(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230522BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 643A
H01L21/304 651B
(21)【出願番号】P 2018173832
(22)【出願日】2018-09-18
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】中澤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】村元 僚
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-069531(JP,A)
【文献】特開2018-014531(JP,A)
【文献】特開2013-229552(JP,A)
【文献】特開2015-211203(JP,A)
【文献】特開2004-235234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置であって、
基板の第1主面にパターンが形成されており、前記第1主面を下方に向けた状態で前記基板を水平に保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された前記基板を上下方向を向く中心軸を中心として回転する基板回転機構と、
前記基板の上方を向く第2主面に処理液を供給する処理液供給部と、
を備え、
前記基板保持部が、
前記基板の前記第1主面に対向する対向面を有する対向板部と、
前記対向板部において前記基板の外周縁の下方に配置される複数のリフトピンを有し、前記複数のリフトピンが複数のリフト支持面をそれぞれ有しており、外部の搬送機構との間における前記基板の受け渡しの際に、前記複数のリフト支持面により前記外周縁を下方から支持するリフト部と、
前記対向板部において前記基板の前記外周縁の下方に配置される複数のチャックピンを有し、前記複数のチャックピンが水平方向に移動可能である複数のチャック当接面をそれぞれ有しており、前記複数のチャック当接面が前記リフト部に支持される前記基板の外周端面に当接することにより、前記基板を前記複数のリフト支持面の全てから上方に離間させた状態で、前記基板を保持するチャック部と、
前記チャック部が、前記複数のチャック当接面のうち一部のチャック当接面を前記基板の前記外周端面から離間させつつ、残りのチャック当接面を前記外周端面に当接させた状態で、前記基板を保持可能であり、前記処理液供給部が前記第2主面に前記処理液を供給している間に、前記外周端面から離間させるチャック当接面を切り替えるチャック切替機構と、
を備え、
前記チャック部が前記基板を保持している状態において、前記複数のリフトピンが前記対向面から突出しており、
前記複数のリフト支持面において、前記基板の支持時に前記基板の前記外周縁と当接する位置近傍から周方向に延びる排液溝が形成されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の基板処理装置であって、
前記複数のリフト支持面が、前記中心軸側に向かって下方に傾斜していることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の基板処理装置であって、
前記チャック部が前記基板を保持した状態において、前記複数のチャック当接面における前記基板よりも下側の部位の勾配が、前記複数のリフト支持面よりも大きいことを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし
3のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、
前記基板の前記第1主面と前記対向板部との間に、不活性ガスを供給する不活性ガス供給部をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の基板処理装置であって、
前記不活性ガス供給部が、前記対向板部の中央部に配置されたガスノズルを備え、
前記対向面が、前記基板の前記外周縁の近傍にて前記外周縁に沿って形成される環状段差部を備え、
前記環状段差部の内側における前記対向面と前記基板との間の距離が、前記環状段差部の外側における前記対向面と前記基板との間の距離よりも大きいことを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の基板処理装置であって、
前記対向面において、前記環状段差部が、前記中心軸を中心とする所定の基準円に沿って形成されており、
少なくとも前記複数のチャックピンが前記基準円に重なり、
前記基準円が前記複数のチャックピンと重なる位置において、前記環状段差部が、前記複数のチャックピンよりも前記中心軸側に設けられることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし
6のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、
前記複数のリフトピンが、前記複数のリフト支持面に対して前記中心軸とは反対側に連続するとともに、前記複数のリフト支持面よりも勾配が大きい複数のリフト案内面をそれぞれ有し、
前記外部の搬送機構との間における前記基板の受け渡しの際に、前記複数のリフト案内面が、前記基板の前記外周端面と当接することにより、前記基板の中心が前記中心軸に近づけられることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項
7に記載の基板処理装置であって、
前記複数のリフトピンが、周方向に等間隔に配置される4以上のリフトピンを含むことを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
請求項1ないし
8のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、
前記基板の前記外周縁は、前記基板のベベル部であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
基板処理装置における基板処理方法であって、
前記基板処理装置が、
基板の第1主面にパターンが形成されており、前記第1主面を下方に向けた状態で前記基板を水平に保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された前記基板を上下方向を向く中心軸を中心として回転する基板回転機構と、
前記基板の上方を向く第2主面に処理液を供給する処理液供給部と、
を備え、
前記基板保持部が、
前記基板の前記第1主面に対向する対向面を有する対向板部と、
前記対向板部において前記基板の外周縁の下方に配置される複数のリフトピンを有し、前記複数のリフトピンが複数のリフト支持面をそれぞれ有しており、外部の搬送機構との間における前記基板の受け渡しの際に、前記複数のリフト支持面により前記外周縁を下方から支持するリフト部と、
前記対向板部において前記基板の前記外周縁の下方に配置される複数のチャックピンを有し、前記複数のチャックピンが水平方向に移動可能である複数のチャック当接面をそれぞれ有しており、前記リフト部に支持される前記基板の外周端面に対して、前記複数のチャック当接面を当接させることにより、前記基板を前記複数のリフト支持面の全てから上方に離間させた状態で、前記基板を保持するチャック部と、
を備え、
前記チャック部が、前記複数のチャック当接面のうち一部のチャック当接面を前記基板の前記外周端面から離間させつつ、残りのチャック当接面を前記外周端面に当接させた状態で、前記基板を保持可能であり、
前記チャック部が前記基板を保持している状態において、前記複数のリフトピンが前記対向面から突出しており、
前記複数のリフト支持面において、前記基板の支持時に前記基板の前記外周縁と当接する位置近傍から周方向に延びる排液溝が形成され、
前記基板処理方法が、
a)前記基板回転機構により前記基板を回転しつつ、前記処理液供給部により前記第2主面に前記処理液を供給する工程と、
