b)がそれぞれまとめられる。そして、まとめられた正電極シート4の電極タブを正極端子部品(図示せず)に接続するとともに、同じくまとめられた負電極シート5電極タブを負極端子部品(図示せず)に接続し、両端子部品が前記電池容器の両端開口に塞ぐように設けられることで、リチウムイオン電池を得ることができる。
【0043】
次に、電池素子1を製造するための巻回装置10について説明する。図4に示すように、巻回装置10は、各種シート2~5を巻回するための巻回部11と、正電極シート4を巻回部11へ供給するための正電極シート供給機構31と、負電極シート5を巻回部11へ供給するための負電極シート供給機構41と、セパレータシート2,3をそれぞれ巻回部11へ供給するためのセパレータ供給機構51,61と、巻取制御装置91とを備えている。尚、巻回部11や各供給機構31,41,51,61など、巻回装置10内の各種機構は、巻取制御装置91により動作制御される構成となっている。本実施形態では、各電極シート供給機構31,41がそれぞれ「電極シート供給手段」を構成し、巻取制御装置91が「巻取制御手段」を構成する。
【0044】
正電極シート供給機構31は、正電極シート4がロール状に巻回されてなる正電極シート原反32を備えている。正電極シート原反32は、回転可能に支持されており、ここから適宜、正電極シート4が引き出されることとなる。
【0045】
さらに、正電極シート供給機構31は、シート挿入機構71、シート切断カッタ72及びテンション付与機構73を備えている。
【0046】
シート挿入機構71は、正電極シート4を巻回部11へ供給するものであり、正電極シート4の搬送経路に沿って、巻回部11に接近する接近位置と、巻回部11から離間する退避位置とに移動可能に構成されている。シート挿入機構71は、正電極シート4の搬送経路を挟む位置に配置され、正電極シート4を把持可能な2つの把持部71a,71bを備えている。把持部71a,71bは、図示しない駆動手段により開閉動作可能に構成されており、把持部71a,71bの開閉動作により正電極シート4の把持及び把持解除を切換可能である。そして、把持部71a,71bにより正電極シート4を把持した状態で、シート挿入機構71が前記退避位置から前記接近位置へと移動することで、正電極シート4の先端部を先頭として、該正電極シート4を巻回部11の後述する巻芯12側へと供給可能となっている。
【0047】
シート切断カッタ72は、正電極シート4を切断するためのものである。正電極シート4の切断は、シート挿入機構71により正電極シート4を把持した状態で行われる。また、シート切断カッタ72は、正電極シート4の搬送経路から離間可能であり、シート挿入機構71による正電極シート4の供給を阻害しないようになっている。
【0048】
テンション付与機構73は、正電極シート4に張力を付与するためのものであり、複数のローラ(例えばダンサローラ等)を備えている。本実施形態では、テンション付与機構73によって、正電極シート4に対し常に一定の張力が付与されるようになっている。
【0049】
負電極シート供給機構41は、その最上流側において、負電極シート5がロール状に巻回されてなる負電極シート原反42を備えている。負電極シート原反42は、回転可能に支持されており、ここから適宜、負電極シート5が引き出されることとなる。
【0050】
また、負電極シート原反42から巻回部11にかけての負電極シート5の搬送経路の途中には、正電極シート4の搬送経路と同様に、シート挿入機構71、シート切断カッタ72及びテンション付与機構73が設けられている。これらは、負電極シート5を対象として機能する点を除き、正電極シート4の搬送経路に設けられたものと同様である。
【0051】
一方、セパレータ供給機構51,61は、それぞれセパレータシート2,3がロール状に巻回されてなるセパレータ原反52,62を備えている。セパレータ原反52,62は、自由回転可能に支持されており、ここから適宜、セパレータシート2,3が引き出されることとなる。
【0052】
さらに、セパレータ供給機構51,61は、電極シート供給機構31,41と同様に、テンション付与機構73を備えている。これは、セパレータシート2,3を対象として機能する点を除き、正電極シート供給機構31に設けられたものと同様である。
【0053】
次に、巻回部11の構成について説明する。巻回部11は、自身の中心軸を回転軸として回転可能な巻芯12と、該巻芯12の外周面に圧接可能なタッチローラ13とを備えている。この他、図示は省略するが、巻回部11には、従来同様、セパレータシート2,3を切断するセパレータカッタや、固定テープ等を貼付しセパレータシート2,3の終端部の巻止めを行うテープ貼付機構、巻芯12から巻取完了した後の電池素子1などを取外すための取外機構などが設けられている。
【0054】
巻芯12は、それぞれ自身の外周側において各種シート2~5を巻取るためのものであり、図示しない駆動機構により自身の中心軸を回転軸として回転可能に構成されている。巻芯12の回転量は、図示しないエンコーダにより把握可能となっており、該エンコーダから回転量に関する情報が前記巻取制御装置91へと入力されるようになっている。
【0055】
