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特許7282337充電制御装置、二次電池、電子機器、及び制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】充電制御装置、二次電池、電子機器、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20230522BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230522BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20230522BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20230522BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20230522BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20230522BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H01M10/48 P
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/387
G01R31/389
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022531974
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2021023390
(87)【国際公開番号】W WO2021261442
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2020107347
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520227525
【氏名又は名称】NiT合同会社
(73)【特許権者】
【識別番号】522495359
【氏名又は名称】深▲せん▼易微微▲でん▼子科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN YIWEI MICROELECTRONICS TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】大月 秀記
(72)【発明者】
【氏名】福岡 功一
(72)【発明者】
【氏名】皆川 悟
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎一
(72)【発明者】
【氏名】三村 喬
(72)【発明者】
【氏名】小菅 正
(72)【発明者】
【氏名】山口 弘光
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/189832(WO,A1)
【文献】特開2014-45626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 - 10/48
G01R 31/36 - 31/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の内部抵抗を測定する内部抵抗測定部と、
充電中に前記内部抵抗測定部により測定された前記内部抵抗の変化に基づいて特定される時点以降の充電容量に基づいて、前記二次電池の満充電容量を更新する更新部と、
を備え
充電中に前記内部抵抗が最小となる時点での前記二次電池の充電率が予め設定されており、
前記更新部は、
充電中に前記内部抵抗測定部により測定された前記内部抵抗が最小となる時点から満充電状態になるまでの充電容量と、予め設定されている前記充電率とに基づいて前記二次電池の満充電容量を更新する、
充電制御装置。
【請求項2】
二次電池の内部抵抗を測定する内部抵抗測定部と、
充電中に前記内部抵抗測定部により測定された前記内部抵抗の変化に基づいて特定される時点以降の充電容量に基づいて、前記二次電池の満充電容量を更新する更新部と、
を備え
充電中に前記内部抵抗が最小となる時点及び最大となる時点それぞれでの前記二次電池の充電率が予め設定されており、
前記更新部は、
充電中に前記内部抵抗測定部により測定された前記内部抵抗が最小となる時点から最大となる時点までの充電容量と、予め設定されている前記充電率とに基づいて前記二次電池の満充電容量を更新する、
充電制御装置。
【請求項3】
前記内部抵抗測定部により測定された前記内部抵抗のピークを検出する検出部、
をさらに備え、
前記内部抵抗測定部は、
充電中に前記二次電池の充電率が第1の閾値に達してから第2の閾値に達するまでの測定期間にわたって前記二次電池の内部抵抗を測定し、
前記検出部は、
前記内部抵抗測定部により前記測定期間に測定された前記内部抵抗の測定値に基づいて前記測定期間内の前記内部抵抗のピークを検出する、
請求項1または請求項2に記載の充電制御装置。
【請求項4】
前記内部抵抗測定部は、
前記更新部により更新された前記二次電池の満充電容量と更新後の充電による実際の前記二次電池の満充電容量との差が所定値以上の場合、前記測定期間を補正し、
前記検出部は、
前記内部抵抗測定部により補正された前記測定期間内で測定された前記内部抵抗の測定値に基づいて前記内部抵抗のピークを検出する、
請求項3に記載の充電制御装置。
【請求項5】
前記更新部は、
更新された前記二次電池の満充電容量と更新後の充電による実際の前記二次電池の満充電容量との差が所定値以上の場合、当該更新された前記二次電池の満充電容量を予め設定された割合に基づいて補正して更新する、
請求項3に記載の充電制御装置。
【請求項6】
前記更新部は、
更新された前記二次電池の満充電容量と更新後の充電による実際の前記二次電池の満充電容量との差に応じた容量分に基づいて、当該更新された前記二次電池の満充電容量を補正して更新する、
請求項3に記載の充電制御装置。
【請求項7】
所定の条件において前記二次電池の電圧を測定する電圧測定部、
を備え、
前記内部抵抗測定部は、
前記二次電池の電圧と充電率との対応関係が予め設定された設定情報を参照して、前記電圧測定部により測定された電圧に対応付けられている充電率を当該電圧時の充電率として設定し、前記二次電池の内部抵抗を測定する前記測定期間を、設定した充電率を基準とした前記第1の閾値及び前記第2の閾値に基づいて決定する、
請求項3に記載の充電制御装置。
【請求項8】
所定の条件において前記二次電池の電圧を測定する電圧測定部、
を備え、
前記更新部は、
前記二次電池の電圧と充電率との対応関係が予め設定された設定情報を参照して、前記電圧測定部により測定された電圧に対応付けられている充電率を当該電圧時の充電率として設定し、当該電圧時の充電率と当該電圧時から満充電状態になるまでの充電容量とに基づいて前記二次電池の満充電容量を更新する、
請求項3に記載の充電制御装置。
【請求項9】
前記所定の条件は、前記二次電池の充電率が所定の範囲内であり、且つ充電及び放電が行われていない状態を含む、
請求項7または請求項8に記載の充電制御装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の充電制御装置、
を備える二次電池。
【請求項11】
請求項10に記載の二次電池、
を備える電子機器。
【請求項12】
充電制御装置における制御方法であって、
内部抵抗測定部が、二次電池の内部抵抗を測定するステップと、
更新部が、充電中に前記内部抵抗測定部により測定された前記内部抵抗の変化に基づいて特定される時点以降の充電容量に基づいて、前記二次電池の満充電容量を更新するステップと、
を有し、
充電中に前記内部抵抗が最小となる時点での前記二次電池の充電率が予め設定されており、
前記更新するステップにおいて、
充電中に前記内部抵抗測定部により測定された前記内部抵抗が最小となる時点から満充電状態になるまでの充電容量と、予め設定されている前記充電率とに基づいて前記二次電池の満充電容量を更新する、
制御方法。
【請求項13】
充電制御装置における制御方法であって、
内部抵抗測定部が、二次電池の内部抵抗を測定するステップと、
更新部が、充電中に前記内部抵抗測定部により測定された前記内部抵抗の変化に基づいて特定される時点以降の充電容量に基づいて、前記二次電池の満充電容量を更新するステップと、
を有し、
充電中に前記内部抵抗が最小となる時点及び最大となる時点それぞれでの前記二次電池の充電率が予め設定されており、
前記更新するステップにおいて、
充電中に前記内部抵抗測定部により測定された前記内部抵抗が最小となる時点から最大となる時点までの充電容量と、予め設定されている前記充電率とに基づいて前記二次電池の満充電容量を更新する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電制御装置、二次電池、電子機器、及び制御方法に関する。
本願は、2020年6月22日に日本に出願された特願2020-107347号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
二次電池を繰り返し使用していると、二次電池の状態が徐々に変化し劣化する。このような経年劣化により、例えば二次電池の満充電容量が低下してくると、残容量の計算に誤差が生じてくる。そのため、経年劣化に応じた二次電池の満充電容量の変化を検出して満充電容量の値を更新する必要がある。経年劣化に応じで変化する二次電池の満充電容量を検出する方法としては、例えば、一旦完全に放電させてから満充電の状態になるまで充電し、その際の充電容量を積算して満充電容量を求める方法がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-224901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように二次電池の満充電容量を検出する際に一旦完全に放電させる必要があると、実使用では完全に放電された状態まで使用されることが少ないため、満充電容量が変化しても更新される頻度が低かった。
【0005】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたもので、二次電池の満充電容量を実使用において適宜更新できる充電制御装置、二次電池、電子機器、及び制御方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の第1態様に係る充電制御装置は、二次電池の内部抵抗を測定する内部抵抗測定部と、充電中に前記内部抵抗測定部により測定された前記内部抵抗の変化に基づいて特定される時点以降の充電容量に基づいて、前記二次電池の満充電容量を更新する更新部と、を備える。
【0007】
上記充電制御装置において、前記更新部は、充電中に前記内部抵抗測定部により測定された前記内部抵抗がピークとなる時点以降の充電容量に基づいて、前記二次電池の満充電容量を更新してもよい。
【0008】
上記充電制御装置において、充電中に前記内部抵抗が最小となる時点での前記二次電池の充電率が予め設定されており、前記更新部は、充電中に前記内部抵抗測定部により測定された前記内部抵抗が最小となる時点から満充電状態になるまでの充電容量と、予め設定されている前記充電率とに基づいて前記二次電池の満充電容量を更新してもよい。
【0009】
上記充電制御装置において、充電中に前記内部抵抗が最大となる時点での前記二次電池の充電率が予め設定されており、前記更新部は、充電中に前記内部抵抗測定部により測定された前記内部抵抗が最大となる時点から満充電状態になるまでの充電容量と、予め設定されている前記充電率とに基づいて前記二次電池の満充電容量を更新してもよい。
【0010】
上記充電制御装置において、充電中に前記内部抵抗が最小となる時点及び最大となる時点それぞれでの前記二次電池の充電率が予め設定されており、前記更新部は、充電中に前記内部抵抗測定部により測定された前記内部抵抗が最小となる時点から最大となる時点までの充電容量と、予め設定されている前記充電率とに基づいて前記二次電池の満充電容量を更新してもよい。
【0011】
上記充電制御装置は、前記内部抵抗測定部により測定された前記内部抵抗のピークを検出する検出部、をさらに備え、前記内部抵抗測定部は、充電中に前記二次電池の充電率が第1の閾値に達してから第2の閾値に達するまでの測定期間にわたって前記二次電池の内部抵抗を測定し、前記検出部は、前記内部抵抗測定部により前記測定期間に測定された前記内部抵抗の測定値に基づいて前記測定期間内の前記内部抵抗のピークを検出してもよい。
【0012】
上記充電制御装置において、前記内部抵抗測定部は、前記更新部により更新された前記二次電池の満充電容量と更新後の充電による実際の前記二次電池の満充電容量との差が所定値以上の場合、前記測定期間を補正し、前記検出部は、前記内部抵抗測定部により補正された前記測定期間内で測定された前記内部抵抗の測定値に基づいて前記内部抵抗のピークを検出してもよい。
【0013】
