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特許7282443ブラシレスモータジェネレータの組立方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】ブラシレスモータジェネレータの組立方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/04 20060101AFI20230522BHJP
   H02K 3/47 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
H02K15/04 C
H02K3/47
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019538562
(86)(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 US2017054080
(87)【国際公開番号】W WO2018064370
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-28
(31)【優先権主張番号】62/401,792
(32)【優先日】2016-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514328229
【氏名又は名称】クリストファー ダブリュー ギャブリース
(73)【特許権者】
【識別番号】519113022
【氏名又は名称】ティモシー エス ロジャース
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ダブリュー ギャブリース
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー エス ロジャース
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0041409(US,A1)
【文献】米国特許第05998905(US,A)
【文献】米国特許第07525230(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0231131(US,A1)
【文献】特開昭56-141738(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0252444(US,A1)
【文献】特開2016-127628(JP,A)
【文献】特表2007-529988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
H02K 3/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁極(42,43)を有する回転子(31)を組み立てることを含み前記磁極が駆動する磁束(60,61)は前記回転子を円周方向に通り記回転子に形成される電機子エアギャップ(44)を前後に横切るものであブラシレスモータジェネレータ(30)の組立方法であって、
前記電機子エアギャップ内に位置するときに長手方向(47)に沿って電気的に並列接続され且つ互いに電気絶縁されている束ねられた複数の個々に絶縁された導体撚線からなるワイヤ(74)を用いて、接着層を有する固定子(32,46)上に電機子巻線(47、48、49)を巻線パターンで巻き付けることよって空心電機子(45)を形成し、記ワイヤの導体撚線を外側横巻線によって直径方向に保持することと、
前記接着層を前記固定子に適用し、前記接着層は巻き付け前にB段階の熱硬化性ポリマーを含むことと、
前記巻線パターンに前記ワイヤを分配することによって、前記電機子エアギャップに面する表面上に多相を有する前記巻線パターンを直接形成し、前記接着層に対して前記ワイヤの複数の区画に圧力を連続的に加え、前記接着層が、後に磁気トルクの発生に必要とされる巻線パターンで前記ワイヤを前記固定子に保持するのに十分な粘着性を有するように、巻線プロセス中に前記接着層の温度レベルを維持することと、
前記ワイヤと前記固定子との間の重ね剪断強度を増加させることによって前記電機子巻線を永久的に固定するために、巻線後に前記B段階の熱硬化性ポリマーを硬化させ、モータジェネレータ動作中の電磁トルクに抵抗するために、前記ワイヤと前記固定子との間の十分な結合を提供することと、
