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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 73/36 20060101AFI20230522BHJP
   H01H 73/50 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
H01H73/36 E
H01H73/36 A
H01H73/50 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021118700
(22)【出願日】2021-07-19
(62)【分割の表示】P 2019053285の分割
【原出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2021168307
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隆
(72)【発明者】
【氏名】今川 誠
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 亮平
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-025415(JP,A)
【文献】特開2002-025416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/36
H01H 73/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源側の端子と負荷側の端子とに繋がる回路と、
該回路を開閉する接点部と、
前記回路に流れる電流により電磁石となる吸引体と、
前記接点部の閉状態を保持可能であり、且つ前記吸引体に対して前記吸引体側への動き代となる隙間をあけて対向配置される保持状態と、前記吸引体側に動いた状態で、前記接点部の閉状態に対する保持を解除して前記接点部を開放可能とする解除状態とに切替可能な平板状の可動体と、
前記吸引体を可動体に向けて付勢する付勢部材と、
前記接点部を開閉操作可能な操作機構と、を備え、
前記吸引体は、前記可動体に向けて配置される連設壁部、及び前記連設壁部に設けられる一対の側壁部によってコの字状に形成され、且つ前記可動体側に向けて配置される吸引側対向面を有し、
前記可動体は、前記吸引側対向面に対向配置される可動側対向面を有し、
前記吸引側対向面と前記可動側対向面とは、前記可動体が前記保持状態であるときに、前記吸引側対向面と前記可動側対向面とが対向する対向方向において接離可能な隙間を形成するよう互いに離間する接離部を有し、
前記可動体と前記吸引体は、前記対向方向に直交する横幅方向に沿って延びる別々の軸線を中心として回動可能であり、
前記可動体の回動中心の前記軸線と、前記吸引体の回動中心の前記軸線とは、前記対向方向と前記横幅方向とに直交する前後方向に離れて配置され、
前記操作機構は、前記接点部が前記閉状態であり且つ前記可動体が前記保持状態に切り替わっている状態で前記可動部に掛止される差込片部を有し、
前記保持状態の前記可動部が前記吸引体側に動いて前記解除状態に切り替わるに伴って、前記可動部に対する前記差込片部の掛止状態が解除されて前記接点部が前記閉状態から開状態に切り替わるように構成される、
回路遮断器。
【請求項2】
前記付勢部材は、前記吸引体における前記可動体の前記回動中心側の端部を付勢するように構成される、
請求項1に記載の回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源側と負荷側とを接続する回路に過大電流が流れた際に回路を遮断して負荷側の機器等を保護するための回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の回路遮断器には、例えば、特許文献1に図示されているように、短絡電流のような過大電流が流れた際に互いに接離可能に配置された第一鉄心及び第二鉄心と、該第二鉄心に開閉機構の一部をなす作動板を係止させた状態で、固定接点と可動接点とを接触又は離間させるものが知られている。
【0003】
かかる回路遮断器では、過大電流が流れた際に第一鉄心と第二鉄心との間に吸引力が生じ、該吸引力により第二鉄心が第一鉄心側に引き寄せられることで、第二鉄心と作動板との掛止状態を解除して固定接点と可動接点とを離間させる、すなわち、磁力を利用して電路を遮断することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-25415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記構成の回路遮断器では、過大電流が流れた際に電路を遮断することはできるものの、安全性を高めるべくより素早く電路を遮断できるようにすることが求められている。
