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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】薄葉紙入り収納箱
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/08 20060101AFI20230522BHJP
   A47K 10/42 20060101ALI20230522BHJP
   A47K 10/20 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
B65D83/08 B
A47K10/42 B
A47K10/20 A
A47K10/20 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018205955
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020070072
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-09-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 創
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-261355(JP,A)
【文献】特開2000-053176(JP,A)
【文献】特開2014-105020(JP,A)
【文献】特開2005-225562(JP,A)
【文献】特開2008-162623(JP,A)
【文献】特開昭61-93069(JP,A)
【文献】国際公開第2011/018832(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/08
A47K 10/20-10/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポップアップ方式で折り畳まれた薄葉紙と、該薄葉紙を収容する直方体の収納箱とからなり、前記収納箱の上面に設けられた開裂用ミシン目に沿って蓋部を取り除くことによって露出する開口部から前記薄葉紙を取り出す薄葉紙入り収納箱であって、
前記開口部が、前記上面の中心から長方形の4つの角に向かって延在する長手開口部分を有してなり、
前記開口部における前記上面の中心から前記長手開口部分の延在方向の端までの長さが、前記上面における前記中心から前記角までの長さの70%以上90%以下であり、
前記長手開口部分の幅が10mm以上30mm以下であり、
前記上面の面積に対する前記開口部の割合が、15%以上50%以下であり、
隣り合う2つの前記長手開口部分によって構成される4つの自由端部のうち、前記上面の長辺方向の端部に向かって凸状である2つの前記自由端部の曲率半径が、100cm以上140cm以下であり、
前記上面の長辺方向における2つの前記自由端部間の距離が、5mm以上30mm以下である薄葉紙入り収納箱。
【請求項2】
前記収納箱の原紙坪量が、260g/m以上380g/m以下である請求項1記載の薄葉紙入り収納箱。
【請求項3】
隣り合う2つの前記長手開口部分によって構成される4つの自由端部の角が、R形状である請求項1又は2記載の薄葉紙入り収納箱。
【請求項4】
前記収納箱の長辺方向の長さが160mm以上250mm以下であり、短辺方向の長さが100mm以上120mm以下である請求項1からいずれか1項記載の薄葉紙入り収納箱。
【請求項5】
薄葉紙占有率が、80%以上95%以下である請求項1からいずれか1項記載の薄葉紙入り収納箱。
【請求項6】
薄葉紙充填率が、3.5g/mm以上5.5g/mm以下である請求項1からいずれか1項記載の薄葉紙入り収納箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄葉紙入り収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄葉紙が紙等の収容箱(収納箱)に収容されたティッシュ収納箱は、軽量化及びコンパクト化が進められている。生産者にとっては、収納箱の生産コスト、製品輸送コストを削減することができ、消費者にとっては、商品購入時の持ち帰り作業の簡易化、及び、家での保管スペースの削減等が可能となる。
ところで、薄葉紙収納箱には薄葉紙の取出し口にフィルムが設けられているが、ごみの分別化により、フィルムを収納箱から外して捨てる必要がある。そこで、近年は、取出し口のフィルムレス化が進んでいる。
