(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】リハビリテーション機能を備えた電動車椅子
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20230522BHJP
A61H 3/04 20060101ALI20230522BHJP
A61G 5/02 20060101ALI20230522BHJP
A61G 5/04 20130101ALI20230522BHJP
B62K 5/003 20130101ALI20230522BHJP
【FI】
A61H1/02 N
A61H3/04
A61G5/02 707
A61G5/04 707
B62K5/003
(21)【出願番号】P 2020204253
(22)【出願日】2020-12-09
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】509023643
【氏名又は名称】株式会社イーバイク
(73)【特許権者】
【識別番号】591101249
【氏名又は名称】株式会社鈴木電機吾一商会
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】得丸 武治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 清友
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-204873(JP,A)
【文献】特開2001-212183(JP,A)
【文献】特開2007-330513(JP,A)
【文献】特開2000-333311(JP,A)
【文献】特開2004-113572(JP,A)
【文献】特開平09-299412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A61H 3/04
A61G 5/02
A61G 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダル足踏み動作によるリハビリテーション機能を備えた電動車椅子であって、
左右の駆動輪と、
前記駆動輪に連結された電動モータと、
運転者の足で操作されるペダルと、
前記ペダルによるペダル駆動量を検出するセンサと、
前記ペダルの駆動に負荷又は駆動補助を与えるペダル負荷/駆動補助装置と、
前記電動車椅子の走行に関する指示を行う操作部と、
前記操作部により指示された操作量と、前記センサで検出したペダル駆動量と、に基づき、モータ駆動信号を算出し、該モータ駆動信号を前記電動モータに伝達する制御手段と、
を備え、
前記操作部は、リハビリ負荷率/リハビリ補助率の切り替えの設定を行う第1指定部と、前記制御手段が前記モータ駆動信号を算出する際の前記ペダル駆動量の加算割合をリハビリモード率として設定する第2指定部と、を備え、
前記制御手段は、前記第1指定部においてリハビリ負荷率が設定された場合に、前記リハビリ負荷率に応じて、前記ペダルの負荷量を調整するように前記ペダル負荷/駆動補助装置に指示するとともに、前記操作部により指示された操作量に、前記ペダル駆動量を前記リハビリモード率に応じた割合で加算重畳させて、前記モータ駆動信号として算出し、該モータ駆動信号を前記電動モータに伝達し、さらに
前記第1指定部においてリハビリ補助率が設定された場合に、前記リハビリ補助率に応じて、前記ペダルの駆動補助量を調整するように前記ペダル負荷/駆動補助装置に指示する
ことを特徴とする電動車椅子。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車椅子において、
前記ペダル負荷/駆動補助装置は、前記ペダルに配設されたモータで構成され、
前記第1指定部においてリハビリ負荷率が設定された場合に、前記リハビリ負荷率に基づき前記モータの回生電力を制御して前記ペダルの負荷量を調整するとともに、
前記第1指定部においてリハビリ補助率が設定された場合に、前記リハビリ補助率に基づき前記モータを駆動させて前記ペダルの駆動補助量を調整する
