(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】収穫作業機
(51)【国際特許分類】
A01B 69/02 20060101AFI20230522BHJP
A01F 15/08 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
A01B69/02 Z
A01F15/08 R
(21)【出願番号】P 2018235607
(22)【出願日】2018-12-17
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIアグリテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫛谷 陽一
(72)【発明者】
【氏名】原田 伸也
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-041406(JP,U)
【文献】特開平05-197421(JP,A)
【文献】特開平01-005413(JP,A)
【文献】特開昭56-045105(JP,A)
【文献】特開2017-012134(JP,A)
【文献】特開平07-222508(JP,A)
【文献】米国特許第04345659(US,A)
【文献】実公昭51-13390(JP,Y2)
【文献】特開2014-186723(JP,A)
【文献】特開2018-99042(JP,A)
【文献】米国特許第3395771(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/02
A01F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マークを圃場の地表面に付すマーキング装置を設けた収穫作業機。
【請求項2】
前記マークは、石灰等の土壌改良剤、着色物質、電磁波反射材および/または棒である請求項1記載の収穫作業機。
【請求項3】
前記マークは、連続的または離散的に圃場の地表面に付されている請求項1または2記載の収穫作業機。
【請求項4】
前記マークは、前記収穫作業機の後方または側方の圃場の地表面に付される請求項1~3のいずれか1項記載の収穫作業機。
【請求項5】
前記収穫作業機は、集草機、穀類・果菜類・葉菜類または根菜類用ハーベスタまたはロールベーラである請求項1~4のいずれか1項記載の収穫作業機。
【請求項6】
前記マークは、収穫作業機の進行軌跡を表すマークである請求項1~5のいずれか1項記載の収穫作業機。
【請求項7】
前記収穫作業機が集草機であり、前記マーキング装置は、集草列と集草列の間に前記進行軌跡を表す前記マークを付す請求項
6に記載の収穫作業機。
【請求項8】
収穫作業機が圃場を往復する際に、進行軌跡を表すマークを往路、復路で分けて列となったマーク(以下、「マーク列」という。)の本数を作業開始時からカウントし、前記カウント数を記憶する装置および/または送信する装置を設けたことを特徴とする請求項2~7のいずれか1項に記載の収穫作業機。
【請求項9】
請求項8記載の収穫作業機において、
圃場の作業領域に前記マーク列が等間隔に付されていると仮定し、前記カウント数から推定される前記マーク列の推定位置求め、地図上の作業領域に前記マーク列を重ね合わせる装置へと、前記カウント数を送る装置を設けた収
穫作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫作業機の進行軌跡を表すマークを圃場の地表面に付す収穫作業機に関する。該付されたマークは、収穫作業機が処理し圃場に放置した収穫物を後処理するための収穫物処理作業機の運行を容易にするために使用される。
【背景技術】
【0002】
従来、収穫作業機が処理した収穫物を後処理するため、収穫物処理作業機を無人操縦したり、あるいは搭乗者の負担を軽くするため操向を自動化する努力が行われてきた。
【0003】
収穫作業機が集草機である場合を例にとると、集草列に沿って収穫物処理作業機であるロールベーラが走行しながらロールベールを円柱状に成形し圃場に放出してゆく。収穫物処理作業機を無人走行させるために、GPSにより位置特定を行うことが、特許文献1[0103]に記載されているが、GPSによる位置特定装置は高価である。また、ロールベーラから放出されたロールベールは転がるためGPS座標とズレが生じる。そして、国土地理院は太陽フレアによる電離層の乱れによって、GPS測位データが乱れることを報告しているように、作業を中断せざるをえないこともあった。しかも、収穫作業機と収穫物処理作業機の両機にGPSを搭載する必要があり、著しくコストを上昇させていた。
【0004】