また、同じサイズの箱でも薄葉紙が多く入った大容量の商品が好まれている。
上記の傾向から、できるだけ小さいフィルムレス収納箱に、できるだけ多くの薄葉紙が入った商品が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-53176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コンパクト収納箱に薄葉紙を多く詰めた「薄葉紙充填率」の高い製品は、薄葉紙を1組取り出す際、次の1組に挟まれた部分がなめらかに出てきにくく、薄葉紙が破れやすいという問題がある。また、できるだけ底面積の小さい収納箱に、できるだけ面積の広い薄葉紙を詰めた「薄葉紙占有率」の高い製品も、上記同様の問題がある。
また、フィルムレスの取出し口は、一般に、略長方形又はやや膨らんだ長方形であり、収納箱の上面に形成された開裂用ミシン目を開封することで現れる。このような取出し口は、端に開裂用ミシン目の凹凸があるため、その凹凸と薄葉紙との摩擦によって、薄葉紙を取り出す際に薄葉紙が破れやすいという問題がある。
【0005】
一方で、取出し口にフィルムがないと、中身の薄葉紙が少なくなった場合、薄葉紙を支持するものがないため、薄葉紙が収納箱の内部に落ちてしまう、ドロップバックという現象が生じる。
さらに、従来の長方形の取出し口では、大容量化した場合、収納箱の上面の4角近傍において、上部の数組の薄葉紙が圧迫されており、取り出しにくい、又は破れるという問題がある。この問題の解決を図るために、取出し口を収納箱の端近傍まで形成することが考えられるが、収納箱の端近傍まで取出し口を形成すると、取出し口を塞いでいる蓋部を取り除くときに、取出し口の大きさ以上に収納箱を破ってしまうという可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、薄葉紙がフィルムレス収納箱に収容された薄葉紙入り収納箱において、蓋部開封時に収納箱が破れにくく、薄葉紙を、破れることなく滑らかに取り出すことができ、ドロップバックが生じにくい薄葉紙入り収納箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、鋭意検討を行った結果、収納箱の取出し口を特定の形状とすることにより、フィルムレス収納箱から薄葉紙を破れることなく滑らかに取り出すことができることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ポップアップ方式で折り畳まれた薄葉紙と、該薄葉紙を収容する直方体の収納箱とからなり、前記収納箱の上面に設けられた開裂用ミシン目に沿って蓋部を取り除くことによって露出する開口部から前記薄葉紙を取り出す薄葉紙入り収納箱であって、前記開口部が、前記上面の中心から長方形の4つの角に向かって延在する長手開口部分を有してなり、前記開口部における前記上面の中心から前記長手開口部分の延在方向の端までの長さが、前記上面における前記中心から前記角までの長さの70%以上90%以下であり、前記長手開口部分の幅が10mm以上30mm以下である薄葉紙入り収納箱。
ここで、「長手開口部分の幅」とは、長手開口部分の最大幅を示す部分での幅を意味する。
【0009】
前記収納箱の原紙坪量は、260g/m以上380g/m以下であることが好ましい。
【0010】
前記上面の面積に対する前記開口部の割合は、15%以上50%以下であることが好ましい。
【0011】
隣り合う2つの前記長手開口部分によって構成される4つの自由端部の角は、R形状であることが好ましい。
【0012】
前記4つの自由端部のうち、前記上面の長辺方向の端部に向かって凸状である2つの前記自由端部の曲率半径は、100cm以上140cm以下であることが好ましい。
【0013】
前記上面の長辺方向における2つの前記自由端部間の距離は、5mm以上30mm以下であることが好ましい。
ここで、自由端部間の距離とは、最短距離を意味する。
【0014】
前記収納箱の長辺方向の長さは160mm以上250mm以下であり、短辺方向の長さは100mm以上120mm以下であることが好ましい。
【0015】
薄葉紙占有率は、80%以上95%以下であることが好ましい。
ここで、薄葉紙占有率とは、「薄葉紙の面積/2/収納箱の底面積」で求められる値を意味する。薄葉紙の面積とは、収納箱に収容する前(折り畳む前)の薄葉紙の面積を意味する。
【0016】
薄葉紙充填率は、3.5g/mm以上5.5g/mm以下であることが好ましい。