【0006】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、遮断時の応答性を向上させることができる回路遮断器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の回路遮断器は、
電源側の端子と負荷側の端子とに繋がる回路と、
該回路を開閉する接点部と、
前記回路に流れる電流により電磁石となる吸引体と、
前記接点部の閉状態を保持可能であり、且つ前記吸引体に対して前記吸引体側への動き代となる隙間をあけて対向配置される保持状態と、前記吸引体側に動いた状態で、前記接点部の閉状態に対する保持を解除して前記接点部を開放可能とする解除状態とに切替可能な可動体と、を備え、
前記吸引体は、前記可動体側に向けて配置される吸引側対向面を有し、
前記可動体は、前記吸引側対向面に対向配置される可動側対向面を有し、
前記吸引側対向面と前記可動側対向面とは、前記可動体が前記保持状態であるときに、接離可能な隙間を形成するよう互いに離間する接離部を有し、
前記可動体と前記吸引体は、別々の位置に配置される回動起点として回動可能であり、 前記可動体は、前記可動側対向面が有する前記接触部よりも前記一方側にずれた位置を回動起点として回動可能であり前記可動体の前記回動起点よりも前記接離部から離れた位置を回動起点として前記可動体に対して接離する方向で回動可能に構成される。
【0008】
従って、回路に過大電流が流れてから可動体が動き出すまでの反応速度が速くなり、これにより、遮断時の応答性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明の回路遮断器は、動作速度を速くすることによって、遮断時の応答性を向上させることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る回路遮断器の斜視図である。
図2図2は、同実施形態に係る回路遮断器の分解図である。
図3図3は、同実施形態に係る回路遮断器の筐体の内部の拡大図である。
図4図4は、同実施形態に係る回路遮断器の吸引体の取付構造の説明図である。
図5図5は、同実施形態に係る回路遮断器の可動体の取付構造の説明図である。
図6図6は、同実施形態に係る回路遮断器の吸引体を可動体側から見た図である 。
図7図7は、同実施形態に係る回路遮断器の吸引体を筐体の正面側から見た図で ある。
図8図8は、同実施形態に係る回路遮断器の可動体の斜視図である。
図9図9は、同実施形態に係る回路遮断器の動作説明図であって、接点部を閉じ ている状態の説明図である。
図10図10は、同実施形態に係る回路遮断器の動作説明図であって、接点部を 開いている状態の説明図である。
図11図11は、図9の領域XIの拡大図である。
図12図12は、図10の領域XIIの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る回路遮断器について添付図面を参照しつつ説明を行う。
【0012】
回路遮断器は、異常な電流が流れたときに回路を遮断して負荷側に繋がる機器等を保護するためのものである。
【0013】
回路遮断器1は、図1に示すように、筐体2と、図2に示すように、電源側と負荷側とを電気的に接続する回路3と、前記回路3に流れる電流により電磁石となる吸引体4と、前記接点部31の閉状態を保持可能であり、且つ前記吸引体4に対して前記吸引体4側への動き代となる隙間をあけて対向配置される保持状態と、前記吸引体4側に動いた状態で
、前記接点部31の閉状態に対する保持を解除して前記接点部31を開放可能とする解除状態とに切替可能な可動体5と、吸引体4を可動体5に向けて付勢する付勢部材(以下、接触用付勢部材と称する)6と、接点部31を開閉操作可能な操作機構7と、を備えている。
【0014】
筐体2には、図1に示すように、回路遮断器1を分電盤に取り付けた状態において手前側に配置される一面である正面20と、該正面20とは反対側の一面(使用時において分電盤への取り付け面に対向配置される一面)である背面21と、正面20と背面21とに連続し、且つ互いに対向配置される一対の側面22と、が含まれている。筐体2の側面22は、回路遮断器1が分電盤に設置された状態において、別の回路遮断器1の筐体2の側面22と対向する面である。
【0015】
なお、本実施形態では、筐体2の正面20と背面21とが並ぶ方向を前後方向、一対の側面22が並ぶ方向を横幅方向、前後方向と横幅方向のそれぞれに直交する方向を縦幅方向、と称して以下の説明を行うこととする。なお、筐体2は、別体で構成される2つの分割体を前記横幅方向で付き合わせて接合することによって構成されている。
【0016】
