(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル、バルーンカテーテルのバルーンの折り畳み方法及びバルーン成形装置
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20230522BHJP
【FI】
A61M25/10 512
(21)【出願番号】P 2019095402
(22)【出願日】2019-05-21
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591245624
【氏名又は名称】株式会社東海メディカルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏成
(72)【発明者】
【氏名】山根 大暉
(72)【発明者】
【氏名】山岡 史織
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-235386(JP,A)
【文献】特開2017-012678(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0303982(US,A1)
【文献】特表2007-521878(JP,A)
【文献】特開2016-013215(JP,A)
【文献】特表2016-521169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管及び外管よりなる長尺なシャフトと、前記シャフトの遠位端側に設けられ屈曲又は湾曲形状となるようにあらかじめ成型されたバルーンを備え、前記バルーンの遠位端が前記内管と液密に固着されるとともに、前記バルーンの近位端が前記外管と液密に固着され、前記内管と前記外管との間に形成される空間を介して前記バルーンの内部に供給される流体の圧力によって、前記バルーンが拡張及び収縮するバルーンカテーテルであって、
前記バルーンが内管側に押し付けられた収縮状態で放射方向に延びる複数の羽根が形成され、前記羽根は湾曲された前記バルーンの仮中心線に対して凸状側に放射状に形成される凸状側羽根と、凹状側に配置される一つの凹状側羽根と、を有し、
前記バルーンの素材が伸縮性を有し、かつ前記凹状側羽根は前記凸状側羽根に対して長く形成されていることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記凹状側羽根は、前記バルーンの全長に対して、遠位端及び近位端の10%の部位以外の部位で屈曲又は湾曲形状の凹状側の前記凹状側羽根が長くなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記凹状側羽根が最外周になるように折り畳まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のバルーンカテーテルのバルーンの折り畳み方法であって、以下の工程からなることを特徴とする。
(1)前記バルーンカテーテルのバルーンの屈曲又は湾曲形状の凸状側及び屈曲又は湾曲形状の凹状側かつ両方側の三方向から押圧し、凹状側の羽根が最も長くなるように三つの羽根を形成する工程。
(2)前記バルーンカテーテルのバルーンの屈曲又は湾曲形状を直線にする工程。
(3)三つの羽根の凹状側の羽根が最外周となるように内管に折り畳む工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテル、バルーンカテーテルのバルーンの折り畳み方法及びバルーン成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
湾曲した血管や管腔に沿うように留置するのに適したカテーテルとして、屈曲箇所を有するバルーンカテーテルが提案されている。
【0003】
こうした屈曲箇所を有するバルーンカテーテルとしては、内管および外管よりなる長尺なシャフトと、該シャフトの遠位端側に設けられたバルーンを備え、前記バルーンの遠位端が前記内管と液密に固着されるとともに、前記バルーンの近位端が前記外管と液密に固着され、前記内管と前記外管との間に形成される空間を介して前記バルーンの内部に供給される流体の圧力によって、前記バルーンが拡張および収縮するバルーンカテーテルであって、前記バルーンは、当該バルーンの近位端側から遠位端側に至る途中に屈曲箇所のある屈曲形状となるように、あらかじめ成型されたものであって、当該バルーンの膜を伸張させない程度の圧力で拡張させて前記屈曲形状となるものであり、かつ、前記バルーンは、折り畳まれて前記内管の周囲に巻きつけられていることによって、収縮した状態で螺旋状の形になっていることを特徴とするバルーンカテーテルが提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、このような屈曲箇所を有するバルーンカテーテルに対して、バルーンを直線にした状態で均等に螺旋状に折り畳むことは非常に困難であった。また、バルーンの拡張時においてスムーズに拡張しづらいという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、屈曲したバルーンを有するバルーンカテーテルにおいて、バルーンの拡張時の拡張機能を向上させつつ、直線にした状態で折り畳み易いバルーン及び折り畳み方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明にかかるバルーンカテーテルにおいて、
