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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】食品タンパク質改良剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/3508 20060101AFI20230522BHJP
【FI】
A23L3/3508
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023017720
(22)【出願日】2023-02-08
【審査請求日】2023-02-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000129150
【氏名又は名称】株式会社カランテ
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 要次郎
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-082067(JP,A)
【文献】特開2008-263799(JP,A)
【文献】特開2004-057178(JP,A)
【文献】特開昭48-085770(JP,A)
【文献】特許第5767376(JP,B1)
【文献】特許第4927214(JP,B2)
【文献】特許第4040903(JP,B2)
【文献】特許第5513651(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/00- 3/3598
A23L 5/00- 5/30
A23L 29/00-29/30
A23L 33/00-33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
AGRICOLA/BIOSIS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
醸造酢に酸化カルシウムを重量比1%から5%を溶存しpH3.5から5.5で比重1.04から1.14の食品タンパク質改良剤。
【請求項2】
前記酸化カルシウムの原料は貝殻、卵殻、サンゴ殻、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウムの1種あるいは2種以上からなる
請求項1に記載の食品タンパク質改良材。
【請求項3】
食品に使用して塩漬食品の加工または凍結冷凍冷蔵の貯蔵流通を食塩不使用とすることを特徴とする
請求項1に記載の食品タンパク質改良剤。
【請求項4】
食品に使用して凍結冷凍冷蔵の貯蔵流通におけるタンパク質の変性を防止することを特徴とする
請求項1に記載の食品タンパク質改良剤。
【請求項5】
食品に使用してpH調整をすることを特徴とする
請求項1に記載の食品タンパク質改良剤。
【請求項6】
食品は食肉、魚介類、大豆タンパクまたはこれらを原材料とする食品である
請求項3に記載の食品のタンパク質改良剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品タンパク質改良剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品のタンパク質については三大栄養素のタンパク源である食肉や魚介類あるいは大豆でありこれの有効な利用は炭水化物や脂質とともに食糧資源の確保と共に重要であり、これら食品を加工し消費するまでの品質を安定することも同様である。
従来食塩を使用して食品を加工し貯蔵流通し消費される食品は塩漬食品または塩蔵食品あるいは塩析食品として、特にタンパク質に関わり重用されてきた方法である。
本文の塩漬食品には塩蔵食品と塩析食品を含む。
【0003】
塩漬食品での食塩使用の目的は、タンパク質を消費し易く変性し、そして食塩の浸透圧作用により食品中の水分を離水して水分を減らし、微生物の水分利用を抑えてその増殖速度を遅延させ食品の腐敗や食中毒を防ぐためである。
このように食品に調味以外に食塩を使用するのは加工のためであり、あるいは保存性を得るためであり、これに使用する量と方法は調味とは別の加工法であり、その方法としては食塩を食品に塗布し付着させる塩漬、あるいは一定濃度の食塩水に浸漬する方法があるがこれらは食塩に依存する以外の方法がなかったからである。
食品の種類と用途により食塩の使用量は食品との重量比で20%前後まである。
【0004】
食品の安全性を確保するために低温度で貯蔵し流通するシステムが進んでおりこれに相応して微生物の制御による食品の変敗の防止は有効に作用している。
食品のタンパク質の変性の原因として温度があり、例えば加工の際の加熱温度であり、そして貯蔵流通の低温度との温度差があること、貯蔵期間が4ヶ月に及ぶこともあり長期間であること、また包装条件や酸、アルカリ、pHの変化やさらに貯蔵流通の途次での積み替えや、再加工での取り出しと加工後に再度冷凍に戻すなど温度変化の諸要因が影響を及ぼす。これら食品の原材料についても同様である。