上記充電制御装置において、前記更新部は、更新された前記二次電池の満充電容量と更新後の充電による実際の前記二次電池の満充電容量との差が所定値以上の場合、当該更新された前記二次電池の満充電容量を予め設定された割合に基づいて補正して更新してもよい。
【0014】
上記充電制御装置において、前記更新部は、更新された前記二次電池の満充電容量と更新後の充電による実際の前記二次電池の満充電容量との差に応じた容量分に基づいて、当該更新された前記二次電池の満充電容量を補正して更新してもよい。
【0015】
上記充電制御装置は、所定の条件において前記二次電池の電圧を測定する電圧測定部、をさらに備え、前記内部抵抗測定部は、前記二次電池の電圧と充電率との対応関係が予め設定された設定情報を参照して、前記電圧測定部により測定された電圧に対応付けられている充電率を当該電圧時の充電率として設定し、前記二次電池の内部抵抗を測定する前記測定期間を、設定した充電率を基準とした前記第1の閾値及び前記第2の閾値に基づいて決定してもよい。
【0016】
上記充電制御装置は、所定の条件において前記二次電池の電圧を測定する電圧測定部、をさらに備え、前記更新部は、前記二次電池の電圧と充電率との対応関係が予め設定された設定情報を参照して、前記電圧測定部により測定された電圧に対応付けられている充電率を当該電圧時の充電率として設定し、当該電圧時の充電率と当該電圧時から満充電状態になるまでの充電容量とに基づいて前記二次電池の満充電容量を更新してもよい。
【0017】
上記充電制御装置において、前記所定の条件は、前記二次電池の充電率が所定の範囲内であり、且つ充電及び放電が行われていない状態を含んでもよい。
【0018】
また、本発明の第2態様に係る二次電池は、上記充電制御装置を備える。
【0019】
また、本発明の第3態様に係る電子機器は、上記二次電池を備える。
【0020】
また、本発明の第4態様に係る充電制御装置における制御方法は、内部抵抗測定部が、二次電池の内部抵抗を測定するステップと、更新部が、充電中に前記内部抵抗測定部により測定された前記内部抵抗の変化に基づいて特定される時点以降の充電容量に基づいて、前記二次電池の満充電容量を更新するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の上記態様によれば、通常の二次電池の使用でも経年劣化に応じて満充電容量を適宜更新することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施形態に係る電子機器の外観図。
図2】電池の経年劣化による電池容量への影響を説明する模式図。
図3】第1の実施形態に係る電池の充電特性を示すグラフ。
図4】第1の実施形態に係る電池の構成の一例を示すブロック図。
図5図3の定電流充電から定電圧充電への切り替わり部分を拡大したグラフ。
図6】第1の実施形態に係る充電方式切替検出処理の一例を示すフローチャート。
図7】第2の実施形態に係る充電特性における内部抵抗の変化を示すグラフ。
図8】第2の実施形態に係る電池の構成例を示すブロック図。
図9図7の内部抵抗が最小となるポイントの部分を拡大したグラフ。
図10】第2の実施形態に係る内部抵抗ピーク検出処理の例を示すフローチャート。
図11】第2の実施形態に係る充電容量の測定期間の3つの例を示す図。
図12】第3の実施形態に係る電池セルの等価回路を示す電池のブロック図。
図13】第3の実施形態に係る制御部の内部回路の概略の一例を示す模式図。
図14】第3の実施形態に係る内部抵抗の測定時の電圧・電流波形を示すグラフ。
図15】第3の実施形態に係る内部抵抗測定処理の一例を示すフローチャート。
図16】第3の実施形態に係る内部抵抗の測定タイミングの第1例を示すグラフ。
図17】第3の実施形態に係る内部抵抗ピーク検出処理の例を示すフローチャート。
図18】第3の実施形態に係る内部抵抗の測定タイミングの第2例を示すグラフ。
図19】満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差が少ない場合の充電特性の一例を示す図。
図20】満充電容量の更新値より実際の満充電容量の方が大きい場合の充電特性の一例を示す図。
図21】満充電容量の更新値より実際の満充電容量の方が小さい場合の充電特性の一例を示す図。
図22】第4の実施形態に係る電池の構成例を示すブロック図。
図23】第4の実施形態に係るHold幅が所定値以上の場合の測定期間の補正の一例を示す図。
図24】第4の実施形態に係る充電率のJump幅が所定値以上の場合の測定期間の補正の一例を示す図。
図25】第4の実施形態に係る満充電容量の更新処理の一例を示すフローチャート。
図26】第5の実施形態に係るHold幅に対応する充電容量で満充電容量を補正する場合の説明図。
図27】第5の実施形態に係るJump幅に対応する充電容量で満充電容量を補正する場合の説明図。
図28】第5の実施形態に係る満充電容量の更新処理の一例を示すフローチャート。
図29】満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差が極端に大きい場合の充電特性の一例を示す図。
図30】第6の実施形態に係る電池の構成例を示すブロック図。
図31】第6の実施形態に係るSOC-OCVテーブルの一例を示す図。
図32】第6の実施形態に係るSOC-OCV特性のグラフを示す図。
図33】第6の実施形態に係るOCV補正により設定した充電率を使用して満充電容量を更新する例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
<第1の実施形態>
まず、本発明の第1の実施形態に係る情報処理装置の概要について説明する。
図1は、本実施形態に係る二次電池を内部に搭載した電子機器の外観図である。図示する電子機器10は、クラムシェル型(ノート型)のPC(パーソナルコンピュータ)である。なお、電子機器10は、タブレット型のPCや、スマートフォン等であってもよい。
【0024】
電池20は、電子機器10に電力を供給するための二次電池であり、ACアダプタ30から充電を行うことで繰り返し使用することができる。例えば、電池20は、リチウムイオン電池を例示することができる。電池20から供給される電力で電子機器10を動作させる場合、動作可能な時間は、電池20の残容量に依存する。電池20の残容量(Remaining capacity)は、「満充電容量(FCC:Full charge capacity)」-「放電容量(Discharged capacity)」で算出することができる。ここで、電池20は、繰り返し使用していると状態が徐々に変化し劣化する。経年劣化により、電池の満充電容量が低下してくると、残容量の計算に誤差が生じてしまう。
【0025】
図2は、電池20の経年劣化による電池容量への影響を説明する模式図である。この図において、縦軸が電池容量、横軸が時間の経過を示している。初期の満充電容量を「100」としたとき、満充電容量から放電容量を引いた容量が残容量(A)となる。符号101が示す線は、時間の経過に応じた電池の劣化に伴う満充電容量の変化を示している。経年劣化によって満充電容量が低下しているにもかかわらず、初期の満充電容量「100」から放電容量を引いて残容量を算出すると、誤った残容量の算出値(B)となる。経年劣化により低下した満充電容量から放電容量を引いて残容量を算出することにより、正しい残容量の算出値(C)を得ることができる。そのため、実使用において経年劣化に応じて満充電容量が適宜更新されないと、電子機器10に表示される残容量の精度が悪くなる。
【0026】
例えば、従来のように十分に放電させた完全放電の状態から満充電の状態になるまで充電しないと満充電容量が更新されない場合、実使用では、完全放電の状態になる機会が少ないため、満充電容量の値が更新される頻度が少なかった。そこで、本実施形態では、実使用でも満充電容量の値が適宜更新されるように、完全放電の状態にさせなくとも、充電期間のうち一部の特定の充電期間の充電容量に基づいて電池20の満充電容量を更新する。
【0027】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る満充電容量の算出方法について詳しく説明する。図3は、本実施形態に係る電池20の充電特性を示すグラフである。この図では、横軸を充電時間として、符号111が示す線が満充電容量(FCC[wh])、符号112が示す線が充電率(SOC:State of Charge[%])、符号113が示す線が電池電圧(Vc[V])、符号114が示す線が充電電流(Ic[A])を示している。
【0028】
電子機器10には、電池20を充電する際の最大電圧と最大電流が設定されており、電池電圧が最大電圧に達するまでは定電流充電(CC:Constant Current)で充電が行われ、最大電圧に達した後は定電圧充電(CV:Constant Voltage)へ移行する。図示する例では、時刻t0が充電の開始時点を示し、時刻tcが定電流充電から定電圧充電への切り替わりの時点を示している。また、時刻tfは、満充電状態と判定した時点を示している。つまり、時刻t0から時刻tcまでの期間T1が定電流充電の範囲で、時刻tcから時刻tfまでの期間T2が定電圧充電の範囲である。
【0029】
定電流充電から定電圧充電への切り替わりの時点での充電率は一定の値となるため、この時点から満充電状態になるまでの期間T2の充電容量を測定し、測定した充電容量を充電率100%に換算することで満充電容量を算出することができる。ここでは、定電流充電から定電圧充電への切り替わりの時点(時刻tc)での充電率が75%の例を示している。この例では、時刻tcから時刻tfまで(即ち、充電率75%から100%になるまで)の期間T2の充電容量の測定結果をCとすると、満充電容量(FCC)は、以下の式1により算出することができる。
【0030】
FCC=C×(100/25)・・・(式1)
【0031】
なお、定電流充電から定電圧充電への切り替わりの時点での充電率は、同一の電池であれば同一の値(例えば、75%)を用いることができるが、異なる種類の電池では材料などの違いに起因して異なることがある。そのため、定電圧充電への切り替わりの時点での充電率は、電池の種類等に応じて予め設定されている。
【0032】
(電池20の構成)
以下、電池20の具体的な構成について説明する。
図4は、本実施形態に係る電池20の構成の一例を示すブロック図である。電池20は、制御部210と、電池セル220とを備えている。制御部210は、MPU(Micro Processing Unit)などを含んで構成されている。制御部210は、MPUが実行する処理の機能構成として、電流測定部211と、電圧測定部212と、検出部215と、算出部216と、更新部217とを備えている。
【0033】
電流測定部211は、電池20の充電電流(Ic)及び放電電流(-Ic)を測定する。電圧測定部212は、電池20の電池電圧(Vc)を測定する。検出部215は、電池20の充電中に、電流測定部211により検出された充電電流に基づいて定電流充電から定電圧充電へ切り替わるポイントを検出する。例えば、電流測定部211は、所定の周期で電池20の充電電流を測定する。そして、検出部215は、電流測定部211が測定した所定の周期毎の充電電流の測定値の変化に基づいて定電流充電から定電圧充電へ切り替わるポイントを検出する。例えば、検出部215は、電流測定部211が測定した所定の周期毎の充電電流の測定値が、前回の測定値より一定値以上減少することが所定の回数連続した場合、定電流充電から定電圧充電へ切り替わったことを検出する。なお、検出部215は、電池20の内部に設けられているサーミスタ(不図示)を用いて電池20の内部温度を検出してもよい。以下、図5及び図6を参照して、定電流充電から定電圧充電へ切り替わるポイントを検出する処理の具体例について説明する。
【0034】
図5は、図3に示す充電特性の図における定電流充電から定電圧充電への切り替わり部分を拡大したグラフである。この図において、横軸は充電時間であり、符号113が示す線が電池電圧Vc[V]、符号114が示す線が充電電流Ic[A]を示している。図示する例では、電流測定部211は、所定時間Δt(例えば、10秒)の間隔(所定の周期)で充電電流を測定する。検出部215は、電流測定部211が測定した充電電流Icに対するΔt後の充電電流Icの変化量ΔIが一定値以上の減少であるか否かを判定し、ΔIが一定値以上の減少であることが所定の回数(例えば、5回)連続した場合(図示でΔI1、ΔI2、ΔI3、ΔI4、ΔI5の全てが一定値以上の減少であった場合)、定電流充電から定電圧充電へ切り替わったと判定し、定電流充電から定電圧充電へ切り替わったことを検出する。検出部215は、定電流充電から定電圧充電へ切り替わったことを検出した時点の時刻tcを設定する。なお、図示する例では、ΔIが一定値以上の減少であることが5回連続した場合に定電流充電から定電圧充電へ切り替わったことを検出しているが、5回に限定されるものではなく、任意の回数に設定することができる。
【0035】
図6は、本実施形態に係る定電流充電から定電圧充電へ切り替わるポイントを検出する充電方式切替検出処理の一例を示すフローチャートである。この図6を参照して、電池20の制御部210が実行する充電方式切替検出処理の動作について説明する。この充電方式切替検出処理は、電池20の充電開始に応じて開始される。