内管及び外管よりなる長尺なシャフトと、前記シャフトの遠位端側に設けられ屈曲又は湾曲形状となるようにあらかじめ成型されたバルーンを備え、前記バルーンの遠位端が前記内管と液密に固着されるとともに、前記バルーンの近位端が前記外管と液密に固着され、前記内管と前記外管との間に形成される空間を介して前記バルーンの内部に供給される流体の圧力によって、前記バルーンが拡張及び収縮するバルーンカテーテルであって、
前記バルーンは、少なくとも屈曲又は湾曲形状の凹状側に形成される凹状側羽根を含む複数の羽根が形成されるようにバルーンを収縮状態で内管に折り畳まれていることを特徴とする。
【0009】
バルーンを折り畳む場合には、バルーン内の気体を抜いて収縮した状態にしてから折り畳むことになる。本発明のバルーンカテーテルは、この収縮した状態において、羽根が形成されるように収縮させ、この羽根の少なくとも1つがバルーンの屈曲又は湾曲状態において凹状側に形成された凹状側羽根が形成されるように収縮させた後、折り畳んだものである。このように凹状側羽根が形成されることで折り畳む際に凹状側羽根にシワができやすくバルーンを直線状にしやすくなる。そのため、バルーンを直線状にして折り畳み易くすることができる。
【0010】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルにおいて、前記凹状側羽根は、少なくとも一部の羽根が他の羽根に対して長く形成されるように収縮した状態であることを特徴とするものであってもよい。
【0011】
凹状側羽根を他の羽根に対して長く形成することで凹状側羽根にシワができやすく、バルーンを直線状にしやすく、かつ直線にした状態で折り畳みやすくすることができる。
【0012】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルにおいて、前記凹状側羽根は、屈曲又は湾曲形状の凸状側に形成される凸状側羽根よりも長く形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0013】
凹状側羽根を凸状側羽根よりも長く形成することによって、バルーンを直線にした際に凹状側羽根の伸びしろが大きくなるので、直線状にして折り畳みやすくすることができる。特に、バルーンの素材に伸縮性のある素材を使用した場合に好適である。
【0014】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルにおいて、屈曲又は湾曲形状の凸状側に形成される凸状側羽根は、前記凹状側羽根よりも長く形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0015】
凹状側羽根に対して凸状側羽根を長く形成することによって、バルーンを直線にした際に、凸状側羽根にしわがよりつつ直線状にしやすくすることができ、直線状にして折り畳みやすくすることができる。特に、バルーンの素材に伸縮性を有しない素材を使用した場合に好適である。
【0016】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルにおいて、前記凹状側羽根は、バルーンカテーテルの全長に対して、遠位端及び近位端の10%の部位以外の部位で屈曲又は湾曲形状の凹状側の凹状側羽根が長くなるように形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0017】
バルーンの凹状部を直線状にする場合に、最も引き伸ばされるのは、凹状側羽根の中心付近であることから、この部位の凹状側羽根を長くするように形成することで、バルーンを直線状にしやすく、バルーンは折り畳まれた状態で直線状を確保しやすくなる。
【0018】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルにおいて、前記羽根は、凹状側羽根以外の羽根は、内管に対して凸状側に配置されていることを特徴とするものであってもよい。
【0019】
かかる構成を採用することによって、他の羽根は、バルーンを直線状にした場合でも縮む方向となるので、バルーンを直線状にする際に他の羽根が妨げとなることを防止することができる。
【0020】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルにおいて、羽根のうち凹状側羽根が最外周になるように折り畳まれていることを特徴とするものであってもよい。
【0021】
凹状側羽根が最外周になるように折り畳むことによって、拡張用の液体又は気体を挿入した際に、最も長い凹状側羽根から拡張されるため、互いの羽根が干渉することなくスムーズにバルーンを拡張することができる。
