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特許7282256ガスタービン・エンジン内の2つの部品を結合するための高温用フランジ接合体、排気ディフューザ及び方法
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  • 特許-ガスタービン・エンジン内の2つの部品を結合するための高温用フランジ接合体、排気ディフューザ及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】ガスタービン・エンジン内の2つの部品を結合するための高温用フランジ接合体、排気ディフューザ及び方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/24 20060101AFI20230519BHJP
   F01D 25/30 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
F01D25/24 D
F01D25/24 J
F01D25/30 B
F01D25/24 T
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022505633
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 US2020036226
(87)【国際公開番号】W WO2021021287
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】62/880,308
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ファラボウ,サード,ジョン ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】カーティン,ウィリアム ジェイ.
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02025882(EP,A1)
【文献】特開平06-010616(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0143810(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01795702(EP,A2)
【文献】特表2018-527523(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0202318(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0108009(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016006357(DE,A1)
【文献】欧州特許第00131556(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/24
F01D 25/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン・エンジン(1)中で第1の構成要素(32a)と第2の構成要素(32b)とを結合するための高温用フランジ接合体(30)であって、
前記第2の構成要素(32b)に形成された第2のフランジ(34b)と当接する前記第1の構成要素(32a)に形成された第1のフランジ(34a)と、
前記第1のフランジ(34a)と前記第2のフランジ(34a)との中で互いに整列された一対のボルト穴(38a、38b)をそれぞれ通るように形成された、複数の隣接して配置されたボルト接続部(40)と、を含み、前記ボルト接続部(40)は、それぞれ、
前記第1のフランジ(34a)を支持する第1のスペーサ・プレート(42a)と、前記第2のフランジ(34b)を支持する第2のスペーサ・プレート(42b)と、
前記第1のスペーサ・プレート(42a)と前記第2のスペーサ・プレート(42b)とをそれぞれ支持する第1のロック・ワッシャ(44a)と第2のロック・ワッシャ(44b)と、
前記第1及び第2のフランジ(34a、34b)、前記第1及び第2のスペーサ・プレート(42a、42b)、並びに前記第1及び第2のロック・ワッシャ(44a、44b)を通るように挿入されるボルト(46)と、を有し、