収穫物処理作業機に画像認識装置を取り付け収穫物の位置特定することも考えられるが、画像認識装置の視野の範囲でしか収穫物の位置特定ができず、取りこぼしが生じる。また、圃場に高低差があると、死角が生まれ画像認識装置だけでは無人化や自動化は困難であり、圃場全体の収穫物の位置情報を何らかの形で入力する必要があった。
【0005】
また、特許文献2には、作業装置としてモーアユニットを装備した乗用草刈機の自動操舵手段が記載されているが、未刈地と既刈地との作業境界線を検出して前記乗用草刈機自体の操舵を行うものであった。刈り取りが終了してしまえばすべて既刈地となるから、作業境界線は消失し、乗用草刈機の進行軌跡を他の収穫物処理作業機が追うことはできない技術であった。
【0006】
また、特許文献3には、室内外において、路上や床面に設けられた誘導ラインを検出し、無人走行する車両が記載されており、誘導ラインを検出して操向制御することは周知の技術であった。しかしながら、収穫作業機が稼働する圃場に、誘導ラインを予め設置しておくことは行われていない。圃場は、牧草に覆われ、誘導ラインの検出は困難であり、タインによって刈草を集草したとしても、誘導ラインがうまく露出するとは限らないし、タインの駆動や耕起により、切れるか消失するため、その都度誘導ラインを設ける必要がある。
【0007】
さらに、収穫作業機の進行軌跡は、例えば、収穫作業機の機種が変われば変化するし、毎年同じ位置を進行するとは限らないから、特許文献3に記載のように毎年使えるような予め誘導ラインを設けることは非現実的であった。その都度手間をかけて、誘導ラインを圃場の地表面に描く専用作業機を使用し誘導ラインを描く前作業が必要となる。誘導ラインを検出して操向制御することが周知技術であろうとも、収穫処理作業機にそのような手間をかけてまで、該周知技術を適用しようなどとは誰も思わなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-12134号公報
【文献】特開2018-97526号公報
【文献】特開2010-282393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
収穫作業機が収穫し圃場に放置された収穫物を、収穫物処理作業機が処理するには収穫物の位置特定手段が用いられるが、GPS等の位置特定手段は高価であり位置ズレなど誤差が生じる問題があった。
【0010】
本発明は、収穫作業機が収穫し圃場に放置された収穫物に対し後処理する収穫物処理作業機が、該収穫物にアクセスできるように操向制御するため、収穫作業機の進行軌跡を表すマーク(以下、「マーク」と略称する。)を圃場の地表面に付すことができる収穫作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、マークを圃場の地表面に付すマーキング装置を設けた収穫作業機とすることで、課題の解決を図った。
【0012】
収穫作業機の進行軌跡に沿って収穫物処理作業機を操向制御するには、進行軌跡の位置座標を取得する必要がある。本発明は、進行軌跡の厳密な位置座標を取得せずともマーキング装置5という単純な手段で圃場の地表面に付けられたマークにより、収穫物処理作業機を操向制御できるようにすることで、GPS等の高価な位置特定手段を不要とした。
【0013】
ここで、マーク列(
図10参照)とは、前記マークを、往路および復路で分けて、列状となったマーク(以下、「マーク列」という。)をいう。そして、マーク列生成手段は、各マーク列と識別子を対応付けたマーク列情報を生成する。これにより、圃場にある多数のマーク列を区別できるようになる。マーク列生成手段は、マーク列情報を収穫物処理作業機またはマーク列特定装置が受け取ることができるなら、どこに設けてもよく、例えば、収穫作業機、収穫物処理作業機、ネットワーク等のいずれかでもよい。収穫物処理作業機またはマーク列特定装置が受け取ったマーク列情報は、収穫物処理作業機が作業を開始する際、圃場からの画像等により検出されたマーク列と対応を取るのに使われる。マーク列特定装置は、圃場からの画像等から、実際に圃場に存在する多数のマーク列のうち、どのマーク列で作業を行っているかを特定する機能を有し、収穫物処理作業機が無人化された場合、圃場のどの位置で作業しているかを特定する機能や作業すべきマーク列を探す機能を有し、走行制御するのに役立つ。
【0014】
