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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】フィルタユニット
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20230522BHJP
【FI】
A61M1/00 130
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019081311
(22)【出願日】2019-04-22
(65)【公開番号】P2020175031
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】596170103
【氏名又は名称】株式会社興伸工業
(74)【代理人】
【識別番号】100166589
【弁理士】
【氏名又は名称】植村 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】熊田誠一
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-037992(JP,A)
【文献】特開2008-055100(JP,A)
【文献】特開平05-009960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタを通過した流体を吐出する吐出管路と、フィルタ上部支持面を有する天板部とを備えた上ボディと、
フィルタに流体を導く導入管路と、前記天板部のフィルタ上部支持面に対向して配置されて当該天板部のフィルタ上部支持面との間でシート状のフィルタを挟持するフィルタ下部支持面を有する底板部とを備えた下ボディであって、前記上ボディに対して着脱可能に設けられた下ボディと、
対向して配置された前記上ボディまたは前記下ボディの側面を囲むように、前記上ボディまたは前記下ボディに着脱可能に組み付けられるサイドボディと、
を有して、
前記上ボディと前記下ボディとの間に、前記シート状のフィルタを着脱可能に保持し、
記上ボディが前記天板部を天面とする有天面円筒状、または、前記下ボディが前記底板部を底面とする有底面円筒状に形成されており、
前記上ボディと前記下ボディのうちの一方が、回転止め凸部を有し、
前記上ボディと前記下ボディのうちの他方が、前記一方に対して対向配置された状態で前記回転止め凸部に係合して前記一方に対する相対的な回転運動を抑止する回転止め凹部を有し、
前記サイドボディが、対向配置された前記上ボディおよび前記下ボディに対して相対的な回転運動が可能に設けられた環状のものであり、かつ、
前記サイドボディの回転運動によって、対向配置された前記上ボディおよび前記下ボディに対してそれらを上下方向に互いに押し当てる力を与える回し締め機構の少なくとも一組の対偶が、前記上ボディおよび前記下ボディの少なくとも一方と前記サイドボディとに、それぞれ設けられている
ことを特徴とするフィルタユニット。
【請求項2】
請求項1記載のフィルタユニットにおいて
前記回し締め機構の一組の対偶の一方として、少なくとも部分的に傾斜面または螺旋面を有する傾斜突起部が、前記上ボディおよび前記下ボディのうち少なくとも一方、または、前記サイドボディに設けられており、かつ、
前記回し締め機構の一組の対偶の他方として、前記サイドボディの回転によって前記傾斜突起部の傾斜面または螺旋面に沿って相対的に移動して当該傾斜面または螺旋面に対して前記上ボディおよび前記下ボディを互いに押し当てる力を与える第1突起部と、第2突起部またはフランジ部とが、前記傾斜突起部が前記上ボディと前記下ボディのうち少なくとも一方に設けられている場合には、前記サイドボディに設けられており、前記傾斜突起部が前記サイドボディに設けられている場合には、前記上ボディと前記下ボディのうち少なくとも一方に設けられている
ことを特徴とするフィルタユニット。
【請求項3】
請求項1~2のいずれかに記載のフィルタユニットにおいて、
前記フィルタが、PTFEからなるシート状またはメンブレン状のフィルタである
ことを特徴とするフィルタユニット。
【請求項4】
請求項1~2のいずれかに記載のフィルタユニットにおいて、
当該フィルタユニットが、吸引器に用いられるものである
