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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】物品の積み込み装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/91 20060101AFI20230522BHJP
   B65G 47/92 20060101ALI20230522BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
B65G47/91 A
B65G47/92 A
B25J19/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019088793
(22)【出願日】2019-05-09
(65)【公開番号】P2020183318
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000137960
【氏名又は名称】株式会社メイキコウ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田口 勉
(72)【発明者】
【氏名】佐野 英仁
(72)【発明者】
【氏名】堀 祐正
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-042090(JP,U)
【文献】特開2009-066684(JP,A)
【文献】特開平03-264288(JP,A)
【文献】特開2013-166197(JP,A)
【文献】特開昭61-131896(JP,A)
【文献】実開平01-097884(JP,U)
【文献】特開平05-246546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/90-47/92
B25J 19/00-19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側の搬送経路と下流側の搬送経路との間に配置されて、前記上流側の搬送経路から前記下流側の搬送経路のコンテナへ物品を積み込む積み込み装置であって、
前記物品を保持する物品保持ハンドと、前記物品保持ハンドを前記上流側の搬送経路と前記下流側の搬送経路との間で移動させるロボットアームを備え、
前記物品保持ハンドは、真空結合部と磁気結合部を介して前記ロボットアームに結合されており、前記真空結合部に対する給気により前記真空結合部による前記物品保持ハンドの前記ロボットアームに対する結合が解除され、前記物品保持ハンドに付加される外力により前記磁気結合部による前記物品保持ハンドの前記ロボットアームに対する結合が解除される構成とされ、
前記物品保持ハンドは、前記真空結合部と前記磁気結合部を介して前記ロボットアームに結合されたハンド本体と、前記物品に当接される真空吸着部を備え、前記真空吸着部は前記ハンド本体に対して前記ハンド本体の前記ロボットアームに対する結合面に直交するX軸方向に相対的に変位可能に支持されており、前記真空吸着部の前記X軸方向の相対変位に基づいて前記真空結合部に給気がなされる積み込み装置。
【請求項2】
請求項1記載の積み込み装置であって、
前記ロボットアームに設けた基台ベースと、前記物品保持ハンドに設けた結合ベースとの間に前記真空結合部と前記磁気結合部が設けられた積み込み装置。
【請求項3】
請求項2記載の積み込み装置であって、
前記基台ベースと、前記結合ベースとの間に、一方の他方に対する相対的な面方向の変位を規制するストッパ部が設けられた積み込み装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の積み込み装置であって、
前記真空吸着部と前記ハンド本体との間に、前記真空吸着部の前記X軸方向の相対位置を保持するためのプランジャと、前記真空吸着部の相対位置の変化を検知するための検知手段を配置した積み込み装置。
【請求項5】
請求項記載の積み込み装置であって、前記検知手段として、機械式開閉バルブを用いた積み込み装置。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば空港ターミナルビルにおいて、航空機の搭乗者の手荷物等の物品を航空機の貨物室まで運搬するコンテナに積み込むための積み込み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばトラック荷室に積み込まれた多数の箱形の物品をひとつづつ把持して荷降ろしする搬送装置として本願出願人の出願に係るものが下記の特許文献1に開示されている。この搬送装置によれば、多数の物品を画像処理手段を用いつつ、ロボットアームの動作によりトラック荷室から荷降ろしすることができ、この種の荷降ろし作業の省力化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-206318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の搬送装置を、例えば空港ターミナルビルにおいて、搭乗者の手荷物をメイクコンベア上から航空機に積み込みまでの搬送経路に適用して省力化を図るには、種々の改良を加える必要がある。