回路3は、図2に示すように、分電盤に接続される一対の入力端子30と、該一対の入力端子30を繋ぐ電路を開閉可能な接点部31と、を有する。また、回路3では、各入力端子30に対して接点部31が一つずつ設けられている。
【0017】
以下の説明において、接点部31が前記電路を閉じている状態を閉状態、接点部が前記電路を開いている状態を開状態と称して以下の説明を行うこととする。
【0018】
各接点部31は、筐体2内で固定された固定側端子310と、該固定側端子310に対して接離可能な可動側端子311と、を有する。
【0019】
可動側端子311は、弾性変形可能な細長い金属板で構成されている。可動側端子311の長手方向における一端(基端)側は、筐体2内に位置決め(固定)されている。
【0020】
そして、可動側端子311の長手方向における他端(先端)側は、接点部31が前記開状態に切り替わっている状態においては、前記前後方向における手前側で固定側端子310に対して間隔をあけて配置されている。そのため、可動側端子311は前記操作機構7により操作されることによって、固定側端子310に向かって撓む(弾性変形する)ことで、該可動側端子311の先端部が該固定側端子310に当接する(すなわち、前記閉状態に切り替わる)ように構成されている。
【0021】
吸引体4は、回路に流れる電流の大きさに応じた磁力を発生させるように構成されている。本実施形態に係る吸引体4は、図11に示すように、可動体5に向けて配置される吸引側対向面40を有する。吸引側対向面40には、可動体5が前記保持状態であるときに、一方側の部分(吸引体4が動く際の起点(後述する回動軸220)側に配置される部分)で可動体5(可動体5の後述する可動側対向面)に接触する接触部(以下、吸引側接触部と称する)400と、他方側の部分で可動体5(可動体5の後述する可動側対向面)に接離可能な接離部(以下、吸引側接離部と称する)401と、が含まれている。
【0022】
本実施形態に係る吸引体4は、図6に示すように、前記横幅方向において間隔をあけて対向配置される一対の側壁部41と、該一対の側壁部41のそれぞれに連設される連設壁部42とを有する。
【0023】
一対の側壁部41は、壁面を前記横幅方向に向けた状態で互いに平行となるように配置されている。
【0024】
吸引側対向面40は、側壁部41のうちの可動体5に対向する部分によって構成されている。本実施形態に係る吸引側対向面40には、図3に示すように、前記縦幅方向において可動体5に対向する吸引側第一領域40aと、該吸引側第一領域40aに連続し、且つ前記前後方向(具体的には、前後方向における前方側)に向けて配置された状態で可動体5と対向する吸引側第二領域40bと、が含まれており、吸引側接触部400と吸引側接離部401とは吸引側第一領域40a内に位置している。
【0025】
吸引側第一領域40aは、常態(保持状態から保持解除状態に切り替わる動作をとっていない状態)においては、吸引側接離部401が吸引側接触部400よりも可動体5から離れた場所に位置するようにして前記縦幅方向に対して傾斜している。また、吸引側第一領域40aは、一対の側壁部41における正面側の端面(可動体5側に向けて配置されている端面)で構成されているため、細長い平面となっている。
【0026】
側壁部41では、吸引側第二領域40bの後端と側壁部41の端面(正面20側の端面)とに連続する領域は、傾斜面41aとなっている。そのため、側壁部41は、吸引側第二領域40bの後端よりも前方側では、前記前後方向における幅(すなわち、高さ)が一定であり、吸引側第二領域40bよりも後方側では、連設壁部42側になるにつれて前記前後方向における幅が徐々に小さくなるように形成されている。
【0027】
さらに、一対の側壁部41のそれぞれは、筐体2の側面22の内側に回動可能に取り付けられている。より具体的に説明すると、図4に示すように、一対の側壁部41のそれぞれは、前記横幅方向に沿って延びる軸線を中心として回動可能となるように構成されている。本実施形態では、側壁部41に貫通孔410が形成されており、この貫通孔410に筐体2の側面22の内側から前記横幅方向における内側に向けて突設された回動軸220が挿通されている。
【0028】
また、貫通孔410は、吸引側接触部400から他方側にずれた位置、すなわち、吸引側接離部401側にずれた位置に形成されている。なお、本実施形態では、前記前後方向における中央部よりも吸引側接離部401側にずれた位置に貫通孔410が形成されている。
【0029】
このように、吸引体4では、回動軸220が回動起点となっており、吸引側接触部400と吸引側接離部401とが、該貫通孔410に挿通された回動軸220を中心とする周方向に沿って回動するようになっている。
【0030】