ことを特徴とするフィルタユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、使い捨ての体液フィルタユニットおよび体液吸引器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005―287520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸引器用のフィルタユニットは一般に、所謂使い捨て式のものが多い。
そのうちでも特に、PTFEフィルタのような薄いシート状のフィルタ乃至メンブレンフィルタを内蔵してなる所謂薄型(または円盤状)のフィルタユニットは、ほとんどが使い捨て方式のものであった。
特にPTFEは、その特質、すなわち気体は容易に通過させるが液体は撥ねつけて透過させない、薄い板にすれば甚だ屈曲性に富んだゴムと金属の中間的物性を有する、耐薬品性・耐熱性に優れる、といった特質が、吸引器等のフィルタユニットに好適である。このため、PTFEフィルタは吸引器用のフィルタユニット用に盛んに用いられるようになっている。
【0005】
しかしながら、上述のような所謂使い捨て式のフィルタユニットは、吸引器用に限らず一般に、次のような技術的不都合を有している。
すなわち、
‐ 1つのフィルタユニットに内蔵されているフィルタと共に、外殻つまり所謂ボディ全体が使い捨てになる。一般にボディはフィルタよりも使用に耐える期間つまり寿命が長いので、そのボディを構成している合成樹脂等のハードウェア資源が無駄になる。
‐ 1つのフィルタユニットに内蔵されているフィルタに例えば異物が絡み付いた場合などには、そのフィルタの本来の寿命は尽きていないにもかかわらず、フィルタユニット全体を捨てなければならない。よって、内蔵されているフィルタ本体とそれを保持しているボディとの両方が、つまりフィルタユニット全体のハードウェア資源が、無駄になる。
‐ フィルタ本体のみを取り替えたくても、それは不可能である。つまり、例えば1つのフィルタユニットに内蔵されているフィルタ本体の所謂番手(肌理)を最適なものに変更したい場合、そのフィルタ本体のみを取り替えたくても、それは不可能なので、フィルタユニット全体を別の(所謂番手の適合した)ものに交換しなくてはならない。また、そのハンドリングが煩雑である等の不都合もある。
【0006】
本発明の目的は、上述のような不都合を解消することのできるフィルタユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明のフィルタユニットは、フィルタを通過した流体を吐出する吐出管路と、フィルタ上部支持面を有する天板部とを備えた上ボディと、フィルタに流体を導く導入管路と、前記天板部のフィルタ上部支持面に対向して配置されて当該天板部のフィルタ上部支持面との間でシート状のフィルタを挟持するフィルタ下部支持面を有する底板部とを備えた下ボディであって、前記上ボディに対して着脱可能に設けられた下ボディと、対向して配置された前記上ボディまたは前記下ボディの側面を囲むように、前記上ボディまたは前記下ボディに着脱可能に組み付けられるサイドボディと、を有して、前記上ボディと前記下ボディとの間に、前記シート状のフィルタを着脱可能に保持する。
(2) 好適には、前記フィルタ上部支持面から所定の距離に亘って離間した位置に前記フィルタを保持すると共に流体の導通路を形成するように設けられた上部支持突条と、前記フィルタ下部支持面から所定の距離に亘って離間した位置に前記フィルタを保持すると共に、前記フィルタを透過させるべき流体の導通路を形成するように設けられた下部支持突条とを有する。
(3) また、好適には、前記上ボディが前記天板部を天面とする有天面円筒状、または、前記下ボディが前記底板部を底面とする有底面円筒状に形成されており、前記上ボディと前記下ボディのうちの一方が、回転止め凸部を有し、前記上ボディと前記下ボディのうちの他方が、前記一方に対して対向配置された状態で前記回転止め凸部に係合して前記一方に対する相対的な回転運動を抑止する回転止め凹部を有し、前記サイドボディが、対向配置された前記上ボディおよび前記下ボディに対して相対的な回転運動が可能に設けられた環状のものであり、かつ、前記サイドボディの回転運動によって、対向配置された前記上ボディおよび前記下ボディに対してそれらを上下方向に互いに押し当てる力を与える回し締め機構の少なくとも一組の対偶が、前記上ボディおよび前記下ボディの少なくとも一方と前記サイドボディとに、それぞれ設けられている。