巻芯12は、図5に示すように、第一芯片121及び第二芯片122を備えている。さらに、各芯片121,122間には、巻芯12の回転軸と直交する方向に延びるスリット123が形成されている。また、巻芯12におけるスリット123を形成する部位には、該スリット123に挿通されたセパレータシート2,3を挟持するためのチャック機構(不図示)が設けられている。
【0056】
尚、本実施形態において、巻芯12は、その外周面、つまり、各種シート2~5が巻回される部位が、自身の中心軸(回転軸)と直交する断面において円形状をなすように構成されているが、巻芯の13(14)の外周面形状については適宜変更してもよい。例えば、巻芯12の外周面は、断面楕円形状や断面長円形状などをなしていてもよい。
【0057】
さらに、巻芯12の外周面には、正極用マーク4x及び負極用マーク5xが設けられている。本実施形態では、正極用マーク4x及び負極用マーク5xがそれぞれ「マーク」に相当する。
【0058】
正極用マーク4xは、巻芯12の周方向に沿った正電極シート4の先端部の位置に係る情報を検出するための基準となるマークである。正極用マーク4xは、巻芯12の幅方向一端側に、つまり、巻芯12による各種シート2~5の巻回時に、セパレータシート2,3の幅方向一端縁からはみ出す活物質不塗布部4b(正電極シート4の電極タブ)が配置される側に対応して設けられている。正極用マーク4xは、巻芯12の外周面に設けられた凹部124の少なくとも底面に、正電極シート4及び巻芯12の外周面の各色とは異なる色の彩色部4yが設けられてなる。
【0059】
負極用マーク5xは、巻芯12の周方向に沿った負電極シート5の先端部の位置に係る情報を検出するための基準となるマークである。負極用マーク5xは、巻芯12の幅方向他端側、つまり、巻芯12による各種シート2~5の巻回時に、セパレータシート2,3の幅方向他端縁からはみ出す活物質不塗布部5b(負電極シート5の電極タブ)が配置される側に対応して設けられている。負極用マーク5xは、巻芯12の外周面に設けられた凹部125の少なくとも底面に、負電極シート5及び巻芯12の外周面の各色とは異なる色の彩色部5yが設けられてなる。
【0060】
尚、正極用マーク4xにおける彩色部4yの色は、色相環における正電極シート4(特に活物質不塗布部4b)の色の反対色又は該反対色に近い色とすることが好ましい。また、負極用マーク5xにおける彩色部5yの色は、色相環における負電極シート5(特に活物質不塗布部5b)の色の反対色又は該反対色に近い色とすることが好ましい。例えば、負電極シート5が銅箔により構成されている場合、負極用マーク5xにおける彩色部5yの色を、銅箔の色(赤に近い色)の反対色又は該反対色に近い色である緑や青とすることが好ましい。
【0061】
また、各マーク4x,5xは、巻芯12の周方向に沿って異なる位置に設けられている。これは、負電極シート5で正電極シート4をより確実に覆うべく、負電極シート5の先端部が正電極シート4の先端部よりも巻芯12の回転方向前方側に配置されることに対応するためである。
【0062】
さらに、各マーク4x,5x(各彩色部4y,5y)は、巻芯12の周方向に沿ってある程度の幅(例えば数mm以上の幅)を有している。また、凹部124,125の深さは比較的小さなもの(例えば1mm程度)とされている。尚、彩色部4y,5yは、例えば凹部124,125に塗料を流し込んだり、凹部124,125の前記底面にメッキ処理などの表面処理を施したりすることで設けられている。
【0063】
加えて、各凹部124,125(各マーク4x,5x)は、巻芯12の外周面のうちセパレータシート2,3が巻き付けられる面から外れた位置に設けられている。つまり、各凹部124,125(各マーク4x,5x)は、巻芯12に巻き付けられたセパレータシート2,3と重ならない位置に設けられている。従って、巻芯12による各種シート2~5の巻取が完了して電池素子1が得られたとき、得られた電池素子1のうちの各種シート2~5が密に巻かれた部分の内周部分は、凹部124,125に入り込まず、また、マーク4x,5xと接触しないようになっている。
【0064】
図4に戻り、タッチローラ13は、自由回転可能に構成されており、巻芯12に対し接触可能な接触位置と、巻芯12から離間した離間位置との間を移動可能に構成されている。そして、タッチローラ13が前記接触位置にある場合には、図示しない所定の付勢手段により、巻芯12の中心軸側へと該タッチローラ13が付勢されるようになっている。
【0065】
さらに、巻回部11は、巻芯12の周方向に沿った、正極用マーク4xに対する正電極シート4の先端部の位置に関する情報(以下、単に「正極位置情報」ということがある)を検出するための第一正極用センサ14a及び第二正極用センサ14bを備えている。また、巻回部11は、巻芯12の周方向に沿った、負極用マーク5xに対する負電極シート5の先端部の位置に関する情報(以下、単に「負極位置情報」ということがある)を検出するための第一負極用センサ15a及び第二負極用センサ15bを備えている。本実施形態では、各センサ14a,14b,15a,15bがそれぞれ「先端部位置検出手段」を構成する。
【0066】
