IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -潤滑性グリース組成物 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】潤滑性グリース組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20230522BHJP
   F16C 11/06 20060101ALI20230522BHJP
   C10M 107/50 20060101ALN20230522BHJP
   C10M 155/02 20060101ALN20230522BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20230522BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20230522BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20230522BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20230522BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20230522BHJP
【FI】
C10M169/04
F16C11/06 Z
C10M107/50
C10M155/02
C10N50:10
C10N30:06
C10N30:00 Z
C10N40:02
C10N20:02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021094892
(22)【出願日】2021-06-07
(62)【分割の表示】P 2016236836の分割
【原出願日】2016-12-06
(65)【公開番号】P2021155745
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390022275
【氏名又は名称】株式会社ニッペコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】原田 真一
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-242889(JP,A)
【文献】特開昭59-189167(JP,A)
【文献】特開平05-156275(JP,A)
【文献】特許第6902233(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C10N 10/00- 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油としてのジメチルシリコーン油と、添加剤とを含有し、
前記添加剤は、カルボン酸変性シリコーンを含み、
グリース組成物中に占める前記ジメチルシリコーン油は、57質量部以上82質量部以下であり、
グリース組成物中に占める前記カルボン酸変性シリコーンは、0.01質量部以上10質量部以下であり、
ちょう度は、225以上465以下である、
ことを特徴とする潤滑性グリース組成物。
【請求項2】
前記添加剤は、下記一般式(1)、(2)又は(3)で表される変性シリコーンであることを特徴とする請求項に記載の潤滑性グリース組成物。
【化1】
【化2】
【化3】
【請求項3】
前記添加剤の動粘度は、25℃において、15000mm/s以下であることを特徴とする請求項1又は請求項に記載の潤滑性グリース組成物。
【請求項4】
前記グリース組成物の粘度は、-40℃で、せん断率が1.0S-1において、5500Pa・s以下であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の潤滑性グリース組成物。
【請求項5】
前記基油の動粘度は、25℃において、100000mm/s以下であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれかに記載の潤滑性グリース組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、可動継手用のグリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のサスペンションやロアアーム等の可動継手用として、例えば、鉱油又は合成炭化水素油を用いたグリースが使用されていた(特許文献1を参照)。
【0003】
これらグリースは、可動継手の潤滑性を維持するため、比較的粘度の高い基油を使用したり、増ちょう剤を改良する等して、基油を高粘度化し、グリースの付着性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-230188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のグリースは、潤滑性を維持するために高粘性であり、この影響で、可動継手の作動トルクが高くなる問題があった。また、低温時に、グリースの粘性が非常に高くなり、作動不良を引き起こす懸念があった。
【0006】