前記第1及び第2のスペーサ・プレート(42a、42b)は、それぞれ厚さ(t、t)を有し、大きさが定められていて、前記フランジ(34a、34b)のそれぞれと当接する支持面を向上させ、これによって、前記ガスタービン・エンジン(1)の動作中、ボルト予圧が維持されるようにし、
各前記スペーサ・プレート(42a、42b)は、第1の縁部(62)から第2の縁部(64)まで、各前記フランジ(34a、34b)に沿って長さ方向に延出し、前記第1の縁部(62)と前記第2の縁部(64)とは傾斜して、反対側で隣接する前記スペーサ・プレート(42a、42b)の前記傾斜した縁部(64、62)と当接するように構成されている、
高温用フランジ接合体(30)。
【請求項2】
前記フランジ(34a、34b)は、前記スペーサ・プレート(42a、42b)の材料と比較して、降伏強度がより低い材料を用いて形成される、請求項1に記載の高温用フランジ接合体(30)。
【請求項3】
前記フランジ(34a、34b)は、長さ方向に沿って波形状の輪郭を有し、前記波形状の輪郭は、第1の高さ(h)を有する第1の部分(52)と、第2の高さ(h)を有する第2の部分(54)とを区別して含み、前記第1の高さ(h)は前記第2の高さ(h)よりも高く、前記ボルト(46)は、前記波形状の輪郭の前記第1の部分(52)に配置される、請求項1又は2に記載の高温用フランジ接合体(30)。
【請求項4】
前記スペーサ・プレート(42a、42b)の支持面(56a、56b)が、前記スペーサ・プレート(42a、42b)の長さ(L)に沿って、前記フランジ(34a、34b)のそれぞれの支持面(58a、58b)を実質的に覆うように、各前記スペーサ・プレート(42a、42b)の大きさが定められる、請求項1から3のうちいずれか1項に記載の高温用フランジ接合体(30)。
【請求項5】
各前記スペーサ・プレート(42a、42b)は、複数の隣接するボルト(46)を貫通させて、又は単一のボルトを貫通させて、収容するように大きさが定められる、請求項1から4のうちいずれか1項に記載の高温用フランジ接合体(30)。
【請求項6】
各前記スペーサ・プレート(42a、42b)の前記第1の縁部(62)と前記第2の縁部(64)とは、反対方向に傾斜している、請求項1から5のうちいずれか1項に記載の高温用フランジ接合体(30)。
【請求項7】
各前記スペーサ・プレート(42a、42b)は、第1の縁部(62)から第2の縁部(64)まで、各前記フランジ(34a、34b)に沿って長さ方向に延出し、前記第1の縁部(62)は溝状の形状を画定するとともに前記第2の縁部(64)は舌状の形状を画定し、前記第1の縁部(62)と前記第2の縁部(64)とは、反対側で隣接する前記スペーサ・プレート(42a、42b)の前記舌状の形状と溝状の形状の縁部(64、62)と当接するように構成されている、請求項1から5のうちいずれか1項に記載の高温用フランジ接合体(30)。
【請求項8】
各前記スペーサ・プレート(42a、42b)には、各前記フランジ(34a、34b)の上面(60)と当接する複数の回転防止タブ(72、74)が設けられている、請求項1から7のうちいずれか1項に記載の高温用フランジ接合体(30)。
【請求項9】
前記第1の構成要素(12a、14a)と前記第2の構成要素(12b、14b)とは、軸方向に結合され、環状の排気流路の境界を画定し、前記第1のフランジと前記第2のフランジとは、環状の形状を有し、前記ボルト接続部(40)は、円周方向に沿って隣接して配置される、請求項1から8のうちいずれか1項に記載の高温用フランジ接合体(30)。
【請求項10】
前記第1の構成要素(22a)と前記第2の構成要素(22b)とは、接線方向に結合され、前記第1のフランジと前記第2のフランジとは、軸方向で、長さ方向に延出し、前記ボルト接続部(40)は、前記軸方向に沿って隣接して配置される、請求項1から8のうちいずれか1項に記載の高温用フランジ接合体(30)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ガスタービン・エンジンの分野に関し、特に、ガスタービン・エンジンのケースでの隣接する部品間の高温用フランジ接合体の接続に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン・エンジン内でのボルト締めによるフランジ接合体は、通常、非常に高い定常状態の温度と高い熱勾配とに曝されている。その接合体(継手又はジョイント)を整合した状態で保つためには、遷移状態の動作と定常状態の動作とを通じて、ボルトをクランプする(締め付ける)負荷を維持することが求められ得る。