ことを特徴とする電動車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足で操作可能なペダルを有し、このペダルの操作によりリハビリテーション(以下リハビリと呼ぶ)効果が期待できる電動車椅子及びその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車椅子は、下肢障害者や下肢の衰えた高齢者等に移動の自由をもたらす機器として普及が進んでいる。電動車椅子は、モータを駆動源としているため、ほとんど乗員(利用者)の体力を必要とすることなく負担なしに移動が可能となっている。 しかしながら、このような電動車椅子の利用者は、下肢をほとんど使わなくなるため、使われない下肢はますます衰え、機能回復の観点からは好ましくはないという問題が生じる。
そこで、機能回復の観点からリハビリ効果を高める電動車椅子が提案されている( 特許文献1参照)。
【0003】
特開2015-204873号( 特許文献1参照)によれば、操作量が調整可能な操作部と、足で操作されるペダルと、このペダルの駆動操作量を検出するセンサと、モータに連結された駆動輪と、前記操作部の操作量によって、前記ペダルの駆動操作量に対するモータの速度を変更する制御手段で構成される電動車椅子が提案されている。
【0004】
足でペダルを回転させると、その回転速度 (回転数)を回転速度センサが検出し、この検出信号と運転者の指示する操作量に基づいて電動モータを駆動し駆動輪を駆動する。また、足で操作するペダルには負荷装置が取り付けられ、ペダルの回転操作に負荷を付与することができ、この負荷の大きさは前記運転者の指示する操作量によって適宜調整できるようになっている。このようにして足ふみペダルの回転速度に応じてその走行速 度を変えることができ、また乗員の下肢の 残存機能に応じてペダル回転操作に付与する負荷の調整が可能となり、運転者のリハビリを支援する。
更に、この改良によれば、運転者が操作指示する電動車椅子駆動信号と、リハビリのペダル足踏み量を検出するペダル駆動センサ信号とを備え、前記運転者が指示する電動車椅子駆動信号に前記ペダル駆動センサ信号を指定割合で重畳させて電動車椅子の駆動操作信号とすることによって、安全性の高い車椅子の操作を可能にしている。即ち、運転者が足踏みペダルを踏まなければ通常の電動車椅子として動作し、足踏みペダルを踏めばその踏力が一定割合で自動的に車椅子の動作に反映するリハビリ機能を有する電動車椅子として動作する。公知の車椅子の操作に習熟するだけで、その延長としてスムーズにリハビリ操作に入ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電動車椅子では、足踏み動作がある程度可能な利用者を対象としてきたのに対し、殆ど足踏み操作の出来ない者にたいして効果的に利用を可能とするものである。改良の電動車椅子の利用者からは、リハビリの足踏み動作と車椅子の動作が連動しているために臨場感と爽快感を生み、高いリハビリ効果が得られると評価された。この評価の過程で、足踏み駆動できない利用者に対してこそ、電動車椅子の駆動に連動させて足の動きを誘導または駆動補助することで、臨場感や爽快感を誘発し、足を動かす記憶を刺激する効果があるとの指摘を受け、このリハビリ効果を実現するものである。改良提案の電動車椅子を更に改良し、足踏み駆動のできない利用者に、足踏み駆動可能な利用者と同様のリハビリ効果を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
改良提案の電動車椅子にあって、リハビリのための足踏みペダルに回転の駆動補助の機能を持たせる改良を行う。これによって足踏み機能の特に弱い利用者の足踏み動作を誘導し足踏み動作を促す効果が期待できる。
請求項1に記載の電動車椅子は、ペダル足踏み動作によるリハビリテーション機能を備えた電動車椅子であって、左右の駆動輪と、前記駆動輪に連結された電動モータと、運転者の足で操作されるペダルと、前記ペダルによるペダル駆動量を検出するセンサと、前記ペダルの駆動に負荷又は駆動補助を与えるペダル負荷/駆動補助装置と、前記電動車椅子の走行に関する指示を行う操作部と、前記操作部により指示された操作量と、前記センサで検出したペダル駆動量と、に基づき、モータ駆動信号を算出し、該モータ駆動信号を前記電動モータに伝達する制御手段と、を備え、