前記モータジェネレータの前記回転子と前記固定子との間で磁気誘導トルクが発生するように記固定子と前記回転子を一体に組み立てることと
を更に含む方法
【請求項2】
前記電機子巻線は、ラジアル方向またはアキシャル方向に延びる有効長部分(47、247)を備え、複数の相の巻線が単一の層を占め、前記電機子エアギャップ内で前記固定子に接着される、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記ワイヤの前記束ねられた複数の個々に絶縁された導体撚線(322)は、外側横巻線(324)と一緒にラジアル方向に保持され、前記接着層は、前記外側横巻線を前記固定子に接着する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電機子巻線は、前記固定子の周囲を複数回横断することによって巻かれた単相の巻線を有して蛇行する巻線パターン(203)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記接着層は、構造用接着剤と感圧接着剤(50)のハイブリッド配合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記個々に絶縁された導体撚線は、前記導体撚線の絶縁体(323)の上に熱可塑性コーティング(321)の層を含み、前記ワイヤが前記巻線パターンで前記固定子に接着された後、前記導体撚線が互いに接合される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記電機子エアギャップはラジアル方向であり、前記電機子巻線は前記固定子のラジアル方向に面する表面に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記電機子巻線は、前記束ねられた複数の個々に絶縁された導体撚線と前記ワイヤの両方を前記接着層に対して圧縮する巻き付けの後に、エポキシ含浸ガラス繊維の外側の張力をかけたオーバーラップ(51)によってオーバーラップされる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記電機子エアギャップはアキシャル方向であり、前記電機子巻線は前記固定子のアキシャル方向に面する表面に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記固定子は、前記回転子の2つの対向する表面の間の前記電機子エアギャップ内に支持される非磁性の電機子巻型(46、201)を備え、それによって、前記磁束は、前記対向する表面の間で前記電機子巻線を通って前後に横断する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ロボット(71)を使用して、前記ワイヤが供給される際に、前記巻線パターン内を移動し、前記ワイヤを前記固定子に接着しながら、前記接着層に対して前記ワイヤに前記圧力を加える、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
繰り出しローラが、前記巻線パターンを形成し、前記接着層に対して前記ワイヤに前記圧力を加える、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
テンショナが、前記ワイヤがスプール(72)から分配された後、前記固定子に接着される前に、前記ワイヤに張力を加える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ワイヤ供給システム(91)が、前記ワイヤを前記巻線パターンで巻き付ける間に、前記ワイヤを前記固定子に向かって強制的に供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
圧力補償ヘッド(88)が、前記接着層に対して前記ワイヤに加えられる圧力の変動を減少させる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーと機械エネルギーとの間の変換を行うためのモータジェネレータに関し、特に高い電気―機械エネルギー変換効率およびパワー密度を生み出すモータジェネレータの新規の組立プロセスに関する。この独自のプロセスにより、これらの機械の製造は高度に自動化されつつ、さらに高率で行うことが可能になる。
