(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】ジオメトリ自動計測装置及びそれを備えた工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/24 20060101AFI20230522BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
B23Q17/24 B
G01B11/00 Z
(21)【出願番号】P 2019081044
(22)【出願日】2019-04-22
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】西村 尚貢
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-055628(JP,A)
【文献】特開2007-185771(JP,A)
【文献】特開平10-202477(JP,A)
【文献】特開2005-342802(JP,A)
【文献】特開平04-232407(JP,A)
【文献】特開2011-183494(JP,A)
【文献】特開2010-261774(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105817955(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/22、24
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具の切り込み方向をX軸方向、ワークを回転保持した主軸の軸線方向をZ軸方向とした工作機械において、複数の平行な帯状のレーザー光線の照射手段と、前記照射手段に対向したレーザー光線の受光手段とを備え、
NC制御された切削工具の刃先を前記レーザー光線の帯状面に向けて移動させ、刃先が接触した位置を検出するためのX軸方向の
刃先の位置座標(α)の検出手段と、
さらに前記刃先をX軸方向に移動させ、前記帯状のレーザー光線を遮ることでZ軸方向の刃先を検出するためのZ軸方向の刃先
の位置座標(β)の検出手段とを
有し、
前記位置座標(α)と(β)との差分からZ軸方向の刃先のジオメトリ値を算出及び設定できるジオメトリ自動計測装置を有することを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
NC制御された工作機械における切削工具の形状補正量(ジオメトリ値)の計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の分野では、切削工具の刃先の座標位置をNCプログラム制御しているが、座標上の刃先仮想点と実際の刃先位置とには、刃先形状等に起因してずれが生じることから、それぞれの切削工具の形状補正量(ジオメトリ値)を設定する必要がある。
また、NC装置に内蔵したコンピューターの仮想空間で切削工具の加工プログラム動作をチェックし、ワーク形状や他の部品との干渉を防止することも行われている。
従来は、オペレーターが切削工具毎に刃先をタッチプローブに当てることで、ジオメトリ値を算出及び設定したり、干渉チェック用に工具形状の設定を手動で登録したりしていた。
これでは、設定にバラツキがあったり、手間がかかり生産性低下の原因になっていた。
【0003】
また、CCDカメラ等にて切削工具の刃先形状を撮像し、その画像データに基づいてジオメトリ値を設定した場合には、CCDカメラから照射される光線はCCDカメラ中心から放射状の広がりを有しているので、切削工具とCCDカメラとの距離が異なると、検出値に差が生じる。
【0004】
特許文献1には、一本の糸状の光線を用いて、工具先端の中心位置,工具径,工具長を求め補正する技術を開示するが、一本の糸状の光線では例えば、刃先のX軸方向の先端の検出に対して、Z軸方向の先端との位置関係が不明確になるために、刃先形状全体のジオメトリ値に誤差が生じやすい技術的課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡単な構造でありながらジオメトリ値の計測精度が高い、自動計測装置及びそれを用いた工作機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るジオメトリ自動計測装置は、複数の平行な帯状のレーザー光線の照射手段と、前記照射手段に対向したレーザー光線の受光手段とを備え、NC制御された切削工具を前記帯状のレーザー光線を遮りながら通過させることで、前記切削工具の形状をスキャンできることを特徴とする。
このように本発明においては、複数のレーザー光線からなる帯状の平行光線を用いたので、レーザー光線の照射位置と切削工具との位置関係が異なった場合にも、レーザー光線が刃先形状の接線方向に沿って遮られるので、検出誤差が生じにくい。
これにより、刃先形状の検出や干渉防止チェック用の工具形状のスキャンが容易になる。
また、前記切削工具と、当該切削工具を通過させる帯状のレーザー光線とを相対的に回転させる回転制御手段を有することで、前記切削工具の任意の方向からの形状をスキャンすることもできる。
【0008】
工作機械が例えば、旋盤や複合加工機であり、切削工具の切り込み方向をX軸方向,ワークを回転保持した主軸の軸線方向をZ軸方向と表現した場合には、複数の平行な帯状のレーザー光線の照射手段と、前記照射手段に対向したレーザー光線の受光手段とを備え、NC制御された切削工具の刃先を前記レーザー光線の帯状面に向けて移動させ、刃先が接触した位置を検出するためのX軸方向の刃先座標の検出手段と、さらに前記刃先をX軸方向に移動させ、前記帯状のレーザー光線を遮ることでZ軸方向の刃先を検出するためのZ軸方向の刃先座標検出手段とを有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るジオメトリ自動計測装置は、NCプログラム制御により自動計測ができ、平行なレーザー光線を用いたので、刃先の形状の座標上の位置関係が明確になるために計測精度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a),(b)はX軸方向の刃先座標を検出する状態、(c),(d)はZ軸方向の刃先座標を検出する例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るジオメトリ自動計測装置を用いた旋削工具のジオメトリ値の計測例を
図1にて説明する。
旋削工具の切り込み方向をX軸方向とし、旋削主軸線に沿った送り方向をZ軸方向として説明する。
旋削工具は、工作機械のNC装置により座標上の位置が制御されている。
計測装置は、照射手段1と受光手段2とが対向配置され、複数のレーザー光線Lが平行に照射されている。
それぞれのレーザー光線は、受光手段にレーザー光線毎の複数の受光素子が設けられていて、レーザー光線毎に受光の有無,受光量等がそれぞれの受光素子により検出される。
これに対して、自動で工具Tの刃先3をレーザー光線Lに向けて下降させると、X軸方向の刃先の先端がレーザー光線Lに触れる位置が
図1(b)に示すように検出され、その位置座標(α)が決定する。
この値を用いて、X軸方向のジオメトリ値(形状補正量)が設定される。
上記の位置から更に刃先3を下降させると、
図1(c)に示すように平行なレーザー光線Lが遮るように下降し、
図1(c)に示した基準点からの距離Dが変化し、変化のピーク値(センサ測長ピーク値)(β)が検出されることで、座標上の(α),(β)の差d
1からZ座標基準値の演算により、Z軸方向の刃先のジオメトリ値を算出及び設定することができる。
【0012】
この原理を応用して、
図2に示すように工具Tを所定のピッチ毎に下降させて、平行なレーザー光線Lを通過させることで基準線D
0からの距離が変化し、工具Tの形状をスキャンすることができ、干渉チェック用の工具形状を設定登録することもできる。
この場合に、工具Tとレーザー光線Lの照射方向との位置を相互に回転制御可能にすることもでき、このようにすると工具Tの任意の方向から形状をスキャンすることもできる。
【符号の説明】
【0013】
1 照射手段
2 受光手段
3 刃先