前記操作部は、リハビリ負荷率/リハビリ補助率の切り替えの設定を行う第1指定部と、前記制御手段が前記モータ駆動信号を算出する際の前記ペダル駆動量の加算割合をリハビリモード率として設定する第2指定部と、を備え、
前記制御手段は、前記第1指定部においてリハビリ負荷率が設定された場合に、前記リハビリ負荷率に応じて、前記ペダルの負荷量を調整するように前記ペダル負荷/駆動補助装置に指示するとともに、前記操作部により指示された操作量に、前記ペダル駆動量を前記リハビリモード率に応じた割合で加算重畳させて、前記モータ駆動信号として算出し、該モータ駆動信号を前記電動モータに伝達し、さらに
前記第1指定部においてリハビリ補助率が設定された場合に、前記リハビリ補助率に応じて、前記ペダルの駆動補助量を調整するように前記ペダル負荷/駆動補助装置に指示することを特徴とする。
【0008】
当該電動車椅子は、運転者が足踏みペダルを踏まなければ通常の電動車椅子として動作し、足踏みペダルを踏めば自動的にリハビリ機能を有する電動車椅子として機能する。通常の電動車椅子として運転中のどんな運転状態にあっても、運転者の希望するタイミングで足踏みペダルを踏めば自動的にリハビリモードの電動車椅子となり、運転者の希望するタイミングで足をペダルから外せば元の通常の電動車椅子の運転状態に戻る。従って外的要因あるいは運転者の身体的要因によって足踏みペダルの急停止、或いはペダルから足が離れる・・等のペダル動作の急激な変化も通常の電動車椅子のモードに自動復帰する方向となり、安全が確保される方向になる。
特に、上記ペダルの足踏み駆動が困難な利用者にたいしては、足踏みペダルに付設されたペダル駆動補助機能を起動して、足踏み動作を誘導し、動作を促してリハビリ効果を実現する。利用者の足踏み駆動の可動域に応じて適切にプログラムした駆動補助を行う。利用者が受け入れられる範囲で、電動車椅子の動作に連動するプログラム駆動補助が望まれる。
【0009】
前記操作部は、例えば、ジョイスティック型、スライドレバー方式や回転ダイヤル方式を用いることができ、格別特定のものに限定されるものではない。また、足で操作されるペダルは、回転式に限らず、例えば、足を踏み込んでペダルを上 下動させる踏み込み式のものであってもよく、その形式が特段限定されるものではない。第1指定部および第2指定部は、例えば切り替えスイッチを用いることができるがこれに限定するものではない。
【0010】
請求項2に記載の電動車椅子は、請求項1に記載の電動車椅子において、前記ペダル負荷/駆動補助装置は、前記ペダルに配設されたモータで構成され、
前記第1指定部においてリハビリ負荷率が設定された場合に、前記リハビリ負荷率に基づき前記モータの回生電力を制御して前記ペダルの負荷量を調整するとともに、
前記第1指定部においてリハビリ補助率が設定された場合に、前記リハビリ補助率に基づき前記モータを駆動させて前記ペダルの駆動補助量を調整する
ことを特徴とする。
前記ペダル負荷/駆動補助装置の負荷はブレーキ機構などペダル操作の制動負荷とする手段であればよく、駆動補助はモータ回転補助などのペダル回転を補助する手段であればよく、他に特に限定するものではない。
【0011】
請求項1から請求項2に記載の電動車椅子は、使用者のリハビリの状態に応じて、ペダル駆動を補助するリハビリの段階から、ペダル駆動に負荷を与えるリハビリの段階へ幸便に変更することを可能にする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、操作方法が簡単で、かつ安全で円滑な走行が可能で、リハビリ効果の大きな電動車椅子及び電動車椅子の駆動方法を提供できる。前記ペダル負荷/駆動補助装置を切り替えることによって、足踏み駆動不可の利用者から足踏み駆動可能な利用者まで、利用者のリハビリ状態に従って適切なリハビリ強度でリハビリを実施することができる。いずれの場合も、典型的には電動車椅子の動作に連動してペダルを動作せる駆動法が効果的であり、使用者に対してリハビリ操作の臨場感と爽快感を与えることでより効果的なリハビリ効果が期待できる。特にペダルの足踏み駆動が不可の利用者にたいしては、電動車椅子の動作に連動する足踏み駆動の補助によって、足踏み動作の記憶をよみがえらせ動作を誘導し、促す効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る電動車椅子を示す概略の斜視図である。
【