b)前記a)工程に並行して、前記外周端面から離間させるチャック当接面を切り替える工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの製造では、半導体基板(以下、単に「基板」という。)に対して様々な処理を行う基板処理装置が用いられている。例えば、特許文献1の基板処理装置では、デバイス形成面である表面を下方に向けた状態で基板を保持しつつ、デバイス非形成面である裏面の洗浄が行われる。また、当該基板処理装置では、3本以上の可動ピンを含む第1の可動ピン群によって基板が支持されている状態と、3本以上の可動ピンを含む第2の可動ピン群によって基板が支持されている状態との間で遷移することが可能である。これにより、基板の回転中に、可動ピンによる基板の接触支持位置を変化させることができ、基板の外周縁を洗浄残りなく洗浄することができる。
【0003】
なお、特許文献2では、基板を載置するための載置部と、当該載置部に載置された基板の端面を挟持して、基板を当該載置部から離間させて保持する複数の挟持部材とを含む基板処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-69531号公報
【文献】特開2004-235234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、1つの基板においてより多くのデバイスを製造するため、デバイス形成面である表面において外周縁の極近傍までパターンが形成されている。特許文献1の手法では、基板の外周縁における処理液の痕の発生を抑制することが可能であるが、可動ピンにより、外周縁近傍に形成されたパターンが損傷する可能性がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、パターンが形成された主面を下方に向けた状態で基板を保持しつつ、上方を向く主面に対して処理液による処理を行う場合に、下方を向く主面の外周縁近傍におけるパターンの損傷、および、基板の外周縁における処理液の痕の発生を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、基板処理装置であって、基板の第1主面にパターンが形成されており、前記第1主面を下方に向けた状態で前記基板を水平に保持する基板保持部と、前記基板保持部に保持された前記基板を上下方向を向く中心軸を中心として回転する基板回転機構と、前記基板の上方を向く第2主面に処理液を供給する処理液供給部とを備え、前記基板保持部が、前記基板の前記第1主面に対向する対向面を有する対向板部と、前記対向板部において前記基板の外周縁の下方に配置される複数のリフトピンを有し、前記複数のリフトピンが複数のリフト支持面をそれぞれ有しており、外部の搬送機構との間における前記基板の受け渡しの際に、前記複数のリフト支持面により前記外周縁を下方から支持するリフト部と、前記対向板部において前記基板の前記外周縁の下方に配置される複数のチャックピンを有し、前記複数のチャックピンが水平方向に移動可能である複数のチャック当接面をそれぞれ有しており、前記複数のチャック当接面が前記リフト部に支持される前記基板の外周端面に当接することにより、前記基板を前記複数のリフト支持面の全てから上方に離間させた状態で、前記基板を保持するチャック部と、前記チャック部が、前記複数のチャック当接面のうち一部のチャック当接面を前記基板の前記外周端面から離間させつつ、残りのチャック当接面を前記外周端面に当接させた状態で、前記基板を保持可能であり、前記処理液供給部が前記第2主面に前記処理液を供給している間に、前記外周端面から離間させるチャック当接面を切り替えるチャック切替機構とを備え、前記チャック部が前記基板を保持している状態において、前記複数のリフトピンが前記対向面から突出しており、前記複数のリフト支持面において、前記基板の支持時に前記基板の前記外周縁と当接する位置近傍から周方向に延びる排液溝が形成される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の基板処理装置であって、前記複数のリフト支持面が、前記中心軸側に向かって下方に傾斜している。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の基板処理装置であって、前記チャック部が前記基板を保持した状態において、前記複数のチャック当接面における前記基板よりも下側の部位の勾配が、前記複数のリフト支持面よりも大きい。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、前記基板の前記第1主面と前記対向板部との間に、不活性ガスを供給する不活性ガス供給部をさらに備える。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の基板処理装置であって、前記不活性ガス供給部が、前記対向板部の中央部に配置されたガスノズルを備え、前記対向面が、前記基板の前記外周縁の近傍にて前記外周縁に沿って形成される環状段差部を備え、前記環状段差部の内側における前記対向面と前記基板との間の距離が、前記環状段差部の外側における前記対向面と前記基板との間の距離よりも大きい。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の基板処理装置であって、前記対向面において、前記環状段差部が、前記中心軸を中心とする所定の基準円に沿って形成されており、少なくとも前記複数のチャックピンが前記基準円に重なり、前記基準円が前記複数のチャックピンと重なる位置において、前記環状段差部が、前記複数のチャックピンよりも前記中心軸側に設けられる。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、前記複数のリフトピンが、前記複数のリフト支持面に対して前記中心軸とは反対側に連続するとともに、前記複数のリフト支持面よりも勾配が大きい複数のリフト案内面をそれぞれ有し、前記外部の搬送機構との間における前記基板の受け渡しの際に、前記複数のリフト案内面が、前記基板の前記外周端面と当接することにより、前記基板の中心が前記中心軸に近づけられる。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の基板処理装置であって、前記複数のリフトピンが、周方向に等間隔に配置される4以上のリフトピンを含む。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の基板処理装置であって、前記基板の前記外周縁は、前記基板のベベル部である。
【0018】
請求項10に記載の発明は、基板処理装置における基板処理方法であって、前記基板処理装置が、基板の第1主面にパターンが形成されており、前記第1主面を下方に向けた状態で前記基板を水平に保持する基板保持部と、前記基板保持部に保持された前記基板を上下方向を向く中心軸を中心として回転する基板回転機構と、前記基板の上方を向く第2主面に処理液を供給する処理液供給部とを備え、前記基板保持部が、前記基板の前記第1主面に対向する対向面を有する対向板部と、前記対向板部において前記基板の外周縁の下方に配置される複数のリフトピンを有し、前記複数のリフトピンが複数のリフト支持面をそれぞれ有しており、外部の搬送機構との間における前記基板の受け渡しの際に、前記複数のリフト支持面により前記外周縁を下方から支持するリフト部と、前記対向板部において前記基板の前記外周縁の下方に配置される複数のチャックピンを有し、前記複数のチャックピンが水平方向に移動可能である複数のチャック当接面をそれぞれ有しており、前記リフト部に支持される前記基板の外周端面に対して、前記複数のチャック当接面を当接させることにより、前記基板を前記複数のリフト支持面の全てから上方に離間させた状態で、前記基板を保持するチャック部とを備え、前記チャック部が、前記複数のチャック当接面のうち一部のチャック当接面を前記基板の前記外周端面から離間させつつ、残りのチャック当接面を前記外周端面に当接させた状態で、前記基板を保持可能であり、前記チャック部が前記基板を保持している状態において、前記複数のリフトピンが前記対向面から突出しており、前記複数のリフト支持面において、前記基板の支持時に前記基板の前記外周縁と当接する位置近傍から周方向に延びる排液溝が形成され、前記基板処理方法が、a)前記基板回転機構により前記基板を回転しつつ、前記処理液供給部により前記第2主面に前記処理液を供給する工程と、b)前記a)工程に並行して、前記外周端面から離間させるチャック当接面を切り替える工程とを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、パターンが形成された第1主面を下方に向けた状態で基板を保持しつつ、上方を向く第2主面に対して処理液による処理を行う場合に、第1主面の外周縁近傍におけるパターンの損傷、および、基板の外周縁における処理液の痕の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】周方向に沿って見たリフトピンを示す図である。