なお、回動軸220の先端側は、少なくとも前記縦幅方向における寸法が貫通孔410の孔径よりも小さくなっている。そのため、吸引体4は、貫通孔410を画定する縁部と回動軸220との間に形成される隙間の範囲内で前記縦幅方向にスライド可能でもある。
【0031】
連設壁部42は、図7に示すように、各側壁部41の可動体5側とは反対側の端部同士に連設されており、可動体5側に向けて配置される面(以下、内面と称する)も、可動体5側とは反対側に向けて配置される面(以下、外面と称する)も平らである。
【0032】
本実施形態に係る可動体5は、図8に示すように、吸引体4に対向配置する可動体本体部51と、可動体5を筐体2内に取り付けるための取付部52と、を有する。
【0033】
可動体本体部51は、図3に示すように、吸引体4の角部(吸引側第一領域40aと吸引側第二領域40bとで形成されている角部)に合わせて屈曲している。本実施形態に係る可動体本体部51は、吸引側第一領域40aに対向する第一対向部510と、第一対向部510から吸引体4側に延出し且つ吸引側第二領域40bに対向する第二対向部511と、を有する。
【0034】
第一対向部510は、平板状であり、一方の板面が吸引側第一領域40aに対向配置されている。また、第二対向部511も平板状であり、一方の板面が吸引側第二領域40bに対向配置されている。
【0035】
第一対向部510は、吸引体4の前記前後方向における幅(高さ)に対応する寸法、より具体的には、吸引側第一領域40aの長さに対応する寸法が、該吸引側第一領域40aよりも大きくなるように形成されている。
【0036】
さらに、可動体5は、吸引側対向面40に対向配置される可動側対向面50を有する。この可動側対向面50には、自身の状態が前記保持状態に切り替わっている状態において、吸引側接触部400に接触する接触部(以下、可動側接触部と称する)500と、吸引側接離部401に対して接離可能な隙間をあけて配置される接離部(以下、可動側接離部と称する)501と、が含まれている。
【0037】
本実施形態の可動側対向面50には、吸引側第一領域40aに対向する可動側第一領域50aと、可動側第一領域50aに連続する可動側第二領域50bであって、吸引側第二領域40bに対向する可動側第二領域50bとが含まれている。そして、上記の可動側接触部500、可動側接離部501は、可動側第一領域50a内に設定されている。
【0038】
可動側第一領域50aは、第一対向部510の前記一方の板面で構成されており、可動側第二領域50bは第二対向部511の前記他方の板面で構成されている。
【0039】
また、可動体本体部51は、常態(保持状態である場合)においては、前記前後方向に沿って真っすぐに延びた姿勢となるように配置され、可動側接触部500が吸引側接触部400に接触する。すなわち、可動側第一領域50aが吸引側第一領域40aに対して部分的に接触する。
【0040】
本実施形態では、可動側第一領域50aのうちの可動体5の回動起点側(本実施形態では、筐体2の背面21側)が吸引側接触部400に接触し、可動側第一領域50aのうちの可動体5の回動起点側とは反対側(本実施形態では、筐体2の正面21側)が吸引側接離部401に接離するため、可動側接触部500が可動側第一領域50aの前記回動起点側の部分に設定され、可動側接離部501が可動側第一領域50aの前記反対側の部分に設定されている。
【0041】
また、可動体本体部51には、図8に示すように、接点部31の閉状態を保持する際に利用する掛止保持部53が形成されている。掛止保持部53は、可動体本体部51の一方の板面と他方の板面とに亘って貫設された孔であるが、例えば、他方の板面側のみで開口する凹部、若しくは他方の板面から突出する凸部により構成されていてもよい。
【0042】
取付部52は、可動体本体部51を筐体2内に対して回動可能に取り付けるように構成されており、可動体5の回動起点となるように構成されている。
【0043】
本実施形態に係る取付部52は、図5に示すように、軸線方向における中央部に位置し且つ可動体本体部51につながる接続部520と、取付部52自身の軸線方向における両端側に位置する一対の軸本体部521とを有する。各軸本体部521は、接続部520から前記横幅方向外側に向かって延出するように形成されており、先端側になるにつれて吸引体4側(可動体5の回動方向前方側)に向かうようにして傾斜している。そのため、軸本体部521が接続部520から延出する方向は、接続部520の軸線方向に対して傾斜している。
【0044】
ここで、筐体2には、図5に示すように、軸本体部521を回動可能に受ける軸受部221が設けられている。
【0045】
軸受部221は、筐体2における側面22の内面から前記横幅方向内側に延出している。また、本実施形態に係る軸受部221は、環状に形成されており、前記横幅方向における内側から軸本体部521が挿し込まれている。なお、軸受部221は、軸本体部521の数に対応して筐体2内に2つ形成されている。
