(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-18
(45)【発行日】2023-05-26
(54)【発明の名称】N-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドの多形体
(51)【国際特許分類】
C07C 317/42 20060101AFI20230519BHJP
B41M 5/333 20060101ALI20230519BHJP
B41M 5/327 20060101ALI20230519BHJP
C07C 315/06 20060101ALI20230519BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
C07C317/42 CSP
B41M5/333 220
B41M5/327 215
B41M5/327 210
C07C315/06
C09B67/20 F
(21)【出願番号】P 2022530841
(86)(22)【出願日】2020-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2020083901
(87)【国際公開番号】W WO2021105499
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】102019132401.7
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516346355
【氏名又は名称】コーラー・ペーパー・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホルン,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ストーリング,ティモ
(72)【発明者】
【氏名】シュニック,クリスチャン
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/136203(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/080615(WO,A1)
【文献】特開2004-223871(JP,A)
【文献】特開平11-286175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 317/42
B41M 5/333
B41M 5/327
C07C 315/06
C09B 67/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドであって、
ブラッグ角(2θ/CuK
α):10.9、11.7、14.6、15.0、15.8、16.6、17.6、18.9、19.4、20.9、21.2、22.0、23.3、24.4、24.7、26.1、27.4、29.4、34.2を有するX線粉末回折図を特徴とする多形体ω
18.9、
又はブラッグ角(2θ/CuK
α):8.7、9.8、10.8、13.2、13.9、14.9、15.2、16.0、17.4、17.7、18.7、20.4、21.2、21.6、22.3、23.0、23.3、23.9、24.4、25.0、25.8、26.6、28.1、28.9、29.4、30.1、30.6、31.8、34.5、35.3、35.6、36.9を有するX線粉末回折図を特徴とする多形体α
21.2の、
N-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミド。
【請求項2】
前記多形体ω
18.9が、波長1092cm
-1、1105cm
-1、1145cm
-1、1233cm
-1、1319cm
-1、1495cm
-1、1548cm
-1、1598cm
-1、1655cm
-1及び3239cm
-1においてフーリエ変換赤外分光法による特徴的な吸収バンドを有し、並びに
前記多形体α
21.2が、波長1089cm
-1、1110cm
-1、1149cm
-1、1237cm
-1、1311cm
-1、1321cm
-1、1500cm
-1、1556cm
-1、1597cm
-1、1697cm
-1、3365cm
-1及び3408cm
-1においてフーリエ変換赤外分光法による特徴的な吸収バンドを有することを特徴とする、請求項1に記載の、多形体ω
18.9又は多形体α
21.2のN-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミド。
【請求項3】
前記多形体ω
18.9が232~233℃の融解範囲を有し、及び
前記多形体α
21.2が219~221℃の融解範囲を有することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の、多形体ω
18.9又は多形体α
21.2のN-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の前記多形体α
21.2の単相N-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドが酢酸エチル中で還流されることを特徴とする、多形体ω
18.9のN-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドを製造する方法。
【請求項5】
多相N-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドが酢酸エチルとn-ヘキサンの混合物から再結晶されること、又は請求項1~3のいずれか1項に記載の前記多形体ω
18.9の単相N-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドがアセトニトリルから再結晶されることを特徴とする、多形体α