ここで、薄葉紙充填率とは、「収容された薄葉紙の質量(g)/収納箱の高さ(mm)」で求められる値を意味する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、薄葉紙がフィルムレスの収納箱に収容された薄葉紙入り収納箱において、蓋部開封時に収納箱が破れにくく、薄葉紙を、破れることなく滑らかに取り出すことができ、かつドロップバックが生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の薄葉紙入り収納箱の一実施形態を示す斜視図ある。
図2】一実施形態の収納箱から薄葉紙を取り出した状態を示す斜視図である。
図3】本発明における収納箱の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明の実施形態の説明の全体を通して、同じ要素には同じ符号を付している。
【0020】
[薄葉紙入り収納箱]
図2に示すように、本発明の薄葉紙入り収納箱10は、ポップアップ方式で折り畳まれた薄葉紙20と、薄葉紙20を収容する直方体の収納箱11とからなる。
収納箱11の上面11aに設けられた開裂用ミシン目12に沿って蓋部13を取り除くことによって露出する開口部14(図2参照)から薄葉紙20を取り出すものである。
【0021】
開口部14は、図3に示すように、収納箱11の上面11aの中心Oから長方形の4つの角(A、B、C、D)に向かって延在する長手開口部分(14a、14b、14c、14d)を有してなるものである。
開口部14における上面11aの中心Oから長手開口部分(14a、14b、14c、14d)の延在方向の端(a、b、c、d)までの長さL14が、上面11aにおける中心Oから角(A、B、C、D)までの長さL11の70%以上90%以下であり、長手開口部分(14a、14b、14c、14d)の幅W14が10mm以上30mm以下である。
ここで、「長手開口部分の幅W14」とは、長手開口部分の最大幅を示す部分での幅を意味する。
【0022】
(収納箱)
本発明の薄葉紙入り収納箱10における収納箱11は、紙製の直方体である。
-収納箱のサイズ-
図1に示すように、収納箱11の長辺の長さLは、160mm以上250mm以下であることが好ましく、180mm以上240mm以下であることがより好ましい。
また、収納箱11の短辺の長さW図1中Y方向)は、100mm以上120mm以下であることが好ましく、105mm以上115mm以下であることがより好ましい。
またさらに、収納箱11の高さHは、35mm以上65mm以下であることが好ましく、40mm以上50mm以下であることがより好ましい。
長辺の長さL及び短辺の長さWの好ましい組み合わせは、長辺の長さLが160mm以上250mm以下であり、短辺方向の長さWが100mm以上120mm以下である。
【0023】
-取出し口-
収納箱11は、上面11aには、薄葉紙20を取り出す開口部14が設けられている。開口部14は、図3に示すように、上面11aの中心Oから長方形の4つの角(A、B、C、D)に向かって延在する長手開口部分(14a、14b、14c、14d)を有してなる。
図2に示すように、開口部14における上面11aの中心Oから長手開口部分(14a、14b、14c、14d)の延在方向の端(a、b、c、d)までの長さL14は、上面11aにおける中心Oから角(A、B、C、D)までの長さL11の70%以上90%以下である。
薄葉紙20を大容量化すると、収納箱11の上面11aの角(A、B、C、D)と長手開口部分(14a、14b、14c、14d)の延在方向の端(a、b、c、d)との間、すなわち、図3に符号16で示す領域において、薄葉紙20が収納箱11の上面11aに圧迫されて取り出しにくい。しかしながら、長さL14が上記範囲であることにより、大容量化しても、収納箱11の上面11aの角(A、B、C、D)で薄葉紙20が圧迫されることがないため、薄葉紙20を滑らかに取り出すことができ、破れを防止することができる。
【0024】
また、長手開口部分(14a、14b、14c、14d)が長すぎると、収納箱11の上面11aの4角(A、B、C、D)近傍において、収納箱の上面11aの角(A、B、C、D)と長手開口部分(14a、14b、14c、14d)の延在方向の端(a、b、c、d)までの距離L図3参照)が小さくなる。距離Lが小さすぎると、開裂用ミシン目12を開封して、蓋部13の一部を摘まんで引き上げる際に、領域16の収納箱が破れ易いが、長さL14が上記範囲であることにより、収納箱が破れにくいという利点がある。
長さL14は、上面11aにおける中心Oから角(A、B、C、D)までの長さL11の72%以上88%以下であることが好ましく、75%以上85%以下であることがより好ましい。
