(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-19
(45)【発行日】2023-05-29
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/16 20060101AFI20230522BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20230522BHJP
【FI】
G06F1/16 312F
H05K5/02 V
(21)【出願番号】P 2019102328
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】398058588
【氏名又は名称】Dynabook株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 雅人
(72)【発明者】
【氏名】平田 光
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-122037(JP,A)
【文献】特開2009-151025(JP,A)
【文献】特開2014-052523(JP,A)
【文献】特開2004-309699(JP,A)
【文献】特開2000-307258(JP,A)
【文献】特開2003-296023(JP,A)
【文献】特開2002-328622(JP,A)
【文献】特開2006-163742(JP,A)
【文献】特開2015-105993(JP,A)
【文献】特開2012-164884(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0329460(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/16
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を表示するための表面の端部に段差を備えた表示ユニットと、
前記表面を露出させつつ前記端部を覆う開口部を備え、前記表示ユニットを支持する筐体ユニットと、を有し、
前記開口部は、前記段差に対向する部分に、湾曲面、又は前記段差から離間する方向に傾斜した傾斜面を備え
、
前記表示ユニットは、
情報を表示させる表示部材と、
前記表示部材上の、前記表面に対応する領域を被覆し、少なくとも可視光線の波長領域において透明な第1被覆部材と、
前記第1被覆部材と隣接し、前記表示部材上の前記領域以外の部分を被覆する第2被覆部材と、を含み、
前記段差は、前記第1被覆部材と前記第2被覆部材との厚みの差である、電子機器。
【請求項2】
前記開口部は、前記湾曲面又は前記傾斜面と連なり、前記表面に沿って前記表面の中央に向かう方向に突出した凸部を備えている、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記表示ユニットは、前記筐体ユニットに着脱可能に取り付けられている、請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記湾曲面の曲率半径は、前記段差の長さの10倍以上である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記表示ユニットの前記表面から、前記表示ユニットの法線方向に沿って最も離間した前記傾斜面の部分までの長さは、前記段差の長さの10倍以上である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記傾斜面は、前記表面に沿った方向から45度以上傾斜している、請求項1乃至3及び5のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記表示ユニットと前記筐体ユニットは、回転による前記表示ユニットの開閉動作を伴うノートパソコンに適用される、請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記筐体ユニットは、前記表示ユニットの側面側から緩衝部材を介して挟持することで前記表示ユニットを収容する収容部を含む、請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器において、筐体ユニットによって支持された表示ユニットにかかる応力を抑制する技術が知られている。上記の技術に関連して、フレームによって周縁部が覆われた表示パネルの不具合を防止する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、情報を表示する表示ユニットと、表示ユニットを支持する筐体ユニットとの間に発生する応力を抑制できる電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る電子機器は、表示ユニットと、筐体ユニットと、を有している。