21.2のN-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドを製造する方法。
【請求項6】
担体基材と、少なくとも1つの発色剤及び少なくとも1つのフェノール不含有顕色剤を含有する感熱性発色層とを含む感熱性記録材料であって、前記少なくとも1つのフェノール不含有顕色剤が、請求項1~3のいずれか1項に記載の多形体ω
18.9及び/又は多形体α
21.2のN-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドである、感熱性記録材料。
【請求項7】
前記少なくとも1つのフェノール不含有顕色剤が、前記感熱性発色層の全固形分に対して3~35重量%の量で存在する、請求項6に記載の感熱性記録材料。
【請求項8】
前記少なくとも1つの発色剤が、トリフェニルメタン型、フルオラン型、アザフタリド型及び/又はフルオレン型の色素である、請求項6又は請求項7に記載の感熱性記録材料。
【請求項9】
前記少なくとも1つのフェノール不含有顕色
剤以外に、少なくとも1つの、一般式
Ar
1-SO
2-NH-C
6H
4-SO
2-C
6H
4-NH-CO-NH-Ar
2
(式中、Ar
1及びAr
2は非置換又は置換フェニル基である。)
の顕色剤も存在する、請求項6~8のいずれか1項に記載の感熱性記録材料。
【請求項10】
Ar
1がフェニル基であること、及び/又はAr
2がフェニル基であることを特徴とする、請求項9に記載の感熱性記録材料。
【請求項11】
Ar
1が、少なくとも1つのC
1-C
5アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ベンジル基、ホルミル基、CN基、ハロゲン基、NO
2基、RO基、R-CO基、RO
2C基、R-OCO基、R-SO
2O基、R-O-SO
2基、R-SO
2-NH基、R-NH-SO
2基、R-NH-CO基又はR-CO-NH基で置換され、Rが、C
1-C
5アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、トリル基又はベンジル基であることを特徴とする、請求項9又は請求項10に記載の感熱性記録材料。
【請求項12】
前記感熱性発色層の出発材料を含有する水性懸濁液を担体基材に塗布し、乾燥させ、前記水性懸濁液が、約20~約75%重量の固形分含有量を有し、少なくとも400m/分のコーティングプラントの運転速度でカーテンコーティング法によって塗布され、乾燥される、請求項6~11のいずれか1項に記載の感熱性記録材料を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドの多形体、その製造方法、感熱性記録材料における顕色剤としてのその使用、N-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドの多形体を含む感熱性記録材料、及びそのような感熱性記録材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
担体基材に適用された感熱性発色層(熱反応層)を有する直接感熱印刷用途のための感熱性記録材料は、長期にわたって既知である。感熱性発色層は、通常、発色剤及び顕色剤を含有し、これらは熱の影響下で互いに反応し、したがって顕色をもたらす。
【0003】
独国特許出願公開第102018133168号は、担体基材と、少なくとも1つの発色剤及び少なくとも1つのフェノール不含有顕色剤を含有する感熱性発色層とを含む感熱性記録材料、並びに感熱性記録材料に含有されるフェノール不含有顕色剤の使用について記載し、開示された顕色剤の1つは、式(1)によって例示されるN-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドである。
【0004】
【0005】
独国特許出願第102018133168号に記載されている結晶性化合物(1)は、感熱性記録材料における顕色剤としてのその使用に関して有用な特性を有するが、化合物(1)を使用して製造された感熱性記録材料のいくつかの用途関連特性における、あらゆる潜在的変動を決定及び改善する必要があり、この変動は一般に、化合物(1)の合成の間又は合成の最適化の過程の間の精製条件の変化に関連付けられ、化合物(1)の純度の変動によって説明することはできない。このことが工業規模で感熱性記録材料を製造するための顕色剤としての化合物(1)の使用の背景に対してとりわけ非常に重要であるのは、使用される原料を仕様に確実に従わせることが主要な要件であり、顕色剤の製造法によって保証されねばならないためである。
【0006】
独国特許出願第102018133168号に従って製造された感熱性記録材料は、重要な用途関連特性のバランスを特徴とする。これにかかわらず、有害な影響をもたらすことなく個々の特性を改善することが望ましい。
【0007】
化合物(1)などのフェノール不含有顕色剤の分子は、その多様な官能基のために、結晶中の分子内及び分子間結合の多くの選択肢を有し、これらの選択肢によって、これらの結晶性化合物中に多種多様な結晶構造(多形修飾)を生じさせることができる。そのような材料の物理化学的特性による、そのキャラクタリゼーションの重要な態様は、結晶構造ランドスケープの知識に関する。これには、主に多形修飾の同定及びそれらの特性の知識が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明の目的は、新しい単相多形体及びその製造方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、先行技術と比べて異なる多形体で得られた感熱性記録材料の用途関連特性について、最適化の潜在性を特定及び利用することである。
【0011】
