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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】発泡飲料用泡数カウント装置
(51)【国際特許分類】
   G06M 11/00 20060101AFI20230522BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20230522BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20230522BHJP
【FI】
G06M11/00 D
G01N21/17 A
G06T7/60 150D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019179328
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021056769
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】511270930
【氏名又は名称】株式会社エイチ・エス・エス
(73)【特許権者】
【識別番号】502226151
【氏名又は名称】シマフジ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100183715
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 康治
(72)【発明者】
【氏名】米村 和洋
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 雅之
(72)【発明者】
【氏名】犬尾 武
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-223701(JP,A)
【文献】特開2015-2703(JP,A)
【文献】特開2014-145621(JP,A)
【文献】特開2010-115260(JP,A)
【文献】特開2019-27975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06M 1/00-15/00
G01N 21/17
G06T 7/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡飲料が注がれた透明容器の底部を下方から光を照射可能に配置された光源と、
前記発泡飲料が注がれた透明容器内の発泡層の側面を撮影可能に配置された撮影手段と、
前記撮影手段で撮影された発泡層の画像の一定面積を切り出し、切り出された前記画像内の下方から入射した光に対して泡の下面側と上面側の光の反射の明暗により泡の個数をカウントする泡数カウント手段と、を備えたことを特徴とする発泡飲料用泡数カウント装置。
【請求項2】
発泡飲料が注がれた透明容器を収容する本体部を備え、該本体部には、前記光源と前記撮影手段が配置され、且つ該本体部の正面開口部以外の周囲が閉塞されていることを特徴とする請求項1に記載の発泡飲料用泡数カウント装置。
【請求項3】
前記本体部の下部に、前記発泡飲料が注がれた透明容器が載置される内部床部を設け、
前記光源が前記内部床部に、前記透明容器の底部を下方から複数の光を容器の軸心から離れて照射可能に配置され、
前記撮影手段が、前記発泡飲料が注がれた透明容器内の発泡層の側面を前記本体部の開口部から撮影可能に配置されたことを特徴とする請求項2に記載の発泡飲料用泡数カウント装置。
【請求項4】
前記泡数カウント手段が、
切り出された前記画像中のノイズを除去する処理を行うフィルター処理機能と、
前記フィルター処理機能で処理された画像中の輝度の変化を計測する輝度変化処理機能と、
前記輝度変化処理機能での輝度変化から画像中の泡の数をカウントする泡数カウント処理機能と、を備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡飲料用泡数カウント装置。
【請求項5】
前記泡数カウント手段において、前記輝度変化処理機能の処理前に切り出された前記画像のカラー情報を削除する処理を行うグレースケール処理機能を更に備えたことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の発泡飲料用泡数カウント装置。
【請求項6】
前記撮影手段が、携帯情報端末に搭載されたカメラであり、