図4】同電動車椅子の足踏みペダル操作量とペダル回転数、
【
図6】ジョイスティックの傾斜角度量とその駆動力出力の関係
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る電動車椅子について
図1乃至
図8を参照して説明する。
図1は、電動車椅子を示す概略の斜視図であり、
図2は、電動車椅子を示すブロック構成図であり、
図3は、操作部(ジョイスティック)を示す斜視図である。
図4は同電動車椅子の足ふみペダル駆動量とペダル回転数を、
図5はペダル回転数とペダル駆動センサの出力を、
図6はジョイスティックの傾斜角度量とその駆動力出力の関係を、
図7は合成したモータ駆動信号の例1を、
図8は合成したモータ駆動信号の例2を示す。なお、配線接続 関係は適宜省略して示している。
【0015】
本実施形態の電動車椅子1は、通常の電動車椅子として機能し、かつペダル5を駆動することによってリハビリ機能を有する電動車椅子と、手動で操作する車椅子との二つの態様で使用が可能である。
図1に示すように、電動車椅子1は、フレーム2、駆動輪3、キャスタ4、ペダル5、操作部6、制御手段7、電動モータ8及びバッテリ9を備えている。
【0016】
フレーム2は、金属製のパイプ状の材料から形成され、電動車椅子1の本体の骨組みを構成する。このフレーム2には、乗員が座るためのシート21、バックシート22、一対のサイドガード23が設けられており、サイドガード23の上部には、一対のアームサポート24が設けられている。さらに、バックシート22の上部には、後方側に 延出する一対のハンドル25が設けられている。ハンドル25は、手押しハンドルであり 、介助者が走行操作するために用いられる。
【0017】
駆動輪3は、後輪であり、電動車椅子1の後部両側にフレーム2に支持されて一対設けられている。この駆動輪3の中心部には、ハブ31が設けられていて、ハブ31には電動 モータ8及び制御手段7が収容されるようになっている。
【0018】
電動モータ8は、ブラシレスDCモータであり、永久磁石を回転子内に埋め込んだ構造であって、駆動輪3のハブ31の中に組込まれたダイレクトドライブ方式である。電動モータ8は駆動輪3に連結されて、駆動輪3を回転駆動する。
【0019】
制御手段7は、回路基板及びこの回路基板に実装されたマイクロコンピュータやIC等の電子部品から構成されており、電動モータ8を初めとして電気系を全体的に制御する機 能を有する。駆動輪3の外側には、駆動輪3の外径より若干小径に形成された ハンドリム32が設けられている。 キャスタ4は、前輪であり、電動車椅子1の前部両側にフレーム2に支持されて一対設 けられている。
【0020】
ペダル5は、乗員の足で操作されるものであり、電動車椅子1の前部にフレーム2に支 持されて設けられている。ペダル5はクランク51に連結される。
【0021】
クランク51の回転軸は、ペダル支持装置52に配設される。ペダル支持装置52は、円盤状に形成され、その内側には回転速度センサ53及びモータ54が配設されている。この回転速度センサ53は、ペダル5の回転駆動操作量、すなわち、ペダル5のクランク軸の回転速度を検知する。モータ54は、ペダル負荷又は駆動補助装置であり、回生ブレーキとしてペダル回転を制動する機能と、通電してペダル回転を駆動補助する機能を持つ。この機能の切り替え、即ちペダル回転の制動機能でのリハビリ負荷率(ペダル負荷量)の切り替え、および駆動補助機能でのリハビリ補助率(ペダル駆動補助量)の切換えは リハビリ負荷率(ペダル負荷量)/ペダル駆動補助率切換えスイッチ65で行う。
【0022】
なお、回転速度センサ53は、ペダル5のクランク軸の回転を直接検知するものでなくてもよい。例えば、モータ54の回転軸の回転を検知するようにしてもよく、ペダル5の回転を検知できれば、その構成が格別限定されるものではない。
【0023】
操作部6は、ジョイスティック型の操作部であり、操作ボックス61に操作レバー62が立設されており、この操作部6は、一方のアームサポート24に取り付けられている。 操作レバー62は、前後左右に傾倒可能となっており、前へ倒せば前進、後ろへ倒せば後進、左右に倒せば その方向に旋回できるようになっている。また、中立の場合には停止状 態となる。
【0024】