とりわけ、本発明のさらなる目的は、先行技術の対応する感熱性記録材料と比較して、著しく低い静的感度(発色反応のより高い開始温度)を有し、他の用途関連の欠点を示すことなく、特に動的感度(印刷法における動的応答感度)を損なうことなく、顕色剤の結晶形態及び顕色剤を含有する感熱性記録材料を提供することにある。
【0012】
従来のフェノール不含有顕色剤の多形体及び感熱性記録材料におけるその使用は公知である。
【0013】
国際公開第03/101943A1号は、フェノール不含有顕色剤Pergafast(登録商標)201(BASF)の3つの多形体、その製造、並びに感熱性記録材料における変換及び使用を開示している。
【0014】
欧州特許第3263553A1号は、顕色剤N-(2-(3-フェニルウレイド)フェニル)ベンゼンスルホンアミドの新しい多形体及び感熱性記録材料におけるその使用を開示している。
【0015】
特許第3991857B号は、4-(3-(p-トルエンスルホニル)ウレイド)安息香酸n-ブチルの多形体及び感熱性記録材料における顕色剤としてのその有利な使用を開示している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、独国特許出願第102018133168号に記載されている化合物N-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミド(1)から、ブラッグ角(2θ/CuKα):10.9、11.7、14.6、15.0、15.8、16.6、17.6、18.9、19.4、20.9、21.2、22.0、23.3、24.4、24.7、26.1、27.4、29.4、34.2を有するX線粉末回折図を特徴とする多形体ω18.9、及びブラッグ角(2θ/CuKα):8.7、9.8、10.8、13.2、13.9、14.9、15.2、16.0、17.4、17.7、18.7、20.4、21.2、21.6、22.3、23.0、23.3、23.9、24.4、25.0、25.8、26.6、28.1、28.9、29.4、30.1、30.6、31.8、34.5、35.3、35.6、36.9を有するX線粉末回折図を特徴とする多形体α21.2を提供することに成功した。
【0018】
ω18.9及びα21.2と呼ばれる結晶形では、上付数字はX線粉末回折図の最も強い主ピークを示す。
【0019】
これらの新しい多形体は、以下の表1によるそれらの融解範囲及びそれらのIR吸収バンドも特徴とする。
【0020】
表1に、N-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドの本発明による多形体についての最も重要な測定データを、多形体がP-XRD回折図からの反射、特徴的なFTIRバンド及び融解挙動(DSC)に関する限り、まとめて示す。
【0021】
【0022】
これらの新しい多形体は、EtOAc/n-ヘキサンからの再結晶後に、実施例1に従って製造した多相N-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドを添加することによって(α21.2)、及び約0℃~溶媒の沸点までの温度で約1~20時間にわたる溶媒中への懸濁によって(ω18.9)、単相形で得ることができる。
[訂正の理由等]
「非単相」と記載されていたものを「多相」とする誤訳訂正をした。
国際公開されたWO2021/105499号公報の6頁2行目に「nicht phasenreinem」と記載され、同頁下から2行目に「phasenreinen」と記載されている。ここで、「phasenreinen」という用語は、訳出すると純相、均一(系)、単相(系)という意味になり、対して「nicht phasenreinem」という用語は、訳出すると溶相、不均一(系)、多相(系)という意味になる。明細書の日本語による翻訳文では、この「nicht phasenreinem」という用語を訳出する際に、「多相」とすべきところ、「非単相」としたことによるものである。
【0023】
溶媒は、芳香族炭化水素、塩素化芳香族炭化水素、脂肪族若しくは脂環式炭化水素、塩素化炭化水素、ジアルキルアシルアミド、脂肪族エステル、脂肪族ケトン、脂環式ケトン、脂肪族エーテル、環式エーテル、脂肪族アルコール、脂環式アルコール、アルキルニトリル又はそれらの混合物のクラスから選択することができる。トルエン、シクロヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、酢酸エチル、アセトン、ブタノン、シクロヘキサノン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ニトロメタン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル又はそれらの混合物が好ましい。
【0024】
α21.2体は、実施例1に従って製造した多相N-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドより、EtOAc/n-ヘキサンからの再結晶によって得ることができる。
[訂正の理由等]
上記、誤訳訂正1と同じ理由によるものである。
【0025】
ω18.9体は、α21.2体を有機溶媒、好ましくは酢酸エチルに懸濁させて、約0℃~溶媒の沸点の温度まで好ましくは約1時間~20時間加熱することによって得ることができる。
【0026】
ω18.9体は、α21.2体を酢酸エチルに懸濁させ、懸濁液を約2時間~8時間、好ましくは約6時間還流することによって得ることができる。
【0027】
α21.2体は、アセトニトリルからの単相ω18.9体の再結晶によっても得ることができる。
【0028】
本発明はまた、上記の方法によって得られる多形体ω18.9のN-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドに関する。