(4) また、好適には、前記回し締め機構の一組の対偶の一方として、少なくとも部分的に傾斜面または螺旋面を有する傾斜突起部が、前記上ボディおよび前記下ボディのうち少なくとも一方または前記サイドボディに設けられており、かつ、前記回し締め機構の一組の対偶の他方として、前記サイドボディの回転によって前記傾斜突起部の傾斜面または螺旋面に沿って相対的に移動して当該傾斜面または螺旋面に対して前記上ボディおよび前記下ボディを互いに押し当てる力を与える第1突起部と、第2突起部またはフランジ部とが、前記傾斜突起部が前記上ボディと前記下ボディのうち少なくとも一方に設けられている場合には、前記サイドボディに設けられており、前記傾斜突起部が前記サイドボディに設けられている場合には、前記上ボディと前記下ボディのうち少なくとも一方に設けられている。
(5) また、好適には、前記フィルタが、PTFEからなるシート状またはメンブレン状のフィルタである。
(6) また、好適には、当該フィルタユニットは、医療用吸引器に用いられるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フィルタユニットの内部に保持されているフィルタ(本体)を、そのボディに対して簡易に着脱できるようにして、そのフィルタの交換や洗浄等を行うことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るフィルタユニットの主要な構成を分解図として示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係るフィルタユニットの上ボディのフィルタ保持面(図2(a))と下ボディのフィルタ保持面(図2(b))とを示す説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係るフィルタユニットの上ボディと下ボディとを組み付け、それをさらにサイドボディに組み付ける状態を示す説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係るフィルタユニットを斜視図として示す説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係るフィルタユニットの主要な内部構成を断面図として示す説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係るフィルタユニットを装着した吸引瓶を吸引器本体の保持部に保持させた場合の一例を示す説明図である。
図7】本発明の一実施形態に係るフィルタユニットにおける、第1の変形例を示す説明図である。
図8】本発明の一実施形態に係るフィルタユニットにおける、第2の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るフィルタユニットの主要な構成を分解図として示す説明図である。
【0011】
このフィルタユニットは、上ボディ1と、下ボディ2と、サイドボディ3と、シールリング4とを、その主要部として有している。
そして、それら上ボディ1と下ボディ2との間に、例えばPTFEのような材料からなるシート状またはメンブレン状のフィルタ5を着脱可能に保持するように構成されている。
【0012】
さらに詳しくは、次のように構成されている。
上ボディ1は、吐出管路11と、天板部12と、円筒状の側部13とを有する。
吐出管路11は、フィルタ5を通過した流体を、このフィルタユニットからその外部へ吐出する。
天板部12は、フィルタ5の上面を支持するフィルタ上部支持面101(天板部12の裏側の面なので図1では省略し、図2に記載)を有する。天板部12には、吐出管路11が設けられている。
そして、上ボディ1のフィルタ上部支持面101に、側部13の内周面に沿うようにシールリング4が装着される構造となっている。
【0013】
下ボディ2は、導入管路21と、底板部22とを有する。
導入管路21は、フィルタリングを施す対象の流体を、このフィルタユニット内に導入する。
底板部22は、そのフィルタ下部支持面201が上ボディ1の天板部12のフィルタ上部支持面101に対向して配置されて、その天板部12のフィルタ上部支持面101との間にシート状のフィルタ5を保持する。
そして、この下ボディ2の導入管路21には、例えば吸引瓶(図1では省略)に装着される際にその吸引瓶に設けられている装着孔(図示省略)との間での気密性を確保するためのオー・リング(O-ring)6が装着される。
【0014】