【0025】
開口部14の長手開口部分(14a、14b、14c、14d)の幅W14は、10mm以上30mm以下である。幅W14が10mm以上30mm以下であることにより、薄葉紙20を垂直方向に引き出すと、薄葉紙20の端が長手開口部分(14a、14b、14c、14d)のいくつかを通りながら引き出されるため、薄葉紙20が開口部の開裂用ミシン目12に引っ掛かることがないので、取り出しやすく、破れを防止することができる。
幅W14は、12mm以上28mm以下であることが好ましく、15mm以上25mm以下であることがより好ましい。
【0026】
また、上面11aの面積(L×W)に対する開口部14の割合は、15%以上50%以下であることが好ましく、20%以上40%以下であることがより好ましい。開口部14の割合が上記範囲であることにより、薄葉紙を取り出しやすく、破れを防止することができる。
【0027】
隣り合う2つの長手開口部分(14a、14b、14c、14d)によって構成される4つの自由端部の角(15a、15b、15c、15d)は、R形状であることが好ましい。
さらに、4つの自由端部のうち、上面11aの長辺方向Xの端部に向かって凸状である2つの自由端部(15b及び15d)の曲率半径は、100cm以上140cm以下であることが好ましく、105cm以上130cm以下がより好ましい。2つの自由端部(15b及び15d)の曲率半径が、上記範囲であることにより、薄葉紙20を破れることなく取出し易く、また、次の組の薄葉紙20を、自由端部が支持する態様となるので、垂直方向に起立させることができ、掴み易い。
【0028】
上面11aの長辺方向Xにおける2つの自由端部間の距離、すなわち、自由端部15bと15d間の距離W15は、5mm以上30mm以下であることが好ましく、7mm以上20mm以下がより好ましい。自由端部間の距離W15が、上記範囲であることにより、薄葉紙20を、破れることなく取り出し易い。また、取り出した薄葉紙20の次の組の薄葉紙20を、その2つの自由端部(15b、15d)間で、起立した状態に保持することができるため、収納箱11の中の薄葉紙20の量が減ってもドロップバックすることがない。
【0029】
-坪量-
収納箱11の坪量は、260g/m以上380g/m以下であることが好ましく、270g/m以上360g/m以下であることがより好ましく、280g/m以上340g/m以下であることが更に好ましい。収納箱11の坪量を上記の範囲内のものとすることにより、上面11aの長辺方向Xの端部に向かって凸状である2つの自由端部(15b及び15d)が、薄葉紙を取り出す際に適度にしなり、薄葉紙の取り出しやすさが良化し、破れやすさが低減する。また、収納箱11の強度を維持して収納箱11を潰れにくくできるとともに、収納箱11の製函性も良好に維持される。
なお、製函性とは、収納箱1を二つ折りにした状態から四角柱状の筒体に変形させる際の起函しやすさや、起函後に収納箱11に薄葉紙20の積層体を収容(充填)する際、短辺側フラップ及び高さ側フラップを折り重ねる際の開口の封緘しやすさをいう。
なお、収納箱11の坪量は、JIS P 8124に基づいて測定する。
【0030】
-密度-
収納箱11の密度は、0.70g/cm以上1.00g/cm以下であることが好ましく、0.75g/cm以上1.00g/cm以下であることがより好ましく、0.80g/cm以上0.95g/cm以下であることが最も好ましい。収納箱11の密度が上記の範囲内であることにより、収納箱11の蓋部13をミシン目12に沿って開封する際、領域16の収納箱が破れにくく、また、収納箱11用の紙型に罫線(折り曲げ線)を入れ易くすることができ、製箱性を良好に維持することができる。
なお、密度は、JIS P 8118に基づいて測定する。
【0031】
(薄葉紙)
-紙厚、坪量-
本発明の薄葉紙20における、紙厚は、0.40mm/10枚以上0.80mm/10枚以下であり、0.42mm/10枚以上0.70mm/10枚以下であることが好ましく、0.45mm/10枚以上0.80mm/10枚以下であることがより好ましい。なお、上記の紙厚は、1プライのシートを10枚(2プライのシートを5組)重ねたときの紙厚を示す。
【0032】
また、本発明の薄葉紙20における、シート1プライあたりの坪量は、9.0g/m以上16.0g/m以下であり、9.5g/m以上14.0g/m以下であることが好ましく、10.0g/m以上13.0g/m以下であることがより好ましい。薄葉紙20の紙厚やシート1プライあたりの坪量を上記の範囲内のものとすることにより、柔らかさとボリューム感及び収納箱11のコンパクトさとが両立可能なものとなる。また、薄葉紙20を収納箱11から取り出す際、破れにくく取り出しやすい。なお、上記の坪量及び紙厚は、薄葉紙20自体のものであって、薬液が塗布された状態の薄葉紙20についての坪量及び紙厚を意味する。