遷移状態の動作中、フランジは、ボルトよりも早く加熱されたり、冷却される傾向があるが、そのため、ボルトの予圧(予荷重)を増大させたり、減少させることがある。ボルトの予圧が増加すると、例えば、エンジン始動時に、フランジが塑性変形されることが起こり得る。また、定常温度が高いため、フランジ部にクリープが生じることが起こり得る。エンジン始動時と定常状態とからの塑性変形は、ボルトの全体的な予圧を減少させ得るが、エンジン停止後にボルト予圧が残存しなくなる程度まで予圧を減少させることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
要約すると、本開示内容の態様は、フランジの変形を最小限に抑えながら、高温の定常状態とエンジン動作時の遷移状態とでボルト予圧を維持することができるガスタービン・エンジン内の高温用フランジ接合体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様では、ガスタービン・エンジン内の第1の構成要素(部品)を第2の構成要素(部品)と結合するために、高温用フランジ接合体を提供する。フランジ接合体は、第1の構成要素に形成された第1のフランジと、これと当接する、第2の構成要素に形成された第2のフランジとを備える。さらに、フランジ接合体は、複数の、隣接して配置されたボルト接続部を含む。第1のフランジと第2のフランジとの互いに整列したボルト穴を通るように、各ボルト接続部が形成される。各ボルト接続部は、第1のフランジを支持する第1のスペーサ・プレート(スペーサ板)と、第2のフランジを支持する第2のスペーサ・プレートとを備える。さらに、各ボルト接続部は、第1のスペーサ・プレートと第2のスペーサ・プレートとをそれぞれ支持する第1のロック・ワッシャ(係止用座金)と第2のロック・ワッシャとを備える。さらに、各ボルト接続部は、第1及び第2のフランジ、第1及び第2のスペーサ・プレート、並びに第1及び第2のロック・ワッシャを通って挿入されるボルトを含む。ボルトは、第1のフランジと第2のフランジとをクランプするために予圧される(予荷重を有する)。各スペーサ・プレートは、厚さを有し、大きさが定められ、この結果、各フランジと当接する支持面(耐力面)を向上させる。このため、ガスタービン・エンジンの動作中、ボルト予圧を維持することを可能にする。
【0005】
第2の態様では、ガスタービン・エンジン内の第1の構成要素を第2の構成要素と結合するための方法を提供する。本方法には、複数の、隣接して配置されたボルト接続部を形成することが含まれる。各ボルト接続部は、第1構成要素の第1フランジと第2構成要素の第2フランジとでそれぞれ整列された一対のボルト穴を通るように形成される。各ボルト接続部を形成することは、第1のフランジを支持する第1のスペーサ・プレートを配置することと、第2のフランジを支持する第2のスペーサ・プレートを配置することとを含む。さらに、各ボルト接続部を形成することは、第1のスペーサ・プレートと第2のスペーサ・プレートとをそれぞれ支持する第1のロック・ワッシャと第2のロック・ワッシャとを配置することを含む。さらに、各ボルト接続部を形成することは、第1及び第2のフランジ、第1及び第2のスペーサ・プレート、並びに第1及び第2のロック・ワッシャを通るようにボルトを挿入することを含む。さらに、各ボルト接続部を形成することは、第1のフランジと第2のフランジとをクランプするためにボルトを予圧することを含む。各スペーサ・プレートは、厚さを有し、大きさが定められ、この結果、各フランジと当接する支持面を向上させる。このため、ガスタービン・エンジンの動作中、ボルト予圧を維持することを可能にする。
【0006】
以下、本発明について、図面を参照して、より詳細に説明する。図面には好適な構成が例示されているが、本発明の範囲を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、ガスタービン・エンジンの概略図である。
図2図2は、本開示内容の態様を適用可能なタービン排気ディフューザの一部の断面斜視図である。
図3図3は、高温用フランジ接合体の断面図である。
図4図4は、一実施形態に係る、回転防止特徴を備えたスペーサ・プレートと共に高温用フランジ接合体の斜視図である。
図5図5は、別の実施形態に係る、斜めの界面を含む回転防止特徴を備えたスペーサ・プレートを有する高温用フランジ接合体の端面図である。
図6図6は、さらに別の実施形態に係る、係合する界面を含む回転防止特徴を備えたスペーサ・プレートを有する高温用フランジ接合体の端面図である。