【0029】
本発明はまた、上記の方法によって得られる多形体α21.2のN-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドに関する。
【0030】
本発明はまた、上記の、又は上記の方法の1つによって得ることができる、多形体ω18.9又は多形体α21.2のN-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドの、感熱性記録材料における顕色剤としての使用に関する。
【0031】
本発明はさらに、担体基材と、少なくとも1つの発色剤及び顕色剤を含有する感熱性発色層とを含む感熱性記録材料に関し、顕色剤は、以下のブラッグ角(2θ/CuK
α):10.9、11.7、14.6、15.0、15.8、16.6、17.6、18.9、19.4、20.9、21.2、22.0、23.3、24.4、24.7、26.1、27.4、29.4、34.2を有するX線粉末回折図(
図1参照のこと)を特徴とする、N-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドの単相ω
18.9体、若しくはブラッグ角(2θ/CuK
α):8.7、9.8、10.8、13.2、13.9、14.9、15.2、16.0、17.4、17.7、18.7、20.4、21.2、21.6、22.3、23.0、23.3、23.9、24.4、25.0、25.8、26.6、28.1、28.9、29.4、30.1、30.6、31.8、34.5、35.3、35.6、36.9を有するX線粉末回折図(
図2を参照のこと)を特徴とするN-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドの単相α
21.2体、又はそれらの混合物を含む。
【0032】
感熱性記録材料のさらに好ましい実施形態では、少なくとも1つの顕色剤は、個々の上記の多形体又はそれらの混合物を、それぞれの場合において式(2)の少なくとも1つの化合物:
Ar1-SO2-NH-C6H4-SO2-C6H4-NH-CO-NH-Ar2(2)
と組み合わせて含み、式中、Ar1及びAr2は、非置換又は置換フェニル基である。
【0033】
Ar1は、フェニル基であることが好ましい。
【0034】
Ar2は、フェニル基であることが好ましい。
【0035】
とりわけ好ましくは、Ar1は、少なくとも1つのC1-C5アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ベンジル基、ホルミル基、CN基、ハロゲン基、NO2基、RO基、R-CO-基、RO2C基、R-OCO基、R-SO2O基、R-O-SO2基、R-SO2-NH基、R-NH-SO2基、R-NH-CO基又はR-CO-NH基で置換され、ここでRは、C1-C5アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、トリル基又はベンジル基である。
【0036】
Ar1は、好ましくは、少なくとも1つのC1-C5アルキル基、ハロゲン基、RO基、R-CO基又はNO2基で置換され、ここでRは、C1-C5アルキル基である。
【0037】
Ar1は好ましくは1回置換される。
【0038】
とりわけ好ましくは、Ar2は、少なくとも1つのC1-C5アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ベンジル基、ホルミル基、CN基、ハロゲン基、NO2基、RO基、R-CO-基、RO2C基、R-OCO基、R-SO2O基、R-O-SO2基、R-SO2-NH基、R-NH-SO2基、R-NH-CO基又はR-CO-NH基で置換され、ここでRは、C1-C5アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、トリル基又はベンジル基である。
【0039】
Ar2は、好ましくは、少なくとも1つのC1-C5アルキル基、ハロゲン基、RO基、R-CO基、RO2C基又はNO2基で置換され、ここでRは、C1-C5アルキル基である。
【0040】
Ar2は好ましくは1回置換される。
【0041】
Ar1及びAr2は、好ましくはC1-C5アルキル基がメチル基又はブチル基、とりわけ好ましくはメチル基であるように、少なくとも1つのC1-C5アルキル基で置換されている。
【0042】
Ar1及びAr2は、好ましくはハロゲン基が塩化物基であるように、少なくとも1つのハロゲン基で置換されている。
【0043】
Ar1及びAr2は、好ましくはRO基がCH3O基であるように、少なくとも1つのRO基で置換されている。
【0044】
Ar1及びAr2は、好ましくはR-CO基がCH3-CO基であるように、少なくとも1つのR-CO基で置換される。
【0045】
とりわけ好ましい実施形態では、Ar1及びAr2の両方がフェニル基である。このような化合物は、比較的容易で安価に製造され、下記の特性に関して良好な結果をもたらす。
【0046】
好ましい実施形態では、Ar1-SO2-NH基及びAr2-NH-CO-NH基は、-C6H4-SO2-C6H4基に対して4及び4’位又は3及び3’位に配置される。とりわけ4及び4’位に配置されるのは、そのような化合物は比較的容易に製造され、良好な特性を示すためである。4及び4’位への配置とは、Ar1-SO-NH基及びAr2-NH-CO-NH基がそれぞれ-C4H4-SO2-C6H4基に対してパラ位に配置されていることを意味する。これに対応して、3及び3’位置は、メタ位置の配置を意味する。
【0047】
本発明による発色剤は、感熱層の全固形分に対して、好ましくは約3~約35重量%の量、とりわけ好ましくは約10~約25重量%の量で存在する。
【0048】
担体基材の選択は重要ではない。しかし、紙、合成紙及び/又はプラスチックフィルムを担体基材として使用することが好ましい。
【0049】