【0036】
(ステップS101)制御部210は、電池電圧(Vc)を測定し、ステップS103の処理へ進む。
【0037】
(ステップS103)制御部210は、ステップS101で測定した電池電圧(Vc)が電圧閾値(Vth)以上であるか否かを判定する。この電圧閾値(Vth)は、所定の周期での充電電流の変化を測定する処理を開始する時点を定めるものであり、電池20を充電する際の最大電圧から一定電圧下げた電圧に予め設定されている。一例として、図5に示す充電特性の例に対して電圧閾値(Vth)=13.068[V]などに設定されている。制御部210は、電池電圧(Vc)が電圧閾値(Vth)未満であると判定した場合(NO)ステップS103の処理に戻る。一方、制御部210は、電池電圧(Vc)が電圧閾値(Vth)以上であると判定した場合(YES)、ステップS105の処理へ進む。
【0038】
(ステップS105)制御部210は、n=1として1回目の充電電流の変化を検出する処理を開始し、ステップS107の処理へ進む。
【0039】
(ステップS107)制御部210は、充電電流(Ic)を測定し、測定した充電電流(Ic)の値をIcaに代入する。そして、ステップS109の処理へ進む。
【0040】
(ステップS109)制御部210は、所定時間(Δt)を計時し、所定時間(Δt)経過すると、ステップS111の処理へ進む。例えば、所定時間(Δt)は、10秒である。
【0041】
(ステップS111)制御部210は、充電電流(Ic)を測定し、測定した充電電流(Ic)の値をIcbに代入する。そして、ステップS113の処理へ進む。
【0042】
(ステップS113)制御部210は、ステップS107で測定した充電電流の値Icaに対するステップS111で測定した充電電流の値Icbとの変化量ΔIn(例えば、n=1)が予め設定された閾値(Ith)以上の減少であるか否かを判定する。例えば、制御部210は、1回目(n=1)の充電電流の変化を検出では、ΔI1=Icb-Icaを算出し、ΔI1≦-Ithであるか否かを判定する。一例として、閾値(Ith)は20mAである。制御部210は、算出した充電電流の変化量ΔI1が閾値(Ith)未満の減少である(ΔI1>-Ith)と判定した場合(NO)、ステップS105の処理に戻る。一方、制御部210は、算出した充電電流の変化量ΔI1が閾値(Ith)以上の減少である(ΔI1≦-Ith)と判定した場合(YES)、ステップS115の処理に進む。
【0043】
(ステップS115)制御部210は、n=5であるか否か、即ち、5回連続して充電電流の変化量ΔI1が閾値(Ith)以上の減少となったか否かを判定する。制御部210は、n<5であると判定した場合(NO)、ステップS117の処理に進む。一方、制御部210は、n=5であると判定した場合(NO)、ステップS119の処理に進む。
【0044】
(ステップS117)制御部210は、n<5であった場合、nを1増加させ(例えば、n=2)、ステップS107の処理に戻る。そして、制御部210は、n+1回目(例えば、2回目)の充電電流の変化を検出する処理を開始する。
【0045】
(ステップS119)制御部210は、n=5であった場合、定電流充電から定電圧充電への切り替わりポイントとして設定する。例えば、制御部210は、定電流充電から定電圧充電への切り替わったことを検出し、切り替わりの時点(時刻tc)を設定する。
【0046】
図4に戻り、算出部216は、検出部215により検出された定電流充電から定電圧充電への切り替わりの時点以降の充電容量に基づいて電池20の満充電容量を算出する。例えば、制御部210には、充電中に定電流充電から定電圧充電へ切り替わる時点での充電率が予め設定されている(例えば、75%)。算出部216は、定電流充電から定電圧充電へ切り替わる時点から満充電状態(例えば、充電率75%~100%)になるまで(図3の期間T2)の充電容量Cを、当該期間の電池電圧の測定結果と充電電流の測定結果とに基づいて積算して求める。そして、算出部216は、この充電率75%~100%までの充電容量Cに基づいて、前述した式1により満充電容量(FCC)を算出する。
【0047】
例えば、制御部210には、電池20の満充電容量の初期値が予め設定されている。そして、更新部217は、算出部216による算出結果に基づいて電池20の満充電容量の初期値を現在の設定値に適宜更新していく。つまり、更新部217は、予め設定されている満充電容量の初期値を、経年劣化に応じて算出部216により算出された満充電容量の値で更新して補正する。なお、更新は、算出部216による満充電容量の算出の度に行われてもよいし、算出値が設定値より低下した場合(或いは、一定以上低下した場合)のみ行われてもよい。
【0048】
即ち、更新部217は、検出部215により検出された定電流充電から定電圧充電への切り替わりの時点以降の充電容量に基づいて電池20の満充電容量を更新する。具体的には、更新部217は、検出部215により検出された定電流充電から定電圧充電への切り替わりの時点から満充電状態になるまでの充電容量と、定電流充電から定電圧充電への切り替わりの時点での充電率(例えば、75%)とに基づいて電池20の満充電容量を更新する。
【0049】
なお、電池20の満充電状態は、電流測定部211が測定した所定の周期毎の充電電流の測定値又は測定値の変化に基づいて検出部215により検出される。例えば、検出部215は、充電電流の測定値が所定値以下になった場合又は所定の回数連続して所定値以下になった場合、満充電状態になったと判定してもよい。また、検出部215は、充電電流の測定値の減少量が所定値未満になった場合又は所定の回数連続して所定値未満になった場合、満充電状態になったと判定してもよい。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る電池20(二次電池の一例)は、制御部210(充電制御装置の一例)を備えている。制御部210は、電池20の充電中に充電電流を測定し、測定した充電電流に基づいて定電流充電から定電圧充電への切り替わりを検出する。そして、制御部210は、検出した定電流充電から定電圧充電への切り替わりの時点以降の充電容量に基づいて電池20の満充電容量を更新する。
【0051】
これにより、電池20は、完全放電をさせなくとも定電流充電から定電圧充電への切り替わりを利用することにより、実使用でも使用頻度の高い充電領域の充電で満充電容量を把握して更新することができる。よって、電池20は、実使用において満充電容量を適宜更新することができる。また、電池20又は電子機器10は、経年劣化などにより電池20の満充電容量が変化しても、常に精度の高い残容量をユーザに通知することができる。
【0052】
例えば、充電中に定電流充電から定電圧充電へ切り替わる時点での充電率が予め設定されている。そして、制御部210は、検出した定電流充電から定電圧充電への切り替わりの時点から満充電状態になるまでの充電容量と、予め設定されている充電率とに基づいて電池20の満充電容量を算出して更新する。
【0053】
これにより、電池20は、充電中の期間の中で、定電流充電から定電圧充電への切り替わりの時点の充電率が決まっていることを利用して、実使用でも使用頻度の高い部分的な充電で満充電容量を把握して更新することができる。
【0054】
また、制御部210は、所定の周期で電池20の充電電流を測定し、測定した所定の周期毎の充電電流の測定値が、前回の測定値より一定値(例えば、閾値(Ith))以上減少することが所定の回数(例えば、5回)連続した場合、定電流充電から定電圧充電へ切り替わったことを検出する。
【0055】
これにより、電池20は、充電中の期間の中で、定電流充電から定電圧充電への切り替わりの時点を精度よく検出することができる。
【0056】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態では、二次電池の充電中の定電流充電から定電圧充電へ切り替わるポイントを利用して満充電容量を算出して更新したが、本実施形態では、二次電池の内部抵抗の変化を利用して満充電容量を算出して更新する。
【0057】
図7は、本実施形態に係る充電特性における内部抵抗の変化を示すグラフである。この図では、横軸を充電率(SOC[%])として、符号121が示す線が電池電圧(Vc)、符号122が示す線が充電電流(Ic[A])、符号123が示す線が内部抵抗(IR[mΩ])を示している。符号124が示す部分の充電率(SOC[%])の変化と内部抵抗(IR[mΩ])の変化からわかるように、内部抵抗が最小となるポイントは、一定の充電率になるポイントと一致する。図示する例では、この内部抵抗が最小となるポイントでの充電率は80%である。
【0058】
つまり、内部抵抗が最小となるポイントを検出することにより、内部抵抗が最小となる時点から満充電状態になるまでの充電容量を充電率100%に換算することで満充電容量を算出することができる。ここでは、内部抵抗が最小となる時点での充電率が80%の例を示しているため、この充電率が80%の時点から充電率が100%になるまでの充電容量の測定結果をCとすると、満充電容量(FCC)は、以下の式2により算出することができる。
【0059】
FCC=C×(100/20)・・・(式2)
【0060】
なお、この内部抵抗が最小となるポイントにおける充電率は、第1の実施形態で説明したように、同一の電池であれば同一の値を用いることができるが、異なる種類の電池では材料などの違いに起因して異なることがあるため、電池の種類等に応じて予め設定されている。
【0061】
図8は、本実施形態に係る二次電池の一例としての電池20Aの構成例を示すブロック図である。電池20Aは、制御部210Aと、電池セル220とを備えている。制御部210Aは、電流測定部211と、電圧測定部212と、内部抵抗測定部213Aと、検出部215Aと、算出部216Aと、更新部217とを備えている。なお、この図において、図4の各部に対応する構成には同一の符号を付しており、その説明を省略する。
【0062】
内部抵抗測定部213Aは、電流測定部211により測定された充電電流及び電圧測定部212により測定された電池電圧などに基づいて、電池20Aの内部抵抗を測定する。
【0063】
検出部215Aは、充電中に内部抵抗測定部213Aにより測定された内部抵抗の測定値に基づいて内部抵抗の変化を検出する。例えば、検出部215Aは、充電中の内部抵抗のピークを検出する。例えば、検出部215Aは、充電中の内部抵抗が最小となるポイントを検出する。以下、図9及び図10を参照して、電池20Aの内部抵抗が最小となるポイントを検出する処理の具体例について説明する。
【0064】
図9は、図7に示す充電特性の図における内部抵抗が最小となるポイントの部分を拡大したグラフである。符号123が示す線が内部抵抗(IR[mΩ])を示している。電圧測定部212は、充電率(SOC)が65%以上になると、内部抵抗の測定を開始し、所定の周期で複数回測定する。電圧測定部212は、充電率(SOC)65%の時点での内部抵抗の測定値(IRa)から一定値(例えば、5mΩ)以上減少した値を測定すると、その時点(ここでは、充電率(SOC)が75%の時点)以降はより細かい間隔での測定に移行する。例えば、電圧測定部212は、充電率(SOC)が1%増加するごとに内部抵抗を測定する。このようにして測定される内部抵抗の測定値(IRc、IRd)に基づいて、検出部215Aは、充電率(SOC)が1%増加するごとに内部抵抗の変化量を算出して内部抵抗が最小となるポイントを検出する。
【0065】
図10は、本実施形態に係る電池20Aの内部抵抗が最小となるポイント(ピーク)を検出する内部抵抗ピーク検出処理の一例を示すフローチャートである。この図10を参照して、電池20Aの制御部210Aが実行する内部抵抗ピーク検出処理の動作について説明する。この内部抵抗ピーク検出処理は、電池20Aの充電開始に応じて開始される。
【0066】
(ステップS201)制御部210Aは、充電率(SOC)が65%以上になったか否かを判定する。なお、制御部210Aは、図7に示す充電特性のグラフにおいて充電率(SOC)が65%になるポイントが電池電圧(Vc)4.2Vとなることから、電池電圧が4.2Vに到達したか否かによって充電率(SOC)が65%以上になったか否かを判定してもよい。制御部210Aは、充電率(SOC)が65%未満である(電池電圧が4.2Vに到達していない)と判定した場合(NO)、ステップS201の処理を繰り返す。一方、制御部210Aは、充電率(SOC)が65%以上になった(電池電圧が4.2Vに到達した)と判定した場合(YES)、ステップS203の処理に進む。
【0067】
(ステップS203)制御部210Aは、内部抵抗(IR)を測定し、測定値をIRaに代入する。そして、ステップS205の処理に進む。
【0068】
(ステップS205)制御部210Aは、所定時間(ΔtL)を計時し、所定時間(ΔtL)経過すると、ステップS207の処理へ進む。なお、制御部210Aは、所定時間(ΔtL)の経過に代えて、充電率(SOC)が例えば5%増加したことに応じてステップS207の処理へ進んでもよい。
【0069】