前記泡数カウント手段が、前記携帯情報端末で動作するアプリケーションソフトであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の発泡飲料用泡数カウント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばビールを始めとするビール様発泡飲料等の発泡飲料をグラスに注いだ際に発生する泡の数を計測する泡数カウント装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビールは、原料として、麦芽、ホップ、水、麦及び副原料(米・とうもろこし・こうりゃん・ばれいしょ・でんぶん・糖類・カラメル・果実・香味料)を用いてこれらを発酵させたものであり、水とホップとを除く原料における麦芽の使用率が1/2以上のもので、アルコール分が17%未満であり、発泡性のアルコール飲料である(平成30年4月改正)。
【0003】
また、ビール様発泡飲料としては、麦芽の使用率が1/2未満の発泡酒や、麦芽以外の原料を用いたその他の醸造酒及び発泡酒に別のアルコール飲料(大麦、小麦等を問わない麦由来のスピリッツや焼酎)を混ぜる発泡性リキュールの第三のビールもビール製造会社から多数の種類が市販されている。
【0004】
これらビールやビール様発泡飲料において、泡は「風味が変わるのを防ぐ」「口当りをやわらかくする」「炭酸ガスを逃さない」などの役割をしていると言われている。即ち、泡は、ビールやビール様発泡飲料が空気に触れ、成分が変化することにより味が落ちるという現象を防ぐとともに、炭酸ガスを逃さない「蓋(ふた)」の役割をしており、苦味成分を吸着するという効果もあると言われている。
【0005】
泡の密度を計測する提案としては、ビールの瓶容器への充填時に泡が安定した後の結果としての充填レベルを計算し、泡に蓄えられている液体量を検出する泡密度判定方法および泡密度判定装置が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、この提案としては、飲用する前のものでは無く、液体を瓶容器に充填する直後またはその後に瓶容器に栓をする前に形成される泡密度の計測であり、泡が形成されている瓶容器のボトルネック部分に水平方向からレーザー光を照射し、レーザー光の拡散の程度に基づく光のスポットの輪郭を検出するものである。
【0006】
さて、クリーミーな泡は、ビールやビール様発泡飲料の美味しさの1つでもある。即ち、ビールやビール様発泡飲料の美味しさの1つとしては、「クリーミーな泡のなめらかな口あたり」と「飲んだ時の爽快感」が言われており、肌理の細かい泡は、口に運んだ者に対して、口当たり、舌ざわり、喉越しの各々の感覚を刺激して、飲んだ者に美味しいビールを飲んだとの実感を与えるものである。
【0007】
さて、多くの愛飲者が、家庭ではなく、ビアホールやビアガーデン等の熟練したビールの注ぎ手(サーバ)が居る店のビールが最も美味しいとしている。これは、ビールに合う美味しいつまみを饗するだけではなく、熟練したビールの注ぎ手が、綺麗に洗浄されて冷えたグラスやジョッキに肌理の細かい泡を作って、お客に饗することも重要な要件であると考える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-281814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
熟練を有した注ぎ手は、どのようなポイントについて気を配り、工夫をすれば良いかが判っているが、それを他者に教授したとしても、教授された者が実践した際にどの程度達成されたかの熟練度を判定する手段がなかったため、その熟練度を反映する物差しのようなカウント装置が望まれている。
【0010】
本発明は、発泡飲料をグラスやジョッキ等の透明容器に注いだ際に発生する泡の数を簡単な装置で安定的に計測する泡数カウント装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載された発明に係る発泡飲料用泡数カウント装置は、
内部に発泡飲料が注がれた透明容器の底部を下方から光を照射可能に配置された光源と、
前記発泡飲料が注がれた透明容器内の発泡層の側面を撮影可能に配置された撮影手段と、
前記撮影手段で撮影された発泡層の画像の一定面積を切り出し、切り出された前記画像内の下方から入射した光に対して泡の下面側と上面側の光の反射の明暗により泡の個数をカウントする泡数カウント手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載された発明に係る発泡飲料用泡数カウント装置は、請求項1に記載の発泡飲料用泡数カウント装置が、発泡飲料が注がれた透明容器を収容する本体部を備え、本体部には、光源と撮影手段が配置され、且つ本体部の正面開口部以外の周囲が閉塞されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に記載された発明に係る発泡飲料用泡数カウント装置は、請求項2に記載の発泡飲料用泡数カウント装置が、
本体部の下部に、発泡飲料が注がれた透明容器が載置される内部床部を設け、
光源が内部床部に、透明容器の底部を下方から複数の光を容器の軸心から離れて照射可能に配置され、