各正極用センサ14a,14bは、正極用マーク4xが設けられる巻芯12の幅方向一端側の外周面と相対向するようにして設けられている。各正極用センサ14a,14bは、巻芯12の幅方向一端側に向けて白色光(赤色光、緑色光、青色光)を投光し、光の反射量から投光対象の色を検出するカラーセンサである。そして、各正極用センサ14a,14bは、正極用マーク4xの彩色部4yの色が検知されるか否かに基づき、正電極シート4によって正極用マーク4xが隠れた状態となっているか否かについて検出する。本実施形態では、正電極シート4によって正極用マーク4xが隠れた状態となっているか否かについての情報が、正極位置情報として用いられる。
【0067】
また、第一正極用センサ14aは、正電極シート供給機構31によって巻芯12に対し正電極シート4が供給された際に、該正電極シート4の先端部の配置予定位置と相対向する位置に設けられている。そして、第一正極用センサ14aは、正電極シート供給機構31によって巻芯12側へと正電極シート4が供給されてから該巻芯12の回転が開始されるまでの間に、正極位置情報の検出を行うようになっている。つまり、第一正極用センサ14aは、正電極シート4の先端部の初期配置位置についての情報を検出する。
【0068】
一方、第二正極用センサ14bは、第一正極用センサ14aに対し、巻芯12の周方向に沿って所定角度(例えば180°)以上ずれた位置に設けられている。そして、第二正極用センサ14bは、正電極シート4の供給後において巻芯12の回転が開始されてから該正電極シート4が1周分巻取られるまでの間に、正極位置情報の検出を行うようになっている。尚、本実施形態において、第二正極用センサ14bは、第一正極用センサ14aに対し、巻芯12の周方向に沿って180°以上ずれた位置に設けられている。そのため、第二正極用センサ14bによって、正電極シート4が半周分以上1周分未満だけ巻取られたときにおける正極位置情報の検出が行われる。
【0069】
各負極用センサ15a,15bは、負極用マーク5xが設けられる巻芯12の幅方向他端側の外周面と相対向するようにして設けられている。各負極用センサ15a,15bは、巻芯12の幅方向他端側に向けて白色光を投光し、光の反射量から投光対象の色を検出するカラーセンサである。そして、各負極用センサ15a,15bは、負極用マーク5xの彩色部5yの色が検知されるか否かに基づき、負電極シート5によって負極用マーク5xが隠れた状態となっているか否かについて検出する。本実施形態では、負電極シート5によって負極用マーク5xが隠れた状態となっているか否かについての情報が、負極位置情報として用いられる。
【0070】
また、第一負極用センサ15aは、負電極シート供給機構41によって巻芯12に対し負電極シート5が供給された際に、該負電極シート5の先端部の配置予定位置と相対向する位置に設けられている。そして、第一負極用センサ15aは、負電極シート供給機構41によって巻芯12側へと負電極シート5が供給されてから該巻芯12の回転が開始されるまでの間に、負極位置情報の検出を行うようになっている。つまり、第一負極用センサ15aは、負電極シート5の先端部の初期配置位置についての情報を検出するようになっている。
【0071】
一方、第二負極用センサ15bは、第一負極用センサ15aに対し、巻芯12の周方向に沿って所定角度(例えば180°)以上ずれた位置に設けられている。そして、第二負極用センサ15bは、負電極シート5の供給後において巻芯12の回転が開始されてから該負電極シート5が1周分巻取られるまでの間に、負極位置情報の検出を行うようになっている。尚、本実施形態において、第二負極用センサ15bは、第一負極用センサ15aに対し、巻芯12の周方向に沿って180°以上ずれた位置に設けられている。そのため、第二負極用センサ15bによって、負電極シート5が半周分以上1周分未満だけ巻取られたときにおける負極位置情報の検出が行われる。
【0072】
上記のように構成されたセンサ14a,14b,15a,15bによって、電極シート供給機構31,41により巻芯12側へと電極シート4,5が供給されてから該電極シート4,5が1周分巻取られるまでの間に、正極位置情報の検出が2回行われ、負極位置情報の検出が2回行われる。検出された正極位置情報及び負極位置情報は、巻取制御装置91へと送られる。
【0073】
尚、巻芯12側に対する電極シート4,5の供給時に、把持部71a,71bに対する電極シート4,5の過度の滑りが生じると、電極シート4,5の先端部の初期配置位置が電極シート4,5の搬送方向上流側(巻芯12の回転方向後方側)にずれることとなり、1回目に検出された正極位置情報及び負極位置情報は、異常を示すものとなる。また、巻芯12の回転開始に伴い、セパレータシート2,3に対する電極シート4,5の過度の滑りが生じると、電極シート4,5の先端部の位置が前記搬送方向上流側(前記回転方向後方側)にずれることとなり、2回目に検出された正極位置情報及び負極位置情報は、異常を示すものとなる。
【0074】
巻取制御装置91は、演算手段としてのCPUや、各種プログラムを記憶するROM、各種データを一時的に記憶するRAM、データを長期記憶するハードディスクなどを備えている。巻取制御装置91によって、巻芯12側に対する電極シート4,5の供給や、巻芯12の回転などが制御される。
【0075】
また、巻取制御装置91は、判定部92を備えている。本実施形態では、判定部92が「判定手段」を構成する。
【0076】
判定部92は、センサ14a,14b,15a,15bによって検出された正極位置情報及び負極位置情報に基づき、電極シート4,5の巻取前及び巻取中に、巻芯12の周方向に沿った電極シート4,5の先端部の位置に関する良否を判定する。