【0005】
本発明は、従来の搬送装置に種々の改良を加えることにより、例えば空港の搬送経路において、手荷物の損傷等を回避しつつ安全にコンテナへの積み込み作業を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの特徴によると、上流側の搬送経路と下流側の搬送経路との間に配置されて、上流側の搬送経路から下流側の搬送経路のコンテナへ物品を積み込む積み込み装置である。積み込み装置は、物品を保持する物品保持ハンドと、物品保持ハンドを上流側の搬送経路と下流側の搬送経路との間で移動させるロボットアームを備えている。物品保持ハンドは、真空結合部と磁気結合部を介してロボットアームに結合されている。真空結合部に対する給気により真空結合部による物品保持ハンドのロボットアームに対する結合が解除され、物品保持ハンドに付加される外力により磁気結合部による物品保持ハンドのロボットアームに対する結合が解除される構成となっている。
【0007】
従って、上流側の搬送経路から下流側の搬送経路のコンテナへの積み込み作業が積み込み装置により行われ、従来の人手を省略して、搬送装置の省力化及び無人化を図ることができる。
【0008】
また、物品保持ハンドは、真空結合部と磁気結合部の双方により、ロボットアームに対して結合状態が維持されることから、真空結合部による吸着力が消失した場合であっても磁気結合部の吸着力により物品保持ハンドのロボットアームに対する結合状態が維持される。仮に、物品保持ハンドのロボットアームに対する結合状態が真空結合部の吸着力のみで達成される場合には、当該吸着力が消失すると、物品保持ハンドがその自重によるモーメントによりロボットアームから分離されて落下する。この点本開示によれば、真空結合部の吸着力に加えて磁気結合部の吸着力が作用していることから、例えば、停電あるいはエア洩れにより真空結合部の吸着力が消失しても磁気結合部の吸着力により物品保持ハンドのロボットアームに対する結合状態が維持される。このことから、例えば空港の手荷物搬送経路において、夜間電力供給が遮断された結果真空結合部に対する真空引きが停止された場合であっても、ロボットアームの先端に物品保持ハンドが支持された状態に維持しておくことができ、その後の積み込み作業の再開を迅速に行うことができる。
【0009】
さらに、物品をコンテナに積み込む段階で、吸着した物品をコンテナ壁部等に衝突させた場合に、衝撃(外力)により物品保持ハンドがロボットアームに対して変位した結果、真空結合部に給気がなされ、かつ磁気結合部の磁力が作用しなくなることで物品保持ハンドのロボットアームに対する結合状態が解除されて分離される。物品がコンテナ壁面等に衝突した場合に、物品保持ハンドがロボットアームから分離されるので、物品の受ける衝撃を抑制することができ、ひいては物品の保護を図ることができる。
【0010】
本開示の他の特徴によると、ロボットアームに設けた基台ベースと、物品保持ハンドに設けた結合ベースとの間に真空結合部と磁気結合部が設けられている。
【0011】
従って、基台ベースと結合ベースが真空結合部と磁気結合部の吸着力により相互に吸着されて、物品保持ハンドがロボットアームに結合されている。真空結合部と磁気結合部の吸着力を解除することで、物品保持ハンドのロボットアームに対する結合状態が解除される。
【0012】
本開示の他の特徴によると、基台ベースと結合ベースとの間に、一方の他方に対する面方向の変位を規制するストッパ部が設けられている。
【0013】
従って、ストッパ部を支点として、結合ベースが基台ベースに対して傾くことで、真空結合部に給気がなされ、また磁気結合部に吸着力が作用しなくなることで、結合ベースと基台ベースとの間の吸着力が解除されて結合ベースが基台ベースから離脱可能となり、ひいては物品保持ハンドのロボットアームに対する結合状態が解除される。
【0014】
本開示の他の特徴によると、物品保持ハンドは、物品に当接される真空吸着部をハンド本体に対して相対的にX軸方向に変位可能に備えている。真空吸着部がX軸方向に相対変位することで真空結合部に給気がなされて、真空結合部による物品保持ハンドのロボットアームに対する結合状態が解除される。