そこで本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、従来に比べて、作動トルクを低減でき、また低温性を改善することができるグリース組成物、及び、それを用いた可動継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の潤滑性グリース組成物は、基油としてのジメチルシリコーン油と、添加剤とを含有し、前記添加剤は、カルボン酸変性シリコーンを含み、グリース組成物中に占める前記ジメチルシリコーン油は、57質量部以上82質量部以下であり、グリース組成物中に占める前記カルボン酸変性シリコーンは、0.01質量部以上10質量部以下であり、ちょう度は、225以上465以下である、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の潤滑性グリース組成物においては、前記添加剤は、下記一般式(1)、(2)又は(3)で表される変性シリコーンであることが好ましい。
【化1】
【化2】
【化3】
【0011】
また、本発明のグリース組成物においては、前記添加剤の動粘度は、25℃において、15000mm/s以下であることが好ましい。
【0012】
また、本発明のグリース組成物においては、前記グリース組成物の粘度は、-40℃で、せん断率が1.0S-1において、5500Pa・s以下であることが好ましい。
【0013】
また、本発明のグリース組成物においては、前記基油の動粘度は、25℃において、100000mm/s以下であることが好ましい。
【0014】
また本発明は、球状部と、前記球状部を受ける受け部材と、前記球状部の表面を覆う表層と、を有する可動継手であって、前記球状部と前記表層の少なくともいずれか一方が樹脂で形成されており、前記球状部と前記表層との間に、上記に記載のグリース組成物が充填されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のグリース組成物によれば、従来に比べて、作動トルクを低減でき、また低温性を改善することができる。
【0016】
よって、本発明のグリース組成物を、可動継手の潤滑剤として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】組成の異なる複数のグリース組成物を可動継手に使用し、温度と作動トルクとの関係を測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0019】
本発明者は、球状部と、前記球状部を受ける受け部材と、を有する可動継手の継手内部の潤滑用として使用されるグリース組成物について誠意研究を重ねた結果、基油として、ジメチルシリコーン油を用いることで、低温での作動性を向上させるに至った。
【0020】
(グリース組成物)
本実施の形態におけるグリース組成物は、基油として、ジメチルシリコーン油を含有するものであり、好ましくは、以下に記載する添加剤を含有する。
【0021】
なお、増ちょう剤等、グリース組成物として従来から含まれるものは、適宜添加されている。
【0022】
本実施の形態では、基油の動粘度は、25℃において、100000mm/s以下であることが好ましい。後述する実験で示すように、本実施の形態では、基油の動粘度を、上記範囲内に規定することができる。また、基油の動粘度は、25℃において、10000mm/s以下であることがより好ましく、5000mm/s以下であることが更に好ましく、2000mm/s以下であることが更により好ましい。また、下限値を特に限定するものではないが、例えば、基油の動粘度を、25℃において、5mm/s程度まで低くすることができる。
【0023】
本実施の形態では、種類の異なる2種以上の基油を混合して用い、そのうちの1つの基油に、ジメチルシリコーン油を用いる構成とすることができる。ただし、2種類以上の基油を組み合わせる場合、グリース組成物中に占める基油の半分以上(50質量部以上)は、ジメチルシリコーン油で構成されることが好適である。
【0024】
グリース組成物中に含有される添加剤は、カルボン酸変性シリコーン、及び、アミノ変性シリコーンの少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。
【0025】
具体的には、添加剤は、下記一般式(1)、(2)又は(3)で表される変性シリコーンであることが好ましい。
【化4】
【化5】
ここで、数値を限定するものではないが、mは、数十以上であり、具体的には50以上であり、後述する実施例では、80~750程度である。また、nは、100程度以下であり、具体的には20以下であり、後述する実施例では、1~10程度である。
【化6】
【0026】
このように、本実施の形態では、添加剤として、カルボン酸変性シリコーン、及び/又は、アミノ変性シリコーンを含むことが好ましいが、経時的安定性の観点から、アミノ変性シリコーンよりもカルボン酸変性シリコーンを含むことが好ましい。
【0027】
本実施の形態では、添加剤の含有量を所定範囲内にて調整することが好ましい。添加材の含有量は、多すぎると油分離が生じやすいので、具体的には、添加剤の含有量を、15質量部以下とすることが好ましい。ここで、100質量部は、グリース組成物の総量であり、したがって、「質量部」は、グリース組成物の総量に対する割合を意味する。以下、同じである。
【0028】
また、本実施の形態では、添加剤の添加量を、0.01質量部以上とすることが好ましい。この程度の添加剤が含まれていれば、従来に比べて、作動トルクを低減できる。
【0029】
本実施の形態では、添加剤の添加量は、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることが更に好ましく、3質量部以下であることが更により好ましい。また、添加剤の添加量は、0.2質量部以上であることがより好ましい。添加剤の添加量は、0.02質量部~1質量部程度であることが最も好ましい。
【0030】
また、本実施の形態では、添加剤の動粘度は、25℃において、15000mm/s以下であることが好ましい。この動粘度は、上記の一般式に記載された化学式の繰り返し数によって調整することができる。
【0031】