【0005】
鶏卵はタンパク質に富む食品である。生の鶏卵を5℃で3日間保存しこれを割卵しても性状に変化はないが、同じ生の鶏卵を-20℃で3日間保存の後これを割卵すると生卵の液状ではなく、白身と黄身は共にゼリー状にゲル化し生卵の流動性のある液状が変性する。そしてこれをそのまま常温に置き3日経過後においても生卵の性状に戻ることはなく、変性はそのままである。これは-20℃による凍結ではなく凝縮や硬化などタンパク質の変性によるものと分かる。またこれを試食しても支障はないが食味と食感は茹で卵のような加熱による変性とは異なるものであり、また食材としての利用には向かない。
鶏卵は通常では常温、または冷蔵庫温度の5℃での保存では変性はなく、-20℃の低温度の影響を受け変性したのであり食品タンパク質が低温度の影響により変性する例である。
【0006】
本願発明は酸化カルシウムを醸造酢に溶存し、これを使用して酸味酸臭を伴わずに、食品タンパク質のおかれた環境条件の影響による変性を防ぎ品質を向上し、また食塩を使用しての加工生産あるいは貯蔵流通による硬化または凝縮などの変性を防ぐため、食塩を使用せずにより以上の効果を得て、あるいは凍結冷凍温度の保存を不用としても良好な保存条件となる技術を開発することを目的とする。
食品タンパク質が低温度の管理により変性があることで食味や食感に影響を与え、品質を損なうことがあればこれを防ぎ食味や食感あるいは外観を維持向上することは栄養摂取の目的に合致する。
【0007】
また、食肉や魚介類または大豆タンパク食品の加工や貯蔵方法が食塩による塩漬や食塩水の浸漬またはボイルなど、従来の食塩に依存した加工法や保存法での食塩の過剰摂取に偏る方法に代わってこれらの改善に通じる。
また、食塩により加工し冷蔵冷凍で貯蔵流通する食品では、食塩と低温の両方に起因してタンパク質の変性があるなど複合することもありこの改良も併せて目的となる。
これらの改良により食味や食感に新しい味覚を得ることはこれら食品の用途を広げ食資源の有意な活用を図るうえで有効な技術となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許4755384号公報
【文献】特許5767376号公報
【文献】特許4927214号公報
【文献】特許5513651号公報
【文献】特許4040903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
食品を構成する成分のうち3大栄養成分のタンパク質、脂質、炭水化物は食品摂取の主となるものであり、さらに味覚と栄養源ではタンパク質に多くを依存するものでありこれを良好な状態で供給することは食糧資源の確保における課題となる。
そして当該食品は食肉、魚介類、植物タンパクの大豆であり、食肉では牛豚鶏の骨格筋と心筋を主とした筋線維であり、魚介類の魚類では筋膜と筋節からなる筋線維でありこれらの組織結合でもある硬質タンパク質のコラーゲンであり、大豆タンパクは大豆から酸沈殿あるいは油分抽出後の顆粒状タンパク質であり、そしてこれらを原材料とする食品である。
【0010】
これら食品には減塩と冷凍耐性の課題がある。
これまで依存してきた食塩による加工または貯蔵流通の方法ではなく、さらに調理時の塩抜きの手間と時間を解消して、食塩不使用により塩味に限定されない食材や調理法を広げ、食塩による加工と低温度保存との相まっての変性があれば同時にこれを防ぎこれら食材のさらなる汎用化を実現するため新たな技術を見出す課題がある。
上記食品のタンパク質は、熱変性を伴う加工により旨味のある食味と食べやすい食感に変性されてから、保存のため低温度の管理下に置かれ消費するまで品質を維持すべき課題がある。
そしてこれら食品に低温度による品質の低下が派生し特にタンパク質に関して変性による硬化や凝縮などの食味食感の低下があればこれを安全に防ぐ課題がある。
【0011】
食品は冷凍での貯蔵流通の一定期間の経過後に、食味と食感とさらには香気や外観についても良好であることは必須でありこれらの低下を防ぐ技術が課題である。
この変性を防止し改良するために従来の加工法や保存法とは相異した技術でこれを達成すべき課題があり、変性があれば同時にこれを防ぎ、これら食材のさらなる汎用化を実現するため新たな技術を見出すことが課題である。
【0012】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、食品の変性を抑えることができる食品タンパク質改良剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、醸造酢に酸化カルシウムを重量比1%から5%を溶存しpH3.5から5.5で比重1.04から1.14の食品タンパク質改良剤である。
【0014】
好適には、前記酸化カルシウムの原料は貝殻、卵殻、サンゴ殻、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウムの1種あるいは2種以上からなる。