必要に応じて、担体基材と感熱層との間に少なくとも1つのさらなる中間層があり、この中間層は、感熱層用の担体の表面平滑性を改善し、担体紙と感熱層との間に熱障壁を設けるという役割を有し、有機中空球状顔料及び/又は焼成カオリンが、好ましくはこの中間層に使用される。
【0050】
本発明の感熱性記録材料には、感熱層の上に配置された少なくとも1つの保護層を設けることもできる。さらに、本発明の感熱性記録材料は、裏側調製物を備えることができる。より具体的には、これは自己接着性層、すなわち裏面印刷性を改善するための、又は好ましくない湿度条件下で感熱性記録材料の反りを最小限に抑えるための「バックコート」層として既知であるものであり得る。裏側に塗布される磁気/磁化性コーティングも、本明細書に記載される裏側調製物の範囲内に含まれる。
【0051】
発色剤の選択に関して、本発明はまた、いかなる大きな制限も受けない。しかし、発色剤は、好ましくはトリフェニルメタン型、フルオラン型、アザフタリド型及び/又はフルオレン型の色素である。フルオラン型色素は、その入手可能性及びバランスのとれた塗布特性によって魅力的な価格性能比を有する記録材料を提供することができるため、きわめてとりわけ好ましい発色剤である。
【0052】
とりわけ好ましいフルオラン型色素は以下の通りである:
3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、
3-(N-エチル-N-4-トルジンアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、
3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、
3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(2,4-ジメチルアニリノ)フルオラン、
3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、
3-(シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、
3-ジエチルアミノ-7-(3-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、
3-N-n-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、
3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(3-メチルアニリノ)フルオラン、
3-N-n-ジブチルアミノ-7-(2-クロロアニリノ)フルオラン、
3-(N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、
3-(N-メチル-N-プロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、
3-(N-エチル-N-エトキシプロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、
3-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン及び/又は
3-ジペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン。
【0053】
発色剤は、単一の物質としてだけでなく、記録材料の望ましい塗布特性が結果として損なわれない限り、2つ以上の発色剤の任意の混合物としても使用することができる。
【0054】
発色剤は、感熱層の全固形分に対して、好ましくは約5~約30重量%の量、とりわけ好ましくは約8~約20重量%の量で存在する。
【0055】
特定の塗布関連特性を制御するために、1つ以上のさらなる(ビス)フェノール系又は非フェノール系顕色剤が、感熱性発色層中の顕色剤の先に開示された塗布形態に加えて存在すると有利であり得る。
【0056】
少なくとも1つの発色剤及び少なくとも1つの顕色剤に加えて、感熱性発色層は、熱溶媒又は溶融助剤としても既知の1つ以上の増感剤を含むことができ、増感剤は、感熱印刷感度の制御がより容易であるという利点を有する。
【0057】
一般に、約90~約150℃の融点を有する結晶性物質は、増感剤として有利に使用され、溶融状態では、色錯体の形成を妨げることなく発色成分(発色剤及び顕色剤)を溶解させる。
【0058】
好ましくは、増感剤は、脂肪酸アミド、例えばステアラミド、ベヘンアミド若しくはパルミタミド、エチレン-ビス-脂肪酸アミド、例えばN,N’-エチレン-ビス-ステアリン酸アミド若しくはN,N’-エチレン-ビス-オレイン酸アミド、脂肪酸アルカノールアミド、例えばN-(ヒドロキシメチル)ステアラミド、N-ヒドロキシメチルパルミタミド若しくはヒドロキシエチルステアラミド、ワックス、例えばポリエチレンワックス若しくはモンタンワックス、カルボン酸エステル、例えばジメチルテレフタレート、ジベンジルテレフタレート、ベンジル-4-ベンジルオキシベンゾアート、ジ-(4-メチルベンジル)オキサレート、ジ-(4-クロロベンジル)オキサレート若しくはジ-(4-ベンジル)オキサレート、ケトン、例えば4-アセチルビフェニル、芳香族エーテル、例えば1,2-ジフェノキシ-エタン、1、2-ジ(3-メチルフェノキシ)エタン、2-ベンジルオキシナフタレン、1,2-ビス(フェノキシメチル)ベンゼン若しくは1,4-ジエトキシナフタレン、芳香族スルホン、例えばジフェニルスルホン、及び/又は芳香族スルホンアミド、例えば4-トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアニリド若しくはN-ベンジル-4-トルエンスルホンアミド、又は芳香族炭化水素、例えば4-ベンジルビフェニルである。
【0059】