本実施の形態のグリース組成物に含まれる増ちょう剤は、特に限定されるものではないが、例えば、リチウム石けん、カルシウム石けん、ナトリウム石けん、アルミニウム石けん、リチウム複合石けん、カルシウム複合石けん、アルミニウム複合石けん、ウレア化合物、有機化ベントナイト、ポリテトラフルオロエチレン、シリカゲル、ナトリウムテレフタラメートのうち、少なくとも1種から選択することができる。なお、リチウム石けんは、脂肪酸又はその誘導体と水酸化リチウムとのけん化反応物である。用いられる脂肪酸は、炭素数が2~22の飽和又は不飽和の脂肪酸及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である。また、前記の脂肪酸又はその誘導体と水酸化リチウムとを反応させた「石けん」が市販されており、これを用いることもできる。
【0032】
また、必要に応じて、酸化防止剤、防錆剤、金属腐食防止剤、油性剤、耐摩耗剤、極圧剤、固体潤滑剤などを添加することができる。これら添加物の含有量は、0.01重量部~20重量部程度の範囲内に収められる。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン等から選択することができる。防錆剤としては、ステアリン酸などのカルボン酸、ジカルボン酸、金属石鹸、カルボン酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、又は多価アルコールのカルボン酸部分エステル等から選択することができる。金属腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾール又はベンゾイミダゾール等から選択することができる。油性剤としては、ラウリルアミンなどのアミン類、ミリスチルアルコールなどの高級アルコール類、パルミチン酸などの高級脂肪酸類、ステアリン酸メチルなどの脂肪酸エステル類、又はオレイルアミドなどのアミド類等から選択することができる。耐摩耗剤としては、亜鉛系、硫黄系、リン系、アミン系、又はエステル系等から選択することができる。極圧剤としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、硫化オレフィン、硫化油脂、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、ヨウ素化ベンジル、フルオロアルキルポリシロキサン、又は、ナフテン酸鉛等から選択することができる。また、固体潤滑剤としては、黒鉛、フッ化黒鉛、ポリテトラフルオロエチレン、メラミンシアヌレート、二硫化モリブデン、硫化アンチモン等から選択することができる。
【0033】
本実施の形態におけるグリース組成物の粘度は、-40℃で、せん断率が1.0S-1において、5500Pa・s以下であることが好ましい。なお、グリース組成物は、せん断率によって粘度変化が生じるため、せん断率を規定した。また、本実施の形態では、常温時(25℃)と、-40℃のときの粘度差は、せん断率が1.0S-1において、4000Pa・s程度以下とすることができる。
【0034】
また、グリース組成物のちょう度に関しては、200~500程度とすることができる。なお、ちょう度の測定方法については、後述する実施例の欄に記載する。
【0035】
(可動継手)
本実施の形態のグリース組成物を用いた可動継手は、例えば、自動車のサスペンション、ロアアーム、タイロッドエンドなどの可動部分に用いることができる。
【0036】
可動継手は、球状部と、球状部を受ける受け部材と、球状部の表面を覆う表層と、を有して構成される。表層は、受け部材にて保持される。
【0037】
そして、球状部と、表層との間に、本実施の形態のグリース組成物が充填される。ところで、球状部は、例えば、金属で形成され、受け部材や表層は、例えば、樹脂で形成される。材質を限定するものではないが、樹脂としては、ポリアセタール樹脂や、ポリエステル樹脂等を例示することができる。
【0038】
このように、本実施の形態では、金属と、樹脂との間に、基油として粘度指数の高いジメチルシリコーン油を含有するグリース組成物を充填する。すなわち、例えば、両方が、金属である場合等に比べて、基油としてジメチルシリコーン油を含有するグリース組成物は、金属と樹脂との間で、効果的に所望の潤滑性能を発揮し得る。特に、可動継手の小型化に伴い、従来にて使用されていた鉱油や合成炭化水素油では、低温下におけるグリース粘度の変化が無視できないレベルとなるのに対し、本実施の形態では、それを克服し、低温度下でのグリース組成物の粘度上昇を抑え、グリース組成物の流動性を適切に維持することができる。
【0039】
また、添加剤として用いられるカルボン酸変性シリコーンは、カルボン酸の部分が、金属材に吸着しやすく、これにより、可動継手の潤滑性を向上させ、作動トルクの低減や、スティックスリップの抑制を図ることが可能になる。したがって、本実施の形態の可動継手を用いることで、自動車の操舵性を改善することができ、特に、低温時の作動不良を抑制することができる。
【0040】
また、本実施の形態の可動継手は、球状部と、球状部を受ける受け部材と、球状部の表面を覆う表層と、を有し、球状部と表層の少なくともいずれか一方が樹脂で形成されており、球状部と表層との間に、-40℃で、せん断率が1.0S-1において、5500Pa・s以下の粘度を有するグリース組成物が充填されている構成とすることができる。
【0041】
上記の実施の形態では、可動継手の一例として、自動車用の可動継手を挙げたが、高負荷荷重で、且つ可動部分であれば、自動車以外の輸送機器や産業機器にも適用できる。
【実施例
【0042】
以下、本発明の効果を明確にするために実施した実施例により本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0043】