【背景技術】
【0002】
電気モータジェネレータは、電力と回転機械力との間の変換を行う。現在、モータは発電量の50%以上を消費する。省エネルギーおよび環境汚染の減少のため、電気モータの効率を上げることが強く求められている。
【0003】
抵抗損失および磁気誘導損失を削減することによって電気モータジェネレータの効率を上げることも場合によっては可能である。磁気損失はヒステリシス損と渦電流損とを含み、モータジェネレータの異なる部分で磁界が変化することに起因する。
【0004】
磁気誘導損失の削減に対応可能な電気機械の種類の1つは空心構造である。空心モータジェネレータでは巻線を、従来の電気機械のように鉄固定子に切り込まれたスロットにではなく、磁気エアギャップ内に配置する。
【0005】
空心モータジェネレータの1つの課題は電機子をできるだけ低コストの大量生産で作製することである。低コストで作製できなければ上首尾ではない。製造を自動化することがよりいっそう望ましい。しかし、これまでのモータジェネレータでさえ、作製には相当な手作業が行われる。今日に至るまで、空心モータジェネレータは相当、場合によってはこれまでの電気機械よりも多く手作業を要してきた。
【0006】
できるだけ高いエネルギー変換効率の空心モータジェネレータを作製する新規のプロセスであり、非常に高率で作製可能であり、独自に自動化に適合できるプロセスを開発することが望ましい。そのような新規のプロセスにより、新規のエネルギー効率のよいモータジェネレータを普及させ、世界のエネルギー利用に相当な変化をもたらすことができる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、従来のモータジェネレータより高い効率およびパワー密度で動作できる空心モータジェネレータの高率自動化作製プロセスを提供する。特別な構造から、ヒステリシスと渦電流とを含む抵抗損失および磁気誘導損失を削減することにより高性能が実現されるため、円周方向に変動する磁束が強磁性固定子を通過しない。今日まで、そのような機械の製作は時間がかかり、大きな労働力を要するものであったため、そのような機械の採用は限られていた。本発明の新規のプロセスは、回転子部を介して円周方向に磁束を動かし、前記回転子部の間に形成される電機子エアギャップの端から端まで前後に磁束を動かす磁極を有する、2つの離隔した回転子部からなる回転子を組み立てることを含む。このプロセスは、略非磁性電機子巻型を粘着性接着層で覆うことと、電機子エアギャップ内に配置されるときに電気的に並列接続される一方で条長に沿って互いに電気絶縁される複数の個々に絶縁された導体撚線からなるワイヤを用いて、電機子巻線を略非磁性巻型上に巻線パターンで巻き付けることとにより空心電機子を形成することをさらに含む。ワイヤの撚線は、巻き付けプロセス中に保護されるように外側横巻線によって直径方向に保持されてもよい。上記巻き付けプロセスは、ワイヤの複数の区画への粘着性接着層に対する連続的な加圧を含み、巻き付けプロセスの間、粘着性接着層の粘着性により、磁性トルクを発生させるのに後で必要となる巻線パターンでワイヤを略非磁性電機子巻型に保持する。回転子と固定子との間で磁気誘導トルクが発生するように、巻き付け完了後、空心電機子は電機子エアギャップに挿入され、モータジェネレータの固定子に実装される。略非磁性巻型上の粘着性接着層へ(顕著な巻跡なしに)容易に接着されることを可能にする、独自の高いワイヤ可撓性の組み合わせにより、巻き付けプロセスが驚くほど効果的であることを見出した。電機子巻型は略非磁性であり、これは、ヒステリシスと渦電流とを含む磁気誘導損失という非効率といった不都合を構造的メリットや他のメリットが上回る場合は磁気材料を少量含み得ることを意味する。
【0008】
本発明の別の実施形態では、粘着性接着層はフィルム状接着剤を含むのが好ましい。フィルム状接着剤は、巻き付けプロセスの前に略非磁性巻型に塗布される。巻き付けプロセスの間、ワイヤを保持するのに十分な粘着性、およびモータジェネレータが動作する間、電磁トルクに抵抗するのに十分な強度を有していれば、多種多様なフィルム状接着剤が利用可能である。2種類のフィルム状接着剤として、硬化により強度を増すことができる構造用接着剤と、室温粘着性が非常に高い感圧接着剤とがある。ポッティングを利用した空心電機子の従来の製造とは異なり、成形が不要なため、よりいっそう高速な製造が可能になる。同様に、巻線をかたちづくるのに仮の金型一式は不要である。電機子エアギャップに後で直接挿入される略非磁性巻型上に巻線が直に形成される。モータジェネレータは積層鋼固定子が不要であり、巻線を鋼固定子に接合させる必要はない。