前記表示ユニットは、情報を表示するための表面の端部に段差を備えている。前記筐体ユニットは、前記表面を露出させつつ前記端部を覆う開口部を備え、前記表示ユニットを支持する。前記開口部は、前記段差に対向する部分に、湾曲面、又は前記段差から離間する方向に傾斜した傾斜面を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態のノートパソコン100の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1のノートパソコン100において、ディスプレイ筐体ユニット170のカバー171からマスク172を取り外し、表示ユニット160の全体を露出させた状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2の領域Bのカバー171を拡大して示す斜視図である。
【
図4】
図1の領域A1(A2、A3及びA4)を拡大して示す端面図である。
【
図5】
図4の領域Cを拡大したノートパソコン100の要部を示す端面図である。
【
図6】ノートパソコン100の使用形態1であって、ユーザがディスプレイ筐体ユニット170を押圧してノートパソコン100を閉じる状態を示す模式図である。
【
図8】ノートパソコン100の使用形態2であって、ユーザがディスプレイ筐体ユニット170の外縁をつかんでノートパソコン100を開ける状態を示す模式図である。
【
図10】第2実施形態のノートパソコン200の要部を示す端面図である。
【
図11】
図10のノートパソコン200におけるユーザの視野の状態を示す模式図である。
【
図12】第3実施形態のノートパソコン300の要部を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。図面において、ノートパソコン100を開いた状態における表示ユニット160の横幅方向X、奥行方向Y及び高さ方向Zを矢印で示している。
【0008】
図1から
図5を参照して、第1実施形態のノートパソコン100の構成を説明する。
【0009】
図1は、第1実施形態のノートパソコン100の構成を示す斜視図である。
図2は、
図1のノートパソコン100において、ディスプレイ筐体ユニット170のカバー171からマスク172を取り外し、表示ユニット160の全体を露出させた状態を示す斜視図である。
図3は、
図2の領域Bのカバー171を拡大して示す斜視図である。
図4は、
図1の領域A1(A2、A3及びA4)を拡大して示す端面図である。
図5は、
図4の領域Cを拡大したノートパソコン100の要部を示す端面図である。
【0010】
ノートパソコン100(請求項では電子機器と称する)には、演算ユニット110、通信ユニット120、入出力ユニット130、電源ユニット140、ベース筐体ユニット150、表示ユニット160、ディスプレイ筐体ユニット170(請求項では筐体ユニットと称する)及び連結ユニット180が含まれている。ノートパソコン100は、演算ユニット110、通信ユニット120、入出力ユニット130及び電源ユニット140を保持したベース筐体ユニット150と、表示ユニット160を保持したディスプレイ筐体ユニット170を、連結ユニット180によって開閉自在に連結して構成している。ノートパソコン100に含まれている各ユニットについて順に説明する。
【0011】
演算ユニット110は、
図1及び
図2に示すように、ノートパソコン100において演算を行うユニットである。演算ユニット110には、システム基板であるマザーボードが含まれている。マザーボードは、ROM(Read Only Memory)、CPU(Central Processing Unit)及びRAM(Random Access Memory)等を実装した基板から構成されている。
【0012】
通信ユニット120は、
図1及び
図2に示すように、演算ユニット110を介して、外部の機器と無線通信等を行うユニットである。通信ユニット120には、演算ユニット110のマザーボードとのインターフェース(interface:I/F)及びアンテナが含まれている。
【0013】
入出力ユニット130は、
図1及び
図2に示すように、ユーザによってデータの入出力の操作が行われるユニットである。入出力ユニット130には、電源ボタン、キーボード、タッチパッド、スピーカ、マイク及び入出力端子(例えばUSB端子)が含まれている。
【0014】
電源ユニット140は、
図1及び
図2に示すように、演算ユニット110、通信ユニット120、入出力ユニット130及び表示ユニット160に電力を供給するユニットである。電源ユニット140には、例えばリチウムイオン二次電池が含まれている。電源ユニット140は、外部の電源からACアダプターを介して充電される。
【0015】
ベース筐体ユニット150は、
図1及び