収穫作業機が送信したマーク列数のカウント(マーク列情報)を収穫物処理作業機が受信するようにすれば、複数台の収穫物処理作業機が無人で作業するとしても、例えば偶数番号のマーク列を第1の収穫物処理作業機が、奇数番号のマーク列を第2の収穫物処理作業機が作業するなどして、複雑な制御装置を必要とすることなく、複数台の収穫物処理作業機の割振りを予め決めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、収穫作業機の進行軌跡を表す圃場の地表面に付されたマークだけで、収穫物処理作業機が収穫物にアクセスすることができ、GPS等の精密で高価な電子機器を不要にできる。
【0016】
また、マークを検出するマーク検出器は単純で安価な装置で足り、収穫物は、収穫作業機の進行軌跡上またはその周辺に存在するため、圃場に付されたマークに追随して収穫物処理作業機が進行すれば、必ず収穫物を発見でき、マークだけで滞りなく後処理作業が行える。
【0017】
収穫作業機が往復する際に示されるマークを往路で1本とカウントし、復路で1本とカウントし、これを作業開始時から連続してカウントした総カウント数を、記憶または送信する。略平行のマーク列が圃場に描かれることとなるから、マーク列に付された番号(マーク列情報)で、圃場の位置を大まかに特定することができる。
【0018】
さらに、収穫物処理作業機が収穫物を運ぶため一旦作業を中断し移動したとしても、作業中断時のマーク列の番号を収穫物処理作業機が記憶しておけば、確実に作業中断時のマーク列に復帰でき、作業を確実に再開できる。
【0019】
本発明は、以上のように、収穫物処理作業機が収穫物にアクセスするためのマークを提供できる、きわめて有用な収穫作業機である。
【0020】
また、マークを圃場に付すマーキング装置は既存の収穫作業機に外付けで付けることができる点でも、コスト的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】集草列11を作成中の収穫作業機(集草機)を示す側面図である。
【
図2】集草列11作成中の収穫作業機(集草機)を示す平面図である。
【
図3】集草列11と集草列11を作った収穫作業機(集草機)の進行軌跡を表すマーク20を示す平面図である。
【
図4】集草列11からロールベール51を作成する収穫物処理作業機(ロールベーラ50)の作業を示す側面図である。
【
図5】集草列11からロールベール51を作成する収穫物処理作業機(ロールベーラ50)の作業を示す平面図である。
【
図6】マークの本数をカウントするフローチャート図である。
【
図7】根菜類用ハーベスタにおいて、コンテナが搭載される昇降荷台61を持ち上げた状態の側面図である。
【
図8】根菜類用ハーベスタにおいて、コンテナが搭載される昇降荷台61を、コンテナを圃場に放置する位置に下ろした斜視図である。
【
図9A】マーク列認識装置兼収穫物位置認識装置71を設けたラッピングマシン80の側面図である。
【
図9B】マーク列認識装置兼収穫物位置認識装置71を設けたラッピングマシン80の正面図である。
【
図9C】マーク列認識装置兼収穫物位置認識装置71を設けたラッピングマシン80の平面図である。
【
図10】圃場地図とマーク列93を重ね合わせ、マーク列識別子(番号)94を付した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の収穫作業機は、収穫作業に一部でもたずさわる農作業機であればすべて含むが、特に、
(1)収穫作業を行い、圃場に収穫物を放置する収穫作業機による作業
(2)圃場に放置された収穫物を処理する収穫物処理作業機による作業
という一連の農作業のうち、(1)の作業を受け持つ収穫作業機に関する。
収穫物をコンテナ等に入れ圃場に放置する果菜類・葉菜類・根菜類用ハーベスタ等の収穫物を収穫する作業機や、収穫した穀類を収穫物収納袋等に入れて圃場に放置する収穫作業機(コンバイン)、刈草を集草して集草列を作る集草機、集草機が放置した集草列からロールベールを作り圃場に放置するロールベーラや、ローベールをラッピングして圃場に放置するラッピングマシン等の作業機を含む。
しかし、田植機等の収穫を伴わない移植機は含まない。
【0023】
(第1の実施態様)
図1~
図3は、本発明の収穫作業機に相当する集草機を示す。トラクター1に牽引される集草機は、PTO軸からの動力でローター4を駆動し、タイン3の回転により刈草を中央に集め、コンパクトな集草列11を作成する。
【0024】
また、最後尾には、集草機の進行軌跡を表すマーク20を、集草後の圃場の地表面に付すためのマーキング装置5が搭載されている。
【0025】
図2にあるように、集草前の刈草10を集草機が進行しながら集草列11が形成され、マーキング装置5により集草機の進行軌跡を表すマーク20が圃場の表面に付される。この時、マーク20は、