サイドボディ3は、上述のようにして対向配置された上ボディ1および下ボディ2の周囲を囲むように、それら上ボディ1および下ボディ2に着脱可能に組み付けられる。
そして、このサイドボディ3を回転させることによって、上ボディ1と下ボディ2とを上下方向に互いに押し当てる力をそれら上ボディ1と下ボディ2とに与えて、それら上ボディ1と下ボディ2とで画定される空間内にフィルタ5を気密または液密に保持するように形成されている。
【0015】
シールリング4は、上ボディ1のフィルタ上部支持面101に、側部13の内周面に沿うように装着される。
このシールリング4によって、上ボディ1と下ボディ2とで画定される空間、つまりこのフィルタユニットの実質的な内部空間が、確実に、気密(または液密)状態に保たれる。
【0016】
図2は、本発明の一実施形態に係るフィルタユニットの上ボディのフィルタ保持面(図2(a))と下ボディのフィルタ保持面(図2(b))とを示す説明図である。
【0017】
図2(a)に示すように、上ボディ1の天板部12のフィルタ上部支持面101には、そのフィルタ上部支持面101から所定の距離に亘って上下方向に離間した位置にフィルタ5を保持すると共に、流体の導通路を形成するように、上部支持突条102が設けられている。
また、図2(b)に示すように、下ボディ2のフィルタ下部支持面201から所定の距離に亘って上下方向に離間した位置にフィルタ5を保持すると共に、そのフィルタ5を透過させるべき流体の導通路を形成するように、下部支持突条202が設けられている。
【0018】
このフィルタユニットには、サイドボディ3の回転運動によって、対向配置された上ボディ1および下ボディ2に対してそれらを上下方向に互いに押し当てる力を与える、回し締め機構7が設けられている。
その回し締め機構7は、より詳細には、次のような構成部位を有して成り立っている。
【0019】
図3は、本発明の一実施形態に係るフィルタユニットの上ボディと下ボディとを組み付けた状態であって、それをさらにサイドボディに組み付けてそのサイドボディを回転させる前段階の状態を示す説明図である。
【0020】
図1および図3に示すように、回し締め機構7の一組の対偶の一方として、部分的に傾斜面711を有する傾斜突起部71が、上ボディ1の側部13に設けられている。
そして、回し締め機構7の一組の対偶の他方として、第1突起部72とフランジ部73とが、サイドボディ3の内周面に設けられている。
すなわち、サイドボディ3の回転によって傾斜突起部71の傾斜面711に沿って第1突起部72が相対的に移動して、その傾斜面711に対して上ボディ1と下ボディ2とを互いに押し当てる力を与えるべく、第1突起部72とフランジ部73とが、サイドボディ3の内周面に設けられている。
【0021】
また、このフィルタユニットには、フィルタ5を挟んで対向配置された状態の上ボディ1と下ボディ2とに対して、相対的にサイドボディ3を回転運動させたときに、そのサイドボディ3の回転に伴う摩擦力などに引き摺られて上ボディ1と下ボディ2とが相対的に回転することを抑止するべく、それら上ボディ1と下ボディ2とに回転止め機構8が設けられている。
その回転止め機構8は、より詳細には、次のような構成部位を有して成り立っている。
図2(a)に示すように、上ボディ1には、回転止め凹部81が設けられている。
また、図2(b)に示すように、下ボディ2には、回転止め凸部82が設けられている。
そして、図3に示したように、回転止め凹部81に回転止め凸部82が噛み合うように、上ボディ1と下ボディ2とを対向配置して組み付けることで、それら回転止め凹部81と回転止め凸部82との噛み合わせによって成り立つ回転止め機構8により、上ボディ1と下ボディ2との相対的な回転が抑止される。
【0022】
このように、回転止め機構8によって、上ボディ1と下ボディ2との相対的な回転が抑止される。
従って、特に所謂メンブレンフィルタやPTFEフィルタのような薄い材質からなるフィルタ5を用いる場合に、そのフィルタ5を挟持する上ボディ1と下ボディ2との相対的な回転に起因して発生する虞のあったフィルタ5の皺や捩れ等の不都合を、回転止め機構8の上述のような作用によって、解消することが可能となる。
【0023】
図4は、本発明の一実施形態に係るフィルタユニットを斜視図として示す説明図である。
【0024】