図7図7は、さらに別の実施形態に係る、回転防止タブを含むスペーサ・プレートを有する高温用フランジ接合体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の実施形態の詳細な説明では、添付の図面を参照する。図面は、本内容の一部を形成するが、限定的なものではなく、本発明に係る特定の実施形態を例示するに過ぎない。他の実施形態を用いることは可能であって、本発明の技術思想及び範囲から逸脱することなく、本発明に変更を加えることは可能なことを理解されたい。
【0009】
図1を参照すると、概して、圧縮部(コンプレッサ部)2と、燃焼部4と、タービン部8と、を含むガスタービン・エンジン1が例示されている。動作中、圧縮部2は、周囲空気3を受入れて、圧縮する。圧縮部2から出る圧縮空気は、燃焼部4内の1つ又は複数の燃焼器(コンバスタ)内に入る。圧縮空気は燃料5と混合されて、その燃料混合気は燃焼器内で燃焼されて、熱間(高熱下の)作動媒体流体6を生じさせる。その熱間作動媒体流体6はタービン部8に送られ、そこで静止タービン・ベーンと回転タービン・ブレード(タービン翼)とからなる交互列を通ることで膨張されて、動力を生じさせるために用いられるが、例えば、その動力はロータ7を駆動する。膨張した作動媒体流体9は、タービン・ブレードの最終列の下流側の場所で、タービン部8の排気ディフューザ10を介してエンジン1から排出される。
【0010】
本開示内容の態様は、ガスタービン・エンジン(タービン・エンジン)1内の様々な場所にて、高温用フランジ接合体(フランジ継手)を形成するために用いることができる。特に、本開示内容の実施形態は、排気ディフューザ10の内部に適用される。図2は、排気ディフューザ10の一部について例示している。図示した実施形態では、排気ディフューザ10は、軸(長手方向軸)11と、タービン・ブレードの最終段(図示せず)の下流側に配置される排気シリンダ12と、排気シリンダ12に対して下流側で、かつ軸方向(長手軸方向)に連結さる排気マニホールド14と、を備える。排気シリンダ12と排気マニホールド14とは、それぞれ、各環状の内径(ID:inner diameter)壁12a、14aと、各環状の外径(OD:outer diameter)壁12b、14bとを備える。ID壁12a、14aとOD壁12b、14bとは、それぞれ、環状タービン排気流路のID境界とOD境界とを形成する。排気シリンダ12の排気流路内には、円周方向に、複数の荷重支持用ストラット(支柱)16が配置されており、それらは、ID壁12aとOD壁12bとを通って延在している。また、排気マニホールド14の排気流路内に、円周方向に、複数の荷重支持用ストラット18が配置させて、ID壁14aとOD壁14bとを通って延在させてもよい。
【0011】
排気シリンダ12と排気マニホールド14とは、1つ又は複数の環状のフランジ接合体によって連結することができる。例えば、第1の環状のフランジ接合体30aは、排気シリンダ12のID壁12aと排気マニホールド14のOD壁14aとの間に形成することができる。また、第2のフランジ接合体30bは、排気シリンダ12のOD壁12bと排気マニホールド14のOD壁14bとの間に形成することができる。本開示内容の態様は、環状のフランジ接合体30a及び30bのいずれか又は双方に適用することができる。また、本開示内容の態様は、線形のフランジ接合体に適用することも可能であり、例えば、軸方向耐力パネル22の隣接する区間(セグメント)22a、22bを接線方向に結合するための接合体30cに適用してもよい。排気ディフューザ内の接合体は、約700℃-800℃の局所的な温度に曝される可能性があるが、その範囲に限定されないものとする。
【0012】
フランジ接合体は、複数のボルト接続部を含み、それらは、結合対象の構成要素(部品)に形成された当接フランジを通る。ここで、接合体30a、30b等の環状のフランジ接合体の場合、ボルト接続部は、円周方向に沿って隣接して配置される。また、接合体30c等の線形のフランジ接合体の場合、フランジは、エンジン1の軸方向に沿って、長さ方向に延出する。その際、ボルト接続部は、軸方向に沿って、まっすぐに隣接して配置される。
【0013】