(ステップS207)制御部210Aは、内部抵抗(IR)を測定し、測定値をIRbに代入する。そして、制御部210Aは、内部抵抗の変化量ΔIR(ΔIR=IRb-IRa)を算出し、ステップS209の処理に進む。
【0070】
(ステップS209)制御部210Aは、内部抵抗の変化量ΔIRが一定値IRth(例えば、5mΩ)以上減少したか否かを判定する。制御部210Aは、内部抵抗の変化量ΔIRが一定値IRth以上減少していないと判定した場合(NO)、ステップS205の処理に戻る。一方、制御部210Aは、内部抵抗の変化量ΔIRが一定値IRth以上減少したと判定した場合(YES)、ステップS211の処理に進む。
【0071】
(ステップS211)制御部210Aは、最後に測定した内部抵抗(IR)をIRcに代入し、ステップS213の処理に進む。最後に測定した内部抵抗(IR)とは、内部抵抗の変化量ΔIRが一定値IRth以上減少したと判定したときのIRbである。以降の処理では、制御部210Aは、充電率(SOC)が1%増加するごとに内部抵抗を測定し、内部抵抗の変化量ΔIRを検出する。
【0072】
(ステップS213)制御部210Aは、充電率(SOC)が1%増加したか否かを判定する。制御部210Aは、充電率(SOC)が1%増加していない間(NO)は待機し、1%増加したと判定した場合(YES)、ステップS215の処理に進む。なお、上記の1%は一例であって、これに限定されるものではない。
【0073】
(ステップS215)制御部210Aは、内部抵抗(IR)を測定し、測定値をIRdに代入する。そして、制御部210Aは、内部抵抗の変化量ΔIR(ΔIR=IRd-IRc)を算出し、ステップS217の処理に進む。
【0074】
(ステップS217)制御部210Aは、ステップS215で算出した内部抵抗の変化量ΔIRに基づいて、内部抵抗が最小となるポイントであるか否かを判定する。例えば、制御部210Aは、内部抵抗の変化量ΔIRが0mΩ以上2mΩ以下である場合(ΔIR=0mΩ又は0mΩ<ΔIR≦2mΩ)、内部抵抗が最小となるポイントであると判定する。制御部210Aは、内部抵抗が最小となるポイントではないと判定した場合(NO)、ステップS211の処理に戻り、最後に測定した内部抵抗の値IRdをIRcに代入する。そして、制御部210Aは、充電率(SOC)が1%増加した後に再度内部抵抗(IR)を測定し、内部抵抗が最小となるポイントであるか否かを判定する。一方、制御部210Aは、内部抵抗が最小となるポイントであると判定した場合(YES)、ステップS219の処理に進む。
【0075】
(ステップS219)制御部210Aは、充電中の内部抵抗が最小となるポイントとして設定する。即ち、制御部210Aは、充電容量の積算開始ポイントとして設定する。
【0076】
図8に戻り、算出部216Aは、充電中に検出部215Aにより検出された内部抵抗が最小となるポイントに基づいて、当該内部抵抗が最小となる時点から満充電状態になるまでの充電容量に基づいて、電池20Aの満充電容量を算出する。例えば、制御部210Aには、充電中に内部抵抗が最小となる時点での充電率(例えば、充電率80%)が予め設定されている。算出部216Aは、充電中に内部抵抗が最小となる時点から満充電状態(例えば、充電率80%~100%)になるまでの充電容量Cを、当該期間の電池電圧の測定結果と充電電流の測定結果とに基づいて積算して求める。そして、算出部216Aは、この充電率80%~100%までの充電容量Cに基づいて、前述した式2により満充電容量(FCC)を算出する。
【0077】
更新部217は、算出部216Aによる算出結果に基づいて電池20Aの満充電容量の初期値を現在の設定値に適宜更新していく。つまり、更新部217は、予め設定されている満充電容量の初期値を、経年劣化に応じて算出部216Aにより算出された満充電容量の値で更新して補正する。なお、更新は、算出部216Aによる満充電容量の算出の度に行われてもよいし、算出値が設定値より低下した場合(或いは、一定以上低下した場合)のみ行われてもよい。
【0078】
即ち、本実施形における更新部217は、充電中に内部抵抗測定部213Aにより測定された内部抵抗の変化に基づいて特定される時点以降の充電容量に基づいて、電池20Aの満充電容量を更新する。具体的には、更新部217は、充電中に内部抵抗測定部213Aにより測定された内部抵抗が最小となる時点から満充電状態になるまでの充電容量と、予め設定されている充電率(例えば、充電率80%)に基づいて電池20Aの満充電容量を更新する。
【0079】
以上説明したように、本実施形態に係る電池20A(二次電池の一例)は、制御部210A(充電制御装置の一例)を備えている。制御部210Aは、電池20Aの内部抵抗を測定すし、充電中の内部抵抗の変化に基づいて特定される時点(例えば、ピーク)以降の充電容量に基づいて、電池20Aの満充電容量を更新する。
【0080】
これにより、電池20Aは、完全放電をさせなくとも充電中の内部抵抗の変化を利用することにより、実使用でも使用頻度の高い充電領域の充電で満充電容量を把握して更新することができる。よって、電池20Aは、実使用において満充電容量を適宜更新することができる。また、電池20又は電子機器10は、経年劣化などにより電池20の満充電容量が変化しても、常に精度の高い残容量をユーザに通知することができる。
【0081】
例えば、充電中に内部抵抗が最小となる時点での電池20Aの充電率が予め設定されている。そして、制御部210Aは、充電中に内部抵抗が最小となる時点から満充電状態になるまでの充電容量と、予め設定されている充電率とに基づいて電池20Aの満充電容量を更新する。
【0082】
これにより、電池20Aは、充電中の期間の中で、内部抵抗が最小となる時点の充電率が決まっていることを利用して、実使用でも使用頻度の高い部分的な充電で満充電容量を把握して更新することができる。
【0083】
なお、検出部215Aは、充電中に内部抵抗が最小となるポイントに代えて又は加えて内部抵抗が最大となるポイントを検出してもよい。例えば、充電中に内部抵抗が最小となる時点での電池20Aの充電率(例えば、80%)に代えて又は加えて最大となる時点での電池20Aの充電率(例えば、95%)が予め設定されている。そして、算出部216Aは、充電中に内部抵抗が最小となる時点から満充電状態になるまでの充電容量に基づいて満充電容量を算出するのに代えて、内部抵抗が最大となる時点から満充電状態になるまでの充電容量に基づいて満充電容量を算出してもよい。また、算出部216Aは、充電中に内部抵抗が最小となる時点から最大となる時点までの充電容量に基づいて満充電容量を算出してもよい。
【0084】
図11は、満充電容量を算出すための充電容量の測定期間の3つの例を示す図である。(1)は内部抵抗が最小となる時点(充電率80%)から満充電状態(充電率100%)になるまでの充電容量の測定結果C1を用いて満充電容量を算出する場合の充電容量の測定期間を示している。(2)は内部抵抗が最小となる時点(充電率80%)から最大となる時点(充電率95%)になるまでの充電容量の測定結果C2を用いて満充電容量を算出する場合の充電容量の測定期間を示している。(3)は内部抵抗が最大となる時点(充電率95%)から満充電状態(充電率100%)になるまでの充電容量の測定結果C3を用いて満充電容量を算出する場合の充電容量の測定期間を示している。
【0085】
このように、充電中に内部抵抗が最大となる時点での電池20Aの充電率が予め設定されており、制御部210Aは、充電中に内部抵抗が最大となる時点から満充電状態になるまでの充電容量と、予め設定されている充電率とに基づいて電池20Aの満充電容量を更新してもよい。
【0086】
これにより、電池20Aは、充電中の期間の中で、内部抵抗が最大となる時点の充電率が決まっていることを利用して、実使用でも使用頻度の高い部分的な充電で満充電容量を把握して更新することができる。
【0087】
また、充電中に内部抵抗が最小となる時点及び最大となる時点それぞれでの電池20Aの充電率が予め設定されており、制御部210Aは、充電中に内部抵抗が最小となる時点から最大となる時点までの充電容量と、予め設定されている充電率とに基づいて電池20Aの満充電容量を更新してもよい。
【0088】
これにより、電池20Aは、充電中の期間の中で、内部抵抗が最小となる時点と最大となる時点の充電率が決まっていることを利用して、実使用でも使用頻度の高い部分的な充電で満充電容量を把握して更新することができる。
【0089】
なお、充電中の内部抵抗の変化の中で生じる複数のピークのうち、最小または最大となるピーク以外のピークを充電容量の測定を開始するポイントまたは終了するポイントとして用いてもよい。
【0090】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
第2の実施形態では、電池20Aの内部抵抗の変化を利用して満充電容量を更新する例を説明したが、本実施形態では、内部抵抗の測定方法について詳しく説明する。
【0091】
図12は、本実施形態に係る電池セル220の等価回路を示す電池20Aのブロック図である。この図において、図8の各部に対応する構成には同一の符号を付しており、その説明を省略する。図示する内部抵抗(IR)は、電池セル220の内部の抵抗成分である。充電中は内部抵抗(IR)に電流が流れるため電圧(V2)が発生する。そのため、充電電流(Ic)が流れているとき(充電中)と流れていないとき(非充電中)とで電池20Aの電池電圧(Vc)は異なる。充電電流(Ic)が流れているときは、電池セル220の電圧源による電圧(V1)と内部抵抗(IR)で発生する電圧(V2=IR×Ic)の和が電池電圧(Vc)となる。一方、充電電流(Ic)が流れていないときは、電池セル220の電圧源による電圧(V1)が電池電圧(Vc)となる。よって、内部抵抗測定部213Aは、充電電流(Ic)が流れているときの電池電圧(Vc)と充電電流(Ic)が流れていないときの電池電圧(Vc)とを測定し、その差分に基づいて内部抵抗(IR)を測定することができる。
【0092】
図13は、本実施形態に係る制御部210Aの内部回路の概略の一例を示す模式図である。制御部210Aは、MPU、SCP(Self Control Protector)、Safty IC、Thermistor、FETなどを含んで構成されている。制御部210Aは、充電期間中に、充電電流(Ic)が流れているときの電池電圧(Vc)を測定するとともに、電池セル220への充電経路に接続されているFETを一時的に遮断することで、充電電流(Ic)が流れていないときの電池電圧(Vc)を測定する。
【0093】
内部抵抗測定部213Aは、電池20Aの充電期間中に充電電流を一時的に停止させることにより、停止前の電池20Aの電圧と停止中の電池20Aの電圧との差分に基づいて電池20Aの内部抵抗(IR)を算出する。図14を参照して、具体的に説明する。
【0094】
図14は、本実施形態に係る内部抵抗の測定時の電圧・電流波形を示すグラフである。ここでは、充電電流(Ic)が流れているときの電池電圧(Vc=V1+V2)をCCV(Closed Circuit Voltage)としている。また、FETを一時的にOFF(Cut off)に制御することで充電電流(Ic)が流れていないときの電池電圧(Vc=V1)をOCV(Open Circuit Voltage)とする。内部抵抗(IR)は、以下の式3により算出することができる。
【0095】
IR=(CCV-OCV)/Ic ・・・(式3)
【0096】
図15は、本実施形態に係る内部抵抗測定処理の一例を示すフローチャートである。この図15を参照して、制御部210Aが実行する内部抵抗測定処理の動作を説明する。この内部抵抗測定処理は電池20Aの充電期間において実行される。
(ステップS301)制御部210Aは、電池電圧(Vc=V1+V2)を測定し、測定値をCCVに代入する。そして、ステップS303の処理に進む。
(ステップS303)制御部210Aは、充電電流(Ic)を測定し、ステップS305の処理に進む。
(ステップS305)制御部210Aは、FETをOFFに制御し、電池セル220への充電電流(Ic)の供給を停止する。そして、ステップS307の処理に進む。
(ステップS307)制御部210Aは、電池電圧(Vc=V1)を測定し、測定値をOCVに代入する。そして、ステップS309の処理に進む。
(ステップS309)制御部210Aは、FETをONに制御し、電池セル220への充電電流(Ic)の供給を再開する。そして、ステップS311の処理に進む。
(ステップS311)制御部210Aは、測定値CCV、OCV、ICを用いて式3により内部抵抗(IR)を算出する。
【0097】
制御部210Aは、上記の測定処理を電池20Aの充電期間にわたって複数回実行する。これにより、内部抵抗測定部213Aは、電池20Aの充電期間にわたって電池20Aの内部抵抗を複数回測定する。検出部215Aは、内部抵抗測定部213Aにより測定された内部抵抗の変化に基づいて内部抵抗のピークを検出する。例えば、検出部215Aは、内部抵抗測定部213Aにより複数回にわたって測定された内部抵抗の値の変化量が所定の閾値以下(例えば、0mΩ又は2mΩ以下)になった場合、ピークとして検出する。
【0098】
