(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】混合スペーサマルチスペクトルフィルタ
(51)【国際特許分類】
G02B 5/28 20060101AFI20230522BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20230522BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20230522BHJP
H01L 31/0232 20140101ALI20230522BHJP
【FI】
G02B5/28
G02B5/22
G02B5/26
H01L31/02 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018087601
(22)【出願日】2018-04-27
【審査請求日】2021-02-01
(32)【優先日】2017-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502151820
【氏名又は名称】ヴァイアヴィ・ソリューションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Viavi Solutions Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ スウィツァー サード
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ジェイ オケンファス
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-535735(JP,A)
【文献】特開2004-138798(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0080830(US,A1)
【文献】特開2016-012096(JP,A)
【文献】特表2007-514961(JP,A)
【文献】特開2000-031510(JP,A)
【文献】特表2013-512445(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0003766(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0014838(US,A1)
【文献】特開2008-070437(JP,A)
【文献】国際公開第2017/102312(WO,A1)
【文献】特表2019-508667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G02B 5/28
H01L 31/0232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルタであって、
第1のミラーと、
第2のミラーと、
前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間に配置されるスペーサ層構造と、
を備え、
前記スペーサ層構造は、
第1の層の組であって、当該第1の層の組の各層は、第1の屈折率および層厚閾値よりも大きい厚さと対応付けられる第1の材料である、第1の層の組と、
第2の層の組であって、当該第2の層の組の各層は、第2の屈折率と対応付けられる第2の材料であり、当該第2の層の組の各層は、前記第1の材料の対応する層を置換するために選択される、第2の層の組と、を備え、
前記対応する層は、前記層厚閾値未満の厚さと対応付けられており、
前記第1の層の組は、前記第1のミラーと前記第2の層の組との間に配置されている、
光学フィルタ。
【請求項2】
前記第1の材料は、水素化シリコンである、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
前記第1の屈折率は、800ナノメートル(nm)で、屈折率2.0、屈折率2.5、屈折率3.0、屈折率3.5、屈折率3.6、屈折率3.8のうちの少なくとも1つよりも大きい、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
前記第1の材料は、酸化可能材料である、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項5】
前記第2の材料は、酸化物材料を含み、
前記酸化物材料は、酸化ニオブチタン(NbTiO
x)、二酸化ケイ素(SiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、二酸化チタン(TiO
2)、五酸化ニオブ(Nb
2O
5)、五酸化タンタル(Ta
2O
5)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、二酸化ハフニウム(HfO
2)、それらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項6】
前記第2の材料は、窒化物材料、フッ化物材料、硫化物材料、セレン化物材料のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項7】
前記第2の屈折率は、前記第1の屈折率未満である、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項8】
前記第2の層の組の層の厚さは、前記第2の屈折率に基づいて選択される、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項9】
前記第2の層の組は、各々が対応する中心波長の通過光と対応付けられる複数のチャネルを形成し、
各中心波長は、隣接する中心波長から閾値チャネル間隔未満で分離されている、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項10】