【0022】
また、本発明にかかるバルーンカテーテルのバルーンの折り畳み方法は、
内管および外管よりなる長尺なシャフトと、前記シャフトの遠位端側に設けられ、屈曲又は湾曲形状となるようにあらかじめ成型されたバルーンを備え、前記バルーンの遠位端が前記内管と液密に固着されるとともに、前記バルーンの近位端が前記外管と液密に固着され、前記内管と前記外管との間に形成される空間を介して前記バルーンの内部に供給される流体の圧力によって、前記バルーンが拡張および収縮するバルーンカテーテルのバルーンの折り畳み方法であって、以下の工程からなることを特徴とする。
(1)前記バルーンカテーテルのバルーンの屈曲又は湾曲形状の凸状側及び屈曲又は湾曲形状の凹状側かつ両方側の三方向から押圧し、凹状側の羽根が最も長くなるように三つの羽根を形成する工程。
(2)前記バルーンカテーテルのバルーンの屈曲又は湾曲形状を直線にする工程。
(3)三羽根の凹状側の羽根が最外周となるように内管に折り畳む工程。
【0023】
このような折り畳み方法を採用することによって、前述した折り畳み方を有するバルーンカテーテルを提供することができる。
【0024】
また、本発明は、バルーンカテーテルのバルーン成形装置についても提供する。本発明にかかるバルーン成形装置は、
内管および外管よりなる長尺なシャフトと、前記シャフトの遠位端側に設けられ、屈曲又は湾曲形状となるようにあらかじめ成型されたバルーンを備え、前記バルーンの遠位端が前記内管と液密に固着されるとともに、前記バルーンの近位端が前記外管と液密に固着され、前記内管と前記外管との間に形成される空間を介して前記バルーンの内部に供給される流体の圧力によって、前記バルーンが拡張および収縮するバルーンカテーテルのバルーンを巻回するために成形するバルーン成形装置において、
前記成形装置は、バルーンを折り畳む前に所定の形態に成形する型を備え、
成形時に湾曲したバルーンの凸状側に配置される型であり、バルーン内の内管の凸状の湾曲に沿うように凹状部を有しており、凹状部の断面は、山形に形成され、その頂点には内管が配置される凹状に形成された凹状溝が凹状部の全長に渡って形成されている中爪型と、
湾曲したバルーンに対して、一方側下方の方向から押圧した場合にバルーン内の内管に沿うように湾曲した凸状部を有し、その頂点には内管が配置される凹状に形成された凹状溝が凸状部の全長に渡って形成されている奥爪型と、
成形時に湾曲したバルーンに対して、他方側下方の方向から押圧した場合にバルーン内の内管に沿うように湾曲した凸状部を有し、その頂点には内管が配置される凹状に形成された凹状溝が凸状部の全長に渡って形成されている手前爪型と、
を備えていることを特徴とする。
【0025】
かかるバルーン成形装置を使用することによって、容易に前述したバルーンカテーテルのバルーンの形態に折り畳むことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかるバルーンカテーテルによれば、湾曲したバルーンであっても容易に直線状に折り畳むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるバルーンカテーテル100の側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかるバルーンカテーテル100を折り畳んだ状態を示す側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかるバルーンカテーテル100を折り畳む前の収縮状態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかるバルーンカテーテル100を折り畳む前の収縮状態の別実施形態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかるバルーンカテーテル100を折り畳む前の収縮状態のさらなる別実施形態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかるバルーンカテーテル100を折り畳む前の収縮状態のさらなる別実施形態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態にかかるバルーンカテーテル100を折り畳む前の収縮状態のさらなる別実施形態を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態にかかるバルーンカテーテル100を折り畳む前の収縮状態のさらなる別実施形態を示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態にかかるバルーンカテーテル100を収縮させる際のバルーン成形装置200の斜視図である。
【
図10】