【
図7】周方向に沿って見たチャックピンを示す図である。
【
図12】周方向に沿って見たリフトピンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板処理装置1の構成を示す図である。基板処理装置1は、円板状の基板9を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板9は、デバイス形成面である第1主面91と、デバイス非形成面である第2主面92とを有する。第1主面91には、製造途上のデバイスのパターンが形成される。基板処理装置1では、デバイスのパターンが形成されていない第2主面92を上方に向けて、第2主面92に対して処理液による処理が行われる。
【0022】
基板処理装置1は、基板保持部2と、基板回転機構3と、処理液供給部4と、不活性ガス供給部5とを備える。基板保持部2および基板回転機構3は、箱状のチャンバ(図示省略)内に収容される。後述する処理液供給部4の液ノズル41、および、不活性ガス供給部5のガスノズル51も、当該チャンバ内に収容される。当該チャンバは、およそ密閉された内部空間を形成する。
【0023】
図2は、基板保持部2の対向板部21を示す平面図である。
図1および
図2に示すように、基板保持部2は、対向板部21と、リフト部22と、チャック部23と、ピン昇降機構24と、チャック切替機構25とを備える。対向板部21は、上下方向を向く中心軸J1を中心とする円板状である。
図1では、対向板部21の上方で基板9が保持されており、対向板部21において上方を向く面は、基板9の下方を向く第1主面91に対向する対向面211である。対向面211は、中心軸J1に垂直な方向に広がる。リフト部22は、基板9の外周縁94の下方に配置される複数のリフトピン221(
図2参照)を備える。ピン昇降機構24は、複数のリフトピン221を上下方向に昇降する。チャック部23は、基板9の外周縁94の下方に配置される複数のチャックピン231a,231bを備える。チャック切替機構25は、複数のチャックピン231a,231bのそれぞれを、上下方向に平行な後述のチャック回動軸J2を中心として回動する。基板保持部2の詳細については後述する。
【0024】
図1に示すように、対向板部21の下面212の中央には、中心軸J1を中心とするシャフト部31の上端が固定される。モータを有する基板回転機構3が、シャフト部31を回転することにより、対向板部21が基板9と共に中心軸J1を中心として回転する。基板回転機構3は、中心軸J1を中心とする周方向において対向板部21を所定の角度位置(以下、「回転停止位置」という。)にて停止させることが可能である。対向板部21およびシャフト部31には、上下方向に延びる中空部が中心軸J1上に設けられており、ガスノズル51が当該中空部内に配置される。ガスノズル51は、上下方向に延びており、ガスノズル51の上端面は、対向板部21の対向面211近傍に配置される。ガスノズル51は、対向板部21の中央部に位置し、基板9の第1主面91の中央部に直接的に対向する。
【0025】
処理液供給部4は、液ノズル41と、処理液供給源42とを備える。液ノズル41は、ノズルアーム411により支持される。ノズルアーム411は、図示省略のノズル移動機構に接続される。ノズル移動機構により、液ノズル41が、基板9の第2主面92の中央部に対向する吐出位置と、上下方向に垂直な方向において基板9から離れた待機位置とに選択的に配置される。液ノズル41には、処理液供給源42が弁を介して接続される。処理液供給源42から液ノズル41に処理液が供給されることにより、液ノズル41から第2主面92の中央部に向けて当該処理液が吐出される。
図1の処理液供給源42は、薬液、有機溶剤、純水(脱イオン水(DIW))等の処理液を順次切り替えて液ノズル41に供給可能である。薬液として、オゾン含有フッ酸溶液、希フッ酸(DHF)、バッファードフッ酸(BHF)、SC1(NH
4OHおよびH
2O
2を含む液)等が例示される。有機溶剤として、イソプロピルアルコール(IPA)が例示される。
【0026】
不活性ガス供給部5は、既述のガスノズル51と、不活性ガス供給源52とを備える。ガスノズル51には、不活性ガス供給部5が弁を介して接続される。不活性ガス供給源52からガスノズル51に不活性ガスが供給されることにより、ガスノズル51から第1主面91と対向板部21の対向面211との間の空間に向けて、不活性ガスが噴出される。不活性ガスは、典型的には窒素ガスである。不活性ガスが、アルゴンガス、ヘリウムガス、低湿度の清浄空気等であってもよい。
【0027】
次に、基板保持部2の詳細について説明する。
図2に示すように、対向板部21の対向面211では、複数のリフトピン221が周方向に等間隔で配列される。また、対向面211では、複数のチャックピン231a,231bが周方向に等間隔で配列される。複数のリフトピン221および複数のチャックピン231a,231bは、中心軸J1を中心とする径方向においてほぼ同じ半径の位置に配置される。対向面211において、
図2中に二点鎖線で示すように、中心軸J1を中心とする当該半径の円C1(以下、「基準円C1」という。)を想定すると、複数のリフトピン221および複数のチャックピン231a,231bは、基準円C1と重なる。リフトピン221およびチャックピン231a,231bは、基準円C1に沿って交互に等間隔で設けられる。
図2の例では、6個のリフトピン221が、周方向に60度間隔で配列され、6個のチャックピン231a,231bが、周方向に60度間隔で配列される。
【0028】
複数のチャックピン231a,231bは、第1チャックピン群23aに含まれる複数のチャックピン231aと、第2チャックピン群23bに含まれる複数のチャックピン231bとに区別される。複数のチャックピン231a,231bにおいて、周方向に1つ置きに存在するチャックピン231aが第1チャックピン群23aに含められ、残りのチャックピン231bが第2チャックピン群23bに含められる。すなわち、周方向において、第1チャックピン群23aのチャックピン231aと、第2チャックピン群23bのチャックピン231bとが交互に配置される。
図2の例では、第1チャックピン群23aに含まれる3個のチャックピン231aが、周方向に120度間隔で配列され、第2チャックピン群23bに含まれる3個のチャックピン231bが、周方向に120度間隔で配列される。
【0029】
対向面211には、複数の穴部213が基準円C1に沿って等間隔に設けられる。上下方向に垂直な穴部213の断面形状は、円形である。複数のリフトピン221および複数のチャックピン231a,231bは略円柱状であり、複数の穴部213に挿入される。
図2の例では、リフトピン221の直径は、チャックピン231a,231bの直径よりも小さい。各穴部213の直径は、当該穴部213に挿入されるリフトピン221またはチャックピン231a,231bに合わせた大きさである。
【0030】
各リフトピン221は、穴部213において上下方向に移動可能に支持される。