図3に示すように圃場に付されることになる。すなわち、集草列11は集草機の進行軌跡と完全に並行になるから、マーク20をロールベーラ50(収穫物処理作業機)が追えば、確実に集草列11に沿ってロールベーラ50を走行させることが可能となる。仮に、障害物が圃場にあり、そこを避けて集草機が進んだとしても、集草機の進行軌跡を表すマーク20は、曲がっていようが集草列11に沿って並行に圃場に描かれる。ロールベーラ50はマーク20をマーク検出器40により検出し走行するから、ロールベーラ50が集草列11にアクセスするのに何の支障もない。
【0026】
圃場の端部で集草機(収穫作業機)が旋回するときには、マーク20が付されないように構成できるし、また、旋回しているときにもマーク20が付されるようにも構成できる。
【0027】
マーク20は、
図5にあるように、収穫物処理作業機に相当するロールベーラ50に設けられたマーク検出器40により検出できるものであれば、如何なるものでもよく電磁波反射材や電磁波発信機等であってもかまわない。圃場にマーク20が付されることから、無害なものが好ましい。例えば、土壌と区別できる色の着色物質でよい。土壌改良剤である石灰(白色)そのものも使用可能であるが、さらに石灰に着色物質を加えたものでもよい。加えて、生分解性樹脂でできた棒(ペグ)などでもよく、収穫物処理作業機が有するマーク検出器40により収穫作業機の進行軌跡が検出できるものであれば材質や構造を問わない。
【0028】
また、マーク20は連続して圃場に付される、すなわち、線状に付されると検出が楽にできて好ましいが、必ずしも連続して圃場に付される必要はなく、進行軌跡を再構成できればマーク20の使用量を節約するために離散的に付されてもよい。
【0029】
収穫物処理作業機であるロールベーラ50は、マーク20を検出しながら進めばよく、無人化も可能である。無人化しなくとも、搭乗者の操向作業をアシストでき、作業負担を軽減できる。
【0030】
集草機(収穫作業機)が往復する際に示されるマーク20を往路で1本とカウントし、復路で1本とカウントしこれを作業開始時から連続してカウントした数を、記憶するまたは送信する。カウントはどのようにも行えるが、
図6はその一例である。s1で収穫機作業開始がなされると、s2で作業者はマーキング装置5のスイッチを入れマーキング装置5を始動させる。すると、圃場にマーク20が付され、s3でマーク本数がカウントされる。初期値のnは0に設定されているから、s3においてマーク本数は1本とカウントされる。s4で収穫作業機の旋回が検出されると、作業終了か否かの判断がs5でなされ、作業終了でない(No)であれば、s3に戻りマーク本数のカウントが継続する。s5で作業の終了が判断されるとマーク総本数nが送信される。
また、収穫作業機の作業が終了した後、時間をおいて収穫物処理作業機の作業が始まる等の場合にあっては、s6の前記マーク総本数を一旦収穫作業機に記憶させておき、後でマーク列特定装置を有する収穫物処理作業機へ送信することも可能であるし、収穫作業機に記憶されたマーク総本数を呼び出し表示させ、収穫物処理作業機の搭乗者がマーク総本数を収穫物処理作業機の操作パネルからマーク列特定装置へ入力することも可能である。
【0031】
ロールベーラ50(収穫物処理作業機)が収穫作業機の作業終了を待たずに作業を開始する場合は、s4とs5の間に、マーク本数nをロールベーラ50(収穫物処理作業機)に送信するようにしてもよい。
【0032】
集草機(収穫作業機)またはロールベーラ50(収穫物処理作業機)は、s6で送られたマーク総本数nに基づき、圃場の地表面に付された多数のマーク列93毎に番号などの識別子94(マーク列情報)を付すこともできる。(
図10参照)
【0033】
収穫作業機がマークする際、往路および復路で分けたすべてのマーク列に番号等の識別子94(マーク列情報)を付与すれば、
図10に示すように、該マーク列93につけられた番号等の識別子94により、多数あるマーク列からどの位置にあるマーク列93かを特定できるようになる。
【0034】
多数あるマーク列のどのマーク列93かを特定できる画像処理装置などのマーク列特定装置を設け、マーク列93の番号を認識できるように構成すれば、収穫物処理作業機は、現在どの番号のマーク列93に沿って作業しているのか認識できる。作業開始時に、マーク列特定装置が認識しているマーク列93の番号を、作業者が教えさえすれば、当該マーク列を基準に、後は自動的にどの番号のマーク列93かをマーク列特定装置が自動的に判断する。収穫物処理作業機は、マーク列93の番号を認識し、各々のマーク列93の始点または終点からマークに沿って走行するように自動操縦される。
【0035】
複数台のロールベーラ50(収穫物処理作業機)を同時に使用する場合、奇数番号のマーク列93と偶数番号のマーク列93というように予め割り振りをしておけば、ロールベーラ50を無人化しても複雑な制御装置を必要とすることなく、複数台のロールベーラ50で分担して作業できる。