また、内部抵抗測定部213Aは、内部抵抗のピークを検出する際に内部抵抗の測定頻度(測定周期)を変更する。前述したように、内部抵抗を測定する際には一時的に充電電流を停止させるため、常時高頻度で測定すると満充電状態になるまでの充電時間に影響を及ぼす場合がある。そのため、検出するピークの近辺となる期間では高頻度で測定することにより測定精度を上げ、それ以外の期間では測定頻度を下げることで、充電時間への影響を抑制する。
【0099】
図16は、本実施形態に係る充電期間中の内部抵抗の測定タイミングの第1例を示すグラフである。この図は、内部抵抗が最小(IRmin)となるポイント(時刻tc)を検出する際の内部抵抗の測定タイミングを示している。この図では、横軸を充電時間として、符号131が示す線が電池電圧(Vc[V])、符号132が示す線が充電電流(Ic[A])、符号133が示す線が内部抵抗(IR[mΩ])、符号134が示す線が充電率(SOC[%])を示している。
【0100】
内部抵抗測定部213Aは、充電率(SOC)が60%未満の期間T11では、低い周期(例えば、SOCが10%増加する毎)で内部抵抗(IR)を測定する。また、内部抵抗測定部213Aは、充電率(SOC)が60%以上になると、内部抵抗の測定頻度を高くする。例えば、内部抵抗測定部213Aは、充電率(SOC)が60%に達すると、SOCが1%増加する毎に内部抵抗(IR)を測定する。なお、充電率(SOC)が60%になる電池電圧(Vc)を所定の閾値として設定し、内部抵抗測定部213Aは、電圧測定部212により測定された電池電圧(Vc)が所定の閾値に達した場合、内部抵抗(IR)の測定頻度を高くしてもよい。
【0101】
また、内部抵抗測定部213Aは、検出部215Aにより内部抵抗(IR)のピーク(最小となるポイント)が検出されたことに応じて測定頻度を低くする、つまり、内部抵抗測定部213Aは、充電率(SOC)が60%未満の期間T11では測定頻度を低くし、充電率(SOC)が60%に達してから内部抵抗(IR)が最小となるポイントが検出されるまでの期間T12は、測定頻度を高くし、最小となるポイントが検出された後は再び測定頻度を低くする。これにより、検出ポイントの精度を高くしながら、満充電状態になるまでの充電時間への影響(充電時間が長くなってしまうこと)を抑制することができる。なお、内部抵抗測定部213Aは、期間T13における測定頻度を期間T11における測定頻度よりさらに低くしてもよい。また、内部抵抗測定部213Aは、期間T13では、充電時間の経過とともに測定頻度を徐々に低くしてもよいし、測定を停止してもよい。
【0102】
なお、以下では、内部抵抗の測定頻度が低い測定モードを低周期測定モード、内部抵抗の測定頻度が高い測定モードを高周期測定モードとも称する。
【0103】
次に、図17を参照して、内部抵抗の測定頻度(測定周期)を変更して内部抵抗が最小となるポイントを検出する内部抵抗ピーク検出処理の動作を説明する。
図17は、本実施形態に係る内部抵抗ピーク検出処理の一例を示すフローチャートである。この内部抵抗ピーク検出処理は、電池20Aの充電開始に応じて開始される。開始時点では、低周期測定モードに設定される。
【0104】
(ステップS401)制御部210Aは、電池20Aの内部抵抗(IR)を測定する。具体的には、制御部210Aは、図15に示す内部抵抗測定処理を実行することにより内部抵抗(IR)を測定する。そして、ステップS403の処理に進む。
【0105】
(ステップS403)制御部210Aは、充電電流(Ic)が流れていないときの電池電圧(Vc=V1)を確認する。この電池電圧(Vc=V1)は、ステップS401で実行された内部抵抗測定処理の中で測定された電圧である。そして、ステップS405の処理に進む。
【0106】
(ステップS405)制御部210Aは、ステップS401で測定された電池電圧(Vc=V1)が3.9V以上であるか否かを判定する。この3.9Vは、例えば、充電率(SOC)が60%に達したときの電池電圧(Vc=V1)の一例である。即ち、制御部210Aは、この判定処理で充電率(SOC)が60%に達したか否かを判定している。制御部210Aは、電池電圧(Vc=V1)が3.9V未満であると判定した場合(NO)、ステップS407の処理に進む。一方、制御部210Aは、電池電圧(Vc=V1)が3.9V以上であると判定した場合(YES)、ステップS409の処理に進む。
【0107】
(ステップS407)制御部210Aは、充電率(SOC)が10%増加したか否かを判定する。制御部210Aは、充電率(SOC)が10%増加していない間(NO)は待機し、10%増加したと判定した場合(YES)、ステップS401の処理に戻り、電池20Aの内部抵抗(IR)を測定する。即ち、制御部210Aは、電池電圧(Vc=V1)が3.9V未満(図16の期間T11)では、充電率(SOC)が10%増加する毎に内部抵抗(IR)を測定する(低周期測定モード)。なお、この充電率(SOC)が10%増加する毎に測定する周期は、低周期測定モードにおける測定周期の一例であって、これに限定されるものではない。一方、制御部210Aは、充電率(SOC)が10%増加したと判定した場合(YES)、ステップS409の処理に進む。
【0108】
(ステップS409)制御部210Aは、低周期測定モードから高周期測定モードへ遷移させる。そして、ステップS411の処理に進む。
【0109】
(ステップS411)制御部210Aは、最後に測定した内部抵抗(IR)をIRcに代入し、ステップS413の処理に進む。最後に測定した内部抵抗(IR)とは、ステップS405において電池電圧(Vc=V1)が3.9V以上であると判定されたときの内部抵抗IRの測定値である。以降の処理では、制御部210Aは、充電率(SOC)が1%増加するごとに内部抵抗を測定し、内部抵抗の変化量ΔIRを検出する。
【0110】
(ステップS413)制御部210Aは、充電率(SOC)が1%増加したか否かを判定する。制御部210Aは、充電率(SOC)が1%増加していない間(NO)は待機し、1%増加したと判定した場合(YES)、ステップS415の処理に進む。なお、この充電率(SOC)が1%増加する毎に測定する周期は、高周期測定モードにおける測定周期の一例であって、これに限定されるものではない。高周期測定モードの測定周期は、低周期測定モードの測定周期よりも高周期であればよい。
【0111】
(ステップS415)制御部210Aは、内部抵抗(IR)を測定し、測定値をIRdに代入する。そして、制御部210Aは、内部抵抗の変化量ΔIR(ΔIR=IRd-IRc)を算出し、ステップS417の処理に進む。
【0112】
(ステップS417)制御部210Aは、ステップS415で算出した内部抵抗の変化量ΔIRに基づいて、内部抵抗が最小となるポイントであるか否かを判定する。例えば、制御部210Aは、内部抵抗の変化量ΔIRが0mΩ以上2mΩ以下である場合(ΔIR=0mΩ又は0mΩ<ΔIR≦2mΩ)、内部抵抗が最小となるポイントであると判定する。制御部210Aは、内部抵抗が最小となるポイントではないと判定した場合(NO)、ステップS411の処理に戻り、最後に測定した内部抵抗の値IRdをIRcに代入する。そして、制御部210Aは、充電率(SOC)が1%増加した後に再度内部抵抗(IR)を測定し、内部抵抗が最小となるポイントであるか否かを判定する。一方、制御部210Aは、内部抵抗が最小となるポイントであると判定した場合(YES)、ステップS419の処理に進む。
【0113】
(ステップS419)制御部210Aは、充電中の内部抵抗が最小となるポイントとして設定する。即ち、制御部210Aは、充電容量の積算開始ポイントとして設定する。そして、ステップS421の処理に進む。
(ステップS421)制御部210Aは、高周期測定モードから低周期測定モードへ戻す。なお、制御部210Aは、ステップS401~S409の定周期測定モードと同じ測定周期に戻してもよいし、さらに低周期にしてもよい。また、制御部210Aは、充電時間の経過とともに測定頻度を徐々に低くしてもよいし、満充電状態になる前に測定を停止してもよい。
【0114】
なお、図16及び図17を参照して、内部抵抗が最小となるポイントを検出する際に高周期測定モードに遷移する例を説明したが、内部抵抗の他のピークを検出する際に、同様に高周期測定モードに遷移してもよい。
【0115】
図18は、本実施形態に係る充電期間中の内部抵抗の測定タイミングの第2例を示すグラフである。この図では、図16と同様に、横軸を充電時間として、符号131が示す線が電池電圧(Vc[V])、符号132が示す線が充電電流(Ic[A])、符号133が示す線が内部抵抗(IR[mΩ])、符号134が示す線が充電率(SOC[%])を示している。
【0116】
図示する例では、内部抵抗が最小(IRmin)となるポイント(時刻tc)に加え、内部抵抗が最大(IRmax)となるポイント(時刻tm)を検出する際も低周期測定モードから高周期測定モードに遷移させている。また、内部抵抗が最小となるポイントより前の2つのピーク(IRp1、IRp2)を検出する際も低周期測定モードから高周期測定モードに遷移させている。このように、制御部210Aは、検出対象のピークの少し前のタイミングからピークが検出されるまでの期間について、低周期測定モードから高周期測定モードに遷移させる。検出対象となるピークは、内部抵抗が最小となるポイント、及び内部抵抗が最大となるポイントのいずれか一方又は両方であってもよいし、これらに代えて又は加えて内部抵抗が最小となるポイントより前のピーク(例えば、IRp1、IRp2等)であってもよい。
【0117】
以上説明したように、本実施形態に係る電池20A(二次電池の一例)の制御部210Aは、電池20Aの充電期間にわたって電池20Aの内部抵抗を複数回測定し、測定した内部抵抗の変化に基づいて内部抵抗のピークを検出する。また、制御部210Aは、検出した内部抵抗のピークを参照して電池20Aの満充電容量を検出する。
【0118】
これにより、電池20Aは、内部抵抗のピークを精度よく検出できる。また、電池20Aは、内部抵抗のピークを検出することにより、完全放電させなくとも、実使用でも使用頻度の高い充電領域の充電で満充電容量を精度よく検出できる。
【0119】
また、制御部210Aは、電池20Aの充電期間に複数回にわたって測定された内部抵抗の値の変化量が所定の閾値以下(例えば、0mΩ又は2mΩ以下)になった場合、内部抵抗のピークとして検出する。
【0120】
これにより、電池20Aは、内部抵抗のピークを容易に且つ精度よく検出できる。
【0121】
また、制御部210Aは、電池20Aの電圧を測定し、電池20Aの充電期間中に測定した電池電圧が所定の閾値(例えば3.9V)に達した場合、内部抵抗の測定頻度を高くする。
【0122】
これにより、電池20Aは、充電期間のうちの一部の期間のみ測定頻度を高くするため、充電時間への影響を抑制しつつ、内部抵抗のピークを精度よく検出できる。
【0123】
また、制御部210Aは、内部抵抗のピークが検出されたことに応じて、測定頻度を低くする。
【0124】
これにより、電池20Aは、内部抵抗のピークが検出された後は測定頻度を低くするため、充電時間への影響を抑制しつつ、内部抵抗のピークを精度よく検出できる。
【0125】
なお、制御部210Aは、電池20Aの充電期間中に充電電流を一時的に停止させることにより、停止前の電池20Aの電圧と停止中の電池20Aの電圧との差分に基づいて電池20Aの内部抵抗を算出する。
【0126】
これにより、電池20Aは、内部抵抗を容易に且つ精度よく検出できる。
【0127】
なお、制御部210Aは、複数回測定した内部抵抗の変化に基づいて内部抵抗のピークを検出し、検出した内部抵抗のピークを参照しながら、定電流充電から定電圧充電への切り替わりポイント(点)を検出してもよい。例えば、電池20Aは、内部抵抗がピークとなる時点を基準に充電電流を測定して定電流充電から定電圧充電への切り替わりポイントを検出してもよいし、検出した定電流充電から定電圧充電への切り替わりポイントと内部抵抗がピークとなる時点との時間的な相関を確認して定電流充電から定電圧充電への切り替わりポイントを確定してもよい。
【0128】
これにより、電池20Aは、内部抵抗のピークを参照することにより、定電流充電から定電圧充電への切り替わりポイントを容易に且つ精度よく検出できる。よって、電池20Aは、完全放電をさせなくとも、実使用でも使用頻度の高い充電領域の充電で満充電容量を精度よく検出することができる。
【0129】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
前述の第2の実施形態において二次電池の内部抵抗が最小または最大となるポイントを検出することにより、当該ポイント以降の満充電になるまでの充電容量に基づいて満充電容量を算出して更新する例を説明したが、これは満充電容量(FCC)及び充電率(SOC)がある程度の誤差範囲に収まっている場合には有効である。仮に別の要因で満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差が大きくなった場合、内部抵抗の最小または最大となるポイントを検出するための測定期間がシフトしてしまい、正しく検出できない場合が考えられる。例えば、通常の使用環境よりも低温の環境で満充電容量の更新が行われた場合、低温環境では二次電池の容量が低下することから満充電容量が低い値に更新されてしまうことがある。この場合、次に通常の使用環境で使用されたときには、満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差が大きくなってしまう。