図2に示すように、演算ユニット110、通信ユニット120、入出力ユニット130及び電源ユニット140を保持するユニットである。ベース筐体ユニット150には、筐体が含まれている。筐体には、演算ユニット110、通信ユニット120及び電源ユニット140が収容され、かつ、入出力ユニット130が取り付けられている。
【0016】
表示ユニット160は、
図1、
図2、
図4及び
図5に示すように、演算ユニット110を介して、映像や情報等を表示するユニットである。表示ユニット160は、
図5に示すように、情報を表示するための表面の端部に段差160Aを備えている。段差160Aは、後述する反射防止シート162と保護シート163との厚みの差である。表示ユニット160には、ディスプレイ161(請求項では表示部材と称する)、反射防止シート162(請求項では第1被覆部材と称する)及び保護シート163(請求項では第2被覆部材と称する)が含まれている。
【0017】
ディスプレイ161(表示部材)は、情報を表示させる。ディスプレイ161は、
図4及び
図5に示すように、例えば、液晶ディスプレイ(LCD、liquid crystal display)によって構成されている。ディスプレイ161は、液晶ディスプレイに換えて、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ等によって構成してもよい。
【0018】
反射防止シート162(第1被覆部材)は、ディスプレイ161上の、情報を表示するための表面に対応する領域を被覆し、少なくとも可視光線の波長領域において透明である。反射防止シート162は、
図1、
図2、
図4及び
図5に示すように、ディスプレイ161上の、表面に対応する領域に取り付けられている。表面とは、ユーザに視認される面である。反射防止シート162は、
図4及び
図5に示すように、演算ユニット110から出力信号に応じてディスプレイ161の画素の発光制御がされている表示領域に相当するアクティブエリア161Mを被覆している。反射防止シート162の外縁は、アクティブエリア161Mの外縁に位置する。一方、反射防止シート162は、ディスプレイ161の外縁近傍に位置し、演算ユニット110から出力信号によらず常に非発光状態に維持されている、アクティブエリア161Mの周辺部の非アクティブエリア161N(非表示領域)を被覆しない。反射防止シート162は、ディスプレイ161からユーザの側に向かって導出される光を十分に透過させる。一方、反射防止シート162は、反射光を抑制する。すなわち、反射防止シート162は、ディスプレイ161の表示領域で反射した室内の照明光や室外の太陽光がユーザの目に入射することを抑制する。
【0019】
保護シート163(第2被覆部材)は、反射防止シート162と隣接して、ディスプレイ161上の、情報を表示するための表面に対応する領域以外の部分である周辺部(非アクティブエリア161N)を被覆する。保護シート163は、
図2、
図4及び
図5に示すように、反射防止シート162を避けてディスプレイ161を被覆するように、ディスプレイ161の周辺部(非アクティブエリア161N)に取り付けられている。保護シート163は、
図5に示すように、反射防止シート162の端部162aと接している。保護シート163は、十分な剛性と絶縁性を備えている。保護シート163は、ディスプレイ161の周辺部(非アクティブエリア161N)を被覆することにより、ディスプレイ筐体ユニット170の内部で振動したり荷重が掛かったりする、ディスプレイ161に対する応力を抑制する。また、保護シート163は、ディスプレイ161を絶縁する。
【0020】
ディスプレイ筐体ユニット170は、
図1乃至
図5に示すように、表示ユニット160を保持するユニットである。ディスプレイ筐体ユニット170は、表面を露出させつつ端部を覆う開口部170Aを備え、表示ユニット160を支持する。開口部170Aは、段差160Aに対向する部分に、湾曲面172hを備えている。ディスプレイ筐体ユニット170には、カバー171、マスク172、側部緩衝材173及び底部緩衝材174が含まれている。
【0021】
カバー171は、
図1乃至
図4に示すように、表示ユニット160を裏面側から支持する筐体である。カバー171は、
図1及び
図2に示すように、横幅方向Xが高さ方向Zよりも長い矩形状から形成され、例えば樹脂からなる。カバー171は、
図2乃至
図4に示すように、外縁部171aの内側に凹状の収容部171bが形成されている。収容部171bには、
図4に示すように、表示ユニット160が収容される。収容部171bには、外縁部171aから離間して起立した複数の突起部が形成されている。具体的には、
図2に示すように、複数の突起部は、第1突起部171c、第2突起部171d、第3突起部171e及び第4突起部171fから構成されている。複数の第1突起部171cは、ノートパソコン100が開いた状態において、収容部171bの下方で横幅方向Xに並んでいる。同様に、複数の第2突起部171dは、収容部171bの上方で横幅方向Xに並んでいる。同様に、複数の第3突起部171eは、収容部171bの一方の側方(