【0015】
好適には、食品に使用して塩漬食品の加工または凍結冷凍冷蔵の貯蔵流通を食塩不使用とすることを特徴とする。
【0016】
好適には、食品に使用して凍結冷凍冷蔵の貯蔵流通におけるタンパク質の変性を防止することを特徴とする。
【0017】
好適には、食品に使用してpH調整をすることを特徴とする。
【0018】
好適には、食品は食肉、魚介類、大豆タンパクまたはこれらを原材料とする食品に用いられる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、食品の変性を抑えることができる食品タンパク質改良剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
従来から醸造酢による食品の食味食感の改良がおこなわれており、例えばしめ鯖があり鯵の南蛮漬けや魚介類の酢の物料理や牛や豚肉のマリネなどがあり、これらは醸造酢のタンパク質の変性作用による調理法である。これは魚介類や食肉に醸造酢を直接加えまたは浸漬してタンパク質を変える方法である。
しかしこれは同時に酸味を呈することで食味を得ている酢料理である。
醸造酢に酸化カルシウムを用いて、酢料理のように酸味あるいは酸臭を付与しないで加工し冷蔵や冷凍の低温度管理下での変性を防ぎ、あるいは改良することができれば、食肉や魚介類あるいは大豆タンパク食品にこの技術を広く利用することができる。
酸化カルシウムを醸造酢に溶存した溶液が食品のタンパク質に作用し改良効果を得るのが本願発明の改良剤である。
【0021】
この実用化の試験の課程において、本剤が従来の食塩による加工や保存によるタンパク質の変性の方法に代って、これと同等ないしそれ以上に効果があることを見出した。そしてこれは従来の方法に勝る品質向上の有意な効果があることも発見した。
【0022】
これまで酸化カルシウムを醸造酢に溶解しこれを少量使用することで食品に付着または寄生する細菌に対して抗菌効果があり、その機序には細胞膜を透過して遺伝子タンパク質に作用し細菌の増殖を抑止し、あるいは小麦粉のタンパク質グルテンの生成に効率を図るなど、タンパク質に作用して変性を促進する機能を有することが分かった。本剤を使用して牛や豚、鶏の食肉や魚介類あるいは大豆タンパク食品の加工においてあるいは貯蔵流通での低温度による変性を防ぎまたは向上する効果を見出した。
【0023】
酸化カルシウムとしてほたての貝殻を原料としこれを1250℃前後の温度で焼成して得ることができた。ほたては産地が特定しておりこの貝殻の加工も集約されているので質量とも安定しているので優位に利用できる。
醸造酢は穀物あるいは果実を原料としその糖質を発酵してアルコールとし、これを酢酸菌により発酵醸造して製造するが、本願発明の改良剤の醸造酢は糖蜜由来の醸造用アルコールを原料として発酵醸造した酸濃度が15%の醸造酢を使用した。
アルコール原料の醸造酢は穀物や果実などを原料とした場合と比較して、糖化発酵の工程を経ず醸造するため生産性が高く、酸濃度も高く得られ酸化カルシウムの溶解量を調整し易く、また原料由来の特定の風味が少なく本発明の用途として適している。
【0024】
本願発明の目的に適応した酸化カルシウムの前記醸造酢への溶解量を得るため、酸化カルシウムの溶存量を区分した溶解液を試作し、夫々に対応した同一濃度の希釈水を用意し、これを食品に使用し試験した。以下数量の比率は重量比とする。
酸化カルシウム量を0.7%, 0.9%, 1.0%, 2.0%、3.0%, 3.8,%4.5%、5.0%5.3%、5.8%、6.8%の区分にて溶解液を試作し、各区分6%を添加した希釈水を用意した。
【0025】
ただし5.8%と6.8%は溶解後に白色粉末が析出し沈殿したためこの2区分は上澄み液を使用した。これは酸化カルシウムの溶解は醸造酢の酸濃度に対応するので濃度以上を加えると水酸化物となり物性も異なり5.8%以上はこれに該当する。
上記の各試料を食品に使用し本発明の目的に適した酸化カルシウムの溶解量値を計測するため鮮魚の鮪を試料とし、これのサク830gを等分に切り分け溶解量区分の各希釈水に浸漬し30分経過後にラップで包装し冷凍保存した。
【0026】
冷凍保存5日経過後に流水で解凍し刺身とし試験担当者3名により試食した。
以下は試食による酸化カルシウム溶存量と食味の評価である。
0.7%:酸臭があり酸味が強く食味不適。
0.9%:酸臭があり酸味が強く食味不適。
1.0%:酸臭は少なく酸味があり水分は多く硬さがあるが食味は適。
1.5%:酸臭は無く酸味は少しあるが水分多く硬さがあるが食味は適。
2,0%:酸臭は無く酸味と水分は少しあり硬さは無く食味は適。
2.5%:酸臭は無く酸味と水分は少しあり硬さは無く食味は適。
3.0%:酸臭は無く酸味少なく水分なく硬さは無く旨味少しあり食味は適。
3.8%:酸臭は無く酸味僅かあり水分は少なく硬さはなく旨味あり食味は適。