発色剤、フェノール不含有顕色剤及び増感剤に加えて、さらに好ましい実施形態では、少なくとも1つの安定剤(劣化防止剤)が感熱性発色層中に任意に存在する。
【0060】
安定剤は、好ましくは立体障害フェノール、とりわけ好ましくは1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-シクロヘキシル-フェニル)-ブタン、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-ブタン、1,1-ビス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-ブタンによって構成される。
【0061】
また、尿素-ウレタン化合物(市販のUU)、又は4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンから誘導されるエーテル、例えば4-ベンジルオキシ-4’-(2-メチルグリシジルオキシ)ジフェニルスルホン(商品名NTZ-95(登録商標)、日本曹達株式会社)、又はオリゴマーエーテル(商品名D90(登録商標)、日本曹達株式会社)を本発明による記録材料中の安定剤として使用することができる。
【0062】
安定剤は、好ましくは、式(I)の化合物の少なくとも1つのフェノール不含有顕色剤に対して、0.2~0.5重量部の量で存在する。
【0063】
さらに好ましい実施形態では、感熱性発色層は、少なくとも1つの結合剤を含む。これらは好ましくは、水溶性デンプン、デンプン誘導体、EcoSphere(登録商標)型のデンプン系バイオラティス(biolatices)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、部分又は完全けん化ポリビニルアルコール、化学修飾ポリビニルアルコール又はスチレン-無水マレイン酸コポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、アクリルアミド-(メタ)アクリレートコポリマー、アクリルアミド-アクリレート-メタクリレートターポリマー、ポリアクリレート、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、アクリレート-ブタジエンコポリマー、ポリビニルアクリレート及び/又はアクリレート-ブタジエンコポリマーである。
【0064】
さらに好ましい実施形態では、少なくとも1つの離型剤(固着防止剤)又は潤滑剤が感熱性発色層中に存在する。これらの薬剤は、好ましくは脂肪酸金属塩、例えば亜鉛ステアレート若しくはカルシウムステアレート、又はベヘン酸塩、例えば脂肪酸アミドの形態の合成ワックス、例えばステアリン酸アミド及びベヘン酸アミド、脂肪酸アルカノールアミド、例えばステアリン酸メチロールアミド、異なる融点を有するパラフィンワックス、異なる分子量のエステルワックス、エチレンワックス、異なる硬度のプロピレンワックス並びに/又は天然ワックス、例えばカルナウバワックス若しくはモンタンワックスである。
【0065】
さらに好ましい実施形態では、感熱性発色層は顔料を含有する。これらの顔料を使用する利点の1つは、顔料が感熱印刷法で生成された溶融化学物質をそれらの表面に固定できることである。顔料を使用して、感熱性発色層の表面白色度及び不透明度並びに従来のインキによるその印刷適性を制御することもできる。最後に、顔料は、例えば比較的高価である着色機能性化学物質に対して「増量剤機能」を有する。
【0066】
とりわけ好適な顔料としては、合成又は天然の両方の無機顔料、好ましくは粘土、沈降又は天然炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、シリカ、沈降及び焼成シリカ(例えばAerodisp(登録商標)型)、珪藻土、炭酸マグネシウム、タルク、カオリンだけでなく、有機顔料、例えばスチレン/アクリレートコポリマー壁を有する中空顔料又は尿素/ホルムアルデヒド縮合ポリマーも挙げられる。これらは単独で又は任意の混合物で使用することができる。
【0067】
本発明の感熱性記録材料の表面白色度を制御するために、感熱性発色層に蛍光増白剤を含有させることができる。これらは好ましくはスチルベンである。
【0068】
特定のコーティング特性を改善するために、個々の場合において、さらなる成分、とりわけレオロジー助剤、例えば増粘剤及び/又は界面活性剤を本発明による感熱性記録材料の必須成分に添加することが好ましい。
【0069】
(乾燥)感熱層の単位面積当たりの塗布重量は、好ましくは約1~約10g/m2、好ましくは約3~約6g/m2である。
【0070】
とりわけ好ましい実施形態では、感熱性記録材料は、フルオラン型の色素が発色剤として使用され、脂肪酸アミド、芳香族スルホン、ベンジルオキサレート及び/又は芳香族エーテルからなる群から選択される増感剤がさらに存在する、請求項8に記載のものである。この好ましい実施形態では、発色剤に対して約1.5~約4重量部の請求項1に記載のフェノール不含有顕色剤が存在することも有利である。
【0071】
本発明による感熱性記録材料は、既知の製造方法を用いて得ることができる。
【0072】
しかしながら、感熱性発色層の出発材料を含有する水性懸濁液を担体基材に塗布し、乾燥させる方法によって本発明による記録材料を得ることが好ましく、水性塗布懸濁液は、約20~約75%重量、好ましくは約30~約50%重量の固形分含有量を有し、少なくとも約400m/分のコーティングプラントの運転速度でカーテンコーティング法によって塗布され、乾燥される。
【0073】
この方法は、経済的観点から特に有利である。
【0074】
固形分が約20重量%の値を下回ると、短時間の穏やかな乾燥によって多量の水をコーティングから除去しなければならず、コーティング速度に悪影響を及ぼすため、経済効率が低下する。一方、75重量%の値を超える場合、これは、コーティング法の間のコーティングカラーカーテンの安定性を確保するための技術的努力の増加につながるのみである。