【0009】
さらに別の実施形態では、フィルム状接着剤はB段階熱硬化性ポリマーフィルムを含む。通常このような構造用接着剤は室温粘着力が低いため、巻き付けプロセスがより難しくなる。しかし、粘着力を高めるために少し温度を上げて巻き付けを行うことができる。巻き付け完了後、ポリマーフィルムをさらに硬化して強度を増してもよい。トルクを発生させる磁束内を横切る部分である活性領域の略非磁性巻型に巻線が接着されるのが好ましい。巻線には、円周方向に横切り、トルクを発生させない座巻もさらに含まれる。したがって座巻は巻型に接着させる必要がなく、遊離していても支持されていなくてもよい。
【0010】
またさらに別の実施形態では、当該プロセスは、熱可塑性ポリマーコーティングの層を有するワイヤの、複数の個々に絶縁された導体撚線をさらに含む。ワイヤが略非磁性電機子巻型に巻線パターンで接着された後、撚線が加熱されて互いに接合される。これには、空心電機子の構造の剛性を高め、活性領域部分を巻型から剥がれ落ちにくくし、座巻の設計剛性形状を保持して電機子を電機子エアギャップに挿入しやすくするといったいくつかのメリットがある。
【0011】
電磁トルクを発生させるために可撓性の巻線ワイヤを所望の巻線パターンに配置して粘着性接着層に押し付けるのは、自動化プロセスによって行われるのが好ましい。本発明の別の実施形態では、巻線パターンを形成し、ワイヤに略非磁性電機子巻型上の前記粘着性接着層に対して圧力をかけるパラレルキネマティックロボットによって、巻線は略非磁性電機子巻型に付着される。デルタロボット等のパラレルキネマティックロボットには、シリアルロボットよりもいっそう高速で動くという利点がある。デルタロボットは、主要な機械軸が直列ではなく並列にロボット面板に作用するパラレルリンクロボットである。これにより、素早く正確な動きが可能になる。パラレルキネマティックロボットは現在、ピックアンドプレース材料運搬に用いられている。しかし本発明によれば、デルタロボットを用いて、ワイヤの巻線パターンを素早く正確に配置し、ワイヤを略非磁性巻型に接着させる。
【0012】
別の実施形態では、圧力をかけながらワイヤを粘着性接着層上に回転させる繰出しローラを用いて巻線パターンが形成される。好ましくは、ローラを用いて、ワイヤを高速で繰出し、巻型へ粘着性フィルム状接着剤に対して圧力をかけることも可能である。巻線パターンを作るために巻線方向を変更および制御するように、ロボット面板の軸を中心に回転するのに繰出しローラを用いてもよい。
【0013】
粘着性接着層に構造用接着剤が利用される場合、トルクを発生させるのに十分な結合がワイヤと巻型の間に生じるように当該構造用接着剤を後硬化させてもよい。しかし、粘着性が高く、後硬化が不要であるという理由から、かわりに感圧接着剤を利用するのが好ましい場合もある。感圧接着剤だけでは、モータジェネレータの動作に十分な重ね剪断強度がない。このことは、ラジアルギャップモータジェネレータにおいて、円周応力被印加層で巻線を包むことによって克服可能である。本発明のさらに別の実施形態では、モータジェネレータはラジアル電機子エアギャップを備え、略非磁性電機子巻型はチューブを備える。当該プロセスは、巻線パターンの完成後に、ワイヤを粘着性接着層に対して半径方向に押しつぶす円周応力被印加層で巻線を包むことをさらに含む。単純な形態では、当該層は動作中の動きに対する巻線の抵抗を高める単なるテープの層であってもよい。アクリルまたはシリコーン接着性ポリエステルテープはそのような利用可能なテープの1つである。強度を増すために繊維強化層をかわりに用いることも可能である。被印加層には、軸方向条長毎に、チューブの第1直径方向限界座屈荷重より小さい半径方向圧縮を略非磁性電機子巻型に及ぼす張力をかけるのが好ましい。これにより、被印加層を施しても空心電機子が卵型になることを防ぐ。
【0014】