4.5%:酸臭と酸味は無く水分はなく硬さがなく旨味あり食味は適。
5.0%:酸臭と酸味が無く水分はなく硬さはなく旨味あり食味は適。
5.3%:酸臭と酸味が無く渋みがあり硬さはないが食味に違和感あり不適。
5.8%:酸臭と酸味が無く渋みがあり食味に違和感あり不適。
6.8%:酸臭と酸味が無いが渋み強く食味に違和感あり不適。
【0027】
上記結果から酸化カルシウム溶解量0.9%以下は酸臭と酸味が強く食品としては不適であり1.0%から3.0%は酸臭と酸味があるが酸味を伴う食品には使用可能であり、5.3%から6.8%は渋味があり食味に違和感があり食品には不適である。
これらの結果により酸化カルシウムの溶存量については1.0%でpH3.5比重が1.04から同5.0%でpH5.5比重が1.14を本願発明の適用の範囲とし、また5.0%については有効ではあるが酸化カルシウムの溶解の限度に近接しており製品化した場合の品質の安定性のためと食味の比較において優れている4.5%を最適とした。
【0028】
本発明の食品タンパク質改良剤の使用方法には、本剤を3%から17%を加えた希釈水を浸漬水とし、浸漬により食品全体に浸透して本剤の効果を得ることができる。そのほか散布用水としてスプレーする、あるいは加工用水とする、また本剤10%以下を加えての使用もできる。
【0029】
当該食品タンパク質改良剤の希釈水を食品全体に浸透させる希釈水の濃度を以下の試験により設定した。
希釈水用の水道水pH7.0に本剤を2%から17%までを加えてpHを測定した。
【0030】
【表1】
【0031】
添加量6%でpH5.8となり17%までpH値は移動せずに同一である。これは本剤
の緩衝能の作用によるものであり食味に好適な弱酸性のpH調整ができる。
また希釈水を使用する食品の種類または量、そのほか水分の多小、pH値などの状態やあるいは処理時間の長さなどにより希釈濃度6%以上15%前後までの希釈水を選択する。
【0032】
本明細書の温度帯の5℃は冷蔵温度であり、-35℃は凍結ための急速冷凍をする加工温度とし、-20℃を冷凍温度とする。本剤を使用し凍結冷凍を不用としても冷蔵保存をするのは、常温域では温度の変化が大きく20℃から30℃またはそれ以上もあり細菌の増殖が速く食品の安全な保存のためである。
【0033】
低温度保存の試験の期間は前記鶏卵の変性などを参考に4日から30日間とした。
食品タンパク質の性状は食品の食味食感に反映しこれを左右するものであり、食味は塩、酸、甘、苦、旨味の味質から構成され、食感は歯ごたえ、舌さわり粘りなどのテクスチャーであり香りや色彩も影響しまたこれらには個人差がある。
【0034】
本発明の食品タンパク質改良剤の使用食品の食味と食感は官能試験により評価し、また食感については硬度試験により同一試験の試料食品相互の硬さを相対比により評価した。
【0035】
酸化カルシウムを醸造酢に溶存し酸味酸臭の無い食品のタンパク質改良剤とし、あるいは加工と生産の食塩と代替するタンパク質改良剤として、食肉や魚介類あるいは大豆タンパクおよびこれらを原料とした食塩の加工における変性、または貯蔵流通における冷蔵冷凍の低温度によるタンパク質の硬質化、または凝縮化あるいは水位の移動などによる変性を防止し、そして派生する食味や食感あるいは外観や香気の低下を防止し改良して品質を向上する本願発明の食品タンパク質改良剤とする。
【0036】
本発明の食品タンパク質改良剤は食感については硬質化を防ぎ軟質を維持する効果があり、食品によっては食感の軟らかさが食味との相乗的な効果を示し、また食塩に依存した加工や貯蔵による限定された食味食感ではなく、塩漬食品の塩抜きの手間と時間を不用とし、多種の料理に好適な食材とし、また食塩の過剰な摂取を防ぎ、減塩、無塩食品などを容易に可能にするなどこれまでにない新しい用途を拓き食生活の向上に資する。
【実施例1】
【0037】
以下本願発明の実施例を記述するが用途はこれらに限定されるものではない。
試食による官能試験はパネラーによるほかは試験担当者複数により実施した。
魚介類のタンパク質の改良について鯵の開き干しを試験した。
魚類のたんぱく質の筋線維は筋節と筋膜で構成され食肉動物の筋線維より細く柔軟であり、塩漬によりあるいは低温度下の貯蔵流通でタンパク質の変性があり、食味や食感の変化があり、これらの防止あるいは改良について本剤の試験をした。
開き干しの塩漬法は魚類の保存法として従来から広く利用されており、この加工法は魚体を開きに切り分けて、食塩を塗付または食塩水に浸漬し一定時間の経過後これを天日または風乾により乾燥して製品とする。
【0038】
開き干しは魚種や大きさを問わず大略この方法である。
これは食塩の浸透圧作用の離水による保存効果と塩味を付ける、従来から唯一の方法とし長年採られてきたが、この加工法で作った開き干しは常温の管理では細菌の増殖があり保存期間が数日と短期間であり、冷蔵または冷凍の貯蔵流通に委ねられており低温度の影響は免れない。
【0039】
鮮魚の鯵を開きに切り分け、対照区1と対照区2は塩漬による試料とし、試験区1と試験区2は本剤を使用した試料とし、各区7枚を用意した。