操作レバー62は、その操作量が調整可能であり、すなわち、傾倒角度が調整可能であり、この傾倒角度によって走行速度が調整できるようになっている。具体的に は、傾倒角度が大きければ走行速度が速くなり、傾倒角度が小さければ走行速度が遅くなる。操作レバー62の傾倒角度は、操作ボックス61内に配設された角度センサ63によって検出されるようになっており、この検出出力が制御手段7に入力され、電動モータ8 が制御される。
【0025】
また、操作ボックス61には、ON/OFF電源スイッチ64、リハビリ負荷率(ペダル負荷量)/リハビリ補助率(ペダル駆動補助量)切換えスイッチ65(本発明の第1指定部に相当する)、リハビリモード率(全体駆動量に対するペダル駆動量)切換えスイッチ66(本発明の第2指定部に相当する)が設けられている。
【0026】
バッテリ9は、電動車椅子1の後部に着脱可能に取付けられる電池ケースに収納されて いる。バッテリ9は、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の充電可能な二次電池で ある。バッテリ9は、前記電動モータ8や制御手段7に接続されて、これらに電力を供給 する。また、電動車椅子1の一側には、手動によって前記駆動輪3にブレーキをかける駐車用ブレーキ26が設けられている。 次に、
図2を参照して電動車椅子1の制御ブロック構成の概要を説明する。
【0027】
図2に示すように、電動車椅子1の制御構成は、制御手段7としてのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」という)を中心に構成されており、メモリに記憶された動作プ ログラムに従って種々の制御を実行する。このマイコンには、操作部6が角度センサ63を介して接続されている。また、マイコンには、モータドライバ81を介して一対の電動モータ8が接続されている。
【0028】
さらに、マイコンには、ペダル5の回転数を検出する回転速度センサ53及び回生ブレーキ又はペダル駆動補助として機能する負荷/駆動補助装置であるモータ54がモータドライバ55を介して接続されている。
【0029】
本実施形態では、全体の制御をマイコンが実行するようになっており、マイコンは、概略的には、演算部及び制御部を有するCPU71と、記憶手段であるROM72及びRA M73と、入出力制御手段74とから構成されている。そして、入出力制御手段74には、前記モータドライバ81、角度センサ63、リハビリ負荷率(ペダル負荷量)/リハビリ補助率(ペダル駆動補助量)切換えスイッチ65、リハビリモード量(全体駆動量に対するペダル駆動量)切換えスイッチ66、回転速度センサ53及びモータ54が接続されている。
【0030】
続いて、電動車椅子1の動作について
図2乃至
図8を参照して説明する。
この電動車椅子は
図4に示すように、利用者の足踏み機能の能力に従って大きく二つの動作モードを持ち、この切り替えはリハビリ負荷率(ペダル負荷量)/ペダル補助駆動率切換えスイッチ65で行う。一つは、足踏み駆動の可能な利用者(
図4の(1))に対してリハビリの足踏みペダルに買い手制動負荷を設定する動作モードで、負荷量の大きさの選択もスイッチ65で行う。 もう一つは足踏み駆動の出来ない利用者に対して足踏みペダルに駆動補助(
図4に
Asとして示した)を与える動作モードである。
足踏み駆動の可能な利用者(
図4の(1))に対してリハビリ負荷で利用する場合の動作について、
図4から
図8を用いて電動車椅子1の動作制御方法を説明する。
運転者の操作するジョイスティック62の操作量から角度センサ63を経て制御手段7で生成されるモータ駆動信号(4)を
図6に示す。一方、運転者のリハビリ作業(1)によって生成されるペダル回転量(2)の関係を模式的に
図4に示す。リハビリ作業に対する負荷の割合、即ちリハビリ負荷率が切り替えスイッチ65で指示された大きさが制御手段7とモータドライバ55を介して負荷モータ54に与えられる。リハビリ負荷率が低く、小負荷量ならば軽いリハビリ作業量でもペダル回転数はおおきく、リハビリ負荷率が大きく、大負荷ならばリハビリ作業量を大きくしなければ十分なペダル回転量が得られない。
図5はペダル回転数にたいする回転速度センサ53の出力(3)を示す。この出力信号(3)はペダル回転数(2)に比例し、従ってリハビリ作業量(1)に比例している。
【0031】