本発明の他の実施形態では、ブラシレスモータジェネレータの組立プロセスは、回転子部を介して円周方向に磁束を動かし、回転子部の間に形成される電機子エアギャップの端から端まで前後に磁束を動かす磁極を有する、2つの離隔した回転子部からなる回転子を組み立てることを含む。このプロセスは、略非磁性電機子巻型を粘着性接着層で覆うことと、電機子エアギャップ内に配置されるときに電気的に並列接続される一方で条長に沿って互いに電気絶縁される複数の個々に絶縁された導体撚線からなるワイヤを用いて、電機子巻線を略非磁性巻型上に巻線パターンで巻き付けることとにより空心電機子を形成することをさらに含む。このワイヤ構造は、高速巻き付け用可撓性巻線ワイヤのメリットをもたらすと同時に、空心電機子で相当な渦電流損失が生じるのを防ぐ。巻線パターンで動き、ワイヤを吐出し、ワイヤの複数の区画へ粘着性接着層に対して連続的に加圧するパラレルキネマティックロボットによって、巻線が略非磁性電機子巻型に付着されるのが好ましく、巻き付けプロセスの間、粘着性接着層の粘着性により、磁性トルクを発生させるのに後で必要となる巻線パターンでワイヤを略非磁性電機子巻型に保持する。回転子と固定子との間で磁気誘導トルクが発生するように、空心電機子が電機子エアギャップに挿入され、モータジェネレータの固定子に実装される。
【0015】
当該プロセスは、ラジアルギャップ空心モータジェネレータとアキシャルギャップ空心モータジェネレータ、両方の作製に利用可能である。ラジアルギャップモータジェネレータの製造では、電機子は別のロボット軸によって支持されるのが好ましい。本発明の当該実施形態では、モータジェネレータはラジアル電機子エアギャップを備え、略非磁性電機子巻型はチューブを備える。パラレルキネマティックロボットは、巻き付けヘッドを動かしてワイヤを吐出し、ワイヤに略非磁性電機子巻型上の粘着性接着層に対して圧力をかけるパラレルアームを含む。当該プロセスは、別のモータ駆動軸によって略非磁性電機子巻型を支持して巻き付けヘッドに隣接してチューブの軸を中心に回転させ、チューブの周縁に巻線の巻線パターンを形成できるようにすることをさらに含む。
【0016】
シリアル型ロボットと比較して、パラレルキネマティックロボットは、速度をある程度の運動精度に替えてもよい。圧縮し過ぎず、巻型を損傷せずに、巻線と略非磁性巻型との間の接合圧力が必ず正確になるように、本発明の別の実施形態では、ばね力圧力補償ヘッドをパラレルロボット面板に付加することで加圧力の変動を削減する。これは、圧力が設定されたばねまたは空気圧シリンダであり得る。モータジェネレータの性能を最大にするため、電機子エアギャップを最小化し、磁束密度を上げるように、電機子巻型は薄型であることが好ましい。損失の増加やエアギャップ磁束場の歪みがないように、電機子巻型材料は略非磁性であることが好ましい。好ましい材料としては、ポリカーボネート等のプラスチックや剛性、強度および耐熱性が高いというメリットがあるガラス繊維複合材料があげられる。
【0017】
モータジェネレータの作製のため、巻線ワイヤが比較的重い巻枠上に収められる場合がある。同様に、パラレルロボットによるワイヤの繰出し速度が活性領域および座巻を横切る際に大幅に変動する場合がある。その結果、巻枠の慣性によって張力の変動が非常に高まるとともに、オーバースプーリングになり得る。これを防ぎ、高速巻き付けを可能にするため、別の実施形態では、パラレルキネマティックロボットに繰出す巻枠からワイヤが吐出され、巻枠が回転せずにワイヤを吐出し、巻枠から吐出された後のワイヤにテンショナが張力を付加する。これを行う1つの方法として、巻線ワイヤ用センタープル巻枠を用いる。巻枠からの吐出後、固定バーまたはローラによって張力を印加することが可能である。
【0018】
電磁トルクを発生させるための巻線パターンは従来のコイルを用いることが可能であるが、より好ましいパターンとさらに別の実施形態として、パラレルキネマティックロボットが動いて巻線を固定子部に蛇行巻線パターンで付着させ、単相の巻線が固定子部の周縁を複数回横切って巻き付けられる。この巻線パターンにより、所定の相のコイルを相互接続する必要がなく、異なる相の座巻の重なりを極力抑えた連続相巻線の高速巻き付けが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明とその多くの利点および特徴とは、以下の図面と併せて好ましい実施形態についての以下の詳細な説明を読むことによって、よりよく理解されるであろう。
図1】本発明に係るラジアルギャップ空心モータジェネレータの断面図である。
図1A図1のモータジェネレータ回転子の端面の断面図である。