撮影手段が、発泡飲料が注がれた透明容器内の発泡層の側面を本体部の開口部から撮影可能に配置されたことを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載された発明に係る発泡飲料用泡数カウント装置は、請求項1~3のいずれか1項に記載の泡数カウント手段が、
切り出された前記画像中のノイズを除去する処理を行うフィルター処理機能と、
フィルター処理機能で処理された画像中の画素の輝度の変化を計測する輝度変化処理機能と、
輝度変化処理機能での輝度変化から画像中の泡の数をカウントする泡数カウント処理機能と、を備えたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に記載された発明に係る発泡飲料用泡数カウント装置は、請求項1~4のいずれか1項に記載の泡数カウント手段において、輝度変化処理機能の処理前に切り出された前記画像のカラー情報を削除する処理を行うグレースケール処理機能を更に備えたことを特徴とするものである。
【0016】
請求項6に記載された発明に係る発泡飲料用泡数カウント装置は、請求項1~5のいずれか1項に記載の撮影手段が、携帯情報端末に搭載されたカメラであり、
泡数カウント手段が、携帯情報端末で動作するアプリケーションソフトであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、発泡飲料を透明容器に注いだ際に発生する泡の数を簡単な装置で安定的に計測することができ、透明容器内の泡の数をカウントすることにより、例えば、発泡飲料を注ぎ入れる注ぎ手の技術の向上を行ったり、ビールサーバの性能の比較を行ったり、透明容器内の発泡飲料が美味しい状態で提供できるように注がれているかの評価をすること等ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の発泡飲料用泡数カウント装置の一実施例の構成を示す説明図であり、a図は正面図、b図はA-A断面図、c図は泡数カウント手段の構成を示すフロー図である。
図2図1の発泡飲料用泡数カウント装置の泡数カウント手段の説明を行う説明図である。
図3図1の撮影状態での携帯情報端末での撮影画面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の発泡飲料用泡数カウント装置においては、内部に発泡飲料が注がれた透明容器に光を照射可能に配置された光源と、発泡飲料が注がれた透明容器内の発泡層を撮影可能に配置された撮影手段と、撮影手段で撮影された発泡層の画像の一定面積を切り出し、切り出された前記画像内の泡の個数をカウントする泡数カウント手段とを備える。これにより、発泡飲料を透明容器に注いだ際に発生する泡の数を簡単な装置で計測することができる。
【0020】
また、本発明の発泡飲料用泡数カウント装置においては、内部に発泡飲料が注がれた透明容器が収容される正面開口部以外の周囲が閉塞されている本体部と、本体部の下部に設けられ、発泡飲料が注がれた透明容器が載置される内部床部と、内部床部に透明容器の底部を下方から光を照射可能に配置された光源と、発泡飲料が注がれた透明容器内の発泡層の側面を本体部の開口部から撮影可能に配置された撮影手段と、撮影手段で撮影された発泡層の画像の一定面積を切り出し、切り出された前記画像内の泡の個数をカウントする泡数カウント手段とを備える。これにより、発泡飲料を透明容器に注いだ際に発生する泡の数を簡単な装置で更に安定的に計測することができる。
【0021】
本発明の光源としては、発泡飲料が注がれた透明容器に光源からの光を照射して透明容器内の発泡層に斑なく、また光が拡散しないよう発泡層に光を照射できるように光源の数や位置を決める必要がある。
例えば、ビールグラスの形状のように光を透明容器の底部の真下から上方に照射して透明容器内の発泡層に光を斑なく照射できる場合には、透明容器の底部の下方に置く光源は1つでもよい。
【0022】
一方、ワイングラスの様な形状では、発泡飲料が注がれる容器であるボウルの下にステムとフットがあるため発泡飲料が注がれた容器の真下から光を照射できない。このような場合には、容器の底部に光を照射するために容器の軸心から離れた位置に光源を設置する必要がある。このため、容器の軸心に対し、光の入射に多少の角度が生じて容器内の発泡層への照射斑の発生につながる。これを防止するために複数の光源が必要となる。
【0023】
例えば、光源が3の場合の設置場所を時計の文字盤を用いて説明すると、文字盤の中央部に発泡飲料が注がれた透明容器が置かれ、3時と9時、そして12時の位置に光源を設置する。撮影手段が備えられている側と同じ側の6時の位置には透明容器表面の光の反射を避けるために光源は設置しない。
【0024】