【0077】
より詳しくは、判定部92は、第一正極用センサ14aによって検出された正極位置情報に基づき、正電極シート4の巻取前に、正電極シート4の先端部の位置に関する良否を判定する。また、判定部92は、第二正極用センサ14bによって検出された正極位置情報に基づき、正電極シート4の巻取中に、正電極シート4の先端部の位置に関する良否を判定する。
【0078】
さらに、判定部92は、第一負極用センサ15aによって検出された負極位置情報に基づき、負電極シート5の巻取前に、負電極シート5の先端部の位置に関する良否を判定する。また、判定部92は、第二負極用センサ15bによって検出された負極位置情報に基づき、負電極シート5の巻取中に、負電極シート5の先端部の位置に関する良否を判定する。
【0079】
判定部92における良否判定は、電極シート4,5によって各マーク4x,5xが隠れた状態となっているか否か、つまり、センサ14a,14b,15a,15bによって彩色部4y,5yの色が検出されたか否かに基づき行われる。より詳しくは、判定部92は、センサ14a,14b,15a,15bによって彩色部4y,5yの色が検出されず、電極シート4,5でマーク4x,5xが覆われている場合には、電極シート4,5の先端部の位置が「良」であると判定する。一方、判定部92は、センサ14a,14b,15a,15bによって彩色部4y,5yの色が検出され、電極シート4,5でマーク4x,5xの少なくとも一部が覆われていない場合には、電極シート4,5の先端部の位置が「不良」であると判定する。判定部92による判定結果は、所定の記憶装置(不図示)に記憶される。
【0080】
また、巻取制御装置91は、判定部92により「不良」と判定された場合、電極シート4,5の巻取が完了する前に該電極シート4,5の巻取を中止するように、巻芯12の動作を制御する。すなわち、巻取制御装置91は、第一センサ14a,15aによって検出された正極位置情報又は負極位置情報に基づき、判定部92により「不良」と判定された場合、つまり、各種シート2~5の巻取前に判定部92により「不良」と判定された場合、通常行われる電極シート4,5の巻取が開始されないように巻芯12の動作を制御する。また、巻取制御装置91は、第二センサ14b,15bによって検出された正極位置情報又は負極位置情報に基づき、判定部92により「不良」と判定された場合、つまり、各種シート2~5の巻取中に判定部92により「不良」と判定された場合、巻芯12の回転が直ちに停止されるように巻芯12の動作を制御する。
【0081】
次いで、上記のように構成された巻回装置10による電池素子1の製造方法(各種シート2~5の巻回工程)について図6を参照して説明する。
【0082】
まず、ステップS11において、図示しないセパレータ保持手段により保持されているセパレータシート2,3の先端部が新たに巻芯12のスリット123間に案内される。次いで、前記チャック機構によって、スリット123に配置されたセパレータシート2,3が挟持される。
【0083】
その上で、ステップS12において、巻芯12を所定数だけ回転させることで、該巻芯12にセパレータシート2,3を所定量だけ巻き取った状態とする。その後、巻芯12の回転が一時的に停止される。
【0084】
次いで、ステップS13にて、シート挿入機構71によって、巻芯12側に電極シート4,5を順次供給する(図7参照)。供給された電極シート4,5は、セパレータシート2,3間に差し込まれる。本実施形態では、負電極シート5で正電極シート4(特に活物質塗布部4a)を確実に覆うべく、負電極シート5の先端部が正電極シート4の先端部よりも若干だけ電極シート4,5の搬送方向下流側(巻芯12の回転方向前方側)に配置されるように、電極シート4,5が供給される。電極シート4,5の供給後、タッチローラ13が巻芯12側へと接近移動することで、該タッチローラ13によって各種シート2~5が押さえられる。
【0085】
次に、ステップS14において、第一検出処理が行われる。第一検出処理は、巻芯12側へと電極シート4,5が供給されてから巻芯12の回転が開始されるまでの間において、正極位置情報及び負極位置情報を検出するための工程である。つまり、第一検出処理は、巻芯12に対し電極シート4,5を供給した時点における、電極シート4,5の各先端部の位置に係る情報を検出するための工程である。
【0086】
第一検出工程では、第一正極用センサ14aにより、正極位置情報として、正電極シート4によって正極用マーク4xが隠れた状態となっているか否かについての情報が検出される(図8参照)。また、第一負極用センサ15aにより、負極位置情報として、負電極シート5によって負極用マーク5xが隠れた状態となっているか否かについての情報が検出される(図9参照)。尚、図8等では、セパレータシート2,3の図示を省略している。また、図8等では、電極シート4,5を実際よりも厚い状態で示している。
【0087】