本明細書の「背景技術」の欄で記載したように、ガスタービン・エンジン中の高温用フランジ接合体に関する問題に鑑みて、ワッシャ面下方の接触圧力を減らす仕方として、より大きな外径を有するオーバーサイズのワッシャを使用することがあり得る。しかしながら、この場合、オーバーサイズのワッシャは、典型的に、オーバーサイズのワッシャを収容させるため、それに応じて、ボルトのピッチ円直径の拡大化が求められることになる。このため、フランジの高さの増大化が求められるが、この結果、フランジ疲労寿命に悪影響が及ぼされる虞がある。なぜなら、排気ディフューザ内等の高温環境下では、より高いフランジによって、より大きな熱勾配がもたらされるからである。上記問題に対処する別の仕方として、組付体(アセンブリ)に、低いボルト予圧値を適用することがあり得る。しかしながら、この場合、特にエンジン停止中に、ボルトの緩みという当該分野の問題につながり得る。この問題は、より高いランプ速度と排気温度とを有する先進的エンジンでは一層顕著になる。
【0014】
図3には、本開示の一実施形態に従って、ガスタービン・エンジン内で、第1の構成要素(部品)32aと第2の構成要素(部品)32bとを結合するための高温用フランジ接合体30が例示されている。フランジ接合体30は、例えば、図2に例示したフランジ接合体30a、30b、30cのうちの任意のものとして実装してもよいが、これらに限定されない。例えば、第1の構成要素32aは、構成要素12a、14a、22aのうちの任意のものでもよく、一方、構成要素32bは、構成要素12b、14b、22bのうちの任意のものでもよい。本明細書では、X軸、Y軸、Z軸は、それぞれ、フランジ接合体の長さ方向、厚さ方向、高さ方向に相当する。長さ方向とは、それに沿ってボルト接続部が配置される方向を指す。フランジ接合体30a、30bの場合、長さ方向とは、ガスタービン・エンジンの円周方向に相当し、一方、フランジ接合体30cの場合、長さ方向とは、ガスタービン・エンジンの軸方向に相当する。厚さ方向とは、ボルトの延出する方向を指す。高さ方向とは、長さ方向と厚さ方向とに対して垂直な方向である。フランジ接合体30a、30b、30cの場合、高さ方向は、ガスタービン・エンジンの半径方向に相当する。
【0015】
図3に例示するように、第1の構成要素32aにはフランジ34aが形成されており、また、第2の構成要素32bにはフランジ34bが形成されている。これらフランジ34a、34bは、それぞれ、符号38a及び38bで示されているように、それらを貫通して形成されたボルト穴の配列を有している。これらボルト穴38a、38bの配列は、図3の平面に対して垂直なフランジ接合体30の長さ方向に沿って延出している。構成要素32a、32bの組立時には、各フランジ34a,34b上のボルト穴38a、38bが互いに整列する(位置が合わせられる)ように、フランジ34a,34bが当接する。フランジ接合体30は、長さ方向に沿って隣接して配置された複数のボルト接続部40を含み、各ボルト接続部40は、第1及び第2のフランジ34a、34b内で互いに整列した一対のボルト穴38a、38bを介して形成される。各ボルト連結部40は、第1のフランジ34aを支持する第1のスペーサ・プレート42aと、第2のフランジ34bを支持する第2のスペーサ・プレート42bとを備える。さらに、各ボルト接続部は、第1のスペーサ・プレート42aと第2のスペーサ・プレート42bとをそれぞれ支持する第1のロック・ワッシャ44aと第2のロック・ワッシャ44bとを備える。これら第1及び第2のフランジ34a、34b、第1及び第2のスペーサ・プレート42a、42b、並びに第1及び第2のロック・ワッシャ44a、44bを通って、ボルト46が挿入されている。ボルト46は、第1フランジ34aと第2フランジ34bとをクランプする(締め付ける)ために予圧(予荷重)を受けるが、例えば、適当なトルクを及ぼして、各ナット48を締め付ける。スペーサ・プレート42a、42bは、それぞれ、厚さta、tbを有する。さらに、各スペーサ・プレート42a、42bは、それぞれのフランジ34a、34bと当接する支持面(耐力面)を向上させるように大きさが決められている。一実施形態では、スペーサ・プレート42a、42bの支持面56a、56bが、実質的に、スペーサ・プレート42a、42bの長さLに沿って、それぞれのフランジ34a、34bの支持面58a、58bを覆う(カバーする)ように、各スペーサ・プレート42a、42bの大きさが決められている。
【0016】