【0015】
従って、真空吸着部による物品の吸着保持状態で、物品が他部位に衝突等して相対的にX軸方向に変位すると、物品保持ハンドにX軸方向の外力が付加されてロボットアームに対する結合状態が解除される。物品保治ハンドのロボットアームに対する結合状態が解除されて、X軸方向の外力に対する物品の保護が図られる。
【0016】
本開示の他の特徴によると、真空吸着部とハンド本体との間に、真空吸着部のX軸方向の相対位置を保持するためのプランジャと、この相対位置の変化を検知するための検知手段を配置した。
【0017】
従って、真空吸着部の通常時の位置がプランジャにより保持される一方、衝撃を受けた場合等の非常時にはプランジャの保持力に抗して真空吸着部がハンド本体に対してX軸方向に変位する。プランジャの保持力に抗して真空吸着部がハンド本体に対してX軸方向に相対変位すると、この相対変位が検知手段で検知される。検知手段で相対変位が検知されたことに基づいて、真空結合部に給気がなされ、従って物品保持ハンドのロボットアームに対する結合状態を解除する構成とすることができる。
【0018】
本開示の他の特徴によると、検知手段として、機械式開閉バルブを用いて真空結合部への給気がなされる。
【0019】
従って、安価且つ簡易な構成で吸着部の相対変位を利用して真空結合部への給気が確実になされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る搬送装置の全体の概略平面図である。
図2】積み込み装置の先端部であって、物品保持ハンドの側面図である。
図3】物品保持ハンドを図2中矢印(III)方向から見た平面図である。
図4図2中(IV)-(IV)線断面矢視図であって、基台ベースの前面図である。
図5】物品保持ハンドを図2中(V)-(V)線矢視図である。
図6図3中(VI)-(VI)線断面矢視図であって、物品保持ハンドの縦断面図である。
図7図2中(VII)矢視図であって、吸着部及びスライド機構の平面図である。
図8図2中(VIII)矢視図であって、吸着部の平面図である。
図9図6中(IX)-(IX)線断面矢視図である。本図は、吸着部及びスライド機構の縦断面図であって、プランジャを通る断面を前方から見た図である。
図10図6中(X)-(X)線断面矢視図である。本図は、吸着部及びスライド機構の縦断面図であって、ホース接続部を通る断面を前方から見た図である。
図11】ハンド支持部のエア回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態を図1図11に基づいて説明する。本実施形態では、空港において搭乗者の手荷物Wを搭乗手続きカウンターから航空機4の貨物室に搬送する搬送経路に用いられる搬送装置1を例示する。本実施形態では、積み込み対象物の物品としてキャスタ付きのキャリアケース(旅行鞄)であって、航空機搭乗者の手荷物を例示する。以下、単に手荷物Wという。図1に示すように本実施形態の搬送装置1は、上流側の搬送経路に相当するメイクコンベヤ2と、複数台のコンテナ3から航空機4の貨物室に至る下流側の搬送経路を備えている。上流側の搬送経路としてのメイクコンベヤ2と下流側の搬送経路としてのコンテナ3との間には、ピッキング装置10とサイズ別コンベヤ30と戻しコンベヤ39と積み込み装置40が配置されている。
【0022】
ピッキング装置10は、手荷物Wを真空吸着により吸着保持する物品保持ハンドと、この物品保持ハンドを手荷物Wの搬送方向と搬送方向に直交する搬送幅方向及び上下方向に変位させる移動装置6を備えている。ピッキング装置10によりメイクコンベヤ2上の手荷物Wが下流側の搬送経路に移載される。
【0023】
図1に示すようにメイクコンベヤ2上では、多数個の手荷物Wが搬送される。多数個の手荷物Wは、図では示されていない搭乗手続きカウンターから搬送コンベヤを経て順次メイクコンベヤ2上に搬送される。メイクコンベヤ2は長円形のループ形状を有しており、その搬送方向は図1中白抜き矢印で示すように反時計回り方向とされている。このため、メイクコンベヤ2の図1において右側では手荷物Wが図示上側へ搬送される(搬送方向前側)。
【0024】
図1において、メイクコンベヤ2のループ形の右側上方に、搬送状態認識手段5が配置されている。搬送状態認識手段5には、2Dカメラや3Dカメラが用いられている。搬送状態認識手段5により、メイクコンベヤ2上を搬送される手荷物Wの大きさ(幅、長さ、高さ(厚さ))や搬送姿勢等に関する情報が得られる。搬送状態認識手段5により得られた手荷物Wに関する情報は、ピッキング装置10側に提供される。これにより、ピッキング装置10は、物品保持ハンドを手荷物Wに同期して搬送方向に前進させつつ手荷物Wに接近させて、その吸着保持がなされる。