上述のようにして対向配置して組み付けられた上ボディ1と下ボディ2とを、図3図4に示すように環状のサイドボディ3の環内に落とし込み、サイドボディ3を曲線矢印Rで示した方向に回転させることにより、傾斜突起部71の傾斜面711に沿って第1突起部72が相対的に移動して、上ボディ1を下ボディ2に押し付ける力が、上ボディ1の傾斜突起部71の傾斜面711に対して与えられる。その際、下ボディ2はその底面(下面)の周縁部がサイドボディ3の内周面下端部に設けられたフランジ部73によって下から支えられた状態になっているので、そのフランジ部73が、上ボディ1を下ボディ2に押し付ける力の反作用を担うこととなる。
従って、サイドボディ3を回転させると、対向配置された上ボディ1と下ボディ2は、傾斜突起部71に与えられる下方向への力とその反作用としてフランジ部73から与えられる上方向への力とにより、互いに押し当てられることとなる。
そして、このように対向配置された上ボディ1と下ボディ2とが互いに押し当てられた状態は、サイドボディ3を曲線矢印Rの逆方向に回転させて、両ボディ1、2を互いに押し当てていた力を解除するまで、確実に継続されることとなる。
【0025】
また、サイドボディ3を回転させる際に、そのサイドボディ3の回転の際の摩擦力によって、上ボディ1と下ボディ2とを引き摺って相対的に回転させようとする力が働くが、それら両ボディ1、2には、上述のとおり、回転止め機構8が設けられているので、それら両ボディ1、2の相対的な回転が抑止される。
従って、フィルタ5を挟持する上ボディ1と下ボディ2との相対的な回転に起因して発生する虞のあったフィルタ5の皺や捩れ等の不都合が解消される。
【0026】
このようにして、上ボディ1と下ボディ2とを対向配置し、それらとサイドボディ3とを組み付けて、サイドボディ3を曲線矢印Rの方向に回転させることにより、図4に示すような本実施形態のフィルタユニットが組み立てられ、その内部にフィルタ5を、高い信頼性を以て継続的に、かつ確実に気密または液密に、保持することが可能となる。
また、それとは逆に、サイドボディ3を曲線矢印Rとは逆の方向に回転させることにより、上ボディ1と下ボディ2とサイドボディ3との組み付けが解除される、つまり図4に示すような本実施形態のフィルタユニットが図1に示すように分解されて、その内部に保持されていたフィルタ5を取り出して、例えば新しいものと交換することや、洗浄して再使用することなどが可能となる。
【0027】
図5は、本発明の一実施形態に係るフィルタユニットの主要な内部構成を断面図として示す説明図である。
【0028】
上述のようにして組み立てられたフィルタユニットは、図5に示すように、上ボディ1と下ボディ2とが対向して配置された状態において、フィルタ5を、上部支持突条102と下部支持突条202との間に挟持した状態で、上ボディ1と下ボディ2とによって画定される気密または液密の空間内に保持する。
また、サイドボディ3を図3の曲線矢印Rとは逆方向に回転させると、上ボディ1と下ボディ2との組み付けが解除され、上部支持突条102と下部支持突条202との間からフィルタ5を取り出すことが可能な状態となる。
【0029】
図6は、本発明の一実施形態に係るフィルタユニットを装着した吸引瓶を吸引器に保持させて用いた場合の一例を示す説明図である。なお、この図6では、吸引チューブ等の図示は省略してある。
【0030】
上述のようにして組み立てられた、本実施形態に係るフィルタユニット10は、例えば、吸引器9に用いられる吸引瓶60に装着して使用することができる。
より具体的には、吸引瓶60の瓶本体61の上部に配置された上蓋62の天板部621上に装着して使用される。なお、この場合、吸引瓶60の上蓋62の天板部621には、フィルタユニット10の導入管路21を挿入し固定することが可能に形成された貫通孔(図示省略)が設けられていることが必要であることは勿論である。
【0031】
あるいは、上述のような吸引器への用途以外にも、図示は省略するが、例えば化学分析用、シリンジ用、濾過用など、幅広い分野において、本実施形態に係るフィルタユニットを使用することが可能である。
【0032】
なお、回し締め機構7の一組の対偶の具体的な構成としては、上述の一実施形態で説明した構成のみには限定されない。
上述の一実施形態で説明した上ボディ1の形状と下ボディ2の形状とを、逆にするようにしてもよい。つまり、図示は省略するが、上ボディ1を天板状とし、下ボディ2を有底面円筒状としてもよい。
【0033】
また、図示は省略するが、上述の一実施形態では上ボディ1に設けられていた傾斜突起部71を、フランジ部73と共にサイドボディ3の内周面に設け、かつ、上述の一実施形態ではサイドボディ3に設けられていた第1突起部72を、上ボディ1に設けるようにすることも可能である。