図2の対向板部21の内部には、中心軸J1を中心とする環状空間が設けられており、複数のリフトピン221を互いに連結する環状部材が当該環状空間に配置される。当該環状部材は、複数のチャックピン231a,231bを避けた形状となっており、複数のチャックピン231a,231bと干渉することはない。
【0031】
図1に示すように、対向板部21の下方には、ピン昇降機構24が設けられる。ピン昇降機構24は、対向板部21が回転停止位置で停止した状態において、リフトピン221が設けられる一部の穴部213に対向した位置に配置される。ピン昇降機構24は、エアシリンダを有し、ピストンロッド241を上昇させて当該リフトピン221を突き上げる。これにより、複数のリフトピン221が、
図3中に二点鎖線で示す上位置に配置される。ピン昇降機構24が、ピストンロッド241を下降させると、複数のリフトピン221が、
図3中に実線で示す下位置に配置される。リフトピン221の下位置は、上位置よりも下側の位置である。リフトピン221が下位置に配置された状態において、リフトピン221の一部(後述の突出部220)は対向面211よりも上方に突出する。基板保持部2の一例では、ピストンロッド241が上昇していない状態において、リフトピン221が下位置に配置されるように、リフトピン221がばね等の付勢部材により付勢されている。ピン昇降機構24は、モータ等を用いてリフトピン221を突き上げる機構であってもよい。
【0032】
図4は、リフトピン221を拡大して示す平面図である。
図3および
図4に示すように、各リフトピン221の上端には、上方に突出する突出部220が設けられる。例えば、突出部220は、対向板部21の中心軸J1を含むとともに、径方向に沿う面F1(
図4中に一点鎖線で示す。)に関して対称形状である。突出部220は、リフト支持面222と、リフト案内面224と、リフト補助案内面226とを備える。リフト支持面222は、およそ上方を向く面であり、中心軸J1側(
図3および
図4の右側)に向かうに従って対向面211に近づく。すなわち、リフト支持面222は、中心軸J1側に向かって下方に傾斜する。また、リフト支持面222は、面F1から周方向(
図4のおよそ上下方向)の両側に向かって下方に傾斜する2つの面2221を有する。2つの面2221は、面F1上において鈍角に交差する。すなわち、リフト支持面222は、2つの面2221が交差する角部223を有する。角部223は、中心軸J1側に向かって下方に傾斜する。後述するように、複数のリフトピン221が基板9を支持する際には、典型的には、各リフトピン221の角部223が基板9の外周縁94とほぼ点接触する。
【0033】
リフト案内面224は、およそ中心軸J1側を向く面であり、リフト支持面222に対して中心軸J1とは反対側に連続する。リフト案内面224も、中心軸J1側に向かって下方に傾斜する。リフト案内面224は、面F1から周方向の両側に向かって広がる2つの面2241を有する。2つの面2241は、面F1上において鈍角に交差する。すなわち、リフト案内面224は、2つの面2241が交差する角部225を有する。角部225は、中心軸J1側に向かって下方に傾斜する。面F1上において、リフト案内面224の対向面211に対する傾斜角θ2(
図3中に二点鎖線で示すリフトピン221参照)は、リフト支持面222の当該傾斜角θ1よりも大きい。換言すると、リフト案内面224の勾配は、リフト支持面222よりも大きい。面F1上において、リフト案内面224の下端と中心軸J1との間の距離は、基板9の半径よりも僅かに大きい。
【0034】
リフト補助案内面226は、中心軸J1側かつ上方を向く面であり、リフト案内面224に対して中心軸J1とは反対側に連続する。リフト補助案内面226も、中心軸J1側に向かって下方に傾斜する。リフト補助案内面226は、面F1から周方向の両側に向かって広がる2つの面2261を有する。2つの面2261は、面F1上において鈍角に交差する。すなわち、リフト補助案内面226は、2つの面2261が交差する角部227を有する。角部227は、中心軸J1側に向かって下方に傾斜する。面F1上において、リフト補助案内面226の対向面211に対する傾斜角θ3(
図3中に二点鎖線で示すリフトピン221参照)は、リフト案内面224の当該傾斜角θ2よりも小さく、リフト支持面222の当該傾斜角θ1よりも大きい。換言すると、リフト補助案内面226は、リフト案内面224よりも勾配が小さく、リフト支持面222よりも勾配が大きい。
【0035】
リフトピン221が下位置に配置された状態において、平面視におけるリフトピン221の全領域が、対向面211と同じ高さ、または、対向面211よりも僅かに上方に位置する。したがって、後述する処理液による処理の際に、リフトピン221上に処理液が溜まることはない。また、リフト支持面222におけるリフト案内面224の近傍には、2つの排液溝228が形成される。2つの排液溝228は、リフト支持面222の角部223に対して周方向の両側に配置される。各排液溝228は、角部223の近傍から面2221の縁まで周方向に連続する。排液溝228の底面は、角部223から離れるに従って下方に傾斜する。処理液による処理の際に、基板9とリフト支持面222との間に入り込んだ処理液が排液溝228により適切に排出される。
【0036】
図1に示すように、各チャックピン231a,231bは、対向板部21に設けられた穴部213に挿入される。穴部213にはベアリング214が設けられており、穴部213の中心軸J2を中心として、チャックピン231a,231bが回動可能に支持される。以下の説明では、中心軸J2を「チャック回動軸J2」という。基板保持部2の一例では、穴部213に設けられる図示省略の係止部材により、チャックピン231a,231bが回動可能な範囲が、所定の角度範囲(後述の保持位置と開放位置とを含む角度範囲)に制限されている。平面視におけるチャックピン231の全領域は、対向面211と同じ高さ、または、対向面211よりも僅かに上方に位置する。したがって、後述する処理液による処理の際に、チャックピン231上に処理液が溜まることはない。
【0037】
図5は、対向板部21の下面212を模式的に示す図である。
図1および
図5に示すように、チャック切替機構25は、複数の第1回動磁石251aと、複数の第2回動磁石251bと、複数の第1閉塞磁石252aと、複数の第2閉塞磁石252bとを備える。第1および第2回動磁石251a,251b、並びに、第1および第2閉塞磁石252a,252bは、いずれも永久磁石である。実際には、第1および第2回動磁石251a,251b、並びに、第1および第2閉塞磁石252a,252bは、専用の保持部材内に収容されるが、
図1および
図5では、保持部材の図示を省略している。後述の第1および第2開放磁石253a,253bにおいて同様である。
【0038】
複数のチャックピン231a,231bの下端部は、対向板部21の下面212よりも下方に突出しており、第1および第2回動磁石251a,251bは、複数のチャックピン231a,231bの下端部にそれぞれ取り付けられる。詳細には、第1チャックピン群23aのチャックピン231aの下端部に第1回動磁石251aが取り付けられ、第2チャックピン群23bのチャックピン231bの下端部に第2回動磁石251bが取り付けられる。第1および第2回動磁石251a,251bの磁極の向き(磁化方向)は、例えば、中心軸J1およびチャック回動軸J2に垂直である。
【0039】
対向板部21の下面212において、複数の第1閉塞磁石252aは複数の第1回動磁石251aの近傍にそれぞれ固定される。後述の第1開放磁石253aが第1回動磁石251aの近傍に配置されない状態では、第1回動磁石251aと第1閉塞磁石252aとの間の磁気的吸引力により、例えば第1回動磁石251aのN極が中心軸J1とは反対側に配置され、S極が中心軸J1側に配置される。これにより、第1回動磁石251aが取り付けられたチャックピン231a、すなわち、第1チャックピン群23aのチャックピン231aでは、チャック回動軸J2を中心とする角度位置が、
図5に示す保持位置となる。
図5では、各磁石のN極側の部位にハッチングを付している(後述の