集草機(収穫作業機)は通例、略等間隔に収穫作業を行うから、その進行軌跡を表すマーク20もまた等間隔に圃場に付されることになる。マーク列93の総本数がわかれば、別途取得した現場の圃場地図とマーク列93を重ね合わせて表示させることもできる。
【0036】
図10は、実際に圃場地図とマーク列93を重ね合わせたものを示している。
【0037】
集草列11は、通例中央が盛り上がっているから、ロールベーラ50をマークに沿って直進させるとロールベール51の中央に刈草が集まり中央が盛り上がった紡錘形のロールベール51となる。そこで、マーク20を検出しながら左右にわずかに蛇行するようにロールベーラ50を進行させると、きれいなロールベール51が形成される。
【0038】
(第2の実施態様)
図4および
図5に示すように、収穫作業機をロールベーラ50とすることもできる。この場合、ラッピングマシン80が収穫物処理作業機となる。ロールベーラ50の進行軌跡上またはその付近には、必ずロールベール51が存在し、
図9A~
図9C記載のラッピングマシン80は、マーク検出器40(図示せず)より、地表面に付されたマークを認識して操向制御され、ロールベーラ50が圃場に付したマーク20を頼りに、ロールベール51を発見できる。
ラッピングマシン80を無人化する場合は、マーク列特定装置に加え、ロールベール51を認識できる画像認識装置などの収穫物位置認識装置をラッピングマシン80に備えれば簡単に無人化できる。ロールベール51は大きく、圃場には他に紛らわしい物体は存在しないので、収穫物位置認識装置により簡単に収穫物の位置を認識できる。
また、第2の実施態様では、支柱上にマーク列特定装置兼収穫物位置認識装置71が設けられており、1つの装置71で、どの番号のマーク列を作業しているのか(
図10参照)収穫物処理作業機は認識しつつ、収穫物位置の認識も行われる。
さらに、コストダウンのため、マーク列特定装置、マーク検出器および収穫物位置認識装置をすべて1つの画像認識装置等で兼用することが可能である。
【0039】
ロールベーラ50は、
図10の1番目のマーク列93にはロールベール51が2個、2番目のマーク列93にはロールベール51が0個等のように、マーク列93毎のロールベール51の個数情報をラッピングマシン80(収穫物処理作業機)に送信してもよい。マーク検出器40によりマーク列93に沿って走行するラッピングマシン80が、当該マーク列93上のすべてのロールベール51を処理したかを、ロールベーラ50から送信されたロールベール51の個数情報によって判断すれば、マーク列93の終点まで走行することなく、隣のマーク列93へ作業を移れる。
【0040】
複数台のラッピングマシン80を使用する場合には、上記第1の実施態様のように、偶数番号または奇数番号のマーク列93のように、予め割り振りすることもできるし、前記マーク列93毎のロールベール51の数を考慮して、複数台のラッピングマシン80に均等な数になるようにマーク列93を割り振ることもできる。
【0041】
(第1および第2の実施態様の変形例)
集草機(収穫作業機)が圃場に付したマークを検出し操向制御する収穫物処理作業機は、ロールベーラ50とラッピングマシン80であってもよい。この場合、ラッピングマシン80とロールベーラ50は、略同じ進行軌跡をたどるため、集草機が付したマーク20を利用して、ロールベーラ50とラッピングマシン80が共に操向制御される。
【0042】
(第3の実施態様)
図7および
図8は、根菜類用ハーベスタ60(収穫作業機)の例である。
図7に記載されているように、収穫された根菜類は、コンベヤ62を介して昇降荷台61に載せた収穫物コンテナ(図示せず)に投入される。満杯になると、
図8のように昇降荷台61を下ろし、根菜類用ハーベスタ60の機台を前後させて、圃場に収穫物コンテナ(図示せず)を放置する。マーキング装置5は図示していないが、適宜な位置にマーキング装置5が設けられており、圃場の地表面にその進行軌跡を表すマーク20を付せば、満杯となった収穫物コンテナを回収する作業機(収穫物処理作業機)がマーク20を検出しながら操向制御されて、回収作業を行う。また、収穫物はコンテナに代えて、収穫物収納袋に入れられて、圃場に放置されるものであってもよい。
根菜用ハーベスタ60に限らず、穀類用、果菜類用または葉菜類用ハーベスタであってもかまわない。
【0043】
(マークの機能)
収穫物処理作業機が有人で操縦されている場合、集草列11を搭乗者が見つける。そして、集草列に沿って圃場に付されたマーク20をマーク検出器40で検出して自動操向制御するので搭乗者の負担を軽減できる。このような作業形態を採るときには、何番目のマーク列93に沿って、作業が行われているか収穫物処理作業機が知る必要はない。