【0034】
また、上述の実施形態では、サイドボディ3の下端部にフランジ部73を設けているが、フランジ部73の代わりに、第2突起部(図示省略)をサイドボディ3の内周面に設けた構造とすることも可能である。
すなわち、図示は省略するが、上ボディ1と下ボディ2とを互いに上下対称な形状とし、その両方に、同じような傾斜面を有する上ボディ側(第1)突起部と下ボディ側(第2)突起部とを、上下対称な形で以て各々設けると共に、それに対する回し締め機構7の対偶として、同じような形状のサイドボディ側第1(上部)突起部とサイドボディ側第2(下部)突起部とを、上下対称な形で以てサイドボディの内周面に設けるようにしてもよい。
この場合、上ボディ側(第1)突起部がその対偶であるサイドボディ側第1(上部)突起部と協働し、下ボディ側(第2)突起部がその対偶であるサイドボディ側第2(下部)突起部と協働して、上ボディ1と下ボディ2とを互いに押し当てる力が、それら両ボディ1、2に与えられることとなる。
【0035】
あるいは、傾斜突起部71は、少なくとも部分的に螺旋面を有する形状または全体的に螺旋状の突起とすることも可能である。
あるいはさらに、第1突起部72も螺旋面を有する形状または螺旋状の突起とすることも可能である。つまり、この場合の回し締め機構7は、あたかも所謂ボルト・アンド・ナット機構のような態様となる。
すなわち、図示は省略するが、円筒状のサイドボディ3の内周面に螺旋状の突起部を設けて、これとフランジ部73とで、回し締め機構7の対偶の一方を構成すると共に、円筒状の上ボディ1の側部13の外周面に、上述のサイドボディ3の螺旋状の突起に適合する螺旋状の突起部を設けて、これを回し締め機構7の対偶の他方の構成とする。
これら両螺旋状の突起部を噛み合わせてサイドボディ3を回転させれば、上ボディ1と下ボディ2とを互いに押し当てる力が、それら両ボディ1、2に与えられることとなる。
【0036】
図7は、本発明の一実施形態に係るフィルタユニットにおける、第1の変形例を示す説明図である。なお、この図7では、上述の一実施形態で説明した構成部位と基本的に同様の機能または形状を有する部位については、図1図6に付したものと同じ符号を付して示してある。
【0037】
この第1の変形例においては、回転止め機構8として、上述の一実施形態とは逆に、下ボディ2に回転止め凹部881が設けられており、上ボディ1に回転止め凸部882が設けられている。
これら回転止め凹部881と回転止め凸部882との噛み合わせによって成り立つ回転止め機構8によっても、上ボディ1と下ボディ2との相対的な回転を抑止することができる。
【0038】
図8は、本発明の一実施形態に係るフィルタユニットにおける、第2の変形例を示す説明図である。なお、この図8では、上述の一実施形態で説明した構成部位と基本的に同様の機能または形状を有する部位については、図1図6に付したものと同じ符号を付して示してある。
【0039】
この第2の変形例は、本発明に係るフィルタユニットの構成を極めて簡略化したものである。
すなわち、図8に示すように、この第2の変形例のフィルタユニットは、上ボディ91と、下ボディ92と、サイドボディ93と、シールリング94a,94bとを、その主要部として有している。
【0040】
より詳しくは、この第2の変形例のフィルタユニットは、フィルタ5を通過した流体を吐出する吐出管路11と、天板部12とを備えた上ボディ91と、フィルタ5を通過させる流体を導入する導入管路21と、天板部12のフィルタ上部支持面101に対向して配置されてその天板部12のフィルタ上部支持面101との間でシート状のフィルタ5を挟持するフィルタ下部支持面201を有する底板部22とを備えた下ボディ92であって、上ボディ1に対して着脱可能に設けられた下ボディ92と、対向して配置された上ボディ91および下ボディ92の側面を囲むように、それら上ボディ91および下ボディ92に着脱可能に組み付けられるサイドボディ93と、シールリング94a,94bと、を有している。
サイドボディ93は、例えば適度な弾力性を有する各種金属、ABS樹脂、ポリエステル樹脂等からなるものとする。
そして、上ボディ91と下ボディ92とサイドボディ93とによって画定される空間内に、シート状のフィルタ5が着脱可能に保持される。
【0041】