【0130】
図19は、満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差が少ない場合の充電特性の一例を示す図である。この図は、横軸を充電時間として、符号141が示す線が電池電圧(Vc[V])、符号142が示す線が充電電流(Ic[A])、符号144が示す線が充電率(SOC[%])を示している。ここでは、充電率(SOC)が60%~80%の期間を内部抵抗の測定期間T21としている。満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差が少なければ、この測定期間T21で内部抵抗を測定することにより、内部抵抗が最小となるポイントを精度よく検出することができる。測定期間T21の後、内部抵抗が最小となるポイントから満充電を検出するまで(時刻tfまで)の期間T31において、充電容量を測定することにより、満充電容量を精度よく更新することができる。
【0131】
一方、満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差が大きくなった場合の例を図20及び図21に示す。
図20は、満充電容量の更新値より実際の満充電容量の方が大きい場合の充電特性の一例を示す図である。この図は、図19と同様に、横軸を充電時間として、符号141が示す線が電池電圧(Vc[V])、符号142が示す線が充電電流(Ic[A])、符号144が示す線が充電率(SOC[%])を示している。満充電容量の更新値より実際の満充電容量の方が大きいため、実際には満充電容量に達していなくても、充電の途中の時点(時刻te)で満充電容量(FCC)の更新値に到達してしまうため、この更新値に基づいて充電率が100%と算出されてしまう。以降、実際に満充電状態と判定される時点(時刻tf)までの期間は充電率100%の状態が維持される。この充電率100%の状態が維持される「時刻te~時刻tf」の期間の幅(以下、「Hold幅」と称する)が長いほど、満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差が大きいことになる。例えば、満充電容量の更新値より実際の満充電容量の方がより大きいほど、Hold幅がより長くなる。
【0132】
Hold幅が長くなるほど充電率の立ち上がりが早くなる。そのため、内部抵抗を測定するための測定期間T22(充電率が60%~80%の期間)は、図19に示す誤差の少ない状態の測定期間T21に対して手前にシフトする。内部抵抗の測定期間が適正でなくなると、測定期間内に内部抵抗が最小となるポイントの候補が複数検出されたり、最小となるポイントが測定期間から外れてしまったりすることがあり、内部抵抗が最小となるポイントを正しく検出できないことがある。
【0133】
図21は、満充電容量の更新値より実際の満充電容量の方が小さい場合の充電特性の一例を示す図である。この図は、図19及び図20と同様に、横軸を充電時間として、符号141が示す線が電池電圧(Vc[V])、符号142が示す線が充電電流(Ic[A])、符号144が示す線が充電率(SOC[%])を示している。満充電容量の更新値より実際の満充電容量の方が小さいため、実際に満充電状態と判定される時点(時刻tf)に到達しても、満充電容量の更新値に基づいて算出される充電率は100%に達しない。但し、満充電状態と判定される時点(時刻tf)に到達すると、充電率の値が100%に訂正される(充電率の値がジャンプする)。この満充電容量の更新値に基づいて算出される充電率から訂正後の充電率100%まで差分(以下、「Jump幅」と称する)が大きい程、満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差が大きいことになる。例えば、満充電容量の更新値より実際の満充電容量の方がより小さいほど、Jump幅がより大きくなる。
【0134】
Jump幅が大きくなるほど充電率の立ち上がりが緩やかになる。そのため、内部抵抗を測定するための測定期間T23(充電率が60%~80%の期間)は、図19に示す誤差の少ない状態の測定期間T21に対して手前から開始され期間も長くなる。内部抵抗の測定期間が適正でなくなると、測定期間内に内部抵抗が最小となるポイントの候補が複数検出されたり、最小となるポイントが測定期間から外れてしまったりすることがあり、内部抵抗が最小となるポイントを正しく検出できないことがある。
【0135】
そこで、本実施形態では、満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差が大きい場合には、内部抵抗の測定期間の補正が行われる。例えば、充電率のHold幅が所定値(例えば、20分)以上の場合、または充電率のJump幅が所定値(例えば、3%)以上の場合、内部抵抗の測定期間の補正が行われる。
【0136】
図22は、本実施形態に係る二次電池の一例としての電池20Bの構成例を示すブロック図である。電池20Bは、制御部210Bと、電池セル220とを備えている。制御部210Bは、電流測定部211と、電圧測定部212と、内部抵抗測定部213Bと、検出部215Bと、算出部216Bと、更新部217とを備えている。なお、この図において、図4図8及び図12の各部に対応する構成には同一の符号を付しており、その説明を省略する。
【0137】
内部抵抗測定部213Bは、電流測定部211により測定された充電電流及び電圧測定部212により測定された電池電圧などに基づいて、電池20Bの内部抵抗を測定する。例えば、内部抵抗測定部213Bは、充電中に電池20Bの充電率が60%に達してから80%に達するまで(60%~80%)の測定期間にわたって電池20Bの内部抵抗を測定する。そして、検出部215Bは、内部抵抗測定部213Bにより測定期間に測定された内部抵抗の測定値に基づいて測定期間内の内部抵抗のピークを検出する。
【0138】
また、内部抵抗測定部213Bは、更新部217により更新された満充電容量の更新値と、更新後の充電による実際の満充電容量との差(誤差)が所定値以上の場合、内部抵抗の測定期間を補正する。そして、検出部215Bは、内部抵抗測定部213Bにより補正された測定期間内の内部抵抗の測定値に基づいて内部抵抗のピークを検出する。なお、内部抵抗のピークは、最小となるポイント及び最大となるポイントのいずれか一方でもよいし両方でもよいが、本実施形態では最小となるポイントの場合を例としている。
【0139】
図23は、充電率のHold幅が所定値(例えば、20分)以上の場合の測定期間の補正の一例を示す図である。この図は、横軸を充電時間として、符号143が示す線が内部抵抗(IR[mΩ])、符号144が示す線が充電率(SOC[%])を示している。例えば、内部抵抗測定部213Bは、Hold幅が所定値(例えば、20分)以上の場合には、測定期間T22(充電率60%から80%の期間)に対して測定開始の時点は変更せずに測定終了の時点を早めた測定期間T22sに変更する。測定期間を狭めることにより、内部抵抗が最小となるポイントの候補を絞り込み、最適な内部抵抗のピークを検出できるようになる。
【0140】
図24は、充電率のJump幅が所定値(例えば、3%)以上の場合の測定期間の補正の一例を示す図である。この図は、図24と同様に、横軸を充電時間として、符号143が示す線が内部抵抗(IR[mΩ])、符号144が示す線が充電率(SOC[%])を示している。例えば、内部抵抗測定部213Bは、Jump幅が所定値(例えば、20例えば、3%)以上の場合には、測定期間T23(充電率60%から80%の期間)に対して測定開始の時点を遅らせて測定終了の時点は変更しない測定期間T23sに変更する。この場合も、測定期間を狭めることにより、内部抵抗が最小となるポイントの候補を絞り込み、最適な内部抵抗のピークを検出できるようになる。
【0141】
なお、上述した測定期間の補正では、測定開始の時点と測定終了の時点のいずれか一方を変更する方法を説明したが、当該方法は一例であってこれに限られるものではない。例えば、測定期間の補正の方法としては、測定開始の時点と測定終了の時点の両方を変更してもよいし、測定期間を全体的に手前或いは後ろにシフトしてもよい。
【0142】
満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差が大きい場合でも、補正後の測定期間から内部抵抗が最小となるポイントが適切に検出できれば、算出部216Bは、この内部抵抗が最小となる時点から満充電状態になるまでの充電容量に基づいて、電池20Bの満充電容量を算出する。更新部217は、算出部216Bによる算出結果に基づいて電池20Bの満充電容量の設定値を更新する。これにより、電池20Bは満充電容量を適切に更新できる。
【0143】
なお、測定期間を補正しても内部抵抗のピーク(例えば、内部抵抗が最小となるポイント)を正しく検出できない場合もある。例えば、測定期間を補正しても、内部抵抗の値が最小に近い僅差のポイントが複数あって1つに絞り込めない場合や、測定期間を補正しても内部抵抗が最小となるポイントからの差が大きすぎる場合には、内部抵抗が最小となるポイントを検出できない場合がある。この場合、電池20Bは、満充電容量の更新値に対して予め設定された値で補正して更新してもよい。
【0144】
例えば、満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差が大きい場合、算出部216Bは、更新部217により更新された満充電容量の補正値を算出する。例えば、充電率のHold幅が所定値(例えば、20分)以上の場合、算出部216Bは、前回の満充電容量の更新値に対して予め設定された割合(例えば、+3%~+9%)の分をオフセットした補正値を算出する。また、充電率のJump幅が所定値(例えば、3%)以上の場合、算出部216Bは、前回の満充電容量の更新値に対して予め設定された割合(例えば、-3%~-9%)の分をオフセットした補正値を算出する。各補正に用いられるオフセットの量は、予め一定の値に設定されていてもよいし、予設定された割合の範囲(例えば、+3%~+9%、-3%~-9%など)の中から最適値が選択されてもよい。例えば、満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差の大きさに応じて最適値が選択されてもよい。
【0145】
また、測定期間を補正することにより内部抵抗が最小となるポイントが検出された場合も、算出部216Bは、満充電容量に対して予め設定された割合の分をオフセットして補正値を算出してもよい。単に満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差の大きさに応じてオフセットの量を決めるのではなく、内部抵抗が最小となるポイントの検出と合わせることにより、満充電容量の更新の精度を高めることができる。
【0146】
次に、図25を参照して、制御部210Bが実行する満充電容量の更新処理の動作について説明する。図25は、本実施形態に係る満充電容量の更新処理の一例を示すフローチャートである。
【0147】
(ステップS501)制御部210Bは、充電を開始すると、充電率が60%になるとステップS503の処理へ進む。
【0148】
(ステップS503)制御部210Bは、内部抵抗(IR)を測定し、ステップS505の処理へ進む。
【0149】
(ステップS505)制御部210Bは、測定した内部抵抗の値に充電率(SOC)を関連付けて記憶し、満充電容量(FCC)の算出を開始する。そして、ステップS507の処理へ進む。
【0150】
(ステップS507)制御部210Bは、内部抵抗(IR)の測定の終了ポイント(例えば、充電率80%)であるか否かを判定する。制御部210Bは、内部抵抗(IR)の測定の終了ポイントではないと判定した場合(NO)、ステップS501に戻り、充電及び内部抵抗(IR)の測定を継続する。一方、制御部210Bは、内部抵抗(IR)の測定の終了ポイントであると判定した場合(YES)、内部抵抗(IR)の測定を終了し、ステップS509の処理へ進む。上述のステップS501~S507の処理は、充電中の内部抵抗(IR)の測定期間に行われる処理である。
【0151】
(ステップS509)制御部210Bは、内部抵抗(IR)の測定期間が終了すると、内部抵抗(IR)の測定無しで充電を行い、ステップS511の処理へ進む。
【0152】
(ステップS511)制御部210Bは、充電電流の測定値に基づいて満充電状態を検出したか否かを判定する。制御部210Bは、満充電状態を検出していないと判定した場合(NO)、ステップS509の処理に戻り、内部抵抗(IR)の測定無しの充電を継続する。一方、制御部210Bは、満充電状態を検出したと判定した場合(YES)、ステップS513の処理へ進む。
【0153】
(ステップS513)制御部210Bは、充電を終了し、ステップS515の処理へ進む。