図2中の右側)で高さ方向Zに並んでいる。同様に、複数の第4突起部171fは、収容部171bの他方の側方(
図2中の左側)で高さ方向Zに並んでいる。複数の第1突起部171c、第2突起部171d、第3突起部171e及び第4突起部171fによって囲まれた領域に、側部緩衝材173及び底部緩衝材174を介して挟持されることで、表示ユニット160が支持される。
【0022】
マスク172は、
図1乃至
図5に示すように、表示ユニット160を表面側から覆う筐体である。マスク172は、
図1、
図2、
図4及び
図5に示すように、ディスプレイ161のアクティブエリア161Mを露出させる開口部170Aを備えている。すなわち、マスク172は、表示ユニット160の外縁の部分を表面側から覆っている。マスク172の厚みは、カバー171の厚みと比較して相対的に薄い。
図2に示すように、マスク172に形成された鉤部172aが、カバー171の外縁部171aに備えられた引掛部171gに取り付けられる。このため、マスク172とカバー171は、着脱可能に接続される。
【0023】
マスク172は、
図5に示すように、開口部170Aの周辺において、ユーザに視認される外面172bと、表示ユニット160と対向する内面172cを備えている。外面172bは、
図5に示すように、開口部170Aの側の端部において、表示ユニット160に向かって傾斜した第1傾斜面172dと連なっている。一方、内面172cは、
図5に示すように、開口部170Aの側の端部において、表示ユニット160から離れる方向に向かって傾斜した第2傾斜面172eと連なっている。第2傾斜面172eは、開口部170Aの側の端部において、表示ユニット160に沿って延びる平面172fと連なっている。平面172fは、開口部170Aの側の端部172gにおいて、表示ユニット160から離れる方向に湾曲した湾曲面172hを備えている。湾曲面172hと第1傾斜面172dの境界部分が、開口部170Aに相当する。
【0024】
側部緩衝材173は、
図3に示すように、外部からカバー171を介して表示ユニット160に入力される応力のうち、特に横幅方向X及び高さ方向Zに沿った応力を緩和するものである。側部緩衝材173は、板状に形成され、例えば伸縮性を備えたゴムからなる。各々の側部緩衝材173は、複数の第1突起部171c、第2突起部171d、第3突起部171e及び第4突起部171fと、表示ユニット160との間に位置するように、複数の第1突起部171c、第2突起部171d、第3突起部171e及び第4突起部171fに取り付けられている。なお、側部緩衝材173は、例えば高さ方向Zにおいて対向する第1突起部171cと第2突起部171dにおいて、硬度を異ならせたものを取り付けてもよい。
【0025】
底部緩衝材174は、
図3に示すように、外部からカバー171を介して表示ユニット160に入力される応力のうち、特に奥行方向Yに沿った応力を緩和するものである。底部緩衝材174は、板状に形成され、例えば伸縮性を備えたゴムからなる。各々の底部緩衝材174は、複数の第1突起部171c、第2突起部171d、第3突起部171e及び第4突起部171fによって囲まれた領域において、側部緩衝材173と隣り合うように、収容部171bに取り付けられている。
【0026】
連結ユニット180は、
図1及び
図2に示すように、ベース筐体ユニット150とディスプレイ筐体ユニット170を回転自在に連結するユニットである。連結ユニット180には、ヒンジが含まれている。連結ユニット180を軸にして、ディスプレイ筐体ユニット170をベース筐体ユニット150に対して離間及び接近させることによって、ノートパソコン100が開閉される。
【0027】
図6及び
図7を参照して、第1実施形態のノートパソコン100の使用形態1を説明する。
【0028】
図6は、ノートパソコン100の使用形態1であって、ユーザがディスプレイ筐体ユニット170を押圧してノートパソコン100を閉じる状態を示す模式図である。
図7は、
図6の領域Dを拡大して示す端面図である。
【0029】
図6に示すように、使用形態1では、デスク10に置かれたノートパソコン100を、ユーザが閉めることを想定している。使用形態1において、ユーザは、例えば、右手21でディスプレイ筐体ユニット170をベース筐体ユニット150に向かって押圧する。表示ユニット160とディスプレイ筐体ユニット170は、連結ユニット180を軸に回転しながら、ベース筐体ユニット150に接近する。このような場合、表示ユニット160とディスプレイ筐体ユニット170は、連結ユニット180側の基端部から先端側にかけて歪んで、応力が掛かることがある。具体的には、例えば、ユーザがディスプレイ筐体ユニット170をベース筐体ユニット150に向かって強く押圧すると、表示ユニット160とディスプレイ筐体ユニット170の間において相対的に大きな応力が掛かる。