実験では、表1及び表2に示すグリース組成物の基油の粘度、ちょう度、グリース粘度を測定し、更に各グリース組成物を、可動継手の球状部と表層との間に充填して、常温時(25℃)の作動トルク、-40℃の作動トルク、及び、スティックスリップの発生有無を測定した。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
また、表1及び表2に示す「カルボキシル変性-1」、「カルボキシル変性-2」、「カルボキシル変性-3」、「アミノ変性-1」、「アミノ変性-2」、「アミノ変性-3」は以下の表3に示されている。
【0047】
【表3】
【0048】
表1及び、表2に示す基油の粘度は、25℃での計測値である。表1及び表2に示す基油の粘度が、1800cSt(=mm/s)のグリース組成物では、100cSt品と10000cSt品を混合し、粘度調整した。一方、基油の粘度が、5cStのグリース組成物、及び、基油の粘度が、100000cStのグリース組成物は、市販のジメチルシリコーン油をそのまま使用した。
【0049】
ちょう度は、JIS K2220に規定されたちょう度試験方法により測定した。
【0050】
また、常温時の作動トルクは、グリース組成物の塗布量を、0.5gとし、市販のタイロッドエンドを用いて、回転速度を、0.2rpm、回転角度を45度(往復動作)として測定した。また、-40℃の作動トルクは、グリース組成物を塗布した可動継手を-40℃の恒温槽で4h静置し、常温時の作動トルクと同様の方法で測定した。
【0051】
また、-40℃のグリース組成物の粘度は、株式会社ニッペコ所有のレオメーターで測定した。測定では、せん断率:1s-1のときの粘度を測定した。
【0052】
表1及び表2に示す実施例に基づいて、カルボン酸変性シリコーン、或いは、アミノ変性シリコーンからなる添加剤の含有量を15質量部以下に設定し、好ましくは、10質量部以下、更に好ましくは、5質量部以下、更により好ましくは、3質量部以下と設定した。
【0053】
添加剤の含有量が多くなりすぎると、グリース組成物を構成する増ちょう剤構造が変形したり、破壊されやすく、グリース組成物の軟化漏洩及び油分離が発生しやすくなるため、添加剤の含有量は、少ないほうが好ましい。
【0054】
一方、添加剤の含有量の下限値であるが、表1に示す実施例-2の0.01質量%の添加でも従来に比べて作動トルクを低減できることがわかった。よって、添加剤の含有量の下限値を、0.01質量部に設定した。ただし、添加剤の含有量をもう少し増やすと、例えば、実施例-3を見て分かるように、更に、作動トルクの低減を図ることができ、特に、常温時のみならず、-40℃での作動トルクも安定して低い値に保つことができることがわかった。
【0055】
また、表1に示す実施例-10により、基油の動粘度を、25℃にて、100000mm/s以下に設定した。なお、基油の動粘度が、これ以上、高くなると、実使用上作業性の悪化が懸念される。
【0056】
また、表1に示す実施例-9により、基油の動粘度を、25℃にて、5mm/s以上に設定した。基油の動粘度を、これ以上、低粘度とすると、潤滑能力の低下や、基油の乾燥が生じやすくなると考えられる。
【0057】
また、グリース組成物の硬さ(ちょう度)は、実施例-11から、225(ちょう度:3号)程度であることが好ましい。これ以上、硬いと、実使用上作業性の悪化が懸念される。
【0058】
また、グリース組成物の軟らかさ(ちょう度)は、実施-12から、465(ちょう度:000号)程度であることが好ましい。これより軟らかいと、潤滑性の悪化や、グリース組成物の漏洩の発生が懸念される。
【0059】
上記の実験結果から、グリース組成物のちょう度に関しては、200~500程度が好ましいと設定した。
【0060】
また、本実施例では、-40℃でのグリース組成物の粘度を、せん断率が1.0S-1において、5500Pa・s以下にできる。一方、比較例では、グリース組成物の粘度は、せん断率が1.0S-1において、約40000Pa・s以上となり、或いは、測定不能であった。
【0061】
表1に示す実施例-3と、表2に示す比較例-3及比較例-4を用いて、各温度での可動継手の作動トルクを測定した。測定条件は、上記に挙げた通りである。
【0062】
その実験結果が、以下の表4及び図1に示されている。
【0063】
【表4】
【0064】
表4及び図1に示すように、比較例-3及び比較例-4では、温度が0℃を下回ると、急激に作動トルクが上昇することがわかった。一方、実施例-3では、-40℃~100℃程度の温度範囲において、作動トルクを約2000mN・m以下に抑えることができることがわかった。また、比較例-3及び比較例4では、-40℃のときの作動トルクが、25℃のときの作動トルクに比べて、5000mN・m程度上昇するのに対して、実施例-3では、-40℃のときの作動トルクと、25℃のときの作動トルクとがほとんど変化しない(300nN・m程度以下)ことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明における、基油に粘度指数の高いジメチルシリコーン油を用いたグリース組成物は、低温での粘度上昇を抑制でき、良好な流動性を維持することができる。本発明のグリース組成物を、球状部と、球状部を覆う表層の少なくともいずれか一方が樹脂で形成された可動継手の潤滑剤として用いることで、作動トルクの低減(特に低温時の作動トルクの低減)及び、スティックストリップの抑制を図ることができる。本発明のグリース組成物を塗布する可動継手としては、自動車の可動継手に好適に用いることができるが、自動車以外の輸送機器や産業機器にも効果的に用いることができる。


図1