【0154】
(ステップS515)制御部210Bは、満充電状態が検出されるまでの充電率のHold幅が所定値(例えば、20分)以上であるか否かを判定する。制御部210Bは、Hold幅が所定値(例えば、20分)以上であると判定した場合(YES)、ステップS521の処理へ進む。一方、制御部210Bは、Hold幅が所定値(例えば、20分)未満であると判定した場合(NO)、ステップS517の処理へ進む。
【0155】
(ステップS517)制御部210Bは、満充電状態が検出されたときの充電率のJump幅が所定値(例えば、3%)以上であるか否かを判定する。制御部210Bは、Jump幅が所定値(例えば、3%)以上であると判定した場合(YES)、ステップS531の処理へ進む。一方、制御部210Bは、Jump幅が所定値(例えば、3%)未満であると判定した場合(NO)、ステップS519の処理へ進む。
【0156】
(ステップS519)制御部210Bは、ステップS501~S507の内部抵抗(IR)の測定期間内で内部抵抗(IR)が最小となるポイントから満充電状態になるまでの充電容量に基づいて算出した満充電容量(FCC)に更新する。
【0157】
(ステップS521)制御部210Bは、ステップS515においてHold幅が所定値(例えば、20分)以上であると判定されたため、内部抵抗(IR)の測定期間を補正し(図23参照)、補正した測定期間内で測定された内部抵抗の測定値に基づいて内部抵抗が最小となるポイントを検出する。なお、制御部210Bは、内部抵抗(IR)の測定期間の中心から-3%~-9%オフセットした範囲内で内部抵抗が最小となるポイントを検出するようにしてもよい。そして、ステップS523の処理へ進む。
【0158】
(ステップS523)制御部210Bは、内部抵抗(IR)が最小となるポイントを検出できたか否かを判定する。制御部210Bは、内部抵抗(IR)が最小となるポイントを検出できたと判定した場合(YES)、ステップS525の処理へ進む。一方、制御部210Bは、内部抵抗(IR)が最小となるポイントを検出できなかったと判定した場合(NO)、ステップS527の処理へ進む。
【0159】
(ステップS525)制御部210Bは、ステップS521で検出された内部抵抗(IR)が最小となるポイントから満充電状態になるまでの充電容量に基づいて算出した満充電容量(FCC)に更新する。
【0160】
(ステップS527)制御部210Bは、前回の満充電容量(FCC)の更新値に対して予め設定された割合(例えば、+9%)の分をオフセットした補正値に満充電容量(FCC)を更新する。
【0161】
(ステップS531)制御部210Bは、ステップS517においてJump幅が所定値(例えば、3%)以上であると判定されたため、内部抵抗(IR)の測定期間を補正し(図24参照)、補正した測定期間内で測定された内部抵抗の測定値に基づいて内部抵抗が最小となるポイントを検出する。なお、制御部210Bは、内部抵抗(IR)の測定期間の中心から+3%~+9%オフセットした範囲内で内部抵抗が最小となるポイントを検出するようにしてもよい。そして、ステップS53の処理へ進む。
【0162】
(ステップS533)制御部210Bは、内部抵抗(IR)が最小となるポイントを検出できたか否かを判定する。制御部210Bは、内部抵抗(IR)が最小となるポイントを検出できたと判定した場合(YES)、ステップS535の処理へ進む。一方、制御部210Bは、内部抵抗(IR)が最小となるポイントを検出できなかったと判定した場合(NO)、ステップS537の処理へ進む。
【0163】
(ステップS535)制御部210Bは、ステップS531で検出された内部抵抗(IR)が最小となるポイントから満充電状態になるまでの充電容量に基づいて算出した満充電容量(FCC)に更新する。
【0164】
(ステップS537)制御部210Bは、前回の満充電容量(FCC)の更新値に対して予め設定された割合(例えば、-9%)の分をオフセットした補正値に満充電容量(FCC)を更新する。
【0165】
また、制御部210Bは、満充電容量(FCC)及び充電率(SOC)の誤差が大きく測定範囲内で内部抵抗(IR)が最小となるポイントが検出できない場合、最大のオフセット量(例えば、+9%または-9%)で満充電容量(FCC)を補正して更新し、補正が足りない場合には徐々にオフセット量を減らしながら段階的に繰り返し更新してもよい。例えば、満充電容量(FCC)及び充電率(SOC)の誤差が-20%であった場合、制御部210Bは、以下の(1)~(4)に示すように段階的に満充電容量(FCC)を更新してもよい。
【0166】
(1)制御部210Bは、1回目の充電で20分以上のHold幅を検出した場合、1回目の補正では前回の満充電容量(FCC)の更新値に対して+9%オフセットした補正値に満充電容量(FCC)を更新する。これにより、誤差は、-20%から-11%になる。
【0167】
(2)制御部210Bは、2回目の充電で20分以上のHold幅を検出した場合、2回目の補正では前回(上記1回目の補正)の満充電容量(FCC)の更新値に対して+6%オフセットした補正値に満充電容量(FCC)を更新する。これにより、誤差は、-11%から-5%になる。
【0168】
(3)制御部210Bは、3回目の充電で20分以上のHold幅を検出した場合、3回目の補正では前回(上記2回目の補正)の満充電容量(FCC)の更新値に対して+3%オフセットした補正値に満充電容量(FCC)を更新する。これにより、誤差は、-5%から-2%になる。
【0169】
(4)制御部210Bは、上記1~3回の補正により。4回目の充電では20分未満のHold幅且つ3%未満のJump幅の状態で充電完了となる。
【0170】
このように、制御部210Bは、最初は最大のオフセット量で補正し、徐々にオフセット量を減らしながら段階的に繰り返し補正して更新することにより、最後(ここでは3回目)の補正では微調整を行うことができ、電池20Bの満充電容量を精度よく更新することができる。
【0171】
以上説明したように、本実施形態に係る電池20B(二次電池の一例)は、制御部210B(充電制御装置の一例)を備えている。制御部210Bは、充電中に電池20Bの充電率が第1の閾値(例えば60%)に達してから第2の閾値(例えば80%)に達するまでの測定期間にわたって電池20Bの内部抵抗を測定し、当該測定期間に測定された内部抵抗の測定値に基づいて測定期間内の内部抵抗のピークを検出する。
【0172】
これにより、電池20Bは、充電率に基づいて適切な期間に内部抵抗を測定することにより充電中の内部抵抗のピーク(例えば、内部抵抗が最小となるポイント)以降の充電容量に基づいて電池20Bの満充電容量を精度よく更新することができる。
【0173】
また、制御部210Bは、更新された満充電容量(前回の満充電容量の更新値)と更新後の充電による実際の満充電容量との差(誤差)が所定値以上(例えば、Hold幅が20分以上、またはJump幅が3%以上)の場合、内部抵抗の測定期間を補正する。そして、制御部210Bは、補正された測定期間内で測定された内部抵抗の測定値に基づいて内部抵抗のピークを検出する。
【0174】
これにより、電池20Bは、満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差が大きい場合でも、内部抵抗の測定期間を補正することにより内部抵抗のピークを検出することができるため、電池20Bの満充電容量を精度よく更新することができる。
【0175】
また、制御部210Bは、更新された満充電容量(前回の満充電容量の更新値)と更新後の充電による実際の満充電容量との差(誤差)が所定値以上(例えば、Hold幅が20分以上、またはJump幅が3%以上)の場合、更新された満充電容量を予め設定された割合(例えば、+3%~+9%、-3%~-9%など)で補正した値に更新してもよい。
【0176】
これにより、電池20Bは、満充電容量の更新値と実際の満充電容量との差(誤差)が大きく内部抵抗のピークを検出することができない場合であっても、一定の割合で満充電容量を補正して更新することができる。なお、電池20Bは、1回の補正では満充電容量の更新値と実際の満充電容量とに差が残ったとしても、複数回繰り返して補正することにより、精度よく満充電容量を更新することができる。
【0177】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
本実施形態では、内部抵抗のピークを検出することなく、満充電容量の更新値と実際の満充電容量との差に応じた容量分に基づいて満充電容量を補正して更新する構成について説明する。なお、本実施形態に係る電池20Bにおける制御部210Bの基本的な構成は図22に示す構成と同様であり、ここでは第4の実施形態と相違する処理について説明する。例えば、制御部210Bは、図20に示すHold幅や図21に示すJump幅に対応する充電容量の分をそのまま誤差分として、前回の満充電容量の更新値に対して補正する。
【0178】
図26は、Hold幅に対応する充電容量で満充電容量を補正する場合の説明図である。満充電容量の更新値より実際の満充電容量の方が大きい場合、算出部216Bは、Hold幅の期間における電流量または電力量の積算値Xを算出する。そして、算出部216Bは、この積算値Xを満充電容量の更新値に加えて補正した値を電池20Bの満充電容量として算出する。
【0179】
一例として、Hold幅における電流量の積算値が500mA、公称電圧が15.2V、及び前回の満充電容量の更新値が50.0Whであったとする。この場合、満充電容量の更新値の50.0Whを電流量に換算すると3.289Ah(50.0Wh/15.2V=3.289Ah)であるから、前回の満充電容量の更新値にHold幅における電流量の積算値を加えた補正後の満充電容量は、(3.289A+0.5A)×15.2V=57.59Whと算出される。
【0180】
図27は、Jump幅に対応する充電容量で満充電容量を補正する場合の説明図である。満充電容量の更新値より実際の満充電容量の方が小さい場合、算出部216Bは、Jump幅に対応する充電率の変化分を算出する。そして、算出部216Bは、この充電率の変化分に対応する容量分を満充電容量の更新値から減じて補正した値を電池20Bの満充電容量として算出する。
【0181】
一例として、Jump幅の充電率の変化分が5%、及び前回の満充電容量の更新値が50.0Whであった場合、補正後の満充電容量は、50.0Wh×0.95=47.5Whと算出される。
【0182】
次に、図28を参照して、制御部210Bが実行する満充電容量の更新処理の動作について説明する。図28は、本実施形態に係る満充電容量の更新処理の一例を示すフローチャートである。この図に示すステップS601~S613の各処理は、図25に示すステップS501~S513の各処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0183】
(ステップS615)制御部210Bは、満充電状態が検出されるまでの充電率のHold幅を検出したか否かを判定する。なお、制御部210Bは、Hold幅を検出したか否かを判定する際に、予め設定された閾値(例えば、1分、10分、20分など)を用いて判定してもよい。制御部210Bは、Hold幅が検出されたと判定した場合(YES)、ステップS621の処理へ進む。一方、制御部210Bは、Hold幅がされないと判定した場合(NO)、ステップS617の処理へ進む。
【0184】
(ステップS617)制御部210Bは、満充電状態が検出されたときの充電率のJump幅を検出したか否かを判定する。なお、制御部210Bは、Jump幅を検出したか否かを判定する際に、予め設定された閾値(例えば、1%、2%、3%など)を用いて判定してもよい。制御部210Bは、Jump幅を検出したと判定した場合(YES)、ステップS631の処理へ進む。一方、制御部210Bは、Jump幅を検出していないと判定した場合(NO)、ステップS619の処理へ進む。
【0185】
(ステップS619)制御部210Bは、ステップS601~S607の内部抵抗(IR)の測定期間内で内部抵抗(IR)が最小となるポイントから満充電状態になるまでの充電容量に基づいて算出した満充電容量(FCC)に更新する。
【0186】
(ステップS621)制御部210Bは、検出されたHold幅に応じた充電容量分を前回の満充電容量(FCC)の更新値に対して追加した補正値に満充電容量(FCC)を更新する。Hold幅に応じた容量分とは、例えば充電容量の積算値に相当する。
【0187】
(ステップS631)制御部210Bは、検出されたJump幅に応じた充電容量分を前回の満充電容量(FCC)の更新値からさ差し引いた補正値に満充電容量(FCC)を更新する。
【0188】
以上説明したように、本実施形態に係る電池20B(二次電池の一例)は、制御部210B(充電制御装置の一例)を備えている。制御部210Bは、更新された電池20Bの満充電容量(前回の満充電容量の更新値)と更新後の充電による実際の電池20Bの満充電容量との差(誤差)に応じた容量分に基づいて、更新された電池20Bの満充電容量を補正して更新する。
【0189】