【0030】
図7に示すように、マスク172と表示ユニット160は、ユーザによるノートパソコン100の閉動作に伴い応力が掛かると、実線で示す状態から破線で示す状態のように、相対的に歪んだり位置ずれしたりする可能性がある。具体的には、マスク172や表示ユニット160に応力が掛かっていない状態において、マスク172の端部172gや湾曲面172h等は、実線で示すように、反射防止シート162及び保護シート163に接触していない。ここで、ユーザによるノートパソコン100の閉動作に起因して、カバー171の一端に力が掛かり、カバー171はわずかながら変形する。一方、カバー171に側部緩衝材173や底部緩衝材174を介して支持された表示ユニット160は緩衝材の伸縮性により、カバー171で生ずるような変形は伴わない。一方、カバー171の変形に起因して、マスク172に応力が掛かると、破線で示す状態のように、マスク172の湾曲面172hが、反射防止シート162の段差160Aの端部162aに対して滑らかに接触しつつ表示ユニット160側に移動する。さらに、破線で示す状態のように、マスク172の端部172gが、保護シート163に接触する。その後、ユーザによるノートパソコン100の閉動作が完了すると、マスク172や表示ユニット160に掛かっていた応力が消滅する。これにより、マスク172の湾曲面172hが、反射防止シート162の段差160Aの端部162aに対して滑らかに接触しつつ表示ユニット160側から離れるように移動する。そして、マスク172の端部172g及び湾曲面172h等は、反射防止シート162及び保護シート163のいずれからも離間した状態に戻る。
【0031】
図8及び
図9を参照して、第1実施形態のノートパソコン100の使用形態2を説明する。
【0032】
図8は、ノートパソコン100の使用形態2であって、ユーザがディスプレイ筐体ユニット170の外縁をつかんでノートパソコン100を開ける状態を示す模式図である。
図9は、
図8の領域Eを拡大して示す端面図である。
【0033】
図8に示すように、使用形態2では、デスク10に置かれたノートパソコン100を、ユーザが開けることを想定している。使用形態2において、ユーザは、例えば、左手22でベース筐体ユニット150を保持しつつ、右手21でディスプレイ筐体ユニット170の外縁をつかんで開く。表示ユニット160とディスプレイ筐体ユニット170は、連結ユニット180を軸に回転しながら、ベース筐体ユニット150から離間する。このような場合、表示ユニット160とディスプレイ筐体ユニット170は、連結ユニット180側の基端部から先端側にかけて歪んで、応力が掛かることがある。具体的には、例えば、ユーザがディスプレイ筐体ユニット170を強く回転させると、表示ユニット160とディスプレイ筐体ユニット170の間において相対的に大きな応力が掛かる。
【0034】
図9に示すように、マスク172と表示ユニット160は、ユーザによるノートパソコン100の開動作に伴い応力が掛かると、実線で示す状態から破線で示す状態のように、相対的に歪んだり位置ずれしたりする可能性がある。この後の状態は、
図7を参照して説明した状態と同様である。
【0035】
第1実施形態のノートパソコン100の効果を説明する。
【0036】
第1実施形態によれば、ディスプレイ筐体ユニット170の開口部170Aは、表示ユニット160の段差160Aに対向する部分に、湾曲面172hを備えている。このような構成によれば、ディスプレイ筐体ユニット170と表示ユニット160との間に応力が掛かると、ディスプレイ筐体ユニット170のマスク172の湾曲面172hと、反射防止シート162の段差160Aの端部162aとを滑らかに接触させることができる。したがって、第1実施形態のノートパソコン100は、表示ユニット160の開閉動作に伴い、情報を表示する表示ユニット160と、表示ユニット160を支持するディスプレイ筐体ユニット170との間に発生する応力の急激な変化を抑制できる。
【0037】
具体的には、第1実施形態によれば、ディスプレイ筐体ユニット170のマスク172が表示ユニット160の段差160Aに割り込んだ後に衝撃的に戻るようなことを防止できることから、いわゆる音鳴りを防止できる。さらに、第1実施形態によれば、ディスプレイ筐体ユニット170のマスク172が表示ユニット160の段差160Aに対して衝撃的に接触するようなことを防止できることから、表示ユニット160及びディスプレイ筐体ユニット170の劣化や損傷を抑制できる。さらに、第1実施形態によれば、表示ユニット160とディスプレイ筐体ユニット170との間の応力を抑制できることから、ディスプレイ筐体ユニット170のマスク172を相対的に薄く形成したり相対的に柔らかい材料から形成したりしても、表示ユニット160を支持できる。
【0038】