光源の強度としては、発泡飲料が注がれた透明容器が置かれた環境の照度より強い光を発する光源が発泡層の鮮明な輝度を得るために必要となる。また、発泡飲料が注がれた透明容器を正面開口部以外の周囲が閉塞されている本体部に収納して光を照射する場合には、環境の照度に影響を受けないことから透明容器内の発泡層の輝度が明確に現れる光度があれば良い。
【0025】
このように本発明の光源としては、発泡飲料が注がれた透明容器の形態や置かれた環境により異なるものとなり複雑になる。従って、好ましくは、正面開口部以外が閉塞されている本体部に発泡飲料が注がれた透明容器を収納し、本体部の内部床部の下方に光源を配置して、発泡飲料が注がれた透明容器の底部が内部床部に直上に載置できるのがよい。この場合、内部床部の中央に少なくともコースターほどの大きさの光源を収納し、透明な床材越しに光源の光を透明容器の底部から上方に照射すればよい。光源としては、乾電池のような低電圧であっても高い光度で光らせることが可能であるLED光源を用いることができる。
【0026】
本発明の撮影手段としては、光の照射との関係において、光源の光の直進方向に対し撮影手段は直交するように設置する必要がある。
例えば発泡飲料が注がれた透明容器の底部の下方から光を照射する場合、発泡飲料が注がれた透明容器内の発泡層の側面から撮影するものであればよい。撮影手段によって撮影される画像については、種々の処理操作を行うため、デジタルカメラが良好である。
【0027】
また、多くの場合には、透明容器内の発泡層の側面を撮影するのに撮影手段を近設する必要があり撮影距離が短くなる。特に、発泡飲料が注がれた透明容器を本体部に収納し、容器の底部の下方から光を照射する場合、発泡飲料が注がれた透明容器内の発泡層の側面を本体部の開口部から撮影するため撮影距離が短くなる。このため、至近距離の被写体をはっきりと撮影する接写機能を有したカメラや接写レンズ又はマクロレンズを搭載又は装着したデジタルカメラを用いる。
【0028】
尚、デジタルカメラの画素数については、高いものであれば、より解像度が高くなり、細かい泡に対してより正確にカウントすることができるが、種々の画像処理に対しては、長い処理時間を必要とするため、泡数カウント手段を行う装置の処理能力に応じた画素数を選択すればよい。
【0029】
本発明の泡数カウント手段としては、撮影手段で撮影された発泡層の画像の一定面積を切り出し、切り出された前記画像内の泡の個数をカウントするものであればよい。例えば、画像中のコントラストを調整して、画像中の丸の領域を認識して、その総数をカウントしてもよい。
【0030】
より具体的な泡数カウント手段としては、切り出された前記画像中のノイズを除去する処理を行うフィルター処理機能と、フィルター処理機能で処理された画像中の任意の横方向位置の下から上方向の画素の輝度の変化を計測する輝度変化処理機能と、輝度変化処理機能での輝度変化から画像中の泡の数をカウントする泡数カウント処理機能とを備えるものであればよい。
【0031】
本発明の本体部としては、本体部の内部に収容される透明容器の一面を除く周囲が囲まれるように、本体部の正面開口部以外の周囲が閉塞されているものであればよい。本体部の内部床部の下方には光源が配置され、透明容器を内部床部に載置して光源の光を透明容器の底部から上方に照射できるように内部床部には透明な床材が使用されている。
また、本体部の内部は開口部からの光を反射しないような暗い内壁を備えているのがよい。よって、例えば、黒く内部を塗った樹脂製や木製や紙製等の箱が選択される。特に紙製の本体部であれば、組み立てが容易であり、軽量であるため、持ち運びも容易となる。
この本体部によって、発泡飲料が注がれた透明容器内の発泡層の側面を開口部から撮影することで周囲の光が内部の透明容器に影響を与えることがなく安定した計測を行うことができる。
【0032】
以下に泡数カウント手段を詳しく説明する。フィルター処理機能では、切り出された画像中のノイズを除去する。画像には、カメラの撮像素子の不良などに起因して極端に明るい部分と暗い部分がドットとなって現れるノイズが含まれている場合がある。特に泡の周辺に現れるノイズとしては明るいピクセルが、泡の中には暗いピクセルが現れる傾向がある。これらのノイズは泡としてカウントされるため泡の数が多い結果となり正確性に欠くものとなる。
【0033】
これらのノイズを除去する方法としては、移動平均フィルター処理やメディアンフィルター処理などがある。これらの方法でフィルター処理を行い、ノイズを泡としてカウントすることを防止できるため、より正確な泡の数をカウントすることができる。尚、小さいサイズの泡のノイズを除去する手段として、取り除くノイズのピクセルの程度を変更することで細かいノイズの除去も可能となり、より正確な泡のカウントが可能となる。
【0034】
ノイズを除去した切り出し画像は、輝度変化処理機能で画像中の輝度の変化で泡領域を読み取る処理を行う。この輝度変化処理機能での処理としては、フィルター処理機能で処理された画像中の任意の横方向位置の下から上方向の画素の輝度の変化を計測する。