前記閾値チャネル間隔は、30ナノメートル(nm)、15nm、10nm、7nm、6nm、5nmのうちの1つである、請求項9に記載の光学フィルタ。
【請求項11】
前記層厚閾値は、10nm、5nm、2.5nm、2nm、1.5nm、1nm、0.75nmのうちの1つである、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項12】
前記第1のミラーおよび前記第2のミラーは各々、金属ミラーおよび誘電体ミラーのうちの1つを含む、請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項13】
マルチスペクトルフィルタであって、
センサ素子の組と対応付けられる基板上に堆積され、光源からの光を部分的に反射する第1のミラーと、
前記光源からの光を部分的に反射する第2のミラーと、
前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間に配置され、前記センサ素子の組に対応する複数のチャネルと対応付けられる複数の層を含むスペーサと、
を備え、
前記複数の層のうちの第1の1つ以上の層は、第1の屈折率を有する水素化シリコンであり、
前記第1の1つ以上の層の各々の厚さは、層厚閾値よりも大きく、
前記複数の層のうちの第2の1つ以上の層
の少なくとも1つの層の厚さは層厚閾値よりも小さい、
マルチスペクトルフィルタ。
【請求項14】
前記第1の1つ以上の層は、水素化シリコンであり、前記第2の1つ以上の層は、酸化ニオブチタンおよび二酸化ケイ素のうちの少なくとも1つである、請求項13に記載のマルチスペクトルフィルタ。
【請求項15】
前記複数の層は、前記光源からの光の一部を通過させ、
前記光の一部は、800ナノメートル(nm)~1100nmのスペクトル域と対応付けられる、
請求項13に記載のマルチスペクトルフィルタ。
【請求項16】
前記複数のチャネルの数は、チャネル数閾値以上であり、
前記チャネル数閾値は、8チャネル、16チャネル、32チャネル、64チャネル、128チャネルのうちの1つである、
請求項13に記載のマルチスペクトルフィルタ。
【請求項17】
光学フィルタであって、
基板と、
前記基板上に配置され
、光源からの光を部分的に透過する光学フィルタ層の組と、
を備え、
前記光学フィルタ層の組は、第1の屈折率と対応付けられる第1の光学フィルタ層の部分組を含み、
前記第1の光学フィルタ層の部分組の各層の厚さは層厚閾値よりも大きく、
前記光学フィルタ層の組
のうちの第2の光学フィルタ層の部分組の少なくとも1つの層の厚さは前記層厚閾値よりも小さく、
前記第1の光学フィルタ層の部分組は、
前記光源からの光を部分的に反射するミラーと前記第2の光学フィルタ層の部分組との間に配置されており、
前記光学フィルタ層の組は、複数のチャネルを形成し、
各チャネルは、対応する中心波長での光の通過と対応付けられ、
各中心波長は、隣接する中心波長から閾値チャネル間隔未満で分離される、
光学フィルタ。
【請求項18】
前記光学フィルタは、930ナノメートル(nm)で80%を超える透過率を有する、請求項17に記載の光学フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
マルチスペクトルセンサ装置を利用して、情報を得ることができる。例えば、マルチスペクトルセンサ装置は、電磁周波数の組に関する情報を得ることができる。マルチスペクトルセンサ装置は、情報を得るセンサ素子(例:光学センサ、分光センサ、および/または画像センサ)の組を含んでもよい。例えば、センサ素子アレイを利用して、複数周波数に関する情報を得ることができる。センサ素子アレイの特定のセンサ素子は、当該特定のセンサ素子へと向かう周波数範囲を制限するフィルタと対応付けることができる。
【発明の概要】
【0002】
いくつかの可能な実施態様によると、光学フィルタは、第1のミラーと、第2のミラーと、前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間に配置されるスペーサ層構造とを備えてもよい。前記スペーサ層構造は、第1の層の組を含んでもよい。当該第1の層の組の各層は、第1の屈折率および層厚閾値よりも大きい厚さと対応付けられる第1の材料であってもよい。前記スペーサ層構造は、第2の層の組を含んでもよい。当該第2の層の組の各層は、第2の屈折率と対応付けられる第2の材料であってもよい。当該第2の層の組の各層は、前記第1の材料の対応する層を置換するために選択されてもよい。前記対応する層は、前記層厚閾値未満の厚さと対応付けられてもよい。
【0003】
いくつかの可能な実施態様によると、マルチスペクトルフィルタは、センサ素子の組と対応付けられる基板上に堆積され、光源からの光を部分的に反射する第1のミラーを備えてもよい。マルチスペクトルフィルタは、前記光源からの光を部分的に反射する第2のミラーを備えてもよい。マルチスペクトルフィルタは、前記第1のミラーと前記第2のミラーとの間に配置され、前記センサ素子の組に対応する複数のチャネルと対応付けられる複数の層を含むスペーサを備えてもよい。前記複数の層のうちの第1の1つ以上の層は、第1の屈折率を有する水素化シリコンであってもよい。前記第1の1つ以上の層の各々は、層厚閾値よりも大きい厚さと対応付けられてもよい。前記複数の層のうちの第2の1つ以上の層は、第2の屈折率を有する材料と対応付けられてもよい。
【0004】
いくつかの可能な実施態様によると、光学フィルタは、基板を備えてもよい。光学フィルタは、前記基板上に配置される光学フィルタ層の組を備えてもよい。前記光学フィルタ層の組は、第1の屈折率と対応付けられる第1の光学フィルタ層の部分組を含んでもよい。前記光学フィルタ層の組は、前記第1の屈折率未満の第2の屈折率と対応付けられる第2の光学フィルタ層の部分組を含んでもよい。前記光学フィルタ層の組は、複数のチャネルを形成してもよい。各チャネルは、対応する中心波長での光の通過と対応付けられてもよい。各中心波長は、隣接する中心波長から閾値チャネル分離未満で分離されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図2A】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