【0046】
軸受部221は、軸本体部521の一端を受ける受面221aを含むように構成されており、可動体5が回動する際、軸本体部521は受面221aに沿って転がるようにして吸引体4側若しくは吸引体4とは反対側に移動するように構成されている。
【0047】
一方、軸受部221は、前記前後方向における前方側(正面22側)における軸本体部521との間や、前記縦幅方向における軸本体部521との間には隙間が形成されるように構成されている。
【0048】
取付部52は、可動体本体部51における筐体2の背面21側に配置される端部に連設されており、軸本体部521が、前記横幅方向において、可動体本体部51の両側よりも外側に延出している。また、取付部52は、側面22の内側に形成された凹状の軸受部221内に回動可能に挿入されている。
【0049】
さらに、取付部52は、吸引側接触部400と可動側接触部500との接触位置を基準として筐体2の背面21側にずれた位置に配置されている。そのため、可動体5の回動起点は、吸引体4の回動起点に対しても、前記前後方向でずれた位置(筐体2の背面21側にずれた位置)に配置されている。これにより、可動体5は、取付部52を回動起点として、可動側接離部501を吸引側接離部401に対して接離させるようにして回動できるようになっている。
【0050】
接触用付勢部材6は、図3に示すように、筐体2内に位置決めされた状態で固定されており、前記吸引体4の連設壁部42を可動体5側に向けて付勢するように構成されている。
【0051】
また、接触用付勢部材6は、前記前後方向において、吸引体4の回動起点から可動体5の回動起点側にずれた位置(本実施形態では、吸引体4の回動起点と可動体5の回動起点の間)で吸引体4を可動体5に向けて付勢するように構成されている。
【0052】
これにより、吸引体4は、常態においては、吸引側接触部400が可動側接触部500に近付くようにして傾斜した姿勢になっており、また、吸引側接触部400が可動側接触部500に押されると、吸引側接触部400と可動側接触部500との接触状態を保ったまま、吸引側接離部401が可動側接離部501に接近するようにして回動する。
【0053】
操作機構7は、図2に示すように、筐体2の外部から操作可能な操作部70と、操作部70の操作に伴って、回路遮断器1の状態を、接点部31が開いている開状態と、接点部31が閉じられている閉状態とに切り替える切替構造71と、を備えている。
【0054】
操作部70は、前記横幅方向に沿って延びる回動軸線を中心として回動可能なベース部700と、該ベース部700から筐体2の外部に延出するレバー部701と、を有する。
【0055】
切替構造71は、接点部31を閉状態と開状態とに切り替える、すなわち、可動側端子311を固定側端子310に接離させる切替部材710と、該切替部材710を付勢する開放用付勢部材711と、操作部70の操作により切替部材710を作動させるための作動構造712と、を有する。
【0056】
切替部材710は、前記前後方向に沿ってスライド可能であり、前記前後方向における後方側(筐体2の正面20から背面21側に向かう方向)へのスライドに伴い、可動側端子311を固定側端子310に向けて押し付け、前記前後方向における手前側(筐体2の背面21から正面20側に向かう方向)へのスライドに伴い、可動側端子311に対する押付状態を解除するように構成されている。
【0057】
開放用付勢部材711は、切替部材710を前記前後方向における手前側に向けて付勢している。なお、開放用付勢部材711は、常に切替部材710に付勢力を与えるように構成されていてもよいし、切替部材710が筐体2の正面20側から背面21側にスライドした際に、切替部材710に付勢力を与えるように構成されていてもよい。
【0058】
作動構造712は、操作部70に接続されるリンク部材712aと、該リンク部材712aに取り付けられる押込部材712bと、を有する。
【0059】
リンク部材712aは、前記横幅方向に沿って操作部70に挿通される操作部側軸部712aaと、該操作部側軸部712aaに繋がり、前記横幅方向に沿って押込部材712bに挿通される押込部側軸部712abとを有する。
【0060】
また、リンク部材712aは、操作部70の一方側への回転に伴い、押込部材712bを前記前後方向における後方側に押し込み、また、操作部70の他方側への回転に伴い、押込部材712bを前記前後方向における手前側に引き寄せるように構成されている。
【0061】
押込部材712bは、押込部側軸部712abが挿通されるベース部712baと、該ベース部712baから延出し、且つ掛止保持部53内に差込可能な差込片部712bbと、該ベース部712baから差込片部712bbとは反対側に延出し、且つ切替部材710を押込操作可能な押込片部712bcと、を有する。
【0062】