図6、
図9および
図10において同様)。本実施の形態では、磁石間の磁気的吸引力が利用されるが、もちろん、磁気的反発力が利用されてもよい。
図5の例では、チャックピン231aが保持位置となる状態において、第1回動磁石251aの磁極の向きは、中心軸J1を中心とする径方向に対して傾いている(第2回動磁石251bにおいて同様)。
【0040】
また、下面212において、複数の第2閉塞磁石252bは複数の第2回動磁石251bの近傍にそれぞれ固定される。後述の第2開放磁石253bが第2回動磁石251bの近傍に配置されない状態では、第2回動磁石251bと第2閉塞磁石252bとの間の磁気的吸引力により、例えば第2回動磁石251bのS極が中心軸J1とは反対側に配置され、N極が中心軸J1側に配置される。これにより、第2回動磁石251bが取り付けられたチャックピン231b、すなわち、第2チャックピン群23bのチャックピン231bでは、チャック回動軸J2を中心とする角度位置が、
図5に示す保持位置となる。
【0041】
チャック切替機構25は、複数の第1開放磁石253aと、複数の第2開放磁石253bと、第1磁石昇降機構254aと、第2磁石昇降機構254bとをさらに備える。第1および第2開放磁石253a,253bは、いずれも永久磁石である。第1および第2開放磁石253a,253bは、対向板部21の下方において、対向板部21とは独立して設けられる。
図5に示すように、上下方向に沿って見た場合に、複数の開放磁石253a,253bは、中心軸J1を中心とする同一の円周上に配列される。各開放磁石253a,253bは、当該円周に沿って延びる形状を有する。第1開放磁石253aおよび第2開放磁石253bは、当該円周上において一定の隙間を空けて交互に配置される。
【0042】
各開放磁石253a,253bの磁極の向き(磁化方向)は、中心軸J1を中心とする径方向に沿う。例えば、第1開放磁石253aのN極が中心軸J1側に配置され、S極が中心軸J1とは反対側に配置される(後述の
図6参照)。また、第2開放磁石253bのS極が中心軸J1側に配置され、N極が中心軸J1とは反対側に配置される。複数の第1開放磁石253aは、図示省略の環状部材により互いに連結され、複数の第2開放磁石253bも、図示省略の環状部材により互いに連結される。
【0043】
回転停止位置で停止した対向板部21を上下方向に沿って見た場合に(
図5参照)、複数の第1開放磁石253aは、複数の第1回動磁石251aの中心軸J1側近傍に配置され、複数の第2開放磁石253bは、複数の第2回動磁石251bの中心軸J1側近傍に配置される。
図1の状態では、複数の第1開放磁石253aおよび複数の第2開放磁石253bは、対向板部21の下面212から十分に離れた位置(以下、「離間位置」という。)に配置される。離間位置に配置された第1および第2開放磁石253a,253bは、第1および第2回動磁石251a,251bに対して磁気的な影響を与えない。
【0044】
第1磁石昇降機構254aおよび第2磁石昇降機構254bは、対向板部21の下方に設けられる。第1磁石昇降機構254aは、エアシリンダを有し、エアシリンダのピストンロッドの先端に複数の第1開放磁石253aが取り付けられる。第1磁石昇降機構254aが、ピストンロッドを上昇させることにより、
図1中に二点鎖線で示すように、複数の第1開放磁石253aが対向板部21の下面212に近接した位置(以下、「近接位置」という。)に配置される。これにより、対向板部21が回転停止位置で停止している場合、
図6に示すように、複数の第1開放磁石253aが、複数の第1回動磁石251aの中心軸J1側近傍に配置される。
【0045】
図6の状態では、第1回動磁石251aと第1開放磁石253aとの間の磁気的吸引力が、第1回動磁石251aと第1閉塞磁石252aとの間の磁気的吸引力よりも大きくなり、第1回動磁石251aのN極が中心軸J1側に配置され、S極が中心軸J1とは反対側に配置される。これにより、第1回動磁石251aが取り付けられたチャックピン231a、すなわち、第1チャックピン群23aのチャックピン231aでは、チャック回動軸J2を中心とする角度位置が、
図6に示す開放位置となる。
図6の例では、チャックピン231aが開放位置となる状態において、第1回動磁石251aの磁極の向きは、中心軸J1を中心とする径方向に対して傾いている(第2回動磁石251bにおいて同様)。第1磁石昇降機構254aが、ピストンロッドを下降させると、第1開放磁石253aが第1回動磁石251aから下方に離間し、チャックピン231aにおける角度位置が保持位置に戻される。なお、第1磁石昇降機構254aは、モータ等を用いて第1回動磁石251aを昇降する機構であってもよい(第2磁石昇降機構254bにおいて同様)。
【0046】
同様に、第2磁石昇降機構254bは、エアシリンダを有し、エアシリンダのピストンロッドの先端に複数の第2開放磁石253bが取り付けられる。第2磁石昇降機構254bが、ピストンロッドを上昇させることにより、
図1中に二点鎖線で示すように、複数の第2開放磁石253bが対向板部21の下面212に近接した近接位置に配置される。これにより、対向板部21が回転停止位置で停止している場合、
図6に示すように、複数の第2開放磁石253bが、複数の第2回動磁石251bの中心軸J1側近傍に配置される。
【0047】
図6の状態では、第2回動磁石251bと第2開放磁石253bとの間の磁気的吸引力が、第2回動磁石251bと第2閉塞磁石252bとの間の磁気的吸引力よりも大きくなり、第2回動磁石251bのS極が中心軸J1側に配置され、N極が中心軸J1とは反対側に配置される。これにより、第2回動磁石251bが取り付けられたチャックピン231b、すなわち、第2チャックピン群23bのチャックピン231bでは、チャック回動軸J2を中心とする角度位置が、
図6に示す開放位置となる。第2磁石昇降機構254bが、ピストンロッドを下降させると、第2開放磁石253bが第2回動磁石251bから下方に離間し、チャックピン231bにおける角度位置が保持位置に戻される。
【0048】
図7は、周方向に沿って見たチャックピン231を示す図であり、
図8は、チャックピン231を拡大して示す平面図である。
図7および
図8では、保持位置に配置されたチャックピン231を示している。
図7および
図8を参照した説明では、第1チャックピン群23aのチャックピン231aと第2チャックピン群23bのチャックピン231bとを区別しないため、チャックピン231a,231bを「チャックピン231」と総称する。
【0049】
図7および
図8に示すように、各チャックピン231の上端には、上方に突出する2つの突出部230が設けられる。2つの突出部230は、チャック回動軸J2から周方向にずれた位置に配置される。また、2つの突出部230は、周方向に互いに離間している。このように、2つの突出部230の間に隙間が設けられることにより、後述する基板9の処理の際に、第2主面92に供給された処理液が当該隙間を介して第2主面92から排出される。周方向に沿って見た場合に、2つの突出部230は同じ外形を有する。
【0050】
各突出部230は、チャック当接面232を備える。チャック当接面232は、突出部230における中心軸J1側(
図7および
図8の右側)を向く側面である。既述のように、突出部230は、チャック回動軸J2から周方向にずれた位置に配置されており、チャックピン231の回動により、チャック当接面232は、上下方向に垂直な水平方向に移動可能である。
図7に示すように、チャック当接面232は、上側当接面233と、湾曲当接面234と、下側当接面235とを備える。保持位置に配置されたチャックピン231において、上側当接面233は、中心軸J1側かつ下方を向く平面であり、上方に向かうにしたがって中心軸J1に近づく。すなわち、上側当接面233は、中心軸J1側に向かって上方に傾斜する。例えば、対向板部21の中心軸J1を含むとともに、径方向に沿う面F2(
図8中に一点鎖線で示す。)に対して、上側当接面233は直交する。上側当接面233は、突出部230の上端面に連続する。