この第2の変形例のフィルタユニットでは、サイドボディ93の上端および下端に、それぞれその直径方向中心向きに伸びるフランジ部901bが設けられている。
【0042】
すなわち、上ボディ91のフィルタ上部支持面101に設けられている上部支持突条102と下ボディ92のフィルタ下部支持面201に設けられている下部支持突条202との間にフィルタ5を挟持させ、それら上ボディ91と下ボディ92とを対向配置した状態で、それら上ボディ91および下ボディ92を、サイドボディ93のフランジ部901a自体およびその付け根の部分およびフランジ部901b自体およびその付け根の部分の有する適度な弾力性を利用して、そのサイドボディ93の環内に嵌め込む。
サイドボディ93の環内に嵌め込まれた上ボディ91および下ボディ92は、それらの周縁部がシールリング94a,94bを介してフランジ部901aおよびフランジ部901bによって押え付けられることとなる。
つまり、上ボディ91の外周部は、シールリング94aを介してフランジ部901aに係止されて、上方向への移動が抑止されることとなる。また、下ボディ92の外周部は、シールリング94bを介してフランジ部901bに係止されて、下方向への移動が抑止されることとなる。そして、それら対向配置された両ボディ91、92は、互いに押し当てられて、フィルタ5を挟持した状態で、保持される。それら両ボディ91、92の側面がサイドボディ3およびシールリング94a,94bによって封止されて、それら全ボディ1、2、3により画定される空間が気密または液密の状態となる。
このようにして、上ボディ91と下ボディ92とサイドボディ93とによって形成されるフィルタユニット内に、シート状のフィルタ5を気密または液密の状態で保持することができる。
【0043】
また、フィルタ5を取り出す場合には、サイドボディ93のフランジ部901aおよびフランジ部901bの有する適度な弾力性を利用して、上ボディ91および下ボディ92の周縁部ならびにシールリング94a,94bを、フランジ部901aおよびフランジ部901bによる押さえ付けから解放して、サイドボディ93の外に(上方向または下方向に)取り出すことができる。そして、その取り出した上ボディ91と下ボディ92との間に挟持されていたフィルタ5を取り出すことができる。
【0044】
このような極めて簡易な構成のフィルタユニットでも、フィルタ5を着脱可能とすることができる。
但し、このように極めて簡易な構成の場合、対向配置された上ボディ91と下ボディ92とを上下方向に互いに押し当てる力は、サイドボディ93のフランジ部901aおよびフランジ部901bの弾力性による力のみであり、また、気密性または液密性に関しても、上ボディ91および下ボディ92の周縁部に配置されたシールリング94a,94bの断弾力性によって保たれるだけなので、上述の一実施形態で説明したような回し締め機構7を備えた構成のフィルタユニットと比べると、信頼性・耐久性などの点で劣ることは否定できない。
しかし、その反面、極めて簡易な構成であることから、その製造プロセスが極めて簡易なものとなることや製造コストのさらなる低廉化が図れることなどの利点がある。
【0045】
<実施形態の構成および効果>
(1) 本実施形態に係るフィルタユニットは、フィルタ5を通過した流体を吐出する吐出管路11と、フィルタ上部支持面101を有する天板部12とを備えた上ボディ1と、フィルタ5を通過させる流体を導入する導入管路21と、天板部12のフィルタ上部支持面101に対向して配置されてその天板部12のフィルタ上部支持面101との間でシート状のフィルタ5を挟持するフィルタ下部支持面201を有する底板部22とを備えた下ボディ2であって上ボディ1に対して着脱可能に設けられた下ボディ1と、対向して配置された上ボディ1および下ボディ2の側面を囲むように、それら上ボディ1および下ボディ2に着脱可能に組み付けられるサイドボディ3と、を有して、上ボディ1と下ボディ2との間に、シート状のフィルタ5を着脱可能に保持するように構成されている。
【0046】
このような構成を有することから、フィルタユニットの内部に保持されているフィルタ5を、フィルタユニットに対して簡易に着脱できるようになり、そのフィルタ5を新しいものに交換することや、その取り出したフィルタに洗浄処理を施して再利用することなどが可能となる。
【0047】