ベース部712baは、前記横幅方向に沿って押込部側軸部712abが挿通されており、該押込部側軸部712abを中心として回転可能となっている。そのため、押込部側軸部712abに対するベース部712baの回転により、差込片部712bbと押込片部712bcも、押込部側軸部712abを中心として回転する。
【0063】
差込片部712bbは、掛止保持部53内に挿通され且つリンク部材712aがベース部712baを引き上げている状態においては、該掛止保持部53の内面に対して前記前後方向における手前側で掛止され、掛止保持部53内に挿通され且つリンク部材712aがベース部712baを押し込んでいる状態においては、該掛止保持部53の内面に対して前記前後方向における後方側で掛止されるように構成されている。
【0064】
本実施形態に係る回路遮断器1の構成は、以上の通りである。続いて、回路遮断器1の動作説明を行う。
【0065】
回路遮断器1を使用して負荷側の電路に通電を行なう場合は、筐体2を分電盤に取り付けた後に、各接点部31を閉じる。本実施形態では、図9図11に示すように、操作部70を回動させると、リンク部材712aが押込部材712bを筐体2の背面21側に向けて押し込む。
【0066】
このとき、差込片部712bbが掛止保持部53に掛止されているため、差込片部712bbに対して押込片部712bcが前記前後方向における後方側に移動する。
【0067】
さらに、切替部材710が押込部材712bによって前記前後方向における後方側に押し込まれて移動し、さらに、該切替部材710によって可動側端子311が固定側端子310に向けて押し込まれる。
【0068】
そして、可動側端子311と固定側端子310とが接触することで、電路が閉じた状態に切り替わる。
【0069】
切替部材710、押込部材712bには、開放用付勢部材711による付勢力(前記前後方向における手前側への付勢力)がかかるが、リンク部材712aの押し込みにより切替部材710、押込部材712bの前記前後方向における手前側への動きがロックされているため、可動側端子311と固定側端子310とを接触させた状態(回路を閉じた状態)が維持される。すなわち、可動体5が保持状態に切り替わる。
【0070】
可動体5が保持状態に切り替えられた状態においては、吸引側接触部400と可動側接触部500とが接触する一方で、吸引側接離部401と可動側接離部501とは離間している。このように、吸引側対向面40(吸引側第一領域40a)と可動側対向面50(可動側第一領域50a)との間の隙間は、吸引側接触部400と可動側接触部500とが部分的に接触することによって、吸引側接触部400及び可動側接触部500側に向かうにつれて狭くなっている。そのため、可動体5の吸引体4側への動き代を確保しつつ、可動体5が保持状態であるときの前記隙間を小さく抑えることができる。
【0071】
また、前記隙間が小さくなることで、吸引体4と可動体5との間の磁気抵抗も小さくなるため、かかる状態で回路3に過大電流(すなわち、吸引体に可動体を引き寄せる強さの磁力を生じさせる電流)が流れると吸引体4と可動体5との間には大きな吸引力が発生し、この吸引力によって可動体5が吸引体4側に素早く回動し始める(すなわち、可動体5の反応速度が速くなる)。
【0072】
また、可動体5が吸引体4側に回動する際、可動側接触部500が吸引側接触部400を押すため、吸引体4が回動軸220を中心として回動し、吸引側接離部401が可動側接離部501に向かって動く。そのため、吸引側接離部401と可動側接離部501とは、互いに接近する方向に動く。
【0073】
そして、掛止保持部53から差込片部712bbが外れると、図10図12に示すように、ロックされた状態が解除されるため、開放用付勢部材711の付勢力により切替部材710と押込部材712bとが前記前後方向における手前側に付勢されることによって、可動側端子311が固定側端子310から離間し、電路が開かれる(すなわち、回路3が遮断される)。
【0074】
以上のように、本実施形態に係る回路遮断器1によれば、可動体5が保持状態であるとき、すなわち、可動体5が接点部31の閉状態を保持している状態においては、吸引側対向面40の吸引側第一領域40aと可動側対向面50の可動側第一領域50aとが部分的に接触した状態で吸引側第一領域40aが可動側第一領域50aに対して傾斜した姿勢となるため、吸引側第一領域40aと可動側第一領域50aとの間の隙間は、吸引側接触部400及び可動側接触部500側に向かうにつれて狭くなる。
【0075】
これにより、吸引側接触部400及び可動側接触部500の近傍領域では、吸引側第一領域40aと可動側第一領域50aとの間の磁気抵抗が小さくなるため、回路3に過大電流(すなわち、吸引体4に可動体5を引き寄せる強さの磁力を生じさせる電流)が流れたときに吸引体4と可動体5との間には大きな吸引力が発生する。