即ち、画像の横方向の単位距離毎に画像の下から上方向の走査線に沿った輝度変化をスキャンして計測する。スキャンによって計測された1つの輝度変化は容器高さの下方ほど輝度が高く、容器高さの上方に行くほど徐々に輝度を下げる。
【0035】
より詳しい容器高さに対する輝度の変化は、直線的に輝度が下がるのではなく、仮想の直線に対して、高い部分と低い部分とが交互に現れる。これは、下方から入射した光に対して、1つの泡の下面側がより多く反射し明るい状態にあり、1つの泡の上面側が少ない反射で暗い状態となるためである。従って、直線的に減少する仮想の直線に対して、高い部分と低い部分とが交互に現れた場合に1つの泡があるとして泡数カウント処理機能でカウント処理する。
【0036】
尚、本発明の泡数カウント手段において、輝度変化処理機能の処理前に切り出された前記画像のカラー情報を削除するグレースケール処理機能を更に備えたものである。これにより、後続のフィルター処理機能と輝度変化処理機能とでの処理を短い処理時間で行うことが可能となる。最終的な輝度変化処理機能での処理は、カラー情報は不要だからである。
【0037】
また、本発明の撮影手段が携帯情報端末に搭載されたカメラであり、泡数カウント手段が携帯情報端末で動作するアプリケーションソフトとすることにより、アプリケーションについても多数の携帯情報端末に搭載可能とすることができるため、廉価な価格で提供することが可能となり、安価な投資で発泡飲料を注ぎ入れる注ぎ手の技術の向上を行ったり、ビールサーバの性能の比較を行ったり、透明容器内の発泡飲料が美味しい状態で提供できるように注がれているかの評価をすること等ができる。
【実施例1】
【0038】
図1は本発明の発泡飲料用泡数カウント装置の一実施例の構成を示す説明図であり、a図は正面図、b図はA-A断面図、c図は泡数カウント手段の構成を示すフロー図である。図2図1の発泡飲料用泡数カウント装置の泡数カウント手段の説明を行う説明図であり、a図は発泡飲料が注がれた透明容器の側面図、b図はa図の要部の拡大図、c図はb図の要部の拡大図、d図はc図のスキヤンによる輝度変化を示した線図である。図3図1の撮影状態での携帯情報端末による撮影画面を示す説明図である。
【0039】
図1に示した通り、本発明の発泡飲料用泡数カウント装置10としては、被検対象の発泡飲料が注がれた透明容器17に対して安定した計測を行うために、この透明容器17の周囲を覆う本体部11と、本体部11の内部床部13に配置され、発泡飲料が注がれた透明容器17の底部18を直上に載置するLED光源12とを備える。
【0040】
本実施例の本体部11としては、正面開口部11aとなる前面部以外の上面、背面、両側面で内部空間を囲む木製の本体部11と、本体部11の底面を構成する内部床部13とで外部からの光を制限することにより、安定した計測を行うことができる。このため、本体部11の内側は黒い塗料で塗っている。
【0041】
内部床部13は透明な樹脂製であり、その略中央部には透明な樹脂越しにLED光源12が配されている。内部床部13の平面部には発泡飲料が注がれた透明容器17が常に同じ位置に配置されるように本体部の幅方向に渡らせた幅突起部14と、この幅突起部14から直角に前方向に渡らせた前突起部15とが配置されている。これら幅突起部14と前突起部15とは図示しない係止具で任意の位置に係止される。このため、例えば図1の発泡飲料が注がれた透明容器17としてのグラス等の容器を他の透明容器に変更してもその透明容器17の中央位置がLED光源12の直上に配置されるようになっている。
【0042】
本実施例では、発泡飲料が注がれた透明容器17内の発泡層19の側面を撮影する撮影手段としては、携帯情報端末20のカメラ21を利用している。具体的には、カメラ21に図示しないマクロレンズを装着して接写撮影を行う。また、常に同じ位置で撮影を行うために、携帯情報端末20の側壁部を支持する支持片16が、本体部11の正面開口部11aの端部に配されている。この支持片16は図示しない係止手段で任意の位置に係止される。
【0043】
図1のa図の一点鎖線で示された携帯情報端末20のカメラ21によって撮影された画像は、泡数カウント手段によって、撮影された画像のうちの発泡層19に該当する画像が切り出され、この切り出された画像内の泡の個数をカウントする。本実施例の泡数カウント手段としては、携帯情報端末20で動作するアプリケーションソフト22である。即ち、携帯情報端末20には、カメラ21で撮影された発泡層19の画像の一定面積を切り出し、切り出された画像内の泡の個数をカウントする泡数カウント手段としてのアプリケーション22が搭載されている。
【0044】