対照区1と対照区2は、一般的な加工法とされている15%の食塩水に浸漬し、浸漬時間を40分間とした。浸漬水はpH7.1であった。
【0040】
試験区1と試験区2は本剤6%の希釈水に40分間浸漬した。
希釈水はpH5.8であった。
塩漬および浸漬終了後に各試料を乾燥庫に入れ常温の送風にて3時間風乾した。
乾燥による水分の離水量を計量し比較すると、対照区は平均値で6.8%であり試験区では同じく5.9%であった。
両試料ともポリ袋に収納し、対照区1と試験区1を5℃の冷蔵庫に、対照区2と試験区2を-20℃の冷凍庫に収納した。
【0041】
試料は冷蔵および冷凍とも6日間の保存後に常温にて解凍し、焙焼してパネラーによる試食により官能試験をした。
試食に先立って魚臭について試験をした。全てのポリ袋を開封し臭気を試験した結果対照区1と対照区2は通常感じている開き干しの魚臭があり、試験区,1と試験区2はいずれも魚臭は僅かであった。
【0042】
試食は対照区1と試験区1、対照区2と試験区2の4種にわたり、試料を焙焼し通常の食事と同様に適宜に飯米と併せて試食しまた醤油を使用した。
試食の順序として冷蔵保存の対照区1と試験区1を、次いで冷凍保存の対照区2と試験区2とした。食味あるいは食感は個人差があるが各パネラーは鯵の開き干しを日頃食べており食経験があり、また日常の食事と同様な条件での官能試験をした。
【0043】
A~G:パネラー7名を記号で表示した。
パネラーの構成は男性3女性4の7名で年齢は20代から50代である。
評価は食味と食感を併せての5点評価とし合計を採点した。
対照区は従来からの食味食感であるがあくまで試験区と比較しての評価である。
1点:試験区と比較して対照区は食味食感が低下している
2点:試験区と比較して対照区は食味食感が少し低下している
3点:試験区と対照区を比較して食味食感は変わらない
4点:試験区は対照区より食味食感が少し良い
5点:試験区は対照区より食味食感が良い
【0044】
【表2】
【0045】
試食の内容では、対照区1と対照区2はこれまで食経験のある通常の食味食感であるが、旨味は塩味の有無や僅かな渋味が反映され、対照区1は筋線維の筋節と筋膜が分離したパサパサ感の乾燥感が明らかにあり冷蔵保存での低い評価となっている。
対照区2の評価3としたのは干物特有の硬さを評価している。
試験区1の食味は水分のある旨味があり塩味と渋みがなく、食感は筋線維の分離がなくパサパサの乾燥感のないことで冷蔵保存での本剤の効果があった。
試験区2の食味は旨味が濃厚で甘味があり渋みはなく、食感について評価4または5としたのは肉質が厚く柔軟であり、冷凍保存での変性はなく筋線維の分離がなく乾燥感がない点が評価されている。
【0046】
試験区1は冷蔵温度であるが乾燥感がないこと、試験区2は冷凍での硬化がなく乾燥感もないことで食味と食感の相乗した評価が加算され良好となった。
また保存性では対照区1の生菌数は104であり試験区1は300以下であった。
試験区1は生菌数が300以下であり冷蔵保存にて適応している。
【0047】
試料の食塩量を塩分計(アタゴ社製PAL-FM1)で測定した。
対照区1は100g中の1.4gであり対照区2も同1.4gであった。
試験区1は同0.3gで試験区2も同0.3gであった。
試験区1と2の浸漬水の本剤濃度6%の使用量は適応していた。
試料の硬さを果実硬度計GY3型(Pudibei社製)にて計測した。
硬度計の押圧端子は円筒型直径11mmストローク10mmであり、また薄い試料を重ねて計測するための試験容器は4cmx7.3cm深さ3.4cmのプラスチックのケースを用意し底から2cmにマークを付けた。
硬さの計測値は同一試験の試料の相対比とし以下の実施各例も同様とした。
計測はケースに合わせて干物の腹側を切り3枚を重ね計測点3箇所の平均値とした。
【0048】
【表3】
【0049】
試食の評価では塩味の有無が食味に影響しており、塩味のない開き干しは新規な食味であり、減塩や食塩不使用の健康志向に合う新たな需要を得る効果がある。
上記試験の結果から、低温度で保存する魚肉のタンパク質の変性を防ぎ食味を向上し、また食塩を使用せず加工が可能であり、冷蔵温度での保存で良好であった。
上記試験の結果、従来の塩漬食品を無塩化にする、冷凍食品のタンパク質変性を防ぎ品質を向上する本剤の効果を確認した。
上記試験品に限定せず魚介類の加工生産に本剤を使用し浸漬水や加熱用水などの加工生産方法で魚介類のフィレ、えび、たこ、いか、魚卵など、ほたて、みる貝、貝柱等あるいはこれらの加工品に使用してタンパク質改良の効果を利用できる。
【実施例2】
【0050】
魚卵のタラコについて試験した。
タラコはスケトウダラの卵巣を加工した魚卵食品であり、タンパク質に富む食品であり消費量は多く、生食はせず煮ものなど加熱調理のほか多くは塩漬食品である。
タラコの加工法は、スケトウダラから卵巣を採取し、洗浄して重量比の10%から2