また、第1実施形態によれば、表示ユニット160は、ディスプレイ筐体ユニット170に着脱可能に取り付けられている。このような構成によれば、強固に固定されていない状態のディスプレイ筐体ユニット170と表示ユニット160との間に応力が掛かり、相対的に歪んだり位置ずれしたりする可能性が高くなる。しかしながら、マスク172の湾曲面172hと、反射防止シート162の段差160Aとを滑らかに接触させて応力の急激な変化を抑制でき、表示ユニット160の微細な構造に対する大きなダメージの付与を回避することができる。ここで、表示ユニット160をディスプレイ筐体ユニット170に着脱可能に取り付ける構成を採用した場合には、ノートパソコン100の構成部材の点検、修理又は交換を行う場合に非常に便利である。
【0039】
また、第1実施形態によれば、
図5に示すように、湾曲面172hの曲率半径R1は、段差160Aの長さH1の10倍以上である。このような構成によれば、マスク172の湾曲面172hの形状が、反射防止シート162の段差160Aの形状に対して十分に大きいことから、互いに接触させながら移動させる時に、接触状態の変化を十分に小さくできる。このため、マスク172の湾曲面172hと、反射防止シート162の段差160Aとを非常に滑らかに接触させて、応力の急激な変化を十分に抑制できる。
【0040】
また、第1実施形態によれば、段差160Aは、ディスプレイ161に取り付けられた反射防止シート162と保護シート163との厚みの差に相当する。このような構成によれば、表示ユニット160は、標準的かつ一般的な仕様に適用して構成することができる。ここで、第1実施形態のように、例えば反射防止シート162が保護シート163よりも厚い場合、マスク172の湾曲面172hと反射防止シート162の端部162aとを滑らかに接触させることによって、端部162aに対する応力を低減させて、反射防止シート162が端部162aを起点としてディスプレイ161から剥離することを抑制できる。さらに、端部162aに対する応力を低減させて、反射防止シート162と保護シート163との間から剥離が発生することを抑制できる。
【0041】
また、第1実施形態によれば、表示ユニット160とディスプレイ筐体ユニット170は、回転による表示ユニット160の開閉動作を伴うノートパソコン100に適用される。このような構成によれば、特に、ユーザによるノートパソコン100の開閉動作に伴って発生し易い、ディスプレイ筐体ユニット170と表示ユニット160の間の応力を、効果的に抑制できる。
【0042】
また、第1実施形態によれば、ディスプレイ筐体ユニット170は、表示ユニット160の側面側から側部緩衝材173及び底部緩衝材174を介して挟持することで表示ユニット160を収容する収容部171bを含んでいる。このような構成によれば、表示ユニット160は、側部緩衝材173や底部緩衝材174の部分に設けられた各突起部(第1突起部171c、第2突起部171d、第3突起部171e及び第4突起部171f)によって表示ユニット160を対向する側面側から挟持することで、表示ユニット160をカバー171に保持することができる。このため、カバー171が変形したとしても、側部緩衝材173及び底部緩衝材174の伸縮性によりカバー171の変形時の応力が表示ユニット160に直接かかることを防止できる。この結果、表示ユニット160を保護することができる。
【0043】
図10及び
図11を参照して、第2実施形態のノートパソコン200の構成を説明する。
【0044】
図10は、第2実施形態のノートパソコン200の要部を示す端面図である。
図11は、
図10のノートパソコン200におけるユーザの視野の状態を示す模式図である。第2実施形態では、上記した第1実施形態と異なる構成を説明する。
【0045】
図10に示すように、ディスプレイ筐体ユニット270の開口部270Aは、湾曲面172hと連なる凸部272iを備えている。凸部272iは、表示ユニット160の表面に沿って、表面の中央に向かう方向に突出している。表示ユニット160から導出され相対的に小さな角度で湾曲面172hに照射されて反射した光F1は、凸部272iに遮光されることなく、ユーザの視野範囲から大きく外れる。一方、表示ユニット160から導出され相対的に大きな角度(斜入射)で湾曲面172hに照射されて反射した光F2は、ユーザの視野範囲に向かって伝搬するが、凸部272iに遮光されて、ユーザの視野範囲から大きく外れる。
【0046】
図11に示すように、ノートパソコン200は、120度に開けられている。ユーザの目30の位置P1からディスプレイ筐体ユニット170までの水平距離D1は、40cm以上を想定している。ここで、ユーザが注視する視野範囲は、ベース筐体ユニット150に沿った第1基準面K1からディスプレイ筐体ユニット170に沿った第2基準面K2の間の空間において、ユーザの目30を基準とした領域E1から領域E2の範囲である。領域E1から領域E2の範囲において、湾曲面172hで拡散した光のうちユーザの目30に向かって反射した光を、凸部272iによって遮ることができる。