即ち、アプリケーションソフト22は、図1のc図に示す通り、切り出された画像のカラー情報を削除するグレースケール処理23と、このグレースケール処理23でカラー情報を削除された画像中のノイズを除去するフィルター処理24と、フィルター処理24を行った画像中の任意の横方向位置の下から上方向の画素の輝度の変化を計測する輝度変化処理25と、輝度変化処理25の輝度変化から画像中の泡の数をカウントする泡数カウント処理26とを行う。
【0045】
より具体的には、図1のa図に示す通り、LED光源12からの光が下方から入射した発泡飲料が注がれた透明容器17内の発泡層19の側面を開口部から携帯情報端末20のカメラ21で撮影する。撮影時には、支持片16に携帯情報端末20の下方の壁面を当てつつ支持片16の高さ位置を調節することにより、同じ位置で撮影することが可能となる。
【0046】
撮影された画像データは、同じ携帯情報端末20で動作する泡数カウント手段としてのアプリケーション22で画像処理を行った上で、泡の数をカウントする。本実施例では、グレースケール処理23で図2のa図に示す切り出し画像33のカラー情報を削除し、更に、フィルター処理24でカラー情報を削除された画像中のノイズを除去する。
【0047】
ノイズを除去した切り出し画像33は、輝度変化処理25で画像の横方向の単位距離毎に画像の下から上方向の走査線に沿った輝度変化をスキャンして計測する。1つのスキャンは図2のc図に示す通りであり、計測された輝度変化を図2のd図に示す。d図に示す通り、1つの輝度変化は容器高さの下方ほど輝度が高く、容器高さが上方に行くほど徐々に輝度を下げる。
【0048】
容器高さに対する輝度の変化は、図2のd図に示す通り、直線的に輝度が下がるのではなく、仮想の直線に対して、高い部分と低い部分とが交互に現れる。これは、図2のc図に示す通り、下方から入射した光に対して、1つの泡の下面側がより多く反射し明るい状態にあり、1つの泡の上面側が少ない反射で暗い状態となるためである。従って、直線的に減少する仮想の直線に対して、高い部分と低い部分とが交互に現れた場合に1つの泡があるとして泡数カウント処理26でカウントする。
【0049】
尚、泡数カウント手段としてのアプリケーション22としては、同じ携帯情報端末20のカメラ21の切り出し画像の位置制御を持たせてもよい。例えば、図3に示す通り、携帯情報端末20のカメラ21による撮影は、図3に示す通り、携帯情報端末20の撮影画面の両側に水平な液面サイン31と、これら両サイドの液面サイン31の対向端縁には垂直な縦サイン32とが映り込まれている。
【0050】
撮影時には、発泡飲料が注がれた透明容器17の液面と発泡層19との境界部分に液面サイン31を合わせ、縦サイン32の中央部に透明容器17が配置されるように縦サイン32と容器の両サイドとの距離を同等に合わせることにより、発泡層19となる同じ位置の切り出し画像33を画像処理することが可能となる。尚、液面サインについては、単純に水平な細いラインでもよく、この場合、中心となる位置に中心線も表示させることにより、中央位置も同時に合わせるようにしてもよい。
【0051】
また、撮影条件も選択可能として、発泡層19にカメラの焦点が確実に合うように調整してもよい。例えば、マクロレンズの有無、発泡飲料が注がれた透明容器17についてのその素材(ガラス又は樹脂)、撮影位置の厚さ等の条件を選択させて発泡層19にカメラの焦点が確実に合うように調整させる。特に、販売促進用のグラスやジョッキを用いるのであれば、1つの選択で、カメラの焦点が確実に合うようになる利点を追加させてもよい。
【0052】
尚、LED光源12については、白色や青色よりも、黄色や赤色の強い電球色の方が輝度変化はより明確になる傾向があり、好ましい結果が得られた。これは、光源からの光の直進性が高いと個々の泡の底部による反射が不充分になるからであると思われた。従って、好ましくは、泡の底部による充分な反射が得られる波長を多く含むLED光源が選択される。
【0053】
以上の通り、本実施例の発泡飲料用泡数カウント装置では、発泡飲料を透明容器に注いだ際に発生する泡の数を簡単な装置で安定的に計測することができ、透明容器内の泡の数をカウントすることにより、例えば、発泡飲料を注ぎ入れる注ぎ手の技術の向上の判定を行ったり、ビールサーバの性能の比較を行ったり、透明容器内の発泡飲料が美味しい状態で提供できるように注がれているかの評価をすること等ができる。
【符号の説明】
【0054】
10・・・発泡飲料用泡数カウント装置、
11・・・本体部、
11a・・・正面開口部、
12・・・LED光源(光源)、
13・・・内部床部、
14・・・幅突起部、
15・・・前突起部、
16・・・支持片、
17・・・発泡飲料が注がれた透明容器、
18・・・底部、
19・・・発泡層、
20・・・携帯情報端末、
21・・・カメラ(撮影手段)、
22・・・アプリケーションソフト(泡数カウント手段)、23… グレースケール処理、
24・・・フィルター処理、
25・・・輝度変化処理、
26・・・泡数カウント処理、
31・・・液面サイン、
32・・・縦サイン、
33・・・切り出し画像、


図1
図2
図3