図10は、実施形態にかかるバルーンカテーテル100を収縮させる際のバルーン成形装置200の型を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、実施形態にかかるバルーンカテーテル100を収縮させる際の成形に使用する針金80の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明にかかるバルーンカテーテル100の実施形態について、図を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【0029】
図1は、実施形態にかかるバルーンカテーテル100の側面図である。
図2は、バルーンカテーテル100を折り畳む前のバルーン20内に気体を排出して収縮した状態を示す
図1のA-A部の断面図である。
【0030】
本実施形態にかかるバルーンカテーテル100は、
図1に示すように、主として、長尺なシャフト10と、シャフト10の遠位端側に設けられたバルーン20と、を備えている。
【0031】
シャフト10は、内管11及び外管12の二重管構造となっており、内管11内のルーメン11aは、主としてガイドワイヤを通すために使用され、内管11と外管12との間のルーメン12aは、バルーン20を拡張するための気体又は液体(以下「拡張用流体」ともいう。)を導入するための空間として使用される。内管11は、バルーン20の遠位端側まで延びており、遠位端又は遠位端近傍でバルーン20の遠位端と液密に固着され、内管11はバルーン20内に配置されている。外管12は、バルーン20の近位端側まで延びており、外管12の遠位端又は遠位端近傍とバルーン20の近位端が液密に固着されている。
【0032】
内管11は、チューブ状の樹脂で作製されており、例えば、高密度ポリエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリプロピレン、またフッ素樹脂等が挙げられる。
【0033】
外管12も、チューブ状の樹脂で作製されており、例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン又はポリプロピレン等を挙げることができる。
【0034】
バルーン20は、樹脂製のフィルム状の中空体で形成されており、内部に気体又は液体を注入することにより、圧力により拡張し、吸引することにより収縮可能に形成されている。本発明にかかるバルーンは、拡張した際に屈曲又は湾曲した形状を有するように成型されている。バルーンの屈曲率や湾曲率は限定するものではなく、使用用途に応じて適宜選択することができる。バルーン20を構成する材料としては、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマー又はポリウレタン等を挙げることができる。
【0035】
バルーン20と内管11は、
図1に示すように拡張時において、バルーン20の内面に内管11が接触しないような位置関係にすることが好ましい。バルーン20と内管11が接触すると、内管11の方がバルーン20よりも剛性が高いため、バルーン20の拡張形態が変形する可能性があるからである。
【0036】
さらに、任意に、バルーンカテーテル100には、バルーン20の位置及び、屈曲又は湾曲状態が把握可能なように、1つ又は複数のX線不透過マーカー70をバルーン20内の内管11に取り付けても良い。
【0037】
また、バルーンカテーテル100の近位端には、適宜、バルーンカテーテル100にガイドワイヤを挿入したり、拡張用流体を挿入するための流体供給装置と接続するためのコネクタ50を取り付けてもよい。コネクタ50の形態は既知のものを適宜選択して使用することができる。
【0038】
こうして作製されたバルーンカテーテル100は、
図2に示すように、手術等の使用前の初期状態ではバルーン20及び内管11が直線状になるように折り畳まれて、シース等に収容された状態で使用に供される。
【0039】
ここで、バルーンカテーテル100の折り畳み方法について説明する。
【0040】
(第1収縮状態による折り畳み方法)
本発明にかかるバルーンカテーテル100のバルーン20は、作製後はバルーン20が完全に収縮した状態ではなく拡張した状態で作製される。この状態からバルーン20を折り畳むのであるが、
図3に示すように折り畳む前にバルーン20の内の空気を排出し、収縮した状態にする必要がある。収縮状態は、バルーン20が内管11側に押し付けられ、余ったバルーン20が放射方向へ複数延びた羽根(21,22,23)を有する状態にされる。なお、この延びたバルーン20の部分(21,22,23)を本明細書及び特許請求の範囲では「羽根」をいう。なお、
図3においては羽根の部分が理解容易となるように間隔が空いて図示されているが、実際には互いがぴったりと重なりあうように形成される。また羽根の長さとは、
図3に示すように、放射状に形成された羽根の中心部分からの距離を指す。本実施形態においては、3つの羽根(21,22,23)が形成されたものが示されているが、羽根の数は3つの限定するものではない。羽根(21,22,23)のうちの1つは、湾曲されたバルーン20の凹状側(
図3の下方側)に配置される凹状側羽根21が形成される。凹状側羽根21とは、