続くステップS15では、判定部92によって、ステップS14にて検出された正極位置情報及び負極位置情報に基づき、電極シート4,5のそれぞれの先端部の位置に関する良否判定が行われる。ここで、第一正極用センサ14aによって彩色部4yの色が検出されておらず、正電極シート4で正極用マーク4xが覆われている状態(図13に示す状態)である場合、判定部92によって、正電極シート4の先端部の位置が「良」であると判定される。また、第一負極用センサ15aによって彩色部5yの色が検出されておらず、負電極シート5で負極用マーク5xが覆われている状態(図13に示す状態)である場合、判定部92によって、負電極シート5の先端部の位置が「良」であると判定される。
【0088】
一方、第一正極用センサ14aによって彩色部4yの色が検出されており、正極用マーク4xの少なくとも一部が覆われていない状態(図14に示す状態)である場合、判定部92によって、正電極シート4の先端部の位置が「不良」であると判定される。また、負電極シート5で負極用マーク5xの少なくとも一部が覆われていない状態(図14に示す状態)である場合、判定部92によって、負電極シート5の先端部の位置が「不良」であると判定される。判定結果は、前記記憶装置に記憶される。
【0089】
そして、電極シート4,5の各先端部の位置がそれぞれ「良」と判定された場合には、ステップS16に移行する。一方、電極シート4,5の各先端部のうちの少なくとも一方の位置が「不良」と判定された場合には、後述するステップS19に移行する。
【0090】
ステップS16では、巻芯12の回転を開始させることで、各種シート2~5の巻取を開始する。巻取開始後、巻芯12が半周程度回転すると、タッチローラ13が各種シート2~5から離間する。
【0091】
次いで、ステップS17において、第二検出処理が行われる。第二検出処理は、巻芯12の回転が開始されてから電極シート4,5が1周分巻取られるまでの間において、正極位置情報及び負極位置情報を検出するための工程である。つまり、第二検出処理は、各種シート2~5の巻取開始直後における、電極シート4,5の各先端部の位置に係る情報を検出するための工程である。本実施形態では、電極シート4,5が半周分以上1周分未満だけ巻取られたときにおける、正極位置情報及び負極位置情報が検出される。
【0092】
第二検出工程では、第二正極用センサ14bによって、正極位置情報として、正電極シート4によって正極用マーク4xが隠れた状態となっているか否かについての情報が検出される(図10参照)。また、第二負極用センサ15bによって、負極位置情報として、負電極シート5によって負極用マーク5xが隠れた状態となっているか否かについての情報が検出される(図11参照)。
【0093】
次いで、ステップS18において、判定部92によって、ステップS17にて検出された正極位置情報及び負極位置情報に基づき、電極シート4,5のそれぞれの先端部の位置に関する良否判定が行われる。この判定手法は、ステップS15における判定手法と同一であるため、説明を省略する。判定結果は、前記記憶装置に記憶される。尚、記憶装置に記憶された判定結果に基づき、管理者(オペレータ等)は不良の発生状況を把握することができる。
【0094】
そして、電極シート4,5の各先端部の位置がそれぞれ「良」と判定された場合には、ステップS20に移行する。一方、電極シート4,5の各先端部のうちの少なくとも一方の位置が「不良」と判定された場合には、ステップS19に移行する。
【0095】
ステップS19では、不良時電極シート切断処理が行われる。すなわち、ステップS15にて「不良」と判定された場合、つまり、各種シート2~5の巻取開始前に「不良」と判定された場合には、巻芯12の回転が開始されることなく、巻芯12が停止状態で維持される。一方、ステップS19にて「不良」と判定された場合、すなわち、各種シート2~5の巻取開始後に「不良」と判定された場合には、巻芯12の回転が直ちに停止される。このように本実施形態では、ステップS15又はステップS18にて「不良」と判定された場合、電極シート4,5の巻取が完了する前に該電極シート4,5の巻取が中止される。
【0096】
その後、巻芯12が停止した状態において、把持部71a,71bにより電極シート4,5が把持された上で、シート切断カッタ72によって電極シート4,5が切断される(図12参照)。電極シート4,5の切断後には、ステップS22に移行する。尚、不良時電極シート切断処理では、タッチローラ13によって各種シート2~5を押さえた上で、電極シート4,5の切断が行われる。
【0097】
一方、ステップS15及びステップS18にて「良」と判定された場合、ステップS20において、電極シート4,5が所定長さ(1素子分の長さ)巻回されたか否かが繰り返し判定される。そして、電極シート4,5が所定長さ巻回された場合(ステップS20:Yes)、ステップS21にて通常時電極シート切断処理が行われる。すなわち、巻芯12の回転が一時停止された上で、把持部71a,71bにより電極シート4,5が把持される。その後、シート切断カッタ72によって電極シート4,5が切断される。
【0098】
ステップS19又はステップS21に続くステップS22では、巻芯12の回転を再開させることにより、電極シート4,5の終端部分(巻き残し部分)が巻き取られる。
【0099】
その後、ステップS23において、セパレータシート2,3の終端部分が巻き取られる。すなわち、まず、セパレータシート2,3を前記セパレータ保持手段により保持した状態で、前記セパレータカッタによって該セパレータシート2,3が切断される。そして、タッチローラ13により各種シート2~5を押えた状態で、巻芯12を回転させることにより、セパレータシート2,3の終端部分がばらけることなく完全に巻取られる。