【
図2B】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
【
図2C】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
【
図2D】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
【
図3A】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
【
図3B】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
【
図3C】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
【
図3D】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
【
図4A】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
【
図4B】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
【
図4C】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
【
図4D】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
【
図4E】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
【
図5】
図5Aは、本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
図5Bは、本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
【
図6A】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
【
図6B】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
【
図6C】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
【
図6D】本明細書に記載のマルチスペクトルフィルタに関する特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
実施形態に対する詳細の説明を、添付の図面を参照して以下に説明する。種々の図面における同じ参照符号は、同じまたは類似の要素を特定するものである。
【0007】
センサ素子(例:光学センサ)を光学センサ装置に組み込んで、電磁周波数の組に関する情報(例:スペクトルデータ)を取得してもよい。例えば、光学センサ装置は、光のセンサ測定を行い得る画像センサやマルチスペクトルセンサ等を含んでもよい。光学センサ装置は、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)技術や電荷結合素子(CCD)技術等の1つ以上のセンサ技術を利用してもよい。光学センサ装置は、それぞれ情報を取得するように構成された複数センサ素子(例:センサ素子アレイ)を含んでもよい。
【0008】
センサ素子は、当該センサ素子へ光をフィルタリングするフィルタと対応付けられてもよい。例えば、センサ素子は、センサ素子へ向かう光の一部をフィルタリングするために線形可変フィルタ(LVF)、円形可変フィルタ(CVF)、ファブリーペローフィルタ等と配列されてもよい。ファブリーペローフィルタ等のバイナリフィルタ構造では、水素化シリコン(Si:H)を、バイナリフィルタ構造のミラー間に位置するスペーサの層として選択してもよい。水素化シリコンは、近赤外スペクトル域における相対的に高い屈折率(例:約3.5超の屈折率)と対応付けられ、その結果、相対的に低い角シフトとなる。しかし、相対的に高い屈折率は、スペーサ層のうちのいくつかの層が相対的に小さい物理的厚さを有することにつながる。例えば、約800ナノメートル(nm)~1100nmの波長域と対応付けられる64チャネルセンサ素子アレイでは、スペーサの少なくとも1つの層は、約1.2nm未満の厚さになり得る。同様に、類似の128チャネルセンサ素子アレイでは、スペーサの少なくとも1つの層は、約0.6nm未満の厚さになり得る。閾値層厚未満(例:約5nm未満、約2nm未満、約1.5nm未満、約1nm未満、約0.75未満等)の層厚は、フィルタ製造を困難にし得る。
【0009】
フィルタは、フィルタを劣化させる環境条件にさらされ得る。例えば、パターニング手順や洗浄手順中に、パターニング手順や洗浄手順にさらされるフィルタのスペーサの層は、化学組成変化を起こすかもしれない。また、室温条件への曝露等、動作中の周囲条件の結果、フィルタが劣化するかもしれない。この場合、スペーサの層に水素化シリコンを用いたフィルタでは、水素化シリコン層の一部が、酸化物層(例:酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO2)等)へと変換し、混合水素化シリコン・酸化物層を形成し得る。言い換えると、水素化シリコンの層は、水素化シリコンの第1の部分および酸化物の第2の部分へと変化し得る。環境条件の結果酸化物層へと変換する水素化シリコン層の部分は、約0.5nm超、約1nm超、約1.5nm超、約2nm超、約5nm超等の厚さと対応付けられ得る。水素化シリコン材料(または他の酸化可能材料)から酸化物材料への層の化学組成の変化に基づいて、また、層の層厚が不変または閾値量未満で変化することに基づいて、層の屈折率は、約930nmでの約3.7から約930nmでの約1.47へと変化し得る。変化した屈折率に基づいて、層の所望の光学厚さは、屈折率の比率で変化し得る。例えば、所望の光学厚さは、層が水素化シリコンを用いて当初形成された厚さの1.47/3.7=40%へと低減し得る。その結果、層の光学厚さおよび層の所望の光学厚さが不一致となり、フィルタの中心波長のシフトを引き起こし得る。