【0033】
-TS7-
本発明の薄葉紙20は、ティッシュソフトネス測定装置TSA上のソフトウェアにて自動的に取得した、6500Hzを含むスペクトルの極大ピークの強度(TS7)が10.0dBVrms以上15.0dBVrms以下であることが好ましく、10.5dBVrms以上14.5dBVrms以下であることがより好ましく、11.0dBVrms以上14.0dBVrms以下であることが更に好ましい。このTS7は、薄葉紙20の柔らかさの指標であり、TS7が上記の範囲内のものとなることにより、薄葉紙20の柔らかさと強度(破れにくさ)がバランスよく維持される。
【0034】
ティッシュソフトネス測定装置TSAを使用したTS7の測定方法や、これに用いられる測定装置については、例えば、特開2013-236904号公報に詳細に記載されている。
【0035】
-比容積-
本発明の薄葉紙20の比容積は、1組あたり3.0cm/g以上6.0cm/g以下であることが好ましく、4.0cm/g以上5.8cm/g以下であることがより好ましく、4.5cm/g以上5.5cm/g以下であることが更に好ましい。薄葉紙20の比容積を上記の範囲内のものとすることにより、ふんわり感、柔らかさ、嵩高さがバランスよく維持され、滑らかさが良好なものとなり、薄葉紙20を収納箱11から取り出す際の摩擦が低減し、破れにくく取り出しやすい。比容積は、例えば、坪量や紙厚を調整することにより、調整することができる。
【0036】
-引き出し方向の直角方向の強度(DMDT)-
本発明の薄葉紙20は、JIS P 8113に基づく乾燥時の縦方向の引張強さ(引張り速度300mm/分で測定)DMDT(Dry Machine Direction Tensile strength)が3.0N/25mm以上6.0N/25mm以下であることが好ましく、3.5N/25mm以上5.5N/25mm以下であることがより好ましく、3.8N/25mm以上5.3N/25mm以下であることが更に好ましい。DMDTを上記の範囲にすることで、柔らかさが良好になり、薄葉紙20を収納箱11から取り出す際、破れにくく取り出しやすい。また、生産時にMD(Machine Direction)方向に破れにくくなる。
【0037】
-引き出し方向の強度(DCDT)-
本発明の薄葉紙20は、乾燥時の横方向の引張強さ(引張り速度300mm/分で測定)DCDT(Dry Cross Direction Tensile strength)が0.8N/25mm以上2.0N/25mm以下であることが好ましく、1.0N/25mm以上1.8N/25mm以下であることがより好ましく、1.1N/25mm以上1.7N/25mm以下であることが更に好ましい。DCDTを上記の範囲にすることで、薄葉紙20の引き出し時に破れにくくなる。
【0038】
-DMDT測定時の引張破断伸び-
本発明の薄葉紙20は、薬液の塗工後のDMDT測定時の引張破断伸び(以下、「縦伸び」とも称する)が8.0%以上18.0%以下であることが好ましく、8.5%以上17.2%以下であることがより好ましく、9.5%以上15.2%以下であることが更に好ましい。ここで、縦伸びが低いと薄葉紙20が破れやすくなり、高いと紙厚が高くなって収納箱11がコンパクトになり難い。この点、上記のような範囲の縦伸びを実現することで、薄葉紙20が破れやすくなることを抑制しつつ、収納箱11のコンパクト化を図ることができる。
【0039】
なお、上記のような範囲の縦伸びを実現するためには、原紙のクレープ率を高くすることが有利となる。例えば、原紙のクレープ率は、15%以上36%以下であることが好ましく、18%以上32%以下であることがより好ましく、21%以上28%以下であることが更に好ましい。
【0040】
-薬液-
本発明の薄葉紙20は、薬液を含有してもよい。薬液としては、水性成分と油性成分とを含むものであり、さらに、水を含んでいることが好ましい。なお、別の態様では、薬液としては、水性成分及び油性成分のいずれか一方だけを含むこととしてもよい。
【0041】
-水性成分-
水性成分としては、多価アルコール(2価以上の水酸基を有するアルコール)を挙げることができる。より具体的には、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等を挙げることができる。なお、上記の多価アルコールは、1種類を配合しても、2種類以上配合してもよい。