【0075】
カーテンコーティング法では、コーティング分散液の自由落下カーテンが形成される。自由落下により、薄膜(カーテン)の形態であるコーティング分散液を基材上に「注ぐ」ことで、基材にコーティング分散液を塗布する。DE 10196052 T1には、中でも感熱性記録材料を含む情報記録材料の製造におけるカーテンコーティング法の使用が開示され、多層記録層は、複数のコーティング分散フィルムからなるカーテンを基材に塗布することによって得られる(最大速度200m/分)。
【0076】
コーティングプラントの運転速度を少なくとも約400m/分に設定することは、経済的及び技術的利点の両方を有する。好ましくは、運転速度は、少なくとも約750m/分、とりわけ好ましくは少なくとも約1000m/分、非常に特に好ましくは少なくとも約1500m/分である。後者の速度においても、得られた感熱性記録材料は何ら影響を受けず、運転がこの高速において最適に実行されることはとりわけ驚くべきことであった。
【0077】
本発明による方法の好ましい実施形態では、水性脱気コーティング懸濁液は、約150~約800mPas(Brookfield、100rpm、20℃)の粘度を有する。粘度が約150mPasの値を下回る又は約800mPasの値を超える場合、これはコーティング装置でのコーティング質量(coating mass)の走行性が不十分となる。水性脱気コーティング懸濁液の粘度は、とりわけ好ましくは約200~約500mPasである。
【0078】
好ましい実施形態において、水性塗布懸濁液の表面張力は、方法を最適化するために、約25~約60mN/m、好ましくは約35~約50mN/m(Du Nouyによる静的リング法に従って測定、DIN 53914)に調整することができる。
【0079】
感熱性発色層は、ライン上で又は別個のコーティング法においてライン外で形成することができる。これは続いて適用されるいずれの層又は中間層にも当てはまる。
【0080】
乾燥した感熱性発色層を平滑化手段に供することが有利である。
【0081】
ここで、ISO 5627:1995-03に従って測定したBekk平滑度を約100~約1000秒、好ましくは約250~約600秒に調整することが有利である。
【0082】
ISO 8791-4:2008-05による表面粗さ(PPS)は、約0.50~約2.50μmの範囲、とりわけ好ましくは1.00~2.00μmの間である。
【0083】
本発明は、非限定的な例に基づいて以下に詳細に説明する。
【実施例】
【0084】
実施例1
多相化合物N-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドを以下のように製造した。
[訂正の理由等]
上記、誤訳訂正1と同じ理由によるものである。
【0085】
フェニルイソシアネート7.5mmolを含むジクロロメタン20ml溶液を撹拌しながら、ジクロロメタン80mL中に4,4’-ジアミノジフェニルスルホン7.5mmol及びピリジン7.5mmolを含む混合物に、0℃にて滴加した。反応溶液を室温にて16時間撹拌した。次いで、ベンゼンスルホニルクロリド7.5mmolを含むジクロロメタン15ml溶液を撹拌しながら0℃にて滴加した。反応混合物を還流させ、反応の進行をHPLCによって監視した。反応が完了したら、生成物を濾別し、ジクロロメタンで洗浄し、真空中で乾燥させた。
【0086】
実施例2
実施例1に従って製造したN-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミド6.84gをEtOAc/n-ヘキサンから再結晶した。以下のブラッグ角(2θ/CuK
α):8.7、9.8、10.8、13.2、13.9、14.9、15.2、16.0、17.4、17.7、18.7、20.4、21.2、21.6、22.3、23.0、23.3、23.9、24.4、25.0、25.8、26.6、28.1、28.9、29.4、30.1、30.6、31.8、34.5、35.3、35.6、36.9を有するX線粉末回折図(
図2を参照のこと)を特徴とする、N-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドを得た。この化合物を酢酸エチル225mlに懸濁させ、6時間還流した。冷却後、溶媒を除去し、以下のブラッグ角(2θ/CuK
α):10.9、11.7、14.6、15.0、15.8、16.6、17.6、18.9、19.4、20.9、21.2、22.0、23.3、24.4、24.7、26.1、27.4、29.4、34.2を有するX線粉末回折図(
図1を参照のこと)を特徴とする、N-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドを得た。
【0087】
実施例3
以下のブラッグ角(2θ/CuK
α):10.9、11.7、14.6、15.0、15.8、16.6、17.6、18.9、19.4、20.9、21.2、22.0、23.3、24.4、24.7、26.1、27.4、29.4、34.2を有するX線粉末回折図(
図1を参照のこと)を特徴とする、N-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドをアセトニトリルから再結晶した。得られたN-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミドは、以下のブラッグ角(2θ/CuK
α):8.7、9.8、10.8、13.2、13.9、14.9、15.2、16.0、17.4、17.7、18.7、20.4、21.2、21.6、22.3、23.0、23.3、23.9、24.4、25.0、25.8、26.6、28.1、28.9、29.4、30.1、30.6、31.8、34.5、35.3、35.6、36.9を有するX線粉末回折図(