【0010】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、水素化シリコンの堆積層や酸化物の堆積層等の、混合スペーサの制御組成を有するマルチスペクトルフィルタアレイを提供する。こうして、耐久性のある(すなわち、環境的に安定した)マルチスペクトルフィルタアレイを、センサ素子アレイ用に提供することができる。また、マルチスペクトルフィルタアレイは、非制御組成を有するフィルタ(例:混合水素化シリコン・酸化物層へと酸化する層厚閾値未満の水素化シリコン層を有するフィルタ)に対して低減した中心波長シフトと対応付けられてもよい。さらに、マルチスペクトルフィルタアレイのスペーサの層の最小厚さの増加によって、製造困難性を低減し、添加プロセス(例:リフトオフプロセス)を用いた製造を可能にしてもよい。製造困難性の低減に基づいて、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、マルチスペクトルフィルタアレイのチャネル量の増加を可能にしてもよい。水素化シリコンの閾値量(例:水素化シリコンの閾値厚さ、水素化シリコンの層の閾値量等)を含むことに基づいて、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、相対的に低い角シフトの生じ得る相対的に高い屈折率と対応付けられてもよい。
【0011】
図1は、本明細書に記載の実施形態100の概要図である。
図1に示すように、マルチスペクトルフィルタ105(例:バイナリ構造光学フィルタアレイ)は、第1のミラー110-1と、第2のミラー110-2と、スペーサ120とを含んでもよい。
【0012】
さらに
図1に示すように、第1のミラー110-1および第2のミラー110-2は、スペーサ120を挟んでもよい。言い換えると、スペーサ120は第1のミラー110-1および第2のミラー110-2を閾値距離で分けてもよく、および/または、スペーサ120の面は第1のミラー110-1および第2のミラー110-2で囲まれてもよい。いくつかの実施形態において、ミラー110は、特定の材料と対応付けられてもよい。例えば、ミラー110は、金属ミラー層(例:銀)の組や誘電体ミラー層(例:交互の水素化シリコン層および二酸化ケイ素層)の組等を含んで、光源からマルチスペクトルフィルタ105と対応付けられたセンサ素子への光の一部を反射してもよい。ミラー110は、マルチスペクトルフィルタ105の各チャネルと対応付けられたセンサ素子アレイの各センサ素子と配列されてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態において、スペーサ120は、1つ以上のスペーサ層130を含んでもよい。例えば、スペーサ120は、スペーサ層130-1~130-5(例:誘電体層)の組を含んでもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上のスペーサ層130の厚さは、特定の波長のための最小のスペーサ厚を確保することと対応付けられてもよい。いくつかの実施形態において、スペーサ120は、シングルキャビティ構成と対応付けられてもよい。加えてまたは代替的に、スペーサ120は、マルチキャビティ構成と対応付けられてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態において、1つ以上のスペーサ層130の厚さは、バイナリ数列に基づいて関連付けられてもよい。例えば、スペーサ層130-3は、スペーサ層130-2の厚さの約半分の厚さと対応付けられてもよく、スペーサ層130-4は、スペーサ層130-3の厚さの約半分の厚さと対応付けられてもよく、スペーサ層130-5は、スペーサ層130-4の厚さの約半分の厚さと対応付けられてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態において、マルチスペクトルフィルタ105は、光学センサ装置と対応付けられた基板上に形成されてもよい。例えば、ミラー110-1は、情報(例:スペクトルデータ)を得るためにセンサ素子アレイを含む基板上に(例:堆積プロセスおよび/またはフォトリソグラフィリフトオフプロセスにより)形成されてもよい。いくつかの実施形態において、スペーサ120は、複数波長に関する情報の取得を可能にしてもよい。例えば、第1のセンサ素子(例:センサ素子アレイの裏面入射型光学センサまたは前面入射型光学センサ)と配列されるスペーサ120の第1の部分は、第1の厚さと対応付けられてもよく、第2のセンサ素子と配列されるスペーサ120の第2の部分は、第2の厚さと対応付けられてもよい。この場合、第1のセンサ素子および第2のセンサ素子へと向かう光は、第1の厚さに基づいて第1のセンサ素子で第1の波長と対応し、第2の厚さに基づいて第2のセンサ素子で第2の波長と対応してもよい。こうして、マルチスペクトルフィルタ105は、光学センサ装置の複数センサ素子と配列され、複数厚さと対応付けられた複数部分と対応付けられたスペーサ(例:スペーサ120)を用いて、光学センサ装置によるマルチスペクトルセンシングを可能にする。
【0016】