図2】本発明に係る図1のラジアルギャップ空心モータジェネレータで用いる電機子を作製するための電機子製造プロセスの透視図である。
図2A図2のラジアルギャップ空心電機子の好ましい巻線パターンの概略図である。
図3図2の作製プロセスで用いる空心電機子巻上機の立面図である。
図4】本発明に係るアキシャルギャップ空心モータジェネレータの断面図である。
図5】本発明に係る図4のアキシャルギャップ空心モータジェネレータで用いる電機子を作製するための電機子製造プロセスの透視図である。
図6】本発明に係る電機子製造プロセスにおいて用いる粘着性接着層の異なる種類同士の比較チャートである。
図7】本発明に係る空心モータジェネレータで用いるワイヤの断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照すると、同様の参照符号は同一または対応する部分を示しており、図1は回転子31と固定子32とからなる空心モータジェネレータ30を示す。回転子31は、ハブ35に取り付けられる、2つの同心の離隔した鉄回転子シリンダ33、34で構成される。ハブ35は、軸受37、38で回転のため軸支された中央軸36によって支持される。軸受37、38は、外側筐体チューブ41によって接続される筐体端板39、40に装着される。回転子チューブ33、34には、円周方向の、交互に極性が入れ替わる永久磁石アレイ42、43が取り付けられ、回転子チューブ33、34と回転子チューブ間に設けられた電機子エアギャップ44との間で磁束を前後に動かす。電機子エアギャップ44内には、固定された筐体端板39に取り付けられる空心電機子45が配置される。空心電機子45は、電機子エアギャップ44内に延在し、多相巻線有効長47を支持するために用いられる非磁性巻型チューブ46で構成される。巻線47、48、49は、電機子エアギャップ44内に配置されるときに電気的に並列接続される一方で条長に沿って互いに電気絶縁される複数の撚線からなるワイヤで巻き付けられる。 図7で示されるように、撚線はまとめられ、外側横巻線324によって絶縁損傷を防ぐのが好ましい。巻き付けプロセスにおいて感圧接着剤50を使用することにより、巻線有効長47は巻型46に接着される。感圧接着剤50は、巻き付け前に巻型46に接着されるB段階熱硬化性フィルム状接着剤を含むのが好ましく、巻き付け中に巻線有効長47の巻型46への接着力が増すように温められるのが好ましい。巻線47、48、49には、1層で複数の相を有して軸線方向に掛かり、電機子エアギャップ44内に配置され、磁気アレイ42、43から磁束を受け取る有効長47が含まれる。巻線47、48、49には、円周方向に掛かり、複数の相と重なり、電機子エアギャップ44の外に配置される座巻48、49も含まれる。ガラス繊維/エポキシの外側張力被印加オーバーラップ51を使って巻線有効長47を包んでもよく、オーバーラップ51が巻線有効長47を圧縮して電機子エアギャップの必要な厚さを減少させるのが好ましい。巻き付け後、フィルム状接着剤50の硬化、オーバーラップ51、またはその両方によって巻線有効長47を巻型に永久的に固定するのが好ましい。
【0021】
図1のラジアルギャップ空心モータジェネレータの回転子の端面の概略図が図1Aに示される。回転子31は、鋼鉄で作られ、60、61で示されるように回転子部を介して円周方向に磁束を動かし、62で示されるように電機子エアギャップ44の端から端まで半径方向に磁束を動かす磁石42、43を有する、2つの離隔した回転子部33、34から構成される。
【0022】
本発明に係る図1の空心モータジェネレータにおいて用いる電機子を作製する装置が図2に示される。当該プロセスでは、図3でより詳細に示されるデルタロボット71等のパラレルリンクロボットを使用し、主要な機械軸が直列ではなく並列にロボット面板に作用することを含む。これにより、素早く正確な動きが可能になるため、そのようなデルタロボットは現在のところ、指示を履行するためのピックアンドプレース動作に主に用いられる。図2に示されるようにデルタロボットは独自に用いられて、特別に構成されたワイヤを配置し、ワイヤを送り出し、ワイヤに電機子固定子45に対して独自に圧力をかけ、後で電磁トルクが発生するように、固定子は感圧接着剤に圧力をかけて一時的に巻線をある形状に維持する。複数の相の巻線が固定子に巻き付けられ、巻き付けプロセスの間、感圧接着剤が巻線の有効長部分を所定の位置で一時的に保持する。座巻は回転子とともに電磁トルクを発生させることはなく、磁気エアギャップの外に配置され、必ず重なっている。