図8では、一方の突出部230に対してのみ面F2を示しているが、他方の突出部230についても同様の面が設定可能である。
【0051】
下側当接面235は、中心軸J1側かつ上方を向く平面であり、上側当接面233よりも下方に配置される。下側当接面235は、中心軸J1側に向かって下方に傾斜する。例えば、上記面F2に対して、下側当接面235は直交する。面F2上において、下側当接面235の対向面211に対する傾斜角θ4(
図7参照)は、上側当接面233と対向面211とがなす角度とほぼ同じである。また、下側当接面235の傾斜角θ4は、既述のリフト支持面222の傾斜角θ1(
図3参照)よりも大きい。すなわち、下側当接面235の勾配は、リフト支持面222よりも大きい。
【0052】
湾曲当接面234は、中心軸J1側を向く曲面であり、上側当接面233と下側当接面235との間に配置される。湾曲当接面234は、上側当接面233と下側当接面235とに直接的に連続する。例えば、上記面F2に対して、湾曲当接面234は直交する。面F2上における湾曲当接面234の形状は、基板9の外周端面93の形状にほぼ一致する。チャック当接面232では、上下方向における湾曲当接面234の中央が、中心軸J1から最も離れた位置となる。保持位置に配置されたチャックピン231では、湾曲当接面234の中央と中心軸J1との間の距離が、基板9の半径にほぼ一致する。したがって、
図5のように、複数のチャックピン231が保持位置に配置された状態では、複数のチャックピン231における湾曲当接面234が基板9の外周端面93に当接する。実際には、基板9の外周端面93の上側近傍および下側近傍(後述の上側接続部および下側接続部)もチャック当接面232に当接し、基板9の外周縁94が中心軸J1に向けて押されるとともに、上方および下方にも押される。これにより、チャック部23では、基板9を強固に保持することが可能である。
【0053】
ここで、基板9の外周縁94は、外周端面93と第2主面92とを接続する上側接続部、外周端面93と第1主面91とを接続する下側接続部、並びに、当該外周端面93を含むベベル部である。基板9の直径が300mmである場合、基板9の外周縁94は、例えば外周端面93から中心軸J1側に向かって2mmの幅の環状領域を含む。
【0054】
既述のように各チャック当接面232は、チャック回動軸J2からずれた位置に配置されており、
図8中に二点鎖線で示すように、開放位置に配置されたチャックピン231の各突出部230では、チャック当接面232と中心軸J1との間の距離が、保持位置に配置された状態よりも大きくなる。すなわち、開放位置に配置されたチャックピン231では、湾曲当接面234の中央と中心軸J1との間の距離が、基板9の半径よりも大きくなる。したがって、
図6のように、複数のチャックピン231が開放位置に配置された状態では、複数のチャックピン231における湾曲当接面234が基板9の外周端面93から離間し、基板9の保持が解除される。
【0055】
図9は、対向板部21の下面212を模式的に示す図であり、複数の第1開放磁石253aが近接位置に配置され、かつ、複数の第2開放磁石253bが離間位置に配置された状態を示している。
図9に示す状態では、第1チャックピン群23aの複数のチャックピン231aが開放位置に配置され、第2チャックピン群23bの複数のチャックピン231bが保持位置に配置される。
【0056】
基板回転機構3により対向板部21が中心軸J1を中心として回転する際には、第1回動磁石251a、第2回動磁石251b、第1閉塞磁石252aおよび第2閉塞磁石252bは、対向板部21と共に回転するが、第1開放磁石253aおよび第2開放磁石253bは回転しない。このとき、後述の液処理回転速度での対向板部21の回転により、近接位置で周方向に並ぶ複数の第1開放磁石253aは、中心軸J1を中心とする各第1回動磁石251aの角度位置に依存せず、当該第1回動磁石251aに対して磁気的吸引力を実質的に作用させる。したがって、第1チャックピン群23aの複数のチャックピン231aでは、対向板部21の回転中において開放位置が維持される。また、第2チャックピン群23bの複数のチャックピン231bでは、保持位置が維持され、これらのチャックピン231bにより基板9が保持される。
【0057】
図10は、対向板部21の下面212を模式的に示す図であり、複数の第2開放磁石253bが近接位置に配置され、かつ、複数の第1開放磁石253aが離間位置に配置された状態を示している。
図10に示す状態では、第2チャックピン群23bの複数のチャックピン231bが開放位置に配置され、第1チャックピン群23aの複数のチャックピン231aが保持位置に配置される。
【0058】
また、基板回転機構3により対向板部21が液処理回転速度で回転する際には、近接位置で周方向に並ぶ複数の第2開放磁石253bは、中心軸J1を中心とする各第2回動磁石251bの角度位置に依存せず、当該第2回動磁石251bに対して磁気的吸引力を実質的に作用させる。したがって、第2チャックピン群23bの複数のチャックピン231bでは、対向板部21の回転中において開放位置が維持される。また、第1チャックピン群23aの複数のチャックピン231aでは、保持位置が維持され、これらのチャックピン231aにより基板9が保持される。
【0059】
後述する処理液による基板9の処理では、図示省略の制御部の制御により、チャック切替機構25が、複数の第1開放磁石253aを近接位置に配置し、かつ、複数の第2開放磁石253bを離間位置に配置した状態と、複数の第2開放磁石253bを近接位置に配置し、かつ、複数の第1開放磁石253aを離間位置に配置した状態とを切り替える。これにより、第2チャックピン群23bの複数のチャックピン231bにより基板9を保持する状態と、第1チャックピン群23aの複数のチャックピン231aにより基板9を保持する状態とが切り替えられる。
【0060】
図2に示すように、対向板部21の対向面211には、既述の基準円C1に沿って環状段差部215が形成される。環状段差部215は、基板9の外周縁94よりも内側(中心軸J1側)に配置され、当該外周縁94に沿う。
図1に示すように、環状段差部215の内側における対向面211と基板9の第1主面91との間の距離は、環状段差部215の外側(中心軸J1とは反対側)における対向面211と第1主面91との間の距離よりも大きい。
図4および
図8に示すように、複数のリフトピン221および複数のチャックピン231a,231b(チャックピン231)が基準円C1と重なる位置では、環状段差部215は、複数のリフトピン221および複数のチャックピン231a,231bよりも中心軸J1側に設けられる。
【0061】
既述のように、
図1に示す基板9と対向面211との間の空間には、ガスノズル51から不活性ガスが噴出される。当該空間に供給された不活性ガスは、基板9の外周縁94と対向面211との間の隙間から外側に排出される。このとき、上下方向における基板9と対向面211との間の隙間の幅が、外周縁94において狭くなることにより、外周縁94の全周と対向面211との間の隙間では、不活性ガスがある程度の流量で外側に流れる。これにより、後述する処理液による処理の際に、上方を向く第2主面92に供給された処理液が、下方を向く第1主面91側に回り込むことが抑制される。また、処理液の雰囲気が第1主面91側に回り込むことも抑制される。
【0062】
図11は、基板処理装置1が基板9を処理する流れを示す図である。基板9の処理を開始する際には、処理対象の基板9が基板処理装置1に搬入される。具体的には、まず、ピン昇降機構24により複数のリフトピン221が上昇し、
図3中に二点鎖線で示す上位置に配置される。また、チャック切替機構25では、複数の第1開放磁石253aおよび複数の第2開放磁石253bが近接位置に配置され、複数のチャックピン231a,231bが開放位置に配置される。外部の搬送機構では、第1主面91が下方を向き、第2主面92が上方を向いた状態で、基板9がハンド部に載置されており、当該搬送機構により基板9が対向板部21の上方に配置される。そして、搬送機構がハンド部を下降させることにより、