図2を参照のこと)を特徴とした。
【0088】
実施例4
感熱性記録材料又は感熱紙を製造し、以下の水性塗布懸濁液の配合物を使用して担体基材上に複合構造を形成し、次いで残りの層、特に保護層を通常の方法で形成した。従来の方法については、ここでは個別に説明しない。
【0089】
63g/m2の合成原紙(Yupo(登録商標)FP680)の片面に、水性コーティング懸濁液をドクターバーを使用して実験室規模で塗布し、感熱性記録紙の感熱性発色層を形成した。乾燥後、感熱性記録シートを得た。感熱性発色層の塗布量は3.8~4.2g/m2であった。
【0090】
塗布懸濁液用の分散液(それぞれの場合で1重量部)の製造:
【0091】
水性分散液A(発色剤分散液)は、3-N-n-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン(ODB-2)20重量部をGhosenex(商標)L-3266(スルホン化ポリビニルアルコール、日本合成)15%水溶液33重量部でビーズミル中にて粉砕することによって製造した。
【0092】
顕色剤(N-(4-((4-(3-フェニルウレイド)フェニル)スルホニル)フェニル)ベンゼンスルホンアミド、ω18,9体又はα21,2体40重量部を、Ghosenex(商標)L-3266 15%水溶液66重量部でビーズミル内にて粉砕することによって、水性分散液B(顕色剤分散液)を製造した。
【0093】
水性分散液C(増感分散液)は、増感剤40重量部を15% Ghosenex(商標)L-3266水溶液33重量部でビーズミル内にて粉砕することによって製造される。
【0094】
以下の増感剤:1,2-ジフェノキシエタン(DPE)、ステアラミド(SA)、ジフェニルスルホン(DPS)、ジ-(4-メチルベンジル)オキサレート(HS3520)、ベンジルオキシナフタレン(BON)、1,2-ジ(3-メチルフェノキシ)エタン(EGTE)を使用した。
【0095】
粉砕によって製造された分散液は全て、0.80~1.20μmの平均粒度D(4.3)を有していた。分散液の粒径分布を、Beckman Coulter製Coulter LS230装置を用いたレーザー回折によって測定した。
【0096】
分散液D(潤滑剤分散液)は、亜鉛ステアレート9重量部、Ghosenex(商標)L-3266 1重量部、及び水40重量部からなる、20%亜鉛ステアレート分散液である。
【0097】
顔料Pは、72%コーティングカオリン懸濁液(Lustra(登録商標)S、BASF)である。
【0098】
結合剤は、10%ポリビニルアルコール水溶液(Mowiol 28-99、Kuraray Europe)からなる。
【0099】
感熱性塗布懸濁液は、A 1部、B 1部、C 1部、D 56部、顔料P 146部及び結合剤溶液138部(いずれも重量部)を、B、D、C、P、A、結合剤の導入順序を考慮して撹拌混合し、水によって固形分約25%にすることにより製造される。
【0100】
このようにして得られた感熱性コーティング懸濁液を使用して、紙担体及び熱反応層からなる複合構造体を製造した。
【0101】
感熱性記録材料を下記のように評価した(表2を参照)。
【0102】
(1)動的色密度
用紙(6cm幅細片)に、Kyoceraプリントバーを備えたAtlantek 200テストプリンタ(Atlantek、米国)を用いて、10エネルギー階調のチェスボードパターンを印加電圧20.6V及び最大パルス幅は0.8msにて200dpi及び560オームで感熱印刷した。画像密度(光学密度、o.d.)を、X-Rite製のSpectroEye密度計で、0.45mJ/dotのエネルギーレベルにて測定した。いずれの場合も、評価には、チェスパターンの最も高いo.d.値を考慮した(表2)。o.d.値の測定の不確実性値は2%以下と推定された。
【0103】
(2)静的色密度(開始温度):
記録シートを各種の温度に加熱した、一連のサーモスタット制御の金属スタンプ(サーマルテスターTP3000QM、Maschinenfabrik Hans Rychiger AG、シュテフィスブルク、スイス)に、接触圧力0.2kg/cm2及び接触時間5秒で押し付けた。このように生じた画像の画像密度(光学密度)をX-Rite製SpectroEye密度計で測定した。
【0104】
定義による静的開始点は、0.2の光学密度が達成された最も低い温度(℃)であった。測定方法の精度は±0.5℃以下であった。
【0105】
製造した記録材料の評価を表2にまとめた。
【0106】
【0107】
以上の実施例から、本発明の感熱性記録材料は、とりわけ以下の有利な特性を示すことが推測できる。
【0108】
(1)α21.2体及びω18.9体の両方を顕色剤として使用すると、本発明による感熱性記録材料の高い最大印刷密度、及び本発明による感熱性記録材料の視覚的に識別可能なグレー化(greying)が起こる高い温度(開始点℃)につながる。
【0109】
(2)本発明による記録材料の視覚的に識別可能なグレー化が起こる温度(静的開始点)は、α21.2体の顕色剤を用いた実施例よりも多形体ω18.9を用いた方が高い。一方では、このことにより、より高い周囲温度でもω18.9体を用いて製造された感熱性記録材料の使用の可能性がもたらされ、他方では、より低い感熱性のコーティングは、水性コーティングを乾燥させる際の方法に有利となる(表2)。
【0110】
(3)ω18.9体の顕色剤を用いて得られた感熱性記録材料の記録画像は、α21.2体の顕色剤によるものと実質的に同じ最大印刷密度(光学密度)を有する(表2)。
【0111】
(4)印刷法中に動的に生成される開始点及び印刷密度の両方は、増感剤によってかなりの程度まで影響され得る。表2のデータにより、(2)及び(3)による有利な特性が、増感剤の代表的な選択に有効であることが明らかになった。