本実施形態では、フランジ34a、34bと当接する支持面積(耐力面積)は、オーバーサイズ・ワッシャによって達成される場合と比較して、一層向上されているが、その際、フランジ34a、34bの高さを増加させないようにしている。このため、フランジの熱勾配を減少させて、部品の疲労寿命を向上させている。支持面積を増やす結果、接触圧力を減少させ、これによって、次に、フランジ34a、34bのクリープ変形及びボルト予圧の損失を減少させている。このため、ニッケル合金等の高級のフランジ材料を用いる必要性をなくして、オーステナイト系ステンレス鋼等の比較的低い強度の材料をフランジに用いることを可能にしている。一実施形態では、スペーサ・プレート42a、42bの材料と比較して、より低い降伏強度(耐力)を有する材料を用いて、フランジ34a、34bを形成することが可能になる。スペーサ・プレート42a、42bの厚さによって、さらなる利益を得ることができる。ボルト予圧はワッシャ44a、44bの下方で、スペーサ・プレート42a、42bを通って、円錐形状の分布で広がるため、スペーサ・プレート42a、42bがより厚くなると、フランジ34a、34b上の圧力分布はより大きくなる。さらに、スペーサ・プレート42a、42bの厚さに基づいて、ボルト頭部46aを、フランジ34a、34bからより離れた場所に配置することができるので、ボルト温度が低下する。このボルト温度の低下により、より低級のボルト材料を用いることが可能になる。例示した実施形態では、ガスタービン・エンジンの動作中、ボルト予圧をより長い期間維持させるため、ボルトを締め直すサービス間隔を延長させている。例示した実施形態では、ボルト長さの増大化を必要としているが、その際、フランジの厚さを増加させることなく、ボルトの直径に対する長さの比を高めている。これにより、さらなるボルトの引き延ばし(ストレッチ)が可能になり、その設置に基づいて予圧損失を低減できるが、その際、フランジの疲労寿命に影響を与えない。
【0017】
幾つかの実施形態では、熱負荷を低減させるため、フランジ34a、34bは、長手方向に沿って波形状の輪郭(プロファイル)を有することができる(図4図7参照)。波形状の輪郭は、第1の高さhを有する第1の部分52と、それと区別された、第2の高さhを有する第2の部分54とを含むことができ、その際、第1の高さhは、第2の高さhよりも高いものとする。ここで、ボルト46は、波形状の輪郭のうちで高さの高い第1の部分52に配置される。他の実施形態では、フランジ34a、34bは、長手方向に沿って実質的に一定の高さを有する、平坦な輪郭を有していてもよい。
【0018】
一実施形態では、ロック・ワッシャ44a、44bは、ボルト予圧を用いて、所定の位置にボルト46を固定するように構成される。このようなロック・ワッシャの一例として、二分割くさびロック(ウェッジ・ロック)ワッシャがある。二分割くさびロック・ワッシャの構造は、当業者には公知であって、例えば、欧州特許文献(EP0131556B1)に開示されたものがある。本明細書の実施形態では、エンジン動作中にボルト予圧を実質的に維持するように構成されており、上記種類のロック・ワッシャは、特に適用可能である。高温用フランジ接合体内で上記ロック・ワッシャを使用することにより、当該技術分野で従来使用されていたロック・ワッシャと比較して、組立(アセンブリ)に関する複雑さと時間とを大幅に低減することができる。例えば、従来技術では、表面に対して積極的にロックされるタブ又はパンテ・レッグ(pant-leg)ロック・ワッシャ等があるが、これらは、組立体中に曲げることが難しく、時間がかかっていた。
【0019】
さらなる発展形態では、エンジン動作中に、ボルト予圧の損失を防止し、ロック・ワッシャ44a、44bの機能を維持するために、スペーサ・プレート42a、42bに対して回転防止特徴(回り止め機能)を備えており、それによって、例えばボルト46が緩む場合に、各フランジ34a、34bに対して回転しないようにしている。
【0020】
図4に例示するように、回転防止特徴を提供する1つの方法として、スペーサ・プレート42a、42bの長さ方向に大きさを定めて、それらを通って複数の隣接するボルト46を収容させるようにする。図示した例では、各スペーサ・プレート42a、42bは、2つの隣接するボルト穴まで延びるように大きさが決められている。各スペーサ・プレート42a、42bを隣接するボルト46にわたって延ばすことで、それらボルト46の内の1つが緩んで反時計回りに回転する場合、同じスペーサ・プレート上の隣接する他のボルト46が時計回りに回転して締め付けるようにして、スペーサ・プレートの回転を防止することを確保可能にする。スペーサ・プレート42a、42bの長手方向の大きさは、考慮に基づき制約することができるが、例えば、長さが増大すると、スペーサ・プレート42a、42bと各フランジ34a、34bとの間で熱遅れが生じて、長さ方向でボルト46にさらに負荷が加えられ得ること等を考慮して制約してもよい。