【0047】
第2実施形態のノートパソコン200の効果を説明する。
【0048】
第2実施形態によれば、開口部270Aは、湾曲面172hと連なる凸部272iを備えている。このような構成によれば、表示ユニット160から導出されて湾曲面172hで反射した光F1及び光F2のうち、ユーザの目30に入り易い光F2を凸部272iによって遮光することができる。凸部272iで反射した光F2は、ユーザの視野範囲から大きく外れる。したがって、湾曲面172hで反射した光によって、マスク172にユーザの意識が逸らされることを防止できる。さらに、第2実施形態によれば、反射防止シート162と保護シート163との境界部分を、凸部272iによってユーザの視界から遮蔽して、ユーザに視認させ難くすることができる。同様に、第2実施形態によれば、表示ユニット160側に対向しており、面精度が十分ではない(面が粗野である)湾曲面172h等を、凸部272iによってユーザの視界から遮蔽して、ユーザに視認させ難くすることができる。この結果、ノートパソコン200の美観を維持することができる。
【0049】
図12を参照して、第3実施形態のノートパソコン300の構成を説明する。
【0050】
図12は、第3実施形態のノートパソコン300の要部を示す端面図である。第3実施形態では、上記した第1及び第2実施形態と異なる構成を説明する。
【0051】
図12に示すように、ディスプレイ筐体ユニット170の開口部370Aは、段差160Aに対向する部分に、段差160Aから離間する方向に傾斜した傾斜面372eを備えている。開口部370Aは、傾斜面372eと連なる凸部372iを備えている。
【0052】
第3実施形態のノートパソコン300の効果を説明する。
【0053】
第3実施形態によれば、開口部370Aは、段差160Aに対向する部分に、段差160Aから離間する方向に傾斜した傾斜面372eを備えている。このような構成によれば、ディスプレイ筐体ユニット370と表示ユニット160との間に応力が掛かっても、ディスプレイ筐体ユニット370のマスク372の傾斜面372eと、反射防止シート162の段差160Aの端部162aとの接触を抑制できる。したがって、第3実施形態のノートパソコン100は、情報を表示する表示ユニット160と、表示ユニット160を支持するディスプレイ筐体ユニット370との間に発生する応力を抑制できる。
【0054】
第3実施形態によれば、
図12に示すように、表示ユニット160の表面から、表示ユニット160の法線方向に沿って最も離間した傾斜面372eの部分までの長さH2は、段差160Aの長さH1の10倍以上である。このような構成によれば、ディスプレイ筐体ユニット370と表示ユニット160との間に応力が掛かっても、傾斜面372eと段差160Aとの距離を十分に確保できていることから、互いの接触を十分に抑制できる。
【0055】
第3実施形態によれば、
図12に示すように、傾斜面372eは、表示ユニット160の表面に沿った方向から45度(θ1)以上傾斜している。このような構成によれば、ディスプレイ筐体ユニット370と表示ユニット160との間に応力が掛かっても、傾斜面372eと段差160Aとの距離を十分に確保できていることから、互いの接触を十分に抑制できる。
【0056】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。又、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0057】
例えば、電子機器は、ノートパソコンに限定されることなく、例えば、タブレット型端末にも適用できる。
【符号の説明】
【0058】
100…ノートパソコン(電子機器)、110…演算ユニット、
120…通信ユニット、130…入出力ユニット、140…電源ユニット、
150…ベース筐体ユニット、160…表示ユニット、
161…ディスプレイ(表示部材)、161M…アクティブエリア、
161N…非アクティブエリア、162…反射防止シート(第1被覆部材)、
162a…端部、163…保護シート(第2被覆部材)、
170…ディスプレイ筐体ユニット(筐体ユニット)、170A…開口部、
171…カバー、171a…外縁部、171b…収容部、171c…第1突起部、
171d…第2突起部、171e…第3突起部、171f…第4突起部、
171g…引掛部、172…マスク、172a…鉤部、172b…外面、
172c…内面、172d…第1傾斜面、172e…第2傾斜面、172f…平面、
172g…端部、172h…湾曲面、173…側部緩衝材、174…底部緩衝材、
180…連結ユニット、200…ノートパソコン(電子機器)、
270…ディスプレイ筐体ユニット(筐体ユニット)、270A…開口部、
272i…凸部、300…ノートパソコン(電子機器)、
370…ディスプレイ筐体ユニット(筐体ユニット)、370A…開口部、
372…マスク、372e…傾斜面、372i…凸部