【0025】
図1に示すようにピッキング装置10により、手荷物Wが旋回コンベヤ31上に移載される。旋回コンベヤ31は約90°の範囲で旋回可能で、手荷物Wをサイズ別コンベヤ30側若しくは戻しコンベア39側に切り換えて搬送する機能を有している。旋回コンベヤ31の搬送方向がサイズ別コンベヤ30側に切り換わると、手荷物Wがサイズ別コンベヤ30側に搬送される。旋回コンベヤ31の下流側に、延長コンベヤ32を経てリフトコンベヤ32aが配置されている。リフトコンベヤ32aの下流側であって、メイクコンベヤ2を跨いで配置された延長コンベヤ33aを経てカーブコンベヤ33が配置されている。カーブコンベヤ33の下流側に搬入コンベヤ34が配置されている。手荷物Wは、搬入コンベヤ34を経てサイズ別コンベヤ30に搬送される。サイズ別コンベヤ30の下流側に、コンベア付きのトラバーサ20が配置されている。サイズ別コンベア30からトラバーサ20上に移載された手荷物Wが、多関節形のロボットアーム45に物品保持ハンド50を搭載した積み込み装置40によりコンテナ3に積み込まれる。コンテナ3に積み込まれた手荷物Wは航空機4の貨物室に積み込まれる。
【0026】
手荷物Wの主として大きさによりサイズ別コンベヤ30に分配される。サイズ別コンベヤ30は搬入コンベヤ34の停止位置により決定される。サイズ別コンベヤ30は、図1において上側から、小形の手荷物W用のSサイズコンベヤ35と、中形でやや小さめの手荷物W用のM1サイズコンベヤ36と、中形でやや大きめの手荷物W用のM2サイズコンベヤ37と、大形の手荷物W用のLサイズコンベヤ38との4段階に分けられている。搬入コンベヤ34は、任意のサイズコンベヤ35,36,37,38の搬送方向後側に停止して、カーブコンベヤ33から受け取った手荷物Wをその大きさに適合するサイズコンベヤ35,36,37,38に搬入する。
【0027】
各サイズコンベヤ35,36,37,38の搬送方向前部には滞留用ストッパ35a,36a,37a,38aが設けられている。各サイズコンベヤ35,36,37,38上に概ね大きさが揃えられて複数個の手荷物Wが滞留される。各サイズコンベヤ35,36,37,38の前方を横切る方向に、コンベア付きのトラバーサ20が移動して、各サイズコンベヤ35,36,37,38から手荷物Wを受け取る。各サイズコンベヤ35,36,37,38の搬送方向先端側の手荷物Wがトラバーサ20上に搬送されると、積み込み装置40の物品保持ハンド50に吸着保持されて順次コンテナ3内に積み込まれる。手荷物Wを満載したコンテナ3が航空機の貨物室へそのまま積み込まれ、若しくは手作業により手荷物Wが貨物室内に移し替えられる。
【0028】
旋回コンベヤ31の搬送方向が戻しコンベヤ39側に切り換わると、ピッキング装置10により移載された手荷物Wが戻しコンベア39上に搬入される。戻しコンベア39上に搬入された手荷物Wは、優先手荷物等と判別されたもので例えば人手で積み込むために再びメイクコンベア2へ戻される。本実施形態は、手荷物Wを下流側の搬送経路としてのコンテナ3内に積み込む積み込み装置40について特徴を有している。
【0029】
積み込み装置40は、バックヤード建屋の天井に沿って配置されている。積み込み装置40は、この移動基台41に吊り下げ状態で支持されている。移動基台41は、積み込み装置40をX軸方向(図1において上下方向)に移動させるX軸フレーム42と、積み込み装置40をY軸方向(図1において左右方向)に移動させるY軸フレーム43を連結させたスライドテーブル機構を備えている。移動基台41により、積み込み装置40は、X軸方向、Y軸方向又はその合成方向に移動して、コンテナ3への手荷物Wの積み込み作業が行われる。
【0030】
積み込み装置40は、多関節形のロボットアーム45と、物品保持ハンド50を備えている。ロボットアーム45には、相互に平行な3軸回りの関節と、これに直交する軸線回りの複数の関節を有するものが用いられている。図2以降では、先端側のX軸及びY軸回りの関節部のみが示されている。
【0031】
ロボットアーム45の前部には矩形平板形状を有する基台ベース46が取り付けられている。物品保持ハンド50の後部には同じく矩形平板形状を有する結合ベース51が取り付けられている。基台ベース46に対して結合ベース51が重ね合わせ状態で一体化されることで、ロボットアーム45の先端に物品保持ハンド50が結合されている。
【0032】