いくつかの実施形態において、ミラー110は、保護層と対応付けられてもよい。例えば、保護層は、ミラー110-1上(例:ミラー110-1とスペーサ120との間)に堆積されてミラー110-1の劣化の可能性を低減することによって、マルチスペクトルフィルタ105を利用する光学センサ装置の耐久性を向上してもよい。いくつかの実施形態において、ミラー110および/またはスペーサ120は、テーパー状エッジと対応付けられてもよい。例えば、ミラー110および/またはスペーサ120のエッジ部分は、テーパー状であってもよく、他の層(例:保護層)をエッジ部分上に堆積可能にして、光の光学センサへの方向付けと対応付けられるミラー110および/またはスペーサ120の他の部分(例:非エッジ部分)を妨げることなくエッジ部分の劣化の可能性を低減することによって、マルチスペクトルフィルタ105を利用する光学センサ装置の耐久性を向上することができる。
【0017】
上記の通り、
図1は、単に例を示すものである。他の例も可能であり、
図1に関して記載されたものと異なっていてもよい。
【0018】
図2A~2Dは、スペーサ層に水素化シリコンを用い、高屈折率/低屈折率(HL)対の2つの1/4波長スタックを有するファブリーペローフィルタに関する例の図である。
【0019】
図2Aおよびチャート200に示すように、フィルタ210は、基板と、交互の水素化シリコン(「Si_H」として示す、あるいは、Si:Hと記載する)層および二酸化ケイ素(「SiO2」として示す)層を含む第1の1/4波長スタックと、水素化シリコンスペーサと、交互の水素化シリコン層および二酸化ケイ素層を含む第2の1/4波長スタックとを含んでもよい。第1の1/4波長スタックおよび第2の1/4波長スタックの水素化シリコン層は各々、約3.7226の屈折率、約62.6nmの物理的厚さ、および約932nmの1/4波長光学厚さ(「Q.W.O.T.」として示す)と対応付けられてもよい。本明細書に記載の通り、層の1/4波長光学厚さは、当該層の物理的厚さおよび屈折率に対応する。第1の1/4波長スタックおよび第2の1/4波長スタックの二酸化ケイ素層は各々、約1.4664の屈折率、約158.9nmの物理的厚さ、および約932nmの1/4波長光学厚さと対応付けられてもよい。水素化シリコンスペーサ層は、約3.7226の屈折率、約125.2nmの物理的厚さ、および約1864nmの1/4波長光学厚さと対応付けられる。本明細書では水素化シリコンスペーサ層として記載されるが、水素化シリコンスペーサ層は、複数チャネルを形成するように選択された複数厚さの水素化シリコンの複数スペーサ層を含んでもよい。例えば、第1のケースでは、水素化シリコンスペーサ層は、複数層を用いてなり、64チャネルを形成してもよい。同様に、第2のケースでは、水素化シリコンスペーサ層は、複数層を用いてなり、128チャネルを形成してもよい。
【0020】
図2Bに示すように、チャート220は、フィルタ210の屈折率プロファイルを表す。図示のように、フィルタ210は、第1の1/4波長スタックおよび第2の1/4波長スタックによって挟まれた水素化シリコンスペーサを含む。第1の1/4波長スタックおよび第2の1/4波長スタックは各々、HL対の組を形成する水素化シリコン層および二酸化ケイ素層の交互の組を含む。
【0021】
図2Cおよび2Dに示すように、チャート230および240の組は、それぞれ、フィルタ210の光学特性の組を示す。例えば、フィルタ210は、約932nmで90%超の透過率と対応付けられる。同様に、フィルタ210は、約680nmで45%超の透過率と対応付けられる。この場合、フィルタ210は、例えば、約800nm~約1100nmの波長域に利用されてもよい。あるケースにおいて、本明細書に記載の通り、フィルタ210は、64チャネルセンサ素子アレイ用に提供されてもよく、約1.2nmの水素化シリコンスペーサの最薄層の厚さと対応付けられてもよい。同様に、第2のケースにおいて、本明細書に記載の通り、フィルタ210は、128チャネルセンサ素子アレイ用に提供されてもよく、約0.6nmの水素化シリコンスペーサの最薄層の厚さと対応付けられてもよい。最薄層の厚さが閾値層厚未満(例:約5nm未満、約2nm未満、約1.5nm未満、約1nm未満、約0.75nm未満等)であることに基づいて、水素化シリコンスペーサの1つ以上の層は、1つ以上の混合水素化シリコン・酸化物層へと酸化してもよい。水素化シリコンのみの使用を意図して選択される1つ以上の水素化シリコン・酸化物層の厚さに基づいて、水素化シリコンスペーサを、非制御組成スペーサまたは水素化シリコンのみスペーサと称してもよい。
【0022】
上記の通り、
図2A~2Dは、単に例を示すものである。他の例も可能であり、
図2A~2Dに関して記載されたものと異なっていてもよい。
【0023】
図3A~3Dは、
図2A~2Dに関連して記載したフィルタ210等の、スペーサ(すなわち、非制御組成スペーサ)として水素化シリコンのみを用いたファブリーペローフィルタの光学特性の図である。
【0024】
図3Aおよびチャート300に示すように、理論ケースフィルタ応答が、フィルタ210を用いた64チャネルフィルタアレイに提供される。理論フィルタ応答は、フィルタ210の水素化シリコンスペーサの酸化なしのケースで決定される。この場合、フィルタ210は、約800nm~約1100nmの波長域に及ぶ64個の略等間隔のチャネルの組を提供し、チャネルの組は、約80%~約100%の透過率と対応付けられる。
【0025】
図3Bおよびチャート310に示すように、酸化ケースフィルタ応答が、薄層(例:閾値厚さ未満の層)およびフィルタ210のスペーサの層の表面の酸化(例:本明細書に記載の通り、雰囲気、パターニングプロセス、洗浄プロセス等への曝露中に発生する酸化)に基づいて、フィルタ210を用いた64チャネルフィルタアレイに提供される。この場合、酸化は、例えば、フィルタ210のスペーサの最後の3つの層(例:厚さ約4.8nmまでの3つの最薄層)で引き起こされ、これらが酸化して混合水素化シリコン・二酸化ケイ素層を形成する。その結果、フィルタ210は、64チャネルの組を提供し、チャネル群は、相対的に類似の波長と対応付けられる。例えば、スペーサの最後の3つの層の物理的厚さを変えずにフィルタ210のスペーサの最後の3つの層の組成および屈折率を変更する酸化の結果、第1の8チャネル群は、約810nmの波長と対応付けられ、第2のチャネル群は、約845nmの波長と対応付けられ、第3のチャネル群は、約875nmの波長と対応付けられる。