0%前後の食塩を塗布し8時間から15時間前後塩漬し、食塩の浸透と離水を促してから食塩と水分を拭き取り製品とし、その殆どは冷凍で貯蔵流通する。
二次加工品は香辛料などで調味加工をして冷蔵または冷凍で貯蔵流通する。
タラコは消費に際しては解凍しそのままかまたは焙焼しあるいは料理の食材とする。
【0051】
試験は鮮魚のスケトウダラから採取したタラコを材料とし、対照区と試験区に区分して各8腹16個を用意し対照区と試験区1,2に各4個を試料とした。 対照区1は15%の食塩を塗布し8時間塩漬し食塩と水分を拭きとりPP容器に入れ冷蔵保存とし、対照区2も15%の食塩を塗布し同様に塩漬し容器に入れ冷凍保存とした。
試験区1は本剤6%の希釈水に8時間浸漬後に同様に容器に入れ冷蔵保存をした。
試験区2も本剤6%の希釈水に8時間浸漬後に同様に容器に入れ冷凍保存をした。
いずれの試料にも着色はしない。
【0052】
試料の保存期間14日間経過後に冷凍は常温で解凍し、冷蔵は常温としてから試験担当者3名の試食により官能試験をおこなった。試食は飯米と合わせ食事と同様な条件としたが、これは対照区の試料は塩味が強く、試料のみの試食は難しいため通常の食事の条件でおこなった。
対照区1は生菌数が106で変敗と判断し試食せず廃棄した。
試験区1の生菌数は300以下であり冷蔵の保存で支障はなかった。
官能試験により、対照区2は塩味のあるタラコの食味であり、食感の粒感は硬さのあるツブツブ感であり、タラコを包む皮膜は薄い灰色で硬さがあり魚臭があり従来の食経験と相違はなかった。
試験区1の食味は、タラコの風味と旨みと僅かな甘味があり、食感は柔軟で滑らかな粒感であり、魚卵を包む皮膜は柔らかく全体に膨らみがあり魚臭は少なく色彩は弱酸性による淡紅色を示しまた本剤使用による酸臭はなかった。
試験区2の食味は、タラコの風味と旨味があり、食感は軟らかさと膨らみがあり皮膜は少し硬く、色彩は淡紅色で魚臭は少なく本剤の酸臭はなかった。
塩分について対照区2は100g中4.4gであり、試験区1と2は同じく100g中0.2gであった。
冷凍保存前後の硬さについては試料の中心点と両端側の合計3点の平均値である。
【0053】
【表4】
【0054】
上記試験により、対照区2の食味は塩味が濃く魚卵の旨味が少なく食感は低温と食塩による硬化がありこれは従来からの食味食感であった。試験区1と2は低温度の影響はなくタラコのタンパク質の風味と旨味を活かした新規な食味であり、調理や食材の新たな開発が考えられ、試験区2では試料の皮膜に硬さがあったが同様に新しい食味食感を提供しており、試験区1の保存が支障のないことも確認できた。
この試験の結果から冷蔵保存の条件と併せて変性を防ぎ食味と食感を向上し本剤のタンパク質改良の効果を確認した。
【実施例3】
【0055】
食肉として生ハムについて試験をした。
生ハムはラックスハムとして分類されベーコンと同様に生食の食肉として塩析食品に規定されており、食塩と塩化物を使用することを定められた塩漬食品である。
生ハムは食肉を加熱加工せず食用とすることから食品衛生上の加工の基準があり、塩漬けと10℃以下の低温で10日間以上の期間にて乾燥し製品とすることと定められており品質と製法の基準と併せて日本農林規格により規定されている。
生ハムは豚肉を塩析法で処理し食塩の浸透圧による離水をはかり冷蔵庫温度の低温度で水分を減らし乾燥して微生物の繁殖を防除し食肉の食味食感を得る食品である。
上記の製造基準に沿って生ハムの試作の試験をした。
【0056】
対照区と試験区ともに豚のもモモ肉1.1kgを試料に用意し、試作の前にまず異物の付着など肉の状態を点検し清浄のため布で拭いた。
対照区は肉の約15部の食塩を全体に塗付しポリ袋に収納し冷蔵庫に保存した。
試験区は本剤10%の希釈水に浸漬し5時間経過後に同様に袋に収納し冷蔵庫に保存した。試験の経過日数は試作開始日を起点とした。
冷蔵庫保存の3日間経過後に取り出し、袋から出して水洗し汚れを拭き取り対照区は再度食塩約15部を全体に塗付し袋に入れ、試験区も同様に水洗し拭き取り本剤6%の希釈水に5時間浸漬してから袋に入れ冷蔵庫に保存した。
次に6日間経過後に対照区は水分を拭き取り食塩15部を塗付し、また試験区は本剤6%希釈液に5時間浸漬し取り出し、両区共に網の袋に入れて冷蔵庫内に取りつけた個別のフックに吊り下げた。
これ以降は冷蔵乾燥の工程とし冷蔵庫の5℃での継続低温度保存とする。
冷蔵保存開始から2日ないし3日の間隔で試料を取り出し、70%のアルコール水溶液10g以上を塗布し冷蔵庫に戻す殺菌作業を保存期間中繰り返し継続し、同時に冷蔵庫の温度も検温して5℃を確認した。
【0057】
16日経過後さくら材チップを使用し燻煙加工をした。簡易型燻煙器でチップを加熱し試料を約2時間燻煙し冷蔵庫に戻し再び乾燥とアルコール殺菌を継続した。
23日経過後に冷蔵保存を終了し試料の出来上がりとした。
以下に試料の成分について試験をした。
生ハムの農林規格は水分活性0.96以下、サルモネラ菌は陰性、黄色ブドウ球菌は1000/g 以下、大腸菌,は陰性、pH6以下と規定されている。