【0100】
続くステップS24では、巻終わり処理が行われる。巻終わり処理では、図示しない保持テープによりセパレータシート2,3の終端部分が巻止めされる。これにより、ステップS15及びステップS18にて「良」と判定されている場合には、一素子分の各種シート2~5が巻取られてなる電池素子1が完成する。一方、ステップS15又はステップS18にて「不良」と判定されている場合には、不良素子が得られる。不良素子を構成する各種シート2~5の長さは、正常な電池素子1を構成する各種シート2~5の長さよりも著しく小さなものとなる。
【0101】
その後、ステップS25にて、前記取外装置によって、電池素子1又は前記不良素子が巻芯12から取り外される。電池素子1は、後工程に送られる。一方、前記不良素子は、後工程に送られることなく、廃棄される。
【0102】
以上詳述したように、本実施形態によれば、マーク4x,5xを用いて電極シート4,5の先端部の位置を直接的に検出するため、電極シート4,5の先端部の位置ずれをより正確に検出することができ、ひいては良否判定の精度を高めることができる。
【0103】
また、電極シート4,5の先端部の位置ずれが生じた不良品の巻回素子(前記不良素子)が後工程に送られることをより確実に防止できる。従って、後工程における無駄な作業の発生を効果的に抑制することができる。
【0104】
さらに、電極シート4,5の先端部の位置が「不良」と判定された場合には、巻取制御装置91によって、電極シート4,5の巻取が完了する前に該電極シート4,5の巻取が中止される。従って、材料(電極シート4,5等)の無駄を極力減らすことができ、生産コストの低減を図ることができる。また、電極シート4,5の先端部の位置ずれが生じているにも関わらず、各種シート2~5の巻取が続けられることをより確実に防止でき、次の電池素子1の製造に速やかに移ることができる。そのため、生産効率の向上を図ることができる。
【0105】
加えて、別々の正極用マーク4x及び負極用マーク5xを用いるため、正極位置情報及び負極位置情報をより精度よく検出することができる。その結果、各電極シート4,5の先端部の位置についての良否判定を一層正確に行うことができる。
【0106】
また、正極位置情報及び負極位置情報として、マーク4x,5x及び電極シート4,5の先端部間の距離などではなく、電極シート4,5によってマーク4x,5xが隠れた状態となっているか否かについての情報が検出される。従って、情報の検出をより簡易に行うことができるとともに、良否判定に係る正確性をより高めることができる。
【0107】
特に本実施形態においては、カラーセンサからなるセンサ14a,14b,15a,15bによって彩色部4y,5yの色が検知されるか否かに基づき、電極シート4,5によってマーク4x,5xが隠れた状態となっているか否かについての情報が検出される。従って、マーク4x,5xに対する電極シート4,5の先端部の位置を検出するための装置(先端部位置検出手段)をより低コストで実現することができる。その結果、巻回装置10の製造やメンテナンス等に係るコストの低減を図ることができる。
【0108】
また、各種シート2~5を巻取るための巻芯12の回転が開始される前に、正極位置情報及び負極位置情報の検出が行われ、これら情報に基づき良否判定が行われる。従って、各種シート2~5の巻回工程のごく初期段階で、電極シート4,5の位置ずれに関する良否判定を行うことができる。これにより、材料の無駄をより減らすことができ、生産コストの低減を一層図ることができる。また、電極シート4,5の先端部の位置ずれが生じた場合には、次の電池素子1の製造により速やかに移ることができ、生産効率の更なる向上を図ることができる。
【0109】
加えて、巻芯12の回転が開始されてから電極シート4,5が1周分巻取られるまでの間に、正極位置情報及び負極位置情報の検出が行われ、これら情報に基づき良否判定が行われる。従って、巻芯12への電極シートの供給時における把持部71a,71bに対する電極シート4,5の滑りに起因する位置ずれのみならず、巻芯12の回転開始時におけるセパレータシート2,3に対する電極シート4,5の滑りに起因した位置ずれをも検出することができる。従って、位置ずれに関する良否判定の精度をより高めることができる。
【0110】
さらに、本実施形態では、巻芯12の回転が開始されるまでの間に検出した正極位置情報等に基づき「不良」と判定された場合には、位置ずれの原因が、巻芯12への電極シート4,5の供給時における把持部71a,71bに対する電極シート4,5の滑りであると特定することができる。また、巻芯12の回転が開始されるまでの間に検出した正極位置情報等に基づき「良」と判定された一方で、巻芯12の回転が開始されてから電極シート4,5が1周分巻取られるまでの間に検出した正極位置情報等に基づき「不良」と判定された場合には、位置ずれの原因が、巻芯12の回転開始時におけるセパレータシート2,3に対する電極シート4,5の滑りであると特定することができる。そして、原因特定が容易になることで、不良品(前記不良素子)の発生に対する対応(例えば、巻回装置10の点検など)に要する手間や時間を効果的に低減させることができる。
【0111】