【0026】
図3Cおよびチャート320、および、
図3Dおよびチャート330に示すように、チャネル毎に、
図3Aの理論ケースにおけるフィルタ210のフィルタ応答と
図3Bの酸化ケースにおけるフィルタ応答とを比較する。
図3Cに示すように、理論ケースにおける中心波長(「CWL」で示す)の等間隔の組よりも、酸化ケースにおけるフィルタ応答の方が、相対的に類似の中心波長のグルーピング(例:同じ群における他の各チャネルの約2nm以内の中心波長を各々有する8チャネルの群)となっている。例えば、
図3Dに示すように、理論ケースでは、任意の特定のチャネルの中心波長は、隣接するチャネルの隣接する中心波長から約5nmの間隔である。言い換えると、例えば、チャネル16は、チャネル15よりも5nm高くチャネル17よりも5nm低い中心波長と対応付けられる。対して、酸化ケースでは、チャネル群におけるチャネルは、相対的に低いチャネル間隔と対応付けられ、各群は、相対的に高いチャネル間隔と対応付けられる。言い換えると、例えば、チャネル6および7は、共通のチャネル群内であり、チャネル7は、チャネル6よりも1nm高い中心波長と対応付けられるが、チャネル7および8は、異なるチャネル群と対応付けられ、チャネル7は、チャネル8よりも約32nm低い中心波長と対応付けられる。
【0027】
上記の通り、
図3A~3Dは、単に例を示すものである。他の例も可能であり、
図3A~3Dに関して記載されたものと異なっていてもよい。
【0028】
図4A~4Eは、混合スペーサ層の1つ以上の堆積層に酸化物系材料を利用した混合スペーサ層を用いるフィルタに関する例の図である。
【0029】
図4Aおよびチャート400に示すように、フィルタ410(例:マルチスペクトルセンシング用光学フィルタ)は、第1のミラーと、スペーサの層の組と、第2のミラーとを含んでもよい。第1のミラーおよび第2のミラーは、1/4波長スタックミラーや金属ミラー等であってもよい。スペーサの層は、コーティングラン(コーティングラン1、2、3、…として識別される)の組を用いて堆積される。水素化シリコン(例:2.0超、2.5超、3.0超、3.5超、3.6超等、約800nm~約1100nmのスペクトル域で閾値屈折率よりも大きい屈折率と対応付けられてもよい)または他の材料(例:他の酸化可能材料)を、スペーサの1つ以上の層に選択してもよい。酸化物を、約5nm未満等、水素化シリコンの層厚閾値未満の層厚と対応付けられると決定された1つ以上の層に用いてもよい。言い換えると、もし層が(例:フィルタ410を含む光学装置がカバーするべきスペクトル域での水素化シリコンの屈折率に基づいて)水素化シリコンを用いて堆積される場合の閾値未満の厚さと対応付けられるならば、当該層は、(例:酸化物材料の屈折率に基づいて選択される)他の厚さの酸化物材料から堆積されてもよく、これは、いくつかの実施形態において、厚さ閾値よりも大きくてもよい。いくつかの実施形態において、酸化物材料は、厚さ閾値未満の厚さと対応付けられてもよい。
【0030】
他の例において、約10nm未満、約2.5nm未満、約2nm未満、約1.5nm未満、約1nm未満、約0.75nm未満等、他の閾値層厚を用いてもよい。この場合、第1の層(コーティングラン1として識別される)は、閾値層厚を超える約92.633nmの水素化シリコンの層厚と対応付けられ、よって、水素化シリコンを用いて堆積される。同様に、第4の層は、閾値層厚を超える約9.617nmの水素化シリコンの層厚と対応付けられ、よって、水素化シリコンを用いて堆積される。対して、第5の層は、閾値層厚を超えない約4.809nmの水素化シリコンの層厚と対応付けられる。この場合、水素化シリコンではなく、酸化ニオブチタン(NbTiOx)が、(例:酸化ニオブチタンの屈折率に基づく)層厚約11.800nmで堆積される。
【0031】
他の例において、二酸化ケイ素(SiO2)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、五酸化タンタル(Ta2O5)、二酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、二酸化ハフニウム(HfO2)等の他の酸化物材料を利用してもよく、窒化ケイ素(Si3N4)等の窒化物材料を利用してもよく、フッ化マグネシウム(MgF)等のフッ化物材料を利用してもよく、硫化亜鉛(ZnS)等の硫化物材料を利用してもよく、セレン化亜鉛(ZnSe)等のセレン化物材料を利用してもよく、またはそれらの組み合わせ等を利用してもよい。酸化ニオブチタンが水素化シリコンと異なる屈折率と対応付けられることに基づいて、異なる層厚を選択して、酸化ニオブチタンを用いて第5の層を堆積する。例えば、酸化ニオブチタンの屈折率および第5の層と対応付けられるチャネルの中心波長に基づいて、スペーサの第5の層について層厚約11.800nmが選択される。同様に、第6の層および第7の層は、それぞれ、閾値層厚を超えない約2.404nmおよび約1.202nmの水素化シリコンの層厚と対応付けられる。この場合、第6の層および第7の層は、酸化ニオブチタンの屈折率および第6の層および第7の層と対応付けられるチャネルの中心波長に基づいて、それぞれ、約5.900nmおよび約2.950nmの層厚で酸化ニオブチタンを用いて堆積される。いくつかの実施形態において、フィルタ410は、8チャネル、16チャネル、32チャネル、64チャネル、128チャネル、256チャネル以上等の、スペーサの層によって形成されるチャネルの閾値量と対応付けられてもよい。
【0032】