(2) また、フィルタ上部支持面101から所定の距離に亘って離間した位置にフィルタ5を保持すると共に流体の導通路を形成するように設けられた上部支持突条102と、フィルタ下部支持面201から所定の距離に亘って離間した位置にフィルタ5を保持すると共にフィルタ5を透過させるべき流体の導通路を形成するように設けられた下部支持突条202と、を有するように構成されている。
【0048】
このような構成を有することから、フィルタ5を透過させるべき流体をフィルタ5の全体(全面積)に亘って効率的に導通させて、そのフィルタ効率を良好なものとすることが可能となる。
【0049】
(3) また、上ボディ1が天板部12を天面とする有天面円筒状、または、下ボディ2が底板部22を底面とする有底面円筒状に形成されており、上ボディ1と下ボディ2のうちの一方が、回転止め凸部82を有し、他方が、一方に対して対向配置された状態で回転止め凸部82に係合して、一方に対する相対的な回転運動を抑止する回転止め凹部81を有し、サイドボディ3が、対向配置された上ボディ1および下ボディ2に対して相対的な回転運動が可能に設けられた環状のものであり、かつ、サイドボディ3の回転運動によって、対向配置された上ボディ1および下ボディ2に対してそれらを上下方向に互いに押し当てる力を与える回し締め機構7の少なくとも一組の対偶が、上ボディ1および下ボディ2の少なくとも一方とサイドボディ3とに、それぞれ設けられている。
【0050】
このような構成、特に回し締め機構7の構成を有することから、フィルタユニットの内部に、フィルタ5を、高い信頼性を以て継続的に、かつ確実に気密または液密に、保持することが可能となる。
また、それと共に、特に回転止め機構8の構成を有することから、所謂メンブレンフィルタやPTFEフィルタのような薄い材質からなるフィルタ5を用いる場合に、そのフィルタ5を挟持する上ボディ1と下ボディ2との相対的な回転に起因して発生する虞のあったフィルタ5の皺や捩れ等の不都合を、解消することが可能となる。
【0051】
(4) また、回し締め機構7の一組の対偶の一方として、少なくとも部分的に傾斜面711または螺旋面を有する傾斜突起部71が、上ボディ1および下ボディ2のうち少なくとも一方、または、サイドボディ3に設けられており、かつ、回し締め機構7の一組の対偶の他方として、サイドボディ3の回転によって傾斜突起部71の傾斜面711または螺旋面に沿って相対的に移動して当該傾斜面711または螺旋面に対して上ボディ1および下ボディ2を互いに押し当てる力を与える第1突起部72と、第2突起部またはフランジ部73とが、傾斜突起部71が上ボディ1と下ボディ2のうち少なくとも一方に設けられている場合には、サイドボディ3に設けられており、傾斜突起部71がサイドボディ3に設けられている場合には、上ボディ1と下ボディ2のうち少なくとも一方に設けられている。
【0052】
このような構成を有することから、フィルタユニットの内部に、フィルタ5を、さらに高い信頼性を以て継続的に、かつさらに確実に気密または液密に、保持することが可能となる。
【0053】
(5) また、フィルタ5が、皺や捩れの生じやすい傾向にあるPTFEからなるフィルタやシート状またはメンブレン状のフィルタである場合に、本実施形態に係るフィルタユニットは特に好適である。
【0054】
(6) また、本実施形態に係るフィルタユニットは、PTFEからなるフィルタやシート状またはメンブレン状のフィルタが用いられることの多い吸引器を用途先とする場合に、特に好適である。
【0055】
<定義等>
- 本発明における「回し締め機構の一組の対偶」の「対偶」とは、機構学で謂うところの「対偶」である。具体的には、上述の実施形態で説明した如く、傾斜突起部71がその「一組の対偶」を構成する一方の対偶要素であり、第1突起部72およびフランジ部73が、他方の対偶要素である。これら一組の対偶要素が協働して、「回し締め機構」が成り立ち、機能することとなる。
【符号の説明】
【0056】
1 上ボディ
2 下ボディ
3 サイドボディ
4 シールリング
5 フィルタ
7 回し締め機構
8 回転止め機構
11 吐出管路
12 天板部
13 側部
71 傾斜突起部
72 第1突起部
73 フランジ部
81 回転止め凹部
82 回転止め凸部
101 フィルタ上部支持面
102 上部支持突条
201 フィルタ下部支持面
202 下部支持突条
711 傾斜面
図1
図2
図3
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図6
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図8