図3中に二点鎖線で示すように、基板9がハンド部から複数のリフトピン221に受け渡される(ステップS11)。これにより、基板9の外周縁94が、複数のリフト支持面222により下方から支持される。典型的には、複数のリフトピン221は、基板9の外周縁94とのみ接触する。好ましくは、各リフト支持面222の角部223が、外周縁94とほぼ点接触する。
【0063】
ハンド部からリフト部22に基板9を受け渡す際に、仮に、ハンド部上の基板9の中心が、中心軸J1からずれている場合でも、基板9の外周端面93がリフト案内面224と当接することにより、基板9の中心が、中心軸J1に近づけられる。すなわち、基板9の偏心が調整される。このとき、外周端面93は、例えば、リフト案内面224の角部225と接触する。
図2の例では、中心軸J1に対して、基板9の中心が中心軸J1に垂直ないずれの方向にずれている場合でも、周方向に等間隔で配列された6個のリフトピン221により、基板9の中心を、中心軸J1に精度よく近づけることが可能である。基板保持部2では、ハンド部が対向板部21の上方から退避した後、ピン昇降機構24により複数のリフトピン221が下降し、
図3中に実線で示す下位置に配置される。
【0064】
続いて、チャック切替機構25が、複数の第1開放磁石253aおよび複数の第2開放磁石253bを離間位置に配置することにより、複数のチャックピン231a,231bが開放位置から保持位置に移動(回動)する。各チャックピン231a,231bにおける開放位置から保持位置への移動では、まず、複数のリフト支持面222により支持された基板9の外周縁94が、
図7に示す下側当接面235に当接し、続いて、中心軸J1側へと向かう下側当接面235に案内されて基板9が上方に僅かに移動する。そして、基板9の外周端面93が、リフト支持面222よりも上方に位置する湾曲当接面234に当接する。これにより、
図12に示すように、基板9を複数のリフト支持面222の全てから上方に離間させた状態で、複数のチャックピン231a,231bにより基板9が水平に保持される(ステップS12)。典型的には、複数のチャックピン231a,231bは、基板9の外周縁94とのみ接触する。
【0065】
第1主面91が下方を向き、第2主面92が上方を向いた状態で、基板9が基板保持部2に保持されると、
図1に示す不活性ガス供給部5により、基板9と対向面211との間の空間への不活性ガスの供給が開始される(ステップS13)。また、基板回転機構3により、液処理回転速度(回転数)での基板9の回転が開始される(ステップS14)。基板9は、水平状態で対向板部21と共に回転する。液処理回転速度は、例えば300~1500rpmである。
【0066】
続いて、処理液供給部4による基板9の第2主面92への処理液の供給が開始される(ステップS15)。第2主面92では、基板9の回転による遠心力により処理液が基板9の外周縁94に向かって広がり、第2主面92の全体に処理液が供給される。基板9に処理液を供給している間も、第1主面91側への不活性ガスの供給は継続される。処理液供給部4では、例えば、所定の薬液が第2主面92に供給され、その後、純水が供給される。ステップS15では、処理液に加えて、ブラシ等を用いた処理が行われてもよい。また、処理液供給部4では、薬液および純水が異なる液ノズルから吐出されてもよい。
【0067】
一方、チャック切替機構25では、処理液供給部4による処理液の供給に並行して、複数の第1開放磁石253aを近接位置に配置し、かつ、複数の第2開放磁石253bを離間位置に配置した
図9に示す状態と、複数の第2開放磁石253bを近接位置に配置し、かつ、複数の第1開放磁石253aを離間位置に配置した
図10に示す状態とが切り替えられる。
【0068】
具体的には、複数の第1開放磁石253aおよび複数の第2開放磁石253bを離間位置に配置した状態から、複数の第1開放磁石253aのみが近接位置に配置される。これにより、第1チャックピン群23aの複数のチャックピン231aによる基板9の保持が解除され、第2チャックピン群23bの複数のチャックピン231bのみにより基板9が保持される。続いて、複数の第1開放磁石253aを離間位置に移動することにより、複数の第1開放磁石253aおよび複数の第2開放磁石253bを離間位置に配置した状態が形成される。この状態では、第1チャックピン群23aの複数のチャックピン231a、および、第2チャックピン群23bの複数のチャックピン231bにより基板9が保持される。その後、複数の第2開放磁石253bのみが近接位置に配置される。これにより、第2チャックピン群23bの複数のチャックピン231bによる基板9の保持が解除され、第1チャックピン群23aの複数のチャックピン231aのみにより基板9が保持される。
【0069】
このようにして、第1チャックピン群23aの複数のチャックピン231aにより基板9を保持する状態と、第2チャックピン群23bの複数のチャックピン231bにより基板9を保持する状態との切替が繰り返し行われる(ステップS16)。上記切替動作は、第1チャックピン群23aのチャック当接面232と、第2チャックピン群23bのチャック当接面232とを、基板9の外周端面93から交互に離間させる動作として捉えることができる。上記切替動作は、同一種類の処理液を第2主面92に供給する間に、少なくとも1回行われることが好ましい。
【0070】
処理液の供給が停止されると(ステップS17)、基板回転機構3が基板9の回転速度を液処理回転速度よりも高くすることにより、基板9の乾燥処理(スピンドライ)が行われる(ステップS18)。このとき、複数の第1開放磁石253aおよび複数の第2開放磁石253bを離間位置に配置した状態が維持されており、第1チャックピン群23aの複数のチャックピン231a、および、第2チャックピン群23bの複数のチャックピン231bにより、基板9が強固に保持される。
【0071】
乾燥処理が完了すると、基板9の回転が停止される(ステップS19)。また、基板9と対向面211との間への不活性ガスの供給が停止される(ステップS20)。続いて、チャック切替機構25が、複数の第1開放磁石253aおよび複数の第2開放磁石253bを近接位置に配置することにより、複数のチャックピン231a,231bが保持位置から開放位置に移動する。各チャックピン231a,231bにおける保持位置から開放位置への移動では、
図7に示すチャック当接面232が中心軸J1とは反対側へと向かうことにより、下側当接面235に基板9の外周縁94が当接した状態で、基板9が下方に僅かに移動する。そして、基板9の外周縁94が、複数のリフト支持面222に当接する。このようにして、基板保持部2では、チャック部23による基板9の保持が解除されるとともに、リフト部22により基板9が下方から支持される(ステップS21)。
【0072】
その後、ピン昇降機構24により複数のリフトピン221が上昇し、
図3中に二点鎖線で示す上位置に配置される。外部の搬送機構が、基板9の第1主面91と対向板部21との間にハンド部を進入させ、その後、ハンド部を上昇させることにより、基板9が複数のリフトピン221からハンド部に受け渡される(ステップS22)。ハンド部上の基板9は、外部へと搬出される。以上により、基板処理装置1における基板9の処理が完了する。
【0073】
以上に説明したように、基板処理装置1では、パターンが形成された第1主面91を下方に向けた状態で基板9を保持しつつ、上方を向く第2主面92に対して処理液による処理が行われる。この場合に、外部の搬送機構との間における基板9の受け渡しの際には、リフト部22の複数のリフト支持面222により基板9の外周縁94が下方から支持される。また、チャック部23の複数のチャック当接面232が、リフト部22に支持される基板9の外周端面93に当接して、基板9が保持される。これにより、第1主面91の外周縁94近傍におけるパターンの損傷を抑制することができる。また、基板9を複数のリフト支持面222の全てから上方に離間させた状態で、基板9がチャック部23により保持されるため、リフト支持面222と第1主面91との間に処理液が溜まることが抑制される。
【0074】