【0058】
両区の試料を試験測定した。細菌数は夫々対応した培地で培養試験をした。
水分活性を測定(ASONE社製 MD―AW1)した結果対照区は0.87、試験区は0.91で規格値以下であり、細菌数の試験ではサルモネラ菌は陰性、黄色ブドウ球菌数は300以下、大腸菌は陰性であり細菌数は規格値以下であった。
試料の一部を水に浸漬してpHを測定した、
対照区pH5.5、試験区pH5.9であった。
【0059】
【表5】
【0060】
塩分について対照区は100g中2.6gであり試験区は同0.2gであった。
加工終了後の試料は再度フイルムで包装しポリ袋に入れ冷凍で保存し、28日経過後となる5日後に冷蔵庫に移し1日間解凍し試験担当者3名による官能試験をした。
【0061】
両試料とも薄切りにして試食した。対照区の食味は食経験のある塩味のある生ハムの旨味であり、食感の硬さや匂いや色彩も従来の通りであった。
試験区の食味は塩味に隠れていた味が現れ濃厚な旨味があり、食感は軟らかさがあり赤身の色彩が鮮紅色であり燻煙の匂いはあり対照区の従来の生ハムとは異なる新規な味覚を呈していた。
試験および試食の結果から、食塩を使用せず本剤を使用して規格基準に適合した生ハムの製造が可能であることを確認した。
加工後は冷凍保存が規定であり加工仕上がり時を前とし保存後との硬さを比較した。
【0062】
【表6】
【0063】
硬さについて対照区は塩漬加工と冷凍保存による硬化があり、試験区は少なかった。
しかし農林規格では、ラックスハムに分類される生ハムの製造は塩析によることと定められており上記の試験区は食塩を使用せず製造しており規格外となる。
上記試験の結果本剤のタンパク質改良の効果を確認できた。
【実施例4】
【0064】
魚介類の例として鯖のフィレについて試験をした。
通常鮮魚は解体加工した状態では販売や消費するほかは、冷蔵や冷凍で貯蔵流通はしない。それは解体加工した魚体は極めて短期間にドリップの流出があり、また細菌の増殖などで変敗しやすく、その結果魚肉は軟弱化して食用不可となるからである。
これを防ぐため従来から解体し食塩による加工をして冷蔵冷凍で流通している。
これは鮮魚を調理しやすく切り身あるいはフィレとし鯖や鮭など多くの魚種がある。
この加工法は切り身を食塩で塩漬加工をして冷蔵庫で一定時間保存し離水を図り包装して、冷蔵または冷凍で貯蔵流通し、調理は塩焼きのほかは塩抜きをして各種料理の食材とする塩漬食品である。
【0065】
鯖のフィレを塩焼き以外の料理に利用する際には前処理として塩抜きをする。これは希薄な食塩水に浸漬をする。たとえば0.5%の食塩水に1時間前後浸漬して塩抜きをし、それから料理の食材として調味し調理する。
鯖フィレの食塩による加工あるいは冷蔵または冷凍保存によるタンパク質の変性を防止し品質を改良する効果について本剤の試験をした。
【0066】
試料として鮮魚の鯖を三枚に切り分けて半身2枚とし、これを8枚用意し対照区1と2試験区1と2に各2枚を用意した。
対照区の半身を15%の食塩水に40分間浸漬してから水切り用網製トレーに配置し冷蔵庫に約2時間保存し、食塩の浸透圧による離水と冷蔵庫内の低温乾燥にて水分を減らし、取り出して水分を拭き取りラップフィルムで包装し保存した。
【0067】
対照区1は冷蔵保存とし、対照区2は冷凍保存とした。
試験区1と2は本剤6%の希釈水に40分間浸漬してから、同様に冷蔵庫にて約2時間の離水乾燥工程後に同様に包装し保存した。
試験区1は冷蔵保存とし試験区2は冷凍保存とした。
冷蔵庫での離水処理の前後の重量を計量した結果、対照区は94%、試験区は102%であり対照区は食塩による離水の効果があり試験区の水分は増えた。
各試料を11日経過後に調理し試食した。
【0068】
保存開始より11日間経過後各試料を点検して調理して試食をした。
保存期間での変化を検査するため各試料の生菌数を試験した。
対照区1は生菌数105であり変敗として試食はせずに廃棄した。
対照区2および試験1と2はいずれも生菌数300以下で保存中の変敗はなかった。
対照区2は少しドリップがあり、試験区1及び2にはドリップはなかった。
鯖の料理として塩焼きと味噌煮を調理した。対照区2は塩抜き用の0.5%の食塩水に約1時間浸漬し、水分を拭き取り味噌煮とした。
【0069】
試験区1の2枚はそのまま焙焼し、試験区2の2枚は味噌煮とした。
試験担当者3名の試食による官能試験をした。
評価は各員評価点数の合計とした。
試食は食経験及び対照区と試験区との比較での評価とした。
1点:試験区と比較して対照区は食味食感が低下している
2点:試験区と比較して対照区は食味食感が少し低下している
3点:試験区と対照区を比較して食味食感は変わらない
4点:試験区は対照区より食味食感が少し良い
5点:試験区は対照区より食味食感が良い
【0070】
【表7】
【0071】
試験区1の焙焼は風味と液汁の多い旨味であり鮮魚に近い食味であり、食感は厚みのある肉質と滑らかで柔軟であり魚臭は少なかった。試験区1は参考値とする。