また、マーク4x,5xを構成する彩色部4y,5yは、電極シート4,5や巻芯12の外周面の各色とは異なる色であるため、正極位置情報及び負極位置情報をより精度よく検出することができる。その結果、良否判定を一層正確に行うことができる。
【0112】
さらに、彩色部4y,5yは凹部124,125の底面にあるから、彩色部4y,5yに対しセパレータシート2,3等が接触しにくくなる。そのため、電池素子1の製造を繰り返し行うことに伴い、彩色部4y,5yが剥げたり欠けたりすることをより確実に防止でき、長期間に亘って正極位置情報及び負極位置情報を精度よく検出することができる。さらに、マーク4x,5xに関するメンテナンスや部品交換の頻度を低減させることができるため、生産コストの低減や生産効率の向上をより効果的に図ることができる。
【0113】
加えて、凹部124,125は、巻芯12の外周面のうちセパレータシート2,3が巻き付けられる面には設けられないようになっている。従って、凹部124,125に電池素子1の内周部分が入り込むことを防止できる。これにより、巻芯12から電池素子1をより容易に取外すことができる。また、巻芯12から電池素子1を取外す際などに、凹部124,125に起因する傷が電池素子1につくことをより確実に防止でき、電池素子1の品質向上を図ることができる。
【0114】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0115】
(a)上記実施形態における電極シート供給機構31,41は、巻芯12に供給される電極シート4,5の先端部が該電極シート4,5の搬送方向に沿った上流側(巻芯12の回転方向後方側)にずれることはあるが、該搬送方向に沿った下流側(該回転方向前方側)にずれることは基本的には生じないものである。そのため、正極位置情報や負極位置情報を検出するにあたっては、正極用マーク4x及び負極用マーク5xをそれぞれ1つずつ設ければ足りる。
【0116】
これに対し、巻芯12に供給される電極シート4,5の先端部が前記搬送方向に沿った上流側のみならず前記搬送方向に沿った下流側にもずれ得るような構成の電極シート供給機構31,41を備える場合には、正極用マーク4x及び負極用マーク5xをそれぞれ2つずつ設けてもよい。例えば、図15に示すように、巻芯12の外周面に、一対の正極用マーク4x1,4x2と、一対の負極用マーク5x1,5x2とを設けてもよい。この場合、一対のマーク4x1,4x2(5x1,5x2)のうちの一方のみが電極シート4(5)で隠れた状態となっていれば、電極シート4(5)の先端部の位置が「良」と判定され、一対のマーク4x1,4x2(5x1,5x2)が電極シート4(5)で隠れた状態又は一対のマーク4x1,4x2(5x1,5x2)が露出した状態となっていれば、電極シート4(5)の先端部の位置が「不良」と判定されるように構成してもよい。このように構成した場合には、電極シート4,5の先端部における上流側への位置ずれのみならず、下流側への位置ずれをも検出することが可能となる。尚、検出精度をより高めるという点では、正極用マーク4x1,4x2における各彩色部の色をそれぞれ異なるものとし、負極用マーク5x1,5x2における各彩色部の色をそれぞれ異なるものとすることが好ましい。
【0117】
(b)マークは、電極シート4,5の先端部の位置に係る情報を検出するための基準となるものであればよく、上記実施形態で挙げたものに限定されない。
【0118】
従って、例えば、図16に示すように、巻芯12の外周面に、巻芯12の回転軸方向に延びる溝126を設けるとともに、この溝126によって形成されたエッジによって、マーク45xを構成してもよい。また、スリット123や巻芯12の外周面に設けられた刻印などによってマークを構成してもよい。
【0119】
さらに、図16で示す例のように、マークを1つのみ設け、正極位置情報や負極位置情報を検出するにあたって、該マークを共通に用いる構成としてもよい。
【0120】
(c)上記実施形態では、正極位置情報や負極位置情報として、電極シート4,5によってマーク4x,5xが隠れた状態となっているか否かについての情報が検出されるように構成されている。これに対し、正極位置情報や負極位置情報として、マークから電極シート4,5の先端部までの距離や、マークのうち電極シート4,5で覆われていない部分の面積などを検出するように構成してもよい。尚、この場合、先端部位置検出手段として、電極シート4,5の先端部を撮像するカメラと、カメラにより得られた画像データに基づき前記距離や前記面積を算出する装置とを設けてもよい。
【0121】
また、前記距離や前記面積が所定の閾値を超えた場合などに、装置の点検が必要である旨の情報を外部に報知する報知手段を設けてもよい。
【0122】
(d)上記実施形態において、巻回部11は1つの巻芯12を備えたものであるが、複数の巻芯を備えたものであってもよい。
【0123】
(e)上記実施形態において、電極シート4,5のうちセパレータシート2,3の幅方向端縁からはみ出す部位である活物質不塗布部4b,5bは、電極シート4,5の長手方向に沿って連続的に延びるように構成されている。これに対し、電極シート4,5のうちセパレータシート2,3の幅方向端縁からはみ出す部位が、前記長手方向に沿って間隔をあけて設けられる構成としてもよい。
【0124】