これにより、電池20Bは、満充電容量の更新値と実際の満充電容量との差(誤差)に応じて適切に満充電容量を補正して更新することができる。なお、電池20Bは、1回の補正では満充電容量の更新値と実際の満充電容量とに差が残ったとしても、複数回繰り返して補正することにより、精度よく満充電容量を更新することができるようになる。
【0190】
<第6の実施形態>
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
本実施形態では、満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差が大きい場合に二次電池の充電率(SOC)と電池電圧OCV(Open Circuit Voltage)との対応関係を利用して満充電容量を更新する例について説明する。例えば満充電容量の更新値が異常な値となっていて実際の満充電容量との誤差が極端に大きい場合、内部抵抗の測定期間が本来測定したい期間とかけ離れてしまうこともあり得る。
【0191】
図29は、満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差が極端に大きい場合の充電特性の一例を示す図である。この図は、横軸を充電時間として、符号161が示す線が電池電圧(Vc[V])、符号162が示す線が充電電流(Ic[A])、符号164が示す線が満充電容量の異常な更新値で算出された異常時の充電率(SOC[%])、符号164Rが示す線が本来(実際)の充電率(SOC[%])、符号165が示す線が満充電容量の更新値(FCC[Wh])を示している。この図に示す例では満充電容量の更新値が異常に小さいことから、符号164が示す充電率(SOC)が急速に立ち上がり、本来の充電率20%程度のあたりで既に100%達にしている。そのため、充電率60%~80%となる内部抵抗の測定期間T25は、本来の充電率(SOC)の場合の測定期間T21に対して、大きく手前にずれてしまい、誤った測定期間となっている。
【0192】
そこで、本実施形態では、内部抵抗の測定を行うのではなく、充電率(SOC)と電池電圧OCVとの対応関係を利用することにより、異常となっている満充電容量の更新値を補正して、適切な満充電容量の値に更新する。
【0193】
図30は、本実施形態に係る二次電池の一例としての電池20Cの構成例を示すブロック図である。この図において、図4図8図12及び図22の各部に対応する構成には同一の符号を付しており、その説明を省略する。電池20Cは、制御部210Cと、電池セル220と、メモリ230Cとを備えている。制御部210Cは、電流測定部211と、電圧測定部212と、内部抵抗測定部213Cと、検出部215Cと、算出部216Cと、更新部217とを備えている。メモリ230Cには、電池20Cの充電率(SOC)と電池電圧(OCV)との対応関係が設定された設定情報としてSOC-OCVテーブル231Cが記憶されている。
【0194】
図31は、SOC-OCVテーブル231Cの一例を示す図である。このSOC-OCVテーブル231Cは、電池20Cの製造元または販売元等から提供されたデータ、或いは電池20Cを使用して実測したデータであり、充電率の値とそのときの電池電圧の値とが対応付けられている。図示する例では、例えば充電率30%のときの電池電圧は3.777V、充電率60%のときの電池電圧は3.964Vである。なお、この図に示すSOC-OCVテーブル231Cは、概要を説明する一例であって、データの数及び値などは任意に設定することができる。また、図32は、SOC-OCVテーブル231Cに対応するSOC-OCV特性のグラフを示す図である。
【0195】
電圧測定部212は、所定の条件において電池20Cの電圧を測定する。所定の条件とは、電池20Cの充電率が所定の範囲内(例えば、10%~90%)であり、且つ充電及び放電が行われていない状態である。例えば、電圧測定部212は、所定時間(例えばm20分)以上充電及び放電が行われていない状態で、充電率が所定の範囲内(例えば、10%~90%)のとき、電池20Cの電圧を測定する。この所定の条件は、例えば、電池20Cの充電が開始される前の状態であってもよい。なお、充電及び放電が行われていない状態とは、例えば、電圧の変動幅が±5mV以内及び電流の変動幅が±10mA以内の状態である。これは、充電または放電の直後は、電圧が安定せずに正確なOCVの値を測定できないためである。なお、充電率が所定の範囲内(例えば、10%~90%)であるときに測定するのは、図32に示すように充電率が低いときは電圧の変化が大きく測定誤差が大きく影響してしまうためと、充電率が高くなるまで待つメリットがないことによる。
【0196】
内部抵抗測定部213Cは、SOC-OCVテーブル231Cを参照して、電圧測定部212により上記の所定の条件で測定された電池20Cの電圧(OCV)に対応付けられている充電率を、電圧測定時の充電率として補正して設定する。この電池20Cの電圧(OCV)の測定値とSOC-OCVテーブル231Cによる特性とに基づいて、電圧測定時の充電率を補正することを、以下では「OCV補正」と称する。一例として、電圧測定部212により上記の所定の条件で測定された電池20Cの電圧(OCV)が3.777Vであった場合、SOC-OCVテーブル231Cを参照して、OCV補正により充電率を30%に設定する。
【0197】
そして、内部抵抗測定部213Cは、電池20Cの内部抵抗を測定する測定期間を、OCV補正により設定した充電率を基準として正しい測定期間(例えば、図29の測定期間T21(例えば、充電率60%~80%となる期間))になるように決定する。そして、検出部215Cは、内部抵抗測定部213Bにより測定期間に測定された内部抵抗の測定値に基づいて測定期間内の内部抵抗のピーク(例えば、最小となるポイント)を検出する。
【0198】
算出部216Cは、この内部抵抗のピーク(例えば、最小となるポイント)の時点から満充電状態になるまでの充電容量に基づいて、電池20Cの満充電容量を算出する。更新部217は、算出部216Cによる算出結果に基づいて電池20Cの満充電容量の設定値を更新する。
【0199】
これにより、電池20Cは、満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差が極端に大きい状態になったとしても、一定の精度を有する充電率に補正でき、充電動作時に元々意図していた測定範囲で内部抵抗を測定することにより、満充電容量を精度よく更新することができる。
【0200】
なお、電池20Cは、内部抵抗の測定を行わずに、OCV補正により設定した充電率をそのまま使用して満充電容量を更新してもよい。図33を参照して説明する。
【0201】
図33は、OCV補正により設定した充電率を使用して満充電容量を更新する例を説明する図である。この図は、横軸を充電時間として、符号161が示す線が電池電圧(Vc[V])、符号162が示す線が充電電流(Ic[A])、符号164が示す線が満充電容量の異常な更新値で算出された異常時の充電率(SOC[%])、符号164Sが示す線がOCV補正後の充電率(SOC[%])、符号165が示す線が満充電容量の更新値(FCC[Wh])を示している。
【0202】
ここでは、実際の満充電容量(例えば、90Wh)に対して満充電容量の更新値が極端に小さい値(例えば、10Wh)に更新されている状態であるとする。時刻tsにおいて、OCV補正により充電率が10%に設定された場合、この時刻tsから満充電となる時刻tfまでの充電期間(即ち、充電率10%から100%になるまでの期間)の充電容量の測定結果Csに基づいて、満充電容量(FCC)は、以下の式4により算出することができる。
【0203】
FCC=Cs×(100/10)・・・(式4)
【0204】
例えば、算出部216Cは、電圧測定部212により測定された電圧に対応付けられている充電率を当該電圧時の充電率とするOCV補正を行い、OCV補正による電圧時の充電率(例えば、10%)と当該電圧時の時刻tsから満充電状態となる時刻tfまでの充電容量の測定結果Csに基づいて、電池20Cの満充電容量を上記式4により算出する。充電容量の測定結果Csとは、時刻tsから時刻tfまでの期間の電池電圧の測定結果と充電電流の測定結果とに基づく充電容量の積算値である。
【0205】
更新部217は、算出部216Cによる算出結果に基づいて電池20Cの満充電容量の設定値を更新する。これにより、時刻tfの時点で、満充電容量(FCC)の更新値が、極端に小さい値(例えば、10Wh)から実際の満充電容量(例えば、90Wh)に補正される(符号165が示す満充電容量の更新値参照)。補正後の満充電容量で算出された正しい充電率の特性は、符号164Sが示すOCV補正後の充電率の特性となる。
【0206】
以上説明したように、本実施形態に係る電池20C(二次電池の一例)は、制御部210C(充電制御装置の一例)を備えている。制御部210Cは、所定の条件において電池20Cの電圧(OCV)を測定する。また、制御部210Cは、電池20Cの電圧と充電率との対応関係が予め設定された設定情報(例えば、OC-OCVテーブル231C)を参照して、上記所定の条件において測定された電池電圧に対応付けられている充電率を当該電池電圧時の充電率として設定する。そして、制御部210Cは、電池20Cの内部抵抗を測定する測定期間を、設定した充電率を基準とした第1の閾値(例えば、充電率60%)及び第2の閾値(例えば、充電率80%)に基づいて決定する。
【0207】
これにより、電池20Cは、電池20Bは、満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差が大きい場合でも、一定の割合で満充電容量を補正して更新することができる。
【0208】
ここで、上記の電池20Cの電圧を測定する所定の条件は、電池20Cの充電率が所定の範囲内(例えば、10%~90%)であり、且つ充電及び放電が行われていない状態(例えば、電圧の変動幅が±5mV以内及び電流の変動幅が±10mA)を含む。
【0209】
これにより、電池20Cは、電池20Cの電圧(OCV)を精度よく測定することができ、精度よく満充電容量を更新することができる。
【0210】
なお、制御部210Cは、電池20Cの電圧と充電率との対応関係が予め設定された設定情報(例えば、SOC-OCVテーブル231C)を参照して、上記所定の条件において測定された電池電圧に対応付けられている充電率を当該電池電圧時の充電率として設定し、当該電池電圧時の充電率と当該電池電圧時から満充電状態になるまでの充電容量とに基づいて電池20Cの満充電容量を更新してもよい。
【0211】
これにより、電池20Cは、満充電容量の更新値と実際の満充電容量との誤差が大きく内部抵抗のピークを検出できない場合でも、精度よく満充電容量を更新することができる。
【0212】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。例えば、上記の各実施形態で説明した構成は、任意に組み合わせてもよい。
【0213】
なお、上述した制御部210,210Aは、内部にコンピュータシステムを有している。そして、上述した制御部210,210Aのそれぞれが備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述した制御部210,210Aのそれぞれが備える各構成における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0214】
また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部又は外部に設けられた記録媒体も含まれる。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に制御部210,210Aが備える各構成で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0215】
また、上述した実施形態における制御部210,210Aが備える各機能の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【0216】
また、上述した実施形態では、電子機器10が、クラムシェル型のPC(或いは、タブレット型のPCやスマートフォン)などの例を説明したが、二次電池からの給電で動作する機器であれば、PCやスマートフォンに限られるものではない。例えば、電子機器10は、携帯電話、ゲーム機、掃除機、ドローン、電動自動車、ハイブリッド自動車、電動自転車などであってもよい。
【符号の説明】
【0217】
10 電子機器、20,20A 電池、210,210A,210B,210C 制御部、220 電池セル、211 電流測定部、212 電圧測定部、213A,213B,213C 内部抵抗測定部、215,215A,215B,215C 検出部、216,216A,216B,216C 算出部、217 更新部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
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図11
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