【0076】
従って、回路3に過大電流が流れてから可動体5が動き出すまでの反応速度が速くなり、これにより、遮断時(いわゆる、瞬時引外し時)の応答性が向上する。
【0077】
そして、回路3に過大電流が流れた際に可動体5が吸引体4側に回動すると、可動側接触部500が吸引側接触部400を押し操作する。このとき、可動側接離部501は吸引側対向面40(吸引側接離部401)に向かって動き、且つ吸引側接離部401は可動側対向面50(可動側接離部501)に向かって動く。
【0078】
このように、可動体5と吸引体4とは、互いの間の隙間を狭めるようにして接近し合うため、可動体5が回動し始めた後においては、前記隙間が素早く狭まり、前記隙間が狭まるほど磁気抵抗が小さくなって吸引力は強くなるから、これに伴い、可動体5を吸引体4側に引き寄せるための吸引力が素早く高まる。
【0079】
従って、回路遮断器1では、回路3に過大電流が流れたときに可動体5の動作速度が速くなる結果、可動体5が吸引体4側に素早く引き寄せられ、これにより、短時間で接点部31を開放可能な状態にすることができる。
【0080】
このように、上記構成の回路遮断器1は、回路3に過大電流が流れて可動体5が吸引体4側に回動し始める際に吸引体4と可動体5との間に大きな吸引力を発生させることができ、可動体5が吸引体4側に回動し始めた後は前記吸引力を素早く高めることができるため、接点部31を開放可能な状態にすることができる。
【0081】
従って、本実施形態に係る回路遮断器1は、遮断時の応答性が良いものとすることができるという優れた効果を奏し得る。
【0082】
また、本実施形態の吸引体4は、吸引側接触部400が形成されている一端側とは反対側の他端側に寄せて回動起点が設けられているため、可動側接触部500に吸引側接触部400が押されたときに可動体5に生じる回転モーメントが大きくなり、より素早く吸引体4が可動体5側に動くようにすることができる。
【0083】
また、本実施形態の回路遮断器1では、吸引側対向面40の吸引側第一領域40aと可動側対向面50の可動側第一領域50aとが対向するだけでなく、吸引側対向面40の吸引側第二領域40bと可動側対向面50の可動側第二領域50bも対向するため、可動体5に働く前記吸引力が強くなる。
【0084】
さらに、本実施形態では、吸引体4の縦幅方向において、連設壁部42の位置と吸引側第二領域40bの位置にはギャップが生じているが、連設壁部42と側壁部41との境目から吸引側第二領域40bまでの間においては、側壁部41の縦幅を徐々に大きくすることで、磁束が連設壁部42から吸引側第二領域40bや吸引側第一領域40aの上端側に向かって直線的に流れるようにしているため、吸引体4から強い吸引力を発生させることができる。
【0085】
さらに、吸引体4の回動起点となる回動軸220と貫通孔410を画定する縁部との間、及び可動体5の回動起点となる軸本体部521と軸受部221との間には隙間が形成されているため、吸引体4と可動体5とはこの隙間の範囲内で動くことができるようになっている。
【0086】
本実施形態の筐体2は、上述のように2つの分割体を前記横幅方向で付き合わせて接合することによって構成されているため、例えば、製造時に各分割体に形成されている回動軸220や軸受部221の位置がずれたりしても、前記隙間の範囲内で吸引体4と可動体5の位置や姿勢が合うことによって、正しく動作できるようになる。
【0087】
なお、本発明の回路遮断器は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0088】
上記実施形態において、吸引体4は、筐体2の回動軸220を貫通孔410に挿通することにより、回動可能となるように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、吸引体4は、該吸引体4に突設した軸を筐体2、より具体的には、筐体2の内面に挿通することで回動可能となるように構成されていてもよい。
【0089】
上記実施形態において、吸引側対向面40は、吸引体4全体を傾けることで吸引側接離部401を吸引側接触部400よりも可動体5から離れた場所に配置してもよいし、吸引側対向面40自体を傾斜した形状にしてもよい。
【0090】
上記実施形態において、特に言及しなかったが、吸引側接触部400と可動側接触部500とは、点接触又は略点接触していることが好ましい。
【0091】
上記実施形態において、可動体5は、前記横幅方向において可動体本体部51の両側から外側に向かって延出する取付部52を軸受部221内に挿入することで、回動可能となるように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、可動体5は、側面22の内面に突設した軸を挿通する構造とすることで回動可能となるように構成されていてもよい。