物品保持ハンド50は、ハンド本体52と真空吸着部53を備えている。ハンド本体52の後部に上記した結合ベース51が上下左右に張り出す状態に設けられている。結合ベース51と基台ベース46との間に、真空結合部47と磁気結合部48が設けられている。真空結合部47は、基台ベース46側に設けた真空引きエリア47aを真空引きして結合ベース51に対する吸着力(結合力)を発生させる構成を有している。真空引きエリア47aの全周にシールリング47bが装着されている。シールリング47bに結合ベース51が当接されることで、真空引きエリア47aが気密にシールされる。真空引きエリア47aには1つの真空引き孔47cが設けられている。この真空引き孔47cには、真空発生器60が接続されている。真空引き孔47cを経て真空引きエリア47aが真空発生器60により真空引きされる。図5に示すように真空発生器60は、基台ベース46の後面に取り付けられている。
【0033】
基台ベース46の上部には、磁気結合部48が設けられている。本実施形態では、磁気結合部48としてマグネット(永久磁石)が取付けられている。磁気結合部48は、左右に一対取り付けられている。この磁気結合部48の磁力により、物品保持ハンド50の結合ベース51が基台ベース46に対して重ね合わせ状態に吸着保持される。磁気結合部48の磁力は、物品保持ハンド50に外部からの衝撃を受けない静止状態では、真空結合部47での吸着力がなくなっても結合ベース51の基台ベース46に対する重ね合わせ状態が維持されるに必要十分な磁力に設定されている。このため、後述するように物品保持ハンド50に対して外部からの衝撃が付加された場合には、磁気結合部48の磁力では結合ベース51と基台ベース46の吸着状態(重ね合わせ状態)が維持されず、従って結合ベース51は基台ベース46から分離して物品保持ハンド50のロボットアーム45に対する結合が解除される。
【0034】
図4に示すように基台ベース46の上下及び左右の各側部にはストッパ部46a,46b,46c,46dが設けられている。各ストッパ部46a,46b,46c,46dは、それぞれ前方へ張り出して、重ね合わせ状態の結合ベース51の各側部の側方に至っている。上側のストッパ部46aにより、結合ベース51の上方への相対変位が規制される。下側のストッパ部46bにより、結合ベース51の下方への相対変位が規制される。左側のストッパ部46cにより、結合ベース51の左方への相対変位が規制される。右側のストッパ部46dにより、結合ベース51の右方への相対変位が規制される。
【0035】
真空吸着部53が吸着保持した手荷物Wが他部位に干渉等して衝撃が付加され、その結果物品保持ハンド50に対して上下、左右からの外力が付加されて真空結合部47と磁気結合部48の吸着力が解除されると、物品保持ハンド50は、ロボットアーム45に対して上下左右に変位して結合状態が解除される。物品保持ハンド50に対して上方から下方に向けたZ軸方向の外力が付加された場合には、物品保持ハンド50は下側のストッパ部46bを支点にして下方へ回動してロボットアーム45に対する結合状態が解除される。物品保持ハンド50に対して下方から上方に向けたZ軸方向の外力が付加された場合には、物品保持ハンド50は上側のストッパ部46aを支点にして上方へ回動してロボットアーム45に対する結合状態が解除される。
【0036】
物品保持ハンド50に対して左方から右方に向けたY軸方向の外力が付加された場合には、物品保持ハンド50は右側のストッパ部46dを支点にして右方へ回動してロボットアーム45に対する結合状態が解除される。物品保持ハンド50に対して右方から左方に向けたY軸方向の外力が付加された場合には、物品保持ハンド50は左側のストッパ部46cを支点にして左方へ回動してロボットアーム45に対する結合状態が解除される。このように、吸着保持した手荷物WがY軸(左右方向)又はZ軸方向(上下方向)の衝撃を受けた場合には、物品保持ハンド50がストッパ部46a(又は46b,46c,46d)を支点にして回動し、その結果真空結合部47の気密性が解除されて強制的に給気がなされ、かつ磁気結合部48の吸着状態が衝撃(外力)で解除されることにより、物品保持ハンド50がロボットアーム45から切り離され、これにより手荷物Wの保護が図られるようになっている。
【0037】
また、基台ベース46から結合ベース51が離間してその重ね合わせ状態(結合状態)が解除されたことが例えば近接センサ等の別途手段により検知され、この検知結果に基づいてロボットアーム45の動作が停止されることで、手荷物Wの保護が確実に図られるようになっている。
【0038】