【0042】
-油性成分-
油性成分としては、各種シリコーン油、流動パラフィン、鉱物油、ワックス等を挙げることができる。これらの成分は、1種類を配合しても、2種類以上配合してもよい。これらの成分は、薄葉紙20の滑らかさに寄与する。本発明においては、特に、この油性成分がシリコーン油であることが好ましく、アミノ変性シリコーン油であることがより好ましい。
【0043】
-薬液含有量(ローション含有量)-
本発明の薄葉紙20中の薬液含有量は、11質量%以上19質量%以下であることが好ましく、13質量%以上17質量%以下であることがより好ましく、14質量%以上16質量%以下であることが更に好ましい。
【0044】
また、本発明の薄葉紙20は、1プライあたりの薬液含有量が、1.7g/m以上3.7g/m以下であることが好ましく、2.0g/m以上3.2g/m以下であることがより好ましく、2.3g/m以上2.9g/m以下であることが更に好ましい。
【0045】
薬液含有量を上記の範囲内のものとすることにより、薄葉紙20の柔らかさ、滑らかさ及びしっとり感が良好なものとなるとともに、強度(破れにくさ)が良好に維持される。
【0046】
なお、薬液含有量は、次の測定方法により求める。薄葉紙20を5g採取し、乾燥機(105℃)で120分乾燥させ、その後、デシケーターで30分放冷し、質量を測定する。このときの測定質量をm1とする。次に、質量を測定した薄葉紙20及び抽出溶媒(アセトン:エタノール=1:1)150mlを用いて4時間、ソックスレー抽出を行う。得られた抽出物を湯浴上で加熱濃縮し、乾燥機(105℃)で90分乾燥させ、その後デシケーターで30分放冷し、質量を測定する。このときの測定質量をm2とする。そして、得られた2つの測定質量m1、m2を用いて、m2/m1×100(%)を薬液含有量(ローション含有量[%])とする。また、1プライあたりの坪量×ローション含有量=薬液含有量(ローション含有量)(g/m)とする。
【0047】
-原料-
薄葉紙20を構成する2プライのシートは、パルプを主成分とするものであり、好ましくは、50質量%以上のパルプを含有する。薄葉紙20の製造に使用できるパルプとしては、木材パルプ、古紙パルプ、非木材パルプが挙げられるが、本発明における薄葉紙20は、パルプとして木材パルプ100%から成るものであってもよく、木材パルプの他に、古紙パルプや非木材パルプを含んでいてもよい。パルプ以外の成分としては、填料、合成繊維、天然繊維等を挙げることができる。目標とする品質を得るためには、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)10質量%以上40質量%以下と、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)60質量%以上90質量%以下とからなる木材パルプを原料とすることが好ましく、NBKP:15質量%以上35質量%以下と、LBKP:65質量%以上85質量%以下とからなる木材パルプを原料とすることがより好ましく、NBKP:20質量%以上30質量%以下と、LBKP:70質量%以上80質量%以下とからなる木材パルプを原料とすることが更に好ましい。
【0048】
上記LBKPの材種としては、ユーカリ属グランディス及びユーカリグロビュラスに代表される、フトモモ科ユーカリ属から製造されるパルプが好ましい。また、上記のパルプ比率の木材パルプ100質量部に対し、古紙パルプを50質量部程度まで含有させてもよい。古紙パルプは品質のバラツキが大きく、配合割合が増えると製品の品質、特に柔らかさに大きく影響するため、木材パルプに対する配合量を30質量部以下とすることが好ましく、15質量部以下とすることがより好ましく、5質量部以下とすることが更に好ましく、古紙パルプを配合しないことが最も好ましい。古紙パルプとしてはミルク収納箱等の紙製液体飲料容器由来が好ましい。
【0049】
なお、薄葉紙20に適正な強度を確保するため、通常の手段で原料配合した後、パルプ繊維の叩解処理にて強度調整を行うことができる。目標の品質を得るための叩解処理としては、種箱原料のろ水度(csf)が350ml以上650ml以下、好ましくは400ml以上600ml以下、より好ましくは450ml以上550ml以下にすることが好ましい。なお、乾燥紙力増強剤を使用してもよく、湿潤紙力増強剤を使用することが好ましい。
上記のパルプ配合、ろ水度に調整することで、本発明のように、薄葉紙20の組数が多くても収納箱高さをコンパクト化し、触感を良好とする中で、一定の範囲のローション含有量にしたときに薄葉紙20の触感を良好にでき、コンパクトな収納箱に組数が多いクリップを挿入してもスネーク状態になりにくくなる。