図1に示すように、湾曲したバルーン20に対して側方から観た場合にバルーン20の仮中心線(図のθ)に対して凹状側にある羽根をいい、凸状側羽根22,23とは、バルーン20の仮中心線(図のθ)に対して凸状側にある羽根をという。凹状側羽根21は、
図3においては、直下の方向に羽根が形成されているが、必ずしも直下方向である必要はなく、
図4に示すように、ある程度角度が形成されていても構わない。この際に、第1収縮状態では、凹状側羽根21の中心からの長さαが
図3に示すように、凸状側羽根22,23の長さβよりも長くなるように作製される。このように凹状側羽根21を形成することによって、バルーン20の素材に比較的柔らかい素材を使用した場合は、シワがよって形成されることになる。そのため、バルーン20を収縮した状態で容易に直線状にすることができ、容易に羽根(21,22,23)を折り畳むことができる。また、バルーン20の素材に伸縮性を有する素材を使用した場合には、凹状側羽根21が長く形成されているため、伸びしろが大きくなり容易に直線状にしやすくなり、容易に羽根21,22,23を折り畳むことができる。なお、折り畳む際に、凹状側羽根21を長く形成した場合には、凹状側羽根21を最も外周側となるように折り畳むことが好ましい。このように折り畳むことで、バルーン20を拡張する際に最も大きな凹状側羽根21を最初に拡張させることができるので、その他の羽根22,23が干渉することなくスムーズに拡張することができる。さらに、凹状側羽根21以外の羽根22,23すべてを内管11の中心より、バルーン20の凸状側に配置されるようにすることが好ましい。このように形成することで、バルーン20を直線状にするときに凹状側羽根21以外の羽根22,23は縮むことになるため、直線にする際の障害になることを防止することができる。この凹状側羽根21を他の羽根22,23より長くする範囲は、バルーン20の近位端及び遠位端からバルーン20の全長に対して10%の範囲以外の位置に形成することが好ましい。バルーン20を直線状にする際に、バルーン20の遠位端及び近位端近傍は、それほど湾曲を矯正されないので凹状側羽根21が障害になることは少ないからである。なお、羽根を折り畳みやすいように、
図5に示すように、予め折り畳む方向へクセ付けをしておいてもよい。
【0041】
(第2収縮状態による折り畳み方法)
第2収縮状態では、
図6に示すように、羽根(21,22,23)のうちの少なくとも1つは、湾曲されたバルーン20の凸状側(
図3の上方側)に配置される凸状側羽根22、23が形成される。この際に、一部又はすべての凸状側羽根22,23の中心からの長さβが凹状側羽根21の長さαと比較して長くなるように形成される。このように凸状側羽根22,23を長く形成することによって、バルーン20を直線状にした際に凸状側羽根22,23にシワがよりやすくなり、比較的剛性がある素材をバルーン20にした場合であっても直線にしやすくすることができる。そのため、容易に羽根(21,22,23)を折り畳むことができる。なお、折り畳む際には、凸状側羽根22,23のいずれかを最も外周側となるように折り畳むことが好ましい。このように折り畳むことで、バルーン20を拡張する際に大きな凸状側羽根22,23を最初に拡張させることができるので、その他の羽根が干渉することなくスムーズに拡張することができる。なお、3枚の羽根を形成する場合においては、
図7に示すように、凹状側羽根21と凸状側羽根22,23とがなす角度δに対して、凸状側羽根同士22,23とがなす角度γが小さくなるように形成してもよい。このように形成することによって、凸状側羽根22,23がよりシワがより易い方向に配置されるので、よりバルーン20を直線にしやすくすることができる。なお、この凸状側羽根22,23を凹状側羽根21より長くする範囲は、バルーン20の近位端及び遠位端からバルーン20の全長に対して10%の範囲以外の位置に形成することが好ましいことは第1収縮状態と同様である。
【0042】
第1収縮状態及び第2収縮状態ともに、内管11が必ずしも収縮状態の中心部分にある必要はなく、
図8に示すように、羽根の部分に配置されていてもよい。
【0043】
次に、バルーンカテーテル100のバルーン20の収縮状態を成形する成形方法を説明する。はじめに折り畳み前のバルーン20の形態を形成するためのバルーン成形装置200について説明する。本発明にかかるバルーンカテーテル100を折り畳む際に使用されるバルーン成形装置200の実施形態に係る装置の斜視図が
図9に示されている。バルーン成形装置200は、主として、バルーン20を折り畳む前に所定の形態に成形する型211,212,213と、バルーンカテーテル100を固定するため、近位端側と遠位端側に配置されるクランプ220とを備えている。
【0044】
型は、中爪型211、奥爪型212及び手前爪型213からなる。中爪型211は、成形時に湾曲したバルーン20の凸側に配置される型であり、
図10Aに示すように、バルーン20内の内管11の凸状の湾曲に沿うように凹状部211aを有しており、凹状部211aの断面は、山形に形成され、その頂点には内管11が配置される凹状溝211bが凹状部211aの全長に渡って形成されている。奥爪型212は、