スペーサ(例:第1の材料は、例えば、水素化シリコンである)の第2の材料の厚さに関して、当該厚さは、分散値に基づく予想厚さと異なる。例えば、約930nmで、水素化シリコンは、約3.7225の屈折率および第7の層の1.202のスペーサ厚さと対応付けられ、その結果、光学厚さは3.7225*1.202=4.474nmとなり、これは、水素化シリコン層の光学厚さを表す。水素化シリコン層を置換する酸化ニオブチタン層の理論物理的厚さは、4.474nm/2.323nm=1.926nmと決定することができ、ここで、2.323nmは、約930nmでの酸化ニオブチタンの略屈折率を表す。この場合、1.926nmは、分散に基づいて決定される物理的厚さ2.950nm未満である。この違いは、水素化シリコンと例えば酸化ニオブチタンとの間の界面での位相シフトに因る。このように、テストに基づいて、酸化ニオブチタンは、水素化シリコンに対して層厚を250%増加させると判定される。こうして、フィルタの最薄層の厚さを増加させることおよび添加プロセスを用いたフィルタアレイの製造を可能にすることに基づいて、制御組成を用いる混合スペーサ系フィルタ(例:フィルタ410)の製造性は、非制御組成を用いる他のフィルタ(例:フィルタ210)に対して向上する。
【0033】
図4Bおよびチャート420に示すように、フィルタ応答を、フィルタ410を用いた64チャネルフィルタアレイに提供する。この場合、酸化物層および水素化シリコン層を有する混合スペーサ層の利用に基づいて、フィルタ410は、約800nm~約1100nmの波長域に及ぶ64個の略等間隔のチャネルの組を提供し、チャネルの組は、約80%~約100%の透過率と対応付けられる。閾値層厚未満の水素化シリコン層ではなく酸化物層を使用することによって、酸化を回避し、
図3Bに示すチャネルグルーピングを回避する。こうして、全水素化シリコンスペーサ系設計に対して、混合スペーサの利用は、マルチスペクトルフィルタのフィルタ性能を向上させ、フィルタ410を含む光学装置の光学性能を向上させる。
【0034】
図4Cおよびチャート430、
図4Dおよびチャート440、および、
図4Eおよびチャート450に示すように、フィルタ410は、フィルタ410のチャネルの中心波長が相対的に等間隔となる(例:約10nm未満、約6nm未満、約5nm未満等、各チャネルの閾値分離未満の偏差と対応付けられる中心波長間隔)。例えば、チャート430に示すように、フィルタ410の中心波長は、チャネル指数0での中心波長800nmからチャネル指数63での中心波長1100nmまでのフィルタ210の理論ケースと対応する。同様に、チャート440、およびより粒度の細かいチャート450に示すように、フィルタ210の理論ケースは、約4.5nm~約5nmのチャネル間隔と対応付けられる。対して、酸化ケースにおける
図3Dのチャート330に戻って、フィルタ210は、約0.5nm(例:チャネル群の隣接するチャネル)~約35nm(例:異なるチャネル群の隣接するチャネル)のチャネル間隔と対応付けられる。チャート440および450に戻って、実際のケースにおけるフィルタ410は、約4nm~約6nmのチャネル間隔と対応付けられる。こうして、チャネル間隔の均一性の向上は、フィルタ210に対して、フィルタ410によって達成される。
【0035】
上記の通り、
図4A~4Eは、単に例を示すものである。他の例も可能であり、
図4A~4Eに関して記載されたものと異なっていてもよい。
【0036】
図5Aおよび5Bは、混合スペーサの1つ以上の光学フィルタ層に酸化物系材料を用いた混合スペーサを有するフィルタに関する図である。
【0037】
図5Aおよびチャート500、および、
図5Bおよびチャート510に示すように、屈折率を、光の波長の組でのスペーサ材料の組に提供する。例えば、チャート500に示すように、水素化シリコンの屈折率は、約800nmで約3.852であり、約930nmで約3.7225であり、1100nmで約3.639である。同様に、酸化ニオブチタンおよび二酸化ケイ素それぞれの屈折率は、約800で約2.342および約1.469であり、約930nmで約2.323および約1.466であり、1100nmで約2.308および約1.464である。
【0038】
チャート510に示すように、波長の変化のための屈折率の変化は、水素化シリコンに対して、酸化ニオブチタンおよび二酸化ケイ素では異なる。例えば、水素化シリコンは、約800nmから約930nmおよび約1100nmへの波長の変化において、それぞれ、約3.4%および約5.5%の屈折率の低減と対応付けられる。対して、酸化ニオブチタンは、約0.8%および約1.5%の低減と対応付けられ、二酸化ケイ素は、約0.2%および約0.3%の低減と対応付けられる。この場合、水素化シリコンの屈折率の変化と酸化ニオブチタンまたは二酸化ケイ素の屈折率の変化との間の不一致の結果は、チャネル間隔の均一性の変化となる。例えば、チャート450に戻って、フィルタ410のチャネル間隔は、フィルタ210の理論チャネル間隔に対して、線形性偏差を示す。この線形性偏差は、閾値偏差未満である。例えば、フィルタ410は、閾値チャネル分離未満(例:約6nm未満)のチャネル分離と対応付けられる。
【0039】
上記の通り、
図5Aおよび5Bは、単に例を示すものである。他の例も可能であり、
図5Aおよび5Bに関して記載されたものと異なっていてもよい。
【0040】
図6A~6Dは、混合スペーサの1つ以上の光学フィルタ層に酸化物系材料を利用した混合スペーサを有するフィルタに関する図である。
【0041】
図6Aおよびチャート600に示すように、フィルタ610(例:マルチスペクトルセンシング用光学フィルタ)は、第1のミラーと、スペーサの層の組と、第2のミラーとを含んでもよい。第1のミラーおよび第2のミラーは、1/4波長スタックミラーや金属ミラー等であってもよい。スペーサの層は、コーティングラン(コーティングラン1、2、3、…として識別される)の組を用いて堆積される。水素化シリコン(例:2.0超、2.5超、3.0超、3.5超、3.6超等、約800nm~約1100nmのスペクトル域で閾値屈折率よりも大きい屈折率と対応付けられてもよい)または他の材料(例:他の酸化可能材料)を、スペーサの1つ以上の層のために選択してもよい。酸化物(例:二酸化ケイ素(SiO