チャック部23では、複数のチャック当接面232のうち一部のチャック当接面232を基板9の外周端面93から離間させつつ、残りのチャック当接面232を外周端面93に当接させた状態で、基板9を保持可能であり、第2主面92に処理液を供給している間に、チャック切替機構25により、外周端面93から離間させるチャック当接面232が切り替えられる。これにより、基板9の外周縁94における処理液の痕(正確には、チャックピン231a,231bが当接する位置と、他の位置との処理結果の差であり、ピンモードとも呼ばれる。)の発生を抑制することができる。
【0075】
基板保持部2では、チャック部23が基板9を保持した状態において、複数のチャック当接面232における基板9よりも下側の部位(
図7では、下側当接面235)の勾配が、複数のリフト支持面222よりも大きい。これにより、チャックピン231a,231bと第1主面91との間の隙間に処理液が溜まることを抑制することができる。また、当該隙間に処理液が溜まった場合でも、基板9の外周端面93から離間させるチャック当接面232の切替により、当該隙間の処理液を排出することができる。その結果、基板9の外周縁94において処理液の痕が発生することをより確実に抑制することができる。
【0076】
ところで、穴部213内においてリフトピン221を対向面211よりも下方まで下降させて、第1主面91とリフトピン221との間の隙間に処理液が溜まることを防止することが考えられる。しかしながら、この場合、当該穴部213において処理液が溜まってしまい、乾燥処理等において第1主面91に当該処理液が付着する可能性がある。これに対し、基板処理装置1では、チャック部23が基板9を保持している状態において、複数のリフトピン221が対向面211から突出しているため、穴部213に処理液が溜まることが防止される。また、各リフト支持面222では、基板9の支持時に、外周縁94と当接する位置近傍から周方向に延びる排液溝228が形成される。これにより、リフトピン221が対向面211から突出している状態においても、リフト支持面222と基板9との間に処理液が溜まることをより確実に防止することができる。
【0077】
また、複数のリフトピン221が、複数のリフト支持面222に対して中心軸J1とは反対側に連続するとともに、複数のリフト支持面222よりも勾配が大きい複数のリフト案内面224をそれぞれ有する。これにより、外部の搬送機構との間における基板9の受け渡しの際に、複数のリフト案内面224が、基板9の外周端面93と当接することにより、基板9の中心が中心軸J1に近づけられる。このように、複数のリフトピン221により基板9の位置が調整されることにより、基板9を保持する際における、チャック当接面232の移動量を小さくしつつ、チャック部23により基板9をより確実に保持することができる。
【0078】
基板処理装置1では、基板9の第1主面91と対向板部21との間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部5が設けられる。これにより、第2主面92に処理液を供給する際に、処理液が第1主面91側に回り込むことを抑制することができる。また、対向面211が、基板9の外周縁94に沿って形成される環状段差部215を備え、環状段差部215の外側における対向面211と基板9との間の距離が、環状段差部215の内側における対向面211と基板9との間の距離よりも小さい。このように、基板9の外周縁94近傍と対向面211との間の隙間が狭いことにより、基板9の外周縁94近傍における不活性ガスの流速を増大することができ、処理液が第1主面91側に回り込むことをより確実に抑制することができる。
【0079】
基板処理装置1では、対向面211において、環状段差部215が、中心軸J1を中心とする基準円C1に沿って形成される。基準円C1は、複数のチャックピン231a,231bおよび複数のリフトピン221と重なるため、チャックピン231a,231bおよびリフトピン221の側面を環状段差部215の一部とすることも考えられる。しかしながら、この場合、環状段差部215の一部となるチャックピン231a,231bの側面と、穴部213の内周面との間の隙間が、環状段差部215の内側に向かって開口する。リフトピン221においても同様である。その結果、基板9の外周縁94近傍における不活性ガスの流れに大きな乱れが生じ、この影響により、処理液が第1主面91側に回り込む可能性がある。
【0080】
これに対し、基板処理装置1では、基準円C1がチャックピン231a,231bおよびリフトピン221と重なる位置において、環状段差部215が、チャックピン231a,231bおよびリフトピン221よりも中心軸J1側に設けられる。これにより、上述のような不活性ガスの流れの乱れを防止することができ、処理液が第1主面91側に回り込むことを、より確実に抑制することができる。なお、上下方向のみに移動する複数のリフトピン221をさらに小型化する等して、複数のリフトピン221を基準円C1よりも外側に配置することも考えられる。この場合、複数のチャックピン231a,231bのみが基準円C1に重なる。したがって、基板処理装置1では、少なくとも複数のチャックピンが基準円C1に重なる場合に、環状段差部215が、当該複数のチャックピン231a,231bよりも中心軸J1側に設けられることが好ましい。
【0081】
上記基板処理装置1では様々な変形が可能である。
【0082】
上記実施の形態では、6個のリフトピン221が設けられるが、基板9の外周縁を下方から支持するという観点では、リフトピン221の個数は3以上であればよい。また、既述のように、複数のリフトピン221のリフト案内面224により、外部の搬送機構との間における基板9の受け渡しの際に、基板9の中心が中心軸J1に近づけられる。この場合に、中心軸J1に垂直な様々な方向に関して、基板9の中心を精度よく中心軸J1に近づけるという観点では、リフト部22が、周方向に等間隔に配置される4以上のリフトピン221を含むことが好ましい。
【0083】
第1チャックピン群23aにより基板9を保持する状態と、第2チャックピン群23bにより基板9を保持する状態とを切り替えるチャック切替機構25は、他の構成により実現されてもよい。また、周方向に配列される複数の(例えば、5以上の)チャックピンのチャック当接面232において、1つのチャック当接面232を基板9の外周端面93から離間させつつ、残りのチャック当接面232を外周端面93に当接させた状態で基板9が保持されてもよい。この場合も、外周端面93から離間させる当該1つのチャック当接面232を順次切り替えることにより、基板9の外周縁94における処理液の痕の発生を抑制することが可能となる。例えば、対向板部21の内部において、各チャックピンに対してモータを設けることにより、このような動作が可能となる。この場合に、対向板部21の内部に蓄電池が設けられてもよい。
【0084】
図3および
図4に示すリフト支持面222およびリフト案内面224の形状、並びに、
図7および
図8に示すチャック当接面232の形状は一例に過ぎず、適宜変更されてよい。また、基板処理装置1の設計によっては、対向面211における環状段差部215が省略されてもよい。
【0085】
基板処理装置1において処理が行われる基板は半導体基板には限定されず、ガラス基板や他の基板であってもよい。また、基板処理装置1が、円板状とは異なる外形の基板の処理に用いられてもよい。
【0086】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0087】
1 基板処理装置
2 基板保持部
3 基板回転機構
4 処理液供給部
5 不活性ガス供給部
9 基板
21 対向板部
22 リフト部
23 チャック部
25 チャック切替機構
51 ガスノズル
91 (基板の)第1主面
92 (基板の)第2主面
93 (基板の)外周端面
94 (基板の)外周縁
211 対向面
215 環状段差部
221 リフトピン
222 リフト支持面
224 リフト案内面
228 排液溝
231,231a,231b チャックピン
232 チャック当接面
C1 基準円
J1 中心軸
S11~S22 ステップ