【0023】
図2に示されるように、電機子製造プロセス70はデルタロボット71を用いて、特別な複数の個々に絶縁された撚線導体ワイヤ74を巻枠72から空心電機子45へ巻き付ける。巻枠としては、従来の回転アウタープルタイプもあり得るが、高速巻き付けプロセスにおける回転巻枠の慣性および張力制御の変動の影響を排除するには、センタープル等の非回転型であるほうがより好ましい。ワイヤ74を送り出し、有効長巻線47を電機子巻型46上の感圧接着剤50に対して押し付ける繰出しヘッド73をデルタロボットが有する。巻型46のそれぞれの端において、繰出しヘッド73は座巻48、49を形成する。巻線47、48、49は蛇行パターンで巻き付けられ、電機子45の周縁への複数回の巻き付けにより各相が構成されるのが好ましい。この巻線パターンのメリットは、巻線の長さおよび抵抗が最小限に抑えられるうえ、必要な電気接続の数も最小限に抑えられることである。別の好ましい実施形態においては、各相が連続的に巻き付けられ、その後、切断されて個々の相の巻線が作製される。1相完成すると、繰出し73は次の相の巻き付けを始める前に余分にワイヤの輪を送り出すことができ、巻き付けプロセスが完了してからこの輪を切断して、リードを有する個々の相を得ることができる。巻き付けプロセスには、電機子巻型46を保持し、正確に、繰出しの動きに合わせて回転して巻線パターンを作るチャック76付きの主軸台75も含まれる。巻枠72と繰出し73との間におけるワイヤ74のねじれを最小限に抑えるため、主軸台75の巻き方向を連続する相の巻き付けの間で交互にするのが望ましい。巻き付け完了後、接着剤を硬化させるか、巻線を包むか、またはそれ以外の方法で巻線を永久的に固定するのが好ましい。十分な接着力と硬化を不要とする温度性能とを有する感圧接着剤を用いることも可能である。しかし、一般に架橋熱硬化性接着剤は強度と温度性能が最も高い。
【0024】
本発明に係る図2のラジアルギャップ空心電機子の好ましい巻線パターンの概略図が図2Aに示される。空心電機子はガラス繊維強化ポリマーチューブ46からなる。巻線は、トルクを発生させるために磁束内に配置される有効長部分47と、巻型の端の座巻49および座巻49とを含む。巻線ワイヤ74は、感圧接着剤フィルムの粘着力を利用して蛇行路で巻型46の周縁に接着される。典型的な構造では、巻線3相を巻き付けるのが最も一般的である。
【0025】
本発明に係る図2の作製プロセスで用いる空心電機子を製造するための装置71の概略図が図3に示される。製造機械71は、支持板80に取り付けられ、並列アーム84、85を用いることによりデカルト座標で面板86を一緒に動かす3軸モータ81、82、83を有するデルタロボットを備える。シリアルリンク型ロボットとは対照的なパラレルリンクを用いることにより、最大で毎秒10メートルの電機子巻き付け速度が可能である。 巻線送出方向を制御することができる補助繰出し方向軸装置87が面板86に取り付けられてもよい。繰出し方向軸装置87には、感圧接着剤に巻線を接着させる際に繰出し73の圧力を巻線により均一にかけることを可能にする圧力制御ヘッド88も取り付けることができる。感圧ヘッド88は、有効長部分47を電機子巻型46に接着させる際にワイヤと電機子巻型との間の圧力を調整するばね、空気圧シリンダまたはその他の機構であり得る。
【0026】
巻線ワイヤ74は滑車輪92、93を介してデルタロボット71の中心に引き込まれ、面板86に対して垂直に進む。面板86の穴、繰出し方向軸装置87および圧力制御ヘッド88により、ワイヤが繰出し73に直接送られる。滑車輪89、90はワイヤ74を電機子45へ送り出し、巻線方向を制御し、ワイヤに圧力をかけて有効長部分47を電機子巻型46上の感圧接着剤50に接着させる。巻枠からワイヤ74を引き出し、ワイヤを繰出し73の外へ押し出すために、ピンチローラ91等のワイヤ送出システムが含まれ得る。ワイヤ送出システム91は、巻線の座巻48、49で必要となるルーピングを可能にする。
【0027】