2))を、約5nm未満等、水素化シリコンの層厚閾値よりも小さい層厚と対応付けられると決定された1つ以上の層に用いてもよい。この場合、第1の層(コーティングラン1として識別される)は、閾値層厚を超える約92.633nmの水素化シリコンの層厚と対応付けられ、よって、水素化シリコンを用いて堆積される。同様に、第4の層は、閾値層厚を超える約9.617nmの水素化シリコンの層厚と対応付けられ、よって、水素化シリコンを用いて堆積される。対して、第5の層は、閾値層厚を超えない約4.809nmの水素化シリコンの層厚と対応付けられる。この場合、水素化シリコンではなく、二酸化ケイ素(SiO
2)が、(例:二酸化ケイ素酸化物の屈折率に基づいて)層厚約30.400nmで堆積される。
【0042】
二酸化ケイ素が水素化シリコンと異なる屈折率と対応付けられることに基づいて、異なる層厚を選択して、二酸化ケイ素を用いて第5の層を堆積する。例えば、二酸化ケイ素の屈折率および第5の層と対応付けられるチャネルの中心波長に基づいて、スペーサの第5の層について層厚約30.4nmが選択される。同様に、第6の層および第7の層は、それぞれ、閾値層厚を超えない約2.404nmおよび約1.202nmの水素化シリコンの層厚と対応付けられる。この場合、第6の層および第7の層は、二酸化ケイ素の屈折率および第6の層および第7の層と対応付けられるチャネルの中心波長に基づいて、それぞれ、約15.2nmおよび約7.6nmの層厚で二酸化ケイ素を用いて堆積される。いくつかの実施形態において、フィルタ610は、8チャネル、16チャネル、32チャネル、64チャネル、128チャネル、256チャネル以上等の、スペーサの層によって形成されるチャネルの閾値量と対応付けられてもよい。
【0043】
図6Bおよびチャート620に示すように、フィルタ応答を、フィルタ610を用いた63チャネルフィルタアレイに提供する。この場合、酸化物層および水素化シリコン層を有する混合スペーサ層の利用に基づいて、フィルタ610は、約800nm~約1100nmの波長域に及ぶ63個の略等間隔のチャネルの組を提供し、チャネルの組は、約60%~約95%の透過率と対応付けられる。閾値層厚未満の水素化シリコン層ではなく酸化物層の使用によって、酸化を回避し、例えば
図3Bに示すチャネルグルーピングを回避する。こうして、全水素化シリコンスペーサ系設計に対して、混合スペーサの利用は、マルチスペクトルフィルタのフィルタ性能を向上させ、フィルタ610を含む光学装置の光学性能を向上させる。
【0044】
図6Cおよびチャート630、および、
図6Dおよびチャート640に示すように、フィルタ610は、フィルタ610のチャネルの中心波長が相対的に等間隔となる(例:約10nm未満、約6nm未満、約5nm未満等、各チャネルの閾値分離未満の偏差と対応付けられる中心波長間隔)。例えば、チャート630に示すように、フィルタ610の中心波長は、チャネル指数0での中心波長800nmからチャネル指数63での中心波長1100nmまでのフィルタ210の理論ケースと対応する。チャート640に示すように、フィルタ610は、水素化シリコンと二酸化ケイ素との間の分散不一致に基づいて共通の中心波長と対応付けられる特定のチャネル(例:チャネル番号7および8)の組に基づく63チャネルと対応付けられる。同様に、チャート640に示すように、酸化ケースにおいてフィルタ210が約0.5nm(例:チャネル群の隣接するチャネル)~約35nm(例:異なるチャネル群の隣接するチャネル)のチャネル間隔と対応付けられる
図3Dのチャート330に対して、実際のケースにおけるフィルタ610では、約0nm~約7nm、約4nm~約7nm、約4.5nm~約5.0nm等のチャネル間隔が得られる。こうして、チャネル間隔の均一性の向上は、フィルタ210に対して、フィルタ610によって達成される。
【0045】
上記の通り、
図6A~6Dは、単に例を示すものである。他の例も可能であり、
図6A~6Dに関して記載されたものと異なっていてもよい。
【0046】
上述の開示は例示および説明を提供するものであるが、全てを網羅している訳ではなく、実施形態を開示された形態に厳密に制限することを意図するものではない。変更および変形は、上述の開示に照らして行うことができる、または実施形態の実施から取得することができる。
【0047】
本明細書に記載するいくつかの実施形態は閾値に関するものである。本明細書に記載する、閾値を満足させるとは、閾値よりも大きい値、閾値を超える値、閾値よりも高い値、閾値以上の値、閾値未満の値、閾値よりも少ない値、閾値よりも低い値、閾値以下の値、閾値と等しい値などを指す。
【0048】
特徴の特別な組み合わせを請求項に記載し、および/または明細書に開示したが、これらの組み合わせは可能な実施形態の開示を制限することを意図するものではない。実際、これらの特徴の多くは、請求項に具体的に記載されていない方法、および/または明細書に開示されていない方法で組み合わせることができる。以下に記載する各々の従属請求項は1つの請求項のみに従属させることができるが、可能な実施形態の開示は、各々の従属請求項と請求項の範囲における他の全ての請求項との組み合わせを含んでいる。
【0049】
本明細書で使用される要素、行為または命令は、明示的な記載のない限り、重要または必須であると解釈してはならない。また、本明細書で使用する「a」および「an」の冠詞は1つ以上のアイテムを含むものとし、「1つ以上の(one or more)」と代替可能に使用することができる。さらに、本明細書で使用する「組(set)」という用語は、1つ以上のアイテム(例えば関連アイテム、非関連アイテム、関連アイテムと非関連アイテムの組み合わせなど)を含むものとし、「1つ以上の」と代替可能に使用することができる。1つのアイテムのみが意図される場合、「1つの(one)」という用語または類似の言葉が使用される。また、本明細書で使用する「有する(has,have,having)」などの用語は開放型用語であるものとする。さらに、「に基づく(based on)」という言い回しは、特に断りのない限り、「少なくとも部分的に~に基づく」ことを意味するものとする。