対照区2の味噌煮の食味では味は薄いが風味と旨味があり食感には硬さがあった。
試験区2は調味料の浸透がよく濃厚な風味と旨味のある食味であり食感は肉厚感と軟らかさがあった。
【0072】
対照区2は加工時の離水で旨味の流出があり、食塩あるいは低温度の影響による筋線維の筋節と筋膜の分離があって食感は少し硬化があり、味噌煮の調味の浸透が薄く塩抜きの際の吸水が影響したとみられた。
調理前に塩分を計測し対照区2は2.7であり試験区1と2はともに0.3であった。
保存前後の硬さは夫々腹側の3点を計測し平均値とした。
【0073】
【表8】
【0074】
試験区は低温保存による変性が少なく風味と旨味が維持され、筋繊維の分離がなく鮮魚に近い肉質であり、また塩抜きの作業は不用であり食材として調理が簡便であり料理の種類は広く、保存について冷蔵冷凍のいずれも支障はないことで本剤のタンパク質改良の効果が確認できた。
【実施例5】
【0075】
大豆タンパクについて試験をした。
大豆タンパクの製品には主に脱脂大豆を加工した顆粒状タンパクがあり、これに澱粉や穀粉、糖類などを混合し植物肉または人工肉の素材として利用される。
これは食肉食品が高カロリーで脂肪が多いためこれを避けて、高タンパクで低カロリー低脂肪の健康志向の食品としての評価があり、食品としての製品化には大豆タンパクを単独での利用のほか、小麦粉や澱粉あるいは豆腐、魚のすり身、また食肉類を併用混合しエキスやフレーバーなど調味料を加え、牛肉や豚肉の料理に類似した食味や食感を付け商品化する。
【0076】
そして大豆タンパクを材料とした加工食品では、種類や性状により保存性のため低温で貯蔵流通するものがあり、その場合に低温度下でタンパク質の変性があると商品価値が損なわれることから、変性に対応する方法が必須となるのでこれを防止し改良するための試験をした。
【0077】
大豆タンパクは食用の素材としては乾燥した顆粒やフレークなどの固形のほかブロックタイプの生の冷凍品など形態は多様である。そして植物肉や人工肉として調理済み食品に加工し商品化されるが常温品のほかは概ね冷蔵冷凍での貯蔵流通であり、その過程での変性を防ぎ品質を維持することに留意しなければならない。
【0078】
大豆タンパクの顆粒タイプを試料とし、植物肉の加工食品の素材とされる配合例に準
じ試料を試作した。
大豆タンパクまたはこれを利用する食品に本剤を使用する際、製品の性状が乾燥タイプでは戻し水に加え、生タイプでは二次加工時に使用する。
【0079】
大豆顆粒ンパク120gを100部とし水350部で浸漬し4倍程度に膨張してから水切りをし、これに馬鈴薯澱粉6部とパン粉2部食塩1部の配合に50℃の温水35部を加え混合し練り合せてゲル状とし楕円型に成形し4個を作り対照区の試料とした。
試験区は上記の食塩を除き同量の配合とし、浸漬水に本剤6部を加え対照区と同様の工程を経て4個を作り試料とした。
試験区の浸漬水はpH5.8であった。
成型した試料を蒸器で夫々約20分間蒸した。蒸した試料は対照区と試験区とも外形や色彩は同じであった。蒸した試料を個別にポリ袋に入れて冷凍保存をした。
冷凍保存13日経過後取り出し、電子レンジ600ワットで2分間加熱し常温にしてから試験担当者2名により外観性状の観察と試食による官能試験をした。
【0080】
対照区の外観は試験区と比較して、凹凸があり膨らみが少なく外形は小さく、色彩は茶褐色で光沢がなかった。食味は大豆臭の風味のある旨味であるが、食感は併用の材料との結合が不十分で硬くボソボソ感があった。
試験区の外観は凹凸が少なく膨らみがあり色彩は透明感のある茶褐色を呈しており光沢があり、食味は大豆臭の少ない旨味があり、食感は材料の結合がよく弾力がありまた成形性の良いことが評価できる。保存の前後の重量を比較すると対照区は2.2%、試験区は0.6%の減少で対照区は蒸散による水分の減少があったとみられる。
試料の硬さは各個体の中心と外側の3点を計測し平均値として相対比とした。
【0081】
【表9】
【0082】
上記試験の結果、本剤の使用により大豆タンパクあるいはこれを材料とする食品の冷凍での硬化を防ぎ、食味は柔軟で滑らかさがあり、外観と成形性の向上がありタンパク質改良について本剤の効果を確認した。
【0083】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、食品タンパク質改良剤の分野に適用可能である。

【要約】
【課題】 食品の変性を抑えることができる食品タンパク質改良剤を提供する。
【解決手段】 醸造酢に酸化カルシウムを重量比1%から5%を溶存しpH3.5から5.5で比重1.04から1.14の食品タンパク質改良剤である。前記酸化カルシウムの原料は貝殻、卵殻、サンゴ殻、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウムの1種あるいは2種以上からなる。食品に使用して塩漬食品の加工または凍結冷凍冷蔵の貯蔵流通を食塩不使用とすることを特徴とする。
【選択図】なし