【0050】
-薄葉紙のシート幅-
本発明の薄葉紙20のシート幅L20図1参照)は、160mm以上250mm以下であることが好ましく、180mm以上240mm以下であることがより好ましく、200mm以上230mm以下であることが更に好ましい。
なお、本発明の薄葉紙20の短辺方向のシート長(折りたたみ前の状態又は折られた薄葉紙20を広げた状態での、Y方向における寸法)は、150mm以上240mm以下であることが好ましく、160mm以上230mm以下であることがより好ましく、180mm以上220mm以下であることが更に好ましい。シート幅L20とシート長を上記範囲にすることにより、本発明の収納箱高さの収納箱11に、組数の多い本発明の薄葉紙20のクリップを挿入する際に適したシート幅と長さになり、スネーク状態と引き出し性が良好になる。
【0051】
-薄葉紙占有率-
本発明において、薄葉紙占有率は、80%以上95%以下であることが好ましく、85%以上93%以下がより好ましい。薄葉紙占有率が上記範囲であることにより、収納箱の底面積がコンパクトでありながら、破れることなく、滑らかにティシュペーパーを取り出すことができる。
【0052】
-薄葉紙充填率-
本発明において、薄葉紙充填率は、3.5g/mm以上5.5g/mm以下が好ましく、3.8g/mm以上5.2g/mm以下がより好ましい。薄葉紙充填率が上記範囲であることにより、高さの低いコンパクトな収納箱に大容量のティシュペーパーを詰めても、ティッシュペーパーが収納箱の天面から圧迫される圧力が小さく、ティッシュペーパーを破れることなく、滑らかに取り出すことができる。
【実施例
【0053】
[実施例及び比較例]
薄葉紙の一例である、以下の特性を有するティッシュペーパー(以下、「ティッシュ」と略する)を製造した。次に、表1に示す特性を有する、紙製の収納箱に、ティッシュの引き出し方向がCD方向となるようにマルチスタンド式インターフォルダにて所定の組数で積層して収容した。
(薄葉紙)
坪量:10.4g/m
紙厚:0.55mm/10枚
TS7:13.0dBVrms
比容積:5.3cm/g
DMDT:4.8N/25mm
DCDT:1.5N/25mm
薬液:塗布なし
【0054】
[評価]
以下の項目について官能評価を行った。
(蓋部開封時の収納箱の破れやすさ)
モニター10人により、蓋部を開封した時の収納箱の破れやすさを、以下の評価基準で評価した。
A:10人全員が破れる心配はないと評価した
B:収納箱は破れなかったが、やや不安を感じる人が1~2名であった
C:収納箱が破れた人が1名以上いた
【0055】
(薄葉紙の取り出しやすさ)
モニター10人により、1組目のティッシュの取り出しやすさを、以下の評価基準で評価した。
A:10人全員がつかみやすく取り出しやすいと評価した
B:10人中3人以上が問題なく取り出せたと評価し、それ以外の人がつかみやすく取出しやすいと評価した
C:3名以上が取り出しづらいと評価した(それ以外の人の評価に関わらない)
【0056】
(薄葉紙取り出し時の破れやすさ)
モニター1人が、各実施例及び比較例につき4収納箱ずつ、引き出し動作を最後の組まで行い、以下の評価基準で評価した。
A:最後まで使っても破れなかった
B:最後まで使うと破れが1収納箱につき1~2回発生した
C:最後まで使うと3回以上破れた
【0057】
(ドロップバックの頻度)
モニター1人が、各実施例及び比較例につき4収納箱ずつ、引き出し動作を最後の組まで行い、以下の評価基準で評価した。
A:ドロップバックが1度も起こらなかった
B:1収納箱につき1~2回起こった
C:1収納箱につき3回以上起こった
【0058】
【表1】
【0059】
表1に示すように、本発明の薄葉紙入り収納箱は、蓋部開封時の収納箱の破れやすさ、薄葉紙の取り出しやすさ、薄葉紙の取り出し時の破れやすさ、ドロップバックの頻度の全て評価項目で、良好な結果を得ることができた。
【符号の説明】
【0060】
10 薄葉紙入り収納箱
11 収納箱
11a 上面
12 開裂用ミシン目
13 蓋部
14 開口部
14a、14b、14c、14d 長手開口部分
15a、15b、15c、15d 自由端部の角
20 薄葉紙
A、B、C、D 角
a、b、c、d 長手開口部分の延在方向の端
O 上面の中心
収納箱の長辺の長さ
収納箱の短辺の長さ
収納箱の高さ
11 上面の中心から角までの長さ
14 上面の中心から長手開口部分の延在方向の端までの長さ
14 長手開口部分の幅
15 上面の長辺方向における2つの自由端部間の距離
20 薄葉紙のシート幅
図1
図2
図3