図4に示されるように、アキシャルギャップ空心モータジェネレータ230の電機子245は平坦な円盤として構成される。アキシャルギャップモータジェネレータ230は回転子231と固定子232とからなる。回転子231は中央ハブ235によって接続される2つの離隔した鋼円盤233、234から形成される。回転子231は、筐体端板239、240に支持される軸受237、238によって回転のため軸支される。外側筐体チューブ241は筐体端板239、240を接続し、加えて、実装接続板246を介して電機子エアギャップ244内で空心電機子245を支持する。空心電機子245は、有効長部分247、内側座巻部分248、外側座巻部分249を備える。2つの回転子円盤上には、回転子部233、234を介して円周方向に磁束を動かし、電機子エアギャップ244の端から端まで磁束を動かす永久磁石242、243が配置される。鋼鉄から構成されない回転子円盤233、234を利用することも可能であり、磁石242、243はハルバッハ配列を利用して回転子上で磁束を円周方向に導く。
【0028】
本発明に係る図4のアキシャルギャップ空心モータジェネレータで用いる電機子を作製するための電機子製造プロセスの概略図が図5に示される。製造プロセス200は、パラレルキネマティックロボット71を用いて巻線ワイヤ74を空心電機子245上に巻き付ける。電機子巻型201は、B段階エポキシフィルム状接着剤202を表層とする平板状のガラス繊維強化エポキシからなる。巻き付け中にフィルム状接着剤201の粘着力を増すために、周囲温度を上げてもよい。パラレルキネマティックロボット71は、所望のパターンで動き、巻線ワイヤ74に粘着性接着層202と略非磁性巻型201に対して圧力をかけることにより、巻線パターン203を形成する繰出しローラ90付きの繰出しヘッド73を有する。空心電機子245の巻き付け完了後、過硬化により巻線ワイヤ74と巻型201との間の重ね剪断強度を増すのが好ましい。
【0029】
ポリマー接着剤は様々な種類が入手可能である。本発明によれば、粘着性接着層の使用には、モータジェネレータの動作状態における重ね剪断強度、および巻線製造プロセスにおける周囲温度または巻き付け温度での粘着力という2つの重要な必要条件がある。本発明に係る電機子製造プロセスにおいて用いる粘着性接着層の異なる種類同士の比較チャートが図6に示される。B段階エポキシフィルム302等の構造用接着剤は、アクリルテープ303等の感圧接着剤に比べて高い重ね剪断強度を示す。しかし、動作強度と巻き付けプロセスの容易さとの間には相反関係がある。B段階エポキシフィルム305は、周囲温度での粘着力304がアクリルテープ306よりもかなり低いため、巻線を略非磁性巻型に接着させるのがよりいっそう難しいことを示す。粘着力が低いことは、巻き付けプロセスにおける温度を上昇させることにより克服できる。同様に、重ね剪断強度が低いことは、張力被印加オーバーラップ層を足すことにより克服できる。感圧接着剤の1つの利点は硬化を必要としないことである。ハイブリッドであり、好適に使用することもできる新規のポリマー接着剤配合物が現在は利用可能である。
【0030】
本発明に係る空心モータジェネレータで用いるワイヤの断面の概略図が図7に示される。ワイヤ320は、前記電機子エアギャップ内に配置されるときに電気的に並列接続される一方で条長323に沿って互いに電気絶縁される複数の個々に絶縁された導体撚線322からなる。この構造では、絶縁体323を用いることにより、数百もの小さな撚線322が電機子エアギャップ内で変化する磁界にさらされるときに、互いに電気的に絶縁される。磁束の外の接続によりワイヤ320の撚線が電気的に並列である一方、電機子エアギャップにおいて撚線が大きな渦電流損を発生させるのを防ぐというメリットがある。実際の撚線322の撚線絶縁体323の損傷を防ぐため、外側横巻線324を用いてワイヤ束320を保持するのが好ましい。横巻線は、マイラーテープ、ナイロン糸および他の構造を含み得る。外側横巻線324の別のメリットは、パラレルキネマティックロボットによる高速巻き付けプロセスが容易になることである。撚線絶縁体323の表面に熱可塑性コーティング321の層を施すのがさらに望ましい場合もある。コーティング321を用いることにより、撚線322を加熱で接合させることができ、巻型に巻線パターンが完成した後の巻型付き可撓性巻線の剛性を高めることができる。
【0031】
説明された好ましい実施形態の数多くの改良例、変形例があり得ること、および当業者が本発明の開示からこれらを想起するであろうことは明らかである。したがって、これらの改良例、変形例およびその均等物が、特許請求の範囲で規定する本発明の趣旨および範囲に含まれるものとする。
図1
図1A
図2
図2A
図3
図4
図5
図6
図7