例えば、図17,18に示すように、電極シート4,5の幅方向端縁部に、電極シート4,5が一部切除されてなる成形タブ4c,5cを前記長手方向に沿って間隔をあけて設け、これら成形タブ4c,5cがセパレータシート2,3の幅方向端縁からはみ出すように構成してもよい。
【0125】
また、図19,20に示すように、活物質塗布部4a,5aがそれぞれ間欠的に設けられるとともに、各活物質塗布部4a,5a間に固定された溶接タブ4d,5dを具備するように電極シート4,5を構成し、これら溶接タブ4d,5dがセパレータシート2,3の幅方向端縁からはみ出すように構成してもよい。溶接タブ4d,5dにおける溶接箇所には、保護テープ7が貼付される。
【0126】
尚、図17図20のように、電極シート4,5のうちセパレータシート2,3の幅方向端縁からはみ出す部位が、電極シート4,5の長手方向に沿って間隔をあけて設けられるように構成した場合には、該部位と電極シート4,5の先端部(被切断部)の位置とが常に一定の位置関係となるように、電極シート4,5の切断位置などが調節される。そして、マークに対する前記部位の位置に係る情報を検出することで、マークに対する電極シート4,5の先端部の位置に係る情報が検出される。例えば、成形タブ4c,5cによってマーク4x,5xが隠れた状態となっているか否かについての情報を検出することで、マーク4x,5xに対する電極シート4,5の先端部の位置に係る情報が検出される。
【0127】
尚、電極シート4,5は、上述した成形タブや溶接タブ以外のタブ(例えば加締めタブなど)を備えたものであってもよい。
【0128】
(f)上記実施形態において、センサ14a,14b,15a,15bは、巻芯12側へと電極シート4,5が供給されてから巻芯12の回転が開始されるまでの間、及び、巻芯12の回転が開始されてから電極シート4,5が1周分巻取られるまでの間に、正極位置情報などを検出するように構成されている。これに対し、巻芯12側へと電極シート4,5が供給されてから巻芯12の回転が開始されるまでの間にのみ正極位置情報などを検出するように構成してもよい。また、巻芯12の回転が開始されてから電極シート4,5が1周分巻取られるまでの間にのみ正極位置情報などを検出するように構成してもよい。尚、電極シート4,5の巻取開始後に電極シート4,5の先端部の位置ずれが生じることを考慮すると、巻芯12の回転が開始されてから電極シート4,5が1周分巻取られるまでの間に、正極位置情報などの検出を行うように構成することが好ましい。
【0129】
また、上記実施形態において、判定部92は、電極シート4,5の巻取前及び巻取中に良否判定を行うように構成されているが、判定部92による良否判定を、電極シート4,5の巻取前又は巻取中に行うようにしてもよい。
【0130】
(g)上記実施形態では、巻回装置10によって、リチウムイオン電池の電池素子1が製造されているが、巻回装置10によって製造される巻回素子はこれに限定されるものではなく、例えば、電解コンデンサの巻回素子等を製造することとしてもよい。
【0131】
(h)セパレータシート2,3や電極シート4,5の材質は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。勿論、電極シート4,5に塗布される活物質を変更してもよい。
【符号の説明】
【0132】
1…リチウムイオン電池素子(巻回素子)、2,3…セパレータシート、4…正電極シート、4x…正極用マーク(マーク)、4y,5y…彩色部、5…負電極シート、5x…負極用マーク(マーク)、10…巻回装置、12…巻芯、14a…第一正極用センサ(先端部位置検出手段)、14b…第二正極用センサ(先端部位置検出手段)、15a…第一負極用センサ(先端部位置検出手段)、15b…第二負極用センサ(先端部位置検出手段)、31…正電極シート供給機構(電極シート供給手段)、41…負電極シート供給機構(電極シート供給手段)、91…巻取制御装置(巻取制御手段)、92…判定部(判定手段)、124,125…凹部。
【要約】
【課題】電極シートの先端部の位置ずれをより正確に検出することができるとともに、生産コストの低減や生産効率の向上などを図ることができる巻回装置を提供する。
【解決手段】巻回装置10は、電極シート4,5を巻芯12側に供給する電極シート供給機構31,41と、巻芯12の外周面に設けられたマークと、該マークに対する電極シート4,5の先端部の位置に係る情報を検出するセンサ14a,14b,15a,15bと、検出された前記情報に基づき、前記先端部の位置に関する良否を判定する判定部92とを備える。センサ14a,14b,15a,15bは、巻芯12側へと電極シート4,5が供給されてから該電極シート4,5が1周分巻取られるまでの間に前記情報の検出を行う。判定部92によって不良と判定された場合、巻取制御装置91によって、電極シート4,5の巻取が完了する前に該電極シート4,5の巻取が中止される。
【選択図】 図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
図13
図14
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図16
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図18
図19
図20