図6図8に示すようにハンド本体52の下面側に真空吸着部53が支持されている。ハンド本体52と真空吸着部53との間にはスライド機構54が介在されている。スライド機構54により真空吸着部53はハンド本体52に対してX軸方向(前後方向)に変位可能に支持されている。スライド機構54の支持体55は、ハンド本体52の下面側にねじ止めされている。スライド機構54のスライド体56は、真空吸着部53の上面にねじ止めされている。支持体55の左右側部とスライド体56の左右側部との間には、転動体を介在させた直動ベアリング54aが介在されている。左右の直動ベアリング54aにより、スライド体56は支持体55に対してがたつきやバックラッシュがほぼない状態で前後にスライド可能に支持されている。
【0039】
真空吸着部53の上面には、2つのホース接続部57が設けられている。図6に示すように2つのホース接続部57には、それぞれ真空引き用のノズル部57aが一体に設けられている。図6及び図10に示すように2つのノズル部57aは、ホース接続部57から下方に延びて、真空吸着部53の真空引きエリア53aに連通されている。真空吸着部53は、下向きに開口された矩形箱形の枠体53bと枠体53bの下面側の開口に沿って取り付けた吸着パッド53cを備えている。枠体53bと吸着パッド53cの内側が真空引きエリア53aとなっている。
【0040】
ノズル部57aは固定ナット57bの締め込みにより真空吸着部53の枠体53bに対して移動不能に固定されている。ノズル部57aの上部に結合されたホース接続部57は、ハンド本体52の上面に位置されている。図3に示すようにハンド本体52とスライド機構54の支持体55には、真空吸着部53のX軸方向の移動に伴ってノズル部57aの変位を許容するための逃がし窓部52a,55aが設けられている。
【0041】
2つのホース接続部57には、それぞれバキュームホース58が接続されている。2本のバキュームホース58は、それぞれ基台ベース46の上部側の左右角部に設けた中継ダクト59に配管されている。図3に示すようにホース接続部57から中継ダクト59までの2本のバキュームホース58の配管経路は、相互にX形に交差して左右逆側に配管されている。これにより、後述するように真空吸着部53がハンド本体52に対して前後にスライドする際におけるバキュームホース58の無理な伸びや屈曲が回避されて、前後に滑らかに伸長するように取り回されている。
【0042】
2本のバキュームホース58は、中継ダクト59を経てロボットアーム45側に配管されている。なお、結合ベース51の上部側の左右角部は、ホース接続部57を逃がすために円弧形に欠落されている。2本のバキュームホース58は、前記真空発生器60とは別途設けられた物品吸着保持用の真空発生器44に接続されている。比較的小型の真空発生器60により真空結合部47の真空引きがなされる一方、比較的大型の真空発生器44では真空吸着部53の真空引きエリア53aの真空引きがなされる。真空吸着部53用の真空発生器44は、ロボットアーム45を支持する移動基台41に設置されている。
【0043】
スライド機構54の支持体55とスライド体56との間には、プランジャ61が介装されている。図6及び図9に示すように本実施形態では、スライド体56に3つのプランジャ61がナット61aの締め込みにより取り付けられている。各プランジャ61には、先端にばね付勢された鋼球を有するボールプランジャが用いられている。各プランジャ61の先端部(鋼球)は、支持体55の下面に設けた係合凹部55bに弾性的に嵌まり込んでいる。
【0044】
3つのプランジャ61の先端部が支持体55の係合凹部55bに弾性的に嵌まり込むことで、真空吸着部53がハンド本体52に対してX軸方向の前進端位置に弾性的に保持される。真空吸着部53は常時にはこの前進端位置に保持されて手荷物Wの吸着保持及びコンテナ3への積み込み作業がなされる。
【0045】
積み込み作業時に手荷物Wに対して前方から後方に向けたX軸方向の外力が付加されると、3つのプランジャ61の先端部が弾性力に抗して同時に係合凹部55bから離脱された後、真空吸着部53が図2及び図3中二点鎖線で示すようにハンド本体52に対して後方へ変位する。
【0046】
図6及び図7に示すようにスライド機構54のスライド体56の後部には、検知体62が取り付けられている。検知体62は後方へ長く延びている。検知体62の後方に開閉バルブ63が配置されている。開閉バルブ63には、常時閉形のエア開閉バルブであってローラレバー式の機械式開閉バルブが用いられている。開閉バルブ63は、ハンド本体52に対する真空吸着部53の後方への相対変位を検知するための検知手段として機能する。図11に示すように開閉バルブ63の入力側には圧縮エア供給源としてのエアコンプレッサPが接続されている。開閉バルブ63の出力側は、給気孔47dを経て真空引きエリア47aに接続されている。開閉バルブ63がオンするとエアコンプレッサPから真空引きエリア47aに給気がなされて真空結合部47の吸着力が開放される。