電動車椅子1は、運転者のジョイスティック操作による上記モータ駆動信号(4)と、リハビリ作業のペダル駆動量によるモータ駆動量(3)の合成した駆動力によって運転される。
図7はその合成した駆動力(5)を表し、
図6に示された関係のモータ駆動信号(4)と
図5に示された回転速度センサの出力(3)を制御手段7にて所望の割合で重畳加算したものである。
【0032】
以上の説明を定性的に概念的にわかり易く書くと下記のとおりである。
●モータ駆動信号(5)=ジョイスティック操作量(4)
+(ペダル駆動量(3)×リハビリモード率)
●モータ駆動信号(5)=ジョイスティック操作量(4)
+((リハビリ作業量(1)×リハビリ負荷率)×リハビリモード率)
ここで、リハビリモード率は切り替えスイッチ66で設定され、電動車椅子1の動作速度がジョイスティックで指定される速度に対してリハビリ操作(ペダル回転数)による速度増加の割合を決める。率を高く設定すれば電動車椅子1はペダル操作に敏感に反応し、低くすればペダル回転操作からの寄与は低くなり、より電動車椅子としての動作に近くなる。
ここではリハビリモード率を定率として説明したが、必ずしもその必要はない。例えば、ジョイスティック操作量による駆動量(4)が小さい状態でペダル駆動量(3)の寄与が相対的に大きくなりすぎるのを好まない場合がある。例えば、ペダル作業量によるモータ駆動信号(3)がジョイスティックの操作量による駆動量(4)を上回らないように設定するのが自然である。
図8にその状態を示した。
リハビリ負荷率はその名前の通り、運転者のリハビリ操作の負荷量を決める脚力の弱い運転者は負荷率を低く設定すれば、リハビリ駆動量が小さくてもペダル回転数が大きいので、電動車椅子1は軽快に運転できる。この反対に脚力のある運転者はリハビリ負荷率を上げることで有効なリハビリが可能となる。
【0033】
かくして、運転者の操作によって生成されたモータ駆動信号(5)をモータドライバ81に与えて電動車椅子1が駆動される。
この図からこの駆動方法による利点も明らかである。リハビリ操作をしていない時は、モータ駆動信号(3)は生ぜず、ジョイスティック操作による通常の電動車椅子のモードとして機能する。一方、電動車椅子1がどんな駆動状態にあっても、ペダルを駆動させさえすれば、その駆動量に応じて回転速度センサ出力であるモータ駆動信号(3)がモータ駆動に寄与して電動車椅子1が加速されるので、自動的にリハビリモードとなる。また逆に、電動車椅子1がどんな駆動状態にあっても、ペダル駆動を止めれば自動的に通常の電動車椅子のモードの動作に戻る。即ち、電動車椅子モードとリハビリモードとを意識することなく、電動車椅子を動作させている状態で、様々な走行状態で、運転者の希望するタイミングで、適宜リハビリ行動をとることができる。
【0034】
もう一つの動作モード、足踏み駆動の出来ない利用者に対して足踏みペダルに駆動補助(
図4にAsとして示した)を与える動作モードでは、ペダル補助駆動の態様は利用者の足踏み動作の稼働範囲などに強く依存するので、夫々の利用者に適したプログラムの補助駆動が求められる。この目的とするところは、足踏み機能の特に弱い利用者に対し、足踏みペダルを積極的に駆動補助して足の運動の記憶を呼び戻し、運動を促すものである。特に典型的にリハビリ効果として好ましくは、
図4にペダル駆動補助量(
As)として示したように、電動車椅子の動作と足踏み補助駆動の動作が連動している意識をあたえることである。
【0035】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない 範囲で種々の変形が可能である。また、上記実施形態は、一例として提示したものであり 、発明の範囲を限定することは意図していない。
例えば、操作部6は、ジョイスティック型、スライドレバー方式や回転ダイヤル方式を 用いることができる。また、足で操作されるペダルは、回転式に限らず、例えば、足を踏 み込んでペダルを上下動させる踏み込み式のものであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1・・・電動車椅子
2・・・フレーム
3・・・駆動輪
4・・・キャスタ
5・・・ペダル
6・・・操作部
7・・・制御手段
8・・・電動モータ
65・・切換えスイッチ(第1指定部)
66・・切換えスイッチ(第2指定部)