図10Bに示すように成形時に湾曲したバルーン20に対して、一方側面であって内管11の下方側方向から押圧した場合にバルーン20内の内管11に沿うように湾曲した凸状部212aを有し、その頂点には内管11が配置される凹状に形成された凹状溝212bが凸状部212aの全長に渡って形成されている。手前爪型213は、成形時に湾曲したバルーン20に対して、他方側側面であって下方側方向から押圧した場合にバルーン20の内管11に沿うように湾曲した凸状部213aを有し、その頂点には内管11が配置される凹状に形成された凹状溝が凸状部213aの全長に渡って形成されている。手前爪型213は、奥爪形に対して対称に作製されるので、図は省略する。このように作製された型は、
図9に示すように、中爪型211がバルーン20の湾曲の凸状側に配置され、奥爪型212及び手前爪型213が側方かつ下方の位置となるように配置され、内管11に対して放射方向に移動可能に形成されている。バルーン20が配置された状態で型締めした場合に、奥爪型212及び手前爪型213が内管11を支持してバルーン20内で内管11が中爪型211側に押し込みつつバルーン20を収縮するように作製されている。
【0045】
クランプ220は、バルーンカテーテル100を型に取り付けた場合に、バルーン20の遠位端側及び近位端側を挟持して固定する部材である。バルーンカテーテル100の遠位端側及び近位端側を固定することができれば、どのような形態のものであっても構わない。本実施形態においては、上型220aと下型220bで挟むようにして固定している。
【0046】
こうして構成されたバルーン成形装置200を使用してバルーンカテーテル100のバルーン20の収縮状態の成形方法について説明する。
【0047】
バルーンカテーテル100が作製された状態では、バルーンカテーテル100内に気体が挿入された状態であり、拡張された状態にある。この状態からバルーン成形装置200にバルーンカテーテル100をセットする。この際に、
図11に示すようにバルーンの曲率に合うように折り曲げられ、先端にクランプに挟まれるクランプ用支持部81が設けられた針金80を内管11内に挿入して形状を固定するとよい。この状態から型を締めることによって、三方向からバルーン20が押されて、型と型の間に三方向に延びた羽根が形成される。この際に、中爪型211を奥爪型212及び手前爪型213に対して早く押し付けることによって、凹状側羽根21が長く形成され、中爪型211を奥爪型212及び手前爪型213に対して遅く押し付けることによって、凸状側羽根22、23が長くなるように形成することができる。この状態で内部の気体を排出することで3方向に羽根が形成され、収縮された状態のバルーン20が成形される。この状態からバルーン20を直線状にした状態でそれぞれの羽根21,22,23を内管11に沿って折り畳む又は巻回することで直線状に保った状態で巻きつけることができる。
【0048】
以上のようにして作製されたバルーンカテーテル100は以下のようにして使用される。あらかじめ、血管内に挿入・留置されたガイドワイヤを内管11内へ導入しつつ。ガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテル100を目的の位置まで挿入する。本発明にかかるバルーンカテーテル100の目的の位置の血管又は管腔は、湾曲している部分になる。この挿入の際にはバルーン20は湾曲しておらず、直線状である。バルーンが目的の位置まで到達したら、バルーン拡張用流体を供給し、バルーン20を拡張する。バルーン20内部にバルーン拡張用の流体が供給されると、まず、最も外側に配置された羽根が解けていくことになり、ある程度、最も外側の羽根が解けていくと、その他の羽根にバルーン拡張用流体が供給されて全体が徐々に展開されて、
図1に示すように、屈曲又は湾曲した形状に拡張することになる。
【0049】
このように本発明にかかるバルーンカテーテル100によれば、バルーン20の拡張時の形態が湾曲して形成されているので、バルーン20の留置場所である血管又は管腔が大きく湾曲している場合であっても、バルーン20の拡張形状に合わせてバルーン20を留置することができ、湾曲している血管や管腔の壁面に対して均一の圧力をかけることができる。
【0050】
なお、本発明は上述した各実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0051】
上述した実施の形態で示すように、バルーンカテーテルとして利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10…シャフト、11…内管、11a…ルーメン、12…外管、12a…ルーメン、20…バルーン、21…凹状側羽根、22…凸状側羽根、50…コネクタ、70…X線不透過マーカー、80…針金、81…クランプ用支持部、100…バルーンカテーテル、200…バルーン成形装置、211…中爪型、211a…凹状部、211b…凹状溝、212…奥爪型、212a…凸状部、212b…凹状溝、213…手前爪型、213a…凸状部、220…クランプ、220a…上型、220b…下型