【0047】
上記したように吸着把持した手荷物Wに衝撃が付加されたことにより真空吸着部53が後方へ変位すると、検知体62が一体で後方へ変位する。後方へ変位する検知体62により検知レバー63aが押されて、開閉バルブ63がオンして開放側に切り替わる。開閉バルブ63が開放側に切り替わると、圧縮エア供給源であるエアコンプレッサPから真空結合部47に圧縮エアが給気される。真空結合部47に給気されることで、結合ベース51に対する吸着力が開放される。吸着保持中の手荷物WにX軸方向の衝撃が付加されることにより真空結合部47の吸着力が開放され、これとともに磁気結合部48の吸着力も開放され、その結果物品保持ハンド50がロボットアーム45から切り離されて手荷物Wの保護が図られる。
【0048】
真空結合部47及び磁気結合部48の吸着力が解除されて、物品保持ハンド50のロボットアーム45に対する結合状態が解除されると、物品保持ハンド50は結合ベース51の下部を下側のストッパ部46bに乗せ掛け、この乗せ掛け部位を支点にして自重により下方へ回動して手荷物Wを衝突部位から離間させる。また、真空結合部47に給気がなされて物品保持ハンド50のロボットアーム45に対する結合状態が解除された時点で、ロボットアーム45が停止されて、手荷物Wの保護が図られる。
【0049】
図6に示すように真空吸着部53には、手荷物Wの吸着保持を検知するための検知ロッド65が設けられている。検知ロッド65は上下に長い棒材で、枠体53bの上部に上下に変位可能に支持されている。検知ロッド65は圧縮ばねにより下方へ突き出す側に付勢されている。検知ロッド65の下部側は吸着パッド53cの内周側に至っている。吸着パッド53cが手荷物Wに当接されない状態では、検知ロッド65の下端部が吸着パッド53cよりもわずかに下方へ突き出す状態に付勢されている。吸着パッド53cが手荷物Wに当接されると検知ロッド65が手荷物Wに突き当てられることによりばね付勢力に抗して相対的に上方へ変位する。検知ロッド65の上方への変位が近接形の磁気センサ66により検知される。磁気センサ66により検知ロッド65の上方への変位が検知されることで吸着パッド53cが手荷物Wに当接されたと判断され、この時点でロボットハンド45の動作が停止されて、物品吸着ハンド50の下降動作が停止される。稼働中は常時真空発生器44により真空引きエリア53aの真空引きがなされていることから、吸着パッド53cが当接された時点で手荷物Wが真空吸引力により物品保持ハンド50に吸着保持される。
【0050】
以上のように構成した本実施形態の搬送装置1によれば、上流側の搬送経路の手荷物Wのコンテナ3への積み込み作業が積み込み装置40によりなされることから、従来の人手を省略して、搬送装置1の省力化及び無人化を図ることができる。
【0051】
また、積み込み装置40の物品保持ハンド50は、真空結合部47と磁気結合部48を介してロボットアーム45に結合されている。真空結合部47に対する給気により真空結合部47の吸着力が解除され、物品保持ハンド50に付加される外力(衝撃)により磁気結合部48の吸着力が解消されて物品保持ハンド50のロボットアーム45に対する結合が解除される。
【0052】
このことから、例えば、停電あるいはエア洩れにより真空結合部47の吸着力が消失した場合であっても、物品保持ハンド50に特別な外力(衝撃)が付加されない状態では、磁気結合部48に永久磁石(マグネット)を用いることにより物品保持ハンド50の結合状態が維持される。このため、空港の手荷物搬送経路において、夜間電力供給が遮断された積み込み装置40の休止状態であっても、物品保持ハンド50のロボットアーム45の先端に対する結合状態を維持しておくことができ、その後の積み込み作業の再開を迅速に行うことができる。
【0053】
さらに、例示した積み込み装置40によれば、例えば真空吸着部53で吸着把持した手荷物Wをコンテナ3に積み込む際に、手荷物Wが他部位に当接する等して衝撃が付加されると、真空結合部47と磁気結合部48による吸着力が解除されて、物品保持ハンド50のロボットアーム45に対する結合が解除されて、手荷物Wに対する損傷等が低減若しくは回避されてその保護が図られる。
【0054】
手荷物Wに衝撃が付加された際における物品保持ハンド50のロボットアーム45に対する結合状態の解除については、X軸方向の衝撃については開閉バルブ63がオンして真空結合部47に給気がなされることで達成され、Y軸方向及びZ軸方向の衝撃については物品保持ハンド50が相対変位して、その結合ベース51が基台ベース46から離間し、これにより真空結合部47の気密性がなくなって強制的に給気されることで達成される。X-Y-Z軸方向の何れの方向からの衝撃についても物品保持ハンド50がロボットアーム45から切り離されて手荷物Wが逃がされることでその保護が図られる。