【0021】
図5及び図6には、スペーサ・プレート42a、42bと各フランジ34a、34bとの間の熱遅れを最小に抑えながら、回転防止特徴を提供する実施形態の例が示されている。これら例示的な実施形態では、各スペーサ・プレート42(例えば、スペーサ・プレート42a、42bのいずれかを参照)は、単一のボルト46を収容するように長さ方向の大きさが決められていてもよい。図5及び図6に示すように、各スペーサ・プレート42は、それぞれのフランジ34(例えば、フランジ34a、34bのいずれかを参照)に沿って、第1の縁部62から第2の縁部64まで長さ方向に延出している。隣接するスペーサ・プレートの界面縁部62及び64は、フランジ34との関係で、スペーサ・プレート42の回転を防止するように構成されていてもよい。
【0022】
図5の実施形態では、各スペーサ・プレート42の第1の縁部62と第2の縁部64とは傾斜しており、つまり、長さ方向に対して非平行かつ非直交な角度で傾斜している。一方のスペーサ・プレート42の傾斜縁部62、64は、対向する側の隣接するスペーサ・プレート42の傾斜縁部64、62と当接するように構成されている。傾斜の角度は、矢印82で示しているように、2つのスペーサ・プレート42のうちの1方が反時計回りに回転する場合(例えば、ボルトの緩みのため)、矢印84で示しているように、反対の側面上で隣接するボルトに時計回りの回転を生じさせる(ボルトを締め付ける)ように定めることができる。これにより、緩んでいるスペーサ・プレート42がさらに回転することを防止して、回転防止特徴が提供される。このため、図5に例示した構成では、各スペーサ・プレート42の第1の縁部62と第2の縁部64とは、反対方向に傾斜していてもよい。
【0023】
図6の実施形態では、隣接するスペーサ・プレート42の間に歯車の歯状又はインタロック状(食い込む形態)の界面を提供することによって、同様の効果が達成されている。この場合、各スペーサ・プレート42の第1の縁部62が溝状の(凹状)形状を画定し、スペーサ・プレート42の第2の縁部64が舌状の(凸状)形状を画定している。第1の縁部62と第2の縁部64とは、対向する隣接するスペーサ・プレート42上の舌状の縁部と溝状の縁部64、62とをそれぞれ係合させるように構成されている。この係合する界面は、矢印82で示しているように、2つのスペーサ・プレート42のうちの1方が反時計回りに回転する場合(例えば、ボルトの緩みのため)、矢印84で示しているように、反対の側面上で隣接するボルトに時計回りの回転を生じさせる(ボルトを締め付ける)ように定めることができる。
【0024】
さらなる実施形態では、図7に示すように、各スペーサ・プレート42(例えば、スペーサ・プレート42a、42bのいずれかを参照)上に、各フランジ34(例えば、フランジ34a、34bのいずれかを参照)の上面60と当接する回転防止タブを設けることで、さらなる回転防止機能部が達成されてもよい。例示したフランジ接合体30a、30b、30cの場合、上面は、各フランジ34a、34bの半径方向外面である。例示した構成では、各スペーサ・プレート42には、一対の回転防止タブ72、74が設けられているが、それらは、スペーサ・プレート42の第1の長手方向端部76と第2の長手方向端部78とにそれぞれ設けられている。これらタブ72、74は、フランジ34の上面60で重なって当接することにより、フランジ34に対するスペーサ・プレート42の回転を防止させている。
【0025】
本開示内容のさらなる態様は、本明細書に記載した各実施形態に従って、ガスタービン・エンジン内の第1の構成要素を第2の構成要素に対して結合するための方法に関する。一実施形態では、本方法は、例えば、既存のフランジ接合体の交換又はアップグレード等を含む、ガスタービン・エンジンのサービスの一部であってもよい。
【0026】
以上、特定の実施形態に関して詳細に説明したが、当業者であれば、本開示内容の全体的な教示内容に即して、詳述した内容に対して様々な修正や変更が適用可能なことを理解するであろう。従って、本開示内容の特定の構成は、単なる例示であって、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、添付した特許請求範囲の全範囲として与えられ、その中には任意の全ての均等物が含まれることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7