【0044】
ところが、収穫物処理作業機を無人制御したい場合は、何番目のマーク列93を走行しているか収穫物処理作業機が認識する必要がある。収穫作業機が圃場を往復する際に、進行軌跡を表すマーク20を往路、復路で分けて本数を作業開始時からカウントし、該カウントを記憶する装置および/または送信する装置を設けることで、多数のマーク列93の位置関係を決めることができる。収穫物処理作業機にマーク列93を認識できる画像認識装置等のマーク列特定装置を付ければ、どの位置のマーク列93を作業しているのか無人の収穫物処理作業機が判断して走行させることができる。
【0045】
必ずしも、地図とマーク列93を重ね合わせる必要はないが、
図10のように、圃場の作業領域を示す地図とマーク列93を重ね合わせるときには、未収穫領域91を除いた収穫済み領域90に対してマーク列93は等間隔でかつ直線であると仮定して、マーク列93の本数分だけ等間隔に直線のマーク列93が描くようにすることもできる。
【0046】
地図に、圃場の地表面に付された多数のマーク列93に番号等のマーク識別子94(マーク列情報)を付すことで、おおまかな位置の把握が容易になる。
【0047】
マーク検出器40は単純で安価な装置で足り、収穫物は、必ず収穫作業機の進行軌跡上またはその近傍に存在するため、収穫物処理作業機が、マーク20をたどれば必ず収穫物にアクセスできることになる。
【0048】
また、収穫物は前記したように収穫作業機の進行軌跡上にまたはその近傍に存在するので、圃場に高低差がある等の事情により曲線を描いて進むことがあったとしても、問題なく使用できる。
【0049】
さらに、収穫物処理作業機が収穫物を運ぶため一旦作業を中断し移動したとしても、作業中断時のマーク列93の番号を収穫物処理作業機が記憶しておけば、確実に作業中断時のマーク列93に復帰でき、作業を確実に再開できる。
【0050】
(収穫物処理作業機に設けられた検出器および他の装置)
収穫物処理作業機に設けられた検出器は、マーク20に沿って収穫物処理作業機を操向制御するための地表面に付されたマーク20を検出するマーク検出器40であるが、前記したように次の装置を加えることもできる。
(1)ロールベール51、コンテナ、収穫物収納袋等を認識し処理し、それらに収穫物処理作業機がアクセスするのに使用される収穫物位置認識装置
(2)マーク列93の番号等の識別子94を特定するために使用されるマーク列特定装置
【0051】
マーク検出器40は、操向制御をするために地表面のマーク20を検出するから、正確な検出を行うために比較的地表面に近いところに設けてもよい。しかし、地表面に近いと正確な検出が期待できるものの、どうしても検出範囲が狭くなるため地表面から離れたところに設けることで、マーク20を見失うことを防ぐこともできる。
【0052】
マーク検出器40、マーク列特定装置および収穫物位置認識装置は、別体の装置として設けることもできるが、1つの装置で兼用することも可能である。マーク列特定装置および収穫物位置認識装置を1つの装置で兼用した例が、
図9A~
図9Cに記載のマーク列特定装置兼収穫物位置認識装置71である。
【0053】
マーク列特定装置は、多数のマーク列93を認識するために収穫物処理作業機の高い位置に設けることが好ましい。また、マーク列特定装置をドローンに設けて、その情報を収穫物処理作業機が受信できるようにしてもよい。
【0054】
収穫物位置認識装置は、収穫物処理作業機の前方に向けて設けられ、認識するロールベール51、コンテナ、収穫物収納袋等の収穫物の大きさにより、設ける位置は適宜決められる。
【0055】
マーク検出器40がマーク20を見失った場合、マーク列特定装置により、マーク検出器40のマーク検出復帰をアシストするように制御することが好ましい。
【0056】
(地図)
地図は、地図の作製は収穫作業機または収穫物処理作業機が行ってもよいし、収穫作業機のデータをネットワークに接続し、ネットワーク上でまたはネットワークに接続した別途の装置で地図を作成し、収穫物処理作業機へ送っても構わない。
【符号の説明】
【0057】
1 トラクター
3 タイン
4 ローター
5 マーキング装置
10 集草前の刈草
11 集草列
20 進行軌跡を表すマーク
40 マーク検出器
50 ロールベーラ
51 ロールベール
60 根菜類用ハーベスタ
61 昇降荷台
62 コンベヤ
71 マーク列特定装置兼収穫物位置認識装置
80 ラッピングマシン
90 収穫済み領域
91 未収穫領域
93 マーク列
94 マーク列識別子(番号)