【0055】
また、例示した積み込み装置40によれば、ロボットアーム45の基台ベース46に、結合ベース51の面方向(上下方向及び左右方向)の変位を規制するストッパ部46a,46b,46c,46dが設けられている。これにより物品保持ハンド50のロボットアーム45に対する分離動作は、ストッパ部46a,46b,46c,46dに対する結合ベース51の当接部位を支点にして物品保持ハンド50が回動する(傾く)ことによりなされる。このように物品保持ハンド50の平行移動ではなく傾きによりロボットアーム45に対する結合状態を解除する構成であることから、物品保持ハンド50の比較的小さな変位でロボットアーム45に対する係合状態の解除が確実になされる。
【0056】
以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、磁気結合部48は省略してもよい。前記例示した夜間電源遮断時であって真空結合部47の吸着力が発生しない場合には、別途クランプ手段やねじ結合手段等の電力を必要としない結合手段を用いる等して基台ベース46と結合ベース51の重ね合わせ状態(物品保持ハンド50のロボットアーム45に対する結合状態)を維持することができる。この場合、真空結合部47の吸着力により当該結合状態が維持される段階(積み込み装置40の稼働時)には、クランプ手段やねじ結合手段を取り除いておくことができる。
【0057】
また、物品保持ハンド50において、物品としての手荷物Wを保持する手段として真空吸着により保持する真空吸着部53を例示したが、これに代えて例えばクランプアーム等の他の保持手段により物品を保持する構成としてもよい。
【0058】
さらに、ハンド本体52に対する真空吸着部53のX軸方向の位置を保持するために3つのプランジャ61を用いる構成を例示したが、位置保持のためにはプランジャに代えて例えばマグネットを用いることができる。また、用いるプランジャやマグネットの個数を変更することにより真空吸着部の位置保持力を調整することができ、これにより物品保持ハンド50のロボットアーム45に対する結合状態を解除するための条件であって、X軸方向の外力について基準外力を適切に設定して手荷物Wの保護がより確実になされるようにすることができる。
【0059】
また、搬送対象の物品として航空機搭乗者のキャスタ付きのスーツケース(手荷物W)を例示したが、段ボール箱、プラスチックケース等の箱形の物品、さらには箱形を有しないスキー板バッグやゴルフバッグ、あるいは野菜や食料品等を搬送対象とすることもできる。従って、空港ターミナルビルにおいて搭乗客の手荷物Wを航空機4の貨物室に積み込むまでの搬送経路を例示したが、宅配荷物の集荷場等における搬送経路について例示した搬送装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
W…手荷物(物品)
P…エアコンプレッサ
1…搬送装置
2…メイクコンベヤ(上流側の搬送経路)
3…コンテナ(下流側の搬送経路)
4…航空機
5…搬送状態認識手段(3Dカメラ)
6…移動装置
10…ピッキング装置
20…トラバーサ
30…サイズ別コンベヤ
31…旋回コンベヤ
32…延長コンベヤ
32a…リフトコンベヤ
33…カーブコンベヤ
33a…延長コンベヤ
34…搬入コンベヤ
35…Sサイズコンベヤ
36…M1サイズコンベヤ
37…M2サイズコンベヤ
38…Lサイズコンベヤ
35a~38a…滞留用ストッパ
39…戻しコンベヤ
40…積み込み装置
41…移動基台
42…X軸フレーム
43…Y軸フレーム
44…真空発生器
45…ロボットアーム
46…基台ベース
46a…ストッパ部(上)、46b…ストッパ部(下)
46c…ストッパ部(左)、46d…ストッパ部(右)
47…真空結合部
47a…真空引きエリア、47b…シールリング、47c…真空引き孔、47d…給気孔
48…磁気結合部(マグネット)
50…物品保持ハンド
51…結合ベース
52…ハンド本体
52a…逃がし窓部
53…真空吸着部
53a…真空引きエリア、53b…枠体、53c…吸着パッド
54…スライド機構
55…支持体
55a…逃がし窓部、55b…係合凹部
56…スライド体
57…ホース接続部
57a…ノズル部、57b…固定ナット
58…バキュームホース
59…中継ダクト
60…真空発生器
61…プランジャ
61a…ナット
62…検知体
63…開閉バルブ
63a…検知レバー
65…検知ロッド
66…磁気センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11