【0092】
上記実施形態において、可動体5の可動体本体部51は、板状であったが、この構成に限定されない。例えば、可動体5の可動体本体部51は、柱状や、枠状であってもよい。
【0093】
上記実施形態では、吸引側対向面40を前記前後方向に対して傾斜させ、可動側対向面50を前記前後方向に沿って真っすぐに配置していたが、この構成に限定されない。例えば、吸引側対向面40と可動側対向面50の両方を前記前後方向に対して傾斜させてもよいし、可動側対向面50のみを前記前後方向に対して傾斜させてもよい。
【0094】
上記実施形態の回路遮断器は、
電源側の端子と負荷側の端子とに繋がる回路と、
該回路を開閉する接点部と、
前記回路に流れる電流により電磁石となる吸引体と、
前記接点部の閉状態を保持可能であり、且つ前記吸引体に対して前記吸引体側への動き代となる隙間をあけて対向配置される保持状態と、前記吸引体側に動いた状態で、前記接点部の閉状態に対する保持を解除して前記接点部を開放可能とする解除状態とに切替可能な可動体と、を備え、
前記吸引体は、前記可動体側に向けて配置される吸引側対向面を有し、
前記可動体は、前記吸引側対向面に対向配置される可動側対向面を有し、
前記吸引側対向面と前記可動側対向面とは、前記可動体が前記保持状態であるときに、一方側で互いに接触する接触部と、他方側で接離可能な隙間を形成するよう互いに離間する接離部と、を有し、
前記可動体は、前記可動側対向面が有する前記接触部よりも前記一方側にずれた位置を回動起点として回動可能であり、且つ回動に伴って前記可動側対向面の前記接離部が前記吸引側対向面の前記接離部に接離するように構成され、
前記吸引体は、前記接触部よりも他方側にずれた位置を回動起点として可動体に対して接離する方向で回動可能に構成され、
前記吸引体を、該吸引体の回動起点よりも前記可動体の回動起点側にずれた位置で前記可動体に向けて付勢する付勢部材を備える。
【0095】
上記構成の回路遮断器によれば、吸引体と可動体とはそれぞれの接触部が互いに接触した状態であり、また、吸引体の回動起点は、該吸引体の接触部から前記他方側(接離部側)にずれた位置に設定されているため、回路に過大電流(すなわち、吸引体に可動体を引き寄せる強さの磁力を生じさせる電流)が流れた際に可動体が吸引体側に回動すると、可動側対向面の接触部が吸引側対向面の接触部を押し操作する。このとき、可動側対向面の接離部は吸引側対向面に向かって動き、且つ吸引側対向面の接離部は可動側対向面に向かって動く。
【0096】
このように、可動体と吸引体とは、互いの間の隙間を狭めるようにして接近し合うため、可動体が回動し始めた後においては、前記隙間が素早く狭まる。また、前記隙間が狭まり磁気抵抗が小さくなるにつれて吸引力が強くなるため、可動体を吸引体側に引き寄せるための吸引力が素早く高まる。
【0097】
従って、上記構成の回路遮断器は、回路に過大電流が流れたときに可動体が吸引体側に素早く引き寄せられるため、短時間で接点部を開放可能な状態にすることができる。
【0098】
また、上記実施形態の回路遮断器において、
前記可動側対向面及び前記吸引側対向面は、前記接触部から前記接離部にかけて平面で構成され、
前記吸引側対向面は、前記可動体が前記保持状態であるときに、前記可動側対向面に対して傾斜した姿勢で部分的に接触する、ようにしてもよい。
【0099】
かかる構成によれば、可動体が保持状態である場合においては、吸引側対向面と可動側対向面とが部分的に接触した状態で吸引側対向面が可動側対向面に対して傾斜した姿勢となるため、吸引側対向面と可動側対向面との間の隙間は、各接触部側に向かうにつれて狭くなる。これにより、可動側対向面と吸引側対向面の接触部の近傍領域では吸引体と可動体との間の磁気抵抗が小さくなるため、回路に過大電流が流れたときに吸引体と可動体との間には大きな吸引力が発生する。
【符号の説明】
【0100】
1…回路遮断器、2…筐体、3…回路、4…吸引体、5…可動体、6…接触用付勢部材、7…操作機構、20…正面、21…背面、22…側面、30…入力端子、31…接点部、40…吸引側対向面、41…側壁部、42…連設壁部、50…可動側対向面、51…可動体本体部、52…取付部、53…掛止保持部、70…操作部、71…切替構造、220…回動軸、221…軸受部、310…固定側端子、311…可動側端子、400…吸引側接触部、410…貫通孔、500…可動側接触部、501…可動側接離部、700…ベース部、701…レバー部、710…切替部材、711…開放用付勢部材、712…作動構造、712a…リンク部材、712aa…操作部側軸部、712ab…押込部側軸部、712b…押込部材、712ba…ベース部、712bb…差込片部、712bc…押込片部
図1
図2
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